【実施例】
【0067】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
[比較例1]
反応管として、
図5に示す反応管101を用いた。反応管101は、一直線状に延びる直線管部102により構成し、その下端に原料ガスが供給される流入口103を形成し、その上端に原料ガスが排出される流出口104を形成した。直線管部102内に、貫通孔の形成された分散板を配置した。直線管部102の下端から所定高さ位置までの区間を加熱部106とし、この加熱部106の周囲に、加熱部106を加熱する加熱装置(不図示)を配置した。
【0069】
そして、流出口104から粒子状の触媒担持支持体を投入して、加熱装置で加熱部106を加熱し、流入口103から原料ガスを供給して、カーボンナノチューブを合成した。原料ガスの総流量を3.16slm(standard liter / min)とした。原料ガスの構成としては、C
2H
2を0.3容量%(vol%)、H
2を10容量%、H
2Oを50ppmv(parts per million volume)とし、雰囲気ガスとしてArを用いた。加熱装置の温度を800℃とし、反応時間は10分間とした。
【0070】
図6は、比較例1における反応管の写真であり、
図6(a)は、カーボンナノチューブの合成前の反応管の写真、
図6(b)は、カーボンナノチューブの合成後の反応管の写真である。
【0071】
[実施例1]
反応管として、
図1に示す熱交換式反応管1を用いた。加熱装置で加熱部11を加熱し、第二流路5に粒子状の触媒担持支持体を投入して、流入口6から原料ガスを供給して、カーボンナノチューブを合成した。原料ガスの総流量を2.70slmとした。原料ガスの構成としては、C
2H
2を0.3容量%(vol%)、H
2を10容量%、H
2Oを50ppmvとし、雰囲気ガスとしてArを用いた。加熱装置の温度を800℃とし、反応時間は10分間とした。
【0072】
なお、熱交換式反応管1は、触媒担持支持体が充填される第二管部3の内径(第二流路5の外形)が比較例1の直線管部102よりも小さいため、原料ガスの線流速が比較例1と同等となるように調整した。
【0073】
図7に、実施例1における熱交換式反応管の写真を示す。
図7(a)は、カーボンナノチューブの合成前の熱交換式反応管の写真であり、
図7(b)は、カーボンナノチューブの合成後の熱交換式反応管の写真である。
【0074】
[カーボンナノチューブの観察]
比較例1の反応管101と実施例1の熱交換式反応管1とを用いて合成したカーボンナノチューブを、走査線電子顕微鏡(SEM、日立製作所社製:S−4800)で観察した結果を
図8及び
図9に示す。
図8は、比較例1におけるSEM画像である。
図9は、実施例1におけるSEM画像である。
【0075】
図8に示すように、比較例1では、分散板105に保持された上層部の触媒担持支持体からはカーボンナノチューブが垂直配向成長したが、分散板105に保持された中層部以下の触媒担持支持体からはカーボンナノチューブが成長しなかった。
【0076】
一方、
図9に示すように、実施例1では、分散板8に保持された触媒担持支持体の全体から均一にカーボンナノチューブが成長した。また、成長したカーボンナノチューブは、フェルト状膜を形成した。
【0077】
[ラマン測定]
ラマン分光器(HORIBA社製:HR−800)を用い、ラマン分光法により、比較例1の反応管101と実施例1の熱交換式反応管1とを用いて合成したカーボンナノチューブについて評価した。測定波長は488nmとした。測定の結果を
図10及び
図11に示す。
図10は、比較例1におけるカーボンナノチューブのラマンスペクトルである。
図11は、実施例1におけるカーボンナノチューブのラマンスペクトルである。
【0078】
図10(a)に示すように、比較例1では、ラジアルブリージングモード(RBM)が観察されなかったことから、比較例1の反応管101により合成したカーボンナノチューブには、単層のカーボンナノチューブが含まれないことが分かった。
【0079】
一方、
図11(a)に示すように、実施例1では、ラジアルブリージングモード(RBM)が観察されたことから、実施例1の熱交換式反応管1により合成したカーボンナノチューブには、単層のカーボンナノチューブが含まれることが分かった。
【0080】
また、
図10(b)に示すように、比較例1では、1590[cm
−1]付近にグラファイト構造に起因するGバンドと、1340[cm
−1]付近に結晶欠陥に起因するDバンドと、を観察することができた。しかしながら、結晶性を表すG/D比が小さいことから、カーボンナノチューブの質が低いものであることが分かった。
【0081】
一方、
図11(b)に示すように、実施例1でも、Gバンドと、Dバンドと、を観察することができた。しかも、結晶性を表すG/D比が大きいことから、カーボンナノチューブの質が高いものであることが分かった。
【0082】
[比較例2]
反応管として、
図5に示す反応管101を用いた場合の温度分布を、Fluentを用いて解析した。解析条件としては、直線管部102の内径i.d.(inside diameter)を22mmとし、加熱部106の長さを300mmとし、加熱部106の外表面を820℃とし、加熱部106以外の外表面を27℃とした。また、流入口103に供給する第一ガスの流速を変え、それぞれ、流入口103に供給する第一ガスの総流量を3.16slm、5.00slm、10.00slm、31.60slmとした。反応管101には流動化媒体を含めず、ガス流のみの温度分布を評価した。
【0083】
解析結果を
図12に示す。
図12(a)は、第一ガスの総流量を3.16slmとした場合、
図12(b)は、第一ガスの総流量を5.00slmとした場合、
図12(c)は、第一ガスの総流量を10.00slmとした場合、
図12(d)は、第一ガスの総流量を31.60slmとした場合を示している。また、
図12(e)は、
図12(a)〜(d)における温度グラデーションを示している。
【0084】
図12に示すように、比較例2では、加熱部106の下部において温度が十分に上昇しきれていない。このため、加熱部106の下部ではカーボンナノチューブの合成が十分に行われない。特に、
図12(a)〜(d)から分かるように、第一ガスの流速が高くなるほど、温度が十分に上昇しきれていない領域が拡大される。
【0085】
[実施例2]
反応管として、
図1に示す熱交換式反応管1を用いた場合の温度分布を、Fluentを用いて解析した。解析条件としては、第一管部2の内径(第一流路4の外径)を35mmとし、第二管部3の内径(第二流路5の外径)を22mmとし、加熱部11の長さを300mmとし、第一管部2の底面から分散板8までの距離を10mmとし、加熱部11の外表面を820℃とし、加熱部11以外の外表面を27℃とした。また、流入口6に供給する第一ガスの流速を変え、それぞれ、流入口6に供給する第一ガスの総流量を3.16slm、31.60slmとした。第二管部3には流動化媒体を含めず、ガス流のみの温度分布を評価した。
【0086】
解析結果を
図13に示す。
図13(a)は、第一ガスの総流量を3.16slmとした場合、
図13(b)は、第一ガスの総流量を31.60slmとした場合を示している。また、
図13(c)は、
図13(a)及び(b)における温度グラデーションを示している。
【0087】
図13に示すように、実施例2では、第一ガスが第一管部2の第一流路4を下降する際に予熱されたことから、第二管部3の第二流路5に流入した時点で、既に十分な温度に達していた。このため、第二流路5を流れる第一ガスは、第二流路5の下側から上側まで均一な温度となった。また、
図13(a)と
図13(b)とを比較すると、第一ガスの流速が高くなるほど、第一ガスが十分な温度に昇温するまでの距離が長くなる。しかしながら、第一ガスの流速を高くして第一ガスの総流量が31.60slmとなる場合であっても、第二管部3の第二流路5に流入した時点で、既に十分な温度に達していた。
【0088】
[実施例3]
反応管として、
図2に示す熱交換式反応管21を用いた場合の温度分布を、Fluentを用いて解析した。解析条件としては、第一管部2の内径(第一流路4の外径)を35mmとし、第二管部3の内径(第二流路5の外径)を22mmとし、第三管部22の内径(第三流路23の外径)を2mmとし、加熱部11の長さを300mmとし、第一管部2の底面から分散板8までの距離を10mmとし、加熱部11の外表面を820℃とし、加熱部11以外の外表面を27℃とした。また、流入口6に供給する第一ガスの流速を変え、それぞれ、流入口6に供給する第一ガスの総流量を2.16slm、4.00slm、9.00slmとした。第三流路23に供給する第二ガスの流速は同一とし、それぞれ、第三流路23に供給する第二ガスの総量を1.00slmとした。第二管部3には流動化媒体を含めず、ガス流のみの温度分布を評価した。
【0089】
解析結果を
図14に示す。
図14(a)は、第一ガスの総流量を2.16slmとした場合、
図14(b)は、第一ガスの総流量を4.00slmとした場合、
図14(c)は、第一ガスの総流量を9.00slmとした場合を示している。また、
図14(d)は、
図14(a)〜(c)における温度グラデーションを示している。
【0090】
図14に示すように、実施例3では、第二流路5において予熱された第一ガスと低温のままの第二ガスとが混合することで、第二流路5を流れる第一ガス及び第二ガスは、第二流路5の下側から上側まで、第一ガスの予熱温度よりも低い温度域で均一な温度となった。しかも、
図14(a)〜(c)から明らかなように、第一ガスの流速が高くなっても、第二流路5を流れる第一ガス及び第二ガスの温度が均一に保持されたままであった。
【0091】
[数値解析の評価]
実施例2及び実施例3は、比較例2に比べて、ガスの均熱性が高まるため、カーボンナノチューブを効果的に成長させることができることが分かった。
【0092】
[比較例3]
反応管として、
図5に示す反応管101を用い、直線管部102に触媒担持支持体を充填しない場合の温度分布を、計測用熱電対により実測した。具体的には、
図15に示すように、直線管部102の周囲を断熱材107で覆い、直線管部102と断熱材107との間に加熱装置108を配置した。実験条件としては、直線管部102の内径を22mmとし、加熱部106の長さを300mmとし、反応管101の設置場所の室温を27℃とし、加熱装置108による加熱温度を820℃とした。また、流入口103に供給する第一ガスの流速を変え、それぞれ、流入口103に供給する第一ガスの総流量を3.16slm、5.00slm、10.00slmとした。
【0093】
そして、加熱装置108の加熱温度を、直線管部102と断熱材107との間に挿入された制御用熱電対14により、分散板105から12cm上方の位置で測定された温度とした。また、直線管部102内の温度を、直線管部102に挿入した計測用熱電対15により測定し、この測定温度を分散板105から上方への距離に対応付けて記録した。測定結果を
図16に示す。
【0094】
[実施例4]
反応管として、
図1に示す熱交換式反応管1を用い、第二流路5に触媒担持支持体を充填しない場合の温度分布を、計測用熱電対により実測した。具体的には、
図17に示すように、第一管部2の周囲を断熱材12で覆い、第一管部2と断熱材12との間に加熱装置13を配置した。実験条件としては、第一管部2の内径(第一流路4の外径)を35mmとし、第二管部3の内径(第二流路5の外径)を22mmとし、加熱部11の長さを300mmとし、第一管部2の底面から分散板8までの距離を10mmとし、熱交換式反応管1の設置場所の室温を27℃とし、加熱装置13よる加熱温度を820℃とした。また、流入口6に供給する第一ガスの流速を変え、それぞれ、流入口6に供給する第一ガスの総流量を3.16slm、5.00slm、10.00slmとした。
【0095】
そして、加熱装置13の加熱温度を、第一管部2と断熱材12との間に挿入した制御用熱電対14により、分散板8から12cm上方の位置で測定された温度とした。また、第二流路5内の温度を、第二流路5に挿入した計測用熱電対15により測定し、この測定温度を分散板8から上方への距離に対応付けて記録した。測定結果を
図18に示す。
【0096】
[実施例5]
反応管として、
図2に示す熱交換式反応管21を用い、第二流路5に触媒担持支持体を充填しない場合の温度分布を、計測用熱電対により実測した。具体的には、
図19に示すように、第一管部2の周囲を断熱材25で覆い、第一管部2と断熱材25との間に加熱装置26を配置した。実験条件としては、第一管部2の内径(第一流路4の外径)を35mmとし、第二管部3の内径(第二流路5の外径)を22mmとし、第三管部22の内径(第三流路23の外径)を2mmとし、加熱部11の長さを300mmとし、第一管部2の底面から分散板8までの距離を10mmとし、熱交換式反応管1の設置場所の室温を27℃とし、加熱装置13よる加熱温度を820℃とした。また、流入口6に供給する第一ガスの流速を変え、それぞれ、流入口6に供給する第一ガスの総流量を2.16slm、4.00slm、9.00slmとした。第三流路23に供給する第二ガスの流速は同一とし、それぞれ、第三流路23に供給する第二ガスの総量を1.00slmとした。つまり、第二流路5に供給する第一ガス及び第二ガスの総流量を、3.16slm、5.00slm、10.00slmとした。
【0097】
そして、加熱装置13の加熱温度を、第一管部2と断熱材12との間に挿入した制御用熱電対14により、分散板8から12cm上方の位置で測定された温度とした。また、第二流路5内の温度を、第二流路5に挿入した計測用熱電対15により測定し、この測定温度を分散板8から上方への距離に対応付けて記録した。測定結果を
図20に示す。
【0098】
[実測の評価]
比較例3、実施例4及び実施例5におけるガスの総流量が10.00slmの場合の計測結果を
図21に纏めて示す。
図21に示すように、比較例3では、ガスの温度が、分散板105の地点において540℃付近であるのに対し、実施例4及び実施例5では、ガスの温度が、分散板8の地点において既に800℃前後に到達している。また、比較例3では、分散板105からの距離に応じて計測温度が大きく異なっているが、実施例4及び実施例5は、比較例3に比べて、分散板8からの距離に応じた計測温度の変化が格段に小さくなっている。しかも、
図16、
図18及び
図20に示すように、実施例4及び実施例5では、総流量が変化しても、比較例3に比べて、分散板からの距離に応じた計測温度の変化が格段に小さくなっている。
【0099】
このようなことから、実施例4及び実施例5は、比較例3に比べて、カーボンナノチューブを効果的に成長させることができることが分かった。
【0100】
[比較例4]
直線管部102に触媒担持支持体を充填した点を除き、比較例3と同一条件で反応管の温度分布を計測した。計測結果を
図22に示す。
【0101】
[実施例6]
第二流路5に触媒担持支持体を充填した点を除き、実施例4と同一条件で交換式反応管の温度分布を計測した。計測結果を
図23に示す。
【0102】
[実施例7]
第二流路5に触媒担持支持体を充填した点を除き、実施例5と同一条件で交換式反応管の温度分布を計測した。計測結果を
図24に示す。
【0103】
[実測の評価]
比較例4、実施例6及び実施例7におけるガスの総流量が10.00slmの場合の計測結果を
図25に纏めて示す。
図25に示すように、比較例4では、ガスの温度が、分散板105の地点において640℃付近であるのに対し、実施例6及び実施例7では、ガスの温度が、分散板8の地点において既に800℃前後に到達している。また、比較例4では、分散板105からの距離に応じて計測温度が大きく異なっているが、実施例6及び実施例7は、比較例3に比べて、分散板8からの距離に応じた計測温度の変化が格段に小さくなっている。しかも、
図22〜
図24に示すように、実施例6及び実施例7では、総流量が変化しても、比較例4に比べて、分散板からの距離に応じた計測温度の変化が格段に小さくなっている。
【0104】
このようなことから、実施例6及び実施例7は、比較例4に比べて、カーボンナノチューブを効果的に成長させることができることが分かった。
【0105】
しかも、触媒担持支持体の充填の有無に限らず、本発明は、カーボンナノチューブを効果的に成長させることができることが分かった。
【0106】
[比較例5]
反応管として、
図5に示す反応管101を用い、直線管部102内の温度分布を計測用熱電対により実測した。直線管部102の内径を23mmとし、直線管部102に触媒担持支持体を充填した他は、比較例3と同じ条件とした。
【0107】
そして、直線管部102内の温度を、直線管部102に挿入した計測用熱電対15により測定し、この測定温度を分散板105から上方への距離に対応付けて記録した。測定結果を
図28に示す。
【0108】
[実施例8]
反応管として、
図2に示す熱交換式反応管21を用い、第二流路5内の温度分布を計測用熱電対により実測した。また、実施例8では、第三管部22が分散板8を貫通している熱交換式反応管21を用いた。第一管部2の内径(第一流路4の外径)を50mmとし、第二管部3の内径(第二流路5の外径)を40mmとし、第三管部22の内径(第三流路23の外径)を2mmとし、第二流路5に触媒担持支持体を充填した他は、実施例5と同じ条件とした。
【0109】
そして、第二流路5内の温度を、第二流路5に挿入した計測用熱電対15により測定し、この測定温度を分散板8から上方への距離に対応付けて記録した。測定結果を
図29に示す。
【0110】
[実測の評価]
図28に示すように、比較例5では、分散板105からの距離に応じて計測温度が大きく異なっており、分散板105から遠く離れないとガスの温度が高くならない。つまり、比較例5では、高速のガス流により支持体であるビーズが冷えるため、装置のスケールアップができないという課題がある。なお、ガスの流量増加と装置の管径増大とは同様の効果である。
【0111】
このため、比較例5をカーボンナノチューブの合成に適用した場合、低温のビーズに触媒ガスが接することによりビーズに触媒が担持されるため、触媒の付着確率が低く、触媒粒子の選択成長が起き、触媒粒子が大きく疎ら形成する。その結果、生成されるカーボンナノチューブが太くなる。
【0112】
しかも、比較例5では、分散板105を通して触媒ガスを供給するため、分散板105に触媒が付着して分散板105の穴が閉塞する。その結果、頻繁に分散板105を洗浄する必要が生じるため、カーボンナノチューブの合成のサイクルを繰り返し行う回数が大きく制限される。
【0113】
これに対し、
図29に示すように、実施例8では、分散板8からの距離に応じた計測温度の変化が格段に小さくなっており、分散板8の位置において既にガスの温度が高くなっている。つまり、実施例8では、第二流路5を流れる第一ガスが、第一流路4を流れる第二ガスとの熱交換及び加熱装置26により加熱されるため、第一ガスのガス流速を高くしても、また、スケールアップしても、第二流路5を流れる第一ガスを均一に加熱することが可能になる。
【0114】
このため、実施例8をカーボンナノチューブの合成に適用した場合、高温のビーズに触媒ガスが接することによりビーズに触媒が担持されるため、触媒の付着確率が高く、触媒粒子が小さく密に形成される。その結果、生成されるカーボンナノチューブが細くなる。
【0115】
しかも、実施例8では、分散板8を貫通する第三管部22から第二流路5に触媒バスが供給されるため、分散板8に触媒が付着しない。その結果、分散板105の洗浄が不要になるため、カーボンナノチューブの合成のサイクルを繰り返し行うことが可能となる。
【0116】
[比較例6]
比較例5で用いた反応管101を用いて、CVD法によりカーボンナノチューブの合成を行った。なお、反応管101の直線管部102の内径を22mmとし、ガス流路の断面積を約380mm
2とした。
【0117】
カーボンナノチューブの合成では、流入口103から触媒ガスを供給することにより担持体であるビーズ上に触媒を担持させる触媒担持工程を行い、その後、流入口103から原料ガスを20分間供給することによりビーズ上にカーボンナノチューブを合成するCVD工程を行った。触媒担持工程では、まず、流入口103から第一触媒ガス及び第二触媒ガスを2分間供給することにより、担持体であるビーズ上に触媒を堆積する堆積工程を行い、次に、流入口103から還元ガスを10分間供給することにより、ビーズ上に堆積した触媒を還元して微粒子化する還元工程を行った。第一触媒ガスの総流量を21.225slmとし、第二触媒ガスの総流量を21.425slmとし、還元ガスの総流量を9.48slmとし、原料ガスの総流量を9.48slmとした。第一触媒ガス、第二触媒ガス、還元ガス及び原料ガスの成分を
図30に示す。その他の条件は、比較例3と同じ条件とした。
【0118】
その後、流入口103から分離ガスを供給して、触媒粒子からカーボンナノチューブを分離し、分離したカーボンナノチューブを回収した。分離ガスとしては、アルゴンを用いた。
【0119】
図31は、比較例6において合成されたカーボンナノチューブのSEM画像である。
図31に示すように、比較例6では、ビーズ上に、カーボンナノチューブが約0.25mmの長さに成長した。また、回収されたカーボンナノチューブの重量を計測したところ、カーボンナノチューブの合成の1サイクル当り、0.26gであった。
【0120】
[実施例9]
実施例8で用いた熱交換式反応管21を用いて、CVD法によりカーボンナノチューブの合成を行った。なお、熱交換式反応管21の第一管部2の内径を40mmとし、ガス流路の断面積を約1260mm
2とした。
【0121】
カーボンナノチューブの合成では、第三管部22から触媒ガスを供給することにより担持体であるビーズ上に触媒を担持させる触媒担持工程を行い、その後、流入口6から原料ガスを供給することによりビーズ上にカーボンナノチューブを合成するCVD工程を行った。触媒担持工程では、まず、流入口103から第一触媒ガス及び第二触媒ガスを2分間供給することにより、担持体であるビーズ上に触媒を堆積する堆積工程を行い、次に、流入口103から還元ガスを10分間供給することにより、ビーズ上に堆積した触媒を還元して微粒子化する還元工程を行った。第一触媒ガスの総流量を21.225slmとし、第二触媒ガスの総流量を21.425slmとし、還元ガスの総流量を9.48slmとし、原料ガスの総流量を9.48slmとした。第一触媒ガス、第二触媒ガス、還元ガス及び原料ガスの成分を
図30に示す。その他の条件は、実施例5と同じ条件とした。
【0122】
その後、流入口6から分離ガスを供給して、触媒粒子からカーボンナノチューブを分離し、分離したカーボンナノチューブを回収した。分離ガスとしては、アルゴンを用いた。
【0123】
図32は、実施例9における反応管の写真を示し、
図32(a)は、触媒ガス及び原料ガスを供給する前の反応管の写真、
図32(b)は、触媒ガス及び原料ガスを供給してカーボンナノチューブを合成した後の反応管の写真、
図32(c)は、カーボンナノチューブを分離した後の反応管の写真を示す。
【0124】
図33は、実施例9において合成されたカーボンナノチューブのSEM画像である。
図33に示すように、実施例9では、ビーズ上に、カーボンナノチューブが縦に整列した状態で約0.2mmの長さに成長した。また、回収されたカーボンナノチューブの重量を計測したところ、カーボンナノチューブの合成の1サイクル当り、0.70gであった。
【0125】
図34は、流出口10から排出された原料ガスにおける炭素源の分析結果を示す図である。
図34において、rtは、流入口6から供給する原料ガスにおける炭素源の分析結果である。
図34に示すように、1〜10分の間は、C
2H
2がカーボンナノチューブに変換される割合が60〜82%となっていることから、カーボンナノチューブの成長が速い段階であると考えられる。また、10〜20分の間は、C
2H
2がカーボンナノチューブに変換される割合が40%以下となっていることから、触媒が不活性化(deactivation)する段階であると考えられる。
【0126】
[比較例6と実施例9との比較]
比較例6と実施例9とを比較すると、実施例9の熱交換式反応管21は、ガス流路の断面積が比較例6の反応管101に比べて約3倍となっているが、回収されたカーボンナノチューブの重量も比較例6の反応管101に比べて約3倍となっていた。このような結果から、熱交換式反応管21をスケールアップしても等温場を維持できることから、カーボンナノチューブの生産性を向上できると考えられる。なお、比較例6の反応管101の直線管部102の内径を、実施例9と同様に太くしたところ、カーボンナノチューブを合成することができなかった。
【0127】
[実施例10]
CVD工程を25分行った他は、実施例9と同じ条件として、合成されたカーボンナノチューブを回収した。
【0128】
図35は、実施例10において合成されたカーボンナノチューブのSEM画像である。
図35に示すように、実施例10では、ビーズ上に、カーボンナノチューブが縦に整列した状態で約0.33mmの長さに成長した。また、回収されたカーボンナノチューブの重量を計測したところ、カーボンナノチューブの合成の1サイクル当り、0.88gであった。