(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書の基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本明細書において好ましい態様同士の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0011】
[有機薄膜トランジスタ]
本発明の有機薄膜トランジスタは、後述する一般式(1)で表される化合物を含有する有機半導体膜を有する。
一般式(1)で表される化合物は、ペリレンジイミド骨格を有することから、本明細書においては、一般式(1)で表される化合物を「特定ペリレンジイミド化合物」ということがある。
特定ペリレンジイミド化合物は、有機溶媒への溶解性に優れ、これを用いて作製された有機半導体膜を有する有機薄膜トランジスタは、キャリア移動度に優れる。これは、以下の理由によるものと考えられる。
すなわち、ペリレンジイミド骨格を有する化合物は、その主骨格であるペリレンジイミド骨格が対称構造をもち、n型の有機半導体材料として使用されることが知られている。
しかしながら、発明者等がペリレンジイミド骨格を有する化合物に関して検討を進めたところ、上述した特許文献1の請求項1に記載のペリレンジイミド骨格を有する化合物(具体的には、後述する実施例欄における比較化合物2)のように、イミド骨格の酸素原子に相当する箇所の少なくとも一つを硫黄原子やセレン原子に置換しても、これを用いて作製された有機薄膜トランジスタのキャリア移動度は十分でなく、さらに、有機溶媒に対する溶解性も不十分であることが明らかになった。
このような問題に対して発明者等が鋭意検討したところ、その理由の詳細は明らかになっていないが、ペリレンジイミド骨格の対称性を崩すこと、すなわち、ペリレンジイミド骨格の一部に環構造(後述する一般式(1)の「Z」)を導入して主骨格を非対称にした特定ペリレンジイミド化合物を用いることで、有機溶媒への溶解性を向上させつつ、キャリア移動度にも優れた有機薄膜トランジスタが得られることを見出した。
【0012】
<一般式(1)で表される化合物>
一般式(1)で表される化合物(特定ペリレンジイミド化合物)は、有機薄膜トランジスタの有機半導体膜に含まれる。
一般式(1)で表される化合物は、新規な化合物であり、有機薄膜トランジスタの有機半導体膜に好適に使用されることはもちろんのこと、後述する他の用途にも用いることができる。
【0014】
上記一般式(1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキニル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。これらの基は、置換基を有してもよい。
本明細書における「アルキル基」および「アルケニル基」には、特に断りの無い限り、直鎖、分岐および環状のいずれも含むものとする。なお、環状のアルキル基としては、例えば、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基などが挙げられる。また、環状のアルケニル基としては、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基などが挙げられる。
本明細書における「ヘテロアリール基」に含まれるヘテロ原子としては、例えば、硫黄原子(S)、酸素原子(O)、および、窒素原子(N)などが挙げられる。
これらの中でも、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキニル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基であることが好ましく、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはアリール基であることがより好ましく、アルキル基であることがさらに好ましい。さらに、R
1およびR
2は、アルキル基の中でも、分岐のアルキル基または環状のアルキル基であることが好ましく、分岐のアルキル基または炭素数が5または6のシクロアルキル基であることがより好ましく、分岐のアルキル基であることがさらに好ましい。これにより有機溶媒への溶解性がより向上する傾向にある。
R
1に含まれる炭素数およびR
2に含まれる炭素数は、それぞれ独立に、30個以下(好ましくは5〜30個、より好ましくは10〜30個)であることが好ましい。R
1に含まれる炭素数およびR
2に含まれる炭素数が、30個以下であることで有機薄膜トランジスタのキャリア移動度がより向上し、5個以上であることで有機溶媒への溶解性がより向上する。
R
1とR
2は、同一の基であることが好ましい。これにより、一般式(1)で表される化合物の構造の分子間の軌道の重なりが向上し、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度がより向上する。
【0015】
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい。)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む。)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)
2)、ホスファト基(−OPO(OH)
2)、スルファト基(−OSO
3H)、および、その他の公知の置換基が挙げられる。また、置換基が更に置換基により置換されていてもよい。
【0016】
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキニル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基またはシアノ基を表す。
R
3とR
4は、環を形成してもよい。R
3とR
4が環を形成する場合には、これらが直接結合して環を形成してもよいし、R
3とR
4が2価の置換基を介して環を形成していてもよい。
R
5とR
6は、環を形成していてもよい。R
5とR
6が環を形成する場合には、これらが直接結合して環を形成してもよいし、R
5とR
6が2価の置換基を介して環を形成していてもよい。
R
3〜R
8は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基であることが好ましく、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。これにより、膜質が向上し、キャリア移動度がより向上する。
R
3とR
6は、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度がより向上する観点から、同一の基であることが好ましい。同様の観点から、R
4とR
5は、同一の基であることが好ましい。同様の観点から、R
7とR
8は、同一の基であることが好ましい。
【0017】
2価の置換基としては、例えば、−O−、−S−、−NR
X−、−CO−、−SO−もしくは−SO
2−等の2価の連結基、または、これらの2価の連結基が2以上結合した二価の連結基を表す。これらの中でも、−O−、−S−、−NR
X−、−CO−、−O−CO−、−CO−O−、−NR
X−CO−、−CO−NR
X−、−O−CO−O−、−NR
X−CO−O−、−O−CO−NR
X−または−NR
X−CO−NR
X−であることが好ましく、−O−、−S−、−NR
X−、−CO−、−O−CO−または−CO−O−であることがより好ましい。
上記R
Xはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、水素原子、アルキル基またはアリール基であることが好ましく、水素原子またはアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることがさらに好ましい。Rxは、置換基を有していてもよく、置換基の定義は上記R
1およびR
2で説明した通りである。
【0018】
Zは、単環または縮合環の環構造を表し、この環構造を構成する原子の数が5個以上であり、かつ、上記環構造を構成する原子のうち4個以上が炭素原子である。Zは、置換基を有してよく、置換基の定義は上記の通りである。なお、環構造を構成する原子としては、以下式中の矢印で示す4個の炭素原子も含まれる。
【0020】
ここで、環構造を構成する原子とは、環を形成するために直接結合している原子のことをいい、例えば、Zがチオフェンである場合には、環構造を構成する原子の数は5個であり、環構造を構成する原子のうち炭素原子が4個である。
Zは、単環または縮合環である環構造を表すが、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度がより向上する観点から、単環であることがより好ましい。
上記環構造を構成する原子の数は、5個以上であるが、5〜20個であることが好ましく、5〜12個であることがより好ましく、5〜6個(すなわち、環構造が単環であり、かつ、5員環または6員環)であることがさらに好ましく、5個であることが特に好ましい。
上記環構造を構成する炭素原子の数は、4個以上であるが、4〜20個であることが好ましく、4〜11個であることがより好ましく、4〜5個であることがさらに好ましく、4個であることが特に好ましい。
【0021】
Zとしては、芳香族または非芳香族のいずれであってもよく、具体的には、芳香族炭化水素環、複素環、またはこれらが組み合わされて形成された縮合環であることが好ましい。これらの環は、さらに置換基を有していてもよく、置換基の定義は上記R
1およびR
2で説明した通りである。
芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンゾピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、および、フルオランテン環等が挙げられる。
複素環としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、セレノフェン環、テルロフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ペリミジン環、キナゾリン環、ピラン環、クロメン環、チオピラン環、チオクロメン環、セレノピラン環、セレノクロメン環、テルロピラン環、および、テルロクロメン環等が挙げられる。
これらの中でも、Zは、複素環であることが好ましく、単環の複素環であることがより好ましい。さらに、単環の複素環の中でも、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環またはテルロフェン環であることが好ましく、フラン環、チオフェン環またはセレノフェン環であることがより好ましく、チオフェン環であることがさらに好ましい。
【0022】
X
1、X
2、X
3およびX
4(すなわち、X
1〜X
4)は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、または、テルル原子を表す。X
1〜X
4のうち少なくとも1つは、硫黄原子またはセレン原子である。これにより、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度が優れたものとなる。
X
1〜X
4のうち少なくとも1つは、硫黄原子またはセレン原子であるが、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度がより向上する観点から、硫黄原子であることが好ましい。
X
1〜X
4のうち少なくとも2つが、互いに異なる原子からなることが好ましい。すなわち、X
1〜X
4のすべてが同一の原子からなるのではなく、例えば、X
1が硫黄原子である場合には、X
2〜X
4のうち少なくとも1つが硫黄原子以外の原子である場合をいう。これにより、一般式(1)で表される化合物の有機溶媒への溶解性がより向上する傾向にある。この理由は、一般式(1)で表される化合物において、分子内の双極子モーメントの片寄り(電荷の片寄り)が大きくなることによるものと推測される。
【0023】
上記一般式(1)で表される化合物は、溶解性がより向上する点、および、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度がより向上するという点から、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0025】
上記一般式(2)中、R
1とR
2は、同一の基であって、炭素数30以下のアルキル基である。なお、一般式(2)におけるR
1およびR
2の好ましい態様については、上記一般式(1)におけるR
1およびR
2の好ましい態様と同じである。
上記一般式(2)中、R
4およびR
5はそれぞれ、上記一般式(1)のR
4およびR
5と同義である。また、R
4とR
5は同一の基である。なお、一般式(2)におけるR
4およびR
5の好ましい態様については、上記一般式(1)におけるR
4およびR
5の好ましい態様と同じである。
上記一般式(2)中、Wは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表す。これらの中でもWは、酸素原子、硫黄原子またはセレン原子であることが好ましく、硫黄原子であることがより好ましい。
上記一般式(2)中、X
1、X
2、X
3およびX
4はそれぞれ、上記一般式(1)のX
1、X
2、X
3およびX
4と同義である。また、X
1〜X
4のうち少なくとも2つが、互いに異なる原子からなることが好ましい。なお、上記一般式(2)におけるX
1〜X
4の好ましい態様については、上記一般式(1)におけるX
1〜X
4の好ましい態様と同じである。
【0026】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示す。
なお、以下の表中、R
1およびR
2の表記における各原子の右側の数値は、その原子の数を表し、例えば「CH2C3F7」とは、「CH
2C
3F
7」基を意味する。
【0039】
<一般式(1)で表される化合物の製造方法>
上記一般式(1)で表される化合物は、公知の方法を参照して製造(合成)することができる。具体的な製造方法の一例としては、下記一般式(B1)または(B2)で表される化合物(例えば、European Journal Of Organic Chemistry 2000. 2, 365-380.を参考にして合成)と、ローソン試薬(Lawesson's reagent)と、有機溶媒と、混合した混合物を、所定温度(例えば100〜200℃程度)で所定時間(例えば0.5〜5時間程度)攪拌する方法が挙げられる。
合成時に使用する有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、1−メチルナフタレン、テトラリン、メシチレン、および、キシレンなどを用いることができる。
【0041】
<有機薄膜トランジスタの構造、有機薄膜トランジスタの製造方法>
次に、上記一般式(1)で表される化合物(特定ペリレンジイミド化合物)を有機薄膜トランジスタの有機半導体膜に用いた本発明の有機薄膜トランジスタの構造およびその製造方法について説明する。
本発明の有機薄膜トランジスタは、上述した一般式(1)で表される化合物を含む有機半導体膜(有機半導体層)を有し、さらに、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、を有することができる。
本実施形態に係る有機薄膜トランジスタは、その構造は特に限定されるものでなく、例えばボトムコンタクト型(ボトムコンタクト−ボトムゲート型およびボトムコンタクト−トップゲート型)およびトップコンタクト型(トップコンタクト−ボトムゲート型およびトップコンタクト−トップゲート型)など、いずれの構造であってもよい。
以下、本発明の有機薄膜トランジスタの一例について、図面を参照しながら説明する。
【0042】
図1は、本発明の一実施形態に係るボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタ100の断面模式図である。
図1の例では、有機薄膜トランジスタ100は、基板(基材)10と、ゲート電極20と、ゲート絶縁膜30と、ソース電極40と、ドレイン電極42と、有機半導体膜(有機半導体層)50と、封止層60と、を有する。ここで、有機半導体膜50は、上述した一般式(1)で表される化合物を使用して作製されたものである。
以下、基板(基材)、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体膜(有機半導体層)および封止層ならびにそれぞれの作製方法について詳述する。
【0043】
(基板)
基板は、後述するゲート電極、ソース電極、および、ドレイン電極などを支持する役割を果たす。
基板の種類は特に制限されず、例えば、プラスチック基板、ガラス基板、および、セラミック基板などが挙げられる。なかでも、各デバイスへの適用性およびコストの観点から、ガラス基板またはプラスチック基板であることが好ましい。
【0044】
(ゲート電極)
ゲート電極の材料としては、例えば、金(Au)、銀、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、コバルト、チタン、白金、マグネシウム、カルシウム、バリウム、および、ナトリウム等の金属;InO
2、SnO
2、および、ITO(Indium Tin Oxide)等の導電性の酸化物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、および、ポリジアセチレン等の導電性高分子;シリコン、ゲルマニウム、および、ガリウム砒素等の半導体;ならびに、フラーレン、カーボンナノチューブ、および、グラファイト等の炭素材料;などが挙げられる。なかでも、金属であることが好ましく、銀、または、アルミニウムであることがより好ましい。
ゲート電極の厚みは特に制限されないが、20〜200nmであることが好ましい。
なお、ゲート電極は基板としても機能してもよく、その場合、上記基板はなくてもよい。
【0045】
ゲート電極を形成する方法は特に制限されないが、例えば、基板上に、電極材料を真空蒸着またはスパッタする方法、および、電極形成用組成物を塗布または印刷する方法などが挙げられる。また、電極をパターニングする場合のパターニング方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法;インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、および、凸版印刷(フレキソ印刷)等の印刷法;ならびに、マスク蒸着法;などが挙げられる。
【0046】
(ゲート絶縁膜)
ゲート絶縁膜の材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリベンゾキサゾール、ポリシルセスキオキサン、エポキシ樹脂、および、フェノール樹脂等のポリマー;二酸化珪素、酸化アルミニウム、および、酸化チタン等の酸化物;ならびに、窒化珪素等の窒化物;などが挙げられる。これらの材料のうち、有機半導体膜との相性から、ポリマーであることが好ましい。
ゲート絶縁膜の膜厚は特に制限されないが、100〜1000nmであることが好ましい。
【0047】
ゲート絶縁膜を形成する方法は特に制限されないが、例えば、ゲート電極が形成された基板上に、ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布する方法、および、ゲート絶縁膜材料を蒸着またはスパッタする方法などが挙げられる。
【0048】
(ソース電極、ドレイン電極)
ソース電極およびドレイン電極の材料の具体例は、上述したゲート電極と同じである。なかでも、金属であることが好ましく、銀であることがより好ましい。
ソース電極およびドレイン電極を形成する方法は特に制限されないが、例えば、ゲート電極とゲート絶縁膜とが形成された基板上に、電極材料を真空蒸着またはスパッタする方法、および、電極形成用組成物を塗布または印刷する方法などが挙げられる。パターニング方法の具体例は、上述したゲート電極と同じである。
【0049】
(有機半導体膜)
有機半導体膜の作製方法は、上述した一般式(1)で表される化合物を含む有機半導体膜を作製できる限り、特に限定されるものではないが、例えば上述した一般式(1)で表される化合物を含む有機薄膜トランジスタ用組成物(後述)を基板上に塗布して、乾燥させることにより有機半導体膜を作製することができる。
なお、有機薄膜トランジスタ用組成物を基板上に塗布するとは、有機薄膜トランジスタ用組成物を基板に直接付与する態様のみならず、基板上に設けられた別の層を介して基板の上方に有機薄膜トランジスタ用組成物を付与する態様も含むものとする。
有機薄膜トランジスタ用組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、バーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ドクターブレード法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、および、スクリーン印刷法が挙げられる。さらに、有機薄膜トランジスタ用組成物の塗布方法としては、特開2013−207085号公報に記載の有機半導体膜の形成方法(いわゆるギャップキャスト法)、および、国際公開第2014/175351号公報に記載の有機半導体薄膜の製造方法(いわゆるエッジキャスト法および連続エッジキャスト法)などが好適に用いられる。
乾燥(乾燥処理)は、有機薄膜トランジスタ用組成物に含まれる各成分の種類により適宜最適な条件が選択され、自然乾燥であってもよいが、生産性を向上させる観点から加熱処理を行うことが好ましい。例えば、加熱温度としては30〜150℃が好ましく、40〜120℃がより好ましく、加熱時間としては10〜300分が好ましく、20〜180分がより好ましい。
作製される有機半導体膜の膜厚は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、10〜500nmが好ましく、30〜200nmがより好ましい。
【0050】
このように、一般式(1)で表される化合物を含有する有機半導体膜は、有機薄膜トランジスタに好適に使用されるが、この用途に限定されるものではなく、一般式(1)で表される化合物を含有する有機半導体膜は、後述するその他の用途にも適用することができる。
【0051】
(封止層)
本発明の有機薄膜トランジスタは、耐久性の観点から、最外層に封止層を備えるのが好ましい。封止層には公知の封止剤(封止層形成用組成物)を用いることができる。
封止層の厚みは特に制限されないが、0.2〜10μmであることが好ましい。
【0052】
(その他の有機薄膜トランジスタ)
図2は、本発明の一実施形態に係るトップコンタクト型の有機薄膜トランジスタ200を表す断面模式図である。
図2の例では、有機薄膜トランジスタ200は、基板10と、ゲート電極20と、ゲート絶縁膜30と、ソース電極40と、ドレイン電極42と、有機半導体膜(有機半導体層)50と、封止層60と、を有する。ここで、有機半導体膜50は、後述する本発明の有機薄膜トランジスタ用組成物を用いて形成されたものである。
基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体膜および封止層については上述の通りであるので、その説明を省略する。
【0053】
(有機薄膜トランジスタの用途)
上述した有機薄膜トランジスタは、例えば、電子ペーパーおよびディスプレイデバイスの画像を表示する表示部に適用することができる。電子ペーパーおよびディプレイデバイスは、公知の構造を有することができるので、その説明を省略する。
【0054】
[有機薄膜トランジスタ用組成物]
本発明の有機薄膜トランジスタ用組成物は、上述した有機薄膜トランジスタの有機半導体膜の作製に使用される。
なお、以下に説明する有機薄膜トランジスタ用組成物は、後述するその他の用途に使用してもよく、この場合には、「有機薄膜トランジスタ用組成物」を単に「有機半導体組成物」という。
有機薄膜トランジスタ用組成物は、上述した一般式(1)で表される化合物を含有するものであるが、通常、その塗布性を向上させる点から有機溶媒をさらに含有する。
有機薄膜トランジスタ用組成物が有機溶媒を含有する場合には、上記一般式(1)で表される化合物の含有量は、有機薄膜トランジスタ用組成物の全質量に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0055】
<有機溶媒>
有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、ヘキサン、オクタン、および、デカンなどの炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、デカリン、1−メチルナフタレン、および、テトラリンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、および、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、および、クロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、および、乳酸エチルなどのエステル系溶媒、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、および、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、ブトキシベンゼン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、および、アニソールなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、および、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、1−メチル−2−ピロリドン、および、1−メチル−2−イミダゾリジノン等のイミド系溶媒、ジメチルスルフォキサイドなどのスルホキシド系溶媒、ならびに、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒などが挙げられる。
これらの中でも、一般式(1)で表される化合物の溶解性がより優れるという観点から、ブトキシベンゼン、または、アニソールを用いることが好ましい。
上記有機溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶媒を含有する場合の含有量は、有機薄膜トランジスタ用組成物の全質量に対して、80〜99.99質量%であることが好ましく、90〜99.99質量%であることがより好ましく、95〜99.95質量%であることがさらに好ましい。
【0056】
<バインダーポリマー>
有機薄膜トランジスタ用組成物は、さらに、バインダーポリマーを含有してもよい。
バインダーポリマーの種類は特に制限されず、公知のバインダーポリマーを用いることができ、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ゴム、および、熱可塑性エラストマー等の高分子化合物が挙げられる。
なかでも、バインダーポリマーとしては、ベンゼン環を有する高分子化合物(ベンゼン環基を有する単量体単位を有する高分子)が好ましい。ベンゼン環を有する単量体単位の含有量は特に制限されないが、全単量体単位中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。上限は特に制限されず、例えば100モル%である。
上記バインダーポリマーの具体例としては、例えば、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリビニルシンナメート、ポリ(4−ビニルフェニル)、および、ポリ(4−メチルスチレン)などが挙げられる。
パインダーポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、1000〜200万が好ましく、3000〜100万がより好ましく、5000〜60万がさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
バインダーポリマーを含有する場合の含有量は、有機薄膜トランジスタ用組成物に含まれる一般式(1)で表される化合物100質量部に対して、5〜200質量部であることが好ましく、20〜150質量部であることがより好ましい。
【0057】
<その他の成分>
有機薄膜トランジスタ用組成物は、上記以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、界面活性剤、フェノール性還元剤(いわゆるマイグレーション抑制剤)などが挙げられる。
なお、これらの成分以外にも、従来の有薄膜トランジスタ用組成物(有機半導体組成物)に含まれる成分を含有してもよい。
【0058】
<調製方法>
有機薄膜トランジスタ用組成物の調製方法は、特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、有機溶媒中に所定量の一般式(1)で表される化合物などを添加して、適宜攪拌処理を施すことにより、本発明の有機薄膜トランジスタ用組成物を得ることができる。
【0059】
[有機薄膜トランジスタ用材料]
本発明の有機薄膜トランジスタ用材料は、上述した一般式(1)で表される化合物を含有する。有機薄膜トランジスタ用材料とは、有機薄膜トランジスタに使用され、半導体の特性を表す材料のことを指す。
上記一般式(1)で表される化合物は、半導体としての性質を示す材料であり、電子をキャリアとして伝導するn型(電子輸送型)の有機半導体材料である。
なお、有機薄膜トランジスタ用材料は、後述するその他の用途に使用してもよく、この場合には、「有機薄膜トランジスタ用材料」を単に「有機半導体材料」という。
【0060】
[一般式(1)で表される化合物のその他の用途]
上記一般式(1)で表される化合物は、上記のように優れた性質を有するため、有機薄膜トランジスタ以外のその他の用途にも好適に使用できる。
その他の用途としては、例えば、非発光性有機半導体デバイスが挙げられる。非発光性有機半導体デバイスとは、発光することを目的としないデバイスを意味する。
このような非発光性有機半導体デバイスとしては、上述した有機薄膜トランジスタの他に、有機光電変換素子(光センサ用途の個体撮像素子、および、エネルギー変換用途の太陽電池など)、ガスセンサ、有機整流素子、有機インバータ、および、情報記録素子などが挙げられる。
非発光性有機半導体デバイスは、有機半導体膜をエレクトロニクス要素として機能させることが好ましい。有機半導体膜は、上記一般式(1)で表される化合物を含む有機半導体膜を含む。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を用いて、本発明の有機薄膜トランジスタについて詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
<実施化合物1および2>
実施化合物1および2は、下記スキーム(S1)に従って合成した。
【0063】
【化5】
【0064】
まず、上記スキーム(S1)における出発物質(上記式(B1))を、European Journal Of Organic Chemistry 2000. 2, 365-380.を参考にして合成した。
次に、出発物質(4.0g、3.90mmol)、ローソン試薬(7.90g,19.5mmol)、および1−メチルナフタレン80mLを加えて、180℃で1時間攪拌した。
その後、反応液を室温まで冷却して、カラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:2)で精製して、青色固体である実施化合物1(63mg、1.5%、上記式(A1)参照)、青色固体である実施化合物2(454mg、11%、上記式(A2)参照)をそれぞれ得た。得られた実施化合物1および2の構造は、
1H NMR(Nuclear Magnetic Resonance)により同定した。
実施化合物1
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ:0.84−1.55 (82H, m), 4.72 (4H, br), 6.70 (2H, br), 7.48 (2H, br), 7.87 (2H, br).
実施化合物2
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ:0.85−1.64 (82H, m), 4.39 (2H, br), 4.85 (2H, br), 7.39 (1H, br), 7.48 (1H, br), 8.03(1H, br), 8.19 (1H, br), 8.34 (1H, s), 8.39 (1H, s).
【0065】
<実施化合物3>
実施化合物3は、下記スキーム(S2)に従って合成した。
【0066】
【化6】
【0067】
まず、上記スキーム(S2)における出発物質(上記式(B3))をEuropean Journal Of Organic Chemistry 2000. 2, 365-380.を参考にして合成した。
次に、出発物質(100mg、0.171mmol)、ローソン試薬(291mg,0.718mmol)、および1−メチルナフタレン3.4mLを加え180℃で1時間攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、カラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:2)で精製して青色固体である実施化合物3(5mg、4.5%、上記式(A3)参照)を得た。得られた実施化合物3の構造は
1H NMRにより同定した。
実施化合物3
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ:0.88−2.04 (16H, m), 2.70 (4H, br), 6.12 (2H, br), 8.61 (2H, br), 9.13 (4H, br).
【0068】
<比較化合物1および2>
比較化合物1(下記式(B1))は、実施化合物1および2の出発物質である。比較化合物2(下記式(B2))は、Journal of Physical Chemistry C. 2014. 118, 9996-10004を参考に合成した。比較化合物3(下記式(B3))は、実施化合物3の出発物質である。比較化合物4(下記式(B4))および比較化合物5(下記式(B5))は、Chemical Communications, 2006 , 44, 4587-4589と実施化合物1の合成法を参考にして合成した。
【0069】
【化7】
【0070】
<有機溶媒への溶解性評価>
上記のようにして得られた各実施化合物および比較化合物を2mgずつ秤量し、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドの体積および比重から室温(25℃)での飽和溶解度(質量%)を算出し、2質量%以上を「A」、1質量%以上2質量%未満を「B」、0.1質量%以上1質量%未満を「C」、0.1質量%未満を「D」とした。各化合物のトルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドに対する飽和溶解度(以下溶解性とも言う)をそれぞれ溶解性(1)〜(4)として、下記第1表に評価結果を示す。
【0071】
<有機薄膜トランジスタの作製・キャリア移動度の評価>
有機薄膜トランジスタの作製に用いた有機薄膜トランジスタ用材料(上記の実施化合物および比較化合物)は、高速液体クロマトグラフィーにより純度(254nmの吸収強度面積比)が99.0%以上であることを確認した。
【0072】
(有機半導体膜の形成)
上記の各実施化合物および比較化合物のいずれかをブトキシベンゼンを溶媒として0.05質量%溶液を調製し、100℃に加熱したものを、実施例および比較例の有機薄膜トランジスタ用組成物とした。
実施例および比較例では、
図3、
図4A、
図4Bおよび
図5(すなわち、
図3〜
図5)に記載の方法により有機半導体薄膜の形成を実施した。
図3〜
図5は、実施例および比較例の有機半導体膜の製造方法を示す模式図である。有機半導体膜の形成方法の詳細を以下に示す。
n型シリコン基板(0.4mm厚さ)の表面に、SiO
2の熱酸化膜200nmを形成した10mm×10mm基板を基板212として使用した。基板212の熱酸化膜の表面は、UV(紫外線)−オゾン洗浄した後、β−フェニチルトリメトキシシラン処理を行った。
基板212のβ−フェニチルトリメトキシシラン処理面の上に、
図3に示すように基板212の中央部に、基板212と部材214を接触させた状態となるように置いた。部材214はガラス製で、縦7mm×横2mm×高さ3mmのものを用い、
図3の左右方向(X軸方向)が部材214の横方向であり、
図3の上下方向(Z軸方向)が部材214の高さ方向であり、
図4Bの上下方向(Y軸方向)が部材214の縦方向である。
基板212を95℃に加熱し、ここに上記の方法で調製した各有機薄膜トランジスタ用組成物(
図3〜
図5の有機薄膜トランジスタ用組成物210)の1滴(約0.05mL)を、ピペット216を用いて、
図3に示すとおり基板212と部材214の両方に接するように部材214の側部からたらしたところ、
図4Aおよび
図4Bに示すとおり基板212の表面内の一部に有機薄膜トランジスタ用組成物210が滴下された。部材214との界面においては凹状のメニスカスを形成していた。
図5に示すとおり、基板212と部材214を接触させた状態を維持しながら、また、基板212と部材214との位置関係を静止させた状態で、滴下した有機薄膜トランジスタ用組成物を自然乾燥させた。その後90℃で8時間、10
−3MPaの圧力下で減圧乾燥させることで上記の各実施化合物および比較化合物いずれかの結晶を析出させて、有機半導体膜を形成した。結晶が析出したか否かは、偏光顕微鏡による観察によって確認した。なお、得られた有機半導体膜の膜厚は、50nmであった。
得られた有機半導体膜にマスクをつけて金電極40nmを蒸着することによりキャリア移動度測定用の実施例および比較例の有機薄膜トランジスタを得た。
【0073】
(キャリア移動度の評価)
各有機薄膜トランジスタ(FET素子)のソース電極−ドレイン電極間に−80Vの電圧を印加し、ゲート電圧を20V〜−100Vの範囲で変化させ、ドレイン電流I
dを表わす式I
d=(w/2L)μC
i(V
g−V
th)
2(式中、Lはゲート長、wはゲート幅、C
iは絶縁層の単位面積当たりの容量、V
gはゲート電圧、V
thは閾値電圧)を用いてキャリア移動度μを算出し、10
-2cm
2/Vs以上を「A」、10
-4cm
2以上10
-2cm
2/Vs未満を「B」、10
-4cm
2/Vs未満を「C」と評価した。評価結果を第1表に示す。
【0074】
【表13】
【0075】
上記第1表の評価結果より、上記一般式(1)で表される化合物(実施化合物1〜3)は有機溶媒への溶解性に優れ、実施化合物を用いた実施例1〜3の有機薄膜トランジスタは、キャリア移動度にも優れていることがわかった。
実施例1と実施例2との対比によれば、上記一般式(1)におけるX
1、X
2、X
3およびX
4のうち少なくとも2つが、互いに異なる原子からなる化合物を用いることで(実施例2の実施化合物2)、有機溶媒への溶解性がより優れたものになることが示された。
実施例1と実施例3との対比によれば、上記一般式(1)におけるR
1およびR
2が分岐のアルキル基であることで(実施例1の実施化合物1)、有機溶媒に対する溶解性がより優れたものになることが示された。
【0076】
一方、比較化合物1は、ペリレンジイミド骨格に環が付加された非対称構造をもつが、カルボジイミド構造中の酸素原子が硫黄原子またはセレン原子で置換されていない。この比較化合物1を用いて作製された比較例1の有機薄膜トランジスタは、キャリア移動度が悪化することが示された。
比較化合物2は、カルボジイミド構造中の酸素原子が硫黄原子で置換されているが、ペリレンジイミド骨格が環を付加されていない対称構造である。この比較化合物2は、有機溶媒の種類によっては溶解性が不十分であり、これを用いて作製された比較例2の有機薄膜トランジスタは、キャリア移動度が不十分であった。
比較化合物3は、ペリレンジイミド骨格に環が付加された非対称構造であるが、カルボジイミド構造中の酸素原子が硫黄原子またはセレン原子で置換されていない。この比較化合物3は、有機溶媒への溶解性が不十分であり、これを用いて作製された比較例3の有機薄膜トランジスタは、キャリア移動度が悪化した。
比較化合物4は、カルボジイミド構造中の酸素原子が硫黄原子またはセレン原子で置換されておらず、かつ、ペリレンジイミド骨格が対称的に環を付加された対称構造をもつ。比較化合物4は、有機溶媒への溶解性が不十分であり、これを用いて作製された比較例4の有機薄膜トランジスタは、キャリア移動度が悪化した。
比較化合物5は、カルボジイミド構造中の酸素原子が硫黄原子で置換されているが、ペリレンジイミド骨格が対称的に環を付加された対称構造をもつ。比較化合物5は、有機溶媒への溶解性が不十分であり、これを用いて作製された比較例5の有機薄膜トランジスタは、キャリア移動度が不十分であった