(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記界面活性剤は、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、及びドデシル硫酸ナトリウムの群より選ばれた少なくとも一種以上である
請求項2に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
一般に、混合物を分離、精製する簡単な方法として、濾過、再結晶、蒸留、抽出、吸着(イオン交換)等の手段が従来から用いられている。これらはいずれも、異相間(液相−固相、気相−固相、液相−液相、気相−液相)の物質の分配平衡を利用して目的物を分離・分取する方法である。
【0003】
このうち、イオン交換法は、液相−固相間の異相平衡を利用するが、溶液中の化学種、特にイオン種を効率よく分離する方法として広く用いられている。例えば、海水、地下水、地熱水などに溶存している有用金属の回収、半導体製造等のハイテク産業に求められる超純水の製造、産業廃液らの有害成分除去などにイオン交換樹脂は用いられている。
【0004】
イオン交換樹脂をその機能から分類すると陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂に大別され、陰イオン交換樹脂の構造としては、プラスの電荷を持った置換基が導入されている。特に白金族元素を回収する際には、塩化物イオン共存下で強酸化することによって白金族元素をクロロ錯体として塩化物溶液中に浸出する方法が一般的である。
【0005】
このような塩化物溶液中から、イオン交換法を用いて白金族元素を他の共存元素と分離して回収する方法としては、例えば、陰イオン交換樹脂を用いる方法が広く採用されている。具体的には、水酸基を持たない第四級アンモニウム塩型陰イオン交換樹脂を用いる方法がある(特許文献1)。
【0006】
しかし、第四級アンモニウムを有するイオン交換樹脂は、その還元性の高さから塩化物イオンが還元分解されてしまい、効率よく回収することが困難であるという課題を抱えている。
【0007】
一方、特許文献2に、疎水性モノマーをセルロース系基材にグラフト重合させる陰イオン交換樹脂の製造方法が開示されているが、水系廃液から金属元素を効率よく回収するには、セルロース系基材そのものの吸湿性が問題となり、使用可能時間が限られるという問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る白金族元素回収用樹脂の製造方法の具体的な実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
≪白金族元素回収用樹脂≫
先ず、白金族元素回収用樹脂について説明する。
【0018】
白金族元素回収用樹脂とは、白金族元素を回収することのできる樹脂である。白金、パラジウムなどの白金族元素の回収に好適な白金族元素回収用樹脂としては例えば、陰イオン交換樹脂を適用できる。この陰イオン交換樹脂の構造としては、主鎖となる基材に非吸湿性を有するポリエチレンを基材として使用する。安価でかつ非吸湿性を有するポリエチレンを基材として使用することで、安価でかつ長期使用が可能で安定した白金族元素回収用樹脂とすることができる。なお、ポリエチレンとしては、グラフト重合の効率を考慮して、低密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0019】
そして、白金族元素を効率よく吸着させるためには、最も塩化物イオンの還元性の低い第一級アミンを導入することが重要である。第一級アミンを導入することで、塩化物イオンが還元されることを抑制し、効率よく白金族元素を回収することができる。第一級アミンを導入することで、従来の第四級アンモニウムを有する白金族元素回収用樹脂で問題となった、塩化物イオンが還元されて白金族元素を回収できないという課題を解消できる。
【0020】
また、この第一級アミンを効率よく導入するために、ポリエチレン基材上に、グリシジルメタクリレートをグラフト重合させる。グラフト重合の方法としては、電子線照射によるグラフト重合を効率よく適用することができる。本発明の樹脂は、下記一般式(1)によって算出されるグラフト率が60〜90%であることが好ましい。60%未満では、グラフトの効果が見られず、90%を超えても、吸着効果が増加しないため、この範囲内とすることが好ましい。
【0021】
グラフト率(%)=((W
g−W
0)/W
0)×100 ・・・ (1)
(但し、Wg はグラフト後の樹脂質量で、W
0はグラフト前の樹脂質量である。)
【0022】
≪白金族元素回収用樹脂の製造方法≫
本実施の形態に係る白金族回収用樹脂の製造方法について説明する。
【0023】
先ず、本実施の形態に係る製造方法により白金族元素回収用樹脂を得るための反応式を示す。なお、下記の反応式では、一級アミンを有するジアミン化合物としてエチレンジアミン(EDA)を用いた場合を一例として示す。
【0025】
上記反応式に示すように、本発明に係る白金族元素回収用樹脂の製造方法は、ポリエチレン基材(PE)を電子線(EB)を照射する電子線照射工程(I)、電子線照射されたポリエチレン基材をグリシジルメタクリレートによってグラフト重合させるグラフト重合工程(II)及びグラフト重合されたポリエチレン基材を第一級アミンを有するジアミン化合物又はポリアミン化合物によって、第一級アミンを導入する第一級アミン導入工程(III)を含む。
【0026】
[電子線照射工程(I)]
電子線照射工程(I)では、ポリエチレン基材に対して電子線を照射する。この電子線照射工程において、ポリエチレン基材に電子線を照射させることで、ポリエチレン基材を活性化させ、ポリエチレン基材にグラフト重合させるための反応活性点を生成させる。これにより、次工程において、ポリエチレン基材に対してグリシジルメタクリレートをグラフト重合させることができる。
【0027】
ポリエチレン基材としては、ポリエチレン構造を有していれば特に限定されるものではないが、後述するグラフト重合の効率を考慮して、低結晶性である低密度ポリエチレンであることが好ましい。ここで、低密度ポリエチレンとは、旧JIS K6748:1995の通り、密度0.910g/cm
3以上、0.930g/cm
3未満のポリエチレンである。低密度ポリエチレンを基材として用いることにより、後述するグラフト重合工程(II)においてその低い結晶性から、高いグラフト率を実現することができる。なお、グラフト率は、ポリエチレン基材に対するグラフト重合により導入されたグリシジルメタクリレートの量(質量百分率)によるものであり、後で示す式(1)で算出される値である。
【0028】
また、ポリエチレン基材は、ポリエチレンのみからなるものであることが好ましいが、吸着性能に悪影響を与えない限り他の成分が含まれていてもよい。
【0029】
また、ポリエチレン基材の形状は、特に限定されるものではないが、白金族元素回収用樹脂として使用することから、球形、楕円形、不定径破砕形状等の粒子状であることが好ましく、機械的強度の観点から、球形であることがより好ましい。
【0030】
ポリエチレン基材に照射する電子線は、ポリエチレン基材を活性させることができるのに充分な線量であればよいが、1〜200kGyで照射することが好ましく、100〜150kGyで照射することがより好ましい。このような範囲にすることで、グラフト重合させるための反応活性点を十分に生成させることができるとともに、ポリエチレン基材の分子の切断による損傷が生じることがないため好ましい。
【0031】
電子線の照射は、酸素を除去した環境下で照射することが好ましい。酸素を除去した環境下で照射することで、反応活性点を安定化させることができるため、グラフト重合を容易に進行させることができる。
【0032】
[グラフト重合工程(II)]
グラフト重合工程(II)では、電子線照射されたポリエチレン基材をグリシジルメタクリレート(GMA)によってグラフト重合させる。
【0033】
本実施形態においては、電子線照射されたポリエチレン基材をグリシジルメタクリレート(GMA)でグラフト重合させてエポキシ基を導入することを特徴とする。エポキシ基を導入することで、後述する第一級アミン導入工程において第一級アミンをポリエチレン基材に効率よく導入することができる。
【0034】
グリシジルメタクリレートによってグラフト重合することで導入されるグラフト鎖のグラフト率(下記式(1))としては、60〜90%であることが好ましい。グラフト率が60〜90%であることにより、得られる陰イオン交換樹脂のアミノ基密度を高くすることができる。そして、このことにより、より吸着能力の高い白金族元素回収用樹脂を得ることができる。グラフト率が60%未満では、グラフトの効果が見られず、グラフト率が90%を超えても、白金族元素の吸着効果が向上しないため、この範囲内とすることが好ましい。
【0035】
グラフト率(%)=((W
g−W
0)/W
0)×100 ・・・(1)
(但し、W
gはグラフト後の樹脂質量で、W
0はグラフト前の樹脂質量である。)
【0036】
ポリエチレン系基材へのグラフト重合においては、水系エマルジョン下で行うことが好ましい。水系エマルジョンであることにより、有機溶媒を使用しないため、プロセスのコスト低減、環境に対する負荷の低減、及び、プロセスの安全性向上の点から好ましい。
【0037】
具体的には、例えば、予めグリシジルメタクリレートと界面活性剤と水とを混合して室温で撹拌し、エマルジョン溶液であるグリシジルメタクリレート溶液を作製し、その後、そのエマルジョン溶液と電子線照射されたポリエチレン基材とを混合して反応させることにより、グラフト重合させる。なお、グリシジルメタクリレートは、エマルション液中の濃度として3〜10質量%であることが好ましい。
【0038】
エマルション化に用いられる界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ドデシル硫酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、及びソルビタン脂肪酸エステル類(Span80、Span20など)より選ばれた少なくとも1種以上を使用することが好ましい。
【0039】
グラフト重合工程におけるグラフト重合反応は、例えば、グリシジルメタクリレート溶液をアルゴンガスで置換して、その水溶液と電子線照射したポリエチレン基材とを混合して行うことが好ましい。
【0040】
[第一級アミン導入工程(III)]
第一級アミン導入工程(III)では、グリシジルメタクリレートがグラフト重合されたポリエチレン基材に、第一級アミンを有するジアミン化合物又はポリアミン化合物によって第一級アミンを導入する。
【0041】
第一級アミン導入工程では、グラフト重合されたポリエチレン基材に、第一級アミンを有するジアミン化合物又はポリアミン化合物が反応する。ポリエチレン基材のポリグリシジルメタクリレート中のエポキシ基が第一級アミンを有するジアミン化合物又はポリアミン化合物のいずれかの窒素と反応し結合を形成する。そして、グラフト重合されたポリエチレン基材のグリシジルメタクリレート基の末端に導入することができる。
【0042】
ここで、白金族元素を効率よく吸着させるためには、最も塩化物イオンの還元性の低い第一級アミンをポリエチレン基材のエポキシ基の末端に導入することが重要となる。このように第一級アミンを導入することで、塩化物溶液中の塩化物イオンが還元されることを抑制し、効率よく白金族元素を回収することができる。そのため、従来の第四級アンモニウムを有する白金族元素回収用樹脂で問題となった、塩化物イオンが還元されて白金族元素を回収できないという課題を解消できる。
【0043】
第一級アミンを有するジアミン化合物又はポリアミン化合物としては、第一級アミンを2個以上有する化合物であることが好ましい。上述したように、本実施形態においては、当該ポリエチレン基材のエポキシ基に第一級アミンを導入されることを特徴とする。そのため、例えば、第一級アミンを1個のみ有する当該アミン化合物を用いた場合には、第一級アミン由来の窒素がエポキシ基と反応し、ポリエチレン基材のエポキシ基の末端に第一級アミン以外の窒素を有する官能基が配置される場合がある。したがって、第一級アミンを有する当該アミンの中でも第一級アミンを2個以上有するジアミン又ポリアミンを用いることがより好ましい。また、第一級アミンはNH
2基であることがグラフト重合後の安定性及び反応性の観点からより好ましい。
【0044】
第一級アミンを有するジアミン化合物又はポリアミン化合物としては、例えば脂肪族ジアミン、又は脂肪族ポリアミンなどが挙げられる。脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカンなどが挙げられる。その中でも、エポキシ基との反応性の観点からエチレンジアミンを好ましく用いることができる。
【0045】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどが挙げられる。その中でも、エポキシ基との反応性の観点からジエチレントリアミンを好ましく用いることができる。
【0046】
グラフト重合されたポリエチレン基材に当該アミン化合物を反応させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、グラフト重合されたポリエチレン基材と第一級アミン化合物を溶媒下で混合、撹拌することで行うことができる。溶媒としては、例えばイソプロピルアルコール等の溶媒を好ましく用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の白金族元素回収用樹脂の製造方法を実施例にもとづいてさらに詳細に説明する。なお、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0048】
<グラフト率>
ポリエチレン基材のグラフト率、すなわち、ポリエチレンに対するグラフト重合されたグリシジルメタクリレートの量(質量百分率)は、以下の方法で求めた。
【0049】
グラフト重合後、エポキシ基が導入されたポリエチレン基材を、メタノール等の有機溶媒で洗浄し、未反応のグリシジルメタクリレートを除去した。その後、吸引濾過により回収したポリエチレンを、減圧下60℃で8時間乾燥した。この乾燥後のポリエチレンの質量(W
g)と、エポキシ基を導入する前のポリエチレンの乾燥質量(W
0)とからグラフト率を次式により算出した。
【0050】
グラフト率(%)=((W
g−W
0)/W
0)×100・・・式1
但し、Wgはグラフト後の樹脂質量で、W
0はグラフト前の樹脂質量である。
【0051】
<アミノ基密度>
ポリエチレン基材のアミノ基密度、すなわち、ポリエチレン樹脂の単位質量あたりのアミノ基の物質量は、以下の方法で求めた。
【0052】
アミン化合物と反応させたグラフト重合後の樹脂をイオン交換水、メタノールで洗浄し、未反応のアミン化合物を除去したあと、吸引濾過によりポリエチレン基材を回収し、60℃、8時間減圧乾燥させ、アミノ基が導入された白金族元素回収用樹脂を得た。
【0053】
アミノ基が導入後の樹脂質量及びアミノ基導入前の樹脂質量から下記一般式(2)よりアミノ基密度(mmol/g−adsorbent)を求めた。
【0054】
アミノ基密度=(W
A−W
g)/W
A×1000/Mw・・・一般式(2)
但し、W
gはアミノ基導入前の樹脂質量で、W
Aはアミノ基導入後の樹脂質量で、Mwはアミンの分子量である。
【0055】
(実施例1)
低密度ポリエチレン真球状樹脂粒子である、住友精化株式会社製、商品名:フロービーズCL−3080(平均粒径13μm)を50g量り取り、アルミ袋に封入後、この袋内を脱気して酸素を除去した後、加熱シールして袋口を閉じた。次に、電子線照射装置 コッククロフト・ワルトン型(株式会社NHVコーポレーション製)により120kGy照射することで電子線照射されたポリエチレン基材を得た。
【0056】
一方、50mlスクリュー管に、グリシジルメタクリレート(東京化成製) 2.0g、界面活性剤としてモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(製品名:Tween−20)0.4g、純水37.5gを加え、室温で1時間撹拌し、5質量%グリシジルメタクリレートエマルション溶液を得た。
【0057】
アルゴンガス置換した上記エマルション溶液と、前記電子線照射されたポリエチレン基材2gを混合し、40℃で3時間撹拌した後、純水、メタノールで洗浄し、吸引濾過によりポリエチレン基材を回収し、60℃、8時間減圧乾燥させることで、グリシジルメタクリレートによってグラフト重合されたポリエチレン基材を得た。乾燥後、グラフト重合されたポリエチレン基材の質量を測定してグラフト率を算出したところ、90%であった。
【0058】
次に、100mlナスフラスコに、前記グラフト重合されたポリエチレン基材1g、イソプロピルアルコール(関東化学製)6g、アミン化合物としてエチレンジアミン(東京化成製)7gを加え、60℃、4時間撹拌した後、イオン交換水、メタノールで洗浄し、吸引濾過によりポリエチレン基材を回収し、60℃、8時間減圧乾燥させ、アミノ基が導入された白金族元素回収用樹脂を得た。その際のアミノ基密度は2(mmol/g−adsorbent)であった。
【0059】
(実施例2)
界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを使用した以外、実施例1と同条件によりグラフト重合された白金族元素回収用樹脂を得た。その際のグラフト率は70%で、アミノ基密度は2(mmol/g−adsorbent)であった。
【0060】
(実施例3)
アミン化合物としてジエチレントリアミンを使用した以外、実施例1と同条件によりグラフト重合された白金族元素回収用樹脂を得た。その際のグラフト率は90%で、アミノ基密度は1.8(mmol/g−adsorbent)であった。
【0061】
(実施例4)
低密度ポリエチレン真球状樹脂粒子として、住友精化株式会社製、商品名:フロービーズCL−8007(平均粒径600μm)を使用した以外、その他の条件は実施例1と同条件により白金族元素回収用樹脂を得た。その際のグラフト率は60%で、アミノ基密度は1.8(mmol/g−adsorbent)であった。
【0062】
(実施例5)
低密度ポリエチレン真球状樹脂粒子として、住友精化株式会社製、商品名:フロービーズCL−8007(平均粒径600μm)を使用した以外、その他の条件は実施例3と同条件により白金族元素回収用樹脂を得た。その際のグラフト率は60%で、アミノ基密度は1.2(mmol/g−adsorbent)であった。
【0063】
(比較例1)
低密度ポリエチレン真球状樹脂粒子である、住友精化株式会社製、商品名:フロービーズCL−3080(平均粒径13μm)を、アルミ袋に封入後、この袋内を脱気して酸素を除去した後、加熱シールして袋口を閉じた。次に、電子線照射装置 コッククロフト・ワルトン型(株式会社NHVコーポレーション製)により12kGy照射した。
【0064】
100mlナスフラスコに、グリシジルメタクリレートがグラフト重合されていない粒子状ポリエチレン1g、イソプロピルアルコール6g、エチレンジアミン7gを加え、60℃、4時間撹拌した後、イオン交換水、メタノールで洗浄し、吸引濾過によりポリエチレン粒子を回収し、60℃、8時間減圧乾燥させ、ポリエチレン樹脂を回収した。なお、本比較例はグリシジルメタクリレートによってグラフト重合させていないため、アミノ基密度は0(mmol/g−adsorbent)であった。
【0065】
(比較例2)
低密度ポリエチレン真球状樹脂粒子である、住友精化株式会社製、商品名:フロービーズCL−3080(平均粒径13μm)を、アルミ袋に封入後、この袋内を脱気して酸素を除去した後、加熱シールして袋口を閉じた。次に、電子線照射装置 コッククロフト・ワルトン型(株式会社NHVコーポレーション製)により120kGy照射した。
【0066】
100mlナスフラスコに、グリシジルメタクリレートがグラフト重合されていない粒子状ポリエチレン1g、イソプロピルアルコール6g、ジエチレントリアミン7gを加え、60℃、4時間撹拌した後、イオン交換水、メタノールで洗浄し、吸引濾過によりポリエチレン粒子を回収し、60℃、8時間減圧乾燥させ、アミノ基が導入された白金族元素回収用樹脂を得た。なお、本比較例はグリシジルメタクリレートによってグラフト重合させていないため、アミノ基密度は0(mmol/g−adsorbent)であった。
【0067】
(比較例3)
低密度ポリエチレン真球状樹脂粒子である、住友精化株式会社製、商品名:フロービーズCL−8007(平均粒径600μm)を、アルミ袋に封入後、この袋内を脱気して酸素を除去した後、加熱シールして袋口を閉じた。次に、電子線照射装置 コッククロフト・ワルトン型(株式会社NHVコーポレーション製)により12kGy照射した。
【0068】
100mlナスフラスコに、グリシジルメタクリレートがグラフト重合されていない粒子状ポリエチレン1g、イソプロピルアルコール6g、エチレンジアミン7gを加え、60℃、4時間撹拌した後、イオン交換水、メタノールで洗浄し、吸引濾過によりポリエチレン粒子を回収し、60℃、8時間減圧乾燥させ、アミノ基が導入された白金族元素回収用樹脂を得た。なお、本比較例はグリシジルメタクリレートによってグラフト重合させていないため、アミノ基密度は0(mmol/g−adsorbent)であった。
【0069】
(比較例4)
グラフト重合のモノマーに第一級アミンを有するアミノスチレンを使用した以外、実施例1と同条件によりグラフト重合された白金族元素回収用樹脂を得た。その際のグラフト率は2%であり、アミノ基密度は0.16(mmol/g−adsorbent)であった。
【0070】
<Pt(IV)回収効率評価>
50mlスクリュー管に、実施例及び比較例の白金族元素回収用樹脂100mg、10ppmヘキサクロロ白金(IV)錯体1M塩酸溶液を入れ、室温で24時間撹拌した後に、遠心分離、濾過によりポリエチレン粒子とPt(IV)濾液を分離した。回収されたPt(IV)濾液のICP質量分析を行い、Pt(IV)濃度を測定し、Pt(IV)効率を算出した。この評価結果を表1に示す。
【表1】
【0071】
このように、白金の回収率は、実施例では50〜80%と効率よく回収でき、比較例4においては、その効率が低下していることがわかる。なお、比較例1〜3はグラフト反応が進まなかったために評価を実施しなかった。