(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記採取片部の前記栓体側の基端部は前記栓体の前記底面の外周部に沿う湾曲断面形状で延在する円弧板状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の試料採取用具。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な幾つかの実施形態について、図面を参照して説明する。
図1、
図2は、本発明の好適な1実施形態の試料採取用具10を示す。
図1、
図2に例示した試料採取用具10は、容器20と、容器20の開口部21を密閉可能な栓体31から採取用突片32が延出する構成の採取片付き栓体30とを有する。
【0011】
試料採取用具10は、例えば、食品、人畜の糞便、人畜の分泌物、土壌、泥、生ゴミ等の有機廃棄物などの試料の、採取片付き栓体30の採取用突片32の利用による採取、容器20への収容保管が可能である。すなわち、衛生的な試料または非衛生的な試料のいずれかに関わらず様々な試料の採取に用いることができる。
【0012】
容器20は、例えばプラスチック、ガラス、金属等の、遮水性を確保可能な素材で形成される。また、採取片付き栓体30は、例えば糞便等への採取用突片32の突き刺し操作を、採取片付き栓体30に大きな変形や破壊、損傷等を生じることなく安定に行える強度を確保可能な素材によって形成される。採取片付き栓体30の形成素材としては、例えばプラスチック、金属等を挙げることができる。
【0013】
試料採取用具10の容器20及び採取片付き栓体30は、それぞれγ線照射による滅菌処理が可能な素材によって形成されていることが好ましい。また、試料採取用具10の容器20及び採取片付き栓体30の形成素材は、低コスト化の点でプラスチックが好適である。
【0014】
図1、
図2に例示した試料採取用具10の容器20及び採取片付き栓体30は、γ線照射による滅菌処理が可能なプラスチック製部材である。容器20及び採取片付き栓体30を形成するプラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリスルホン、ABS樹脂、ポリスチレン等の汎用樹脂を挙げることができる。
【0015】
試料採取用具10の容器20は、筒壁部22と、その軸線方向一端側を塞ぐ底壁23とを有し、筒壁部22のその軸線方向において底壁23とは反対の他端側が開口された有底筒状(片側有底筒状)に形成されている。容器20の開口部21は筒壁部22他端側の開口を指す。
図1、
図2に例示した試料採取用具10の容器20の筒壁部22(以下、容器筒壁部、とも言う)は具体的には円筒状である。この容器20は片側有底円筒状に形成されている。また、この容器20は、プラスチック製の一体成形品である。
【0016】
図1〜
図3に示すように、試料採取用具10の採取片付き栓体30は栓体31と栓体31から延出する採取用突片32とを有する。
図1〜
図3に例示した採取片付き栓体30の栓体31は、容器20の開口部21周囲の口縁部(以下、容器口縁部、とも言う)の全周に当接可能な環状天壁部33と、容器20の開口部21(以下、容器開口部、とも言う)に挿脱可能な挿入突部34と、螺着壁部35とを有する。
【0017】
図1〜
図3に例示した試料採取用具10の容器20の容器口縁部は、具体的には容器開口部21周囲の筒壁部22端部(以下、筒壁部22開口端部、とも言う)の先端部分を指す。
環状天壁部33のその軸線方向片側には、容器口縁部に当接される当接面33aが形成されている。環状天壁部33の当接面33aは、容器開口部21周囲の筒壁部22の端面の全周に当接可能である。
【0018】
図1〜
図3に例示した栓体31の当接面33aは、環状天壁部33内周と同軸の円周に沿う環状に形成されている。また、
図1〜
図3に例示した栓体31の当接面33aは、環状天壁部33内周の中心軸線に垂直の平坦面に形成されている。
なお、本明細書では、栓体31について、環状の当接面33aの湾曲中心を通り当接面33a湾曲中心を中心とする円周を含む仮想平面に垂直の軸線(以下、当接面33aの中心軸線、とも言う)を、栓体31の中心軸線31Lとして扱うものとする。
図1〜
図3に例示した栓体31において、環状天壁部33内周の中心軸線は栓体中心軸線31Lと一致している。
【0019】
図1〜
図3に例示した栓体31の環状天壁部33は具体的にはリング板状に形成されている。この環状天壁部33の内周及び外周は、栓体中心軸線31Lに同軸の同心円状に形成されている。
【0020】
図2に示すように、環状天壁部33の内径は容器開口部21内径よりも小さい。
図1〜
図3に例示したリング板状の栓体31の環状天壁部33の外径は容器口縁部外径と一致するか容器口縁部外径に比べて僅かに大きい。
【0021】
図1〜
図3に示すように、栓体31の挿入突部34は、環状天壁部33の内周部からその軸線方向片側へ突出する筒状側壁部34aと、筒状側壁部34a内側空間の筒状側壁部34a突端側を塞ぐ栓体底壁部34bとを有する。
筒状側壁部34aは環状天壁部33内周部と同軸に延在する円筒状に形成されている。
【0022】
図1、
図2に示す栓体31において、環状天壁部33の当接面33aとは反対側の面を、以下、栓体天面33bとも言う。
図1、
図2に示すように、挿入突部34の内側空間34cの栓体底壁部34bとは反対の側は開口されている。環状天壁部33内周から内側(環状天壁部33内周の径方向内側)の領域は、挿入突部34の内側空間34cの開口部とされている。挿入突部34の内側空間34cは、栓体天面33b内周から窪む凹部となっている。挿入突部34の内側空間34cを、以下、栓体凹部、とも言う。
また、
図1、
図2に示す採取片付き栓体30の栓体凹部34cは、その開口側(栓体底壁部34bとは反対の側)から採取片付き栓体30の使用者の手指を挿入可能な大きさに形成されている。
【0023】
図1〜
図4に示すように、螺着壁部35は、環状天壁部33の外周部全周から栓体31軸線方向(中心軸線方向)において筒状側壁部34aと同じ側へ突出する筒状に形成されている。環状天壁部33は筒状の螺着壁部35の軸線方向片側の端部の内側に位置する。
図1〜
図4に示す栓体31の螺着壁部35は、具体的には、栓体中心軸線31Lを中心とする円筒状に形成されている。
【0024】
図1〜
図4に示すように、栓体31の螺着壁部35の内周側には内ねじ部35aが形成されている。内ねじ部35aは栓体中心軸線31Lを中心とする雌ねじ部である。筒壁部22開口端部の外周側には、栓体31の螺着壁部35の内ねじ部35aと螺合可能な外ねじ部22aが形成されている。
【0025】
栓体31は、螺着壁部35の内ねじ部35aを容器20の筒壁部22開口端部外周の外ねじ部22aに螺合させることで容器20の筒壁部22に螺着できる。
栓体31は、その中心軸線31Lを容器筒壁部22開口端部の中心軸線に一致させて容器筒壁部22に螺着される。
【0026】
図1〜
図4に示すように、栓体31の採取用突片32は、栓体31の挿入突部34の栓体底壁部34bの環状天壁部33とは反対側の面34d(底面。以下、栓体底面、とも言う)の外周部から環状天壁部33とは反対側へ延出している。
図1〜
図3に示すように、採取用突片32は、栓体31側の支持片部32aと、この支持片部32aの先端(栓体31とは反対側の端)から延出する採取片部32bとを有する。
【0027】
支持片部32aは、栓体底面34d(具体的には栓体底壁部34b)の外周部の一部から栓体天面33bとは反対の側へ突出(延出)されている。
図1〜
図4に示す採取片付き栓体30の採取用突片32の支持片部32aは、栓体底面34d外周に沿う円弧状断面で栓体底面34dから栓体31軸線方向に沿って突出する円弧板状に形成されている。
図1〜
図4の支持片部32aは、栓体底面34dからの突出方向全長にわたって一定断面寸法で突出している。この支持片部32aの栓体底面34d外周方向の断面寸法は、栓体底面34d外周の8分の1以上、半分以下であることが好ましく、栓体底面34d外周の6分の1以上、半分以下であることがより好ましい。
【0028】
図3、
図4に示すように、採取片付き栓体30の採取用突片32の採取片部32bは、支持片部32a先端から湾曲断面形状で延出する円弧板状に形成されている。採取片部32bの先端部以外の部分は、支持片部32aと同様の断面寸法で延在している。円弧板状の採取片部32bは、その湾曲内周側の凹曲面が支持片部32aの湾曲内周側の凹曲面と接し、湾曲外周側の凸曲面が支持片部32aの湾曲外周側の凸曲面と接する向きの断面湾曲形状に形成されている。
採取片部32bの基端部(栓体31側の端部)の採取片部32b延在方向に垂直の断面は、栓体31の前記底面の外周部に沿う円弧状に湾曲延在する。
【0029】
図1、
図2に示すように、採取片部32bは、栓体底面34dから突出する支持片部32aの先端(突端)から栓体31とは反対の側へ向かって、栓体中心軸線31Lに対して栓体中心軸線31Lを介して反対の側(支持片部32a先端とは反対の側)へ傾斜して延出している。
採取片部32bは支持片部32aを介して栓体31に対して支持されている。
【0030】
図1〜
図4に示す採取片付き栓体30の支持片部32aは、栓体底面34dから栓体31軸線方向に突出されている。このため、採取片部32bは、栓体中心軸線31Lのみならず、支持片部32aの栓体底面34dからの突出方向に対しても傾斜して延在している。
【0031】
図1〜
図4に例示した実施形態の採取片付き栓体30の支持片部32aの栓体底面34dからの突出寸法は、採取片部32bの延在寸法(支持片部32aからの延出長)に比べて小さい。支持片部32aの栓体底面34dからの突出寸法は、例えば、採取片部32bの延在寸法の15〜35%の寸法に確保される。
この採取片付き栓体30の採取片部32bの、支持片部32aの栓体底面34dからの突出方向に対する傾斜角度θ(
図1参照)は10〜70度であることが好ましく、30〜60度であることがより好ましい。
【0032】
図4、
図5に示すように、採取片部32bの先端部は、その採取片部32b延在方向に垂直の湾曲断面の延在方向寸法が採取片部32b先端側へ行くにしたがって縮小する先細り形状に形成されている。
先細り形状の採取片部32b先端部は、固形糞便等への採取片部32bの突き刺しなどを容易にする利点がある。
【0033】
円弧板状の支持片部32aの栓体底面34d外周方向の断面寸法が半分以下であり、採取片部32bの断面寸法も支持片部32aと同様であることは、採取用突片32の樹脂成形を容易にする点、低コスト化の点で有利である。
なお、採取片部32bの断面寸法は、必ずしも支持片部32a断面寸法と同様である必要は無く、支持片部32a断面寸法と異なっていても良い。採取用突片32は、例えば、円弧板状の採取片部32bの先端部以外の部分のその延在方向に垂直の湾曲断面の延在方向寸法が、円弧板状の支持片部32aのその湾曲断面の延在方向寸法よりも大きい構成も採用可能である。
【0034】
容器20から取り外した状態の採取片付き栓体30は、採取用突片32及び栓体31の挿入突部34を容器開口部21に挿入するとともに、栓体31を容器筒壁部22開口端部に対して相対回転させて、螺着壁部35の内ねじ部35aを容器筒壁部22開口端部の外ねじ部22aに螺合させることで、栓体31を容器筒壁部22開口端部に螺着できる。そして、採取片付き栓体30は、容器筒壁部22開口端部に螺着した栓体31の容器筒壁部22開口端部へのねじ込みによって、容器口縁部に環状天壁部33の当接面33aを当接した状態で栓体31を容器20に締め付けることで、容器開口部21を密閉できる。また、33aにシリコン、ゴム等の材質によるパッキン(密閉部材、密封部材、シール部材等)を挟むことにより、密閉性を高めることも可能である。
容器筒壁部22開口端部に螺着された栓体31は、容器筒壁部22開口端部に対してねじ込み時とは逆向きに回転操作することで、容器20から離脱させることができる。
【0035】
なお、採取片付き栓体30の採取用突片32は、採取片付き栓体30の栓体31の容器筒壁部22開口端部へのねじ込み、締め付けによって容器開口部21を密閉したときに、その先端が容器20の底壁23近傍に達する延在寸法を以て形成されている。
また、採取片付き栓体30の栓体31によって容器開口部21を密閉したとき、採取片付き栓体30の採取用突片32の先端は、容器筒壁部22の中心軸線付近(容器筒壁部22中心軸線に接する位置あるいはその近傍)に配置される。
【0036】
図1、
図2に例示した採取片付き栓体30の栓体31は、環状天壁部33から栓体天面33bとは反対側に突出する密閉補助突壁36を有する。密閉補助突壁36は、栓体中心軸線31Lを中心とするリング状に形成されている。但し、密閉補助突壁36は、螺着壁部35に比べて径小であり、螺着壁部35から栓体中心軸線31L側へ離隔させて形成されている。環状天壁部33の当接面33aは、環状天壁部33の栓体天面33bとは反対の側において密閉補助突壁36と螺着壁部35との間に位置している。
密閉補助突壁36と螺着壁部35との間には、栓体31によって容器開口部21を密閉したときに容器筒壁部22開口端部が挿入される。密閉補助突壁36は、密閉補助突壁36と螺着壁部35との間に挿入された容器筒壁部22開口端部内周面に当接して、容器20内の試料42が容器口縁部と栓体31(具体的には環状天壁部33)との間から漏出することを防ぐべく、栓体31による容器開口部21の密閉性を高める役割を果たす。
なお、採取片付き栓体は、密閉補助突壁36を有していない構成も採用可能である。
【0037】
試料採取用具10の採取片付き栓体30は、容器20から取り外した状態(離脱させた状態)で糞便等の試料を採取に用いられる。容器20から取り外した状態採取片付き栓体30による試料採取は、例えば、その使用者が栓体31を把持した手指で操作することで、採取片部32bに糞便等の試料を採取する。
試料採取用具10は、試料採取後の採取片付き栓体30の採取用突片32を採取した試料とともに容器開口部21に挿入し、容器筒壁部22開口端部に螺着した栓体31を容器20に締め付けて容器開口部21を密閉することで、採取した試料を容器20に収容、保管できる。
【0038】
採取片付き栓体30の採取片部32bに採取された固形状の糞便等の試料は、主として、容器筒壁部22と容器20に挿入した採取用突片32の採取片部32bとの間に配置された状態にて、試料採取用具10内に収容される。
試料採取用具は、
図1、
図2等に示す試料採取用具10について採取片付き栓体30の採取片部32bのみを変更し、栓体31によって容器開口部21を密閉したときに採取片部32bのその先端部よりも基端側部分が容器筒壁部22の中心軸線と交差し、採取片部32b先端が容器筒壁部22内周面に近接配置される構成(以下、採取部先端近接形採取用具、とも言う)も採り得る。但し、
図1、
図2等に示す試料採取用具10であれば、栓体31によって容器開口部21を密閉したときの採取片部32bと容器筒壁部22内周面との間のスペースを採取部先端近接形採取用具に比べて大きく確保できる。このため、栓体31によって容器開口部21を密閉したときに採取用突片32先端が容器筒壁部22の中心軸線付近に配置される構成の試料採取用具10は、採取部先端近接形採取用具に比べて試料収容量の増大に有利である。
【0039】
採取部先端近接形採取用具の支持片部32aの栓体底面34dからの突出寸法は、例えば、採取片部32bの延在寸法の5〜35%の寸法に確保される。
採取部先端近接形採取用具の採取片部32bの、支持片部32aの栓体底面34dからの突出方向に対する傾斜角度θ(
図1参照)は10〜70度であることが好ましく、30〜60度であることがより好ましい。
【0040】
試料が糞便である場合、容器20から取り外した状態の採取片付き栓体30による試料採取は、固形状あるいは粘土状の糞便に突き刺した採取片部32bへの取り出し、糞便が載置された載置面に沿って移動させた採取片部32bへの掬い上げ(
図6参照)、等によって実現できる。
【0041】
図6は、本発明の試料採取方法を説明する図であり、とくに水平方向に延在する載置面41上にある試料42を採取片部32bに掬い上げて採取する掬い上げ操作を説明する図である。
図6に示すように、掬い上げ操作は、容器20から取り外した状態の採取片付き栓体30を、その栓体中心軸線31Lが採取片部32b側に比べて栓体31側の方が載置面41からの離隔距離が大きくなるように載置面41に対して傾斜した向きで、採取片部32b先端を載置面41に当接させて使用する。しかも、採取片付き栓体30は、栓体底壁部34bの採取用突片32基端部と連続する部分が栓体底壁部34bにおける最下部に位置する向きで使用する。
そして、掬い上げ操作は、採取片付き栓体30を上述の向きで採取片部32b先端を載置面41に当接させた状態を保ったまま載置面41に沿って移動させ、載置面41から試料42を掬い上げて採取する。試料42は採取片部32bの凹曲面側に採取する。
【0042】
図6の試料42の掬い上げ操作にあっては、採取片付き栓体30の栓体31(具体的には螺着壁部35)や栓体31を把持する使用者の手指が載置面41上の試料42に接触して試料が付着することを防ぐには、栓体31を載置面41から上方に離隔させて支持した状態を保つ。なお、試料は載置面41の広範囲に分散して存在することもある。栓体31を載置面41から上方に離隔させて支持することは、栓体31(具体的には螺着壁部35)や栓体31を把持する使用者の手指が載置面41の広範囲に分散して存在する試料に接触して試料が付着することを防ぐ。
その一方、掬い上げ操作では、採取片部32b上への試料採取のために、採取片部32bを載置面41に平行に近付けて試料の掬い上げを行ないたいケースがある。
【0043】
採取片付き栓体30の採取用突片32は栓体底壁部34bの外周部から延出している。
ここで、採取片付き栓体30について、採取用突片32が栓体底壁部34b(栓体底面34d)の中央部から延出するように改変した構成(以下、採取部中央延出形栓体、とも言う)との対比を説明する。
採取片付き栓体30は、栓体底壁部34bの採取用突片32基端部と連続する部分が栓体底壁部34bにおける最下部に位置する向きで掬い上げ操作に使用することで、採取部中央延出形栓体に比べて、栓体31の載置面41からの距離(高さ)を大きく(高く)確保できる。つまり、採取片付き栓体30は、栓体底壁部34bの採取用突片32基端部と連続する部分が栓体底壁部34bにおける最下部に位置する向きで掬い上げ操作に使用するとき、採取片部32bの載置面41に対する傾斜角度を同じにした採取部中央延出形栓体に比べて、栓体31の載置面41からの距離(高さ)を大きく(高く)確保できる。
【0044】
このため、採取片付き栓体30は、採取部中央延出形栓体に比べて、掬い上げ操作の際に、栓体31や栓体31を把持する使用者の手指が載置面41上の試料42に接触して試料が付着することを防ぐ点で有利である。採取片付き栓体30は、採取部中央延出形栓体に比べて、掬い上げ操作による試料採取の作業性向上に有利である。
【0045】
特許文献1に記載の試料採取用具(試料採取用器具)の取っ手部は、特許文献1の
図2、
図6を参照して判るように、密閉栓における管状体の開口を密閉したときに管状体内側空間に臨む面の中央部から延出されている。
採取片付き栓体30は、特許文献1に記載の試料採取用具に比べて、掬い上げ操作による試料採取の作業性向上に有利である。
【0046】
特許文献1に記載の試料採取用具の匙部の取っ手部先端からの延出寸法は、取っ手部の密封栓からの延出寸法に比べて格段に小さい。これに対して、支持片部32aの栓体底面34dからの突出寸法が採取片部32bの延在寸法に比べて小さい採取片付き栓体30は、採取片部32bのサイズの大型化、試料採取量の増大に有利である。また、採取片付き栓体30は、支持片部32aの栓体底面34dからの突出寸法が採取片部32bの延在寸法の15〜35%であっても、掬い上げ操作による試料採取の作業性を良好に確保できる。
【0047】
なお、特許文献1に記載の試料採取用具は、その構成上、仮に、匙部の取っ手部先端からの延出寸法を、取っ手部の密封栓からの延出寸法に比べて大きくすると、水平方向に延在する載置面41上の試料を掬い上げる掬い上げ操作の際に、密閉栓の載置面41からの距離(高さ)が小さくなる。その結果、特許文献1に記載の試料採取用具は、掬い上げ操作による試料採取の作業性が低下する。
【0048】
採取片付き栓体30の操作は、例えば、使用者が複数本の手指で栓体31の外周部(具体的には螺着壁部35)のみを把持して行なうが、これに限定されない。採取片付き栓体30の操作は、例えば、栓体31の栓体凹部34cに差し入れた手指を利用して、複数の手指によって、栓体31の螺着壁部35外側面と栓体凹部34cとの間に位置する部分を把持して行なっても良い。
【0049】
例えば採取片付き栓体30を狭隘な作業空間に差し入れて掬い上げ操作によって採取採取するとき、栓体31の下側や左右両側に手指を回り込ませることが難しい場合が生じ得る。しかしながら、採取片付き栓体30は、掬い上げ操作の際に、栓体31の栓体凹部34cに差し入れた手指を利用して、栓体31の螺着壁部35外側面と栓体凹部34cとの間に位置する部分を手指で把持することで、狭隘な作業空間における掬い上げ操作を効率良く行うことも可能である。
【0050】
次に、本発明の試料採取用具10を使用した試料の検査方法の発明について説明する。本発明の試料の検査方法においては、まず
図6に示した試料の採取方法を実行する。具体的には、例えば
図6において試料42が被験者の糞便であるとすると、
図6に記載された態様に従って採取片付き栓体30を使用し、採取片部32bによって試料42(糞便)を掬い上げて採取する。
その状態で採取片付き栓体30を、採取用突片32及び栓体31の挿入突部34を容器開口部21に挿入するとともに、栓体31を容器筒壁部22開口端部に対して相対回転させて、螺着壁部35の内ねじ部35aを容器筒壁部22開口端部の外ねじ部22aに螺合させ、栓体31を容器筒壁部22開口端部に螺着する。これにより試料採取用具10は、
図2の状態になる。ただし
図2では図示されていないが、容器20の内部空間には、採取片部32bに採取した試料42(糞便)が存在している。
この状態で、採取した試料42(糞便)を、例えば、特許第5264239号公報に記載されるスギ花粉症の補助検査に供することができる。この場合は、採取した試料42(糞便)の中のバクテロイデス・ユニフォルミスおよびバクテロイデス・カッカエからなる群より選択される1種以上の菌種の菌数が、試料42(糞便)の1g当たり100万未満である場合に、被験者がスギ花粉症に罹患している可能性が高いと判断する。
【0051】
以上のように、本発明の試料の採取方法は様々な検査方法に利用することが可能であり、例えば、試料42が人の糞便であれば、糞便中の水分含量、アミノ酸類や脂肪酸等の腸内代謝産物(腸内分泌物を含む)の成分組成、細菌学的方法(培養法を含む)またはPCR法、次世代シーケンサーなどによる菌叢、色査計などによる色味等の検査に供することができる。また、試料42が食品であれば、栄養成分組成、細菌数などの衛生試験、環境ホルモン測定等の検査に供することができる。さらに試料42が土壌、泥等であれば、環境試験等の検査に供することができる。
【0052】
以上、本発明を最良の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の最良の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
採取片付き栓体の採取用突片は、支持片部32aの栓体底面34dからの突出寸法が採取片部32bの延在寸法に比べて小さい構成に限定されず、支持片部32aの栓体底面34dからの突出寸法が採取片部32bの延在寸法と同等以上の寸法である構成も採用可能である。
採取片付き栓体の採取用突片は、支持片部32aを有する構成に限定されず、支持片部32aが存在せず、採取片部が栓体底面から直接延出する構成も採用可能である。
【0053】
図1、
図2等に例示した採取片付き栓体30の栓体31の、筒状側壁部34a及び栓体底壁部34bによって構成された挿入突部34と、環状天壁部33とは、栓体31の螺着壁部35のその軸線方向片側端部を塞ぐ栓体天壁部を構成する。
但し、採取片付き栓体の栓体は、栓体凹部34cが存在しない構成も採用可能である。
採取片付き栓体の栓体は、栓体凹部34cが形成されておらず中実の挿入突部を有する構成や、挿入突部が存在せず螺着壁部35の軸線方向片側端部を塞ぐ円板状の栓体天壁部を有する構成も採用可能である。栓体凹部34cが形成されておらず中実の挿入突部を有する栓体は、螺着壁部35の軸線方向片側端部を塞ぐ円板状の栓体天壁部と、この栓体天壁部の面方向中央部から螺着壁部35が突出する側に突出する中実の挿入突部とを有する構成である。
【0054】
図1、
図2等に例示した採取片付き栓体30の栓体天壁部は、環状天壁部33の当接面33aとは反対側の面のみが栓体天面33bである。螺着壁部35の軸線方向片側端部を塞ぐ円板状の栓体天壁部を有する栓体の栓体天面は、栓体天壁部の螺着壁部35が突出する側とは反対側の面全体である。
螺着壁部35の軸線方向片側端部を塞ぐ円板状の栓体天壁部の栓体天面とは反対側の面の外周部には、容器開口部密閉時に容器口縁部に当接される当接面が確保される。
また、螺着壁部35の軸線方向片側端部を塞ぐ円板状の栓体天壁部を有する採取片付き栓体の採取用突部は、栓体における容器開口部密閉時に容器内側空間に臨む栓体底面の外周部から栓体天面とは反対の側へ延出される。栓体底面は、栓体の中実の挿入突部の突端面、あるいは、挿入突部が形成されていない円板状の栓体天壁部の栓体天面とは反対側の面におけるその外周部の当接面よりも内側部分、である。
【0055】
採取片付き栓体の栓体の螺着壁部は、栓体中心軸線を中心とする円筒状の構成に限定されない。螺着壁部は、その外周の栓体中心軸線に垂直の断面形状が矩形、六角形等の多角形状の構成であっても良い。
【0056】
採取片付き栓体は、容器筒壁部22開口端部外周に螺着可能な螺着壁部を有する構成に限定されない。
採取片付き栓体は、容器筒壁部22開口端部外周に螺着可能な螺着壁部が存在せず、容器筒壁部22開口端部に挿入して容器筒壁部22に脱着可能に取り付けられる部分(以下、挿入取付部、とも言う)が確保された栓体を有する構成も採用可能である。栓体は、容器筒壁部22開口端部内周に螺着可能な挿入取付部を有する構成や、容器筒壁部22開口端部に嵌合可能な挿入取付部を有する構成も採用可能である。
挿入取付部を有する栓体の栓体底面は、挿入取付部の、容器筒壁部22開口端部への挿入時に容器内側空間に臨む面である。螺着壁部が存在せず挿入取付部を有する栓体は、栓体底面とは反対の側に栓体天面を有する。螺着壁部が存在せず挿入取付部を有する採取片付き栓体の採取用突部は、挿入取付部に確保された栓体底面外周部から栓体天面とは反対の側へ延出する。