【実施例】
【0065】
以下、合成例及び実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。なお、使用した装置は、以下のとおりである。
(1)
1H−NMR、
13C−NMR:BRUKER社製DRX400
(2)FT−IR:日本分光(株)製FT/IR-4200 type A
(3)元素分析:ヤナコテクニカルサイエンス(株)製MT-6 CHN CORDER
(4)GPC:東ソー(株)製高速GPCシステムHLC-8220GPC(カラム:東ソーTSK-GEL(α−M)、カラム温度:45℃、検出器:UV-8020、波長254nm、溶離液:N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(0.01mol/L臭化リチウムを含む。)、検量線:標準ポリスチレン、カラム流速:0.2mL/min)
(5)示差走査熱量測定(DSC):(株)日立ハイテクサイエンス製X-DSC 7000
(6)熱重量分析(TG/DTA):(株)日立ハイテクサイエンス製TG/DTA 7300
(7)紫外可視分光光度計:(株)島津製作所製UV-1800
(8)屈折率測定:ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(株)製多入射角分光エリプソメーターVASE
【0066】
[1]原料の合成
【0067】
[合成例1]6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジクロリド(AnTDC)の合成
【化7】
【0068】
側管付き滴下ロート、温度計、窒素導入管及び攪拌子を取り付けた1,000mLの三口フラスコに、塩化シアヌル56.16g(0.305mol)とテトラヒドロフラン(THF)200mLを入れ、氷浴上で0℃に冷却しながら攪拌して完全に溶解させた。この溶液にアニリン28.16g(0.302mol)を溶解させたTHF200mLを温度の上昇に気をつけながらゆっくり滴下し、滴下終了後、0℃で2時間攪拌し反応させた。その後、この溶液に炭酸ナトリウム19.36g(0.183mol)を蒸留水100mLに溶解させた水溶液を温度の上昇に気をつけながらゆっくり滴下し、滴下終了後、0℃で2時間攪拌し反応させた。
反応終了後、反応混合物を分液ロートに移し、飽和食塩水500mLで3回洗浄した。有機相を1,000mLの三角フラスコに移し、無水硫酸ナトリウムを加え、一晩脱水させた。自然ろ過により硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液(THF)をエバポレーターにより留去した。80℃で12時間減圧乾燥し、粗生成物を淡黄色固体として得た。
粗生成物をトルエン/ヘキサン混合溶媒(トルエン/ヘキサン=2/1)を用いて再結晶を行い、得られた結晶を80℃で12時間減圧乾燥することで、淡黄色固体のAnTDCを得た(収量:56.1g、収率:77%)。融点は134℃であった。
1H−NMR、
13C−NMR及びFT−IRの測定結果を以下に示す。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, ppm ) : δ 7.19(t, 1H, Ar-H), 7.40(t, 2H, Ar-H), 7.60(d, 2H, Ar-H), 11.13(s, 1H, NH).
13C-NMR (101 MHz, DMSO-d6, ppm): δ 121.0, 125.8, 129.2, 135.6, 164.0, 170.1, 171.3.
FT-IR (KBr, cm
-1): 3371(N-H), 1604(C=C), 1556 (C=N), 1221(C-N).
【0069】
[合成例2]6−ジフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジクロリド(PTDC)の合成
【化8】
【0070】
温度計、攪拌子、側管付き滴下ロート及び窒素導入管を取り付けた500mLの三つ口フラスコに、THF250mL、塩化シアヌル55.32g(0.30mol)を入れ完全に溶解させた。氷浴で0℃に冷却し、窒素気流下で、ジフェニルアミン50.76g(0.30mol)をTHF100mLに溶解させた溶液と、トリエチルアミン(TEA)30.32g(0.30mol)とをゆっくり滴下し、滴下終了後、温度を保ちながら2時間攪拌した。その後、室温で24時間反応させた。
反応終了後、反応混合物を吸引ろ過しトリエチルアミン塩酸塩を取り除いた後、ろ液からTHFをエバポレーターで除去した。淡黄色固体をトルエン300mLに溶解させ、蒸留水500mLを用いて3回洗浄した。この有機層を500mLの三角フラスコに移し、無水硫酸ナトリウムで一晩かけて脱水した。ろ過により硫酸ナトリウムを除去した後、エバポレーターによりトルエンを留去し、淡黄色の粗結晶を得た。
粗生成物をトルエン/ヘキサン混合溶媒(トルエン/ヘキサン=2/1)で再結晶を行い、得られた結晶を80℃で12時間減圧乾燥させることで淡黄色固体のPTDCを得た(収量:28.5g、収率:30%)。融点は176℃であった。
1H−NMR、
13C−NMR及びFT−IRの測定結果を以下に示す。
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3,TMS, ppm): δ 7.27(d, 4H, o-Ar-H), 7.32(t, 2H, p-Ar-H), 7.42(t, 4H, m-Ar-H).
13C-NMR (101 MHz, CDCl
3, TMS, ppm): δ 127.0, 127.4, 129.3, 141.4, 165.7, 170.4.
FT-IR (KBr, cm
-1): 3051(Ar-H), 1550(C=N), 1497(C=C), 1200(C-N).
【0071】
[合成例3]2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(ATDA)の合成
【化9】
【0072】
側管付き滴下ロート、ジムロート冷却管、窒素導入管及び攪拌子を備えた1000mLの三口フラスコに、1,4−ジオキサン200mL、炭酸ナトリウム6.36g(0.060mol)、及びp−フェニレンジアミン64.88g(0.600mol)を加え、1,4−ジオキサン還流温度で攪拌し溶解させた。そこに、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジクロリド(AnTDC)14.46g(0.060mol)を1,4−ジオキサン200mLに溶解させた溶液を、還流させた溶液に5時間かけて滴下した。その後、還流温度のままで24時間攪拌し続けた。
反応混合物を3Lの熱水(70℃程度)で4回、蒸留水で2回洗浄した。反応混合物をろ過により回収した後、アセトン500mLに溶解し、活性炭をスパチュラで1杯加え、還流温度で30分攪拌して脱色し、不溶分をろ過した。ろ液のアセトンをエバポレーターにより留去し、95℃で一晩減圧乾燥した。
粗生成物を1,4−ジオキサン/ヘキサンの混合溶媒(1,4−ジオキサン/ヘキサン=5/1)を用いて2回再結晶を行い精製した。得られた粉末を80℃で3時間減圧乾燥し、更に粉末を十分に砕いてから170℃で6時間減圧乾燥することで、淡褐色固体のATDAを得た(収量:18.5g、収率:80%)。ATDAの融点は224℃であった。
1H−NMR、
13C−NMR、FT−IR及び元素分析の測定結果を以下に示す。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6,TMS, ppm): δ 4.79(s, 4H, NH
2), 6.51(d, 4H, Ar-H), 6.93(t, 1H, Ar-H), 7.22(t, 2H, Ar-H), 7.33(d, 4H, Ar-H), 7.78(d, 2H, Ar-H), 8.64(s, 2H, NH), 8.95(s, 1H, NH).
13C-NMR (101 MHz, DMSO-d
6,TMS, ppm ): δ 113.7, 120.2, 121.4, 122.6, 128.2, 129.0, 140.4, 144.1, 164.0, 164.2.
FT-IR (KBr, cm
-1): 3391(N-H), 1624(C=C), 1578(C=N), 1519(C=C).
元素分析: Calcd. for C
21H
20N
8 : C, 65.61%; H, 5.24%; N, 29.15%. found: C, 65.63%; H, 5.38%; N, 28.97%.
【0073】
[合成例4]2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン(PTDA)の合成
【化10】
【0074】
側管付き滴下ロート、ジムロート冷却管、窒素導入管及び攪拌子を備えた500mLの三口フラスコに1,4−ジオキサン200mL、炭酸ナトリウム8.90g(0.080mol)、p−フェニレンジアミン34.62g(0.32mol)を加え、1,4−ジオキサン還流温度で攪拌し溶解させた。そこに、6−ジフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジクロリド(PTDC)12.69g(0.040mol)を溶解させた1,4−ジオキサン100mLに溶解させた溶液を、還流させた溶液に5時間かけて滴下した。その後、還流温度のままで24時間攪拌し続けた。
反応溶液を3Lの熱水に落とし、析出物を吸引ろ過により回収し、ろ液が無色透明になるまで数回熱水で洗浄した。その後、析出物を減圧乾燥し、水を除去した。
1,4−ジオキサン単一溶媒で再結晶を行って析出物を精製し、得られた粉末を80℃で3時間減圧乾燥し、更に粉末を十分に砕いてから150℃で6時間、180℃で2時間、210℃で1時間減圧乾燥することで、淡褐色固体のPTDAを得た(収量:13.3g、収率:72%)。PTDAの融点は261℃であった。
1H−NMR、
13C−NMR、FT−IR及び元素分析の測定結果を以下に示す。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d
6, ppm): δ 4.67(s, 4H, NH
2), 6.32(d, 4H, Ar-H), 7.07-7.41(m, 14H, Ar-H), 8.58(s, 2H, NH).
13C-NMR (101 MHz, DMSO-d
6, ppm): δ 113.5, 121.2, 125.2, 128.1, 128.5, 129.2, 143.2, 144.0, 163.5, 166.0.
FT-IR (KBr, cm
-1): 3410(N-H), 1615(C=C), 1577(C=N), 1504(C=C).
元素分析:Calcd. for C
27H
24N
8 : C, 70.42%; H, 5.25%; N, 24.33%. found: C, 70.56%; H, 5.35%; N, 24.41%.
【0075】
[合成例5]2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン(CDMT)の合成
【化11】
【0076】
攪拌子、温度計、窒素導入管及びジムロート冷却管を備えた500mLの三口フラスコに、炭酸水素ナトリウム44.2g(0.525mol)及びメタノール160mLを入れ0℃に冷却した。そこへ塩化シアヌル46.1g(0.25mol)を加え、0℃で5分間攪拌した。その後、20℃に昇温し水浴で1時間、更に60℃で3.5時間攪拌した。
水浴で室温まで冷却し、反応溶液を500mLのナスフラスコに移し、エバポレーターにてメタノールを留去した。ナスフラスコ中の白色固体を酢酸エチル200mLに溶解させ、1Lの分液ロートに移し、水400mLで3回洗浄を行った。有機相を300mLの三角フラスコに入れ、有機相を無水硫酸ナトリウムで一晩脱水した後、自然ろ過にて硫酸ナトリウムを除去し、酢酸エチルをエバポレーターにて留去した。
得られた粗生成物をヘキサンで再結晶し、室温で6時間減圧乾燥して白色固体であるCDMTを得た(収量:37.0g、収率:84%)。
1H−NMR、
13C−NMR、FT−IR及び元素分析の測定結果を以下に示す。
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3-d, ppm):δ 4.06(s, 6H, OCH3).
13C-NMR (101 MHz, CDCl
3-d, ppm):δ 56.0(OCH
3), 172.5(N=C-O), 172.6(N=C-Cl).
FT-IR (KBr, cm
-1): 2949(C-H), 1560 (C=N), 1363(N-C), 808(C-Cl).
元素分析: Calcd. for(C
5H
6ClN
3O
2);C 34.20%, H 3.44%, N 23.93, found;C 34.03%, H 3.52%, N 23.61%.
【0077】
[合成例6]4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)の合成
【化12】
【0078】
300mLのナスフラスコに攪拌子と2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン10.0g(57.0mmol)を入れ、THF(160mL)に溶解した。ここにN−メチルモルホリン5.24g(51.8mmol)を加え室温で30分攪拌した。
反応溶液中に析出した沈殿物を吸引濾過にて回収し、室温で1時間減圧乾燥することでDMT−MMの粗生成物を無色固体として得た。
メタノール/ジエチルエーテル混合溶媒(メタノール/ジエチルエーテル=1/3)で再結晶を行って粗生成物を精製し、室温で一晩減圧乾燥することで、無色固体のDMT−MMを得た(収量:7.89g、収率:50%)。DMT−MMの融点は115〜116℃であった。
1H−NMR、FT−IR及び元素分析の測定結果を以下に示す。
1H-NMR (400 MHz, MeOD-d
4, TMS, ppm): 3.53(s, 3H), 3.81-3.93(m, 4H), 4.06(m, 2H), 4.18(s, 6H), 4.53(m, 2H)
FT-IR (KBr, cm
-1): 2987(C-H), 1540(C=N), 1376(N-C), 1131(C-O).
元素分析: Calcd. for C
10H
17ClN
4 O
3: C, 43.40%; H, 6.19%; N, 20.25%. found: C, 43.12%; H, 6.20%; N, 20.08%.
【0079】
[2]ハイパーブランチポリアミドの合成
[実施例1]カルボン酸末端ハイパーブランチポリアミドAHBPA−Cの合成
【化13】
【0080】
攪拌子、滴下ロート及び窒素導入管を取り付けた50mLの二口フラスコを窒素気流下でヒートガンにより乾燥し、トリメシン酸(TMA)0.210g(1.0mmol)、NMP30mL、及びTEA0.304g(3.0mmol)を加え、完全に溶解させた後0℃に冷却し、DMT−MM0.830g(3.3mmol)を加え30分間活性化を行った。その後、20mLのNMPに溶解させたATDA0.384g(1.0mmol)を30分間かけて滴下した。滴下終了後、0℃で6時間反応させた。
反応終了後、反応溶液を500mLの酸性に調整したメタノール(pH5)に投入し、吸引ろ過により沈殿物を回収した。回収した沈殿物を300mLのメタノールで中性になるまで洗浄後、室温で一晩減圧乾燥を行った。乾燥後、4mLのNMPに溶解させ、メタノールで再沈殿を行った。析出したポリマーを吸引ろ過で回収し、室温で一晩減圧乾燥を行うことで、淡黄色粉末のカルボン酸末端ハイパーブランチポリアミドAHBPA−C(収量:0.402g、収率:72%)を得た。
1H−NMR測定の結果、HBPAの分岐度は0.5程度であった。FT−IR及びGPCの測定結果を以下に示す。
FT-IR(KBr, cm
-1): 3283(N-H), 3061(Ar-H), 1663(C=O, amido group), 1542(C=N), 1508(C=C), 1406(N-C).
GPC: Mn=7,500、Mw=35,000、Mw/Mn=4.7
【0081】
[実施例2]カルボン酸末端ハイパーブランチポリアミドPHBPA−Cの合成
【化14】
【0082】
ATDAの代わりにPTDA0.461g(1.0mmol)を用いた以外は、合成例1と同じ方法で、淡黄色粉末のカルボン酸末端ハイパーブランチポリアミドPHBPA−Cを得た(収量:0.317g、収率:50%)。FT−IR及びGPCの測定結果を以下に示す。
FT-IR(KBr, cm
-1): 3283(N-H), 3061(Ar-H), 1663(C=O, amido group), 1543(C=N), 1509(C=C), 1406(N-C).
GPC: Mn=10,000、Mw=97,00、Mw/Mn=9.3
【0083】
[実施例3]アニリン末端ハイパーブランチポリアミドAHBPA−Anの合成
【化15】
【0084】
攪拌子、滴下ロート及び窒素導入管を取り付けた50mLの二口フラスコを窒素気流下でヒートガンにより乾燥し、TMA0.210g(1.0mmol)、NMP30mL、及びTEA0.304g(3.0mmol)を加え、完全に溶解させた後0℃に冷却し、DMT−MM0.830g(3.3mmol)を加え30分間活性化を行った。その後、20mLのNMPに溶解させたATDA0.384g(1.0mmol)を30分間かけて滴下した。滴下終了後、0℃で6時間反応させた。
反応終了後、得られた溶液にアニリン0.279g(3.0mmol)を加えて、更に0℃で3時間反応させた。
反応溶液を500mLのメタノールに投入し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーを吸引濾過で回収し、室温で一晩減圧乾燥を行った。乾燥後、ポリマーを4mLのNMPに溶解し、メタノールで再沈殿を行った。析出したポリマーを吸引濾過で回収し、室温で一晩減圧乾燥を行うことで、淡黄色粉末のアニリン末端ハイパーブランチポリアミドAHBPA−An(収量:0.323g、収率:51%)を得た。
1H−NMR測定により末端封止が完了していることを確認した。FT−IR及びGPCの測定結果を以下に示す。
FT-IR(KBr, cm
-1): 3287(N-H), 3060(Ar-H), 1660(C=O, amido group), 1549(C=N), 1514(C=C), 1411(N-C).
GPC: Mn=23,000、Mw=67,000、Mw/Mn=3.0
【0085】
[実施例4]アニリン末端ハイパーブランチポリアミドPHBPA−Anの合成
【化16】
【0086】
攪拌子、滴下ロート及び窒素導入管を取り付けた50mLの二口フラスコを窒素気流下でヒートガンにより乾燥し、TMA0.210g(1.0mmol)、30mLのNMP、及びTEA0.304g(3.0mmol)を加え、完全に溶解させた後0℃に冷却し、DMT−MM0.830g(3.3mmol)を加え30分間活性化を行った。その後、20mLのNMPに溶解させたPTDA0.461g(1.0mmol)を30分間かけて滴下した。滴下終了後、0℃で6時間反応させた。
反応終了後、得られた溶液にアニリン0.279g(3.0mmol)を加えて、更に0℃で3時間反応させた。
反応溶液を500mLのメタノールに投入し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーを吸引濾過で回収し、室温で一晩減圧乾燥を行った。乾燥後、ポリマーを4mLのNMPに溶解し、メタノールで再沈殿を行った。析出したポリマーを吸引濾過で回収し、室温で一晩減圧乾燥を行うことで、淡黄色粉末のアニリン末端ハイパーブランチポリアミドPHBPA−Anを得た(収量:0.440g、収率:62%)。
1H−NMR測定により末端封止が完了していることを確認した。FT−IR及びGPCの測定結果を以下に示す。
FT-IR(KBr, cm
-1): 3304(N-H), 3060(Ar-H), 1665(C=O, amido group), 1548(C=N), 1511(C=C), 1407(N-C).
GPC: Mn=26,000、Mw=99,000、Mw/Mn=3.8
【0087】
[実施例5]アミン末端ハイパーブランチポリアミドAHBPA−Amの合成
【化17】
【0088】
攪拌子及び窒素導入管を取り付けた50mLの二口フラスコを窒素気流下でヒートガンにより脱気し、TMA0.210g(1.0mmol)、ATDA0.769g(2.0mmol)、NMP50mL、及びTEA0.304g(3.0mmol)を加え、完全に溶解させた後0℃に冷却した。その後、DMT−MM0.277g(1.1mmol)を加え30分間攪拌し、更にこの操作を2回繰り返し、3.3mmolのDMT−MMを加えた。添加後、0℃で6時間反応させた。
反応終了後、少量のアンモニア水(5mL)により塩基性に調製した500mLのメタノールに投入し、沈殿物を吸引ろ過により回収した。更に、沈殿物を400mLのメタノールで洗浄後、中性であることを確認し、室温で12時間減圧乾燥を行った。乾燥後、前記沈殿物を5mLのNMPに溶解させ、メタノールで再沈殿を行った。析出したポリマーを吸引ろ過で回収し、室温で12時間減圧乾燥を行うことで、淡黄色粉末のアミン末端ハイパーブランチポリアミドAHBPA−Amを得た(収量:0.540g、収率:58%)。FT−IR及びGPCの測定結果を以下に示す。
FT-IR(KBr, cm
-1): 3397(N-H), 1659(C=O, amido group), 1559(C=N), 1515(C=C), 1415(N-C).
GPC: Mn=10,000、Mw=21,000、Mw/Mn=2.1
【0089】
[実施例6]アミン末端ハイパーブランチポリアミドPHBPA−Amの合成
【化18】
【0090】
ATDAの代わりにPTDA0.921g(2.0mmol)を用いた以外は、実施例5と同じ方法で、淡黄色粉末のアミン末端ハイパーブランチポリアミドPHBPA−Amを得た(収量:0.756g、収率:70%)。FT−IR及びGPCの測定結果を以下に示す。
FT-IR(KBr, cm
-1): 3397(N-H), 3052(Ar-H), 1655(C=O, amido group), 1552(C=N), 1510(C=C), 1408(N-C).
GPC:Mn=8,000、Mw=22,000、Mw/Mn=2.6
【0091】
[実施例7]ベンゾイル基末端ハイパーブランチポリアミドAHBPA−Bの合成
【化19】
【0092】
攪拌子及び窒素導入管を取り付けた50mLの二口フラスコを窒素気流下でヒートガンにより脱気し、TMA0.210g(1.0mmol)、ATDA0.769g(2.0mmol)、50mLのNMP、及びTEA0.304g(3.0mmol)を加え、完全に溶解させた後0℃に冷却した。その後、DMT−MM0.277g(1.1mmol)を加え30分間攪拌し、更にこの操作を2回繰り返し、3.3mmolのDMT−MMを加えた。添加後、0℃で6時間反応させた。
反応終了後、得られた溶液に塩化ベンゾイル0.422g(3.0mmol)を加えて、更に0℃で3時間反応させた。
反応溶液を500mLのメタノールに投入し、ポリマーを析出させた。吸引濾過でポリマーを回収し、室温で12時間減圧乾燥を行った。乾燥後、回収したポリマーを4mLのNMPに溶解し、メタノールで再沈殿を行った。析出したポリマーを吸引濾過で回収し、室温で12時間減圧乾燥を行うことで、淡黄色粉末のベンゾイル基末端ハイパーブランチポリアミドAHBPA−Bを得た(収量:0.889g、収率:86%)。
1H−NMR測定により、末端封止が完了していることを確認した。FT−IR及びGPCの測定結果を以下に示す。
FT-IR(KBr, cm
-1): 3399(N-H), 3064(Ar-H), 1656(C=O, amido group), 1555(C=N), 1515(C=C), 1415(N-C).
GPC: Mn=11,000、Mw=24,000、Mw/Mn=2.2
【0093】
[実施例8]ベンゾイル基末端ハイパーブランチポリアミドPHBPA−Bの合成
【化20】
【0094】
攪拌子及び窒素導入管を取り付けた50mLの二口フラスコを窒素気流下でヒートガンにより脱気し、TMA0.210g(1.0mmol)、PTDA0.921g(2.0mmol)、50mLのNMP、及びTEA0.304g(3.0mmol)を加え、完全に溶解させた後0℃に冷却した。その後、DMT−MM0.277g(1.1mmol)を加え30分間攪拌し、更にこの操作を2回繰り返し、3.3mmolのDMT−MMを加えた。添加後、0℃で6時間反応させた。
反応終了後、得られた溶液に塩化ベンゾイル0.422g(3.0mmol)を加えて、更に0℃で3時間反応させた。
反応溶液を500mLのメタノールに投入し、ポリマーを析出させた。ポリマーを吸引濾過で回収し、室温で12時間減圧乾燥を行った。乾燥後、ポリマーを4mLのNMPに溶解し、メタノールで再沈殿を行った。析出したポリマーを吸引濾過で回収し、室温で12時間減圧乾燥を行うことで、淡黄色粉末のベンゾイル基末端ハイパーブランチポリアミドPHBPA−Bを得た(収量:0.749g、収率:63%)。
1H−NMR測定により、末端封止が完了していることを確認した。FT−IR及びGPCの測定結果を以下に示す。
FT-IR(KBr, cm
-1): 3397(N-H), 3060(Ar-H), 1653(C=O, amido group), 1551(C=N), 1513(C=C), 1408(N-C).
GPC: Mn=10,000、Mw=26,000、Mw/Mn=2.7
【0095】
[3]溶解試験
実施例1〜8で得られたポリマー(10mg)に5mLの各下記溶媒を加え、24時間室温で放置し、溶解しているかを目視にて確認した。また、室温で溶解しなかったものにつき、60℃になるまで加熱して、溶解するかを確認した。溶媒は精製せずに購入したものをそのまま使用した。結果を表1に示す。なお、用いた溶媒は以下のとおりである。
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)
N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)
γ−ブチロラクトン(γ−BL)
テトラヒドロフラン(THF)
シクロペンタノン(CPN)
シクロヘキサノン(CHN)
【0096】
【表1】
++:室温で溶解した。+:加熱により溶解した。−:不溶。
【0097】
表1の結果から、特にPHBPA−An及びPHBPA−Bは、THF、CPN、CHN等にも優れた溶解性を示すことがわかった。これは、ジフェニルアミノ基による嵩高い置換基を導入したこと及びハイパーブランチ構造によるものと考えられる。
【0098】
[4]熱重量分析
実施例3〜8で得られたポリマーのガラス転移温度(T
g)を、DSCを用いて昇温速度20℃/minで測定した。また、各ポリマーの5%重量減少温度(T
d5)、10%重量減少温度(T
d10)を、TG/DTAを用いて、昇温速度10℃/min(空気下又は窒素気流下)で測定した。更に、窒素気流下、800℃における各ポリマーの炭化率(Char Yield)を測定した。結果を表2に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
表2に示したように、これらのポリマーのT
gは264〜303℃となり、高い値を示した。これは、ハイパーブランチ構造の方が分子間水素結合を形成しやすいためと推測される。得られたポリマーの空気中でのT
d5は、341〜427℃であり、窒素中でのT
d5は381〜441℃であった。また、得られたポリマーの空気中でのT
d10は410〜461℃であり、窒素中でのT
d10は426〜464℃であった。つまり、本発明のポリマーは、高い耐熱性を示した。
【0101】
[5]光透過測定
実施例1〜8で得られた各ポリマー0.25gを蒸留したDMAc1gに溶解させて、20wt%のポリマーワニスを調製した。これを石英板に塗布して、50℃で1時間、100℃で12時間減圧乾燥させて、下記表3に示す膜厚のサンプルを作製した。各サンプルのカットオフ波長(λ
cutoff)及び80%透過波長(λ
80%)を紫外可視分光光度計を用いて測定した。また、実施例3、4のポリアミドを用いて作製したサンプルのF線(486nm)、D線(587nm)及びC線(656nm)における屈折率(n
F、n
D、n
C)を測定し、また、アッベ数(ν)を算出した。結果を表3に示す。
【0102】
【表3】
【0103】
表3に示したように、本発明のポリマーのカットオフ波長は375〜387nmとなり、ポリマーは透明で淡黄色を示した。また、実施例3及び4のポリマーの屈折率は、F線でそれぞれ1.87及び1.83、D線でそれぞれ1.82及び1.78、C線でそれぞれ1.80及び1.77と非常に高い値であった。