(54)【発明の名称】非発光性有機半導体デバイス用塗布液、有機トランジスタ、化合物、非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料、有機トランジスタ用材料、有機トランジスタの製造方法および有機半導体膜の製造方法の提供
【文献】
WEX, Brigitte et al.,End-capping of conjugated thiophene-benzene aromatic systems,Tetrahedron,2010年 9月 9日,vol. 66,pp. 8778-8784
【文献】
COROPCEANU, Veaceslay et al.,Vibronic coupling in organic semiconductors: the case of fused polycyclic benzene-thiophene structur,Chem. Eur. J.,2006年 1月10日,Volume 12, Issue 7,pp.2073-2080
【文献】
WEX, Brigitte et al.,New organic semiconductors and their device performance as a function of thiophene orientation,J. Mater. Chem.,2005年12月 2日,Volume 16,pp.1121-1124
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況のもと、本発明者らが非特許文献1に記載の化合物を用いた有機トランジスタについて検討したところ、TBBT構造を内部に有する化合物を用いて酸化還元電位や吸収・発光スペクトルを測定するための溶液をそのまま用いて塗布膜を形成させてもキャリア移動度を高くできないことがわかった。そのため、キャリア移動度の改善が求められることがわかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、キャリア移動度が高い有機トランジスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、チエノ[3,2−f:4,5−f’]ビス[1]ベンゾチオフェン(以下、TBBTとも言う)構造を内部に有する骨格に対して、特定の置換基を置換させることで、キャリア移動度が高い有機トランジスタが得られることを見出し、本発明に至った。
上記課題を解決するための具体的な手段である本発明は、以下の構成を有する。
【0008】
[1] 下記一般式(2)で表される化合物と沸点100℃以上の溶媒を含む非発光性有機半導体デバイス用塗布液;
一般式(2)
【化1】
一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基を表し、置換基を有していてもよく、
一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。
[2] [1]に記載の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、一般式(2)で表される化合物が、下記条件A、条件B、条件Cまたは条件Dを満たすことが好ましい;
条件A:一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、
炭素数8〜10であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基、
炭素数3〜15であり炭素数が奇数の無置換の直鎖アルキル基、
炭素数3〜15の置換の直鎖アルキル基または
炭素数3〜18の置換もしくは無置換の分岐アルキル基
を表し、
一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい;
条件B:一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、炭素数が2〜4であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基を表す;
条件C:一般式(2)中、
R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、
炭素数1または2の置換のアルキル基である;
条件D:一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、R
11およびR
12は互いに異なる構造である。
[3] [2]に記載の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、一般式(2)で表される化合物が、下記条件Aを満たすことが好ましい;
条件A:一般式(2)中、
R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、
炭素数8〜10であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基、
炭素数3〜15であり炭素数が奇数の無置換の直鎖アルキル基、
炭素数3〜15の置換の直鎖アルキル基または
炭素数3〜18の置換もしくは無置換の分岐アルキル基
を表し、
一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。
[4] [3]に記載の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、一般式(2)中、
R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、
炭素数8〜10であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基、
炭素数3〜15であり炭素数が奇数の無置換の直鎖アルキル基、
を表すことが好ましく、
一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。
[5] [3]または[4]に記載の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、
エーテル構造またはエステル結合を介して置換基で置換された炭素数3〜15の直鎖アルキル基であることが好ましい。
[6] [2]に記載の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、一般式(2)で表される化合物が、下記条件Bを満たすことが好ましい;
条件B:一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、炭素数が2〜4であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基を表す。
[7] [2]に記載の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、一般式(2)で表される化合物が、下記条件Cを満たすことが好ましい;
条件C:一般式(2)中、
R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、
炭素数1または2の置換のアルキル基である。
[8] [7]に記載の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、一般式(2)中、
R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、
エーテル構造またはエステル結合を介して置換基で置換された炭素数1または2のアルキル基であることが好ましい。
[9] [2]に記載の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、一般式(2)で表される化合物が、下記条件Dを満たすことが好ましい;
条件D:一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、R
11およびR
12は互いに異なる構造である。
[10] [9]に記載の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、R
11は無置換の直鎖のアルキル基であり、R
12はR
11とは異なる置換または無置換の直鎖または分岐アルキル基であることが好ましい。
[11] [10]に記載の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、R
11およびR
12はそれぞれ独立に無置換の直鎖のアルキル基であり、R
11とR
12とは互いに異なる構造であることが好ましい。
[12] 下記一般式(2)で表される化合物を半導体活性層に含む有機トランジスタ;
一般式(2)
【化2】
一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基を表し、置換基を有していてもよく、
一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。
[13] [12]に記載の有機トランジスタは、一般式(2)で表される化合物が、下記条件Aを満たすことが好ましい;
条件A:一般式(2)中、
R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、
炭素数8〜10であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基、
炭素数3〜15であり炭素数が奇数の無置換の直鎖アルキル基、
炭素数3〜15の置換の直鎖アルキル基または
炭素数3〜18の置換もしくは無置換の分岐アルキル基
を表し、
一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。
[14] 下記一般式(2)で表される化合物であって、
下記条件A、条件B、条件Cまたは条件Dを満たす、化合物;
一般式(2)
【化3】
一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基を表し、置換基を有していてもよく、
一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい;
条件A:一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、
炭素数8〜10であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基、
炭素数3〜15であり炭素数が奇数の無置換の直鎖アルキル基、
炭素数3〜15の置換の直鎖アルキル基または
炭素数3〜18の置換もしくは無置換の分岐アルキル基
を表し、
一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい;
条件B:一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、炭素数が2〜4であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基を表す;
条件C:一般式(2)中、
R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、
炭素数1または2の置換のアルキル基である;
条件D:一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、R
11およびR
12は互いに異なる構造である。
[15] [14]に記載の化合物は、一般式(2)で表される化合物が、下記条件Aを満たすことが好ましい;
条件A:一般式(2)中、
R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、
炭素数8〜10であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基、
炭素数3〜15であり炭素数が奇数の無置換の直鎖アルキル基、
炭素数3〜15の置換の直鎖アルキル基または
炭素数3〜18の置換もしくは無置換の分岐アルキル基
を表し、
一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。
[16] [14]または[15]に記載の化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料。
[17] [14]または[15]に記載の化合物を含有する有機トランジスタ用材料。
[18] [14]または[15]に記載の化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用塗布液。
[19] [14]または[15]に記載の化合物を半導体活性層に含む有機トランジスタ。
[20] [1]〜[11]および[18]のいずれか一つに記載の非発光性有機半導体デバイス用塗布液を基板上に塗布し、乾燥させることにより半導体活性層を作製する工程を含む有機トランジスタの製造方法。
[21] 下記一般式(2)で表される化合物と沸点100℃以上の溶媒を含む塗布液を、
基板Aと、基板Aに固着していない部材Bとの距離を一定の距離に保った状態、または、基板Aと部材Bを接触させた状態を維持しながら、
基板Aと部材Bの両方に接するように基板Aの面内の一部に滴下し、
滴下した塗布液を徐々に乾燥させることにより一般式(2)で表される化合物の結晶を析出させて半導体活性層を形成する、有機半導体膜の製造方法;
ただし、基板Aと部材Bとの距離を一定の距離に保った状態、または、基板Aと部材Bを接触させた状態を維持している限り、塗布液を滴下または乾燥させる際に基板Aと部材Bとの位置関係を静止させてもよいし、動かしてもよい;
一般式(2)
【化4】
一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基を表し、置換基を有していてもよく、
一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。
[22] [14]または[15]に記載の化合物を溶媒に溶解した塗布液を、
基板Aと、基板Aに固着していない部材Bとの距離を一定の距離に保った状態、または、基板Aと部材Bを接触させた状態を維持しながら、
基板Aと部材Bの両方に接するように基板Aの面内の一部に滴下し、
滴下した塗布液を徐々に乾燥させることにより[14]または[15]に記載の化合物の結晶を析出させて半導体活性層を形成する、有機半導体膜の製造方法;
ただし、基板Aと部材Bとの距離を一定の距離に保った状態、または、基板Aと部材Bを接触させた状態を維持している限り、塗布液を滴下または乾燥させる際に基板Aと部材Bとの位置関係を静止させてもよいし、動かしてもよい。
[101] [1]〜[11]のいずれか一つに記載の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、沸点100℃以上の溶媒が非ハロゲン系溶媒であることが好ましい。
[102] [1]〜[11]および[18]のいずれか一つに記載の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、一般式(2)で表される化合物の濃度が0.4質量%以上であることが好ましい。
[103] [1]〜[11]および[18]のいずれか一つに記載の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、一般式(2)で表される化合物を2種以上含むことが好ましい。
[104] [1]〜[11]および[18]のいずれか一つに記載の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、粘度が10mPa・s以上であることが好ましい。
[105] [1]〜[11]および[18]のいずれか一つに記載の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、ポリマーを含むことが好ましい。
[106] 下記一般式(2)で表される化合物を含む塗布膜。
一般式(2)
【化5】
一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基を表し、置換基を有していてもよく、
一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。
[107] [14]または[15]に記載の化合物を含む塗布膜。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャリア移動度が高い有機トランジスタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明において、各一般式の説明において特に区別されずに用いられている場合における水素原子は同位体(重水素原子等)も含んでいることを表す。さらに、置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
【0012】
[非発光性有機半導体デバイス用塗布液・有機トランジスタ・化合物]
本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布液の第1の態様は、下記一般式(2)で表される化合物と沸点100℃以上の溶媒を含む;
一般式(2)
【化6】
一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基を表し、置換基を有していてもよく、
一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。
本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布液の第2の態様は、後述の本発明の化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用塗布液である。
【0013】
本発明の有機トランジスタの第1の態様は、下記一般式(2)で表される化合物を半導体活性層に含む。
一般式(2)
【化7】
一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基を表し、置換基を有していてもよく、一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。
なお、本発明の有機トランジスタの第1の態様は、半導体活性層が一般式(2)で表される化合物と沸点100℃以上の溶媒を含んでいてもよく、半導体活性層が一般式(2)で表される化合物(ただし、条件A、条件B、条件Cまたは条件Dを満たす化合物を除く)と沸点100℃以上の溶媒を含んでいてもよい。
また、本発明の有機トランジスタの第1の態様は、半導体活性層が一般式(2)で表される化合物と沸点100℃以上の溶媒を含む液から製造されてなることが好ましく、半導体活性層が一般式(2)で表される化合物(ただし、条件A、条件B、条件Cまたは条件Dを満たす化合物を除く)と沸点100℃以上の溶媒を含む液から製造されてなることがより好ましい。
本発明の有機トランジスタの第2の態様は、後述の本発明の化合物を半導体活性層に含む有機トランジスタである。
【0014】
これらのような構成により、本発明の有機トランジスタは、キャリア移動度が高い。また、本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、キャリア移動度が高い本発明の有機トランジスタを提供できる。いかなる理論に拘泥するものでもないが、第1の態様では、特定の置換基を有する一般式(2)で表される化合物を用いると、理由は詳細に判明していないが(溶解性が向上するなどの影響もあると思われる)、キャリア移動度が高い有機トランジスタを得られると考えられる。第1の態様では、製膜時の乾燥を遅くするためにさらに高沸点溶媒を用いることが好ましく、特に半導体活性層が一般式(2)で表される化合物(ただし、条件A、条件B、条件Cまたは条件Dを満たす化合物を除く)を用いる場合にキャリア移動度が高い有機トランジスタをより得やすくなる。また、第2の態様では、特定の置換基を有する後述の本発明の化合物を用いると、理由は詳細に判明していないが(溶解性が向上するなどの影響もあると思われる)、キャリア移動度が高い有機トランジスタを得られると考えられる。
【0015】
なお、有機EL(Electro Luminescence)素子材料として有用なものが、ただちに有機トランジスタ用半導体材料として有用であると言うことはできない。これは、有機EL素子と有機トランジスタでは、有機化合物に求められる特性が異なるためである。有機EL素子を駆動するには10
-3cm
2/Vs程度の移動度があれば十分であり、有機EL特性向上には電荷輸送性よりもむしろ発光効率を高めることが重要であり、発光効率が高く、面内での発光が均一な素子が求められている。通常、結晶性の高い(移動度が高い)有機化合物は、面内の電界強度不均一、発光不均一、発光クエンチ等、発光欠陥を生じさせる原因となるため、有機EL素子用材料は結晶性を低くし、アモルファス性の高い材料(低い移動度)が望まれる。一方、有機トランジスタ用半導体材料では、求められる移動度が格段に高いため、分子の配列秩序が高い、結晶性が高い有機化合物が求められている。また、高い移動度発現のため、π共役平面は基板に対して直立していることが好ましい。
【0016】
まず、後述の本発明の有機半導体膜の製造方法の塗布液としても用いることができる、本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布液について説明する。
本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布液の第1の態様と第2の態様について、まとめて以下に説明する。
【0017】
<一般式(2)で表される化合物>
下記一般式(2)で表される化合物について説明する。
一般式(2)
【化8】
一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基を表し、置換基を有していてもよく、一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。
一般式(2)で表される化合物の構造の好ましい態様について説明する。
一般式(2)中、R
11およびR
12が表すアルキル基は、特に制限はないが、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよい。一般式(2)中、R
11およびR
12が表すアルキル基は、総炭素数3〜30であり、かつ、炭素数8〜10であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基、炭素数3〜15であり炭素数が奇数の無置換の直鎖アルキル基、炭素数3〜15の置換の直鎖アルキル基または炭素数3〜18の置換もしくは無置換の分岐アルキル基であることがより好ましい。R
11およびR
12が表すアルキル基の特に好ましい範囲は、後述の条件A、条件B、条件Cまたは条件Dを満たす範囲と同様である。
一般式(2)中、R
11およびR
12が表すアルケニル基は、特に制限はないが、炭素数2〜30のアルケニル基が好ましく、炭素数3〜18のアルケニル基より好ましく、炭素数5〜13のアルケニル基が特に好ましい。
一般式(2)中、R
11およびR
12が表すアルキニル基は、特に制限はないが、炭素数2〜30のアルキニル基が好ましく、炭素数3〜18のアルキニル基より好ましく、炭素数5〜13のアルキニル基が特に好ましい。
一般式(2)中、R
11およびR
12が表すアルコキシ基は、特に制限はないが、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、炭素数3〜18のアルコキシ基より好ましく、炭素数5〜13のアルコキシ基が特に好ましい。
上述の一般式(2)で表される化合物は、R
11およびR
12がアルキル基であることが好ましい。
【0018】
一般式(2)中、R
11およびR
12が表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基がさらに置換基を有する場合、この置換基としては特に制限はないが、ハロゲン原子、アルケニル基(エテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘプタニル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基等を含む)、アルキニル基(1−ペンチニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリ−i−プロピルシリルエチニル基、2−p−プロピルフェニルエチニル基等を含む)、アリール基(フェニル基、ナフチル基、p−ペンチルフェニル基、3,4−ジペンチルフェニル基、p−ヘプトキシフェニル基、3,4−ジヘプトキシフェニル基の炭素数6〜20のアリール基等を含む)、複素環基(ヘテロ環基といってもよい。2−ヘキシルフラニル基等を含む)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アシル基(ヘキサノイル基、ベンゾイル基等を含む)、アルコキシ基(ブトキシ基等を含む)、アリールオキシ基(フェノキシ基等を含む)、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基(ウレイド基含む)、アルコキシおよびアリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルおよびアリールチオ基(メチルチオ基、オクチルチオ基等を含む)、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルおよびアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基(ジトリメチルシロキシメチルブトキシ基等)、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)
2)、ホスファト基(−OPO(OH)
2)、スルファト基(−OSO
3H)、その他の公知の置換基が挙げられる。これらの中で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基が特に好ましく、ハロゲン原子、アルコキシ基が最も好ましい。
また、これら置換基は、さらに上記置換基を有していてもよい。
【0019】
上述の一般式(2)で表される化合物は、一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよく、ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。一般式(2)中の芳香族部分に置換するハロゲン原子の個数は0〜6個であることが好ましく、0〜4個であることがより好ましく、0〜2個であることが特に好ましく、0個であることがより特に好ましい。
なお、一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子以外の置換基が置換した場合も、一般式(2)中の芳香族部分が無置換の場合または一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換した場合と同様に高キャリア移動度の有機トランジスタが得られ、一般式(2)で表される化合物に高溶解性等の機能を付与することが可能である。
上述の一般式(2)で表される化合物は、一般式(2)中のR
11またはR
12が置換しているチオフェン環部分にR
11およびR
12以外の置換基がさらに置換した場合も、R
11またはR
12が置換しているチオフェン環部分が無置換の場合と同様に高キャリア移動度の有機トランジスタが得られ、一般式(2)で表される化合物に高溶解性等の機能を付与することが可能である。
【0020】
(本発明の化合物)
本発明では、一般式(2)で表される化合物が、下記条件A、条件B、条件Cまたは条件Dを満たすことが好ましい;
条件A:一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、
炭素数8〜10であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基、
炭素数3〜15であり炭素数が奇数の無置換の直鎖アルキル基、
炭素数3〜15の置換の直鎖アルキル基または
炭素数3〜18の置換もしくは無置換の分岐アルキル基
を表し、
一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい;
条件B:一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、炭素数が2〜4であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基を表す;
条件C:一般式(2)中、
R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、
炭素数1または2の置換のアルキル基である;
条件D:一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、R
11およびR
12は互いに異なる構造である。
条件A、条件B、条件Cまたは条件Dを満たす化合物は新規化合物であって、本発明の化合物と言う。すなわち、本発明の化合物は、一般式(2)で表される化合物であって、下記条件A、条件B、条件Cまたは条件Dを満たす化合物である。本発明の化合物は、本発明の有機トランジスタにおいて、後述の半導体活性層に含まれる。すなわち、本発明の化合物は、有機トランジスタ用材料として用いることができる。
特に、Tetrahedron 66 (2010) 8778〜8784に記載されているチエノ[3,2−f:4,5−f’]ビス[1]ベンゾチオフェンに炭素数6のアルキル基が置換した化合物C6−TBBTや、炭素数12のアルキル基が置換した化合物C12−TBBTに対し、本発明の化合物を半導体活性層に含むことで、本発明の有機トランジスタの中でもよりキャリア移動度が高まる。
いかなる理由に拘泥するものでもないが、この理由として本発明者らは以下の理由を考える。本発明の化合物が満たすような特定のアルキル鎖長、または形状を選択することにより、分子間の軌道の重なりが大きくなることによって、本発明の有機トランジスタの中でもよりキャリア移動度を高めることができる。
【0021】
以下、一般式(2)で表される化合物の好ましい態様である条件A、条件B、条件Cおよび条件Dについて説明する。
【0022】
(条件A)
本発明では、一般式(2)で表される化合物が、下記条件Aを満たすことがより好ましい;
条件A:一般式(2)中、
R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、
炭素数8〜10であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基、
炭素数3〜15であり炭素数が奇数の無置換の直鎖アルキル基、
炭素数3〜15の置換の直鎖アルキル基または
炭素数3〜18の置換もしくは無置換の分岐アルキル基
を表し、
一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。
【0023】
R
11およびR
12が表す炭素数8〜10であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基としては、炭素数8または10の直鎖アルキル基であることがより好ましく、炭素数10の直鎖アルキル基であることが特に好ましい。上記の範囲の長鎖アルキル基であること、特に長鎖の直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
【0024】
R
11およびR
12が表す炭素数3〜15であり炭素数が奇数の無置換の直鎖アルキル基は、炭素数5〜15であり炭素数が奇数の無置換直鎖アルキル基であることが好ましく、炭素数7〜13であり炭素数が奇数の無置換直鎖アルキル基であることがより好ましく、炭素数9または11の無置換直鎖アルキル基であることが特に好ましい。
【0025】
R
11およびR
12は直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。一方、有機溶媒への溶解度を高める観点からはR
11およびR
12が分枝アルキル基であってもよい。
【0026】
R
11およびR
12が炭素数3〜15の置換の直鎖アルキル基または炭素数3〜18の置換の分岐アルキル基である場合の置換基としては、特に限定はないが、ハロゲン原子、アルケニル基(エテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘプタニル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基等を含む)、アルキニル基(1−ペンチニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリ−i−プロピルシリルエチニル基、2−p−プロピルフェニルエチニル基等を含む)、アリール基(フェニル基、ナフチル基、p−ペンチルフェニル基、3,4−ジペンチルフェニル基、p−ヘプトキシフェニル基、3,4−ジヘプトキシフェニル基の炭素数6〜20のアリール基等を含む)、複素環基(ヘテロ環基といってもよい。2−ヘキシルフラニル基等を含む)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アシル基(ヘキサノイル基、ベンゾイル基等を含む)、アルコキシ基(ブトキシ基等を含む)、アリールオキシ基(フェノキシ基等を含む)、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基(ウレイド基含む)、アルコキシおよびアリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルおよびアリールチオ基(メチルチオ基、オクチルチオ基等を含む)、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルおよびアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基(ジトリメチルシロキシメチルブトキシ基等)、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)
2)、ホスファト基(−OPO(OH)
2)、スルファト基(−OSO
3H)、その他の公知の置換基が挙げられる。
また、これら置換基は、さらに上記置換基を有していてもよい。
これらの中でも、とりうる置換基として、ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルオキシカルボニル基が好ましく、フッ素原子、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基(1−アルケニル基であることが好ましい)、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜11のアルコキシ基、アシルオキシ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、アルキルオキシカルボニル基がより好ましく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基が特に好ましく、ハロゲン原子、アルコキシ基が最も好ましい。
なお、R
11およびR
12がフッ素原子で置換されたアルキル基である場合は、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されていても、全てがフッ素原子で置換されてパーフルオロアルキル基を形成してもよい。
ただし、R
11およびR
12は無置換の直鎖アルキル基または分岐アルキル基であることが好ましい。
【0027】
R
11およびR
12が炭素数3〜15の置換の直鎖アルキル基である場合、炭素数3〜13の置換の直鎖アルキル基が好ましく、炭素数3〜11の置換の直鎖アルキル基がより好ましく、炭素数5〜11の置換の直鎖アルキル基が特に好ましく、炭素数7〜11の置換の直鎖アルキル基がより特に好ましい。
【0028】
R
11およびR
12が炭素数3〜18の置換の分岐アルキル基である場合、炭素数3〜15の置換の分岐アルキル基が好ましく、炭素数3〜13の置換の分岐アルキル基がより好ましく、炭素数3〜11の置換の分岐アルキル基が特に好ましく、炭素数7〜11の置換の分岐アルキル基がより特に好ましい。
【0029】
また、R
11およびR
12が置換基を有する直鎖アルキル基または分岐アルキル基である場合、直鎖アルキル基中の隣り合わない−CH
2−基、あるいは、分岐アルキル基中の隣り合わない−CH
2−基、3価の三級炭素原子連結基または4価の四級炭素原子連結基は、それぞれ独立に他の原子連結基に置換されていてもよい。この場合の他の原子連結基としては、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−又は−CONR−(Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基)などを挙げることができる。
ただし、R
11およびR
12は、直鎖アルキル基中の隣り合わない−CH
2−基、あるいは、分岐アルキル基中の隣り合わない−CH
2−基、3価の三級炭素原子連結基または4価の四級炭素原子連結基が他の原子連結基に置換されていないことが好ましい。
【0030】
本発明では、一般式(2)で表され、条件Aを満たす化合物の中でも、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、
炭素数8〜10であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基、
炭素数3〜15であり炭素数が奇数の無置換の直鎖アルキル基、
を表すことが好ましく、
一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。
【0031】
本発明では、一般式(2)で表され、条件Aを満たす化合物の中でも、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、
エーテル構造またはエステル結合を介して置換基で置換された炭素数3〜15の直鎖アルキル基であることが好ましい。
エーテル構造またはエステル結合を介して置換される置換基としては、R
11およびR
12がとり得る置換基を挙げることができ、その中でもアルキル基が好ましく、直鎖アルキル基であることがより好ましい。エーテル構造またはエステル結合を介して置換される置換基の炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、2〜5であることが特に好ましい。
【0032】
(条件B)
本発明では、一般式(2)で表される化合物が、下記条件Bを満たすことがより好ましい;
条件B:一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、炭素数が2〜4であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基を表す。
【0033】
(条件C)
本発明では、一般式(2)で表される化合物が、下記条件Cを満たすことがより好ましい;
条件C:一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、炭素数1または2の置換のアルキル基である。
条件Cを満たす中でも、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、エーテル構造またはエステル結合を介して置換基で置換された炭素数1または2のアルキル基であることが好ましい。
エーテル構造またはエステル結合を介して置換される置換基としては、R
11およびR
12がとり得る置換基を挙げることができ、その中でもアルキル基が好ましく、直鎖アルキル基であることがより好ましい。エーテル構造またはエステル結合を介して置換される置換基の炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、2〜5であることが特に好ましい。
【0034】
(条件D)
本発明では、一般式(2)で表される化合物が、下記条件Dを満たすことがより好ましい;
条件D:一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、R
11およびR
12は互いに異なる構造である。
条件Dを満たす中でも、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、R
11は無置換の直鎖のアルキル基であり、R
12はR
11とは異なる置換または無置換の直鎖または分岐アルキル基であることが好ましい。その中でも、R
11およびR
12はそれぞれ独立に総炭素数3〜30であり、かつ、R
11およびR
12はそれぞれ独立に無置換の直鎖のアルキル基であり、R
11とR
12とは互いに異なる構造であることが好ましい。
【0035】
R
11およびR
12の総炭素数は、それぞれ独立に3〜30であることが好ましく、7〜30であることがより好ましく、7〜20であることが特に好ましく、7〜15であることがより特に好ましく、7〜11であることがさらにより特に好ましく、9〜11であることがさらに特により特に好ましい。R
11およびR
12の総炭素数は、それぞれ独立に上記範囲の下限値以上であると、キャリア移動度が高くなる。R
11およびR
12の総炭素数が上記範囲の上限値以下であると、有機溶媒に対する溶解性が高くなる。
【0036】
上記一般式(2)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明で用いることができる一般式(2)で表される化合物は、これらの具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、下記表1および表2中のR
11およびR
12は、一般式(2)中のR
11およびR
12を表す。
【0040】
上記一般式(2)で表される化合物は、分子量が3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、850以下であることが特に好ましい。分子量を上記上限値以下とすることにより、溶媒への溶解性を高めることができるため好ましい。
一方で、膜の膜質安定性の観点からは、分子量は250以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましく、350以上であることがさらに好ましい。
【0041】
一般式(2)で表される化合物は、Tetrahedron 66 (2010) 8778〜8784に記載の方法または後述の実施例記載の方法を参考に合成することができる。
一般式(2)で表される化合物の合成において、いかなる反応条件を用いてもよい。反応溶媒としては、いかなる溶媒を用いてもよい。また、環形成反応促進のために、酸または塩基を用いることが好ましく、特に酸を用いることが好ましい。最適な反応条件は、目的とする化合物の構造により異なるが、上記の文献に記載された具体的な反応条件または後述の実施例記載の方法を参考に設定することができる。
【0042】
各種置換基を有する合成中間体は公知の反応を組み合わせて合成することができる。また、各置換基はいずれの中間体の段階で導入してもよい。中間体の合成後は、カラムクロマトグラフィー、再結晶等による精製を行った後、昇華精製により精製する事が好ましい。昇華精製により、有機不純物を分離できるだけでなく、無機塩や残留溶媒等を効果的に取り除くことができる。
【0043】
<溶媒>
溶液プロセスを用いて基板上に成膜する場合、層を形成する材料を適当な有機溶媒(例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、アミルベンゼン、デカリン、1−メチルナフタレン、1−エチルナフタレン、1,6−ジメチルナフタレン、テトラリンなどの炭化水素系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、α−テトラロン、β−テトラロンなどのケトン系溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、クロロトルエン、1−フルオロナフタレンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ピリジン、ピコリン、キノリン、チオフェン、3−ブチルチオフェン、チエノ[2,3−b]チオフェン等の複素環系溶媒、2−クロロチオフェン、3−クロロチオフェン、2,5−ジクロロチオフェン、3,4−ジクロロチオフェン、2−ブロモチオフェン、3−ブロモチオフェン、2,3−ジブロモチオフェン、2,4−ジブロモチオフェン、2,5−ジブロモチオフェン、3,4−ジブロモチオフェン、3,4−ジクロロ−1,2,5−チアジアゾール等のハロゲン化複素環系溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸−2−エチルヘキシル、γ−ブチロラクトン、酢酸フェニルなどのエステル系溶媒、例えば、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、アニソール、エトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、イソプロポキシベンゼン、ブトキシベンゼン、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、4−エチルアニソール、ジメチルアニソール(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−、3,6−のいずれか)、1,4−ベンゾジオキサン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、フタラン、クロマン、イソクロマンなどのエーテル系溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド・イミド系溶媒、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、リン酸トリメチルなどのリン酸エステル系溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶媒および/または水に溶解、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により膜を形成することができる。溶媒は単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、複素環系溶媒、ハロゲン化複素環系溶媒またはエーテル系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、メシチレン、アミルベンゼン、テトラリン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、α−テトラロン、ジクロロベンゼン、アニソール、エトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、イソプロポキシベンゼン、ブトキシベンゼン、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、2,3−ジヒドロベンゾフラン、フタラン、クロマン、イソクロマン、1−フルオロナフタレン、3−クロロチオフェン、2,5−ジブロモチオフェンがより好ましく、トルエン、キシレン、テトラリン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、α−テトラロン、アニソール、エトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、ブトキシベンゼン、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、2,3−ジヒドロベンゾフラン、フタラン、クロマン、イソクロマン、1−フルオロナフタレン、3−クロロチオフェン、2,5−ジブロモチオフェンが特に好ましい。
本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布液の第1の態様では、これらの溶媒の中でも沸点100℃以上の溶媒を用いる。本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布液の第1の態様は、沸点100℃以上の溶媒を含むことで、膜質が良好な点と面積の大きな結晶を得ることができるという利点があり、本発明の有機半導体膜の製造方法に好適に用いられる。
また、本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布液の第2の態様でも、沸点100℃以上の溶媒を用いることが同様の観点から好ましい。
これらの観点からは沸点100℃以上の溶媒が、沸点150℃以上であることがより好ましく、沸点175℃以上であることがさらに好ましく、沸点200℃以上であることが特に好ましい。
また、沸点100℃以上の溶媒が非ハロゲン系溶媒であることが環境負荷や人への毒性の観点から特に好ましい。
【0044】
塗布液中の一般式(2)で表される化合物の濃度は、好ましくは、0.005〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%である。この範囲とすることにより、任意の厚さの膜を形成しやすい。さらに、非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、一般式(2)で表される化合物の濃度が0.4質量%以上であることが結晶サイズの大きな塗布膜を形成させやすく特に好ましい。なお、Tetrahedron 66 (2010) 8778〜8784では、酸化還元電位や発光・吸収を測定するための低濃度の溶液が記載されているが、非発光性有機半導体デバイス用塗布液の濃度が高い方が上述の観点で好ましい。
【0045】
本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、一般式(2)で表される化合物を含み、ポリマーバインダーを含有しない態様も好ましい。
また、本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、一般式(2)で表される化合物とポリマーバインダーを含有してもよい。この場合、層を形成する材料とポリマーバインダーとを前述の適当な溶媒に溶解させ、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により膜を形成することができる。ポリマーバインダーとしては、後述のものから選択することができる。
【0046】
非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、ポリマーを含むことが形成される塗布膜の膜質均一性の観点から好ましい。
【0047】
非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、一般式(2)で表される化合物を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。一般式(2)で表される化合物を2種以上含むことが塗布液の保管安定性(保管中の結晶析出抑止)の観点から好ましい。
【0048】
非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、粘度が10mPa・s以上であることが各種印刷適性の観点から好ましい。
【0049】
非発光性有機半導体デバイス用塗布液は、界面活性剤、酸化防止剤、結晶化制御剤、結晶配向制御剤、等、ポリマーバインダー以外の添加剤を含有しても良い。
【0050】
界面活性剤の例としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤、メガファックF171、F176(大日本インキ化学工業製)やフロラードFC430(住友スリーエム製)やサーフィノールE1004(旭硝子製)、OMNOVA社製のPF656及びPF6320、等のフッ素系界面活性剤、ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)、KF−410(信越化学工業(株)製)、KF−412(信越化学工業(株)製)、KF−96−100cs(信越化学工業(株)製)、BYK−322(BYK社製)、BYK−323(BYK社製)等のオルガノシロキサンポリマーが挙げられる。
界面活性剤の含有量は、塗布液中、約0.001〜約1質量%であることが好ましい。
【0051】
例えば、酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及びイオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤の市販品としては、イルガノックス1010、イルガノックス1035、イルガノックス1076、イルガノックス1135、イルガノックス245、イルガノックス259、イルガノックス295、及びイルガノックス3114(以上、いずれもBASF社製)、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−30、アデカスタブ AO−40、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80、アデカスタブ AO−90、及びアデカスタブ AO−330(以上、いずれもADEKA社製)、スミライザー BHT、スミライザー BP−101、スミライザー GA−80、スミライザー MDP−S、スミライザー BBM−S、スミライザー GM、スミライザー GS(F)、及びスミライザー GP(以上、いずれも住友化学工業社製)、HOSTANOX O10、HOSTANOX O16、HOSTANOX O14、及びHOSTANOX O3(以上、いずれもクラリアント社製)、アンテージ BHT、アンテージ W−300、アンテージ W−400、及びアンテージ W500(以上、いずれも川口化学工業社製)、並びにSEENOX 224M、及びSEENOX 326M(以上、いずれもシプロ化成社製)、ヨシノックスBHT、ヨシノックスBB、トミノックスTT、トミノックス917(以上、いずれも吉富製薬(株)製)、TTHP(東レ(株)製)等が挙げられる。
リン系酸化防止剤の具体例としては、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト等が挙げられる。リン系酸化防止剤の市販品としては、アデカスタブ1178(旭電化(株)製)、スミライザーTNP(住友化学(株)製)、JP−135(城北化学(株)製)、アデカスタブ2112(旭電化(株)製)、JPP−2000(城北化学(株)製)、Weston 618(GE社製)、アデカスタブPEP−24G(旭電化(株)製)、アデカスタブPEP−36(旭電化(株)製)、アデカスタブHP−10(旭電化(株)製)、SandstabP−EPQ(サンド(株)製)、フォスファイト168(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)等が挙げられる。
イオウ系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等が挙げられる。イオウ系酸化防止剤の市販品としては、スミライザーTPL(住友化学(株)製)、ヨシノックスDLTP(吉富製薬(株)製)、アンチオックスL(日本油脂(株)製)、スミライザーTPM(住友化学(株)製)、ヨシノックスDMTP(吉富製薬(株)製)、アンチオックスM(日本油脂(株)製)、スミライザーTPS(住友化学(株)製)、ヨシノックスDSTP(吉富製薬(株)製)、アンチオックスS(日本油脂(株)製)、アデカスタブAO−412S(旭電化(株)製)、SEENOX 412S(シプロ化成(株)製)、スミライザーTDP(住友化学(株)製)等が挙げられる。
酸化防止剤の含有量は、塗布液中、約0.01〜約5質量%であることが好ましい。
【0052】
<有機トランジスタの構造>
本発明の有機トランジスタの第1の態様は、一般式(2)で表される化合物を半導体活性層に含む。
本発明の有機トランジスタの第2の態様は、本発明の化合物を半導体活性層に含む。
すなわち、本発明の有機トランジスタは、一般式(2)で表される化合物を含む半導体活性層を有する。
本発明の有機トランジスタは、さらに半導体活性層以外にその他の層を含んでいてもよい。
本発明の有機トランジスタは、有機電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、FET)として用いられることが好ましく、ゲート−チャンネル間が絶縁されている絶縁ゲート型FETとして用いられることがより好ましい。
以下、本発明の有機トランジスタの好ましい構造の態様について、図面を用いて詳しく説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0053】
(積層構造)
有機電界効果トランジスタの積層構造としては特に制限はなく、公知の様々な構造のものとすることができる。
本発明の有機トランジスタの構造の一例としては、最下層の基板の上面に、電極、絶縁体層、半導体活性層(有機半導体層)、2つの電極を順に配置した構造(ボトムゲート・トップコンタクト型)を挙げることができる。この構造では、最下層の基板の上面の電極は基板の一部に設けられ、絶縁体層は、電極以外の部分で基板と接するように配置される。また、半導体活性層の上面に設けられる2つの電極は、互いに隔離して配置される。
ボトムゲート・トップコンタクト型素子の構成を
図1に示す。
図1は、本発明の有機トランジスタの一例の構造の断面を示す概略図である。
図1の有機トランジスタは、最下層に基板11を配置し、その上面の一部に電極12を設け、さらに電極12を覆い、かつ電極12以外の部分で基板11と接するように絶縁体層13を設けている。さらに絶縁体層13の上面に半導体活性層14を設け、その上面の一部に2つの電極15aと15bとを隔離して配置している。
図1に示した有機トランジスタは、電極12がゲートであり、電極15aと電極15bはそれぞれドレインまたはソースである。また、
図1に示した有機トランジスタは、ドレイン−ソース間の電流通路であるチャンネルと、ゲートとの間が絶縁されている絶縁ゲート型FETである。
【0054】
本発明の有機トランジスタの構造の一例としては、ボトムゲート・ボトムコンタクト型素子を挙げることができる。
ボトムゲート・ボトムコンタクト型素子の構成を
図2に示す。
図2は本発明の実施例でFET特性測定用基板として製造した有機トランジスタの構造の断面を示す概略図である。
図2の有機トランジスタは、最下層に基板31を配置し、その上面の一部に電極32を設け、さらに電極32を覆い、かつ電極32以外の部分で基板31と接するように絶縁体層33を設けている。さらに絶縁体層33の上面に半導体活性層35を設け、電極34aと34bが半導体活性層35の下部にある。
図2に示した有機トランジスタは、電極32がゲートであり、電極34aと電極34bはそれぞれドレインまたはソースである。また、
図2に示した有機トランジスタは、ドレイン−ソース間の電流通路であるチャンネルと、ゲートとの間が絶縁されている絶縁ゲート型FETである。
【0055】
本発明の有機トランジスタの構造としては、その他、絶縁体、ゲート電極が半導体活性層の上部にあるトップゲート・トップコンタクト型素子や、トップゲート・ボトムコンタクト型素子も好ましく用いることができる。
【0056】
(厚さ)
本発明の有機トランジスタは、より薄いトランジスタとする必要がある場合には、例えばトランジスタ全体の厚さを0.1〜0.5μmとすることが好ましい。
【0057】
(封止)
有機トランジスタ素子を大気や水分から遮断し、有機トランジスタ素子の保存性を高めるために、有機トランジスタ素子全体を金属の封止缶やガラス、窒化ケイ素などの無機材料、パリレンなどの高分子材料や、低分子材料などで封止してもよい。
以下、本発明の有機トランジスタの各層の好ましい態様について説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0058】
<基板>
(材料)
本発明の有機トランジスタは、基板を含むことが好ましい。
基板の材料としては特に制限はなく、公知の材料を用いることができ、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリイミドフィルム、およびこれらポリマーフィルムを極薄ガラスに貼り合わせたもの、セラミック、シリコン、石英、ガラス、などを挙げることができ、シリコンが好ましい。
【0059】
<電極>
(材料)
本発明の有機トランジスタは、電極を含むことが好ましい。
電極の構成材料としては、例えば、Cr、Al、Ta、Mo、Nb、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、In、NiあるいはNdなどの金属材料やこれらの合金材料、あるいはカーボン材料、導電性高分子などの既知の導電性材料であれば特に制限することなく使用できる。
【0060】
(厚さ)
電極の厚さは特に制限はないが、10〜50nmとすることが好ましい。
ゲート幅(またはチャンネル幅)Wとゲート長(またはチャンネル長)Lに特に制限はないが、これらの比W/Lが10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。
【0061】
<アクセプター>
(材料)
本発明の有機トランジスタは、キャリア注入を促進するためのアクセプターを含むことが好ましい。材料としては公知の2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)等が好ましく挙げられる。
【0062】
(厚さ)
アクセプターの厚さは特に制限はないが、5nm以下とすることが好ましい。
【0063】
<絶縁層>
(材料)
絶縁層を構成する材料は必要な絶縁効果が得られれば特に制限はないが、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、PTFE(polytetrafluoroethylene)、CYTOP(サイトップ)等のフッ素ポリマー系絶縁材料、ポリエステル絶縁材料、ポリカーボネート絶縁材料、アクリルポリマー系絶縁材料、エポキシ樹脂系絶縁材料、ポリイミド絶縁材料、ポリビニルフェノール樹脂系絶縁材料、ポリパラキシリレン樹脂系絶縁材料などが挙げられる。
絶縁層の上面は表面処理がなされていてもよく、例えば、二酸化ケイ素表面をヘキサメチルジシラザン(HMDS)やオクタデシルトリクロロシラン(OTS)やβ−フェニチルトリメトキシシランの塗布により表面処理した絶縁層を好ましく用いることができ、β−フェニチルトリメトキシシランの塗布により表面処理した絶縁層をより好ましく用いることができる。
【0064】
(厚さ)
絶縁層の厚さに特に制限はないが、薄膜化が求められる場合は厚さを10〜500nmとすることが好ましく、20〜200nmとすることがより好ましく、50〜200nmとすることが特に好ましい。
【0065】
<半導体活性層>
(材料)
本発明の有機トランジスタは、半導体活性層が一般式(2)で表される化合物を含む。
半導体活性層は、一般式(2)で表される化合物に加えて後述のポリマーバインダー(ポリマーまたはバインダーとも呼ばれる)がさらに含まれた層であってもよい。また、成膜時の残留溶媒が含まれていてもよい。
半導体活性層中におけるポリマーバインダーの含有量は、特に制限はないが、好ましくは0〜95質量%の範囲内で用いられ、より好ましくは10〜90質量%の範囲内で用いられ、さらに好ましくは20〜80質量%の範囲内で用いられ、特に好ましくは30〜70質量%の範囲内で用いられる。
【0066】
(厚さ)
半導体活性層の厚さに特に制限はないが、薄膜化が求められる場合は厚さを10〜400nmとすることが好ましく、10〜200nmとすることがより好ましく、10〜100nmとすることが特に好ましい。
【0067】
[有機トランジスタの製造方法]
本発明の有機トランジスタの製造方法は、本発明の非発光性有機半導体デバイス用塗布液を基板上に塗布し、乾燥させることにより半導体活性層を作製する工程を含む。
本発明の有機トランジスタの製造方法は、後述の本発明の有機半導体膜の製造方法を含んでいてもよく、含まなくてもよい。
まず、本発明の有機トランジスタの製造方法のうち、一般的な方法について説明する。
【0068】
(成膜方法)
本発明の有機トランジスタの製造方法では、本発明の化合物、あるいは、一般式(2)で表される化合物を基板上に成膜する方法はいかなる方法でもよい。
成膜の際、基板を加熱または冷却してもよく、基板の温度を変化させることで膜質や膜中での分子のパッキングを制御することが可能である。基板の温度としては特に制限はないが、0℃から200℃の間であることが好ましく、15℃〜120℃の間であることがより好ましく、20℃〜100℃の間であることが特に好ましい。
本発明の化合物、あるいは、一般式(2)で表される化合物を基板上に成膜するとき、真空プロセスあるいは溶液プロセスにより成膜することが可能であり、いずれも好ましい。
【0069】
真空プロセスによる成膜の具体的な例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、分子ビームエピタキシー(MBE)法などの物理気相成長法あるいはプラズマ重合などの化学気相蒸着(CVD)法が挙げられ、真空蒸着法を用いることが特に好ましい。
【0070】
溶液プロセスによる成膜とは、ここでは有機化合物を溶解させることができる溶媒中に溶解させ、その溶液を用いて成膜する方法をさす。具体的には、ドロップキャスト法、キャスト法、ディップコート法、ダイコーター法、ロールコーター法、バーコーター法、スピンコート法などの塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法などの各種印刷法、Langmuir−Blodgett(LB)法などの通常の方法を用いることができ、ドロップキャスト法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法を用いることが特に好ましい。
本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体膜は、溶液塗布法により作製されたことが好ましい。また、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体膜がポリマーバインダーを含有する場合、層を形成する材料とポリマーバインダーとを適当な溶媒に溶解させ、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により形成されることが好ましい。
【0071】
次に、本発明の有機トランジスタの製造方法の中でもより好ましい態様である、本発明の有機半導体膜の製造方法を含む方法について説明する。
【0072】
[有機半導体膜の製造方法]
本発明の有機半導体膜の製造方法の第1の態様は、下記一般式(2)で表される化合物と沸点100℃以上の溶媒を含む塗布液を、
基板Aと、基板Aに固着していない部材Bとの距離を一定の距離に保った状態、または、基板Aと部材Bを接触させた状態を維持しながら、
基板Aと部材Bの両方に接するように基板Aの面内の一部に滴下し、
滴下した塗布液を徐々に乾燥させることにより一般式(2)で表される化合物の結晶を析出させて半導体活性層を形成する;
ただし、基板Aと部材Bとの距離を一定の距離に保った状態、または、基板Aと部材Bを接触させた状態を維持している限り、塗布液を滴下または乾燥させる際に基板Aと部材Bとの位置関係を静止させてもよいし、動かしてもよい;
一般式(2)
【化10】
一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基を表し、置換基を有していてもよく、一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。
本発明の有機半導体膜の製造方法の第2の態様は、本発明の化合物を溶媒に溶解した塗布液を、
基板Aと、基板Aに固着していない部材Bとの距離を一定の距離に保った状態、または、基板Aと部材Bを接触させた状態を維持しながら、
基板Aと部材Bの両方に接するように基板Aの面内の一部に滴下し、
滴下した塗布液を徐々に乾燥させることにより本発明の化合物の結晶を析出させて半導体活性層を形成する;
ただし、基板Aと部材Bとの距離を一定の距離に保った状態、または、基板Aと部材Bを接触させた状態を維持している限り、塗布液を滴下または乾燥させる際に基板Aと部材Bとの位置関係を静止させてもよいし、動かしてもよい。
本発明の有機半導体膜の製造方法の第1の態様と第2の態様について、まとめて以下に説明する。
【0073】
本発明の有機半導体膜の製造方法の好ましい態様を、図面をもとに説明する。
図3は、本発明の有機半導体膜の製造方法の一例を示す概略図である。
図3(A)は、塗布液(符号41)を基板A(符号42)上に滴下する前の状態であり、基板A(符号42)と、基板A(符号42)に固着していない部材B(符号43)との距離を一定の距離に保った状態を維持している。
次に、
図3(B)は、基板A(符号42)と部材B(符号43)の両方に接するように基板A(符号42)の面内の一部に塗布液(符号41)を滴下した状態を示す。
その後、
図3(C)は、基板A(符号42)と部材B(符号43)との位置関係を静止させて、滴下した塗布液(符号41)を徐々に乾燥させる態様の概略図である。塗布液(符号41)は膜厚が薄くなった両端部から乾燥していき、結晶化することにより、サイズが大きい結晶を得ることができる。
【0074】
図4は、本発明の有機半導体膜の製造方法の他の一例を示す概略図である。
図4(A)は、塗布液(符号41)を基板A(符号42)上に滴下する前の状態であり、基板A(符号42)と部材B(符号43)を接触させた状態を維持している。
次に、
図4(B1)は、基板A(符号42)と部材B(符号43)の両方に接するように基板A(符号42)の面内の一部に塗布液(符号41)を滴下した状態を示す。
図4(B1)の上下方向(Y軸方向)から見た図面が、
図4(B2)となる。
図4(B2)によれば、基板A(符号42)の面内の一部に塗布液(符号41)を滴下されたことがよりわかる。
その後、
図4(C)は、基板A(符号42)と部材B(符号43)との位置関係を静止させて、滴下した塗布液(符号41)を徐々に乾燥させる態様の概略図である。塗布液(符号41)は膜厚が薄くなった両端部から乾燥していき、結晶化することにより、サイズが大きい結晶を得ることができる。
図3の態様と
図4の態様を比較すると、基板A(符号42)と部材B(符号43)を接触させた状態を維持している
図4の態様の方が、膜質の観点と、保持する機構が不要で、部材B(符号43)と基板A(符号42)の距離を精密に保つことができる点で好ましい。
【0075】
図5は、本発明の有機半導体膜の製造方法の他の一例を示す概略図である。
図5(A)は、塗布液(符号41)を基板A(符号42)上に滴下する前の状態であり、基板A(符号42)と部材B(符号43)を接触させた状態を維持している。
次に、
図5(B)は、基板A(符号42)と部材B(符号43)の両方に接するように基板A(符号42)の面内の一部に塗布液(符号41)を滴下した状態を示す。
その後、
図5(C)は、基板A(符号42)と部材B(符号43)との位置関係を動かして、滴下した塗布液を徐々に乾燥させる態様の概略図である。本発明の有機半導体膜の製造方法では、基板Aと部材Bとの距離を一定の距離に保った状態、または、基板Aと部材Bを接触させた状態を維持している限り、塗布液を滴下または乾燥させる際に基板Aと部材Bとの位置関係を静止させてもよいし、動かしてもよい。
図5(C)のように塗布液(符号41)は基板A(符号42)と部材B(符号43)との位置関係を座標の−X方向に動かすことによって、部材B(符号43)から遠い方(座標の+X方向)の端部から乾燥していき、結晶化することにより、サイズが大きい結晶を得ることができる。
図5の態様と
図4の態様を比較すると、
図4の態様の方が、膜質の観点と、大きな面積の結晶を得やすいという観点で好ましい。
【0076】
本発明の有機半導体膜の製造方法に用いられる基板Aとしては、本発明の有機トランジスタの基板として用いられるものを挙げることができ、本発明の有機トランジスタの基板の上に絶縁層が形成されたものが好ましい。
【0077】
本発明の有機半導体膜の製造方法に用いられる部材Bとしては、特に制限はないが、部材Bの材質がガラス;石英;シリコン;テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチックであることが好ましく、ガラスであることがより好ましい。
部材B(符号43)のサイズ(例えば
図4(B2)中における、部材B(符号43)のX軸方向とY軸方向の長さ)としては特に制限はないが、部材B(符号43)の一辺の長さの下限値が基板A(符号42)の一辺の長さの0.1%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましく、10%以上であることが特に好ましく、20%以上であることがより特に好ましい。また、部材B(符号43)の一辺の長さの上限値が基板A(符号42)の一辺の長さの80%以下であることが好ましく、70%で以下あることがより好ましく、50%以下であることが特に好ましい。
部材B(符号43)の高さ(例えば
図4(B1)中における、部材B(符号43)のZ軸方向の長さ)としては特に制限はないが、部材B(符号43)の高さが、1〜50mmであることが好ましく、5〜20mmであることがより好ましい。
図6には基板Aと部材Bの概略図を示した。
図6中のdは、
図4(B2)中のx軸方向の部材Bの長さを表す。
図6中のwは、
図4(B2)中のy軸方向の部材Bの長さを表す。
図6中のhは、
図4(B1)中のz軸方向の部材Bの長さを表す。
図6に示した部材Bにおいて、h/dが0.01〜10であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5であることが、倒れないという観点で好ましい。w/dは1〜1000であることが好ましく、より好ましくは5〜100であることが、結晶ができる領域が広くなるという観点で好ましい。
【0078】
(成膜方法)
本発明の有機半導体膜の製造方法は、成膜の際、基板を加熱または冷却してもよく、基板の温度を変化させることで膜質や膜中での分子のパッキングを制御することが可能である。基板の温度としては特に制限はないが、0℃から200℃の間であることが好ましく、15℃〜100℃の間であることがより好ましく、20℃〜95℃の間であることが特に好ましい。
本発明の化合物を基板上に成膜するとき、溶液プロセスにより成膜する。
【0079】
溶液プロセスによる成膜とは、ここでは有機化合物を溶解させることができる溶媒中に溶解させ、その溶液を用いて成膜する方法をさす。具体的には、ドロップキャスト法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法などの各種印刷法などの通常の方法を用いることができ、ドロップキャスト法、インクジェット法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法を用いることが好ましく、フレキソグラフィー印刷法、マイクロコンタクト印刷法、インクジェット法を用いることがより好ましい。
【0080】
本発明の有機半導体膜の製造方法では、塗布液を、基板Aと部材Bの両方に接するように基板Aの面内の一部に滴下する。
塗布液を滴下するにあたり、塗布液を一滴滴下するか、二滴以上滴下する場合は一滴ずつ滴下すること、基板A上で塗布液の膜厚が薄い部分が生じやすく、塗布液の端部から乾燥が進めやすいため、好ましい。
塗布液を滴下する場合、塗布液一滴の容量は0.01〜0.2mlであることが好ましく、0.02〜0.1mlであることがより好ましい。
塗布液を、基板Aと部材Bの両方に接するように基板Aの面内の一部に滴下することにより、塗布液の端部における膜厚を薄くすることができる。
塗布液の基板Aに対する接触角は0〜90°であることが好ましく、10〜80°であることがより好ましい。
塗布液と部材Bはメニスカスを形成していることが好ましく、凹状のメニスカスを形成していることが膜質の観点からより好ましい。
【0081】
一般に、溶液プロセスで成膜するためには、上記で挙げた溶媒などに材料が溶解することが必要であるが、単に溶解するだけでは不十分である。通常、真空プロセスで成膜する材料でも、溶媒にある程度溶解させることができる。しかし、溶液プロセスでは、材料を溶媒に溶解させて塗布した後で、溶媒が蒸発して膜が形成する過程があり、溶液プロセス成膜に適さない材料は結晶性が高いものが多いため、この過程で不適切に結晶化(凝集)してしまい良好な膜を形成させることが困難であると従来は考えられていた。これに対し、本発明の有機半導体膜の製造方法によれば、結晶を析出させつつ、有機半導体膜を形成することができる。
【0082】
(乾燥)
本発明の有機半導体膜の製造方法では、滴下した塗布液を徐々に乾燥させることにより本発明の化合物、あるいは、一般式(2)で表される化合物の結晶を析出させて半導体活性層を形成する。
加熱した基板A上で、自然乾燥させてから、減圧乾燥することが膜質の観点から好ましい。
自然乾燥時の基板Aの温度は、20〜100℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。
自然乾燥時間は0.5〜20時間であることが好ましく、1〜10時間であることがより好ましい。
減圧乾燥時の温度は、20〜100℃であることが好ましく、40〜80℃であることがより好ましい。
減圧乾燥時間は1〜20時間であることが好ましく、2〜10時間であることがより好ましい。
減圧乾燥時の圧力は、10
-6〜10
-2Paであることが好ましく、10
-5〜10
-3Paであることがより好ましい。
本発明の有機半導体膜の製造方法では、本発明の化合物、あるいは、一般式(2)で表される化合物の結晶を析出させる。結晶が析出したか否かは、偏光顕微鏡による観察によって確認することができる。
【0083】
[非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料]
本発明は、本発明の化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料にも関する。
【0084】
(非発光性有機半導体デバイス)
なお、本明細書において、「非発光性有機半導体デバイス」とは、発光することを目的としないデバイスを意味する。特に「非発光性有機半導体デバイス」とは、可視光を発光することを目的としないデバイスを意味する。非発光性有機半導体デバイスは、膜の層構造を有するエレクトロニクス要素を用いた非発光性有機半導体デバイスとすることが好ましい。非発光性有機半導体デバイスには、有機トランジスタ、有機光電変換素子(光センサ用途の固体撮像素子、エネルギー変換用途の太陽電池等)、ガスセンサ、有機整流素子、有機インバータ、情報記録素子などが包含される。有機光電変換素子は光センサ用途(固体撮像素子)、エネルギー変換用途(太陽電池)のいずれにも用いることができる。好ましくは、有機光電変換素子、有機トランジスタであり、さらに好ましくは有機トランジスタである。すなわち、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体材料は、上述のとおり有機トランジスタ用材料であることが好ましい。
【0085】
(有機半導体材料)
本明細書において、「有機半導体材料」とは、半導体の特性を示す有機材料のことである。無機材料からなる半導体と同様に、正孔をキャリアとして伝導するp型(ホール輸送性)有機半導体材料と、電子をキャリアとして伝導するn型(電子輸送性)有機半導体材料がある。
本発明の化合物はp型有機半導体材料、n型の有機半導体材料のどちらとして用いてもよいが、p型として用いることがより好ましい。有機半導体中のキャリアの流れやすさはキャリア移動度μで表される。キャリア移動度μは高い方がよく、1×10
-2cm
2/Vs以上であることが好ましく、1×10
-1cm
2/Vs以上であることがより好ましく、3×10
-1cm
2/Vs以上であることが特に好ましく、5×10
-1cm
2/Vs以上であることがより特に好ましく、1cm
2/Vs以上であることがよりさらに特に好ましい。キャリア移動度μは電界効果トランジスタ(FET)素子を作製したときの特性や飛行時間計測(Time−of−Flight;TOF)法により求めることができる。
【0086】
[非発光性有機半導体デバイス用有機半導体膜]
本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体膜の第1の態様は、下記一般式(2)で表される化合物とポリマーバインダーを含有することが好ましい。
一般式(2)
【化11】
一般式(2)中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基を表し、置換基を有していてもよく、一般式(2)中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。
本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体膜の第2の態様は、本発明の化合物を含有する。
本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体膜は、本発明の有機半導体膜の製造方法で製造されたことが好ましい。
【0087】
(材料)
本発明は、後述の一般式(2)で表される化合物とポリマーバインダーを含有する非発光性有機半導体デバイス用有機半導体膜の第1の態様にも関する。
本発明は、本発明の化合物を含有する非発光性有機半導体デバイス用有機半導体膜の第2の態様にも関する。
本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体膜の第2の態様は、本発明の化合物を含有し、ポリマーバインダーを含有しない態様も好ましい。
また、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体膜の第2の態様は、本発明の化合物とポリマーバインダーを含有してもよい。
【0088】
ポリマーバインダーとしては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの絶縁性ポリマー、およびこれらの共重合体、エチレン−プロピレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化されたニトリルゴム、フッ素ゴム、パーフルオロエラストマー、テトラフルオロエチレンプロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、ポリネオプレン、ブチルゴム、メチル・フェニルシリコーン樹脂、メチル・フェニルビニル・シリコーン樹脂、メチル・ビニル・シリコーン樹脂、フルオロシリコーン樹脂、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、クロロポリエチレン、エピクロロヒドリン共重合体、ポリイソプレン−天然ゴム共重合体、ポリイソプレンゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体、ポリエステルウレタン共重合体、ポリエーテルウレタン共重合体、ポリエーテルエステル熱可塑性エラストマー及びポリブタジエンゴム等のゴムまたは熱可塑性エラストマー、ポリビニルカルバゾール、ポリシランなどの光伝導性ポリマー、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレンなどの導電性ポリマー、および例えばChemistry of Materials,2014,26,647.等に記載の半導体ポリマーを挙げることができる。
ポリマーバインダーは、単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。
また、有機半導体材料とポリマーバインダーとは均一に混合していてもよく、一部または全部が相分離していてもよいが、電荷移動度の観点では、膜中で膜厚方向に有機半導体とバインダーが相分離した構造が、バインダーが有機半導体の電荷移動を妨げず最も好ましい。
膜の機械的強度を考慮するとガラス転移温度の高いポリマーバインダーが好ましいが、膜にフレキシビリティーを付与する目的ではガラス転移温度の低いポリマーバインダーが好ましい。電荷移動度を考慮すると極性基を含まない構造のポリマーバインダーや半導体ポリマーが好ましい。
ポリマーバインダーの使用量は、特に制限はないが、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体膜中、好ましくは0〜95質量%の範囲内で用いられ、より好ましくは10〜90質量%の範囲内で用いられ、さらに好ましくは20〜80質量%の範囲内で用いられ、特に好ましくは30〜70質量%の範囲内で用いられる。
【0089】
さらに、本発明では、本発明の化合物、あるいは、一般式(2)で表される化合物が上述した構造をとることにより、膜質の良い有機膜を得ることができる。具体的には、本発明の化合物、あるいは、一般式(2)で表される化合物は、結晶性が良いため、十分な膜厚を得ることができ、得られた本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体膜は良質なものとなる。
さらに、本発明の非発光性有機半導体デバイス用有機半導体膜は、本発明の有機半導体膜の製造方法で製造された場合、膜質の良い有機膜となる。
【実施例】
【0090】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0091】
[実施例1]
表1または表2に記載の化合物を合成した。
【0092】
<合成法>
本発明の有機トランジスタに用いる下記構造の化合物1は下記に示す合成法に従って合成した。
【化12】
【0093】
(中間体1の合成)
テトラメチルピペリジン(TMP)3.93mlにテトラヒドロフラン23.1mlを加えて−78℃で撹拌し、n−ブチルリチウム(1.6M ヘキサン溶液)を13.8ml加えた後に0℃に温度を上げて1時間撹拌し、リチウム試薬を調製した。
J.Org.Chem.2005, 70, 4502に記載されている合成法に従って合成した公知材料であるチエノ[3,2−f:4,5−f’]ビス[1]ベンゾチオフェン2.969g(10mmol)に対してテトラヒドロフラン100mlを加えて−78℃で撹拌し、上記のリチウム試薬を、キャニュラーを用いて−78℃で滴下した。反応液を2時間後−98℃に冷却し、ジブロモジクロロエタン9.76g(30mmol)をテトラヒドロフラン30mlに溶解させた溶液を、キャニュラーを用いて滴下した。その後、反応液を−98℃から室温まで徐々に昇温し、15時間撹拌した。反応液を0℃に冷却してから水を加え、沈殿物をろ別した。ろ別した固体を1,1,2,2,−テトラクロロエタンで再結晶し、薄橙色固体である目的の化合物(中間体1)3.95g(8.70mmol)を得た。得られた化合物は
1H−NMR(Nuclear Magnetic Resonance)により同定した。
(tetrachloroethane−d
2, 400 MHz) δ: 7.46 (2H, s), 8.12 (2H, s), 8.45 (2H, s)
【化13】
【0094】
(化合物1の合成)
デシルマグネシウムブロミド(1.0mol/Lジエチルエーテル溶液)を4.8ml(4.80mmol)加え、0℃に冷却したところに塩化亜鉛(II)(1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液)を4.8ml(4.80mmol)滴下し、有機亜鉛試薬を調製した。中間体1を545mg(1.20mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)を49mg(0.06mmol)、トルエンを12ml添加した系に上記有機亜鉛試薬を添加し、室温で20分間撹拌した後に70℃に加熱して15時間撹拌した。反応終了後室温まで冷却し、メタノールを50ml加えて析出した固体をろ別した。固体を加熱したO−ジクロロベンゼンに溶かし、熱いままセライト及びシリカゲルに通し、加熱したO−ジクロロベンゼンで溶離させた。溶液をエバポレーターで濃縮した後に、加熱したO−ジクロロベンゼンから再結晶し白色固体である目的の化合物1を440mg(0.763mmol)得た。
化合物1の構造は、
1H−NMRにより同定した。その結果を以下に示す。
1H−NMR
(tetrachloroethane−d
2, 400 MHz) δ: 0.82 (6H, t, J = 7.2 Hz), 1.21 − 1.37 (28H, m), 1.71 (4H, quin, J = 7.4Hz), 2.88 (4H, t, J = 7.6 Hz), 7.09 (2H, s), 8.11 (2H, s), 8.39 (2H, s)
【0095】
化合物4の合成(合成法とNMR)
デシルマグネシウムブロミド(1.0Mジエチルエーテル溶液)をブチルマグネシウムクロリド(1.0Mテトラヒドロフラン溶液)に変える以外は化合物1と同様にして化合物4を合成した。
化合物4の構造は、
1H−NMRにより同定した。その結果を以下に示す。
1H−NMR
(CDCl
3,400MHz)δ:0.98(6H、t、7.2Hz)、1.41−1.50(4H、m)、1.72−1.81(4H、m)、2.94(4H、t、7.0Hz)、7.13(2H、s)、8.15(2H、s)、8.44(2H、s)ppm.
【0096】
化合物5の合成
デシルマグネシウムブロミド(1.0Mジエチルエーテル溶液)をペンチルマグネシウムブロミド(1.0Mテトラヒドロフラン溶液)に変える以外は化合物1と同様にして化合物5を合成した。
化合物5の構造は、
1H−NMRにより同定した。その結果を以下に示す。
1H−NMR
(CDCl
3,400MHz)δ:0.93(6H、t、7.3Hz)、1.37−1.55(8H、m)、1.75−1.83(4H、m)、2.94(t、7.0Hz)、7.13(2H、s)、8.15(2H、s)、8.44(2H、s)ppm.
【0097】
化合物6をTetrahedron 66 (2010) 8778〜8784にしたがって合成した。
化合物6
【化14】
【0098】
化合物11の合成
デシルマグネシウムブロミド(1.0Mジエチルエーテル溶液)を6−メチルオクチルブロミド(1.0Mテトラヒドロフラン溶液)に変える以外は化合物1と同様にして化合物11を合成した。
化合物11の構造は、
1H−NMRにより同定した。その結果を以下に示す。
1H−NMR
(CDCl
3,400MHz)δ:0.84−0.88(12H、m)、1.08−1.17(4H、m)、1.30−1.44(14H、m)、1.75−1.83(4H、m)、2.94(4H、t、7.1Hz)、7.13(2H、s)、8.15(2H、s)、8.44(2H、s)ppm.
【0099】
化合物18の合成(合成法とNMR)
【化15】
合成中間体1(300mg、0.66mmol)、2−(2−ブトキシエチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(452mg、1.98mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd
2(dba)
3)(30mg、0.033mmol)、2−ジシクロへキシルホスフィノ−2’,6’−ジイソプロポキシビフェニル(RuPhos)(61mg、0.132mmol)、t−ブトキシナトリウム(381mg、4.00mmol)、トルエン7mL、純水7mLを混合し、80℃で2.5時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、クロロホルム、純水を用いて分液を行った。有機層を減圧蒸留により濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:酢酸エチル=3:1、ヘキサン:酢酸エチル=2:1、ヘキサン:酢酸エチル=1:1で順次展開)により精製し、白色固体の化合物18を140mg(0.282mmol)得た。
得られた化合物は
1H−NMRにより同定した。
1H−NMR
(CDCl
3,400MHz)δ: 0.94(6H、t、7.3Hz)、1.36−1.46(4H、m)、1.58−1.65(4H、m)、3.20(4H、t、7.1Hz)、3.51(4H、t、7.0Hz)、3.51(4H、t、7.0Hz)、3.77(4H、t、7.2Hz)、7.20(2H、s)、8.15(2H、s)、8.46(2H、s)ppm.
【0100】
化合物20の合成
デシルマグネシウムブロミド(1.0Mジエチルエーテル溶液)を4−ブトキシブチルマグネシウムブロミド(1.0M THF溶液)に変える以外は化合物1と同様にして化合物20を合成した。
化合物20の構造は、
1H−NMRにより同定した。その結果を以下に示す。
1H−NMR
(CDCl
3,400MHz)δ: 0.93(6H、t、7.4Hz)、1.34−1.43(4H、m)、1.53−1.60(4H、m)、1.68−1.75(4H、m)、1.83−1.91(4H、m)、2.97(4H、t、7.3Hz)、3.42(4H、t、7.0Hz)、3.47(4H、t、7.0Hz)ppm.
【0101】
化合物29の合成
【化16】
(中間体2の合成)
テトラメチルピペリジン(TMP)、n−ブチルリチウム、ジブロモジクロロエタンの使用量をいずれも半分にする以外は中間体1の合成と同様にして中間体2を合成した。
【化17】
(中間体3の合成)
中間体1を中間体2に変え、有機亜鉛試薬および[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)の当量を半分にする以外は化合物4の合成と同様にして中間体3を合成した。
【化18】
(中間体4の合成)
チエノ[3,2−f:4,5−f’]ビス[1]ベンゾチオフェンの変わりに中間体3を用いる以外は中間体2の合成と同様にして中間体4を合成した。
【化19】
中間体1を中間体3に変え、有機亜鉛試薬および[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)の当量を半分にする以外は化合物5の合成と同様にして化合物29を合成した。
化合物29の構造は、
1H−NMRにより同定した。その結果を以下に示す。
1H−NMR
(CDCl
3,400MHz)δ:0.92(3H、t、7.2Hz)、0.98(3H、t、7.2Hz)、1.38−1.52(6H、m)、1.73−1.82(4H、m)、2.92−2.97(4H、m)、7.13(2H、s)、8.15(2H、s)、8.44(2H、s)ppm.
【0102】
[比較化合物の合成]
下記構造の比較化合物1はJ.Org.Chem.2005, 70, 4502に記載されている合成法に従って合成した。
【化20】
【0103】
下記比較化合物2〜6はそれぞれ、特開2013−235903号公報、CN102206225A、WO2011/126225号、特開2009−302463号広報、特開2010−177642号広報を参考に合成した。比較化合物2および3についてはGPC(Gel Permeation Chromatography)測定の結果、重量平均分子量Mw(weight−average molecular weight)は40000であった。
【化21】
【0104】
[実施例1−1〜1−8および比較素子1−1〜1−4]
<素子作製・評価>
素子作製に用いた材料は、高速液体クロマトグラフィーにより純度(254nmの吸収強度面積比)が99.0%以上であることを確認した。
【0105】
化合物単独で半導体活性層(有機半導体膜)を形成した。
下記表に記載の化合物または比較化合物1〜4のいずれかをアニソールを溶媒として溶解させた0.1質量%溶液を調製し、50℃に加熱したものを、有機半導体デバイス用塗布液(塗布液とも言う)とした。
【0106】
素子1−1〜1−8および比較素子1−1〜1−4では、
図4に記載の方法により有機半導体膜の形成を実施した。なお、1−1〜1−8は、1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、1−7、1−8と同義であり、枝番を「〜」を用いて表す場合は同様である。詳細を以下に示す。
n型シリコン基板(0.4mm厚さ)の表面に、SiO
2の熱酸化膜200nmを形成した、25mmx25mm基板を基板Aとして使用した。基板Aの熱酸化膜の表面は、UV−オゾン洗浄した後、β−フェニチルトリメトキシシラン処理を行った。
【0107】
基板Aのβ−フェニチルトリメトキシシラン処理面の上に、
図4(A)に示すように基板Aの中央部に、基板Aと部材Bを接触させた状態となるように置いた。部材Bはガラス製で、縦10mm×横2mm×高さ5mmのものを用い、
図4(A)の左右方向(X軸方向)が部材Bの横方向であり、
図4(A)の上下方向(Z軸方向)が部材Bの高さ方向であり、
図4(B2)の上下方向(Y軸方向)が部材Bの縦方向である。
【0108】
基板を50℃に加熱し、ここに上記の方法で調製した塗布液1滴(約0.05ml)を、ピペットを用いて、
図4(A)に示すとおり基板Aと部材Bの両方に接するように部材Bの側部からたらしたところ、
図4(B1)および
図4(B2)に示すとおり基板Aの表面内の一部に塗布液は滴下された。部材Bとの界面においては凹状のメニスカスを形成していた。
図4(C)に示すとおり、基板Aと部材Bを接触させた状態を維持しながら、また、基板Aと部材Bとの位置関係を静止させた状態で、塗布液を自然乾燥させた。その後60℃で8時間、10
-3MPaの圧力下で減圧乾燥させることで下記表に記載の化合物または比較化合物1〜4のいずれかの結晶を析出させて、有機半導体膜を形成した。結晶が析出したか否かは、偏光顕微鏡による観察によって確認した。
【0109】
得られた有機半導体膜を半導体活性層として用い、さらにマスクをつけて電荷注入アクセプターとしてF4−TCNQ 1nmと金電極40nmをそれぞれ蒸着することによりFET特性測定用のボトムゲート・トップコンタクト型の有機トランジスタ素子を得た。得られた有機トランジスタ素子を素子1−1〜1−8および比較素子1−1〜1−4とした。素子1−1〜1−8および比較素子1−1〜1−4を実施例1−1〜1−8および比較例1〜4の有機トランジスタ素子とした。
【0110】
<評価>
素子1−1〜1−8および比較素子1−1〜1−4の有機トランジスタ素子のFET特性は、セミオートプローバー(ベクターセミコン製、AX−2000)を接続した半導体パラメーターアナライザー(Agilent製、4156C)を用いて常圧・大気下で評価した。
得られた結果を下記表3に示す。
【0111】
(a)キャリア移動度
各有機トランジスタ素子(FET素子)のソース電極−ドレイン電極間に−80Vの電圧を印加し、ゲート電圧を20V〜−100Vの範囲で変化させ、ドレイン電流I
dを表わす式I
d=(w/2L)μC
i(V
g−V
th)
2(式中、Lはゲート長、Wはゲート幅、C
iは絶縁層の単位面積当たりの容量、V
gはゲート電圧、V
thは閾値電圧)を用いてキャリア移動度μを算出した。
【0112】
【表3】
【0113】
上記表3より、本発明の素子1−1〜1−8の有機トランジスタ素子は、キャリア移動度が高く有機半導体材料として好ましく用いられることがわかった。
一方、比較化合物1〜4を有機半導体材料として半導体活性層に用いた比較素子1−1〜1−4の有機トランジスタ素子は、キャリア移動度が低いことがわかった。
【0114】
[実施例2−1〜2−14および比較例2−1〜2−3]
実施例2−1〜2−14および比較例2−1〜2−3ではボトムゲート・ボトムコンタクト型の有機トランジスタ素子を作製した。詳細を下記に示す。
化合物1の0.1質量%アニソール溶液を100℃に加熱したものを有機半導体デバイス用塗布液とし、窒素雰囲気下、90℃に加熱したFET特性測定用基板上にキャストすることで非発光性有機トランジスタ素子2−1を得た。FET特性測定用基板としては、ソース及びドレイン電極としてくし型に配置されたクロム/金(ゲート幅W=100mm、ゲート長L=100μm)、絶縁膜としてSiO
2(膜厚200nm)を備えたボトムゲート・ボトムコンタクト構造のシリコン基板)を用いた。得られた有機トランジスタ素子を素子2−1とした。素子2−1を実施例2−1の有機トランジスタ素子とした。
素子2−1の有機トランジスタ素子の作製において、化合物1の代わりに表2に記載の化合物、または比較化合物のいずれかを用いた以外は素子2−1と同様にして、素子2−2〜2−14、比較素子2−1〜2−3を作製した。なお、素子2−6は化合物4と化合物5をそれぞれ0.05質量%ずつの濃度となるよう混合したものである。
【0115】
<評価>
素子2−2〜2−14および比較素子2−1〜2−3の有機トランジスタ素子のFET特性を、実施例1−1と同様の方法で評価した。その結果を下記表4に示す。
【0116】
【表4】
【0117】
上記表4より、本発明の素子2−2〜2−14の有機トランジスタ素子は、キャリア移動度が高く有機半導体材料として好ましく用いられることがわかった。
一方、比較化合物1、2および6を有機半導体材料として半導体活性層に用いた比較素子2−1〜2−3の有機トランジスタ素子は、キャリア移動度が低いことがわかった。
【0118】
[実施例3−1〜3−29および比較例3−1〜3−5]
ガラス基板(イーグルXG:コーニング社製)上に、ゲート電極となるAlを蒸着した(厚み:50nm)。その上にゲート絶縁膜形成用組成物(ポリビニルフェノール/メラミン=1質量部/1質量部のPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)溶液(固形分濃度:2質量%))をスピンコートし、150℃で60分間ベークを行うことで膜厚400nmのゲート絶縁膜を形成した。その上に銀インク(H−1、三菱マテリアル(株)製)をインクジェット装置DMP−2831(富士フイルムダイマティクス社製)を用いてソース電極およびドレイン電極状(チャネル長40μm、チャネル幅200μm)に描画した。その後オーブンにて180℃、30分ベークを行い、焼結して、ソース電極およびドレイン電極を形成することでTFT(Thin Film Transistor)特性評価用素子基板を得た。
TFT特性評価用素子基板の上に、下記表5に記載の各有機半導体デバイス用塗布液(有機半導体材料(0.50質量%)、ポリマー(0.025質量%)およびトルエン)をドロップキャストした後、ホットプレート上で100℃10分間乾燥することで有機半導体層を形成し、ボトムゲート・ボトムコンタクト型の有機トランジスタ素子を得た。得られた有機トランジスタ素子を素子3−1〜3−29および比較素子3−1〜3−5とした。素子3−1〜3−29および比較素子3−1〜3−5を実施例3−1〜3−29および比較素子3−1〜3−5の有機トランジスタ素子とした。下記表中、F8T2は[Poly[(9,9−dioctyl−9H−fluorene−2,7−diyl)−alt−2,2’−bithiophene]−5,5’−diyl)]](Aldrich社製、Mn>20000)、PMMAはPolymethyl methacrylate(Aldrich社製、Mw〜15000)、PαMSはPoly(α−methylstyrene)(Aldrich社製、Mw=43700)、PSはPolystyrene(Aldrich社製、Mw=2000000)を表す。
【0119】
<評価>
素子3−1〜3−29および比較素子3−1〜3−5の有機トランジスタ素子のFET特性を、実施例1と同様の方法で評価した。その結果を下記表5に示す。
【0120】
【表5】
【0121】
上記表4より、本発明の素子3−1〜3−29の有機トランジスタ素子は、キャリア移動度が高く有機半導体材料として好ましく用いられることがわかった。
一方、比較化合物1、2、4〜6を有機半導体材料として半導体活性層に用いた比較素子3−1〜3−5の有機トランジスタ素子は、キャリア移動度が低いことがわかった。
【0122】
[実施例4−2〜4−4および4−6〜4−8]
<印刷法によるTFT素子作製例>
−インクジェット法−
有機半導体デバイス用塗布液(表6に記載の有機半導体化合物、ポリマー(バインダー)、溶媒、濃度)を、実施例3−1で製造したTFT特性評価用素子基板上にインクジェット法によりコートすることで有機半導体膜を形成し、有機トランジスタ素子を得た。インクジェット装置としては、DPP2831(富士フイルムグラフィックシステムズ(株)製)、10pLヘッドを用い、吐出周波数2Hz、ドット間ピッチ20μmでベタ膜を形成した。その後70℃で1時間乾燥することで、有機半導体層を作製した。
【0123】
−フレキソ印刷法−
有機半導体デバイス用塗布液(表6に記載の有機半導体化合物、ポリマー(バインダー)、溶媒、濃度、および界面活性剤としてBYK−323(BYK社製)0.05質量%)を、実施例3−1で製造したTFT特性評価用素子基板上にフレキソ印刷法によりコートすることで有機半導体膜を形成し、有機トランジスタ素子を得た。印刷装置として、フレキソ適性試験機F1(アイジーティ・テスティングシステムズ(株)製)を用い、フレキソ樹脂版として、AFP DSH1.70%(旭化成(株)製)/ベタ画像を用いた。フレキソ樹脂版とTFT特性評価用素子基板との間の圧力は、60N、搬送速度0.4m/秒で印刷を行った後、そのまま、40℃下室温で2時間乾燥することで、有機半導体層を作製し、ボトムゲート・ボトムコンタクト型の有機トランジスタ素子を得た。得られた有機トランジスタ素子を素子4−2〜4−4および4−6〜4−8とした。素子4−2〜4−4および4−6〜4−8を実施例4−2〜4−4および4−6〜4−8の有機トランジスタ素子とした。なお、素子4−6〜4−8でインクとして用いたものはいずれも粘度が10mPa・s以上であった。
【0124】
【表6】
【0125】
以上のように表6より、インクジェット法やフレキソ印刷法により成膜した場合もキャリア移動度が高く、有機半導体材料として好ましく用いられる特性良好な有機トランジスタ素子が得られた。