【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)最先端研究開発支援プログラム「量子情報処理プロジェクト」に係る委託業務、及び、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「コヒーレントイジングマシーンの原理と応用」「大規模時分割多重化光パラメトリック発振器」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
WANG,Z. et al.,Coherent Ising machine based on degenerate optical parametric oscillators,PHYSICAL REVIEW A,2013年12月30日,VOL.88,063853-1 - 063853-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記相互作用計算部は、前記ある擬似的スピンパルスが関わる前記イジングモデルの3体以上の結合係数及び前記暫定的スピン測定部が暫定的に測定した前記他の擬似的スピンパルスの擬似的なスピンに基づいて、前記ある擬似的スピンパルスが関わる3体以上の相互作用を暫定的に計算し、
前記相互作用実装部は、前記ある擬似的スピンパルスに対して注入される光の振幅及び位相を制御することにより、前記相互作用計算部が暫定的に計算した前記ある擬似的スピンパルスが関わる3体以上の相互作用の大きさ及び符号を暫定的に実装する
ことを特徴とする請求項1に記載のイジングモデルの量子計算装置。
前記イジングモデルの複数のスピンのうち第n群(nは1以上の整数)のスピンに擬似的に対応する第n群の擬似的スピンパルスが前記リング共振器を周回伝搬する、請求項1から6のいずれかに記載の第n番のイジングモデルの量子計算装置、を並列に備え、
前記第n番のイジングモデルの量子計算装置が備える前記暫定的スピン測定部が暫定的に測定した前記第n群の擬似的スピンパルスの擬似的なスピンの情報を、並列に備わるイジングモデルの量子計算装置の間で共有させる暫定的スピン共有部、をさらに備える
ことを特徴とするイジングモデルの量子並列計算装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の問題を解決するための第1の従来技術(特許文献1を参照)及び第2の従来技術について説明する。NP完全問題は、磁性体のイジングモデルに置き換え可能であり、磁性体のイジングモデルは、レーザーのネットワークに置き換え可能である。
【0008】
ここで、磁性体のイジングモデルでは、相互作用する原子ペアにおいて、スピン配列のエネルギーが最低となるように、スピンの方向は、逆方向(反強磁性の相互作用の場合)又は同方向(強磁性の相互作用の場合)を指向しようとする。
【0009】
一方で、レーザーのネットワークでは、相互作用するレーザーペアにおいて、発振モードの閥値利得が最低となるように、発振の偏光(第1の従来技術の場合)若しくは位相(第2の従来技術の場合)は、逆回転若しくは逆位相(反強磁性の相互作用の場合)又は同回転若しくは同位相(強磁性の相互作用の場合)を指向しようとする。
【0010】
つまり、1つのレーザーペアからなるシステムでは、発振モードの閥値利得が最低となるように、発振の偏光又は位相を最適化することができる。そして、多くのレーザーペアからなるシステムでは、「ある」レーザーペアで発振の偏光又は位相を最適化しようとすれば、「他の」レーザーペアで発振の偏光又は位相を最適化できないところ、レーザーのネットワークの「全体」として発振の偏光又は位相の「妥協点」を探索することになる。
【0011】
ただし、レーザーのネットワーク全体で発振の偏光又は位相を最適化するときには、各々のレーザーペアで別個の発振モードを立ち上げるのではなく、レーザーのネットワーク全体で1つの発振モードを立ち上げるように、各レーザー間で同期を図る必要がある。
【0012】
このように、第1の従来技術及び第2の従来技術では、各レーザーでポンピング電流を漸増制御し、レーザーのネットワーク全体で閾値利得が最低となる1つの発振モードを立ち上げ、各レーザーの発振の偏光又は位相を測定し、各原子のスピンの方向を測定する。よって、量子アニールマシンにおける準安定状態へのトラップの問題及び量子断熱マシンにおけるイジング相互作用の実装速度の問題を解決することができる。
【0013】
そして、第1の従来技術及び第2の従来技術では、
図1及び
図2を用いてそれぞれ後述するように、物理的に近くに位置するサイト間のイジング相互作用の大きさのみならず、物理的に遠くに位置するサイト間のイジング相互作用の大きさも自由に制御することができる。よって、サイト間の物理的距離とは無関係に、NP完全問題などからマッピングされた人工的なイジングモデルを解くことができる。
【0014】
第1の従来技術のイジングモデルの量子計算装置の概要を
図1に示す。第2の従来技術のイジングモデルの量子計算装置の概要を
図2に示す。
【0015】
イジングハミルトニアンを数式1のようにする。
【数1】
【0016】
イジング相互作用実装部I12は、2つの面発光レーザーV1、V2の間で交換される光の振幅及び位相を制御することにより、2つの面発光レーザーV1、V2の間の擬似的なイジング相互作用J
12の大きさ及び符号を実装する。
【0017】
イジング相互作用実装部I13は、2つの面発光レーザーV1、V3の間で交換される光の振幅及び位相を制御することにより、2つの面発光レーザーV1、V3の間の擬似的なイジング相互作用J
13の大きさ及び符号を実装する。
【0018】
イジング相互作用実装部I14は、2つの面発光レーザーV1、V4の間で交換される光の振幅及び位相を制御することにより、2つの面発光レーザーV1、V4の間の擬似的なイジング相互作用J
14の大きさ及び符号を実装する。
【0019】
イジング相互作用実装部I23は、2つの面発光レーザーV2、V3の間で交換される光の振幅及び位相を制御することにより、2つの面発光レーザーV2、V3の間の擬似的なイジング相互作用J
23の大きさ及び符号を実装する。
【0020】
イジング相互作用実装部I24は、2つの面発光レーザーV2、V4の間で交換される光の振幅及び位相を制御することにより、2つの面発光レーザーV2、V4の間の擬似的なイジング相互作用J
24の大きさ及び符号を実装する。
【0021】
イジング相互作用実装部I34は、2つの面発光レーザーV3、V4の間で交換される光の振幅及び位相を制御することにより、2つの面発光レーザーV3、V4の間の擬似的なイジング相互作用J
34の大きさ及び符号を実装する。
【0022】
マスターレーザーMは、面発光レーザーV1〜V4に対して注入同期を行ない、面発光レーザーV1〜V4の発振周波数を同一周波数に揃える。面発光レーザーV1〜V4の間で同期を図ることにより、面発光レーザーV1〜V4のネットワーク全体で発振の偏光又は位相を最適化するにあたり、面発光レーザーV1〜V4のネットワーク全体で1つの発振モードを立ち上げることができる。
【0023】
第1の従来技術では、不図示のイジングスピン測定部は、面発光レーザーV1〜V4が光を交換する過程で定常状態に到達した後に、面発光レーザーV1〜V4の発振の円偏光の左回り/右回りを測定することにより、面発光レーザーV1〜V4の擬似的なイジングスピンσ
1〜σ
4の上向き/下向きを測定する。
【0024】
しかし、面発光レーザーVは、面内異方性を有するため、左回り/右回りの円偏光のいずれについても、同一周波数及び同一閾値利得で発振することは困難である。よって、ある面発光レーザーVが、単体のレーザーとしては、右回り(又は左回り)の円偏光を有する光を発振するよりも、左回り(又は右回り)の円偏光を有する光を発振しやすいことがあり得る。そして、その面発光レーザーVは、レーザーのネットワーク全体としては、右回り(又は左回り)の円偏光を有する光を発振することが正答であるところ、左回り(又は右回り)の円偏光を有する光を発振してしまう誤答を生じさせ得る。
【0025】
第2の従来技術では、不図示のイジングスピン測定部は、面発光レーザーV1〜V4が光を交換する過程で定常状態に到達した後に、面発光レーザーV1〜V4の発振の直線偏光の位相の進み/遅れを測定することにより、面発光レーザーV1〜V4の擬似的なイジングスピンσ
1〜σ
4の上向き/下向きを測定する。
【0026】
ここで、左回り/右回りの円偏光は、水平偏光及び垂直偏光を位相差±π/2で同一の重みで重ね合わせたものである。つまり、イジングスピンの上向き/下向きの情報は、円偏光の左回り/右回りを測定するまでもなく、水平偏光を測定するまでもなく、垂直偏光の位相の進み/遅れを測定することにより、得ることができるのである。よって、第1の従来技術における面発光レーザーVの面内異方性の問題を解決することができる。
【0027】
第2の従来技術のイジングモデルの量子計算装置の原理を
図3に示す。マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0は、初期状態から定常状態まで変化しない。各面発光レーザーVの直線偏光の発振位相φ(t)は、初期状態においては、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0と同一の0であることが理想であり、定常状態においては、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0からずれた±π/2である。定常状態におけるφ(定常)=±π/2は、σ=±1に対応する(複号同順)。
【0028】
面発光レーザーVの各ペアについて、イジング相互作用J
ijが正であるときには、2つの面発光レーザーVの擬似的なスピンσが異符号であることが、エネルギー的に有利である。よって、各イジング相互作用実装部は、2つの面発光レーザーVの発振位相φ(定常)が異符号でありずれをπとするような、発振モードが立ち上がりやすいようにする。
【0029】
面発光レーザーVの各ペアについて、イジング相互作用J
ijが負であるときには、2つの面発光レーザーVの擬似的なスピンσが同符号であることが、エネルギー的に有利である。よって、各イジング相互作用実装部は、2つの面発光レーザーVの発振位相φ(定常)が同符号でありずれを0とするような、発振モードが立ち上がりやすいようにする。
【0030】
もっとも、イジングモデルの量子計算装置の全体において、一体として1つの発振モードが立ち上がるようにするのであり、面発光レーザーVの各ペアにおいて、上述の発振モードが実際に立ち上がることもあれば、必ずしも立ち上がらないこともある。
【0031】
ところで、各面発光レーザーVの直線偏光の発振位相φ(t)は、初期状態においては、理想ではマスターレーザーMの直線偏光の発振位相0と同一の0であることが望ましいが、実際にはマスターレーザーMの直線偏光の発振位相0から若干ずれてしまう。
【0032】
各面発光レーザーVの直線偏光の初期状態の発振位相φ(t=0)は、各面発光レーザーVの自走周波数ω、マスターレーザーMの発振周波数ω
0及び注入同期幅Δω
L(ωがω
0にどの程度近ければ注入同期を図れるか)を用いて、数式2のように表わされる。
【数2】
【0033】
つまり、各面発光レーザーVの自走周波数ωを、マスターレーザーMの発振周波数ω
0に揃えることができるならば、各面発光レーザーVの直線偏光の初期状態の発振位相φ(t=0)は、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0と同一の0となる。しかし、各面発光レーザーVの自走周波数ωを、マスターレーザーMの発振周波数ω
0に揃えることが困難であるため、各面発光レーザーVの直線偏光の初期状態の発振位相φ(t=0)は、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0から若干ずれてしまう。
【0034】
よって、ある面発光レーザーVが、単体のレーザーとしては、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0より遅れた(又は進んだ)発振位相を有する光を発振するよりも、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0より進んだ(又は遅れた)発振位相を有する光を発振しやすいことがあり得る。そして、その面発光レーザーVは、レーザーのネットワーク全体としては、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0より遅れた(又は進んだ)発振位相を有する光を発振することが正答であるところ、マスターレーザーMの直線偏光の発振位相0より進んだ(又は遅れた)発振位相を有する光を発振してしまう誤答を生じさせ得る。
【0035】
また、
図2において、イジングサイトがM個であるとき、面発光レーザーVはM個必要であり、イジング相互作用実装部はM(M−1)/2個必要である。そして、イジングサイトが多数になると、イジングモデルの量子計算装置が大規模かつ複雑になる。
【0036】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、イジングモデルの量子計算装置において、読み出しエラーを防止するとともに、回路構成を簡易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記目的を達成するために、パラメトリック発振を用いて、同一の発振周波数を有する複数の擬似的スピンパルスを発振し、複数の擬似的スピンパルスの発振位相の暫定的な測定結果を用いて、各擬似的スピンパルスが関わる相互作用の大きさ及び符号をフィードバック実装し、複数の擬似的スピンパルスの発振位相の最終的な測定結果に基づいて、複数の擬似的スピンパルスの擬似的なスピンを測定することとした。
【0038】
具体的には、本発明は、イジングモデルの複数のスピンに擬似的に対応し同一の発振周波数を有する複数の擬似的スピンパルスをパラメトリック発振させるパラメトリック発振器と、前記複数の擬似的スピンパルスを周回伝搬させるリング共振器と、前記複数の擬似的スピンパルスが前記リング共振器を周回伝搬するたびに、前記複数の擬似的スピンパルスの位相を暫定的に測定することにより、前記複数の擬似的スピンパルスの擬似的なスピンを暫定的に測定する暫定的スピン測定部と、ある擬似的スピンパルスが関わる前記イジングモデルの結合係数及び前記暫定的スピン測定部が暫定的に測定した他の擬似的スピンパルスの擬似的なスピンに基づいて、前記ある擬似的スピンパルスが関わる相互作用を暫定的に計算する相互作用計算部と、前記ある擬似的スピンパルスに対して注入される光の振幅及び位相を制御することにより、前記相互作用計算部が暫定的に計算した前記ある擬似的スピンパルスが関わる相互作用の大きさ及び符号を暫定的に実装する相互作用実装部と、前記暫定的スピン測定部、前記相互作用計算部及び前記相互作用実装部により構成されるフィードバックループが繰り返される過程で、前記複数の擬似的スピンパルスが定常状態に到達した後に、前記複数の擬似的スピンパルスの位相を測定することにより、前記複数の擬似的スピンパルスの擬似的なスピンを測定する擬似的スピン測定部と、を備えることを特徴とするイジングモデルの量子計算装置である。
【0039】
この構成によれば、複数の擬似的スピンパルスは、同一の発振周波数を有するため、各擬似的スピンパルスの初期状態の発振位相が、各擬似的スピンパルスの定常状態の2種類の発振位相のうち、一方の位相へは近く他方の位相へは遠い、ということがない。よって、イジングモデルの量子計算装置において、読み出しエラーを防止することができる。
【0040】
そして、イジングサイトがM個であるとき、第1及び第2の従来技術では、面発光レーザーをM台も必要とするのに対して、本発明では、パラメトリック発振器を1台のみ準備すれば足りる。さらに、イジングサイトがM個であるとき、第1及び第2の従来技術では、イジング相互作用実装部をM(M−1)/2個も必要とするのに対して、本発明では、フィードバックループを1系統のみ準備すれば足りる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、回路構成を簡易にすることができる。
【0041】
また、本発明は、前記相互作用計算部は、前記ある擬似的スピンパルスが関わる前記イジングモデルの3体以上の結合係数及び前記暫定的スピン測定部が暫定的に測定した前記他の擬似的スピンパルスの擬似的なスピンに基づいて、前記ある擬似的スピンパルスが関わる3体以上の相互作用を暫定的に計算し、前記相互作用実装部は、前記ある擬似的スピンパルスに対して注入される光の振幅及び位相を制御することにより、前記相互作用計算部が暫定的に計算した前記ある擬似的スピンパルスが関わる3体以上の相互作用の大きさ及び符号を暫定的に実装することを特徴とするイジングモデルの量子計算装置である。
【0042】
この構成によれば、各擬似的スピンパルス及び各注入光パルスの線形の重ね合わせの範囲内で、イジングモデルの3体以上の相互作用を実装することができる。
【0043】
また、本発明は、前記パラメトリック発振器は、前記複数の擬似的スピンパルスと同一の発振周波数を有し1対1のペアを組む複数の局部発振パルスをパラメトリック発振させ、前記リング共振器は、前記複数の局部発振パルスを周回伝搬させ、前記複数の局部発振パルスの位相について、正相及び逆相の両方を含む状態から、正相及び逆相の一方を含む状態へと、同相化させるパルス同相化部、をさらに備え、前記暫定的スピン測定部は、前記複数の擬似的スピンパルスの一部に対して、1対1のペアを組む前記複数の局部発振パルスの一部を用いてホモダイン検波を行い、前記相互作用実装部は、前記ある擬似的スピンパルスに対して、1対1のペアを組みその一部の振幅及び位相を制御された局部発振パルスを注入し、前記擬似的スピン測定部は、前記複数の擬似的スピンパルスの一部に対して、1対1のペアを組む前記複数の局部発振パルスの一部を用いてホモダイン検波を行うことを特徴とするイジングモデルの量子計算装置である。
【0044】
この構成によれば、複数の擬似的スピンパルスの発振位相の暫定的な測定結果を用いた、各擬似的スピンパルスが関わる相互作用の大きさ及び符号のフィードバック実装を、具体的な構成を用いて行うことができる。そして、この構成によれば、次の構成と比べて、擬似的スピンパルス及び局部発振パルスがペアとなってリング共振器を周回伝搬するため、パルス発生器からスピン測定部への光路長の揺らぎの問題をなくすことができる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、読み出しエラーを防止することができる。
【0045】
また、本発明は、角周波数ωを有する局部発振パルスを発生させるパルス発生器と、前記角周波数ωを有する局部発振パルスを用いて、角周波数2ωを有するパルスを発生させる第二高調波発生器と、をさらに備え、前記パラメトリック発振器は、前記角周波数2ωを有するパルスを用いて、前記複数の擬似的スピンパルスをパラメトリック発振させ、前記暫定的スピン測定部は、前記複数の擬似的スピンパルスの一部に対して、前記角周波数ωを有する局部発振パルスを用いてホモダイン検波を行い、前記相互作用実装部は、前記ある擬似的スピンパルスに対して、振幅及び位相を制御された前記角周波数ωを有する局部発振パルスを注入し、前記擬似的スピン測定部は、前記複数の擬似的スピンパルスの一部に対して、前記角周波数ωを有する局部発振パルスを用いてホモダイン検波を行うことを特徴とするイジングモデルの量子計算装置である。
【0046】
この構成によれば、複数の擬似的スピンパルスの発振位相の暫定的な測定結果を用いた、各擬似的スピンパルスが関わる相互作用の大きさ及び符号のフィードバック実装を、具体的な構成を用いて行うことができる。そして、この構成によれば、先の構成と比べて、擬似的スピンパルス及び局部発振パルスがペアとなってリング共振器を周回伝搬しないため、擬似的スピンパルス及び局部発振パルス間のクロストークをなくすことができ、全局部発振パルスを同相化させるパルス同相化部をなくすことができる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、読み出しエラーを防止することができる。
【0047】
また、本発明は、前記相互作用実装部は、前記ある擬似的スピンパルスに対して注入される光の振幅を、計算処理の初期段階ほど大きく制御し、計算処理の終期段階ほど小さく制御することを特徴とするイジングモデルの量子計算装置である。
【0048】
この構成によれば、計算処理の初期段階において、各擬似的スピンパルスの読出結果をできるだけ正しい答えにすることができる。たとえ、計算処理の初期段階において、ある擬似的スピンパルスの読出結果が正しい答えでないとしても、他の擬似的スピンパルスについての正しい答えをフィードバックすれば、計算処理の終期段階において、全擬似的スピンパルスについての正しい答えを得ることができる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、読み出しエラーを防止することができる。
【0049】
また、本発明は、前記複数の擬似的スピンパルスが前記リング共振器を周回伝搬するたびに、前記複数の擬似的スピンパルスの振幅を暫定的に測定する暫定的振幅測定部、をさらに備え、前記パラメトリック発振器は、前記暫定的振幅測定部が測定した前記複数の擬似的スピンパルスの振幅に基づいて、前記複数の擬似的スピンパルスの振幅が等しくなるように、パラメトリック発振に用いるポンプパルスの振幅をフィードバック制御することを特徴とするイジングモデルの量子計算装置である。
【0050】
この構成によれば、各擬似的スピンパルスの振幅の不均衡による、イジングモデルの結合係数の実質的な書き換えの問題をなくすことができる。よって、イジングモデルの量子計算装置において、読み出しエラーを防止することができる。
【0051】
また、本発明は、前記イジングモデルの複数のスピンのうち第n群(nは1以上の整数)のスピンに擬似的に対応する第n群の擬似的スピンパルスが前記リング共振器を周回伝搬する、請求項1から6のいずれかに記載の第n番のイジングモデルの量子計算装置、を並列に備え、前記第n番のイジングモデルの量子計算装置が備える前記暫定的スピン測定部が暫定的に測定した前記第n群の擬似的スピンパルスの擬似的なスピンの情報を、並列に備わるイジングモデルの量子計算装置の間で共有させる暫定的スピン共有部、をさらに備えることを特徴とするイジングモデルの量子並列計算装置である。
【0052】
この構成によれば、イジングモデルのサイト数が多いときでも、複数のイジングモデルの量子計算装置が並列分散処理を実行することにより、各々のイジングモデルの量子計算装置は計算処理負担を軽減することができる。
【0053】
また、本発明は、イジングモデルの複数のスピンに擬似的に対応し同一の発振周波数を有する複数の擬似的スピンパルスをパラメトリック発振させるパラメトリック発振ステップと、前記複数の擬似的スピンパルスがリング共振器を周回伝搬するたびに、前記複数の擬似的スピンパルスの位相を暫定的に測定することにより、前記複数の擬似的スピンパルスの擬似的なスピンを暫定的に測定する暫定的スピン測定ステップと、前記複数の擬似的スピンパルスが前記リング共振器を周回伝搬するたびに、ある擬似的スピンパルスが関わる前記イジングモデルの結合係数及び前記暫定的スピン測定ステップが暫定的に測定した他の擬似的スピンパルスの擬似的なスピンに基づいて、前記ある擬似的スピンパルスが関わる相互作用を暫定的に計算する相互作用計算ステップと、前記複数の擬似的スピンパルスが前記リング共振器を周回伝搬するたびに、前記ある擬似的スピンパルスに対して注入される光の振幅及び位相を制御することにより、前記相互作用計算ステップが暫定的に計算した前記ある擬似的スピンパルスが関わる相互作用の大きさ及び符号を暫定的に実装する相互作用実装ステップと、前記複数の擬似的スピンパルスが前記リング共振器を周回伝搬するたびに、前記複数の擬似的スピンパルスをパラメトリック増幅させるパラメトリック増幅ステップと、前記暫定的スピン測定ステップ、前記相互作用実装ステップ及び前記パラメトリック増幅ステップをこの順序で備えるフィードバックループが繰り返される過程で、前記複数の擬似的スピンパルスが定常状態に到達した後に、前記複数の擬似的スピンパルスの位相を測定することにより、前記複数の擬似的スピンパルスの擬似的なスピンを測定する擬似的スピン測定ステップと、を備えることを特徴とするイジングモデルの量子計算方法である。
【0054】
この構成によれば、暫定的スピン測定ステップと相互作用実装ステップの間に、パラメトリック増幅ステップが入らず、タイムラグがほとんど生じないため、イジングモデルのサイト間のほとんど遅延のない相互作用を実装することができる。
【0055】
また、本発明は、イジングモデルの複数のスピンに擬似的に対応し同一の発振周波数を有する複数の擬似的スピンパルスをパラメトリック発振させるパラメトリック発振ステップと、前記複数の擬似的スピンパルスがリング共振器を周回伝搬するたびに、前記複数の擬似的スピンパルスの位相を暫定的に測定することにより、前記複数の擬似的スピンパルスの擬似的なスピンを暫定的に測定する暫定的スピン測定ステップと、前記複数の擬似的スピンパルスが前記リング共振器を周回伝搬するたびに、ある擬似的スピンパルスが関わる前記イジングモデルの結合係数及び前記暫定的スピン測定ステップが暫定的に測定した他の擬似的スピンパルスの擬似的なスピンに基づいて、前記ある擬似的スピンパルスが関わる相互作用を暫定的に計算する相互作用計算ステップと、前記複数の擬似的スピンパルスが前記リング共振器を周回伝搬するたびに、前記複数の擬似的スピンパルスをパラメトリック増幅させるパラメトリック増幅ステップと、前記複数の擬似的スピンパルスが前記リング共振器を周回伝搬するたびに、前記ある擬似的スピンパルスに対して注入される光の振幅及び位相を制御することにより、前記相互作用計算ステップが暫定的に計算した前記ある擬似的スピンパルスが関わる相互作用の大きさ及び符号を暫定的に実装する相互作用実装ステップと、前記暫定的スピン測定ステップ、前記パラメトリック増幅ステップ及び前記相互作用実装ステップをこの順序で備えるフィードバックループが繰り返される過程で、前記複数の擬似的スピンパルスが定常状態に到達した後に、前記複数の擬似的スピンパルスの位相を測定することにより、前記複数の擬似的スピンパルスの擬似的なスピンを測定する擬似的スピン測定ステップと、を備えることを特徴とするイジングモデルの量子計算方法である。
【0056】
この構成によれば、暫定的スピン測定ステップと相互作用実装ステップの間に、パラメトリック増幅ステップが入って、タイムラグがある程度生じるものの、イジングモデルのサイト間の実質には遅延のない相互作用を実装することができる。
【発明の効果】
【0057】
本発明は、イジングモデルの量子計算装置において、読み出しエラーを防止するとともに、回路構成を簡易にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0060】
(本発明のイジングモデルの量子計算装置の構成及び原理)
本発明のイジングモデルの量子計算装置Qの構成を
図4に示す。本発明では、イジングハミルトニアンを、1体〜3体の相互作用を含むとして、数式3のようにする。
【数3】
【0061】
パラメトリック発振器1は、イジングモデルの複数のスピンσ
1〜σ
4に擬似的に対応し同一の発振周波数を有する複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP4をパラメトリック発振させる。リング共振器2は、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP4を周回伝搬させる。複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP4は、SP1、SP2、SP3、SP4、SP1、SP2、SP3、SP4、・・・の順序で、後述のフィードバックループに入る。
【0062】
暫定的スピン測定部3は、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP4がリング共振器2を周回伝搬するたびに、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP4の位相を暫定的に測定することにより、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP4の擬似的なスピンσ
1〜σ
4を暫定的に測定する。具体的には、暫定的スピン測定部3は、
図6及び
図7を用いて後述する局部発振パルスLOを用いて、ホモダイン検波を行う。
【0063】
相互作用計算部4は、ある擬似的スピンパルスSPiが関わるイジングモデルの結合係数λ
i、J
ij、K
ijk及び暫定的スピン測定部3が暫定的に測定した他の擬似的スピンパルスSPj、SPkの擬似的なスピンσ
j、σ
kに基づいて、ある擬似的スピンパルスSPiが関わる相互作用(σ
iに対する比例係数λ
i+ΣJ
ijσ
j+ΣK
ijkσ
jσ
k)を暫定的に計算する。
図4では、i、j、k=1〜4の場合を示している。
【0064】
ここで、NP完全問題などが、イジングモデルにマッピングされた後、相互作用計算部4は、イジングモデルの結合係数λ
i、J
ij、K
ijkを入力する。
【0065】
相互作用実装部5は、ある擬似的スピンパルスSPiに対して注入される光の振幅及び位相を制御することにより、相互作用計算部4が暫定的に計算したある擬似的スピンパルスSPiが関わる相互作用(σ
iに対する比例係数λ
i+ΣJ
ijσ
j+ΣK
ijkσ
jσ
k)の大きさ及び符号を暫定的に実装する。具体的には、相互作用実装部5は、
図6及び
図7を用いて後述する局部発振パルスLOを用いて、注入光パルスを生成する。
【0066】
擬似的スピン測定部6は、暫定的スピン測定部3、相互作用計算部4及び相互作用実装部5により構成されるフィードバックループが繰り返される過程で、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP4が定常状態に到達した後に、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP4の位相を測定することにより、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP4の擬似的なスピンσ
1〜σ
4を測定する。具体的には、擬似的スピン測定部6は、
図6及び
図7を用いて後述する局部発振パルスLOを用いて、ホモダイン検波を行う。
【0067】
ここで、擬似的スピン測定部6が、イジングモデルのスピンσ
1〜σ
4を出力した後、イジングモデルは、NP完全問題などにデマッピングされる。
【0068】
このように、パラメトリック発振器1でポンピング電流を漸増制御し、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP4のネットワーク全体で閾値利得が最低となる1つの発振モードを立ち上げ、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP4の発振位相を測定し、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP4に対応する各原子のスピンの方向を測定する。
【0069】
本発明のイジングモデルの量子計算装置Qの原理を
図5に示す。局部発振パルスLOの発振位相0は、初期状態から定常状態まで変化しない。各擬似的スピンパルスSPの発振位相φ(t)は、初期状態においては、0又は±πであり(各擬似的スピンパルスSPは、パラメトリック発振器1により、パラメトリック発振されて、スクイーズド状態にある。)、定常状態においては、初期状態の発振位相0又は±πからずれた±π/2である。定常状態におけるφ(定常)=±π/2は、σ=±1に対応する(複号同順)。
【0070】
各擬似的スピンパルスSPについて、1体の相互作用の結合係数λ
iが正であるときには、当該擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσが−1であることが、エネルギー的に有利である。よって、相互作用実装部5は、当該擬似的スピンパルスSPの発振位相φ(定常)が−π/2であるような、発振モードが立ち上がりやすいようにする。
【0071】
各擬似的スピンパルスSPについて、1体の相互作用の結合係数λ
iが負であるときには、当該擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσが+1であることが、エネルギー的に有利である。よって、相互作用実装部5は、当該擬似的スピンパルスSPの発振位相φ(定常)が+π/2であるような、発振モードが立ち上がりやすいようにする。
【0072】
2つの擬似的スピンパルスSPについて、2体の相互作用の結合係数J
ijが正であるときには、2つの擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσが異符号であることが、エネルギー的に有利である。よって、相互作用実装部5は、2つの擬似的スピンパルスSPの発振位相φ(定常)が異符号であるような、発振モードが立ち上がりやすいようにする。
【0073】
2つの擬似的スピンパルスSPについて、2体の相互作用の結合係数J
ijが負であるときには、2つの擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσが同符号であることが、エネルギー的に有利である。よって、相互作用実装部5は、2つの擬似的スピンパルスSPの発振位相φ(定常)が同符号であるような、発振モードが立ち上がりやすいようにする。
【0074】
3つの擬似的スピンパルスSPについて、3体の相互作用の結合係数K
ijkが正であるときには、(1)3つの擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσが−1であること、又は、(2)2つの擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσが+1であり、1つの擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσが−1であることが、エネルギー的に有利である。よって、相互作用実装部5は、(1)3つの擬似的スピンパルスSPの発振位相φ(定常)が−π/2であるような、又は、(2)2つの擬似的スピンパルスSPの発振位相φ(定常)が+π/2であり、1つの擬似的スピンパルスSPの発振位相φ(定常)が−π/2であるような、発振モードが立ち上がりやすいようにする。
【0075】
3つの擬似的スピンパルスSPについて、3体の相互作用の結合係数K
ijkが負であるときには、(1)3つの擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσが+1であること、又は、(2)2つの擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσが−1であり、1つの擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσが+1であることが、エネルギー的に有利である。よって、相互作用実装部5は、(1)3つの擬似的スピンパルスSPの発振位相φ(定常)が+π/2であるような、又は、(2)2つの擬似的スピンパルスSPの発振位相φ(定常)が−π/2であり、1つの擬似的スピンパルスSPの発振位相φ(定常)が+π/2であるような、発振モードが立ち上がりやすいようにする。
【0076】
もっとも、イジングモデルの量子計算装置Qの全体において、一体として1つの発振モードが立ち上がるようにするのであり、各擬似的スピンパルスSPにおいて、上述の発振モードが実際に立ち上がることもあれば、必ずしも立ち上がらないこともある。
【0077】
図4及び
図5で示した計算原理について詳述する。各擬似的スピンパルスSP1、SP2、SP3、SP4において、発振強度A
i(t)、発振位相φ
i(t)及びキャリアの反転分布数差N
Ci(t)について、レート方程式は、数式4−7のようになる。
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【0078】
ωは、発振周波数である。Qは、各擬似的スピンパルスSPの共振器Q値である。Pは、反転分布を実現するために各擬似的スピンパルスSPについて毎秒注入される電子数、すなわちポンピングレートである。数式4の−(1/2)(ω/Q)A
i(t)は、発振強度A
i(t)が共振器損失に起因して時間経過につれて減少するレートを示している。
【0079】
τ
spは、レーザー発振モード以外の他の発振モードへの自然放出に起因する電子寿命である。βは、全自然放出光のうちレーザー発振モードへの結合定数である。数式4の(1/2)E
Ci(t)A
i(t)は、発振強度A
i(t)が誘導放出に起因して時間経過につれて増加するレートを示している。数式4のE
Ci(t)は、発振強度A
i(t)が自然放出に起因して時間経過につれて増加するレートを示している。
【0080】
数式4、5のλ
iが関わる項は、1体の相互作用に関わる項である。相互作用実装部5が、擬似的スピンパルスSPiに対して、1体の相互作用(σ
iに対する比例係数λ
i)を実装するための注入光パルスを生成する方法を説明する。
【0081】
相互作用計算部4は、1体の相互作用(σ
iに対する比例係数λ
i)を計算する。λ
iが正であるときには、相互作用実装部5は、局部発振パルスLO(発振位相0)に対して、発振位相をπ/2だけ遅くする位相変調を行い、|λ
i|に比例する振幅変調を行い、注入光パルスを生成する。λ
iが負であるときには、相互作用実装部5は、局部発振パルスLO(発振位相0)に対して、発振位相をπ/2だけ早くする位相変調を行い、|λ
i|に比例する振幅変調を行い、注入光パルスを生成する。
【0082】
数式4の(ω/Q)A{−λ
isinφ
i(t)}は、擬似的スピンパルスSPiに対して、1体の相互作用(σ
iに対する比例係数λ
i)を実装するための注入光パルスが生成されたときに、i番目のサイトにおける発振強度A
i(t)が時間経過につれて変化するレートを示す。なお、数式4において、Aは、比例定数である。
【0083】
数式5の(1/A
i(t))(ω/Q)A{−λ
icosφ
i(t)}は、擬似的スピンパルスSPiに対して、1体の相互作用(σ
iに対する比例係数λ
i)を実装するための注入光パルスが生成されたときに、i番目のサイトにおける発振位相φ
i(t)が時間経過につれて変化するレートを示す。なお、数式5において、Aは、比例定数である。
【0084】
数式4、5のJ
ijが関わる項は、2体の相互作用に関わる項である。相互作用実装部5が、擬似的スピンパルスSPiに対して、2体の相互作用(σ
iに対する比例係数ΣJ
ijσ
j)を実装するための注入光パルスを生成する方法を説明する。
【0085】
暫定的スピン測定部3は、本周回前に、擬似的スピンパルスSPjの発振位相φ
j(t)及び擬似的なスピンσ
jを測定している。相互作用計算部4は、2体の相互作用(σ
iに対する比例係数ΣJ
ijσ
j)を計算する。i、j番目のサイト間について、J
ijが正であるときには、相互作用実装部5は、局部発振パルスLO(発振位相0)に対して、発振位相をφ
j(t)に移して更なる逆相化を施す位相変調を行い、|J
ij|に比例する振幅変調を行い、注入光パルスを生成する。i、j番目のサイト間について、J
ijが負であるときには、相互作用実装部5は、局部発振パルスLO(発振位相0)に対して、発振位相をφ
j(t)に移すが更なる逆相化を施さない位相変調を行い、|J
ij|に比例する振幅変調を行い、注入光パルスを生成する。相互作用実装部5は、i、j番目のサイト間の全組み合わせについて、上述のように注入光パルスを生成する。
【0086】
数式4の−(ω/Q)(1/2)J
ijAcos{φ
j(t)−φ
i(t)}は、擬似的スピンパルスSPiに対して、2体の相互作用(σ
iに対する比例係数ΣJ
ijσ
j)を実装するための注入光パルスが生成されたときに、i番目のサイトにおける発振強度A
i(t)が時間経過につれて変化するレートを示す。数式4のΣ(j≠i)は、i番目のサイトにおける、i番目以外の他の全てのサイト(j番目)からの寄与を示す。
【0087】
数式5の−(1/A
i(t))(ω/Q)(1/2)J
ijAsin{φ
j(t)−φ
i(t)}は、擬似的スピンパルスSPiに対して、2体の相互作用(σ
iに対する比例係数ΣJ
ijσ
j)を実装するための注入光パルスが生成されたときに、i番目のサイトにおける発振位相φ
i(t)が時間経過につれて変化するレートを示す。数式5のΣ(j≠i)は、i番目のサイトにおける、i番目以外の他の全てのサイト(j番目)からの寄与を示す。
【0088】
数式4、5のK
ijkが関わる項は、3体の相互作用に関わる項である。相互作用実装部5が、擬似的スピンパルスSPiに対して、3体の相互作用(σ
iに対する比例係数ΣK
ijkσ
jσ
k)を実装するための注入光パルスを生成する方法を説明する。
【0089】
暫定的スピン測定部3は、本周回前に、擬似的スピンパルスSPj、SPkの発振位相φ
j(t)、φ
k(t)及び擬似的なスピンσ
j、σ
kを測定している。相互作用計算部4は、3体の相互作用(σ
iに対する比例係数ΣK
ijkσ
jσ
k)を計算する。i、j、k番目のサイト間について、K
ijkが正であるときには、相互作用実装部5は、局部発振パルスLO(発振位相0)に対して、発振位相をφ
jk(t)に移して更なる逆相化を施す位相変調を行い、|K
ijk|に比例する振幅変調を行い、注入光パルスを生成する。i、j、k番目のサイト間について、K
ijkが負であるときには、相互作用実装部5は、局部発振パルスLO(発振位相0)に対して、発振位相をφ
jk(t)に移すが更なる逆相化を施さない位相変調を行い、|K
ijk|に比例する振幅変調を行い、注入光パルスを生成する。相互作用実装部5は、i、j、k番目のサイト間の全組み合わせについて、上述のように注入光パルスを生成する。なお、φ
jk(t)は、数式12を用いて後述する。
【0090】
数式4の−(ω/Q)(1/2)K
ijkAcos{φ
jk(t)−φ
i(t)}は、擬似的スピンパルスSPiに対して、3体の相互作用(σ
iに対する比例係数ΣK
ijkσ
jσ
k)を実装するための注入光パルスが生成されたときに、i番目のサイトにおける発振強度A
i(t)が時間経過につれて変化するレートを示す。数式4のΣ(j、k≠i)は、i番目のサイトにおける、i番目以外の他の全てのサイト(j、k番目)からの寄与を示す。
【0091】
数式5の−(1/A
i(t))(ω/Q)(1/2)K
ijkAsin{φ
jk(t)−φ
i(t)}は、擬似的スピンパルスSPiに対して、3体の相互作用(σ
iに対する比例係数ΣK
ijkσ
jσ
k)を実装するための注入光パルスが生成されたときに、i番目のサイトにおける発振位相φ
i(t)が時間経過につれて変化するレートを示す。数式5のΣ(j、k≠i)は、i番目のサイトにおける、i番目以外の他の全てのサイト(j、k番目)からの寄与を示す。
【0092】
F
A、F
φ及びF
Nは、それぞれ、i番目のサイトにおける、発振強度A
i(t)、発振位相φ
i(t)及びキャリアの反転分布数差N
Ci(t)に対する雑音を示す。
【0093】
定常状態において、数式4は、数式8のようになる。
【数8】
F
Aを無視して、数式8を変形すると、数式9のようになる。
【数9】
【0094】
ここで、数式10、11が成立している。そこで、イジングモデル及びレーザーシステムの類似に着目して、数式12のようにおくと、数式9は、数式13のようになる。
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【0095】
ここで、擬似的スピンパルスSPiに対して、2体の相互作用(σ
iに対する比例係数ΣJ
ijσ
j)を実装するためには、擬似的スピンパルスSPi、SPjを線形に重ね合わせるのみで足りる。しかし、擬似的スピンパルスSPiに対して、3体の相互作用(σ
iに対する比例係数ΣK
ijkσ
jσ
k)を実装するためには、擬似的スピンパルスSPi、SPj、SPkを線形に重ね合わせるのみでは足らない。
【0096】
しかし、擬似的スピンパルスSPi、SPj、SPkの間の非線形効果を利用すれば、イジングモデルの量子計算装置Qの回路構成が複雑になる。そこで、数式12のようにσ
jσ
k=sinφ
jk(t)とおけば、擬似的スピンパルスSPi及び注入光パルスの間の線形の重ね合わせが利用できて、イジングモデルの量子計算装置Qの回路構成が簡易になる。
【0097】
数式13をM個の全部のサイトについて加算すると、数式14のようになり、レーザーシステムの全体の閾値利得ΣE
Ciとして表わされる。
【数14】
【0098】
ここで、仮定として、数式15が成立している。そして、定常状態では、数式16、17が成立している。このとき、数式14は、数式18のようになる。
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【0099】
ここで、レーザーの媒質が均一な媒質であるときには、レーザーシステム全体として、最小の閾値利得ΣE
Ciを実現する発振位相状態{σ
i}が選択される。つまり、レーザーシステム全体として、1個の特定の発振モードが選択される。そして、発振モードの間の競合に起因して、1個の特定の発振モードは、他の発振モードを抑制する。つまり、レーザーシステム全体として、数式18のΣE
Ciは最小化される。一方で、レーザーシステム全体として、数式18の(ω/Q)Mは一定である。よって、レーザーシステム全体として、数式18のΣλ
iσ
i+ΣJ
ijσ
iσ
j+ΣK
ijkσ
iσ
jσ
kは最小化される。つまり、数式3のイジングハミルトニアンを最小化する基底状態が実現されたことになる。
【0100】
ここで、計算精度を向上させるためには、レーザーシステム全体でのレーザー発振モードについて、最小の閾値利得及びその次に小さい閾値利得の差を、自然放出レートで決定される飽和利得E
C及び光子減衰率ω/Qの差であるβ(ω/Q)(1/R)より十分に大きくする必要がある。ここで、R=I/I
th−1は、規格化ポンプレートであり、I及びI
thは、それぞれ注入電流及びそのレーザー発振閾値である。よって、βを小さくしRを高くすることにより、計算精度を向上させることができる。
【0101】
図4及び
図5を用いて説明したように、複数の擬似的スピンパルスSPiは、同一の発振周波数を有するため、各擬似的スピンパルスSPiの初期状態の発振位相φ
i(t=0)が、各擬似的スピンパルスSPiの定常状態の2種類の発振位相φ
i(定常)=±π/2のうち、一方の位相へは近く他方の位相へは遠い、ということがない。よって、イジングモデルの量子計算装置Qにおいて、読み出しエラーを防止することができる。
【0102】
そして、イジングサイトがM個であるとき、第1及び第2の従来技術では、面発光レーザーVをM台も必要とするのに対して、本発明では、パラメトリック発振器1を1台のみ準備すれば足りる。さらに、イジングサイトがM個であるとき、第1及び第2の従来技術では、イジング相互作用実装部をM(M−1)/2個も必要とするのに対して、本発明では、フィードバックループを1系統のみ準備すれば足りる。よって、イジングモデルの量子計算装置Qにおいて、回路構成を簡易にすることができる。
【0103】
さらに、各擬似的スピンパルスSPi及び各注入光パルスの線形の重ね合わせの範囲内で、イジングモデルの3体以上の相互作用を実装することができる。ここで、イジングモデルの3体の相互作用を実装するときには、数式12のようにσ
jσ
k=sinφ
jk(t)とおいて、擬似的スピンパルスSPi及び注入光パルスの線形の重ね合わせを行う。そして、イジングモデルの3体以上の相互作用を実装するときには、数式12と同様にσ
jσ
kσ
l・・・=sinφ
jkl・・・(t)(N体の相互作用について、φは(N−1)個のσの積)とおいて、擬似的スピンパルスSPi及び注入光パルスの線形の重ね合わせを行う。
【0104】
(第1の実施形態のイジングモデルの量子計算装置の構成)
第1の実施形態のイジングモデルの量子計算装置Qの構成を
図6に示す。
【0105】
パラメトリック発振器1は、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP(N)と同一の発振周波数を有し1対1のペアを組む複数の局部発振パルスLO1〜LO(N)をパラメトリック発振させる。リング共振器2は、複数の局部発振パルスLO1〜LO(N)を周回伝搬させる。複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP(N)及び複数の局部発振パルスLO1〜LO(N)は、LO1、SP1、・・・、LO(N)、SP(N)、LO1、SP1、・・・、LO(N)、SP(N)、・・・の順序で、フィードバックループに入る。
【0106】
ここで、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP(N)は、発振閾値の近傍でポンプパルスを用いてパラメトリック発振される。そして、複数の局部発振パルスLO1〜LO(N)は、発振閾値より十分上でポンプパルスを用いてパラメトリック発振される。
【0107】
パルス同相化部7は、複数の局部発振パルスLO1〜LO(N)の位相について、正相及び逆相の両方を含む状態から、正相及び逆相の一方を含む状態へと、同相化させる。よって、パルス同相化部7は、複数の局部発振パルスLO1〜LO(N)の位相について、
図5で示したように0とすることができる。例えば、パルス同相化部7は、2パルス分(隣接の局部発振パルスLOは、1つの擬似的スピンパルスSPを挟む。)の遅延線及び位相変調器を備える。ただし、パルス同相化部7は、複数の局部発振パルスLO1〜LO(N)のみ位相変調すべきであり、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP(N)まで位相変調すべきでなく、位相変調器のON/OFFの切り替えを行う。
【0108】
暫定的スピン測定部3は、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP(N)の一部に対して、1対1のペアを組む複数の局部発振パルスLO1〜LO(N)の一部を用いてホモダイン検波を行う。ここで、暫定的スピン測定部3は、cos成分及びsin成分を測定しており、各成分の測定部に1パルス分(1対1のペアを組む擬似的スピンパルスSP及び局部発振パルスLOは、隣接している。)の遅延線を備える。
【0109】
相互作用計算部4は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)であり、イジングモデルの結合係数λ
i、J
ij、K
ijkを入力する。相互作用実装部5は、ある擬似的スピンパルスSPiに対して、1対1のペアを組みその一部の振幅及び位相を制御された局部発振パルスLOiを注入する。ここで、相互作用実装部5は、1パルス分(1対1のペアを組む擬似的スピンパルスSP及び局部発振パルスLOは、隣接している。)の遅延線上に置かれる。
【0110】
擬似的スピン測定部6は、暫定的スピン測定部3と共用であり、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP(N)の一部に対して、1対1のペアを組む複数の局部発振パルスLO1〜LO(N)の一部を用いてホモダイン検波を行い、イジングモデルのスピンσを出力する。
【0111】
図6を用いて説明したように、複数の擬似的スピンパルスSPiの発振位相φ
i(t)の暫定的な測定結果を用いた、各擬似的スピンパルスSPiが関わる相互作用の大きさ及び符号のフィードバック実装を、具体的な構成を用いて行うことができる。そして、第1の実施形態によれば、第2の実施形態と比べて、擬似的スピンパルスSPi及び局部発振パルスLOiがペアとなってリング共振器2を周回伝搬するため、パルス発生器8からスピン測定部3、6への光路長の揺らぎの問題をなくすことができる。よって、イジングモデルの量子計算装置Qにおいて、読み出しエラーを防止することができる。
【0112】
(第2の実施形態のイジングモデルの量子計算装置の構成)
第2の実施形態のイジングモデルの量子計算装置Qの構成を
図7に示す。
【0113】
パルス発生器8は、角周波数ωを有する局部発振パルスLOを発生させる。第二高調波発生器9は、角周波数ωを有する局部発振パルスLOを用いて、角周波数2ωを有するパルスを発生させる。パラメトリック発振器1は、角周波数2ωを有するパルスを用いて、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP(N)をパラメトリック発振させる。複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP(N)は、SP1、・・・、SP(N)、SP1、・・・、SP(N)、・・・の順序で、フィードバックループに入る。
【0114】
ここで、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP(N)は、発振閾値の近傍でポンプパルスを用いてパラメトリック発振される。そして、パルス発生器8は、例えば、モード同期レーザーを備える。よって、パルス発生器8は、角周波数ωを有する局部発振パルスLOの位相について、
図5で示したように0とすることができる。
【0115】
暫定的スピン測定部3は、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP(N)の一部に対して、角周波数ωを有する局部発振パルスLOを用いてホモダイン検波を行う。ここで、暫定的スピン測定部3は、cos成分及びsin成分を測定している。
【0116】
相互作用計算部4は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)であり、イジングモデルの結合係数λ
i、J
ij、K
ijkを入力する。相互作用実装部5は、ある擬似的スピンパルスSPiに対して、振幅及び位相を制御された角周波数ωを有する局部発振パルスLOを注入する。
【0117】
擬似的スピン測定部6は、暫定的スピン測定部3と共用であり、複数の擬似的スピンパルスSP1〜SP(N)の一部に対して、角周波数ωを有する局部発振パルスLOを用いてホモダイン検波を行い、イジングモデルのスピンσを出力する。
【0118】
図7を用いて説明したように、複数の擬似的スピンパルスSPiの発振位相φ
i(t)の暫定的な測定結果を用いた、各擬似的スピンパルスSPiが関わる相互作用の大きさ及び符号のフィードバック実装を、具体的な構成を用いて行うことができる。そして、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と比べて、擬似的スピンパルスSPi及び局部発振パルスLOがペアとなってリング共振器2を周回伝搬しないため、擬似的スピンパルスSPi及び局部発振パルスLOi間のクロストークをなくすことができ、全局部発振パルスLOiを同相化させるパルス同相化部7をなくすことができる。よって、イジングモデルの量子計算装置Qにおいて、読み出しエラーを防止することができる。
【0119】
(本発明のイジングモデルの量子計算装置の計算結果)
数式4−7のレート方程式のシミュレーション結果として、2体の相互作用を含むイジングモデルの量子計算装置Qの計算結果及び時間発展を
図8及び
図9に示す。イジングモデルのハミルトニアンは、
図8の上段に示されている。
【0120】
このハミルトニアンの最小エネルギー状態では、ある2つのサイトのスピンσが上向きであり、他の2つのサイトのスピンσが下向きであり、これらの最小エネルギー状態は6通り存在することが、数式4−7のレート方程式によらず分かっている。
【0121】
図8では、本発明の計算処理を1000回繰り返した結果、6通りの最小エネルギー状態がほぼ等確率で導き出された一方、その他のエネルギー状態は導き出されなかった。つまり、エラーレートは、10
−3以下であることが分かった。
【0122】
図9では、ホモダイン検波結果の時間発展は、σ
1=σ
2=+1、σ
3=σ
4=−1の最小エネルギー状態を指向している。初期状態から定常状態への所要時間は、〜40×100μsであった。ここで、
図9の横軸の時間は、共振器の光寿命(2kmの光ファイバにより構成されるリング共振器2では100μs)により規格化された時間である。
【0123】
数式4−7のレート方程式のシミュレーション結果として、4体の相互作用を含むイジングモデルの量子計算装置Qの計算結果及び時間発展を
図10及び
図11に示す。イジングモデルのハミルトニアンは、
図10の上段に示されている。
【0124】
このハミルトニアンの最小エネルギー状態では、ある1つのサイトのスピンσと他の3つのサイトのスピンσが異符号であり、これらの最小エネルギー状態は8通り存在することが、数式4−7のレート方程式によらず分かっている。
【0125】
図10では、本発明の計算処理を1000回繰り返した結果、8通りの最小エネルギー状態がほぼ等確率で導き出された一方、その他のエネルギー状態は導き出されなかった。つまり、エラーレートは、10
−3以下であることが分かった。
【0126】
図11では、ホモダイン検波結果の時間発展は、σ
1=+1、σ
2=σ
3=σ
4=−1の最小エネルギー状態を指向している。初期状態から定常状態への所要時間は、〜80×100μsであった。ここで、
図11の横軸の時間は、共振器の光寿命(2kmの光ファイバにより構成されるリング共振器2では100μs)により規格化された時間である。
【0127】
ここで、計算処理の初期段階において、各擬似的スピンパルスSPの読出結果は正しい答えであるとは限らず、計算処理の初期段階において、正しくない答えをフィードバックすれば、計算処理の終期段階において、正しい答えを得られない、という疑義が生ずる。
【0128】
そこで、相互作用実装部5は、ある擬似的スピンパルスSPに対して注入される光の振幅を、計算処理の初期段階ほど大きく制御し、計算処理の終期段階ほど小さく制御する。つまり、相互作用実装部5は、数式4、5における比例定数Aを、計算処理の初期段階ほど大きく制御し、計算処理の終期段階ほど小さく制御する。
【0129】
よって、計算処理の初期段階において、各擬似的スピンパルスSPの読出結果をできるだけ正しい答えにすることができる。たとえ、計算処理の初期段階において、ある擬似的スピンパルスSPの読出結果が正しい答えでないとしても、他の擬似的スピンパルスSPについての正しい答えをフィードバックすれば、計算処理の終期段階において、全擬似的スピンパルスSPについての正しい答えを得ることができる。つまり、イジングモデルの量子計算装置Qにおいて、読み出しエラーを防止することができる。
【0130】
計算処理の全段階で光注入強度を一定にした場合の時間発展を
図12に示す。
図12の場合には、定常状態において、不安定な発振状態が生じている。
【0131】
計算処理の初期段階に光注入強度を高くした場合の時間発展を
図13に示す。
図13の場合には、発振閾値直前において、光注入強度を減衰させることにより、定常状態において、不安定な発振状態がなくなっている。そして、初期段階において、光注入強度を高くすることにより、ある擬似的スピンパルスSPについて、初期段階においては、誤答が得られたとしても、終期段階においては、正答が得られるようになる。
【0132】
そして、数式15のA
i(t)=A
j(t)を仮定することで、数式18のイジングモデルの結合係数としてλ
i、J
ij、K
ijkを得ているところ、数式15のA
i(t)=A
j(t)が成立しなければ、数式18のイジングモデルの結合係数としてλ
i、J
ij、K
ijkと異なるλ’
i、J’
ij、K’
ijkが得られてしまう、という問題が生ずる。
【0133】
そこで、スピン測定部3、6は、複数の擬似的スピンパルスSPがリング共振器2を周回伝搬するたびに、複数の擬似的スピンパルスSPの振幅を暫定的に測定する。そして、パラメトリック発振器1は、スピン測定部3、6が測定した複数の擬似的スピンパルスSPの振幅に基づいて、複数の擬似的スピンパルスSPの振幅が等しくなるように、パラメトリック発振に用いるポンプパルスの振幅をフィードバック制御する。
【0134】
よって、各擬似的スピンパルスSPの振幅の不均衡による、イジングモデルの結合係数λ
i、J
ij、K
ijkの実質的な書き換えの問題をなくすことができる。つまり、イジングモデルの量子計算装置Qにおいて、読み出しエラーを防止することができる。
【0135】
複数の擬似的スピンパルスの強度を揃えない場合の時間発展を
図14に示す。
図14の場合には、各擬似的スピンパルスSPの強度によらず、各擬似的スピンパルスSPについて、ポンプパルスの強度が同様になるように制御されている。よって、各擬似的スピンパルスSPの強度が確実に揃えられるとは限らない。
【0136】
複数の擬似的スピンパルスの強度を揃えない場合の計算精度を
図15に示す。イジングエネルギー(折れ線グラフで表す。)が低い状態の存在確率(ヒストグラムで示す。)は、本来は高いはずであるところ、
図15の場合には、低くなっている。
【0137】
複数の擬似的スピンパルスの強度を揃えた場合の時間発展を
図16に示す。
図16の場合には、各擬似的スピンパルスSPの強度に応じて、各擬似的スピンパルスSPについて、ポンプパルスの強度がそれぞれに(同様でもよく、異なってもよい。)制御されている。よって、各擬似的スピンパルスSPの強度が確実に揃えられることができる。
【0138】
複数の擬似的スピンパルスの強度を揃えた場合の計算精度を
図17に示す。イジングエネルギー(折れ線グラフで表す。)が低い状態の存在確率(ヒストグラムで示す。)は、本来は高いはずであるところ、
図17の場合には、高くなっている。
【0139】
(本発明のイジングモデルの量子計算方法のループ手順)
本発明のイジングモデルの量子計算方法のループ手順を
図18、19に示す。
【0140】
図18に示したイジングモデルの量子計算方法のループ手順を実現するために、
図4、6、7に示したイジングモデルの量子計算装置Qのように、暫定的スピン測定部3(又は擬似的スピン測定部6)、パラメトリック発振器1及び相互作用実装部5が、リング共振器2中の擬似的スピンパルスSPの周回伝搬方向にこの順序で配置される。
【0141】
パラメトリック発振器1は、複数の擬似的スピンパルスSPをパラメトリック発振させる(ステップS1)。暫定的スピン測定部3は、擬似的なスピンσを暫定的に測定する(ステップS2)。相互作用計算部4は、イジング相互作用を暫定的に計算する(ステップS3)。パラメトリック発振器1は、複数の擬似的スピンパルスSPをパラメトリック増幅させる(ステップS4)。相互作用実装部5は、イジング相互作用を暫定的に実装する(ステップS5)。ステップS3、S4は、順序が入れ替わることがある。
【0142】
複数の擬似的スピンパルスSPが定常状態に到達しなければ(ステップS6においてNO)、ステップS2〜S6のループ手順を繰り返す。複数の擬似的スピンパルスSPが定常状態に到達したならば(ステップS6においてYES)、擬似的スピン測定部6は、擬似的なスピンσを最終的に測定する(ステップS7)。
【0143】
このように、暫定的スピン測定ステップS2と相互作用実装ステップS5の間に、パラメトリック増幅ステップS4が入って、タイムラグがある程度生じるものの、イジングモデルのサイト間の実質には遅延のない相互作用を実装することができる。
【0144】
図19に示したイジングモデルの量子計算方法のループ手順を実現するために、
図4、6、7に示したイジングモデルの量子計算装置Qと異なり、パラメトリック発振器1、暫定的スピン測定部3(又は擬似的スピン測定部6)及び相互作用実装部5が、リング共振器2中の擬似的スピンパルスSPの周回伝搬方向にこの順序で配置される。
【0145】
パラメトリック発振器1は、複数の擬似的スピンパルスSPをパラメトリック発振させる(ステップS11)。暫定的スピン測定部3は、擬似的なスピンσを暫定的に測定する(ステップS12)。相互作用計算部4は、イジング相互作用を暫定的に計算する(ステップS13)。相互作用実装部5は、イジング相互作用を暫定的に実装する(ステップS14)。パラメトリック発振器1は、複数の擬似的スピンパルスSPをパラメトリック増幅させる(ステップS15)。ステップS13、S15は、順序が入れ替わることがない。
【0146】
複数の擬似的スピンパルスSPが定常状態に到達しなければ(ステップS16においてNO)、ステップS12〜S16のループ手順を繰り返す。複数の擬似的スピンパルスSPが定常状態に到達したならば(ステップS16においてYES)、擬似的スピン測定部6は、擬似的なスピンσを最終的に測定する(ステップS17)。
【0147】
このように、暫定的スピン測定ステップS12と相互作用実装ステップS14の間に、パラメトリック増幅ステップS15が入らず、タイムラグがほとんど生じないため、イジングモデルのサイト間のほとんど遅延のない相互作用を実装することができる。
【0148】
(本発明のイジングモデルの量子並列計算装置の構成)
本発明のイジングモデルの量子並列計算装置Pの構成を
図20、21に示す。
【0149】
イジングモデルの量子並列計算装置Pは、第1番、第2番、・・・、第n番のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnを並列に備える。第1番、第2番、・・・、第n番のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnとして、
図4、6、7に示したイジングモデルの量子計算装置Q及び
図18、19に示したイジングモデルの量子計算方法を適用することができる。第1番、第2番、・・・、第n番のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnでは、イジングモデルの複数のスピンσのうち、第1群、第2群、・・・、第n群のスピンσに擬似的に対応する、第1群、第2群、・・・、第n群の擬似的スピンパルスSPが、各リング共振器2を周回伝搬する。
【0150】
暫定的スピン共有部10は、第1番、第2番、・・・、第n番のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnが備える各暫定的スピン測定部3が暫定的に測定した、第1群、第2群、・・・、第n群の擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσの情報を、並列に備わるイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnの間で共有させる。
【0151】
図20に示したイジングモデルの量子並列計算装置Pについて説明する。第1番、第2番、・・・、第n番のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnの各暫定的スピン測定部3は、第1群、第2群、・・・、第n群の擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσの情報を、暫定的スピン共有部10及び各相互作用計算部4に出力する。
【0152】
暫定的スピン共有部10は、第1群より他の群(第2群、第n群等)の擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσの情報を、第1番のイジングモデルの量子計算装置Q1の相互作用計算部4に出力する。暫定的スピン共有部10は、第2群より他の群(第1群、第n群等)の擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσの情報を、第2番のイジングモデルの量子計算装置Q2の相互作用計算部4に出力する。・・・暫定的スピン共有部10は、第n群より他の群(第1群、第2群等)の擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσの情報を、第n番のイジングモデルの量子計算装置Qnの相互作用計算部4に出力する。
【0153】
第1番のイジングモデルの量子計算装置Q1の相互作用計算部4は、第1群の擬似的スピンパルスSPが関わるイジングモデルの結合係数を保持しており、第1群の擬似的スピンパルスSPが関わる相互作用を暫定的に計算する。第2番のイジングモデルの量子計算装置Q2の相互作用計算部4は、第2群の擬似的スピンパルスSPが関わるイジングモデルの結合係数を保持しており、第2群の擬似的スピンパルスSPが関わる相互作用を暫定的に計算する。・・・第n番のイジングモデルの量子計算装置Qnの相互作用計算部4は、第n群の擬似的スピンパルスSPが関わるイジングモデルの結合係数を保持しており、第n群の擬似的スピンパルスSPが関わる相互作用を暫定的に計算する。
【0154】
このように、イジングモデルのサイト数が多いときでも、複数のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnが並列分散処理を実行することにより、各々のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnは計算処理負担を軽減することができる。
【0155】
図20に示したイジングモデルの量子並列計算装置Pでは、暫定的スピン共有部10は、複数のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnの相互作用計算部4に、擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσの情報を出力する。よって、複数のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnの相互作用計算部4は、擬似的スピンパルスSPの間の相互作用の計算処理負担を軽減されない。しかし、
図4、6、7に示したイジングモデルの量子計算装置Qと比べて、
図20に示した各々のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnは、計算処理負担を軽減される。
【0156】
図21に示したイジングモデルの量子並列計算装置Pについて説明する。第1番、第2番、・・・、第n番のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnの各暫定的スピン測定部3は、第1群、第2群、・・・、第n群の擬似的スピンパルスSPの擬似的なスピンσの情報を、暫定的スピン共有部10及び各相互作用計算部4に出力する。
【0157】
暫定的スピン共有部10は、第1群と他の群(第2群、第n群等)の擬似的スピンパルスSPが関わるイジングモデルの結合係数を保持しており、第1群と他の群の擬似的スピンパルスSPの間の相互作用の情報を、第1番のイジングモデルの量子計算装置Q1の相互作用計算部4に出力する。暫定的スピン共有部10は、第2群と他の群(第1群、第n群等)の擬似的スピンパルスSPが関わるイジングモデルの結合係数を保持しており、第2群と他の群の擬似的スピンパルスSPの間の相互作用の情報を、第2番のイジングモデルの量子計算装置Q2の相互作用計算部4に出力する。・・・暫定的スピン共有部10は、第n群と他の群(第1群、第2群等)の擬似的スピンパルスSPが関わるイジングモデルの結合係数を保持しており、第n群と他の群の擬似的スピンパルスSPの間の相互作用の情報を、第n番のイジングモデルの量子計算装置Qnの相互作用計算部4に出力する。
【0158】
第1番のイジングモデルの量子計算装置Q1の相互作用計算部4は、第1群に属する複数の擬似的スピンパルスSPが関わるイジングモデルの結合係数を保持しており、第1群に属する複数の擬似的スピンパルスSPの間の相互作用を暫定的に計算する。第2番のイジングモデルの量子計算装置Q2の相互作用計算部4は、第2群に属する複数の擬似的スピンパルスSPが関わるイジングモデルの結合係数を保持しており、第2群に属する複数の擬似的スピンパルスSPの間の相互作用を暫定的に計算する。・・・第n番のイジングモデルの量子計算装置Qnの相互作用計算部4は、第n群に属する複数の擬似的スピンパルスSPが関わるイジングモデルの結合係数を保持しており、第n群に属する複数の擬似的スピンパルスSPの間の相互作用を暫定的に計算する。
【0159】
このように、イジングモデルのサイト数が多いときでも、複数のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnが並列分散処理を実行することにより、各々のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnは計算処理負担を軽減することができる。
【0160】
図21に示したイジングモデルの量子並列計算装置Pでは、暫定的スピン共有部10は、複数のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnの相互作用計算部4に、擬似的スピンパルスSPの間の相互作用の情報を出力する。よって、複数のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnの相互作用計算部4は、擬似的スピンパルスSPの間の相互作用の計算処理負担を軽減される。つまり、
図20に示した各々のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnと比べて、
図21に示した各々のイジングモデルの量子計算装置Q1、Q2、・・・、Qnは、計算処理負担を軽減される。