特許第6253022号(P6253022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6253022適応的測位間隔設定システム、適応的測位間隔設定方法、行動モデル計算装置、及び行動モデル計算プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6253022
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】適応的測位間隔設定システム、適応的測位間隔設定方法、行動モデル計算装置、及び行動モデル計算プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20171218BHJP
   G01S 19/34 20100101ALI20171218BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   G08G1/00 C
   G01S19/34
   G01C21/28
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-120024(P2014-120024)
(22)【出願日】2014年6月10日
(65)【公開番号】特開2015-232852(P2015-232852A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2017年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(72)【発明者】
【氏名】倉沢 央
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩史
(72)【発明者】
【氏名】中村 元紀
(72)【発明者】
【氏名】高須 淳宏
(72)【発明者】
【氏名】相原 健郎
(72)【発明者】
【氏名】安達 淳
【審査官】 吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−171920(JP,A)
【文献】 特開2011−259020(JP,A)
【文献】 特開2011−059924(JP,A)
【文献】 特開2009−085662(JP,A)
【文献】 特開2008−197064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G01C 21/28
G01S 19/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な1つ以上のモバイル端末装置と、前記モバイル端末装置と通信ネットワークを介して接続される行動モデル計算装置とを有し、前記行動モデル計算装置が前記モバイル端末装置に測位間隔を通知するシステムであって、
前記モバイル端末装置は、
前記行動モデル計算装置から測位間隔を受信する測位間隔受信部と、
前記測位間隔受信部で受信した測位間隔に従って前記モバイル端末装置の位置を測定する測位部と、
前記測位部で測定した位置を示す位置情報を前記行動モデル計算装置へ送信する位置送信部と
を具備し、
前記行動モデル計算装置は、
前記モバイル端末装置から前記位置情報を受信する位置受信部と、
前記モバイル端末装置が1つ以上の移動手段によって前記位置情報で示される位置から移動した場合の経路の候補群を前記受信した位置情報に応じて列挙し、それぞれの確率と所要時間を推定して測位間隔を決定する移動経路推定部と、
前記移動経路推定部で決定した測位間隔を前記モバイル端末装置に送信する測位間隔送信部と
を具備することを特徴とする適応的測位間隔設定システム。
【請求項2】
前記行動モデル計算装置の前記移動経路推定部は、
移動手段ごとの移動速度の分布にもとづいて移動経路の候補群のそれぞれについての所要時間を推定する
ことをさらに特徴とする請求項1に記載の適応的測位間隔設定システム。
【請求項3】
前記行動モデル計算装置の前記移動経路推定部は、
前記移動手段を前記経路の途中で切り替える可能性を含めて前記モバイル端末装置の移動経路の候補を推定する
ことをさらに特徴とする請求項1又は請求項2に記載の適応的測位間隔設定システム。
【請求項4】
前記行動モデル計算装置は、
前記位置受信部で受信した前記位置情報を記録して過去の移動経路履歴を蓄積する第一メモリと、
前記第一メモリで蓄積された移動経路履歴にもとづいて前記移動手段や移動速度のばらつきのパラメータを推定する移動パラメータ生成部と
を具備することをさらに特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の適応的測位間隔設定システム。
【請求項5】
移動可能な1つ以上のモバイル端末装置と、前記モバイル端末装置と通信ネットワークを介して接続される行動モデル計算装置とを有するシステムに適用され、前記行動モデル計算装置が前記モバイル端末装置に測位間隔を通知する方法であって、
前記モバイル端末装置は、
前記行動モデル計算装置から測位間隔を受信し、
前記受信した測位間隔に従って前記モバイル端末装置の位置を測定し、
前記測定した位置を示す位置情報を前記行動モデル計算装置へ送信し、
前記行動モデル計算装置は、
前記モバイル端末装置から前記位置情報を受信し、
前記モバイル端末装置が1つ以上の移動手段によって前記位置情報で示される位置から移動した場合の経路の候補群を前記受信した位置情報に応じて列挙し、それぞれの確率と所要時間を推定して測位間隔を決定し、
前記決定した測位間隔を前記モバイル端末装置に送信する
ことを特徴とする適応的測位間隔設定方法。
【請求項6】
移動可能な1つ以上のモバイル端末装置と通信ネットワークを介して接続され、前記モバイル端末装置に測位間隔を通知する行動モデル計算装置であって、
測位間隔に従って測位された前記モバイル端末装置の位置情報を当該モバイル端末装置から受信する位置受信部と、
前記モバイル端末装置が1つ以上の移動手段によって前記位置情報で示される位置から移動した場合の経路の候補群を前記受信した位置情報に応じて列挙し、それぞれの確率と所要時間を推定して測位間隔を決定する移動経路推定部と、
前記移動経路推定部で決定した測位間隔を前記モバイル端末装置に送信する測位間隔送信部と
を具備することを特徴とする行動モデル計算装置。
【請求項7】
前記移動経路推定部は、
移動手段ごとの移動速度の分布にもとづいて移動経路の候補群のそれぞれについての所要時間を推定する
ことをさらに特徴とする請求項6に記載の行動モデル計算装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の行動モデル計算装置の一部分として動作するコンピュータに用いられるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記位置受信部、前記移動経路推定部および前記測位間隔送信部として機能させるための行動モデル計算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、時間経過後の移動体の位置を予測しながら次の位置観測時刻を設定する、適応的測位間隔設定装置、適応的測位間隔設定方法、行動モデル計算装置、及び行動モデル計算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体(例えば、人や荷物)の移動経路や複数の移動体の移動経路を集約したデータにもとづいて情報を提供するロケーションサービスが普及してきている。例えば、現在地から任意の位置までの最短経路のナビゲーションサービスや、ジョギング中の経路を記録して消費カロリーを提示するヘルスケアサービスや、道路の混雑状況を提示するサービスなどが存在する。
【0003】
このようなロケーションサービスでは、移動体が所持するモバイル端末(例えば、スマートフォン)を使い、適切な測位手段(例えば、GPS測位や、Wi-Fi測位、基地局測位)を使って得た測位結果を刻々と記録して移動経路を得ている。
【0004】
従来、測位間隔は、ロケーションサービスが求める分解能にもとづいて設定される。例えば、ロケーションサービスがユーザの1分おきの移動経路を記録することを求めた場合は、1分の測位間隔が設定されていた。また、ユーザの10メートルおきの移動経路を記録することが求められた場合は、10メートルおきの測位間隔が設定されていた。
【0005】
しかし、ロケーションサービスの求める分解能が高いとき、分解能が高い分だけ測位間隔を短くする必要があり、端末の消費電力が増大してしまうという課題があった。したがって、電力に制限のあるモバイル端末では、測位間隔を短くすることは望ましくない。
【0006】
この課題に対して、移動体の移動パターンを利用して測位間隔を調整する先行技術がある(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T. Farrell, R. Cheng, and K. Rothermel, “Energy-Efficient Monitoring of Mobile Objects with Uncertainty-Aware Tolerances,” IEEE IDEAS, 2007.
【非特許文献2】I. Constandache, S. Gaonkar, M. Sayler, R. R. Choudhury, and L. Cox, “EnLoc: Energy-Efficient Localization for Mobile Phones,” IEEE INFOCOM, 2009.
【非特許文献3】M. B. Kjergaard, J. Langdal, T. Godsk, T. Toftkjer, “EnTracked: Energy-Efficient Robust Position Tracking for Mobile Devices,” MobiSys, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記の先行技術の移動パターンは非常に単純であり、例えば移動体が動いているか否かの2つの状態のみしか考慮していないものや、移動速度のばらつきや、移動手段の切り替えを考慮していないものであった。実際の環境においては、同じ経路に対して自動車や自転車、歩行といった複数の移動手段が混在して存在していたり、同じ移動手段で同じ経路であっても時間帯や人によって移動速度のばらつきが存在したり、自動車から歩行といったように移動手段を変更したりする。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、ロケーションサービスの求める分解能への要求を満たしながら、移動手段が混在したり移動手段を変更したり移動速度のばらつきが存在するような環境においても測位間隔を長くできる適応的測位間隔設定装置、適応的測位間隔設定方法、行動モデル計算装置及び行動モデル計算プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、この発明の第1の態様は、移動可能な1つ以上のモバイル端末装置と、前記モバイル端末装置と通信ネットワークを介して接続される行動モデル計算装置とを有し、前記行動モデル計算装置が前記モバイル端末装置に測位間隔を通知するシステムであって、前記モバイル端末装置は、前記行動モデル計算装置から測位間隔を受信する測位間隔受信部と、前記測位間隔受信部で受信した測位間隔に従って前記モバイル端末装置の位置を測定する測位部と、前記測位部で測定した位置を示す位置情報を前記行動モデル計算装置へ送信する位置送信部とを具備し、前記行動モデル計算装置は、前記モバイル端末装置から前記位置情報を受信する位置受信部と、前記モバイル端末装置が1つ以上の移動手段によって前記位置情報で示される位置から移動した場合の経路の候補群を前記受信した位置情報に応じて列挙し、それぞれの確率と所要時間を推定して測位間隔を決定する移動経路推定部と、前記移動経路推定部で決定した測位間隔を前記モバイル端末装置に送信する測位間隔送信部とを具備することを特徴とする適応的測位間隔設定システムを提供する。
【0011】
上記第1の態様によれば、移動手段(例えば、自動車や自転車、歩行)の混在を考慮した行動モデルで、時間の経過とともに対象とする移動体の位置の曖昧さを計算し、許容される曖昧さを超えた時刻まで位置測位を省くことができる。つまり、移動経路がほぼ確実に予測できる場合は測位間隔を長い間隔に設定できるので、モバイル端末の消費電力を抑制することができる。
【0012】
また、この発明の第2の態様は、上記第1の態様において、前記行動モデル計算装置の前記移動経路推定部は、移動手段ごとの移動速度の分布にもとづいて移動経路の候補群の所要時間を推定することをさらに特徴とする適応的測位間隔設定システムを提供する。
【0013】
上記第2の態様によれば、各移動手段の速度のばらつきを分布の分散の大きさで表現した行動モデルにすることで、時間の経過とともに対象とする移動体の位置の曖昧さの計算をさらに精度高く計算することができる。例えば、歩行のように低速で移動する場合の速度のばらつきのほうが、自動車のように高速で移動する場合の速度のばらつきよりも小さいような場合をモデルに含めることができる。
【0014】
また、この発明の第3の態様は、上記第1の態様において、前記行動モデル計算装置の前記移動経路推定部は、移動手段を経路途中で切り替える可能性を含めて移動経路の候補を推定することをさらに特徴とする適応的測位間隔設定システムを提供する。
【0015】
上記第3の態様によれば、経路上の各地点で移動手段の切り替えを確率で表現した行動モデルにすることで、時間の経過とともに対象とする移動体の位置の曖昧さの計算をより精度高く計算することができる。例えば、大通りを自動車で移動して、途中で下車して、歩道を歩行するような場合をモデルに含めることができる。
【0016】
また、この発明の第4の態様は、上記第1又は第2又は第3の態様において、前記行動モデル計算装置は、前記位置受信部で受信した前記位置を記録する第一メモリと、前記第一メモリで蓄積された過去の移動経路履歴をもとに移動手段や移動速度のばらつきのパラメータを推定する移動パラメータ生成部を具備することをさらに特徴とするものである。
【0017】
上記第4の態様によれば、過去の移動体の移動経路データや他の移動体の移動経路にもとづいて、行動モデルを構成する要素(例えば、移動手段ごとの各道路における移動時間分布の平均値と分散値や移動手段の切り替えの確率)のパラメータを推定することができる。つまり、データが十分にあれば行動モデルを精度高く設定できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロケーションサービスの求める分解能を満たしながら測位間隔を長くすることができるため、モバイル端末の消費電力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態における適応的測位間隔設定システムの構成例を示す図。
図2】本発明の実施形態における行動モデル計算装置の移動経路推定部が保持する地図情報の例を示す図。
図3】本発明の実施形態における適応的測位間隔設定のフローチャート例を示す図。
図4】本発明の実施形態における測位間隔受信部が考慮する移動可能な経路候補が時間の経過とともに増加していく例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、この発明に係る実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態における適応的測位間隔設定システムの構成例を示す図である。
適応的測位間隔設定システムは、モバイル端末装置10および行動モデル計算装置20を有する。
行動モデル計算装置20は1つ以上のモバイル端末装置10と通信ネットワークを介して接続される。
行動モデル計算装置20は、モバイル端末装置10から送られてくる、当該モバイル端末装置10の位置情報に基づいてモバイル端末装置10の移動経路や所要時間を推定して、モバイル端末装置10に測位間隔の情報を通知する。本発明はこの測位間隔の設定について扱う。
【0021】
モバイル端末装置10は、測位間隔受信部11と、測位部12と、位置送信部13とを有し、例えばユーザが持ち運ぶスマートフォン等で構成される。
測位間隔受信部11は、行動モデル計算装置20から測位間隔の情報を受信する。
測位部12は、測位間隔受信部11が受信した情報で示される測位間隔で、GPS測位や、Wi-Fi測位や、基地局測位といった測位手段を使ってモバイル端末装置10の現在位置を測定する。
位置送信部13は、測位部12で測定した位置を示す位置情報を行動モデル計算装置20に送信する。
【0022】
行動モデル計算装置20は、位置受信部21と、移動経路推定部22と、測位間隔送信部23と、第一メモリ24と、移動パラメータ生成部25とを有する。
位置受信部21は、モバイル端末装置10から位置情報を受信する。
移動経路推定部22は、移動に関するパラメータで構築した行動モデルに沿って移動経路の候補を推定して、測位間隔を決定する。
測位間隔送信部23は、移動経路推定部22で決定した測位間隔を示す情報をモバイル端末装置10に送信する。
【0023】
第一メモリ24は、例えば不揮発性メモリなどの記憶装置であり、位置受信部21が受信した位置情報を追記して過去の移動経路履歴を蓄積することができる。
移動パラメータ生成部25は、第一メモリ24に蓄積した移動経路履歴をもとに、移動手段や移動速度のばらつきのパラメータを推定する。移動手段は、例えば歩行、自動車など移動のモードとして扱われる。
行動モデルを計算するにあたって必要な定義を以下に記す。
移動体は道路網等から得られる有向グラフ上を移動するものと仮定する。以下、有向グラフをG=(V, A)と表すことができる。ここで、Vは有向グラフ上の頂点の集合を表し、Aは有向グラフ上の辺の集合を表す。以下では、辺a∈Aを、その始点と終点との組(u, v)で表す。
【0024】
図2は、本発明の実施形態における行動モデル計算装置の移動経路推定部22が保持する地図情報の例である。
図2において、丸は有向グラフ上の頂点を表し、矢印は有向グラフ上の辺を表す。
【0025】
有向グラフ上の移動軌跡xは、以下の式(1)で示される条件を満たす頂点の列
x := (x0, x1, …, xc)
s.t. xi ∈ V, (xi, xi+1) ∈ A …式(1)
で表す。
【0026】
なお、本実施形態で説明する地図情報は、地点と道から構成されるデータ構造であれば、有向グラフに限られない。具体的に一例を挙げると、地図情報は、無向グラフや、緯度や経度を表す座標であってもよい。
【0027】
移動体は、有向グラフ上の辺を様々な移動のモードで移動する。以下では移動のモードの集合をMで表す。
有向グラフ上の辺を移動中にモードが変わることも考えられるが、ここでは、移動体が有向グラフ上の辺上を同一のモードで移動すると仮定する。
【0028】
観測データと潜在データに関しては以下のように定義する。
移動体からは、その軌跡xと、軌跡x上の各辺の移動に要した時間t:=(t1, t2, …, tc-1)とが得られるものとする。tiは、移動体が辺(xi-1, xi)を移動するために要する時間を表す。
また、潜在データとして、各辺の移動のモードz=(z0, z1, z2, …, zc)が対応するものとする。
ziは、辺(xi-1, xi)の移動モードを表す。z0は、移動の初期モードを表す。
【0029】
次に、モデルのパラメータの定義を以下に記す。
まず、辺の移動モード確率について説明する。移動体が、辺a∈Aをモードmで移動する確率をθamで表す。例えば、道路に対応する辺では歩行や自動車による移動が中心となり、また、線路に対応する辺では鉄道による移動が中心となる。確率θamは、辺の移動の特性を表す。各辺aの移動モード確率は以下の式(2)で示される条件を満たす(多項分布)。
【0030】
【数1】
【0031】
次に、辺の選択確率について説明する。移動体が軌跡xの頂点vにモードmで到着したときに、次に頂点uに進む確率をφmvuで表す。頂点vとモードmとの組に対して、辺の選択確率は以下の式(3)で示される条件を満たす(多項分布)。
【0032】
【数2】
【0033】
ここで、Vvは、頂点vと辺aとでつながっている頂点の集合を表す。例えば、歩いて頂点vにたどり着いた移動体は小道に進む確率が高いが、自転車で頂点vにたどり着いた移動体は大通りに進む確率が高いといった特性を記述するために用いる。
【0034】
初期モード確率について説明する。軌跡xが頂点vから始まる場合に、初期モードがmである確率をπvmで表す。各頂点vの初期モード確率は以下の式(4)で示される条件を満たす(多項分布)。
【0035】
【数3】
【0036】
初期モード確率は、辺aの選択確率が頂点vに到るモードを必要とするために仮想的に導入されたモードであり、隠れマルコフモデルの初期確率に相当する。
【0037】
辺の移動時間について説明する。移動体がモードmで辺aを移動するのに要する時間tは、以下の式(5)で示されるような、平均μam、分散σ2amのガウス分布
【0038】
【数4】
【0039】
に従うものとする。
【0040】
軌跡xと所要時間tについて、その移動のモードがzである尤度は、以下の式(6)で示される
【0041】
【数5】
【0042】
で表される。また、周辺確率(所定条件下でのすべての確率の総和)は、以下の式(7)
【0043】
【数6】
【0044】
で表される。
【0045】
図3は、本発明の実施形態における適応的測位間隔設定システムのフローチャートである。
モバイル端末装置10の測位部12は、モバイル端末装置10の現在位置を測定する。測位部12は、この測定した位置を示す位置情報を位置送信部13に通知する(ステップS1)。本実施形態では、このときの位置は、上記で定義したxi ∈ Vである。先に述べたように、本実施形態で説明する位置は有向グラフ上の頂点を表すものでなくてもよく、緯度・経度や地名や番地でもよい
モバイル端末装置10の位置送信部13は、測位部12から通知された位置情報を行動モデル計算装置20に送信する(ステップS2)
行動モデル計算装置20の位置受信部21は、モバイル端末装置10から送信された位置情報を受信する(ステップS3)。
以下のステップS4からS6にて、行動モデル計算装置20は、モデルのパラメータを推定する。行動モデル計算装置20は、位置情報を受信するたびにパラメータの推定を実行する必要はなく、一定期間(例えば、1ヶ月)おき、もしくは一定回数(例えば、1万回)の経路推定ごとに実行してもよい。
【0046】
位置受信部21は、受信した位置情報を第一メモリ24に記録する。第一メモリ24では、個々のモバイル端末装置10と受信時刻を識別できるようにして位置情報が記録される。このようにして、モバイル端末ごとの経路と所要時間を管理することができる。
【0047】
移動パラメータ生成部25は、第一メモリ24に蓄積した移動経路履歴に基づいて行動モデルのパラメータを計算する(ステップS5)。
【0048】
本実施形態ではパラメータを計算するためにEMアルゴリズムを用いる。
以下では、行動モデルのパラメータである、初期モード確率、辺の移動時間のパラメータ、および辺の選択確率をまとめてΛで表し、尤度と周辺尤度(所定条件下でのすべての尤度の総和)をそれぞれ、P(x,t,z; Λ)、P(x,t; Λ)と表す。
【0049】
移動パラメータ生成部25は、第一メモリ24に蓄積した、軌跡xとその所要時間tの組(x,t)の集合Dが与えられたときに、周辺対数尤度を最大化するパラメータ
【0050】
【数7】
【0051】
を求める。
【0052】
上記の最適化問題を直接解析的に求めることはできないので、移動パラメータ生成部25は、EMアルゴリズムを用いてパラメータ
【0053】
【数8】
【0054】
に対して、以下の式(8)で示される関数を最大化するパラメータΛを順次求める。このようにして周辺対数尤度を最大化するパラメータを求めることができる。
【0055】
【数9】
【0056】
EMアルゴリズムでは、移動パラメータ生成部25は、各イテレーションで、上記の量を最大とするパラメータ
【0057】
【数10】
【0058】
を求める。
多項分布のパラメータの制約を考慮する必要があるため、Lagrangeの未定乗数を使って以下の式(9)を考える。
【0059】
【数11】
【0060】
辺aのモードmの正規分布の平均値μamは、
【0061】
【数12】
【0062】
より、
【0063】
【数13】
【0064】
と表される。ここで、
【0065】
【数14】
【0066】
と表される。移動パラメータ生成部25は、同様の手順で、σ2am、πvm、θam、φmvuを推定することができる。
なお、本実施形態で説明したパラメータ推定は上記の手順に限るものでなく、具体的に一例を挙げると、ベイズ推定や最大事後確率(MAP)推定であってもよい。
【0067】
移動パラメータ生成部25は、行動モデルのパラメータのμam、σ2am、πvm、θam、φmvuを移動経路推定部22に通知する(ステップS6)。
【0068】
また、位置受信部21は、モバイル端末装置10から受信した位置情報を移動経路推定部22に通知する(ステップS7)。
【0069】
移動経路推定部22は、行動モデルで移動経路候補と、移動経路候補ごとの確率と、所要時間tとを計算し、移動経路候補の不確実性が閾値を超える時間間隔を最適化問題で求め、この求めた時間間隔(測位間隔)を示す情報を測位間隔送信部23に通知する(ステップS8)。
【0070】
具体的には、まず、移動経路推定部22は、ステップS3で得たモバイル端末装置10の現在地vを始点とし、グラフ上の任意の頂点uを終点とする経路pとその所要時間tの確率を計算する。この経路pを辺aと移動モードmとの組で以下の式(13)のように表す。
【0071】
p := ( (a1,m1), (a2,m2), …, (ac,mc) )
s.t. a1の始点=v, acの終点=u, aiの終点= ai+1の始点 …式(13)
移動体が経路pを移動するための所要時間tと移動可能性については、以下のように計算できる。移動体が経路pの移動に要する所要時間tは、経路p上の各辺の移動に要する時間t1,t2,…,tcの和となる。
【0072】
移動体が経路p上の各辺を移動するための所要時間tiは、平均μai mi、分散σ2ai miの正規分布に従うため、移動体が経路pを移動するための所要時間tは、以下の式(14)、式(15)で示される正規分布に従うことがわかる。
【0073】
【数15】
【0074】
ここで、移動経路推定部22は、予め設定したパラメータkに対して経路pの所要時間tがμp+k・σpを超える場合は所要時間tを外れ値とみなす。また、移動経路推定部22は所要時間が、t<μp+k・σpのとき、移動体は経路pを移動可能と定義する。kの値は、例えば2と設定できる。
【0075】
経路pの尤度は、
【0076】
【数16】
【0077】
のように定義できる。ここで、上記の式(16)のviとuiは、それぞれ辺aiの始点と終点を表す。
【0078】
移動所要時間tと、経路pの始点vと終点uに対して、始点vから終点uまでの、時間tで移動可能な経路pの集合をPvutとする。このとき、経路p∈Pvutの確率を以下の式(17)のように定義する。
【0079】
【数17】
【0080】
また、始点vから終点uまでの経路pの中で最も確率の高い経路を主経路と呼ぶ。
以上の定義によって、移動経路推定部22は任意の終点uと所要時間tに対して経路p∈Pvutの確率を計算できる。この確率は不確実性を表している。以降では、移動経路推定部22は終点uと所要時間tとを変化させながら、移動経路候補の不確実性が閾値を超える時間間隔を計算する。
【0081】
時間の経過とともに移動可能な経路数が増加するため、主経路の確率は減少する。また、モバイル端末装置10は主経路の最小確率を予め設定した閾値τ以上に保つ最長の時間において、次回の測位を行う。τの値は、例えば0.5と設定する。そのような時刻は以下の式(18)で示される最適化問題を解くことで求まる。
【0082】
【数18】
【0083】
図4は、本発明の実施形態における測位間隔受信部11が考慮する移動可能な経路候補が時間の経過とともに増加していく様子を表わす。本実施形態では、この経路候補の曖昧性をもとに次回の測位を決定する。
【0084】
なお、本実施形態で説明した不確実性は経路の確率を表すものであれば、主経路の確率に限られない。具体的に一例を挙げると、不確実性は、エントロピーのような不確実性を表わす他の尺度であってもよい。
【0085】
測位間隔送信部23は、移動経路推定部22から通知された移動経路候補の不確実性が閾値τを超える時間間隔(測位間隔)を示す情報をモバイル端末装置10の測位間隔受信部11に送信する(ステップS9)。
【0086】
測位間隔受信部11は受信した情報で示される測位間隔だけ測位を休止するよう測位部12に通知する(ステップS10)。
以上の手順で、適応的測位間隔設定システムは、測位の間隔を設定することができる。以上説明した実施形態では、ロケーションサービスの求める分解能への要求を満たしながら、移動手段が混在したり移動手段を変更したり移動速度のばらつきが存在するような環境においても測位間隔を長くできるので、モバイル端末装置の消費電力を抑制することが可能となる。
【0087】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0088】
また、実施形態に記載した手法は、計算機(コンピュータ)に実行させることができるプログラム(ソフトウエア手段)として、例えば磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD、MO等)、半導体メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)等の記録媒体に格納し、また通信媒体により伝送して頒布することもできる。なお、媒体側に格納されるプログラムには、計算機に実行させるソフトウエア手段(実行プログラムのみならずテーブルやデータ構造も含む)を計算機内に構成させる設定プログラムをも含む。本装置を実現する計算機は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、また場合により設定プログラムによりソフトウエア手段を構築し、このソフトウエア手段によって動作が制御されることにより上述した処理を実行する。なお、本明細書でいう記録媒体は、頒布用に限らず、計算機内部あるいはネットワークを介して接続される機器に設けられた磁気ディスクや半導体メモリ等の記憶媒体を含むものである。
【符号の説明】
【0089】
10…モバイル端末装置、11…測位間隔受信部、12…測位部、13…位置送信部、20…行動モデル計算装置、21…位置受信部、22…移動経路推定部、23…測位間隔送信部、24…第一メモリ、25…移動パラメータ生成部。
図1
図2
図3
図4