【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成25年度産業技術研究開発(革新的触媒による化学製造プロセス技術開発プロジェクトのうち二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発)(国庫債務負担行為に係るもの))に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電解質水溶液から水素ガスを生成させる水素ガス生成部、前記電解質水溶液から酸素ガスを生成させる酸素ガス生成部、ならびに光から電力を発生させ前記水素ガス生成部に前記水素ガスを発生させるための電力および前記酸素ガス生成部に前記酸素ガスを発生させるための電力を供給するための光電変換ユニットが平面上に設けられ、かつ電気的に接続されており、
さらに、前記水素ガス生成部と供給された前記電解質水溶液と生成した水素ガスとを収容する水素用電解室と、前記酸素ガス生成部と供給された前記電解質水溶液と生成した酸素ガスとを収容する酸素用電解室とを備える人工光合成モジュールを複数有し、
複数の前記人工光合成モジュールでは、生成された水素ガスと酸素ガスとが混合されないように前記水素用電解室と前記酸素用電解室が隔離されており、
複数の前記人工光合成モジュールは特定の方向に並んで配置され、かつ複数の前記人工光合成モジュールは前記特定の方向に傾斜し、
前記水素用電解室、前記酸素用電解室の順、または前記酸素用電解室、前記水素用電解室の順で、前記水素用電解室と前記酸素用電解室とが交互に接続されており、
前記各人工光合成モジュールの前記水素用電解室と前記酸素用電解室に前記電解質水溶液が所定の流量で供給されることを特徴とする人工光合成アレイ。
前記水素ガス生成部および前記酸素ガス生成部は、前記供給される前記電解質水溶液の流れに対して傾斜して配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工光合成アレイ。
前記水素ガス生成部は機能層で覆われており、前記機能層は弱酸性溶液および弱アルカリ性溶液に不溶であり、かつ光透過性、遮水性および導電性を兼ね備える請求項1〜8のいずれか1項に記載の人工光合成アレイ。
前記光電変換ユニットは保護層で覆われており、前記保護層は弱酸性溶液および弱アルカリ性溶液に不溶であり、かつ光透過性、遮水性および絶縁性を兼ね備える請求項1〜10のいずれか1項に記載の人工光合成アレイ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の人工光合成アレイを詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の人工光合成アレイを示す模式的平面図であり、
図2は
図1に示す第1の実施形態の人工光合成アレイの側面図である。なお、
図2は、
図1に示す人工光合成アレイ10をA
1方向から見た側面図である。
【0014】
図1に示すように、人工光合成アレイ10は、複数の人工光合成モジュール12を有し、これらが連なっている。
人工光合成モジュール12は、光を受光して、供給される電解質水溶液AQを分解して水素ガスと酸素ガスを得るものであり、容器13と、後述する光電変換ユニット30、水素ガス生成部32および酸素ガス生成部34とを有する。人工光合成モジュール12では、容器13内に供給された電解質水溶液AQを収容し、かつ水素ガスが生成され、生成された水素ガスを収容する水素用電解室14と、容器13内に供給された電解質水溶液AQを収容し、かつ酸素ガスが生成され、生成された酸素ガスを収容する酸素用電解室16とが形成される。人工光合成モジュール12は、容器13内に水素用電解室14と酸素用電解室16とが並んで配置されており、水素用電解室14と酸素用電解室16との間には隔壁17が設けられている。
【0015】
容器13は、人工光合成モジュール12の外殻を構成するものであり、内部に水素用電解室14と酸素用電解室16とが設けられる。容器13は、電解質水溶液AQを収容し、生成される水素ガスおよび酸素ガスを収容するものである。
なお、容器13は、光電変換ユニット30に光を照射させるために、透光性を有する必要がある。透光性の規定については、光電変換ユニット30が光を受光して、電解質水溶液AQを分解して水素ガスおよび酸素ガスを得るに必要な起電力を発生することができれば、特に限定されるものではない。
【0016】
人工光合成アレイ10において、人工光合成モジュール12は、水素用電解室14と酸素用電解室16とが並ぶ方向Mと直交する方向Dに複数接続されて列をなしている。以下、
図1の方向Dにおいて、紙面上側を上流側といい、紙面下側を下流側という。なお、
図2では、方向Dにおいて、紙面右側を上流側といい、紙面左側を下流側という。また、列をなす人工光合成モジュール12のことを、人工光合成モジュール列Tという。
方向Dにおいて、隣接する人工光合成モジュール12同士では、方向Mでの水素用電解室14と酸素用電解室16の位置が逆に配置されている。これにより、方向Dで、水素用電解室14の下流側に酸素用電解室16に配置され、酸素用電解室16の下流側に水素用電解室14が配置される。
【0017】
人工光合成モジュール列Tにおいて、最上流側の人工光合成モジュール12の水素用電解室14側の列をT
1とし、最上流側の人工光合成モジュール12の酸素用電解室16側の列をT
2とする。各列T
1、列T
2毎に、水素用電解室14および酸素用電解室16に電解質水溶液AQを供給するための配管18が設けられている。
【0018】
列T
1においては、最上流側の水素用電解室14の注入口14aに配管18が接続され、水素用電解室14の排出口14bと、その下流側の酸素用電解室16の注入口16aとが配管18で接続されている。酸素用電解室16の排出口16bと、その下流側の水素用電解室14の注入口14aとが配管18で接続されており、水素用電解室14の排出口14bと、その下流側の酸素用電解室16の注入口16aとが配管18で接続されている。最下流の酸素用電解室16の排出口16bに配管18が接続されている。
列T
2では、列T
1に比して、水素用電解室14と酸素用電解室16との順序が逆である点、および最下流の水素用電解室14の排出口14bに配管18が接続されている点、以外は列T
1の構成と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0019】
人工光合成モジュール列Tにおいて、列T
1側では各水素用電解室14に水素を導出するための水素ガス配管20が接続され、各酸素用電解室16に酸素を導出するための酸素ガス配管22が接続されている。
人工光合成モジュール列Tにおいて、列T
2側では各水素用電解室14に水素ガスを導出するための水素ガス配管20が接続され、各酸素用電解室16に酸素ガスを導出するための酸素ガス配管22が接続されている。
なお、配管18、水素ガス配管20および酸素ガス配管22は、実際、容器13に接続されて水素用電解室14および酸素用電解室16と接続される。
【0020】
図2に示すように、人工光合成モジュール列Tは、平面Hに対して所定の角度θ傾斜させて配置されている。このため、配管18を介して供給される電解質水溶液AQは、自然に上流側から下流側に流れ、各人工光合成モジュール12の水素用電解室14および酸素用電解室16に供給される。電解質水溶液AQを供給するために、電解質水溶液AQが貯留されるタンク(図示せず)、タンクから電解質水溶液AQを配管18に送給するためのポンプ(図示せず)等を有する。これにより、電解質水溶液AQを所定の流量で、各人工光合成モジュール12の水素用電解室14と酸素用電解室16に供給することができる。
また、人工光合成アレイ10では、
図2に示すように、人工光合成モジュール12に水素ガス配管20および酸素ガス配管22側から光Lが照射される。
ここで、電解質水溶液AQとは、例えば、H
2Oを主成分とする液体であり、蒸留水であってもよく、水を溶媒とし溶質を含む水溶液であってもよい。水の場合、例えば、電解質を含む水溶液である電解液であってもよく、冷却塔等で用いられる冷却水であってもよい。電解液の場合、例えば、電解質を含む水溶液であり、例えば、強アルカリ(KOH)、ポリマー電解質(ナフィオン(登録商標))、0.1M硫酸ナトリウム電解液、0.1MのH
2SO
4を含む電解液、0.1Mリン酸水素二ナトリウム電解液、0.1Mリン酸カリウム緩衝液等である。
【0021】
次に、人工光合成モジュール12について詳細に説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態の人工光合成アレイを構成する人工光合成モジュールを示す模式的平面である。
図4は、本発明の第1の実施形態の人工光合成アレイを構成する人工光合成モジュールを示す模式的側面図であり、
図5は、本発明の第1の実施形態の人工光合成アレイを構成する人工光合成モジュールの構成を詳細に示す模式的断面図である。
図4は、
図3のA
2方向から見た模式的側面図であり、
図5は、
図3のB−B線による断面図である。
【0022】
図4に示すように、人工光合成モジュール12は、上述のように水素用電解室14と酸素用電解室16とが隔壁17により分離されている。
隔壁17は、水素用電解室14で生成された水素ガスと、酸素用電解室16で生成された酸素ガスとが混合されないように隔離するためのものである。このため、隔壁17は、上述の隔離機能を有するものであれば、その構成は、特に限定されるものではない。
なお、本発明では、後述するように人工光合成モジュール12の配置を変えることにより、水素用電解室14および酸素用電解室16のイオン濃度またはpH値を一定にすることができる。このため、隔壁17にはイオン濃度またはpH値を一定にする機能がなくてもよく、隔壁17として、イオン透過性およびガス非透過性を有するものである必要はない。
【0023】
図3〜5に示すように、人工光合成モジュール12は、平面状の絶縁性基板40上に、光電変換ユニット30を挟んで水素ガス生成部32と酸素ガス生成部34とが設けられた集積構造体である。光電変換ユニット30と水素ガス生成部32と酸素ガス生成部34とは絶縁性基板40上、すなわち、同一平面上に設けられている。光電変換ユニット30と水素ガス生成部32と酸素ガス生成部34とは電気的に接続されている。
【0024】
光電変換ユニット30は、光を受光して電力を発生させ水素ガス生成部32で水素ガスを発生させるための電力および酸素ガス生成部34で酸素ガスを発生させるための電力を供給するためのものである。
水素ガス生成部32は水素用電解室14内14cに配置され、酸素ガス生成部34は酸素用電解室16内16cに配置されている。
【0025】
人工光合成モジュール12は、例えば、絶縁性基板40上に、方向Mで直列接続された3つのpn接合セル36a〜36cが形成されている。
pn接合セル36a〜36cのうち、2つのpn接合セル36a、36bが光電変換素子として機能するものであり、光電変換ユニット30を構成する。残りのpn接合セル36cが水素ガス生成部32を構成する。
【0026】
絶縁性基板40は、絶縁性を有し、かつ光電変換ユニット30と水素ガス生成部32と酸素ガス生成部34とを支持することができる強度を有していれば、特に限定されるものではない。絶縁性基板40としては、例えば、ソーダライムガラス(SLG)基板またはセラミックス基板を用いることができる。また、絶縁性基板40には、金属基板上に絶縁層が形成されたものを用いることができる。ここで、金属基板としては、Al基板またはSUS基板等の金属基板、またはAlと、例えば、SUS等の他の金属との複合材料からなる複合Al基板等の複合金属基板が利用可能である。なお、複合金属基板も金属基板の一種であり、金属基板および複合金属基板をまとめて、単に金属基板ともいう。更には、絶縁性基板40としては、Al基板等の表面を陽極酸化して形成された絶縁層を有する絶縁膜付金属基板を用いることもできる。絶縁性基板40は、フレキシブルなものであっても、そうでなくてもよい。なお、上述のもの以外に、絶縁性基板40として、例えば、高歪点ガラスおよび無アルカリガラス等のガラス板、またはポリイミド材を用いることもできる。
【0027】
絶縁性基板40の厚さは、光電変換ユニット30と水素ガス生成部32と酸素ガス生成部34を支持することができれば、特に制限的ではなく、どのような厚さでもよいが、例えば、20〜20000μm程度あればよく、100〜10000μmが好ましく、1000〜5000μmがより好ましい。
なお、pn接合セル36a〜36cの光電変換層44に、CIGS系化合物半導体を含むものを用いる場合には、絶縁性基板40側に、アルカリイオン((例えば、ナトリウム(Na)イオン:Na
+)を供給するものがあると、pn接合セル36a、36bの光電変換効率が向上するので、絶縁性基板40の上面にアルカリイオンを供給するアルカリ供給層を設けておくのが好ましい。なお、例えば、SLG基板の場合には、アルカリ供給層は不要である。
【0028】
pn接合セル36a、36bは、絶縁性基板40側から順に、裏面電極42、光電変換層44、バッファ層46、透明電極48および保護膜50が積層されて構成されており、太陽電池に用いられる光電変換素子と同様の構成を有する。
pn接合セル36cは、絶縁性基板40側から順に、裏面電極42、光電変換層44およびバッファ層46が積層されて構成されている。
pn接合セル36a〜36cでは、光電変換層44とバッファ層46の界面においてpn接合が形成されている。なお、光電変換層44とバッファ層46でpn接合を有する無機半導体膜47を構成する。
【0029】
光電変換ユニット30は、2つのpn接合セル36a、36bが方向Mに直列に接続されているが、水素ガスおよび酸素ガスを発生させることができる起電力を得ることができれば、その数は限定されるものではなく、1つでも、3以上であってもよい。複数のpn接合セルを直列に接続する方が、高い電圧を得ることができるため、複数のpn接合セルを直列接続することが好ましい。
pn接合セル36a、36b間に、バッファ層46および光電変換層44を貫き裏面電極42の表面に達する開口溝P2が方向Mにおいて、分離溝P1の形成位置とは異なる位置に形成されている。開口溝P2に隔壁17が設けられている。
【0030】
人工光合成モジュール12では、pn接合セル36a、36bに保護膜50側から光が入射されると、この光が、保護膜50、各透明電極48および各バッファ層46を通過し、各光電変換層44で起電力が発生し、例えば、透明電極48から裏面電極42に向かう電流(正孔の移動)が発生する。このため、人工光合成モジュール12では、水素ガス生成部32が負極(電気分解のカソード)となり、酸素ガス生成部34が正極(電気分解のアノード)になる。
なお、人工光合成モジュール12における生成ガスの種類(極性)は、pn接合セルの構成および人工光合成モジュール12構成等に応じて適宜変わるものである。
【0031】
保護膜50は、弱酸性溶液および弱アルカリ性溶液に不溶であり、かつ光透過性、遮水性および絶縁性を兼ね備えるものである。
保護膜50は、透光性を有し、pn接合セル36a、36bを保護するため、具体的には、水素用電解室14内14cの水素ガス発生領域以外の部分、酸素用電解室16内16cの酸素ガス発生領域以外の部分を覆うように設けられるものである。具体的には、保護膜50は、透明電極48の全面およびpn接合セル36aの側面37を覆うものである。
保護膜50は、例えば、SiO
2、SnO
2、Nb
2O
5、Ta
2O
5、Al
2O
3およびGa
2O
3等により構成される。また、保護膜50の厚さは、特に限定されるものではなく、100〜1000nmであることが好ましい。
なお、保護膜50の形成方法は、特に限定されるものではなく、RFスパッタ法、DCリアクティブスパッタ法およびMOCVD法等により形成することができる。
また、保護膜50は、例えば、絶縁性エポキシ樹脂、絶縁性シリコーン樹脂、絶縁性フッ素樹脂等により構成できる。この場合、保護膜50の厚さは、特に限定されるものではなく、2〜1000μmが好ましい。
【0032】
水素ガス生成部32は、pn接合セル36cのバッファ層46の表面46aに機能層52が形成されている。機能層52の表面52aには、水素生成を促進するための助触媒54が、点在するように、島状に形成されている。
機能層52は、水素ガス生成部32を構成するものであり、透明導電性保護膜が用いられる。また、機能層52は、弱酸性溶液および弱アルカリ性溶液に不溶であり、かつ光透過性、遮水性および導電性を兼ね備えるものである。
なお、水素ガス生成部32で、水素用電解室14内14cに露出しているpn接合セル36aの側面37および機能層52の側面は、電解質水溶液AQと接触して短絡することを防ぐために保護膜50で覆われていることが好ましい。
【0033】
機能層52は、水分子からイオン化した水素イオン(プロトン)H
+に電子を供給して水素分子、すなわち、水素ガスを発生させる(2H
++2e
− ―>H
2)ものであり、その表面52aは、水素ガス生成面として機能する。したがって、機能層52は、水素ガス生成部32として機能し、その領域は水素ガスの発生領域を構成する。
機能層52は、例えば、金属または導電性酸化物(過電圧が0.5V以下)もしくはその複合物であることが好ましい。より具体的には、機能層52は、ITO、Al、B、Ga、およびIn等がドープされたZnO、またはIMO(Moが添加されたIn
2O
3)等の透明電極48と同様な透明導電膜を用いることができる。機能層52も、透明電極48と同様に、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造でもよい。また、機能層52の厚さは、特に限定されるものではなく、好ましくは、10〜1000nmであり、50〜500nmがより好ましい。
なお、機能層52の形成方法は、透明電極48と同様に、特に限定されるものではなく、電子ビーム蒸着法、スパッタ法およびCVD法等の気相成膜法または塗布法により形成することができる。
【0034】
助触媒54は、例えば、Pt、Pd、Ni、Au、Ag、Ru、Cu、Co、Rh、Ir、Mn等により構成される単体、およびそれらを組み合わせた合金、ならびにその酸化物、例えば、NiOxおよびRuO
2が挙げられる。また、助触媒54のサイズは、特に限定されるものではなく、0.5nm〜1μmであることが好ましい。
なお、助触媒54の形成方法は、特に限定されるものではなく、塗布焼成法、光電着法、スパッタ法、含浸法等により形成することができる。
【0035】
機能層52の表面52aに助触媒54を設けることが好ましいが、十分な水素ガスの生成が可能である場合には、設けなくてもよい。
また、バッファ層46の表面46aに形成された機能層52の表面52aに、助触媒54が点在するように形成されているが、本発明は、これに限定されず、機能層52を設けることなく、バッファ層46の表面46aに直接、助触媒54を点在するように島状に形成してもよい。
この場合には、バッファ層46が、n型半導体として機能すると共に、水素生成用電極として機能し、その表面46aが水素ガス生成面として機能する。したがって、バッファ層46は、水素ガス生成部32として機能し、その領域は、水素ガスの発生領域を構成する。
【0036】
酸素ガス生成部34は、右端のpn接合セル36aの裏面電極42の延長部分の領域43で構成され、この領域43が、酸素ガスの発生領域となる。
具体的には、pn接合セル36aの裏面電極42の延長部分の領域43は、水分子からイオン化した水酸イオンOH
−から電子を取り出して酸素分子、すなわち、酸素ガスを発生させる(2OH
− ―>H
2O+O
2/2+2e
−)酸素ガス生成部34であり、表面43aはガス生成面として機能する。
裏面電極42の領域43の表面43aには、酸素生成用の助触媒56が、点在するように、島状に形成されている。
酸素生成用の助触媒56は、例えば、IrO
2、CoO
x等により構成される。また、酸素生成用の助触媒56のサイズは、特に限定されるものではなく、0.5nm〜1μmであることが好ましい。
なお、酸素生成用の助触媒56の形成方法は、特に限定されるものではなく、塗布焼成法、浸漬法、含浸法、スパッタ法および蒸着法等により形成することができる。
【0037】
以下、光電変換ユニット30を構成する各部について説明する。
裏面電極42は、例えば、Mo、CrおよびW等の金属、またはこれらを組み合わせたものにより構成される。この裏面電極42は、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造でもよい。この中で、裏面電極42は、Moで構成することが好ましい。裏面電極42の膜厚は、一般的に、その厚さが800nm程度であるが、裏面電極42は厚さが400nm〜1μmであることが好ましい。
【0038】
上述のように、pn接合セル36a、36bは光電変換素子として機能するものであり、光電変換層44とバッファ層46を有する。
光電変換層44は、バッファ層46との界面で、光電変換層44側をp型、バッファ層46側をn型とするpn接合を形成し、保護膜50、透明電極48およびバッファ層46を透過して到達した光を吸収して、p側に正孔を、n側に電子を生じさせる層である。光電変換層44は、光電変換機能を有する。光電変換層44では、pn接合で生じた正孔を光電変換層44から裏面電極42側に移動させ、pn接合で生じた電子をバッファ層46から透明電極48側に移動させる。光電変換層44の膜厚は、好ましくは0.5〜3.0μmであり、1.0〜2.0μmが特に好ましい。
【0039】
光電変換層44は、例えば、カルコパイライト結晶構造を有するCIGS系化合物半導体またはCZTS系化合物半導体で構成されるのが好ましい。すなわち、光電変換層44はCIGS系化合物半導体層で構成することが好ましい。CIGS系化合物半導体層は、Cu(In,Ga)Se
2(CIGS)のみならず、CuInSe
2(CIS)、CuGaSe
2(CGS)等のCIGS系に利用される公知のもので構成されていてもよい。
なお、CIGS層の形成方法としては、1)多源蒸着法、2)セレン化法、3)スパッタ法、4)ハイブリッドスパッタ法、および5)メカノケミカルプロセス法等が知られている。
その他のCIGS層の形成方法としては、スクリーン印刷法、近接昇華法、MOCVD法、およびスプレー法(ウェット成膜法)等が挙げられる。例えば、スクリーン印刷法(ウェット成膜法)またはスプレー法(ウェット成膜法)等で、Ib族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含む微粒子膜を基板上に形成し、熱分解処理(この際、VIb族元素雰囲気での熱分解処理でもよい)を実施する等により、所望の組成の結晶を得ることができる(特開平9−74065号公報、特開平9−74213号公報等)。
【0040】
本発明においては、上述したように、光電変換層44は、例えば、カルコパイライト結晶構造を有するCIGS系化合物半導体やCZTS系化合物半導体で構成されるのが好ましいが、これに限定されず、無機半導体からなるpn接合を形成でき、水の光分解反応を生じさせ、水素ガスおよび酸素ガスを発生できれば、如何なる光電変換素子でもよい。例えば、太陽電池を構成する太陽電池セルに用いられる光電変換素子が好ましく用いられる。このような光電変換素子としては、CIGS系薄膜型光電変換素子、CIS系薄膜型光電変換素子や、CZTS系薄膜型光電変換素子に加え、薄膜シリコン系薄膜型光電変換素子、CdTe系薄膜型光電変換素子、色素増感系薄膜型光電変換素子、または有機系薄膜型光電変換素子を挙げることができる。
なお、光電変換層44を形成する無機半導体の吸収波長は、光電変換可能な波長域であれば、特に限定されるものではない。吸収波長としては、太陽光等の波長域、特に、可視波長域から赤外波長域を含んでいればよいが、その吸収波長端は800nm以上、すなわち、赤外波長域までを含んでいることが好ましい。その理由は、できるだけ多くの太陽光エネルギーを利用できるからである。一方、吸収波長端が長波長化することは、すなわち、バンドギャップが小さくなることに相当し、これは水分解をアシストするための起電力が低下することが予想でき、その結果、水分解のために直列接続する接続数が増すことが予想できるので、吸収端が長ければ長い方がよいというわけでもない。
【0041】
バッファ層46は、光電変換層44と共にpn接合を有する無機半導体膜47を構成する。すなわち、光電変換層44との界面でpn接合を形成する。また、バッファ層46は、透明電極48の形成時の光電変換層44を保護し、透明電極48に入射した光を光電変換層44まで透過させるために形成されたものである。
バッファ層46は、例えば、具体的には、CdS、ZnS,Zn(S,O)、および/またはZn(S,O,OH)、SnS,Sn(S,O)、および/またはSn(S,O,OH)、InS,In(S,O)、および/またはIn(S,O,OH)等の、Cd,Zn,Sn,Inからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属硫化物を含むことが好ましい。バッファ層46の膜厚は、10nm〜2μmが好ましく、15〜200nmがより好ましい。バッファ層46の形成には、例えば、化学浴析出法(以下、CBD法という)により形成される。
なお、バッファ層46と透明電極48との間には、例えば、窓層を設けてもよい。この窓層は、例えば、厚さ10nm程度のZnO層で構成される。
【0042】
透明電極48は、透光性を有し、光を光電変換層44に取り込むと共に、裏面電極42と対になって、光電変換層44で生成された正孔および電子を移動させる(電流が流れる)電極として機能すると共に、2つのpn接合セル36a、36bを直列接続するための透明導電膜として機能するものである。
透明電極48は、例えばAl、B、Ga、In等がドープされたZnO、またはITOにより構成される。透明電極48は、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造でもよい。また、透明電極の厚さは、特に限定されるものではなく、0.3〜1μmが好ましい。
なお、透明電極の形成方法は、特に限定されるものではなく、電子ビーム蒸着法、スパッタ法およびCVD法等の気相成膜法または塗布法により形成することができる。
【0043】
なお、隣接するpn接合セル36a、36bを直列接続するための透明導電膜としては、透明電極48に限定されるわけではないが、製造上の容易さから透明電極48と同じ透明導電膜で同時に形成することがよい。
すなわち、光電変換層44上に、バッファ層46を積層した後、裏面電極42の表面に達する開口溝P2をレーザースクライブまたはメカニカルスクライブにより形成し、バッファ層46上に、かつ開口溝P2を埋めるように透明電極48を構成する透明導電膜を形成し、その後、各開口溝P2内の透明導電膜の図中右側部分をスクライブにより除去して裏面電極42の表面に達する、少し小さい開口溝P2を再度形成し、隣接するpn接合セル36a、36bの裏面電極42と透明電極48とを直接接続する導電膜として残すことにより、隣接するpn接合セル36a、36bを直列接続するための導電膜を形成することができる。
【0044】
次に、人工光合成モジュール12の製造方法について説明する。
なお、人工光合成モジュール12の製造方法は、以下に示す製造方法に限定されるものではない。
まず、例えば、絶縁性基板40となるソーダライムガラス基板を用意する。
次に、絶縁性基板40の表面に裏面電極42となる、例えば、Mo膜等を成膜装置を用いて、スパッタ法により形成する。
次に、例えば、レーザースクライブ法を用いて、Mo膜の所定位置をスクライブして、絶縁性基板40の幅方向に伸びた分離溝P1を形成する。これにより、分離溝P1により互いに分離された裏面電極42が形成される。
【0045】
次に、裏面電極42を覆い、かつ分離溝P1を埋めるように、光電変換層44として、例えば、CIGS膜(p型半導体層)を形成する。このCIGS膜は、前述のいずれか成膜方法により、形成される。
次に、光電変換層44上にバッファ層46となる、例えば、CdS層(n型半導体層)をCBD法により形成する。
次に、方向Mにおいて、分離溝P1の形成位置とは異なる位置に、絶縁性基板40の幅方向に伸び、かつバッファ層46から光電変換層44を経て裏面電極42の表面42aに達する2つの開口溝P2を形成する。この場合、スクライブ方法としては、レーザースクライブ法またはメカスクライブ法を用いることができる。
【0046】
次に、絶縁性基板40の幅方向に伸び、かつバッファ層46上に、開口溝P2を埋めるように、透明電極48となる、例えば、Al、B、Ga、Sb等が添加されたZnO:Al層を、スパッタ法または塗布法により形成する。
次に、開口溝P2内のZnO:Al層の一部を、図中右側の一部を残すようにして除去し、裏面電極42の表面に達する2つの少し幅の狭い開口溝P2を再び形成する。この場合も、スクライブ方法としては、レーザースクライブ法またはメカスクライブ法を用いることができる。このようにして、3つのpn接合セル36a〜36cが形成される。
【0047】
次に、光電変換ユニット30を構成するpn接合セル36a、36bの外面と、2つの開口溝P2の底面の裏面電極42の表面と、pn接合セル36cの側面37に保護膜50となる、例えば、SiO
2膜をRFスパッタ法で形成する。
次に、pn接合セル36aとpn接合セル36bとの間で、開口溝P2に相当する位置に再度、溝を形成し、この溝に隔壁17を設ける。
次に、pn接合セル36cのZnO:Al層を、レーザースクライブ法またはメカスクライブ法を用いて剥離し、露出したバッファ層46の表面46aに、機能層52として、例えば、Al、B、Ga、Sb等が添加されたZnO:Al層を、パターニングマスクを用いたスパッタ法、または塗布法により形成する。
次に、機能層52上に、例えば、光電着法にて水素生成用の助触媒54となる、例えば、Pt助触媒を担持させる。
【0048】
次に、pn接合セル36aの裏面電極42の延長部分の領域43上の堆積物を、レーザースクライブ法またはメカスクライブ法を用いて取り除き、領域43を露出させる。
そして、領域43の表面43aに、例えば、浸漬法にて酸素生成用の助触媒56となる、例えば、CoO
x助触媒を担持させる。
絶縁性基板40と略同じ大きさの容器13を用意し、この容器13内に、光電変換ユニット30、水素ガス生成部32および酸素ガス生成部34が形成された絶縁性基板40を収納する。これにより、隔壁17で水素用電解室14および酸素用電解室16が形成される。
このようにして、人工光合成モジュール12を製造することができる。
【0049】
なお、人工光合成モジュール12は、上述の例とは、水素ガス生成部32と酸素ガス生成部34の配置が、逆のものがあるが、これは、人工光合成モジュール12の向きを変えて配置することにより、実現することができるため、製造方法が変わるものではない。
人工光合成モジュール12を、所定数配置し所定の角度θ傾け、容器13に配管18、水素ガス配管20および酸素ガス配管22を接続することにより、人工光合成アレイ10を製造することができる。
【0050】
本実施形態の人工光合成アレイ10では、各人工光合成モジュール12に、光L(
図2参照)を照射し、例えば、水素ガス生成部32の水素生成用の助触媒54が形成された面(機能層52の表面52a)と、酸素ガス生成部34の酸素生成用の助触媒56が形成された面(領域43の表面43a)とに対して平行になるように電解質水溶液AQを供給する。
光L(
図2参照)の照射により、光電変換ユニット30で起電力が生じ、光電変換ユニット30の電力により、各水素用電解室14で電解質水溶液AQが分解されて水素ガスが発生し、水素ガス配管20を介して上流側に移動し、回収される。各酸素用電解室16では電解質水溶液AQが分解されて酸素ガスが発生し、酸素ガス配管22を介して上流側に移動し、回収される。このとき、人工光合成モジュール列Tは、所定の角度θ傾斜しているため、電解質水溶液AQは下流側の人工光合成モジュール12に流れる。また、角度θ傾斜していることにより、水素ガスおよび酸素ガスは上流側に移動しやすい。
【0051】
本実施形態の人工光合成アレイ10は、複数の人工光合成モジュール12を用いて、上流側から水素用電解室14、酸素用電解室16の順、または酸素用電解室16、水素用電解室14の順で、水素用電解室14と酸素用電解室16とを交互に接続している。このように接続することで、水から水素ガス、酸素ガスの順、または水から酸素ガス、水素ガスの順でガスが生成される。これにより、水中のイオン濃度またはpH値に差異の発生を抑制でき、水分解能の低下も抑制することができる。このようにして、人工光合成アレイ10の系全体で、水中のイオン濃度またはpH値を一定に保つことができる。しかも、隔壁としてイオン交換膜を設ける必要もない。
また、人工光合成アレイ10は、角度θ傾斜しているため、各水素ガス生成部32で発生した水素ガスが、水素用電解室14内14cの上方に上がり、水素ガス配管20を介して、上流側の人工光合成モジュール12側に移動し、水素ガスを容易に回収することができる。同様に、各酸素ガス生成部34で発生した酸素ガスが、酸素用電解室16内16cの上方に上がり、酸素ガス配管22を介して、上流側の人工光合成モジュール12側に移動し、酸素ガスを容易に回収することができる。
【0052】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態の人工光合成アレイを示す模式的平面図であり、
図7は、
図6に示す第2の実施形態の人工光合成アレイの側面図である。なお、
図7は、
図6に示す人工光合成アレイ10aをA
3方向から見た側面図である。
【0053】
本実施形態の人工光合成アレイ10aは、
図1および
図2に示す人工光合成アレイ10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、人工光合成アレイ10aは人工光合成モジュール60を有し、この人工光合成モジュール60において、
図3〜
図5に示す人工光合成モジュール12と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0054】
図1に示す人工光合成アレイ10aは、
図1および
図2に示す人工光合成アレイ10と比して、人工光合成モジュール60の構成および人工光合成モジュール60の配置形態が異なる点、ならびに配管18、水素ガス配管20および酸素ガス配管22の接続形態が異なる点以外は、
図1および
図2に示す人工光合成アレイ10と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
以下、
図6の方向Dにおいて、紙面上側を上流側といい、紙面下側を下流側という。なお、
図7では、方向Dにおいて、紙面右側を上流側といい、紙面左側を下流側という。
【0055】
図6、
図7に示す人工光合成アレイ10aにおいて、水素用電解室14と酸素用電解室16とが方向Jで積層されて隔離された構成の人工光合成モジュール60が用いられる。人工光合成アレイ10aでは、人工光合成モジュール60が1列に配置されて、人工光合成モジュール列Tをなす。
図7に示すように、人工光合成モジュール60は、水素用電解室14を平面Hと反対に向け、かつ人工光合成モジュール列Tを、平面Hに対して所定の角度θ傾斜させて配置されている。
【0056】
人工光合成モジュール列Tにおいて、
図6、
図7に示すように、最上流側の人工光合成モジュール60の水素用電解室14の注入口14aに配管18が接続され、水素用電解室14の排出口14bと、その下流側の酸素用電解室16の注入口16aとが配管18で接続されている。酸素用電解室16の排出口16bと、その下流側の水素用電解室14の注入口14aとが配管18で接続されており、水素用電解室14の排出口14bと、その下流側の酸素用電解室16の注入口16aとが配管18で接続されている。最下流の酸素用電解室16の排出口16bに配管18が接続されている。
【0057】
また、
図6、
図7に示すように、最上流側の人工光合成モジュール60の酸素用電解室16の注入口16aに配管18が接続され、酸素用電解室16の排出口16bと、その下流側の水素用電解室14の注入口14aとが配管18で接続されている。水素用電解室14の排出口14bと、その下流側の酸素用電解室16の注入口16aとが配管18で接続されている。酸素用電解室16の排出口16bと、その下流側の水素用電解室14の注入口14aとが配管18で接続されている。最下流の水素用電解室14の排出口14bに配管18が接続されている。
本実施形態では、
図7に示すように側面から見た場合、配管18が交差するように接続されている。
また、人工光合成アレイ10aでは、
図7に示すように、人工光合成モジュール60に水素用電解室14側から光Lが照射される。
【0058】
図8は、本発明の第2の実施形態の人工光合成アレイを構成する人工光合成モジュールを示す模式的平面であり、
図9は、本発明の第2の実施形態の人工光合成アレイを構成する人工光合成モジュールを示す模式的側面図であり、
図10は、本発明の第2の実施形態の人工光合成アレイを構成する人工光合成モジュールの構成を詳細に示す模式的断面図である。
図9は、
図8のA
4方向から見た模式的側面図であり、
図10は、
図8のC−C線による断面図である。
【0059】
図8〜10に示す人工光合成モジュール60は、
図3〜5に示す人工光合成モジュール12に比して、隔壁17が設けられていない点、光電変換ユニット30、水素ガス生成部32および酸素ガス生成部34の配置位置が異なり互いに逆の面に設けられている点、および酸素ガス生成部34の構成が異なる点以外の構成は、
図3〜5に示す人工光合成モジュール12と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
人工光合成モジュール60では、酸素ガス生成部34は、裏面電極42の延長部分の領域43ではなく、pn接合セル36aの光電変換層44の裏面44bに導電膜62が設けられており、この導電膜62の表面62aに、酸素生成用の助触媒56が、点在するように、島状に形成されている。水素ガス生成部32と酸素ガス生成部34とは、同一平面上ではなく絶縁性基板40に対して逆の面に設けられている。
導電膜62は、導電性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、裏面電極42と同じ材料を用いることができる。
【0060】
次に、人工光合成モジュール60の製造方法について説明する。なお、人工光合成モジュール60の製造方法は、以下に示す製造方法に限定されるものではない。
また、人工光合成モジュール60の製造方法においては、第1の実施形態の人工光合成モジュール12の製造方法と同様の工程については、その詳細な説明は省略する。
人工光合成モジュール60の製造方法では、まず、例えば、絶縁性基板40となるソーダライムガラス基板を用意し、その後、隔壁17を設ける工程以外、保護膜50を形成し、光電変換ユニット30を形成する工程、機能層52を形成し、この機能層52上に水素生成用の助触媒54を形成する工程までは、人工光合成モジュール12の製造方法と同様の工程であるため、その詳細な説明は省略する。
【0061】
その後、pn接合セル36aの光電変換層44に相当する位置にある絶縁性基板40および裏面電極42を取り除き、光電変換層44の裏面44bを露出させる。
その後、例えば、パターニングマスクを用いたスパッタ法により、導電膜62を光電変換層44の裏面44b上に形成する。
その後、導電膜62の表面62aに、例えば、浸漬法にて酸素生成用の助触媒56となる、例えば、CoO
x助触媒を担持させる。
【0062】
そして、絶縁性基板40と略同じ大きさの容器13を用意し、この容器13内に、光電変換ユニット30、水素ガス生成部32および酸素ガス生成部34が形成された絶縁性基板40を収納する。これにより、絶縁性基板40で、方向Jに隔離された水素用電解室14および酸素用電解室16が形成される。このようにして、人工光合成モジュール60を製造することができる。
なお、容器13は、光電変換ユニット30に光を照射させるために、透光性を有する必要がある。なお、透光性の規定については、光電変換ユニット30が光を受光して電解質水溶液AQを分解して水素ガスおよび酸素ガスを得ることができれば、特に限定されるものではない。
【0063】
本実施形態の人工光合成アレイ10aでも、各人工光合成モジュール60に、光L(
図7参照)を照射し、水素ガス生成部32および酸素ガス生成部34に、それぞれ電解質水溶液AQを供給する。光L(
図7参照)の照射により、光電変換ユニット30で起電力が生じ、光電変換ユニット30の電力により、各水素用電解室14で電解質水溶液AQが分解されて水素ガスが発生し、水素ガス配管20を介して上流側に移動し、回収される。各酸素用電解室16では電解質水溶液AQが分解されて酸素ガスが発生し、酸素ガス配管22を介して上流側に移動し、回収される。この場合でも、人工光合成モジュール列Tは、所定の角度θ傾斜しているため、電解質水溶液AQは下流側の人工光合成モジュール60に流れる。また、角度θ傾斜していることにより、水素ガスおよび酸素ガスは上流側に移動しやすい。
【0064】
本実施形態の人工光合成アレイ10aにおいても、第1の実施形態の人工光合成アレイ10と同じく、複数の人工光合成モジュール12を用いており、上流側から水素用電解室14、酸素用電解室16の順、または酸素用電解室16、水素用電解室14の順で、水素用電解室14と酸素用電解室16とを交互に接続している。このように接続することで、水から水素ガス、酸素ガスの順、または酸素ガス、水素ガスの順でガスが生成される。これにより、水中のイオン濃度またはpH値に差異の発生を抑制でき、水分解能の低下も抑制することができる。このようにして、人工光合成アレイ10aの系全体で、水中のイオン濃度またはpH値を一定に保つことができる。しかも、隔壁としてイオン交換膜を設ける必要もない。
また、本実施形態においても、第1の実施形態と同じく、角度θ傾斜しているため、上述のように、水素ガスおよび酸素ガスを容易に回収することができる。
【0065】
第1の実施形態の人工光合成モジュール12では、水素ガス生成部32の水素生成用の助触媒54が形成された面(機能層52の表面52a)と、酸素ガス生成部34の酸素生成用の助触媒56が形成された面(領域43の表面43a)とに対して平行になるように電解質水溶液AQを供給していたが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、
図11(a)に示すように、水素ガス生成部32の水素生成用の助触媒54が形成された面(機能層52の表面52a)と、酸素ガス生成部34の酸素生成用の助触媒56が形成された面(領域43の表面43a)とを、方向Dに対して下流側を上げるようにして基準面Hsに対して所定の角度α傾斜させてもよい。この場合、絶縁性基板40を容器13内で角度α傾斜させて配置させる。これにより、電解質水溶液AQの水流fqが、水素ガス生成部32の水素生成用の助触媒54が形成された面(機能層52の表面52a)および酸素ガス生成部34の酸素生成用の助触媒56が形成された面(領域43の表面43a)に当った際に、生成されたガスを、各面から取り除くことができる。これにより、各面と電解質水溶液AQとの接触面積の低下を抑制することができ、より効率よく水素ガスおよび酸素ガスを回収することができる。
【0066】
また、第2の実施形態の人工光合成モジュール60は、上述のように水素ガス生成部32と酸素ガス生成部34とは絶縁性基板40に対して逆の面に設けられている。方向Dに対して下流側を下げるようにして、基準面Hsに対して絶縁性基板40を所定の角度β傾斜させると、
図11(b)に示すようになる。この場合においても、酸素ガス生成部34の酸素生成用の助触媒56が形成された面(導電膜62の表面62a)に当った際に、生成されたガスを、酸素生成用の助触媒56が形成された面(導電膜62の表面62a)から取り除くことができる。これにより、酸素生成用の助触媒56が形成された面(導電膜62の表面62a)と電解質水溶液AQとの接触面積の低下を抑制することができ、より効率よく水素ガスおよび酸素ガスを回収することができる。
人工光合成モジュール60において、角度β傾斜させる際には、導電膜62の表面62aを傾斜させることが好ましい。この場合、まず、導電膜62を形成した後、その表面62aを機械的または化学的に削ることにより、斜面に形成する。
【0067】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の人工光合成アレイについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。