特許第6465345号(P6465345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6465345研磨パッドの表面性状測定方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6465345
(24)【登録日】2019年1月18日
(45)【発行日】2019年2月6日
(54)【発明の名称】研磨パッドの表面性状測定方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/34 20120101AFI20190128BHJP
   B24B 53/017 20120101ALI20190128BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20190128BHJP
   B24B 49/18 20060101ALI20190128BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190128BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20190128BHJP
【FI】
   B24B37/34
   B24B53/017 Z
   B24B49/12
   B24B49/18
   H01L21/304 621D
   H01L21/304 622M
   G01B11/30 Z
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-265694(P2014-265694)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-124053(P2016-124053A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松尾 尚典
(72)【発明者】
【氏名】望月 宣宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恵友
(72)【発明者】
【氏名】田尻 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】カチョーンルンルアン パナート
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−172153(JP,A)
【文献】 特表2000−505003(JP,A)
【文献】 特開2014−211440(JP,A)
【文献】 特開2002−116155(JP,A)
【文献】 特開2003−338493(JP,A)
【文献】 櫛田 高志,木村 景一,カチョーンルンルアン パナート,鈴木 恵友,田尻 貴寛,光学的フーリエ変換に基づくCMP用ポリシングパッドの表面形状評価に関する研究(第4報)-レーザー光入射角の選定-,2013年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集,日本,精密工学会,2013年 8月27日,pp617-618
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/34
B24B 49/12
B24B 49/18
B24B 53/017
G01B 11/30
H01L 21/304
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドの表面にレーザ光を照射し、研磨パッド表面で反射された光を受光してフーリエ変換することで、研磨パッドの表面性状を求める研磨パッドの表面性状測定方法であって、
複数の入射角で研磨パッドの表面にレーザ光を入射せしめ、前記複数の入射角にそれぞれ対応した研磨パッドの表面からの複数の反射光であって反射角が異なる複数の反射光を受光し、受光した複数の反射光をそれぞれフーリエ変換することで複数の研磨パッドの表面性状を求め
前記複数の入射角は、60°と80°の入射角であることを特徴とする研磨パッドの表面性状測定方法。
【請求項2】
前記複数のレーザ光の入射角は、測定対象である研磨パッド材料に対するブリュースター角より大きな角度範囲から選択されることを特徴とする請求項1記載の研磨パッドの表面性状測定方法。
【請求項3】
前記複数のレーザ光の入射角は、測定対象である研磨パッド材料、研磨パッド表面のドレッシング条件、研磨パッドのドレッシングを行うドレッサー部材の種類に応じて選択されることを特徴とする請求項1記載の研磨パッドの表面性状測定方法。
【請求項4】
前記複数のレーザ光の入射角は、光源と研磨パッドとの間に設置されたミラーの角度及び/又は位置を変化させることで調整することを特徴とする請求項1記載の研磨パッドの表面性状測定方法。
【請求項5】
前記複数のレーザ光の入射角は、光源と研磨パッドとの間において異なる位置に設置されたミラーに反射させることで決定することを特徴とする請求項1記載の研磨パッドの表面性状測定方法。
【請求項6】
前記複数のレーザ光の入射角は、光源を動かすことで調整することを特徴とする請求項1記載の研磨パッドの表面性状測定方法。
【請求項7】
前記複数のレーザ光の入射角は、異なる位置に複数の光源を設置することにより調整することを特徴とする請求項1記載の研磨パッドの表面性状測定方法。
【請求項8】
前記複数のレーザ光の入射角は、光源と研磨パッドとの間に設置されたスプリッタで調整することを特徴とする請求項1記載の研磨パッドの表面性状測定方法。
【請求項9】
前記複数のレーザ光の入射角は、投光する光ファイバーの角度によって調整することを特徴とする請求項1記載の研磨パッドの表面性状測定方法。
【請求項10】
研磨パッドに対して少なくとも二つの角度でレーザ光を入射可能な光学系と、前記光学系で得られた研磨パッドからの反射光をフーリエ変換することで研磨パッドの表面性状を求める演算処理装置とを備え、
前記光学系は、複数の入射角で研磨パッドの表面にレーザ光を入射せしめ、前記複数の入射角にそれぞれ対応した研磨パッドの表面からの複数の反射光であって反射角が異なる複数の反射光を受光し、
前記演算処理装置は、受光した複数の反射光をそれぞれフーリエ変換することで複数の研磨パッドの表面性状を求め
前記複数の入射角は、60°と80°の入射角であることを特徴とする研磨パッドの表面性状測定装置。
【請求項11】
前記光学系は、光源、投光部、ミラー、受光部の内、少なくとも一つが可動であることを特徴とする請求項10記載の研磨パッドの表面性状測定装置。
【請求項12】
前記光学系は、光源、投光部、ミラー、受光部の内、少なくとも一つが複数個備えられたことを特徴とする請求項10記載の研磨パッドの表面性状測定装置。
【請求項13】
前記光学系は、受光部がCCD素子もしくはCMOS素子を含むことを特徴とする請求項10記載の研磨パッドの表面性状測定装置。
【請求項14】
前記光学系は、投光部が光ファイバーであることを特徴とする請求項10記載の研磨パッドの表面性状測定装置。
【請求項15】
研磨パッドに対して少なくとも二つの角度でレーザ光を入射可能な光学系と、前記光学系で得られた研磨パッドからの反射光をフーリエ変換することで研磨パッドの表面性状を求める演算処理装置とを備え、
前記光学系は、光源とミラーと受光部とを有し、前記光源からレーザ光の照射中に、前記ミラーを固定し且つ前記光源を揺動させるか又は前記光源を固定し且つ前記ミラーを動かすことで複数の入射角で研磨パッドの表面にレーザ光を入射せしめ、前記複数の入射角にそれぞれ対応した研磨パッドの表面からの複数の反射光であって反射角が異なる複数の反射光を前記受光部で受光し、
前記演算処理装置は、前記受光部で受光した複数の反射光をそれぞれフーリエ変換することで複数の研磨パッドの表面性状を求めることを特徴とする研磨パッドの表面性状測定装置。
【請求項16】
研磨対象物である基板を保持し前記研磨パッドに押圧するキャリアと、
前記研磨パッドを保持し、回転させる研磨テーブルと、
前記研磨パッドのドレッシングを行うドレッサーと、
請求項10乃至15のいずれか一項に記載の研磨パッドの表面性状測定装置とを備えることを特徴とするCMP装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板の研磨に用いられる研磨パッドの表面形状や表面状態などの表面性状を測定する研磨パッドの表面性状測定方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化・高密度化に伴い、回路の配線がますます微細化し、多層配線の層数も増加している。回路の微細化を図りながら多層配線を実現しようとすると、下側の層の表面凹凸を踏襲しながら段差がより大きくなるので、配線層数が増加するに従って、薄膜形成における段差形状に対する膜被覆性(ステップカバレッジ)が悪くなる。したがって、多層配線するためには、このステップカバレッジを改善し、然るべき過程で平坦化処理しなければならない。また光リソグラフィの微細化とともに焦点深度が浅くなるため、半導体デバイスの表面の凹凸段差が焦点深度以下に収まるように半導体デバイス表面を平坦化処理する必要がある。
【0003】
従って、半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイス表面の平坦化技術がますます重要になっている。この平坦化技術のうち、最も重要な技術は、化学的機械研磨(CMP(Chemical Mechanical Polishing))である。この化学的機械研磨は、研磨装置を用いて、シリカ(SiO)やセリア(CeO)等の砥粒を含んだ研磨液を研磨パッドに供給しつつ半導体ウエハなどの基板を研磨パッドに摺接させて研磨を行うものである。
【0004】
上述したCMPを行う研磨装置は、研磨パッドを有する研磨テーブルと、半導体ウエハ(基板)を保持するためのキャリア又はトップリング等と称される基板保持装置とを備えている。このような研磨装置を用いて基板保持装置により基板を保持しつつ、この基板を研磨パッドに対して所定の圧力で押圧して、基板上の絶縁膜や金属膜を研磨することが行われている。
【0005】
基板の研磨を行なうと、研磨パッドの表面には砥粒や研磨屑が付着し、また、研磨パッドの表面形状や状態が変化して研磨性能が劣化してくる。このため、基板の研磨を繰り返すに従い、研磨速度が低下し、また、研磨むらが生じてしまう。そこで、劣化した研磨パッドの表面形状や状態を再生するために、ドレッサーを用いて研磨パッドのドレッシング(コンディショニング)を行っている。
【0006】
CMP(化学的機械研磨)においては、研磨パッドの表面形状や状態は研磨性能に与える影響が大きく、種々の測定方法により研磨パッドの表面形状、状態を測定することが提案されている。
例えば、特許文献1には、光ビームを研磨パッドに照射して研磨パッドの表面粗さを測定する方法が開示されている。
また、特許文献2には、研磨パッドにレーザ光を照射し、研磨パッドから反射散乱した散乱光から空間波長スペクトルを得ることで研磨パッドの表面性状を測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−119822号公報
【特許文献2】特開2014−172153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1および2を含めて、研磨パッド表面の表面粗さや表面性状等を測定する先行技術文献においては、いずれもレーザ光などの光ビームを複数の入射角で研磨パッドに入射させる技術について言及してはいない。
本発明者らは、レーザ光を研磨パッドに照射して研磨パッドの表面性状を評価する実験を繰り返し行うとともに実験結果の解析を進めた結果、複数の入射角を用いて研磨パッド表面性状を測定しない場合、真にCMP性能を反映した研磨パッド表面の性状を捉えられない場合がある、という課題を見い出したものである。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、レーザ光を複数の入射角で研磨パッドに入射させることにより、CMP性能を反映した研磨パッドの表面性状を測定することができる研磨パッドの表面性状測定方法および装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、研磨パッドの表面性状の測定結果に基づいて運転条件を設定して、研磨やドレッシングを行うCMP装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明の研磨パッドの表面性状測定方法は、研磨パッドの表面にレーザ光を照射し、研磨パッド表面で反射された光を受光してフーリエ変換することで、研磨パッドの表面性状を求める研磨パッドの表面性状測定方法であって、複数の入射角で研磨パッドの表面にレーザ光を入射せしめ、前記複数の入射角にそれぞれ対応した研磨パッドの表面からの複数の反射光であって反射角が異なる複数の反射光を受光し、受光した複数の反射光をそれぞれフーリエ変換することで複数の研磨パッドの表面性状を求め、前記複数の入射角は、60°と80°の入射角であることを特徴とする。
本発明によれば、複数の入射角で研磨パッドの表面性状を得ることで、単一の入射角で研磨パッドの表面性状を得る場合よりも、より強くCMP性能を反映した(CMP性能と相関の強い)研磨パッドの表面性状を得ることができる。
【0011】
研磨パッドの表面には微細な凹凸が存在するため、高入射角(研磨パッド面に対して平行に近い角度)でレーザ光を入射した場合、レーザ光は凸部には到達するが、凸部で発生する影の影響で凹部には到達しにくい。その場合、低入射角(研磨パッド面に対して垂直に近い角度)とすることで、凹部にもレーザ光が到達し、凹部に関する情報が得られる。しかしながら、この場合は、研磨パッドのごく表面からの回折光が弱まる。即ち、単一の入射角では、凹部の情報が得られにくかったり、ごく表面からの回折光が弱まったりして、所望のパッド表面情報を得ることが困難なケースが想定される。それに対し、本発明で提案する多入射角でのレーザ光照射を導入することにより、情報の欠落なく、且つ、所望の情報を得ることができるようになる。
【0012】
本発明の好ましい態様によれば、前記複数のレーザ光の入射角は、測定対象である研磨パッド材料に対するブリュースター角より大きな角度範囲から選択されることを特徴とする。
本発明によれば、ブリュースター角より入射角が小さいと、反射率が低く、十分な反射光量が得られない場合があるため、本発明においては、入射角をブリュースター角よりも大きくすることが望ましい。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、前記複数のレーザ光の入射角は、測定対象である研磨パッド材料、研磨パッド表面のドレッシング条件、研磨パッドのドレッシングを行うドレッサー部材の種類に応じて選択されることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記複数のレーザ光の入射角は、光源と研磨パッドとの間に設置されたミラーの角度及び/又は位置を変化させることで調整することを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、前記複数のレーザ光の入射角は、光源と研磨パッドとの間において異なる位置に設置されたミラーに反射させることで決定することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記複数のレーザ光の入射角は、光源を動かすことで調整することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記複数のレーザ光の入射角は、異なる位置に複数の光源を設置することにより調整することを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、前記複数のレーザ光の入射角は、光源と研磨パッドとの間に設置されたスプリッタで調整することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記複数のレーザ光の入射角は、投光する光ファイバーの角度によって調整することを特徴とする。
【0016】
本発明の研磨パッドの表面性状測定装置の一態様は、研磨パッドに対して少なくとも二つの角度でレーザ光を入射可能な光学系と、前記光学系で得られた研磨パッドからの反射光をフーリエ変換することで研磨パッドの表面性状を求める演算処理装置とを備え、前記光学系は、複数の入射角で研磨パッドの表面にレーザ光を入射せしめ、前記複数の入射角にそれぞれ対応した研磨パッドの表面からの複数の反射光であって反射角が異なる複数の反射光を受光し、前記演算処理装置は、受光した複数の反射光をそれぞれフーリエ変換することで複数の研磨パッドの表面性状を求め、前記複数の入射角は、60°と80°の入射角であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記光学系は、光源、投光部、ミラー、受光部の内、少なくとも一つが可動であることを特徴とする。
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、前記光学系は、光源、投光部、ミラー、受光部の内、少なくとも一つが複数個備えられたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記光学系は、受光部がCCD素子もしくはCMOS素子を含むことを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記光学系は、投光部が光ファイバーであることを特徴とする。
【0018】
本発明の研磨パッドの表面性状測定装置の他の態様は、研磨パッドに対して少なくとも二つの角度でレーザ光を入射可能な光学系と、前記光学系で得られた研磨パッドからの反射光をフーリエ変換することで研磨パッドの表面性状を求める演算処理装置とを備え、前記光学系は、光源とミラーと受光部とを有し、前記光源からレーザ光の照射中に、前記ミラーを固定し且つ前記光源を揺動させるか又は前記光源を固定し且つ前記ミラーを動かすことで複数の入射角で研磨パッドの表面にレーザ光を入射せしめ、前記複数の入射角にそれぞれ対応した研磨パッドの表面からの複数の反射光であって反射角が異なる複数の反射光を前記受光部で受光し、前記演算処理装置は、前記受光部で受光した複数の反射光をそれぞれフーリエ変換することで複数の研磨パッドの表面性状を求めることを特徴とする。
本発明のCMP装置は、研磨対象物である基板を保持し前記研磨パッドに押圧するキャリアと、前記研磨パッドを保持し、回転させる研磨テーブルと、前記研磨パッドのドレッシングを行うドレッサーと、請求項10乃至15のいずれか一項に記載の研磨パッドの表面性状測定装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)複数の入射角で研磨パッドの表面性状を得ることで、単一の入射角で研磨パッドの表面性状を得る場合よりも、より強くCMP性能を反映した(CMP性能と相関の強い)研磨パッドの表面性状を得ることができる。
(2)本発明によれば、研磨パッドの表面性状がリアルタイムで把握できるために、以下のCMPの安定運用が可能となる。
1)研磨パッドやドレッサーを無駄なく寿命の最後まで使い切ることでできるために消耗材コストを抑制できる。
2)何らかのドレッシング異常による研磨パッドの表面性状の非定常状態を即座に検知して発報することができるために、CMP性能不良による半導体デバイスの製造不良を最低限に抑えることができる。
3)研磨パッドの表面性状の変化に応じてドレッシング条件を変更することで、常に研磨パッドの表面性状をCMP性能の確保に必要な状態に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係る研磨パッドの表面性状測定方法を実施する研磨装置の全体構成を示す模式図である。
図2図2は、図1に示す研磨パッドの表面性状測定装置の第1の態様を示す模式的正面図である。
図3図3は、図1に示す研磨パッドの表面性状測定装置の第2の態様を示す模式的正面図である。
図4図4は、図1に示す研磨パッドの表面性状測定装置の第3の態様を示す模式的正面図である。
図5図5は、図1に示す研磨パッドの表面性状測定装置の第4の態様を示す模式的正面図である。
図6図6は、図1に示す研磨パッドの表面性状測定装置の第5の態様を示す模式的正面図である
図7図7は、図1に示す研磨パッドの表面性状測定装置の第6の態様を示す模式的正面図である。
図8図8は、図1に示す研磨パッドの表面性状測定装置の第7の態様を示す模式的正面図である。
図9図9は、代表的な研磨パッド材料であるポリウレタンと空気の屈折率から求めた、入射光の入射角と反射率との関係を示すグラフである。
図10図10は、一般的なCMP用研磨パッドに対して入射角を変化させた場合における、各入射角毎の、反射率から得られるパッド表面性状とCMP性能との相関係数を示すグラフである。
図11図11は、ドレッシング条件としてドレッシング時のドレッシング荷重を変化させた場合およびドレッサーの種類を変化させた場合について、研磨パッドに対するレーザ光の入射角が60度および80度において、反射率から得られるパッド表面性状とCMP性能との相関係数を比較した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る研磨パッドの表面性状測定方法および装置の実施形態について図1乃至図11を参照して詳細に説明する。なお、図1から図11において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明に係る研磨パッドの表面性状測定方法を実施する研磨装置の全体構成を示す模式図である。図1に示すように、研磨装置は、研磨テーブル1と、研磨対象物である半導体ウエハ等の基板Wを保持して研磨テーブル上の研磨パッドに押圧するキャリア10とを備えている。研磨テーブル1は、テーブル軸1aを介してその下方に配置される研磨テーブル回転モータ(図示せず)に連結されており、テーブル軸1aの回りに回転可能になっている。研磨テーブル1の上面には研磨パッド2が貼付されており、研磨パッド2の表面が基板Wを研磨する研磨面2aを構成している。研磨パッド2には、ダウケミカル社(Dow Chemical Company)製のSUBA800、IC1000、IC1000/SUBA400(二層クロス)等が用いられている。SUBA800は繊維をウレタン樹脂で固めた不織布である。IC1000は硬質の発泡ポリウレタンであり、その表面に多数の微細な孔(ポア)を有したパッドであり、パーフォレートパッドとも呼ばれている。研磨テーブル1の上方には研磨液供給ノズル(図示せず)が設置されており、研磨液供給ノズルによって研磨テーブル1上の研磨パッド2に研磨液(スラリー)が供給されるようになっている。
【0023】
キャリア10は、シャフト11に接続されており、シャフト11は、キャリアアーム12に対して上下動するようになっている。シャフト11の上下動により、キャリアアーム12に対してキャリア10の全体を上下動させ位置決めするようになっている。シャフト11は、モータ(図示せず)の駆動により回転するようになっており、キャリア10がシャフト11の軸心の回りに回転するようになっている。
【0024】
図1に示すように、キャリア10は、その下面に半導体ウエハなどの基板Wを保持できるようになっている。キャリアアーム12は旋回可能に構成されており、下面に基板Wを保持したキャリア10は、キャリアアーム12の旋回により基板の受取位置から研磨テーブル1の上方に移動可能になっている。キャリア10は、下面に基板Wを保持して基板Wを研磨パッド2の表面(研磨面)に押圧する。このとき、研磨テーブル1およびキャリア10をそれぞれ回転させ、研磨テーブル1の上方に設けられた研磨液供給ノズルから研磨パッド2上に研磨液(スラリー)を供給する。研磨液には砥粒としてシリカ(SiO)やセリア(CeO)を含んだ研磨液が用いられる。このように、研磨液を研磨パッド2上に供給しつつ、基板Wを研磨パッド2に押圧して基板Wと研磨パッド2とを相対移動させて基板上の絶縁膜や金属膜等を研磨する。絶縁膜としてはSiOが挙げられる。金属膜としてはCu膜、W膜、Ta膜、Ti膜が挙げられる。
【0025】
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド2をドレッシングするドレッシング装置20を備えている。ドレッシング装置20は、ドレッサーアーム21と、ドレッサーアーム21に回転自在に取り付けられたドレッサー22とを備えている。ドレッサー22の下部はドレッシング部材22aにより構成され、ドレッシング部材22aは円形のドレッシング面を有しており、ドレッシング面には硬質な粒子が電着等により固定されている。この硬質な粒子としては、ダイヤモンド粒子やセラミック粒子などが挙げられる。ドレッサーアーム21内には、図示しないモータが内蔵されており、このモータによってドレッサー22が回転するようになっている。ドレッサーアーム21は図示しない昇降機構に連結されており、この昇降機構によりドレッサーアーム21が下降することでドレッシング部材22aが研磨パッド2の研磨面2aを押圧するようになっている。研磨テーブル1、キャリア10、ドレッシング装置20等の各装置類は、制御装置(図示せず)に接続されており、制御装置により研磨テーブル1の回転速度、キャリア10の回転速度および研磨圧力、ドレッシング装置20のドレッサー22の荷重や揺動速度等が制御されるようになっている。
【0026】
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド2の表面形状や表面状態などの表面性状を測定する研磨パッドの表面性状測定装置30を備えている。研磨パッドの表面性状測定装置30は、研磨パッド2にレーザ光を照射する光源31と、研磨パッド2の表面で反射した反射光を受光する受光部32とを備えている。図1に示す実施形態では、光源31から出射されたレーザ光は、ミラー33を介して研磨パッド2に照射されるようになっている。
受光部32は、CCD素子またはCMOS素子からなり、研磨パッド2の上方に配置されている。受光部32は、演算処理装置40に接続されている。演算処理装置40は、受光部で受光した反射光の強度分布(スペクトル)を特定の演算方法によりCMP性能と相関ある数値に換算する演算機能を具備している。また、演算処理装置40は、反射光強度分布やCMP性能と相関ある数値を表示する表示機能を備えている。演算処理装置40はCMPの制御装置に組み込んでもよい。演算処理装置40からの信号はCMPの制御装置へ入力される。
【0027】
図2は、研磨パッドの表面性状測定装置30の第1の態様を示す模式的正面図である。図2に示す表面性状測定装置30においては、光源31は固定、ミラー33と受光部32が上下に移動可能な可動式になっている。図2に示すように、ミラー33は、実線で示す下降位置と二点鎖線で示す上昇位置との間で可動に構成されている。また、受光部32は、実線で示す下降位置と二点鎖線で示す上昇位置との間で可動に構成されている。
【0028】
図2に示すように構成された研磨パッドの表面性状測定装置30においては、ミラー33および受光部32をともに実線で示す下降位置にした場合、光源31から出射したレーザ光は、ミラー33で反射して光路が変更され、入射角=Aで研磨パッドに入射する。研磨パッド2の表面で反射した反射光は受光部32に受光される。
また、ミラー33および受光部32をともに二点鎖線で示す上昇位置にした場合、光源31から出射したレーザ光は、ミラー33で反射して光路が変更され、入射角=Bで研磨パッドに入射する。研磨パッド2の表面で反射した反射光は受光部32に受光される。
このように、ミラー33と受光部32を可動式にすることにより、固定された光源(投光部)31から出射されるレーザ光を研磨パッド2に対して複数の入射角で入射させることを可能にしている。
【0029】
図3は、研磨パッドの表面性状測定装置30の第2の態様を示す模式的正面図である。図3に示す研磨パッドの表面性状測定装置30においては、ミラー33と受光部32が固定、光源31が揺動可能な可動式になっている。図3に示すように、光源31は、実線で示す垂直方向位置と二点鎖線で示す傾斜位置との間で揺動可能に構成されている。また、上方位置にある第1受光部32−1と下方位置にある第2受光部32−2との2つの受光部が設置されている。
【0030】
図3に示すように構成された研磨パッドの表面性状測定装置30においては、光源31を実線で示す垂直方向位置にした場合、光源31から出射したレーザ光は、ミラー33で反射して光路が変更され、入射角=Aで研磨パッド2に入射する。研磨パッド2の表面で反射した反射光は上方位置にある第1受光部32−1に受光される。
また、光源31を揺動させて二点鎖線で示す傾斜位置にした場合、光源31から出射したレーザ光は、ミラー33で反射して光路が変更され、入射角=Bで研磨パッド2に入射する。研磨パッド2の表面で反射した反射光は下方位置にある第2受光部32−2に受光される。
このように、光源(投光部)31を揺動させることで光源(投光部)31から出射されるレーザ光の角度を変更可能とし、固定されたミラー33を介して、研磨パッド2に対して複数の入射角で入射させることを可能にしている。
【0031】
図4は、研磨パッドの表面性状測定装置30の第3の態様を示す模式的正面図である。図4に示す研磨パッドの表面性状測定装置30においては、ミラー33と受光部32が固定、光源31が揺動可能な可動式になっている。図4に示すように、光源31は、実線で示す垂直方向位置と二点鎖線で示す傾斜位置との間で揺動可能に構成されている。受光部32は、反射光を受光する受光面32aが図2図3に示す受光部の受光面より大きく設定されており、研磨パッド2からの反射光の反射角が異なっていても反射光を受光できるようになっている。
【0032】
図4に示すように構成された研磨パッドの表面性状測定装置30においては、光源31を実線で示す垂直方向位置にした場合、光源31から出射したレーザ光は、ミラー33で反射して光路が変更され、入射角=Aで研磨パッド2に入射する。研磨パッド2の表面で反射した反射光は受光部32に受光される。
また、光源31を揺動させて二点鎖線で示す傾斜位置にした場合、光源31から出射したレーザ光は、ミラー33で反射して光路が変更され、入射角=Bで研磨パッド2に入射する。研磨パッド2の表面で反射した反射光は受光部32に受光される。
このように、光源(投光部)31を揺動させることで光源(投光部)31から出射されるレーザ光の角度を変更可能とし、固定されたミラー33を介して、研磨パッド2に対して複数の入射角で入射させることを可能にしている。そして、受光部32は、反射角が異なる全ての反射光を受光できるように、大きな受光面32aを有しており、固定された(可動でない)受光部32は一つでよい。
【0033】
図5は、研磨パッドの表面性状測定装置30の第4の態様を示す模式的正面図である。図5に示す表面性状測定装置30においては、ミラーと受光部は、それぞれ複数個設置されている。図5に示すように、下方位置にある第1ミラー33−1と上方位置にある第2ミラー33−2との2つのミラーが設置されている。また、下方位置にある第1受光部32−1と上方位置にある第2受光部32−2との2つの受光部が設置されている。
【0034】
図5に示すように構成された研磨パッドの表面性状測定装置30においては、光源31から出射したレーザ光は、第1ミラー33−1で反射して光路が変更され、入射角=Aで研磨パッド2に入射する。研磨パッド2の表面で反射した反射光は第1受光部32−1に受光される。また、光源31から出射したレーザ光は、第2ミラー33−2で反射して光路が変更され、入射角=Bで研磨パッド2に入射する。研磨パッド2の表面で反射した反射光は第2受光部32−2に受光される。なお、入射角Bに対応する光を反射するミラー33−2は光を透過可能な材料とする。この場合、実際には、入射角Bに対応するミラー33−2を透過して入射角Aに対応するミラー33−1に到達する光は、前者のミラー33−2で屈折されるので、後者のミラー33−1はこれを考慮した材料、角度、位置に設定されなければならない。図5は、図示を簡略化するため、屈折を考慮した光路で図示していない。
【0035】
図6は、研磨パッドの表面性状測定装置30の第5の態様を示す模式的正面図である。図6に示す研磨パッドの表面性状測定装置30においては、光源と受光部は、それぞれ複数個設置されている。図6に示すように、垂直方向位置にある第1光源31−1と傾斜位置にある第2光源31−2との二つの光源が設置されている。また、上方位置にある第1受光部32−1と下方位置にある第2受光部32−2との2つの受光部が設置されている。
【0036】
図6に示すように構成された研磨パッドの表面性状測定装置30においては、第1光源31−1から出射したレーザ光は、ミラー33で反射して光路が変更され、入射角=Aで研磨パッド2に入射する。研磨パッド2の表面で反射した反射光は上方に配置された第1受光部32−1で受光される。また、傾斜位置にある第2光源31−2から出射したレーザ光は、ミラー33で反射して光路が変更され、入射角=Bで研磨パッド2に入射する。研磨パッド2の表面で反射した反射光は下方に配置された第2受光部32−2に受光される。
このように、複数の光源31−1,31−2と複数の受光部32−1,32−2とを設置することにより、レーザ光を研磨パッド2に対して複数の入射角で入射させることを可能にしている。各入射角に対応するように、受光部32−1,32−2は、それぞれ、大きさ,位置,角度が選定される。
【0037】
図7は、研磨パッドの表面性状測定装置30の第6の態様を示す模式的正面図である。図7に示す研磨パッドの表面性状測定装置30においては、光源31の直下にスプリッタ35を設け、ミラーと受光部は、それぞれ複数個設置されている。図7に示すように、スプリッタ35を用いて1つの光源31からのレーザ光を分岐している。下方位置にある第1ミラー33−1と上方位置にある第2ミラー33−2との二つのミラーが設置されている。また、下方位置にある第1受光部32−1と上方位置にある第2受光部32−2との2つの受光部が設置されている。
【0038】
図7に示すように構成された研磨パッドの表面性状測定装置30においては、光源31から出射したレーザ光は、スプリッタ35で分岐されて2つのレーザ光となり、一方のレーザ光は第1ミラー33−1で反射して光路が変更され、入射角=Aで研磨パッド2に入射し、研磨パッドの表面で反射した反射光は第1受光部32−1に受光される。他方のレーザ光は、第2ミラー33−2で反射して光路が変更され、入射角=Bで研磨パッド2に入射し、研磨パッド2の表面で反射した反射光は第2受光部32−2に受光される。
このように、スプリッタ35を用いて、一つの光源31からのレーザ光を分岐して、二つのミラー33−1,33−2で異なる角度に反射させることにより、二つの入射角を一つの光源で実現している。
【0039】
図8は、研磨パッドの表面性状測定装置30の第7の態様を示す模式的正面図である。図8に示す研磨パッドの表面性状測定装置30においては、光源31に連結される複数の光ファイバー(投光部)を設けている。図8に示すように、光源31に2本の光ファイバー36−1,36−2を連結し、2本の光ファイバー36−1,36−2における研磨パッド表面に対する角度を変えることによって、レーザ光を複数の入射角で研磨パッド2に入射させることを可能にしている。
【0040】
図8に示すように構成された研磨パッドの表面性状測定装置30においては、光源31から出射されたレーザ光を第1光ファイバー36−1によってレーザ光を導き、第1光ファイバー36−1から出射したレーザ光は、入射角=Aで研磨パッド2に入射し、研磨パッド2の表面で反射した反射光は受光部32に受光される。第2光ファイバー36−2から出射したレーザ光は、入射角=Bで研磨パッド2に入射し、研磨パッド2の表面で反射した反射光は受光部32に受光される。
このように、形状が自在に変更可能な光ファイバー(投光部)36−1,36−2を用いて、レーザ光を研磨パッド2に対して複数の入射角で入射させることを可能にしている。そして、受光部32は、反射角が異なる全ての反射光を受光できるように、大きな受光面32aを有しており、固定された(可動でない)受光部32は一つでよい。なお、図6と同様に複数個の受光部を設けてもよい。
【0041】
図2乃至図8に示すように構成された研磨パッドの表面性状測定装置30を用いて、研磨パッド2の表面に、複数の入射角でレーザ光を入射せしめ、複数の入射角にそれぞれ対応したパッド表面からの複数の反射光を受光部で受光し、演算処理装置40により受光した複数の反射光をそれぞれフーリエ変換することでパッド表面の空間波長スペクトルを求め、パッド表面性状を評価する。
パッド表面性状として、主に表面粗さの成分を評価する。具体的には、空間波長スペクトルを取得後、まずある波長領域(領域1)の信号強度を積分し、次に特に研磨性能に寄与すると考えられる領域1の範囲内にあって、且つ、領域1より狭い特定波長領域(領域2)を選定し、更に領域2の信号強度を積分した上で、両者の信号強度の比率を評価指標とする。この指標を、波長構成比と定義し、パッド表面性状を評価する。
【0042】
この時、レーザ光の入射角は、研磨パッド材料に対するブリュースター角よりも大きく設定することが望ましい(後述する)。また、パッドの種類、パッドに対するドレッシング条件、ドレッシング部材(ドレッサー)の種類、に応じて、好適な入射角を選定することが更に望ましい(後述する)。入射角は、光源や投光部、光路を形成するミラー、受光部を可動とすることによって調整される。また目的に応じて、複数の各反射角に対応して得られた研磨パッド表面性状の内、全入射角分でなく、一部の入射角で得られた研磨パッド表面性状を、当該パッドの代表的な表面性状とする場合もある。
【0043】
図2乃至図8に示す実施形態から分かるように、本発明は、研磨パッドに対して、複数の入射角でレーザ光を入射可能な光学系、前記光学系で得られた研磨パッドからの反射光をフーリエ変換することで空間波長スペクトルを求める研磨パッドの表面性状測定装置を搭載したCMP装置を提供する。このCMP装置は、光学系を構成する光源、投光部、ミラー、受光部、の内、少なくとも一つが動作可能に保持、あるいは、少なくとも一つが複数個設けられていることで、複数の入射角で研磨パッドに対してレーザ光を照射することを可能ならしめている。受光部にはCCD素子またはCMOS素子が用いられる。投光部には、入射角の変更が容易なように、形状が自在に変更可能な光ファイバーを用いても良い。
【0044】
次に、研磨パッドに対するレーザ光の入射角とCMP性能との関係を求めた実験結果について図9乃至図11を参照して説明する。
図9は、代表的な研磨パッド材料であるポリウレタンと空気の屈折率から求めた、入射光の入射角と反射率との関係を示すグラフである。図9から分かるように、ブリュースター角より入射角が小さいと、反射率が低く、十分な反射光量が得られない場合があるため、入射角をブリュースター角よりも大きくすることが望ましい。この場合、p波の反射率がゼロとなるブリュースター角は約56.3度であるから、ブリュースター角より大きな入射角は、56.3度以上である。
【0045】
図10は、一般的なCMP用研磨パッドに対して入射角を変化させた場合における、各入射角毎の、反射率から得られるパッド表面性状とCMP性能との相関係数を示すグラフである。高い相関係数が得られるほど、得られたパッド表面性状は、CMP性能と関連性が強いことを示す。図10に示すように、ある条件では、研磨パッドに対するレーザ光の入射角が60度および80度において、反射率とCMP性能との相関係数が高いことから、この条件では、複数の入射角を設定する場合、60度と80度の入射角を選択することが望ましい。
【0046】
図11は、ドレッシング条件としてドレッシング時のドレッシング荷重を変化させた場合およびドレッサーの種類を変化させた場合について、研磨パッドに対するレーザ光の入射角が60度および80度において、反射率から得られるパッド表面性状とCMP性能との相関係数を比較した結果を示すグラフである。図11から、ドレッシング荷重を変化させた場合は60度入射、ドレッサー種類を変化させた場合は80度入射が、相関係数が高く、CMP性能をより反映したパッド表面性状が得られたと分かる。従って、このパッドでは、両者(ドレッシング条件とドレッサー種類)の影響を勘案するなら、60度と80度の入射角を選択することが望ましい。即ち、図11は、ドレッシング条件やドレッシング部材(ドレッサー)の種類に依って、好適なレーザ光の入射角を選択することの有効性を示している。
【0047】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 研磨テーブル
1a テーブル軸
2 研磨パッド
2a 研磨面
3 研磨液供給ノズル
10 キャリア
11 シャフト
12 キャリアアーム
20 ドレッシング装置
21 ドレッサーアーム
22 ドレッサー
22a ドレッシング部材
30 表面性状測定装置
31 光源
31−1 第1光源
31−2 第2光源
32 受光部
32−1 第1受光部
32−2 第2受光部
32a 受光面
33 ミラー
33−1 第1ミラー
33−2 第2ミラー
35 スプリッタ
36−1 第1光ファイバー
36−2 第2光ファイバー
40 演算処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11