(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6373196
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
G02B6/44 366
G02B6/44 371
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-7843(P2015-7843)
(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公開番号】特開2016-133611(P2016-133611A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】星野 豊
(72)【発明者】
【氏名】石村 友洋
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昇
(72)【発明者】
【氏名】浜口 真弥
(72)【発明者】
【氏名】中川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】柴田 征彦
【審査官】
右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−234361(JP,A)
【文献】
特開2013−156536(JP,A)
【文献】
特開2013−097320(JP,A)
【文献】
特開2000−241685(JP,A)
【文献】
特開2009−204801(JP,A)
【文献】
特開2016−075815(JP,A)
【文献】
米国特許第04386496(US,A)
【文献】
特開2014−006376(JP,A)
【文献】
特開2015−052692(JP,A)
【文献】
特開平08−334662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバケーブルであって、
複数の光ファイバからなる光ファイバユニットと、
外周面に複数の溝を有するスロットロッドと、
前記スロットロッドの外周に設けられる外被と、
を具備し、
前記溝に、複数の前記光ファイバユニットが収容され、
複数の前記光ファイバユニットが、前記溝内で撚られていて、
前記光ファイバユニット内において、前記光ファイバが撚られていて、
前記溝は、前記スロットロッドの長手方向に対して一方向または両方向に螺旋状に形成され、
前記光ファイバユニットの撚りピッチは、前記溝の螺旋ピッチよりも小さく、
前記光ファイバユニットは、複数の光ファイバが部分的に接着されたテープ心線であり、
隣り合う前記光ファイバ同士の接着部が、前記光ファイバの軸方向に対して千鳥状に形成されることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
光ファイバケーブルであって、
複数の光ファイバからなる光ファイバユニットと、
外周面に複数の溝を有するスロットロッドと、
前記スロットロッドの外周に設けられる外被と、
を具備し、
前記溝に、複数の前記光ファイバユニットが収容され、
複数の前記光ファイバユニットが、前記溝内で撚られていて、
前記光ファイバユニット内において、前記光ファイバが撚られていて、
前記溝は、前記スロットロッドの長手方向に対して一方向または両方向に螺旋状に形成され、
前記光ファイバユニットの撚りピッチは、前記溝の螺旋ピッチよりも小さく、
前記光ファイバユニットは、複数の前記光ファイバがバンドル材によって巻き付けられて形成されることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記溝の断面積に対して、前記溝に収容された前記光ファイバユニットまたは前記光ファイバの断面積の和が占める割合が50%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記光ファイバユニットの撚りピッチは、前記溝の螺旋ピッチの1/2以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの伝送損失ばらつきを抑制し、分岐作業性にも優れる光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スロットロッドが使用された光ファイバケーブルが使用されている。スロットロッドの外周面には、複数の溝が形成され、溝には複数の光ファイバが収容される。
【0003】
スロットロッド外周面の溝は、スロットロッドの長手方向に対して、あるピッチで、一方向(S型)または交互に方向を変えるような(SZ型)螺旋の軌跡を描いている。すなわち、光ファイバケーブルの周方向における光ファイバの位置が、光ファイバケーブルの長手方向に対して変化する。
【0004】
このようなスロットロッドを用いることで、光ファイバケーブルが曲げられた際、光ファイバケーブルの長手方向の各部で、各光ファイバを、ケーブルの曲げ中心に対しての外側と内側の両方に位置させることができる。このため、光ファイバの伝送損失を均一にし、伝送損失増加を抑制することができる。
【0005】
このような、スロットロッドとしては、SZ型のスロットロッドの溝の軌跡を特定したものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−258470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、例えば、溝内にテープ心線などの光ファイバユニットを収納している光ファイバケーブルにおいては、収納溝内の一番外側の光ファイバは常に溝の外側に配置された状態となり、一番内側の光ファイバは常に内側に配置された状態となる。このため、溝自体が螺旋状に形成されていたとしても、溝内の外側と内側の光ファイバの間では、伝送損失に差が生じる恐れがある。
【0008】
特に、溝の断面積が小さく、光ファイバの数が多い場合には、溝内において光ファイバが自由に移動することができない。このため、溝内の一番外側の光ファイバは常に外側に配置された状態となり、一番内側の光ファイバは常に内側に配置された状態となる。
【0009】
しかし、溝内での位置による伝送損失ばらつきを抑制するため、例えば、単心の光ファイバを収納し、溝内の光ファイバを比較的自由に動くことができるようにすると、光ファイバの占積率が低下し、効率が悪い。
【0010】
一方、溝内の光ファイバが自由に動けないような占積率が高い場合、光ファイバの分岐作業において、溝の外側の光ファイバは容易に取り出すことができるが、溝の内側の光ファイバを取り出すことが困難となる。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、光ファイバの伝送損失ばらつきを抑制し、分岐作業性にも優れる光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達するために
第1の発明は、光ファイバケーブルであって、複数の光ファイバからなる光ファイバユニットと、外周面に複数の溝を有するスロットロッドと、前記スロットロッドの外周に設けられる外被と、を具備し、前記溝に、複数の前記光ファイバユニットが収容され、複数の前記光ファイバユニットが、前記溝内で撚られていて、前記光ファイバユニット内において、前記光ファイバが撚られていて、前記溝は、前記スロットロッドの長手方向に対して一方向または両方向に螺旋状に形成され、前記光ファイバユニットの撚りピッチは、前記溝の螺旋ピッチよりも小さ
く、前記光ファイバユニットは、複数の光ファイバが部分的に接着されたテープ心線であり、隣り合う前記光ファイバ同士の接着部が、前記光ファイバの軸方向に対して千鳥状に形成されることを特徴とする光ファイバケーブルである。
また、第2の発明は、光ファイバケーブルであって、複数の光ファイバからなる光ファイバユニットと、外周面に複数の溝を有するスロットロッドと、前記スロットロッドの外周に設けられる外被と、を具備し、前記溝に、複数の前記光ファイバユニットが収容され、複数の前記光ファイバユニットが、前記溝内で撚られていて、前記光ファイバユニット内において、前記光ファイバが撚られていて、前記溝は、前記スロットロッドの長手方向に対して一方向または両方向に螺旋状に形成され、前記光ファイバユニットの撚りピッチは、前記溝の螺旋ピッチよりも小さく、前記光ファイバユニットは、複数の前記光ファイバがバンドル材によって巻き付けられて形成されることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0013】
前記溝の断面積に対して、前記溝に収容された前記光ファイバユニットまたは前記光ファイバの断面積の和が占める割合が50%以上であることが望ましい。
【0016】
前記光ファイバユニットの撚りピッチは、前記溝の螺旋ピッチの1/2以下であることが望ましい。
【0017】
第1および第2の発明によれば、溝内に収容された複数の光ファイバユニットが撚られているため、各光ファイバの溝内における位置を変化させることができる。このため、より確実に、光ファイバの伝送損失ばらつきを抑制することができる。
【0018】
また、光ファイバユニット内において、各光ファイバが撚られていれば、さらに各光ファイバの溝内における位置を変化させて、均一化することができる。
【0019】
光ファイバユニットとしては、間欠的に接着されたテープ心線を用いれば、光ファイバユニット同士の撚りあわせが容易である。また、光ファイバユニットとしては、光ファイバがバンドル材によってバンドル化されたものであってもよい。
【0020】
また、スロットロッドの螺旋ピッチよりも、光ファイバユニット同士の撚りあわせのピッチを短くすることで、溝の螺旋1ピッチ内においても、溝内における光ファイバの位置を1周期以上変化させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光ファイバの伝送損失ばらつきを抑制し、分岐作業性にも優れる光ファイバケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(a)光ファイバケーブル1を示す断面図、(b)はスロットロッド3を示す図。
【
図3】撚りあわせられた光ファイバユニット7を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1(a)は、光ファイバケーブル1を示す断面図である。光ファイバケーブル1は、スロットロッド3、光ファイバユニット7、テンションメンバ9、引き裂き紐11、外被13等から構成される。
【0024】
図1(b)は、スロットロッド3を示す図である。スロットロッド3は、可撓性を有する樹脂で構成される。スロットロッド3の外周部には、複数の溝5が形成される。溝5は、スロットロッド3の長手方向に連続する。なお、溝5の形状、配置数や深さは図示した例には限られない。
【0025】
溝5は、スロットロッド3の長手方向に対して一方向または両方向に螺旋状に形成される。したがって、スロットロッド3の長手方向に対して、各溝5の周方向位置が変化する。
【0026】
スロットロッド3の中央には、テンションメンバ9が設けられる。また、溝5内には、複数の光ファイバユニット7が収容される。溝5に光ファイバユニット7が収容された状態で、図示を省略した押さえ巻きテープが巻き付けられて、引き裂き紐11とともに、外被13で被覆される。
【0027】
光ファイバ17の分岐作業を行う際には、引き裂き紐11によって、外被13を裂き、所望の溝5から光ファイバユニット7を取り出す。さらに、光ファイバユニット7から、必要な光ファイバ17を選び出して、他の光ファイバ等と接続する。
【0028】
図2は、光ファイバユニット7を示す図である。光ファイバユニット7は、複数の光ファイバ17とバンドル材15によって構成される。バンドル材15は、複数の光ファイバ17の外周に巻き付けられる。すなわち、複数の光ファイバ17がバンドル材15によって束ねられる。バンドル材15は、例えば、ポリエステル等の樹脂テープを用いることができる。
【0029】
図3は、溝5内に収容されている複数の光ファイバユニット7を示す図である。なお、
図3においては、個々の光ファイバ17およびバンドル材15の図示を省略する。光ファイバユニット7同士は、撚りあわせられた状態で溝5内に収容されている。このため、光ファイバユニット7の溝5内での位置が、光ファイバケーブル1の長手方向の各部において変化する。すなわち、光ファイバユニット7を構成する各光ファイバ17の溝5内での位置が、光ファイバケーブル1の長手方向の各部において変化する。
【0030】
このため、光ファイバケーブル1が曲げられた際に、光ファイバケーブル1の長手方向において、各光ファイバ17の曲げ中心に対する位置(例えば曲げの外側、内側)が、長手方向で変化する。この結果、光ファイバケーブル1の長手方向に対して溝5が螺旋状に形成される効果と相まって、各光ファイバ17に生じる伝送損失を均一にすることができる。すなわち、特定の光ファイバ17に生じる伝送損失が増大することを抑制することができる。
【0031】
なお、このような効果は、溝5内において、光ファイバユニット7が自由に移動できないような場合に特に効果的である。例えば、溝5の断面積に対する、光ファイバユニット7(光ファイバ17)の断面積の和が占める割合(以下、占積率)が大きい場合に、特に有効である。例えば、占積率が40%以上の場合には、光ファイバユニット7(光ファイバ17)の溝5の外側と内側の移動が困難となる。このため、本発明は、特に、占積率が50%以上の場合に有効である。
【0032】
ここで、スロットロッド3における溝5の螺旋ピッチP1よりも、光ファイバユニット7同士の撚りあわせのピッチP2を小さくすることが望ましい。このようにすることで、溝5の螺旋ピッチの1周期内において、光ファイバ17の溝内位置を1周期以上の周期で変化させることができる。このため、光ファイバ17の位置変化の効果を確実に高めることができる。
【0033】
さらに望ましくは、P1に対して、P2が1/2以下であることが望ましい。例えば、P1が900mmの場合、P2は、450mm以下とすることが望ましい。このようにすることで、溝5の螺旋ピッチの1周期内において、光ファイバ17の溝内位置を2周期以上の周期で変化させることができる。このため、光ファイバ17の位置変化の効果を確実に高めることができる。
【0034】
なお、P2が小さくなりすぎると、製造性が悪化する。また、撚りあわせによる伝送損失の向上の恐れがある。このため、P2は150mm以上であることが望ましい。
【0035】
なお、溝5が一方向螺旋の場合には、P1は、任意の周方向位置から同一の周方向位置に戻るまでの、スロットロッド3の長手方向の長さを指す。また、溝5が両方向螺旋(SZ型)の場合には、例えば螺旋方向の正方向から逆方向への変化点から、正方向から逆方向への変化点までのスロットロッド3の長手方向の長さを指す。
【0036】
なお、本発明では、さらに、光ファイバユニット7内においても、各光ファイバ17を撚りあわせてもよい。すなわち、光ファイバ17をより合わせた状態で、バンドル構造を形成して、光ファイバユニット7を形成してもよい。この場合でも、光ファイバユニット7同士は撚りあわせられた状態で溝5内に収容される。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態によれば、光ファイバユニット7同士が溝5内で撚りあわせられるため、光ファイバユニット7(光ファイバ17)の溝5内での位置が、光ファイバケーブル1の長手方向において変化する。このため、各光ファイバユニット7同士の間で、伝送損失に差が生じにくい。
【0038】
このように、光ファイバユニット7の位置による影響が小さくなるため、特定の光ファイバユニット7(光ファイバ17)の伝送損失が大きくなることを防止することができる。
【0039】
また、光ファイバユニット7の撚りピッチP2を、スロットロッド3の溝5の螺旋ピッチP1よりも小さくすることで、溝5の螺旋による効果に加え、光ファイバユニット7の撚りあわせの効果を有効に得ることができる。
【0040】
また、光ファイバユニット7が撚りあわせられているため、光ファイバ17の分岐作業の際に、外被13を裂いても、光ファイバユニット7が溝5から飛び出すことがない。
【0041】
また、溝5の内側に配置されている光ファイバユニット7であっても、少し位置をずらせば、溝5の外側に位置するため、光ファイバユニット7の取り出し性にもすぐれる。特に、占積率が大きい場合には、内側の光ファイバユニット7を取り出すのが困難であるが、本発明では、占積率に関係なく、任意の光ファイバユニット7を容易に取り出すことができる。
【0042】
なお、以上の説明では、バンドル材15を用いた光ファイバユニット7を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、
図4に示しように、テープ心線である光ファイバユニット7aを適用することもできる。
【0043】
光ファイバユニット7aは、複数の光ファイバ17が並列に接着されて構成される。なお、図示した例では4本の光ファイバ17により構成される例を示すが、本発明はこれに限られず、複数の光ファイバ17からなる光ファイバテープ心線であれば適用可能である。
【0044】
光ファイバユニット7aは、隣り合う光ファイバ17同士が、長手方向に所定の間隔をあけて間欠で接着部材19により接着される。隣り合う光ファイバ17同士の接着部は、光ファイバユニット7aの長手方向に対して千鳥状に配置される。すなわち、
図4に示すように、光ファイバユニット7aの長手方向に対する光ファイバ17間の隣り合う接着位置が互いに略半ピッチずれて、同一ピッチで形成される。
【0045】
このように、光ファイバユニット7aを用いた場合でも、溝5内で、複数の光ファイバユニット7a同士が撚り合わされるため、前述した効果と同一の効果を奏することができる。また、光ファイバユニット7aを用いれば、互いの撚りあわせがより容易である。
【0046】
なお、テープ心線としては、上述した間欠接着ではなく、長手方向が全て接着されたテープ心線も適用可能である。また、接着位置が千鳥状ではなく、幅方向に一括して接着された、間欠接着テープ心線も適用可能である。
【0047】
また、本発明では、
図5に示す光ファイバケーブル1aにも適用可能である。光ファイバケーブル1aは、スロットロッド3aが用いられる。スロットロッド3aは、断面において空間を複数に区分するものである。本発明では、このように区分された空間自体を、溝5と称する。すなわち、スロットロッド3aの外周に複数の溝5が形成されるものと定義する。
【0048】
このように、本発明では、スロットロッドの形態は問わず、断面において複数に区分された空間に、それぞれ複数の光ファイバユニットが収容されているものであれば、いずれの形態に対しても適用可能である。
【0049】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0050】
1、1a………光ファイバケーブル
3、3a………スロットロッド
5………溝
7、7a………光ファイバユニット
9………テンションメンバ
11………引き裂き紐
13………外被
15………バンドル材
17………光ファイバ
19………接着部材