【文献】
TU et al.,Design Method of Heterogeneous Trench-assisted Graded-index Few-mode Multi-core Fiber with Low Differential Mode Delay,2015 Opto-Electronics and Communications Conference(OECC),米国,IEEE,2015年 6月28日,DOI: 10.1109/OECC.2015.7340200
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のコア部と、前記コア部の外周に形成され、前記コア部の最大屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド部と、を備え、前記複数のコア部が略同一の屈折率プロファイルを有しかつ同一の波長および同一の伝搬モードにおいて互いに異なる群遅延を有している単位マルチコアファイバを複数備え、
当該マルチコアファイバのコア部は、前記複数の単位マルチコアファイバのコア部同士が縦列接続されて構成されており、前記単位マルチコアファイバのコア部は、前記最大屈折率を有するとともにα乗の屈折率分布プロファイルを有する中心コア部と、前記中心コア部の外周に形成され前記クラッド部の屈折率と略等しい屈折率を有する内側コア層と、前記内側コア層の外周に形成され前記クラッド部の屈折率よりも低い屈折率を有する外側コア層とからなり、前記単位マルチコアファイバの屈折率プロファイルは、前記中心コア部、前記内側コア層および前記外側コア層の前記クラッド部に対する比屈折率差(%)については、±0.05%の範囲にあり、前記中心コア部、前記内側コア層および前記外側コア層の半径(μm)については、±0.5μmの範囲にあり、前記中心コア部のα値については、±0.3の範囲にあり、
当該マルチコアファイバのコア部の間の群遅延差の最大値は、前記各単位マルチコアファイバのコア部の間の群遅延差の最大値を当該マルチコアファイバの長さにおける値に換算した値よりも小さいことを特徴とするマルチコアファイバ。
前記複数の単位マルチコアファイバのコア部同士の縦列接続において、当該マルチコアファイバのコア部の間の群遅延差の最大値が全長にて5nsより小さくなるように、少なくとも群遅延が互いに異なる複数の組み合わせのコア部同士を縦列接続していることを特徴とする請求項1に記載のマルチコアファイバ。
前記単位マルチコアファイバにおいて、前記コア部は、入力される光の波長において単一の伝搬モードが存在するように屈折率プロファイルが設定されており、前記群遅延差は、前記単一の伝搬モードにおける群遅延差であることを特徴とする請求項1または2に記載のマルチコアファイバ。
前記単位マルチコアファイバにおいて、前記コア部は、入力される光の波長においてLP01モードとLP11モードの伝搬モードが存在するように屈折率プロファイルが設定されおり、前記群遅延差は、同一波長の伝搬モードにおける最大の群遅延差であることを特徴とする請求項1または2に記載のマルチコアファイバ。
複数のコア部と、前記コア部の外周に形成され、前記コア部の最大屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド部と、を備え、前記複数のコア部が略同一の屈折率プロファイルを有しかつ同一の波長および同一の伝搬モードにおいて互いに異なる群遅延を有している単位マルチコアファイバを複数準備する工程と、
前記複数の単位マルチコアファイバのコア部同士を縦列接続してマルチコアファイバを作製する工程と、
を含み、前記単位マルチコアファイバのコア部は、前記最大屈折率を有するとともにα乗の屈折率分布プロファイルを有する中心コア部と、前記中心コア部の外周に形成され前記クラッド部の屈折率と略等しい屈折率を有する内側コア層と、前記内側コア層の外周に形成され前記クラッド部の屈折率よりも低い屈折率を有する外側コア層とからなり、前記単位マルチコアファイバの屈折率プロファイルは、前記中心コア部、前記内側コア層および前記外側コア層の前記クラッド部に対する比屈折率差(%)については、±0.05%の範囲にあり、前記中心コア部、前記内側コア層および前記外側コア層の半径(μm)については、±0.5μmの範囲にあり、前記中心コア部のα値については、±0.3の範囲にあり、前記マルチコアファイバのコア部の間の群遅延差の最大値が、前記各単位マルチコアファイバのコア部の間の群遅延差の最大値を当該マルチコアファイバの長さにおける値に換算した値よりも小さくなるように、前記複数の単位マルチコアファイバのコア部同士を縦列接続することを特徴とするマルチコアファイバの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して本発明に係るマルチコアファイバおよびその製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、本明細書で特に定義しない用語については、ITU−T(国際電気通信連合)G.650.1における定義、測定方法に従うものとする。
【0021】
(実施の形態1)
図1Aは、実施の形態1に係るマルチコアファイバの構成を説明する図であり、
図1Bは、実施の形態1に係るマルチコアファイバの屈折率プロファイルを説明する図である。
図1Aに示すように、マルチコアファイバ10は、複数(本実施の形態1では6個)のコア部10a、10b、10c、10d、10e、10fと、コア部10a〜10fの外周に形成された、各コア部10a〜10fの最大屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド部10gと、クラッド部10gに形成され、コア部10a〜10fの位置を識別することができるような位置に配置されたマーカ10gaとを備えている。コア部10a〜10fは、クラッド部10gの中心軸O1から等距離rの位置に、等角度で配置されており、中心軸O1を中心とした円を形成するように配置されている。すなわち、コア部10a〜10fは6回回転対称に配置されている。隣接するコア部間の中心間距離(コアピッチ)はΛである。
【0022】
図1Aおよび
図1Bに示すように、コア部10aは、コア部10aの最大屈折率を有するとともにα乗の屈折率プロファイルP1を有する中心コア部10aaと、中心コア部10aaの外周に形成されクラッド部10gの屈折率と略等しい屈折率である屈折率プロファイルP2を有する内側コア層10abと、内側コア層10abの外周に形成されクラッド部10gの屈折率よりも低い屈折率である屈折率プロファイルP3を有する外側コア層10acとからなる。屈折率プロファイルP4はクラッド部10gの屈折率プロファイルを示している。また、中心コア部10aaの半径をa1(すなわち直径を2a1)とし、クラッド部10gに対する比屈折率差の最大値をΔ1とする。内側コア層10abの半径をa2(すなわち直径を2a2)とし、クラッド部10gに対する比屈折率差の平均値をΔ2とする。外側コア層10acの半径をa3(すなわち直径を2a3)とし、クラッド部10gに対する比屈折率差の平均値をΔ3とする。このように、マルチコアファイバ10はトレンチ型の屈折率プロファイルを有する。
【0023】
なお、中心コア部10aaの最大屈折率をn1、クラッド部10gの屈折率をn0、中心コア部10aaの中心からの動径方向への距離をrとすると、中心コア部10aaのα乗屈折率プロファイルは、以下の式で表される。なお、「^」は、べき乗を示す記号である。
n
2(r)=n1
2−(n1
2−n0
2)・(r/a1)^α
たとえば、αの値が3であるような屈折率分布プロフィルは、αの値が3であるα乗の屈折率分布プロファイルと呼ぶことができる。
【0024】
なお、中心コア部10aaは、屈折率を高めるドーパントである、たとえばゲルマニウム(Ge)が添加された石英ガラスからなる。内側コア層10abは、たとえば屈折率調整用のドーパントを殆ど含まない石英ガラスまたは屈折率調整用のドーパントを含まない純石英ガラスからなる。外側コア層10acは、屈折率を低めるドーパントである、たとえばフッ素(F)が添加された石英ガラスからなる。クラッド部10gは、たとえば屈折率調整用のドーパントを含まない純石英ガラスからなる。マーカ10gaは、クラッド部10gとは屈折率が異なるガラスや色ガラスなどからなる。なお、クラッド部10gの外周には被覆を形成してもよい。
【0025】
他のコア部10b〜10fも、コア部10aと同様の材質からなり、同様の構成、すなわち最大屈折率を有するとともにα乗の屈折率分布プロファイルを有する中心コア部と、中心コア部の外周に形成されクラッド部の屈折率と略等しい屈折率を有する内側コア層と、内側コア層の外周に形成されクラッド部の屈折率よりも低い屈折率を有する外側コア層とからなる。
【0026】
図2Aおよび
図2Bは、
図1Aに示すマルチコアファイバ10の構成を説明する図である。
図2Aに示すように、マルチコアファイバ10は、複数(本実施の形態1では6本)の単位マルチコアファイバ11、12、13、14、15、16が縦列接続されて構成されている。
【0027】
単位マルチコアファイバ11、12、13、14、15、16は、連続して線引きし作製された、マルチコアファイバ10と略同じ長さまたはそれ以上の長さの元マルチコアファイバを6本の同じ長さに切断して作製したものであり、マルチコアファイバ10と同様の構成を有している。すなわち、
図2Bに示すように、たとえば単位マルチコアファイバ11は、複数(本実施の形態1では6個)のコア部11a、11b、11c、11d、11e、11fと、コア部11a〜11fの外周に形成された、各コア部11a〜11fの最大屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド部11gと、クラッド部11gに形成され、コア部11a〜11fの位置を識別することができるような位置に配置された不図示のマーカとを備えている。コア部11a〜11fは、クラッド部11gの中心軸から略等距離の位置に配置されており、中心軸を中心とした円を形成するように配置されている。さらに、コア部11a〜11fは、各コア部の最大屈折率を有するとともにα乗の屈折率分布プロファイルを有する中心コア部と、中心コア部の外周に形成されクラッド部の屈折率と略等しい屈折率を有する内側コア層と、内側コア層の外周に形成されクラッド部の屈折率よりも低い屈折率を有する外側コア層とからなる。
【0028】
なお、他の単位マルチコアファイバ12〜16も同様である。すなわち、単位マルチコアファイバ12〜16は、それぞれ、コア部12a〜12f、クラッド部12gおよびマーカ、コア部13a〜13f、クラッド部13gおよびマーカ、コア部14a〜14f、クラッド部14gおよびマーカ、コア部15a〜15f、クラッド部15gおよびマーカ、ならびにコア部16a〜16f、クラッド部16gおよびマーカを備えている。ここで、たとえばコア部11a、12a、13a、14a、15a、16aは単位マルチコアファイバに切断する前には連続していたものである。コア部11b〜16b、コア部11c〜16c、コア部11d〜16d、コア部11e〜16e、およびコア部11f〜16fについても、それぞれ単位マルチコアファイバに切断する前には連続していたものである。
【0029】
各単位マルチコアファイバ11〜16のコア部は、いずれも
図1Bに示すような形状の略同一の屈折率プロファイルを有しており、屈折率プロファイルを示すパラメータであるa1、a2、a3、α、Δ1、Δ2、Δ3も略同一である。なお、これらのパラメータは、入力される光(たとえば光通信で使用される波長帯であるCバンド(1530nm〜1565nm)やLバンド(1565nm〜1610nm)の光)の波長において各コア部に2モード(LP01モードおよびLP11モード)の伝搬モードが存在するように設定されている。さらには、αの値は、2モードの群速度差が小さいように設定されており、Δ3は、高次モードの曲げ損失を抑制するように設定されている。
【0030】
ここで、屈折率プロファイルが略同一とは、たとえば各パラメータのうちΔ1、Δ2、Δ3については±0.05%の範囲にあり、a1、a2、a3については±0.5μmの範囲にあり、α値については、±0.3の範囲にあることを意味する。このような状況は、各コア部が同一の屈折率プロファイルを有するように設定して元マルチコアファイバを製造したが、製造誤差等により、元マルチコアファイバのパラメータがばらつきを持つような場合に発生する。このようなばらつきは、コア部の間で発生する場合や、連続したコア部であっても長手方向で発生する場合がある。
【0031】
ここで、マルチコアファイバ10の構成についてより具体的に説明する。
図2Bに分解図で示すように、マルチコアファイバ10の各コア部は、単位マルチコアファイバのコア部同士が縦列接続されて構成されている。具体的には、マルチコアファイバ10のコア部10aは、単位マルチコアファイバ11のコア部11a、単位マルチコアファイバ12のコア部12f、単位マルチコアファイバ13のコア部13e、単位マルチコアファイバ14のコア部14d、単位マルチコアファイバ15のコア部15c、および単位マルチコアファイバ16のコア部16bが縦列接続されて構成されている。
【0032】
また、マルチコアファイバ10のコア部10bは、コア部11b、コア部12a、コア部13f、コア部14e、コア部15d、およびコア部16cが縦列接続されて構成されている。マルチコアファイバ10のコア部10cは、コア部11c、コア部12b、コア部13a、コア部14f、コア部15e、およびコア部16dが縦列接続されて構成されている。マルチコアファイバ10のコア部10dは、コア部11d、コア部12c、コア部13b、コア部14a、コア部15f、およびコア部16eが縦列接続されて構成されている。マルチコアファイバ10のコア部10eは、コア部11e、コア部12d、コア部13c、コア部14b、コア部15a、およびコア部16fが縦列接続されて構成されている。マルチコアファイバ10のコア部10fは、コア部11f、コア部12e、コア部13d、コア部14c、コア部15b、およびコア部16aが縦列接続されて構成されている。
【0033】
また、マルチコアファイバ10のクラッド部10gは、各クラッド部11g、12g、13g、14g、15g、および16gが縦列接続されて構成されている。
【0034】
このようなマルチコアファイバ10は、上述したように連続して線引きし作製した元マルチコアファイバを切断して単位マルチコアファイバ11、12、13、14、15、16を作製し、これらを軸回りに
図2Bに矢印Aで示す回転方向に60°ずつ回転させて融着接続することにより製造することができる。なお、マーカは、元マルチコアファイバでは全長において連続しているが、切断して単位マルチコアファイバ11、12、13、14、15、16を作製し、軸回りに回転させて融着接続したマルチコアファイバ10においては、マーカは各単位マルチコアファイバ11、12、13、14、15、16において軸回りに回転した互いに異なる位置となる。
【0035】
ここで、上述したように、各単位マルチコアファイバ11〜16のコア部は、いずれも略同一の屈折率プロファイルを有しており、略同一の光学特性(たとえば、各伝搬モードの実効コア断面積、群遅延等)を有するが、完全に同一ではないため、たとえば単位マルチコアファイバ11で説明すると、コア部11a〜11fの間で同一の波長、同一の伝搬モードにおいて互いに異なる群遅延を有する、すなわちコア部間で群遅延差を有する。さらには、コア部11a〜11fの間で同一の波長の異なる伝搬モード間の群遅延差も、互いに異なる。他の単位マルチコアファイバについても同様である。上述したように、このようにコア部間で群遅延差を有する場合は、空間多重伝送に用いた場合にMIMO処理中での信号処理量が増えるおそれがある。
【0036】
これに対して、本実施の形態1に係るマルチコアファイバ10は、上記のような構成とすることで、たとえばコア部10aに入力された光(たとえば信号光)は、単位マルチコアファイバ11のコア部11a、単位マルチコアファイバ12のコア部12f、単位マルチコアファイバ13のコア部13e、単位マルチコアファイバ14のコア部14d、単位マルチコアファイバ15のコア部15c、および単位マルチコアファイバ16のコア部16bを順次通過することとなる。この場合、信号光は、たとえば単位マルチコアファイバ11のコア部11aをマルチコアファイバ10に相当する長さだけ伝搬する場合とは異なり、元マルチコアファイバで異なるコア部であった6つのコア部の屈折率プロファイルのもとで伝搬することとなる。他のコア部10b〜10fに入力された信号光も、単位マルチコアファイバの或るコア部をマルチコアファイバ10に相当する長さだけ伝搬する場合とは異なり、元マルチコアファイバで異なるコア部であった6つのコア部の屈折率プロファイルのもとで伝搬することとなる。これにより、コア部10a〜10fの間の群遅延差が解消され、単位マルチコアファイバをマルチコアファイバ10に相当する長さだけ伝搬する場合の値よりも小さくなる。その結果、コア部10a〜10fの間の群遅延差の最大値が、各単位マルチコアファイバ11〜16のコア部の間の群遅延差の最大値をマルチコアファイバ10の長さにおける値に換算した値よりも小さくなる。また、より好ましくは、コア部10a〜10fの間の群遅延差の最大値が、各単位マルチコアファイバ11〜16のコア部の間の群遅延差の最小値をマルチコアファイバ10の長さにおける値に換算した値よりも小さくなり、さらに好ましくは、コア部10a〜10fの間の群遅延差がゼロに近づくように低減される。
【0037】
なお、MIMO処理の負担の観点から、マルチコアファイバ10の群遅延差の最大値は全長にて5nsより小さいことが好ましく、3ns以下であることがより好ましく、2ns以下であることがさらに好ましい。
【0038】
また、本実施の形態1に係るマルチコアファイバ10では、コア部10a〜10fが6回回転対称に配置されているが、このようにコア部がn回転対称性(nは2以上の整数)を有するように配置されていれば、単位マルチコアファイバを軸回りに回転させて融着接続することで、コア部間の群遅延差を小さくできるので好ましい。
【0039】
ここで、上述したように、マルチコアファイバ10を、単位マルチコアファイバ11、12、13、14、15、16を軸回りに回転させて融着接続することにより製造する場合、接続箇所が増大する。通常の単一コアファイバを用いる場合は、コア部の軸ズレによる接続損失は抑制できるが、マルチコアファイバでは、複数のコア部を巡回的に接続するため、コア部の位置精度が接続損失に大きく影響を与える。
【0040】
コア部の位置ずれを決めるパラメータとして、クラッド部の中心からのコア部の中心の距離rと、該当コア部中心とクラッド部中心とを結ぶ直線と該当コア部に接続するコア部中心とクラッド部中心とを結ぶ直線との成す角(すなわち角度ずれ量)θとを検討する。光ファイバを中心軸回りに回転させる融着をすることができる融着接続器は、通常ステッピングモータ等で光ファイバを回転させる。その回転調整精度は0.2°程度であるが、製造誤差も含めた実際の角度ズレ量は2°程度となる。一方、ITU−T G.652に準拠する、通常の1.3μm帯にゼロ分散波長を持つシングルモード光ファイバでは、波長1310nmでのモードフィールド径(MFD)は9.2μm程度であり、融着接続による接続損失は式(1)のようにMFDと融着接続されたコア部間の軸ズレ量とで決まることはよく知られている。ここで、dは融着接続されたコア部間の軸ズレ量であり、w
1、w
2はそれぞれ融着接続されたコア部のスポットサイズ径であり、各コア部のMFDの1/2の値となる量である。
【0042】
ここで、本実施の形態では複数のコア部の縦列接続を行うので、各接続部での接続損失は小さいことが望ましく、0.5dB以下、さらには0.1dB以下であることが望ましい。ここでは、角度ズレに起因するコア部間の軸ズレ量(コア部の位置ズレ)のみを考慮すると、上述したr、θ、dの関係は以下の式(2)で表すことができる。
【0044】
式(2)から解るように、コア部中心のクラッド部中心からの距離rが、角度ズレに起因するコア部の位置ズレを決定する唯一のパラメータとなることがわかる。さらに、
図3は、式(2)を式(1)に代入し、MFDを9.2μmとし、かつ角度ズレ量θを2°に設定した場合の、距離rと接続損失との関係を示す図である。これにより、接続損失を0.5dB以下にするには距離rを45μm以下とすることが好ましく、さらに0.1dB以下にするには距離rを20μm以下とすることが好ましい。
【0045】
(実施例、比較例)
本発明を実施例、比較例を用いてさらに詳細に説明する。まず、実施の形態1と同様の構成および屈折率プロファイルを有する元マルチコアファイバを連続して線引きし、長さ10.1kmに作製した。なお、この元マルチコアファイバは、各コア部で1.55μm帯の波長の光をLP01モードとLP11モードの2モードでかつ十分に低いクロストークで伝搬できるように、設計パラメータとして、Δ1が0.82%、αが2、Δ2が0%、Δ3が−0.46%、a1が7.3μm、a2が9.1μm、a3が13.4μm、コアピッチΛが30μm、クラッド径が125μmになるように設定して作製したものである。
【0046】
図4は、作製した元マルチコアファイバの断面を示す模式図である。ここで、
図4に示すように各コア部にID番号を付す。
図5は、作製した元マルチコアファイバの屈折率プロファイルを示す図である。
図5において、「Core1」は
図4でID番号として「1」を付したコア部の屈折率プロファイルを示す。
【0047】
表1は、作製した各コア部のパラメータを示す表である。
図5、表1に示すように、製造誤差等により、各コア部について、Δ1は0.025%、αが0.13、Δ2が0.005%、Δ3が−0.025%、a1が0.40μm、a2が0.35μm、a3が0.45μmの範囲でばらついているが、設計パラメータに従い略同一の屈折率プロファイルを有していた。
【0049】
表2は、作製した各コア部の屈折率プロファイルをもとにシミュレーションにより求めた、各コア部の光学特性を示す表である。表2では波長1550nmにおける各コア部の実効コア断面積(Effective Area:Aeff)ならびに実効屈折率(neff)を示している。
【0051】
つぎに、元マルチコアファイバの各コア部のLP01モード、LP11モードにおける波長1530nm、1570nmの光の群遅延を測定した。
図6は、作製した元マルチコアファイバのコア部における群遅延の測定系を示す図である。この測定系100では、光源101から出力された連続レーザ光をLN変調器102で変調して試験光を作製し、試験光を通常のシングルモード光ファイバ104、およびシングルモード光ファイバ104よりもモードフィールド径が小さい高非線形光ファイバ105を介して元マルチコアファイバ10Aの各コア部に入力し、当該コア部を伝搬して出力された試験光をシングルモード光ファイバ106でサンプリングオシロスコープ107に入力する。ここで、LN変調器102はパルスパターンジェネレータ(PPG)103から出力される変調信号で変調されており、パルスパターンジェネレータ103からはトリガ信号がサンプリングオシロスコープ107に入力されている。たとえば、元マルチコアファイバ10Aの各コア部に入力される試験光の変調周波数を100MHzとし、試験光のパルス幅を1.5nsとすることで、各コア部におけるLP01モードとLP11モードを識別可能である。これにより、元マルチコアファイバ10Aの各コア部での群遅延を測定できる。
【0052】
表3は、測定した群遅延に基づいて計算した元マルチコアファイバの群遅延差およびDMD(Differential Mode Delay)を示している。ここで、群遅延差は、群遅延が最も小さかった条件である、Core1の波長1530nmにおけるLP11モードの群遅延からの差分とする。ここで、たとえば波長1530nmでみると、群遅延差が最も大きいのは、Core6におけるLP01モードの値である。また、DMDは、同一コア部の同一波長における異なるモード間の群遅延差を単位長さ当たりで表したものとする。たとえば、Core1の波長1530nmにおけるDMDは、(0.00−4.97)/10.1=−0.492ns/km=−492ps/kmである。表2から、DMDの絶対値はCore1において大きく、Core3において小さいこと、また各コア部で1000ps/km以内であることがわかる。また、最大DMDは、異なるコア部間での同一波長における異なるモード間の群遅延差の最大値を単位長さ当たりで表したものとする。たとえば、波長1530nmにおけるDMDは、(0.00−10.41)/10.1=−1.031ns/km=−1031ps/kmである。このように、作製した元マルチコアファイバでは1km当たりの最大DMDが1nsを超えてしまうので、長さ2kmでは2nsを超えてしまい、長さ10kmでは10nsを超えてしまうこととなる。
【0054】
つぎに、元マルチコアファイバを1km毎に切断して6本の単位マルチコアファイバを作製した。そして、まず比較例として、これらの単位マルチコアファイバを軸回りに回転させないで融着接続し、これらの単位マルチコアファイバが縦列接続して構成されたマルチコアファイバを作製した。そして作製したマルチコアファイバの群遅延を測定した。
【0055】
図7は、比較例のマルチコアファイバにおける累積群遅延を示す図である。ここで、累積群遅延とは、長手方向で累積する群遅延を意味する。なお、横軸の区間は、単位マルチコアファイバに対応しており、区間1に相当する単位マルチコアファイバから試験光を入力している。区間6における累積群遅延が全長での群遅延に相当する。また、「Core1 LP01」とは、Core1におけるLP01モードの累積群遅延である。「LP11−LP01」とは、異なるコア部間での累積の群遅延差の最大値である。また、波長は1550nmである。
図7に示すように、比較例のマルチコアファイバでは、LP11−LP01モード間のDMDの累積値(全長でのコア部の間の群遅延差の最大値)の絶対値が6000ps(6ns)より大きく、きわめて大きい値となった。
【0056】
つぎに、実施例1として、元マルチコアファイバを1km毎に切断して作製した6本の単位マルチコアファイバを1本目から6本目まで軸回りかつ時計回りに60°ずつ回転させて融着接続し、これらの単位マルチコアファイバが縦列接続して構成されたマルチコアファイバを作製した。このマルチコアファイバでは、1本目から6本目までの単位マルチコアファイバのコア部が、区間1から区間6までたとえばCore1→Core2→Core3→Core4→Core5→Core6のように接続される。そして作製したマルチコアファイバの群遅延を測定した。
【0057】
図8は、実施例1のマルチコアファイバにおける累積群遅延を示す図である。波長は1550nmである。
図8に示すように、実施例1のマルチコアファイバでは、LP11−LP01モード間のDMDの累積値の絶対値が2500ps(2.5ns)以下となり、比較例と比べて大きく低減した。すなわち、実施例1では、全長でのマルチコアファイバのコア部の間の群遅延差の最大値は、比較例のマルチコアファイバのコア部の間の群遅延差の最大値(各単位マルチコアファイバのコア部の間の群遅延差の最大値を実施例1のマルチコアファイバの長さにおける値に換算した値に相当)よりも小さくなった。
【0058】
つぎに、実施例2として、元マルチコアファイバを1km毎に切断して作製した6本の単位マルチコアファイバのうち1本目に対して2本目を軸回りかつ時計回りにまず180°回転させて融着接続し、2本目に対して3本目を240°回転させて融着接続し、3本目に対して4本目を180°回転させて融着接続し、4本目に対して5本目を240°回転させて融着接続し、5本目に対して6本目を180°回転させて融着接続し、これらの単位マルチコアファイバが縦列接続して構成されたマルチコアファイバを作製した。このマルチコアファイバでは、1本目から6本目までの単位マルチコアファイバのコア部が、区間1から区間6までたとえばCore1→Core4→Core2→Core5→Core3→Core6のように接続される。そして作製したマルチコアファイバの群遅延を測定した。
【0059】
図9は、実施例2のマルチコアファイバにおける累積群遅延を示す図である。波長は1550nmである。
図9に示すように、実施例2のマルチコアファイバでは、LP11−LP01モード間のDMDの累積値の絶対値が2500ps(2.5ns)以下となり、比較例と比べて大きく低減した。
【0060】
つぎに、実施例3として、元マルチコアファイバを1km毎に切断して作製した6本の単位マルチコアファイバのうち1本目に対して2本目を長手方向で反転させて融着接続し、2本目に対して3本目を、1本目を基準とすると軸回りかつ時計回りに240°回転させて融着接続し、3本目に対して4本目を長手方向で反転させ、さらに1本目を基準とすると120°回転させて融着接続し、4本目に対して5本目を、1本目を基準とすると120°回転させて融着接続し、5本目に対して6本目を長手方向で反転させ、さらに1本目を基準とすると240°回転させて融着接続し、これらの単位マルチコアファイバが縦列接続して構成されたマルチコアファイバを作製した。このマルチコアファイバでは、1本目から6本目までの単位マルチコアファイバのコア部が、たとえばCore1→Core6(反転)→Core5→Core4(反転)→Core3→Core2(反転)のように接続される。このように、単位マルチコアファイバを接続する場合に、軸回りの回転だけでなく、長手方向で反転させることを行ってもよい。これにより、軸回りの回転だけでは実現されないコア部同士の接続の組み合わせを実現できる。そして、作製したマルチコアファイバの群遅延を測定した。
【0061】
図10は、実施例3のマルチコアファイバにおける累積群遅延を示す図である。波長は1550nmである。
図10に示すように、実施例3のマルチコアファイバでは、LP11−LP01モード間のDMDの累積値の絶対値が2500ps(2.5ns)以下となり、比較例と比べて大きく低減した。
【0062】
つぎに、実施例4として、元マルチコアファイバを2km毎に切断して作製した3本の単位マルチコアファイバのうち1本目に対して2本目を長手方向で反転させて融着接続し、2本目に対して3本目を、1本目を基準とすると軸回りかつ時計回りに240°回転させて融着接続し、これらの単位マルチコアファイバが縦列接続して構成されたマルチコアファイバを作製した。このマルチコアファイバでは、1本目から3本目までの単位マルチコアファイバのコア部が、たとえばCore1→Core6(反転)→Core5のように接続される。そして作製したマルチコアファイバの群遅延を測定した。
【0063】
図11は、実施例4のマルチコアファイバにおける累積群遅延を示す図である。波長は1550nmである。
図11に示すように、実施例4のマルチコアファイバでは、LP11−LP01モード間のDMDの累積値の絶対値が4000ps(4ns)以下となり、比較例と比べて大きく低減した。
【0064】
つぎに、実施例5として、元マルチコアファイバを3km毎に切断して作製した2本の単位マルチコアファイバのうち1本目に対して2本目を軸回りかつ時計回りに60°回転させて融着接続し、これらの単位マルチコアファイバが縦列接続して構成されたマルチコアファイバを作製した。このマルチコアファイバでは、1本目から2本目までの単位マルチコアファイバのコア部が、たとえばCore1→Core2のように接続される。そして作製したマルチコアファイバの群遅延を測定した。
【0065】
図12は、実施例5のマルチコアファイバにおける累積群遅延を示す図である。波長は1550nmである。
図12に示すように、実施例5のマルチコアファイバでは、LP11−LP01モード間のDMDの累積値の絶対値が4000ps(4ns)以下となり、比較例と比べて大きく低減した。
【0066】
つぎに、実施例6として、元マルチコアファイバを3km毎に切断して作製した2本の単位マルチコアファイバのうち1本目に対して2本目を長手方向で反転させて融着接続し、これらの単位マルチコアファイバが縦列接続して構成されたマルチコアファイバを作製した。このマルチコアファイバでは、1本目から2本目までの単位マルチコアファイバのコア部が、たとえばCore1→Core6(反転)のように接続される。そして作製したマルチコアファイバの群遅延を測定した。
【0067】
図13は、実施例6のマルチコアファイバにおける累積群遅延を示す図である。波長は1550nmである。
図13に示すように、実施例6のマルチコアファイバでは、LP11−LP01モード間のDMDの累積値の絶対値が4000ps(4ns)以下となり、比較例と比べて大きく低減した。
【0068】
上記実施例が示すように、回転または反転をしての接続は、少なくとも1箇所行うのみでも、比較例に対して効果があるが、2箇所以上行うことが好ましい。また、実施例1〜3のように、マルチコアファイバのコア部が、Core1〜Core6の全てのコア部を含むように構成すれば、DMDの累積値はより低減されるので好ましい。
【0069】
上記実施の形態1に係るマルチコアファイバ10は、6つのコア部が、クラッド部の中心軸から等距離の位置に等角度で配置されており、中心軸を中心とした円を形成するように配置されているものであるが、コア部の数や配置はこれに限定されない。また、元マルチコアファイバを複数の単位マルチコアファイバに切断した後に、必ずしも全ての単位マルチコアファイバを回転または反転して接続しなくてもよい。すなわち、切断後、所望の群遅延差を実現するために回転または反転をさせるべき、またはさせたほうがよい単位マルチコアファイバのみを回転または反転させた後に接続し、回転または反転を特にさせなくてもよい単位マルチコアファイバ同士は回転または反転させずにそのまま接続するようにしてもよい。たとえば、実施例4では、元マルチコアファイバを2km毎に切断して3本の単位マルチコアファイバを作製し、これらを回転または反転させて接続してマルチコアファイバとしているが、このマルチコアファイバは、元マルチコアファイバを1km毎に切断して作製した6本の単位マルチコアファイバを作製した後、連続する2本ずつの単位マルチコアファイバは回転または反転させずに接続して3本の単位マルチコアファイバとし、これらを実施例4のように回転または反転させて接続したマルチコアファイバと略等価である。
【0070】
また、実用上の利便性の観点から、必ずしも全ての単位マルチコアファイバを回転または反転して接続しないことも許容される。たとえば、元マルチコアファイバを複数の単位マルチコアファイバに切断した後に、両端の単位マルチコアファイバを相対的に回転または反転して接続しない構成は、実用上の利便性の観点から好ましい。両端の単位マルチコアファイバを相対的に回転または反転して接続しない構成とは、複数の単位マルチコアファイバを、一端の単位マルチコアファイバのCore1→{回転または反転のコア}→多端のマルチコアファイバのCore1のように接続する構成である。このような構成では、たとえばCore1に入射した信号光が他端のCore1から出射するという、コア部のID番号(Core1〜Core6)とコア部に割り当てる信号光のチャネル(ch)との関係が両端(入射側と出射側)で維持される。具体的には、一端のCore1からch1の信号光を入射するとch1の信号光は他端のCore1から出射される。したがって、両端の単位マルチコアファイバを相対的に回転または反転して接続しない構成では、利用者における混乱が少ないという利点があると共に、両端以外の単位マルチコアファイバを回転または反転して接続することによって、DMDの累積値を低減することができるという効果は維持される。なお、両端の単位マルチコアファイバを相対的に回転または反転して接続しない構成は、たとえば
図2Bに示したマルチコアファイバ10において、単位マルチコアファイバ11を基準にして回転および反転させずに、単位マルチコアファイバ16を単位マルチコアファイバ15に接続することによって実現することができる。なお、実施例1の構成のみならず、他の実施例2〜4についても、同様の変形を行うことによって、両端の単位マルチコアファイバを相対的に回転または反転して接続しない構成を容易に実現することができる。
【0071】
(実施の形態2)
図14は、実施の形態2に係るマルチコアファイバの構成を説明する図である。
図14に示すように、本実施の形態2に係るマルチコアファイバ20は、18個のコア部と、これらのコア部の外周に形成された、各コア部の最大屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド部20dとを備えている。コア部は三角格子を形成するように配置されている。さらに、6個のコア部20a1、20a2、20a3、20a4、20a5、20a6は、クラッド部20dの中心軸O2を中心とした正六角形を形成するように配置されている。また、12個のコア部20b1、20b2、20b3、20b4、20b5、20b6、20c1、20c2、20c3、20c4、20c5、20c6は、中心軸O2を中心とし、かつ6個のコア部20a1〜20a6が形成する正六角形よりも大きい同心の正六角形を形成するように配置されている。なお、各コア部の構成および材質は実施の形態1に係るマルチコアファイバ10のコア部10a〜10fと同じでもよい。
【0072】
このマルチコアファイバ20は、複数の単位マルチコアファイバが縦列接続されて構成されている。単位マルチコアファイバは、連続して線引きし作製された、マルチコアファイバ20と略同じ長さまたはそれ以上の長さの元マルチコアファイバを同じ長さに切断して作製したものであり、マルチコアファイバ20と同様の構成を有している。マルチコアファイバ20は、元マルチコアファイバを切断して作製した単位マルチコアファイバを軸回りに60°ずつ回転させて融着接続することにより構成されている。
【0073】
ここで、上記各単位マルチコアファイバのコア部は、いずれも略同一の屈折率プロファイルを有しており、略同一の光学特性を有するが、完全に同一ではないため、同一の単位マルチコアファイバのコア部の間で同一の波長、同一の伝搬モードにおいて互いに異なる群遅延を有する。さらには、コア部の間で同一の波長の異なる伝搬モード間の群遅延差も、互いに異なる。
【0074】
これに対して、本実施の形態2に係るマルチコアファイバ20は、上記のように接続した構成とすることで、コア部の間の群遅延差が、単位マルチコアファイバをマルチコアファイバ20に相当する長さだけ伝搬する場合の値よりも小さくなる。その結果、コア部の間の群遅延差の最大値が、各単位マルチコアファイバのコア部の間の群遅延差の最大値をマルチコアファイバ20の長さにおける値に換算した値よりも小さくなる。
【0075】
なお、
図14に示すように、たとえばコア部20a1を中心軸O2の回りに矢印A11のように60°回転させてコア部20a2の位置にする場合、これに伴ってコア部20b1は中心軸O2の回りに矢印A12のように60°回転させてコア部20b2の位置となり、コア部20c1は中心軸O2の回りに矢印A13のように60°回転させてコア部20c2の位置となる。すなわち、このマルチコアファイバ20のコア部の配置では、コア部は、コア部20a1〜20a6が構成する群、コア部20b1〜20b6が構成する群、およびコア部20c1〜20c6が構成する群の3つの群からなる。各単位マルチコアファイバについても、コア部は、コア部20a1〜20a6に相当する位置にあるコア部が構成する群、コア部20b1〜20b6に相当する位置にあるコア部が構成する群、およびコア部20c1〜20c6に相当する位置にあるコア部が構成する群の3つの群からなる。単位マルチコアファイバの各群内のコア部は60°毎の回転により互いに接続できるので、各単位マルチコアファイバ間でのこれらの3つの群内のコア部の接続により、マルチコアファイバ20のコア部の間の群遅延差の最大値を減少させることができる。
【0076】
(実施の形態3)
図15は、実施の形態3に係るマルチコアファイバの構成を説明する図である。
図15に示すように、本実施の形態3に係るマルチコアファイバ30は、18個のコア部と、これらのコア部の外周に形成された、各コア部の最大屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド部30dとを備えている。コア部のうち、6個のコア部30a1、30a2、30a3、30a4、30a5、30a6は、クラッド部30dの中心軸O3から等距離の位置に等角度で配置されており、中心軸O3を中心とした円を形成するように配置されている。また、コア部のうち、12個のコア部30b1、30b2、30b3、30b4、30b5、30b6、30c1、30c2、30c3、30c4、30c5、30c6は、中心軸O3から等距離の位置に等角度で配置されており、中心軸O3を中心とし、かつ6個のコア部30a1〜30a6が形成する円よりも半径が大きい同心の円を形成するように配置されている。なお、各コア部の構成および材質は実施の形態1に係るマルチコアファイバ10のコア部10a〜10fと同じでもよい。
【0077】
このマルチコアファイバ30は、複数の単位マルチコアファイバが縦列接続されて構成されている。単位マルチコアファイバは、連続して線引きし作製された、マルチコアファイバ30と略同じ長さまたはそれ以上の長さの元マルチコアファイバを同じ長さに切断して作製したものであり、マルチコアファイバ30と同様の構成を有している。マルチコアファイバ30は、元マルチコアファイバを切断して作製した単位マルチコアファイバを軸回りに60°ずつ回転させて融着接続することにより構成されている。
【0078】
ここで、各単位マルチコアファイバのコア部は、いずれも略同一の屈折率プロファイルを有しており、略同一の光学特性を有するが、完全に同一ではないため、同一の単位マルチコアファイバのコア部の間で同一の波長、同一の伝搬モードにおいて互いに異なる群遅延を有する。さらには、コア部の間で同一の波長の異なる伝搬モード間の群遅延差も、互いに異なる。
【0079】
これに対して、本実施の形態3に係るマルチコアファイバ30は、上記のように接続した構成とすることで、コア部の間の群遅延差が、単位マルチコアファイバをマルチコアファイバ30に相当する長さだけ伝搬する場合の値よりも小さくなる。その結果、コア部の間の群遅延差の最大値が、各単位マルチコアファイバのコア部の間の群遅延差の最大値をマルチコアファイバ30の長さにおける値に換算した値よりも小さくなる。
【0080】
なお、
図15に示すように、たとえばコア部30a1を中心軸O3の回りに矢印A21のように60°回転させてコア部30a2の位置にする場合、これに伴ってコア部30b1は中心軸O3の回りに矢印A22のように60°回転してコア部30b2の位置となり、コア部30c1は中心軸O3の回りに矢印A23のように60°回転してコア部30c2の位置となる。すなわち、このマルチコアファイバ30のコア部の配置では、コア部は、コア部30a1〜30a6が構成する群、コア部30b1〜30b6が構成する群、およびコア部30c1〜30c6が構成する群の3つの群からなる。各単位マルチコアファイバについても、コア部は、コア部30a1〜30a6に相当する位置にあるコア部が構成する群、コア部30b1〜30b6に相当する位置にあるコア部が構成する群、およびコア部30c1〜30c6に相当する位置にあるコア部が構成する群の3つの群からなる。単位マルチコアファイバの各群内のコア部は60°毎の回転により互いに接続できるので、単位マルチコアファイバ間でのこれらの3つの群内のコア部の接続により、マルチコアファイバ30のコア部の間の群遅延差の最大値を減少させることができる。
【0081】
(実施の形態4)
図16は、実施の形態4に係るマルチコアファイバの構成を説明する図である。
図16に示すように、本実施の形態4に係るマルチコアファイバ40は、18個のコア部と、これらのコア部の外周に形成された、各コア部の最大屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド部40dとを備えている。コア部のうち、6個のコア部40a1、40a2、40a3、40a4、40a5、40a6は、クラッド部40dの中心軸O4から等距離の位置に等角度で配置されており、中心軸O4を中心とした円を形成するように配置されている。また、コア部のうち、12個のコア部40b1、40b2、40b3、40b4、40b5、40b6、40c1、40c2、40c3、40c4、40c5、40c6は、中心軸O4から等距離の位置に等角度で配置されており、中心軸O4を中心とし、かつ6個のコア部40a1〜40a6が形成する円よりも半径が大きい円を形成するように配置されている。なお、各コア部の構成および材質は実施の形態1に係るマルチコアファイバ10のコア部10a〜10fと同じでもよい。
【0082】
このマルチコアファイバ40は、複数の単位マルチコアファイバが縦列接続されて構成されている。単位マルチコアファイバは、連続して線引きし作製された、マルチコアファイバ40と略同じ長さまたはそれ以上の長さの元マルチコアファイバを同じ長さに切断して作製したものであり、マルチコアファイバ40と同様の構成を有している。マルチコアファイバ40は、元マルチコアファイバを切断して作製した単位マルチコアファイバを軸回りに60°ずつ回転させて融着接続することにより構成されている。
【0083】
このマルチコアファイバ40と実施の形態3に係るマルチコアファイバ30との違いは、マルチコアファイバ30では、たとえば中心軸O3とコア部30b1とを結ぶ線上にコア部30a1が存在するが、マルチコアファイバ40では、たとえば中心軸O4とコア部40b1とを結ぶ線上からずれてコア部40a1が存在する点であり、その他の構成は同じある。したがって、本実施の形態4に係るマルチコアファイバ40も、コア部の間の群遅延差の最大値が、各単位マルチコアファイバのコア部の間の群遅延差の最大値をマルチコアファイバ40の長さにおける値に換算した値よりも小さくなる。
【0084】
また、
図16に示すように、たとえばコア部40a1を中心軸O4の回りに矢印A31のように60°回転させてコア部40a2の位置にする場合、これに伴ってコア部40b1は中心軸O4の回りに矢印A32のように60°回転してコア部40b2の位置となり、コア部40c1は中心軸O4の回りに矢印A33のように60°回転してコア部40c2の位置となる。すなわち、このマルチコアファイバ40のコア部の配置では、コア部は、コア部40a1〜40a6が構成する群、コア部40b1〜40b6が構成する群、およびコア部40c1〜40c6が構成する群の3つの群からなる。各単位マルチコアファイバについても、コア部は、コア部40a1〜40a6に相当する位置にあるコア部が構成する群、コア部40b1〜40b6に相当する位置にあるコア部が構成する群、およびコア部40c1〜40c6に相当する位置にあるコア部が構成する群の3つの群からなる。単位マルチコアファイバの各群内のコア部は60°毎の回転により互いに接続できるので、単位マルチコアファイバ間でのこれらの3つの群内のコア部の接続により、マルチコアファイバ40のコア部の間の群遅延差の最大値を減少させることができる。
【0085】
(実施の形態5)
図17は、実施の形態5に係るマルチコアファイバの構成を説明する図である。
図17に示すように、本実施の形態5に係るマルチコアファイバ50は、12個のコア部50a、50b、50c、50d、50e、50f、50g、50h、50i、50j、50k、50lと、これらのコア部の外周に形成された、各コア部の最大屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド部50mとを備えている。コア部50a〜50lは、クラッド部50mの中心軸O5から等距離の位置に等角度で配置されており、中心軸O5を中心とした円を形成するように配置されている。なお、各コア部の構成および材質は実施の形態1に係るマルチコアファイバ10のコア部10a〜10fと同じでもよい。
【0086】
このマルチコアファイバ50は、複数の単位マルチコアファイバが縦列接続されて構成されている。単位マルチコアファイバは、連続して線引きし作製された、マルチコアファイバ50と略同じ長さまたはそれ以上の長さの元マルチコアファイバを同じ長さに切断して作製したものであり、マルチコアファイバ50と同様の構成を有している。各単位マルチコアファイバのコア部は、いずれも略同一の屈折率プロファイルを有しており、略同一の光学特性を有するが、完全に同一ではない。マルチコアファイバ50は、元マルチコアファイバを切断して作製した単位マルチコアファイバを軸回りに30°ずつ回転させて融着接続することにより構成されている。
【0087】
本実施の形態5に係るマルチコアファイバ50は、上記のように接続した構成とすることで、コア部の間の群遅延差が、単位マルチコアファイバをマルチコアファイバ50に相当する長さだけ伝搬する場合の値よりも小さくなる。その結果、コア部の間の群遅延差の最大値が、各単位マルチコアファイバのコア部の間の群遅延差の最大値をマルチコアファイバ50の長さにおける値に換算した値よりも小さくなる。
【0088】
なお、
図17に示すように、コア部50a〜50lは12回回転対称に配置されている。各単位マルチコアファイバのコア部も12回回転対称に配置されている。したがって、単位マルチコアファイバのコア部は中心軸O5の回りの矢印A5のような30°毎の回転により互いに接続できるので、単位マルチコアファイバ間でのこれらの12個のコア部の接続により、マルチコアファイバ50のコア部の間の群遅延差の最大値を減少させることができる。
【0089】
(実施の形態6)
図18は、実施の形態6に係るマルチコアファイバの構成を説明する図である。
図18に示すように、本実施の形態6に係るマルチコアファイバ60は、4個のコア部60a、60b、60c、60dと、これらのコア部の外周に形成された、各コア部の最大屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド部60eとを備えている。コア部60a〜60dは、クラッド部60eの中心軸O6から等距離の位置に等角度で配置されており、中心軸O6を中心とした円または正方形を形成するように配置されている。なお、各コア部の構成および材質は実施の形態1に係るマルチコアファイバ10のコア部10a〜10fと同じでもよい。
【0090】
このマルチコアファイバ60は、複数の単位マルチコアファイバが縦列接続されて構成されている。単位マルチコアファイバは、連続して線引きし作製された、マルチコアファイバ60と略同じ長さまたはそれ以上の長さの元マルチコアファイバを同じ長さに切断して作製したものであり、マルチコアファイバ60と同様の構成を有している。各単位マルチコアファイバのコア部は、いずれも略同一の屈折率プロファイルを有しており、略同一の光学特性を有するが、完全に同一ではない。マルチコアファイバ60は、元マルチコアファイバを切断して作製した単位マルチコアファイバを軸回りに90°ずつ回転させて融着接続することにより構成されている。
【0091】
本実施の形態6に係るマルチコアファイバ60は、上記のように接続した構成とすることで、コア部の間の群遅延差が、単位マルチコアファイバをマルチコアファイバ60に相当する長さだけ伝搬する場合の値よりも小さくなる。その結果、コア部の間の群遅延差の最大値が、各単位マルチコアファイバのコア部の間の群遅延差の最大値をマルチコアファイバ60の長さにおける値に換算した値よりも小さくなる。
【0092】
なお、
図18に示すように、コア部60a〜60dは4回回転対称に配置されている。各単位マルチコアファイバのコア部も4回回転対称に配置されている。したがって、単位マルチコアファイバのコア部は中心軸O6の回りの矢印A6のような90°毎の回転により互いに接続できるので、単位マルチコアファイバ間でのこれらの4個のコア部の接続により、マルチコアファイバ60のコア部の間の群遅延差の最大値を減少させることができる。
【0093】
(実施の形態7)
図19は、実施の形態7に係るマルチコアファイバの構成を説明する図である。
図19に示すように、本実施の形態7に係るマルチコアファイバ70は、8個のコア部と、これらのコア部の外周に形成された、各コア部の最大屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド部70eとを備えている。コア部のうち、コア部70a1、70a2は、クラッド部70eの中心軸O7から等距離の位置に中心軸O7を挟むように配置されている。同様に、コア部70b1、70b2、コア部70c1、70c2、コア部70d1、70d2も、それぞれクラッド部70eの中心軸O7から等距離の位置に中心軸O7を挟むように配置されている。さらに、コア部70a1、70b1、70c1、70d1、およびコア部70a2、70b2、70c2、70d2は、中心軸O7を挟んでそれぞれ直線状に配置されている。なお、各コア部の構成および材質は実施の形態1に係るマルチコアファイバ10のコア部10a〜10fと同じでもよい。
【0094】
このマルチコアファイバ70は、複数の単位マルチコアファイバが縦列接続されて構成されている。単位マルチコアファイバは、連続して線引きし作製された、マルチコアファイバ70と略同じ長さまたはそれ以上の長さの元マルチコアファイバを同じ長さに切断して作製したものであり、マルチコアファイバ70と同様の構成を有している。各単位マルチコアファイバのコア部は、いずれも略同一の屈折率プロファイルを有しており、略同一の光学特性を有するが、完全に同一ではない。マルチコアファイバ70は、元マルチコアファイバを切断して作製した単位マルチコアファイバを軸回りに180°ずつ回転させて融着接続することにより構成されている。
【0095】
本実施の形態7に係るマルチコアファイバ70は、上記のように接続した構成とすることで、コア部の間の群遅延差が、単位マルチコアファイバをマルチコアファイバ70に相当する長さだけ伝搬する場合の値よりも小さくなる。その結果、コア部の間の群遅延差の最大値が、各単位マルチコアファイバのコア部の間の群遅延差の最大値をマルチコアファイバ70の長さにおける値に換算した値よりも小さくなる。
【0096】
また、
図19に示すように、たとえばコア部70a1を中心軸O7の回りに矢印A71のように180°回転させてコア部70a2の位置にする場合、これに伴ってコア部70b1は中心軸O7の回りに矢印A72のように180°回転してコア部70b2の位置となり、コア部70c1は中心軸O7の回りに矢印A73のように180°回転してコア部70c2の位置となり、コア部70d1は中心軸O7の回りに矢印A74のように180°回転してコア部70d2の位置となる。すなわち、このマルチコアファイバ70のコア部の配置では、コア部は、コア部70a1、70a2が構成する群、コア部70b1、70b2が構成する群、コア部70c1、70c2が構成する群、およびコア部70d1、70d2が構成する群の4つの群からなる。各単位マルチコアファイバについても、コア部は、それぞれの群に相当するコア部の群からなる。単位マルチコアファイバの各群内のコア部は180°毎の回転により互いに接続できるので、単位マルチコアファイバの間でのこれらの4つの群内のコア部の接続により、マルチコアファイバ70のコア部の間の群遅延差の最大値を減少させることができる。
【0097】
(実施の形態8)
図20は、実施の形態8に係るマルチコアファイバの構成を説明する図である。
図20に示すように、本実施の形態8に係るマルチコアファイバ80は、16個のコア部と、これらのコア部の外周に形成された、各コア部の最大屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド部80eとを備えている。コア部は正方格子を形成するように配置されている。さらに、4個のコア部80a1、80a2、80a3、80a4は、クラッド部80eの中心軸O8を中心とした正方形を形成するように配置されている。また、12個のコア部80b1、80b2、80b3、80b4、80c1、80c2、80c3、80c4、80d1、80d2、80d3、80d4は、中心軸O8を中心とし、かつコア部80a1〜80a4が形成する正方形よりも大きい同心の正方形を形成するように配置されている。なお、各コア部の構成および材質は実施の形態1に係るマルチコアファイバ10のコア部10a〜10fと同じでもよい。
【0098】
このマルチコアファイバ80は、複数の単位マルチコアファイバが縦列接続されて構成されている。単位マルチコアファイバは、連続して線引きし作製された、マルチコアファイバ80と略同じ長さまたはそれ以上の長さの元マルチコアファイバを同じ長さに切断して作製したものであり、マルチコアファイバ80と同様の構成を有している。各単位マルチコアファイバのコア部は、いずれも略同一の屈折率プロファイルを有しており、略同一の光学特性を有するが、完全に同一ではない。マルチコアファイバ80は、元マルチコアファイバを切断して作製した単位マルチコアファイバを軸回りに90°ずつ回転させて融着接続することにより構成されている。
【0099】
本実施の形態8に係るマルチコアファイバ80は、上記のように接続した構成とすることで、コア部の間の群遅延差が、単位マルチコアファイバをマルチコアファイバ80に相当する長さだけ伝搬する場合の値よりも小さくなる。その結果、コア部の間の群遅延差の最大値が、各単位マルチコアファイバのコア部の間の群遅延差の最大値をマルチコアファイバ80の長さにおける値に換算した値よりも小さくなる。
【0100】
また、
図20に示すように、たとえばコア部80a1を中心軸O8の回りに矢印A81のように90°回転させてコア部80a2の位置にする場合、これに伴ってコア部80b1は中心軸O8の回りに矢印A82のように90°回転してコア部80b2の位置となり、コア部80c1は中心軸O8の回りに矢印A83のように90°回転してコア部80c2の位置となり、コア部80d1は中心軸O8の回りに矢印A84のように90°回転してコア部80d2の位置となる。すなわち、このマルチコアファイバ80のコア部の配置では、コア部は、コア部80a1〜80a4が構成する群、コア部80b1〜80b4が構成する群、コア部80c1〜80c4が構成する群、およびコア部80d1〜80d4が構成する群の4つの群からなる。各単位マルチコアファイバについても、コア部は、それぞれの群に相当するコア部の群からなる。単位マルチコアファイバの各群内のコア部は90°毎の回転により互いに接続できるので、単位マルチコアファイバの間でのこれらの4つの群内のコア部の接続により、マルチコアファイバ80のコア部の間の群遅延差の最大値を減少させることができる。
【0101】
なお、上記実施の形態2〜8では、各単位マルチコアファイバのコア部が、いずれも略同一の屈折率プロファイルを有しており、略同一の光学特性を有しているが、たとえば各単位マルチコアファイバのコア部は、各群の中では、略同一の屈折率プロファイルを有しており、略同一の光学特性を有するようにし、群間では屈折率プロファイルは略同一でないようにしてもよい。
【0102】
また、上記実施の形態では、単位マルチコアファイバは、連続して線引きし作製された元マルチコアファイバを同じ長さに切断して作製したものであるが、別々に線引きしたものや、単位マルチコアファイバ毎に異なる長さであってもよい。また、単位マルチコアファイバのコア部同士の接続については、予め各単位マルチコアファイバのコア部の群遅延を測定しておき、測定値を元にコア部間の群遅延差が小さくなるように単位マルチコアファイバの回転または反転を組み合わせて接続することが好ましい。
【0103】
また、上記実施の形態では、マルチコアファイバは、入力される光の波長においてLP01モードとLP11モードの2つの伝搬モードが存在するように屈折率プロファイルが設定されているものである。1.55μm帯の波長においてLP01モードとLP11モードの2つの伝搬モードが存在するように設定されたトレンチ型の屈折率プロファイルの設計パラメータについては、上記実施例の設計パラメータ(Δ1:0.82%、α:2、Δ2:0%、Δ3:−0.46%、a1:7.3μm、a2:9.1μm、a3:13.4μm、:Λ:30μm、クラッド径が125μm)に限られない。たとえば、設計パラメータは、Δ1は0.2%〜1.6%、Δ2は0%近傍のたとえば−0.03%〜0.03%、Δ3は−0.2%〜−0.7%、a1は4μm〜12.5μm、a2はa1との比(a2/a1=Ra2)で表して1〜3、a3はa1との比(a3/a1=Ra3)で表して2〜4の各範囲内で、上記2つの伝搬モードが存在するような組み合わせとしてもよい。なお、α、コアピッチについては特に限定はされない。また、Δ2を有する領域がなくRa2が1の場合は、W型の屈折率プロファイルとも呼ばれる。
【0104】
表4は、トレンチ型の屈折率プロファイルにおける上記範囲の設計パラメータ、および所定のα、コアピッチの場合について、波長1550nmにおける、LP01モードとLP11モードのAeff、neff、群遅延、およびDMDを示す表である。なお、表4でαが「step」とは、αが20以上であり、中心コア部がステップインデックス型の屈折率プロファイルを有するとみなすことができることを意味する。表4に示すようなパラメータを有する元マルチコアファイバの場合も、各コア部の屈折率プロファイルが略同一である場合に、上記実施例のように切断、回転または反転、接続を適切に行うことにより、コア部間の群遅延差を小さくすることができる。
【0106】
また、入力される光の波長において上記2つの伝搬モードが存在するような屈折率プロファイルとしては、トレンチ型の屈折率プロファイルにおいてΔ2、Δ3を有する領域がなくRa2=Ra3=1とした単峰型の屈折率プロファイルがある。1.55μm帯の波長において上記2つの伝搬モードが存在するように設定された単峰型の屈折率プロファイルの設計パラメータについては、Δ1が0.2%〜1.6%、a1が3.5μm〜10.0μmの各範囲内で、上記2つの伝搬モードが存在するような組み合わせとすることができる。なお、α、コアピッチについては特に限定はされない。
【0107】
表5は、単峰型の屈折率プロファイルにおける上記範囲の設計パラメータ、および所定のα、コアピッチの場合について、波長1550nmにおける、LP01モードとLP11モードのAeff、neff、群遅延、およびDMDを示す表である。表5に示すようなパラメータを有する元マルチコアファイバの場合も、各コア部の屈折率プロファイルが略同一である場合に、上記実施例のように切断、回転または反転、接続を適切に行うことにより、コア部間の群遅延差を小さくすることができる。
【0109】
また、上記実施の形態では、マルチコアファイバは、上記2つの伝搬モードが存在するように屈折率プロファイルが設定されているものであるが、伝搬モードの数は特に限定されず、より多くてもよい。また、本発明は、たとえば入力される光の波長において単一の伝搬モードが存在するように屈折率プロファイルが設定されたコア部を有するシングルモードのマルチコアファイバにも適用できる。この場合、群遅延差は、単一の伝搬モードにおける各コア部の間での群遅延差である。たとえば、シングルモードのマルチコアファイバの場合、コアピッチが小さくクロストークが起こりやすい場合においてMIMO処理にてクロストークを補償する場合に、本発明に係るマルチコアファイバを適用してMIMO処理の負荷を低減することができる。
【0110】
1.55μm帯の波長において単一の伝搬モードが存在するように設定されたトレンチ型の屈折率プロファイルの設計パラメータについては、Δ1は0.2%〜1.2%、Δ2は0%近傍のたとえば−0.05%〜0.05%、Δ3は−0.2%〜−0.7%、a1は2.5μm〜7.0μm、a2はa1との比(a2/a1=Ra2)で表して1〜3、a3はa1との比(a3/a1=Ra3)で表して2〜5の各範囲内で、単一の伝搬モードが存在するような組み合わせとすることができる。なお、α、コアピッチについては特に限定はされない。また、Δ2を有する領域がなくRa2が1の場合は、W型の屈折率プロファイルとも呼ばれる。
【0111】
表6は、トレンチ型の屈折率プロファイルにおける上記範囲の設計パラメータ、および所定のα、コアピッチの場合について、波長1550nmにおけるAeffおよび群遅延、ならびにカットオフ波長を示す表である。表6に示すようなパラメータを有する元マルチコアファイバの場合も、各コア部の屈折率プロファイルが略同一である場合に、上記実施例のように切断、回転または反転、接続を適切に行うことにより、コア部間の群遅延差を小さくすることができる。
【0113】
1.55μm帯の波長において単一の伝搬モードが存在するように設定された単峰型の屈折率プロファイルの設計パラメータについては、Δ1が0.2%〜1.5%、a1が1.5μm〜6.0μmの各範囲内で、単一の伝搬モードが存在するような組み合わせとしてもよい。なお、α、コアピッチについては特に限定はされない。
【0114】
表7は、単峰型の屈折率プロファイルにおける上記範囲の設計パラメータ、および所定のα、コアピッチの場合について、波長1550nmにおけるAeffおよび群遅延、ならびにカットオフ波長を示す表である。表7に示すようなパラメータを有する元マルチコアファイバの場合も、各コア部の屈折率プロファイルが略同一である場合に、上記実施例のように切断、回転または反転、接続を適切に行うことにより、コア部間の群遅延差を小さくすることができる。
【0116】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。