特許第6230071号(P6230071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6230071
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】熱交換式反応管
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/24 20060101AFI20171106BHJP
   C01B 32/16 20170101ALI20171106BHJP
【FI】
   B01J8/24 311
   C01B32/16
【請求項の数】6
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-533055(P2014-533055)
(86)(22)【出願日】2013年8月28日
(86)【国際出願番号】JP2013073050
(87)【国際公開番号】WO2014034739
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2016年6月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-189305(P2012-189305)
(32)【優先日】2012年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】野田 優
(72)【発明者】
【氏名】金 東榮
(72)【発明者】
【氏名】今 佑介
(72)【発明者】
【氏名】陳 忠明
(72)【発明者】
【氏名】羽場 英介
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊輔
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第01803306(US,A)
【文献】 特開平08−301602(JP,A)
【文献】 特開2003−095614(JP,A)
【文献】 特開2003−286015(JP,A)
【文献】 米国特許第03251337(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第1315291(CN,A)
【文献】 特開2009−161426(JP,A)
【文献】 特表2004−526660(JP,A)
【文献】 特開2001−115348(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/033367(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 8/00−8/46
B01J 19/00−19/32
B82Y 40/00
C01B 32/00−32/991
JSTPlus/JChina/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ガスが流入されて前記第一ガスが下降する第一流路を形成する第一管部と、
前記第一流路の下部に連通されて前記第一ガスが上昇する第二流路を形成し、流動化媒体が充填される第二管部と、
前記第一管部及び前記第二管部を覆う加熱装置と、
前記第一流路に連通されることなく前記第二流路に連通されて、第二ガスが流入される第三流路を形成する第三管部と、を有し、
前記第一流路と前記第二流路とが隔壁を隔てて隣接されており、
前記第二流路に、前記流動化媒体を保持して前記第一ガスを通過させる分散板が設けられており、
前記分散板は、前記第二流路の下端に設けられており、
前記第三流路は、前記分散板に接続される、
熱交換式反応管。
【請求項2】
前記第一管部及び前記第二管部は、前記第一管部の内部に前記第二管部が配置される二重管構造に形成されている、
請求項1に記載の熱交換式反応管。
【請求項3】
前記第一管部は、単一もしくは複数の管からなり、
前記第一管部及び前記第二管部は、前記第二管部の外側に前記第一管部が配置される構造に形成されている、
請求項1に記載の熱交換式反応管。
【請求項4】
前記流動化媒体は、カーボンナノチューブ合成用触媒が担持された粒子状の触媒担持支持体であり、
前記第一ガスは、カーボンナノチューブの炭素源を含む原料ガスである、
請求項2又は3に記載の熱交換式反応管。
【請求項5】
前記第一流路は、前記加熱装置および前記第二流路との熱交換による前記第一ガスの予熱が促進される位置に配置されており、
前記第三流路は、前記加熱装置および前記第二流路との熱交換による前記第二ガスの予熱が抑えられる位置に配置されている、
請求項1〜4の何れか一項に記載の熱交換式反応管。
【請求項6】
前記流動化媒体は、粒子状の支持体であり、
前記第一ガスは、カーボンナノチューブの炭素源を含む原料ガスであり、
前記第二ガスは、カーボンナノチューブ合成用触媒を含む触媒ガスである、
請求項の何れか一項に記載の熱交換式反応管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱状態においてガスを流動化媒体上にて反応させる熱交換式反応管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流動層法によるカーボンナノチューブの合成に用いられる反応管は、一直線状に延びる管状に形成されている。そして、反応管内には、貫通孔の形成された分散板が配置されており、反応管外には、加熱装置が配置されている。このような反応管を用いてカーボンナノチューブを合成する際は、まず、触媒粒子が担持された粒状担体を、分散板に保持されるように反応管に充填する。次に、加熱装置で反応管を加熱しながら、原料ガスを反応管の下方から供給して、原料ガスにより粒状担体を流動化させる。これにより、粒状担体上に原料ガスが流通されて、粒状担体に担持されたカーボンナノチューブ合成用触媒からカーボンナノチューブが成長する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−211904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような流動層法によるカーボンナノチューブの合成においては、原料ガスの温度管理が重要である。
【0005】
しかしながら、従来の直線状に延びる管状の反応管では、原料ガスが分散板に保持された粒状担体を通過しながら加熱装置により加熱される。このため、熱交換型反応管内の下流側では、原料ガスの温度が設定温度より低くなり、熱交換型反応管内における原料ガスの温度が不均一となる。しかも、原料ガスの流速が大きくなるほど、原料ガスの温度上昇が低く抑えられるため、熱交換型反応管内における原料ガスの温度が設定温度から大きく離れてしまう。その結果、カーボンナノチューブを効果的に合成できないという問題がある。更に、原料ガスの加熱に多量の燃料や電力を必要とし、反応管出口からガスが多量の熱エネルギーを持って流れ出すため、熱損失が大きく、コストを増大させる。
【0006】
そこで、本発明は、均熱性が高く、熱損失の少ない熱交換型反応管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る熱交換式反応管は、第一ガスが流入されて第一ガスが下降する第一流路を形成する第一管部と、第一流路に連通されて第一ガスが上昇する第二流路を形成し、流動化媒体が充填される第二管部と、第一管部及び第二管部を覆う加熱装置と、を有し、第一流路と第二流路とが隔壁を隔てて隣接されており、第二流路に、流動化媒体を保持して第一ガスを通過させる分散板が設けられている。
【0008】
本発明に係る熱交換式反応管では、第一ガスは、第一管部の第一流路に流入された後、流動化媒体が充填される第二管部の第二流路に流入される。このとき、加熱装置が第一管部および第二管部の全体を加熱するとともに、第二管部から流出する反応後の高温ガスによっても加熱されるため、第一ガスは、第一流路の通過時に予熱され、第二流路に流入する時点で既に十分加熱された状態となる。これにより、第二流路を流れる第一ガスは、上流側から下流側まで温度が均一化された状態となり、均熱性の高い第一ガスが、触媒担持支持体上を流通するため、第一ガスを流動化媒体上にて効果的に反応させることができる。一方で、第二管部の下部(分散板側)では十分に加熱された第一ガスが流入し、周囲を高温の第一管部と加熱装置に覆われているため、第二流路を上昇する第一ガスは冷えることなく高温を保持できる。第二管部の上部(出口側)は、十分に加熱されていない第一管部に接するため、第二管部から流出する高温の反応後の第一ガスが第一管部に流入する低温の第一ガスにより冷却され、同時に、第一管部に流入する第一ガスが第二管部から流出する第一ガスにより加熱される、熱交換が起きる。これにより、第一管部に流入するガスの加熱に要するエネルギーの多くを、第二管部から流出する反応後の第一ガスから賄えるため、加熱装置への投入エネルギーを削減でき、更に、第二管部から流出する反応後の第一ガスの冷却も簡略化できる。しかも、第一流路と第二流路とが隣接されるとともに、第一流路において第一ガスが予熱されるため、熱交換式反応管をコンパクトにすることができる。
【0009】
この場合、第一管部及び第二管部は、第一管部の内部に第二管部が配置される二重管構造に形成されているものとすることができる。また、第一管部は、単一もしくは複数の管からなり、第一管部及び第二管部は、第二管部の外側に第一管部が配置される構造に形成されているものとすることができる。このように第一管部及び第二管部を配置すれば、第二管部の側壁が第一流路と第二流路との隔壁となる。これにより、第二管部の内側に第一管部が存在しないため流動化媒体の流動化を良好に行うことができる。
【0010】
また、流動化媒体は、カーボンナノチューブ合成用触媒が担持された粒子状の触媒担持支持体であり、第一ガスは、カーボンナノチューブの炭素源を含む原料ガスであるものとすることができる。これにより、均熱性の高い原料ガスにより粒子状の触媒担持支持体が流動化されるため、カーボンナノチューブを効果的に合成させることができる。
【0011】
また、第一流路に連通されることなく第二流路に連通されて、第二ガスが流入される第三流路を形成する第三管部を更に有するものとすることができる。このように構成すれば、第二ガスは余り熱交換することなくかつ短い滞留時間で第二流路に流入する。この場合、第一流路は、加熱装置および第二流路との熱交換による第一ガスの予熱が促進される位置に配置されており、第三流路は、加熱装置および第二流路との熱交換による第二ガスの予熱が抑えられる位置に配置されているものとすることができる。このため、第二ガスとして高温では単独でも分解するガスを用いた場合にも、第三流路においてガスがほとんど分解することなく、第二流路に達して高温の流動化媒体に接してはじめて分解することで、流動化媒体上にて第二ガスを良好に反応させることができる。また、第一ガスと第二ガスとが第二流路内で混合されることで、第一ガス及び第二ガスを反応に適した温度に設定することができる。
【0012】
また、分散板は、第二流路の下端に設けられており、第三流路は、分散板に接続されるものとすることができる。このように分散板及び第三流路を配置することで、第三流路の長さを短くし、第二ガスの第三流路内での加熱と分解を抑えて、第二ガスを第二流路に供給することができる。
【0013】
また、流動化媒体は、粒子状の支持体であり、第一ガスは、カーボンナノチューブの炭素源を含む原料ガスであり、第二ガスは、カーボンナノチューブ合成用触媒を含む触媒ガスであるものとすることができる。触媒ガスを第三流路から第二流路に流入させることで、触媒ガスを低温のまま支持体に届け、高温の支持体上で反応させることができる。これにより、例えば、CVD法によりカーボンナノチューブを合成する場合、第二流路において、第三流路からの低温の触媒ガスを高温の支持体と接触させて支持体上に触媒を担持でき、更に、第一流路からの高温の炭素源を含む原料ガスを高温の支持体上の触媒により分解してカーボンナノチューブを効果的に合成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第二管部における第一ガスの均熱性が高く熱損失が少なくなるため、流動化媒体上にて第一ガスを効果的に反応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る熱交換式反応管の概略平面図である。
図2】第2の実施形態に係る熱交換式反応管の概略平面図である。
図3】変形例の熱交換式反応管の概略図であり、(a)は概略正面図、(b)は(a)に示すIII(b)−III(b)線における断面図である。
図4】変形例の熱交換式反応管の概略横断面図である。
図5】比較例1における反応管の概略平面図である。
図6】比較例1における反応管の写真であり、(a)は、カーボンナノチューブの合成前の反応管の写真であり、(b)は、カーボンナノチューブの合成後の反応管の写真である。
図7】実施例1における熱交換式反応管の写真であり、(a)は、カーボンナノチューブの合成前の熱交換式反応管の写真であり、(b)は、カーボンナノチューブの合成後の熱交換式反応管の写真である。
図8】比較例1におけるSEM画像である。
図9】実施例1におけるSEM画像である。
図10】比較例1におけるカーボンナノチューブのラマンスペクトルである。
図11】実施例1におけるカーボンナノチューブのラマンスペクトルである。
図12】比較例2における温度分布の解析結果を示す図である。
図13】実施例2における温度分布の解析結果を示す図である。
図14】実施例3における温度分布の解析結果を示す図である。
図15】比較例3における反応管を説明するための概略平面図である。
図16】比較例3における温度分布の結果測定を示す図である。
図17】実施例4における熱交換式反応管を説明するための概略平面図である。
図18】実施例4における温度分布の結果測定を示す図である。
図19】実施例5における熱交換式反応管を説明するための概略平面図である。
図20】実施例5における温度分布の結果測定を示す図である。
図21】比較例3、実施例4及び実施例5におけるガスの総流量が10.00slmの場合の計測結果を示す図である。
図22】比較例4における温度分布の結果測定を示す図である。
図23】実施例6における温度分布の結果測定を示す図である。
図24】実施例7における温度分布の結果測定を示す図である。
図25】比較例4、実施例6及び実施例7におけるガスの総流量が10.00slmの場合の計測結果を示す図である。
図26】変形例の熱交換式反応管の概略図である。
図27】変形例の熱交換式反応管の概略図である。
図28】比較例5における温度分布の解析結果を示す図である。
図29】実施例8における温度分布の解析結果を示す図である。
図30】比較例6及び実施例9における各ガスの成分を示す図である。
図31】比較例6において合成されたカーボンナノチューブのSEM画像である。
図32】実施例9における反応管の写真を示し、(a)は、触媒ガス及び原料ガスを供給する前の反応管の写真、(b)は、触媒ガス及び原料ガスを供給してカーボンナノチューブを合成した後の反応管の写真、(c)は、カーボンナノチューブを分離した後の反応管の写真を示す。
図33】実施例9において合成されたカーボンナノチューブのSEM画像である。
図34】流出口から排出された原料ガスにおける炭素源の分析結果を示す図である。
図35】実施例10において合成されたカーボンナノチューブのSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る熱交換式反応管の好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態は、本発明に係る熱交換式反応管を、カーボンナノチューブを合成する際に用いる熱交換式反応管に適用したものである。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0017】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る熱交換式反応管は、粒子状の支持体(粒状担体)に触媒粒子(カーボンナノチューブ合成用触媒)を担持させた粒子状の触媒担持支持体上に原料ガス(第一ガス)を流通させることで、触媒担持支持体上にカーボンナノチューブを合成させるものである。
【0018】
触媒粒子は、支持体上に形成された金属又は金属酸化物膜等の触媒原料を、水素等の還元ガスにより加熱還元することにより形成される。触媒粒子を形成する際のキャリアガスとして、アルゴン、窒素等の不活性ガスが用いられる。
【0019】
触媒粒子を形成する金属としては、一般にカーボンナノチューブの合成に用いられる金属であることが好ましく、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、W及びAuの中から選択される1以上の元素を含むものがよい。中でも特に、炭素の固溶量が大きいFe、Co、Niが好ましい。
【0020】
触媒粒子を担持する支持体は、耐熱性を有する粒子状の耐熱性ビーズで構成されている。この支持体の材質としては、Si、Al、Mg、Zr、Ti、O、N、C、Mo、Ta及びWからなる群より選ばれる1種以上の元素を含むことが好ましい。具体的な材質としては、SiO、Al、MgO等の酸化物、SiN、AlN等の窒化物、SiC等の炭化物が挙げられる。特にAl−SiOの複合酸化物が好ましい。
【0021】
なお、支持体は、触媒粒子を担持するための担体層を備え、これに触媒粒子が担持される態様としてもよい。担体層の材質としては、上記支持体の材質と同様のものを用いることができる。また、支持体に担体層の機能も持たせることも可能であり、その際には担体層を担持する必要は必ずしもない。
【0022】
原料ガスは、炭素原子を含有しかつ加熱状態で分解される炭素源を含むガスであり、例えば、カーボンナノチューブを合成するための炭素源とキャリアガスとから構成されるものである。
【0023】
原料ガスに含まれる炭素源としては、アセチレン、エチレン、エタノール等を用いることができる。アセチレンは、原料ガスに含ませるほか、熱交換式反応管1の中で生成させてもよい。
【0024】
原料ガスに含まれるキャリアガスとしては、アルゴン、窒素等の不活性ガスが好ましい。また、キャリアガスとして水素を用いてもよい。
【0025】
図1は、第1の実施形態に係る熱交換式反応管の概略平面図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る熱交換式反応管1は、第一管部2と、第一管部2の内部に配置される第二管部3と、の二重管構造に形成されている。そして、第一管部2と第二管部3との間の空間に、原料ガスが下方に向けて流れる第一流路4が形成されており、第二管部3の内側の空間に、原料ガスが上方に向けて流れる第二流路5が形成されている。このため、第二管部3の側壁が、第一流路4と第二流路5とを隔てる隔壁となる。
【0026】
第一管部2は、有底の円管状に形成されて、鉛直方向に立設されている。第一管部2の上端部に、第一流路4に原料ガスを流入させるための流入口6が形成されている。
【0027】
第二管部3は、第一管部2よりも小径の円管状に形成されて、鉛直方向に立設されている。そして、第二管部3は、第一管部2の内壁から延びる支持部材により支持されることで、第一管部2と同心円状となるように、第一管部2との間の隙間が均一に保持されている。
【0028】
第二管部3の下端は、第一管部2の底面から離間されており、第二管部3の下端面に、第一流路4と第二流路5とを連通する開口7が形成されている。つまり、第一流路4の下部に、開口7を介して第二流路5が連通されている。このため、流入口6から第一流路4に流入した原料ガスは、第一流路4に沿って第一管部2の底部まで下降した後、第二管部3の下端面に形成された開口7から第二流路5に流入し、第二流路5に沿って第二管部3の上部まで上昇する。
【0029】
第二管部3の第二流路5に、触媒担持支持体を保持して原料ガスを通過させる分散板8が取り付けられている。
【0030】
分散板8は、複数の穴が形成された目皿で構成されている。
【0031】
分散板8に形成される穴の直径は、触媒担持支持体の粒子径(直径)よりも小さい寸法に形成されている。一般的な触媒担持支持体は、平均粒径が0.1mm以上1.0mm以下の範囲となっている。このため、分散板8に形成される穴の直径は、0.05mm以上0.80mm以下の範囲にすることができる。この場合、分散板8に形成される穴の直径は、0.1mm以上0.6mm以下の範囲であることが好ましく、0.2mm以上0.4mm以下の範囲であることが更に好ましい。分散板8に形成される穴の直径を0.05mm以上とすることで、分散板8を通過する原料ガスの圧力損失を小さくすることができる。そして、この直径を0.1mm以上、0.2mm以上とすることで、この効果を更に高めることができる。一方、分散板8に形成される穴の直径を0.8mm以下とすることで、分散板8から触媒担持支持体が脱落するのを抑制することができる。そして、この直径を0.6mm以下、0.4mm以下とすることで、この効果を更に高めることができる。
【0032】
また、分散板8に形成される穴の間隔は、特に制限されないが、例えば、0.1mm以上4.0mm以下の範囲にすることができる。この場合、分散板8に形成される穴の間隔は、0.2mm以上2.0mm以下の範囲であることが好ましく、0.4mm以上1.0mm以下の範囲であることが更に好ましい。分散板8に形成される穴の間隔を0.1mm以上とすることで、分散板8の加工性を向上し機械強度を高めることができる。そして、この直径を0.2mm以上、0.4mm以上とすることで、この効果を更に高めることができる。一方、分散板8に形成される穴の間隔を4.0mm以下とすることで、原料ガスを均一に供給できるようになり流動化の均一性を向上させることができる。そして、この直径を2mm以下、1mm以下とすることで、この効果を更に高めることができる。
【0033】
分散板8の取付位置は、特に限定されるものではないが、反応領域を確保する観点から、できるだけ下方であることが好ましく、例えば、第二流路5の下端である開口7又は開口7付近にすることができる。
【0034】
第二管部3は、第一管部2の上端よりも高い位置まで延びており、第一管部2の上端よりも上の部分に、拡径された拡径管部9が形成されている。そして、第二管部3の上端面に、原料ガスが排出される流出口10が形成されている。なお、第一管部2の上端は、第二管部3に接合されることで閉ざされている。
【0035】
そして、第一管部2及び第二管部3は、下端から所定高さ位置までの区間が加熱部11となっており、この加熱部11の周囲に、第一管部2及び第二管部3を覆って加熱部11を加熱する加熱装置(不図示)が配置されている。
【0036】
加熱部11は、原料ガスを加熱するとともに、分散板8に保持された触媒担持支持体上に原料ガスを流通させて触媒担持支持体上にカーボンナノチューブを合成するための部分である。このため、加熱部11は、流入口6よりも下方であって、原料ガスを供給した際に触媒担持支持体が流動する範囲である流動域を含むように設定することが好ましい。
【0037】
加熱装置は、第一管部2及び第二管部3の加熱部11を加熱することで、第一流路4を流れる原料ガスを予熱するとともに、第二流路5を流れる原料ガスを加熱又は保温するものである。そこで、第一管部2を加熱装置で覆うことで、第一流路4を、加熱装置および第二流路5との熱交換による原料ガスの予熱が促進される位置に配置するものとしている。加熱装置としては、加熱部11を加熱することができれば如何なるものを用いてもよく、例えば、第一管部2を覆う電気炉を用いることができる。
【0038】
第一管部2及び第二管部3の材質としては、耐熱性のある材質であれば特に制限されないが、加熱装置からの放射熱を利用して触媒担持支持体を加熱する観点からは、石英等の透明な材質のものを用いることが好ましい。
【0039】
次に、本実施形態に係る熱交換式反応管1を用いたカーボンナノチューブの合成について説明する。
【0040】
まず、流出口10から第二管部3内に触媒担持支持体を投入する。すると、投入された触媒担持支持体が分散板8に保持されることで、第二管部3に触媒担持支持体が充填される。
【0041】
次に、加熱装置で第一管部2及び第二管部3の加熱部11を加熱しながら、流入口6から原料ガスを第一流路4に供給する。すると、第一流路4に供給された原料ガスは、加熱部11において加熱され、予熱されながら第一流路4に沿って第一管部2の底部まで下降する。第一管部2の底部まで下降した原料ガスは、第二管部3の下端面に形成された開口7から第二流路5に流入する。第二流路5に流入した原料ガスは、分散板8を通過して、触媒担持支持体を流動させながら、第二流路5に沿って第二管部3を上昇していく。これにより、触媒担持支持体上に原料ガスが流通されて、触媒担持支持体上にカーボンナノチューブが合成される。
【0042】
ここで、第一流路4において原料ガスが予熱されることで、原料ガスが第二流路5に流入する時点で既に十分加熱された状態となっており、第二管部3の周囲が第一管部2及び加熱装置で覆われている。このため、第二流路5を上昇する原料ガスは、冷えることなく高温を保持することができ、上流側から下流側まで温度が均一化された状態となる。これにより、均熱性の高い原料ガスが、触媒担持支持体上を流通するため、触媒担持支持体上にカーボンナノチューブが効果的に合成される。
【0043】
一方、第二流路5の出口側である第二管部3の上部は、原料ガスが十分に加熱されていない第一流路4の入口側である第一管部2の上部に接する。このため、第二管部3の第二流路5から流出する高温の反応後の原料ガスが、第一管部2の第一流路4に流入する低温の原料ガスにより冷却され、同時に、第一管部2の第一流路4に流入する低温の原料ガスが、第二管部3の第二流路5から流出する高温の反応後の原料ガスにより加熱される、熱交換が起きる。これにより、第一管部2の第一流路4に流入する原料ガスの加熱に要するエネルギーの多くを、第二管部3の第二流路5から流出する反応後の原料ガスから賄えるため、加熱装置への投入エネルギーを削減でき、更に、第二管部3の第二流路5から流出する反応後の原料ガスの冷却も簡略化できる。
【0044】
また、第一管部2及び第二管部3が透明の石英により形成されることで、加熱装置からの放射熱により触媒担持支持体が加熱される。これにより、第二流路5を流れる原料ガスの温度変化が抑えられるため、第二流路5を流れる原料ガスの均熱性が更に高められる。
【0045】
また、第一流路4と第二流路5とが隣接されるとともに、第一流路4において原料ガスが予熱されるため、熱交換式反応管1をコンパクトにすることができる。
【0046】
そして、触媒担持支持体上を流通した原料ガスは、第二管部3の上端面に形成された流出口10から排出される。このとき、第二管部3の上部に拡径された拡径管部9が形成されているため、触媒担持支持体上を流通した原料ガスは、拡径管部9において上昇速度が低下する。これにより、原料ガスの勢いに乗って上昇した触媒担持支持体を拡径管部9において下降させて、流出口10から触媒担持支持体が飛び出すのを防止することができる。
【0047】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0048】
第2の実施形態は、基本的に第1の実施形態と同様であるが、熱交換式反応管に第三管部が設けられている点のみ第1の実施形態と相違する。このため、以下の説明では、第1の実施形態と相違する事項のみを説明し、第1の実施形態と同様の説明を省略する。
【0049】
第2の実施形態に係る熱交換式反応管は、粒子状の支持体上に触媒ガス(第二ガス)を流通させることで、支持体にカーボンナノチューブ合成用触媒を担持させて粒子状の触媒担持支持体を生成し、この触媒担持支持体上に原料ガスを流通させることで、触媒担持支持体上にカーボンナノチューブを合成させるものである。
【0050】
触媒ガスは、支持体上にカーボンナノチューブ合成用の金属触媒を担持させるためのガスであり、例えば、カーボンナノチューブ合成用触媒を形成する金属源とキャリアガスとから構成されるものである。
【0051】
触媒ガスに含まれる金属源としては、一般にカーボンナノチューブの合成に用いられる金属を含む気体であることが好ましく、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、W及びAuの中から選択される1以上の元素を含むものがよい。中でも特に、炭素の固溶量が大きいFe、Co、Niを含むものが好ましく、更にメタロセンなどの有機金属蒸気が好ましい。
【0052】
触媒ガスに含まれるキャリアガスとしては、アルゴン、窒素等の不活性ガスが好ましい。また、キャリアガスとして水素を用いてもよい。
【0053】
図2は、第2の実施形態に係る熱交換式反応管の概略平面図である。図2に示すように、第2の実施形態に係る熱交換式反応管21は、二重管構造に形成された第一管部2及び第二管部3と、第一管部2を貫通して第二管部3の下端から下方に延びる第三管部22と、が設けられている。そして、第三管部22の内側の空間に、触媒ガスが流れる第三流路23が形成されており、第三流路23は、第一流路4に連通されることなく第二流路5にのみ連通されている。
【0054】
第三管部22は、第二管部3よりも小径の円管状に形成されて、鉛直方向に延びている。第三管部22の上端は、第二管部3の第二流路5に取り付けられた分散板8に接続されており、第三流路23は、分散板8から第二流路5の下方に延びている。そして、第三管部22の上端面に、第二流路5と第三流路23とを連通する開口24が形成されている。このため、第三管部22の第三流路23に供給された触媒ガスは、第三流路23に沿って第三管部22の頂部まで上昇した後、開口24から第二流路5に流入し、第二流路5に沿って第二管部3の上部まで上昇する。なお、第三管部22は、分散板8を貫通しても貫通しなくてもよいが、第三管部22から供給される触媒ガスが分散板8に付着するのを抑制する観点から、第三管部22が分散板8を貫通している方が好ましい。一方、第三管部22が分散板8を貫通していない場合は、第三管部22から供給される触媒ガスが分散板8に付着するのを抑制する観点から、第三管部22の開口24を分散板8の一つの穴に形成することが好ましい。
【0055】
また、第三管部22は、第三流路23を流れる触媒ガスを低温のまま第二流路5に届けるものである。そこで、第一管部2及び第二管部3の加熱部11のみ加熱装置で覆うことで、第三流路23を、加熱装置および第二流路5との熱交換による触媒ガスの予熱が抑えられる位置に配置するものとしている。
【0056】
次に、本実施形態に係る熱交換式反応管21を用いたカーボンナノチューブの合成について説明する。
【0057】
まず、流出口10から第二管部3内に支持体を投入する。すると、投入された支持体が分散板8に保持されることで、第二管部3に支持体が充填される。
【0058】
次に、加熱装置で第一管部2及び第二管部3の加熱部11を加熱して、第三流路23に触媒ガスを供給するとともに、流入口6から原料ガスを第一流路4に供給する。
【0059】
すると、第三流路23に供給された触媒ガスは、第三流路23に沿って第三管部22の上端面に形成された開口24から第二流路5に流入する。また、第一流路4に供給された原料ガスは、加熱部11において加熱され、予熱された状態で第二管部3の下端面に形成された開口7から第二流路5に流入する。そして、第二流路5に流入した触媒ガス及び原料ガスは、支持体を流動させながら、第二流路5に沿って第二管部3を上昇していく。これにより、支持体上に触媒ガス及び原料ガスが流通されて、支持体上にカーボンナノチューブ合成用触媒が担持される。なお、第三流路23への触媒ガスの供給と、第一流路4への原料ガスの供給は、同時に行っても、交互に行っても、一方を間歇的に行っても良い。
【0060】
ここで、第三流路23は、第一流路4に連通されることなく第二流路5に連通されており、分散板8の下流側に延びているため、触媒ガスは、低温のまま支持体に届け、高温の支持体上で反応させることができる。このため、触媒ガスとして、高温では単独で分解するガスを用いた場合にも、第三流路23において触媒ガスが分解することなく、第二流路5に達して高温の支持体に接してはじめて分解することで、支持体上にて触媒ガスを良好に反応させることができる。これにより、例えば、CVD法によりカーボンナノチューブを合成する場合、第二流路5において、第三流路23からの低温の触媒ガスを高温の支持体と接触させて支持体上に触媒を担持でき、更に、第一流路4からの高温の炭素源を含む原料ガスを高温の支持体上の触媒により分解してカーボンナノチューブを効果的に合成することができる。
【0061】
そして、支持体上を流通した触媒ガス及び原料ガスは、第二管部3の上端面に形成された流出口10から排出される。このとき、第二管部3の上部に第二流路5が拡径された拡径管部9が形成されているため、支持体上を流通した触媒ガス及び原料ガスは、第二流路5において上昇速度が低下する。これにより、触媒ガス及び原料ガスの勢いに乗って上昇した支持体を拡径管部9において下降させて、流出口10から支持体が飛び出すのを防止することができる。
【0062】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0063】
例えば、上記実施形態では、本発明に係る熱交換式反応管を、カーボンナノチューブを合成する際に用いる熱交換式反応管に適用したものとして説明したが、本発明に係る熱交換式反応管はこれに限定されるものではなく、様々な反応管として使用することができる。この場合、第一ガス、第二ガス及び流動化媒体は、熱交換式反応管の使用目的などに応じて適宜設定することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、第一管部と第二管部とが二重管構造に形成されるものとして説明したが、第一流路と第二流路とが隔壁を隔てて隣接されていれば、第一管部と第二管部とは如何なる関係であってもよく、第一管部及び第二管部が、第二管部の外側に第一管部が配置される構造に形成されていてもよい。例えば、図3に示すように、単一の第一管部31と第二管部32とが並列的に接続された構造であってもよく、図4に示すように、第二管部33の周囲に分岐された複数の第一管部34が接続された構造であってもよい。図3は、変形例の熱交換式反応管の概略図であり、図3(a)は概略正面図、図3(b)は図3(a)に示すIII(b)−III(b)線における断面図である。図4は、変形例の熱交換式反応管の概略横断面図である。これらの場合、第一管部により第二管部の周囲を覆う割合は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることが更に好ましく、70%以上であることが更に好ましい。この割合を30%以上とすることで、第二管部の温度のバラツキが抑えられるため第二流路を流れるガスの均熱性が高められる。そして、この割合を50%以上、70%以上とすることで、この効果を更に高めることができる。
【0065】
また、第2の実施形態のように第三流路を用いる場合、第三流路から流入される第二ガスにより第二流路が冷やされるため、第二管部を第一管部から露出させて第二流路を形成する第二管部を直接加熱できるようにしてもよい。例えば、図26に示すように、第二管部42の下端に第三管部43を接続し、第二管部42に対して1又は複数の第一管部41を螺旋状に巻き付けた構造としてもよい。これにより、第一管部41には第二管部42が露出する隙間が形成されるため、第二管部42を直接加熱することができる。しかも、第二管部42を流れる流体は必ず第一管部41を横切るため、効果的に熱交換できる。また、図27に示すように、第二管部52の下端に第三管部53を接続し、第一管部51の上部51aを単一管とし、第一管部51の加熱部51bを複数本に分岐させた構造としてもよい。これにより、第一管部51の加熱部51bに第二管部52が露出する隙間が形成されるため、第二管部52を直接加熱することができる。しかも、加熱部51b上方では、第一管部51の上部51aが単一管に形成されることで第一流路が第二管部52の全面と接触するため、効果的に熱交換できる。なお、このように第二管部を第一管部から露出させた構造は、第1の実施形態のように第三流路を用いない場合にも適用することができる。
【0066】
また、上記実施形態では、第一管部が垂直に形成されるものとして説明したが、第一管部は、第一ガスを第二流路に隣接させて下降させることができれば、如何なる形状であってもよい。例えば、図26に示す第一管部41のように、第一ガスが螺旋状に下降するような形状であってもよい。
【実施例】
【0067】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
[比較例1]
反応管として、図5に示す反応管101を用いた。反応管101は、一直線状に延びる直線管部102により構成し、その下端に原料ガスが供給される流入口103を形成し、その上端に原料ガスが排出される流出口104を形成した。直線管部102内に、貫通孔の形成された分散板を配置した。直線管部102の下端から所定高さ位置までの区間を加熱部106とし、この加熱部106の周囲に、加熱部106を加熱する加熱装置(不図示)を配置した。
【0069】
そして、流出口104から粒子状の触媒担持支持体を投入して、加熱装置で加熱部106を加熱し、流入口103から原料ガスを供給して、カーボンナノチューブを合成した。原料ガスの総流量を3.16slm(standard liter / min)とした。原料ガスの構成としては、Cを0.3容量%(vol%)、Hを10容量%、HOを50ppmv(parts per million volume)とし、雰囲気ガスとしてArを用いた。加熱装置の温度を800℃とし、反応時間は10分間とした。
【0070】
図6は、比較例1における反応管の写真であり、図6(a)は、カーボンナノチューブの合成前の反応管の写真、図6(b)は、カーボンナノチューブの合成後の反応管の写真である。
【0071】
[実施例1]
反応管として、図1に示す熱交換式反応管1を用いた。加熱装置で加熱部11を加熱し、第二流路5に粒子状の触媒担持支持体を投入して、流入口6から原料ガスを供給して、カーボンナノチューブを合成した。原料ガスの総流量を2.70slmとした。原料ガスの構成としては、Cを0.3容量%(vol%)、Hを10容量%、HOを50ppmvとし、雰囲気ガスとしてArを用いた。加熱装置の温度を800℃とし、反応時間は10分間とした。
【0072】
なお、熱交換式反応管1は、触媒担持支持体が充填される第二管部3の内径(第二流路5の外形)が比較例1の直線管部102よりも小さいため、原料ガスの線流速が比較例1と同等となるように調整した。
【0073】
図7に、実施例1における熱交換式反応管の写真を示す。図7(a)は、カーボンナノチューブの合成前の熱交換式反応管の写真であり、図7(b)は、カーボンナノチューブの合成後の熱交換式反応管の写真である。
【0074】
[カーボンナノチューブの観察]
比較例1の反応管101と実施例1の熱交換式反応管1とを用いて合成したカーボンナノチューブを、走査線電子顕微鏡(SEM、日立製作所社製:S−4800)で観察した結果を図8及び図9に示す。図8は、比較例1におけるSEM画像である。図9は、実施例1におけるSEM画像である。
【0075】
図8に示すように、比較例1では、分散板105に保持された上層部の触媒担持支持体からはカーボンナノチューブが垂直配向成長したが、分散板105に保持された中層部以下の触媒担持支持体からはカーボンナノチューブが成長しなかった。
【0076】
一方、図9に示すように、実施例1では、分散板8に保持された触媒担持支持体の全体から均一にカーボンナノチューブが成長した。また、成長したカーボンナノチューブは、フェルト状膜を形成した。
【0077】
[ラマン測定]
ラマン分光器(HORIBA社製:HR−800)を用い、ラマン分光法により、比較例1の反応管101と実施例1の熱交換式反応管1とを用いて合成したカーボンナノチューブについて評価した。測定波長は488nmとした。測定の結果を図10及び図11に示す。図10は、比較例1におけるカーボンナノチューブのラマンスペクトルである。図11は、実施例1におけるカーボンナノチューブのラマンスペクトルである。
【0078】
図10(a)に示すように、比較例1では、ラジアルブリージングモード(RBM)が観察されなかったことから、比較例1の反応管101により合成したカーボンナノチューブには、単層のカーボンナノチューブが含まれないことが分かった。
【0079】
一方、図11(a)に示すように、実施例1では、ラジアルブリージングモード(RBM)が観察されたことから、実施例1の熱交換式反応管1により合成したカーボンナノチューブには、単層のカーボンナノチューブが含まれることが分かった。
【0080】
また、図10(b)に示すように、比較例1では、1590[cm−1]付近にグラファイト構造に起因するGバンドと、1340[cm−1]付近に結晶欠陥に起因するDバンドと、を観察することができた。しかしながら、結晶性を表すG/D比が小さいことから、カーボンナノチューブの質が低いものであることが分かった。
【0081】
一方、図11(b)に示すように、実施例1でも、Gバンドと、Dバンドと、を観察することができた。しかも、結晶性を表すG/D比が大きいことから、カーボンナノチューブの質が高いものであることが分かった。
【0082】
[比較例2]
反応管として、図5に示す反応管101を用いた場合の温度分布を、Fluentを用いて解析した。解析条件としては、直線管部102の内径i.d.(inside diameter)を22mmとし、加熱部106の長さを300mmとし、加熱部106の外表面を820℃とし、加熱部106以外の外表面を27℃とした。また、流入口103に供給する第一ガスの流速を変え、それぞれ、流入口103に供給する第一ガスの総流量を3.16slm、5.00slm、10.00slm、31.60slmとした。反応管101には流動化媒体を含めず、ガス流のみの温度分布を評価した。
【0083】
解析結果を図12に示す。図12(a)は、第一ガスの総流量を3.16slmとした場合、図12(b)は、第一ガスの総流量を5.00slmとした場合、図12(c)は、第一ガスの総流量を10.00slmとした場合、図12(d)は、第一ガスの総流量を31.60slmとした場合を示している。また、図12(e)は、図12(a)〜(d)における温度グラデーションを示している。
【0084】
図12に示すように、比較例2では、加熱部106の下部において温度が十分に上昇しきれていない。このため、加熱部106の下部ではカーボンナノチューブの合成が十分に行われない。特に、図12(a)〜(d)から分かるように、第一ガスの流速が高くなるほど、温度が十分に上昇しきれていない領域が拡大される。
【0085】
[実施例2]
反応管として、図1に示す熱交換式反応管1を用いた場合の温度分布を、Fluentを用いて解析した。解析条件としては、第一管部2の内径(第一流路4の外径)を35mmとし、第二管部3の内径(第二流路5の外径)を22mmとし、加熱部11の長さを300mmとし、第一管部2の底面から分散板8までの距離を10mmとし、加熱部11の外表面を820℃とし、加熱部11以外の外表面を27℃とした。また、流入口6に供給する第一ガスの流速を変え、それぞれ、流入口6に供給する第一ガスの総流量を3.16slm、31.60slmとした。第二管部3には流動化媒体を含めず、ガス流のみの温度分布を評価した。
【0086】
解析結果を図13に示す。図13(a)は、第一ガスの総流量を3.16slmとした場合、図13(b)は、第一ガスの総流量を31.60slmとした場合を示している。また、図13(c)は、図13(a)及び(b)における温度グラデーションを示している。
【0087】
図13に示すように、実施例2では、第一ガスが第一管部2の第一流路4を下降する際に予熱されたことから、第二管部3の第二流路5に流入した時点で、既に十分な温度に達していた。このため、第二流路5を流れる第一ガスは、第二流路5の下側から上側まで均一な温度となった。また、図13(a)と図13(b)とを比較すると、第一ガスの流速が高くなるほど、第一ガスが十分な温度に昇温するまでの距離が長くなる。しかしながら、第一ガスの流速を高くして第一ガスの総流量が31.60slmとなる場合であっても、第二管部3の第二流路5に流入した時点で、既に十分な温度に達していた。
【0088】
[実施例3]
反応管として、図2に示す熱交換式反応管21を用いた場合の温度分布を、Fluentを用いて解析した。解析条件としては、第一管部2の内径(第一流路4の外径)を35mmとし、第二管部3の内径(第二流路5の外径)を22mmとし、第三管部22の内径(第三流路23の外径)を2mmとし、加熱部11の長さを300mmとし、第一管部2の底面から分散板8までの距離を10mmとし、加熱部11の外表面を820℃とし、加熱部11以外の外表面を27℃とした。また、流入口6に供給する第一ガスの流速を変え、それぞれ、流入口6に供給する第一ガスの総流量を2.16slm、4.00slm、9.00slmとした。第三流路23に供給する第二ガスの流速は同一とし、それぞれ、第三流路23に供給する第二ガスの総量を1.00slmとした。第二管部3には流動化媒体を含めず、ガス流のみの温度分布を評価した。
【0089】
解析結果を図14に示す。図14(a)は、第一ガスの総流量を2.16slmとした場合、図14(b)は、第一ガスの総流量を4.00slmとした場合、図14(c)は、第一ガスの総流量を9.00slmとした場合を示している。また、図14(d)は、図14(a)〜(c)における温度グラデーションを示している。
【0090】
図14に示すように、実施例3では、第二流路5において予熱された第一ガスと低温のままの第二ガスとが混合することで、第二流路5を流れる第一ガス及び第二ガスは、第二流路5の下側から上側まで、第一ガスの予熱温度よりも低い温度域で均一な温度となった。しかも、図14(a)〜(c)から明らかなように、第一ガスの流速が高くなっても、第二流路5を流れる第一ガス及び第二ガスの温度が均一に保持されたままであった。
【0091】
[数値解析の評価]
実施例2及び実施例3は、比較例2に比べて、ガスの均熱性が高まるため、カーボンナノチューブを効果的に成長させることができることが分かった。
【0092】
[比較例3]
反応管として、図5に示す反応管101を用い、直線管部102に触媒担持支持体を充填しない場合の温度分布を、計測用熱電対により実測した。具体的には、図15に示すように、直線管部102の周囲を断熱材107で覆い、直線管部102と断熱材107との間に加熱装置108を配置した。実験条件としては、直線管部102の内径を22mmとし、加熱部106の長さを300mmとし、反応管101の設置場所の室温を27℃とし、加熱装置108による加熱温度を820℃とした。また、流入口103に供給する第一ガスの流速を変え、それぞれ、流入口103に供給する第一ガスの総流量を3.16slm、5.00slm、10.00slmとした。
【0093】
そして、加熱装置108の加熱温度を、直線管部102と断熱材107との間に挿入された制御用熱電対14により、分散板105から12cm上方の位置で測定された温度とした。また、直線管部102内の温度を、直線管部102に挿入した計測用熱電対15により測定し、この測定温度を分散板105から上方への距離に対応付けて記録した。測定結果を図16に示す。
【0094】
[実施例4]
反応管として、図1に示す熱交換式反応管1を用い、第二流路5に触媒担持支持体を充填しない場合の温度分布を、計測用熱電対により実測した。具体的には、図17に示すように、第一管部2の周囲を断熱材12で覆い、第一管部2と断熱材12との間に加熱装置13を配置した。実験条件としては、第一管部2の内径(第一流路4の外径)を35mmとし、第二管部3の内径(第二流路5の外径)を22mmとし、加熱部11の長さを300mmとし、第一管部2の底面から分散板8までの距離を10mmとし、熱交換式反応管1の設置場所の室温を27℃とし、加熱装置13よる加熱温度を820℃とした。また、流入口6に供給する第一ガスの流速を変え、それぞれ、流入口6に供給する第一ガスの総流量を3.16slm、5.00slm、10.00slmとした。
【0095】
そして、加熱装置13の加熱温度を、第一管部2と断熱材12との間に挿入した制御用熱電対14により、分散板8から12cm上方の位置で測定された温度とした。また、第二流路5内の温度を、第二流路5に挿入した計測用熱電対15により測定し、この測定温度を分散板8から上方への距離に対応付けて記録した。測定結果を図18に示す。
【0096】
[実施例5]
反応管として、図2に示す熱交換式反応管21を用い、第二流路5に触媒担持支持体を充填しない場合の温度分布を、計測用熱電対により実測した。具体的には、図19に示すように、第一管部2の周囲を断熱材25で覆い、第一管部2と断熱材25との間に加熱装置26を配置した。実験条件としては、第一管部2の内径(第一流路4の外径)を35mmとし、第二管部3の内径(第二流路5の外径)を22mmとし、第三管部22の内径(第三流路23の外径)を2mmとし、加熱部11の長さを300mmとし、第一管部2の底面から分散板8までの距離を10mmとし、熱交換式反応管1の設置場所の室温を27℃とし、加熱装置13よる加熱温度を820℃とした。また、流入口6に供給する第一ガスの流速を変え、それぞれ、流入口6に供給する第一ガスの総流量を2.16slm、4.00slm、9.00slmとした。第三流路23に供給する第二ガスの流速は同一とし、それぞれ、第三流路23に供給する第二ガスの総量を1.00slmとした。つまり、第二流路5に供給する第一ガス及び第二ガスの総流量を、3.16slm、5.00slm、10.00slmとした。
【0097】
そして、加熱装置13の加熱温度を、第一管部2と断熱材12との間に挿入した制御用熱電対14により、分散板8から12cm上方の位置で測定された温度とした。また、第二流路5内の温度を、第二流路5に挿入した計測用熱電対15により測定し、この測定温度を分散板8から上方への距離に対応付けて記録した。測定結果を図20に示す。
【0098】
[実測の評価]
比較例3、実施例4及び実施例5におけるガスの総流量が10.00slmの場合の計測結果を図21に纏めて示す。図21に示すように、比較例3では、ガスの温度が、分散板105の地点において540℃付近であるのに対し、実施例4及び実施例5では、ガスの温度が、分散板8の地点において既に800℃前後に到達している。また、比較例3では、分散板105からの距離に応じて計測温度が大きく異なっているが、実施例4及び実施例5は、比較例3に比べて、分散板8からの距離に応じた計測温度の変化が格段に小さくなっている。しかも、図16図18及び図20に示すように、実施例4及び実施例5では、総流量が変化しても、比較例3に比べて、分散板からの距離に応じた計測温度の変化が格段に小さくなっている。
【0099】
このようなことから、実施例4及び実施例5は、比較例3に比べて、カーボンナノチューブを効果的に成長させることができることが分かった。
【0100】
[比較例4]
直線管部102に触媒担持支持体を充填した点を除き、比較例3と同一条件で反応管の温度分布を計測した。計測結果を図22に示す。
【0101】
[実施例6]
第二流路5に触媒担持支持体を充填した点を除き、実施例4と同一条件で交換式反応管の温度分布を計測した。計測結果を図23に示す。
【0102】
[実施例7]
第二流路5に触媒担持支持体を充填した点を除き、実施例5と同一条件で交換式反応管の温度分布を計測した。計測結果を図24に示す。
【0103】
[実測の評価]
比較例4、実施例6及び実施例7におけるガスの総流量が10.00slmの場合の計測結果を図25に纏めて示す。図25に示すように、比較例4では、ガスの温度が、分散板105の地点において640℃付近であるのに対し、実施例6及び実施例7では、ガスの温度が、分散板8の地点において既に800℃前後に到達している。また、比較例4では、分散板105からの距離に応じて計測温度が大きく異なっているが、実施例6及び実施例7は、比較例3に比べて、分散板8からの距離に応じた計測温度の変化が格段に小さくなっている。しかも、図22図24に示すように、実施例6及び実施例7では、総流量が変化しても、比較例4に比べて、分散板からの距離に応じた計測温度の変化が格段に小さくなっている。
【0104】
このようなことから、実施例6及び実施例7は、比較例4に比べて、カーボンナノチューブを効果的に成長させることができることが分かった。
【0105】
しかも、触媒担持支持体の充填の有無に限らず、本発明は、カーボンナノチューブを効果的に成長させることができることが分かった。
【0106】
[比較例5]
反応管として、図5に示す反応管101を用い、直線管部102内の温度分布を計測用熱電対により実測した。直線管部102の内径を23mmとし、直線管部102に触媒担持支持体を充填した他は、比較例3と同じ条件とした。
【0107】
そして、直線管部102内の温度を、直線管部102に挿入した計測用熱電対15により測定し、この測定温度を分散板105から上方への距離に対応付けて記録した。測定結果を図28に示す。
【0108】
[実施例8]
反応管として、図2に示す熱交換式反応管21を用い、第二流路5内の温度分布を計測用熱電対により実測した。また、実施例8では、第三管部22が分散板8を貫通している熱交換式反応管21を用いた。第一管部2の内径(第一流路4の外径)を50mmとし、第二管部3の内径(第二流路5の外径)を40mmとし、第三管部22の内径(第三流路23の外径)を2mmとし、第二流路5に触媒担持支持体を充填した他は、実施例5と同じ条件とした。
【0109】
そして、第二流路5内の温度を、第二流路5に挿入した計測用熱電対15により測定し、この測定温度を分散板8から上方への距離に対応付けて記録した。測定結果を図29に示す。
【0110】
[実測の評価]
図28に示すように、比較例5では、分散板105からの距離に応じて計測温度が大きく異なっており、分散板105から遠く離れないとガスの温度が高くならない。つまり、比較例5では、高速のガス流により支持体であるビーズが冷えるため、装置のスケールアップができないという課題がある。なお、ガスの流量増加と装置の管径増大とは同様の効果である。
【0111】
このため、比較例5をカーボンナノチューブの合成に適用した場合、低温のビーズに触媒ガスが接することによりビーズに触媒が担持されるため、触媒の付着確率が低く、触媒粒子の選択成長が起き、触媒粒子が大きく疎ら形成する。その結果、生成されるカーボンナノチューブが太くなる。
【0112】
しかも、比較例5では、分散板105を通して触媒ガスを供給するため、分散板105に触媒が付着して分散板105の穴が閉塞する。その結果、頻繁に分散板105を洗浄する必要が生じるため、カーボンナノチューブの合成のサイクルを繰り返し行う回数が大きく制限される。
【0113】
これに対し、図29に示すように、実施例8では、分散板8からの距離に応じた計測温度の変化が格段に小さくなっており、分散板8の位置において既にガスの温度が高くなっている。つまり、実施例8では、第二流路5を流れる第一ガスが、第一流路4を流れる第二ガスとの熱交換及び加熱装置26により加熱されるため、第一ガスのガス流速を高くしても、また、スケールアップしても、第二流路5を流れる第一ガスを均一に加熱することが可能になる。
【0114】
このため、実施例8をカーボンナノチューブの合成に適用した場合、高温のビーズに触媒ガスが接することによりビーズに触媒が担持されるため、触媒の付着確率が高く、触媒粒子が小さく密に形成される。その結果、生成されるカーボンナノチューブが細くなる。
【0115】
しかも、実施例8では、分散板8を貫通する第三管部22から第二流路5に触媒バスが供給されるため、分散板8に触媒が付着しない。その結果、分散板105の洗浄が不要になるため、カーボンナノチューブの合成のサイクルを繰り返し行うことが可能となる。
【0116】
[比較例6]
比較例5で用いた反応管101を用いて、CVD法によりカーボンナノチューブの合成を行った。なお、反応管101の直線管部102の内径を22mmとし、ガス流路の断面積を約380mmとした。
【0117】
カーボンナノチューブの合成では、流入口103から触媒ガスを供給することにより担持体であるビーズ上に触媒を担持させる触媒担持工程を行い、その後、流入口103から原料ガスを20分間供給することによりビーズ上にカーボンナノチューブを合成するCVD工程を行った。触媒担持工程では、まず、流入口103から第一触媒ガス及び第二触媒ガスを2分間供給することにより、担持体であるビーズ上に触媒を堆積する堆積工程を行い、次に、流入口103から還元ガスを10分間供給することにより、ビーズ上に堆積した触媒を還元して微粒子化する還元工程を行った。第一触媒ガスの総流量を21.225slmとし、第二触媒ガスの総流量を21.425slmとし、還元ガスの総流量を9.48slmとし、原料ガスの総流量を9.48slmとした。第一触媒ガス、第二触媒ガス、還元ガス及び原料ガスの成分を図30に示す。その他の条件は、比較例3と同じ条件とした。
【0118】
その後、流入口103から分離ガスを供給して、触媒粒子からカーボンナノチューブを分離し、分離したカーボンナノチューブを回収した。分離ガスとしては、アルゴンを用いた。
【0119】
図31は、比較例6において合成されたカーボンナノチューブのSEM画像である。図31に示すように、比較例6では、ビーズ上に、カーボンナノチューブが約0.25mmの長さに成長した。また、回収されたカーボンナノチューブの重量を計測したところ、カーボンナノチューブの合成の1サイクル当り、0.26gであった。
【0120】
[実施例9]
実施例8で用いた熱交換式反応管21を用いて、CVD法によりカーボンナノチューブの合成を行った。なお、熱交換式反応管21の第一管部2の内径を40mmとし、ガス流路の断面積を約1260mmとした。
【0121】
カーボンナノチューブの合成では、第三管部22から触媒ガスを供給することにより担持体であるビーズ上に触媒を担持させる触媒担持工程を行い、その後、流入口6から原料ガスを供給することによりビーズ上にカーボンナノチューブを合成するCVD工程を行った。触媒担持工程では、まず、流入口103から第一触媒ガス及び第二触媒ガスを2分間供給することにより、担持体であるビーズ上に触媒を堆積する堆積工程を行い、次に、流入口103から還元ガスを10分間供給することにより、ビーズ上に堆積した触媒を還元して微粒子化する還元工程を行った。第一触媒ガスの総流量を21.225slmとし、第二触媒ガスの総流量を21.425slmとし、還元ガスの総流量を9.48slmとし、原料ガスの総流量を9.48slmとした。第一触媒ガス、第二触媒ガス、還元ガス及び原料ガスの成分を図30に示す。その他の条件は、実施例5と同じ条件とした。
【0122】
その後、流入口6から分離ガスを供給して、触媒粒子からカーボンナノチューブを分離し、分離したカーボンナノチューブを回収した。分離ガスとしては、アルゴンを用いた。
【0123】
図32は、実施例9における反応管の写真を示し、図32(a)は、触媒ガス及び原料ガスを供給する前の反応管の写真、図32(b)は、触媒ガス及び原料ガスを供給してカーボンナノチューブを合成した後の反応管の写真、図32(c)は、カーボンナノチューブを分離した後の反応管の写真を示す。
【0124】
図33は、実施例9において合成されたカーボンナノチューブのSEM画像である。図33に示すように、実施例9では、ビーズ上に、カーボンナノチューブが縦に整列した状態で約0.2mmの長さに成長した。また、回収されたカーボンナノチューブの重量を計測したところ、カーボンナノチューブの合成の1サイクル当り、0.70gであった。
【0125】
図34は、流出口10から排出された原料ガスにおける炭素源の分析結果を示す図である。図34において、rtは、流入口6から供給する原料ガスにおける炭素源の分析結果である。図34に示すように、1〜10分の間は、Cがカーボンナノチューブに変換される割合が60〜82%となっていることから、カーボンナノチューブの成長が速い段階であると考えられる。また、10〜20分の間は、Cがカーボンナノチューブに変換される割合が40%以下となっていることから、触媒が不活性化(deactivation)する段階であると考えられる。
【0126】
[比較例6と実施例9との比較]
比較例6と実施例9とを比較すると、実施例9の熱交換式反応管21は、ガス流路の断面積が比較例6の反応管101に比べて約3倍となっているが、回収されたカーボンナノチューブの重量も比較例6の反応管101に比べて約3倍となっていた。このような結果から、熱交換式反応管21をスケールアップしても等温場を維持できることから、カーボンナノチューブの生産性を向上できると考えられる。なお、比較例6の反応管101の直線管部102の内径を、実施例9と同様に太くしたところ、カーボンナノチューブを合成することができなかった。
【0127】
[実施例10]
CVD工程を25分行った他は、実施例9と同じ条件として、合成されたカーボンナノチューブを回収した。
【0128】
図35は、実施例10において合成されたカーボンナノチューブのSEM画像である。図35に示すように、実施例10では、ビーズ上に、カーボンナノチューブが縦に整列した状態で約0.33mmの長さに成長した。また、回収されたカーボンナノチューブの重量を計測したところ、カーボンナノチューブの合成の1サイクル当り、0.88gであった。
【符号の説明】
【0129】
1…熱交換式反応管、2…第一管部、3…第二管部、4…第一流路、5…第二流路、6…流入口、7…開口、8…分散板、9…拡径管部、10…流出口、11…加熱部、12…断熱材、13…加熱装置、14…制御用熱電対、15…計測用熱電対、21…熱交換式反応管、22…第三管部、23…第三流路、24…開口、25…断熱材、26…加熱装置、31…第一管部、32…第二管部、33…第二管部、34…第一管部、41…第一管部、42…第二管部、43…第三管部、51…第一管部、51a…上部、51b…加熱部、52…第二管部、53…第三管部、101…反応管、102…直線管部、103…流入口、104…流出口、105…分散板、106…加熱部、107…断熱材、108…加熱装置。
図1
図2
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