(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)脱脂粉乳、脱脂乳、生乳、及び乳タンパク質濃縮物からなる群より選ばれる一種以上を含む発酵乳の原料に乳酸菌を添加した後、静置発酵させて、乳酸発酵生成物を得る静置発酵工程と、
(B)上記乳酸発酵生成物に酵母を添加した後、撹拌発酵させて、液状発酵乳を得る撹拌発酵工程と、
(C)上記液状発酵乳に対して均質化処理を行なう均質化工程、
を含む、アルコール含量が0.5重量%を下回る液状発酵乳の製造方法であって、
工程(A)における静置発酵を、3〜45時間で行ない、かつ、工程(B)における撹拌発酵を、20〜65時間で行なう、液状発酵乳の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液状発酵乳の製造に際しては、一般に、発酵乳の原料(例えば、脱脂粉乳、生乳等)に乳酸菌を添加した後に、静置発酵させて、乳酸発酵生成物であるカードを形成させ、次いで、このカードを細かく砕いて、液状発酵乳を得ている。
本発明者は、液状発酵乳の開発に際し、芳醇な香り等を与えるために、乳酸菌と酵母を併用することを検討した。
しかし、発酵乳の原料に、乳酸菌及び酵母を同時に添加し、その後、静置発酵させると、酵母の産生する二酸化炭素によって固形物が浮上してしまい、その後の均質化処理、殺菌処理などの処理が不可能になることが判明した。
また、発酵乳の原料に乳酸菌を添加し、静置発酵させて、カードを形成させた後、このカードを細かく砕いて得られた液状物と、酵母を混合し、その後、静置発酵させた場合には、酵母の産生する二酸化炭素によって固形物が浮上してしまい、その後の均質化処理、殺菌処理などの処理が不可能になることが判明した。
そこで、本発明は、乳酸菌及び酵母を用いて、酵母による発酵に由来する芳醇な香り等を有するとともに、外観及び飲み口が良好な液状発酵乳及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、発酵乳の原料に乳酸菌を添加し、静置発酵させた後、酵母を添加し、撹拌発酵させれば、酵母による発酵に由来する芳醇な香り等を有するとともに、攪拌発酵終了後に肉眼で観察される粗大粒子を含まず、固形分の浮上も生じない、外観及び飲み口が良好な液状発酵乳を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[
7]を提供するものである。
[1] (A)脱脂粉乳、脱脂乳、生乳、及び乳タンパク質濃縮物からなる群より選ばれる一種以上を含む発酵乳の原料に乳酸菌を添加した後、静置発酵させて、乳酸発酵生成物を得る静置発酵工程と、(B)上記乳酸発酵生成物に酵母を添加した後、撹拌発酵させて、液状発酵乳を得る撹拌発酵工程と、(C)上記液状発酵乳に対して均質化処理を行なう均質化工程、を含む、アルコール含量が0.5重量%を下回る
液状発酵乳の製造方法であって、工程(A)における静置発酵を、3〜45時間で行ない、かつ、工程(B)における撹拌発酵を、20〜65時間で行なう、液状発酵乳の製造方法。
[
2] 工程(A)における静置発酵を、20〜44℃の温度下で行ない、かつ、工程(B)における撹拌発酵を、20〜44℃の温度下で行なう、上記
[1]に記載の液状発酵乳の製造方法。
[3] 工程(A)における静置発酵を、32〜43℃の温度下で10〜35時間で行ない、かつ、工程(B)における撹拌発酵を、30〜42℃の温度下で30〜50時間で行なう、上記[2]に記載の液状発酵乳の製造方法。
[4] 工程(B)における撹拌の速度が、10〜150rpmである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の液状発酵乳の製造方法。
[
5] 工程(A)における上記静置発酵の開始時から、工程(B)における上記撹拌発酵の終了時までの間、酵母スターター以外のものを添加しない、上記[1]〜[
4]のいずれかに記載の液状発酵乳の製造方法。
[
6] 工程(C)の後の上記液状発酵乳の固形分を構成する粒子のメディアン径が、30μm以下である
、上記[1]〜[
5]のいずれかに記載の液状発酵乳の製造方法。
[
7] 上記[1]〜[
6]のいずれかに記載の液状発酵乳の製造方法によって、上記液状発酵乳を得た後、上記液状発酵乳と、他の成分を混合して、混合物を得て、次いで、上記混合物に対して、均質化処理を行ない、固形分を構成する粒子のメディアン径が2.5μm以下である飲料を得る、飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液状発酵乳の製造方法によれば、乳酸菌の添加後に静置発酵させ、次いで、酵母の添加後に、撹拌発酵させているので、静置発酵のみを行なった場合に見られる固形分の浮上や、撹拌培養のみを行なった場合に見られる固形分の粒子の粗大化が生じず、均質な液状物としての外観、及び、良好な飲み口を有する液状発酵乳を得ることができる。
また、本発明の液状発酵乳の製造方法によれば、乳酸菌に加えて酵母を用いているので、乳酸菌による発酵生成物である乳酸に由来する酸味とともに、酵母による発酵生成物に由来する芳醇な香り、後引きのある風味、及び若干のアルコール香を有する液状発酵乳を得ることができる。なお、本発明の液状発酵乳は、アルコール含量が0.5重量%を下回るため、ノンアルコール飲料として飲用に供することができる。
本発明の液状発酵乳は、そのまま単独で、または、砂糖、水等の他の材料と混合した後に、飲用に供することができる。
例えば、本発明で得られる液状発酵乳に対して均質化処理を行った後に、この処理済みの液状発酵乳と他の材料(例えば、水、砂糖等)を混合し、得られた混合物に対して、さらに均質化処理を行うことによって、均質な液状物としての外観と、良好な飲み口と、嗜好性を兼ね備えた飲料を得ることができる。この飲料は、当該飲料を収容する容器の底部等に沈殿物(固形分)を生じさせることがなく、商品価値が高い。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の液状発酵乳の製造方法は、(A)発酵乳の原料に乳酸菌を添加した後、静置発酵させて、乳酸発酵生成物を得る静置発酵工程と、(B)工程(A)で得られた乳酸発酵生成物に酵母を添加した後、撹拌発酵させて、液状発酵乳を得る撹拌発酵工程、を含む。
また、本発明の液状発酵乳の製造方法は、(C)工程(B)で得られた液状発酵乳に対して均質化処理を行ない、均質化処理済みの液状発酵乳を得る均質化工程、を含むことができる。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0010】
[工程(A);静置発酵工程]
工程(A)は、発酵乳の原料に乳酸菌を添加した後、静置発酵させて、乳酸発酵生成物を得る工程である。
発酵乳の原料としては、工程(B)の撹拌発酵の終了時点で、無脂乳固形分の含有率が5重量%以上、好ましくは8重量%以上の液状物が得られるものであればよい。
発酵乳の主原料としては、獣乳(牛乳、羊乳、ヤギ乳、水牛乳等)や豆乳等の乳及びその加工品であれば、特に制限されずに任意のものを使用可能であり、例えば、脱脂粉乳、脱脂乳、生乳、乳タンパク質濃縮物等の他、ホエイを原料として製造されるホエイパウダーや、ホエイタンパク濃縮物等も使用可能である。発酵乳の主原料は、前記の一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
発酵乳の副原料としては、公知の食品及び食品添加物であって、発酵時間を大幅に遅延させるものでなければ、特に制限されずに任意のものを使用可能であり、例えば、後述の実施例で用いられているぶどう糖、酵母エキス等が挙げられる。
なお、本明細書中、発酵乳の主原料とは、乳由来の原料をいう。発酵乳の副原料とは、乳由来の原料以外の原料(ただし、乳酸菌及び酵母を除く。)をいう。
発酵乳の原料の全量中の主原料の割合は、特に限定されない。
発酵乳の原料には、必要に応じて、水を加えることができる。例えば、発酵乳の主原料として、脱脂粉乳のみを用いる場合、脱脂粉乳10重量部に対して、50〜150重量部の水を加えることが好ましい。
水を加える場合、発酵乳の原料と水との混合物に対して、乳酸菌を添加してもよいし、発酵乳の原料と乳酸菌との混合物に対して、水を加えてもよいし、発酵乳の原料と水と乳酸菌を同時に混合してもよい。
【0011】
乳酸菌としては、生菌である乳酸菌を含むものであればよく、特に限定されないが、通常、栄養源の存在下に、乳酸菌を培養してなる液状物が用いられる。
このような液状物は、例えば、脱脂粉乳等の栄養源、水、及び乳酸菌を含む混合液を、所定の温度(例えば、35〜40℃)下で、所定の時間(例えば、10〜20時間)、培養して、マザースターターを得た後、このマザースターターと、水と、脱脂粉乳等の栄養源を混合し、得られた混合液を、所定の温度(例えば、35〜40℃)下で、所定の時間(例えば、10〜20時間)、さらに培養することによって、得ることができる。
乳酸菌中の乳酸菌の数は、特に限定されないが、例えば、1×10
7〜1×10
9cfu/mlである。
乳酸菌としては、発酵乳の製造に用いられる一般的な乳酸菌の中から選択される一種又は二種以上の乳酸菌を用いることができる。乳酸菌の例としては、例えば、ラクトバチルス属の乳酸菌、ストレプトコッカス属の乳酸菌等が挙げられる。
ラクトバチルス属の乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・デルブリュッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbruekii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)等が挙げられる。
本発明において、ラクトバチルス・ヘルベチカスは、他の乳酸菌よりも酸度の上昇が進むため、長時間の発酵が必要な発酵乳においても、汚染微生物の増殖を防止することができるという観点から好ましい。なお、ラクトバチルス・ヘルベチカスは、市販品を容易に入手することができる。
ストレプトコッカス属の乳酸菌としては、例えば、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等が挙げられる。
【0012】
本明細書中、静置発酵とは、撹拌せずに静置した状態で発酵させることをいう。
静置発酵の時間は、好ましくは3〜45時間、より好ましくは5〜45時間、さらに好ましくは8〜45時間、さらに好ましくは10〜40時間、さらに好ましくは15〜35時間、特に好ましくは20〜30時間である。
静置発酵の温度は、好ましくは25〜50℃、より好ましくは30〜45℃、さらに好ましくは32〜43℃、特に好ましくは35〜40℃である。
静置発酵によって、発酵生成物であるカードが得られる。このカードは、工程(B)で細かく砕かれて、液状物となる。
【0013】
[工程(B);撹拌発酵工程]
工程(B)は、工程(A)で得られた乳酸発酵生成物に酵母を添加した後、撹拌発酵させて、液状発酵乳を得る工程である。
酵母としては、生菌である酵母を含むものであればよく、特に限定されないが、一例として、乾燥酵母(ドライイースト)が挙げられる。
乾燥酵母は、乾燥によって休眠状態にある酵母である。乾燥酵母は、例えば、水と混合してなる液状物の状態で用いることができる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastrianus)、サッカロマイセス・パラドキサス(Saccharomyces paradoxus)、サッカロマイセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)等が挙げられる。
本発明において、サッカロマイセス・セレビシエは、市販品で容易に入手できるため、汎用性の観点から好ましい。サッカロマイセス・セレビシエの市販品としては、サフ インスタントドライイースト 赤(Lesaffre社製)、オリエンタルドライイースト(オリエンタル酵母工業社製)等が挙げられる。
酵母は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
工程(A)で得られた乳酸発酵生成物は、静置発酵によって得られたものであるため、液状ではなく、固形状のカードの形態を有する。工程(B)において、このカードを細かく砕いた後に、酵母を添加してもよいし、あるいは、このカードに酵母を添加した後、撹拌によって、カードを細かく砕いてもよい。
【0014】
撹拌の速度は、特に限定されないが、乳酸菌の作用によって形成したカードの剪断による破砕、酵母が産生する炭酸ガスの除去、及び固形物の浮上の抑制の観点から、好ましくは10〜150rpm、より好ましくは30〜100rpmである。
撹拌は、連続的な撹拌と断続的な撹拌のいずれでもよいが、酵母が産生する炭酸ガスの除去、及び固形物の浮上の抑制の観点から、連続的な撹拌が好ましい。
撹拌発酵の時間は、好ましくは20〜50時間、より好ましくは25〜45時間、さらに好ましくは30〜40時間、特に好ましくは35〜40時間である。
撹拌発酵の温度は、好ましくは20〜44℃、より好ましくは25〜42℃、さらに好ましくは30〜40℃、特に好ましくは35〜38℃である。
工程(A)における静置発酵の時間と、工程(B)における撹拌発酵の時間の合計は、液状発酵乳の風味、実用性等の観点から、好ましくは40〜85時間、より好ましくは45〜80時間、さらに好ましくは50〜75時間、さらに好ましくは55〜70時間、特に好ましくは60〜70時間である。
なお、撹拌発酵の終了後に、乳酸等を添加して、液状発酵乳の乳酸酸度を調整することができる。液状発酵乳の乳酸酸度は、適度な酸味を与える観点から、好ましくは2.1〜2.7%である。
【0015】
[工程(C);均質化工程]
工程(C)は、工程(B)で得られた液状発酵乳に対して均質化処理を行なう工程である。ここでいう、均質化とは、均質機(ホモゲナイザー)を用いた均質化処理に限られることなく、攪拌やホモミキサー、エクストルーダーなどによる公知の剪断処理も含まれる。
均質化処理は、例えば均質機(ホモゲナイザー)を用いる場合、1段目の均質化処理として、7〜13MPaの圧力で加圧した後、2段目の均質化処理として、4〜6MPaの圧力で加圧することによって行なわれる。
工程(C)としては、1段目と2段目を組み合わせた均質化処理を1回のみ行なってもよいし、1段目と2段目を組み合わせた均質化処理を2回以上行なってもよい。例えば、1段目と2段目を組み合わせた均質化処理を行なった後、加熱殺菌及び冷却を行ない、次いで、1段目と2段目を組み合わせた均質化処理をさらに行なってもよい。
工程(C)で得られる処理済みの液状発酵乳に含まれている固形分を構成する粒子のメディアン径は、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下、特に好ましくは15μm以下である。
【0016】
工程(C)で得られた液状発酵乳は、単独で飲用に供してもよいし、あるいは、他の成分と混合して、飲用に供してもよい。液状発酵乳と混合される他の成分としては、甘みを与えるための砂糖等の甘味料や、乳酸等の酸度調整剤や、食塩や、香料や、果汁等が挙げられる。
液状発酵乳と他の成分の混合物に対して、均質化処理を行うこともできる。この場合の均質化処理は、1段のみでも、複数段(例えば、1段目と2段目の併用)でもよい。均質化処理の圧力は、合計で、好ましくは10〜20MPaである。また、この場合、均質化処理後の飲料(液状発酵乳と他の成分の混合物)に含まれている固形分を構成する粒子のメディアン径は、好ましくは2.5μm以下、より好ましくは2.0μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。
【実施例】
【0017】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(1)乳酸菌スターターの調製
脱脂粉乳(明治社製)、粉末酵母エキス(商品名:イーストエキスT−154、オリエンタル酵母工業社製)、乳酸菌(Lactobacillus helveticus、ダニスコ社製の「FLAV 54 LYO 5D」)、及び、水を用いて、乳酸菌スターターを調製した。この乳酸菌スターターは、脱脂粉乳を10重量%、水を90重量%、イーストエキスを0.002重量%、乳酸菌を3×10
8cfu/ml含むものであった。また、この乳酸菌スターターの乳酸酸度は、1.6%であった。
(2)酵母スターターの調製
40℃の滅菌水に乾燥酵母(商品名:サフ インスタントドライイースト 赤、Lesaffre社製)を添加して、20分間で静置したものを、酵母スターターとして、後述の液状発酵乳の調製で用いた。
【0018】
(3)液状発酵乳の調製
40℃程度に加温した水86.69重量部と、脱脂粉乳(明治社製)10.76重量部と、ぶどう糖(商品名:グルファイナル、サンエイ糖化社製)0.5重量部と、粉末酵母エキス(商品名:イーストエキスT−154、オリエンタル酵母工業社製)0.04重量部を混合した後、得られた混合液を75℃、30分間で殺菌し、次いで、37℃に冷却した。冷却後の混合液に、前記の乳酸菌スターター2重量部を添加し、37℃、16時間で、静置発酵し、カードを形成させた。
静置発酵後、撹拌装置を起動させ、カードを破砕すると同時に、前記の酵母スターターを、乾燥酵母の重量に換算して0.01重量部の配合量(以上の合計100重量部)となるように添加し、37℃、42時間で撹拌発酵した。撹拌は、60rpmで連続的に行なった。
撹拌発酵の終了後、得られた液状発酵乳の乳酸酸度を確認したところ、2.4%であったため、乳酸を添加して、酸度を2.5%に調整した。
次に、この液状発酵乳に対して、1段目として10MPa、2段目として5MPaの均質化処理を行なった。処理後の液状発酵乳を75℃、30分間で殺菌した後、10℃以下に冷却した。
この、得られた液状発酵乳では、全固形分の含有率が11.6重量%、無脂乳固形分の含有率が10.4重量%、乳酸酸度が2.5%、pHが3.3であった。また、液状発酵乳では、浮上した固形物や、粗大粒子を含まず、均質で、乳白色の液状物であり、乳酸発酵に由来する酸味と、酵母発酵に由来する風味(まろやかさ、果実のような香り、後に感じる芳醇な香り)と、若干のアルコール香を有するものであった。液状発酵乳に、異味、異臭、異物は、認められなかった。
【0019】
(4)飲料の調製
前記の(3)で得られた液状発酵乳を、均質機(ホモミキサー)にて合計15MPaの圧力で均質化処理を行った後、85℃、2分間で加熱し、次いで、10℃以下に冷却した。均質化処理後の液状発酵乳の固形分を構成する粒子のメディアン径は、14.05μmであった。
一方、40℃に加温した水82.02重量部に、大豆多糖類(商品名:SM900、三栄源エフ・エフ・アイ社製)0.2重量部を添加して、水溶液を得た後、この水溶液を10℃以下に冷却した。この水溶液に、砂糖10.112重量部、乳酸(商品名:50%乳酸、第一ファインケミカル社製)0.063重量部、食塩0.004重量部、及び、前記のホモミキサーで処理済みの液状発酵乳7.6重量部(以上の合計100重量部)を加えて、混合液を得た。この混合液を60℃に加温した後、均質機にて合計15MPaの圧力で均質化し、次いで、10℃以下に冷却した。冷却後の混合液を、オートクレーブを用いて110℃、1分間で加熱し、飲料を得た。
この飲料について、固形分を構成する粒子のメディアン径を測定したところ、1.0μmであった。また、この模擬飲料は、固形分の浮上や粗大粒子による外観の異常が見られず、乳白色で均質な液状物であった。
【0020】
[実施例2]
静置発酵の時間を24時間に定め、かつ撹拌発酵の時間を40時間に定めた以外は実施例1と同様にして実験した。
その結果、均質化処理前の液状発酵乳では、実施例1と同様に、浮上した固形物や、粗大粒子を含まず、均質で、乳白色の液状物であり、乳酸発酵に由来する酸味等を有するものであった。液状発酵乳に、異味、異臭、異物は、認められなかった。
均質化処理後の液状発酵乳の固形分を構成する粒子のメディアン径は、10μmであった。
また、得られた飲料の粒子のメディアン径は、0.8μmであった。また、この飲料は、当該模擬飲料を収容する容器の底における沈殿が見られず、乳白色で均質な液状物であった。
[実施例3]
静置発酵の時間を5時間に定め、かつ撹拌発酵の時間を59時間に定めた以外は実施例1と同様にして実験した。
その結果、均質化処理前の液状発酵乳では、粒子の粒度は若干大きく、長時間静置すると粗大粒子の沈降がみられたものの、浮上した固形物を含まず、乳白色の液状物であり、乳酸発酵に由来する酸味等を有するものであった。液状発酵乳に、異味、異臭、異物は、認められなかった。
また、得られた模擬飲料の粒子のメディアン径は、2.1μmであった。この飲料を収容する容器の底部等に、沈殿物が若干で認められた。
【0021】
[比較例1]
乳酸菌スターターと酵母スターターを同時に添加し、かつ、静置発酵の時間を64時間に定め、撹拌発酵を行なわなかった以外は実施例1と同様にして実験した。
その結果、液状発酵乳では、発酵終了時に、固形分が液面に浮上して乾燥し、硬化しており、外観が劣っていた。このため、手作業にて固形分を粉砕した後、均質化処理を行った。
また、得られた飲料の粒子のメディアン径は、3.1μmであった。この飲料を収容する容器の底部等に、実施例3よりも多量の沈殿物が認められた。
[比較例2]
乳酸菌スターターと酵母スターターを同時に添加し、かつ、撹拌発酵の時間を64時間に定め、静置発酵を行なわなかった以外は実施例1と同様にして実験した。
その結果、液状発酵乳の発酵終了時に、固形分の液面への浮上は見られなかったものの、粗大粒子の沈降による外観の異常が認められた。以後の液状発酵乳の処理は、沈降した粗大粒子も含めて行った。
また、得られた飲料の粒子のメディアン径は、4.6μmであった。この飲料を収容する容器の底に、比較例1よりも多量の沈殿物が認められた。
[比較例3]
乳酸菌スターターと酵母スターターを同時に添加し、かつ、静置発酵の時間を24時間に定め、撹拌発酵の時間を40時間に定めた以外は実施例1と同様にして実験した。
その結果、液状発酵乳は、発酵終了時に、固形分が液面に浮上して乾燥し、硬化しており、外観が劣っていた。このため、手作業にて固形分を粉砕した後、均質化処理を行った。
また、得られた模擬飲料の粒子のメディアン径は、2.0μmであった。この飲料を収容する容器の底部等に、沈殿物が若干認められた。
以上の結果を表1に示す。なお、表1中、総合評価に関し、「◎」は「非常に良好」、「○」は「良好」、「×」は「不良」を表す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1から、乳酸菌スターターの添加後に静置発酵させ、次いで、酵母スターターを添加して、その後、撹拌発酵させた場合(実施例1〜3)には、粗大粒子が生じず、また、固形分の浮上が生じないことがわかる。
一方、静置発酵のみを行なった場合(比較例1)には、固形分が浮上するなどの問題があった。撹拌発酵のみを行なった場合(比較例2)には、固形分の浮上は認められなかったものの、粗大粒子の沈降による外観の異常が認められた。静置発酵と撹拌発酵を組み合わせたものの、乳酸菌スターターと酵母スターターを同時に添加した場合(比較例3)には、固形分が浮上するなどの問題があった。