【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体の合成、つまり、イミダゾール系の配位子の配位を従来よりも好適に進行させることができるイリジウム化合物の構造について鋭意検討を行った。その結果、出発原料としてイリジウムに非対称のβ−ジケトン配位子が導入された、下記一般式(1)で表される特定構造のイリジウム化合物を開発するに至った。本発明者等によれば、この新規なイリジウム化合物を用いると、従来原料であるアセチルアセトナート系化合物を用いる場合と比較して、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体の収率が大きく向上する。
【0013】
即ち、本発明は、下記の一般式(1)で表されることを特徴とするイリジウム化合物である。
【0014】
【化3】
(一般式(1)中、Irはイリジウム原子を表し、Oは酸素原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、Yはカウンターカチオンを表す。R
1とR
2は各々独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。但し、R
1とR
2のいずれか一方のみが分岐アルキル基である。)
【0015】
以下、本発明に係るイリジウム化合物について詳細に説明する。
【0016】
上記の通り、本発明に係るイリジウム化合物は、一般式(1)で表される構造を有する。ここで、一般式(1)中、Irはイリジウム原子を表し、Oは酸素原子を表す。
【0017】
そして、Xはハロゲン原子を表す。具体的には、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子が好ましく、塩素原子、又は、臭素原子がより好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0018】
Yはカウンターカチオンを表す。カウンターカチオンは、本発明に係るイリジウム化合物全体の電荷を0にして、塩を形成する役割を果たす。Yは、この作用を有するカチオンであれば特に限定されない。好ましくは1価のカチオンである。具体的には、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、4級アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、又は、プロトン等が挙げられ、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、4級アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、又は、スルホニウムイオンが好ましく、アルカリ金属イオンがより好ましく、ナトリウムイオン、又は、カリウムイオンが特に好ましく、カリウムイオンがより特に好ましい。
【0019】
R
1とR
2は各々独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、いずれか一方のみが分岐アルキル基である。つまり、本発明では、R
1とR
2の炭素数を制限しつつイリジウム原子に配位する配位子に非対称を具備させている。これは、イリジウム化合物の安定性や反応性を適切に調整し、シクロメタル化イリジウム錯体、特に、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体を合成する際の条件(反応温度等)をマイルドにしつつ、収率を確保するためである。
【0020】
この非対称性を有するβ−ジケトン配位子において、R
1とR
2のいずれか一方を構成する分岐アルキル基は、炭素数3以上10以下の分岐アルキル基が好ましく、炭素数3以上6以下の分岐アルキル基がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
【0021】
また、R
1とR
2の他方を構成するアルキル基としては、炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、炭素数1のアルキル基が特に好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0022】
本発明に係るイリジウム化合物には、トランス体とシス体があるが、原料化合物として用いるときにはトランス体とシス体のどちらを用いても良い。また、シス体とトランス体の混合物を原料としても良い。
【0023】
更に、本発明に係るイリジウム化合物には、複数の幾何異性体が存在し得る。例えば、下記化4の(Ir−1)とした化合物には、化5に示す幾何異性体が存在する(化5の記載において、カウンターカチオンの表示は省略している)。本発明に係るイリジウム化合物は、これらの幾何異性体のいずれかのみからなる状態であっても良いし、2種以上の幾何異性体の混合状態にあっても良い。シクロメタル化イリジウム錯体を製造する目的において、原料となるイリジウム化合物が幾何異性体の混合状態にあるか否かは特段の影響を与えるものではない。
【0024】
【化4】
【0025】
【化5】
【0026】
本発明に係るイリジウム化合物の例を化6に示すが、本発明ではこれらのイリジウム化合物に限定されない。
【0027】
【化6】
【0028】
化6に記載のイリジウム化合物の中でも好ましいものは、(Ir−1)〜(Ir−6)であり、より好ましいものは、(Ir−1)〜(Ir−3)であり、特に好ましいものは、(Ir−1)である。
【0029】
以上説明した本発明に係るイリジウム化合物は、その製造自体は困難性を伴うものではなく、適宜のイリジウム化合物に、アルキル基と分岐アルキル基(R
1、R
2)を有するβ−ジケトン配位子を反応させることで製造できる。例えば、3塩化イリジウムn水和物とβ−ジケトン配位子を、炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)を含む水溶液中で加熱反応させることで、本発明に係るイリジウム化合物を合成できる。
【0030】
次に、本発明に係るイリジウム化合物を適用するシクロメタル化イリジウム錯体の製造方法について説明する。本発明に係るイリジウム化合物によって製造可能なシクロメタル化イリジウム錯体に制限を加える必要は無い。例えば、上記化1の、イリジウムに2−フェニルピリジン誘導体が配位したシクロメタル化イリジウム錯体(Ir(ppy)
3)を製造することが可能である。シクロメタル化イリジウム錯体の製造に際しては、本発明に係るイリジウム化合物を原料とし、この原料に配位子となる化合物を反応させることとなる。
【0031】
但し、本発明に係るイリジウム化合物がその効果を特に発揮するのは、イリジウムに2−フェニルイミダゾール誘導体が配位するイミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体を製造するときである。本発明に係るイリジウム化合物を原料とすることで、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体を高い収率で製造でき、この収率は従来から知られているイリジウム化合物では達成できないからである。
【0032】
即ち、本発明に係るイリジウム錯体の製造方法は、本発明に係るイリジウム化合物と、一般式(2)で表される配位子(2−フェニルイミダゾール誘導体)とを反応させることにより、イミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体である一般式(3)のイリジウム錯体の製造方法である。
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
(一般式(2)及び(3)中、Irはイリジウム原子を表す。Nは窒素原子を表す。R
3〜R
9は各々独立に、水素原子又は置換基を表す。隣り合った置換基は結合し、更に環構造を形成しても良い。)
【0035】
一般式(2)で表される2−フェニルイミダゾール誘導体と、一般式(3)で表されるイミダゾール系シクロメタル化イリジウム錯体において、式中のIrはイリジウム原子を表し、Nは窒素原子を表し、Oは酸素原子を表す。そして、各一般式中の置換基R
3〜R
9は各々独立に、水素原子又は置換基を表す。隣り合った置換基は結合し、更に環構造を形成しても良い。置換基R
3〜R
9は、例えば、以下の置換基が挙げられる。
【0036】
・アルキル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上10以下であり、例えばメチル、エチル、Iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)
・アルケニル基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上10以下であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等が挙げられる。)
・アルキニル基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上10以下であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニル等が挙げられる。)
・アリール基(好ましくは炭素数6以上30以下、より好ましくは炭素数6以上20以下、特に好ましくは炭素数6以上12以下であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニル等が挙げられる。)
・アミノ基(好ましくは炭素数0以上30以下、より好ましくは炭素数0以上20以下、特に好ましくは炭素数0以上10以下であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ等が挙げられる。)
・アルコキシ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上10以下であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシ等が挙げられる。)
・アリールオキシ基(好ましくは炭素数6以上30以下、より好ましくは炭素数6以上20以下、特に好ましくは炭素数6以上12以下であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。)
・複素環オキシ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシ等が挙げられる。)
・アシル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等が挙げられる。)
・アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上12以下であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。)
・アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7以上30以下、より好ましくは炭素数7以上20以下、特に好ましくは炭素数7以上12以下であり、例えばフェニルオキシカルボニル等が挙げられる。)
・アシルオキシ基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上10以下であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシ等が挙げられる。)
・アシルアミノ基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上10以下であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等が挙げられる。)
・アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2以上30以下、より好ましくは炭素数2以上20以下、特に好ましくは炭素数2以上12以下であり、例えばメトキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)
・アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7以上30以下、より好ましくは炭素数7以上20以下、特に好ましくは炭素数7以上12以下であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)
・スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等が挙げられる。)
・スルファモイル基(好ましくは炭素数0以上30以下、より好ましくは炭素数0以上20以下、特に好ましくは炭素数0以上12以下であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等が挙げられる。)
・カルバモイル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等が挙げられる。)
・アルキルチオ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばメチルチオ、エチルチオ等が挙げられる。)
・アリールチオ基(好ましくは炭素数6以上30以下、より好ましくは炭素数6以上20以下、特に好ましくは炭素数6以上12以下であり、例えばフェニルチオ等が挙げられる。)
・複素環チオ基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオ等が挙げられる。)
・スルホニル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばメシル、トシル等が挙げられる。)
・スルフィニル基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等が挙げられる。)
・ウレイド基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等が挙げられる。)
・リン酸アミド基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、特に好ましくは炭素数1以上12以下であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等が挙げられる。)
・ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上12以下であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基等が挙げられる。)
・シリル基(好ましくは炭素数3以上40以下、より好ましくは炭素数3以上30以下、特に好ましくは炭素数3以上24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙げられる。)
・シリルオキシ基(好ましくは炭素数3以上40以下、より好ましくは炭素数3以上30以下、特に好ましくは炭素数3以上24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシ等が挙げられる。)
【0037】
以上の置換基の中で、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、複素環基、又は、シリル基が好ましく、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、又は、複素環基がより好ましく、アルキル基、又は、アリール基が特に好ましい。これらの置換基は、R
3〜R
9で定義される置換基で更に置換されていてもよい。
【0038】
アリール基や複素環基の望ましい形態として、デンドロン(原子又は環を分岐点とする規則的な樹枝状分岐構造を有する基)であることも好ましい。デンドロンの例としては、国際公開第02/067343号、特開2003−231692号公報、国際公開第2003/079736号、国際公開第2006/097717号、国際公開第2016/006523号等の文献に記載の構造が挙げられる。
【0039】
R
3〜R
9の望ましい形態について、更に詳しく説明する。
【0040】
R
3、R
4、R
6〜R
9は、水素原子、アルキル基、複素環基、又は、アリール基が好ましく、水素原子、アルキル基、又は、アリール基がより好ましく、水素原子がより好ましい。
【0041】
R
5は、アルキル基、又は、アリール基が好ましく、アリール基がより好ましく、フェニル基、又は、アルキル基で置換されたフェニル基がより好ましい。
【0042】
本発明に係るイリジウム錯体の製造方法について、以下、詳細に説明する。本発明に係るイリジウム錯体の製造方法においては、溶媒を用いて溶媒中で反応を進行させることが好ましい。この溶媒としては、アルコール類、飽和脂肪族炭化水素、エステル類、エーテル類、ニトリル類、非プロトン性極性溶媒、ケトン類、アミド類、芳香族炭化水素、含窒素芳香族化合物、イオン性液体、水が好ましい。この中でも、アルコール類、飽和脂肪族炭化水素、エステル類、エーテル類、非プロトン性極性溶媒、又は、アミド類がより好ましく、アルコール類、又は、非プロトン性極性溶媒(DMF、DMSOなど)が特に好ましく、アルコール類(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、更に好ましくは炭素数1以上10以下)がより特に好ましく、アルコール類の中でもジオール(好ましくは炭素数1以上30以下、より好ましくは炭素数1以上20以下、更に好ましくは炭素数1以上10以下)が最も好ましい。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールが好ましく、エチレングリコールがより好ましい。以上の溶媒は、いずれか1種を単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0043】
本発明に係るイリジウム錯体の製造方法においては、上記の溶媒に原料となるイリジウム化合物(一般式(1))を溶解させ、更に、一般式(2)で表される配位子を添加し、加熱して反応する。ここで、原料であるイリジウム化合物の反応系内の濃度は特に制限されるものではないが、0.001モル/L以上10.0モル/L以下が好ましく、0.001モル/L以上1.0モル/L以下がより好ましく、0.01モル/L以上1.0モル/L以下が更に好ましく、0.05モル/L以上0.5モル/L以下が特に好ましい。
【0044】
一方、一般式(2)で表される2−フェニルイミダゾール誘導体からなる配位子の使用量は、原料のイリジウム化合物1モルに対し、2倍モル以上10倍モル未満が好ましく、3倍モル以上10倍モル未満がより好ましく、3倍モル以上8倍モル未満が特に好ましい。2−フェニルイミダゾール誘導体を必要以上に過剰に加えると、その除去に手間がかかることになる。また、2−フェニルイミダゾール誘導体は高価であるので、過剰の使用は製造コストを上昇させることとなる。よって、配位子の添加量は上記範囲内であることが好ましい。
【0045】
本発明に係るイリジウム錯体の製造方法における反応温度は、100℃以上250℃未満がより好ましく、150℃以上250℃未満が特に好ましく、150℃以上200℃未満がより特に好ましい。また、反応時間は、0.5時間以上72時間以下が好ましく、1時間以上48時間以下がより好ましく、1時間以上24時間以下が特に好ましい。反応系の加熱手段は特に限定されない。具体的には、オイルバス、サンドバス、マントルヒーター、ブロックヒーター、熱循環式ジャケットによる外部加熱、更にはマイクロ波照射による加熱等も利用できる。
【0046】
尚、本発明に係るイリジウム錯体の製造方法においては、不活性ガス(窒素、アルゴン等)雰囲気下で行うことが好ましい。また、本発明に係るイリジウム錯体の製造方法における圧力は、特に限定されないが、常圧(大気圧下)で行うことが好ましい。
【0047】
以上説明した方法により得られた一般式(3)で表されるイリジウム錯体は、一般的な後処理方法で処理した後、必要があれば精製し、又は、精製せずに高純度品として用いることができる。後処理の方法としては、例えば、抽出、冷却、水や有機溶媒を添加することによる晶析、反応混合物からの溶媒を留去する操作等を、単独又は組み合わせて行うことができる。精製の方法としては、再結晶、蒸留、昇華又はカラムクロマトグラフィー等を、単独又は組み合わせて行うことができる。
【0048】
そして、本発明で得られた一般式(3)で表されるイリジウム錯体は、有機EL素子等の燐光材料として好適に用いることができる。尚、本発明で製造可能な一般式(3)で表されるイリジウム錯体について、その例を化9に示す。
【0049】
【化9】