(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
目開き0.6mm篩を通過するが目開き0.3mm篩を通過しない粒度を有する穀粉類が、小麦粉、米粉及びトウモロコシ粉からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明により提供される焼成食品としては、焼き型で焼成して成形されるタイプの食品であればよく、例えば、たこ焼き、明石焼き、たい焼き、今川焼き、大判焼き、小判焼き、人形焼き、おやき、ベビーカステラ、ワッフル、焼きドーナツ、キッシュなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
本発明により提供される焼成食品は、表面を覆う外皮と、外皮に覆われた中身とを有する。外皮は、第1の生地を焼成して製造される。中身は、外皮の生地と同じ組成か、又は外皮の生地と異なる組成を有する第2の生地を焼成して製造される。焼成食品の表面と中身との食感の違いを際立たせるためには、外皮用の第1の生地と中身用の第2の生地は異なる組成であることが好ましい。
【0014】
上記外皮及び中身用の生地は、穀粉類を主体とする生地であればよい。穀粉類としては、薄力粉、中力粉、全粒粉、準強力粉、強力粉、デュラム小麦粉等の小麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ小麦粉、トウモロコシ粉などが挙げられる。これらの穀粉類は、いずれか単独で使用してもよく、又は2種類以上を適宜混合して使用してもよい。
【0015】
本発明の焼成食品を構成する外皮は、第1の生地から製造される。該第1の生地は、穀粉類を主原料として含む。当該生地における穀粉類の含有量は、目的の焼成食品の種類にあわせて適宜決定すればよいが、水分を除く全質量の50〜100質量%程度であればよく、70〜95質量%が好ましい。さらに、該第1の生地に含まれる穀粉類は、その全質量中に、目開き0.6mm篩を通過するが目開き0.3mm篩を通過しない粒度を有する穀粉類を30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50〜100質量%含有する。さらに好ましくは、該第1の生地に含まれる穀粉類は全て、目開き0.6mm篩を通過するが目開き0.3mm篩を通過しない粒度を有する穀粉類である。
【0016】
上記目開き0.6mm篩を通過するが目開き0.3mm篩を通過しない粒度を有する穀粉類は、その粒度さえ満たせば、如何なる由来のものであってもよい。例えば、当該穀粉類は、上記に挙げた小麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ小麦粉、トウモロコシ粉等、又はそれらの混合粉であり得る。好ましくは、当該穀粉類は、小麦粉、米粉及びトウモロコシ粉からなる群より選択させる少なくとも1種の穀粉、又はそれらの穀粉の2種以上の混合粉である。さらに好ましくは、当該穀粉類は、デュラム小麦のセモリナ粉、米粉、トウモロコシ粉からなる群より選択させる少なくとも1種の穀粉、又はそれらの穀粉の2種以上の混合粉である。
【0017】
上記目開き0.6mm篩を通過するが目開き0.3mm篩を通過しない粒度を有する穀粉類は、上記に挙げた穀類をロール粉砕法や胴搗き粉砕法といった一般的な製粉方法によって破砕した後、所定の目開きの篩で分級することによって調製することができる。このとき、目開き0.6mm篩を通過した成分のうち、目開き0.3mm篩上に残った成分を、第1の生地用の穀粉として回収することができる。
【0018】
上記第1の生地に含まれる穀粉類には、上記特定範囲の粒度を有さない穀粉類、例えば、目開き0.3mm篩を通過する一般的な粒度の穀粉類や、又は目開き0.6mm篩を通過しない粒径の大きな穀粉類が含まれていてもよい。しかし、目開き0.3mm篩を通過する穀粉類の割合が増加すると、得られた焼成食品に対する食感及び外観の向上効果が小さくなる傾向がある。一方、目開き0.6mm篩を通過しない大きな粒径の穀粉は、調製に要するコスト及び煩雑さの点で好ましくない。
【0019】
上記第1の生地はまた、澱粉類を含有していてもよい。澱粉類を含有することで、焼成食品がしっとりとして口どけの良い食感を有するものとなる。澱粉類としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、米澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、緑豆澱粉、およびそれらの化工澱粉が挙げられる。これらの澱粉類は、いずれか単独で使用してもよく、又は2種類以上を適宜混合して使用してもよい。当該生地における澱粉類の含有量は、穀粉類100質量部に対して、0.1〜50質量部程度が好ましく、5〜30質量部がより好ましい。
【0020】
上記第1の生地はさらに、糖類、油脂類、乳、卵、大豆蛋白、小麦グルテン等のタンパク質成分、増粘剤、膨張剤、乳化剤、酵素、食塩、調味料、色素、香料などを含有していてもよい。また該第1の生地には、天かす、紅ショウガ、ゴマ、ナッツ類、果実、薬味などの食材を添加してもよい。これらの材料は、目的とする焼成食品の種類や品質に応じて適宜添加することができる。
【0021】
本発明の焼成食品を構成する中身は、第2の生地から製造される。該第2の生地は、穀粉類を主原料として含む。該第2の生地は、上記第1の生地と同じ生地であってもよいが、その必要はない。例えば、該第2の生地としては、該第1の生地と同じ生地、穀粉類の粒度に限定がない以外は該第1の生地と同じ組成の生地、目開き0.6mm篩を通過するが目開き0.3mm篩を通過しない粒度を有する穀粉類を30質量%以上含有しない穀粉類を含む以外は該第1の生地と同じ組成の生地、目的の焼成食品用の生地として従来知られている生地(例えば、特許文献4〜5、特開2001−69903号公報、特開平6−277011号公報、特開2001−153号公報、特許第4575871号公報等に記載の生地)、市販の焼成食品用ミックス粉により製造される生地、等が挙げられる。
【0022】
上述した穀粉類及びその他の材料を、水などの液体や、調味料等と混合することにより、上記第1及び第2の生地を調製することができる。当該生地は、液状であっても、ペースト状であってもよい。当該生地の粘度は、特に限定されないが、好ましくは20mpas〜100pas、より好ましくは30mpas〜50pasであると操作性が向上する。さらに、中身用の第2の生地には、野菜、肉、魚介、卵、天かす、薬味、紅ショウガ、ゴマ、ナッツ類、果実、餡、クリーム、ジャム等の各種具材を添加してもよい。このとき、焼成食品の外皮用の第1の生地と中身用の第2の生地は、同じ組成の生地であればまとめて調製してもよく、又は異なる組成の生地をそれぞれ別に調製してもよい。あるいは、まとめて調製した生地を外皮用と中身用に分け、各々に好みの材料をさらに添加してもよい。
【0023】
本発明により提供される焼成食品は、凹部を有する焼き型で上記第1及び第2の生地を焼成することで製造される。詳細には、まず焼き型の凹部に第1の生地を投入し、次いで投入した生地を凹部の内壁面に沿って広げるとともに焼成することにより外皮を焼成成形する。続いて、凹部にさらに第2の生地を投入して焼成することにより、中身が外皮で覆われた焼成食品を得ることができる。以下に、本発明の焼成食品の製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0024】
焼き型は、生地を流し入れることができる凹部を備えるものであればよく、凹部を1つのみ有しているものであってもよいが、複数の凹部を有しているものが製造効率の点で好ましい。焼き型及び凹部は、金属、耐熱ガラス等の通常焼き型に使用されるいずれの材料から製造されていてもよく、また生地を投入される凹部と焼き型の他の部分とが、異なる材料で製造されていてもよい。凹部が、耐熱性フッ素樹脂製であるか又は表面に耐熱性フッ素樹脂製の被膜をした金属製であると、生地の付着防止の利点が得られる。焼き型の大きさや形状は特に限定されないが、外皮と中身とを有する焼成食品を製造するという目的上、焼き型の各凹部の開口部の最大長及び深さはいずれも10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましい。凹部が小さすぎると、表面と内部とで食感の異なる焼成食品を得ることが難しくなる。また凹部の開口部の最大長及び深さはいずれも150mm以下であることが好ましく、100mm以下であることがより好ましい。凹部が大きすぎると、焼成食品の喫食性が悪くなるだけでなく、内部を十分に焼成することが難しくなる。さらに、焼き型は、凹部の底部と開口部とで最大長が変わらない形状(例えば、筒状)、底部から開口部に向けて最大長が徐々に増加していく形状(例えば、コーン形、すり鉢形又はお椀形)、又は最大長が底部から徐々に増加して途中で一定になる形状(例えば、長半球形、釣鐘形又は下部がお椀型で上部が筒状)であると、後述する生地を広げる作業が容易になるため好ましい。
【0025】
上記焼き型の凹部に上述した外皮用の第1の生地を投入する。焼き型は、予め熱しておくことが好ましい。加熱温度は目的とする焼成食品の種類に応じて調整すればよいが、150〜220℃程度が好ましい。次いで、投入した該第1の生地を焼き型の凹部の内壁面に沿って広げていく。生地を広げる手段としては、特に限定されないが、例えば、焼き型の凹部に凸部を挿入することによって凸部と凹部内壁面との間隙に生地を広げる方法、焼き型を旋回させ遠心力によって生地を広げる方法、凹部内壁面に生地を塗布する方法、上部から空気を吹き付ける方法、凹部に投入した生地を短時間焼成後、凹部内壁面に広げて焼成し、壁面に固着しなかった生地を吸い上げる方法などが挙げられる。このうち、凸部を挿入する方法が、簡便に均一の厚さの外皮を成形できるため好ましい。
【0026】
凸部は、焼き型の凹部に挿入されることにより、凸部の外表面と凹部の内壁面との間に、生地が広がることのできる所定の間隔の間隙を形成することを可能とする大きさ及び形状を有する部材である。好ましくは、凸部は、焼き型の凹部と対応する形状を有するが、大きさは凹部よりも小さく、凹部の内空間に挿入されると、凹部内の底面及び側壁面に対してほぼ等しい間隔の間隙を形成することができる。しかしながら、凸部の形状は、焼き型の凹部の形状と完全に対応したものでなくともよく、従って焼き型の凹部内壁との間隙の間隔は、常に均等でなくともよく、場所による多少のばらつきは許容される。
【0027】
凸部のより詳細な例としては、凹部に挿入した場合に、凹部の内壁との間に、該凹部の開口部の最大長に対して、好ましくは平均で0.25〜12.5%、より好ましくは平均で2.0〜9.5%の距離の間隙を形成できる大きさ及び形状を有するものが挙げられる。一実施形態において、凹部は半球状の窪みであり、凸部は半球状である。別の一実施形態において、凹部は長半球状の窪みであり、凸部は長半球状である。また別の一実施形態において、凹部は円筒形の窪みであり、凸部は円筒である。また別の一実施形態において、凹部はすり鉢状であり、凸部は円錐形である。また別の一実施形態において、凹部は鯛焼き型であり、凸部は凹部と同形の鯛焼き形状であるが該凹部の内空間より大きさが小さい。また別の一実施形態において、凹部はパイ型又はキッシュ型であり、凸部は凹部と同形のパイ又はキッシュの形状であるが該凹部の内空間より大きさが小さい。
【0028】
例えば、焼成食品がたこ焼きである場合、上記凹部は、円形の開口部を有する半球状又は長半球状の窪みであり得、上記凸部は、該凹部と対応する形状を有するが大きさは該凹部の開口部の内半径よりも、好ましくは平均0.1〜5mm、より好ましくは平均1〜4mm小さい半径を有する半球状又は長半球状であり得る。該凸部を凹部に挿入した場合の、凸部と凹部の内壁との間隔は、好ましくは平均で0.1〜5mm、より好ましくは平均1〜4mmであり得る。
【0029】
凸部は凹部よりも小さいため、単純に凹部に押し込むと、凹部の底に落下して接触し、底面に間隙が形成されない。そこで、凸部が凹部の底面に接触せず、底面と所望の間隔の間隙を形成できるように凹部への凸部の挿入度合を制御する必要がある。例えば、凸部を手動で操作する場合は凸部に設けたハンドルを手で保持して凸部を動かせばよく、又は凸部の動く距離を制御する駆動部を設けるとよい。さらに、凸部又はそのハンドルや駆動部に、凸部が凹部に入り込み過ぎないように凸部の動きを止めるストッパーなどを設けると、凸部が凹部の底に接触することを防止し、又は凹部の底面と所定の間隔を維持することができるので有利である。
【0030】
凸部は、凹部と同質の材料で製造されていてもよく、又は別の材料で製造されていてもよい。凸部が耐熱性フッ素樹脂製であるか又は表面に耐熱性フッ素樹脂製の被膜をした金属製である場合、生地の付着が防止できるため好ましい。
【0031】
図1に、凸部を用いた外皮の成形手順の概要図を示す。焼き型の凹部に上記第1の生地を投入した後、凹部に凸部を挿入する(
図1A)。凸部が挿入されるに従って、凹部の底に溜まっていた該第1の生地は、凸部に押されて凸部外表面と凹部内壁面との間の間隙に広がる(
図1B)。この状態で該第1の生地を焼成すれば、間隙の幅にあわせて薄く広がった状態の焼成生地を得ることができる。さらに焼成によって、該第1の生地は凹部の形状に合わせて成形されるので、焼き型に対応した形状の外皮が形成される(
図1C)。
【0032】
上記第1の生地を広げて焼成する際に、凸部を上下若しくは左右に動かすか又は振動させると、あるいは凸部を固定した状態で焼き型を上下若しくは左右に動かすか又は振動させると、間隙に生地が広がりやすくなるため有利である。凸部を上下に動かす方法が簡便で好ましい。外皮が焼成成形されたら、凸部は凹部から取り外す。
【0033】
必要に応じて、上記手順で凹部内部に形成された外皮を、さらに凹部上部から加熱することにより、さらに堅固な外皮を形成することができる。
【0034】
以上の手順により、外皮を成型することができる。あるいは、上記外皮成形の手順を2回以上、例えば2回又は3回繰り返して、複層構造の外皮を形成してもよい。
【0035】
形成された外皮は、凹部開口部の最大長に対して、好ましくは平均で0.25〜12.5%の厚さ、より好ましくは平均で2.0〜9.5%の厚さを有する。外皮が複層構造の場合は、複層をなす外皮の厚さの合計として、上記の範囲になるようにする。外皮の平均厚さが凹部開口部の最大長に対して0.25%未満であると、得られた焼成食品の食感及び外観に十分な経時変化耐性が付与されず、一方外皮の平均厚さが凹部開口部の最大長に対して12.5%を超えると、得られた焼成食品の表面と中身との食感のバランスが悪くなるため好ましくない。但し、外皮の厚さが上記の基準を満たす場合でも、外皮の厚さは0.1mm以上12mm以下、好ましくは1mm以上10mm以下であることが望ましい。
【0036】
例えば、焼成食品がたこ焼きの場合、形成された外皮は、好ましくは平均で0.1〜5mmの厚さ、より好ましくは、平均で1〜4mmの厚さを有する。外皮が複層構造の場合は、複層をなす外皮の厚さの合計として、上記の範囲になるようにする。外皮の平均厚さが0.1mm未満であると、得られた焼成食品の食感及び外観に十分な経時変化耐性が付与されず、一方外皮の平均厚さが5mmを超えると、得られた焼成食品の表面と中身との食感のバランスが悪くなるため好ましくない。
【0037】
次いで、外皮が形成された焼き型の凹部にさらに上述した中身用の第2の生地を投入して、中身部分を焼成する。このとき、該第2の生地とともに野菜、肉、魚介、卵、天かす、薬味、紅ショウガ、ゴマ、ナッツ類、果実、餡、クリーム、ジャム等の各種具材を投入してもよい。該第2の生地及び具材は、凹部の内壁に沿って形成された外皮の内部に収まるように投入する。中身の量が多すぎると、外皮による被覆が不十分になるため、得られた焼成食品の食感及び外観に十分な経時変化耐性が付与されないことがある。
【0038】
上記第2の生地を投入した後は、焼き型内で食品を回転させたり、または反転させることにより、食品の全面を満遍なく焼成することが好ましい。あるいは、焼き型の上部から生地を別途加熱することにより、食品の回転や反転を行うことなく全面を十分に焼成することが可能となる。
【0039】
上述のように外皮が形成された焼き型の凹部に単に中身用生地を投入して焼成すると、焼成食品は、焼き型の上面すなわち凹部開口部にあたる部分に外皮を有さないことになる。本発明の方法により得られる焼成食品は、このような外皮のない部分を有していても経時変化耐性が向上している。しかし、開口部に対応する部分を含む食品の全面を外皮で覆うようにすると、経時変化耐性がさらに向上するため好ましい。開口部に対応する部分を外皮で覆うための手段としては、焼き型に中身用の第2の生地を投入した後、側面の外皮を折り込んで開口部部分を覆う方法、焼き型を振動させるか若しくは水平方向へ振盪させて、焼き型内で食品を回転させながら中身を焼成することにより、外皮で中身を包み込む方法、必要に応じてさらに外皮用の第1の生地を投入して開口部面を覆った後、焼き型の上部から別途該第1の生地を加熱することにより開口部面に外皮を形成する方法、開口部面に外皮のない2つの食品を開口部面で向い合せに重ねる方法、などが挙げられる。
【0040】
例えば、焼成食品がたこ焼きの場合、一般的な形状として釣鐘型と丸型があり得る。釣鐘型の場合、外皮が形成された焼き型の凹部に中身用生地を投入しそのまま焼成して得られた外皮を有さない部分を有するものであってもよいが、焼き型の上部からも生地を加熱して開口部部分にも外皮を形成するか又は側面の外皮を折り込んで開口部部分を覆うと、経時変化耐性がより向上する。丸型の場合、製造過程で焼き型内で食品を回転させながら焼成する際に全面が外皮で覆われるため、経時変化耐性がより向上したたこ焼きとなる。
【0041】
以上の手順で、焼成食品が製造される。該焼成食品は、表面を覆う外皮と、外皮に覆われた中身とを有する。該焼成食品の表面は、外皮に由来するカリッとした食感を呈し、該焼成食品の内部は、中身に由来する滑らかでソフトな食感、又はクリーミーな食感を呈する。
【0042】
さらに、上記本発明の方法により製造された焼成食品は、焼成から時間が経ったり、又は冷蔵若しくは冷凍保存後に電子レンジ等で再加熱したりした後でも、表面のサクミが損なわれたり、内部の食感が硬くなったりするなどの食感の低下や、しぼんでボリュームが失われたり、表面にしわが寄ったりするなどの外観の劣化が少なく、良好な品質を維持している。特に、本発明の焼成食品は、上述した目開き0.6mm篩を通過するが目開き0.3mm篩を通過しない粒度を有する穀粉類を含有する生地から製造された外皮を有することによって、通常の穀粉類(すなわち、目開き0.3mm篩を通過する穀粉類)を用いて同じ手順で製造された外皮を有する焼成食品と比べても、一層良好な外観と食感を有することができる。従って、該焼成食品は、焼成後すぐに食する食品として適しているだけでなく、作り置きして後で食したり、店で購入して家に持ち帰ってから食する食品としても適している。さらに、該焼成食品は、電子レンジ加熱して食する冷蔵又は冷凍食品としても好適である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0044】
試験例1:外皮付きたこ焼きの製造
(焼成装置)
開口部の直径が44mmの半球形の凹部を有するたこ焼き型、及び当該凹部よりも半径が約0.1〜6mm小さい半球形の凸部No.1〜7を準備した。これらの凸部には、手で持って凸部を保持するためのハンドルがついており、凸部を凹部に挿入する操作は手動で行った。各凸部にはストッパーが取り付けられた。ストッパーの取り付け位置は、凸部を凹部に挿入した場合に、凹部底面との間隙が、凸部No.1〜7について、それぞれ0.3mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、及び6mm未満にならないように設計された。これらのストッパーにより、外皮焼成中には凸部を手で保持する必要はなかった。
たこ焼き型は、下部から加熱装置により加熱された。一方、たこ焼き型の上部に、移動可能な第2の加熱装置を取り付け、中身の焼成中にはこの第2の加熱装置をたこ焼き型の上部に移動させ、生地を上から加熱した。
(生地)
中力粉100g、だし汁340mL、全卵60gを混合してたこ焼き生地を調製した。この生地の粘度は36mpasであった。
【0045】
(製造例1−1):従来のたこ焼き製法
180〜190℃に加熱したたこ焼き型の凹部に油を塗り、生地35gのうちの半量とタコ3gを投入して3分間加熱し、次いで残りの生地を投入した。たこ焼き型の上部に第2の加熱装置をセットし、180〜190℃で3分間加熱した。適正な焼き色がついたところで指し油をして凹型内で焼成物を反転し、さらに3分間焼成して、たこ焼きを得た。
【0046】
(製造例1−2)
たこ焼き型を150〜160℃に加熱し、凹部に油を塗った。生地35gを準備し、そのうち5gを型に流し入れ、次いで凸部No.1をストッパーで止まるまで挿入した。挿入後、凸部を手で軽く上下に2往復動かし、生地が凹部内壁面に満遍なく広がるようにした。そのまま凸部を挿入した状態で生地を1分間加熱し、外皮を焼成成形した。形成された外皮の厚さは、0.1〜0.5mmであった(平均0.3mm)。次いで、凸部を取り出し、型にタコ3gを入れ、残った生地を全量流し入れ、180〜190℃で5分間加熱した後、たこ焼き型の上部に第2の加熱装置をセットし、180〜190℃で3分間加熱して油を差し1分間加熱後たこ焼きを得た。
【0047】
(製造例1−3〜1−8)
凸部No.1に代えて凸部No.2〜7のいずれかを用いて外皮を成形した以外は、製造例1−2と同じ手順で製造例1−3〜1−8のたこ焼きを得た。形成された外皮の厚さは、製造例1−3〜1−8について、それぞれ平均1、2、3、4、5及び6mmであった。
【0048】
(製造例1−9〜1−11)
生地10gと凸部No.2を用いて、製造例1−2と同じ手順で外皮を成形し、さらに凹部上面側に第2の加熱装置をセットし、180〜190℃で1分間加熱した。外皮の形成された型に再び生地5gを投入し、凸部No.4を用いて同じ工程を繰り返し、2層目の外皮を成形した。次いで、凸部を取り出し、型にタコ3gを入れ、残った生地の全量を流し入れ、180〜190℃で4分間加熱した後、たこ焼き型の上部に第2の加熱装置をセットし、180〜190℃で3分間加熱し指し油をして1分間焼成し、たこ焼きを得た(製造例1−9:外皮の厚さが2層の合計で平均3mm)。
同様の手順で、3層の外皮(合計厚さ平均4mm)を有するたこ焼きを得た(製造例1−10)。
さらに同様の手順で、4層の外皮(合計厚さ平均6mm)を有するたこ焼きを得た(製造例1−11)。
【0049】
製造例1−1〜1−11のたこ焼きについて、焼成直後、及び焼成から2時間室温にて静置冷却後に、外観、及び表面と内部の食感を評価した。さらに、焼成後直ちに−30℃にて急速冷凍後、−20℃の冷蔵庫に移し3日間冷凍保存し、電子レンジにて再加熱(500W、1分間/個)したものについて、外観、及び表面と内部の食感を評価した。製造例1−1〜1−11のたこ焼きの評価結果を表1に示す。評価結果は、表2に示す評価基準に従って10名のパネラーが評価した結果の平均点である。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
試験例2:外皮生地に含まれる穀粉の粒度の検討
(外皮用生地)
表3に示す組成で穀粉、だし汁、全卵を混合してたこ焼き生地を調製した。
(中身用生地)
中力粉100g、だし汁340mL、全卵60gを混合してたこ焼き生地を調製した。この生地の粘度は36mpasであった。
【0053】
各外皮用生地と凸部No.2を用いて、試験例1の製造例1−2と同じ手順で外皮を焼成成形した。形成された外皮の厚さは平均1mm(凹部内径の2.27%)であった。続いて、中身用生地を用いて試験例1の製造例1−2と同様の手順でたこ焼きを製造した(製造例2−1〜2−6)。参考例として、同様の手順で、穀粉として通常の中力粉のみを含む生地(中身用生地)から製造した外皮(厚さ平均1mm)を有するたこ焼きを製造した。
【0054】
【表3】
【0055】
製造例2−1〜2−6および参考例のたこ焼きはいずれも、焼成直後には、焼き色が良く表面に張りがあり、且つ外皮はカリッと歯切れよく中身は滑らかな良好な食感を有していた。これらのたこ焼きを、2時間室温にて静置冷却後及び冷凍保存して再加熱した後、外観及び食感を参考例との対比により評価した。評価結果を表4に示す。評価は表5に示す評価基準に従って行った。
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
試験例3:外皮生地における穀粉の配合比の検討
(外皮用生地)
表6に示す組成で穀粉、だし汁、全卵を混合してたこ焼き生地を調製した。
(中身用生地)
中力粉100g、だし汁340mL、全卵60gを混合してたこ焼き生地を調製した。この生地の粘度は36mpasであった。
【0059】
各外皮用生地と凸部No.2を用いて、試験例1の製造例1−2と同じ手順で外皮を焼成成形した。形成された外皮の厚さは平均1mm(凹部内径の2.27%)であった。続いて、中身用生地を用いて試験例1の製造例1−2と同様の手順でたこ焼きを製造した(製造例3−1〜3−6)。参考例として、同様の手順で、穀粉として通常の中力粉のみを含む生地(中身用生地)から製造した外皮(厚さ平均1mm)を有するたこ焼きを製造した。
【0060】
【表6】
【0061】
製造例3−1〜3−6および参考例のたこ焼きはいずれも、焼成直後には、焼き色が良く表面に張りがあり、且つ外皮はカリッと歯切れよく中身は滑らかな良好な食感を有していた。これらのたこ焼きを、2時間室温にて静置冷却後及び冷凍保存して再加熱した後、外観及び食感を参考例との対比により評価した。評価結果を表7に示す。評価は表5に示す評価基準に従って行った。
【0062】
【表7】