(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1では、発光波長に対して透明なp型AlGaNコンタクト層を採用してLEEを約1.7倍に改善している。更に、非特許文献2では、サファイア基板の裏面に発光波長に対して透明なレンズを接合してLEEを約3倍に改善している。
【0006】
しかしながら、いずれの方法を取ってもLEEで最大15%、WPEで9%未満と、WPE10%を超えるには至っていない。
【0007】
本発明は、深紫外LEDにおいて、LEEをより一層高めることに、より高いWPE効率を達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点によれば、設計波長をλとする深紫外LEDであって、反射電極層(例えばAl)と、極薄膜金属層(例えばNi層(1nm程度))と、p型コンタクト層とを、基板(例えばサファイア基板)とは反対側からこの順で有し、さらに、前記p型コンタクト層側の前記基板裏面に接合される波長λに対して透明な半球状レンズを有し、前記半球状レンズの屈折率は、前記基板の屈折率と空気の屈折率との平均値以上前記基板の屈折率以下であり、前記半球状レンズは、前記基板の内接円の半径以上、およそ外接円の半径程度の半径を有することを特徴とする深紫外LEDが提供される。
【0009】
例えば、前記p型コンタクト層が透明p型AlGaNコンタクト層であり、すなわち、p型AlGaNコンタクト層は波長λに対して透明であり、極薄膜Ni層による光の吸収は小さく、Al反射電極層は光に対して90%の高反射率を有するので、p型GaNコンタクト層に対して1.7倍程度のLEE増加効果が得られる。更に、前記高反射電極構造で反射されたほとんどの光はサファイア基板表面から入射してサファイア基板裏面に接合された透明なレンズから空気中に出射される。このレンズは半球状レンズであるためにサファイア基板への入射角度分布があってもレンズ表面の法線方向に出射されるので、内部全反射を極力抑制することが可能となり、大きなLEEを得ることができる。
【0010】
また、この半球状レンズと高反射電極構造の相乗効果により、サファイア基板を薄くするほど、及び素子サイズを大きくするほどLEE効果を増大させることが可能となる。
【0011】
さらに、前記透明p型AlGaNコンタクト層が、その厚さ方向の範囲内に設けられたフォトニック結晶周期構造を有し、前記フォトニック結晶周期構造は、空気と前記透明p型AlGaNコンタクト層との周期構造を有する構造体からなり、かつ、前記フォトニック結晶周期構造はフォトニックバンドギャップを有し、前記フォトニックバンドギャップはTE偏光成分に対して開いており、かつ、波長λ、前記構造体の周期a及び前記構造体を構成する前記2つの構造体の材料の平均屈折率n
avがブラッグ条件を満たし、かつ、当該ブラッグ条件の次数mは2<m<5の範囲にあり、かつ、前記構造体の深さhを前記周期aの2/3以上とすることを特徴とする。
【0012】
前記フォトニック結晶周期構造(反射型フォトニック結晶周期構造)は、フォトニックバンドギャップを有することにより波長λの光を数回の多重反射で効率よく反射させることができる。もし光が透明p型AlGaNコンタクト層を僅かに透過した場合、極薄膜Ni層による光の吸収は小さく、Al反射電極層は光に対して90%以上の高反射率を有するので、フォトニック結晶周期構造の無いAl反射電極層単体に比較して大きなLEEを実現することが可能となる。
【0013】
さらに、前記反射型フォトニック結晶周期構造で反射されたほとんどの光はサファイア基板表面から入射してサファイア基板裏面に接合された透明な半球状レンズから空気中に出射される。このレンズは半球状レンズであるためにサファイア基板への入射角度分布があってもレンズ表面の法線方向に出射されるので、内部全反射を極力抑制することが可能となり、大きなLEEを得ることができる。
【0014】
この半球状レンズと反射型フォトニック結晶周期構造及び透明p型AlGaNコンタクト層と極薄膜Ni層とAl反射電極層との相乗効果により、LEE効果を増大させることが可能となる。
【0015】
また、例えば、前記p型コンタクト層がp型GaNコンタクト層とp型AlGaN層とを、前記基板とは反対側からこの順で有し、少なくとも前記p型GaNコンタクト層と前記p型AlGaN層との界面を含み、前記基板方向においてp型AlGaN層を超えない厚さ方向の範囲に設けられたフォトニック結晶周期構造を有し、前記フォトニック結晶周期構造は、空気と、前記p型GaNコンタクト層及びp型AlGaNコンタクト層との周期構造を有する構造体からなり、かつ、前記フォトニック結晶周期構造は、フォトニックバンドギャップを有し、前記フォトニックバンドギャップはTE偏光成分に対して開いており、かつ、波長λ、前記構造体の周期a及び前記構造体を構成する2つの材料の平均屈折率n
avがブラッグ条件を満たし、かつ、当該ブラッグ条件の次数mは2<m<5の範囲にあり、かつ、前記構造体の深さhを前記周期aの2/3以上とすることを特徴とする。
【0016】
さらに、前記基板裏面には、前記p型AlGaN層側の前記基板裏面に接合される波長λに対して透明な半球状レンズを有し、前記半球状レンズの屈折率は、前記基板の屈折率と空気の屈折率の平均値以上前記基板の屈折率以内である半球状レンズが接合されたことを特徴とする。
【0017】
半球状レンズは前記基板の内接円の半径以上、およそ外接円の半径程度の半径を有することが好ましい。
【0018】
この構造であればp型GaNコンタクト層により低コンタクト抵抗が維持できる。また、反射型フォトニック結晶周期構造は、フォトニックバンドギャップを有することにより波長λの光を数回の多重反射で効率よく反射させることができる。従って、金属層と、p型GaNコンタクト層における光の吸収を抑制することができる。
【0019】
さらに、前記フォトニック結晶周期構造で反射されたほとんどの光は前記基板表面から入射して前記基板裏面に接合された透明な半球状レンズから空気中に出射される。このレンズは半球状レンズであるためにサファイア基板への入射角度分布があってもレンズ表面から法線方向に出射されるのでの分散があっても、内部全反射を極力抑制することが可能となり、大きなLEEを得ることができる。
【0020】
また、この半球状レンズと反射型フォトニック結晶周期構造の相乗効果により、LEE効果を増大させることが可能となる。
【0021】
前記フォトニック結晶周期構造は、厚さ方向に前記反射電極層の範囲まで延長して設けられていることを特徴とする。
【0022】
前記フォトニック結晶周期構造は、ナノインプリントリソグラフィー法による転写技術を用いて形成されたものであることを特徴とする。
【0023】
さらに、前記フォトニック結晶周期構造は、流動性の高いレジストとエッチング選択比の高いレジストによる2層レジスト法を用いたドライエッチングを用いて形成されたものであることを特徴とする。
【0024】
また、前記フォトニック結晶周期構造のパラメータは、周期構造パラメータである周期aと前記構造体の半径Rの比(R/a)を仮決定するステップと、前記構造体のそれぞれの屈折率n
1とn
2、及びこれらと前記R/aから平均屈折率n
avを算出し、これをブラッグ条件の式に代入し、次数mごとの周期aと半径Rを得るステップと、前記R/a及び波長λ並びに前記屈折率n
1、n
2から得られる各構造体の誘電率ε
1及びε
2を用いた平面波展開法により、TE光のフォトニックバンド構造を解析するステップと、TE光の第一フォトニックバンドと第二フォトニックバンド間のPBGが存在するまで、前記仮決定のR/aの値を変えて繰り返すステップと、前記のPBGを有するR/aについて、ブラッグ条件の次数mに応じた個別の周期a及び半径R、並びに、任意の周期構造の深さhを変数として行う有限時間領域差分法(FDTD法)によるシミュレーション解析により、前記波長λに対する光取出し効率増減率を求めるステップと、前記FDTD法によるシミュレーションを繰り返し行うことにより、前記波長λに対する光取出し効率増減率が最大となるブラッグ条件の次数mと、その次数mに対応する周期構造パラメータの周期a、半径R、及び、深さhを決定するステップと、を有するパラメータ計算方法により求めたものであることを特徴とする。
【0025】
さらに、前記p型コンタクト層と前記半球状レンズとの間に導波路構造を設けたことを特徴とする。
【0026】
前記導波路構造は、前記基板表面に設けられる三角円錐形状のPSS周期構造と、前記PSS周期構造と厚さ方向に連続して形成された六角錐台或いは四角錐台の柱状からなるAlN結合ピラー周期構造とを有することを特徴とする。
【0027】
また、前記導波路構造は、ナノインプリントリソグラフィー法による転写技術を用いて形成されたマスクパターン(例えば、SiO
2マスク)を用いてウエットエッチング法により形成されたPSS周期構造上に、AlN膜をエピ成長させることにより形成されたものであることを特徴とする。
【0028】
例えば、設計波長をλとする深紫外LEDであって、Al高反射電極層と、極薄膜Ni層(1nm程度)と、波長λに対して透明な透明p型AlGaNコンタクト層とを、基板とは反対側からこの順で有し、少なくとも前記透明p型AlGaNコンタクト層の厚さ方向に、或いは前記透明p型AlGaNコンタクト層から前記極薄膜Ni層を含む前記Al反射電極層との界面を含む厚さ方向の範囲に設けられたフォトニックバンドギャップ(PBG)を有するフォトニック結晶周期構造を有し、かつ、サファイア基板表面にはウエットエッチングにより形成されたPSSに続いてエピ成長されたAlN結合ピラーを有し、かつ、サファイア基板裏面には、前記透明p型AlGaNコンタクト層側の前記基板裏面に接合される波長λに対して透明な半球状レンズを有し、前記半球状レンズの屈折率は、前記基板の屈折率と空気の屈折率の平均値以上前記基板の屈折率以内であることを特徴とする深紫外LEDが提供される。
【0029】
尚、半球状レンズはサファイア基板の内接円の半径以上、外接円の半径程度の半径を有することが好ましい。
【0030】
また、反射型フォトニック結晶周期構造は、フォトニックバンドギャップを有することにより波長λの光を数回の多重反射で効率よく反射させる事ができる。更に、前記AlN結合ピラーに入射した光は導波路効果で伝搬し無駄なくサファイア基板の表面に入射される。もし光が透明p型AlGaNコンタクト層を僅かに透過した場合、極薄膜Ni層による光の吸収は小さく、Al反射電極層は光に対して90%以上の高反射率を有するので、フォトニック結晶周期構造の無いAl反射電極層単体に比較して大きなLEEを実現することが可能となる。
【0031】
さらに、前記反射型フォトニック結晶周期構造で反射されたほとんどの光はサファイア基板表面から入射してサファイア基板裏面に接合された透明なレンズから空気中に出射される。このレンズは半球状レンズであるためにサファイア基板への入射角度分布があってもレンズ表面の法線方向に出射されるので、内部全反射を極力抑制することが可能となり、大きなLEEを得ることができる。
【0032】
また、この半球状レンズとフォトニック結晶周期構造及び透明p型AlGaNコンタクト層と極薄膜Ni層とAl反射電極層と、さらにウエットエッチングPSS由来AlN結合ピラーの導波路効果との相乗効果により、LEE効果を増大させることが可能となる。
【0033】
また、本発明は、設計波長をλとする深紫外LEDであって、反射電極層と、極薄膜金属層と、透明p型AlGaNコンタクト層とを、基板とは反対側からこの順で有し、さらに、前記透明p型AlGaNコンタクト層側の前記基板裏面に接合される波長λに対して透明な半球状レンズを有し、前記半球状レンズの屈折率は、前記基板の屈折率と空気の屈折率との平均値以上前記基板の屈折率以下であり、さらに、前記フォトニック結晶周期構造と前記半球状レンズとの間に導波路構造を設けたことを特徴とする。
【0034】
本発明の第2の観点によれば、設計波長をλとする深紫外LEDであって、反射電極層と、極薄膜金属層と、透明p型AlGaNコンタクト層とを、基板とは反対側からこの順で有し、前記透明p型AlGaNコンタクト層が、その厚さ方向の範囲内に設けられたフォトニック結晶周期構造を有し、さらに、前記基板裏面に接合される波長λに対して透明な半球状レンズを有し、前記半球状レンズの屈折率は、前記基板の屈折率と空気の屈折率との平均値以上前記基板の屈折率以内であり、さらに、前記フォトニック結晶周期構造と前記半球状レンズとの間に導波路構造を設けたことを特徴とする深紫外LEDが提供される。
【0035】
前記導波路構造は、前記基板表面に設けられる三角円錐形状のPSS周期構造と、前記PSS周期構造と厚さ方向に連続して形成された六角錐台或いは四角錐台の柱状からなるAlN結合ピラー周期構造とを有することを特徴とする。
【0036】
本発明の第3の観点によれば、設計波長をλとする深紫外LEDであって、反射電極層と、金属層と、p型GaNコンタクト層とp型AlGaN層を、基板とは反対側からこの順で有し、少なくとも前記p型GaNコンタクト層と前記p型AlGaN層との界面を含む厚さ方向の範囲に設けられたフォトニック結晶周期構造を有し、さらに、前記基板裏面に接合される波長λに対して透明な半球状レンズを有し、前記半球状レンズの屈折率は、前記基板の屈折率と空気の屈折率との平均値以上前記基板の屈折率以下であり、さらに、前記フォトニック結晶周期構造と前記半球状レンズとの間に導波路構造を設けたことを特徴とする深紫外LEDが提供される。
【0037】
前記導波路構造は、前記基板表面に設けられる三角円錐形状のPSS周期構造と、前記PSS周期構造と厚さ方向に連続して形成された六角錐台或いは四角錐台の柱状からなるAlN結合ピラー周期構造とを有することを特徴とする。
【0038】
本発明の第4の観点によれば、反射電極層と、極薄膜金属層と、透明p型AlGaNコンタクト層とを、基板とは反対側からこの順で有し、設計波長をλとする深紫外LEDの製造方法であって、前記基板側裏面に、波長λに対して透明であって、かつ屈折率が前記基板の屈折率と空気の屈折率との平均値以上前記基板の屈折率以下である半球状レンズが接合される工程を有することを特徴とする深紫外LEDの製造方法が提供される。
【0039】
また、反射電極層と、極薄膜金属層と、透明p型AlGaNコンタクト層とを、基板とは反対側からこの順で有し、設計波長をλとする深紫外LEDの製造方法であって、前記透明p型AlGaNコンタクト層の厚さ方向の範囲内に設けられたフォトニック結晶周期構造であって、空気と前記透明p型AlGaNコンタクト層との周期構造を有する構造体からなり、かつ、前記フォトニック結晶周期構造はフォトニックバンドギャップを有するフォトニック結晶周期構造を形成する工程と、前記基板側裏面に、波長λに対して透明であって、かつ屈折率が前記基板の屈折率と空気の屈折率との平均値以上前記基板の屈折率以下である半球状レンズが接合される工程と、を有することを特徴とする深紫外LEDの製造方法が提供される。
【0040】
さらに、反射電極層と、極薄膜金属層と、透明p型AlGaNコンタクト層とを、基板とは反対側からこの順で有し、設計波長をλとする深紫外LEDの製造方法であって、前記透明p型AlGaNコンタクト層の厚さ方向の範囲内に設けられたフォトニック結晶周期構造であって、空気と前記透明p型AlGaNコンタクト層との周期構造を有する構造体からなり、かつ、前記フォトニック結晶周期構造はフォトニックバンドギャップを有するフォトニック結晶周期構造を形成する工程と、前記基板表面に導波路構造を形成する工程と、前記基板側裏面に、波長λに対して透明であって、かつ屈折率が前記基板の屈折率と空気の屈折率との平均値以上前記基板の屈折率以下である半球状レンズが接合される工程と、を有することを特徴とする深紫外LEDの製造方法が提供される。
【0041】
例えば、設計波長をλとし、Al反射電極層と、極薄膜Ni層と、透明p型AlGaNコンタクト層とを基板とは反対側からこの順で含有する積層構造体を準備する工程と、少なくとも前記透明p型AlGaNコンタクト層の厚さ方向、或いは前記透明p型AlGaNコンタクト層から前記極薄膜Ni層を含む前記Al反射電極層との界面を含む厚さ方向の範囲に設けられたフォトニック結晶周期構造を形成するための金型を準備する工程と、前記積層構造体上に、レジスト層を形成し、前記金型の構造を転写する工程と、前記レジスト層をマスクとして順次前記積層構造体をエッチングしてフォトニック結晶周期構造を形成する工程と、サファイア基板表面にPSS周期構造を形成する工程に続いて、AlNをエピ成長させて形成したAlN結合ピラーを形成する工程と、サファイア基板裏面に、前記透明p型AlGaNコンタクト層側の前記基板裏面に接合される波長λに対して透明な半球状レンズを接合する工程と、を有することを特徴とする深紫外LEDの製造方法が提供される。
【0042】
また、本発明は、反射電極層と、金属層と、p型GaNコンタクト層と、p型AlGaN層とを、基板とは反対側からこの順で有し、設計波長をλとする深紫外LEDの製造方法であって、少なくとも前記p型GaNコンタクト層と前記p型AlGaN層との界面を含み、前記基板方向においてp型AlGaN層を超えない厚さ方向の範囲に設けられたフォトニック結晶周期構造であって、フォトニックバンドギャップを有するフォトニック結晶周期構造を形成する工程と、前記基板側裏面に、波長λに対して透明であって、かつ屈折率が前記基板の屈折率と空気の屈折率との平均値以上前記基板の屈折率以下である半球状レンズが接合される工程と、を有することを特徴とする深紫外LEDの製造方法が提供される。
【0043】
さらに、反射電極層と、金属層と、p型GaNコンタクト層と、p型AlGaN層とを、基板とは反対側からこの順で有し、設計波長をλとする深紫外LEDの製造方法であって、少なくとも前記p型GaNコンタクト層と前記p型AlGaN層との界面を含み、前記基板方向においてp型AlGaN層を超えない厚さ方向の範囲に設けられたフォトニック結晶周期構造であって、フォトニックバンドギャップを有するフォトニック結晶周期構造を形成する工程と、前記基板表面に導波路構造を形成する工程と、前記基板側裏面に、波長λに対して透明であって、かつ屈折率が前記基板の屈折率と空気の屈折率との平均値以上前記基板の屈折率以下である半球状レンズが接合される工程と、を有することを特徴とする深紫外LEDの製造方法が製造される。
【0044】
例えば、設計波長をλとし、Au反射電極層と、Ni層と、p型GaNコンタクト層と、波長λに対し透明な、p型AlGaN層とを、基板とは反対側からこの順で含有する積層構造体を準備する工程と、少なくとも前記p型GaNコンタクト層と前記p型AlGaN層の界面を含む厚さ方向の範囲に設けられたフォトニック結晶周期構造を形成するための金型を準備する工程と、前記積層構造体上に、レジスト層を形成し、前記金型の構造を転写する工程と、前記レジスト層をマスクとして順次前記積層構造体をエッチングしてフォトニック結晶周期構造を形成する工程と、サファイア基板表面にPSS周期構造を形成する工程に続いて、AlNをエピ成長させて形成したAlN結合ピラーを形成する工程と、サファイア基板裏面に、前記透明p型AlGaNコンタクト層側の前記基板裏面に接合される波長λに対して透明な半球状レンズを接合する工程と、を有することを特徴とする深紫外LEDの製造方法が提供される。
【0045】
さらに、前記半球状のレンズは、前記基板の屈折率と空気の屈折率の平均値より大きな屈折率を有する材料を特徴とし、サファイア、スピネル、石英ガラス、AlN、封止樹脂など上記の条件を満足するのであれば何れでも良い。また、前記半球状レンズと前記基板の接合方法は、表面活性化接合(SAB)、原子拡散接合(ADB)、大気圧プラズマやオゾンガスによる表面改質後の接合、設計波長λに対して透明な接着剤による接合、接合界面において光の散乱及び吸収が抑制される接合方法を用いることを特徴とする。
【0046】
尚、レンズに関して、基板の内接円の半径以上、外接円の半径程度の半径とするのは、製造工程と集光効率との関係に依存するものである。
【0047】
すなわち、半球状レンズの半径を外接円の半径と略等しくすることで、基板から出射される光を漏れなくレンズに集光することができる。但し、出射基板上に整列配置された素子の集積度を向上させるためには、半球状レンズの半径を、内接円の半径程度にすると良い。
【0048】
上記に記載の深紫外LEDの製造方法において、光取出し効率を最適化する方法として、光線追跡法の任意の立体角における光取出し効率にFDTD法で得られる同じ立体角における光取出し効率増減率の倍率を掛け合わせて補間することによりサブnmから数mmに至る広いダイナミックレンジ領域解析を行うことを特徴とする計算方法を用いると良い。
【0049】
本発明は、設計波長をλとする深紫外LEDであって、反射電極層と、金属層と、p型GaNコンタクト層と、波長λに対し透明な、p型AlGaN層とを、基板とは反対側からこの順で有し、少なくとも前記p型GaNコンタクト層と前記p型AlGaN層との界面を含む厚さ方向の範囲に設けられたフォトニック結晶周期構造を有し、前記フォトニック結晶周期構造は、フォトニックバンドギャップを有し、さらに、前記p型コンタクト層側の前記基板裏面に接合される波長λに対して透明な半球状レンズを有することを特徴とする深紫外LEDである。
【0050】
本発明は、設計波長をλとする深紫外LEDであって、反射電極層(例えばAl)と、極薄膜金属層(例えばNi層(1nm程度))と、p型コンタクト層とを、基板(例えばサファイア基板)とは反対側からこの順で有し、さらに、前記p型コンタクト層側の前記基板裏面に接合される波長λに対して透明な半球状レンズを有し、前記半球状レンズの屈折率は、前記基板の屈折率と空気の屈折率との平均値以上前記基板の屈折率以下であり、前記半球状レンズは、前記基板の内接円の半径以上、およそ外接円の半径程度の半径を有し、前記半球状レンズが前記基板裏面に接合された状態において、量子井戸層の中心を通る垂線と、量子井戸層の中心から基板裏面の内接円への接線とで囲まれた角度をθと定義した場合、Sr=2π(1−cosθ)で表現される立体角Srが、立体角に依存する光取出し効率が大きくなる変曲点に対応する立体角以上であるSことを特徴とする深紫外LEDが提供される。
【0051】
本発明の第5の観点によれば、設計波長をλとする深紫外LEDであって、反射電極層と、金属層と、p型GaNコンタクト層と、波長λに対して透明な、p型AlGaN層、多重量子障壁層、バリア層、量子井戸層とを、基板とは反対側からこの順で有し、前記p型AlGaN層の膜厚が30nm以内で、少なくとも前記p型GaNコンタクト層と前記p型AlGaN層との界面を含み、前記基板方向において前記p型AlGaN層を超えない厚さ方向の範囲内に設けられた複数の空孔を有する反射型フォトニック結晶周期構造を有し、前記空孔の基板方向の端面から量子井戸層までの距離が50nm〜70nm及びその深さhが40nm〜60nmの範囲において光取出し効率の極大値が得られ、かつ、前記反射型フォトニック結晶周期構造は、TE偏光成分に対して開かれるフォトニックバンドギャップを有し、前記設計波長λの光に対して前記フォトニック結晶周期構造の周期aがブラッグの条件を満たし、かつ、ブラッグの条件式にある次数mは1≦m≦5を満たし、前記空孔の半径をRとした時、フォトニックバンドギャップが最大となるR/aを満たすことを特徴とする。さらに、前記基板裏面には、前記p型AlGaN層側の前記基板裏面に接合される波長λに対して透明な半球状レンズを有し、前記半球状レンズの屈折率は前記基板の屈折率に等しいことを特徴とする深紫外LEDが提供される。
【0052】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2015−173834号および日本国特許出願番号2015−218532号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、深紫外LEDにおけるLEE及びWPEを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下の、各実施の形態では、深紫外LEDのさらなる特性向上が可能な技術について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0056】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る深紫外LEDの一例として、設計波長λを280nmとするAlGaN系深紫外LEDの構造を
図1に示す。
図1に示すように、本実施の形態による透明p型AlGaNコンタクト層を含む深紫外LEDは、
図1の上から順番に、サファイア基板1、AlNバッファー層2、n型AlGaN層3、バリア層4、量子井戸層(活性層)5、バリア層6、電子ブロック層7、透明p型AlGaNコンタクト層8、極薄膜Ni層9、Al反射電極層10、を有する。以下の例では、活性層として量子井戸層を用いた例を示すが、活性層としては、量子井戸構造に限定されない。
【0057】
そして、
図2Aに示すように、サファイア基板1に、例えば半球型のサファイアレンズ20aを接合した。
【0058】
図2Bは、接合レンズと基板1との関係を示す平面図であり、
図2B(a)は、接合レンズ20aが矩形の基板1の内接円(多角形の内部にあり全ての辺に接する円)C1となっている位置関係を示し、
図2B(b)は、接合レンズ20aが矩形基板1の外接円(多角形のすべての頂点を通る円)となっている位置関係を示す図である。レンズ接合(内接円)とは、前者の位置関係を示し、レンズ接合(外接円)とは、後者の位置関係を示す。
【0059】
図3、
図4は、一般的な深紫外LEDに設けられたp型GaNコンタクト層を含む構造例を示す図であり、
図1及び
図2Aと対比させて
図3及び
図4を示す。
【0060】
図3では、上から順番に、サファイア基板1、AlNバッファー層2、n型AlGaN層3、バリア層4、量子井戸層5、バリア層6、電子ブロック層7、p型AlGaN層8a、p型GaNコンタクト層8b、Ni層9a、Au反射電極層10aが設けられている。
【0061】
また、
図4に示す構造では、上から順番に、
図3に示す構造において、サファイア基板1上にサファイアレンズ20aを設けている。
【0062】
図1に示す透明p型AlGaNコンタクト層8は波長λに対して透明であり、極薄膜Ni層9による光の吸収は小さく、Alは光に対して90%以上の高反射率を有する。従って、
図3におけるp型GaNコンタクト層8bに対して、
図1では、1.7倍程度のLEE増加効果が得られる。更に、極薄膜Ni層9、Al反射電極層10を含む高反射電極構造で反射されたほとんどの光はサファイア基板1の表面から入射してサファイア基板1の裏面に接合された
図2Aの透明なサファイアレンズ20aから空気中に出射される。
【0063】
このサファイアレンズ20aは、例えば、サファイア基板1のおよそ内接円の半径以上外接円の半径程度の半径を有する半球状レンズであるために、サファイア基板1への入射角度分布があってもレンズ表面の法線方向に出射されるので、内部全反射を極力抑制することが可能となり、大きなLEEを得ることができる。
【0064】
このような効果のより具体的な説明として計算モデルを作成して、光線追跡法(表1の計算モデル)を用いて、LEDの光取出し効率を解析した。
【0066】
図5(レンズ半径が内接円の半径)及び
図6(レンズ半径が外接円の半径)に示す光線追跡法による解析結果は次の通りである。
【0067】
A:サファイアレンズ接合が有る場合
1)p型GaNコンタクト層及び透明p型AlGaNコンタクト層ともサファイアレンズ接合のLEDの光取出し効率がレンズ接合のないLEDに比べて2倍以上大きい。
2)透明p型AlGaNコンタクト層のLEDがp型GaNコンタクト層のLEDに対して光取出し効率が2倍以上大きい。
3)光取出し効率は基板の厚さに反比例して大きくなる。
【0068】
B:サファイアレンズ接合が無い場合
1)透明p型AlGaNコンタクト層のLEDがp型GaNコンタクト層のLEDに対して光取出し効率が2倍以上大きい。
2)光取出し効率は、基板厚さに依存しない。
【0069】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る深紫外LEDの一例として、設計波長λを280nmとするAlGaN系深紫外LEDの構造を
図7に示す。
図7に示すように、本実施の形態によるAlGaN系深紫外LEDは、
図2Aの構造において、サファイア基板1上にサファイアレンズの代わりに石英ガラスレンズ20bを設けている。
【0070】
図8は、従来型の深紫外LEDにあるp型GaNコンタクト層を含む構造例を示す図である。
図8では、
図4の構造において、サファイア基板1上にサファイアレンズの代わりに石英ガラスレンズ20bを設けた構造である。
【0071】
ここでは、サファイアと石英との材料の違いに起因するレンズ屈折率の違いと、光取出し効率との関係を検証する。第1の実施の形態と同様に、計算モデルを作成し、光線追跡法(表2参照)により解析を行い、その結果を
図9(レンズ半径が内接円の半径)及び
図10(レンズ半径が外接円の半径)に示す。
【0073】
図9(レンズ半径が内接円の半径)及び
図10(レンズ半径が外接円の半径)の光線追跡法の結果は次の通りである。
1)p型GaNコンタクト層及び透明p型AlGaNコンタクト層とも、石英ガラスレンズ接合のLEDの光取出し効率は、基板の厚さが100μmまでは基板の厚さに反比例して大きくなる。
2)透明p型AlGaNコンタクト層を含むLEDではp型GaNコンタクト層を含むLEDに対して、2倍以上の光取出し効率を有する。
【0074】
第1の実施の形態から第2の実施の形態における結果を纏めると以下のようになる。 レンズ半径が接合する基板裏面の内接円の半径以上、外接円の半径程度の場合に、以下が成り立つ。
1)基板にレンズを接合すると、透明p型AlGaNコンタクト層及びp型GaNコンタクト層とも、光取出し効率は基板の厚さに反比例して大きくなる。
2)上記効果は、レンズの屈折率が基板の其れに近いほど効果的である。
3)透明p型AlGaNコンタクト層の光取出し効率は、p型GaNコンタクト層の2倍以上となる。
4)基板にレンズ接合の無い場合、透明p型AlGaNコンタクト層及びp型GaNコンタクト層とも、光取出し効率は基板の厚さに依存しない。
【0075】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る深紫外LEDの一例として、設計波長λを280nmとするAlGaN系深紫外LEDの構造を
図11A、
図11B、
図11Cに示す。
図11Aに示すように、本実施の形態によるAlGaN系深紫外LEDは、石英ガラスレンズ20b、サファイア基板1、AlNバッファー層2、n型AlGaN層3、バリア層4、量子井戸層5、バリア層6、電子ブロック層7、透明p型AlGaNコンタクト層8、極薄膜Ni層9、Al反射電極層10に加えて、フォトニック結晶周期構造100、フォトニック結晶(ホール)101を有する。
図11Aでは、透明p型AlGaNコンタクト層8の厚さ方向の範囲内に、フォトニック結晶周期構造100が形成されている。
【0076】
フォトニック結晶周期構造100の構造体は、例えば、大きな屈折率の媒体中に小さな屈折率の構造を形成した第1の構造体であり、例えばホール101が形成された構造体である。
図11Bに例示するように、ホール101は、2次元平面において、半径R、周期a、深さh(図示せず)で形成されている。
【0077】
また、
図12に示す深紫外LEDは、サファイアレンズ20a、サファイア基板1、AlNバッファー層2、n型AlGaN層3、バリア層4、量子井戸層5、バリア層6、電子ブロック層7、透明p型AlGaNコンタクト層8、極薄膜Ni層9、Al反射電極層10に加えて、フォトニック結晶周期構造100、フォトニック結晶(ホール)101を有する。
図12では、透明p型AlGaNコンタクト層8の厚さ方向の範囲内に、フォトニック結晶周期構造100が形成されている。
【0078】
深紫外LEDは、Al反射電極層10と、極薄膜Ni層(1nm程度)9と、波長λに対して透明な透明p型AlGaNコンタクト8層とを、サファイア基板1とは反対側からこの順で有し、少なくとも透明p型AlGaNコンタクト層8の厚さ方向に、或いは、透明p型AlGaNコンタクト層8から極薄膜Ni層9を含むAl反射電極層10との界面を含む厚さ方向の範囲に設けられたフォトニックバンドギャップ(PBG)を有するフォトニック結晶周期構造100を有し、かつ、サファイア基板1の裏面には、サファイア基板1の内接円の半径以上およそ外接円の半径程度の半径を有する波長λに対して透明な半球型の石英ガラスレンズ20b(
図11A)或いは、サファイアレンズ20a(
図12)が接合されたことを特徴とする深紫外LEDである。
【0079】
フォトニック結晶周期構造は、透明p型AlGaNコンタクト層8と電子ブロック層7の界面に到達していない構造である。フォトニック結晶周期構造100を30nm〜50nm程度残さないと、フォトニック結晶周期構造100を形成する際のドライエッチングによる電子ブロック層7に損傷を与える可能性があるためである。
【0080】
尚、実際にデバイスを作成するプロセス上の観点から見た本実施の形態の変形例として、
図11Cに示すように、フォトニック結晶周期構造は、極薄膜Ni層9を貫通してAl反射電極層10内に達しているが、Al反射電極層10と空気の界面までは到達していない構造であってもよい。
【0081】
反射型フォトニック結晶周期構造100は、PBGを有することにより波長λの光を数回の多重反射で効率よく反射させることができる。
【0082】
もし光が透明p型AlGaNコンタクト層8を僅かに透過した場合、極薄膜Ni層9による光の吸収は小さく、Al反射電極層10は光に対して90%以上の高反射率を有するので、フォトニック結晶周期構造100の設けられていないAl反射電極層単体の場合に比較して大きなLEEを実現することが可能となる。
【0083】
さらに、反射型フォトニック結晶周期構造100で反射された光のうちのほとんどは、サファイア基板1表面から入射してサファイア基板1裏面に接合された透明なレンズ20a又は20bから空気中に出射される。このレンズ20a又は20bは半球状レンズであるために、サファイア基板1への入射角度分布があっても、レンズ表面の法線方向に出射されるので、内部全反射を極力抑制することが可能となり、大きなLEEを得ることができる。
【0084】
また、この半球状レンズ20a又は20bと、フォトニック結晶周期構造100及び透明p型AlGaNコンタクト層8と極薄膜Ni層9とAl反射電極層10との相乗効果により、LEE効果を増大させることが可能となる。
【0085】
上記のフォトニック結晶周期構造100を有する構造においては、量子井戸層5で発光した波長280nmの深紫外光は、TE光とTM光とが楕円偏光しながら媒質中を伝搬する。その偏光度は0.29である。そして、このフォトニック結晶周期構造100がフォトニックバンドギャップを有し、底面部において、異なる屈折率をもつ透明p型AlGaNコンタクト層8と空気を2つの構造体として形成され、これら構造体の平均屈折率をn
av(n
avは、周期aと円孔の半径Rの関数)、周期aとした場合に、次式(1)で示すブラッグ散乱条件を満たす時、このフォトニック結晶周期構造に入射したTE光は反射されTM光は透過される。
mλ/n
av=2a (1)
【0086】
そして、円孔の半径Rと周期aの比であるR/a、設計波長λ及び2つの構造体の屈折率n
1とn
2に対応する各構造体の誘電率ε
1及びε
2を用いて、平面波展開法によりTE光及びTM光のフォトニックバンド構造を解析する。具体的には次式(2)、(3)で示すマクスウエルの波動方程式に入力し、その固有値計算を行う。
【0089】
但し、E′=|k+G|E(G)、ε:比誘電率、G:逆格子ベクトル、k:波数、ω:周波数、c:光速、E:電界である。
【0090】
R/aを変数として、0.01のステップで0.20≦R/a≦0.40の範囲でTE光のフォトニックバンド構造を求め、フォトニックバンドギャップが確認できる第1フォトニックバンド(1
stPB)と第2フォトニックバンド(2
ndPB)間のフォトニックバンドギャップをPBG1、第7フォトニックバンド(7
thPB)と第8フォトニックバンド(8
thPB)間のフォトニックバンドギャップをPBG4として、各PBGとR/aの関係を求める。その結果を
図13に示す。
【0091】
同様にTM光のフォトニックバンド構造を求め、1
stPBと2
ndPB間のPBGをPBG1、3
rdPBと4
thPB間のPBGをPBG2、5
thPBと6
thPB間のPBGをPBG3、7
thPBと8
thPB間のPBGをPBG4として各PBGとR/aの関係を求める。その結果を
図14に示す。
【0092】
フォトニック結晶における状態密度(ρ)とは、どの周波数にどれだけのフォトンが存在できる状態が存在するかを示したものである。一様な媒質では状態密度は周波数に対して単調増加を示すだけであるが、フォトニック結晶においてはフォトニックバンドギャップの周波数領域ではρ(ω)=0となる。フォトニックバンドギャップ付近での状態密度の急峻な変化や、その他の周波数の領域での鋭いピークは群速度がゼロとなることに起因している。そして、この群速度がゼロとなる代表的な対称点は、M点で2つの波がブラッグの回折により光の伝搬方向を変化させて定在波を作る。そしてこの状態密度の急峻な変化率はフォトニックバンドギャップの大きさにほぼ比例している。
【0093】
そこで、フォトニックバンドギャップの大きさと反射・透過効果の関係、並びに、深紫外LEDにおける光取出し効率(LEE)増減率をFDTD法による解析で求め、LEE増減率が最大となるフォトニック結晶の直径d、周期a及び深さhを得る。
【0094】
より詳細な処理フローを
図15に示す。
(ステップS01)
周期構造パラメータである周期aと構造体の半径Rの比(R/a)を仮決定する。
(ステップS02)
第1の構造体のそれぞれの屈折率n
1とn
2、及びこれらとR/aから平均屈折率n
avを算出し、これをブラッグ条件の式に代入し、次数mごとの周期aと半径Rを得る。
(ステップS03)
R/a及び波長λ並びに前記屈折率n
1、n
2から得られる各構造体の誘電率ε
1及びε
2を用いた平面波展開法により、TE光のフォトニックバンド構造を解析する。
(ステップS04)
TE光の第一フォトニックバンドと第二フォトニックバンド間のPBGが存在するまで、前記仮決定のR/aの値を変えて繰り返す。
(ステップS05)
PBGを有するR/aについて、ブラッグ条件の次数mに応じた個別の周期a及び半径R、並びに、任意の周期構造の深さhを変数として行うFDTD法によるシミュレーション解析により、前記波長λに対する光取出し効率増減率を求める。
(ステップS06)
FDTD法によるシミュレーションを繰り返し行うことにより、波長λに対する光取出し効率増減率が最大となるブラッグ条件の次数mと、その次数mに対応する周期構造パラメータの周期a、半径R、及び、深さhを決定する。
【0095】
これらの値は、ブラッグ散乱の式(式(1))において、波長λと周期aの値が近くなる次数mを選択して求めれば良い。また、深さは周期a以上の深さhを有することが望ましい。
【0096】
次に、本実施の形態について、より具体的に説明する。
【0097】
まず、フォトニック結晶のパラメータを設定するに当たり、ブラッグ散乱の式(式 (1):mλ/n
av=2a)の次数mを決定する。
【0098】
一例として、R/a=0.40のn
avを次式で計算する。
n
av=[n
22+(n
12−n
22)(2π/3
0.5)(R/a)
2]
0.5=1.838 (4)
但し、n
1=1.0、n
2=2.583である。
【0099】
次に、λ=280nm、n
av=1.838、m=1を式(1)に代入すると、m=1における周期a=76nmが求まる。
【0100】
次に、0.20≦R/a≦0.40の範囲においてR/aを変数として0.05ステップで変化させて各R/aにおける直径d、周期aを求めてフォトニック結晶を設計し、表3の計算モデルを作成してFDTD法で解析を実施した。尚、フォトニック結晶の周期は発光波長に近い事が望ましいので、次数m=3、4を選択した。
【0102】
ここでは、サファイアレンズ接合フォトニック結晶LEDによる光取出し効率の最適化が目的となる。一般に、光線追跡法の解析領域はサブmm以上で、最小膜厚が1μmに限定されるが、LED構造内光源の出力に対する検出器に到達する光線数の比率から光取出し効率を直接計算する利点がある。一方、FDTD法は電磁界経時変化を直接計算するので、光取出し効率を直接計算できないので、その増減率を計算する。そして解析領域に関しては計算資源に大きく依存するがサブnm〜約数十μm程度である。対象となるLEDの構造は素子(数百μm)がパッケージ(数mm)に装着されているので、光取出し効率の精度の高い解析には上記二つの解析法で比較・補間しながら解析するのが好ましい。
図16にサファイアレンズ接合フォトニック結晶LEDのFDTD用計算モデルを示す。点線上垂線は、量子井戸層中心C
11を通っている。この垂線と、量子井戸層の中心C
11からサファイア基板1に接合したサファイアレンズ20aの内接円への接線で囲まれた角度をθと定義した場合、立体角(Sr)は、Sr=2π(1−cosθ)で求められる。大きさが2桁以上異なる二つの解析法の計算モデルを比較する場合、立体角を基準にすれば光伝搬方向を考慮した解析が可能となる。
【0103】
尚、量子井戸層の中心C
11とは、内接円C1又は外接円C2(
図2B)の中心であって、量子井戸(活性層)5の厚さ方向の中間を指す。
【0104】
表3の計算モデルは立体角が1.66及び3.85である。この立体角を使って
図9及び
図10の光線追跡法に使用した計算モデルの素子サイズ、サファイアレンズの半径から基板の厚さを計算すると立体角が1.66の時160μm、立体角が3.85の時60μmとなる。
【0105】
そこで、
図9及び
図10に使用した計算モデルの基板の厚さ60μmと160μmの時の光取出し効率をpAlGaNサファイアレンズ、pAlGaN石英ガラスレンズ、pGaNサファイアレンズ、pGaN石英ガラスレンズについて光線追跡法で求めて
図9及び
図10に追加すると
図17A及び
図17Bが得られる。また、
図17A及び17Bの基板の厚さを立体角に置き換えると
図18A及び
図18Bの光取出し効率と立体角の関係が得られる。この図から、いずれの場合も立体角が2.5までは立体角と光取出し効率には比例関係がある。特にサファイアレンズを接合した場合は、立体角の値の上限が伸びる。
【0106】
立体角1.66は、計算モデルにおいて光取出し効率が急上昇する変曲点である。立体角が表面積を表すこと、表面積と光取出し効率とがほぼ比例の関係にあることから、変曲点1.66以降は、表面積が増加するため光取出し効率もそれに伴って増加する。すなわち、Sr=2π(1−cosθ)で表現される立体角が、立体角に依存する光取出し効率が大きくなる変曲点に対応する立体角以上であることが好ましい。
【0107】
まず、FDTDの計算結果について考察する。
図19A(サファイアレンズ半径が内接円の半径)及び
図19B(サファイアレンズ半径が外接円の半径)には、表3の各R/aにおける合計出力値(遠方界)の増減率のグラフを示す。更に
図20A(サファイアレンズ半径が内接円の半径)及び
図20B(サファイアレンズ半径が外接円の半径)には、各R/aにおける合計出力値(遠方界)の放射パターンを示す。
【0108】
上記の結果から、レンズ半径が内接円の半径以上外接円の半径程度におけるサファイアレンズ接合透明p型AlGaNコンタクト層フォトニック結晶LEDの傾向は以下のようになる。
1)次数m=3の場合、両立体角ともR/aが0.35で光取出し効率増減率が最大となる。m=4の場合は、両立体角ともR/aが大きくなるに従い光取出し効率増減率が減少する。
2)立体角と光取出し効率増減率の関係は、両次数とも立体角が小さいほうが光取出し効率増減率が大きい。
3)角度分布に関しては、立体角が小さいほうが10°以下の軸上方向に配光が集中している。
【0109】
上記の傾向から最適なフォトニック結晶は、サファイアレンズ半径が内接円の半径の場合、次数m=3、R/a=0.35で光取出し効率増減率が最大となり、立体角が1.66で44%、立体角が3.85で42%となる。一方、サファイアレンズ半径が外接円の半径の場合、次数m=3、R/a=0.35で両立体角とも光取出し効率増減率が最大の51%となる。この値を
図18A及び
図18Bの光取出し効率と立体角の関係に代入して、立体角1.66及び3.85における光取出し効率が次のように求められる。
(サファイアレンズ半径が内接円の半径の場合)
立体角1.66:20.2%×1.44=29.1%
立体角3.85:37.3%×1.42=53.0%
(サファイアレンズ半径が外接円の半径の場合)
立体角1.66:28.3%×1.51=42.7%
立体角3.85:37.8%×1.51=57.1%
【0110】
次に石英レンズ接合フォトニック結晶の光取出し効率を求める。
図18A及び
図18Bよりサファイアレンズ接合の場合と光取出し効率と立体角の関係が類似しているので、次数m=3、R/a=0.35の計算モデルを作成してFDTD法で解析を実施した。この計算モデルは
図11Aにある深紫外LEDの構造に対応する。解析結果を
図21A及(石英ガラスレンズ半径が内接円の半径)び
図21B(石英ガラスレンズ半径が外接円の半径)に示す。
(石英ガラスレンズが内接円の半径の場合)
立体角1.66、R/a=0.35m3の光取出し効率増減率は、52%
立体角3.85、R/a=0.35m3の光取出し効率増減率は、49%となった。
(石英ガラスレンズが外接円の半径の場合)
立体角1.66、R/a=0.35m3の光取出し効率増減率は、56%
立体角3.85、R/a=0.35m3の光取出し効率増減率は、61%となった。
【0111】
そこで、この結果を
図18A及び
図18Bの光取出し効率と立体角の関係に代入すると、
(石英ガラスレンズ半径が内接円の場合)
立体角1.66:24.7%×1.52=37.5%
立体角3.85:30.1%×1.49=44.8%
(石英ガラスレンズ半径が外接円の場合)
立体角1.66:27.0%×1.56=42.1%
立体角3.85:29.7%×1.61=47.8%が得られる。
【0112】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係る深紫外LEDの一例として、設計波長λを280nmとするAlGaN系深紫外LEDの構造を
図22に示す。
図22に示すように、本実施の形態によるAlGaN系深紫外LEDは、石英ガラスレンズ20b、サファイア基板1、AlNバッファー層2、n型AlGaN層3、バリア層4、量子井戸層5、バリア層6、電子ブロック層7、p型AlGaN層8a、p型GaNコンタクト層8b、Ni層9a、Au反射電極層10a、フォトニック結晶周期構造100、フォトニック結晶(ホール)101を有する。
【0113】
また、
図23に示す深紫外LEDは、サファイアレンズ20a、サファイア基板1、AlNバッファー層2、n型AlGaN層3、バリア層4、量子井戸層5、バリア層6、電子ブロック層7、p型AlGaN層8a、p型GaNコンタクト層8b、Ni層9、Au反射電極層10a、フォトニック結晶周期構造100、フォトニック結晶(ホール)101を有する。
【0114】
深紫外LEDは、Au反射電極層10aと、Ni層9aと、p型GaNコンタクト層8bと、波長λに対し透明な、p型AlGaN層8aとを、サファイア基板1とは反対側からこの順で有し、少なくともp型GaNコンタクト層8bとp型AlGaN層8aとの界面を含み、サファイア基板1方向においてp型AlGaN層8aを超えない厚さ方向の範囲に設けられたフォトニックバンドギャップ(PBG)を有するフォトニック結晶周期構造100を有し、かつ、サファイア基板1の裏面には、サファイア基板1の内接円の半径以上外接円の半径程度の半径を有する波長λに対して透明な半球型の石英ガラスレンズ20b(
図22)或いはサファイアレンズ20a(
図23)が接合されたことを特徴とする深紫外LEDである。
【0115】
フォトニック結晶周期構造100は、p型AlGaN層8aから始まり、p型GaNコンタクト層8b、Ni層9、を貫通してAu反射電極層10aと空気の界面まで到達していない構造であってもよい。
【0116】
すなわち、少なくともp型GaNコンタクト層8bとp型AlGaN層8aとの界面を含む厚さ方向の範囲に設けられたフォトニック結晶周期構造100であればよい。
【0117】
この構造であれば、p型GaNコンタクト層により低コンタクト抵抗が維持できる。また、反射型フォトニック結晶周期構造は、PBGを有することにより波長λの光を数回の多重反射で効率よく反射させることができる。従って、Ni層9と、p型GaNコンタクト層8bにおける光の吸収を抑制することができる。
【0118】
更に、フォトニック結晶周期構造100で反射されたほとんどの光は、サファイア基板1表面から入射してサファイア基板1裏面に接合された透明なレンズ20a・20bから空気中に出射される。このレンズは半球状レンズであるためにサファイア基板1への入射角度分布があっても、レンズ表面の法線方向に出射されるので、内部全反射を極力抑制することが可能となり、大きなLEEを得ることができる。
【0119】
また、この半球状レンズと反射型フォトニック結晶周期構造との相乗効果により、LEDにおけるLEE効果を増大させることが可能となる。
【0120】
本構造に搭載する反射型フォトニック結晶周期構造の計算及び設計指針は第3の実施の形態で記載した方法を踏襲する。
【0121】
但し、フォトニック結晶が深さ方向に占める割合はp型AlGaN層約50%、p型GaNコンタクト層約50%が好ましい。p型AlGaN層の比率が増した、例えばp型AlGaN層約75%、p型GaNコンタクト層25%が更に好ましい。前記フォトニック結晶周期構造の設計指針に基づいて計算モデルを作成してFDTD法(表4)にて光取出し効率増減率を解析した。表4の各R/aにおける合計出力値(遠方界)の増減率のグラフを
図24A(サファイアレンズ半径が内接円の半径)及び
図24B(サファイアレンズ半径が外接円の半径)に示す。更に各R/aにおける合計出力値(遠方界)の放射パターンを
図25A(サファイアレンズ半径が内接円の半径)及び
図25B(サファイアレンズ半径が外接円の半径)に示す。
【0123】
上記の結果から、レンズ半径が内接円の半径以上外接円の半径程度におけるサファイアレンズ接合p型GaNコンタクト層フォトニック結晶LEDの傾向は以下のようになる。
1)両次数、両立体角ともR/aが大きくなるに従い光取出し効率増減率が増加する。従って、
図13においてフォトニックバンドギャップ(PBG)の大きさとR/aは比例するので、PBGの大きさと光取出し効率増減率は比例する。
2)立体角と光取出し効率増減率の関係は、両次数とも立体角が小さいほうが光取出し効率増減率が大きい。
3)角度分布に関しては、立体角が小さいほうが10°以下の軸上方向に配光が集中している。
【0124】
上記の傾向から最適なフォトニック結晶は、サファイアレンズ半径が内接円の半径の場合、次数m=3、R/a=0.40で光取出し効率増減率が最大となり立体角1.66で109%、立体角が3.85で78%となる。一方、サファイアレンズ半径が外接円の半径の場合、次数m=3、R/a=0.40で立体角が1.66で97%、立体角3.85で34%となる。この値を
図18の光取出し効率と立体角の関係に代入して、立体角1.66及び3.85における光取出し効率が次のように求められる。
(サファイアレンズ半径が内接円の半径の場合)
立体角1.66:7.8%×2.09=16.3%
立体角3.85:17.2%×1.78=30.6%
(サファイアレンズ半径が外接円の半径の場合)
立体角1.66:12.8%×1.97=25.2%
立体角3.85:17.3%×1.34=23.2%
【0125】
次に石英レンズ接合フォトニック結晶の光取出し効率を求める。
図18A及び
図18Bよりサファイアレンズ接合の場合と光取出し効率と立体角の関係が類似しているので、次数m=3、R/a=0.40の計算モデルを作成してFDTD法で解析を実施した。この計算モデルは
図22にある深紫外LEDの構造に対応する。解析結果を
図26A(石英レンズ半径が内接円の半径の場合)及び
図26B(石英レンズ半径が外接円の半径の場合)に示す。
(石英ガラスレンズが内接円の半径の場合)
立体角1.66、R/a=0.40m3の光取出し効率増減率は、87%
立体角3.85、R/a=0.40m3の光取出し効率増減率は、75%となった。
(石英ガラスレンズが外接円の半径の場合)
立体角1.66、R/a=0.40m3 の光取出し効率増減率は、89%
立体角3.85、R/a=0.40m3 の光取出し効率増減率は、83%となった。
【0126】
そこでこの結果を
図18A及び
図18Bの光取出し効率と立体角の関係に代入すると、(石英ガラスレンズが内接円の半径の場合)
立体角1.66:11.2%×1.87=20.9%
立体角3.85:13.8%×1.75=24.2%
(石英ガラスレンズが外接円の半径の場合)
立体角1.66:12.5%×1.89 =23.6%
立体角3.85:13.5%×1.83 =24.7%が得られる。
【0127】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態に係る深紫外LEDの一例として、設計波長λを280nmとするAlGaN系深紫外LEDの構造を
図27A、B(sf1面の平面図、以下同様である。)、
図27C、Dに示す。
図27A、Bに示すように、本実施の形態によるAlGaN系深紫外LEDは、石英ガラスレンズ20b、サファイア基板1、PSS由来AlN結合ピラー周期構造200、PSS201、AlN結合ピラー202、n型AlGaN層3、バリア層4、量子井戸層5、バリア層6、電子ブロック層7、透明p型AlGaNコンタクト層8、極薄膜Ni層9、Al反射電極層10、フォトニック結晶周期構造100、フォトニック結晶(ホール)101を有する。
【0128】
また、
図27C、Dに示す深紫外LEDは、サファイアレンズ20a、サファイア基板1、PSS由来AlN結合ピラー周期構造200、PSS201、AlN結合ピラー202、n型AlGaN層3、バリア層4、量子井戸層5、バリア層6、電子ブロック層7、透明p型AlGaNコンタクト層8、極薄膜Ni層9、Al反射電極層10、フォトニック結晶周期構造100、フォトニック結晶(ホール)101を有する。
【0129】
これらの深紫外LEDは、Al反射電極層10と、極薄膜Ni層(1nm程度)9と、波長λに対して透明な透明p型AlGaNコンタクト層8からこの順で有し、少なくとも透明p型AlGaNコンタクト層8の厚さ方向に、或いは、透明p型AlGaNコンタクト層8から極薄膜Ni層9を含むAl反射電極層10との界面を含む厚さ方向の範囲に設けられたフォトニックバンドギャップ(PBG)を有するフォトニック結晶周期構造100を有し、かつ、サファイア基板1の表面にはウエットエッチングで形成された三角円錐形状PSSと、ここからエピ成長された四角錐台或いは六角錐台形状のAlN結合ピラーを有し、かつ、サファイア基板1の裏面には、サファイア基板1の内接円の半径以上外接円の半径程度の半径を有する波長λに対して透明な半球型の石英ガラスレンズ20b(
図27A、B)或いはサファイアレンズ20a(
図27C、D)が接合されたことを特徴とする深紫外LEDである。
【0130】
フォトニック結晶周期構造100は、透明p型AlGaNコンタクト層8と電子ブロック層7の界面に到達していない構造である。フォトニック結晶周期構造100を30nm〜50nm程度残さないとドライエッチングによる電子ブロック層7の損傷の可能性があるためである。
【0131】
尚、実際にデバイスを作成するプロセス上の観点から見た本実施の形態の変形例として、
図11Cに示す構造と同様に、フォトニック結晶は、極薄膜Ni層9を貫通してAl反射電極層10内に達しているが、Al反射電極層10と空気の界面までは到達していない構造であってもよい。
【0132】
反射型フォトニック結晶周期構造100は、PBGを有することにより波長λの光を数回の多重反射で効率よく反射させる事ができる。PSS由来結合ピラー周期構造200は、サファイア基板1の表面に、例えば周期が1〜数μm程度のPSS(Patterned Sapphire Substrate)周期構造(三角円錐形状又は円錐孔)201を有している。このような凹構造は、サファイア基板1の表面に形成したフォトレジスト等で形成されたSiO2のマスクパターンを用いてウエットエッチング法により表面を加工することにより形成することができる。尚、本明細書において、三角円錐とは、底面が円形の三角錐で、
図27Aから
図27Hまでに図示した形状を指す。
【0133】
この凹構造に対して、MOCVD法などを用いて、PSS由来結合ピラー周期構造体200内に続いて、AlN膜を数μm程度エピ成長する。すると、凹構造がAlN膜で埋まるとともに、その上の厚さ方向に、選択的にAlNによる四角錐台或いは六角錐台のAlN結合ピラー202が形成される。最終的には上部でコアレッセンスされて繋がり平坦なエピ膜となる。
【0134】
量子井戸層5で発光した深紫外光が、形成されたこの構造によれば、量子井戸層5で発光した深紫外光が、四角錐台或いは六角錐台のAlN結合ピラー202を導波路として伝搬し、サファイア基板1に入射していくために、サファイア基板1とPSS周期構造体200との界面における内部全反射を抑制し、光取出し効率が向上する。
【0135】
もし光が透明p型AlGaNコンタクト層8を僅かに透過した場合、極薄膜Ni層9による光の吸収は小さく、Al反射電極層10は光に対して90%の高反射率を有するため、フォトニック結晶周期構造100を設けないAl反射電極層単体に比較して大きなLEEを実現することが可能となる。
【0136】
更に、反射型フォトニック結晶周期構造100で反射されたほとんどの光はサファイア基板1表面から入射してサファイア基板1裏面に接合された透明なレンズ20a・20bから空気中に出射される。このレンズ20a・20bは半球状レンズであるためにサファイア基板1への入射角度分布があっても、レンズ表面の法線方向に出射されるので、内部全反射を極力抑制することが可能となり、大きなLEEを得ることができる。
【0137】
また、この半球状レンズと、フォトニック結晶周期構造及び透明p型AlGaNコンタクト層と極薄膜Ni層とAl反射電極層との相乗効果により、LEE効果を増大させることが可能となる。
【0138】
前記フォトニック結晶とPSS由来AlN結合ピラーを有する計算モデルを作成してFDTD法(表5)にて光取出し効率増減率を解析した。解析結果を
図28A(レンズ半径が内接円の半径の場合)及び
図28B(レンズ半径が外接円の半径の場合)に示す。
【0140】
放射パターンの結果から、レンズ半径が内接円の半径以上外接円の半径程度における透明p型AlGaNコンタクト層フォトニック結晶とAlN結合ピラーとレンズ接合では、10°以下、特に2°以下の軸上方向の配光性が改善される。
(サファイアレンズ半径が内接円の半径の場合)
透明p型AlGaNコンタクト層フォトニック結晶とAlN結合ピラーとサファイアレンズ接合のLEDの光取出し効率増減率は−9%となった。従ってこの値を第3の実施の形態で計算した立体角が3.85の透明p型AlGaNフォトニック結晶とサファイアレンズ接合LEDの光取出し効率の値に代入すると53.0%×0.91=48.2 %が得られる。
(サファイアレンズ半径が外接円の半径の場合)
透明p型AlGaNコンタクト層フォトニック結晶とAlN結合ピラーとサファイアレンズ接合のLEDの光取出し効率増減率は−10%となった。従ってこの値を第3の実施の形態で計算した立体角が3.85の透明p型AlGaNフォトニック結晶とサファイアレンズ接合LEDの光取出し効率の値に代入すると57.1%×0.9=51.4%が得られる。
(石英ガラスレンズ半径が内接円の半径の場合)
透明p型AlGaNコンタクト層フォトニック結晶とAlN結合ピラーと石英ガラスレンズ接合のLEDの光取出し効率増減率は−4%となった。従って上記と同様に立体角が3.85の透明p型AlGaNフォトニック結晶と石英ガラスレンズ接合LEDの光取出し効率の値に代入すると44.8%×0.96=43.0%が得られる。
(石英ガラスレンズ半径が外接円の半径の場合)
透明p型AlGaNコンタクト層フォトニック結晶とAlN結合ピラーと石英ガラスレンズ接合のLEDの光取出し効率増減率は−6%となった。従って上記と同様に立体角が3.85の透明p型AlGaNフォトニック結晶と石英ガラスレンズ接合LEDの光取出し効率の値に代入すると47.8%×0.94=44.9%が得られる。
【0141】
(第6の実施の形態)
図27E、F、
図27G、Hは、第5の実施の形態において例示した
図27A、B図、27C、Dに対応する図であり、レンズとAlN結合ピラーを有するが、フォトニック結晶周期構造が形成されていない例を示す図である。
【0142】
この図に基づいて計算モデル(表6参照)を作成してFDTD法にて解析を行った。解析結果を
図29A(レンズ半径が内接円の半径の場合)及び
図29B(レンズ半径が外接円の半径の場合)に示す。
【0144】
レンズ半径が内接円の半径以上外接円の半径程度における透明p型AlGaNコンタクト層とAlN結合ピラーとレンズ接合では、10°以下、特に2°以下の軸上方向の配光性が改善される。
(サファイアレンズ半径が内接円の半径の場合)
透明p型AlGaNコンタクト層を含むAlN結合ピラーとサファイアレンズ接合のLEDの光取出し効率増減率は−4%となった。従ってこの値を
図18Aの立体角が3.85の透明p型AlGaNコンタクト層を含むサファイアレンズ接合のLEDの光取出し効率の値に代入すると37.3%×0.96=35.8%が得られる。
(サファイアレンズ半径が外接円の半径の場合)
透明p型AlGaNコンタクト層を含むAlN結合ピラーとサファイアレンズ接合のLEDの光取出し効率増減率は−1%となった。従ってこの値を
図18の立体角が3.85の透明p型AlGaNコンタクト層を含むサファイアレンズ接合のLEDの光取出し効率の値に代入すると37.8%×0.99=37.4%が得られる。
(石英ガラスレンズ半径が内接円の半径の場合)
透明p型AlGaNコンタクト層を含むAlN結合ピラーと石英ガラスレンズ接合のLEDの光取出し効率増減率は6%となった。従って上記と同様に立体角が3.85の透明p型AlGaNコンタクト層と石英ガラスレンズ接合LEDの光取出し効率の値に代入すると30.1%×1.06=31.9%が得られる。
(石英ガラスレンズ半径が外接円の半径の場合)
透明p型AlGaNコンタクト層を含むAlN結合ピラーと石英ガラスレンズ接合のLEDの光取出し効率増減率は11%となった。従って上記と同様に立体角が3.85の透明p型AlGaNコンタクト層と石英ガラスレンズ接合LEDの光取出し効率の値に代入すると29.7%×1.11=33.0%が得られる。
【0145】
第3から第6の実施の形態の結果を纏めると以下のようになる。
【0146】
レンズ半径が、接合される基板裏面の内接円の半径以上外接円の半径程度の場合、次の法則が成り立つ。
1)透明p型AlGaNコンタクト層フォトニック結晶に接合するサファイアレンズ或いは石英ガラスレンズを有するLEDの光取出し効率増減率は、次数m=3、R/a=0.35で設計されたフォトニック結晶が大きい。
2)p型GaNコンタクト層フォトニック結晶に接合するサファイアレンズ或いは石英ガラスレンズを有するLEDの光取出し効率増減率は、フォトニックバンドギャップの大きさとR/aが比例し、R/aの大きさと光取出し効率増減率が比例する。
3)サファイアレンズ接合LEDの角度分布は、透明p型AlGaNコンタクト層やp型GaNコンタクト層の何れも立体角が小さいほうが、10°以下の軸上方向に配光が集中している。
4)石英ガラスレンズ接合LEDの角度分布は、透明p型AlGaNコンタクト層やp型GaNコンタクト層などコンタクト層の種類及び立体角の大きさに関係なく、10°以下の軸上方向には配光が集中しない。
5)AlN結合ピラーはサファイアレンズや石英ガラスレンズなどレンズの種類に関係なく、10°以下、特に2°以下の軸上方向に配光が集中する。
6)FDTD法の立体角と同じ光線追跡法の立体角でデータを比較・補間する事により、解析領域をサブnm〜数mmに広げて光取出し効率を得る事が可能となる。従って、LED素子からパッケージ構造に至る範囲で、光取出し効率を最大にするためのフォトニック結晶の設計最適化に指針を与える事が可能となる。
【0147】
第3から第6の実施の形態の各深紫外LEDの光取出し効率の解析結果を表7に纏める。
【0149】
透明p型AlGaNコンタクト層に反射型フォトニック結晶を形成し、サファイアレンズ接合と組み合わせて立体角が大きくなるようサファイア基板の厚さを調整することにより最大で60%もの光取出し効率が得られる。
【0150】
また、本実施の形態による手法を用いることで、LED素子からパッケージ構造に至る範囲で、光取出し効率を最大にするためのフォトニック結晶の設計最適化に指針を与えることが可能となる。
【0151】
(第7の実施の形態)
図27I、J、
図27K、Lは、第5の実施の形態において例示した
図27A、B、
図27C、Dに対応する図であり、透明p型AlGaNコンタクト層、極薄膜Ni層、Al反射電極層をp型AlGaN層、p型GaNコンタクト層、Ni層、Au反射電極層に置き換えた例を示す図である。
【0152】
(第8の実施の形態)
図27M、N、
図27O、Pは、第6の実施の形態において例示した
図27E、F、
図27G、Hに対応する図であり、透明p型AlGaNコンタクト層、極薄膜Ni層、Al反射電極層を、p型AlGaN層、p型GaNコンタクト層、Ni層、Au反射電極層に置き換えた例を示す図である。
【0153】
(第9の実施の形態)
反射型フォトニック結晶とレンズ接合とを有する深紫外LEDの設計方法に関して、透明p型AlGaNコンタクト層を有するフォトニック結晶設計の計算方法は、例えば以下のようになる。
【0154】
すなわち、フォトニック結晶周期構造がフォトニックバンドギャップを有し、底面部において、異なる屈折率をもつ透明p型AlGaNコンタクト層と空気を2つの構造体として形成され、これら構造体の平均屈折率をn
av(n
avは、周期aと前記円孔の半径Rの関数)、周期aとした場合に、次式(1)で示すブラッグ散乱条件を満たす時、このフォトニック結晶周期構造に入射したTE光は反射されTM光は透過される。
mλ/n
av=2a (1)
【0155】
そして、円孔の半径Rと周期aの比であるR/a、設計波長λ及び前記2つの構造体の屈折率n
1とn
2に対応する各構造体の誘電率ε
1及びε
2を用いて、平面波展開法によりTE光及びTM光のフォトニックバンド構造を解析する。具体的には次式(2)、(3)で示すマクスウエルの波動方程式に入力し、その固有値計算を行う。
【0158】
但し、E′=|k+G|E(G)、ε:比誘電率、G:逆格子ベクトル、k:波数、ω:周波数、c:光速、E:電界である。
【0159】
R/aを変数として、0.01のステップで0.20≦R/a≦0.40の範囲でTE光のフォトニックバンド構造を求め、フォトニックバンドギャップが確認できる第1フォトニックバンド(1
stPB)と第2フォトニックバンド(2
ndPB)間のフォトニックバンドギャップをPBG1、第7フォトニックバンド(7
thPB)と第8フォトニックバンド(8
thPB)間のフォトニックバンドギャップをPBG4として、各PBGとR/aの関係を求める。
図13は、その結果を示す図である。
【0160】
同様にTM光のフォトニックバンド構造を求め、1
stPBと2
ndPB間のPBGをPBG1、3
rdPBと4
thPB間のPBGをPBG2、5
thPBと6
thPB間のPBGをPBG3、7
thPBと8
thPB間のPBGをPBG4として各PBGとR/aの関係を求める。
図14は、その結果を示す図である。
【0161】
フォトニック結晶周期構造における状態密度(ρ)とは、どの周波数にどれだけのフォトンが存在できる状態が存在するかを示したものである。一様な媒質では状態密度は周波数に対して単調増加を示すだけであるが、フォトニック結晶においてはフォトニックバンドギャップの周波数領域ではρ(ω)=0となる。フォトニックバンドギャップ付近での状態密度の急峻な変化や、その他の周波数の領域での鋭いピークは群速度がゼロとなることに起因している。そして、この群速度がゼロとなる代表的な対称点は、M点で2つの波がブラッグの回折により光の伝搬方向を変化させて定在波を作る。そしてこの状態密度の急峻な変化率はフォトニックバンドギャップの大きさにほぼ比例している。
【0162】
そこで、フォトニックバンドギャップの大きさと反射・透過効果の関係、並びに、深紫外LEDにおける光取出し効率(LEE)増減率をFDTD法による解析で求め、LEE増減率が最大となるフォトニック結晶の直径d、周期a及び深さhを得る。
【0163】
より詳細な計算処理フローを
図15に示す。
(ステップS01)
フォトニック結晶周期構造の周期構造パラメータである周期aと構造体の半径Rの比(R/a)を仮決定する。
(ステップS02)
例えば、大きな屈折率の媒体中に小さな屈折率の構造を形成した第1の構造体であり、例えば101ホールが形成された構造体である第1の構造体のそれぞれの屈折率n
1とn
2、及びこれらとR/aから平均屈折率n
avを算出し、これをブラッグ条件の式に代入し、次数mごとの周期aと半径Rを得る。
(ステップS03)
R/a及び波長λ並びに前記屈折率n
1、n
2から得られる各構造体の誘電率ε
1及びε
2を用いた平面波展開法により、TE光のフォトニックバンド構造を解析する。
(ステップS04)
TE光の第一フォトニックバンドと第二フォトニックバンド間のPBGが存在するまで仮決定のR/aの値を変えて繰り返す。
(ステップS05)
PBGを有するR/aについて、ブラッグ条件の次数mに応じた個別の周期a及び半径R、並びに、任意の周期構造の深さhを変数として行うFDTD法によるシミュレーション解析により、前記波長λに対する光取出し効率増減率を求める。
(ステップS06)
FDTD法によるシミュレーションを繰り返し行うことにより、波長λに対する光取出し効率増減率が最大となるブラッグ条件の次数mと、その次数mに対応する周期構造パラメータの周期a、半径R、及び、深さhを決定する。
【0164】
これらの周期構造パラメータの値は、ブラッグ散乱の式(式(1))において、波長λと周期aの値が近くなる次数mを選択して求めれば良い。また、深さは周期a以上の深さhを有することが望ましい。そして、FDTD法の立体角と同じ光線追跡法の立体角でデータを比較・補間する事により、解析領域をサブnm〜数mmに広げて光取出し効率を得る事が可能となる。従って、LED素子からパッケージ構造に至る範囲で、光取出し効率を最大にするためのフォトニック結晶の設計最適化に指針を与えることが可能となる。
【0165】
尚、p型GaNコンタクト層を有するフォトニック結晶設計の計算方法は、透明p型AlGaNコンタクト層を有するフォトニック結晶設計の計算方法と同様であるが、下記の点が異なる。
【0166】
すなわち、フォトニック結晶が深さ方向に占める割合はp型AlGaN層約50%、p型GaNコンタクト層約50%が好ましい。p型AlGaN層の比率が増した、例えばp型AlGaN層約75%、p型GaNコンタクト層約25%が更に好ましい。
【0167】
これにより、p型GaNコンタクト層を有するフォトニック結晶設計を行うことができる。
【0168】
フォトニック結晶周期構造におけるフォトニックバンドギャップは、TE偏光成分に対し開かれていることが好ましい。
【0169】
また、フォトニック結晶周期構造は、その深さhを周期aの2/3a以上とすることが好ましく、さらに、その深さhを前記周期a以上とすることが好ましい。
【0170】
また、その深さhは、p型AlGaN層の厚さ以上、p型GaNコンタクト層と前記p型AlGaN層との合計の厚さ以下、とすることが好ましく、p型AlGaN層に加えて、さらに、基板側にp型AlGaN層よりもAlの組成の大きいp型AlGaN層を設けても良い。
【0171】
(第10の実施の形態)
深紫外LEDの製造方法に関して、例えば、
図22に示すように、設計波長をλとし、反射電極層10aと、金属層9aと、p型GaNコンタクト層8bと、p型AlGaN層8aとを、基板1とは反対側からこの順で含有する積層構造体を準備する工程と、少なくとも前記p型GaNコンタクト層8bとp型AlGaN層8aの界面を含む厚さ方向の範囲に設けられたフォトニック結晶周期構造を形成するための金型を準備する工程と、前記積層構造体上に、レジスト層を形成し、前記金型の構造を転写する工程と、前記レジスト層をマスクとして順次前記積層構造体をエッチングしてフォトニック結晶周期構造を形成する工程が提供される。
【0172】
或いは、深紫外LEDの製造方法であって、例えば、
図11Cに示すように、設計波長をλとし、Al反射電極層10と、極薄膜Ni層9と、透明p型AlGaNコンタクト層8とを基板1とは反対側からこの順で含有する積層構造体を準備する工程と、少なくとも透明p型AlGaNコンタクト層8の厚さ方向、或いは透明p型AlGaNコンタクト層8から前記極薄膜Ni層9を含むAl反射電極層10との界面を含む厚さ方向の範囲に設けられたフォトニック結晶周期構造を形成するための金型を準備する工程と、前記積層構造体上に、レジスト層を形成し、前記金型の構造を転写する工程と、前記レジスト層をマスクとして順次前記積層構造体をエッチングしてフォトニック結晶周期構造を形成する工程が提供される。
【0173】
そして上記いずれかのフォトニック結晶周期構造を形成する工程後に、LED素子サファイア基板側裏面に素子の外接円程度の半径を有する波長λに対して透明な半球状レンズが接合される工程を加えた深紫外LEDの製造方法が提供される。レンズの材料はサファイア基板の屈折率と空気の屈折率の平均値より大きな屈折率を有する材料が望ましい。サファイア、スピネル、石英ガラス、AlN、封止樹脂など上記の条件を満足するのであれば何れでも良い。また、接合方法は、表面活性化接合(SAB)、原子拡散接合(ADB)、大気圧プラズマやオゾンガスによる表面改質後の接合、設計波長λに対して透明な接着剤による接合、接合界面において光の散乱及び吸収が抑制される方法であれば何れでも良い。
【0174】
以上の工程により、フォトニック結晶周期構造と、LED素子サファイア基板側裏面に素子の内接円の半径以上外接円の半径程度の半径を有する波長λに対して透明な半球状レンズを有する構造を製造することができる。
【0175】
(第11の実施の形態)
以下、本発明の第11の実施の形態について詳細に説明する。
【0176】
本発明の第11の実施の形態は、上記の各実施の形態において説明したフォトニック結晶周期構造、PSS周期構造等の微細構造を、ナノインプリントリソグラフィー法による転写技術を用いて加工可能であることを示すものである。
【0177】
第1から第10までの実施の形態によれば、周期構造を被加工物面上に大面積で一括転写にて加工することが好ましい。
【0178】
以下に、より詳細なナノインプリントリソグラフィー法によるフォトニック結晶周期構造及びPSS周期構造の転写技術を用いた製造方法について説明する。
【0179】
ナノインプリントは金型のフォトニック結晶パターンを基板上にスピンコートした有機レジストに大面積で一括転写する優れた技術を有する。また、樹脂フィルム金型を利用すれば基板が数百ミクロン程度反っていても転写が可能である。しかし、ナノインプリント用有機レジストは、流動性を重視するためにパターン被形成部である材料に対するエッチング選択比が必ずしも十分ではない。また、金型のパターンサイズとエッチング後のパターン被形成部サイズが一致しない。そこで、この問題を解決するために2層レジストを用いたプロセスを次のように実施する。
1)加工対象の構造体に対しエッチング選択比の大きい下層レジストをコートし、その上に流動性と酸素耐性を有する上層レジストとコートする、二層レジスト法を用いた転写技術を用いる。
2)また、転写には金型を用い、金型には樹脂フィルムを用いることも可能である。より具体的には、周期構造を形成する基板面上にこの基板に対しエッチング選択比の大きい、一例として、有機下層レジストをスピンコートする。次に、流動性と酸素耐性機能を有する、一例として、シリコン含有上層レジストを下層レジスト面上にスピンコートする。
3)次に、上層レジスト面上に金型を用いたナノインプリントリソグラフィー法を用いて、周期構造を転写する。
4)次に、周期構造が転写された上層レジストを酸素プラズマに曝し、酸素耐性を付与するとともに、ナノインプリント転写において残存した上層レジストの残膜を除去する。
5)次に、酸素耐性を有した上層レジストをマスクとして、有機下層レジストを酸素プラズマでエッチングし、基板のドライエッチングのためのマスクを形成する。
6)最後に、このマスクをエッチングマスクとして、基板をICPプラズマでドライエッチングする。
【0180】
以上の1)から6)までのステップが、基板に対して二層レジスト法を用いた転写技術である。
【0181】
尚、このプロセス技術を用いる場合には、下層レジストの膜厚を変化させることにより、金型上の周期構造の深さに対し1.5倍程度(サファイア基板の場合の例である。)のエッチング深さを被転写物上に得ることが可能である。
【0182】
さらに、エッチングマスクとしての酸素耐性を有したパターン転写された上層レジストを用い、これを介した、有機下層レジストの酸素プラズマエッチングにおいて、酸素プラズマ処理の各条件を変化させることにより、例えば、上層レジストによる下層レジストのマスク形成時の酸素プラズマ条件を変化させることにより、金型上の周期構造の直径に対し30%程度のサイズの調整が可能である。
【0183】
この方法を用いれば、ナノインプリントリソグラフィー法において、精細な周期構造を被加工物面上に精度よく、正確に、かつ、制御可能な状態で再現することが可能となる。
【0184】
以下に、より具体的な工程例に図面を参照しながら詳細に説明する。良い光取出し効率を得るには、nmオーダーの加工を計算通りに形成する必要がある。
【0185】
図30は、本実施の形態による周期構造の製造工程の一例を示す図である。
【0186】
本実施の形態による深紫外LEDにおけるフォトニック結晶周期構造等の製造方法では、流動性とエッチング選択比の両方の特徴を兼ね備えた二層レジストを用いた、ナノインプリントリソグラフィー法による転写技術を利用する。この技術を用いて、nmオーダーの微細なパターンを有するフォトニック結晶周期構造を一例として、サファイア基板に転写した。以下、
図30に沿って説明する。
【0187】
まず、
図30に示すように、上記各実施において最適化された周期構造を正確にサファイア基板上に再現するための金型を作成する。この金型は、
図30(b)に示すように、基板81の反りに追従できるよう樹脂製の金型を使用することもできる。
【0188】
次に、サファイア基板81にエッチング選択比の大きい有機下層レジスト83を厚さgにてスピンコートする。なお、この厚さgは、サファイア基板81に対する下層レジスト83のエッチング選択比に応じて選択的に決定する。その後、下層レジスト83面上に流動性と酸素耐性機能を有するシリコン含有の上層レジスト85を所定の厚さにてスピンコートする(
図30(a))。
【0189】
次に、上層レジスト85に、金型のパターン87・89をナノインプリント装置を用いて転写する(
図30(b))。
【0190】
次に、金型のパターン87・89が転写された上層レジスト85を酸素プラズマに曝し、酸素耐性を付与するとともに、ナノインプリント転写において残存した上層レジストの残膜を除去する。(
図30(c))。これにより、上層レジストパターン85aが形成される。
【0191】
次に、酸素耐性を有した上層レジストパターン85aをマスクとして、有機下層レジスト83を酸素プラズマでエッチングし、サファイア基板81をドライエッチングするためのパターンマスク85bを形成する(
図30(d))。尚、
図30(e)に記載のパターンマスクのサファイア基板81側の直径d
1は、酸素プラズマの条件を調整することで、d
1の30%程度の範囲内で微調整することができる。
【0192】
次に、パターンマスクを介しICPプラズマでサファイア基板81をドライエッチングし、サファイア基板81に、本発明の各実施の形態により最適化された周期構造81aを形成することができる(
図30(e))。
【0193】
周期構造がピラー構造による場合には、エッチング後の形状は
図30(f)に示すとおり、概ねd
1<d
2の台形状となり、側壁角度は有機下層レジストのエッチング選択比に依存する。なお、有機下層レジストの厚さgを変更すれば、容易にドライエッチング後のサファイア基板81aに形成するフォトニック結晶周期構造の深さを、金型の深さに対し1.5倍程度の深さとすることができる。
【0194】
また、金型の作り直しに代えて、パターンマスク形成時に直径d
1を変更すると、周期構造の直径を30%程度容易に変更することができる。従って、金型の製作時間をなくしコスト削減に寄与し、ひいては半導体発光素子の製造コスト上、大きなメリットとなる。
【0195】
なお、
図31(a)から(c)までは、
図30(b)、
図30(e)及び
図30(f)の工程を行った際の実際のSEM写真(ナノインプリントプロセスphCピラー断面SEM)を、それぞれ「ナノインプリント」、「パターンマスク形成」、「ドライエッチング・アッシング」として示した。このように、きれいな周期構造を製造することができる
上記の各実施の形態によれば、深紫外LEDにおいて、LEEをより一層高めることができ、より高いWPE効率を達成することができる。
【0196】
(第12の実施の形態)
本発明の第12の実施の形態に係る深紫外LEDの一例として、集積フォトニック効果深紫外LEDの構造を
図32Aに示す。
図32Aに示すように、本実施の形態によるAlGaN系深紫外LEDは、サファイアレンズ20a、サファイア基板1、AlNバッファー層2、n型AlGaN層3、バリア層4、量子井戸層5、バリア層6、多重量子障壁層(電子ブロック層)7、p型AlGaN層8a、p型GaNコンタクト層8b、Ni層9a、Au反射電極層10a、フォトニック結晶周期構造100、フォトニック結晶(空孔、ホール)101を有する。
【0197】
深紫外LEDは、Au反射電極層10aと、Ni層9aと、p型GaNコンタクト層8bと、設計波長λに対して透明な、p型AlGaN層8aとを、サファイア基板1とは反対側からこの順で有し、少なくともp型GaNコンタクト層8bとp型AlGaN層8aとの界面を含み、サファイア基板1方向においてp型AlGaN層8aを超えない厚さ方向の範囲に設けられたフォトニックバンドギャップ(PBG)を有するフォトニック結晶周期構造100を有し、かつ、サファイア基板裏面には、サファイア基板1の外接円程度の半径を有する波長λに対して透明な半球型のサファイアレンズ20aが接合されたことを特徴とする深紫外LEDである。すなわち、基板とレンズの両者の屈折率は同じである。そして、表面実装型パッケージに搭載されたLED構造である。
【0198】
図32Bにxy平面図として示す通り、反射型フォトニック結晶周期構造100は、円柱などの形状の、p型AlGaN層やp型GaNコンタクト層よりも屈折率が小さい空気などの半径がRの円を断面とする空孔101が、x方向及びy方向に沿って周期aで三角格子状に形成されたホール構造を有する。また、空孔101は、ドライエッチングによる多重量子障壁層7の界面に到達していない構造であり、かつ、空孔101の基板方向の端面と量子井戸層5までの距離Gが、50nm〜70nmの範囲にある。さらに、反射型フォトニック結晶周期構造100の深さhが、40nm〜60nmの範囲にある。
【0199】
上記の構造においては、量子井戸層5で発光した波長λの深紫外光はTE光とTM光が全方向に放射されて楕円偏光しながら媒質中を伝搬する。量子井戸層5の近傍に設けられたフォトニック結晶周期構造100が、端面において異なる屈折率をもつp型AlGaN層8aと空気を二つの構造体として形成され、空孔の半径Rと周期のaの比であるR/a=0.4とした時、上記フォトニック結晶の充填率fは次式で計算されf=2π/3
0.5×(R/a)
2=0.58となる。
【0200】
そして、空気の屈折率n
1=1.0、p型AlGaNの屈折率n
2=2.583、f=0.58より等価屈折率n
effは次式で計算されn
eff=(n
22+(n
1−n
2)
2×f)
0.5=1.838が得られる。
【0201】
このフォトニック結晶周期構造におけるTM光、TE光のフォトニックバンド構造を平面波展開法で求めると
図33A及び
図33Bが得られる。
【0202】
図33Aに示すように、TM光ではフォトニックバンドギャップ(PBG)が観測されないが、
図33Bに示すように、TE光では第1フォトニックバンド(ω1TE)と第2フォトニックバンド(ω2TE)間に大きなPBGが観測された。
【0203】
尚、R/a=0.4は、発明者自身が発明し、国際出願PCT/JP2015/071453号に記載した、「R/aの大きさ、PBGの大きさ、光取出し効率増減率が其々比例する」という原理から採用した値である。
【0204】
ここで、発光波長λ=280nm、R/a=0.4、次数m=4とすると、ブラッグ散乱条件(mλ/n
eff=2a、但し、n
eff:等価屈折率、a:周期、m:次数)を満たすフォトニック結晶の周期aはa=1/2×mλ/n
eff=1/2×4×280/1.838=305nmと計算される。また、R/a=0.4よりフォトニック結晶の直径(2R)は、244nmとなる。
【0205】
本実施の形態においては、フォトニック結晶のサファイア基板側の端面の位置が量子井戸層に接近するに従い、深さを周期a(例えばa=305nm)と同等な305nmにする必要がなく、60nm程度の浅い深さでも、より大きな反射効果が得られる。また、次数mの取りうる範囲も広がり1≦m≦5となる。尚、mが小さくなると周期aも小さくなる。
【0206】
そこで、実際に計算モデルを作成してFDTD法で光取出し効率増減率を解析してフォトニック結晶周期構造とサファイアレンズ接合の集積フォトニック効果を検証した。フォトニック結晶の深さ(PhC Depth)を40nm、50nm、60nmの3点、量子井戸層からフォトニック結晶の端面までの距離G(Gap to Quantum Well)を50nm、60nm、70nmの3点選択して、深さhと距離Gを可変とした合計9点の光取出し効率増減率[LEE Enhancement(%)]の値を求めた。
【0207】
図34に集積フォトニック効果FDTD計算モデルを、表8にその詳細パラメータを示す。また、光取出し効率[LEE(%)]を求めるために、
図35に光線追跡法のフォトニック結晶の無いFlat構造LEDの計算モデルを、表9にその詳細パラメータを示す。
【0211】
表10に集積フォトニック効果解析結果一覧表、
図36Aに集積フォトニック効果LEE Enhancement(光取出し効率増減率)のグラフ、
図36BにLEE(光取出し効率)のグラフ、
図36Cに集積フォトニック効果放射パターングラフを示す。
【0212】
まず始めに、光線追跡法で得られた光取出し効率は12.7%であった。
尚、上記の結果は前の実施の形態で計算した方法と同様に、光線追跡法の光取出し効率値とFDTD法の光取出し効率増減率値を表10において以下のように計算した。
1) Flat構造LEDに対するフォトニック結晶、m4_G60nm_h60nmのEnhanced(増減率):118%
2) 光線追跡法のFlat構造LEDの光取出し効率:12.7%
故に、フォトニック結晶、m4_G60nm_h60nmの光取出し効率は、
12.7%×2.18倍=27.7%となり、集積フォトニック効果が十分に得られている。
【0213】
また、
図36A及び
図36Bのグラフから明らかなように、フォトニック結晶の基板方向の端面から量子井戸層までの距離Gが50nm〜70nm及びその深さhが40nm〜60nmの範囲において光取出し効率及びその増減率の極大値が得られるポイント(本解析条件においてはG=60nm)がp型AlGaN層内に存在する事が理解できる。
【0214】
更に
図36Cの放射パターングラフから、極大値が得られるポイント(G=60nm)においては何れの深さのフォトニック結晶の軸上の強度は、Flat構造LEDに対して大きいことがわかる。
【0215】
処理および制御は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)によるソフトウェア処理、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)によるハードウェア処理によって実現することができる。
【0216】
また、上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0217】
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
【0218】
また、本実施の形態で説明した機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。尚、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0219】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0220】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。またプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。機能の少なくとも一部は、集積回路などのハードウェアで実現しても良い。
【0221】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。