【文献】
新海 征治,第三の包接化合物「カリックスアレーン」を基体とする機能設計−フェノール樹脂より生まれたハイテク材料−,ネットワークポリマー,日本,1996年,Vol.17 No.4,169-178
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、一般式(1)
【化1】
(式中、Rは炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−又は−S−に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよい。環A、環B、環C及び環Dはそれぞれ独立的に、
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−又は−S−に置き換えられてもよい。)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、
(c) 1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ピペリジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、及びデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)又は基(c)に含まれる水素原子はそれぞれシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されていてもよい。
L
1〜L
4はそれぞれ独立的に、単結合、−O−、−S−、−CH
2−、−OCH
2−、−CH
2O−、−CO−、−C
2H
4−、−COO−、−OCO−、−OCOOCH
2−、−CH
2OCOO−、−CO−NR
a−、−NR
a−CO−、−SCH
2−、−CH
2S−、−CH=CR
a−COO−、−CH=CR
a−OCO−、−COO−CR
a=CH−、−OCO−CR
a=CH−、−COO−CR
a=CH−COO−、−COO−CR
a=CH−OCO−、−OCO−CR
a=CH−COO−、−OCO−CR
a=CH−OCO−、−COOC
2H
4−、−OCOC
2H
4−、−C
2H
4OCO−、−C
2H
4COO−、−CH
2COO−、−CH
2OCO−、−COOCH
2−、−OCOCH
2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2CH
2−、−CH
2CF
2−、−CF
2CF
2−又は−C≡C−(式中、R
aはそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)を表し、
a、b、及びcはそれぞれ独立的に0または1を表すが、少なくとも1個は1を表し、dは1を表す。
ZはRで示された意味を表すか、またはフッ素原子、塩素原子、シアノ基、チオシアナト基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、若しくはジフルオロメトキシ基を表す。)で表される液晶性化合物を含有する、請求項1〜
5のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
[液晶組成物]
本発明に係る液晶組成物は、カリックスアレーン、フラーレン(炭素原子60個からなる。)、及び金属ナノ粒子を含有することを特徴とする。本発明に係る液晶組成物は、これら3者を共に含有することにより、フラーレンのみを含有する液晶組成物よりも、コントラストの高い液晶表示素子を製造できる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、フラーレンがカリックスアレーンに包接されることによって液晶に対する相溶性(分散性)が改善し、さらにこのカリックスアレーンに包接されたフラーレンによって金属ナノ粒子が保護され、その分散安定性も改善されるという相乗効果によるものと推察される。
【0014】
本発明及び本願明細書において、「コントラストが向上する」とは、液晶組成物を用いて製造された液晶のコントラスト比[L
max/L
min](L
maxは白を表示したときの輝度を表し、L
minは黒を表示したときの輝度を表す。)が大きくなることを意味する。
【0015】
本発明に係る液晶組成物は、金属ナノ粒子を含有するため、コントラスト性のみならず、高速応答性も良好である。液晶層中に金属ナノ粒子が分散されていることにより、誘電率が上がる結果、液晶分子の配向変化の遅れが解消し、高速応答が可能となる。
【0016】
また、カリックスアレーンは、広い範囲の液晶分子種を包接することができる。このため、カリックスアレーンを液晶層に添加すると、ゲスト液晶の液晶分子がカリックスアレーンによって包接されるため、液晶組成物の分子間の自由体積が増大し、その結果、粘度が低減する。粘度が低減すると、カリックスアレーンに保護された金属ナノ粒子の分散性がよくなる。すると、金属ナノ粒子の良好な分散に伴う誘電率のさらなる向上と、粘度低減による液晶分子の配向変化遅延の解消により高い高速応答が可能となる。つまり、本発明に係る液晶組成物は、金属ナノ粒子とカリックスアレーンを含有することにより、優れた高速応答性を備えた液晶表示素子を製造できる。
【0017】
カリックスアレーンは、フェノールの2,6位がメチレン基を介して数個環状につながったオリゴマーの総称である。フェノール環がn個環状につながったカリックスアレーンを、「C[n]A」と表す。本発明において用いられるカリックスアレーンは、カップ型の内部の空洞部分にフラーレンを包接可能なものが好ましい。例えば、C[8]Aはフラーレンと1:1の錯体を形成し(S.Shinkai.,Tetrahedron Letters,1995,vol.36,p.249−252.)、C[5]Aはフラーレンと2:1の錯体を形成する。
【0018】
また、本発明において用いられるカリックスアレーンの環状を構成するフェノール環は、無置換のものであってもよく、様々な置換基が導入されたものであってもよい。例えば、カリックスアレーンのフェノール環に各種置換基を導入することにより、金属ナノ粒子と結合体を形成した際の分散安定性を向上させることができる。そこで、本発明においては、用いる金属ナノ粒子の種類に応じて、フェノール環が適当な置換基により置換されたカリックスアレーン(カリックスアレーン誘導体)を選択して用いることも好ましい。例えば、フェノール環の末端にチオール基(−SH)等の配位子として機能し得る官能基を導入したカリックスアレーン誘導体を用いることにより、金等の貴金属のナノ粒子と、分散安定性により優れた結合体を形成することができる。
【0019】
本発明において用いられるカリックスアレーンとしては、フェノール環が4〜8個環状につながったものが好ましく、フェノール環が5〜7個環状につながったものが好ましく、C[6]Aが特に好ましい。C[6]Aは、ロジウムナノ粒子等の金属ナノ粒子との結合体の分散安定性に優れているためである。
【0020】
本発明において用いられる金属ナノ粒子の平均粒子径は、20nm以下、好ましくは10nm以下、さらに好ましくは7nm以下であり、下限はないが、0.5nm即ち5Å以上が好ましい。なお、金属ナノ粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡により測定することができる。具体的には、各粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡写真から各粒子について算出された面積円相当径とし、200個の粒子の平均粒子径を、金属ナノ粒子の平均粒子径とした。
【0021】
金属種としては、好ましくはロジウム、金、白金、銀、銅、パラジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、珪素、チタン、カドニウム及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属原子が挙げられる。これらの金属ナノ粒子の金属種は、1種類単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。前記金属ナノ粒子の金属元素を上記から選択することによって、広い周波数変調範囲での誘電率向上を実現することができる。また、2種以上を組み合わせることで用途に応じた周波数変調範囲を自由に選択することができ、汎用性を向上できる。本発明においては、カリックスアレーンとの結合体の分散安定性に優れていることから、ロジウムナノ粒子、金ナノ粒子、白金ナノ粒子、又はパラジウムナノ粒子からなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましく、ロジウムナノ粒子を用いることがより好ましい。
【0022】
本発明に係る液晶組成物は、1種又は2種以上の液晶化合物を含む液晶組成物に、カリックスアレーン、フラーレン、及び金属ナノ粒子を添加し混合することにより得られる。これら三者は、それぞれ別個に液晶組成物に配合させてもよいが、金属ナノ粒子は、予めカリックスアレーンに結合させた複合体(C[n]A−M複合体)として液晶組成物に配合させることが好ましい。金属ナノ粒子をC[n]A−M複合体として配合することにより、金属ナノ粒子を酸化等の外部要因から保護できる。これにより、金属ナノ粒子の変質を防ぐことができ、誘電率の低下を防ぐことができる。
【0023】
C[n]A−M複合体は、金属イオンを溶媒に分散してからカリックスアレーンと混合し、これを還元することによって形成される。ここで用いられる還元法としては、対象金属を還元できるものであれば特に限定されず、化学還元、光還元、電気還元、X線還元、γ線還元、マイクロ波還元、超音波還元等の手段を任意に用いることができる。
【0024】
C[n]A−M複合体では、金属ナノ粒子は金属イオンを構成しており、金属イオンとするためには金属のハロゲン化物等の金属塩を出発原料として用いるとよい。
【0025】
C[n]A−M複合体を形成する際に用いる溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のエチレングリコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;からなる群より選ばれた少なくとも1種を用いることができる。中でも、カリックスアレーンの溶解性に優れていることから、THF又はTHFとアルカリ水溶液との混合溶媒を用いることが好ましい。
【0026】
光還元法では、例えば、カリックスアレーンを溶解させた溶液(例えば、カリックスアレーンを、THFやTHFと水酸化ナトリウム水溶液との混合溶媒に溶解させた溶液)に、金属ハロゲン化物(例えば、塩化ロジウム)を窒素雰囲気中で添加し、充分に撹拌して溶解させた後、紫外線照射する。その後、この溶液中の溶媒を減圧留去し、真空乾燥を行い、C[n]A−M複合体を得ることができる。
【0027】
化学還元法では、還元剤として、アルコール類、エチレングリコール類、エーテル類、水素化ホウ素類、ヒドラジン、クエン酸、アスコルビン酸等を用いることができる。前記のような還元剤の使用量は、C[n]A−M複合体を生成する原料として必要な金属イオン1モルに対して、1等量以上であればよく、好ましくは1〜100モルである。
【0028】
本発明において用いられるC[n]A−M複合体の平均粒子径は、20nm以下、好ましくは10nm以下、より好ましくは7nm以下、さらに好ましくは2.8nm以下であり、下限はないが、0.5nm即ち5Å以上が好ましい。なお、C[n]A−M複合体の平均粒子径は、走査型トンネル顕微鏡や原子間力顕微鏡の顕微鏡写真に基づいて測定することができる。
【0029】
本発明に係る液晶組成物の製造において、フラーレンとC[n]A−M複合体とをそれぞれ別個に液晶組成物に配合させてもよく、フラーレンを予めC[n]A−M複合体中のカリックスアレーンに包接させた状態で配合させることも好ましい。フラーレンをC[n]A−M複合体中のカリックスアレーンに包接させた複合体(C
60/C[n]A−M複合体)は、水等の溶媒中で、フラーレンとC[n]A−M複合体とを混合することによって形成させることができる。その後、溶媒を減圧留去し、真空乾燥を行い、C
60/C[n]A−M複合体を得ることができる。
【0030】
本発明に係る液晶組成物におけるフラーレンの含有量としては、フラーレンの含有量と、カリックスアレーンと金属ナノ粒子の含有量の和との質量比が、0.8:1〜2.5:1であることが好ましく、1:1〜2:1であることがより好ましい。フラーレンの含有量と、カリックスアレーンと金属ナノ粒子の含有量の和との質量比、特に、フラーレンとC[n]A−M複合体の含有量比が前記範囲内であることにより、C[n]A−M複合体中のカリックスアレーンがフラーレンを過不足なく包接でき、液晶中におけるC
60/C[n]A−M複合体の分散安定性がより改善されるためである。
【0031】
本発明に係る液晶組成物には、カリックスアレーンに加えて、その他のホスト化合物(液晶分子に対する包接能を有する化合物)を配合してもよい。その他のホスト化合物としては、シクロデキストリン、シクロデキストリンポリマー、アミロペクチン、クラウンエーテル、シクロファン、イソグアニン、シクロトリホスファゼン及びこれらの誘導体等が挙げられる。ホスト化合物とゲストである液晶分子との包接化合物の形成は、液晶分子の官能基とホスト化合物の空孔部との大きさ、形状が適合することが重要である。前記ホスト化合物は、カリックスアレーンと同様に、それぞれが広い範囲の液晶分子種に対する適合性を有し、しかも2種以上を組み合わせることで、さらに適合性を高めることができる。よって、ホスト化合物を種々の液晶分子に応じて上記から適宜選択することで、汎用性を向上できる。
【0032】
[ゲスト液晶]
本発明に係る液晶組成物は、カリックスアレーン、フラーレン、及び金属ナノ粒子に加えて、ゲスト液晶を含む。ゲスト液晶としては、既存の液晶に限られるものではなく、室温で動作できる液晶であればよい。例えば、ネマティック液晶、スメクテック液晶、カイラルネマティック液晶、カイラルスメクテック液晶等である。具体的には、4−シアノ−4’−ペンチルビフェニル(通常、5CBと呼ばれている)、NTN−01(DIC(株)製)、RDP−94561(TFT用実用化液晶)(DIC(株)製)等が挙げられる。
【0033】
ゲスト液晶としては、一般式(1)で表される液晶化合物を含有することが好ましい。
【0035】
一般式(1)中、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数2〜10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−又は−S−に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよい。Rのアルキル基又はアルケニル基は、それぞれ分岐鎖状の基であってもよく、直鎖状の基であってもよいが、直鎖状の基であることが好ましい。本発明において用いられる一般式(1)で表される液晶化合物としては、Rは、置換されていてもよい炭素原子数1〜8の直鎖状アルキル基が好ましく、無置換の炭素原子数1〜8の直鎖状アルキル基がより好ましい。
【0036】
一般式(1)中、環A、環B、環C及び環Dはそれぞれ独立的に、下記の基(a)、基(b)及び基(c)からなる群より選ばれる基を表す。
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−又は−S−に置き換えられてもよい。)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、
(c) 1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ピペリジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、及びデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基。
【0037】
前記の基(a)、基(b)又は基(c)に含まれる水素原子は、それぞれ独立的に、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されていてもよい。
【0038】
本発明において用いられる一般式(1)で表される液晶化合物としては、環A、環B、環C及び環Dはそれぞれ独立的に、トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は−O−又は−S−に置き換えられているものも含む。)、1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は窒素原子に置き換えられているものも含む。)、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ピペリジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、又はデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基で表す基(各々の基はそれぞれ水素原子がシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されているものも含む。)が好ましく、トランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、又は3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基がより好ましく、トランス−1,4−シクロへキシレン基、又は1,4−フェニレン基がさらに好ましい。
【0039】
一般式(1)中、L
1〜L
4はそれぞれ独立的に、単結合、−O−、−S−、−CH
2−、−OCH
2−、−CH
2O−、−CO−、−C
2H
4−、−COO−、−OCO−、−OCOOCH
2−、−CH
2OCOO−、−CO−NR
a−、−NR
a−CO−、−SCH
2−、−CH
2S−、−CH=CR
a−COO−、−CH=CR
a−OCO−、−COO−CR
a=CH−、−OCO−CR
a=CH−、−COO−CR
a=CH−COO−、−COO−CR
a=CH−OCO−、−OCO−CR
a=CH−COO−、−OCO−CR
a=CH−OCO−、−COOC
2H
4−、−OCOC
2H
4−、−C
2H
4OCO−、−C
2H
4COO−、−CH
2COO−、−CH
2OCO−、−COOCH
2−、−OCOCH
2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2CH
2−、−CH
2CF
2−、−CF
2CF
2−又は−C≡C−(式中、R
aはそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)を表す。本発明において用いられる一般式(1)で表される液晶化合物としては、L
1〜L
4はそれぞれ独立的に、単結合、−CH
2CH
2−、−(CH
2)
4−、−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−OCF
2−、−CF
2O−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は−C≡C−が好ましく、単結合、−CH
2CH
2−、−COO−、−OCO−、−OCF
2−、−CF
2O−、又は−C≡C−がより好ましい。
【0040】
一般式(1)中、a、b、及びcはそれぞれ独立的に0または1を表すが、少なくとも1個は1を表す。また、一般式(1)中、dは1を表す。
【0041】
一般式(1)中、ZはRで示された意味を表すか、又はフッ素原子、塩素原子、シアノ基、チオシアナト基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、若しくはジフルオロメトキシ基を表す。Zは、Rと同種の基であってもよく、異種の基であってもよい。
【0042】
本発明において用いられる一般式(1)で表される液晶化合物としては、Zは、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又は無置換の炭素原子数1〜8の直鎖状アルキル基が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0043】
本発明において用いられる一般式(1)で表される液晶化合物としては、具体的には、下記一般式(1−1)〜(1−28)で表される化合物が挙げられる。下記一般式(1−1)〜(1−28)中、R及びZは一般式(1)と同じものを表し、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、及びX
6は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表す。
【0047】
[液晶添加剤]
本発明に係る液晶添加剤は、カリックスアレーン、フラーレン、及び金属ナノ粒子を含有することを特徴とする。当該液晶添加剤をゲスト液晶に添加し分散させることにより、本発明に係る液晶組成物が得られる。なお、当該液晶添加剤が含有するカリックスアレーンや金属ナノ粒子は、前記の液晶組成物が含有する物と同様である。
【0048】
本発明に係る液晶添加剤は、前記3者を別個に混合したものであってもよいが、前記C[n]A−M複合体とフラーレンとを含有することが好ましく、前記C
60/C[n]A−M複合体を含有することより好ましい。
【0049】
[液晶表示素子]
本発明に係る液晶表示素子は、液晶層を構成する液晶組成物として本発明に係る液晶組成物を用いた以外は、従来技術による液晶表示素子と同じ構造を有する。即ち、本発明に係る液晶表示素子は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に液晶層が狭持された構造を有している。基板に設けられた配向膜と基板に設けられた電極に電気を印加して、液晶分子の配向が制御される。偏光板、位相差フィルムなどを具備させることにより、この配向状態を利用して表示をさせる。液晶表示素子としては、TN、STN、VA、IPS、FFS及びECBに適用できるが、TNが特に好ましい。
【0050】
本液晶表示素子の基板間の距離(d)は、2〜5μmの範囲が好ましく、3.5μm以下が更に好ましい。液晶組成物の複屈折(Δn)と基板間の距離(d)の積は、0.3〜0.4μmの範囲が特に好ましく、0.30〜0.35μmの範囲が更に好ましく、0.31〜0.33μmの範囲が特に好ましい。液晶表示素子の基板間の距離(d)及び液晶組成物の複屈折(Δn)と基板間の距離(d)の積をそれぞれ上記範囲内とすることにより、高速応答で色再現性が好ましい表示を得ることができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。また、以下の実施例の組成物における「%」は、特に記載がない限り、『質量%』を意味する。
【0052】
[合成例1]C[n]A−Rh複合体の形成
カリックスアレーンとして、C[4]A(Aldrich社製)、C[6]A、又はC[8]A(いずれも、和光純薬工業(株)製)を用いた。
100mL石英製シュリンク管に、C[4]A0.014g(0.033mmol)と、THFと水酸化ナトリウム水溶液(1N)の混合溶媒[THF:水酸化ナトリウム水溶液=24:1(容量比)](以下、「THF−NaOH溶媒」)10mLを入れて撹拌し、カリックスアレーンを溶解させた。次に、この溶液に塩化ロジウム(III)(和光純薬工業(株)製、特級試薬)0.0017g(0.0066mmol)を加え、反応器の空気部分を窒素置換して還元雰囲気とした。
磁気攪拌機を用いて十分に攪拌した後、500W高圧水銀灯にて3時間紫外線照射し、C[4]Aがロジウムナノ粒子に結合した複合体(C[4]A−Rh複合体)分散液を得た。
C[4]Aに代えて、C[6]A又はC[8]Aを用いることにより、同様にして、C[6]A−Rh複合体分散液及びC[8]A−Rh複合体分散液を得た。
【0053】
得られた複合体分散液のうち、C[6]A−Rh複合体分散液は、目視では凝集物は確認されなかった。一方で、C[4]A−Rh複合体分散液及びC[8]A−Rh複合体分散液では、微細な凝集物が沈殿している様子が目視でも観察された。
【0054】
得られた各複合体分散液及び塩化ロジウム(III)水溶液について、UV−Vis吸収スペクトルを測定した。
図1に測定されたUV−Vis吸収スペクトルを示す。図中、「Rh ion」は塩化ロジウム(III)水溶液の吸収スペクトルを示す。この結果、塩化ロジウム水溶液では380nmと480nmに小さな吸収のピークがみられたが、各複合体分散液ではこれらのピークは確認されず、滑らかな右肩下がりの曲線となった。この吸収スペクトルの相違は、ロジウム(III)イオンが完全に金属まで還元され、カリックスアレーンと結合した複合体が形成されたことを示唆している。
【0055】
また、各複合体分散液を透過型電子顕微鏡用銅グリッド上に滴下後乾燥し、透過型電子顕微鏡で撮像した。得られた電子顕微鏡写真から、それぞれ200個の粒子の粒子径を求め、これらの平均粒子径を算出した。各複合体における、粒子径分布を
図2〜4に示す。この結果、C[4]A−Rh複合体では、平均粒子径が13.8nm、標準偏差が6.9nmであり、C[6]A−Rh複合体では、平均粒子径が2.2nm、標準偏差が0.5nmであり、C[8]A−Rh複合体では、平均粒子径が3.0nm、標準偏差が0.9nmであった。
【0056】
3種の複合体のうち、C[6]A−Rh複合体が、凝集物が視認されず、かつ最も均一で平均粒子径が小さかった。そこで、C[6]A−Rh複合体分散液中の溶媒をロータリーエバポレーターにて減圧留去し、真空乾燥機にて一晩真空乾燥を行い、C[6]A−Rh複合体(粉末)を得た。
【0057】
[合成例2]C[6]A−M複合体の形成
ロジウムに代えて、パラジウム、白金、金を用いて、C[6]Aと結合させた複合体を合成した。
具体的には、塩化ロジウム0.0017g(0.0066mmol)に代えて、塩化パラジウム(和光純薬工業(株)製、特級試薬)0.0012g(0.0066mmol)を用いた以外は合成例1と同様にして、C[6]Aがパラジウムナノ粒子に結合した複合体(C[6]A−Pd複合体)分散液を得た。
同様に、塩化ロジウムに代えて、ヘキサクロロ白金酸(和光純薬工業(株)製、特級試薬)0.0034g(0.0066mmol)を用いた以外は合成例1と同様にして、C[6]Aが白金ナノ粒子に結合した複合体(C[6]A−Pt複合体)分散液を得た。
同様に、塩化ロジウムに代えて、テトラクロロ金酸(和光純薬工業(株)製、特級試薬)0.0027g(0.0066mmol)を用いた以外は合成例1と同様にして、C[6]Aが金ナノ粒子に結合した複合体(C[6]A−Au複合体)分散液を得た。
【0058】
得られた複合体分散液のうち、C[6]A−Pt複合体分散液は、目視では凝集物は確認されなかった。一方で、C[6]A−Pd複合体分散液及びC[6]A−Au複合体分散液では、沈殿物が目視でも観察された。
【0059】
得られた各複合体分散液及び金属塩化物水溶液について、UV−Vis吸収スペクトルを測定した。
図5〜7に測定されたUV−Vis吸収スペクトルを示す。図中、「Pd ion」は塩化パラジウム(II)水溶液の吸収スペクトルを、「Pt ion」はヘキサクロロ白金酸水溶液の吸収スペクトルを、「Au ion」はテトラクロロ金酸水溶液の吸収スペクトルを、それぞれ示す。この結果、各複合体分散液では、各金属塩化物水溶液でみられた250〜600nmの範囲内の小さな吸収のピークは確認されず、滑らかな右肩下がりの曲線となった。この吸収スペクトルの相違は、各金属イオンが完全に金属まで還元され、カリックスアレーンと結合した複合体が形成されたことを示唆している。
【0060】
また、合成例1と同様にして、C[6]A−Pt複合体とC[6]A−Au複合体の粒子径分布を求めた。結果を
図8及び9に示す。この結果、C[6]A−Pt複合体では、平均粒子径が2.4nm、標準偏差が0.7nmであり、C[6]A−Au複合体では、平均粒子径が8.0nm、標準偏差が6.0nmであった。C[6]A−Pd複合体でも同様に電子顕微鏡写真を撮像したが、大部分の粒子が凝集しており、各粒子の粒子径を算出することは困難であった。
【0061】
[合成例3]C
60/C[6]A−Rh複合体(1:1)の形成(実施例)
フラーレンと合成例1で合成したC[6]A−Rh複合体とを1:1(質量比)で混合し、C[6]A−Rh複合体中のC[6]Aにフラーレンを包接させた複合体を形成した。
合成例1で得たC[6]A−Rh複合体(粉末)0.0089gと、フラーレン(C
60)(粉末)(和光純薬工業(株)製)0.0089gとを、水200mL中で24時間撹拌し、フラーレンを包接したC[6]A−Rh複合体(C
60/C[6]A−Rh複合体(1:1))分散液を得た。その後、C
60/C[6]A−Rh複合体分散液中の溶媒をロータリーエバポレーターにて減圧留去し、真空乾燥機にて一晩真空乾燥を行い、C
60/C[6]A−Rh複合体(1:1)(粉末)を得た。
【0062】
[合成例4]C
60/C[6]A−Rh複合体(2:1)の形成(実施例)
フラーレンと合成例1で合成したC[6]A−Rh複合体とを2:1(質量比)で混合し、C[6]A−Rh複合体中のC[6]Aにフラーレンを包接させた複合体を形成した。
具体的には、フラーレン(粉末)の量を0.0176gとした以外は合成例3と同様にして、C
60/C[6]A−Rh複合体(2:1)(粉末)を得た。
【0063】
[実施例1]
合成例3で得たC
60/C[6]A−Rh複合体(1:1)0.001gを、ゲスト液晶である4−シアノ−4’−ペンチルビフェニル(5CB)(東京化成工業(株)製、特級試薬)1gに分散させて液晶セルに充填し、液晶表示素子を作成した。さらに、これを用いて作成したねじれネマティック(TN)液晶表示装置に室温(25℃)にて電圧印加(最大10V)し、光透過量を瞬間マルチ測光システムLCD−5200(大塚電子(株)製)にて測定した。
【0064】
[実施例2]
C
60/C[6]A−Rh複合体(1:1)に代えて、合成例4で得たC
60/C[6]A−Rh複合体(2:1)0.001gを5CB1gに分散させて液晶セルに充填し、液晶表示素子を作成した。さらに、これを用いて作成したTN液晶表示装置に室温(25℃)にて電圧印加(最大10V)し、光透過量を実施例1と同様にして測定した。
【0065】
[比較例1]
5CB1滴を毛細管現象で液晶セルに充填し、液晶表示素子を作成した。さらに、これを用いて作成したTN液晶表示装置に室温(25℃)にて電圧印加(最大10V)し、光透過量を実施例1と同様にして測定した。
【0066】
[比較例2]
C
60/C[6]A−Rh複合体に代えて、フラーレン(粉末)(和光純薬工業(株)製)0.001gを5CB1gに分散させて液晶セルに充填し、液晶表示素子を作成した。さらに、これを用いて作成したTN液晶表示装置に室温(25℃)にて電圧印加(最大10V)し、光透過量を実施例1と同様にして測定した。
【0067】
[比較例3]
C
60/C[6]A−Rh複合体に代えて、合成例1で得たC[6]A−Rh複合体0.001gを5CB1gに分散させて液晶セルに充填し、液晶表示素子を作成した。さらに、これを用いて作成したTN液晶表示装置に室温(25℃)にて電圧印加(最大10V)し、光透過量を実施例1と同様にして測定した。
【0068】
実施例1、比較例1〜3で得た液晶の物性値を表1に示す。表1中、「Gap」は液晶セルのギャップ(基板間距離)(μm)を示し、「Δε」は誘電率異方性を示し、「K
11」は広がりの弾性定数を示し、「K
33」は曲りの弾性定数を示し、「γ
1」は回転粘性(mPa・s)を示し、「T
ni」はネマチック相−等方相転移温度(℃)を示す。また、「添加剤」は、5CBに添加したものを示し、「−」は何も添加していないことを示す。さらに、各液晶の駆動電圧を表2に示す。表2中、「V
th」は閾値電圧(V)を示し、「V
sat」は飽和電圧(V)を示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
さらに、実施例1〜2、比較例1〜3で得た液晶について、印加電圧を0〜5Vとし、各印加電圧における「L
min」(黒を表示したときの輝度)と「L
max」(白を表示したときの輝度)を測定し、コントラスト比(L
max/L
min)を算出した。算出結果を
図10に示す。この結果、実施例1の液晶と実施例2の液晶は各印加電圧におけるコントラスト比はほぼ同程度であった。また、C
60/C[6]A−Rh複合体(1:1)を分散させた実施例1の液晶では、印加電圧4Vにおけるコントラスト比が、5CBのみの液晶(比較例1)よりも83%、フラーレンのみを分散させた液晶(比較例2)よりも19%、C[6]A−Rh複合体を分散させた液晶(比較例3)よりも34%、それぞれ向上していた。実施例1及び2の液晶におけるコントラスト比の向上は、複合体形成によりフラーレンの液晶分子に対する相溶性が改善されたことと、C[6]A−Rh複合体添加との相乗効果によるものと考えられた。
【0072】
[実施例3]
合成例3で得たC
60/C[6]A−Rh複合体(1:1)0.001gを、ゲスト液晶であるNTN−01(DIC(株)製)1gに分散させて液晶セルに充填し、液晶表示素子を作成した。さらに、これを用いて作成したねじれネマティック(TN)液晶表示装置に室温(25℃)にて電圧印加(最大10V)し、光透過量を実施例1と同様にして測定した。
【0073】
[比較例4]
NTN−01の1滴を毛細管現象で液晶セルに充填し、液晶表示素子を作成した。さらに、これを用いて作成したTN液晶表示装置に室温(25℃)にて電圧印加(最大10V)し、光透過量を実施例1と同様にして測定した。
【0074】
実施例3及び比較例4で得た液晶について、印加電圧を0〜8Vとし、各印加電圧におけるL
minとL
maxを測定し、コントラスト比(L
max/L
min)を算出した。算出結果を
図11及び表3に示す。表3中、「変動率」は、比較例3の液晶のコントラスト比に対する、実施例3の液晶のコントラスト比と比較例3の液晶のコントラスト比の差の割合(%)を示す。この結果、表3の「変動率」欄中の上向き矢印が示すように、実施例3の液晶のほうが比較例4の液晶よりもコントラスト比が大きかった。ゲスト液晶としてNTN−01を用いた場合でも、C
60/C[6]A−Rh複合体を分散させることによりコントラスト比を向上させ得ることがわかった。
【0075】
【表3】