(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1に摩擦測定装置の概略図を示す。摩擦測定装置100は、第1部材Aを保持する第1治具1と、第2部材Bを保持する第2治具2と、第1部材Aを第2部材Bに押し付ける荷重機構3と、第1部材Aを第2部材Bに対して相対的に摺動させる摺動機構4と、第1部材A及び第2部材Bが摺動する際の第1部材A及び第2部材Bとの間の摩擦特性を測定する測定機構5とを備えている。摩擦測定装置100は、例えば、マシニングセンタである。以下、説明の便宜上、上下方向をZ方向とし、互いに直交し且つZ方向にも直交するX方向とY方向とを規定する。
【0015】
測定機構5は、摩擦測定装置100のステージ6上に設置されている。第2治具2は、測定機構5上に設置されている。第1治具1は、第2治具2の上方に配置されている。荷重機構3は、第1治具1と連結されており、第1治具1に対してZ方向下向き、即ち、第2治具2の方への荷重を付加する。摺動機構4は、第1治具1及び荷重機構3を一体的にXY平面内で移動させる。
【0016】
図2に第1部材Aを示し、上側が正面図であり、下側が底面図である。
【0017】
第1部材Aは、平面視略正方形の直方体状のブロックである。詳しくは、対向する一対の略正方形状の主面a1,a2と、一対の主面a1,a2を連結する4つの側面a3〜a6とを有する。4つの側面a3〜a6の隣り合う各2つの側面は、稜部a7を介して連結されている。つまり、第1部材Aは、4つの稜部a7を有している。稜部a7は、R面取りされ、R面となっている。稜部a7は、直方体の厚み方向に線状に延び、断面が凸状の凸部の例である。尚、稜部a7は、R面に代えてC面であってもよく、面取りされないものであってもよい。主面a1,a2と側面a3〜a6との間の稜部の面取り状態は、基本的に稜部a7と同じであるが、異なるものであってもよい。
【0018】
第2部材Bは、第1部材Aと同様の形状をしているので詳細な説明を省略する。ただし、第2部材Bも、第1部材Aと同様に、一対の主面と4つの側面と、R面に形成された4つの稜部とを有している。以下、第2部材Bのこれらの要素について言及するときには、第1部材Aの各要素に関する符号のうち「a」を「b」に置き換えて説明する。すなわち、第2部材Bは、4つの稜部b7を有している。稜部b7は、線状に延び、断面が凸状の凸部の例である。
【0019】
第1治具1は、2つの板を有し、該2つの板で第1部材Aを挟み込むことによって第1部材Aを保持する。2つの板は、第1部材Aを挟み込んだ状態でネジで固定される。このとき、第1治具1は、1つの稜部a7が第2治具2の方を向き且つ、該稜部a7がX方向に延びるような状態で第1部材Aを保持する。
【0020】
第2治具2は、第1治具1と同様の構成をしている。つまり、第2治具2は、2つの板を有し、該2つの板で第2部材Bを挟み込むことによって第2部材Bを保持する。2つの板は、第2部材Bを挟み込んだ状態でネジで固定される。このとき、第2治具2は、1つの稜部b7が第1治具1の方を向き且つ、該稜部b7がY方向に延びるような状態で第2部材Bを保持する。
【0021】
こうして第1治具1及び第2治具2にそれぞれ保持された第1部材A及び第2部材Bは、稜部a7と稜部b7とが接触している。
図3は、第1部材Aと第2部材Bとの接触状態を示す拡大図である。
【0022】
詳しくは、第1部材Aは、稜部a7がX方向に延びる状態で保持されている。一方、第2部材Bは、稜部b7がY方向に延びる状態で保持されている。つまり、稜部a7と稜部b7とは、互いに交差した状態(より詳しくは、直交した状態)で接触している。これにより、第1部材Aの接触部a8と第2部材Bの接触部b8とは、実質的に点接触している。
【0023】
荷重機構3は、Z方向下向きの荷重を出力する。荷重機構3は、第1治具1を介して、第1部材Aに第2部材Bの方への押し付け荷重を付与する。
【0024】
摺動機構4は、第1部材Aと第2部材Bとの間に押し付け荷重が作用した状態で第1部材A及び第2部材Bを荷重が作用する方向に交差する方向へ相対的に摺動させる(即ち、摺動工程を行う)。詳しくは、摺動機構4は、第1治具1及び荷重機構3を一体的にXY平面内、即ち、押し付け荷重が作用する方向と交差する(より詳しくは直交する)平面内で移動させる。こうして、摺動機構4は、第1部材Aを移動させる。摺動機構4は、第1部材Aを任意の軌跡で移動させることができる。ここでは、摺動機構4は、第1部材AをXY平面内で円運動させる。尚、摺動機構4が荷重機構3を第1治具1と一体的に移動させるので、荷重機構3が第1部材Aに押し付け荷重を付与した状態が維持される。
【0025】
測定機構5は、多成分動力計であって、X方向、Y方向、Z方向への力を測定する。測定機構5には第2治具2が取り付けられているので、測定機構5は、第2部材Bに作用するX方向の力、Y方向の力、Z方向の力を測定する。つまり、測定機構5は、第1部材A及び第2部材Bが摺動する際の、第1部材Aと第2部材Bとの間の垂直荷重、X方向への摩擦力及びY方向への摩擦力を測定する(即ち、測定工程を行う)。
【0026】
続いて、摩擦特性の測定について詳細に説明する。
図4に、第1部材Aが第2部材Bに対して摺動する様子の模式図を示す。
図4は、
図3の要部をZ方向から見た図である。
【0027】
摺動機構4は、第1部材A及び第2部材Bの両方の接触部a8,b8を変更しながら第1部材A及び第2部材Bを相対的に摺動させる。具体的には、第1治具1に保持された第1部材Aの稜部a7は、X方向に延びている。一方、第2治具2に保持された第2部材Bの稜部b7は、Y方向に延びている。そのため、稜部a7と稜部b7とは、交差(より詳しくは、直交)し、実質的に点接触している。この状態において、摺動機構4は、第1部材Aを例えば
図4(A)の状態から、第2部材Bに対して相対的に円運動させる。(A)の状態から、(B)→(C)→(D)と進んで、(A)に戻ってきたときに一周の円運動が完了する。ここで、第1部材Aの速度は、
図5に示すように、稜部a7が延びるX方向への速度成分(X成分)と、稜部b7が延びるY方向への速度成分(Y成分)とに分解することができる。(A)の状態においては、第1部材Aの速度のほとんどがY成分であり、X成分は実質的に零である。(A)から(B)へ進むにつれて、Y成分が減少し、X成分が増加する。(B)の状態では、第1部材Aの速度のほとんどがX成分であり、Y成分は実質的に零となる。こうして、X成分及びY成分の増減を繰り返すことによって、稜部a7の接触部a8及び稜部b7の接触部b8がそれぞれ移動する。稜部a7はX方向へ延びているので、接触部a8は第1部材Aの速度のX成分に応じて移動する。接触部a8は、稜部a7上を円運動の直径の範囲内で移動する。一方、稜部b7はY方向へ延びているので、接触部b8は第1部材Aの速度のY成分に応じて移動する。接触部b8は、稜部b7上を円運動の直径の範囲内で移動する。こうして、接触部a8の位置及び接触部b8の位置は、円運動の際に刻々と変化する。これにより、第1部材A及び第2部材Bの両方又は一方が局所的に摩耗することが防止される。
【0028】
このとき、測定機構5は、第1部材Aが円運動する際の、X方向への荷重、Y方向への荷重及びZ方向への荷重を測定している。荷重機構3による荷重は、円運動を通じて一定に維持されているので、測定機構5により測定されるZ方向への荷重は略一定である。測定機構5により測定されるX方向への荷重は、第1部材AのX方向への速度成分の増減と、第1部材Aと第2部材Bとの間のX方向への動摩擦係数に依存して変化する。また、測定機構5により測定されるY方向への荷重は、第1部材AのY方向への速度成分の増減と、第1部材Aと第2部材Bとの間のY方向への動摩擦係数に依存して変化する。これら測定機構5の測定結果に基づいて、第1部材Aと第2部材Bとの間のX方向への摩擦力及び動摩擦係数、並びに、第1部材Aと第2部材Bとの間のY方向への摩擦力及び動摩擦係数を測定することができる。さらには、X方向への摩擦力及び動摩擦係数とY方向への摩擦力及び動摩擦係数とを合成することによって、XY平面における任意の方向への摩擦力及び動摩擦係数を求めることができる。
【0029】
以上のように、摩擦測定装置100は、第1部材Aと第2部材Bとの間に押し付け荷重が作用した状態で第1部材A及び第2部材Bを該荷重が作用する方向に交差する方向へ相対的に摺動させる摺動機構4と、第1部材A及び第2部材Bが摺動する際の第1部材Aと第2部材Bとの間の摩擦特性を測定する測定機構5とを備え、第1部材A及び第2部材Bはそれぞれ、線状に延び、断面が凸状の稜部a7,b7を有し、摺動機構4は、第1部材A及び第2部材Bの稜部a7,b7同士を交差する状態で接触させ、第1部材A及び第2部材Bを荷重が作用する方向に交差する平面内において相対的に周回させる。
【0030】
また、前述の摩擦測定方法は、第1部材Aと第2部材Bとの間に押し付け荷重が作用した状態で第1部材A及び第2部材Bを荷重が作用する方向に交差する方向へ相対的に摺動させる摺動工程と、第1部材A及び第2部材Bが摺動する際の第1部材Aと第2部材Bとの間の摩擦特性を測定する測定工程とを含み、第1部材A及び第2部材Bはそれぞれ、線状に延び、断面が凸状の稜部a7,b7を有し、摺動工程では、第1部材A及び第2部材Bの稜部a7,b7同士を交差する状態で接触させ、第1部材A及び第2部材Bを荷重が作用する方向に交差する平面内において相対的に周回させる。
【0031】
この構成によれば、周回運動には第1部材Aの稜部a7が延びる方向の移動成分と第2部材Bの稜部b7が延びる方向の移動成分とが含まれる。稜部a7の接触部a8は、稜部a7が延びる方向の移動成分に応じて稜部a7上を移動し、稜部b7の接触部b8は、稜部b7が延びる方向の移動成分に応じて稜部b7上を移動する。こうして、第1部材A及び第2部材Bの摺動時に第1部材A及び第2部材Bの両方の接触部a8,b8が刻々と変化する。その結果、第1部材A及び第2部材Bの両方又は一方が局所的に摩耗することを防止することができるので、第1部材A及び第2部材Bの摩耗による影響を低減した摩擦測定を行うことができる。
【0032】
また、第1部材A及び第2部材Bが周回運動することによって、第1部材Aと第2部材Bの摺動方向が360°変化し、異なる摺動方向への摩擦特性を1度の摩擦測定で測定することができる。つまり、様々な摺動方向への摩擦特性を簡便に測定することができる。それにより、摩擦特性の異方性を求めることができると共に、異なる摺動方向への摩擦特性を平均することによって摺動面の影響を相殺した摩擦特性を求めることができる。
【0033】
また、摺動機構4による第1部材A及び第2部材Bの周回は、円運動である。
【0034】
この構成によれば、稜部a7上の接触部a8の移動範囲と、稜部b7上の接触部b8の移動範囲とを概ね等しくすることができる。つまり、第1部材Aの摩耗と第2部材Bの摩耗とを概ね等しくすることができる。
【0035】
また、第1部材A及び第2部材Bを円運動させることによって、第1部材A及び第2部材Bを360°全ての摺動方向へ万遍なく摺動させることができ、360°全ての摺動方向への摩擦特性を万遍なく測定することができる。例えば、周回運動が楕円運動である場合には、360°全ての摺動方向への摩擦特性を測定できるものの、楕円の長辺に概ね沿った方向への摺動がより多くなり、当該方向への摩擦特性が重点的に測定されることになる。あるいは、周回運動が多角形の軌跡を描く場合には、多角形の各辺に沿った方向への摩擦測定が測定される。それに対し、第1部材A及び第2部材Bを円運動させる場合には、360°の全方向へ万遍なく摺動するため、特定の方向へ偏って摺動することがない。その結果、摩擦特性の異方性や、摺動面の影響を相殺した摩擦特性をより精度良く求めることができる。
【0036】
線状に延び、断面が凸状の凸部は、2つの側面を連結する稜部a7,b7である。
【0037】
この構成によれば、稜部a7と稜部b7とが接触するので、第1部材Aと第2部材Bとは実質的に点接触することになる。尚、摩擦測定中に稜部a7,b7が摩耗又は塑性変形して、両者が面接触する場合もあり得るが、その場合でも接触面積は非常に小さい。あるいは、稜部a7,b7が面取りされている場合には、第1部材Aと第2部材Bは面接触となるが、その接触面積は非常に小さくなる。そのため、稜部a7,b7同士を接触させることによって、接触面積を小さくして、接触部a8,b8に大きな荷重を作用させることができる。切削工具等の摩擦係数測定においては、大きな荷重を作用させる必要があり、接触面積を小さくすることが有効である。
【0038】
稜部を有する材料は容易に入手することができる。つまり、容易に入手可能な材料を用いて安定した摩擦測定を実現することができる。
【0039】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0040】
前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0041】
例えば、前記実施形態では、摩擦測定装置としてマシニングセンタを用いているが、これに限られるものではない。摩擦測定装置は、第1部材Aと第2部材Bとに押し付け荷重を作用させた状態で両者を摺動させ、その際の第1部材Aと第2部材Bとの間の摩擦特性を測定できる装置であれば、任意の装置を採用することができる。
【0042】
摩擦測定装置100は、第2治具2が固定で、第1治具1が移動するように構成されているが、第1治具1が固定で、第2治具2が移動する構成であってもよく、第1治具1及び第2治具2の両方が移動する構成であってもよい。
【0043】
摺動機構4は、第1部材A及び第2部材Bを相対的に円運動させているが、これに限られるものではない。摺動機構4は、第1部材A及び第2部材Bを相対的に周回させる限り、どのような軌跡で第1部材A及び第2部材Bを相対移動させてもよい。例えば、摺動機構4による相対移動の軌跡は、楕円であってもよく、多角形であってもよい。つまり、摺動機構4による相対移動は、円運動以外の周回運動であってもよい。
【0044】
測定機構5は、多成分動力計であるが、これに限られるものではない。測定機構5は、第1部材Aと第2部材Bとの間の摩擦特性を測定できる装置であれば、任意の装置を採用することができる。
【0045】
第1部材A及び第2部材Bは、前述の形状に限られるものではない。例えば、第1部材A又は第2部材Bは、平面視略三角形状、平面視略五角形状であってもよい。稜部a7,b7は、R面に形成されているが、平面状に面取りされていてもよく、あるいは、全く面取りされていなくても(即ち、先鋭な稜部であっても)よい。
【0046】
また、第1部材A又は第2部材Bは、平面視略円形状、即ち、略円柱状であってもよい。円柱の側面は、円柱の軸心に沿って延び且つ、断面が円弧状である。つまり、円柱の側面は、線状に延び、断面が凸状の凸部である。例えば、第1部材Aが略円柱状であれば、第1部材Aの円柱状の軸心が第2部材Bの凸部が延びる方向と交差する状態で、第1部材Aの円柱状の側面を第2部材Bの凸部と接触させればよい。第1部材Aの形状と第2部材Bの形状は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0047】
また、第1部材Aの材料と第2部材Bの材料とは、同じであっても、異なっていてもよい。
【0048】
第1部材Aと第2部材Bとは、実質的に点接触であるが、線接触又は面接触であってもよい。
【0049】
また、第1部材Aと第2部材Bとの間には、潤滑油等の油が介在していてもよい。
【実施例】
【0050】
続いて、実施例について説明する。
【0051】
様々な材料について、前述の摩擦測定装置100および摩擦測定方法を用いて、摩擦特性を測定した。表1に、摩擦測定装置100を構成するマシニングセンタの仕様を示す。表2に、摩擦測定装置100に組み込まれている動力計の仕様を示す。
図6に、第1部材Aの寸法を示す。尚、第2部材Bの寸法は、第1部材Aと同じである。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
表3に測定条件を示す。摩擦測定は、Z方向への荷重を12.5Nとし、XY平面内で円運動を3周行った。円運動は、等速で行った。その際の、動力計の出力をチャージアンプで増幅し、オシロスコープで観測した。
【0055】
【表3】
【0056】
図7に動力計による測定結果の一例を示す。
図7からわかるように、Z方向荷重F
zは、測定を通じて略一定である。X方向荷重F
xは、正弦波状に3周期分、変動する。一方、Y方向荷重F
yは、X方向荷重F
xに対して位相が90°ずれた状態で正弦波状(即ち、余弦波状)に3周期分、変動する。これらの結果に基づいて、X方向の摩擦係数μ
x、Y方向の摩擦係数μ
y及び平均摩擦係数μ
aveを算出する。
【0057】
X方向の摩擦係数μ
x、Y方向の摩擦係数μ
y及び平均摩擦係数μ
aveは、それぞれ以下の式で表される。
【0058】
μ
x=F
x/F
z ・・・(1)
μ
y=F
y/F
z ・・・(2)
μ
ave=√(μ
x2+μ
y2) ・・・(3)
【0059】
第1部材A及び第2部材Bの材料を変えて摩擦特定を測定した結果を以下に示す。
【0060】
〈実施例1〉
第1部材A及び第2部材Bの材料は共に、切削用超硬質工具材料のP15相当の超硬合金である。荷重の測定結果に基づいて算出されたX方向の摩擦係数μ
x及びY方向の摩擦係数μ
yのx−yリサージュを
図8に示す。摩擦係数は、1周目から3周目までほとんど変化はなかった。
図8では、1周目の測定結果のみ図示している。平均摩擦係数μ
aveは、0.126であった。
【0061】
摩擦係数が1周目から3周目までほとんど変わらなかったことから、摩擦測定を通じて第1部材A及び第2部材Bの摩耗による影響がほとんどなかったことがわかる。また、x−yリサージュが真円に近い形状となっていることから、第1部材A及び第2部材Bを相対的に円運動させることによって、X方向の摩擦係数μ
x及びY方向の摩擦係数μ
yの両方を1度の摩擦測定によって均等に、即ち、バランス良く測定できていることがわかる。また、平均摩擦係数μ
aveを求めることによって、第1部材A及び第2部材Bの摺動面の影響を相殺した摩擦係数を測定できることがわかる。
【0062】
〈実施例2〉
第1部材A及び第2部材Bの材料は共に、切削用超硬質工具材料のM15相当の超硬合金である。荷重の測定結果に基づいて算出されたX方向の摩擦係数μ
x及びY方向の摩擦係数μ
yのx−yリサージュを
図9に示す。摩擦係数は、1周目から3周目までほとんど変化はなかった。
図9では、1周目の測定結果のみ図示している。平均摩擦係数μ
aveは、0.130であった。
【0063】
摩擦係数が1周目から3周目までほとんど変わらなかったことから、摩擦測定を通じて第1部材A及び第2部材Bの摩耗による影響がほとんどなかったことがわかる。また、x−yリサージュが真円に近い形状となっていることから、第1部材A及び第2部材Bを相対的に円運動させることによって、X方向の摩擦係数μ
x及びY方向の摩擦係数μ
yの両方を1度の摩擦測定によって均等に、即ち、バランス良く測定できていることがわかる。また、平均摩擦係数μ
aveを求めることによって、第1部材A及び第2部材Bの摺動面の影響を相殺した摩擦係数を測定できることがわかる。
【0064】
〈実施例3〉
第1部材A及び第2部材Bの材料は共に、炭素鋼S45Cである。荷重の測定結果に基づいて算出されたX方向の摩擦係数μ
x及びY方向の摩擦係数μ
yのx−yリサージュを
図10に示す。1周目のx−yリサージュの径は、2周目及び3周目のx−yリサージュの径に比べて少しだけ大きかった。2周目のx−yリサージュの径と3周目のx−yのリサージュの径はほとんど同じであった。1周目のx−yリサージュにおける平均摩擦係数は、0.144であり、2周目のx−yリサージュにおける平均摩擦係数は、0.132であり、3周目のx−yリサージュにおける平均摩擦係数は、0.133であった。全3周の平均摩擦係数μ
aveは、0.137であった。
【0065】
1周目の摩擦係数が若干大きいものの、全3周を通じて摩擦係数がほとんど変わらなかったことから、摩擦測定を通じて第1部材A及び第2部材Bの摩耗による影響がほとんどなかったことがわかる。また、x−yリサージュが真円に近い形状となっていることから、第1部材A及び第2部材Bを相対的に円運動させることによって、X方向の摩擦係数μ
x及びY方向の摩擦係数μ
yの両方を1度の摩擦測定によって均等に、即ち、バランス良く測定できていることがわかる。また、平均摩擦係数μ
aveを求めることによって、第1部材A及び第2部材Bの摺動面の影響を相殺した摩擦係数を測定できることがわかる。
【0066】
〈実施例4〉
第1部材A及び第2部材Bの材料は共に、Ti−6Al−4Vである。荷重の測定結果に基づいて算出されたX方向の摩擦係数μ
x及びY方向の摩擦係数μ
yのx−yリサージュを
図11に示す。Ti−6Al−4Vのx−yリサージュは、実施例1〜3の円形ではなく、45°おきに径が増減する環状となっている。また、リサージュの径が、1周目、2周目、3周目の順に大きくなっている。1周目のx−yリサージュにおける平均摩擦係数は、0.184であり、2周目のx−yリサージュにおける平均摩擦係数は、0.251であり、3周目のx−yリサージュにおける平均摩擦係数は、0.309であった。全3周の平均摩擦係数μ
aveは、0.248であった。Ti−6Al−4Vのx−yリサージュがこのような結果となった原因の1つには、Ti−6Al−4Vの摩擦係数の異方性が考えられる。
【0067】
このように、第1部材A及び第2部材Bを相対的に円運動させることによって、1度の摩擦測定において摩擦係数の異方性を容易に観測することができる。また、平均摩擦係数μ
aveを求めることによって、第1部材A及び第2部材Bの摺動面の影響を相殺した摩擦係数を測定できることがわかる。