特許第6490431号(P6490431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6490431光ファイバテープ心線、光ファイバテープ心線の分割方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490431
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】光ファイバテープ心線、光ファイバテープ心線の分割方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   G02B6/44 371
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-7800(P2015-7800)
(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公開番号】特開2016-133606(P2016-133606A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】星野 豊
(72)【発明者】
【氏名】大山 竜也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昇
(72)【発明者】
【氏名】浜口 真弥
(72)【発明者】
【氏名】中川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】柴田 征彦
(72)【発明者】
【氏名】青柳 雄二
【審査官】 野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−232972(JP,A)
【文献】 特開2014−211526(JP,A)
【文献】 特開2012−103293(JP,A)
【文献】 特開2002−174759(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0198587(US,A1)
【文献】 特開2011−169937(JP,A)
【文献】 特開2010−117592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ素線が並列した光ファイバテープ心線であって、
隣り合う光ファイバ素線同士が、長手方向の所定の間隔で形成される接着部で接着され、それぞれの隣り合う光ファイバ素線同士の前記接着部が、長手方向で互いに千鳥状に形成され、
隣り合う光ファイバ素線同士は接触しており、
組の隣り合う光ファイバ素線同士の長手方向に所定の間隔で形成されるそれぞれの接着部における接着樹脂量が、他の組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部における接着樹脂量よりも少ないことで、前記一組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部の接着強度が、前記他の接着部の接着強度よりも0.01N以上弱く、
記一組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部が、隣り合う光ファイバ素線間の上部のみまたは下部のみを接着し、前記他の組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部が、隣り合う光ファイバ素線間の上部および下部を接着することを特徴とする光ファイバテープ心線。
【請求項2】
前記接着部の形成ピッチ、および長手方向の長さは、それぞれの隣り合う前記光ファイバ素線同士に対して略同一であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバテープ心線。
【請求項3】
複数の光ファイバ素線が並列した光ファイバテープ心線であって、
隣り合う光ファイバ素線同士が、長手方向の所定の間隔で形成される接着部で接着され、それぞれの隣り合う光ファイバ素線同士の前記接着部が、長手方向で互いに千鳥状に形成され、
隣り合う光ファイバ素線同士は接触しており、
組の隣り合う光ファイバ素線同士の長手方向に所定の間隔で形成されるそれぞれの接着部における接着樹脂量が、他の組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部における接着樹脂量よりも少ないことで、前記一組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部の接着強度が、前記他の接着部の接着強度よりも0.01N以上弱く、
前記接着部の形成ピッチ、および長手方向の長さは、それぞれの隣り合う前記光ファイバ素線同士に対して略同一であることを特徴とする光ファイバテープ心線。
【請求項4】
記一組の隣り合う光ファイバ素線が、光ファイバテープ心線の中央に位置することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ファイバテープ心線。
【請求項5】
複数の光ファイバ素線が並列した光ファイバテープ心線の分割方法であって、
隣り合う光ファイバ素線同士が、長手方向の所定の間隔で形成される接着部で接着され、それぞれの隣り合う光ファイバ素線同士の前記接着部が、長手方向で互いに千鳥状に形成され、
隣り合う光ファイバ素線同士は接触しており、
組の隣り合う光ファイバ素線同士の長手方向に所定の間隔で形成されるそれぞれの接着部における接着樹脂量が、他の組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部における接着樹脂量よりも少ないことで、前記一組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部の接着強度が、前記他の接着部の接着強度よりも0.01N以上弱く、
記一組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部が、隣り合う光ファイバ素線間の上部のみまたは下部のみを接着し、前記他の組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部が、隣り合う光ファイバ素線間の上部および下部を接着し、
前記光ファイバテープ心線を前記光ファイバ素線の併設方向に引っ張り、前記一組の隣り合う光ファイバ素線同士の間の接着部を所定長さ分割し、
分割されたそれぞれの光ファイバ素線を他の光ファイバ素線と接続することを特徴とする光ファイバテープ心線の分割方法。
【請求項6】
複数の光ファイバ素線が並列した光ファイバテープ心線の分割方法であって、
隣り合う光ファイバ素線同士が、長手方向の所定の間隔で形成される接着部で接着され、それぞれの隣り合う光ファイバ素線同士の前記接着部が、長手方向で互いに千鳥状に形成され、
隣り合う光ファイバ素線同士は接触しており、
組の隣り合う光ファイバ素線同士の長手方向に所定の間隔で形成されるそれぞれの接着部における接着樹脂量が、他の組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部における接着樹脂量よりも少ないことで、前記一組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部の接着強度が、前記他の接着部の接着強度よりも0.01N以上弱く、
前記接着部の形成ピッチ、および長手方向の長さは、それぞれの隣り合う前記光ファイバ素線同士に対して略同一であり、
前記光ファイバテープ心線を前記光ファイバ素線の併設方向に引っ張り、前記一組の隣り合う光ファイバ素線同士の間の接着部を所定長さ分割し、
分割されたそれぞれの光ファイバ素線を他の光ファイバ素線と接続することを特徴とする光ファイバテープ心線の分割方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光ファイバ素線が並列に接着された光ファイバテープ心線および光ファイバテープ心線の分割方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多量のデータを高速で伝送するための光ファイバとして、ケーブルへの収納や作業の簡易化のため、複数本の光ファイバ素線が並列に配置されて接着された光ファイバテープ心線が用いられている。光ファイバテープ心線は、並列した光ファイバ素線を全長にわたって樹脂で固着されたものが用いられている他、光ファイバ素線同士が間欠的に接着されたものがある。光ファイバ素線同士の間欠的な接着は、集線密度の向上や曲げによる伝送ロスの低減、単心化をしやすくするなどの特徴を持つ。
【0003】
このような光ファイバテープ心線としては、例えば、並列する3心以上の光ファイバからなり、互いに隣接する2心の光ファイバ間のみを連結する複数の連結部が、光ファイバテープ心線の長手方向及び幅方向の2次元的に間欠的に配設され、かつ光ファイバテープ心線の幅方向で隣り合う連結部同士間は前記光ファイバテープ心線の幅方向に重ならないように互い違いに配置している光ファイバテープ心線がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−279226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、このような光ファイバテープ心線を構成する各光ファイバ素線は、他の光ファイバ素線と接続されて使用される場合がある。例えば、光ファイバテープ心線を他の光ファイバケーブルへ接続する際には、接続する必要がある特定数の光ファイバ素線を、光ファイバテープ心線から取り出す必要がある。すなわち、取り出す光ファイバ素線を、残りの光ファイバ素線と分割する必要がある。
【0006】
この際、光ファイバ素線同士を接合する全ての接着部が、一様に強い接着強度で接着している場合は、接着部を切り離すことが難しい。このため、光ファイバ素線の分割時に、光ファイバ素線に極度の曲げが加わり、損失増加や断線のおそれがある。しかし、全ての接着部が一様に弱い接着強度で接着している場合は、意図しない接着部まで外れるおそれがある。このため、光ファイバ素線の配列が乱れ、光ファイバ素線を整列させるのに手間がかかるという問題がある。
【0007】
また、それぞれの接着部の接着強度が適正であったといても、光ファイバテープ心線を構成する各光ファイバ素線が多い場合には、分割すべき光ファイバ素線を取り出してこれらを引き離すことが困難である。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、光ファイバ素線の分割が容易な光ファイバテープ心線等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達するために第1の発明は、複数の光ファイバ素線が並列した光ファイバテープ心線であって、隣り合う光ファイバ素線同士が、長手方向の所定の間隔で形成される接着部で接着され、それぞれの隣り合う光ファイバ素線同士の前記接着部が、長手方向で互いに千鳥状に形成され、隣り合う光ファイバ素線同士は接触しており、組の隣り合う光ファイバ素線同士の長手方向に所定の間隔で形成されるそれぞれの接着部における接着樹脂量が、他の組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部における接着樹脂量よりも少ないことで、前記一組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部の接着強度が、前記他の接着部の接着強度よりも0.01N以上弱く、前記一組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部が、隣り合う光ファイバ素線間の上部のみまたは下部のみを接着し、前記他の組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部が、隣り合う光ファイバ素線間の上部および下部を接着することを特徴とする光ファイバテープ心線である。
【0010】
前記接着部の形成ピッチ、および長手方向の長さは、それぞれの隣り合う前記光ファイバ素線同士に対して略同一であってもよい。
【0011】
第2の発明は、複数の光ファイバ素線が並列した光ファイバテープ心線であって、隣り合う光ファイバ素線同士が、長手方向の所定の間隔で形成される接着部で接着され、それぞれの隣り合う光ファイバ素線同士の前記接着部が、長手方向で互いに千鳥状に形成され、隣り合う光ファイバ素線同士は接触しており、組の隣り合う光ファイバ素線同士の長手方向に所定の間隔で形成されるそれぞれの接着部における接着樹脂量が、他の組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部における接着樹脂量よりも少ないことで、前記一組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部の接着強度が、前記他の接着部の接着強度よりも0.01N以上弱く、前記接着部の形成ピッチ、および長手方向の長さは、それぞれの隣り合う前記光ファイバ素線同士に対して略同一であることを特徴とする光ファイバテープ心線である。
【0013】
記一組の隣り合う光ファイバ素線が、光ファイバテープ心線の中央に位置することが望ましい。
【0014】
第1の発明および第2の発明によれば、光ファイバ素線同士の接着強度が、それぞれの光ファイバ素線同士の接着部によって異なる。このため、接着強度の弱い光ファイバ素線同士を優先的に分割することができる。したがって、誤って、分割しない光ファイバ素線同士を分割することを防止することができる。また、分割するべき光ファイバ素線同士を選別して切り離す必要がない。
【0015】
また、接着部の接着樹脂量を変えることで、容易に接着強度を調整することができる。すなわち、分割を優先的に行う部位の接着樹脂量を他の部位に対して少なくすることで、容易に、接着強度を弱くすることができ、分割が容易となる。
【0017】
また、接着部の形成ピッチが、それぞれの隣り合う光ファイバ素線同士に対して略同一であることで、光ファイバ素線の配列が乱れることなく、確実に光ファイバテープ心線を柔軟に変形(丸める、折りたたむ)させ、ケーブルの細径・高密度化にも有効である。
【0018】
また、分割しやすい隣り合う光ファイバ素線が、光ファイバテープ心線の中央に位置することで、分割部がわかりやすく、その後のハンドリングも良好である。
【0019】
第3の発明は、複数の光ファイバ素線が並列した光ファイバテープ心線の分割方法であって、隣り合う光ファイバ素線同士が、長手方向の所定の間隔で形成される接着部で接着され、それぞれの隣り合う光ファイバ素線同士の前記接着部が、長手方向で互いに千鳥状に形成され、隣り合う光ファイバ素線同士は接触しており、組の隣り合う光ファイバ素線同士の長手方向に所定の間隔で形成されるそれぞれの接着部における接着樹脂量が、他の組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部における接着樹脂量よりも少ないことで、前記一組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部の接着強度が、前記他の接着部の接着強度よりも0.01N以上弱く、前記一組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部が、隣り合う光ファイバ素線間の上部のみまたは下部のみを接着し、前記他の組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部が、隣り合う光ファイバ素線間の上部および下部を接着し、前記光ファイバテープ心線を前記光ファイバ素線の併設方向に引っ張り、前記一組の隣り合う光ファイバ素線同士の間の接着部を所定長さ分割し、分割されたそれぞれの光ファイバ素線を他の光ファイバ素線と接続することを特徴とする光ファイバテープ心線の分割方法である。また、第4の発明は、複数の光ファイバ素線が並列した光ファイバテープ心線の分割方法であって、隣り合う光ファイバ素線同士が、長手方向の所定の間隔で形成される接着部で接着され、それぞれの隣り合う光ファイバ素線同士の前記接着部が、長手方向で互いに千鳥状に形成され、隣り合う光ファイバ素線同士は接触しており、組の隣り合う光ファイバ素線同士の長手方向に所定の間隔で形成されるそれぞれの接着部における接着樹脂量が、他の組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部における接着樹脂量よりも少ないことで、前記一組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部の接着強度が、前記他の接着部の接着強度よりも0.01N以上弱く、前記接着部の形成ピッチ、および長手方向の長さは、それぞれの隣り合う前記光ファイバ素線同士に対して略同一であり、前記光ファイバテープ心線を前記光ファイバ素線の併設方向に引っ張り、前記一組の隣り合う光ファイバ素線同士の間の接着部を所定長さ分割し、分割されたそれぞれの光ファイバ素線を他の光ファイバ素線と接続することを特徴とする光ファイバテープ心線の分割方法である。
【0020】
の発明および第4の発明によれば、他の光ファイバ素線と接続する光ファイバ素線を容易に分割が可能な光ファイバテープ心線の分割方法を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光ファイバ素線の分割が容易な光ファイバテープ心線等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】光ファイバテープ心線1を示す斜視図。
図2】光ファイバテープ心線1を示す平面図。
図3】光ファイバテープ心線1の断面図であり、(a)は、図1のA−A線断面図、(b)は、図1のB−B線断面図。
図4】光ファイバテープ心線1aの断面図であり、(a)は、図1のA−A線に対応する断面図、(b)は、図1のB−B線に対応する断面図。
図5】光ファイバテープ心線1bを示す平面図。
図6】光ファイバテープ心線1の分割方法を示す図で、(a)は分割前の状態を示す図、(b)は分割した状態を示す図。
図7】光ファイバテープ心線1と、他の光ファイバテープ心線1a、1bと接続する工程を示す図。
図8】接着強度測定装置20を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、光ファイバテープ心線1を示す斜視図であり、図2は、光ファイバテープ心線1を示す平面図である。光ファイバテープ心線1は、複数の光ファイバ素線3a、3b、・・・、3g、3hが並列に接着されて構成される。なお、以下の説明において、8本の光ファイバ素線3a、3b、・・・、3g、3hにより構成される例を示すが、本発明はこれに限られず、複数の光ファイバ素線からなる光ファイバテープ心線であれば適用可能である。
【0024】
光ファイバテープ心線1は、隣り合う光ファイバ素線3a、3b、・・・、3g、3h同士が、長手方向に所定の間隔をあけて、それぞれ間欠で接着部5a、5b、・・・、5f、5gにより接着される。隣り合う光ファイバ素線同士の接着部は、光ファイバテープ心線1の長手方向に対して千鳥状に配置される。
【0025】
すなわち、光ファイバテープ心線1の長手方向に対する光ファイバ素線3b−3c間、光ファイバ素線3d−3e間、および光ファイバ素線3f−3g間の接着位置は、それぞれ隣り合う光ファイバ素線3a−3b間、光ファイバ素線3c−3d間、光ファイバ素線3e−3f間、および光ファイバ素線3g−3h間の接着位置に対して、略半ピッチずれて、同一ピッチで形成される。
【0026】
したがって、光ファイバ素線3b−3c間、光ファイバ素線3d−3e間、および光ファイバ素線3f−3g間の長手方向の接着位置は、略同一位置となる。同様に、光ファイバ素線3a−3b間、光ファイバ素線3c−3d間、光ファイバ素線3e−3f間、および光ファイバ素線3g−3h間の長手方向の接着位置は、略同一位置となる。なお、各接着部のピッチは、必ずしもすべて同一でなくてもよい。
【0027】
図3は、光ファイバテープ心線1の断面図であり、図3(a)は図1のA−A線断面図であり、図3(b)は図1のB−B線断面図である。図3に示すように、接着部5a、5b、・・・、5f、5gは、接合される光ファイバ素線同士が、上下面の両面で接着樹脂によって接着される。
【0028】
ここで、接着部5dは、他の接着部5a、5b、5c、5e、5f、5gよりも接着樹脂の使用量が少ない。すべての接着部の接着樹脂が同一であれば、接着樹脂固有の接着強度は同一となるが、接着樹脂量が少ない部位では、他の部位に対して接着強度が弱くなる。したがって、接着部5dは、他の接着部5a、5b、5c、5e、5f、5gよりも接着強度が弱い。すなわち、隣り合う光ファイバ素線3d−3eの接着部における接着強度が、他の組の隣り合う光ファイバ素線同士の接着部における接着強度よりも弱い。なお、接着部5dは、光ファイバテープ心線1の長手方向に対して、所定ピッチで同様の形態で形成される。
【0029】
本実施形態では、接着強度の弱い接着部5dが、光ファイバテープ心線1の幅方向中央に位置する例を示したが、本発明はこれに限られない。他の接着部の接着強度を弱くしてもよい。また、接着強度の弱い接着部は、少なくとも一組の隣接する光ファイバ素線同士の間に設けられれば、複数の接着部の接着強度を、他の残りの接着部の接着強度よりも弱くしてもよい。以下の説明では、接着部5dの接着強度が他の接着部よりも弱い例について説明する。
【0030】
本発明では、接着部5dの接着強度を弱くする方法は、図3に示した例には限られない。図4は、図3に対応する図であり、光ファイバテープ心線1aの断面図である。例えば、図4(a)、図4(b)に示すように、接着部5dのみ、光ファイバ素線3d−3e間の上部のみを接着し、他の接着部は、隣り合う光ファイバ素線同士の上下を接着してもよい。このようにしても、接着部5dの接着樹脂の使用量が少なく、他の接着部と比較して光ファイバ素線との接着面積が小さくなるため、接着強度を弱くすることができる。
【0031】
また、図5に示す光ファイバテープ心線1bのように、接着部5dのみ、他の接着部よりも接着長さを短くしてもよい。この場合には、断面における接着樹脂量は、全ての接着部で同一であってもよい。このようにしても、接着部5dの接着樹脂の使用量が少なく、他の接着部と比較して光ファイバ素線との接着面積が小さくなるため、接着強度を弱くすることができる。
【0032】
また、各接着部の接着樹脂量を同一としても、接着部5dに用いられる接着樹脂を、他の接着部に用いられる接着樹脂とは異なる種類のものとすることもできる。接着部5dに対して、他の接着部に使用される接着樹脂の接着強度よりも弱い接着樹脂を使用することで、接着樹脂の使用量が同一であっても、接着部5dの接着強度を、他の接着部と比較して弱くすることができる。このように、接着強度を弱くする方法は特に限定されない。
【0033】
次に、光ファイバテープ心線1の分割方法について説明する。図6は、光ファイバテープ心線1の分割方法を示す図である。なお、以下の説明では、光ファイバテープ心線1の中央で分割する方法を示す。まず、図6(a)に示すように、光ファイバテープ心線1の光ファイバ素線の並列方向(光ファイバテープ心線1の幅方向)に、光ファイバ素線を引っ張る(図中矢印C方向)。
【0034】
なお、光ファイバテープ心線1の長手方向に対する、隣り合う光ファイバ素線同士のそれぞれの接着部群は、全てほぼ同一のピッチで形成される。このため、図6(a)に示すように、光ファイバ素線同士を引き離す際に、全ての接着部に均一に力を付与することができる。この結果、光ファイバ素線の配列が乱れることない。
【0035】
このようにすることで、図6(a)に示すように、光ファイバ素線同士は各接着部で接着された状態で、幅方向に広げられる。この際、光ファイバテープ心線1の幅方向の両端の光ファイバ素線3a、3hを、光ファイバ素線の並列方向に引っ張ることで、各接着部には均一に力が付与される。
【0036】
さらに、光ファイバ素線3a、3hを、光ファイバ素線の並列方向に引っ張ると、最も接着強度の弱い接着部5dが破断する。すなわち、光ファイバ素線3d−3e間が分割される。このように、光ファイバテープ心線1は、光ファイバ素線3d−3e間を分割するために、光ファイバ素線3d、3eを引っ張る必要がなく、両端の光ファイバ素線3a、3hを引っ張ることで、容易に光ファイバテープ心線1の中央で光ファイバ素線群に分割することができる。
【0037】
このように、光ファイバ素線を分割した後、図7に示すように、分割されたそれぞれの光ファイバ素線群を、他の光ファイバテープ心線1c、1dと融着等によって接続することができる。この場合、光ファイバテープ心線1の中央で分割することで、それぞれの4心の光ファイバテープ心線1c、1dとの接続が容易である。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、あらかじめ容易に分割可能な接着部を形成することで、光ファイバテープ心線を当該部位で分割することが容易である。したがって、特に本数の多い光ファイバ素線からなる光ファイバテープ心線において、分割するべき接着部を特定して、その光ファイバ素線同士をつまんで引っ張る必要がない。両端の光ファイバ素線を引っ張ることで、容易に決められた位置で光ファイバ素線を分割することができる。
【0039】
特に、光ファイバテープ心線の中央を分割容易とすることで、分割された後の光ファイバ素線の本数を同一とすることができる。したがって、他の光ファイバテープ心線との接合時に、光ファイバ素線の本数を計数する必要がない。
【0040】
なお、接着強度の弱い接着部は、光ファイバテープ心線の取り扱い時に、意図せずに破断することがない程度の接着強度が必要である。また、接着強度の強い接着部は、工具等を用いなくても、容易に分割でき、分割時に光ファイバ素線に極度の曲げが加わることがない程度の接着強度とする必要がある。
【実施例】
【0041】
実際に、光ファイバテープ心線を作成して、光ファイバ素線の分割作業性について評価した。図8は、光ファイバ素線同士の接着強度を測定する方法を示す図である。接着強度測定装置20は、固定部15、17、ロードセル19等から構成される。
【0042】
固定部15には、環状に曲げられた針金13が固定される。針金13はΦ0.5mmの鋼線を用いた。固定部17には、あらかじめ光ファイバテープ心線から切り出された光ファイバ素線9a、9bの端部が固定される。光ファイバ素線9a、9bは、一か所の接着部11で接着される。すなわち、一か所の接着部11を残して光ファイバ素線9a、9bが所定長さに切断される。また、固定部17にはロードセル19が連結される。
【0043】
光ファイバ素線9a、9bの接着部11と針金13とを引っかけた状態で、固定部15を引っ張ると、所定の荷重を付与した際に、接着部11が破断する。この接着部11が破断するまでの最大荷重をロードセル19で測定することで、接着部11の接着強度を測定した。
【0044】
8心の光ファイバテープ心線の中央(端から4番目と5番目の光ファイバ素線の間)の接着部と、他の接着部の接着強度を変化させて、光ファイバ素線の分割作業性を評価した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1において、素線分割作業性は、両端(一方の端から1番目と8番目)の光ファイバ素線をつかみ、光ファイバ素線を広げた際に、光ファイバテープ心線の中央(端から4番目と5番目の光ファイバ素線の間)で接着部が破断したものを「○」とし、他の接着部で破断したものを「×」とした。
【0047】
結果より、中央の接着強度が、他の接着強度よりも弱いNo.2,3,5,6は、中央で分割することができた。一方、中央よりも弱い接着部が他にある場合や、中央と他の接着部がほぼ同等であるNo.1とNo.4は、中央で分割することができなかった。
【0048】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0049】
1、1a、1b、1c、1d………光ファイバテープ心線
3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h………光ファイバ素線
5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g………接着部材
9a、9b………光ファイバ素線
11………接着部
13………針金
15、17………固定部
19………ロードセル
20………接着強度測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8