(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリカ源、アルミナ源、及び構造指向剤を含む原料組成物を結晶化する結晶化工程、を有するLEV型ゼオライトの製造方法において、上記構造指向剤がテトラメチルホスホニウムカチオン源であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のLEV型結晶性アルミノシリケートの製造方法。
上記テトラメチルホスホニウムカチオン源が、テトラメチルホスホニウム水酸化物、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムクロライド、及びテトラメチルホスホニウムヨージドの群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載のLEV型結晶性アルミノシリケートの製造方法。
上記4級アンモニウムカチオン源が、コリンクロライド、コリンブロミド、コリンヨージド、コリン水酸化物、ジエチルジメチルアンモニウム水酸化物、ジエチルジメチルアンモニウムクロライド、ジエチルジメチルアンモニウムブロミド、ジエチルジメチルアンモニウムヨージドの群から選ばれる少なくとも1種である請求項10に記載のLEV型結晶性アルミノシリケートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のLEV型ゼオライトについて詳細に説明する。
本発明のLEV型ゼオライトは、LEV構造を有する。LEV構造は、国際ゼオライト学会(IZA)で定義される構造コードでLEV構造となる結晶構造である。
また、本発明のLEV型ゼオライトは、LEV構造を有する結晶性アルミノシリケートであり、結晶性アルミノシリケートは、骨格金属(以下、「T原子」とする。)がアルミニウム(Al)とケイ素(Si)であり、これらと酸素(O)のネットワークからなる骨格構造を有する。したがって、LEV構造を有し、なおかつ、そのT原子にリン(P)を含むネットワークからなる骨格構造を有するアルミノフォスフェートやシリコアルミノホスフェートなどのゼオライト類縁物質と、本発明のLEV型ゼオライトとは異なる。
【0011】
本発明のLEV型ゼオライトは、リンを含有する。これにより、骨格アルミニウムの熱安定性が向上し、本発明のLEV型ゼオライトの耐熱性が高くなる。これに加え、ゼオライト酸点がリンで修飾され、特定の触媒反応に適した酸強度が得られる。リンは、LEV型ゼオライトの骨格以外、すなわち、T原子以外として含有される。例えば、リンはLEV型ゼオライトの細孔内、特に酸素8員環細孔内に含有される。なお、細孔内にリンが含有される場合、当該リンはLEV型ゼオライトの骨格酸素と化学結合を形成する場合もある。この場合、細孔内のリンと骨格酸素との結合は部分的な化学結合である。当該化学結合は、T原子と骨格酸素との化学結合と結合状態とが異なる。
本発明のLEV型ゼオライトに含有されるリンの状態としては、例えば、リン酸イオン、及びリン化合物の群から選ばれる少なくとも1種の状態を挙げることができる。
ここで、本発明のLEV型ゼオライトにおけるT原子とは、その骨格に含まれる金属、即ちSi及びAlである。
【0012】
本発明のLEV型ゼオライトにおける、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO
2/Al
2O
3比」とする。)は10以上、更には15以上であることが好ましい。SiO
2/Al
2O
3比が10以上であることで、本発明のLEV型ゼオライトの耐熱性が高くなりやすい。一方、SiO
2/Al
2O
3比が100以下、更には50以下、また更には35以下であれば、本発明のLEV型ゼオライトが触媒として十分な量の酸点を有する。
【0013】
リンの含有量は、T原子に対するリンのモル比(以下、「P/T比」とする。)で0.15以下であることが好ましい。P/T比が0.12以下、更には0.05以下であれば、LEV型ゼオライトの細孔を有効に触媒反応に使うことができる。P/T比は0.001以上、更には0.01以上、また更には0.02以上であればリンを含有することによる、耐熱性向上の効果が得られる。好ましいP/T比として0.001以上、0.10以下を挙げることができる。
【0014】
さらに、本発明のLEV型ゼオライトは、T原子としてのAlに対するリンのモル比(以下、「P/Al比」とする。)が1.5以下、更には1.0以下であることが好ましい。P/Alが1.5以下であれば、触媒として必要とされる酸点を有し、なおかつ、触媒用途として実用的な耐熱性を有するLEV型ゼオライトとなる。また、T原子としてのAlは酸点として機能する。P/Al比は0.01以上、更には0.02以上であれば、触媒活性を示す酸点としてのAlが多いLEV型ゼオライトとなる。触媒特性及び耐熱性の観点から、P/Al比は0.05以上1.15以下、更には0.1以上0.5以下であることが特に好ましい。
【0015】
一般的に、ゼオライトに含まれるフッ素は、原料に由来したものである。原料にフッ素を含む化合物を使用して得られたゼオライトは、その製造コストが高いゼオライトとなりやすい。そのため、本発明のLEV型ゼオライトは、フッ素(F)を実質的に含んでいないこと、すなわちフッ素含有量が0ppmであることが好ましい。ランタン−アリザリンコンプレキソン吸光光度法など、通常の組成分析法により得られる測定値の測定限界を考慮すると、本発明のLEV型ゼオライトのフッ素含有量は100ppm以下を例示することができる。
【0016】
本発明のLEV型ゼオライトは、銅(Cu)又は鉄(Fe)の少なくともいずれか、更には銅を含有していてもよい。銅又は鉄の少なくともいずれかを含有することで、本発明のLEV型ゼオライトが従来のLEV型ゼオライトよりも高い窒素酸化物還元率、更には高温高湿雰囲気に晒された後の窒素酸化物還元率が高くなる。本発明のLEV型ゼオライトは、従来のLEV型ゼオライトと比べ、特に高温高湿雰囲気に晒された後の200℃以下の低温における窒素酸化物還元率が高くなる。
ここで、高温高湿雰囲気として、900℃で、10体積%のH
2Oを含む空気を300mL/分で流通させた雰囲気を挙げることができる。当該雰囲気に晒される時間が長くなることで、ゼオライトへの熱負荷が大きくなる。一般的には高温高湿下に晒される時間が長くなるほど、脱アルミニウムをはじめとする、ゼオライトの結晶性の低下が生じやすくなる。
銅又は鉄の少なくともいずれかは、本発明のLEV型ゼオライト重量に対する重量割合で1重量%以上5重量%以下、更には2重量%以上4重量%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明のLEV型ゼオライトは、酸点近傍にリンを含有する。そのため、アルコールやケトンからの低級オレフィン製造用触媒、クラッキング触媒、脱ろう触媒、異性化触媒、及び窒素酸化物還元触媒などの各種の触媒として使用することができる。また、酸化触媒や窒素酸化物還元触媒などの酸化還元触媒用途においては、本発明のLEV型ゼオライトに遷移金属を含有させて、遷移金属を含有したLEV型ゼオライトとして本発明のLEV型ゼオライト使用することができる。
【0018】
以下、本発明のLEV型ゼオライトの製造方法について説明する。
本発明は、シリカ源、アルミナ源、及び構造指向剤を含む原料組成物を結晶化する結晶化工程、を有するLEV型ゼオライトの製造方法において、上記構造指向剤がテトラメチルホスホニウムカチオン源であることを特徴とするLEV型ゼオライトの製造方法である。
【0019】
結晶化工程では、テトラメチルホスホニウムカチオン(以下、「TMP」とする。)源を含有する原料組成物を結晶化する。TMPは構造指向剤(Structure Directing Agent;以下、「SDA」とする。)としての機能を有するだけでなく、リンの供給源となる。これにより、LEV型ゼオライトの合成後にリンを修飾する工程を必須とする必要がなくなる。
【0020】
原料組成物に含まれるTMP源として、TMPを含む化合物、更にはTMPの硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物及び水酸化物の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。より具体的なTMP源として、テトラメチルホスホニウム水酸化物(以下、「TMPOH」とする。)、テトラメチルホスホニウムブロミド(以下、「TMPBr」とする。)、テトラメチルホスホニウムクロライド(以下、「TMPCl」とする。)、及びテトラメチルホスホニウムヨージド(以下、「TMPI」とする。)の群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、TMPOHであることがより好ましい。
【0021】
原料組成物は、4級アンモニウムカチオン源を含んでいてもよい。4級アンモニウムカチオン(以下、「4級N
+」とする。)は、SDAとしての機能を有する。原料組成物がTMPTEPに加え、4級N
+を含むことで、得られるLEV型ゼオライトのリン含有量の制御が容易になる。4級アンモニウムカチオン源は、LEV型ゼオライトを指向する4級N
+を含む化合物であればよい。具体的な4級N
+源として、コリンクロライド、コリンブロミド、コリンヨージド、コリン水酸化物、ジエチルジメチルアンモニウム水酸化物、ジエチルジメチルアンモニウムクロライド、ジエチルジメチルアンモニウムブロミド、ジエチルジメチルアンモニウムヨージドの群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
結晶化工程に供する原料組成物を、TMP、4級N
+及びFAU型の結晶性アルミノシリケートを含有する原料組成物とすることで、特に、リンの含有量が少ないLEV型ゼオライトの製造に適している。これにより、熱処理工程及び当該工程に係るコストや時間をかけずに本発明のLEV型ゼオライトを製造することができる。
【0022】
原料組成物に含まれるシリカ源及びアルミナ源は、結晶性アルミノシリケート(ゼオライト)であることが好ましい。結晶性アルミノシリケートは、規則性がある結晶構造をしている。TMPの存在下で結晶性アルミシリケートを処理すると、結晶構造の規則性が適度に維持されながら結晶化が進行すると考えられる。そのため、シリカ源とアルミナ源が個別の化合物である場合、若しくはシリカ源及びアルミナ源が非結晶性の化合物である場合と比べ、シリカ源及びアルミナ源が結晶性アルミノシリケートであることで、LEV型ゼオライトがより効率よく結晶化する。
【0023】
単一相のLEV型ゼオライトを得るため、結晶性アルミノシリケートはFAU型ゼオライトであることが好ましく、X型ゼオライト又はY型ゼオライトの少なくともいずれかであることが好ましく、Y型ゼオライトであることがより好ましい。
結晶性アルミノシリケートのSiO
2/Al
2O
3比として1.25以上を挙げることができ、更には10以上、更には20以上が挙げられる。一方、SiO
2/Al
2O
3比は100以下、更には50以下であればよい。
【0024】
原料組成物が含有する結晶性アルミノシリケートは、任意のカチオンタイプのものであればよい。原料組成物が含有する結晶性アルミノシリケートのカチオンタイプとして、ナトリウム型(Na型)、プロトン型(H
+型)及びアンモニウム型(NH
4型)の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができ、プロトン型であることが好ましい。
結晶性アルミノシリケートを含んでいれば、これ以外のシリカ源又はアルミナ源を含有しなくてもよい。また、LEV型ゼオライトの結晶化の効率化の観点から、原料組成物は非結晶性のシリカ源又は非結晶性のアルミナ源を含んでいないことが好ましく、結晶性アルミノシリケート以外のシリカ源及びアルミナ源を含んでいないことがより好ましい。
【0025】
原料組成物は、シリカ源、アルミナ源、及びTMP源に加え、アルカリ源、及び水を含んでいればよい。
アルカリ源は、アルカリ金属を含む水酸化物を挙げることができる。より具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群からなる少なくとも1種を含む水酸化物であり、更にはナトリウム又はカリウムの少なくともいずれかを含む水酸化物であり、また更にはナトリウムを含む水酸化物である。また、シリカ源及びアルミナ源がアルカリ金属を含む場合、当該アルカリ金属もアルカリ源とすることができる。
水は純水を使用してもよいが、各原料を水溶液として使用してもよい。
【0026】
原料組成物はこれらの原料を含み、なおかつ、以下の組成であることが好ましい。
アルミナに対するシリカのモル比(SiO
2/Al
2O
3比)は10以上、更には20以上であればよい。一方、SiO
2/Al
2O
3比は100以下、更には50以下、また更には40以下であればよい。
シリカに対するアルカリ金属カチオンのモル比(以下、「アルカリ/SiO
2比」とする。)は0.01以上、更には0.05以上である。一方、アルカリ/SiO
2比は1以下、更には0.5以下、更には0.3以下であればよい。
シリカに対するTMPのモル比(以下、「TMP/SiO
2比」とする。)は0.01以上、更には0.05以上である。一方、TMP/SiO
2比は0.5以下である。
シリカに対するOHのモル比(以下、「OH/SiO
2比」とする。)は1以下、更には0.5以下である。OH/SiO
2比が0.5以下であることで、より高い収率でLEV型ゼオライトを得ることができる。通常、原料組成物のOH/SiO
2比は、0.1以上となる。
【0027】
シリカに対する水(H
2O)のモル比(以下、「H
2O/SiO
2比」とする。)は20以下、更には15以下であれば、より効率よくLEV型ゼオライトが得られる。適度な流動性を有する原料組成物とするため、H
2O/SiO
2比は3以上、更には5以上であればよい。
原料組成物が4級N
+源を含有する場合、シリカに対する4級N
+のモル比(以下、「4級N
+/SiO
2比」とする。)は0を超え、更には0.05以上を挙げることができる。一方、4級N
+/SiO
2比は1以下、更には0.5以下、また更には0.4以下であればよい。
原料組成物に含まれるTMP及び4級N
+の割合は、目的とするLEV型ゼオライトのリン含有量により任意の割合とすることができる。TMP及び4級N
+の合計に対する4級N
+のモル比(以下、「4級N
+/SDA比」とする。)は0以上、1未満、更には0.1以上、0.9以下、また更には0.5以上、0.9以下を挙げられる。
【0028】
特に好ましい原料組成物の組成として以下のものを挙げることができる。
SiO
2/Al
2O
3比 =10以上、50以下
アルカリ/SiO
2比 =0.01以上、0.5以下
TMP/SiO
2比 =0.01以上、0.5以下
OH/SiO
2比 =0.1以上、0.5以下
H
2O/SiO
2比 =3以上、20以下
さらに、原料組成物が4級N
+源を含む場合の好ましい原料組成物の組成は、
SiO
2/Al
2O
3比 =20以上、50以下
アルカリ/SiO
2比 =0.05以上、0.3以下
TMP/SiO
2比 =0.1以上、0.5以下
4級N
+/SiO
2比 =0を超え、0.5以下
4級N
+/SDA比 =0.1以上、0.9以下
OH/SiO
2比 =0.1以上、0.5以下
H
2O/SiO
2比 =3以上、15以下
を挙げることができる。
【0029】
原料組成物は、種結晶としてゼオライト、更にはLEV型ゼオライトを含んでいてもよい。種結晶を含有することでLEV型ゼオライトの結晶化がより促進される。
原料組成物の種結晶の含有量は、原料組成物に含まれるシリカ及びアルミナの合計重量に対する、種結晶のシリカ及びアルミナの合計重量として0重量%を超えていればよく、更には0.1重量%以上、また更には1重量%以上であればよい。種結晶の含有量が高くなるほど結晶化は促進される。種結晶の混合量は20重量%以下、更には15%以下、また更には10%以下、であれば、本発明のLEV型ゼオライトが得られる。
【0030】
なお、原料組成物にフッ素を含む化合物が含まれると、その製造コストが高くなりやすい。そのため、原料組成物はフッ素(F)を実質的に含んでいないことが好ましい。
なお、本発明における組成は、エネルギー分散型X線測定法(以下、「EDX法」とする。)や、誘導結合プラズマ発光分光分析法(以下、「ICP法」とする。)などの公知の組成分析法により測定することができる。
【0031】
結晶化工程では、上記の各原料を含む原料組成物を水熱合成することにより、これを結晶化処理する。結晶化処理は、原料組成物を密閉容器に充填し、これを加熱すればよい。
結晶化温度は80℃以上であれば、原料組成物の結晶化が結晶化する。温度が高いほど、結晶化が促進される。そのため、結晶化温度は100℃以上、更には120℃以上であることが好ましい。原料組成物が結晶化すれば、必要以上に結晶化温度を高くする必要はない。そのため、結晶化温度は200℃以下、更には160℃以下、また更には150℃以下であればよい。また、結晶化は原料組成物を攪拌した状態、又は静置した状態のいずれの状態で行うことができる。
結晶化時間としては、通常、5時間〜7日間、好ましくは1〜7日間である。
【0032】
本発明の製造方法では、結晶化工程の後、洗浄工程、乾燥工程及びイオン交換工程の少なくともいずれか(以下、「後処理工程」とする。)を含んでいてもよい。
洗浄工程は、結晶化後のLEV型ゼオライトと液相とを固液分離する。洗浄工程は、公知の方法で固液分離をし、固相として得られるLEV型ゼオライトを純水で洗浄すればよい。
【0033】
乾燥工程は、結晶化工程後又は洗浄工程後のLEV型ゼオライトから水分を除去する。乾燥工程の条件は任意であるが、結晶化工程後又は洗浄工程後のLEV型ゼオライトを、大気中、50℃以上、150℃以下で2時間以上、静置することが例示できる。
結晶化後のLEV型ゼオライトは、そのイオン交換サイト上にアルカリ金属イオン等の金属イオンを有する場合がある。イオン交換工程では、これをアンモニウムイオン(NH
4+)や、プロトン(H
+)等の非金属カチオンにイオン交換する。アンモニウムイオンへのイオン交換は、LEV型ゼオライトを塩化アンモニウム水溶液に混合、攪拌することが挙げられる。また、プロトンへのイオン交換は、LEV型ゼオライトをアンモニアでイオン交換した後、これを焼成することが挙げられる。
【0034】
本発明の製造方法は、LEV型ゼオライトに銅又は鉄の少なくともいずれか、更には銅を含有させる金属含有工程を含んでいてもよい。
金属含有工程は、LEV型ゼオライトのイオン交換サイト又は細孔の少なくともいずれかに銅又は鉄の少なくともいずれかが含有される方法であればよい。具体的な方法として、イオン交換法、蒸発乾固法及び含浸担持法の群から選ばれる少なくともいずれかを挙げることができ、含浸担持法、更には銅又は鉄の少なくともいずれかを含む化合物を含む水溶液とLEV型ゼオライトとを混合する方法が挙げることができる。
銅又は鉄の少なくともいずれかを含む化合物は、銅又は鉄の少なくともいずれかの無機酸塩、更には銅又は鉄の少なくともいずれかの硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩及び塩化物の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0035】
本発明の製造方法が金属含有工程を有する場合、金属含有工程の後、さらに、洗浄工程、乾燥工程、又は活性化工程の少なくともいずれか1以上の工程を含んでいてもよい。
洗浄工程は、LEV型ゼオライトの不純物等を除去されれば、任意の洗浄方法を用いることができる。例えば、金属含有LEV型ゼオライトを十分量の純水で洗浄することが挙げられる。
乾燥工程は、LEV型ゼオライトの水分を除去する。LEV型ゼオライトを、大気中で、100℃以上、200℃以下で処理することが例示できる。
活性化工程は、LEV型ゼオライトに含まれる有機物を除去する。LEV型ゼオライトを、大気中、200℃を超え、600℃以下で処理することが例示できる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、「比」は特に断らない限り、「モル比」である。
(結晶構造の同定)
一般的なX線回折装置(装置名:Mini Flex、リガク社製)を使用し、試料のXRD測定をした。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を用い、測定範囲は2θとして5°から50°の範囲で測定した。
得られたXRDパターンと、非特許文献1のFig.1(f)に記載のXRDパターンとを比較することで、試料の構造を同定した。
【0037】
(組成分析)
試料のSiO
2/Al
2O
3比は、EDX法又はICP法により測定した。EDX法による測定は、一般的なエネルギー分散型X線分光装置(装置名:S−4800、日立製作所製)を使用し、試料のSiO
2/Al
2O
3比を求めた。
ICP法による測定は、フッ酸と硝酸の混合水溶液に試料を溶解して試料溶液を調製した。一般的なICP装置(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)でSi及びAlを測定し、SiO
2/Al
2O
3比を求めた。
また、ICP法ではSi及びAlに加えてPを測定し、P/Al比及びP/T比を求めた。
【0038】
実施例1
以下の組成となるように、純水、水酸化ナトリウム及びFAU型ゼオライト(Y型、カチオンタイプ:プロトン型、SiO
2/Al
2O
3比=32)を、40%TMPOH(テトラメチルホスホニウム水酸化物)水溶液に添加、混合して原料組成物を得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =32
Na/SiO
2比 =0.1
TMP/SiO
2比 =0.4
OH/SiO
2比 =0.5
H
2O/SiO
2比 =5
得られた原料組成物を密閉容器内に充填し、これを静置した状態で125℃、7日間の条件で原料組成物を結晶化させた。結晶化後の原料組成物を固液分離し、純水で洗浄した後、70℃で乾燥して本実施例のゼオライトを得た。当該ゼオライトは、LEV構造の単一相からなるLEV型ゼオライトであった。本実施例のLEV型ゼオライトのXRDパターンを
図1に示した。EDX法により求められた組成は、SiO
2/Al
2O
3比=20.8であった。また、ICP法により求められた組成は、SiO
2/Al
2O
3比=17、P/Al比=1.01、及びP/T比=0.11であった。
また、本実施例のLEV型ゼオライトの評価結果を表1に、SEM写真を
図2に示した。
【0039】
比較例1
以下の組成となるように、純水、塩化ナトリウム、及びFAU型ゼオライト(Y型、カチオンタイプ:プロトン型、SiO
2/Al
2O
3比=31)を、コリン水酸化物(50%水溶液)に添加、混合して原料組成物を得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =31
Na/SiO
2比 =0.2
4級N
+/SiO
2比 =0.5
OH/SiO
2比 =0.5
H
2O/SiO
2比 =5
得られた原料組成物を実施例1と同様の方法で結晶化、後処理することでLEV型ゼオライトを得た。ICP法による組成は、SiO
2/Al
2O
3比=19、P/Al比=0、及びP/T比=0であった。本比較例のLEV型ゼオライトの評価結果を表1に示した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1より、テトラメチルホスホニウムカチオンを用いた場合にリンを含有するLEV型ゼオライトが直接得られることが確認できた。
【0042】
実施例2
以下の組成となるように、純水、水酸化ナトリウム、4級アンモニウムカチオンとしてコリン水酸化物(50%水溶液)、FAU型ゼオライト(Y型、カチオンタイプ:プロトン型、SiO
2/Al
2O
3比=31)、及び、種結晶として比較例1で得られたLEV型ゼオライトを、40%TMPOH水溶液に添加、混合して原料組成物を得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =31
Na/SiO
2比 =0.1
TMP/SiO
2比 =0.2
4級N
+/SiO
2比 =0.2
4級N
+/SDA =0.5
OH/SiO
2比 =0.5
H
2O/SiO
2比 =5
種結晶 =5wt%
得られた原料組成物を実施例1と同様の方法で結晶化、後処理することでLEV型ゼオライトを得た。ICP法による組成は、SiO
2/Al
2O
3比=21、P/Al比=1.12、P/T比=0.10であった。本実施例のLEV型ゼオライトの評価結果を表2に示した。
【0043】
実施例3
原料組成物を以下の組成とした以外は、実施例2と同様の方法でLEV型ゼオライトを得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =31
Na/SiO
2比 =0.1
TMP/SiO
2比 =0.3
4級N
+/SiO
2比 =0.1
4級N
+/SDA比 =0.25
OH/SiO
2比 =0.5
H
2O/SiO
2比 =5
種結晶 =5wt%
ICP法による組成は、SiO
2/Al
2O
3比=20、P/Al比=1.40、P/T比=0.13であった。本実施例のLEV型ゼオライトの評価結果を表2に示した。
【0044】
実施例4
原料組成物を以下の組成とした以外は、実施例2と同様の方法でLEV型ゼオライトを得た。
SiO
2/Al
2O
3比 =31
Na/SiO
2比 =0.1
TMP/SiO
2比 =0.05
4級N
+/SiO
2比 =0.35
4級N
+/SDA比 =0.88
OH/SiO
2比 =0.5
H
2O/SiO
2比 =5
種結晶 =5wt%
ICP法による組成は、SiO
2/Al
2O
3比=19、P/Al比=0.33、P/T比=0.03であった。本実施例のLEV型ゼオライトの評価結果を表2に示した。
【0045】
【表2】
【0046】
実施例5
実施例4のLEV型ゼオライトを、大気中、600℃で10時間焼成した後、塩化アンモニウム水溶液を用いてイオン交換して、NH
4型のゼオライトとした。NH
4型ゼオライト1.3gに硝酸銅水溶液を添加し、これを乳鉢で混合した。なお、硝酸銅水溶液は硝酸銅3水和物128mgを純水0.5gに溶解して硝酸銅水溶液を調製したものを使用した。
混合後の試料を110℃で一晩乾燥した後、空気中、550℃で1時間焼成し、これを本実施例の銅含有LEV型ゼオライトとした。本実施例の銅含有LEV型ゼオライトの評価結果を表3に示す。
【0047】
比較例2
比較例1のLEV型ゼオライトを使用したこと、及び、硝酸銅3水和物178mgを純水0.5gに溶解して硝酸銅水溶液を1.6g使用したこと以外は、実施例5と同様な方法で、銅含有LEV型ゼオライトを得た。得られた銅含有LEV型ゼオライトの評価結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
測定例1
実施例5及び比較例2の銅含有LEV型ゼオライトに水熱耐久処理を施し、水熱耐久処理前後の窒素酸化物還元特性を評価した。処理条件及び評価条件は以下のとおりである。
(水熱耐久処理)
試料をプレス成形後、凝集径12メッシュ〜20メッシュの凝集粒子とした。得られた凝集粒子3mLを常圧固定床流通式反応管に充填し、これに10体積%のH
2Oを含む空気を300mL/分で流通させて水熱耐久処理を行った。水熱耐久処理は、900℃で1時間及び4時間のいずれかの時間で行った。
【0050】
(窒素酸化物還元率の測定)
試料の窒素酸化物還元率は、以下に示すアンモニアSCR方法により測定した。
すなわち、試料をプレス成形した後、凝集径12〜20メッシュの凝集粒子とした。得られた凝集粒子体を1.5mL量りとり、これを反応管に充填した。その後、200℃で、窒素酸化物を含む以下の組成からなる処理ガスを当該反応管に流通させた。処理ガスの流量は1.5L/分、及び空間速度(SV)は60,000h
−1として測定を行った。
【0051】
<処理ガス組成>
NO :200ppm
NH
3 :200ppm
O
2 :10容量%
H
2O :3容量%
残部 :N
2
反応管に流通させた処理ガス中の窒素酸化物濃度(200ppm)に対する、触媒流通後の処理ガス中の窒素酸化物濃度(ppm)を求め、以下の式に従って、窒素酸化物還元率を求めた。
窒素酸化物還元率(%)={1−(接触後の処理ガス中の窒素酸化物濃度/接触前の処理ガス中の窒素酸化物濃度)}×100
水熱耐久処理前と1時間の水熱耐久処理後の200℃における窒素酸化物還元率を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
表4より、実施例5は水熱耐久処理前後において、200℃以下における窒素酸化物還元率が50%以上の示すことが確認できた。これに対し、比較例2は、水熱耐久処理前の窒素酸化物還元率は高いが、1時間の水熱耐久処理において急激に窒素酸化物還元率が低下した。これより、本発明の窒素酸化物は耐久性が高く、低温における窒素酸化物還元率が高い値を維持できることが確認できた。
【0054】
測定例2
水熱耐久処理の時間を1時間及び4時間としたこと以外は、測定例1と同様な方法で、実施例5の銅含有LEV型ゼオライトについて行った。結果を表5に示す。
【0055】
【表5】
【0056】
表5より、本発明のLEV型ゼオライトは長期間、高温高湿下に晒されたとしても、200℃以下の窒素酸化物還元率が高く、水熱耐久処理前と同等の触媒特性を有することが確認できた。
【0057】
測定例3
窒素酸化物還元率の測定を300℃、400℃及び500℃のいずれかの温度で行ったこと以外は、測定例1と同様な方法で窒素酸化物還元率を測定した。結果を表6に示す。
【0058】
【表6】
【0059】
表6より、本発明のLEV型ゼオライトは、300℃以上における窒素酸化物還元率が従来のLEV型ゼオライトと同等である一方、高温高湿下に晒された後の窒素酸化物還元率は従来のLEV型ゼオライトよりも高いことが分かった。これより、本発明のLEV型ゼオライトは、200℃以下の低温のみならず、300℃以上の高温下における窒素酸化物還元特性が高いことが確認できた。