(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、前述した様なスロットレスタイプの光ファイバケーブルにおいて、ケーブル中間部で中の光ファイバ心線を取り出すためには、引き裂き紐を用いてケーブル外被を切り裂く必要がある。この際、引き裂き紐をケーブル断面に対して垂直(引き裂き角度0°)に引き出せば問題とならないが、そうでない場合は、引き裂き紐が押さえ巻きの外周に沿って引き出され、押さえ巻きが損傷する場合がある。押さえ巻きが損傷すると、内部の光ファイバ心線が露出し、光ファイバ心線が損傷する恐れがある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、引き裂き紐の引き出し時に、押さえ巻き部材の損傷を防止することが可能な光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達するために第1の発明は、光ファイバケーブルであって、複数の光ファイバ心線と、複数の前記光ファイバ心線の外周に
直接縦添え巻きされ
、複数の前記光ファイバ心線を一括して束ねる押さえ巻き部材と、前記光ファイバ心線の長手方向に垂直な断面において、前記押さえ巻き部材を挟んで対向する位置に設けられる一対のテンションメンバと、前記光ファイバ心線の長手方向に垂直な断面において、前記テンションメンバの対向方向と略直交する方向に、前記押さえ巻き部材を挟んで対向するように設けられる一対の引き裂き紐と、前記テンションメンバ、前記引き裂き紐および前記押さえ巻き部材を覆うように設けられる外被と、を具備し、前記押さえ巻き部材の端部同士が重なり合うラップ部が、前記光ファイバ心線の長手方向に形成され、前記光ファイバ心線の長手方向に垂直な断面における周方向に対し、前記ラップ部は、一方の前記引き裂き紐と、一方の前記テンションメンバとの間に配置され、前記ラップ部の口あき方向が、前記一方のテンションメンバ側に向けられ、前記ラップ部の口あき部の位置は、前記一方の引き裂き紐の方向を0°とし、前記一方のテンションメンバの方向を90°とすると、15〜75°の範囲にあり、スロットレスタイプであることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0009】
第2の発明は、
複数の光ファイバ心線と、複数の前記光ファイバ心線の外周に縦添え巻きされる押さえ巻き部材と、前記光ファイバ心線の長手方向に垂直な断面において、前記押さえ巻き部材を挟んで対向する位置に設けられる一対のテンションメンバと、前記光ファイバ心線の長手方向に垂直な断面において、前記テンションメンバの対向方向と略直交する方向に、前記押さえ巻き部材を挟んで対向するように設けられる一対の引き裂き紐と、前記テンションメンバ、前記引き裂き紐および前記押さえ巻き部材を覆うように設けられる外被と、を具備し、前記押さえ巻き部材の端部同士が重なり合うラップ部が、前記光ファイバ心線の長手方向に形成され、前記光ファイバ心線の長手方向に垂直な断面における周方向に対し、前記ラップ部は、一方の前記引き裂き紐と、一方の前記テンションメンバとの間に配置され、前記ラップ部の口あき方向が、前記一方のテンションメンバ側に向けられ、前記ラップ部の口あき部の位置は、前記一方の引き裂き紐の方向を0°とし、前記一方のテンションメンバの方向を90°とすると、15〜75°の範囲にあり、スロットレスタイプである光ファイバケーブルの使用方法であって、前記一方の引き裂き紐を、前記一方の引き裂き紐を通る光ファイバケーブルの中心線に対して前記一方のテンションメンバがある方の外周側に引き出し、前記外被を前記中心線と異なる方向に引き裂いて使用することを特徴とする光ファイバケーブルの使用方法である。
【0010】
第1または第2の発明によれば、押さえ巻き部材の端部同士が重なり合うラップ部が、引き裂き紐とテンションメンバとの間に配置され、ラップ部の口あき方向が、テンションメンバ側に向けられるため、引き裂き紐が押さえ巻き部材の口あき部に入り込むことがなく、押さえ巻き部材の損傷を防止することができる。
【0011】
このような効果は、スロットレスタイプの光ファイバケーブルにおいて特に有効である。例えば、スロットレスタイプの光ファイバケーブルは、押さえ巻き部材の口あき部に、引き裂き紐が入り込みやすい。本発明では、このような場合でも、押さえ巻き部材の口あき部へ引き裂き紐が入り込むことを防止し、押さえ巻き部材の損傷を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、引き裂き紐の引き出し時に、押さえ巻き部材の損傷を防止することが可能な光ファイバケーブルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、光ファイバケーブル1を示す断面図である。光ファイバケーブル1は、スロットを用いないスロットレス型光ファイバケーブルであり、複数の光ファイバ心線3、押さえ巻き部材7、テンションメンバ9、引き裂き紐11、外被13等から構成される。なお、以下の説明において、複数の光ファイバ心線3の集合体を、単に光ファイバユニット5と称する。
【0015】
光ファイバユニット5の外周には、押さえ巻き部材7が設けられる。押さえ巻き部材7は、縦添え巻きによって複数の光ファイバユニット5を一括して覆うように配置される。すなわち、押さえ巻き部材7の長手方向が光ファイバケーブル1の軸方向と略一致し、押さえ巻き部材7の幅方向が光ファイバケーブル1の周方向となるように光ファイバユニット5の外周に縦添え巻きされる。
【0016】
押さえ巻き部材7の外周には、外被13が設けられる。外被13は、光ファイバケーブル1を被覆して保護するための層である。光ファイバケーブル1の長手方向に垂直な断面において、外被13の内部には、光ファイバユニット5を挟んで対向する位置に一対のテンションメンバ9が設けられる。また、テンションメンバ9の対向方向と略直交する方向に、押さえ巻き部材7を挟んで対向するように引き裂き紐11が設けられる。テンションメンバ9および引き裂き紐11は、外被13に埋設される。
【0017】
ここで、押さえ巻き部材7は、幅方向の端部が互いにラップし、ラップ部15が形成される。ラップ部15は、光ファイバケーブル1の長手方向に垂直な断面における周方向に対し、一方の引き裂き紐11(例えば図中上方の引き裂き紐11)と、一方のテンションメンバ9(例えば図中左側のテンションメンバ9)との間(図中Aの範囲)に配置される。
【0018】
なお、ラップ部15が、一方の引き裂き紐11と、一方のテンションメンバ9との間に配置されるとは、外周側に位置する押さえ巻き部材7の幅方向端面の位置が、前述した一方の引き裂き紐11と一方のテンションメンバ9との間に配置されることをいう。この場合、当該押さえ巻き部材7の幅方向端面の位置が、引き裂き紐11の直下(内周側)およびテンションメンバ9の直下(内周側)に位置することも含む。
【0019】
また、ラップ部15の口あき方向は、当該テンションメンバ9側に向けられる。ここで、ラップ部15の口あき方向とは、ラップ部15の外周側にラップする押さえ巻き部材7の端部が外周側に開く方向であって、外周側に位置する押さえ巻き部材7の幅方向端面が向く方向である。すなわち、ラップ部15は、一方の引き裂き紐11と、一方のテンションメンバ9との間に配置され、この際に、口あき方向が必ずテンションメンバ9側に向くように配置される。図に示す例では、ラップ部15が、上方の引き裂き紐11と左側のテンションメンバ9の間に位置し、口あき方向が左側のテンションメンバ9側に向くように配置される。
【0020】
次に、引き裂き紐11を引き出す工程について詳細に説明する。
図2(a)は、光ファイバケーブル1から引き裂き紐11を引き出す状態を示す斜視図であり、
図2(b)は、光ファイバケーブル1の長手方向に垂直な断面図である。
図2(a)、
図2(b)に示すように、本例では、引き裂き紐11が、光ファイバケーブル1の中心に対して、まっすぐに径方向の外周側に引き出される(図中C)。
【0021】
すなわち、引き裂き紐11が、引き裂き紐11を通る光ファイバケーブル1の中心線(図中D)と同一方向に、外周側に引き出される。なお、以下、この際の引き裂き紐11の引き出し角度を0°とする。
【0022】
図2(b)に示すように、引き裂き紐11は、外被13を引き裂きながら外部に引き出されるが、この際、引き裂き紐11は、他の構成(例えば押さえ巻き部材7)と接触することはない。したがって、引き裂き紐11の引き出し角度が0°であれば、問題なく引き裂き紐11を引き出すことができ、その後、内部の光ファイバ心線3の取り出しなどの分岐作業を行うことができる。
【0023】
図3は、同様に、光ファイバケーブル1から引き裂き紐11を引き出す状態を示す斜視図であり、
図4(a)は、光ファイバケーブル1の長手方向に垂直な断面図である。
図3、
図4(a)では、引き裂き紐11が、光ファイバケーブル1の中心に対して、所定の角度で径方向の外周側に引き出される。
【0024】
具体的には、
図4(a)に示すように、引き裂き紐11が、引き裂き紐11を通る光ファイバケーブル1の中心線(図中D)に対して角度Gの方向(図中F)の外周側に引き出される。なお、以下、この際の引き裂き紐11の引き出し角度をGとする。
【0025】
前述した様に、引き裂き紐11は、外被13を引き裂きながら外部に引き出されるが、この際、引き裂き紐11は、押さえ巻き部材7に沿って引き出される。具体的には、引き裂き紐11は、外被13と押さえ巻き部材7との隙間を通り(図中E)、テンションメンバ9の近傍から、外被13を引き裂きながら、径方向の外側に向かって引き出される(図中F)。
【0026】
なお、引き裂き紐11の引き出し角度は、最大で±90°となる。例えば、90°以上の角度で引き裂き紐11を引き出したとしても、テンションメンバ9によって、引き裂き紐11の引き出し方向が規制されるため、引き裂き紐11が押さえ巻き部材7の外周に沿って引き出される角度としては、最大でも90°となるためである。すなわち、引き裂き紐11の引き出し角度が±90°の場合に、引き裂き紐11が押さえ巻き部材7の外周面に沿って引き出される長さが最も長くなる。
【0027】
図4(b)は、引き裂き紐11を引き出し角度90°で引き出した際の、引き裂き紐11の引き出し状態を示す概念図である。なお、
図4(b)において、外被13およびテンションメンバ9等の構成については図示を省略する。
【0028】
図に示す例では、引き裂き紐11は、ラップ部15の上方に配置され、テンションメンバ9(図示せず)は、ラップ部15の下方に位置する。すなわち、引き裂き紐11とテンションメンバ9は、ラップ部15を挟んで配置される。
【0029】
まず、引き裂き紐11を引き出し角度90°で図示しないテンションメンバ9側に引き出すと、前述した様に、引き裂き紐11の一部が、押さえ巻き部材7に沿って引き出される(図中H1)。さらに、引き裂き紐11を同一方向に向けて引き出すと、引き裂き紐11は、所定の埋設位置から、押さえ巻き部材7の外表面に沿って引き出し方向に引き出されていく(図中H2、H3)。
【0030】
この際、引き裂き紐11は、押さえ巻き部材7のラップ部15を乗り越える。図に示す例では、領域Iにおいて、引き裂き紐11がラップ部15上を上方から下方に向かって滑るように引き出されていく。
【0031】
本発明では、ラップ部15の口あき方向がテンションメンバ9側であるため、引き裂き紐11は、口あき方向とは逆方向からラップ部15に乗り上げて、口あき方向に引き出されていく。したがって、引き裂き紐11が、ラップ部15における、内外周の押さえ巻き部材7の隙間に入り込むことがない。
【0032】
なお、
図4(a)において、−90°方向に引き裂き紐11を引き出した際には、引き裂き紐11がラップ部15と接触することがない。このため、引き裂き紐11がラップ部15における、内外周の押さえ巻き部材7の隙間に入り込むことがない。
【0033】
このように、本発明では、ラップ部15の口あき方向が、必ず、引き裂き紐11の引き出される側に向いているため、引き裂き紐11が、押さえ巻き部材7のラップ部15に引っ掛かり、ラップ部15が開いたり、押さえ巻き部材7が損傷することがない。
【0034】
一方、
図5(a)は、ラップ部15の口あき方向のみが逆向きである光ファイバケーブル1aを示す断面図であり、
図5(b)は、引き裂き紐11を引き出し角度90°で引き出した際の、引き裂き紐11の引き出し状態を示す概念図である。なお、
図5(b)において、外被13およびテンションメンバ9等の構成については図示を省略する。
【0035】
前述した様に、引き裂き紐11を引き出し角度90°で図示しないテンションメンバ9側に引き出すと、引き裂き紐11の一部が、押さえ巻き部材7に沿って引き出される(
図5(a)のEおよび
図5(b)のJ1)。さらに、引き裂き紐11を同一方向に向けて引き出すと、引き裂き紐11は、所定の埋設位置から、押さえ巻き部材7の外表面に沿って引き出し方向に引き出されていく(
図5(b)のJ2、J3)。
【0036】
この際、引き裂き紐11は、押さえ巻き部材7のラップ部15を乗り越える。図に示す例では、領域Kにおいて、引き裂き紐11がラップ部15上を上方から下方に向かって滑るように引き出されていく。
【0037】
この際、ラップ部15の口あき方向が引き裂き紐11側であるため、引き裂き紐11は、口あき方向からラップ部15に乗り上げて、口あき方向とは逆側に引き出されていく。したがって、引き裂き紐11が、ラップ部15における、内外周の押さえ巻き部材7の隙間に入り込む恐れがある。
【0038】
引き裂き紐11が、ラップ部15の口あき部に入り込むと、押さえ巻き部材7が開くか、または損傷してしまい、内部の光ファイバ心線3が飛び出す恐れがある。このため、光ファイバ心線3が損傷する恐れがある。
【0039】
本発明では、ラップ部15の口あき方向が、引き裂き紐11の引き出される側に向くため、引き裂き紐11を引き出す際に、押さえ巻き部材7が損傷することを防止することができる。
【0040】
なお、口あき部の位置は、前述した様に、引き裂き紐11の位置からテンションメンバ9までの90°の範囲であればよいが、口あき部の位置が、光ファイバケーブル1の長手方向で変動する恐れがあるため、引き裂き紐11の方向を0°とし、テンションメンバ9の方向を90°とすると、例えば、15〜75°の範囲に口あき部の位置を設計することが望ましい。また、引き裂き紐11と口あき部(ラップ部)との距離が離れている方が、引き裂き紐11による口あき部近傍の損傷を抑制することができるため、さらに望ましくは、45〜75°の範囲に口あき部の位置を設計することが望ましい。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、ラップ部15の口あき方向が、引き裂き紐11の引き出される側に向くため、引き裂き紐11を引き出す際に、押さえ巻き部材7が損傷することを防止することができる。
【0042】
特に、スロットレスタイプの光ファイバケーブル1は、押さえ巻き部材7の内側の緩衝材等によって、押さえ巻き部材7が潰れやすいが、本発明によれば、押さえ巻き部材7が潰れても、引き裂き紐11が押さえ巻き部材7の口あき部に入り込むことがなく、押さえ巻き部材7の損傷を防止することができる。
【0043】
次に、第2の実施形態について説明する。
図6は、光ファイバケーブル30を示す図である。なお、以下の説明において、光ファイバケーブル1と同様の機能を奏する構成については、
図1等と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0044】
光ファイバケーブル30は、光ファイバケーブル1とほぼ同様の構成であるが、支持線31が設けられる点で異なる。光ファイバケーブル30は、自己支持型の光ファイバケーブルであり、首部を介して、支持線31とケーブル部とが連結される。支持線31は、例えば鋼線等であり、ケーブル部(光ファイバケーブル1と同様の構成)とは、外被13によって一体で構成される。
【0045】
光ファイバケーブル30においても、ラップ部15は、光ファイバケーブル30の長手方向に垂直な断面における周方向に対し、一方の引き裂き紐11(例えば図中左側の引き裂き紐11)と、一方のテンションメンバ9(例えば図中上側のテンションメンバ9)との間に配置される。また、ラップ部15の口あき方向は、当該テンションメンバ9側に向けられる。このため、引き裂き紐11を引き出す際に、押さえ巻き部材7が損傷することを防止することができる。
【0046】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、本発明では、光ファイバケーブルの断面構造は、限定されることはない。
【0047】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。