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特許6288772モード合分波器及びモード多重通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288772
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】モード合分波器及びモード多重通信システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/125 20060101AFI20180226BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20180226BHJP
   G02B 6/14 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   G02B6/125 301
   G02B6/12 311
   G02B6/14
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-124435(P2014-124435)
(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公開番号】特開2015-26070(P2015-26070A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年7月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-127079(P2013-127079)
(32)【優先日】2013年6月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】半澤 信智
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰志
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆
(72)【発明者】
【氏名】辻川 恭三
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 晋聖
【審査官】 下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−037017(JP,A)
【文献】 特開2010−088110(JP,A)
【文献】 特開2004−191410(JP,A)
【文献】 特開2004−157506(JP,A)
【文献】 特開2010−175646(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/124816(WO,A1)
【文献】 米国特許第04741586(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B6/12−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LP01モードを伝搬する第1の導波路と、
LP11bモードを伝搬する第2の導波路と、
予め定められた第1の高次モード及び第2の高次モードを伝搬する第3の導波路と、
LP01モードを伝搬する第4の導波路と、
LP11aモードを伝搬する第5の導波路と、
前記第1の導波路のLP01モードの光と前記第3の導波路の前記第1の高次モードの光を結合させる第1の結合部と、
前記第2の導波路のLP11bモードの光と前記第3の導波路の前記第2の高次モードの光を結合させる第2の結合部と、
前記第4の導波路のLP01モードの光と前記第5の導波路のLP11aモードの光を結合させる第3の結合部と、
前記第5の導波路と前記第2の導波路を接続し、前記第5の導波路のLP11aモードの光をLP11bモードの光に回転させて前記第2の導波路に入力し、前記第2の導波路のLP11bモードをLP11aモードに回転させて前記第5の導波路に入力するモード回転子と、
を備え、
前記第1の高次モードは、LP1Xaモード(ただし、Xは1以上の整数である。)及びLP0Yモード(ただし、Yは2以上の整数である。)の少なくとも1つであり、
前記第2の高次モードは、LPZ1モード(ただし、Zは2以上の整数である。)である、モード合分波器。
【請求項2】
前記第1の導波路、前記第2の導波路及び前記第3の導波路は、同一平面に形成された高さの等しい第1の平行導波路によって形成され、
前記第4の導波路及び前記第5の導波路は、同一平面に形成された高さの等しい第2の平行導波路によって形成され、
前記モード回転子は、同一平面に形成された高さの等しい第6の導波路によって形成され、
前記第1の平行導波路と前記第2の平行導波路と前記第6の導波路とが同一平面に形成される、
請求項1に記載のモード合分波器。
【請求項3】
前記第6の導波路は、断面の少なくとも一部に溝が形成されたトレンチ層を有する請求項2に記載のモード合分波器。
【請求項4】
前記第6の導波路は、断面内に非対称性を持たせた導波路を有する請求項2に記載のモード合分波器。
【請求項5】
前記LP1Xaモード及び前記LP0Yモードの少なくとも1つはLP11aモードであり、
前記LPZ1モードはLP21モードである、
請求項1から4のいずれかに記載のモード合分波器。
【請求項6】
波長多重信号を生成する複数の波長多重信号生成部と、
前記第1の導波路、前記第3の導波路及び前記第4の導波路のそれぞれの一端に前記波長多重信号生成部が接続され、前記波長多重信号生成から入力された波長多重信号をモード多重して前記第3の導波路の他端から出力する、請求項1から5のいずれかに記載のモード合分波器と、
を備える送信装置。
【請求項7】
モード多重された波長多重信号が前記第3の導波路の一端に入力され、当該入力信号をモードごとに分波した波長多重信号を、前記第1の導波路、前記第3の導波路及び前記第4の導波路のそれぞれの他端から出力する請求項1から5のいずれかに記載のモード合分波器と、
前記モード合分波器から出力された波長多重信号を、波長ごとに受信する波長多重信号受信部と、
を備える受信装置。
【請求項8】
モード多重された波長多重信号を送信する請求項6に記載の送信装置と、
前記送信装置からのモード多重された波長多重信号を受信する請求項7に記載の受信装置と、
前記送信装置及び前記受信装置を接続し、前記第3の導波路の伝搬するモード数以上のモード数が伝搬可能なマルチモード光ファイバと、
を備えるモード多重通信システム。
【請求項9】
LP01モードを伝搬する第1の導波路と、
LP11bモードを伝搬する第2の導波路と、
予め定められた第1の高次モード及び第2の高次モードを伝搬する第3の導波路と、
LP01モードを伝搬する第4の導波路と、
LP11aモードを伝搬する第5の導波路と、
前記第5の導波路と前記第2の導波路を接続し、前記第5の導波路のLP11aモードの光をLP11bモードの光に回転させて前記第2の導波路に入力し、前記第2の導波路のLP11bモードをLP11aモードに回転させて前記第5の導波路に入力するモード回転子として機能する第6の導波路と、
前記第1の導波路のLP01モードの光と前記第3の導波路の前記第1の高次モードの光を結合させる第1の結合部と、
前記第2の導波路のLP11bモードの光と前記第3の導波路の前記第2の高次モードの光を結合させる第2の結合部と、
前記第4の導波路のLP01モードの光と前記第5の導波路のLP11aモードの光を結合させる第3の結合部と、
を備えるモード合分波器の設計方法であって、
前記第3の導波路、前記第1の導波路及び前記第2の導波路の導波路幅を決定し、前記第1の結合部及び前記第2の結合部の相互作用長を決定する第1の平行導波路部設計手順と、
前記第5の導波路及び前記第4の導波路の導波路幅を決定し、前記第3の結合部の相互作用長を決定する第2の平行導波路部設計手順と、
使用波長帯においてLP11aモード及びLP11bモードを伝搬するように、前記第6の導波路の導波路幅を決定し、前記第6の導波路内で伝搬モードが回転するように前記第6の導波路に備わる溝の位置を決定し、使用波長帯におけるLP11aモードからLP11bモードへの結合効率が所望の値以上になるように、前記第6の導波路の相互作用長を決定するモード回転子設計手順と、
を順に有し、
前記第1の高次モードは、LP1Xaモード(ただし、Xは1以上の整数である。)及びLP0Yモード(ただし、Yは2以上の整数である。)の少なくとも1つであり、
前記第2の高次モードは、LPZ1モード(ただし、Zは2以上の整数である。)である、モード合分波器の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝搬モード数が3以上である光ファイバケーブルにおいて伝搬モードそれぞれをキャリアとして利用する多重方法であるモード多重伝送に必要なモード合波器およびモード分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光ファイバネットワークにおけるトラフィックは増大しており、伝送速度の高速化や波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)技術による波長多重数の増加、多値変調など様々な手法を用いて伝送容量の拡大を図ってきた。しかし、将来的に既設の伝送路、従来の伝送方式を用いての伝送容量の拡大が困難になると予想されるため、波長領域の拡大、新たな伝送ファイバ、及び新たな伝送方式が検討されている。
【0003】
波長領域を拡大する方法として、現在利用されていない波長帯を利用して、広波長域のWDMを実現し伝送容量を増大させる検討もなされている。しかし、伝送損失が波長帯により異なるため、使用できる波長帯は限定されると考えられ、さらに、広波長域にわたり増幅が可能な光増幅器も実現が困難なため、広波長域のWDMが実用に至るためには多くの課題がある。
【0004】
新たな伝送ファイバに関しては、ファイバ非線形による波形歪を抑圧するために実効断面積(Aeff)が拡大できるファイバ構造が提案されている。ファイバ非線形の抑圧はファイバへ入力できる入力パワーの増加につながり、入力パワーの増加が可能になれば伝送速度の高速化、更なる多値化が可能になるなどの優位性が得られる。しかし、非特許文献1に示されるようにAeffの拡大は単一モード動作を前提としているため、曲げ損失と単一モード動作がトレードオフの関係にあることからAeffの大幅な拡大が困難という課題がある。
【0005】
新たな伝送方式に関しては、非特許文献2に示されている無線の伝送方式において周波数利用効率を向上させるために利用されている直交した周波数成分を利用するOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)や、非特許文献3に示されているようにMIMO(Multiple Input Multiple Output)をマルチモード光ファイバに適用することが検討されているが、送受信機において複雑な信号処理を必要とするため、演算処理の高速化などの課題がある。
【0006】
さらには、特許文献1に光ファイバの伝搬モードを利用した多重方法も提案されているが、所望の高次モードを励振する方法が提案されておらず、単一波長で利用することを前提としているため、大容量化の実現が困難という課題がある。光ファイバの伝搬モードを利用するためのモード分波器として非特許文献3に示されるように受光する位置を変化させてモードの分波を行う方法が提案されているが、多くの高次モードが存在する状況では、モード間の漏話が大きくなり、受光器の設計も複雑になるため、伝搬モードをキャリアとして利用するモード多重伝送においての利用については好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−288911号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】松井 他、“Single−mode photonic crystal fiber with low bending loss and Aeff of > 200 μm2 for ultra high−speed WDM transmission”、OFC2010、PDPA2.
【非特許文献2】Benn C. Thomsen、“MIMO enabled 40Gb/s transmission using mode division multiplexing in multimode fiber”、OFC2010、OthM6.
【非特許文献3】C. P. Tsekrekos、他、“Mode−selective spatial filtering for increased robustness in a mode group diversity multiplexing link”、OPTICS LETTERS、Vol.32、No.9、2007.
【非特許文献4】R.Ryf、他、“Optical Coupling Components for Spatial Multiplexing in Multi−Mode Fibers”、ECOC2011、Th.12.B.1.
【非特許文献5】N.Hanzawa、他、“Asymmetric parallel waveguide with mode conversion for mode and wavelength division multiplexing transmission”、OFC2012、OTu1l.4.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
伝搬モードが複数存在する光ファイバを利用して、光ファイバの伝搬モードそれぞれをキャリアとして利用するモード多重伝送において、既存のデバイスは基本モードでの動作が前提であるため、既存のファイバデバイスをそのまま用いてモード多重伝送を実現することは困難である。また、これまで提案されているモード合分波器は、分波効率が悪いため、長距離伝送や高速な信号の伝送が困難であり、また空間系を利用するため構成が複雑になるなどの課題がある。空間系を用いた方法では、非特許文献4に記載されているようにモードごとに高い分波効率を実現することが可能であるが、挿入損失が8dB以上と大きくデバイスの小型化が困難であるなどの課題もある。
【0010】
近年、非特許文献5に示されるように非対称平行導波路を用いた2モード合分波器が提案されており、非対称平行導波路を用いることで送受信端では基本モードのみで信号を扱うことが可能であり、既存のデバイスをそのまま用いることが可能になる。しかしながら、非特許文献5に記載の合分波器は2モードに限定されており、3モード多重を実現するための合分波方法に関しては提案されていない。3モード合分波器を光導波路で実現する場合、同一のチップ内で導波路の高さを変えた導波路を作製することが必要になる可能性があるが、導波路の高さを同一のチップ内で変えることは難しいという技術的な課題がある。
【0011】
本発明は、3モード以上のモード多重伝送を実現可能とする合分波器を導波路の高さが一定という制限がある光導波路で導波路の高さ方向にフィールド分布を持つ高次モードを励振し3モード以上のモード合分波器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明のモード合分波器は、
LP01モードを伝搬する第1の導波路と、
LP11bモードを伝搬する第2の導波路と、
予め定められた第1の高次モード及び第2の高次モードを伝搬する第3の導波路と、
LP01モードを伝搬する第4の導波路と、
LP11aモードを伝搬する第5の導波路と、
前記第1の導波路のLP01モードの光と前記第3の導波路の前記第1の高次モードの光を結合させる第1の結合部と、
前記第2の導波路のLP11bモードの光と前記第3の導波路の前記第2の高次モードの光を結合させる第2の結合部と、
前記第4の導波路のLP01モードの光と前記第5の導波路のLP11aモードの光を結合させる第3の結合部と、
前記第5の導波路と前記第2の導波路を接続し、前記第5の導波路のLP11aモードの光をLP11bモードの光に回転させて前記第2の導波路に入力し、前記第2の導波路のLP11bモードをLP11aモードに回転させて前記第5の導波路に入力するモード回転子と、
を備え、
前記第1の高次モードは、LP1Xaモード(ただし、Xは1以上の整数である。)及びLP0Yモード(ただし、Yは2以上の整数である。)の少なくとも1つであり、
前記第2の高次モードは、LPZ1モード(ただし、Zは2以上の整数である。)である
【0013】
本願発明のモード合分波器では、
前記第1の導波路、前記第2の導波路及び前記第3の導波路は、同一平面に形成された高さの等しい第1の平行導波路によって形成され、
前記第4の導波路及び前記第5の導波路は、同一平面に形成された高さの等しい第2の平行導波路によって形成され、
前記モード回転子は、同一平面に形成された高さの等しい第6の導波路によって形成され、
前記第1の平行導波路と前記第2の平行導波路と前記第6の導波路とが同一平面に形成されていてもよい。
【0014】
本願発明のモード合分波器では、前記第6の導波路は、断面の少なくとも一部に溝が形成されたトレンチ層を有していてもよい。
【0015】
本願発明のモード合分波器では、前記第6の導波路は、断面内に非対称性を持たせた導波路を有していてもよい。
【0016】
本願発明のモード合分波器では、前記LP1Xaモード及び前記LP0Yモードの少なくとも1つはLP11aモードであり、前記LPZ1モードはLP21モードでありうる。
【0017】
本願発明の送信装置は、
波長多重信号を生成する複数の波長多重信号生成部と、
前記第1の導波路、前記第3の導波路及び前記第4の導波路のそれぞれの一端に前記波長多重信号生成部が接続され、前記波長多重信号生成から入力された波長多重信号をモード多重して前記第3の導波路の他端から出力する、本発明のモード合分波器と、
を備える。
【0018】
本願発明の受信装置は、
モード多重された波長多重信号が前記第3の導波路の一端に入力され、当該入力信号をモードごとに分波した波長多重信号を、前記第1の導波路、前記第3の導波路及び前記第4の導波路のそれぞれの他端から出力する本発明のモード合分波器と、
前記モード合分波器から出力された波長多重信号を、波長ごとに受信する波長多重信号受信部と、
を備える。
【0019】
本願発明のモード多重通信システムは、
モード多重された波長多重信号を送信する本発明の送信装置と、
前記送信装置からのモード多重された波長多重信号を受信する本発明の受信装置と、
前記送信装置及び前記受信装置を接続し、前記第3の導波路の伝搬するモード数以上のモード数が伝搬可能なマルチモード光ファイバと、
を備える。
【0020】
本願発明のモード合分波器の設計方法は、
LP01モードを伝搬する第1の導波路と、
LP11bモードを伝搬する第2の導波路と、
予め定められた第1の高次モード及び第2の高次モードを伝搬する第3の導波路と、
LP01モードを伝搬する第4の導波路と、
LP11aモードを伝搬する第5の導波路と、
前記第5の導波路と前記第2の導波路を接続し、前記第5の導波路のLP11aモードの光をLP11bモードの光に回転させて前記第2の導波路に入力し、前記第2の導波路のLP11bモードをLP11aモードに回転させて前記第5の導波路に入力するモード回転子として機能する第6の導波路と、
前記第1の導波路のLP01モードの光と前記第3の導波路の前記第1の高次モードの光を結合させる第1の結合部と、
前記第2の導波路のLP11bモードの光と前記第3の導波路の前記第2の高次モードの光を結合させる第2の結合部と、
前記第4の導波路のLP01モードの光と前記第5の導波路のLP11aモードの光を結合させる第3の結合部と、
を備えるモード合分波器の設計方法であって、
前記第3の導波路、前記第1の導波路及び前記第2の導波路の導波路幅を決定し、前記第1の結合部及び前記第2の結合部の相互作用長を決定する第1の平行導波路部設計手順と、
前記第5の導波路及び前記第4の導波路の導波路幅を決定し、前記第3の結合部の相互作用長を決定する第2の平行導波路部設計手順と、
使用波長帯においてLP11aモード及びLP11bモードを伝搬するように、前記第6の導波路の導波路幅を決定し、前記第6の導波路内で伝搬モードが回転するように前記第6の導波路に備わる溝の位置を決定し、使用波長帯におけるLP11aモードからLP11bモードへの結合効率が所望の値以上になるように、前記第6の導波路の相互作用長を決定するモード回転子設計手順と、
を順に有し、
前記第1の高次モードは、LP1Xaモード(ただし、Xは1以上の整数である。)及びLP0Yモード(ただし、Yは2以上の整数である。)の少なくとも1つであり、
前記第2の高次モードは、LPZ1モード(ただし、Zは2以上の整数である。)である
【0021】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のモード合分波器は、第1の導波路と第3の導波路を備えるため、高さが一定の導波路を用いて、LP01モード光とLP11aモードなどの第1の多モード光の合分波を行うことができる。また、本発明のモード合分波器は、第2の導波路と第3の導波路を備えるため、高さが一定の導波路を用いて、LP11bモード光とLP21モードなどの第2の多モード光の合分波を行うことができる。したがって、本発明のモード合分波器は、3モード以上のモード多重伝送を実現可能とする合分波器を導波路の高さが一定という制限がある光導波路で実現することができる。
【0023】
さらに、本発明のモード合分波器は、第4の導波路と第5の導波路を備えるため、高さが一定の導波路を用いて、LP01モード光とLP11aモード光の合分波を行い、第2の導波路にモード回転子を通過しLP11bモード光を入力することができる。このため、本発明のモード合分波器は、従来の光デバイスを利用して、光ファイバ中の伝搬モードをキャリアとして利用した3モード以上のモード多重伝送が可能になり、導波路の高さが一定という制限があっても高効率な3モード以上のモード合分波器の実現が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施形態のLP21モードまでを合分波するための第1の平行導波路部の一例を示す。
図2】第1の実施形態に係る第2の平行導波路部の一例を示す。
図3】第1の実施形態に係るモード回転子の一例を示す。
図4】第1の実施形態に係るモード回転子の第2例を示す。
図5】第1の実施形態に係るモード回転子の第3例を示す。
図6】第1の平行導波路部と第2の平行導波路部とモード回転子を用いたモード合分波器の一例を示す。
図7】導波路の比屈折率差Δ0.4%における導波路の幅に対する伝搬モードの実効屈折率を示す図である。
図8】3つの導波路の導波路幅を決定するための図である。
図9】LP11aモードからLP11bモードへの結合効率の波長依存性を示す図である。
図10】LP11aモードからLP11bモードへの結合効率の第2の波長依存性を示す図である。
図11】LP11aモードからLP11bモードへの結合効率の第3の波長依存性を示す図である。
図12】導波路間隔を5μmとした平行導波路のLP01モードとLP11aモードの結合効率を示す図である。
図13】導波路間隔を5μmとした平行導波路のLP11bモードとLP21モードの結合効率を示す図である。
図14】第1の平行導波路の設計方法の一例を示すフローチャートである。
図15】第2の平行導波路の設計方法の一例を示すフローチャートである。
図16】モード回転子の設計方法の一例を示すフローチャートである。
図17】第2の実施形態に係る第1の平行導波路部の一例を示す。
図18】第2の実施形態におけるLP01モードとLP11aモードの結合効率の一例を示す。
図19】第2の実施形態におけるLP11bモードとLP21モードの結合効率の一例を示す。
図20】本発明の第3の実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0026】
本発明においては、光ファイバ中の伝搬モードである基本モード、第1高次モード、第2高次モード(LP01、LP11、LP21)を用いた3モード多重伝送に利用することを想定している。この明細書において導波路中の伝搬モードに関しても、便宜上、基本モード、第1高次モード、第2高次モード、第3高次モードをそれぞれLP01、LP11a、LP11b、LP21モードとする。
【0027】
本発明は、比屈折率差Δが等しく、導波路の高さが等しい3つの導波路により構成される平行導波路部101と導波路の高さが等しい2つ導波路により構成される平行導波路部120と導波路の高さが等しいモード回転子の3つを従属に接続することにより光ファイバにおける3モード合分波を実現するものである。
【0028】
第1の平行導波路部110の3つの導波路については、中央の導波路113がLP21モード以上を伝搬可能とする導波路であり、使用波長域においてLP01モードを伝搬させるための導波路の幅w1を設定した導波路111と、使用波長域において少なくともLP11bモードが伝搬可能な導波路111とは異なる導波路の幅w2を設定した導波路112と、LP21モード以上が伝搬可能な中央の導波路113であり、導波路111のLP01モードと導波路113の第1の多モードと実効屈折率が等しくかつ、導波路112のLP11bモードと導波路113の第2の多モードの実効屈折率が等しくなるように導波路の幅w3を設定した導波路113により構成される非対称平行導波路とする。
【0029】
ここで、第1の多モードは、導波路中心を含む導波路の水平方向に1つ以上のピークを持ち高さ方向には多くとも1つのピークを持つフィールド分布をするモードであり、例えば、LP1Xaモード(ただし、Xは1以上の整数である。)及びLP0Yモード(ただし、Yは2以上の整数である。)の少なくとも1つである。第2の多モードは、導波路の高さ方向に2つ以上のピークを持つフィールド分布を有するモードであり、例えば、LPZ1モード(ただし、Zは2以上の整数である。)の少なくとも1つである。本実施形態では、第1の多モードがX=1であるLP11aモードであり、第2の多モードがZ=2であるLP21モードである場合について説明するが、本発明はここに列挙される第1の多モードと第2の多モードのいずれを組み合わせてもよい。
【0030】
第2の平行導波路部120の2つの導波路については、使用波長域においてLP01モードを伝搬させるための導波路の幅w4を設定した第4の導波路114と少なくとも2以上の伝搬モードが伝搬可能であり、第4の導波路114のLP01モードの実効屈折率とLP11aモードの実効屈折率とが等しくなるように導波路の幅w5を設定した第5の導波路115により構成される非対称平行導波路とする。
【0031】
前記記載の2つの平行導波路部110及び120を用いて、導波路115と導波路112の間に導波路116のモード回転子を従属に接続し、平行導波路部112の出力LP11aを用いてモード回転子を通過させ、導波路112のLP11bモードを励振することにより、基本モードとLP21モードを含めた高次モードの位相整合によりモード変換およびモード分波を行うものである。ここで、非対称平行導波路は導波路の大きさが異なるだけではなく、導波路の比屈折率差が異なる場合も含み、導波路111は第1高次モード以上が伝搬可能な導波路で平行導波路を構成しても良い。
【0032】
これにより、Cバンド(1530nmから1565nm)の波長帯域において、基本モードと2つの高次モードの分波効率も98%以上を実現することが可能であることから、3つの伝搬モードを利用した3モード多重伝送の高速・長距離化が可能になる。
【0033】
また、モード合波の前段、モード分波の後段、つまり伝送路以外の区間では、基本モードで伝搬されるため、ファイバデバイスについては基本モードで動作させることができることから、既存のファイバデバイスを利用して3モード多重伝送を実現することが可能になる。このため、簡易な構成で波長多重など既存の多重技術と併用した3モード多重伝送を実現することも可能になる。
【0034】
加えて、本提案手法を用いることで平行導波路の高さを一定で同一平面内に作製することが可能になるため、技術的に難しい、それぞれの導波路の高さを変えるという方法を用いずに3モード合分波器を実現することが可能になる。
【0035】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本実施形態のLP21モードまでを合分波するための第1の平行導波路部を説明する図である。第1の平行導波路部110は、導波路111、導波路112及び導波路113を備える。導波路111はLP01モード光を伝搬し、導波路112はLP11bモード光を伝搬し、導波路113はLP21以上を伝搬する。第1の平行導波路部110は、相互作用長L1を有する導波路111と導波路113との結合部C1と、相互作用長L2を有する導波路112と導波路113との結合部C2とを有する。
【0036】
図2は、LP11aモードの光を生成するための第2の平行導波路部を説明する図である。第1の平行導波路部120は、導波路114及び導波路115を備える。導波路114はLP01モード光を伝搬し、導波路115はLP11aモード光を伝搬する。第2の平行導波路部120は、相互作用長L3を有する導波路114と導波路115との結合部C3を有する。
【0037】
図3は、LP11aモードの光をLP11bモードの光へ結合させるためのモード回転子として機能する導波路を説明する図である。モード回転子130は、導波路の幅w8、高さhを有する導波路116であり、断面の少なくとも一部に溝を設けたトレンチ層を備える。トレンチ層は、幅w8においてそれぞれ導波路の幅w81とw82の間に、上部幅w83、下部幅w84、深さdの溝を備える。溝は、断面における幅w8上の中央に対して非対称に設けられ、w81とw82は異なる。溝は、図示するように導波路の上面に設けられていてもよいが、下面に設けられてもよい。溝の形状は任意であり、図3に示すような矩形であってもよいし、三角形であってもよい。
【0038】
図3に示すように、モード回転子130は、断面内に非対称性を有する。図4及び図5に、モード回転子130の他の形態例を示す。モード回転子130は、図4及び図5に示すように、導波路幅w8において幅w82が0となる導波路の端にトレンチ層があっても良い。断面内に非対称性が生じれば、このトレンチ層の形状は任意である。例えば、図4及び図5に示すように、導波路の断面の左右方向の中心に対して片方のみに溝を設ける。また、断面の左右方向の中心に溝を配置し、溝の幅を断面の当該中心に対して非対称にしてもよい。溝の形状も任意である。例えば、溝の上部の幅w83と溝の下部の幅w84とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、溝の形状は、図4に示すような、トレンチ上部の幅w83とトレンチ下部の幅w84が等しい方形である。また、溝の形状は、例えば、図5に示すような、トレンチ下部の幅w84が0である三角形であっても良い。このように、トレンチ層の溝の形状は任意の多角形にすることができる。
【0039】
図6は、第1の平行導波路部110と第2の平行導波路部120とモード回転子130を用いたLP21モードまでを合分波するモード合分波器の構成を説明する図である。導波路112と導波路115がモード回転子130により接続される。LP01モード光が導波路114に入力され、LP11aモード光が導波路115から出力される。モード回転子130は、導波路115から出力されるLP11aモード光を90度回転する機能を有している。このため、導波路112にはLP11bモード光が入力される。モード回転子は、本提案のように導波路を用いた導波路型のものでも良いし、光学素子を用いたものでもよい。
【0040】
結合部C1及びC2は、導波路113の長手方向に縦続に配列される。結合部C1では、非対称平行導波路を用いて、導波路111のLP01モードと導波路113のLP11aモードを位相整合させる。結合部C2では、非対称平行導波路を用いて、導波路112のLP11bモードと導波路113のLP21モードを位相整合させる。これにより、本実施形態のモード合分波器は、モード変換を行うモード合波器として機能するとともに、モード分波を行うモード分波器として機能する。非対称平行導波路は、導波路の大きさが異なるようにすれば、比屈折率差Δを等しくしてもよい。また、導波路の大きさが異なるだけではなく、導波路の比屈折率差が異なる場合も含む。
【0041】
導波路111と導波路112と導波路113は比屈折率差Δが等しい平行導波路である。Δは、導波路の屈折率n1と導波路周囲の媒質の屈折率n0を用いて次式であらわされる。
【数1】
【0042】
導波路111は、使用波長域において少なくともLP01モードを伝搬する導波路の幅w1を有し、導波路112は使用波長域において少なくともLP11bモードを伝搬する導波路の幅w2を有する。ここで遮断波長は、導波路の高さhと比屈折率差Δを決定し、導波路幅wと使用波長帯を決定し、例えば有限要素法などを用いて導波路解析を行うことで遮断波長を求める。本実施形態では導波路の高さhは中央の導波路113の幅と等しく設定した。
【0043】
導波路113は少なくともLP21モード以上の伝搬モードが伝搬可能であり、導波路113の導波路の幅w3は導波路113のLP11aモードと導波路111のLP01モードの実効屈折率が等しく設計し、かつ導波路113のLP21モードと導波路112のLP11bモードの実効屈折率が等しくなるように設計する。以下に導波路111と導波路112と導波路113の設計方法を具体的に説明する。
【0044】
例として、各導波路の比屈折率差Δを0.4%にした場合の導波路の幅wに対する波長1550nmのLP01モードからLP21モードまでの実効屈折率の変化を図7に示す。図7は導波路の幅w(導波路の高さhは13.7μmで一定)を横軸として、導波路の伝搬モードの実効屈折率を縦軸に示している。図7から、比屈折率差Δが0.4%では導波路幅wを11.0μm以上に設定することでLP21モード伝搬を実現できることがわかる。
【0045】
図8に第1の平行導波路部110の導波路111と導波路112と導波路113の幅を決定する図を示す。ここでは、導波路113の幅w3はLP21モード以上が伝搬可能な13.7μmとする。この時、導波路111の幅w1は導波路113のLP11aモードの実効屈折率と等しい幅に設定すれば良いので、w1は4.79μmとなる。また、導波路112の幅w2は導波路113のLP21モードの実効屈折率と導波路112のLP11bモードの実効屈折率が等しくなれば良いので、w2は4.62μmとなる。
【0046】
図8に示した導波路幅w1と導波路幅w2と導波路幅w3を用いた場合に、LP01モードをLP11aモードに変換するために必要な相互作用長L1とLP11bモードをLP21モードに変換するために必要な相互作用長L2を例えばビーム伝搬法などにより計算し、導波路111のLP01モードが導波路113のLP11aモードへの結合効率と導波路112のLP11bモードが導波路113のLP21モードへの結合効率が最大となるように適切な相互作用長を設計する。ここで、導波路111と導波路113の導波路間隔g1と導波路112と導波路113の導波路間隔g2を5.0μmと等しい場合にビーム伝搬法によりLP11aモード、LP21モードそれぞれの結合効率が最大となる相互作用長を求めるとL1は1.5mm、L2は1.0mmであった。
【0047】
本実施形態では、第1の平行導波路部110においてLP21モードを励振するために、導波路112のLP11bを利用している。LP11bの励振には、図3に示したモード回転子130を用いる。第2の平行導波路部120はLP01モードが伝搬可能な導波路114とLP11aモード以上が伝搬可能な導波路115で構成される。LP11aを励振するための導波路114と導波路115の導波路パラメータは、第1の平行導波路部110の導波路111と導波路113の結合部のパラメータを用いればよい。すなわち、導波路幅w4は導波路幅w1と等しく、導波路幅w5は導波路幅w3と等しく、結合部C3の導波路間隔g3は導波路間隔g1と等しく、相互作用長L3は相互作用長L1と等しい。
【0048】
モード回転子130は導波路の高さhと比屈折率差Δを平行導波路部110と平行導波路部120と等しくそれぞれ13.7μm、0.4%とした。今回は以下のパラメータでモード回転子130を構成した。本実施形態では、平行導波路部116の幅w8を14.0μm、平行導波路部116の幅w81を3.0μm、トレンチ層の幅w83、w84を1.0μm、深さを6.8μm、相互作用長L4を2.57mmとした。本パラメータで算出したLP11aモードからLP11bモードへの結合効率の波長依存性を図9に示す。図9は、導波路116にLP11aモードが入力された場合に、フィールド分布が回転してLP11bモードへ結合する効率(実線)と回転しきれずにLP11aモードとして出力される効率(破線)を示している。モード回転子130のパラメータはこれに制限されるものではなく、以下で示す平行導波路部116の設計にしたがって構成することで所望のモードの回転が実現できれば良い。
【0049】
図10に、図3に示すモード回転子130を採用した場合の結合効率の波長依存性の一例を示す。導波路のΔを0.45%、高さhを11.0μmとして、モード回転子のパラメータにおいて導波路の幅w8を11.3μm、w82を2.0μm、トレンチ層の幅w83、w84を1.5μm、深さdを5.4μm、相互作用長L4を1.46mmに設定した。また、図11に、図4に示すモード回転子130を採用した場合の結合効率の波長依存性の一例を示す。w82を0.0μm、w83、w84を1.5μm、深さdを3.9μm、相互作用長L4を2.99mmに設定した。図10及び図11ともにLP11aモードからLP11bモードへの高い結合効率を示し、断面内で任意の位置にトレンチを配置してもモード回転子として機能することがわかる。モード回転子のパラメータはこれに制限されるものではなく、所望のモードの回転が出来るようにパラメータを設定すればよい。
【0050】
本発明においては、第1の平行導波路部110と第2の平行導波路部120を図6に示すように、第2の平行導波路部120の導波路115と第1の平行導波路部110の導波路112との間にモード回転子130を接続することで導波路112のLP11bモードを励振してLP21モードの合分波を行う。従って、導波路111、導波路113、導波路114を入出力ポートとして利用し、モード合波器の入力部およびモード分波器の出力部では基本モードであるLP01モードのみでLP01、LP11、LP21の3モードの合分波が可能になる。
【0051】
導波路間隔g1、g2を5.0μm、導波路111の導波路の幅w1を4.79μm、導波路112の導波路の幅w2を4.62μm、導波路113の幅w3を13.7μm、導波路の高さhを13.7μm、比屈折率差Δを0.4%、導波路の曲げ半径Rを50mm、相互作用長L1を1.5mm、相互作用長L2を1.0mmとした場合に得られるLP11aモードの結合効率の波長依存性を図12に示し、LP21モードの結合効率の波長依存性を図13に示す。
【0052】
図12は、導波路111にLP01モードの光を入射した場合に導波路113にLP11aモードとして出力される結合効率(実線)と導波路111にLP01モードとして出力される結合効率(破線)を示している。図13は、導波路112にLP11bモードの光を入射した場合に導波路113にLP21モードとして出力される結合効率(実線)と導波路112にそのままLP11bモードとして出力される結合効率(破線)を示している。
【0053】
図9から図13より、波長1530nmから1565nmの波長帯において98%以上の結合効率を有する非常に高効率な3モード合分波器を実現できることがわかる。ここで、3モード以上を伝搬可能な光ファイバとしてコア直径18μm、コアの比屈折率差Δを0.4%としたファイバを仮定すると、光ファイバの基本モードのモードフィールド径(MFD)は15.3μmであり、上記記載の導波路113のMFDは13.7μmである。これらの値を用いてMFD不整合損失を近似式(2)を用いて見積もるとおよそ0.15dB程度であった。
【数2】
ここで、W1、W2はそれぞれ光ファイバのMFD、導波路のMFDとし、ηは結合損失を示す。
【0054】
このことから、本発明の非対称平行導波路と伝送用ファイバとの接続損失は非常に小さいと予想される。伝送用ファイバと導波路のMFDが極端に異なる場合には、導波路とファイバとの接続部においてどちらか一方もしくは両者をテーパ状に加工するなどしてMFDの不整合を小さくすることで接続損失の低減を図ることも可能である。前記記載のMFDはファイバ、導波路ともに基本モードのフィールドをガウシアン近似して算出している。
【0055】
第1の実施形態は導波路の比屈折率差Δが等しく、導波路の間隔が等しい条件下で設計を行ったが、本発明はこれに制限されることはなく、3つの導波路それぞれの比屈折率差Δが異なっていても良く、また導波路間隔g1とg2が異なっていても良い。また、第2の平行導波路部120は第1の平行導波路部110のパラメータを用いずに改めてLP01モードとLP11aモードの合分波が可能な導波路パラメータを設計しても良い。
【0056】
次に、本発明のモード合分波器の設計方法について説明する。図14図15及び図16に導波路の設計方法の手順について示したフロー図を示す。設計手順は第1の平行導波路部設計手順と、第2の平行導波路部設計手順と、モード回転子設計手順と、を有する。
図14に示す第1の平行導波路部設計手順では、第1の平行導波路部110の設計を行う。
はじめに、モード合分波器で使用する波長帯を決定する(S101)。
次に、使用する波長帯においてLP21モード以上が伝搬可能となるように、比屈折率差Δと導波路幅w3を決定する(S102、S103)。比屈折率差Δと導波路幅w3の決定には、例えば、有限要素法などの導波路解析を用いて遮断波長を求めることで決定する。
次に、導波路111のLP01モードと導波路113のLP11aモードの実効屈折率が等しくなるような導波路幅w1を決定する(S104、S105)。導波路幅w1の決定においても、有限要素法などの導波路解析を用いて実効屈折率を算出する。
次に、導波路113のLP21モードの実効屈折率(S108)と導波路112のLP11bモードの実効屈折率が等しくような導波路幅w2を決定する(S106、S107)。
次に、導波路間隔g1、g2を決定し(S108)、決定した導波路間隔g1、g2を用いて相互作用長L1、L2を決定する(S109)。相互作用長L1、L2の算出にはビーム伝搬法などの伝搬解析を行い相互作用長を算出する。
相互作用長L1、L2を算出したら、所望の結合効率を有するか否かを判定し(S110)、所望の結合効率を有さない場合はステップS108へ移行する。例えば使用波長帯において80%以上の結合効率を所望しており、それに満たない結合効率が得られた場合には、導波路間隔g1、g2を再設定し(S108)、相互作用長L1、L2の算出を行い(S109)、所望の特性が得られたところで(S110においてYes)、これまで決定した各パラメータの確定となる。
【0057】
図15に示す第2の平行導波路部設計手順では、第2の平行導波路部120の設計を行う。
本手順では、第1の平行導波路部110で用いた使用波長帯で設計を進める(S201)。使用する波長帯においてLP11aモード以上が伝搬可能となるように(S203においてYes)、比屈折率差Δと導波路幅w5を決定する(S202)。比屈折率差Δと導波路幅w5の決定には、第1の平行導波路部110と同様に有限要素法などの導波路解析を用いて遮断波長を求めることで決定する。
次に導波路114のLP01モードと導波路115のLP11aモードの実効屈折率が等しくなるような導波路幅w4を決定する(S204、S205)。導波路幅w4の決定においても導波路解析を用いて実効屈折率を算出する。
次に、導波路間隔g3を決定し(S206)、相互作用長L3を決定する(S207)。L3の算出には伝搬解析を行い相互作用長を算出する。
相互作用長L3を算出したら、所望の結合効率を有するか否かを判定し(S208)、所望の結合効率を有さない場合はステップS206へ移行する。例えば使用波長帯において80%以上の結合効率を所望しており、それに満たない結合効率が得られた場合には、導波路間隔g3を再設定し(S206)、相互作用長L3の算出を行い(S207)、所望の特性が得られたところで(S208においてYes)、これまで決定した各パラメータの確定となる。
【0058】
図16に示すモード回転子設計手順では、モード回転子130の設計を行う。
本手順では、第1の平行導波路部110及び第2の平行導波路部120で用いた波長帯で設計を進める(S301)。使用する波長帯においてLP11aモード及びLP11bモードの両縮退モードが伝搬可能となるように(S303においてYes)、導波路の高さh、比屈折率差Δと導波路幅w8を決定する(S302)。導波路の高さh、比屈折率差Δと導波路幅w8の決定には、第1の平行導波路部110及び第2の平行導波路部120と同様に有限要素法などの導波路解析を用いて遮断波長を求めることで決定する。
次に導波路にトレンチ層を設けるための手順を実施する。トレンチ層の位置を決定するために導波路の端からの幅w82を決定する(S304)。w82はある程度任意に決定し、以下の手順を実施する。w82を決定後にトレンチ層の幅w83、w84と深さdを決定し(S305、S306)、LP11aモードがLP11bモードに回転するように相互作用長L4を決定する(S307)。L4の決定にはビーム伝搬法などの導波路解析を用いて算出を行う。S305からS307までのパラメータの微調整を行い、LP11aモードからLP11bモードへの所望の結合効率が得られたところで(ステップS308においてYes)、これまで決定した各パラメータの確定となる。S305からS307のパラメータの調整で所望の特性が得られない場合には(ステップS308においてNo)、ステップS304においてw82を決定した際に想定した結合効率であるか否かを判定し(S309)、想定した結合効率である場合にはステップS304へ移行し、想定した結合効率でない場合にはステップS305へ移行する。そして再度、S305からS307の手順を実施し、所望の特性が得られるまでS304からS307の手順を繰り返すことで、各パラメータが確定となる。
【0059】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について説明する。図17は、本実施形態に係る第1の平行導波路部110の一例を示す。本実施形態は、LP11aモードの結合部とLP21モードの結合部で中央の導波路の太さを変化させるテーパ部を設けたLP21モードまでに対応した合分波器の実施形態に関する。
【0060】
本実施形態に係る第1の平行導波路部110は、導波路611と、導波路612と、導波路613を備える。導波路611はLP01モード光を伝搬し、導波路612はLP11bモード光を伝搬し、導波路613において、幅w3の部分ではLP11aモードが伝搬し、導波路幅w6の部分ではLP21モード以上を伝搬可能とする。第1の平行導波路部110は、相互作用長L1を有する導波路611と導波路613との結合部C1と、相互作用長L6を有する導波路612と導波路613との結合部C6とを有する。
【0061】
本実施形態では、比屈折率差Δを0.45%、導波路の高さhを9μmとする。この場合、第1の実施形態に示した設計方法を用いて導波路のパラメータを求める。本実施形態においては使用波長域をC−bandである1530nmから1565nmを想定する(S101)。導波路613の導波路幅w3、w6をそれぞれ12.9μm、19.1μmとする。
【0062】
ステップS104及びS105において、導波路611の導波路幅w1は導波路613の導波路幅w3におけるLP11aモードと導波路611のLP01モードと実効屈折率が一致するように設定すればよく、導波路幅w1は4.5μmと求まる。
次に、ステップS106及びS107において、導波路612の導波路幅w2は導波路613の導波路幅w6におけるLP21モードと導波路612のLP11bモードの実効屈折率が等しくなるように設定すればよく、導波路幅w2は7.0μmと求まる。
次に、ステップS108において、導波路611と導波路613の導波路間隔をg1、導波路612と613の間隔をg6とし、g1、g6をそれぞれ4μm、9μmとする。この導波路間隔において、導波路611のLP01モードから導波路613のLP11aモードへの結合効率及び導波路612のLP11bモードから導波路613のLP21モードへの結合効率がともに90%以上になる相互作用長L1、L2を求めると(S110においてYes)、それぞれ0.65mm、8.9mmになる。
【0063】
導波路612へ接続する第2の平行導波路120のパラメータは、導波路611と613の結合部C2のパラメータと同じとし、第2の平行導波路120の出力端にモード回転子130を接続して導波路612と接続する。
【0064】
前記記載の導波路パラメータを用いて導波路611から613及び導波路612から導波路613への結合効率を求めた結果を図18及び図19に示す。決定した導波路パラメータはC−band内で90%以上の結合効率を有していることがわかる。本発明は第1の実施形態及び第2の実施形態で示した導波路パラメータに制限されることはなく所望の特性に応じて導波路の幅、間隔、相互作用長を調整すればよい。
【0065】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態および第2の実施形態で示したモード合分波器の使用例に関する。本発明のモード合分波器は波長多重通信システム(WDM)および偏波多重通信システム(PDM)とモード多重通信システムの3つの多重方法を組み合わせて使用することができる。これらは、3つの多重方式を個別に使用することや2つの多重方式のみを使用することも考えられ、いずれの方法にも適用できる。図20に、本実施形態に係るモード多重通信システムの構成例を示す。本実施形態に係るモード多重通信システムは、WDMとPDMに3モード多重を行うためのシステムの構成例である。本発明のモード合分波器の使用例は図20のこれに限定されるものではない。また、ある波長λの光源に関しては、1つの光源をパワー分岐して使用しても良く、同一波長の光源を複数用意して波長λの信号を生成しても良い。
【0066】
図20に示すように、偏波多重波長多重モード多重伝送システムは、送信装置711及び受信装置720を備える。送信装置711は、3つの波長多重信号生成部と、実施形態1に記載の伝搬モードを合波(モード変換)するモード合波器718と、を備える。各波長多重信号生成部は、λからλのN個の光源712と、N個の波長それぞれの光を2分岐する光分波器713と、N個の波長の基本モードそれぞれを変調する光変調器714と、偏波を調節するための偏波コントローラ715と、それぞれの波長の基本伝搬モードを合波する光合波器716と、を備える。
【0067】
また、受信装置720は、合波された3個の伝搬モードを分波する第1の実施形態及び第2の実施形態に記載のモード分波器721と、モードごとに分波されたN個の波長多重信号を受信する波長多重信号受信部と、により構成されている。波長多重信号受信部は、モードごとに分波されたN個の波長をそれぞれの波長に分波するための波長分波器722と、波長分波器722により分波されたそれぞれの波長において偏波を分離するための偏波分波器723と、分波された信号光を受光して電気信号に変換する受光器724とにより構成されている。
【0068】
送信装置711のモード合波器718と受信装置720のモード分波器721とは、マルチモード伝送路719により接続されている。第1の実施形態及び第2の実施形態のモード合波および分波器を使用することにより、送信装置および受信装置中では基本伝搬モードで処理を行い、伝送路中でのみ高次モードに変換して信号を伝送している。そのため、本発明のモード合分波器を利用することにより、従来の光デバイスをそのまま利用することができる。伝送路中で信号の増幅が必要な場合には、本発明のモード合分波器を利用して、高次モードを基本モードに変換して光増幅器による増幅を行い、その後、モード合分波器を利用して高次モードに変換して伝送することにより、長距離伝送も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
111、112、113、114、115、116、611、612、613:導波路
110:第1の平行導波路部
120:第2の平行導波路部
130:モード回転子
711:送信装置
712:光源
713:光分波器
714:光変調器
715:偏波コントローラ
716:光合波器
717:波長合波器
718:モード合波器
719:マルチモード伝送路
720:受信装置
721:モード分波器
722:波長分波器
723:偏波分波器
724:受光器
図1
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