(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凹部の縁部と前記基板テーブルに支持された時の前記基板の縁部との間にトレンチが形成され、前記抽出チャネルは前記トレンチと流体連通している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の液浸リソグラフィ装置。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置は、基板上に、通常は基板の目標部分上に所望のパターンを形成する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用することができる。その場合、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニング機器を、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成するために使用することができる。このパターンは基板(例えば、シリコン・ウェハ)上の目標部分(例えば、1つまたは数個のダイの一部を備える)上に移送することができる。パターンの移送は、通常、基板上に塗布された放射線感光材料(レジスト)の層上に画像を形成することにより行われる。一般的に、1つの基板は、連続的にパターン化される隣接する目標部分のネットワークを含む。周知のリソグラフィ装置は、各目標部分が、一度に目標部分上に全パターンを露光することにより照射されるいわゆるステッパと、所与の方向(「走査」方向)に平行にまたは逆平行に同期状態で基板を走査しながら、上記走査方向に放射線ビームを通してパターンを走査することにより、各目標部分が照射されるいわゆるスキャナとを含む。また、基板上にパターンを印刷することにより、パターンをパターニング機器から基板に移送することもできる。
【0003】
例えば、水のような屈折率が比較的高い液体にリソグラフィ投影装置の基板を浸漬し、投影システムの最終素子と基板との間の空間を液体で満たす方法も提案されてきた。この方法の重要な点は、小さなフィーチャの画像形成ができることである。何故なら、液体内だと露光放射線の波長が短くなるからである。(また、液体の効果は、システムの実効開口数(NA)を増大し、焦点深度も増大すると見なすこともできる。)その中に懸濁した固体の粒子(例えば、クォーツ)を含む水を含む他の浸漬液も提案されてきた。
【0004】
しかし、液体の浴内に基板または基板および基板テーブルを浸漬するということは(例えば、引用によりその全文を本明細書に援用するものとする米国特許第4,509,852号参照)、走査露光中に加速しなければならない大量の液体が存在することを意味する。そのため、追加のまたはもっと強力なモータが必要になり、液体の乱流により望ましくないまた予測できない影響が生じる恐れがある。
【0005】
提案された解決方法のうちの1つは、液体供給システムのためのものであって、基板の局部領域上、および投影システムの最終素子と基板との間だけに液体を供給する方法である(基板は、一般的に、投影システムの最終素子よりも広い表面積を有する)。引用によりその全文を本明細書に援用するものとするPCT特許出願第WO99/49504号に、このような配置を行うために提案された1つの方法が開示されている。
図2および
図3に示すように、液体は少なくとも1つの入口INにより基板上に供給されるが、この供給は好適には最終素子に対する基板の運動方向に沿って行うことが好ましく、液体は投影システムの下を通過した後で少なくとも1つの出口OUTから流出する。すなわち、基板が素子の下で−X方向に走査されると、素子の+X側で液体が供給され、−X側に移動する。
図2は、液体が入り口INを通して供給され、低圧源に接続している出口OUTにより素子の他方の側に移動する装置の略図である。
図2においては、液体は、最終素子に対して基板の運動方向に沿って供給されるが、必ずしもこのようにする必要はない。最終素子の周囲に種々の方向を向けて、種々の数の入り口および出口を位置させることができる。
図3はその一例を示す。この例の場合には、最終素子の周囲の規則的なパターンのどちらかの側に、1つの出口を有する4組の入り口が設けられている。
【0006】
本発明の浸漬リソグラフィ装置の場合には、浸漬液の除去は、通常、二相流、すなわち周囲ガス(例えば、空気)または浸漬液を閉じ込めるために使用しているガス・シールからのガスを含む浸漬液の混合物を含む。このような二相流は安定性が非常に低く、特に浸漬液を閉じ込めるために、またはすべての液体を確実に収集する目的で、強力なガス流を生成するために大きな圧力差を使用した場合には、それによる振動は望ましいものではない。また、高圧ガス流は、基板上に残っている液体を蒸発により乾燥し、熱勾配を引き起こす恐れもある。干渉計ビームの通路に流れ込むガス流も、基板テーブルの位置の測定精度に影響を与える恐れがある。何故なら、干渉計は、温度、圧力および湿度の変化が引き起こすような干渉計ビームの通路内のガスの屈折率の変化に非常に敏感であるからである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明のある実施例によるリソグラフィ装置の略図である。この装置は、
【0012】
放射線ビームPB(例えば、UV放射線またはDUV放射線)を調整するように構成されている照明システム(照明装置)ILと、
【0013】
パターニング機器(例えば、マスク)MAを支持するように作られていて、いくつかのパラメータによりパターニング機器を正確に位置決めするように構成されている第1の位置決め装置PMに接続している支持構造(例えば、マスク・テーブル)MTと、
【0014】
基板(例えば、レジストで被覆されたウェハ)Wを保持するように作られていて、いくつかのパラメータにより基板を正確に位置決めするように構成されている第2の位置決め装置PWに接続している基板テーブル(例えば、ウェハ・テーブル)WTと、
【0015】
基板Wの目標部分C(例えば、1つまたは複数のダイを備えている)上にパターニング機器MAにより、放射線ビームPBに与えるパターンを投影するように構成されている投影システム(例えば、屈折投影レンズ・システム)PLとを備える。
【0016】
照明システムは、放射線をある方向に向け、整形し、または制御するための屈折、反射、磁気、電磁気、静電または他のタイプの光学構成要素、またはこれらの任意の組合わせのような種々のタイプの光学構成要素を含むことができる。
【0017】
支持構造は支持する、すなわち、パターニング機器の重量を支える。支持構造は、パターニング機器の向き、リソグラフィ装置の設計、および例えば、パターニング機器が真空環境内で保持されるのかどうかというような他の条件に依存する方法でパターニング機器を保持する。支持構造は、パターニング機器を保持するために、機械的、真空、静電または他の締付け技術を使用することができる。支持構造は、例えば、必要に応じて固定または移動することができるフレームまたはテーブルであってもよい。支持構造は、例えば、投影システムに対して、パターニング機器を所望の位置に確実に位置させることができる。「レチクル」または「マスク」という用語が本明細書内のどこかで使用されている場合には、もっと一般的な用語である「パターニング機器」と同じものであると見なすことができる。
【0018】
本明細書で使用する「パターニング機器」という用語は、放射線ビームを、基板の目標部分にパターンを生成するようなその断面図のパターンの形にするために使用することができる任意の機器を指すものと広義に解釈すべきである。放射線ビームに与えられたパターンは、例えば、パターンが位相シフト・フィーチャまたはいわゆる補助フィーチャを含んでいる場合には、基板の目標部分の所望のパターンに正確に対応しない場合があることに留意されたい。一般的に、放射線ビームに与えられたパターンは、集積回路のような目標部分で生成されるデバイスの特定の機能層に対応する。
【0019】
パターニング機器は透過性のものであっても反射性のものであってもよい。パターニング機器の例としては、マスク、プログラマブル・ミラー・アレイ、およびプログラマブルLCDパネル等がある。マスクはリソグラフィで周知のものであり、2進交互位相シフトおよび減衰位相シフトおよび種々のハイブリッド・マスク・タイプのようなマスク・タイプを含む。プログラマブル・ミラー・アレイの一例は、異なる方向に入射放射線ビームを反射するように、それぞれを個々に傾斜させることができる小さなミラーのマトリックス配置を使用する。傾斜したミラーは、ミラー・マトリックスにより反射した放射線ビームをあるパターンの形にする。
【0020】
本明細書で使用する「投影システム」という用語は、使用する露光放射線、または浸漬液の使用または真空の使用のような他の要因に適している屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁光学システムおよび静電光学システムまたはこれらの任意の組合わせを含む任意のタイプの投影システムを含むものとして広義に解釈すべきである。本明細書内のどこかで「投影レンズ」という用語が使用されている場合には、もっと一般的な用語である「投影システム」と同じものであると見なすことができる。
【0021】
本明細書で説明する場合には、装置は、透過性タイプのもの(例えば、透過性マスクを使用する)である。別の方法としては、装置は反射性タイプのもの(例えば、上記タイプのプログラマブル・ミラー・アレイを使用する、または反射性マスクを使用する)であってもよい。
【0022】
リソグラフィ装置は、2つ(二重ステージ)またはもっと多くの基板テーブル(および/または2つ以上のマスク・テーブル)を有するタイプであってもよい。このような「多重ステージ」機械の場合には、追加のテーブルを並列に使用することができ、または準備工程を、1つまたは複数の他のテーブルを露光に使用しながら、1つまたは複数のテーブル上で実行することができる。
【0023】
図1を参照すると、照明装置ILは、放射線源SOから放射線ビームを受光する。この放射線源およびリソグラフィ装置は、例えば、放射線源がエキシマ・レーザの場合のように、別々の構成であってもよい。このような場合、放射線源は、リソグラフィ装置の一部を形成するものとは見なされず、放射ビームは、例えば、適当な方向づけミラーおよび/またはビーム・エクスパンダを備えるビーム供給システムBDの助けを借りて、放射線源SOから照明装置ILに通過する。他の場合、放射線源は、例えば、放射線源が水銀ランプである場合のように、リソグラフィ装置の一部であってもよい。放射線源SOと照明装置ILは、必要な場合には、ビーム供給システムBDと一緒に放射システムと呼ぶ場合もある。
【0024】
照明装置ILは、放射線ビームの角度輝度分布を調整するための調整手段AMを備えることができる。通常、照明装置の瞳面内の輝度分布の少なくとも外部および/または内部半径範囲(通常、それぞれσアウタおよびσインナと呼ばれる)を調整することができる。さらに、照明装置ILは、インテグレータINおよびコンデンサCOのような種々のタイプの他の構成要素を備えることができる。照明装置は、その断面で所望の均一性および輝度分布を達成する目的で、放射線ビームを調整するために使用することができる。
【0025】
放射線ビームPBは、支持構造(例えば、マスク・テーブルMT)上に保持されているパターニング機器(例えば、マスクMA)上に入射し、パターニング機器によりパターン化される。マスクMAを横切った後で、放射線ビームPBは投影システムPLを通過し、投影システムPLはビームの焦点を基板Wの目標部分C上に結ぶ。以下にさらに詳細に説明する浸漬フードIHは、投影システムPLの最終素子と基板Wとの間の空間に浸漬液を供給する。
【0026】
第2の位置決め装置PWおよび位置センサIF(例えば、干渉計装置、リニア・エンコーダまたは容量性センサ)により、例えば、放射線ビームPBの通路内の異なる目標部分Cを位置決めするために、基板テーブルWTを正確に移動することができる。同様に、第1の位置決め装置PMおよびもう1つの位置センサ(
図1に明示的に示されていない)を、例えば、マスク・ライブラリからの機械的検索の後、または走査中に、放射線ビームPBの通路に対してマスクMAを正確に位置決めするために使用することができる。一般的に、マスク・テーブルMTは、第1の位置決め装置PMの一部を形成しているロング・ストローク・モジュール(粗動位置決め)およびショート・ストローク・モジュール(微動位置決め)により移動させることができる。同様に、基板テーブルWTは、第2の位置決め装置PWの一部を形成しているロング・ストローク・モジュールおよびショート・ストローク・モジュールにより移動させることができる。ステッパの場合には(スキャナとは反対に)、マスク・テーブルMTをショート・ストローク・アクチュエータだけに接続することもできるし、または固定することもできる。マスクMAおよび基板Wは、マスク・アラインメント・マークM1、M2および基板アラインメント・マークP1、P2により整合することができる。図に示すように、基板アラインメント・マークは、専用の目標部分を占めているが、これらのマークは目標部分(スクライブ・レーン・アラインメント・マークと呼ばれる)間の空間内に位置させることもできる。同様に、マスクMA上に2つ以上のダイが位置している場合には、マスク・アラインメント・マークをダイの間に位置させることができる。
【0027】
図の装置は下記のモードのうちの少なくとも1つで使用することができる。
1.ステップ・モードの場合には、マスク・テーブルMTおよび基板テーブルWTは本質的に固定されていて、一方、投影ビームに与えられた全パターンが、1回で(すなわち、1回の静的露光で)目標部分C上に投影される。基板テーブルWTは、次に、Xおよび/またはY方向に動かされ、そのため異なる目標部分Cを露光することができる。ステップ・モードの場合には、露光フィールドの最大サイズにより1回の静的露光で画像形成される目標部分Cのサイズが制限される。
【0028】
2.走査モードの場合、マスク・テーブルMTおよび基板テーブルWTは同期状態で走査され、一方、投影ビームに与えられたパターンが、目標部分C上に投影される(すなわち、1回の動的露光)。マスク・テーブルMTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、拡大(縮小)および投影システムPLの画像の逆特性により決定することができる。走査モードの場合には、露光フィールドの最大サイズにより1回の動的露光の際の目標部分の(走査方向でない方向の)幅が制限され、一方、走査運動の長さにより目標部分の(走査方向の)高さが決まる。
【0029】
3.他のモードの場合、マスク・テーブルMTは、プログラマブル・パターニング機器を保持する本質的に固定状態に維持され、基板テーブルWTは、放射ビームに与えられたパターンの形が目標部分C上に投影されている間に移動または走査される。このモードの場合、通常、パルス放射線源が使用され、プログラマブル・パターニング機器が、基板テーブルWTの各運動の後で、または走査中の連続放射パルスの間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上記タイプのプログラマブル・ミラー・アレイのようなプログラマブル・パターニング機器を使用し、マスクを使用しないリソグラフィに容易に適用することができる。
【0030】
上記の使用モードの組合わせおよび/または変更したもの、または全然異なる使用モードを使用することもできる。
【0031】
図4は、局在化液体供給システムによるもう1つの浸漬リソグラフィ解決方法を示す。液体は、投影システムPLのどちらかの側上の2つの溝入口INを通して供給され、入口INの外側に半径方向に配置されている複数の個々の出口OUTを通して除去される。入り口INおよび出口OUTは、その中央に孔部を有し、投影ビームが投影される1つの平面内に配置することができる。液体は投影システムPLの一方の側上の1つの溝入口INを通して供給され、投影システムPLの他方の側上の複数の個々の出口OUTを通して除去され、投影システムPLと基板Wとの間に液体の薄いフィルムの流れを形成する。入口INおよび出口OUTを使用するための組合わせの選択は、基板Wの運動方向により異なる(入口INおよび出口OUTの他の組合わせは作動しない)。
【0032】
今までに提案された局在化液体供給システム解決方法によるもう1つの浸漬リソグラフィの解決方法は、投影システムの最終素子と基板テーブルとの間の空間の境界の少なくとも一部に沿って延びるシール部材を含む液体供給システムを提供する方法である。
図5はこのような解決方法を示す。シール部材は、XY面内の投影システムに対してほぼ固定されているが、Z方向(光軸の方向)にある程度相対運動を行うことができる。シールはシール部材と基板の表面との間に生成される。
【0033】
図5を参照すると、リザーバ10は、投影システムの画像フィールドの周囲の基板に対して接点のないシールを形成し、そのため液体が閉じ込められ、基板表面と投影システムの最終素子との間の空間を満たす。リザーバは、投影システムPLの最終素子の下および周囲に位置するシール部材12により形成される。液体は投影システムの下の空間およびシール部材12内の空間に入る。シール部材12は、投影システムの最終素子の少し上を延びていて、液体レベルは、最終素子の上に上昇し、そのため液体のバッファが形成される。シール部材12は、内周縁部を有し、この内周縁部は、ある実施例の場合には、上端部のところで投影システムまたはその最終素子の形状と密着していて、例えば丸い形をしていてもよい。底部のところで、内周縁部は、例えば長方形の画像フィールドの形状に密着している。しかし、必ずしもそうである必要はない。
【0034】
液体は、シール部材12の底部と基板Wの表面との間のガス・シール16によりリザーバ内に閉じ込められる。ガス・シールは、例えば空気または合成空気のようなガスにより形成されるが、ある実施例の場合には、N2(窒素ガス)または他の不活性ガスが、圧力により入り口15を通してシール部材12と基板との間のギャップ内に導入され、第1の出口14を通して抽出される。ガスの入り口15上の過度の圧力、第1の出口14上の真空レベルおよびギャップの幾何学的形状は、液体を閉じ込める内側への高速ガス流ができるように配置されている。引用によりその全文を本明細書に援用するものとする米国特許出願第10/705,783号にこのようなシステムが開示されている。
【0035】
図6および
図6の一部の拡大図である
図7は、本発明のある実施例による液体除去装置20を示す。液体除去装置20は、若干低い圧力pcに維持されていて、浸漬液で満たされているチャンバを備える。チャンバの下面は、例えば、5〜50μmの範囲内の直径dholeを有する多数の小さな孔部を有する薄板21により形成されていて、例えば、基板Wの表面のような液体が除去される表面の上50〜300μmの範囲内の高さhgapのところに維持される。ある実施形態の場合には、有孔板21は少なくとも若干親水性である。すなわち、例えば、水のような浸漬液に対して90度未満の接触角を有する。
【0036】
低圧pcは、有孔板21内の孔部内に形成されたメニスカス22が、ガスが液体除去装置のチャンバ内に下降するのを防止するようなレベルの圧力である。しかし、板21が基板W上の液体と接触すると、流れを制限するメニスカスがなくなり、液体は液体除去装置のチャンバ内に自由に流入することができる。このような装置は、基板Wの表面から大部分の液体を除去することができるが、図に示すように、液体の薄いフィルムは残る。
【0037】
液体の除去を改善し、または最大にするために、有孔板21はできるだけ薄くなければならないし、液体内の圧力pgapとチャンバ内の圧力pcとの間の圧力差はできるだけ大きくなければならないが、一方、pcとギャップ内のガスの圧力Pairの間の圧力差は十分に低く、有意な量のガスが液体除去装置20内に下降するのを防止できなければならない。液体除去装置内へのガスの下降はいつでも防止できるものではないが、有孔板は、振動を起こすかもしれない大きな均一でない流れを防止する。電鋳、フォトエッチングおよび/またはレーザカットで作ったマイクロ篩を、板21として使用することができる。オランダのEerbeekのStork Veco B.V.社から適当な篩が市販されている。孔部のサイズが使用中にかかる圧力差でメニスカスを維持するのに適当な大きさである限りは、他の多孔板または多孔性材料の固体ブロックも使用することができる。
【0038】
図8は、本発明の特定の実施例による浸漬フードIHのシール部材12が内蔵する液体除去装置である。
図8は、投影システムPL(
図8に図示せず)の露光フィールドの少なくとも一部を囲むリング(本明細書で使用する場合には、円形でも、長方形でもまたは任意の他の形をしていてもよい)を形成しているシール部材12の一方の側面の断面図である。この実施例の場合には、液体除去装置20は、シール部材12の下面の最も内側の縁部近くのリングの形をしているチャンバ31により形成されている。チャンバ31の下面は、すでに説明したように、多孔板30により形成されている。リング状のチャンバ31は、チャンバから液体を除去し、所望の低圧を維持するために、適当な1台のポンプまたは複数のポンプに接続している。使用中、チャンバ31は液体で満たされるが、図面を分かりやすくするためにこの図では空になっている。
【0039】
リング状のチャンバ31の外部には、ガス抽出リング32およびガス供給リング33が位置する。ガス供給リング33は、その下部に狭いスリットを有し、例えば、空気、人工の空気またはフラッシング・ガスのようなガスを、スリットから流出するガスがガス・ナイフ34を形成するような圧力で供給する。ガス・ナイフを形成しているガスは、ガス抽出リング32に接続している適当な真空ポンプにより抽出され、そのため結果としてのガス流が、残った液体を内側に押して、そこで液体は、浸漬液の蒸気および/または液体の小滴に耐えることができなければならない液体除去装置および/または真空ポンプにより除去することができる。しかし、大部分の液体は液体除去装置20により除去されるので、真空システムを介して除去された少量の液体は、振動を起こす恐れがある不安定な流れ
を発生しない。
【0040】
本明細書においては、チャンバ31、ガス抽出リング32、ガス供給リング33、および他のリングをリングと呼ぶが、これらのリングは露光フィールドを囲んでいる必要もないし、完全なリングでなくてもよい。ある実施例の場合には、このような入口および出口は、単に円形であっても、長方形であっても、例えば、
図2、
図3および
図4に示すように、露光フィールドの1つまたは複数の側面に沿って部分的に延びる他のタイプの素子であってもよい。
【0041】
図8の装置の場合には、ガス・ナイフを形成しているガスの大部分は、ガス抽出リング32を通して抽出されるが、ガスの一部は浸漬フードの周囲の環境内に流れることができ、干渉計の位置測定システムIFを擾乱する恐れがある。このような擾乱は、
図8Aに示すように、ガス・ナイフの外部に追加のガス抽出リング35を設置することにより防止することができる。
【0042】
この実施例の場合には、液体除去システムは、基板Wまたは基板テーブルWTの表面の上50〜300μmの高さのところで、全部でなくても大部分の浸漬液を除去することができるので、浸漬液を閉じ込めるために気体軸受を使用する場合と比較すると、シール部材の垂直位置に対する厄介な要件が低減する。このことは、シール部材を、もっと簡単な作動および制御システムに垂直に設置することができることを意味する。このことは、また、基板テーブルおよび基板の平面度に対する要件が低減し、基板テーブルWTの上表面に設置しなければならないセンサのような機器の組立てがより簡単になることも意味する。
【0043】
蒸発によらないで大部分の液体を除去できるということは、また、温度勾配が緩やかになり、いわゆる印刷誤差を起こす恐れがある基板の熱による変形を避けることができることを意味する。例えば、約100〜500mbarの圧力降下および約20〜200リットル/分の流速と組合わせて、約50〜75%の相対湿度でガス・ナイフ内で湿ったガスを使用することにより、蒸発をさらに最小限度に低減することもできる。
【0044】
図9〜
図11は、本発明のこの実施例の変形例を示す。これらの変形例は、多孔板30の形状に関する点を除けば、上記実施例と同じである。
【0045】
図9に示すように、多孔板30aは、少しの角度をつけて設置することができ、そのためこの板は外部の方が高い。露光フィールドの中心から遠ざかるにつれて増大する多孔板30aと基板Wまたは基板テーブルWT間のギャップは、メニスカス11aの形状を変化させ、液体内に浸漬する面積が多かれ少なかれ一定の幅を確実に有するのを助ける。
【0046】
図10および
図11に示す変形例の場合には、角張ったコーナー35は、角張ったコーナーのところの表面張力により保持されるメニスカス11aの位置を制限するために使用される。角張ったコーナーは、
図10に示すように鈍角であってもよいし、
図11に示すように直角であってもよい。ガス抽出リング32の形は必要に応じて調整することができる。
【0047】
図12は、
図8に類似の図面であり、発明の他の特定の実施例によるシール部材を示す。
【0048】
図12の実施例の場合には、別々のアクチュエータの代わりに、シール部材12の少なくとも一部を支持するために、液体軸受36を使用している。液体軸受または動圧軸受36は、周知の方法で液体供給チャンバ37に圧力下で供給される浸漬液により形成される。液体は、二相流を処理することができる適当なポンプ(図示せず)に接続している二相抽出チャンバ38を介して除去される。ガス・ナイフ34は、上記実施例と同じ方法で浸漬液を閉じ込める。
【0049】
液体軸受36を使用することにより、シール部材12を基板Wまたは基板テーブルWTの上約50〜200μmの高さのところに維持することができ、すでに説明したように、制御および平面度に対する要件が低減される。同時に、二相抽出によりシール部材12内に形成しなければならないチャンバの数、およびシール部材に設置しなければならないホースの数が少なくてすむようになる。
【0050】
多孔板30は、その中へのガスおよび液体の流れを制御するために、二相抽出チャンバ38の底部を横切って設置されている。この板内の孔のサイズ、数および配置を適当に選択することにより、二相流が安定し、振動を起こす恐れがある不均一な流れが発生するのを避けることができる。この実施例でのように、マイクロ篩を板30として使用することができる。
【0051】
上記実施例のところで説明したように、浸漬液11のメニスカスの位置を制御するために、傾斜または鋭角の縁部を多孔板30に設けることができる。この場合も、高い湿度によりすべての残留液体を除去することができ、大きな流れのガス・ナイフ34およびガス・ナイフの圧力もメニスカスの位置を制御するために使用することができる。
【0052】
本発明のこの実施例および他の実施例の場合には、浸漬液内に位置するシール部材の一部の形状は、シール部材12の垂直方向の運動を所望する程度減速するために調整することができる。より詳細に説明すると、狭い通路内に液体11を閉じ込めるシール部材の一部の幅Lda、すなわち面積は、所望の減速を行うことができるように選択することができる。減速の程度は、減速領域の面積、基板Wまたは基板テーブルWT上のその高さhda、浸漬液の密度ρ、およびその粘度ηにより決まる。減速をすることにより、例えば、不均一な液体の流れによる振動によるシール部材の位置の変動を低減することができる。
【0053】
多孔板41は、また、
図13に示すように、オーバーフロー・ドレン40内の流れを制御するためにも使用することができる。
図13のオーバーフロー・ドレンは、本明細書で説明する本発明のすべての実施例で使用することができる。オーバーフロー・ドレンは、シール部材12の中心から比較的大きな半径のところのシール部材12の上表面に設置される。投影システムPLの最終素子と基板Wとの間の空間が浸漬液で溢れた場合には、過度の液体は、シール部材12の頂部上にまたドレン40内に流れ込む。ドレン40は、通常、液体で満たされていて、若干低い圧力に維持される。多孔板41は、ガスがオーバーフロー・ドレンに下降するのを防止するが、必要な場合には、液体は流出することができる。また、多孔板は、水平方向に対して小さな角度に設置することができる。
【0054】
また、多孔性分離装置を、浸漬フードIHからの二相流を受け入れる液体ドレン・システム内に設置されているマニフォールド50で使用することもできる。
図14に示すように、二相流51は、液体およびガスが分離されるマニフォールド・チャンバ51内に放出される。ガスは、適当な真空ポンプおよび圧力コントローラにより約−0.1bargの圧力に維持されているガス出口52によりマニフォールドの頂部から除去される。液体除去パイプ53は、マニフォールドの底部近くまで延びていて、多孔板54により閉ざされている。液体除去パイプ53は、例えば、約−0.5bargのような多孔板54の泡立ち点以下の圧力に維持される。この配置により、マニフォールド内の液体レベルがパイプ53の底部以下にたとえ下がっても、ガスはその中に流入しないで、浸漬フードIHに伝搬し擾乱を起こすかもしれないマニフォールド50の圧力の望ましくない変動を防止する。
【0055】
図15は、マニフォールドの変形例を示す。下記の点を除けば
図14と同じこの変形例の場合には、マニフォールドはその周囲から熱的に絶縁されている。マニフォールドを通る真空の流れにより、浸漬液が蒸発し、冷却が行われる。マニフォールドを基準または計測フレームのようなリソグラフィ装置の感温部の近くにまたは熱的に接触状態に設置すると、このような冷却により望ましくない影響が起こる場合がある。
【0056】
それ故、マニフォールドは、内部タンク50aと外部タンク50bの壁部間に例えば水のような温度が制御された液体の流れを含む内部タンク50aおよび外部タンク50bからなる二重壁タンクとして形成される。温度が制御された液体は、入り口55から流入し、出口56から流出する。一連のバッフル57が2つのタンクの壁部間の空間内に配置されていて液体が確実に停滞しないようにしている。二重壁のタンクによる断熱材を通して熱が伝導するのを防止するために、バッフルは内部タンクにも外部タンクにも接触していない。温度が制御された液体の流速は、外部タンク50bの温度偏差が確実に任意の近くの感温構成要素の制限内にあるように決定される。エア・ギャップまたは追加の断熱材も、好適には、外部タンクと任意の近くの感温構成要素間に設置することが好ましい。
【0057】
図16は、本発明の実施例で使用することができる液体供給システム60を示す。この液体供給システムは、直列に例えば超純粋な液体のfab供給のような浸漬液源61と、定流制限器62と、可変流制限器63と、浸漬フードIHの直前に位置する外部タップ、可変流制限器65および定流制限器66を有する圧力調整器64とを備える。圧力調整器64用のパイロット・ラインは、可変流制限器65の下流に接続しているので、定流制限器66への入力は一定の圧力で供給され、そのため浸漬フードへの流れは定圧および定速となる。
【0058】
図17は、もう1つの液体供給システム60’を示す。この液体供給システムは、下記の点を除けばシステム60と同じである。調整器64および固定制限器66の代わりに、順方向圧力調整器67および逆方向圧力調整器68が設置されている。また、2つの圧力計69a、69bも設置されている。順方向圧力調整器67は、その下流の圧力を所定のレベルに維持し、逆方向圧力調整器はその上流の圧力を所定のレベルに維持する。両方の場合、流速は無関係である。それ故、可変流制限は、一定の上流圧力および一定の下流圧力で動作して不安定になるのを防止する。流速は、監視のために使用することもできる圧力センサ69a、69bにより、圧力調整器67、68および可変流制限器65が設定した圧力レベルを調整することにより調整することができる。
【0059】
リソグラフィ装置においては、基板は、その主表面上に多数の小さな突起または隆起を有する直径が基板と同じ平らな板を備える基板ホルダ(よく突起板、隆起板またはチャックとも呼ばれる)により保持される。基板ホルダは、基板テーブル(ミラー・ブロック)の凹部内に位置していて、基板は基板ホルダの頂部上に置かれる。基板テーブルとホルダとの間の空間、およびホルダと基板との間の空間が真空になり、そのため基板およびホルダは、基板上の大気圧により正しい位置に固定される。基板テーブルの凹部は、基板サイズおよび設置のバラツキに対応するために、当然基板ホルダおよび基板よりも若干大きい。それ故、浸漬液を収集することができる狭い溝すなわちトレンチが基板の縁部の周囲に設けられている。溝すなわちトレンチ内に位置している場合には、液体は悪影響を及ばさないが、浸漬フード内の気体軸受またはガス・ナイフにより溝から吹きこぼれる場合がある。浸漬フードの下の液体メニスカスがそれによる基板または基板テーブル上の液滴と遭遇した場合、泡を発生する恐れがある。
【0060】
基板ホルダは、一般的に、ZerodurまたはULEのような熱膨張係数が低い材料からできている。いくつかのこのような材料は多孔性であり、その場合、表面の孔部は液体で満たされ、汚染物が孔部に入るのを防止する。しかし、基板ホルダの縁部および/または周辺領域の周囲の表面の孔部を液体で満たさないことが提案されている。この場合、基板ホルダを浸漬リソグラフィ装置で使用する場合には、溝に入る浸漬液は基板ホルダの孔部に入り、気体軸受またはガス・ナイフにより吹きこぼれない。基板ホルダが開いたセル状の構造を有している場合には、その孔部に入っている浸漬液は、基板およびホルダをテーブルに固定している真空システムにより除去することができる。
【0061】
図18に示すように、親水性の壁部72を有する細い毛細管71を介して液体だけが抽出される容積に接続している抽出チャネル70は、例えば、水のような液体が適当な低い圧力pにより抽出されるが、液体が容積内に存在しない場合には、メニスカス73を、例えば空気のようなガスが進入するのを防止するように配置することができる。反対に、
図19に示すように、疎水性の壁部82を有する毛細管81を介して容積に接続している抽出チャネル80は、例えば空気のようなガスを抽出するが、例えば、水のような液体が存在する場合には、メニスカス83はそれ以上の流れを防止する。これらの配置のために必要な低圧pの正確なレベルは、関連する液体およびガス、毛細管のサイズおよび毛細管の壁部への液体の接触角により異なる。しかし、幅0.05mmの毛細管の場合には、水または空気を選択的に抽出することができるようにするには、20mbarの低圧が適している。
【0062】
このタイプの抽出装置は、リソグラフィ装置の任意の所望の部分から液体またはガスを選択的に除去するために使用することができる。
図20a〜dは、特に有利な使用方法を示す。この場合、液体抽出チャネル70およびガス抽出チャネル80は、両方とも、基板Wの縁部の周囲の基板テーブルWTのトレンチに接続している。基板の縁部が投影レンズの下に位置する場合、すなわちトレンチが液体で満たされている場合には、チャネル70は液体を抽出し、そのため液体は下方に流れる。これにより、例えば、不完全な充填により、トレンチ内に位置するすべての泡が下方に吸い取られる。これにより泡はある位置に送られ、そこでチャネル80を介してガスを抽出することができるが、泡はチャネル70には入らない。基板の縁部がもはや投影レンズの下に位置していない場合には、トレンチは急速に空になる。このようにして、泡の流出が画像形成の干渉するのが防止される。液体の流れとガスの流れとを分離することにより、振動を起こす恐れがある不安定な状況を避けることができ、蒸発による冷却効果を最小限度に低減することができる。
【0063】
欧州特許出願第03257072.3号に、ツインまたは二重ステージ浸漬リソグラフィ装置のアイデアが開示されている。このような装置は、基板を支持するための2つのテーブルを備える。浸漬液を使用しないで、第1の位置でテーブルにより平面度測定が行われ、浸漬液を使用して第2の位置でテーブルにより露光が行われる。別の方法としては、装置はテーブルを1つだけ有する。
【0064】
本明細書において、IC製造の際のリソグラフィ装置の使用について特に参照する場合があるが、本発明のリソグラフィ装置は、集積光学システム、磁気領域メモリ用の案内および検出パターン、フラットパネル・ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造のような他の用途にも使用することができることを理解されたい。当業者であれば、このような別の用途の場合、本明細書で使用する「ウェハ」または「ダイ」という用語は、それぞれもっと一般的な用語である「基板」または「目標部分」と同義語であると見なすことができることを理解することができるだろう。本明細書における基板は、例えば、トラック(通常、基板にレジストの層を塗布し、露光したレジストを現像するツール)、計測ツールおよび/または検査ツールのような露光の前後で処理することができる。適用できる場合には、本明細書の開示を、上記および他の基板処理ツールに適用することができる。さらに、基板を、例えば、多層ICを形成するために2回以上処理することができる。そのため、本明細書で使用する基板という用語は、多重処理層をすでに含んでいる基板を意味する場合もある。
【0065】
本明細書で使用する「放射線」および「ビーム」という用語は、紫外線(UV)放射線(例えば、約365、248、193、157または126nmの波長を有する)を含むすべてのタイプの電磁放射線を含む。
【0066】
「レンズ」という用語は、前後関係からそう解釈できる場合には、屈折性および反射性光学構成要素を含む種々のタイプの光学構成要素のうちの任意のものまたは組合わせを意味する。
【0067】
今まで本発明の特定の実施例について説明してきたが、本発明は上記以外の方法でも実行することができることを理解することができるだろう。例えば、適用できる場合には、本発明は、上記方法を記述している機械読み取り可能命令の1つまたは複数のシーケンスを含むコンピュータ・プログラムの形をとることもできるし、またはその内部にこのようなコンピュータ・プログラムを記憶しているデータ記憶媒体(例えば、半導体メモリ、磁気または光ディスク)の形をとることもできる。
【0068】
本発明は、任意の浸漬リソグラフィ装置、特に上記タイプを含むがこれに限定されない浸漬リソグラフィ装置に適用することができる。この装置で使用する浸漬液は、使用する露光放射線の所望の特性および波長により異なる組成を有することができる。193nmの露光波長の場合には、超純水または水をベースとする組成を使用することができ、そのため浸漬液は、場合により水と呼ばれ、親水性、疎水性、湿度等のような水に関連する用語を使用することができる。しかし、本発明の実施形態は、他のタイプの液体と一緒に使用することもでき、その場合には、このような水に関連する用語を、使用する浸漬液に関連する等価の用語に置き換えることができると考えられたい。
【0069】
上記説明は例示としてのものであって本発明を制限するものではない。それ故、当業者であれば、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなしに、上記発明を種々に修正することができることを理解することができるだろう。