(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記種結晶選択工程、前記接触工程および前記III族窒化物結晶液相成長工程において、前記III族窒化物結晶層および前記マスクから構成されたユニット、または、前記基板および前記III族窒化物結晶から構成されたユニットを、複数、近接させて並列に配置し、
前記III族窒化物結晶液相成長工程において、前記III族窒化物結晶の成長により、互いに隣接する前記各ユニットから成長した前記III族窒化物結晶どうしを結合させる、請求項4に記載の製造方法。
製造される前記第2のIII族窒化物結晶において、XRC(X線ロッキングカーブ回折法)による半値幅の、対称反射成分(002)および非対称反射成分(102)の半値幅が、それぞれ300秒以下である請求項1から16のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について例を挙げて説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0017】
本発明の製造方法は、前記III族窒化物結晶液相成長工程において、互いに隣接する前記III族窒化物結晶どうしの一部分を結合させないことによる貫通孔を残したまま、または、さらなる結晶成長により前記貫通孔が塞がって出来た凹部を残したまま、前記第1のIII族窒化物結晶とすることが好ましい。この場合において、前記第1のIII族窒化物結晶に極性反転領域が実質的に存在しないことが好ましい。また、前記第2のIII族窒化物結晶製造工程において、前記第1のIII族窒化物結晶に残した前記貫通孔または前記凹部上を、前記第2のIII族窒化物結晶が埋め込むか、または覆うように前記第2のIII族窒化物結晶を成長させることが好ましい。また、前記第2のIII族窒化物結晶製造工程において製造した前記第2のIII族窒化物結晶中に、極性反転領域が実質的に存在しないことが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法は、前記第1のIII族窒化物結晶製造工程において、前記種結晶が、六方晶であり、かつ、前記種結晶選択工程において、互いに隣接する前記種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わないように前記種結晶を配置することが好ましい。この場合において、互いに隣接する前記種結晶のa軸どうしまたはc軸どうしがほぼ重なり合うように前記種結晶を配置することが好ましい。または、前記種結晶が、c面を有し、前記種結晶選択工程において、前記c面を前記種結晶の結晶成長面として選択し、互いに隣接する前記種結晶のa軸どうしがほぼ重なり合うように前記種結晶を配置することが好ましい。その場合、前記III族窒化物結晶液相成長工程において、前記互いに隣接する種結晶から成長したIII族窒化物結晶の六角形の頂点どうしがほぼ重なりあうように前記種結晶を配置することがさらに好ましい。また、前記種結晶から成長した各結晶の側面どうしがほぼ重なり合わないように前記種結晶を配置することが好ましい。
【0019】
前記第1のIII族窒化物結晶製造工程においては、例えば、
前記種結晶選択工程において、
前記予め準備されたIII族窒化物が、基板上に配置された複数のIII族窒化物結晶であり、
前記複数のIII族窒化物結晶を、前記種結晶として選択するか、
または、
前記種結晶選択工程において、
前記予め準備されたIII族窒化物が、III族窒化物結晶層であり、前記III族窒化物結晶層上に、複数の貫通孔を有するマスクが配置され、
前記貫通孔から露出した前記III族窒化物結晶層の面を、前記種結晶として選択してもよい。
【0020】
前記種結晶選択工程において、
前記予め準備されたIII族窒化物が、基板上に配置された複数のIII族窒化物結晶であり、
前記複数のIII族窒化物結晶を、前記種結晶として選択し、かつ、
前記基板上に配置された複数のIII族窒化物結晶は、前記基板上に形成されたIII族窒化物結晶層の一部を除去して形成されたIII族窒化物結晶であることが好ましい。
【0021】
前記種結晶選択工程において、
前記予め準備されたIII族窒化物が、III族窒化物結晶層であり、前記III族窒化物結晶層上に、複数の貫通孔を有するマスクが配置され、
前記貫通孔から露出した前記III族窒化物結晶層の面を、前記種結晶として選択し、かつ、
前記マスクが、前記III族窒化物結晶層に密着していないことが好ましい。
【0022】
前記種結晶選択工程、前記接触工程および前記結晶成長工程において、前記III族窒化物結晶層および前記マスクから構成されたユニット、または、前記基板および前記III族窒化物結晶から構成されたユニットを、複数、近接させて並列に配置し、
前記結晶成長工程において、前記III族窒化物結晶の成長により、互いに隣接する前記各ユニットから成長した前記III族窒化物結晶どうしを結合させることが好ましい。
【0023】
前記複数のユニットを近接させて並列に配置する場合、前記第1のIII族窒化物結晶製造工程において、前記種結晶が、六方晶であり、かつ、互いに隣接する各ユニット間において、互いに隣接する前記種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わないように前記種結晶を配置することが好ましい。その場合、互いに隣接する各ユニット間において、互いに隣接する前記種結晶のa軸どうしまたはc軸どうしがほぼ重なり合うように前記種結晶を配置することがより好ましい。または、前記種結晶が、c面を有し、前記種結晶選択工程において、前記c面を前記種結晶の結晶成長面として選択し、互いに隣接する各ユニット間において、互いに隣接する前記種結晶のa軸どうしがほぼ重なり合うように前記種結晶を配置することがより好ましい。その場合、前記III族窒化物結晶液相成長工程において、前記互いに隣接する各ユニット間の、互いに隣接する種結晶から成長したIII族窒化物結晶の六角形の頂点どうしが、ほぼ重なりあうように前記種結晶を配置することがさらに好ましい。
【0024】
前記マスクまたは前記基板の材質は、特に限定されないが、Al
xGa
1−xN(0<x≦1)、Al
xGa
1−xN(0<x≦1)の酸化物、ダイヤモンドライクカーボン、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、炭化珪素、酸化イットリウム、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、タンタル、レニウム、およびタングステンからなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。または、前記マスクもしくは前記基板の材質は、サファイア、III族元素窒化物、ガリウム・ヒ素(GaAs)、シリコン(Si)、炭化珪素(SiC)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、リン化ガリウム(GaP)、ホウ素化ジルコニア(ZrB
2)、酸化リチウムガリウム(LiGaO
2)、BP、MoS
2、LaAlO
3、NbN、MnFe
2O
4、ZnFe
2O
4、ZrN、TiN、MgAl
2O
4、NdGaO
3、LiAlO
2、ScAlMgO
4、Ca
8La
2(PO
4)
6O
2、等であっても良い。
【0025】
また、前記マスク貫通孔、または前記基板上に配置されたIII族窒化物結晶の形状も特に限定されないが、ドット形状であることが好ましい。この場合において、前記各マスク貫通孔、または前記基板上に配置された各III族窒化物結晶が、ほぼ等間隔に配列されていることが好ましく、前記各マスク貫通孔、または前記基板上に配置された各III族窒化物結晶が、ほぼ同面積であることが好ましい。これらにより、例えば、前記各種結晶から成長した各結晶の会合時刻を揃えることができる。その結果、例えば、前記第1のIII族窒化物結晶に残ったボイド(前記貫通孔または前記凹部)が等サイズかつ等間隔で周期配列するようになり、その後の気相成長が行いやすくなる。なお、前記各マスク貫通孔、または前記基板上に配置された各III族窒化物結晶が「ほぼ同面積」とは、最も面積の小さいマスク貫通孔または基板上に配置されたIII族窒化物結晶の面積が、最も面積の大きいマスク貫通孔または基板上に配置されたIII族窒化物結晶に対し、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、理想的には100%である。また、前記各マスク貫通孔または前記基板上に配置された各III族窒化物結晶が「ほぼ等間隔」とは、隣接する前記各マスク貫通孔または前記基板上に配置された各III族窒化物結晶間の中心間距離(間隔)において、最も短い中心間距離(間隔)が、最も長い中心間距離(間隔)に対し、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、理想的には100%である。前記ドットの直径は、0.01〜10mmの範囲であることが好ましい。互いに隣接する前記マスク貫通孔どうし、または、互いに隣接する前記基板上に配置されたIII族窒化物結晶どうしの中心間距離は、特に限定されないが、0.01mm以上であることが好ましい。
【0026】
本発明の製造方法において、前記第1のIII族窒化物結晶が、Al
xGa
yIn
1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)で表されるIII族窒化物結晶であることが好ましく、GaNであることが特に好ましい。
【0027】
本発明の製造方法の前記第2のIII族窒化物結晶製造工程において、前記気相成長法は、特に限定されないが、HVPE(Hydride. Vapor Phase Epitaxy)法であることが好ましい。
【0028】
また、前記第2のIII族窒化物結晶製造工程において、前記気相成長法が、III族元素ハロゲン化物と窒素含有ガスとを反応させて前記第2のIII族窒化物結晶を製造する方法であることが好ましい。この場合において、前記III族元素ハロゲン化物は、例えば、MX
n(MはAl、Ga、またはInであり、Xはハロゲンであり、nは自然数(好ましくは、n=1または3)である。)で表され、1種類のみ用いても、複数種類併用しても良い。前記III族元素ハロゲン化物は、AlCl
3、GaCl、GaCl
3、およびInCl
3からなる群から選択される少なくとも一つであることがより好ましい。また、前記窒素含有ガスが、NH
3であることが好ましい。
【0029】
本発明の製造方法は、さらに、前記第2のIII族窒化物結晶をスライスして1枚以上のIII族窒化物結晶基板を切り出すスライス工程を含むことが好ましい。
【0030】
また、本発明の製造方法は、さらに、前記第1のIII族窒化物結晶の表面を研磨する第1のIII族窒化物結晶研磨工程を含み、前記第2のIII族窒化物結晶製造工程において、前記第1のIII族窒化物結晶研磨工程で研磨した面上に、気相成長法により第2のIII族窒化物結晶を製造することが好ましい。
【0031】
本発明の製造方法において、前記第2のIII族窒化物結晶が、Al
xGa
yIn
1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)で表されるIII族窒化物結晶であることが好ましく、GaNであることが特に好ましい。
【0032】
本発明の製造方法において、製造される前記第2のIII族窒化物結晶の長径は、特に限定されないが、15cm以上であることが好ましい。また、製造される前記第2のIII族窒化物結晶の転位密度も特に限定されないが、1.0×10
7cm
−2以下であることが好ましい。また、製造される前記第2のIII族窒化物結晶において、XRC(X線ロッキングカーブ回折法)による半値幅は、特に限定されないが、対称反射成分(002)および非対称反射成分(102)の半値幅が、それぞれ300秒以下であることが好ましい。
【0033】
以下、本発明の実施形態について、さらに具体的に説明する。ただし、以下の実施形態は例示であり、本発明を何ら限定しない。
【0034】
<1.本発明の製造方法>
本発明の製造方法は、前述のとおり、
液相成長法により第1のIII族窒化物結晶を製造する第1のIII族窒化物結晶製造工程と、
前記第1のIII族窒化物結晶上に、気相成長法により第2のIII族窒化物結晶を製造する第2のIII族窒化物結晶製造工程とを含む、III族窒化物結晶の製造方法であって、
前記第1のIII族窒化物結晶製造工程は、
予め準備されたIII族窒化物の複数の部分を、III族窒化物結晶の生成および成長のための種結晶として選択する種結晶選択工程と、
前記種結晶の表面をアルカリ金属融液に接触させる接触工程と、
窒素を含む雰囲気下において、III族元素と前記窒素とを前記アルカリ金属融液中で反応させてIII族窒化物結晶を生成させ成長させるIII族窒化物結晶液相成長工程とを含み、
前記III族窒化物結晶液相成長工程において、前記複数の種結晶から成長した複数のIII族窒化物結晶の成長により、前記複数のIII族窒化物結晶を結合させて前記第1のIII族窒化物結晶とすることを特徴とする。
【0035】
一般的なIII族窒化物結晶の製造方法では、大サイズで、かつ、歪み、転位、反り等の欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶の製造は、きわめて困難である。
【0036】
前述のとおり、III族窒化物結晶の製造方法には、液相成長法および気相成長法があるが、それぞれ問題点があった。すなわち、液相成長法で微小種結晶を長時間かけて大サイズに成長させることは極めて難しい。また、液相成長法では、成長した結晶中にインクルージョン(液体または小さな雑晶等)が入り、それが結晶の欠陥につながるおそれがある。一方、気相成長法では、サファイア等の基板の格子定数、熱膨張係数等がIII族窒化物結晶とかなり異なるために、III族窒化物結晶に、歪み、転位、反り等の欠陥が生じるおそれがある。これを解決するために、大サイズで、かつ、歪み、転位、反り等の欠陥が少なく高品質であるIII族窒化物基板を種結晶として用いることが考えられるが、そのような種結晶の入手は、非常に困難である。
【0037】
本発明者らは、この問題を解決するために鋭意検討の結果、本発明に到達した。本発明の製造方法では、前述のとおり、液相成長法により前記第1のIII族窒化物結晶を製造する(前記「第1のIII族窒化物結晶製造工程」)。この工程では、前述のとおり、複数の種結晶から成長させた複数のIII族窒化物結晶を結合させて前記第1のIII族窒化物結晶とする。この第1のIII族窒化物結晶製造工程により、例えば、大サイズで、かつ、歪み、転位、反り等の欠陥が少なく高品質である第1のIII族窒化物結晶を得ることが可能である。さらに、それを種結晶として気相成長法により前記第2のIII族窒化物結晶を製造する(前記「第2のIII族窒化物結晶製造工程」)。これにより、大サイズで、かつ、歪み、転位、反り等の欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造することができる。
【0038】
図1(a)〜(c)の工程断面図に、本発明の製造方法の一例を模式的に示す。すなわち、まず、
図1(a)に示す通り、複数の種結晶1003aが設けられた基板1002を準備する。同図では、種結晶1003aは、前記のとおり基板1002上に設けられているが、基板は、必要に応じ、用いなくても良いし、用いても良い。つぎに、
図1(b)に示す通り、複数の種結晶1003aから成長した複数のIII族窒化物結晶を結合させて第1のIII族窒化物結晶1003とする(第1のIII族窒化物結晶製造工程)。さらに、
図1(c)に示す通り、第1のIII族窒化物結晶1003上に、気相成長法により第2のIII族窒化物結晶1004を製造する(第2のIII族窒化物結晶製造工程)。
【0039】
また、本発明の製造方法は、前記第1のIII族窒化物結晶製造工程および前記第2のIII族窒化物結晶製造工程以外の工程を適宜含んでいても良いし、含んでいなくても良い。例えば、本発明の製造方法は、第1のIII族窒化物結晶と第2のIII族窒化物結晶との間に他の構成要素(例えば、他のIII族窒化物結晶層等)を1または複数設ける工程を、含んでいても良いし、含んでいなくても良い。すなわち、本発明の製造方法により製造される本発明のIII族窒化物結晶は、
図2に示すように、第1のIII族窒化物結晶1003と第2のIII族窒化物結晶1004との間に、他の層1005が存在しても良く、存在しなくても良い。他の層1005は、存在する場合は、1でも複数でも良い。他の層1005は、例えば、III族窒化物結晶でも良いし、他の物質でも良い。例えば、第1のIII族窒化物結晶と第2のIII族窒化物結晶との格子定数、熱膨張係数等が異なる場合に、緩衝層とする目的で他の層1005を設けても良い。他の層1005の製造方法も特に限定されず、例えば、気相成長法でも液相成長法でも良い。
【0040】
以下、本発明の製造方法の例についてさらに詳細に説明する。
【0041】
<1−1.第1のIII族窒化物結晶製造工程(液相成長法)>
前記第1のIII族窒化物結晶製造工程は、前述のとおり、
予め準備されたIII族窒化物の複数の部分を、III族窒化物結晶の生成および成長のための種結晶として選択する種結晶選択工程と、
前記種結晶の表面をアルカリ金属融液に接触させる接触工程と、
窒素を含む雰囲気下において、III族元素と前記窒素とを前記アルカリ金属融液中で反応させてIII族窒化物結晶を生成させ成長させるIII族窒化物結晶液相成長工程とを含み、
前記III族窒化物結晶液相成長工程において、前記複数の種結晶から成長した複数のIII族窒化物結晶の成長により、前記複数のIII族窒化物結晶を結合させて前記第1のIII族窒化物結晶とする。
【0042】
<1−1−2.種結晶の配置関係、形状、大きさ等>
前記第1のIII族窒化物結晶製造工程においては、前述のとおり、前記種結晶が、六方晶であり、前記種結晶選択工程において、互いに隣接する前記種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わないように前記種結晶を配置することが好ましい。これにより、前記複数のIII族窒化物結晶が、それらの境界において、整然と結合(会合)しやすいため、前記第1のIII族窒化物結晶の結晶欠陥をより少なくすることができる。
【0043】
また、本発明の製造方法において、互いに隣接する前記種結晶のa軸どうしまたはc軸どうしがほぼ重なり合うように前記種結晶を配置することが好ましい。なお、六方晶において、「a軸」は、a1、a2、a3の3本があり、全て等価である。本発明において、隣接する2つの種結晶のa軸どうしがほぼ重なり合う状態とは、前記3本のa軸のうち任意の1本どうしがほぼ重なり合う状態をいう。また、本発明において、「ほぼ重なり合う」または「実質的に重なり合う」は、完全に重なり合う場合、および、若干ずれているが実質的に重なり合っている場合の両方を含む。他の状態について「ほぼ」または「実質的に」と表す場合も、同様である。
【0044】
大サイズのIII族窒化物種結晶からIII族窒化物結晶を成長させると、成長させたIII族窒化物結晶が、前記種結晶の結晶欠陥を受け継いでしまう。本発明者らは、この問題を解決するために、小さなIII族窒化物種結晶からIII族窒化物結晶を成長させて大きくすることを見出した。このように、小さなIII族窒化物種結晶を用いることで、成長するIII族窒化物結晶の欠陥を少なくできる。その理由は必ずしも明らかでないが、大きいIII族窒化物種結晶を用いる場合と比較して、成長するIII族窒化物結晶が、前記種結晶の結晶欠陥を受け継ぎにくいためと考えられる。
【0045】
しかし、小さなIII族窒化物種結晶を用いた場合、成長させて得られるIII族窒化物結晶の大きさに限界がある。そこで、大きい結晶を得るためには、複数の種結晶から成長した複数のIII族窒化物結晶を、それらの成長により結合させれば良い。この場合、前記複数の結晶が成長により結合する過程で、それらの結合部に欠陥が生じることを防止することが好ましい。そのためには、前述のとおり、六方晶である種結晶から成長した結晶のm面どうしを実質的に接合させないこと、すなわち、互いに隣接する前記種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わないように前記種結晶を配置することが好ましい。これにより、前記2つの種結晶の結合部における欠陥を防止または低減することができる。また、互いに隣接する前記種結晶のa軸どうしまたはc軸どうしがほぼ重なり合う(実質的に重なり合う)ように前記種結晶を配置すると、さらに欠陥が少なく高品質な結晶を製造できる。
【0046】
前記第1のIII族窒化物結晶において、転位密度は、特に限定されないが、好ましくは1.0×10
7cm
−2以下、より好ましくは1.0×10
4cm
−2以下、さらに好ましくは1.0×10
3cm
−2以下、さらに好ましくは1.0×10
2cm
−2以下である。前記転位密度は、理想的には0であるが、通常、0であることはあり得ないので、例えば、0を超える値であり、測定機器の測定限界値以下であることが特に好ましい。なお、前記転位密度の値は、例えば、結晶全体の平均値であっても良いが、結晶中の最大値が前記値以下であれば、より好ましい。また、本発明のIII族窒化物結晶において、XRCによる半値幅の、対称反射成分(002)および非対称反射成分(102)の半値幅は、それぞれ、例えば300秒以下、好ましくは100秒以下、より好ましくは30秒以下であり、理想的には0である。
【0047】
前述のとおり、前記のIII族窒化物結晶製造工程においては、互いに隣接する前記種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わないように前記種結晶を配置することが好ましい。また、互いに隣接する前記種結晶のa軸どうしまたはc軸どうしがほぼ重なり合うように前記種結晶を配置することがより好ましい。以下、
図18〜23を用いて、互いに隣接する前記種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わない配置、および、互いに隣接する前記種結晶のa軸どうしまたはc軸どうしがほぼ重なり合う配置について説明する。ただし、これらの図は例示であって、本発明を限定しない。なお、以下において、互いに隣接する種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わない条件を「条件(M)」ということがあり、互いに隣接する2つの種結晶のa軸どうしがほぼ重なり合う(実質的に重なり合う)条件を「条件(A)」ということがあり、互いに隣接する2つの種結晶のc軸どうしがほぼ重なり合う(実質的に重なり合う)条件を「条件(C)」ということがある。
【0048】
まず、
図18(a)〜(e)を例に用いて、互いに隣接する2つの種結晶のa軸どうしがほぼ重なり合う(実質的に重なり合う)条件(条件(A))、および、互いに隣接する種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わない条件(条件(M))について説明する。なお、本発明において、前記種結晶の結晶成長面は、特に限定されないが、例えば、c面、m面、a面またはその他の任意の面でも良く、c面またはm面がより好ましい。
図18(a)〜(e)は、c面を有する種結晶(c面種結晶)の前記c面を結晶成長面として選択し、前記c面から結晶が成長する場合を示す。
【0049】
図18(a)〜(e)は、それぞれ、互いに隣接する2つの種結晶の配置を例示する平面図である。前記各図において、c面(結晶成長面)は、紙面と平行である。また、前記各図には、説明の便宜のために、ドット状の2つの種結晶から2つの六角形の結晶が生成した場合の、前記結晶を示す。これらの結晶における3本のa軸は、前記六角形の中心を通る3本の対角線と重なるとともに、これらの結晶の生成由来である種結晶のa軸と一致する。
【0050】
まず、前記条件(A)について説明する。
図18(a)に、前記条件(A)を満たす配置の一例として、互いに隣接する2つの種結晶のa軸どうしが完全に重なり合う状態を示す。本発明のIII族窒化物結晶の製造方法においては、互いに隣接する2つの種結晶が、このような配置となることが理想的である。ただし、前記条件(A)を満たすためには、互いに隣接する種結晶のa軸どうしがほぼ重なり合えば良い。前記条件(A)において、前記a軸どうしがほぼ重なり合う(実質的に重なり合う)状態は、
図18(a)のように完全に重なり合う状態も含むが、これのみに限定されず、例えば、前記a軸どうしが若干ずれた状態も含む。具体的には、例えば、
図18(b)のように、一方の種結晶のa軸が、他方の種結晶のa軸から若干傾いた状態であっても良い。また、
図18(a)および(b)のように、2つの種結晶のa軸どうしが重なる、または交わる配置に限定されず、
図18(e)のように、2つの種結晶のa軸どうしが平行であって、若干ずれた状態でも良い。
【0051】
前記条件(A)において、前記a軸どうしのなす角は、30度(°、degree)未満であり、なるべく小さいことが好ましい。前記a軸どうしのなす角は、好ましくは、5度以下、より好ましくは1度以下、さらに好ましくは0.1度以下、さらに好ましくは0.02度以下であり、特に好ましくは、0度である。なお、
図18(a)のように、前記a軸どうしが完全に重なり合う場合、および、
図18(e)のように、前記a軸どうしが平行である場合は、前記a軸どうしのなす角は、0度である。ただし、前記a軸どうしのなす角は、通常、完全に0度となることはなく、若干の方位ズレが生じる。
【0052】
なお、前記2つの種結晶は、六方晶であるため、各3本ずつa軸を有する。本発明の前記条件(A)を満たすか否かの判断において、前記a軸およびそれらのなす角は、下記(1)〜(3)により定義するものとする。
(1) 隣接する2つの種結晶のそれぞれにおいて、3本のa軸の中から任意の1本を選択する。この選択によるa軸の組み合わせは、3×3=9通り存在する。
(2) 前記(1)で選択した2本のa軸のなす角をとる。
(3) 前記(1)の9通りの組み合わせのうち、前記(2)におけるなす角が最小になるa軸の組み合わせを、前記a軸とし、その組み合わせにおけるa軸どうしのなす角(前記(2))を、a軸どうしのなす角とする。
【0053】
また、互いに隣接する2つの種結晶のa軸どうしの距離が離れ過ぎていると、前記a軸どうしが実質的に重なり合わないため、前記条件(A)を満たさない。前記a軸どうしが平行である場合の距離は、例えば、
図18(c)および(e)において、符号dで示す長さである。前記a軸どうしが平行でない場合の前記a軸どうしの距離は、一方のa軸から他方のa軸に下ろした垂線が、前記2つの種結晶のいずれかと少なくとも一点で重なる場合において、最長である垂線の長さ(例えば、図示の六角形が種結晶であると仮定した場合の、
図18(b)または(d)の符号dで示す長さ)とする。前記条件(A)において、前記a軸どうしの距離は、例えば1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下、特に好ましくは0.05mm以下、理想的には0である。なお、前記a軸どうしの距離が0である場合とは、前記a軸どうしが完全に重なり合う場合(例えば、
図18(a))をいう。
【0054】
図18(c)および(d)に、前記条件(A)を満たさない場合の例を示す。
図18(c)は、隣接する2つの種結晶のa軸どうしが平行であるが、前記a軸どうしの距離dがきわめて大きいために、前記a軸どうしが実質的に重ならない。なお、
図18(c)は、前記2つの種結晶のm軸どうしが重なっており、このために、前記2つの種結晶から生成した結晶のm面(図示の六角形における各辺)どうしが対向している。隣接する2つの種結晶どうしがこのように配置されていると、例えば、後述の比較例に示すように、前記2つの種結晶から成長した2つの結晶のm面どうしが対向した(重なり合った)状態で会合(結合)する。すなわち、互いに隣接する前記2つの種結晶から成長した各結晶のm面どうしが重なり合うため、前記条件(M)を満たさない。このような場合、会合(結合)面に結晶欠陥が生じるため、高品質なIII族窒化物結晶が得られず、本発明の目的を達成できない。すなわち、本発明では、互いに隣接する2つの種結晶から成長した2つの結晶のm面どうしが、実質的に対向しない(ほぼ重なり合わない)ことが必要である。なお、
図18(e)では、図示のように、a軸どうしの距離dが小さいために、図の2つの結晶が成長した場合に、m面どうしが対向する(重なり合う)部分が少ない。m面どうしが対向する(重なり合う)部分がきわめて少なければ、m面どうしが実質的に対向しない(ほぼ重なり合わない)といえる。本発明では、例えば、前記条件(A)を満たすことにより、互いに隣接する2つの種結晶から成長した2つの結晶のm面どうしが、実質的に対向しない(ほぼ重なり合わない)という条件を満たすことができる。なお、例えば、
図18(a)のように、互いに隣接する2つの種結晶のa軸どうしが完全に重なり合うと、これらの種結晶から成長した結晶どうしが会合(結合)するとき、後述するように、m面どうしが対向した(重なり合った)状態で会合(結合)することがない。
【0055】
また、
図18(d)は、互いに隣接する2つの種結晶のa軸どうしのなす角が30度であり、前記条件(A)を満たさない。前記a軸どうしのなす角は、なるべく小さいことが好ましく、具体的には、前述のとおりである。
【0056】
なお、
図18(c)および(d)は、いずれも、左側の種結晶の中心が、右側の種結晶のm軸と重なっている。本発明において、種結晶がドット形状の場合、一方の種結晶の中心が、他方の種結晶のm軸と重なった状態(例えば、
図18(c)および(d))でないことが好ましい。
【0057】
前記第1のIII族窒化物結晶製造工程において、前記種結晶の形状は、特に限定されないが、例えば、ドット形状が好ましい。前記ドット形状は、特に限定されないが、例えば、円、正多角形、またはそれに近い形状である。前記正多角形としては、例えば、正三角形、正四角形、正五角形、正六角形等が挙げられる。これらの中で、円または正六角形が、製造される(前記種結晶から成長する)結晶の欠陥の少なさ(等方性等)の観点から、特に好ましい。前記ドット形状の種結晶の大きさは、特に限定されないが、欠陥が少なく高品質のIII族窒化物結晶を製造する観点からは、なるべく小さいことが好ましい。ただし、III族窒化物結晶の製造効率(成長効率)の観点からは、前記ドット形状の種結晶の大きさは、小さすぎないことが好ましい。前記ドット形状の種結晶は、その結晶成長面(例えば、c面種結晶においてはc面)における直径が、例えば10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下、特に好ましくは1mm以下である。前記直径の下限値は、例えば0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上である。なお、本発明において、前記種結晶または前記III族窒化物結晶の形状が円形(真円)以外である場合、その「直径」は、「長径(最も長い径)」を表すものとする。
【0058】
また、前記種結晶の形状は、ドット形状のみに限定されず、例えば、矩形、楕円形、ストライプ形状、もしくはそれらに近い形状、またはその他の任意の形状であっても良い。ただし、製造される(前記種結晶から成長する)結晶の欠陥の少なさ(等方性等)の観点からは、ドット形状の方が好ましい。前記矩形、楕円形、ストライプ形状等の種結晶の大きさは特に限定されないが、製造される(前記種結晶から成長する)結晶の欠陥の少なさの観点から、その幅が、例えば10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下、特に好ましくは1mm以下である。前記幅の下限値は、III族窒化物結晶の製造効率(成長効率)の観点から、例えば0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上である。
【0059】
図19(a)および(b)に、c面を有する種結晶(c面種結晶)における複数の種結晶の配置の他の例を示す。これらの図において、c面(結晶成長面)は、紙面と平行である。
図19(a)は、矩形、楕円形等の種結晶から成長した細長い六角形の結晶どうしが隣接する例である。このような場合も、
図18(a)〜(e)における説明と同様に、互いに隣接する種結晶のa軸どうしのなす角、および距離を考慮して、前記条件(A)に適合するか否かを判断すれば良い。なお、
図19(a)は、前記a軸どうしが完全に重なり合い、成長した結晶どうしの六角形の頂点どうしが会合(結合)する例である。また、
図19(b)は、ストライプ状の種結晶の長辺が、そのa軸と、ほぼ(または完全に)垂直である例である。このような場合、前記種結晶の方向とほぼ(または完全に)垂直方向の任意の位置にa軸があると考えることができるから、互いに隣接する種結晶のa軸どうしの距離は考慮せず、なす角のみを考慮して、前記条件(A)に適合するか否かを判断すれば良い。
【0060】
また、前記第1のIII族窒化物結晶製造工程において、互いに隣接する種結晶間の中心間距離は、特に限定されないが、欠陥が少なく高品質な結晶を得る観点から、前記中心間距離が小さすぎないことが好ましい。各結晶を十分に成長させてから結合させた方が、前記種結晶の欠陥を受け継ぎにくく、欠陥が少ない高品質な結晶が得られやすいためである。一方、III族窒化物結晶の製造効率の観点からは、互いに隣接する種結晶間の中心間距離が大き過ぎないことが好ましい。前記互いに隣接する種結晶間の中心間距離の上限値は、例えば20mm以下、好ましくは5mm以下、特に好ましくは1mm以下である。前記互いに隣接する種結晶間の中心間距離の下限値は、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.05mm以上、さらに好ましくは0.1mm以上である。
【0061】
なお、
図18および19は、c面を有する種結晶(c面種結晶)の前記c面から結晶が成長した場合について説明した。結晶成長面が、c面以外の任意の面(例えばm面等)である場合は、前記種結晶の大きさ、中心間距離等の数値範囲は、特に限定されないが、例えば、結晶成長面がc面である場合と同じである。
【0062】
つぎに、前記条件(M)、すなわち、互いに隣接する種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わない条件は、特に限定されないが、例えば、以下のとおりである。
【0063】
まず、前記互いに隣接する種結晶のm軸どうしがほぼ平行である(すなわち、前記m軸どうしのなす角がほぼ0度である)場合、前記条件(M)は、例えば、前記両種結晶のm軸が、互いに他の種結晶の内部を通らない条件でも良い。この条件を満たす例として、
図18(a)、
図18(e)等が挙げられる。なお、前記互いに隣接する種結晶のm軸どうしが重なる場合(この場合、前記m軸どうしのなす角は0度である)は、
図18(c)に例示したように、必ず、前記両種結晶のm軸が、互いに他の種結晶の内部を通ることになる。
図18(c)では、前述のとおり、互いに隣接する前記2つの種結晶から成長した各結晶のm面どうしが重なり合うため、前記条件(M)を満たさない。
【0064】
また、前記条件(M)は、m軸が隣接する他の種結晶の内部を通るか通らないかにかかわらず、前記条件(A)を満たす条件でも良い。
図18(а)、(b)、(e)および
図19(a)、(b)で説明したように、前記条件(A)を満たせば、互いに隣接する種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わないためである。また、後述の
図20および21に例示するように、前記条件(C)(隣接する種結晶のc軸どうしがほぼ重なり合う)を満たす場合も、互いに隣接する種結晶から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わない。したがって、前記条件(M)は、m軸が隣接する他の種結晶の内部を通るか通らないかにかかわらず、前記条件(C)を満たす条件でも良い。
【0065】
m軸どうしがほぼ平行であるという場合、前記m軸どうしのなす角は、例えば1度以下、好ましくは0.1度以下、特に好ましくは0.02度以下、理想的には0度である。また、前記互いに隣接する種結晶のm軸どうしが平行ではない場合、例えば
図18(d)のように、前記各種結晶から成長した各結晶のm面(同図における六角形の各辺)どうしが重なり合わないことが明らかであり、前記条件(M)を満たす。この場合において、前記m軸どうしのなす角は、例えば5度以上、より好ましくは10度以上、さらに好ましくは20度以上、特に好ましくは25度以上である。なお、本発明において、前記種結晶は、六方晶であるため、各3本ずつm軸を有する。本発明において、互いに隣接する種結晶のm軸どうしのなす角を定義する場合は、a軸をm軸に変える以外は前記条件(A)の前記(1)〜(3)と同様の手順で定義するものとする。
【0066】
なお、
図18および
図19の例は、c面が紙面と平行(すなわち、結晶のc軸が紙面に垂直)であるため、互いに隣接する種結晶どうしが前記条件(C)(すなわち、c軸どうしがほぼ重なる)を満たすことはない。しかし、前記条件(M)を満たすことにより、また、好ましくは、さらに前記条件(A)を満たすことにより、大サイズで、かつ欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造可能である。
【0067】
つぎに、m面種結晶およびa面種結晶における複数の種結晶の配置の例について説明する。
【0068】
図20(a)〜(c)に、m面種結晶における複数の種結晶の配置の例を示す。
図20(a)および(b)において、m面(結晶成長面)は、紙面に平行である。また、
図20(c)は、
図20(b)を紙面下方から見た図であり、
図20(c)においては、c面が紙面に平行である。
【0069】
図20(a)は、方形の種結晶を4つ、2列×2行で配置した例を模式的に示す図である。図示のとおり、紙面上下方向に隣接する種結晶どうしは、互いのc軸どうしが重なり合っており、前記条件(C)を満たすとともに、前記条件(M)を満たす。また、紙面左右方向に隣接する種結晶どうしは、互いのa軸どうしが重なり合っており、前記条件(A)を満たすとともに、前記条件(M)を満たす。
【0070】
なお、本発明の前記条件(A)において、互いに隣接する種結晶のa軸どうしのなす角および距離は、前記種結晶の結晶成長面がc面以外の任意の面(例えばm面)である場合も、前記c面種結晶(結晶成長面がc面)の場合と同様で良い。また、本発明の前記条件(C)において、互いに隣接する種結晶のc軸どうしのなす角および距離は、前記a軸を前記c軸に変える以外は、前記条件(A)の場合と同様で良く、結晶成長面がm面以外の任意の面(例えばa面)である場合も同様で良い。
【0071】
また、
図20(a)の各種結晶は六方晶であるから、これらから成長する各結晶の結晶形を模式的に示すと、
図20(b)のようになる。ただし、
図20(b)は例示であり、本発明を限定しない。
図20(b)に示すように、各結晶において、a軸は、紙面左右方向において、各結晶と交わる任意の位置にあるとみなすことができる。
図20(a)の種結晶においても同様である。
【0072】
また、
図20(c)に示すように、これらの種結晶およびそれらから成長する結晶において、m面は、結晶成長面と平行であるから、m面どうしが互いに重なり合うことはないので、前記条件(M)を満たす。また、同図において、結晶成長面から60度傾斜した他のm面についても、互いに重なりあう(互いに正面から向かい合う)ことはないから、前記条件(M)を満たす。なお、同図において、直線Xは、種結晶の結晶成長面に平行な面を表す。
【0073】
つぎに、
図21(a)〜(c)に、a面種結晶における複数の種結晶の配置の例を示す。
図21(a)および(b)において、a面(結晶成長面)は、紙面に平行である。また、
図21(c)は、
図21(b)を紙面下方から見た図であり、
図21(c)においては、c面が紙面に平行である。
【0074】
図21(a)は、方形の種結晶を4つ、2列×2行で配置した例を模式的に示す図である。図示のとおり、紙面上下方向に隣接する種結晶どうしは、互いのc軸どうしが重なり合っており、前記条件(C)を満たすとともに、前記条件(M)を満たす。一方、紙面左右方向に隣接する種結晶どうしは、互いのm軸どうしが重なり合っており、前記条件(M)を満たさないとともに、前記条件(A)および(C)も満たさない。
【0075】
図21(a)の各種結晶は六方晶であるから、これらから成長する各結晶の結晶形を模式的に示すと、
図21(b)のようになる。ただし、
図21(b)は例示であり、本発明を限定しない。また、
図21(b)においては、各結晶の上部を、結晶成長面に平行な面でカットしてa面を出している。これを紙面下方から見ると、
図21(c)に示す通り、左右に隣接する種結晶のm面どうしが対向しており、前記条件(M)を満たさないことが分かる。なお、同図において、直線Xは、種結晶の結晶成長面に平行な面を表す。
【0076】
本発明において、互いに隣接する種結晶の全てが、前記条件(M)、条件(A)および条件(C)の少なくとも一つを満たすことが好ましいが、一部のみが前記条件を満たしていても良い。例えば、
図21(a)または(b)のように、紙面左右方向に隣接する種結晶が本発明の前記条件(M)を満たさず、紙面上下方向に隣接する種結晶のみが本発明の前記条件(M)を満たしていても良い。
図21(a)または(b)の場合、紙面上下方向に隣接する種結晶どうしは、前記条件(M)および前記条件(C)を満たすため、結晶結合部(会合部)における欠陥の発生を防止または軽減することが可能である。
【0077】
なお、a面種結晶の場合、成長した結晶のm面どうしが対向しない(重なり合わない)ようにするには、例えば、m軸(
図21(a)および(b)では、紙面左右方向)に平行なストライプ状の種結晶を複数、互いのc軸どうしがほぼ重なり合うように平行に配置すれば良い。この場合、ストライプの長手方向と垂直な任意の位置にc軸があるとみなすことができる。
【0078】
また、本発明において、結晶成長面は、c面、m面、a面のみに限定されず、それらに対し傾斜した任意の面であっても良い。
図22(a)および(b)に、それぞれ一例を示す。前記両図において、直線Xは、結晶成長面に平行な面を表す。
図22(a)は、a軸が、結晶成長面に対し若干傾斜しており、
図22(b)は、c軸が、結晶成長面に対し若干傾斜している。
【0079】
また、
図23(a)〜(c)に、互いに隣接する種結晶のa軸どうし、m軸どうしまたはc軸どうしが互いに傾斜している例を示す。
図23(a)は、m面種結晶において、互いに隣接する種結晶のa軸どうしまたはc軸どうしが互いに傾斜している状態を示し、m面(結晶成長面)は、紙面に平行である。また、
図23(b)および(c)は、互いに隣接する種結晶の結晶成長面が、互いに異なる面である例を模式的に示す図である。これらの図において、直線Xは、それぞれ、結晶成長面に平行な面を表す。
図23(b)において、結晶成長面は、左側の種結晶のa軸に平行であるとともに、右側の種結晶のm軸に平行である。
図23(c)において、結晶成長面は、左側の結晶のc軸に平行であるとともに、右側の結晶のc軸に対し傾斜している。
【0080】
本発明において、互いに隣接する種結晶のa軸どうし、c軸どうしおよびm軸どうしは、互いに傾斜している場合(
図18(d)、
図23(a)〜(c)等)よりも、全ての軸がほぼ同じ方向に揃っている場合(すなわち平行である場合、
図18(a)、
図20(a)〜(c)、
図21(a)〜(c)等)が好ましい。前記「ほぼ同じ方向に揃っている(平行である)」は、a軸どうし、c軸どうしまたはm軸どうしのなす角が、例えば5度以下、好ましくは1度以下、より好ましくは0.03度以下、特に好ましくは0.005度以下、理想的には0度であることをいう。ただし、前記全ての軸がほぼ同じ方向に揃っていても、例えば、
図18(c)のように本発明の前記条件(M)を満たさない場合は、本発明の条件を満たさない。すなわち、本発明によるIII族窒化物結晶の製造方法は、前記条件(M)を満たし、さらに、互いに隣接する種結晶のa軸どうし、c軸どうしおよびm軸どうしが、全て、ほぼ同じ方向に揃っていることが好ましい。
【0081】
なお、前記条件(A)に関し、
図18(a)、(b)、(e)および
図19(a)、(b)を、本発明によるIII族窒化物結晶の製造方法の前記条件(A)に適合する例として説明し、
図18(c)および(d)を、前記条件(A)に適合しない例として説明した。しかし、これらの図は、説明の便宜のための模式図に過ぎないため、本発明の前記条件(A)におけるa軸どうしのなす角および距離等は、これらの図示により何ら限定されるものではない。前記条件(M)および前記条件(C)においても同様に、図示によって何ら限定されるものではない。
【0082】
<1−1−3.III族窒化物結晶の組成等>
前記第1のIII族窒化物結晶製造工程において、前記予め準備されたIII族窒化物(種結晶)は、特に限定されないが、例えば、Al
xGa
yIn
1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)で表されるIII族窒化物である。前記予め準備されたIII族窒化物(種結晶)は、例えば、前記組成で表されるAlGaN、InGaN、InAlGaN、GaN等が挙げられ、GaNが特に好ましい。
【0083】
前記結晶成長工程において、前記窒素と反応させる前記III族元素は、例えば、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、およびアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも一つであり、Gaであることが特に好ましい。
【0084】
前記結晶成長工程において生成し成長する前記III族窒化物結晶は、特に限定されないが、例えば、Al
xGa
yIn
1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)で表されるIII族窒化物結晶であり、例えば、前記組成で表されるAlGaN、InGaN、InAlGaN、GaN等が挙げられ、GaNが特に好ましい。前記結晶成長工程において生成し成長する前記III族窒化物結晶の組成は、前記種結晶と同じでも異なっていても良いが、同じであることが、欠陥が少ない高品質なIII族窒化物結晶を得る観点から好ましい。
【0085】
前記第1のIII族窒化物結晶製造工程によるIII族窒化物結晶の製造方法としては、より具体的には、例えば、下記第1の液相成長法および第2の液相成長法が挙げられる。
【0086】
<1−1−4.第1の液相成長法>
前記第1のIII族窒化物結晶製造工程における第1の液相成長法は、
前記種結晶選択工程において、
前記予め準備されたIII族窒化物が、基板上に配置された複数のIII族窒化物結晶であり、
前記複数のIII族窒化物結晶を、前記種結晶として選択する。
【0087】
なお、前述のとおり、前記第1のIII族窒化物結晶製造工程において、結晶成長面は、前述のとおり、特に限定されない。
【0088】
図3(a)〜(g)の工程断面図に、本発明の第1の液相成長法の一例を示す。まず、
図3(a)に示すとおり、基板12の上に、種結晶となるIII族窒化物結晶層13を形成する。この方法は特に限定されないが、例えば、MOCVD等の気相成長法であっても良い。III族窒化物結晶層13の厚みも特に限定されないが、例えば1〜100μm、好ましくは2〜100μm、より好ましくは5〜50μmである。基板12の材質も特に限定されないが、例えば、Al
xGa
1−xN(0<x≦1)、Al
xGa
1−xN(0<x≦1)の酸化物、ダイヤモンドライクカーボン、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、炭化珪素、酸化イットリウム、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、タンタル、レニウム、およびタングステンからなる群から選択される少なくとも1つを含んでいても良い。基板12は、コスト、簡便性等の観点から、サファイア基板が特に好ましい。
【0089】
つぎに、
図3(b)に示すとおり、基板12の上部の一部およびその上のIII族窒化物結晶層13を、エッチング等により除去し、基板12の複数の凸部12aと、その上に配置された複数のIII族窒化物結晶層(種結晶)13を残す。この種結晶を、
図3(c)〜(f)のように、成長させて結合させる。この結晶は、例えば、
図3(g)に示すように、c面と平行な面(
図3(f)中に、点線(切断面)14で示す)でカットして用いても良い。なお、
図3(b)では、凸部12aの厚みを大きく描いているが、凸部12aの厚みがごく小さくても良いし、厚みがゼロ(すなわち、III族窒化物結晶層13のみを除去し、基板12上部を除去しないことにより、凸部12aが存在しない)でも良い。
【0090】
なお、本発明のIII族窒化物結晶の製造方法は、製造したIII族窒化物結晶をさらに成長させる結晶再成長工程をさらに含んでいても良い。前記結晶再成長工程は、具体的には、例えば、製造したIII族窒化物結晶をカットして任意の面(例えば、c面、m面、a面、またはその他の非極性面)を露出させ、その面を結晶成長面として前記III族窒化物結晶をさらに成長させても良い。これにより、前記任意の面を大面積で有し、かつ厚みが大きいIII族窒化物結晶を製造することも可能である。具体的には、例えば、
図3(g)のIII族窒化物結晶の切断面(c面)14を結晶成長面としてさらに成長させ、厚型化しても良い。この工程は、前述の「結晶再成長工程」に該当する。
【0091】
また、
図3では、複数の種結晶13を、基板の複数の凸部12a上に配置しているが、本発明の第1の液相成長法は、これに限定されない。例えば、凹凸がない平坦な基板上に前記複数の種結晶を配置しても良いし、前記複数の種結晶を配置している部分が、凸部に代えて凹部であっても良い。なお、例えば、
図3のように、基板の凸部上に前記複数の種結晶を形成することで、製造される結晶が、前記凸部以外の部分で前記基板と直接接触しにくいと考えられる。すなわち、同図では図示していないが、前記凸部以外の部分では、基板12と成長した結晶13との間に微小なギャップ(隙間)があると考えられる。これにより、例えば、前述の、基板と結晶との熱膨張係数の相違による結晶の反り、歪み、割れ等を軽減または防止することも可能である。ただし、この説明は、推測可能な例示であり、本発明を何ら限定しない。
【0092】
図4(a)〜(f)の平面図に、
図3(b)〜(g)の工程を上方から見た図を示す。
図4(a)〜(f)において、
図3(b)〜(g)と同じ部分は、同じ符号で示している。図示のとおり、基板の凸部12aは、ドット状であり、その上に配置された種結晶から生成するIII族窒化物結晶は、正六角形である。それが、成長により、結合し、
図4(d)および(e)に示すように結合する。
図4(a)に示すように、ドット12a(種結晶配置位置)が一直線上に3つ並んでいるため、3つの結晶の結合後は、
図4(e)のように細長い六角形の結晶になる。
【0093】
なお、凸部12aのドットの大きさ(すなわち、種結晶であるドットの大きさ)、互いに隣接する種結晶のa軸どうしの配置関係、および前記ドット間の中心間距離等については、前記「2.種結晶の配置関係、形状、大きさ等」に記載のとおりである。III族窒化物結晶層13のa軸の方向は、例えば、XRD(X線回折法)により確認することができるので、それに基づき、凸部12aの配置を決定することができる。例えば、
図3(a)〜(b)のように、III族窒化物結晶層13の一部を除去して複数の種結晶とする場合、除去後に形成される前記複数の種結晶が、
図3(a)におけるIII族窒化物結晶層13のa軸方向に沿って並ぶように配置すれば良い。
【0094】
種結晶13(凸部12a)の配置は、
図3および4の配置に限定されない。例えば、
図5(a)〜(f)の工程平面図に示すように、3つのドットを正三角形の各頂点上に配置しても良いし、そのパターンを繰り返すことで、
図6(a)〜(e)に示すように、さらに多数のドットを配置しても良い。このようにドット数を増やすことで、さらに大きなIII族窒化物結晶を製造することができる。なお、
図5および6において、
図3および4と同様の構成要素は、同じ符号で示している。
【0095】
なお、本発明の第1のIII族窒化物結晶製造工程において、種結晶の配置関係、形状、大きさ等は特に限定されないが、
図18(c)のように、III族窒化物結晶13のm面(正六角形の辺)どうしが対向する(重なり合う)配置ではない方が、結晶成長により結晶どうしが会合(結合)するときに会合部に欠陥を生じにくいため好ましい。これについては、前記「1−1−2.種結晶の配置関係、形状、大きさ等」にも記載したとおりである。
【0096】
<1−1−5.第2の液相成長法>
つぎに、前記第1のIII族窒化物結晶製造工程における第2の液相成長法は、
前記種結晶選択工程において、
前記予め準備されたIII族窒化物が、III族窒化物結晶層であり、前記III族窒化物結晶層上に、複数の貫通孔を有するマスクが配置され、
前記貫通孔から露出した前記III族窒化物結晶層の面を、前記種結晶として選択する。
【0097】
なお、本発明の第2の液相成長法において、結晶成長面は、前記第1の液相成長法と同様、特に限定されない。例えば、前記III族窒化物結晶層が、c面を有するIII族窒化物結晶層であり、前記c面上に前記マスクが配置され、前記貫通孔から露出した前記c面を、前記種結晶(前記種結晶の結晶成長面)として選択しても良い。または、前記III族窒化物結晶層が、m面を有するIII族窒化物結晶層であり、前記m面上に前記マスクが配置され、前記貫通孔から露出した前記m面を、前記種結晶(前記種結晶の結晶成長面)として選択しても良い。以下、主に、前記結晶成長面がc面である場合について説明するが、結晶成長面をm面等の他の面に代える以外は同様にしても良い。
【0098】
図7(a)〜(f)の工程断面図に、本発明の第2の液相成長法によるIII族窒化物結晶の製造工程を模式的に例示する。すなわち、まず、
図7(a)に示すように、六方晶であるIII族窒化物結晶層51のc面上に、複数の貫通孔52aを有するマスク52を配置する。この貫通孔52aから露出したIII族窒化物結晶層51のc面が、種結晶となる。すなわち、この、マスク52を配置する工程が、III族窒化物結晶の生成および成長のための種結晶を選択する種結晶選択工程であるということができる。III族窒化物結晶層51は、特に限定されず、例えば、III族窒化物結晶基板等でも良いが、コストおよび簡便性の観点から、別の基板(図示せず)上に形成されたIII族窒化物結晶が好ましい。一方、III族窒化物結晶層51は、さらに欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造する観点からは、高品質なIII族窒化物基板であることが好ましい。前記III族窒化物基板は、例えば、他の基板上に形成されていない独立の基板(自立基板)であっても良い。ただし、本発明によれば、別の基板上に形成されたIII族窒化物結晶を用いても、前述のように、欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造することができる。III族窒化物結晶層51の厚みも特に限定されないが、例えば1〜100μm、好ましくは2〜100μm、より好ましくは5〜50μmである。前記別の基板は、特に限定されないが、例えば、サファイア基板、炭化珪素基板等が挙げられる。マスク52は、III族窒化物結晶層51のc面上に、堆積、塗布等により形成しても良いが、あらかじめ複数の貫通孔52aを有するマスク52を準備し、単にIII族窒化物結晶層51の上に置くことが簡便で好ましい。また、マスク52は、マスク52の再利用が容易である等の理由により、III族窒化物結晶層51に密着していないことが好ましい。マスク52の材質も特に限定されないが、アルカリ金属融液と反応しにくい材質が好ましく、例えば、炭素系材料、酸化物等が挙げられる。前記マスクは、例えば、Al
xGa
1−xN(0<x≦1)、Al
xGa
1−xN(0<x≦1)の酸化物、ダイヤモンドライクカーボン、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、炭化珪素、酸化イットリウム、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、タンタル、レニウム、およびタングステンからなる群から選択される少なくとも1つを含んでいても良い。なお、本発明において、マスク52は、コスト、簡便性等の観点から、サファイアマスクが特に好ましい。また、マスク52の厚みも特に限定されないが、例えば0.0005〜2mm、好ましくは0.01〜1mm、より好ましくは0.05〜0.5mmである。
【0099】
つぎに、貫通孔52aから露出したIII族窒化物結晶層51のc面(種結晶)を、アルカリ金属融液に接触させる(接触工程)。さらに、窒素を含む雰囲気下において、III族元素と前記窒素とを前記アルカリ金属融液中で反応させて前記III族窒化物結晶を生成させ成長させる(結晶成長工程)。この結晶成長工程を、
図7(b)〜(e)に示す。
図7(b)および(c)に示すように、種結晶表面からIII族窒化物結晶53が生成し成長する。そのIII族窒化物結晶53が、
図7(d)および(e)に示すように、さらに成長させて結合させることにより、大サイズで、かつ欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造することができる。このIII族窒化物結晶は、例えば、c面と平行な面(
図7(e)に、点線54として示す)で切断し、
図7(f)のようにして用いても良い。
図7(f)には、切断後のIII族窒化物結晶の下部を示しているが、上部も用いることができる。このようにカット(切断)することで、例えば、半導体装置用の半導体基板等として用いやすくなる。また、
図7(f)のIII族窒化物結晶の切断面(c面)を結晶成長面としてさらに成長させ、厚型化しても良い。この工程は、前述の「結晶再成長工程」に該当する。
【0100】
マスクの貫通孔52aの形状、大きさ、配置、間隔(隣接する種結晶どうしの中心間距離)等は、例えば、本発明の前記第1の液相成長法における種結晶と同様でも良い。例えば、
図4〜6において、基板12をマスク52に代え、凸部12aを貫通孔52aに代え、III族窒化物結晶13を同53に代えて、本発明の第2の液相成長法を模式的に表すこともできる。前記第1の液相成長法と同様、III族窒化物結晶層51のa軸の方向は、例えば、XRD(X線回折法)により確認することができるので、それに基づき、マスクの貫通孔52aの配置を決定することができる。例えば、
図7の場合、貫通孔52aから露出した複数の種結晶は、一体であるIII族窒化物結晶層51の複数の部分である。したがって、例えば、貫通孔52aを、III族窒化物結晶層51のa軸方向に沿って並ぶように配置すれば良い。
【0101】
本発明の第1の液相成長法においては、前述のとおり、複数の小さなIII族窒化物種結晶を用いることで、欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造可能である。本発明の第2の液相成長法においては、前記複数の貫通孔を有するマスクを用いることで、さらに欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を製造することも可能である。この理由は明らかではないが、例えば、結晶が成長過程で貫通孔から出て横に広がるときに、結晶の転位等の欠陥が横に広がり、上に広がらないためと考えられる。
図27に、その一例を示す。同図において、2001は、基板2011上にIII族窒化物(例えばGaN)結晶層2012が積層された種基板である。2002は、III族窒化物結晶層2012上に形成したマスク(例えば、サファイアマスク)である。図示のとおり、マスク2002に形成された小さな貫通孔から、III族窒化物結晶2012の表面の一部が露出しており、この露出した小さな部分を種結晶として、III族窒化物結晶2003が成長する。このようにすると、結晶欠陥2004がマスク2002の貫通孔内で終端するため、成長したIII族窒化物結晶2003の内部に前記結晶欠陥が伝搬しにくいと考えられる。ただし、
図27は、推測可能なメカニズムの一例を模式的に示すに過ぎず、本発明は、同図およびその説明により、何ら限定されない。
【0102】
なお、一般的なIII族窒化物結晶の製造方法によれば、例えば、基板と結晶との熱膨張係数が相違する場合等に、前記結晶の製造中または使用中に、基板の反りにより、結晶の反り、歪み、割れ等が生じるおそれがあった。
図14(a)の断面図に、その例を模式的に示す。図示のとおり、サファイア基板1002上にGaN結晶1003が形成されている。両者の熱膨張係数の相違により、GaN結晶1003が、サファイア基板1002とともに反っている。これにより、GaN結晶1003に歪みが生じ、場合によっては、割れが生じる恐れがある。しかし、本発明の第1の液相成長法によれば、このような問題を防止または軽減できると考えられる。
【0103】
すなわち、本発明の第2の液相成長法によれば、製造されるIII族窒化物結晶と、前記III族窒化物結晶層(種結晶)とが、前記貫通孔以外の点において、直接接触せず、前記マスクにより隔てられている。このため、前記マスクの下の前記III族窒化物結晶層(種結晶)またはその下に存在する前記別の基板等に反りが生じても、前記マスク上に形成したIII族窒化物結晶に、反り、歪み、割れ等が生じる恐れが少ない。また、本発明の第2の液相成長法によれば、前記マスク上に前記種結晶を形成しないため、前記種結晶から成長する前記III族窒化物結晶と、前記マスクとが、直接接触していない。このため、前記マスクと前記III族窒化物結晶との熱膨張係数が異なる場合(例えば、前記マスクがサファイアで、前記III族窒化物結晶がGaN)であっても、前記マスクの反りにより、前記III族窒化物結晶に反り、歪み、割れ等が生じる恐れが少ない。
【0104】
一方、本発明の第1の液相成長法は、マスクおよび貫通孔を用いず、基板上に直接種結晶を配置することで、結晶の成長(育成)効率がより優れていると考えられる。例えば、目的に応じて、本発明の第1または第2の液相成長法を使い分けても良い。
【0105】
<1−1−6.貫通孔または凹部を残す液相成長法>
本発明の製造方法における前記第1のIII族窒化物結晶製造工程においては、前述のとおり、互いに隣接する前記III族窒化物結晶どうしの一部分を結合させないことによる貫通孔を残したまま、または、さらなる結晶成長により前記貫通孔が塞がって出来た凹部を残したまま、前記第1のIII族窒化物結晶とすることが好ましい。以下、具体的に説明する。
【0106】
図8(a)〜(d)の工程平面図に、本発明の前記第1のIII族窒化物結晶製造工程における液晶成長法の一例を示す。同図に示す液相成長法では、成長したIII族窒化物結晶に前記貫通孔を残したまま、前記第1のIII族窒化物結晶とする。同図は、前記第1の液相成長法(マスクを用いない方法)を用いた例である。図示のとおり、種結晶13(凸部12a)は、
図5および6と同様、3つのドットを正三角形の各頂点上に配置するパターンを繰り返すように配置されている。ただし、
図8(a)〜(c)においては、図示の簡略化のため、1つの正三角形の各頂点の3つのドットのみ図示している。また、
図8において、種結晶13(凸部12a)は、六方晶であり、かつ、互いに隣接する種結晶13から成長した各結晶のm面どうしがほぼ重なり合わないように配置されている。さらに、種結晶13(凸部12a)は、互いに隣接する種結晶13のa軸どうしがほぼ重なり合い、かつ、前記互いに隣接する種結晶から成長したIII族窒化物結晶の六角形の頂点どうしがほぼ重なりあうように配置されている。
【0107】
図8(a)〜(c)に示すとおり、凸部12a上に配置された種結晶13が成長してIII族窒化物結晶13となる。そして、
図8(d)に示す通り、前記各III族窒化物結晶が結合して、1つのIII族窒化物結晶13となる。ただし、
図8(d)では、
図5および6と異なり、互いに隣接する前記III族窒化物結晶どうしの一部分を結合させないことによる貫通孔13aを残したまま、第1のIII族窒化物結晶13とする。同図では、図示のとおり、凸部12a上に配置された各種結晶から成長した正六角形のIII族窒化物結晶の辺に接する部分に、貫通孔13aが残る。
【0108】
なお、
図8(a)〜(d)は、前記第1の液相成長法(マスクを用いない方法)の例として説明したが、前記第2の液晶成長法(マスクを用いる方法、例えば
図7に示す方法)でも同様に行うことができる。
【0109】
また、前述のとおり、さらなる結晶成長により前記貫通孔が塞がって出来た凹部を残したまま、前記第1のIII族窒化物結晶としても良い。前記貫通孔が残った状態および前記凹部が残った状態の例示については、後述する。また、前記凹部が残った状態からさらに結晶成長させると、
図3(f)または
図7(e)のように、前記凹部が残らない状態で一体化した第1のIII族窒化物結晶となる。
【0110】
つぎに、
図9〜12の工程断面図を用い、前記第1の液相成長法(マスクを用いない方法)および前記第2の液晶成長法(マスクを用いる方法)において、それぞれ前記貫通孔または前記凹部を残す方法の例について説明する。
図9は、前記第1の液相成長法(マスクを用いない方法)において、前記貫通孔を残す方法の例示である。
図10は、前記第1の液相成長法(マスクを用いない方法)において、前記凹部を残す方法の例示である。
図11は、前記第2の液相成長法(マスクを用いる方法)において、前記貫通孔を残す方法の例示である。
図12は、前記第2の液相成長法(マスクを用いる方法)において、前記凹部を残す方法の例示である。
【0111】
まず、
図9(
図9(a)〜(g))の工程断面図について説明する。まず、
図9(a)に示すとおり、基板12の上に、種結晶となるIII族窒化物結晶層13を形成する。つぎに、
図9(b)に示すとおり、基板12の上部の一部およびその上のIII族窒化物結晶層13を、エッチング等により除去し、基板12の複数の凸部12aと、その上に配置された複数のIII族窒化物結晶層(種結晶)13を残す。より具体的には、例えば、
図3(a)および(b)と同様でも良い。また、凸部12a(種結晶13)の配置は、例えば、
図8と同様で良い。
【0112】
つぎに、
図9(c)に示す通り、各種結晶13を成長させる。図示のとおり、成長した状態で、互いに隣接する前記III族窒化物結晶どうしの一部分を結合させないことによる貫通孔13aを残したまま、第1のIII族窒化物結晶13とする。また、
図9(c)では図示していないが、同図のIII族窒化物結晶13において、貫通孔13a以外の部分は、
図8(d)と同様、互いに結合して一体化している。なお、
図9(b)は、例えば、
図8(a)の平面図において、任意の種結晶13の中心を通るm面で切断した断面図と見ることができる。また、
図9(c)は、例えば、
図8(d)の平面図において、任意の結晶13の中心を通るm面で切断した断面図と見ることができる。
【0113】
図9(c)における第1のIII族窒化物結晶13は、そのまま前記第2のIII族窒化物結晶製造工程(気相成長法)に用いても良いが、基板に平行な平面(例えば、同図の点線14a)でカットした状態(
図9(d))で用いても良い。また、
図9(d)では、カットしたIII族窒化物結晶13の上部を用いているが、下部を用いても良い。さらに、
図9(c)または(d)のIII族窒化物結晶13は、その上面の研磨等により、貫通孔13aのサイズを適宜調整して用いても良い。
【0114】
さらに、
図9(e)に示す通り、第1のIII族窒化物結晶13上に、気相成長法により第2のIII族窒化物結晶1004を製造する(第2のIII族窒化物結晶製造工程)。なお、第2のIII族窒化物結晶製造工程(気相成長法)の詳細については、後述する。
【0115】
図9(c)または(d)の後に行う前記第2のIII族窒化物結晶製造工程において、第2のIII族窒化物結晶1004の成長条件を変化させることにより、
図9(e)に代えて、
図9(f)に示すように、第1のIII族窒化物結晶13の貫通孔13aをふさぐようにしても良い。または、
図9(e)と
図9(f)の中間の状態(部分的に貫通孔が埋まった状態)とすることも可能である。本発明は、
図9(e)、
図9(f)、およびそれらの中間のいずれの態様でも用いることができるが、第2のIII族窒化物結晶1004の下方に空隙部を残す
図9(e)の態様が、結晶欠陥や歪の低減効果がより高いため好ましい。なお、前記第2のIII族窒化物結晶製造工程(気相成長法)において、成長させた(製造した)III族窒化物結晶が、前記貫通孔をふさがない(例えば
図9(e))か、ふさぐ(例えば
図9(f))かは、例えば、後述するキャリアガス(第1のキャリアガスおよび第2のキャリアガス)のH
2濃度によって制御することが可能である。具体的には、前記キャリアガス中のH
2濃度が高い(例えば、75体積%以上である)と、前記貫通孔が塞がりやすい傾向にあり、前記H
2濃度が低い(例えば、75体積%未満である)と、前記貫通孔が塞がりにくい傾向にある。ただし、この説明および数値は、例示であり、本発明を何ら限定しない。さらに、
図9(e)または(f)における第2のIII族窒化物結晶1004は、例えば、
図9(g)に示すように薄く切って(スライスして)用いても良い。スライス後のIII族窒化物結晶1004は、例えば、半導体装置等におけるIII族窒化物結晶基板として用いることができる。前記スライス後の厚みは、特に限定されず、例えば、最終的な基板の目標厚さと、基板を研磨加工する際の除去代を考慮して適宜設定すれば良い。最終的な基板の目標厚さは、基板の直径等によっても変わるため一概には決められないが、直径φ2インチサイズのGaN基板を作製するのであれば、例えば400〜500μm程度が好ましい。
【0116】
つぎに、
図10(a)〜(g)の工程断面図は、前述のとおり、前記第1の液相成長法(マスクを用いない方法)において、前記凹部を残す方法の例示である。まず、
図10(a)および(b)は、
図9(a)および(b)と同様である。つぎに、
図10(c)は、
図9(c)の状態からさらに結晶を成長させ、貫通孔13aが塞がって凹部13aとなっている状態である。
図10(c)における第1のIII族窒化物結晶13は、基板に平行な平面(例えば、同図の点線14b)でカットした状態(
図10(d))で用いても良い。また、
図10(d)では、カットしたIII族窒化物結晶13の上部を用いているが、凹部13aが残っていない下部を用いることもできる。または、図示の点線14bよりもカット位置を高くすることにより、カット後のIII族窒化物結晶13の下部に凹部13aを残し、前記下部を用いても良い。この場合、カット後のIII族窒化物結晶13の上部には、凹部13aではなく貫通孔が残ることになる。さらに、
図10(e)〜(g)は、
図9(c)または(d)における第1のIII族窒化物結晶13(貫通孔が残っている)を、
図10(c)または(d)における第1のIII族窒化物結晶13(凹部が残っている)に変更していること以外は、
図9(e)〜(g)と同様である。
【0117】
さらに、
図11(a)〜(f)の工程断面図は、前述のとおり、前記第2の液相成長法(マスクを用いる方法)において、前記貫通孔を残す方法の例示である。
図12(a)〜(f)の工程断面図は、前述のとおり、前記第2の液相成長法(マスクを用いる方法)において、前記凹部を残す方法の例示である。
図11(a)〜(f)の工程断面図は、
図9(b)〜(g)の基板12、凸部12aおよびその上の種結晶13を、(
図3と
図7の関係と同様に)III族窒化物結晶層51、マスク52および貫通孔52aに変えたこと以外は、
図9(b)〜(g)と同様である。
図11(b)における第1のIII族窒化物結晶53は、基板に平行な平面(例えば、同図の点線54a)でカットした状態の上部(
図11(c))を用いても良いし、下部を用いても良い。また、
図12(a)〜(f)の工程断面図は、
図10(b)〜(g)の基板12、凸部12aおよびその上の種結晶13を、(
図3と
図7の関係と同様に)III族窒化物結晶層51、マスク52および貫通孔52aに変えたこと以外は、
図10(b)〜(g)と同様である。
図12(b)における第1のIII族窒化物結晶53は、基板に平行な平面(例えば、同図の点線54b)でカットした状態の上部(
図12(c))を用いても良いし、凹部53aが残っていない下部を用いることもできる。または、図示の点線54bよりもカット位置を高くすることにより、カット後のIII族窒化物結晶53の下部に凹部53aを残し、前記下部を用いても良い。この場合、カット後のIII族窒化物結晶53の上部には、凹部53aではなく貫通孔が残ることになる。
【0118】
前記III族窒化物結晶液相成長工程(液相成長法)において、前記貫通孔または凹部を残すことの効果としては、例えば、下記(1)〜(3)が挙げられる。ただし、これらの効果は例示であり、本発明を限定しない。
(1) 前記貫通孔または凹部が存在することにより、前記第1のIII族窒化物結晶(液相成長法により製造した結晶)の結晶歪みが緩和される。その結果として、前記第1のIII族窒化物結晶上に、気相成長法により成長させた第2のIII族窒化物結晶も、結晶歪みが緩和される。
(2) 前記貫通孔または凹部を残った段階で、前記III族窒化物結晶液相成長工程(液相成長法)を終了させることができるため、III族窒化物結晶の製造効率が高く、歩留まりが良い。
(3) 前記第1のIII族窒化物結晶(液相成長法により製造した結晶)に転位が生じにくい。その結果として、前記第1のIII族窒化物結晶上に、気相成長法により成長させた第2のIII族窒化物結晶が、前記第1のIII族窒化物結晶の転位を受け継ぎにくい。
【0119】
前記III族窒化物結晶液相成長工程において、前記貫通孔または凹部を残す場合、前述のとおり、互いに隣接する前記種結晶のa軸どうしがほぼ重なり合い、かつ、前記互いに隣接する種結晶から成長したIII族窒化物結晶の六角形の頂点どうしがほぼ重なりあうように前記種結晶を配置することが好ましい。前記「1−1−2.種結晶の配置関係、形状、大きさ等」でも説明したように、欠陥が少なく高品質な結晶を製造しやすいためである。
【0120】
また、前記第1のIII族窒化物結晶(液相成長法により製造した結晶、特に、その前記凹部)には、前述のとおり、極性反転領域が実質的に存在しないことが好ましい。前記第1のIII族窒化物結晶(液相成長法により製造した結晶)に極性反転領域が存在しなければ、その上に形成した第2のIII族窒化物結晶(気相成長法により製造した結晶)に、前記極性反転領域に由来する結晶欠陥(例えば、結晶が平坦にならない等の欠陥)が生じないためである。
【0121】
液相成長法で形成したIII族窒化物結晶は、気相成長法よりも、極性反転領域が生じにくい。本発明では、前記第1のIII族窒化物結晶(液相成長法により製造した結晶)上に第2のIII族窒化物結晶(気相成長法により製造した結晶)を形成することにより、気相成長法を用いても、極性反転領域が実質的に存在しないIII族窒化物結晶を製造できるのである。なお、本発明において、極性反転領域が「実質的に存在しない」とは、収束電子回折(CBED、convergent beam electron diffraction)法により検出される極性反転領域の個数が、例えばφ2インチサイズの基板であれば、基板面内で10個以下、好ましくは5個以下、より好ましくは0個(検出されない)である。なお、CBED法に先立ち、例えば、極性反転領域と非反転領域のエッチングレートの差を利用し、極性反転領域があると思われる位置をエッチングで検出する。そして、その位置が本当に極性反転領域か否かをCBED法で判定する。
【0122】
さらに、前記貫通孔または前記凹部は、複数であり、それらが、対称性が高く配置されていることが好ましい。これにより、例えば、前記第1のIII族窒化物結晶(液相成長法により製造した結晶)およびその上に形成する前記第2のIII族窒化物結晶(気相成長法により製造した結晶)の結晶歪みを等方的に吸収し、前記結晶歪みをさらに低減できる。具体的には、例えば、
図8(d)のように、前記貫通孔または前記凹部が、六回対称に配置されていることが好ましい。
【0123】
また、例えば、前述のとおり、前記第1のIII族窒化物結晶(液相成長法により製造した結晶)の上面の研磨等により、前記貫通孔または前記凹部のサイズ(直径)を、適宜調整して用いても良い。これにより、例えば、結晶歪み等の結晶欠陥をさらに低減することも可能である。
【0124】
<1−1−7.接触工程、結晶成長工程およびそれらに用いる装置等>
本発明の製造方法における前記第1のIII族窒化物結晶製造工程は、前述のとおり、予め準備されたIII族窒化物の複数の部分を、III族窒化物結晶の生成および成長のための種結晶として選択する種結晶選択工程と、前記種結晶の表面をアルカリ金属融液に接触させる接触工程と、窒素を含む雰囲気下において、III族元素と前記窒素とを前記アルカリ金属融液中で反応させてIII族窒化物結晶を生成させ成長させるIII族窒化物結晶液相成長工程とを含み、前記III族窒化物結晶液相成長工程において、前記複数の種結晶から成長した複数のIII族窒化物結晶の成長により、前記複数のIII族窒化物結晶を結合させて前記第1のIII族窒化物結晶とする。具体的には、例えば前記「1−1.第1のIII族窒化物結晶製造工程(液相成長法)」から「1−1−6.貫通孔または凹部を残す液相成長法」において説明したとおりである。これら以外は、前記第1のIII族窒化物結晶製造工程は、特に限定されず、例えば、アルカリ金属融液を用いた一般的な液相成長法(LPE)によるIII族窒化物結晶の製造方法と同様に行っても良い。以下、その例について説明する。
【0125】
例えば、LEDやパワーデバイスの半導体基板に使用される、窒化ガリウム(GaN)の製造方法の1つに、ナトリウムフラックス法(Naフラックス法)がある。この方法は、例えば、まず、坩堝内に、種結晶(例えば、サファイア基板上に形成されたGaN薄膜)をセットする。また、前記坩堝内に、前記種結晶とともに、ナトリウム(Na)とガリウム(Ga)を適宜な割合で収納しておく。つぎに、前記坩堝内のナトリウムおよびガリウムを、高温(例えば、800〜1000℃)、高圧(例えば、数十気圧)の環境下で、溶融させ、その融液内に窒素ガス(N
2)を溶け込ませる。これにより、前記坩堝内のGaN種結晶を成長させ、目的のGaN結晶を製造することができる。
【0126】
前記第1のIII族窒化物結晶製造工程においては、例えば、前記坩堝内にセットする前記種結晶を、前記種結晶選択工程にしたがって、例えば、前記「1−1.第1のIII族窒化物結晶製造工程(液相成長法)」から「1−1−5.第2の液相成長法」において説明したように準備すれば良い。その後の工程は、例えば、前記一般的なナトリウムフラックス法と同様の方法で、または適宜変更を加えて行っても良い。例えば、Gaは、他の任意のIII族元素にしても良い。より具体的には、例えば、前記「1−1−3.III族窒化物結晶の組成等」に記載のとおりである。
【0127】
前記第1のIII族窒化物結晶製造工程において、前記結晶成長工程は、前述のとおり、窒素を含む雰囲気下で行う。前記「窒素を含む雰囲気下」において、窒素の形態は、特に制限されず、例えば、ガス、窒素分子、窒素化合物等が挙げられる。前記「窒素を含む雰囲気下」は、窒素含有ガス雰囲気下であることが好ましい。前記窒素含有ガスが、前記フラックスに溶けてIII族窒化物結晶の育成原料となるからである。前記窒素含有ガスは、前述の窒素ガス(N
2)に加え、またはこれに代えて、アンモニアガス(NH
3)等の他の窒素含有ガスを用いても良い。窒素ガスおよびアンモニアガスの混合ガスを用いる場合、混合率は任意である。特に、アンモニアガスを使用すると、反応圧力を低減できるので、好ましい。
【0128】
前記アルカリ金属融液(フラックス)は、ナトリウムに加え、またはこれに代えて、リチウム等の他のアルカリ金属を用いても良い。より具体的には、前記アルカリ金属融液は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)およびフランシウム(Fr)からなる群から選択される少なくとも1つを含み、例えば、NaとLiとの混合フラックス等であっても良い。前記アルカリ金属融液は、ナトリウム融液であることが特に好ましい。また、前記アルカリ金属融液は、アルカリ金属以外の成分を1種類または複数種類含んでいても良いし、含んでいなくても良い。前記アルカリ金属以外の成分としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ土類金属が挙げられ、前記アルカリ土類金属としては、例えば、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)およびラジウム(Ra)があり、この中で、CaおよびMgが好ましく、より好ましくはCaである。また、前記アルカリ金属以外の成分としては、例えば、炭素(炭素単体または炭素化合物)を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。好ましいのは、前記融液において、シアン(CN)を発生する炭素単体および炭素化合物である。また、炭素は、気体状の有機物であってもよい。このような炭素単体および炭素化合物としては、例えば、シアン化物、グラファイト、ダイヤモンド、フラーレン、カーボンナノチューブ、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ベンゼン等があげられる。前記炭素の含有量は、特に限定されないが、前記融液、前記III族元素および前記炭素の合計を基準として、例えば、0.01〜20原子(at.)%の範囲、0.05〜15原子(at.)%の範囲、0.1〜10原子(at.)%の範囲、0.1〜5原子(at.)%の範囲、0.25〜7.5原子(at.)%の範囲、0.25〜5原子(at.)%の範囲、0.5〜5原子(at.)%の範囲、0.5〜2.5原子(at.)%の範囲、0.5〜2原子(at.)%の範囲、0.5〜1原子(at.)%の範囲、1〜5原子(at.)%の範囲、または1〜2原子(at.)%の範囲である。この中でも、0.5〜5原子(at.)%の範囲、0.5〜2.5原子(at.)%の範囲、0.5〜2原子(at.)%の範囲、0.5〜1原子(at.)%の範囲、1〜5原子(at.)%の範囲、または1〜2原子(at.)%の範囲が好ましい。
【0129】
III族元素に対するアルカリ金属の添加割合は、例えば、0.1〜99.9mol%、好ましくは1〜99mol%、より好ましくは5〜98mol%である。また、アルカリ金属とアルカリ土類金属の混合フラックスを使用する場合のモル比は、例えば、アルカリ金属:アルカリ土類金属=99.99〜0.01:0.01〜99.99、好ましくは99.9〜0.05:0.1〜99.95、より好ましくは99.5〜1:0.5〜99である。前記融液の純度は、高いことが好ましい。例えば、Naの純度は、99.95%以上の純度であることが好ましい。高純度のフラックス成分(例えば、Na)は、高純度の市販品を用いてもよいし、市販品を購入後、蒸留等の方法により純度を上げたものを使用してもよい。
【0130】
III族元素と窒素含有ガスとの反応温度および圧力も、前記の数値に限定されず、適宜設定して良い。適切な反応温度および圧力は、融液(フラックス)の成分、雰囲気ガス成分およびその圧力によって変化するが、例えば、温度100〜1500℃、圧力100Pa〜20MPaであり、好ましくは、温度300〜1200℃、圧力0.01MPa〜20MPaであり、より好ましくは、温度500〜1100℃、圧力0.1MPa〜10MPaであり、さらに好ましくは、温度700〜1100℃、圧力0.1MPa〜10MPaである。また、反応時間、すなわち結晶の成長(育成)時間は、特に限定されず、結晶が適切な大きさに成長するように適宜設定すれば良いが、例えば1〜1000hr、好ましくは5〜600hr、より好ましくは10〜400hrである。
【0131】
前記第1のIII族窒化物結晶製造工程において、場合によっては、前記フラックスによって、窒素濃度が上昇するまでに、前記種結晶が溶解するおそれがある。これを防止するために、少なくとも反応初期において、窒化物を前記フラックス中に存在させておいても良い。前記窒化物としては、例えば、Ca
3N
2、Li
3N、NaN
3、BN、Si
3N
4、InN等があり、これらは単独で使用してもよく、2種類以上で併用してもよい。また、前記窒化物の前記フラックスにおける割合は、例えば、0.0001mol%〜99mol%であり、好ましくは、0.001mol%〜50mol%であり、より好ましくは0.005mol%〜10mol%である。
【0132】
前記第1のIII族窒化物結晶製造工程において、前記混合フラックス中に、不純物を存在させることも可能である。このようにすれば、不純物含有のGaN結晶を製造できる。前記不純物は、例えば、珪素(Si)、アルミナ(Al
2O
3)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、窒化インジウム(InN)、酸化珪素(SiO
2)、酸化インジウム(In
2O
3)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、ゲルマニウム(Ge)等がある。
【0133】
前記第1のIII族窒化物結晶製造工程において、前記融液を撹拌する撹拌工程をさらに含んでもよい。前記撹拌工程を行う段階は、特に制限されないが、例えば、前記結晶成長工程の前、前記結晶成長工程と同時、および前記結晶成長工程の後における少なくとも一つにおいて行ってもよい。より具体的には、例えば、前記結晶成長工程の前に行っても、前記結晶成長工程と同時に行っても、その両方で行ってもよい。
【0134】
前記第1のIII族窒化物結晶製造工程に用いる装置は、特に限定されないが、一般的な液相成長法に用いる装置(LPE装置)と同様でも良く、具体的には、例えば、特許文献3(特許第4588340号公報)に記載のLPE装置等であっても良い。以下、
図24〜26を用いて、そのようなLPE装置について説明する。なお、これらの装置は、本発明のIII族窒化物結晶製造装置における前記「第1のIII族窒化物結晶製造手段」に該当するということができる。
【0135】
図24(a)および(b)の模式図に、LPE装置の構成の一例を示す。
図24(a)のLPE装置は、原料ガスである窒素ガス、またはアンモニアガス(NH
3ガス)と窒素ガスとの混合ガスを供給するための原料ガスタンク361と、育成雰囲気の圧力を調整するための圧力調整器362と、リーク用バルブ363と、結晶育成を行うためのステンレス容器364と、電気炉365とを備える。
図24(b)は、ステンレス容器364を拡大したものであって、ステンレス容器364の内部には、坩堝366がセットされている。坩堝366は、ボロンナイトライド(BN)、アルミナ(Al
2O
3)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG、Yttrium Aluminum Garnet)等からなる。坩堝366は、温度を600℃〜1000℃に制御できる。原料ガスタンク361から供給された雰囲気圧力(100atm(100×1.013×10
5Pa)〜150atm(150×1.013×10
5Pa))は、圧力調整器362によって100atm(100×1.013×10
5Pa)以下の範囲に制御できる。
【0136】
図25に、大型のLPE装置(電気炉)の一例を示す。図示のとおり、このLPE装置380は、ステンレス製の育成炉381と原料ガスタンク3803とを備え、育成炉381と原料ガスタンク3803とは管389で連結されている。管389において、育成炉381と原料ガスタンク3803との間には、圧力調節器3804および流量調節器388が取り付けられている。育成炉381は、加熱用のヒータ382および熱電対383が配置され、50atm(50×1.013×10
5Pa)の気圧に耐えられるようになっている。さらに育成炉381内には、坩堝固定台384がある。坩堝固定台384内に窒化ホウ素(BN)からなる坩堝385を固定し、坩堝385内に融液386および種結晶387を配置する。この状態で、原料ガスタンク3803から、管389を通じて、原料ガスである窒素ガス、またはアンモニアガス(NH
3ガス)と窒素ガスとの混合ガスを、図中の矢印(雰囲気ガス供給方向)3800方向に供給して反応(結晶成長)を行う。前記原料ガス(雰囲気ガス)は、ガス精製部(図示せず)によって不純物が除去されたのちに、育成炉381内に送られる。また、前記原料ガスの圧力(雰囲気圧力)は、圧力調整器3804および流量調整器388によって調整される。
【0137】
図26に、揺動型LPE装置の一例を示す。図示のとおり、この揺動型LPE装置380は、育成炉381内部において、回転軸3802を中心に図中の矢印(回転方向)3801の方向に坩堝固定台384を回転させる機構を有する。それ以外は、同図の装置は、
図25の装置と同じである。
図26の装置では、坩堝固定台384が回転することにより、坩堝385内の融液386が左右に移動し、これにより、種結晶上の成長方向が一定方向に制御される。本例では、融液386の揺動方向が、種結晶(GaN種結晶基板)387上のストライプ状のマスク膜に対して平行方向になるように、GaN種結晶基板387が固定されることが望ましい。なお、
図26のLEP装置は、前記坩堝固定台384を回転させる機構を用いずに(すなわち、融液386を揺動させずに)
図25と同様に用いても良い。
【0138】
<1−1−8.第3の液相成長法(さらに大サイズなIII族窒化物結晶の製造方法等)>
本発明の前記第1のIII族窒化物結晶製造工程における前記第1の液相成長法において、前記III族窒化物結晶層および前記マスクから構成されたユニットを複数用いるか、または、本発明の前記第2の液相成長法において、前記基板および前記III族窒化物結晶から構成されたユニットを複数用いても良い。より具体的には、前記種結晶選択工程、前記接触工程および前記結晶成長工程において、前記ユニットを複数、近接させて並列に配置し、前記結晶成長工程において、前記III族窒化物結晶の成長により、互いに隣接する前記各ユニットから成長した前記III族窒化物結晶どうしを結合させれば良い。以下、この製造方法を、本発明の第3の液相成長法という。
【0139】
図14(a)を用いて説明したとおり、基板と結晶との熱膨張係数が相違する場合等に、前記結晶の製造中または使用中に、基板の反りにより、結晶の反り、歪み、割れ等が生じるおそれがある。しかし、例えば、
図14(b)に示すように、サファイア基板1002が複数に分かれていれば、サファイア基板1002の反りによるGaN結晶1003の反り、歪み、割れ等を防止または軽減できると考えられる。本発明の第3の液相成長法によれば、例えば、このように、製造されるIII族窒化物結晶の反り、歪み、割れ等を防止または軽減する効果を得ることが可能である。ただし、あえて本発明の第3の液相成長法を用いず(すなわち、複数のユニットを用いずに)、基板(またはマスク)とIII族窒化物結晶との熱膨張係数の相違等を逆に利用し、意図的に前記基板または前記マスクを反らせて、III族窒化物結晶を分割する(割る)こともできる。
【0140】
図13の平面図に、本発明の第3の液相成長法に用いるユニットの一例を模式的に示す。同図は、本発明の第1の液相成長法において、基板12およびIII族窒化物結晶(種結晶)13から構成されたユニットを複数、近接させて並列に配置した状態を表す。また、本発明の第1の液相成長法に代えて本発明の第2の液相成長法を用いても良い。その場合は、例えば、
図13の基板12をIII族窒化物結晶層51に代え、その上に、後述する
図14(d)のように貫通孔を有するマスクが配置され、
図13の種結晶13の位置に貫通孔(種結晶)52aが存在する配置でも良い。同図では、1つの基板(ユニット)上に配置した種結晶の数は2つであるが、これに限定されず、1つでも良いし、3つ以上の任意の数でも良い。また、各基板の大きさも特に限定されず、III族窒化物結晶の製造効率、および、製造される結晶の反り、歪み、割れ等の防止または軽減効果等を考慮して適宜設定すれば良い。なお、
図14(c)および(d)の断面図に、本発明の第3の液相成長法によりIII族窒化物結晶を製造した例を、模式的に示す。
図14(c)は、本発明の第1の液相成長法を用いた例である。同図は、基板12およびIII族窒化物結晶(種結晶)13から構成されたユニットを複数、近接させて並列に配置し、互いに隣接する前記各ユニットから成長したIII族窒化物結晶13どうしを結合させたこと以外は、
図3(g)と同様である。
図14(d)は、本発明の第2の液相成長法を用いた例である。同図は、III族窒化物結晶層51およびマスク52から構成されたユニットを複数、近接させて並列に配置し、互いに隣接する前記各ユニットから成長したIII族窒化物結晶53どうしを結合させたこと以外は、
図7(f)と同様である。これにより、製造される結晶の反り、歪み、割れ等を防止または軽減することが可能である。なお、
図14(d)において、III族窒化物結晶層51およびマスク52の分割ユニットサイズを適宜変更したり、III族窒化物結晶層51とマスク52の分割位置をずらして重ねるなどの変更を加えたりしても良い。または、
図14(d)では、マスク52は、各ユニット毎に分割されているが、連結されて一体となっていても良い。また、互いに隣接する各ユニット間において、隣接する種結晶どうしが、前記条件(M)を満たすことが好ましく、さらに、前記条件(A)または前記条件(C)を満たすことが好ましい。
【0141】
前述のとおり、本発明の前記第1のIII族窒化物結晶製造工程によれば、大サイズで、かつ欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を、前記第2のIII族窒化物結晶製造工程の種結晶として製造可能である。前記第1のIII族窒化物結晶製造工程において、第3の液相成長法によれば、例えば、さらに大サイズで、かつ欠陥が少なく高品質なIII族窒化物結晶を種結晶として製造することもできる。
図15の斜視図に、その一例を、模式的に示す。同図は、本発明の第2の液相成長法を、本発明の第3の液相成長法に用いた例である。まず、
図15(a)に示すとおり、III族窒化物結晶層51およびその上に配置されたマスク52から形成されたユニットを複数、近接させて並列に配置する。マスク52には、複数の貫通孔52aが形成されている。III族窒化物結晶層51、マスク52および貫通孔52aについては、例えば、前記「1−1−2.種結晶の配置関係、形状、大きさ等」および「1−1−5.第2の液相成長法」で説明したとおりである。このとき、各ユニット内のみならず、互いに隣接するユニット間で隣接する種結晶(貫通孔52a)どうしにおいても、前記条件(M)、すなわち、互いに隣接する前記種結晶から成長した結晶のm面どうしがほぼ重なり合わない条件を満たすようにする。好ましくは、さらに、互いに隣接する種結晶どうしが、前記条件(A)または前記条件(C)を満たすようにする。すなわち、
図15(a)は、前記種結晶選択工程の一部を表している。
【0142】
また、
図15(a)に示す通り、この例においては、III族窒化物結晶層51は、別の基板50の上に形成され、III族窒化物結晶層51およびマスク52とともに前記ユニットを形成している。別の基板50の材質は、特に限定されないが、例えば、本発明の第2の液相成長法における前記基板と同様であり、コストおよび簡便性の観点から、サファイア等が特に好ましい。
【0143】
図15(a)の状態から、前記接触工程および前記結晶成長工程を行い、III族窒化物結晶53を成長(育成)させる。これにより、図示の各ユニット内および各ユニット間で、成長した結晶が結合し、
図15(b)に示すとおり、1つの大きなIII族窒化物結晶53を製造することができる。
【0144】
近年の技術の進歩により、大サイズの半導体結晶が製造可能になり、これにより、半導体装置の設計の幅が広がっている。例えば、シリコン半導体基板等においては、直径6インチ(約15cm)、8インチ(約20cm)等の大サイズの結晶が実用化されている。しかし、GaN等のIII族窒化物結晶においては、そのような大サイズの結晶の製造は不可能であった。前述のとおり、従来のIII族窒化物結晶の製造方法によれば、基板(
図14では、サファイア基板1002)と結晶(
図14では、GaN結晶1003)との熱膨張係数の相違等により、前記結晶の製造中または使用中に、結晶の反り、歪み、割れ等が生じるおそれがある。大サイズの基板を用いて大サイズのIII族窒化物結晶を製造すれば、この問題がさらに顕著となる。例えば、結晶が割れやすくなることに加え、種結晶から成長させた結晶に受け継がれる結晶欠陥が、前記結晶の反り、歪み等により、いっそう大きくなると考えられる。GaN等のIII族窒化物結晶は、これまで、2インチ基板(直径約5cm)を主流に製造されており、これよりも大きいIII族窒化物結晶基板は、量産化されていなかった。
【0145】
しかし、本発明の第3の液相成長法では、例えば
図15に示すように、前記ユニットを複数並列に配置することで、基板の反りによる結晶の反り、歪み、割れ等の問題を軽減しながら、大サイズの結晶を製造することができる。また、本発明の第1の液相成長法と組み合わせることで、さらに前記問題を軽減できると考えられる。
【0146】
なお、
図15は、本発明の第2の液相成長法を用いた例であるが、本発明の第2の液相成長法のユニットに代えて、本発明の第1の液相成長法の前記ユニットを用いる以外は同じように行うこともできる。また、各ユニットは、
図15では、縦横2×2=4個のユニットを並べているが、並べる個数は、これに限定されず任意であり、例えば、縦横1×2=2個、縦横1×3=3個、縦横3×3=9個等であっても良い。
【0147】
また、本発明の第3の液相成長法において、互いに隣接する各ユニット間の一部がつながっていても良い。特に、本発明の第3の液相成長法において、前記マスクは、互いに隣接する各ユニット間でつながっている方が、互いに隣接する種結晶間の前記条件(M)を満たすように(より好ましくは、さらに、互いに隣接する種結晶どうしが、前記条件(A)または前記条件(C)を満たすように)設定しやすく好ましい。例えば、
図15(a)では、マスク52として、各ユニット毎に1枚のマスクを用いているが、
図15(c)のように、これらがつながって、全体で1枚の大きなマスクを形成していても良い。
【0148】
前記第1のIII族窒化物結晶製造工程により製造されるIII族窒化物結晶のサイズは、特に限定されないが、長径が15cm(約6インチ)以上であることが好ましく、20cm(約8インチ)以上であることがより好ましく、25cm(約10インチ)以上であることが特に好ましい。また、前記III族窒化物結晶の高さも特に限定されないが、例えば、1cm以上であっても良く、好ましくは5cm以上、より好ましくは10cm以上である。このような大サイズのIII族窒化物結晶は、本発明の第3の液相成長法を用いずに製造しても良いが、本発明の第3の液相成長法により製造することが好ましい。特に、径(横方向サイズ)が大きいIII族窒化物結晶は、本発明の第3の液相成長法により製造することが好ましい。ただし、前記第1のIII族窒化物結晶製造工程は、このような大サイズのIII族窒化物結晶の製造に限定されず、例えば、従来と同サイズのIII族窒化物結晶をさらに高品質に製造するために用いることも可能である。
【0149】
<1−2.第2のIII族窒化物結晶製造工程(気相成長法)>
つぎに、前記第2のIII族窒化物結晶製造工程(気相成長法)について説明する。
【0150】
前記第2のIII族窒化物結晶製造工程は、前述のとおり、前記第1のIII族窒化物結晶上に、気相成長法により第2のIII族窒化物結晶を製造する。これ以外は、前記第2のIII族窒化物結晶製造工程は、特に限定されず、例えば、一般的な気相成長法と同様でも良い。以下、その例について説明する。
【0151】
<1−2−1.気相成長法による前記第2のIII族元素窒化物結晶の製造装置>
図28に、前記第2のIII族窒化物結晶製造工程に用いる製造装置(気相成長法による前記第2のIII族元素窒化物結晶の製造装置)の構成の一例を示す。同図において、わかりやすくするために、各構成部材の大きさ、比率等は実際とは異なっている。図示のとおり、本例の製造装置100は、第1の容器101内部に、第2の容器102と基板支持部103とが配置されている。前記第2の容器102は、同図において、前記第1の容器101の左側面に固定されている。前記基板支持部103は、前記第1の容器101の下面に固定されている。前記第2の容器102は、下面にIII族元素含有原料載置部104を有する。前記第2の容器102は、同図において、左側面にハロゲン化水素ガス導入管105を備え、右側面にIII族元素ハロゲン化物ガス導出管106を備える。ハロゲン化水素ガス導入管105により、第2の容器102内にハロゲン化水素ガスを連続的に導入(供給)可能である。前記第1の容器101は、同図において、左側面に窒素含有ガス導入管107aおよび107bを備え、右側面に排気管108を備える。窒素含有ガス導入管107aおよび107bにより、第1の容器101内に窒素含有ガスを連続的に導入(供給)可能である。さらに、前記第1の容器101の外部には、第1の加熱手段109aおよび109b並びに第2の加熱手段200aおよび200bが配置されている。ただし、本発明の製造方法に用いる製造装置は、この例に限定されない。例えば、この例では、前記第1の容器101内部に、前記第2の容器102が1つだけ配置されているが、前記第1の容器101内部に、前記第2の容器102が複数個配置されていてもよい。また、この例では、前記ハロゲン化水素ガス導入管105は、一つであるが、前記ハロゲン化水素ガス導入管105は、複数であってもよい。
【0152】
前記第1の容器の形状は、特に限定されない。前記第1の容器の形状としては、例えば、円柱状、四角柱状、三角柱状、これらを組合せた形状等があげられる。前記第1の容器を形成する材質としては、例えば、石英、アルミナ、チタン酸アルミニウム、ムライト、タングステン、モリブデン等があげられる。前記第1の容器は、自作してもよいし、市販品を購入してもよい。前記第1の容器の市販品としては、例えば、(株)フェニックス・テクノ製の商品名「石英反応管」等があげられる。
【0153】
前記第2の容器の形状は、特に限定されない。前記第2の容器の形状としては、例えば、前記第1の容器の形状と同様とすることができる。前記第2の容器を形成する材質としては、例えば、石英、タングステン、ステンレス、モリブデン、チタン酸アルミニウム、ムライト、アルミナ等があげられる。前記第2の容器は、自作してもよいし、市販品を購入してもよい。前記第2の容器の市販品としては、例えば、(株)メックテクニカ製の商品名「SUS316BAチューブ」等があげられる。
【0154】
前記第1の加熱手段および前記第2の加熱手段としては、従来公知の加熱手段を用いることができる。前記加熱手段としては、例えば、セラミックヒータ、高周波加熱装置、抵抗加熱器、集光加熱器等があげられる。前記加熱手段は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記第1の加熱手段および前記第2の加熱手段は、それぞれ、独立して制御されることが好ましい。
【0155】
また、
図30に、前記第2のIII族窒化物結晶製造工程に用いる製造装置の構成の、別の一例を示す。図示のとおり、この製造装置300は、第2の容器102に代えて、第2の容器301を有すること以外は、
図28の製造装置100と同じである。第2の容器301は、図示のとおり、左側面の上部にハロゲン化水素ガス導入管105を備え、左側面の下部にIII族元素金属導入管302を備え、右側面にIII族元素ハロゲン化物ガス導出管106を備える。ハロゲン化水素ガス導入管105により、第2の容器301内に酸化性ガスを連続的に導入(供給)可能である。III族元素金属導入管302により、第2の容器301内にIII族元素金属を連続的に導入(供給)可能である。また、第2の容器301は、III族元素含有原料載置部104を有しない代わりに、第2の容器301自体の深さ(上下の幅)が大きく、第2の容器301下部にIII族元素金属を溜めることができる。なお、
図30の製造装置において、第1の容器101および第2の容器301は、「反応容器」ということができる。III族元素金属導入管302は、「III族元素含有原料供給手段」に該当する。ハロゲン化水素ガス導入管105は、「ハロゲン化水素ガス供給手段」ということができる。窒素含有ガス導入管107aおよび107bは、「窒素含有ガス供給手段」ということができる。本発明において、前記第2のIII族窒化物結晶製造工程に用いる製造装置(気相成長法による前記第2のIII族元素窒化物結晶の製造装置)は、例えば
図30の装置のように、前記III族元素含有原料供給手段により、前記反応容器内に前記III族元素含有原料を連続的に供給可能であり、前記ハロゲン化水素ガス供給手段により、前記反応容器内に前記ハロゲン化水素ガスを連続的に供給可能であり、前記窒素含有ガス供給手段により、前記反応容器内に前記窒素含有ガスを連続的に供給可能であり、前記反応容器内で、前記III族元素含有原料と、前記ハロゲン化水素ガスと、前記窒素含有ガスとを反応させて、前記III族元素窒化物結晶を製造するIII族元素窒化物結晶製造装置であってもよい。
【0156】
前記第2のIII族窒化物結晶製造工程に用いる製造装置(例えば、
図28または30の装置)は、本発明のIII族窒化物結晶製造装置における前記「第2のIII族窒化物結晶製造手段」に該当するということができる。また、前記第2のIII族窒化物結晶製造工程に用いる製造装置は、
図28および30の構成には限定されない。例えば、加熱手段109a、109b、200aおよび200b、ならびには、基板支持部103は、省略することも可能であるが、反応性と操作性の観点から、これらの構成部材があることが好ましい。また、本発明の製造方法に用いる製造装置は、前述の構成部材に加えて、その他の構成部材を備えていてもよい。その他の構成部材としては、例えば、前記第1の加熱手段および前記第2の加熱手段の温度を制御する手段や、各工程で用いるガスの圧力・導入量を調整する手段等があげられる。
【0157】
前記第2のIII族窒化物結晶製造工程に用いる製造装置は、例えば、前述の各構成部材と、必要に応じてその他の構成部材とを従来公知の方法で組み立てることにより製造することができる。
【0158】
<1−2−2.製造工程および反応条件等>
つぎに、前記第2のIII族窒化物結晶製造工程における各工程、反応条件、および使用する原料等について説明する。しかし、本発明はこれに限定されない。なお、以下においては、
図28の製造装置を用いて、または、これに代えて
図30の製造装置を用いて前記第2のIII族窒化物結晶製造工程を実施する形態を説明する。
【0159】
まず、
図29(または
図31)に示すとおり、あらかじめ、前記第1のIII族窒化物結晶製造工程で製造した第1のIII族窒化物結晶202を第1のIII族窒化物結晶支持部103に設置しておく。第1のIII族窒化物結晶202は、その上に生成するIII族窒化物結晶の態様等に応じて、適宜選択することができる。第1のIII族窒化物結晶202は、例えば、基板上に形成されたIII族窒化物結晶であっても良い。具体的には、例えば、
図1(b)のように、基板1002の上に第1のIII族窒化物結晶1003が形成されたような形態でも良い。前記基板の材質としては、例えば、前述のとおり、Al
xGa
1−xN(0<x≦1)、Al
xGa
1−xN(0<x≦1)の酸化物、ダイヤモンドライクカーボン、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、炭化珪素、酸化イットリウム、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、タンタル、レニウム、およびタングステンからなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。または、前記基板の材質としては、サファイア、III族元素窒化物、ガリウム・ヒ素(GaAs)、シリコン(Si)、炭化珪素(SiC)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、リン化ガリウム(GaP)、ホウ素化ジルコニア(ZrB
2)、酸化リチウムガリウム(LiGaO
2)、BP、MoS
2、LaAlO
3、NbN、MnFe
2O
4、ZnFe
2O
4、ZrN、TiN、MgAl
2O
4、NdGaO
3、LiAlO
2、ScAlMgO
4、Ca
8La
2(PO
4)
6O
2、等があげられる。これらの中でも、サファイアが、コスト等の観点から特に好ましい。
【0160】
第1のIII族窒化物結晶202(種結晶)の材質としては、例えば、その上に成長させる第2のIII族元素窒化物結晶と同じでも良いし、異なっていても良いが、同じであることが好ましい。なお、種結晶上に、前記種結晶と同じ材質の結晶をエピタキシャル成長させることを、「ホモエピタキシャル成長」または略して「ホモエピ」ということがある。
【0161】
つぎに、
図29に示すとおり、III族元素含有原料(例えば、III族元素金属)110を、III族元素含有原料載置部104に配置する。または、
図30の製造装置を用いる場合は、
図31に示すとおり、III族元素金属402を、III族元素金属導入管302から第2の容器301内部に導入し、III族元素金属110として第2の容器301内部の下部に溜めておく。III族元素金属導入管302からは、III族元素金属402を、第2の容器301内部に連続的に導入可能である。例えば、反応によりIII族元素金属110が消費されて減少した分だけIII族元素金属導入管302から導入して補充できる。なお、前記III族元素金属は、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等が挙げられ、1種類のみ用いても2種類以上併用しても良い。例えば、前記III族元素金属として、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、およびインジウム(In)からなる群から選択される少なくとも一つを用いても良い。この場合、製造されるIII族元素窒化物結晶の組成は、Al
sGa
tIn
{1−(s+t)}N(ただし、0≦s≦1、0≦t≦1、s+t≦1)で表される。また、III族元素含有原料110には、例えば、ドーパント材等を共存させて反応させても良い。前記ドーパントとしては、特に限定されないが、例えば、Si、S、Te、Mg、Fe、Ge、Sn、Se、Zn、Ru、O、C等が挙げられる。III族元素含有原料110にこれらのドーパントを共存させる場合には、例えば、これらの単体元素、酸化物、ハロゲン化物等の形態で用いることができる。
【0162】
また、2種類以上のIII族元素含有原料を用いて製造される三元系以上の窒化物結晶としては、例えば、Al
sGa
tIn
{1−(s+t)}N(0<s<1、0<t<1、s+t<1)およびGa
xIn
1−xN(0<x<1)の結晶があげられる。なお、三元系以上の窒化物結晶を生成するには、少なくとも二種類の異なるIII族元素ハロゲン化物ガスを生成させることが好ましい。この場合、前記第2の容器を2個以上備えた製造装置を用いることが好ましい。前記少なくとも二種類の異なるIII族元素ハロゲン化物ガス(原料ガス)の混合比は、任意である。また、前記III族元素ハロゲン化物(原料ガス)は、前述のとおり、例えば、MX
n(MはAl、Ga、またはInであり、Xはハロゲンであり、nは自然数(好ましくは、n=1または3)である。)で表され、具体的には、例えば、AlCl
3、GaCl、GaCl
3、およびInCl
3が挙げられる。
【0163】
III族元素金属は、融点が比較的低いため、加熱により液体になりやすく、液体にすれば、反応容器内部(
図31では、第2の容器301内部)に連続的に供給することが容易である。前記III族元素金属の中で、ガリウム(Ga)が特に好ましい。ガリウムから製造される窒化ガリウム(GaN)は、半導体装置の材質としてきわめて有用であるとともに、ガリウムは、融点が約30℃と低く、室温でも液体になるため、反応容器内への連続供給が特に行いやすいためである。なお、前記III族元素金属としてガリウムのみを用いた場合、製造されるIII族元素窒化物結晶は、前述のとおり、窒化ガリウム(GaN)となる。
【0164】
つぎに、III族元素含有原料110を、第1の加熱手段109aおよび109bを用いて加熱し、第1のIII族窒化物結晶202を第1の加熱手段200aおよび200bを用いて加熱する。この状態で、ハロゲン化水素ガス導入管105より、ハロゲン化水素ガス201a(または401a)を導入し、前記窒素含有ガス導入管107aおよび107bより、窒素含有ガス203aおよび203bを導入する。ハロゲン化水素ガス201a(または401a)は、特に限定されないが、一般的なHVPE法と同様、塩化水素(HCl)ガスを用いることが特に好ましい。第2の容器102(または301)内に導入(供給)されたハロゲン化水素ガス201a(または401a)は、III族元素含有原料110表面に接触する(ハロゲン化水素ガス201b)。これにより、III族元素含有原料110とハロゲン化水素ガス201bとを反応させてIII族元素ハロゲン化物ガス111aを生成させる(III族元素ハロゲン化物ガス生成工程)。なお、前記ハロゲン化水素ガスの分圧は、特に限定されないが、0.3〜8kPaの範囲であることが好ましい。
【0165】
本発明の製造方法では、前記III族元素ハロゲン化物ガス生成工程において、III族元素ハロゲン化物ガスの生成を促進する観点から、前記III族元素含有原料を、加熱状態で前記ハロゲン化水素ガスと反応させることが好ましい。この場合、前記III族元素含有原料の温度は、特に制限されないが、450〜900℃の範囲であることが好ましい。
【0166】
前記III族元素ハロゲン化物ガス生成工程において、前記III族元素含有原料がガリウムであり、前記ハロゲン化水素ガスがHClガスであり、前記III族元素ハロゲン化物ガスがGaClであることが特に好ましい。この場合の反応式は、例えば、下記式(I)で表すことができるが、これには限定されない。
Ga+HCl → GaCl+1/2H
2 (I)
【0167】
本発明の製造方法では、前記ハロゲン化水素ガスの分圧を制御する観点から、前記III族元素ハロゲン化物ガス生成工程を、前記ハロゲン化水素ガスと他のガスとの混合ガス雰囲気下で実施しても良い。前記他のガスは、特に制限されないが、例えば、不活性ガスおよび水素ガス(H
2)の一方または両方を含むガスであっても良い。前記混合ガス全量に対する前記ハロゲン化水素ガスの割合と、前記他のガスの割合は、特に制限されないが、前記混合ガス全量に対し、前記ハロゲン化水素ガスの割合は、0.001体積%以上100体積%未満であり、前記不活性ガスの割合は、0体積%を超え99.999体積%以下であることが好ましく、より好ましくは、前記ハロゲン化水素ガスの割合は、0.01体積%以上80体積%以下であり、前記他のガスの割合は、20体積%以上99.99体積%以下であり、さらに好ましくは、前記ハロゲン化水素ガスの割合は、0.1体積%以上60体積%以下であり、前記他のガスの割合は、40体積%以上99.9体積%以下である。また、前記他のガス中における前記不活性ガスの割合は、特に制限されないが、例えば、前記水素ガスの割合を100%から差し引いた残りの割合でも良い。前記他のガス中における前記水素ガスの割合は、特に制限されないが、1〜100体積%の範囲であることが好ましい。本発明の製造方法では、前記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、クリプトンガス等があげられる。これらの中でも、窒素ガスが特に好ましい。前記混合ガス雰囲気を作り出す方法としては、例えば、前記第2の容器に、ハロゲン化水素ガス導入管とは別に、前記他のガスの導入管(図示せず)を設けて、前記他のガスを導入する方法や、前記水素ガスと前記不活性ガスとを、所定の割合で混合したガスを予め作製し、前記ハロゲン化水素ガス導入管から導入する方法等があげられる。前記他のガスの導入管を設けて、前記他のガスを導入する場合、前記他のガスの流量は、前記ハロゲン化水素ガスの流量等により、適宜設定することができる。
【0168】
生成したIII族元素ハロゲン化物ガス111aは、III族元素ハロゲン化物ガス導出管106を通じて、第2の容器102外部に導出される(III族元素ハロゲン化物ガス111b)。ここで、分圧制御のための前記「他のガス」が、生成したIII族元素ハロゲン化物ガス111bを、III族元素ハロゲン化物ガス導出管106を通じて第2の容器102の外部に導出するための、第1のキャリアガスとして機能する。
【0169】
III族元素ハロゲン化物ガス111a(111b)の生成は、例えば、加圧条件下で実施しても良いが、例えば、減圧条件下で実施しても良く、加圧および減圧をしない条件下で実施しても良い。前記加圧条件下、前記減圧条件下、または、前記加圧および減圧をしない条件下における圧力は、特に制限されないが、例えば、後述する前記III族元素窒化物結晶生成工程と同じである。加圧方法としては、例えば、前記ハロゲン化水素ガス、前記第1のキャリアガス等により加圧する方法があげられる。
【0170】
III族元素ハロゲン化物ガス導出管106を通って第2の容器102の外側に導出されたIII族元素ハロゲン化物ガス(例えばGaClガス)111bは、第1の容器101内に導入された窒素含有ガス203cと反応して、第1のIII族窒化物結晶202上に、III族元素窒化物(例えばGaN)結晶204が生成される(III族元素窒化物結晶生成工程)。この場合の反応式は、前記III族元素ハロゲン化物ガスがGaClガスであり、前記窒素含有ガスがアンモニアガスである場合は、例えば、下記式(II)で表すことができるが、これには限定されない。なお、反応後の余分なガスは、排気ガス203dとして、排気管108から排出することができる。
GaCl+2NH
3→GaN+H
2+NH
4Cl (II)
【0171】
本発明の製造方法において、前記窒素含有ガスは、NH
3であることが特に好ましい。
【0172】
前記III族元素窒化物結晶生成工程において、前記第1のIII族窒化物結晶の温度は、特に制限されないが、結晶生成速度を確保し、結晶性を良くする観点から、950〜1100°Cの範囲であることが好ましい。
【0173】
前記III族元素窒化物結晶生成工程は、加圧条件下で実施しても良いが、減圧条件下で実施しても良いし、加圧および減圧をしない条件下で実施しても良い。前記III族元素窒化物結晶生成工程における前記第1の容器101内部の圧力は、特に限定されないが、例えば、95〜105kPaの範囲内で、天候等に左右されないように一定値に調整することが好ましい。
【0174】
前記III族元素窒化物結晶生成工程において、前記III族元素ハロゲン化物ガス(例えばGaClガス、
図29および31において符号111b)の供給量は、例えば、5×10
−5〜5×10
1mol/時間の範囲であり、好ましくは、1×10
−4〜5mol/時間の範囲であり、より好ましくは、2×10
−4〜5×10
−1mol/時間の範囲である。前記III族元素ハロゲン化物ガスの供給量は、例えば、前記III族元素ハロゲン化物ガスの生成における前記ハロゲン化水素ガスの流量の調整等により、調整することができる。
【0175】
前記窒素含有ガスの流量は、前記第1のIII族窒化物結晶の温度等の条件により、適宜設定することができる。前記窒素含有ガスの分圧は、特に限定されないが、5〜36kPaの範囲であることが好ましい。
【0176】
前記導入した窒素含有ガスを、結晶生成領域(
図28〜31において、第1の容器101内部の、第1のIII族窒化物結晶支持部103近傍)に移送するために、第2のキャリアガスを導入してもよい。前記第2のキャリアガスは、例えば、前記窒素含有ガス導入管とは別に、キャリアガス導入管(図示せず)を設けて導入してもよいし、前記窒素含有ガスと混合して、前記窒素含有ガス導入管から導入してもよい。前記第2のキャリアガスとしては、例えば、前記III族元素ハロゲン化物ガス生成工程における前記「他のガス」と同様に、不活性ガスおよび水素ガスの一方または両方を含むガス等を用いることができる。
【0177】
前記キャリアガス導入管を設けて、第2のキャリアガスを導入する場合、前記第2のキャリアガスの流量は、前記窒素含有ガスの流量等により、適宜設定することができる。前記第2のキャリアガスの分圧は、特に限定されず、適宜設定可能である。
【0178】
前記窒素含有ガス(A)と前記第2のキャリアガス(B)との混合比A:B(体積比)は、特に制限されないが、好ましくは、2〜80:98〜20の範囲であり、より好ましくは、5〜60:95〜40の範囲であり、さらに好ましくは、10〜40:90〜60の範囲である。前記混合比A:B(体積比)は、例えば、予め所定の混合比で作製する方法や、前記窒素含有ガスの流量と前記第2のキャリアガスの流量とを調整する方法で設定することができる。
【0179】
前記III族元素窒化物結晶(例えばGaN結晶)生成工程は、加圧条件下で実施することが好ましい。前記加圧条件は、前述のとおりである。加圧方法としては、例えば、前記窒素含有ガス、前記第2のキャリアガス等により加圧する方法があげられる。
【0180】
前記III族元素窒化物結晶生成工程は、ドーパントを含むガスの雰囲気下で実施してもよい。このようにすれば、ドーパント含有のGaN結晶を生成することができる。前記ドーパントとしては、例えば、Si、S、Te、Mg、Fe、Ge、Sn、Se、Zn、Ru、O、C等があげられる。前記ドーパントは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記ドーパントを含むガスとしては、例えば、モノシラン(SiH
4)、ジシラン(Si
2H
6)、トリエチルシラン(SiH(C
2H
5)
3)、テトラエチルシラン(Si(C
2H
5)
4)、H
2S、H
2Se、H
2Te、GeH
4、Ge
2O、SiO、MgO、ZnO、ハロゲン化物ガス(例えば、SiH
2Cl
2、GeCl
4、FeCl
2等)、およびCp
2Mg等があげられる。前記ドーパントを含むガスは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、前記ドーパントを含むガスの分圧は、特に限定されないが、0.01〜0.5Paの範囲であることが好ましい。
【0181】
前記ドーパントを含むガスは、例えば、前記窒素含有ガス導入管とは別に、ドーパントを含むガスの導入管(図示せず)を設けて導入してもよいし、前記窒素含有ガスと混合して、前記窒素含有ガス導入管から導入してもよい。前記ドーパントを含むガスは、前記第2のキャリアガスを導入する場合においては、前記第2のキャリアガスと混合して導入してもよい。
【0182】
前記ドーパントを含むガス中のドーパントの濃度は、特に制限されないが、例えば、0.001〜100000ppmの範囲であり、好ましくは、0.01〜1000ppmの範囲であり、より好ましくは、0.1〜10ppmの範囲である。
【0183】
前記III族窒化物結晶(例えばGaN結晶)の生成速度は、特に制限されない。前記速度は、例えば、100μm/時間以上であり、好ましくは、500μm/時間以上であり、より好ましくは、1000μm/時間以上である。
【0184】
以上のようにして前記第2のIII族窒化物結晶製造工程を行うことができるが、前記第2のIII族元素窒化物結晶製造工程は、これに限定されない。
【0185】
前記第2のIII族窒化物結晶製造工程により製造される第2のIII族窒化物結晶のサイズは、特に限定されないが、長径が15cm(約6インチ)以上であることが好ましく、20cm(約8インチ)以上であることがより好ましく、25cm(約10インチ)以上であることが特に好ましい。また、前記第2のIII族窒化物結晶の高さ(厚み)も特に限定されないが、例えば、1cm以上であっても良く、好ましくは5cm以上、より好ましくは10cm以上である。ただし、本発明の製造方法は、このような大サイズのIII族窒化物結晶の製造に限定されず、例えば、従来と同サイズのIII族窒化物結晶をさらに高品質に製造するために用いることも可能である。また、例えば、前記第2のIII族窒化物結晶の高さ(厚み)は、前述のとおり、特に限定されず、例えば、1600μm未満等であっても良い。
【0186】
前記第2のIII族窒化物結晶において、転位密度は、特に限定されないが、好ましくは1.0×10
7cm
−2以下、より好ましくは1.0×10
4cm
−2以下、さらに好ましくは1.0×10
3cm
−2以下、さらに好ましくは1.0×10
2cm
−2以下である。前記転位密度は、理想的には0であるが、通常、0であることはあり得ないので、例えば、0を超える値であり、測定機器の測定限界値以下であることが特に好ましい。なお、前記転位密度の値は、例えば、結晶全体の平均値であっても良いが、結晶中の最大値が前記値以下であれば、より好ましい。また、本発明のIII族窒化物結晶において、XRCによる半値幅の、対称反射成分(002)および非対称反射成分(102)の半値幅は、それぞれ、例えば300秒以下、好ましくは100秒以下、より好ましくは30秒以下であり、理想的には0である。
【0187】
なお、本発明のIII族窒化物結晶の製造方法は、製造したIII族窒化物結晶をさらに成長させる結晶再成長工程をさらに含んでいても良い。前記結晶再成長工程は、具体的には、例えば、製造したIII族窒化物結晶をカットして任意の面(例えば、c面、m面、a面、またはその他の非極性面)を露出させ、その面を結晶成長面として前記III族窒化物結晶をさらに成長させても良い。これにより、前記任意の面を大面積で有し、かつ厚みが大きいIII族窒化物結晶を製造することも可能である。
【0188】
<2.III族窒化物結晶および半導体装置>
本発明のIII族窒化物結晶は、前記本発明の製造方法により製造されるIII族窒化物結晶、または前記III族窒化物結晶をさらに成長させて製造されるIII族窒化物結晶である。本発明のIII族窒化物結晶は、例えば、大サイズで、かつ、欠陥が少なく高品質である。品質は、特に限定されないが、例えば、転位密度が、前記「1.本発明の製造方法」に記載した数値範囲であることが好ましい。サイズについても特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。また、本発明のIII族窒化物結晶の用途も特に限定されないが、例えば、半導体としての性質を有することにより、半導体装置に使用可能である。
【0189】
本発明によれば、前述のとおり、従来技術では不可能であった6インチ径以上のIII族窒化物(例えばGaN)結晶を提供することができる。これにより、例えば、Si(シリコン)の大口径化が基準となっているパワーデバイス、高周波デバイス等の半導体装置において、Siに代えてIII族窒化物を用いることで、さらなる高性能化も可能である。これにより本発明が半導体業界に与えるインパクトは、きわめて大きい。本発明のIII族窒化物結晶は、これらに限定されず、例えば、太陽電池等の任意の半導体装置に用いることもできるし、また、半導体装置以外の任意の用途に用いても良い。
【0190】
なお、本発明の半導体装置は、特に限定されず、半導体を用いて動作する物品であれば、何でも良い。半導体を用いて動作する物品としては、例えば、半導体素子、および、前記半導体素子を用いた電気機器等が挙げられる。前記半導体素子としては、ダイオード、トランジスタなどの高周波デバイスやパワーデバイス、および発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)などの発光デバイスが挙げられる。また、前記半導体素子を用いた電気機器としては、前記高周波デバイスを搭載した携帯電話用基地局、前記パワーデバイスを搭載した太陽電池の制御機器や電気を用いて駆動する車両の電源制御機器、前記発光デバイスを搭載したディスプレイや照明機器、光ディスク装置等が挙げられる。例えば、青色光を発するレーザダイオード(LD)は、高密度光ディスク、ディスプレイ等に応用され、青色光を発する発光ダイオード(LED)は、ディスプレイ、照明等に応用される。また、紫外線LDは、バイオテクノロジ等への応用が期待され、紫外線LEDは、水銀ランプの代替の紫外線源として期待される。また、本発明のIII−V族化合物をインバータ用パワー半導体として用いたインバータは、例えば、太陽電池等の発電に用いることもできる。さらに、前述のとおり、本発明のIII族窒化物結晶は、これらに限定されず、他の任意の半導体装置、またはその他の広範な技術分野に適用可能である。
【実施例】
【0191】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されない。
【0192】
本実施例では、以下のとおり、まず、液相成長法によりGaN結晶を製造し(第1のIII族窒化物結晶製造工程)、さらにその上に、気相成長法によりGaN結晶を製造した(第2のIII族窒化物結晶製造工程)。
【0193】
<液相成長法によるGaN結晶の製造>
図26に示す構造のLPE装置を用いてGaN結晶を製造した。この工程は、本発明の前記「第1のIII族窒化物結晶製造工程」に該当する。
【0194】
図9(a)に示すように、サファイア基板12上に、MOCVD(気相成長法)によりGaN種結晶層13が積層された基板を準備した。サファイア基板12の厚みは1mm、GaN種結晶層13の厚みは5μmであった。つぎに、GaN種結晶層13およびサファイア基板12の上部の一部をエッチングにより除去した。これにより、
図9(b)に示すように、基板12の複数の凸部12a上に種結晶13が配置されたGaN種結晶基板とした。凸部12a(種結晶13)の形状は、円形のドット状であった。また、その配置パターンは、
図6(a)に示すように、正三角形の各頂点上に凸部12a(種結晶13)が配置されたパターンの繰り返しとした。凸部12a(種結晶13)の直径は0.25mm、互いに隣接する凸部12a(種結晶13)どうしの中心間距離は、0.55mmであった。
【0195】
つぎに、前記GaN種結晶基板を用いて、窒素ガス雰囲気下、下記の条件で結晶成長(育成)を行い、GaN結晶を製造した。なお、下記「C[mol%]0.5」は、炭素粉末を、ガリウム(Ga)、ナトリウム(Na)および前記炭素粉末の物質量の合計に対し、0.5mol%添加したことを示す。操作としては、まず、坩堝385をステンレス容器384の中に入れ、ステンレス容器384を、電気炉(耐熱耐圧容器)381の中に入れた。原料ガスタンク3803から、窒素ガスをステンレス容器384内に導入すると同時に、ヒータ(図示せず)により加熱して電気炉(耐熱耐圧容器)381内を、870℃、34atm(約3.4MPa)の高温高圧条件下とし、168時間反応させて結晶成長(育成)を行い、目的とするGaN結晶を製造した。さらに、このGaN結晶の上部および前記サファイア基板を研削および研磨により除去して下部だけを残し、厚み2.8mmのGaN結晶とした。このGaN結晶を、次の、気相成長法によるGaN結晶製造(第2のIII族窒化物結晶製造工程)に供した。
温度[℃] 870
圧力[MPa] 3.4
時間[h] 168
Ga:Na 27:73
C[mol%] 0.5
坩堝 Al
2O
3
【0196】
図16に、前記液相成長法により製造したGaN結晶層表面の写真を示す。図示のとおり、結晶全体にわたってきわめて転位が少なく均質で高品質なGaN結晶が得られた。互いに隣接する結晶の合一部(会合部または結合部と同義)において、結晶欠陥は観察されなかった。また、図示のとおり、このGaN結晶は、互いに隣接するGaN結晶どうしの一部分を結合させないことによる貫通孔が残っていた。さらに、図示のとおり、前記貫通孔は、六回対称に配置されていた。
【0197】
<気相成長法によるGaN結晶の製造>
前記液相成長法により製造した第1のGaN結晶(GaN結晶層)上に、気相成長法によりGaN結晶を製造した(ホモエピ)。この工程は、本発明の前記「第2のIII族窒化物結晶製造工程」に該当する。
【0198】
まず、前述の、サファイア基板上にGaN結晶層(第1のGaN結晶)が積層された基板(以下「GaN結晶層基板」という。)を洗浄(下処理)した。すなわち、まず、前記GaN結晶層基板を、アセトン中で5分間×2回、超音波洗浄し、さらに、純水で洗い流した。つぎに、前記GaN結晶層から油脂分、金属不純物等を除去する目的で、前記GaN結晶層基板を、70℃の硝酸(一般試薬、希釈しない原液)中に30分間×1回浸漬させた。このGaN結晶層基板を純水で洗い流し、さらに、前記GaN結晶層における前記貫通孔中の酸を完全に除去する目的で、純水中で5分間×2回、超音波洗浄した。以上のようにして、前記GaN結晶層基板の洗浄(下処理)をした。
【0199】
つぎに、洗浄(下処理)した前記GaN結晶層基板および
図28(
図29)に示す自作の装置を用い、前記GaN結晶層上に、気相成長法によりGaN結晶を製造した。本実施例では、III族元素含有原料110として、金属ガリウム(Ga)を用いた。ハロゲン化水素ガス201aとしては、塩化水素(HCl)ガスを用いた。塩化水素ガスの分圧P
HClは、6.3kPaに設定した。ここで、ハロゲン化水素ガス201a(201b)は、金属ガリウム110と反応して塩化ガリウム(GaCl)ガス111a(111b)を生じる。本実施例では、HClおよびGaからGaClへの変換効率を100%と推定した。すなわち、塩化ガリウムガス111a(111b)の分圧P
GaClは、6.3kPaと推定した。また、窒素含有ガス203aおよび203bとしては、アンモニアガス(NH
3)を用いた。アンモニアガスの分圧P
NH3は、15.8kPaとした。さらに、ハロゲン化水素ガス導入管105、窒素含有ガス導入管107a、107bから、それぞれ、キャリアガスとして、H
2ガス(100%H
2ガスで、他のガスを含まない)を導入して加圧した。また、前記GaN結晶層基板(
図29では、202)の基板温度(結晶成長温度)は、1030℃とし、結晶成長時間(前記各ガスを流し続けた時間)は、3hとした。この気相成長法により、前記GaN結晶層基板のGaN結晶層上に、厚さ(ホモエピ厚さ)700μmのGaN結晶を製造した。
【0200】
図17に、前記気相成長法(第2のIII族窒化物結晶製造工程)により製造(ホモエピ)したGaN結晶表面の写真を示す。図示のとおり、気相成長法により、平坦で欠陥が少なくきわめて高品質なGaN結晶を製造することができた。これは、前記液相成長法(第1のIII族窒化物結晶製造工程)により製造したGaNの前記貫通孔周辺に、極性反転がなかったためである。