(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.コアシェル粒子
本発明のコアシェル粒子は、コア部と、コア部の表面を被覆するシェル部とを備えるコアシェル粒子である。コア部は、弾性体により形成されている。シェル部は、硬化剤とポリイミドとを含む組成物の硬化物により形成されている。
【0012】
本発明のコアシェル粒子は、弾性体により形成されたコア部と、硬化剤とポリイミドとを含む組成物の硬化物により形成されたシェル部とを備えているため、コア部による弾力性と、シェル部のポリイミドが備える優れた耐熱性、耐溶剤性、絶縁性、機械特性等を発揮することができる。また、本発明のコアシェル粒子は、シェル部が硬化剤とポリイミドとを含む組成物の硬化物により形成されていることにより、応力が加えられた場合であっても割れを生じにくく、優れた柔軟性を発揮する。従って、本発明のコアシェル粒子は、例えば、電子機器の絶縁性スペーサーなどとして好適に利用することができる。また、後述の通り、コアシェル粒子の表面にさらに導電性金属膜を被覆させることにより、柔軟性のある導電性粒子とすることもできる。以下、本発明のコアシェル粒子について、
図1を参照しながら詳述する。
【0013】
図1に示されるように、本発明のコアシェル粒子10は、コア部11と、コア部11の表面を被覆するシェル部12とを備えている。
【0014】
コア部11は、弾性体により形成されている。コア部11の弾性体を構成する素材としては、特に制限されないが、好ましくはポリマーが挙げられる。ポリマーとしては、特に制限されないが、後述の製造方法によって、コア部11を好適に形成する観点からは、好ましくはシリコーン(例えば、固体シリコーンゴムや液体シリコーンゴム等のシリコーンゴム等)が挙げられる。シリコーンとしては、液状シリコーンゴム(例えば、熱硬化性液状シリコーンゴム、室温硬化性液状シリコーンゴム等)の硬化物であることが好ましく、熱硬化性液状シリコーンゴムの硬化物であることが特に好ましい。なお、硬化前の熱硬化性液状シリコーンゴムの市販品は、後述の通りである。
【0015】
シリコーンは、硬化剤とシリコーンとを含む組成物の硬化物であってもよい。硬化剤としては、コア部11を硬化できるものであれば、特に制限されず、熱硬化性硬化剤(熱硬化剤)、光硬化性硬化剤(光硬化剤)の市販品等を使用できる。なお、コア部11において使用される硬化剤としては、シリコーンと反応して硬化するものであってもよいし、硬化剤単独で反応して硬化するものであってもよいし、シリコーンおよび硬化剤の両方と反応して硬化するものであってもよい。
【0016】
コア部11の弾性体を構成する素材は、1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0017】
コア部11が、硬化剤とシリコーンとを含む硬化物により形成されている場合、硬化剤の割合としては、特に制限されないが、シリコーン100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部程度、より好ましくは0.1〜10質量部程度が挙げられる。
【0018】
コア部11は、慣用の添加剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤等)を含んでいてもよい。上記添加剤の含有量は特に限定されず、適宜調整可能である。
【0019】
コア部11の直径としては、特に制限されないが、後述のようなマイクロチャンネル法により好適に製造する観点からは、好ましくは900μm以下、より好ましくは100〜700μm程度が挙げられる。
【0020】
シェル部12は、硬化剤とポリイミドとを含む組成物の硬化物により形成されている。シェル部12は、単層構成であってもよいし、多層(複層)構成であってもよい。
【0021】
上記ポリイミドとしては、特に制限されないが、後述の製造方法によりコアシェル粒子10を製造する観点からは、溶剤可溶性ポリイミドが挙げられる。溶剤可溶性ポリイミドの詳細については、後述の通りである。
【0022】
また、上記硬化剤としては、シェル部12を硬化できるものであれば、特に制限されず、熱硬化性硬化剤(熱硬化剤)、光硬化性硬化剤(光硬化剤)の市販品等を使用できる。なお、シェル部12において使用される硬化剤としては、ポリイミドと反応して硬化するものであってもよいし、硬化剤単独で反応して硬化するものであってもよいし、ポリイミドおよび硬化剤の両方と反応して硬化するものであってもよい。硬化剤としては、熱硬化性硬化剤を使用することが好ましく、熱硬化性エポキシ系硬化剤を用いることがより好ましい。熱硬化性エポキシ系硬化剤としては、各メーカーから市販されている一液型や二液型のものを用いることができるが、一液型がより好ましい。熱硬化性エポキシ系硬化剤の市販品としては、例えば、スコッチウェルドシリーズ(3M社)、デナタイトシリーズ(ナガセケムテックス株式会社)、TETRADシリーズ(三菱ガス化学株式会社)等が挙げられる。硬化剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
シェル部12を形成するための硬化剤の割合としては、特に制限されないが、ポリイミド100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部程度、より好ましくは5〜15質量部程度が挙げられる。
【0024】
シェル部12は、慣用の添加剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤等)を含んでいてもよい。上記添加剤の含有量は特に限定されず、適宜調整可能である。
【0025】
シェル部12の厚みとしては、特に制限されないが、製造の容易さの(特に、後述のようなマイクロチャンネル法により好適に製造する)観点からは、好ましくは100μm以下、より好ましくは1〜80μm程度が挙げられる。
【0026】
本発明のコアシェル粒子10の粒子径としては、特に制限されないが、製造の容易さの(特に、後述のようなマイクロチャンネル法により好適に製造する)観点からは、好ましくは1000μm以下、より好ましくは100〜800μm程度が挙げられる。
【0027】
本発明のコアシェル粒子10は、特に、コア部11がシリコーンにより形成されており、シェル部12が、熱硬化性エポキシ系硬化剤とポリイミドとを含む組成物の硬化物により形成されていることにより、コア部11のシリコーンが優れた弾力性を発揮し、シェル部12のポリイミドが優れた耐熱性、耐溶剤性、絶縁性、機械特性等を発揮する。また、本発明のコアシェル粒子10は、シェル部12が熱硬化性エポキシ系硬化剤とポリイミドとを含む組成物の硬化物により形成されていることにより、応力が加えられた場合であっても割れを生じにくく、優れた柔軟性を発揮する。これらの特性から、このような組成を備えるコアシェル粒子10は、電子機器の絶縁性スペーサー等として特に好適に利用することができる。さらに、後述の通り、このようなコアシェル粒子10の表面に導電性金属膜13を被覆させることにより、柔軟性に優れた導電性粒子20が好適に得られる。
【0028】
2.導電性粒子
本発明の導電性粒子は、コア部と、コア部の表面を被覆するシェル部と、シェル部の表面を被覆する導電性金属膜とを備えており、コア部は、弾性体により形成されており、シェル部は、硬化剤とポリイミドとを含む組成物の硬化物により形成されている。以下、
図2を参照しながら、本発明の導電性粒子について詳述する。
【0029】
図2に示されるように、本発明の導電性粒子20は、コア部11と、コア部11の表面を被覆するシェル部12と、シェル部の表面を被覆する導電性金属膜13とを備えている。
【0030】
本発明の導電性粒子20において、コア部11及びシェル部12は、それぞれ、前述の「1.コアシェル粒子」の項目で説明したものと同じである。本発明の導電性粒子20は、上述のコアシェル粒子10(例えば、後述のような製造方法で製造されたコアシェル粒子10)の表面に導電性金属膜13が形成されたものである。
【0031】
導電性金属膜13を構成する金属としては、特に制限されないが、優れた導電性を発揮する観点からは、例えばアルミニウム、銅、ニッケル、金、チタン、クロム、銀、パラジウム、白金、及びこれらの金属の少なくとも1種を含む合金などが挙げられる。
【0032】
導電性金属膜13の厚みとしては、特に制限されないが、微細な粒子として優れた導電性を発揮する観点からは、好ましくは200μm以下、より好ましくは1〜150μm程度が挙げられる。
【0033】
本発明の導電性粒子20の粒子径としては、特に制限されないが、微細な粒子として優れた導電性を発揮する観点からは、好ましくは1200μm以下、より好ましくは100〜1000μm程度が挙げられる。
【0034】
本発明の導電性粒子20において、コア部11がシリコーンにより形成されており、シェル部12が熱硬化性エポキシ系硬化剤とポリイミドとを含む組成物の硬化物により形成されているものは、コア部11が備える優れた弾力性と、シェル部12が備える熱硬化性エポキシ系硬化剤とポリイミドとを含む組成物の硬化物に由来する優れた物性(応力が加えられた場合であっても割れを生じにくく、優れた柔軟性を発揮する物性)を備えることができる。
【0035】
本発明の導電性粒子20は、電子部品などにおいて、好適に使用することができる。より具体的には、電子部品の基板上において、導電部材間(例えば電極間など)に配置するコネクタ等として好適に用いることができる。
【0036】
3.コアシェル粒子の製造方法
本発明のコアシェル粒子10の製造方法は、特に制限されず、公知乃至慣用のコアシェル粒子の製造方法を適用することができる。本発明のコアシェル粒子10の製造方法としては、例えば、コア部11に相当する粒子を作製し、次いで、上記粒子の表面にシェル部12を形成する方法が挙げられる。上記粒子は、懸濁重合法や乳化乳合法等の粒子を形成可能な重合方法や、国際公開第2002/068104号に開示された液滴の製造方法等の、公知乃至慣用の方法により製造できる。また、上記粒子の表面にシェル部12を形成する方法としては、例えば、上記粒子に対して硬化剤とポリイミドとを含む組成物を塗布し、硬化させる方法等が挙げられる。
【0037】
本発明のコアシェル粒子10の製造方法としては、コアシェル粒子を効率的に製造する観点から、特に、少なくとも以下の工程1及び工程2を備える方法が好ましい。当該方法を、以下、単に「本発明の製造方法」と称する場合がある。
工程1:第1マイクロチャンネルを流れる第1油性媒体と、第2マイクロチャンネルを流れる第2油性媒体とを、前記第1マイクロチャンネルと前記第2マイクロチャンネルの第1合流点で合流させる。
工程2:工程1に引き続き、前記第1合流点から下流側へ続く第3マイクロチャンネルを流れる第1油性媒体及び第2油性媒体を水性媒体中に吐出させて、第1油性媒体がコア部、第2油性媒体がシェル部を構成する、コアシェル粒子を形成する。
【0038】
本発明の製造方法においては、第1油性媒体が前述の弾性体またはその原料を含み、第2油性媒体が、ポリイミドまたはポリイミドを形成するモノマーと、硬化剤とを含んでいる。
【0039】
さらに、本発明の製造方法においては、当該工程1及び工程2を備えていることに加えて、第1油性媒体と第2油性媒体との間の界面張力γ1、第1油性媒体と水性媒体との界面張力γ2、第2油性媒体と水性媒体との界面張力γ3の値が、それぞれ、下記式(1)〜(3)を満たす、第1油性媒体、第2油性媒体及び水性媒体を用いる。
式(1): 0 > γ1−(γ2+γ3)
式(2): 0 < γ2−(γ1+γ3) < 151
式(3): 0 > γ3−(γ1+γ2)
【0040】
第1油性媒体、第2油性媒体及び水性媒体が存在する3成分系において、式(1)は、第1油性媒体と第2油性媒体とが所定の濡れ性を備えていることを意味している。同様に、式(3)は、第2油性媒体と水性媒体とが所定の濡れ性を備えていることを意味している。さらに、式(2)は、第1油性媒体と水性媒体とが濡れ広がり難いことを意味している。
【0041】
一般に、第1油性媒体及び第2油性媒体からなる2相系液体媒体が水性媒体中に吐出された際、第1油性媒体及び第2油性媒体の表面自由エネルギーが最小となるように液滴形状が変化する。2相系液体媒体の液滴の形成は、例えば、第1油性媒体と第2油性媒体とが、それぞれ別々に液滴を形成する場合、第1油性媒体及び第2油性媒体の半球液滴が連結した液滴を形成する場合、第1油性媒体及び第2油性媒体の一方がコア部、他方がシェル部を構成したコアシェル構造の液滴を形成する場合が考えられる。
【0042】
本発明の製造方法においては、前記工程1及び工程2を備え、かつ、第1油性媒体、第2油性媒体及び水性媒体として、前記式(1)〜(3)の特定の関係を充足しているものを用いることにより、良質なコアシェル粒子を効率的に製造することができる。より具体的には、第1油性媒体及び第2油性媒体からなる2相系液体媒体が水性媒体中に吐出されて球状粒子が形成される際、互いに濡れ広がり難い成分である第1油性媒体と水性媒体との界面部分において、表面自由エネルギーが著しく増大して不安定となる。このとき、第1油性媒体及び水性媒体と所定の濡れ性を備えている第2油性媒体が、第1油性媒体を覆うようにして球状となることにより、2相系液体媒体が球状を形成する際の表面自由エネルギーが減少し、安定な粒子が生成する。すなわち、第1油性媒体がコア部、第2油性媒体がシェル部を有するコアシェル粒子が生成する。
以下、
図3、
図4及び
図7の模式図を参照しながら、本発明の製造方法について詳述する。
【0043】
本発明の製造方法においては、マイクロチップに形成されたマイクロチャンネル(微小流路)内に原料を供給して目的物を生成する、所謂マイクロチャンネル法を用いる。例えば、マイクロチャンネル法を用いたコアシェル粒子の製造方法においては、コアシェル粒子のコア部の原料となる油性媒体と、シェル部の原料となる油性媒体をマイクロチャンネルに供給し、水性媒体中にこれらの油性媒体の液滴が形成されるように、油性媒体を水性媒体中に吐出させる。このとき、水性媒体中に生成した油性媒体の液滴が、自らの表面張力によって、液滴の表面自由エネルギーが最小となる球形粒子になることを利用して、コアシェル粒子を生成させる。
【0044】
本発明の製造方法においては、例えば
図3に示されるように、第1マイクロチャンネル1を流れる第1油性媒体7(弾性体またはその原料を含む)と、第2マイクロチャンネル2を流れる第2油性媒体8(ポリイミド、またはポリイミドを形成するモノマーを含む)とを、第1マイクロチャンネル1と第2マイクロチャンネル2の第1合流点Pで合流させる工程1を行う。次に、工程1に引き続き、第1合流点Pから下流側へ続く第3マイクロチャンネル3を流れる第1油性媒体7及び第2油性媒体8を水性媒体9中に吐出させて、第1油性媒体7がコア部、第2油性媒体8がシェル部を構成する、コアシェル粒子10を形成する(工程2)。
【0045】
本発明の製造方法では、工程1において、第1合流点Pで合流した第1油性媒体7及び第2油性媒体8は、二相流の状態で第3マイクロチャンネル3を流れる。次に、工程2において、第3マイクロチャンネル3を流れる第1油性媒体7及び第2油性媒体8は、水性媒体9中に吐出される。このとき、本発明の製造方法においては、第1油性媒体7と第2油性媒体8との間の界面張力γ1、第1油性媒体7と水性媒体9との界面張力γ2、第2油性媒体8と水性媒体9との界面張力γ3の値が、それぞれ、上記式(1)〜(3)の特定の関係を有していることにより、水性媒体9中において、第1油性媒体7がコア部、第2油性媒体8がシェル部を構成するコアシェル粒子10が好適に形成され、良質なコアシェル粒子10を効率的に製造することができる。
【0046】
本発明の製造方法において、良質なコアシェル粒子10を効率的に製造する観点からは、γ1〜γ3は、上記式(1)及び(3)の関係を充足することに加え、さらに以下の式(1a)及び(3a)の関係を充足していることが好ましい。
式(1a): 0 > γ1−(γ2+γ3) > −160
式(3a): 0 > γ3−(γ1+γ2) > −160
【0047】
本発明の製造方法において、第1油性媒体7(弾性体またはその原料を含む)及び第2油性媒体8(ポリイミド、またはポリイミドを形成するモノマーを含む)の組成としては、式(1)〜(3)の特定の関係を充足できるものであれば、特に制限されない。
【0048】
前述の通り、コアシェル粒子10のコア部11を形成する弾性体としては、ポリマーが好ましい。第1油性媒体7がポリマーを含む場合、ポリマーとしては、特に制限されないが、上記式(1)〜(3)の特定の関係を充足して、コア部11を好適に形成する観点からは、好ましくはシリコーン(例えば、固体シリコーンゴムや液体シリコーンゴム等のシリコーンゴム等)が挙げられる。シリコーンは、重合してポリマーを形成するモノマーやオリゴマーとして含まれていてもよい。シリコーンとしては、液状シリコーンゴム(例えば、熱硬化性液状シリコーンゴム、室温硬化性液状シリコーンゴム等)が好ましく、熱硬化性液状シリコーンゴムが特に好ましい。熱硬化性液状シリコーンゴムを用いることにより、水性媒体9中でコアシェル粒子を形成するまでは、上記式(1)〜(3)の特定の関係を充足する液体状態を好適に保つことができ、その後にコアシェル粒子を加熱することによって、コア部を好適に硬化させることができる。
【0049】
熱硬化性液状シリコーンゴムの市販品としては、例えば、エラストジルLRシリーズ(旭化成ワッカーシリコン株式会社)、セミコジルシリーズ(旭化成ワッカーシリコン株式会社)、一液型RTVシリーズ(信越化学工業株式会社)、TSEシリーズ(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)等が挙げられる。
【0050】
第1油性媒体7に含まれるポリマーまたはモノマーは、それぞれ、1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。第1油性媒体7に含まれるポリマーまたはモノマーの含有量としては、特に制限されないが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点からは、好ましくは35〜95質量%程度、より好ましくは45〜70質量%程度が挙げられる。
【0051】
また、第2油性媒体8は、ポリイミドまたはモノマー(ポリイミドを形成するモノマー)を含んでいる。すなわち、第2油性媒体8において、ポリイミドは、重合してポリイミドを形成するモノマーとして含まれていてもよい。
【0052】
第2油性媒体8において、ポリイミドとしては、特に制限されないが、溶剤可溶性ポリイミドを用いることが好ましい。溶剤可溶性ポリイミドは、有機溶剤に対して可溶なポリイミドであり、有機溶剤に対して1質量%以上溶解するものが好ましい。有機溶剤としては、一般的な有機溶剤が挙げられ、例えば、ペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、メチルエチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン、これら2種以上の混合物等が挙げられる。溶剤可溶性ポリイミドを用いることにより、水性媒体9中でコアシェル粒子を形成するまでは、上記式(1)〜(3)の特定の関係を充足する液体状態を好適に保つことができる。
【0053】
溶剤可溶性ポリイミドの市販品としては、例えば、SPIXAREAシリーズ(ソマール株式会社)、PIADシリーズ(荒川化学工業株式会社)、ソルピー6,6−PI(ソルピー工業株式会社)、Q−VR/ADシリーズ(株式会社ピーアイ技術研究所)等の溶剤可溶性ポリイミドの溶液(有機溶剤に溶解させた溶液)等が挙げられる。
【0054】
第2油性媒体8に含まれるポリイミドまたはモノマーは、それぞれ、1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。第2油性媒体8に含まれるポリイミドまたはモノマーの含有量としては、特に制限されないが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点からは、好ましくは5〜30質量%程度、より好ましくは5〜20質量%程度が挙げられる。
【0055】
上述のように、第2油性媒体は硬化剤を必須成分として含む。一方、第1油性媒体は硬化剤をさらに含んでいてもよい。硬化剤を含むことにより、水性媒体9中でコアシェル粒子10を形成するまでは、上記式(1)〜(3)の特定の関係を充足する液体状態を好適に保つことができ、その後にコアシェル粒子を加熱することによって、コア部またはシェル部を好適に硬化させることができる。また、第2油性媒体が硬化剤を含むことにより、優れた柔軟性を有するコアシェル粒子を得ることができる。
【0056】
硬化剤の種類としては、コア部やシェル部を硬化できるものであれば、特に制限されず、熱硬化性硬化剤(熱硬化剤)、光硬化性硬化剤(光硬化剤)の市販品等を使用できる。例えば、ポリイミドまたはそのモノマーを含む第2油性媒体の硬化剤としては、熱硬化性硬化剤を使用することが好ましく、熱硬化性エポキシ系硬化剤を用いることがより好ましい。熱硬化性エポキシ系硬化剤としては、各メーカーから市販されている一液型や二液型のものを用いることができるが、一液型がより好ましい。熱硬化性エポキシ系硬化剤の市販品としては、例えば、スコッチウェルドシリーズ(3M社)、デナタイトシリーズ(ナガセケムテックス株式会社)、TETRADシリーズ(三菱ガス化学株式会社)等が挙げられる。硬化剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
第1油性媒体7に硬化剤が含まれる場合、その含有量としては、特に制限されないが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点からは、第1油性媒体7に含まれるポリマーまたはモノマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部程度、より好ましくは0.1〜10質量部程度が挙げられる。また、第2油性媒体8における硬化剤の含有量としては、特に制限されないが、同様の観点から、第2油性媒体8に含まれるポリイミドまたはモノマー100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部程度、より好ましくは5〜15質量部程度が挙げられる。
【0058】
また、第1油性媒体7及び第2油性媒体8は、それぞれ、油性溶剤を含んでいてもよい。油性溶剤を用いることにより、油性溶剤の種類や配合割合によって界面張力γ1〜γ3を調整できるため、上記式(1)〜(3)の特定の関係を容易に充足させることができる。また、例えば前述のポリマーやポリイミド(ポリイミドを形成するためのモノマーも含む)と共に油性溶剤を用いることにより、水性媒体9中でコアシェル粒子を形成するまでは、上記式(1)〜(3)の特定の関係を充足する液体状態を好適に保つことができ、その後にコアシェル粒子から油性溶剤を除去することによって、固体状のコアシェル粒子を好適に製造することができる。
【0059】
上記油性溶剤としては、一般的な有機溶剤を用いることができ、例えば、ペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、メチルエチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。油性溶剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
第1油性媒体7に含まれる油性溶剤の含有量としては、特に制限されないが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点からは、好ましくは0〜65質量%程度、より好ましくは5〜50質量%程度が挙げられる。また、第2油性媒体8に含まれる油性溶剤の含有量としては、特に制限されないが、同様の観点から、好ましくは70〜90質量%程度、より好ましくは80〜90質量%程度が挙げられる。
【0061】
第1油性媒体7及び第2油性媒体8は、それぞれ、その他の慣用の添加剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤等)を含んでいてもよい。上記添加剤の含有量は特に限定されず、適宜調整可能である。
【0062】
本発明の製造方法においては、第1油性媒体7がシリコーンを含み、且つ、第2油性媒体8がポリイミドおよび硬化剤を含むことが特に好ましい。これにより、コア部11がシリコーンにより形成されており、シェル部20が硬化剤とポリイミドとを含む組成物の硬化物により形成された良質なコアシェル粒子を効率的に製造することができる。さらに、本発明の製造方法においては、第1油性媒体7及び第2油性媒体8に前述の油性溶剤を用いて、第1油性媒体7及び第2油性媒体8の界面張力を、上記式(1)〜(3)の特定の関係を充足するように調整することが好ましい。
【0063】
水性媒体9としては、上記式(1)〜(3)の特定の関係を充足できるものであれば、特に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキシドなどの水溶性成分を含む水溶液が挙げられる。
【0064】
水溶性成分としては、特に制限されず、各メーカーから市販されているものを用いることができる。例えば、ポリビニルアルコールの市販品としては、ゴーセノールシリーズ(日本合成化学工業株式会社)、ポバールシリーズ(株式会社クラレ)、ポバールシリーズ(日本酢ビ・ポバール株式会社)、デンカポバールシリーズ(電気化学工業株式会社)等が挙げられる。水溶性成分は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
水性媒体9において、水溶液に含まれる水溶性成分の含有量としては、特に制限されないが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点からは、好ましくは0.1〜10質量%程度、より好ましくは1〜5質量%程度が挙げられる。
【0066】
本発明の製造方法において、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点から、第1油性媒体7、第2油性媒体8及び水性媒体9の特に好ましい組成としては、第1油性媒体7がシリコーンと油性溶剤の混合物により形成されており、第2油性媒体8がポリイミド、熱硬化性エポキシ系硬化剤及び油性溶剤の混合物により形成されており、水性媒体がポリビニルアルコールを含む水溶液であるものが挙げられる。
【0067】
前述の通り、本発明において、シリコーンにより形成されたコア部11と、熱硬化性エポキシ系硬化剤とポリイミドとを含む組成物の硬化物により形成されたシェル部12とを有するコアシェル粒子10は、コア部11のシリコーンが優れた弾力性を発揮し、シェル部12のポリイミドが優れた耐熱性、耐溶剤性、絶縁性、機械特性等を発揮する。また、シェル部12が硬化剤とポリイミドとを含む組成物の硬化物により形成されていることにより、コアシェル粒子10は、応力が加えられた場合であっても割れを生じにくく、優れた柔軟性を発揮する。
【0068】
第1油性媒体7と第2油性媒体8との間の界面張力γ1としては、上記式(1)〜(3)を満たせば特に制限されないが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点から、好ましくは0mN/mを超え10mN/m以下、より好ましくは0mN/mを超え5mN/m以下が挙げられる。また、第1油性媒体7と水性媒体9との界面張力γ2としては、上記式(1)〜(3)を満たせば特に制限されないが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点から、好ましくは0mN/mを超え180mN/m以下、より好ましくは5〜160mN/m程度が挙げられる。第2油性媒体8と水性媒体9との界面張力γ3としては、上記式(1)〜(3)を満たせば特に制限されないが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点から、好ましくは0mN/mを超え10mN/m以下、より好ましくは0mN/mを超え5mN/m以下が挙げられる。
【0069】
本発明の製造方法においては、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点から、第1油性媒体7と第2油性媒体8との間の界面張力γ1と、第2油性媒体8と水性媒体9との界面張力γ3とが、下記式(4)の関係をさらに充足することが好ましい。これにより、コアシェル粒子の形成過程において、第2油性媒体8が、第1油性媒体7を覆うようにして球状となることにより、2相系液体媒体が球状を形成する際の表面自由エネルギーがより減少し、安定な粒子が生成する。
式(4): γ3 > γ1
【0070】
本発明の製造方法において、第1油性媒体7及び第2油性媒体8をそれぞれ、第1マイクロチャンネル1及び第2マイクロチャンネル2に供給する方法としては、特に制限されず、公知のマイクロチャンネル法で用いられる方法を採用することができる。公知のマイクロチャンネル法で用いられる方法としては、例えば、シリンジ、シリンジポンプなどの流速を調整できる液体供給装置を用いる方法などが挙げられる。シリンジおよびシリンジポンプとしては、市販品を利用できる。シリンジの市販品としては、テルモ株式会社製テルモシリンジやハミルトン社製ガスタイトシリンジ等が挙げられる。シリンジポンプの市販品としては、室町機械株式会社製のLegato100、KD SCIENTIFIC社のKDS-100等が挙げられる。シリンジは、市販のチューブを用いてマイクロチップと接続させる。チューブとしては、PTFE製チューブなどを好適に使用できる。
【0071】
第1マイクロチャンネル1における第1油性媒体7の流速としては、特に制限されないが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点からは、好ましくは0.1〜50ml/hr程度、より好ましくは0.5〜30ml/hr程度、さらに好ましくは2.5〜5ml/hr程度が挙げられる。また、第2マイクロチャンネル2における第2油性媒体8の流速としては、特に制限されないが、同様の観点から、好ましくは0.1〜50ml/hr程度、より好ましくは0.5〜30ml/hr程度、さらに好ましくは2.5〜5ml/hr程度が挙げられる。
【0072】
また、本発明の製造方法において、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点からは、
図3に示されるように、第3マイクロチャンネル3を流れる第1油性媒体7及び第2油性媒体8が水性媒体9中に吐出される部分において、第3マイクロチャンネル3と、水性媒体9が流れる第4マイクロチャンネル4と、水性媒体9が流れる第5マイクロチャンネルとが合流する、第2合流点Qを備えていることが好ましい。
【0073】
本発明の製造方法では、第2合流点Qにおいて、第4マイクロチャンネル4を流れる水性媒体9の流れる方向と、第5マイクロチャンネル5を流れる水性媒体9の流れる方向とが、180°以下の角をなすように、第4マイクロチャンネル4を流れる水性媒体9と第5マイクロチャンネル5を流れる水性媒体9とが合流していることが好ましい。
【0074】
例えば
図3に示されるように、第4マイクロチャンネル4を流れる水性媒体9と、第5マイクロチャンネル5を流れる水性媒体9とが、対向する方向に流れており、第2合流点Qで合流していてもよい。すなわち、第2合流点Qにおいて、第4マイクロチャンネル4を流れる水性媒体9の流れる方向と、第5マイクロチャンネル5を流れる水性媒体9の流れる方向とが、180°の角をなすように、第4マイクロチャンネル4を流れる水性媒体9と第5マイクロチャンネル5を流れる水性媒体9とが合流していてもよい。
【0075】
また、例えば後述の
図7に示されるように、第2合流点Qにおいて、第4マイクロチャンネル4を流れる水性媒体9の流れる方向と、第5マイクロチャンネル5を流れる水性媒体9の流れる方向とが、180°未満の角をなすように、第4マイクロチャンネル4を流れる水性媒体9と第5マイクロチャンネル5を流れる水性媒体9とが合流していてもよい。
【0076】
図3に示されるように、第1油性媒体7及び第2油性媒体8は、第2合流点Qにおいて、水性媒体9中に吐出されている(工程2)。工程2において、第2合流点Qで水性媒体9と合流した第1油性媒体7及び第2油性媒体8は、第2合流点Qから下流側へ続く第6マイクロチャンネル6を通過させながら、コアシェル粒子を形成させることが好ましい。
【0077】
第4,第5マイクロチャンネル4,5に水性媒体9を供給する方法としては、第1油性媒体7及び第2油性媒体8と同様、前述の公知のマイクロチャンネル法で用いられる方法を採用することができる。
【0078】
第4,第5マイクロチャンネル4,5を流れる水性媒体9の流速としては、特に制限されないが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点からは、それぞれ、好ましくは30〜200ml/hr程度、より好ましくは50〜150ml/hr程度が挙げられる。なお、第4マイクロチャンネル4を流れる水性媒体9の流速と、第5マイクロチャンネル5を流れる水性媒体9の流速とは、異なっていてもよいが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点からは、同程度(例えば、流速差が−2〜2ml/hr程度)であることが好ましい。
【0079】
本発明の製造方法において、第1マイクロチャンネル1、第2マイクロチャンネル2、これらのマイクロチャンネルの合流路である第3マイクロチャンネル3、さらに第4マイクロチャンネル4、第5マイクロチャンネル5、第6マイクロチャンネル6は、それぞれ、基板等に形成された微小流路である。
【0080】
本発明の製造方法において、第1マイクロチャンネル1の直径(長さ方向とは垂直方向)としては、特に制限されないが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点からは、好ましくは100〜900μm程度、より好ましくは300〜700μm程度が挙げられる。また、第2マイクロチャンネル2の直径(長さ方向とは垂直方向)としては、特に制限されないが、同様の観点から、好ましくは100〜900μm程度、より好ましくは300〜700μm程度が挙げられる。第3マイクロチャンネル3の直径(長さ方向とは垂直方向)としては、特に制限されないが、同様の観点から、好ましくは100〜900μm程度、より好ましくは300〜700μm程度が挙げられる。
【0081】
また、水性媒体9を供給する第4,第5マイクロチャンネル4,5の直径(長さ方向とは垂直方向)としては、特に制限されないが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点からは、好ましくは300〜2000μm程度、より好ましくは500〜1500μm程度が挙げられる。
【0082】
さらに、コアシェル粒子を形成させる第6マイクロチャンネル6の直径(長さ方向とは垂直方向)としては、特に制限されないが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点からは、好ましくは300〜2000μm程度、より好ましくは500〜1500μm程度が挙げられる。
【0083】
本発明の製造方法によって製造されるコアシェル粒子の粒子径は、マイクロチャンネルの直径(長さ方向とは垂直方向)によって調整することができ、例えば、第1,2,3マイクロチャンネルの直径が300μm程度である場合、粒子径が約150〜250μm程度のコアシェル粒子が得られ、上記直径が500μm程度である場合、粒子径が約350〜450μm程度のコアシェル粒子が得られ、上記直径が700μm程度である場合、粒子径が約500〜650μm程度のコアシェル粒子が得られる。
【0084】
また、第1マイクロチャンネル1の長さ(流れ方向)としては、特に制限されないが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点からは、好ましくは0.1〜8mm程度、より好ましくは1〜6mm程度が挙げられる。第2マイクロチャンネル2の長さ(流れ方向)としては、特に制限されないが、同様の観点からは、好ましくは0.1〜8mm程度、より好ましくは1〜6mm程度が挙げられる。第3マイクロチャンネル3の長さ(流れ方向)としては、特に制限されないが、同様の観点からは、好ましくは0.1〜8mm程度、より好ましくは1〜6mm程度が挙げられる。
【0085】
水性媒体9を供給する第4,第5マイクロチャンネル4,5の長さ(流れ方向)としては、特に制限されないが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点からは、好ましくは0.1〜8mm程度、より好ましくは1〜6mm程度が挙げられる。
【0086】
コアシェル粒子を形成させる第6マイクロチャンネル6の長さ(流れ方向)としては、特に制限されないが、良質なコアシェル粒子を効率的に製造する観点からは、好ましくは1〜15mm程度、より好ましくは5〜10mm程度が挙げられる。
【0087】
本発明の製造方法において、前述の工程2において水性媒体9中で形成されたコアシェル粒子10を硬化させる工程3を行うことができる。例えば、第1油性媒体7及び第2油性媒体8が、熱硬化性または光硬化性成分を含んでいる場合には、加熱または光照射によりコアシェル粒子10を硬化させることができる。
【0088】
工程3においては、コアシェル粒子10を水性媒体9中で硬化させる工程3−1を備えていてもよい。
【0089】
工程3−1において、水性媒体9中で加熱硬化させる場合の加熱温度としては、水性媒体9の沸点以下の温度、かつ、コア部とシェル部を硬化できる温度であれば特に制限されないが、好ましくは60〜98℃程度が挙げられる。水性媒体9中で加熱硬化させる場合の加熱時間は、特に制限されないが、好ましくは0.1〜5時間程度が挙げられる。
【0090】
工程3−1においては、上記のような加熱温度で、水性媒体9中で予備硬化させたコアシェル粒子10を、さらに高温で加熱して硬化(本硬化)させてもよい。本硬化における加熱温度としては、特に制限されないが、好ましくは100〜200℃程度が挙げられる。本硬化における加熱時間としては、特に制限されないが、好ましくは0.5〜8時間程度が挙げられる。水性媒体9中での本硬化は、例えば耐圧容器などを用いて行うことができる。
【0091】
また、工程3においては、コアシェル粒子10と水性媒体9とを分離した後、コアシェル粒子10を硬化させる工程3−2を備えていてもよい。
【0092】
工程3−2において、水性媒体9から分離したコアシェル粒子10を加熱硬化させる場合の加熱温度としては、コア部及びシェル部の油性溶剤を蒸発させることができ、かつ、コア部とシェル部を硬化できる温度であれば特に制限されないが、好ましくは100〜200℃程度が挙げられる。
【0093】
さらに、工程3において、コアシェル粒子10を水性媒体9中で硬化させる工程3−1と、工程3−1で硬化(予備硬化)されたコアシェル粒子10と水性媒体9とを分離した後、コアシェル粒子10をさらに硬化(本硬化)させる工程3−2を備えていてもよい。
【0094】
工程3−1と工程3−2を備える場合、工程3−1において、コア部の硬化温度よりも高温かつ第2油性媒体8に含まれる油性溶剤の沸点よりも低温で加熱を行い、続いて、工程3−2において、コアシェル粒子10をシェル部の硬化温度以上、かつ、第1油性媒体7及び第2油性媒体8に含まれる油性溶剤の沸点以上の高温で加熱することが好ましい。これにより、まず、工程3−1の予備硬化によって、シェル部は液状のままコア部が硬化し、コア部が硬化する際にコア部に含まれる油性媒体をシェル部に移行させることができる。次に、工程3−2の本硬化において、シェル部の硬化と共に、シェル部に含まれる油性溶剤を蒸発させ、固体状の良質なコアシェル粒子10を製造することができる。
【0095】
工程3−1における硬化(予備硬化)と、工程3−2における硬化(本硬化)の2段階で加熱硬化を行う場合、工程3−1における加熱温度としては、好ましくは60〜98℃程度が挙げられ、工程3−2における加熱温度としては、好ましくは100〜200℃程度が挙げられる。予備硬化と本硬化における加熱時間は、特に制限されず、例えば、それぞれ前述の加熱時間が挙げられる。
【0096】
水性媒体9からコアシェル粒子10を分離する手法としては、特に制限されず、例えば、ろ過、乾燥などの公知の方法が挙げられる。
【0097】
本発明の製造方法は、例えば
図7に示されるような、第1マイクロチャンネル1、第2マイクロチャンネル2、第3マイクロチャンネル3、第4マイクロチャンネル4、第5マイクロチャンネル5、第6マイクロチャンネル6、第1合流点P、及び第2合流点Qを、それぞれ複数備えるマイクロチップを用いて製造することもできる。
【0098】
例えば
図7に示されるマイクロチップにおいては、第1油性媒体の供給口1aから供給された第1油性媒体7は、2方向に分かれて第1マイクロチャンネル1を流れる。同様に、第2油性媒体の供給口2aから供給された第2油性媒体8も、2方向に分かれて第2マイクロチャンネル2を流れる。その後、第1マイクロチャンネル1を流れる第1油性媒体7と、第2マイクロチャンネル2を流れる第2油性媒体8とは、それぞれ、第1マイクロチャンネル1と第2マイクロチャンネル2の第1合流点Pで合流する。(工程1)。さらに、工程1に引き続き、第1合流点Pから下流側へ続く第3マイクロチャンネル3を流れる第1油性媒体7及び第2油性媒体8を水性媒体9中に吐出させて、第1油性媒体7がコア部、第2油性媒体8がシェル部を構成する、コアシェル粒子10を形成することができる(工程2)。
【0099】
図7に示されるマイクロチップにおいては、水性媒体の供給口4aから供給された水性媒体9についても、2方向に分かれて第4マイクロチャンネル4を流れる。同様に、水性媒体9の供給口5aから供給された水性媒体9についても、2方向に分かれて第5マイクロチャンネル5を流れる。そして、前述の通り、第2合流点Qにおいて、第4マイクロチャンネル4を流れる水性媒体9の流れる方向と、第5マイクロチャンネル5を流れる水性媒体9の流れる方向とが、180°未満の角をなすように、第4マイクロチャンネル4を流れる水性媒体9と第5マイクロチャンネル5を流れる水性媒体9とが合流している。
【0100】
図7に示されるマイクロチップにおいては、第1合流点P及び第2合流点Qの数が、それぞれ8つであり、第3マイクロチャンネル3及び第6マイクロチャンネル6の数も、それぞれ8つである。
【0101】
4.導電性粒子の製造方法
本発明の導電性粒子20は、本発明のコアシェル粒子10(例えば、本発明の製造方法により得られるコアシェル粒子等)の表面に導電性金属膜13を形成することにより製造することができる。
【0102】
コアシェル粒子10の表面に導電性金属膜13を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、無電解めっき法、金属蒸着法、スパッタリング法など、公知の金属膜形成法を採用することができる。
【実施例】
【0103】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
【0104】
(コアシェル粒子の柔軟性評価)
実施例1及び比較例1において、マイクロメータNDC-25PX(株式会社ミツトヨ)を用いて、得られた粒子をスピンドルに挟んで応力を加えて、粒子の直径の30%分圧縮した(直径の70%まで歪ませた)後、光学顕微鏡を用いて粒子表面を観察した。
【0105】
(界面張力の測定)
実施例2〜7及び比較例2〜3において、第1油性媒体と第2油性媒体の間の界面張力γ1、第1油性媒体と水性媒体の間の界面張力γ2、第2油性媒体と水性媒体の間の界面張力γ3は、それぞれ、協和界面科学株式会社製の自動接触角計DMs−401を用いて測定した。また、これらの値から、γ1−(γ2+γ3)、γ2−(γ1+γ3)及びγ3−(γ1+γ2)の値を算出した。これらの結果を表1に示す。
【0106】
(粒子の生成の確認)
実施例2〜7及び比較例2〜3において、フォトロン社製高速度カメラFASTCAM MAX 120Kを用いて、第3マイクロチャンネルを流れる第1油性媒体と第2油性媒体の2相流が第2合流点Qにおいて水性媒体中に吐出される様子を観察し、粒子生成の様子を確認した。その結果、粒子径の揃った粒子が生成した場合を「○」、粒子と共に微小粒子や糸屑状の析出物が生成した場合を「△」、粒子が生成せずに塊状の析出物が生成した場合を「×」として評価した。結果を表1に示す。
【0107】
(粒子のコアシェル構造の確認)
実施例2〜7及び比較例2〜3において、得られた粒子の断面を電子顕微鏡で観察し、コアシェル構造の有無を確認した。コアシェル構造が確認された場合を「○」、コアシェル構造が確認されなかった場合を「×」として評価した。結果を表1に示す。
【0108】
(実施例1)
第1油性媒体及び第2油性媒体として、ともに同じ熱硬化性液状シリコーンゴムを用いた。水性媒体として、ポリビニルアルコール(日本合成化学製、ゴーセノールGL-03)2.0質量部に純水98.0質量部を加えて溶解させた水溶液を用いた。
【0109】
図4に示されるようなマイクロチャンネルを有するマイクロチップを用い、シリンジポンプ(KD scientific社製KDS-200)を用いて、第1マイクロチャンネル1から第1油性媒体を流速0.2ml/hrで供給した。同様に、シリンジポンプ(KD scientific社製KDS-200)を用いて、第2マイクロチャンネルから第2油性媒体を流速0.2ml/hrで供給した。同様に、シリンジポンプ(KD scientific社製KDS-200)を用いて、第4マイクロチャンネル4及び第5マイクロチャンネル5からそれぞれ水性媒体を流速100ml/hrで供給した。第1マイクロチャンネル1を流れる第1油性媒体7と、第2マイクロチャンネル2を流れる第2油性媒体8とを、第1マイクロチャンネルと第2マイクロチャンネルの第1合流点Pで合流させ、さらに、第1合流点Pから下流側へ続く第3マイクロチャンネル3を流れる第1油性媒体7および第2油性媒体8を水性媒体9中に吐出させた。第2合流点Qで水性媒体9と合流した第1油性媒体7および第2油性媒体8は、第1油性媒体および第2油性媒体8の単独粒子(液滴)を形成しながら、第6マイクロチャンネル6を通過し、マイクロチップ外に排出された。排出された上記単独粒子と水性媒体9は、水性媒体9を50.0g入れた100mlガラスビーカー内に回収した。
【0110】
次に、回収した上記単独粒子と水性媒体9は、95℃静置下で1時間加熱して、硬化させた。次に、濾過によって水性媒体を除去した後、硬化後の単独粒子を純水で3回洗浄した。次に、洗浄後の単独粒子を130℃で1時間乾燥させ、コア粒子を得た。
【0111】
ポリイミド溶液(荒川化学工業製、PIAD300)の溶媒を減圧乾燥機にて留去し、得られたポリイミド固形物30.0質量部にトルエン70.0質量部を加えて室温で24時間攪拌して溶解させ、硬化剤(三菱ガス化学製、TETRAD-X)を2.2質量部加えて5分攪拌してポリイミド溶液を作製した。
【0112】
作製したポリイミド溶液に、上記で得たコア粒子を浸漬させて、粒子表面に満遍なくポリイミド溶液を付着させた後、これを、水性媒体9を50.0g入れた100mlガラスビーカー内に回収した。
【0113】
表面にポリイミド溶液を付着させたコア粒子と水性媒体9は、大気圧〜−90kPaの減圧下でトルエンを留去した後、圧力容器内で130℃で1時間、続いて180℃で3時間の条件で加熱した。次に、デカンテーションによって水性媒体を除去した後、得られた粒子を純水で3回洗浄し、50℃で2時間乾燥させて、硬化したコアシェル粒子を得た。なお、得られたコアシェル粒子を無作為に10個選択し、マイクロスコープで観察したところ、いずれのコアシェル粒子についても、シェル部に割れ等の不具合は生じていなかった。
【0114】
実施例1で得られたコアシェル粒子について、上述の方法で柔軟性の評価を実施した。その結果、実施例1で得られたコアシェル粒子は柔軟性に優れ、粒子表面に亀裂は生じなかった。圧縮前後のコアシェル粒子をマイクロスコープで観察した画像を
図8に示す。
【0115】
(実施例2)
第1油性媒体として、熱硬化性液状シリコーンゴム66.6質量部にトルエン33.4質量部を添加したものを用いた。また、第2油性媒体として、ポリイミド溶液(荒川化学工業製、PIAD300)の溶媒を減圧乾燥機にて留去し、得られたポリイミド固形物30.0質量部にトルエン70.0質量部を加えて室温で24時間攪拌して溶解させ、硬化剤(三菱ガス化学製、TETRAD-X)を2.2質量部加えて5分攪拌したものを用いた。水性媒体として、ポリビニルアルコール(日本合成化学製、ゴーセノールGL-03)2.0質量部に純水98.0質量部を加えて溶解させた水溶液を用いた。
【0116】
図4に示されるようなマイクロチャンネルを有するマイクロチップを用い、シリンジポンプ(KD scientific社製KDS-200)を用いて、第1マイクロチャンネル1から第1油性媒体を流速0.2ml/hrで供給した。同様に、シリンジポンプ(KD scientific社製KDS-200)を用いて、第2マイクロチャンネルから第2油性媒体を流速0.2ml/hrで供給した。同様に、シリンジポンプ(KD scientific社製KDS-200)を用いて、第4マイクロチャンネル4及び第5マイクロチャンネル5からそれぞれ水性媒体を流速100ml/hrで供給した。第1マイクロチャンネル1を流れる第1油性媒体7と、第2マイクロチャンネル2を流れる第2油性媒体8とを、第1マイクロチャンネルと第2マイクロチャンネルの第1合流点Pで合流させ、さらに、第1合流点Pから下流側へ続く第3マイクロチャンネル3を流れる第1油性媒体7及び第2油性媒体8を水性媒体9中に吐出させた。
図4に示されるように、第1油性媒体7及び第2油性媒体8は、第2合流点Qにおいて、水性媒体9中に吐出されている。第2合流点Qで水性媒体9と合流した第1油性媒体7及び第2油性媒体8は、コアシェル粒子を形成しながら、第6マイクロチャンネル6を通過し、マイクロチップ外に排出された。排出されたコアシェル粒子10と水性媒体9は、水性媒体9を50.0g入れた100mlガラスビーカー内に回収した。
図5には、第2合流点Qの写真を示す。撮影は、高速度カメラ(Photron製FASTCAM Mini UX50)を用いて実施し(撮影条件:500fps、skip:0)、後述の
図6も同様である。
【0117】
次に、回収したコアシェル粒子10と水性媒体9は、大気圧〜−90kPaの減圧下でトルエンを留去した後、95℃静置下で1時間加熱して、予備硬化させた。次に、デカンテーションによって水性媒体を除去した後、コアシェル粒子を純水で3回洗浄した。次に、洗浄後のコアシェル粒子を130℃で1時間、続いて180℃で3時間の加熱条件で硬化させ、硬化したコアシェル粒子を得た。
【0118】
(実施例3〜7)
それぞれ、第1油性媒体、第2油性媒体、及び水性媒体として、表1に記載の組成のものを用いたこと、第1マイクロチャンネルを流れる第1油性媒体、第2マイクロチャンネルを流れる第2油性媒体、第4、第5マイクロチャンネルを流れる水性媒体の流速をそれぞれ表1の値としたこと以外は、実施例2と同様にして、硬化したコアシェル粒子を得た。
【0119】
(比較例1)
ポリイミド溶液に硬化剤(三菱ガス化学製、TETRAD-X)を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして、コアシェル粒子を得た。なお、得られたコアシェル粒子を無作為に10個選択し、マイクロスコープで観察したところ、10個中6個のコアシェル粒子について、シェル部に割れが生じていた。比較例1で得られたコアシェル粒子(シェル部に割れが生じていないもの)について、上述の方法で柔軟性の評価を実施した。その結果、比較例1で得られたコアシェル粒子は柔軟性が低く、粒子表面に亀裂が生じた。圧縮前後のコアシェル粒子をマイクロスコープで観察した画像を
図9に示す。なお、
図9に示すように、比較例1で得られたコアシェル粒子は、直径の20%分を圧縮した場合にも粒子表面に亀裂が生じた。
【0120】
(比較例2、3)
それぞれ、第1油性媒体、第2油性媒体、及び水性媒体として、表1に記載の組成のものを用いたこと、第1マイクロチャンネルを流れる第1油性媒体、第2マイクロチャンネルを流れる第2油性媒体、第4、第5マイクロチャンネルを流れる水性媒体の流速をそれぞれ表1の値としたこと以外は、実施例2〜7と同様に粒子の生成を行った。比較例2、3では、第2合流点Qにおいて粒子が形成されず、塊状(紐状)の析出物が生成した。即ち、コアシェル粒子を製造することができなかった。
図6には、比較例2における第2合流点Qの写真を示す。比較例3も比較例2と同様の状態であった。
【0121】
実施例1で得られたコアシェル粒子は、応力を加えた場合にも割れ等の不具合を生じず、柔軟性に優れるものであった。一方、比較例1で得られたコアシェル粒子は、柔軟性に劣っていた。
【0122】
【表1】
【0123】
表1に示される結果から明らかな通り、
図4に示されるようなマイクロチャンネルが形成されたマイクロチップを用い、前述の各界面張力γ1、γ2、及びγ3の値が、前記式(1)〜(3)の関係を満たす、第1油性媒体、第2油性媒体及び水性媒体を用いた実施例2〜7においては、良質なコアシェル粒子を効率的に製造することができた。一方、実施例2〜7と同様に、
図4に示されるようなマイクロチャンネルが形成されたマイクロチップを用い、さらにγ1、γ2、及びγ3の値が、前記式(1)と式(3)の関係を満たすものの、式(2)の関係を満たしていない比較例2,3では、粒子が形成されなかった。