(54)【発明の名称】光増感化学増幅型レジスト材料及びこれを用いたパターン形成方法、並びに、半導体デバイス、リソグラフィ用マスク及びナノインプリント用テンプレートの製造方法
【文献】
Seiichi TAGAWA, Satoshi ENOMOTO, Akihiro OSHIMA,Super High Sensitivity Enhancement by Photo-Sensitized Chemically Amplified Resist (PS-CAR) Process,Journal of Photopolymer Science and Technology,日本,The Technical Associationof Photopolymers, Japan,2014年 1月 8日,Vol. 26, No. 6 (2013),825-830
【文献】
田川精一, 大島明博,次世代の半導体製造の速度を10倍以上にする技術を確立,Press Release,日本,国立大学法人大阪大学,2013年 6月19日,2013.6.24に記者発表, 第30回国際フォトポリマーコンァレスにおいて2013.6.28に学会発表,[検索日2015.03.1,URL,http://www.sanken.osaka-u.ac.jp/jp/operation/pdf/press/tagawa20130619.pdf
【文献】
Jing Jiang, Souvik Chakrabarty, Mufei Yu and Christopher K. Ober,Metal Oxide Nanoparticle Photoresists for EUV Patterning,Journal of Photopolymer Science and Technology,2014年 8月 1日,Vol. 27, No. 5 (2014),663-666
【文献】
Hisashi Nakagawa, Takehiko Naruoka, Tomoki Nagai,Recent EUV Resists toward High Volume Manufacturing,Journal of Photopolymer Science and Technology,2015年 1月 7日,Vol. 27, No. 6 (2014),739-746
【文献】
TRIKERIOTIS et al.,Nanoparticle photoresists from HfO2 and ZrO2 for EUV patterning,Journal of Photopolymer Science and Technology,2012年 7月26日,Vol. 25, No. 5 (2012),583-586
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パターン露光工程は、投影レンズを有する露光装置を使用して実施されるとともに、前記レジスト材料膜と前記投影レンズとの間に屈折率1.0以上の液体を介在させた液浸リソグラフィによって実施される、請求項18又は19に記載のパターン形成方法。
前記膜形成工程において、前記基板上に前記レジスト材料膜を形成するに先立って、前記基板上に反射防止膜又はレジスト密着性若しくはレジスト形状改善のための膜を形成する、請求項18又は19に記載のパターン形成方法。
前記パターン露光工程後の前記レジスト材料膜に残存する前記(d)若しくは(f)で示される基中の光酸発生基から、前記一括露光工程における200nmを超える波長を有する非電離放射線の照射によって直接酸が発生するのを防ぐため、前記一括露光工程を実施するに先立って、前記光酸発生基が直接吸収する非電離放射線の波長の少なくとも一部を吸収する吸収膜を前記レジスト材料膜上に形成する工程を更に備える、請求項18〜24のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
前記パターン露光工程後の前記レジスト材料膜に残存する前記(d)若しくは(f)で示される基中の光酸発生基から、前記一括露光工程における200nmを超える波長を有する非電離放射線の照射によって直接酸が発生するのを防ぐため、前記一括露光工程は投影レンズを有する露光装置を使用して実施されるとともに、前記レジスト材料膜と前記投影レンズとの間に、前記光酸発生基が直接吸収する非電離放射線の波長の少なくとも一部を吸収する液体を介在させた液浸リソグラフィによって実施される、請求項18〜24のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
前記パターン露光工程後、前記一括露光工程を実施するまでの間、前記レジスト材料膜が存在する雰囲気を、減圧雰囲気又は窒素若しくはアルゴンを含む不活性雰囲気とする工程を更に備える、請求項18〜27のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
<光増感化学増幅型レジスト材料>
本実施形態に係る光増感化学増幅型レジスト材料は二段露光リソグラフィプロセスにおいて、感光性樹脂組成物として使用されるものである。二段露光リソグラフィプロセスは、パターン露光工程と、一括露光工程と、ベーク工程と、現像工程とを備える。
【0012】
上記パターン露光工程は、上記感光性樹脂組成物を使用して形成されたレジスト材料膜の所定の箇所に、第一の放射線を照射することにより実施される。上記一括露光工程は、上記パターン露光工程後の上記レジスト材料膜に第一の放射線の波長よりも低エネルギーの第二の放射線を照射することにより実施される。上記一括露光では、パターン露光のパターンサイズに比べて大きい領域に対して、より均一な露光量で露光するものである。上記ベーク工程は、上記一括露光工程後の上記レジスト材料膜を加熱することにより実施される。上記現像工程は、上記ベーク工程後の上記レジスト材料膜を現像液に接触させてレジストパターンを形成することにより実施される。
【0013】
なお、電離放射線は原子又は分子を電離させるのに十分なエネルギーを有する放射線である。これに対し、非電離放射線は、原子又は分子を電離させるのに十分なエネルギーを有しない放射線である。電離放射線としては、具体的には、ガンマ線、エックス線、アルファ線、重粒子線、陽子線、ベータ線、イオンビーム、電子線及び極紫外線等が挙げられる。パターン露光に用いる電離放射線は電子線、極紫外線又はイオンビームであることが好ましく、電子線又は極紫外線であることがより好ましい。非電離放射線としては、具体的には、遠紫外線、近紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、及び低周波等が挙げられる。パターン露光に用いる非電離放射線は遠紫外線(波長190〜300nm)が好ましい。一括露光に用いる非電離放射線は近紫外線(波長200〜450nm)であることが好ましい。
【0014】
パターン露光に用いられる上記第一の放射線は、電離放射線又は400nm以下の波長を有する非電離放射線であり、上記非電離放射線の波長は250nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、また、150nm以上であることが好ましく、190nm以上であることがより好ましい。一括露光に用いられる上記第二の放射線は、上記第一の放射線が非電離放射線である場合には、上記第一の放射線における非電離放射線の波長よりも長い波長を有する。また、上記第二の放射線は、200nmを超える波長を有する非電離放射線であり、250nmを超える波長を有する非電離放射線であることが好ましい。
【0015】
本実施形態に係る光増感化学増幅型レジスト材料はポジ型レジスト材料であってもよくネガ型レジスト材料であってもよく、後述するベース成分及び現像液等を選択することにより適宜選択される。露光により、パターン露光部が溶け出しパターン未露光部(遮光部)が残るレジスト材料のことをポジ型レジスト材料といい、反対に未露光部が溶け出し、露光部(遮光部)が残るレジスト材料のことをネガ型レジストという。
【0016】
[第1の実施形態]
本実施形態に係る光増感化学増幅型レジスト材料(以下、場合により単に「レジスト材料」という。)は、(1)ベース成分と、(2)露光により光増感剤及び酸を発生する成分とを含む。
【0017】
(1)ベース成分
本実施形態において、上記(1)ベース成分は有機化合物であってもよく、無機化合物であってもよい。また、有機化合物は高分子化合物であってもよく、低分子化合物であってもよい。ベース成分は、パターン露光における第一の放射線を過度に吸収せず、十分垂直性が高い形状のレジストパターンの形成を実現できるものであることが望ましい。また、ベース成分では、一括露光における第二の放射線の吸収が低く、一括露光時に未露光部で不要な増感反応の誘発が起こりにくいものであることが望ましい。
【0018】
上記高分子化合物は1000〜200000、好ましくは2000〜50000、より好ましくは2000〜20000の重量平均分子量を有し、一括露光後のベーク工程(
図4参照)中の酸触媒反応により、現像工程においてパターン露光部が現像液に可溶又は不溶となるものである。
【0019】
上記高分子化合物としては極性基(例えば、酸性官能基)を有する高分子化合物及び上記極性基が酸不安定基で保護された高分子化合物が挙げられる。極性基を有する高分子化合物はアルカリ現像液に可溶であるが、ベーク工程で後述する架橋剤と反応することにより、アルカリ現像液に不溶となる。この場合、現像工程ではパターン未露光部のレジスト材料膜はアルカリ現像液により除去可能となる。したがって、上記高分子化合物を用いて形成されたレジスト材料膜をアルカリ現像液にて現像する場合、上記レジスト材料はネガ型レジスト材料として働く。
【0020】
一方、上記極性基が酸不安定基で保護された高分子化合物は有機現像液に可溶であるが、アルカリ現像液には不溶又は難溶である。上記極性基が酸不安定基で保護された高分子化合物は、ベーク工程で上記酸不安定基が外れ(脱保護)、極性が付与され、アルカリ現像液に可溶であるが、有機現像液に不溶となる。この場合、パターン未露光部のレジスト材料膜は有機現像液により除去可能となり、パターン露光部はアルカリ現像液により除去可能となる。したがって、上記高分子化合物を用いて形成されたレジスト材料膜を有機現像液にて現像する場合、レジスト材料はネガ型レジスト材料として働く。一方、上記高分子化合物を用いて形成されたレジスト材料膜をアルカリ現像液にて現像する場合、レジスト材料はポジ型レジスト材料として働く。
【0021】
高分子化合物としては、具体的には、フェノール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、スチレン系樹脂、及びポリエステル樹脂等が挙げられる。高分子化合物は、フェノール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、又はスチレン系樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル樹脂であることがより好ましい。
【0022】
(メタ)アクリル樹脂は、下記式(VII)及び(VIII)で表される構成単位の少なくとも一方を含む高分子化合物であることが好ましい。
【化1】
式(VII)及び(VIII)中、R
11は水素原子;フッ素原子;メチル基;トリフルオロメチル基;ヒドロキシル基、エーテル結合、エステル結合若しくはラクトン環を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基;フェニレン基;又は、ナフチレン基を示す。R
12はメチレン基、フェニレン基、ナフチレン基、又は−C(=O)−O−R
12’−で表される2価の基を示す。R
12’はヒドロキシル基、エーテル結合、エステル結合及びラクトン環のいずれかを有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基;フェニレン基;又は、ナフチレン基を示す。R
13及びR
14はそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシル基;シアノ基;カルボニル基;カルボキシル基;炭素数1〜35のアルキル基;並びに、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環及び脱水された2つのカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有する保護基(酸不安定基)を示す。
【0023】
フェノール樹脂は、下記式(XXV)で表される構成単位を含む高分子化合物であることが好ましい。
【化2】
式(XXV)中、R
15は水素原子;ヒドロキシル基;シアノ基;カルボニル基;カルボキシル基;炭素数1〜35のアルキル基;並びに、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環及び脱水された2つのカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有する保護基(酸不安定基)を示す。
【0024】
R
16は水素原子及び炭素数1〜35のアルキル基等を示す。R
16はメチル基であることが好ましく、メタ位に結合していることが好ましい。
【0025】
スチレン系樹脂は、ポリヒドロキシスチレン樹脂であることが好ましく、下記式(XXVI)で表される構成単位を含む高分子化合物であることがより好ましい。
【化3】
【0026】
式(XXVI)中、R
17は水素原子;ヒドロキシル基;シアノ基;カルボニル基;カルボキシル基;炭素数1〜35のアルキル基;並びに、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環及び脱水された2つのカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有する保護基(酸不安定基)を示す。
【0027】
R
13、R
14、R
15、及びR
17における上記保護基としては、具体的には、下記に示される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。下記式において、*はR
13、R
14、R
15、及びR
17の酸素との結合部分である。
【化4】
【0030】
上記構成単位は一分子中に単独で含まれていてもよく、複数を組み合わせて含まれていてもよい。
【0031】
上記低分子化合物は300〜3000、好ましくは500〜2000の分子量を有し、一括露光後のベーク工程(
図4参照)中の酸触媒反応により、現像工程においてパターン露光部が現像液に可溶又は不溶となるものである。
【0032】
低分子化合物としては、具体的には、トルクセン誘導体等の星形分子、カリックスアレーン誘導体、ノリア(Noria)及びデンドリマー等が挙げられる。
【0033】
無機化合物としては、具体的には、酸化コバルト、酸化ハフニウム及び酸化ジルコニウム等の金属酸化物、並びに、錯体等の有機金属化合物が挙げられる。上記金属酸化物は粒子状であってもよく、ナノオーダーの粒子径を有するナノパーティクルであってもよい。また、上記金属酸化物の粒子はカルボン酸等で配位されていてもよい。(1)ベース成分として無機化合物を用いた場合の溶解性変化の一例を以下に示す。例えば、(1)ベース成分としてカルボン酸が配位した金属酸化物のナノパーティクルを用いた場合、露光により発生した酸のアニオンがカルボン酸アニオンに代わって金属酸化物に配位して、金属酸化物の粒子同士の相互作用が増すことでゲル化し、現像工程における溶解を抑止できる。
【0034】
(2)露光により光増感剤と酸を発生する成分
上記成分は、露光(放射線照射)により光増感剤と酸を発生する成分である。上記成分は、(a)酸−光増感剤発生剤、(b)光増感剤前駆体、及び、(c)光酸発生剤の3つの成分のうち、(a)成分のみを含有する、又は任意の2つの成分を含有する、或いは、(a)〜(c)成分のすべてを含有する。すなわち、レジスト材料中で、上記(2)成分は上記(1)ベース成分とブレンドされている。
【0035】
(a)酸−光増感剤発生剤
酸−光増感剤発生剤は、電離放射線又は400nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下の波長を有する非電離放射線の照射によって、酸と、200nmを超える、好ましくは250nmを超える波長を有する非電離放射線とを吸収する光増感剤と、を同時に発生するものである。また、上記光増感剤が吸収する非電離放射線は、上記酸−光増感剤発生剤が吸収する波長よりも長い波長を有することが好ましい。上記酸−光増感剤発生剤は、一括露光の波長の非電離放射線の吸収が十分小さく、酸を直接発生しないものであることが好ましい。
【0036】
酸−光増感剤発生剤としては、オニウム塩化合物、ジアゾメタン化合物、及びスルホンイミド化合物等が挙げられる。また、オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩化合物、テトラヒドロチオフェニウム塩化合物、及びヨードニウム塩化合物等が挙げられる。酸−光増感剤発生剤は、還元電位が高い点から、スルホニウム塩化合物又はヨードニウム塩化合物であることが好ましく、ヨードニウム塩化合物であることがより好ましい。
【0037】
スルホニウム塩化合物はスルホニウムカチオンと酸のアニオンからなるものである。スルホニウム塩化合物は、下記式(I)〜(III)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0038】
【化7】
上記式(I)〜(III)中、R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。上記式(I)〜(III)中、ヒロドキシル基の水素原子は、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。ヒドロキシル基の水素原子が置換されているときスルホニウム塩化合物はケタール化合物基又はアセタール化合物基を含むことになる。式(I)〜(III)中、R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3、及びR
4のうち任意の2つ以上の基は、単結合若しくは二重結合により、又は、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
e−、−CR
e2−、−NH−若しくは−NR
e−を含む結合を介して、互いに結合して環構造を形成していてもよい。R
eは、フェニル基;フェノキシ基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、好ましくは、フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。式(I)〜(III)中、X
−は酸、好ましくは強酸、より好ましくは超強酸のアニオンを示す。
【0039】
上記式(I)〜(III)において、−C(−OH)R
1R
2、−C(−OH)R
1’R
2’、及び−C(−OH)R
1’’R
2’’等で表される基としては、具体的には、下記式で表される基が挙げられる。なお、式中の*は、上記式(I)〜(III)中の硫黄イオンとの結合部分を示す。−C(−OH)R
1R
2、−C(−OH)R
1’R
2’、及び−C(−OH)R
1’’R
2’’で表される基において、ヒドロキシル基と該ヒドロキシル基が結合する炭素原子は、パターン露光によりカルボニル基となる。このようにして、上記式(I)〜(III)で表される化合物では、−C(−OH)R
1R
2、−C(−OH)R
1’R
2’、及び−C(−OH)R
1’’R
2’’で表される基がパターン露光後に分離して、光増感剤を発生する。
【化8】
【0049】
ヨードニウム塩化合物はヨードニウムカチオンと酸のアニオンからなるものである。ヨードニウム塩化合物は、下記式(IV)〜(V)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0050】
【化18】
上記式(IV)〜(V)中、R
5、R
6、R
5’、R
6’、及びR
7は、それぞれ独立に、水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。上記式(IV)〜(V)中、ヒロドキシル基の水素原子は、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。ヒドロキシル基の水素原子が置換されているときヨードニウム塩化合物はケタール化合物基又はアセタール化合物基を含むことになる。式(IV)〜(V)中、R
5、R
6、R
5’、R
6’、及びR
7のうち任意の2つ以上の基は、単結合若しくは二重結合により、又は、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
f−、−CR
f2−、−NH−若しくは−NR
f−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
fは、フェニル基;フェノキシ基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
5、R
6、R
5’、R
6’、及びR
7は、それぞれ独立に、好ましくは、フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。式(IV)〜(V)中、Y
−は酸、好ましくは強酸、より好ましくは超強酸のアニオンを示す。
【0051】
上記式(IV)〜(V)において、−C(−OH)R
5R
6及び−C(−OH)R
5’R
6’で表される基としては、具体的には、上記式(I)〜(III)において例示した−C(−OH)R
1R
2、−C(−OH)R
1’R
2’、及び−C(−OH)R
1’’R
2’’等で表される基と同様の基が挙げられる。
【0052】
上記スルホニウム塩化合物及びヨードニウム塩化合物の酸のアニオンとしては、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、及びトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン等が挙げられ、好ましくは、下記一般式(XX)、(XXI)又は(XXII)で表される酸のアニオンであり、より好ましくは下記一般式(XX)で表される酸のアニオンである。
【0054】
上記一般式(XX)、(XXI)及び(XXII)において、R
18〜R
21は、それぞれ独立に、有機基を示す。上記有機基としては、具体的には、アルキル基、アリール基、及びこれらの複数が連結された基等が挙げられる。有機基は、1位がフッ素原子若しくはフロロアルキル基で置換されたアルキル基、又は、フッ素原子若しくはフロロアルキル基で置換されたフェニル基であることが好ましい。有機基がフッ素原子又はフロロアルキル基を有することにより、露光によって発生する酸の酸性度が上がり、感度が向上する傾向がある。ただし、有機基は末端に置換基としてフッ素原子を含有しないことが好ましい。
【0055】
酸のアニオンとしては、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、及びトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンからなる群より選択される少なくとも一種のアニオン基を有するものが好ましい。酸のアニオンとしては、具体的には、一般式「R
22−SO
3−」(R
22は、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又はアルケニル基を示す。)で表されるアニオンが挙げられる。上記R
22としての直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基は、炭素数1〜10であることが好ましい。例えば、R
22がアルキル基の場合、酸のアニオンとしては、メタンスルホネート、n−プロパンスルホネート、n−ブタンスルホネート、n−オクタンスルホネート、1−アダマンタンスルホネート、2−ノルボルナンスルホネート、及びd−カンファー−10−スルホネート等のアルキルスルホネートが挙げられる。上記R
22としてのハロゲン化アルキル基は、アルキル基中の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されたものであり、該アルキル基は、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、なかでも直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、又はイソペンチル基であることが更に好ましい。そして、水素原子が置換されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、及び臭素原子等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基において、アルキル基(ハロゲン化前のアルキル基)の水素原子の全個数の50〜100%がハロゲン原子で置換されていることが好ましく、水素原子のすべてがハロゲン原子で置換されていることがより好ましい。ここで、該ハロゲン化アルキル基としては、フッ素化アルキル基が好ましい。フッ素化アルキル基において、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることが更に好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。また、該フッ素化アルキル基のフッ素化率は、好ましくは10〜100%、更に好ましくは50〜100%であり、特に水素原子をすべてフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるため好ましい。このような好ましいフッ素化アルキル基として、具体的には、トリフルオロメチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、及びノナフルオロ−n−ブチル基が挙げられる。
【0056】
R
22は置換基を有していてもよい。上記置換基は酸素原子を含む2価の連結基を含む。上記連結基としては、例えば、酸素原子(エーテル結合:−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−C(=O)−NH−)、カルボニル基(−C(=O)−)、スルホニル基(−SO
2−)及びカーボネート結合(−O−C(=O)−O−)等の非炭化水素系の酸素原子含有連結基が挙げられる。
【0057】
酸のアニオンとしては、具体的には、下記式で表されるアニオンが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【化20】
【0059】
(b)光増感剤前駆体
光増感剤前駆体は、電離放射線又は400nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下の波長を有する非電離放射線の照射によって、200nmを超える、好ましくは250nmを超える波長を有する非電離放射線を吸収する光増感剤となるものであり、上記(a)成分とは異なるものである。また、上記光増感剤が吸収する非電離放射線は、上記光増感剤前駆体が吸収する波長よりも長い波長を有することが好ましい。本実施形態に係るパターン形成方法では、パターン露光工程で、光増感剤前駆体の化学構造が直接的或いは間接的な反応で変換し、一括露光工程で酸発生を補助する光増感剤を生成する。吸収される非電離放射線の波長のピークが、パターン露光工程前後でシフトすることにより、光増感剤が発生した露光部と、未露光部との間で、一括露光工程における非電離放射線の吸収のコントラストが得られやすくなる。更に、上記吸収波長のピークシフトが大きい場合、一括露光工程における非電離放射線の吸収のコントラストがより大きくなる。
【0060】
光増感剤前駆体は、電離放射線又は400nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下の波長を有する非電離放射線の照射によって、200nmを超える、好ましくは250nmを超える波長を有する非電離放射線を吸収するカルボニル基を有する化合物(カルボニル化合物)となるものであることが好ましい。カルボニル化合物としてはアルデヒド、ケトン、カルボン酸及びカルボン酸エステル等が挙げられる。上記反応により、パターン露光部の光増感剤前駆体でのみ、放射線の吸収波長のピークのシフトが起こる。したがって、パターン露光後に、パターン露光部だけが吸収できる波長の放射線で一括露光を行えば、パターン露光部だけを選択的に増感できる。光増感剤前駆体は下記式(VI)で表されるアルコール化合物であることがより好ましく、第2級アルコール化合物であってもよい。なお、本明細書において、アルコール化合物とは、アルコール性水酸基を有している化合物のみを指すものではなく、アルコール性水酸基の水素原子が置換されたケタール化合物及びアセタール化合物並びにオルトエステル化合物等であってもよい。光増感剤前駆体がケタール化合物又はアセタール化合物である場合、パターン露光で発生した酸触媒によるカルボニル化合物への加水分解反応を加速するために、パターン露光後一括露光前に加熱してもよい。
【化22】
式(VI)中、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ独立に、水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基;炭素数1〜5のアルキルチオ基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜5のアルコキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜5のアルキルチオ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。アルコール化合物は、式(VI)中のアルコール性水酸基(ヒドロキシル基)がチオール基となったチオール化合物であってもよい。上記式(VI)中、ヒロドキシル基又はチオール基の水素原子は、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。式中、R
8、R
9及びR
10のうち任意の2つ以上の基は、単結合若しくは二重結合により、又は、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
g−、−CR
g2−、−NH−若しくは−NR
g−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
gは、フェニル基;フェノキシ基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
8、R
9及びR
10は、それぞれ独立に、好ましくは、水素原子;フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。
【0061】
なお、式(VI)中のヒドロキシル基の水素原子が置換されたケタール化合物又はアセタール化合物は好ましくは下記式(XXXVI)で表される化合物であると言うことができる。すなわち、光増感剤前駆体は下記式(XXXVI)で表される化合物であってもよい。R
9又はR
10のいずれか一方が水素原子である場合、下記式(XXXVI)で表される化合物はアセタール化合物であるということができる。
【化23】
式(XXXVI)中、R
9及びR
10は上記式(VI)中のR
9及びR
10とそれぞれ同義である。R
9及びR
10は、上記と同様に、環構造を形成していてもよい。式(XXXVI)中、R
23及びR
24は、それぞれ独立に、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
23及びR
24は、単結合若しくは二重結合により、又は、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
g−、−CR
g2−、−NH−若しくは−NR
g−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
gは上記式(VI)中のR
gと同義である。ケタール化合物又はアセタール化合物は、式(XXXVI)中のR
23及び/又はR
24と結合する酸素原子が硫黄に置き換えられたチオケタール化合物又はチオアセタール化合物であってもよい。
【0062】
ケタール化合物及びアセタール化合物は、カルボニル化合物をアルコールと反応させることで得ることができる。上記反応は、光増感作用に寄与するカルボニル基を保護する反応ということができ、上記式(XXXVI)におけるR
23及びR
24はカルボニル基の保護基ということができる。また、この場合、放射線等により光増感剤前駆体が光増感剤となる反応を脱保護反応ということができる。保護基の反応性(脱保護反応の起こりやすさ)の例を下記に示す。保護基の反応性は右に行くほど高く、左に行くほど低い。例えば、メトキシ基をカルボニル基の保護基として使用すると(下記右上)、脱保護反応の反応性は高く、常温でも酸触媒下で脱保護反応が進む傾向がある。常温で脱保護反応が進むと、像のにじみを防ぐことができ、メリットがある。一方、パターン露光の時点で、未露光部での脱保護反応が起こり、光増感剤が生成すると、レジストのコントラストが劣化するおそれがある。未露光部の光増感剤の生成を防ぐために、脱保護反応の活性化エネルギーを上げる(保護基の反応性を下げる)ように保護基を選択することもできる。反応性を下げるためには、例えば、式(XXXVI)中のR
23及びR
24が互いに結合して環構造を形成した、環状の保護基がより好ましい。また、上記環構造としては、6員環及び5員環が挙げられる。反応性を下げる観点からは、上記環構造は5員環であることが好ましい。反応性が低い保護基を用いる場合は、レジスト材料は後述する第一の捕捉剤を含むことが好ましく、且つ、パターン露光後一括露光前にレジスト材料膜をベークすることが望ましい。ベークを行うことにより、未露光部の不要な酸が捕捉剤によって中和され、潜像のコントラストを向上させることができる。また、上記ベークは保護基の反応性の低下を補い、且つ、レジスト材料膜中の酸の潜像のラフネスを、物質の拡散により、低減することができる。
【化24】
【0063】
ケタールタイプの光増感剤前駆体は、下記式(XXVII)〜(XXX)で表される化合物であってもよい。
【化25】
【0064】
式(XXVII)〜(XXX)中、R
23及びR
24は、式(XXXVI)中のR
23及びR
24とそれぞれ同義である。式(XXVII)〜(XXX)中、芳香環の水素原子は炭素数1〜5のアルコキシ基又は炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよく、芳香環は別の芳香環と結合してナフタレン環又はアントラセン環を形成していてもよい。R
25は炭素数1〜5のアルキル基を示す。光増感剤前駆体として上記式(XXVII)〜(XXX)で表される化合物を用いた場合、光増感剤前駆体から光増感剤となったときの、放射線の吸収波長のシフトがより大きく、パターン露光部でのより選択的な増感反応を起こすことができる。
【0065】
なお、式(VI)中のヒドロキシル基の水素原子が置換されたオルトエステル化合物は好ましくは下記式(XLVI)で表される化合物であると言うことができる。すなわち、光増感剤前駆体は下記式(XLVI)で表される化合物であってもよい。
【化26】
式(XLVI)中、R
9は上記式(VI)中のR
9と同義である。式(XLVI)中、R
38〜R
40は、それぞれ独立に、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
38〜R
40は、単結合若しくは二重結合により、又は、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
g−、−CR
g2−、−NH−若しくは−NR
g−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
gは上記式(VI)中のR
gと同義である。
【0066】
オルトエステル化合物は、パターン露光において脱保護反応で分解し、例えば、カルボニル基を含むカルボン酸エステル又はカルボン酸になる。オルトエステル化合物は、例えば、カルボキシル基を有する光増感剤のカルボキシル基の部分をOBO(例えば、4−メチル2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン−1−イル)で置換(保護)した、下記式(XLVII)で表されるOBOエステル化合物であることが好ましい。OBOでカルボキシル基を保護した光増感剤前駆体は、パターン露光時に発生する酸触媒によってカルボン酸を生成し、放射線の吸収波長がシフトし、一括露光時に光増感剤として働く。光増感剤前駆体からカルボン酸が生成することで、パターン露光部で、(例えば、非極性から極性に)レジストの極性が変わる。このため、オルトエステル化合物は現像工程における溶解促進剤としても機能し、レジストコントラストの向上にも寄与する。光増感剤前駆体がOBOエステル化合物を含むことにより、光増感剤の生成と極性変化反応を同時に起こすことも可能である。
【化27】
式(XLVII)中、R
41及びR
42は、それぞれ独立に、水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。R
41及びR
42は、それぞれ独立に、好ましくは、水素原子;フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。
【0067】
光増感剤前駆体としては、具体的には、下記式で表される化合物等が挙げられる。次のものはアルコール性水酸基の水素原子が置換されていないアルコール化合物によるもので、パターン露光時の反応でケトン化合物に変わる。
【化28】
【0075】
次の化合物は、光増感剤のカルボニル基を保護した、ケタール化合物又はアセタール化合物の例である。パターン露光で生成する酸による触媒作用で、パターン露光部でケトンを含む光増感剤になるものである。
【化36】
【0081】
次の化合物は、3個のアルコキシ基で置換された炭素原子を有するオルトエステル化合物の例である。
【化42】
【0082】
上記オルトエステル化合物は、パターン露光時に発生する酸触媒によって脱保護し、カルボニル基を有するエステル(以下の例ではカルボン酸メチル)を生成する。
【化43】
【0083】
次の化学式は、カルボキシル基を有する光増感剤のカルボキシル基部分をOBO(例えば、4−メチル−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン−1−イル)で保護した誘導体であるOBOエステル化合物の例である。
【化44】
【0084】
上記OBOエステル化合物は、パターン露光時に発生する酸触媒によって以下のようなカルボン酸を生成する。
【化45】
【0085】
露光により上記(2)成分(すなわち、上記(a)成分及び(b)成分)から発生する光増感剤は、一括露光の放射線を吸収して、光酸発生剤(PAG)を分解できるものでなければならない。例えば、光増感剤からPAGへの電子移動によるPAGの分解から酸を発生し増感する場合、光増感剤が上記電子移動が起こる条件を満たすことが望ましい。つまり、一括露光の放射線の波長で、電子移動を起こすために、光増感剤の酸化電位が十分低く、PAGの還元電位が十分高いことが望ましい。その結果、光増感の電子移動反応の自由エネルギーがマイナスになり、反応が起こりやすくなる。光増感剤からPAGへの三重項増感反応を用いる場合は、一括露光の放射線の波長で、光増感剤が一重項励起状態に励起でき、かつ、光増感剤の三重項励起状態のエネルギー準位が、PAGの三重項励起状態のエネルギー順位より高いことが望ましい。露光により上記(2)成分(すなわち、上記(a)成分及び(b)成分)から発生する光増感剤としては、例えば、カルコン及びその誘導体、1,2−ジケトン及びその誘導体、ベンゾイン及びその誘導体、ベンゾフェノン及びその誘導体、フルオレン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、キサンテン及びその誘導体、チオキサンテン及びその誘導体、キサントン及びその誘導体、チオキサントン及びその誘導体、シアニン及びその誘導体、メロシアニン及びその誘導体、ナフタロシアニン及びその誘導体、サブフタロシアニン及びその誘導体、ピリリウム及びその誘導体、チオピリリウム及びその誘導体、テトラフィリン及びその誘導体、アヌレン及びその誘導体、スピロピラン及びその誘導体、スピロオキサジン及びその誘導体、チオスピロピラン及びその誘導体、オキソール及びその誘導体、アジン及びその誘導体、チアジン及びその誘導体、オキサジン及びその誘導体、インドリン及びその誘導体、アズレン及びその誘導体、アズレニウム及びその誘導体、スクアリリウム及びその誘導体、ポルフィリン及びその誘導体、ポルフィラジン及びその誘導体、トリアリールメタン及びその誘導体、フタロシアニン及びその誘導体、アクリドン及びその誘導体、クマリン及びその誘導体、ケトクマリン及びその誘導体、キノリノン及びその誘導体、ベンゾオキサゾール及びその誘導体、アクリジン及びその誘導体、チアジン及びその誘導体、ベンゾチアゾール及びその誘導体、フェノチアジン及びその誘導体、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ナフタレン及びその誘導体、アントラセン及びその誘導体、フェナントレン及びその誘導体、ピレン及びその誘導体、ナフタセン及びその誘導体、ペンタセン及びその誘導体、並びに、コロネン及びその誘導体等が挙げられる。また、露光により上記(2)成分から発生する上記光増感剤はカルボニル化合物を含有することが好ましい。カルボニル化合物は、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステル、アミド、エノン、カルボン酸塩化物、及びカルボン酸無水物等をカルボニル基として含むことが好ましい。上記カルボニル化合物は、一括露光時の放射線の波長をパターン露光時の放射線の波長と十分離してレジストコントラストを上げるために、250nm以上の長波長側の放射線を吸収する化合物であることが好ましい。カルボニル化合物としては、例えば、ベンゾフェノン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、及びアクリドン誘導体等が挙げられる。また、上記カルボニル化合物は、ナフタレン誘導体又はアントラセン誘導体であってもよく、アクリドン誘導体であってもよい。光増感剤において、芳香環の水素は電子供与基で置換されていることが好ましい。光増感剤の芳香環の水素が電子供与基で置換されていることで、一括露光時の増感反応による電子移動効率が向上し、レジストの感度が向上する傾向がある。また、光増感剤前駆体の放射線の吸収波長と光増感剤の放射線の吸収波長との差を大きくすることができ、一括露光時に、より選択的に光増感剤を励起できるため、レジスト材料中の酸の潜像のコントラストが向上する傾向がある。電子供与基としては、例えば、水酸基、メトキシ基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基及びアルキル基等が挙げられる。
【0086】
ベンゾフェノン及びその誘導体としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。
【化46】
【0090】
チオキサントン及びその誘導体としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。
【化50】
【0091】
キサントン及びその誘導体としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。
【化51】
【0092】
アクリドン及びその誘導体としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。
【化52】
【0093】
クマリン及びその誘導体としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。
【化53】
【0094】
上記光増感剤は下記の化合物を含んでいてもよい。
【化54】
【0095】
上記光増感剤としては、より具体的には、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1,2−ヒドロオキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−イソプロピルフェニル)プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−ドデシルフェニル)プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパノン、ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン、2−エトキシカルボニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はそのテトラメチルエステル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジシクロヘキシルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジヒドロキシエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンジル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、フェナントラキノン、フルオレノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン−2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン−1−(O−アセチルオキシム)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−3−シクロペンチルプロパノン−1−(O−アセチルオキシム)、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−3−シクロペンチルプロパン−1,2−ジオン−2−(O−ベンゾイルオキシム)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、及びエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0096】
以下に、光増感剤と当該光増感剤を発生する(b)光増感剤前駆体の例を挙げ、(b)光増感剤前駆体に対する光増感剤の非電離放射線(波長:365nm)吸収割合をそれぞれ示す。吸収割合は、(b)光増感剤前駆体の非電離放射線吸収量を分母に、光増感剤の非電離放射線吸収量を分子として算出している。(b)光増感剤前駆体と光増感剤の非電離放射線吸収量を比較すると、(b)光増感剤前駆体から光増感剤に構造変換することで、非電離放射線の吸収量が10倍以上となっていることがわかる。
【表1】
【0097】
(c)光酸発生剤
光酸発生剤は、電離放射線又は400nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下の波長を有する非電離放射線の照射によって、酸を発生するものであり、上記(a)とは異なるものである。上記光酸発生剤はカチオンとアニオンとの塩であることが好ましい。上記光酸発生剤は、一括露光の波長の放射線の吸収が十分小さく、一括露光時の放射線に対して酸が直接発生しないことが望ましい。このことにより、レジスト材料膜中で、一括露光時には、パターン露光部だけで光増感反応により酸が発生することができる。
【0098】
光酸発生剤としては、具体的には、オニウム塩化合物、ジアゾメタン化合物、及びスルホンイミド化合物等が挙げられる。また、オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩化合物、テトラヒドロチオフェニウム塩化合物、及びヨードニウム塩化合物等が挙げられる。上記光酸発生剤は電子移動に対する還元電位が十分高く、一括露光で励起した光増感剤から電子を受け取って分解し、酸を発生することができる。また、光増感剤の三重項励起状態のエネルギー順位が光酸発生剤の三重項励起状態のエネルギー順位より高い場合、光増感剤から光酸発生剤への三重項増感反応が起こりやすくなる。光酸発生剤は、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、及びオキシム−O−スルホネート型光酸発生剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、スルホニウム塩化合物及びヨードニウム塩化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることがより好ましく、ヨードニウム塩化合物を含むことが更に好ましい。
【0099】
スルホニウム塩化合物としては、具体的には、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、及び4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0100】
テトラヒドロチオフェニウム塩化合物としては、具体的には、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、及び1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0101】
ヨードニウム塩化合物としては、具体的には、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、及びビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0102】
スルホンイミド化合物としては、具体的には、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、及びN−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等が挙げられる。
【0103】
ジアゾメタン化合物としては、具体的には、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニウム)ジアゾメタン、ビス(シクロペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−イソプロピルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−tert−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(ナフチルスルホニル)ジアゾメタン、及びビス(アントラセニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0104】
(その他の成分)
レジスト材料は、上述の(1)ベース成分及び(2)成分の他に、(3)第一の捕捉剤、(4)第二の捕捉剤、(5)架橋剤、(6)添加剤、及び(7)溶剤などを適宜含んでもよい。
【0105】
(3)第一の捕捉剤
第一の捕捉剤は酸とカチオンを捕捉するものであり、クエンチャーとして機能するものである。レジスト材料が上記第一の捕捉剤を含むことにより、レジスト材料中で発生した酸を中和して、パターン露光部パターン未露光部間の酸の潜像の化学コントラストを上げることができる。上記(a)成分がケタール化合物基若しくはアセタール化合物基を有する、又は、上記(b)成分がケタール化合物若しくはアセタール化合物を含む場合、常温での酸触媒反応で光増感剤が生成する。レジスト材料が上記第一の捕捉剤を含むことにより、光増感剤発生反応の触媒として働く酸を捕捉して、アセタール化合物等からの光増感剤の生成のコントラストも上げることができる。また、パターン露光工程で発生するカチオン中間体を経て光増感する反応機構で光増感剤が発生する場合には、カチオン中間体を捕捉することで、一括露光時により選択的にパターン露光部だけで酸の増殖を行い、酸の潜像の化学コントラストをより改善するという効果も得られる。第一の捕捉剤は、光反応性を有する捕捉剤と光反応性を有しない捕捉剤とに分けることができる。
【0106】
第一の捕捉剤が光反応性を有しない捕捉剤である場合、塩基性化合物であることが好ましい。上記塩基性化合物としては、ヒドロキシド化合物、カルボキシラート化合物、アミン化合物、イミン化合物及びアミド化合物等が挙げられ、より具体的には、第1級〜第3級脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環アミン、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、カルバメート基を有する含窒素化合物、アミド化合物、及びイミド化合物等が挙げられる。上記塩基性化合物は、カルバメート基を有する含窒素化合物であることが好ましい。上記塩基性化合物は、トレーガー(Troger’s)塩基;ジアザビシクロウンデセン(DBU)若しくはジアザビシクロノネン(DBM)等のヒンダードアミン;又は、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)若しくはテトラブチルアンモニウムラクタート等のイオン性クエンチャーであってもよい。
【0107】
第1級脂肪族アミンとしては、具体的には、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、tert−アミルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、及びテトラエチレンペンタミン等が挙げられる。第2級脂肪族アミンとしては、具体的には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン、N,N−ジメチルメチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、及びN,N−ジメチルテトラエチレンペンタミン等が挙げられる。第3級脂肪族アミンとしては、具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、及びN,N,N’,N’−テトラメチルテトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
【0108】
芳香族アミン及び複素環アミンとしては、具体的には、アニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,6−ジニトロアニリン、3,5−ジニトロアニリン、及びN,N−ジメチルトルイジン等のアニリン誘導体;ジフェニル(p−トリル)アミン;メチルジフェニルアミン;トリフェニルアミン;フェニレンジアミン;ナフチルアミン;ジアミノナフタレン;ピロール、2H−ピロール、1−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、及びN−メチルピロール等のピロール誘導体;オキサゾール及びイソオキサゾール等のオキサゾール誘導体;チアゾール及びイソチアゾール等のチアゾール誘導体;イミダゾール、4−メチルイミダゾール及び4−メチル−2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ピラゾール誘導体;フラザン誘導体;ピロリン及び2−メチル−1−ピロリン等のピロリン誘導体;ピロリジン、N−メチルピロリジン、ピロリジノン及びN−メチルピロリドン等のピロリジン誘導体;イミダゾリン誘導体;イミダゾリジン誘導体;ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4−(1−ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、4−ピロリジノピリジン、2−(1−エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、及びジメチルアミノピリジン等のピリジン誘導体;ピリダジン誘導体;ピリミジン誘導体;ピラジン誘導体;ピラゾリン誘導体;ピラゾリジン誘導体;ピペリジン誘導体;ピペラジン誘導体;モルホリン誘導体;インドール誘導体;イソインドール誘導体;1H−インダゾール誘導体;インドリン誘導体;キノリン及び3−キノリンカルボニトリル等のキノリン誘導体;イソキノリン誘導体;シンノリン誘導体;キナゾリン誘導体;キノキサリン誘導体;フタラジン誘導体;プリン誘導体;プテリジン誘導体;カルバゾール誘導体;フェナントリジン誘導体;アクリジン誘導体;フェナジン誘導体;1,10−フェナントロリン誘導体;アデニン誘導体;アデノシン誘導体;グアニン誘導体;グアノシン誘導体;ウラシル誘導体;並びに、ウリジン誘導体等が挙げられる。
【0109】
カルボキシ基を有する含窒素化合物としては、具体的には、アミノ安息香酸;インドールカルボン酸;ニコチン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシルロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、及びメトキシアラニン等のアミノ酸誘導体等が挙げられる。
【0110】
スルホニル基を有する含窒素化合物としては、具体的には、3−ピリジンスルホン酸、及びp−トルエンスルホン酸ピリジニウム等が挙げられる。
【0111】
ヒドロキシル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、及びアルコール性含窒素化合物としては、具体的には、2−ヒドロキシピリジン、アミノクレゾール、2,4−キノリンジオール、3−インドールメタノールヒドレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,2’−イミノジエタノール、2−アミノエタノ−ル、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン、ピペリジンエタノール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、3−ピロリジノ−1,2−プロパンジオール、8−ヒドロキシユロリジン、3−クイヌクリジノール、3−トロパノール、1−メチル−2−ピロリジンエタノール、1−アジリジンエタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)フタルイミド、及びN−(2−ヒドロキシエチル)イソニコチンアミド等が挙げられる。
【0112】
カルバメート基を有する含窒素化合物としては、具体的には、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−アラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−アラニンメチルエステル、(S)−(−)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−シクロヘキシル−1−プロパノール、(R)−(+)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−メチル−1−ブタノール、(R)−(+)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−フェニルプロパノール、(S)−(−)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−フェニルプロパノール、(R)−(+)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−フェニル−1−プロパノール、(S)−(−)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−フェニル−1−プロパノール、(R)−(+)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−1−プロパノール、(S)−(−)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−1−プロパノール、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−アスパラチック酸4−ベンジルエステル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−O−ベンジル−L−スレオニン、(R)−(+)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−2−tert−ブチル−3−メチル−4−イミダゾリジノン、(S)−(−)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−2−tert−ブチル−3−メチル−4−イミダゾリジノン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−シクロヘキシル−L−アラニンメチルエステル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−システインメチルエステル、N−(tert−ブトキシカルボニル)エタノールアミン、N−(tert−ブトキシカルボニルエチレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−グルコースアミン、Nα−(tert−ブトキシカルボニル)−L−グルタミン、1−(tert−ブトキシカルボニル)イミダゾール、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−イソロイシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−イソロイシンメチルエステル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−ロイシノール、Nα−(tert−ブトキシカルボニル)−L−リシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−メチノニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−(2−ナフチル)−L−アラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニンメチルエステル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−プロリナル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリン−N’−メトキシ−N’−メチルアミド、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシアミヂン、(S)−(−)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、1−(tert−ブトキシカルボニル)3−[4−(1−ピロリル)フェニル]−L−アラニン、N−(tertブトキシカルボニル)−L−セリン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−セリンメチルエステル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−スレオニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(tert−ブトキシカルボニル)−S−トリチル−L−システイン、Nα−(tert−ブトキシカルボニル)−L−トリプトファン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−チロシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−チロシンメチルエステル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−バリン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−バリンメチルエステル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−バリノール、tert−ブチルN−(3−ヒドロキシプロピル)カルバメート、tert−ブチルN−(6−アミノヘキシル)カルバメート、tert−ブチルカルバメート、tert−ブチルカルバゼート、tert−ブチル−N−(ベンジロキシ)カルバメート、tert−ブチル−4−ベンジル−1−ピペラジンカルボキシレート、tert−ブチル(1S,4S)−(−)−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタンー2−カルボキシレート、tert−ブチル−N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバメート、tert−ブチル(S)−(−)−4−ホルミル−2,2−ジメチル−3−オキサゾリジンカルボキシレート、tert−ブチル[R−(R*,S*)]−N−[2−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]カルバメート、tert−ブチル−4−オキソ−1−ピペリジンカルボキシレート、tert−ブチル−1−ピロールカルボキシレート、tert−ブチル−1−ピロリジンカルボキシレート、及びtert−ブチル(テトラヒドロ−2−オキソ−3−フラニル)カルバメート等が挙げられる。
【0113】
アミド化合物としては、具体的には、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、及び1−シクロヘキシルピロリドン等が挙げられる。
【0114】
イミド化合物としては、具体的には、フタルイミド、サクシンイミド、及びマレイミド等が挙げられる。
【0115】
上記光反応性を有する捕捉剤は、光反応により分解して捕捉剤としての機能を失うもの(光分解型捕捉剤)であってもよく、光反応により生成して捕捉剤としての機能を得るもの(光生成型捕捉剤)であってもよい。
【0116】
レジスト材料が光反応により分解して捕捉剤としての機能を失う第一の捕捉剤を含む場合、第一の捕捉剤はパターン露光工程後にパターン露光部で分解し、パターン未露光部で分解しない。したがって、パターン露光部では酸とカチオンを捕捉する作用が低下し、パターン未露光部では酸とカチオンを捕捉する作用が維持される。このため、酸の潜像の化学コントラストを向上させることができる。第一の捕捉剤が光反応により分解して捕捉剤としての機能を失うものである場合、光分解性カチオンのスルホン酸塩又はカルボン酸塩であることが好ましい。上記スルホン酸塩におけるスルホン酸は弱い酸であることが好ましく、炭素数1〜20の炭化水素基を有し、上記炭化水素基がフッ素を含まないことがより好ましい。このようなスルホン酸としては、例えば、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及び10−カンファースルホン酸等のスルホン酸が挙げられる。上記カルボン酸塩におけるカルボン酸は弱酸であることが好ましく、炭素数1〜20のカルボン酸であることがより好ましい。このようなカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、コハク酸、シクロヘキシルカルボン酸、安息香酸及びサリチル酸等のカルボン酸が挙げられる。光分解性カチオンのカルボン酸塩における光分解性カチオンはオニウムカチオンであることが好ましく、具体的には、ヨードニウムカチオン及びスルホニウムカチオン等が挙げられる。
【0117】
レジスト材料が光反応により生成して捕捉剤としての機能を得る第一の捕捉剤を含む場合、第一の捕捉剤はパターン露光工程時にパターン露光部で捕捉剤としての機能が発生し、パターン未露光部で発生しない。したがって、パターン露光部では酸とカチオンを捕捉する作用が発生し、パターン未露光部では酸とカチオンを捕捉する作用が発生しない。また、上記光生成型捕捉剤は一括露光時に捕捉剤としての機能を得るものであってもよい。この場合、一括露光時の露光量はパターン露光時の露光量よりも大きく、一括露光時では捕捉剤の発生量が比較的大きい。このため、上記(b)成分から中間体としてカチオンを経由して光増感剤が発生する場合、及び、酸触媒により光増感剤が発生する場合、一括露光前にはカチオンと酸の捕捉剤としての働きを最小限にし、光増感剤を効率よく発生することができる。一方、一括露光時に第一の捕捉剤の大部分が分解すると、その後のPEB時には、分解した第一の捕捉剤が未露光部の不要な酸を十分捕捉し、かつ酸の拡散を抑え、レジストの酸の潜像の化学コントラストを向上させることができる。
【0118】
第一の捕捉剤が光反応により生成して捕捉剤としての機能を得るものである場合、上記光分解性カチオンのカルボン酸塩は一括露光により塩基を発生する化合物(光塩基発生剤)であることが好ましく、アミノ基を発生する含窒素有機化合物であることがより好ましい。また、上記カルボン酸塩はカルボン酸エステルであることが好ましい。通常のレジストと比較して、光増感化学増幅型レジストでは、一括露光時の光増感による酸発生の余地を残すため、パターン露光時には、PAGに対する第一の捕捉剤の含有量を少なくすることが望ましい。すなわち、レジスト材料は高い濃度で第一の捕捉剤を含むことが難しい。一方で、第一の捕捉剤は、パターン未露光部での極性変化反応又は酸の拡散を抑えるため多くすることが望ましい。一括露光時に塩基を生成する光発生型捕捉剤はこれらの両方の要求を満たすと考えられる。一括露光時の塩基の生成は直接一括露光の光を吸収して起こってもよく、また、光増感によって起こってもよい。光増感により起こる場合は、一括露光時の光増感反応における酸又はカチオンの捕捉剤としても働くことになり、パターン露光量が少ないところで、光増感反応を抑えることができるため、レジストの酸の潜像のコントラストを更に向上することができる。
【0119】
一括露光により塩基を発生する化合物(光塩基発生剤)としては、例えば、特開平4−151156号、同4−162040号、同5−197148号、同5−5995号、同6−194834号、同8−146608号、同10−83079号、及び欧州特許622682号に記載の化合物が挙げられる。光塩基発生剤は、カルバメート基(ウレタン結合)を含有する化合物、アシルオキシイミノ基を含有する化合物、イオン系化合物(アニオン−カチオン複合体)、カルバモイルオキシイミノ基を含有する化合物等が挙げられ、カルバメート基(ウレタン結合)を含有する化合物、アシルオキシイミノ基を含有する化合物、又はイオン系化合物(アニオン−カチオン複合体)であることが好ましい。また、光塩基発生剤は、分子内に環構造を有する化合物であることが好ましい。該環構造としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、キサントン、チオキサントン、アントラキノン、及びフルオレン等が挙げられる。
【0120】
光塩基発生剤は、光分解性の点から、下記一般式(XLV)で表される化合物であることがより好ましい。上記化合物に対して露光すると、少なくとも、式(XLV)中の窒素原子と、該窒素原子に隣接するカルボニル基の炭素原子との間の結合が切断されてアミン又はアンモニアと、二酸化炭素とが生成する。分解後、−N(R
26)(R
27)を有する生成物の沸点が高いことが好ましい。また、−N(R
26)(R
27)を有する生成物の分子量が大きいこと、又は嵩高い骨格を有することが、PEB時の拡散制御の点で好ましい。
【化55】
式中、R
26及びR
27は、それぞれ独立に、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい1価の炭化水素基であり、R
26及びR
27が互いに結合して隣接する窒素原子とともに環構造を形成してもよく;R
28は1価の光官能基である。
【0121】
光塩基発生剤としては、具体的には、2−ニトロベンジルカルバメート、2,5−ジニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、N−シクロヘキシル−4−メチルフェニルスルホンアミド及び1,1−ジメチル−2−フェニルエチル−N−イソプロピルカーバメートが挙げられる。
【0122】
第一の捕捉剤は、熱反応により生成して捕捉剤としての機能を得るもの(熱生成型捕捉剤)であってもよい。レジスト材料が熱生成型捕捉剤を含む場合、一括露光後にベークを行い、上記ベーク中に捕捉剤を生成することが望ましい。そのため、一括露光後のベーク温度は、パターン露光前のレジスト材料塗布後の加熱温度、及び、パターン露光後一括露光前のベーク温度よりも高いことが好ましい。レジスト材料が、熱反応、又は、一括露光の波長における光反応により生成して捕捉剤としての機能を得る第一の捕捉剤を含む場合、パターン未露光部における第一の捕捉剤の酸捕捉力が向上し、酸の潜像の化学コントラストを向上させることができる。
【0123】
(4)第二の捕捉剤
第二の捕捉剤は遊離ラジカルを捕捉するものであり、遊離ラジカルスカベンジャーとして機能するものである。レジスト材料が上記第二の捕捉剤を含むことにより、レジスト材料中のラジカルによる反応を経由した光増感剤の発生がパターン露光量の少ないところでより小さく抑えられ、光増感剤の潜像のコントラストを更に上げるという効果が得られる。その結果、一括露光を行った後のパターン露光部と未露光部との間の酸の潜像のコントラストがより大きくなるという効果が得られる。
【0124】
第二の捕捉剤としては、具体的には、フェノール系化合物、キノン系化合物、及びアミン系化合物等が挙げられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン等の、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニゾール、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニゾール、プロピルエステル3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、2−(1,1−ジメチルエチル)−1,4−ベンゼンジオール、ジフェニルピクリルヒドラジル、4−tert−ブチルカテコール、N−メチルアニリン、p−メトキシジフェニルアミン、ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、p−ヒドロキシジフェニルアミン、フェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート、テトラキス(メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル)−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマート)メタン、フェノチアジン、アルキルアミドノイソウレア、チオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマート、1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、環式ネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスフィト)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)、オキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)メチル5−ドキシルステアレート、ヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、メタキノン、ベンゾキノン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、フェノチアジン、及び、未加工種子油、小麦の胚種子油、トコフェノール及びゴムのような天然由来の酸化防止剤等が挙げられる。
【0125】
(5)架橋剤
架橋剤は、一括露光後のベーク工程中に酸触媒反応により、ベース成分間で架橋反応を引き起こし、ベース成分の分子量を増加させ、現像液に対して不溶化するためのものであり、上記(1)ベース成分とは異なるものである。レジスト材料が架橋剤を含むことにより、架橋と同時に極性部位が非極性化し、現像液に対して不溶化するため、ネガ型レジスト材料を提供することができる。
【0126】
架橋剤は2つ以上の官能基を有する化合物である。上記官能基は、(メタ)アクリロイル基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、エポキシ基及びビニルエーテル基からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0127】
2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0128】
2つ以上のアルコキシメチル基又はヒドロキシメチル基を有する化合物としては、具体的には、ヒドロキシメチル基含有フェノール化合物、アルコキシメチル基含有フェノール化合物、アルコキシメチル化メラミン、及び、アルコキシメチル化尿素化合物等が挙げられる。上記アルコキシ基の炭素数はいずれも1〜5であることが好ましい。2つ以上のアルコキシメチル基又はヒドロキシメチル基を有する化合物は、メトキシメチル基含有フェノール化合物、エトキシメチル基含有フェノール化合物、メトキシメチル化メラミン又はメトキシメチル化尿素化合物であることが好ましく、メトキシメチル化メラミン又はメトキシメチル化尿素化合物であることがより好ましい。メトキシメチル化メラミンとしては、下記式(IX)〜(X)で表される化合物等が挙げられる。
【化56】
【0129】
メチル化尿素樹脂としては、下記式(XI)〜(XIII)で表される化合物等が挙げられる。
【0131】
2つ以上のエポキシ基を有する化合物としては、具体的には、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、及び、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0132】
2つ以上のビニルエーテル基を有する化合物としては、具体的には、ビス(4−(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチル)グルタレート、トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、アジピン酸ジビニルエステル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、1,2,4−トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート、1,3,5−トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート、ビス(4−(ビニルオキシ)ブチル)テレフタレート、ビス(4−(ビニルオキシ)ブチル)イソフタレート、エチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル及びシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルが挙げられる。
【0133】
(6)添加剤
添加剤としては、界面活性剤、酸化防止剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤及び染料等が挙げられる。界面活性剤、酸化防止剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤及び染料には公知の材料を選択することができる。界面活性剤としては、具体的には、イオン性や非イオン性のフッ素系界面活性剤及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。酸化防止剤としては、具体的には、フェノール系酸化防止剤、有機酸誘導体からなる酸化防止剤、硫黄含有酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、アミン−アルデヒド縮合物からなる酸化防止剤、及びアミン−ケトン縮合物からなる酸化防止剤等が挙げられる。
【0134】
(7)溶剤
溶剤は、レジスト材料の組成物を溶解し、スピンコーティング法等での塗布機によるレジスト材料膜の形成を容易とするためのものである。なお、上記(b)成分等に包含される化合物は、溶剤からは除くものとする。溶剤としては、具体的には、シクロヘキサノン、及びメチル−2−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、及び1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;並びに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられる。
【0135】
(配合比率)
レジスト材料は、上記成分を含む感光性樹脂組成物である。レジスト材料を調製するに際しては、レジスト材料の用途、使用条件等において各成分の配合比率を適宜設定すればよい。
【0136】
(1)成分100質量部に対し、(a)成分の配合量は好ましくは0.005〜50質量部であり、より好ましくは0.1〜30質量部である。この量が0.005質量部以上であると十分な感度が得られやすく、他方、50質量部以下であるとレジストと相溶性が向上しレジスト材料膜を形成しやすい。(1)成分100質量部に対し、(b)成分の配合量は好ましくは0.005〜50質量部であり、より好ましくは0.1〜30質量部である。この量が0.005質量部以上であると十分な感度が得られやすく、他方、50質量部以下であると矩形のレジストパターンが得られやすい。(1)成分100質量部に対し、(c)成分の配合量は好ましくは0.01〜50質量部であり、より好ましくは0.1〜30質量部である。この量が0.01質量部以上であると十分な感度が得られやすく、他方、50質量部以下であると矩形のレジストパターンが得られやすい。
【0137】
(1)成分100質量部に対し、(3)第一の捕捉剤の配合量は好ましくは、0.001〜20質量部、より好ましくは0.01〜10質量部である。この量が20質量部以下であると感度の過度な低下を抑制できる傾向がある。この量を0.001質量部以上とすることで、第一の捕捉剤を配合することによる上記効果が得られやすくなる傾向がある。光酸発生剤(上記(a)成分と(c)成分との合計)と第一の捕捉剤のレジスト材料中の使用割合は、光酸発生剤/第一の捕捉剤(モル比)=1.5〜300であることが好ましい。即ち、感度及び解像度の点から、上記モル比は1.5以上であることが好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターン寸法変化抑制の点から、300以下であることが好ましい。光酸発生剤/第一の捕捉剤(モル比)は、より好ましくは5.0〜200である。
【0138】
(1)成分100質量部に対し、(4)第二の捕捉剤の配合量は好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは0.0005〜5質量部である。この量が10質量部以下であることにより、光増感剤の生成が抑制されにくくなる傾向があり、一括露光中の光増感剤による感度の上昇が得られやすくなる傾向がある。この量を0.0005質量部以上とすることで、第二の捕捉剤を配合することによる上記効果が得られやすくなく傾向がある。
【0139】
(1)成分100質量部に対し、(5)架橋剤の配合量は好ましくは40質量部以下であり、より好ましくは0.1〜25質量部である。この量が40質量部以下であることにより、レジスト材料の溶解性が高くなり像のコントラストが低下することを抑制できる傾向がある。この量を0.1質量部以上とすることで、架橋剤を配合することによる上記効果が得られやすくなる傾向がある。
【0140】
(1)成分100質量部に対し、(6)添加剤の配合量は好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは0.1〜10質量部である。この量が30質量部以下であることにより、レジスト材料の特性が低下しにくくなる。この量を0.1質量部以上とすることでレジスト材料の優れたプロセスウィンドウを得ることができる傾向がある。
【0141】
(1)成分100質量部に対し、(7)溶剤の配合量は好ましくは200〜10000質量部であり、より好ましくは300〜5000質量部である。この量が10000質量部以下であることにより、レジスト材料の特性が低下しにくくなる。この量を200質量部以上とすることでレジスト材料膜を形成しやすくなる。
【0142】
[第2の実施形態]
本実施形態に係る光増感化学増幅型レジスト材料(以下、場合により単に「レジスト材料」という。)は、ベーク工程後、パターン露光された部分が現像液に可溶又は不溶となる(1’)ベース成分を含む。
【0143】
(1’)ベース成分
上記(1’)ベース成分は有機化合物であってもよく、無機化合物であってもよい。また、有機化合物は高分子化合物であってもよく、低分子化合物であってもよい。上記(1’)ベース成分は、(d)酸−光増感剤発生基、(e)前駆体基、及び(f)光酸発生基の3つの基のうち、上記(d)で示される基のみを有する、又は任意の2つの基を有する、或いは、下記(d)〜(f)で示される基すべてを有する。すなわち、本実施形態において、上記ベース成分は、下記(d)〜(f)で示される基がバウンドされている有機化合物又は無機化合物である。上記ベース成分は下記(d)〜(f)で示される基を1分子(又は1粒子)中に有していてもよく、複数の分子(又は粒子)中にそれぞれ有していてもよい。
【0144】
上記(1’)ベース成分における上記高分子化合物は3000〜200000、好ましくは5000〜30000の重量平均分子量を有し、一括露光後のベーク工程(
図4参照)中の酸触媒反応により、現像工程においてパターン露光部が現像液に可溶又は不溶となるものである。上記(1’)成分における上記低分子化合物は500〜3000、好ましくは1000〜3000の分子量を有し、一括露光後のベーク工程(
図4参照)中の酸触媒反応により、現像工程においてパターン露光部が現像液に可溶又は不溶となるものである。上記(1’)成分における上記有機化合物及び上記無機化合物としては、上記(1)成分においてのものと同様のものが例示できる。以下、高分子化合物を例に挙げて(1’)ベース成分について詳細に説明する。
【0145】
上記(1’)成分における上記高分子化合物は、上記(d)〜(f)で示される基を、例えば、上記(1)成分における高分子化合物の上記式(VII)におけるR
11〜R
13、上記式(VIII)におけるR
11若しくはR
14、上記式(XXV)におけるR
15若しくはR
16、上記式(XXVI)におけるR
17で示される基(保護基)又はその一部として有することができる。また、上記(1’)成分における上記低分子化合物は、上記(d)〜(f)で示される基を、例えば、高分子化合物の側鎖に有することができる。
【0146】
(d)酸−光増感剤発生基
酸−光増感剤発生基は、電離放射線又は400nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下の波長を有する非電離放射線の照射によって、酸と、200nmを超える、好ましくは250nmを超える波長を有する非電離放射線を吸収する光増感剤とを発生する基である。また、上記光増感剤が吸収する非電離放射線は、上記酸−光増感剤発生基が吸収する波長よりも長い波長を有することが好ましい。
【0147】
酸−光増感剤発生基としては、オニウム塩化合物基、ジアゾメタン化合物基、及びスルホンイミド化合物基等が挙げられる。また、オニウム塩化合物基としては、例えば、スルホニウム塩化合物基、ヨードニウム塩化合物基及びテトラヒドロチオフェニウム塩化合物等が挙げられる。酸−光増感剤発生基は、還元電位が高い点から、スルホニウム塩化合物基又はヨードニウム塩化合物基であることが好ましく、ヨードニウム塩化合物基であることがより好ましい。また、酸−光増感剤発生基は、アニオンと(1’)ベース成分とが結合したアニオンバウンド型であることが好ましい。酸−光増感剤発生基がアニオンバウンド型であることにより、発生した酸が未露光部に拡散することを抑制することができる傾向がある。
【0148】
スルホニウム塩化合物基はスルホニウムカチオンと酸のアニオンからなるものである。スルホニウム塩化合物基は、下記式(XIV)〜(XVII)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の基であることが好ましい。下記式(XIV)〜(XVII)で表される基は、カチオンと(1’)ベース成分とが結合したカチオンバウンド型である。
【0149】
【化58】
上記式(XIV)〜(XVII)中、R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。上記式(XIV)〜(XVII)中、ヒロドキシル基の水素原子は、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。ヒドロキシル基の水素原子が置換されているときスルホニウム塩化合物基はケタール化合物基又はアセタール化合物基を含むことになる。式(XIV)〜(XVII)中、R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3、及びR
4のうち任意の2つ以上の基は、単結合若しくは二重結合により、又は、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
e−、−CR
e2−、−NH−若しくは−NR
e−を含む結合を介して、互いに結合して環構造を形成していてもよい。R
eは、フェニル基;フェノキシ基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、好ましくは、フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。式(XIV)〜(XVII)中、X
−は酸のアニオンを示し、酸は強酸であることが好ましく、超強酸であることがより好ましい。式(XIV)〜(XVII)中、*は(1’)ベース成分との結合部分を示す。なお、R
2’、R
2’’及びR
4が(1’)ベース成分と結合する場合、R
2’、R
2’’及びR
4は、それぞれ独立に、フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基から水素原子1つを除いた2価の基を示し、好ましくは、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基から水素原子1つを除いた2価の基を示す。
【0150】
スルホニウム塩化合物基は、下記式(XXXI)〜(XXIII)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の基であることが好ましい。下記式(XXXI)〜(XXXIII)で表される基は、アニオンと(1’)ベース成分とが結合したアニオンバウンド型である。酸のアニオンが露光後も(1’)ベース成分と結合していることにより、露光後の当該酸の拡散を抑制でき、像のにじみを低減することができる傾向がある。
【0151】
【化59】
式(XXXI)〜(XXXIII)中、R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。式中、ヒロドキシル基の水素原子は、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。式(XXXI)〜(XXXIII)中、R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3及びR
4のうち任意の2つ以上の基は、単結合若しくは二重結合により、又は、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
e−、−CR
e2−、−NH−若しくは−NR
e−を含む結合を介して、互いに結合して環構造を形成していてもよい。R
eは、フェニル基;フェノキシ基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、好ましくは、フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。式(XXXI)〜(XXXIII)中、X
−は酸のアニオン基を示し、当該酸は強酸であることが好ましく、超強酸であることがより好ましい。式中、*は(1’)ベース成分における結合部分を示す。
【0152】
上記式(XIV)〜(XVII)及び式(XXXI)〜(XXXIII)において、−C(−OH)R
1R
2、−C(−OH)R
1’R
2’、及び−C(−OH)R
1’’R
2’’で表される基としては、具体的には、上記式(I)〜(III)において例示した基と同様の基が挙げられる。
【0153】
ヨードニウム塩化合物基はヨードニウムカチオンと酸のアニオンからなるものである。ヨードニウム塩化合物基は、下記式(XVIII)〜(XIX)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の基であることが好ましい。下記式(XVIII)〜(XIX)で表される基は、カチオンと(1’)ベース成分とが結合したカチオンバウンド型である。
【0154】
【化60】
上記式(XVIII)〜(XIX)中、R
5、R
6及びR
5’は、それぞれ独立に、水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。上記式(XVIII)〜(XIX)中、ヒロドキシル基の水素原子は、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。ヒドロキシル基の水素原子が置換されているときヨードニウム塩化合物基はケタール化合物基又はアセタール化合物基を含むことになる。式(XVIII)〜(XIX)中、R
5、R
6、R
5’、R
6’、及びR
7のうち任意の2つ以上の基は、単結合若しくは二重結合により、又は、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
f−、−CR
f2−、−NH−若しくは−NR
f−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
fは、フェニル基;フェノキシ基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
5、R
6、及びR
5’は、それぞれ独立に、好ましくは、フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。式(XVIII)〜(XIX)中、Y
−は酸、好ましくは強酸、より好ましくは超強酸のアニオンを示す。式(XVIII)〜(XIX)中、*は(1’)ベース成分との結合部分を示す。R
6’及びR
7は、それぞれ独立に、フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基から水素原子1つを除いた2価の基を示し、好ましくは、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基から水素原子1つを除いた2価の基を示す。
【0155】
ヨードニウム塩化合物基は、下記式(XXXIV)〜(XXXV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の基であることが好ましい。下記式(XXXIV)〜(XXXV)で表される基は、アニオンと(1’)ベース成分とが結合したアニオンバウンド型である。酸のアニオンが露光後も(1’)ベース成分と結合していることにより、露光後の当該酸の拡散を抑制でき、像のにじみを低減することができる傾向がある。
【化61】
式(XXXIV)〜(XXXV)中、R
5、R
6、R
5’、R
6’、及びR
7は、それぞれ独立に、水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。式(XXXIV)〜(XXXV)中、ヒロドキシル基の水素原子は、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。ヒドロキシル基の水素原子が置換されているときヨードニウム塩化合物基はケタール化合物基又はアセタール化合物基を含むことになる。式(XXXIV)〜(XXXV)中、R
5、R
6、R
5’、R
6’、及びR
7のうち任意の2つ以上の基は、単結合若しくは二重結合により、又は、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
f−、−CR
f2−、−NH−若しくは−NR
f−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
fは、フェニル基;フェノキシ基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
5、R
6、R
5’、R
6’、及びR
7は、それぞれ独立に、好ましくは、フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。式(XXXIV)〜(XXXV)中、Y
−は酸、好ましくは強酸、より好ましくは超強酸のアニオン基を示す。式(XXXIV)〜(XXXV)中、*は(1’)ベース成分との結合部分を示す。式中、*は(1’)ベース成分における結合部分を示す。
【0156】
上記式(XVIII)〜(XIX)及び式(XXXIV)〜(XXXV)において、−C(−OH)R
5R
6及び−C(−OH)R
5’R
6’で表される基としては、具体的には、上記式(I)〜(III)において例示した−C(−OH)R
1R
2、−C(−OH)R
1’R
2’、及び−C(−OH)R
1’’R
2’’等で表される基と同様の基が挙げられる。
【0157】
上記スルホニウム塩化合物基及びヨードニウム塩化合物基の超強酸のアニオンとしては、上記スルホニウム塩化合物及びヨードニウム塩化合物において例示したアニオンが挙げられる。上記スルホニウム塩化合物基及びヨードニウム塩化合物基の酸のアニオン基は、酸のアニオンとして機能し得る基である。上記酸のアニオン基としては、スルホン酸アニオン基、カルボン酸アニオン基、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン基等が挙げられ、好ましくは、下記一般式(XXXVII)、(XXXVIII)又は(XXXIX)で表される酸のアニオン基であり、より好ましくは下記一般式(XXXVII)で表される酸のアニオン基である。
【0159】
上記一般式(XXXVII)、(XXXVIII)及び(XXXIX)において、R
34〜R
35は、それぞれ独立に、二価の有機基を示し、R
36〜R
37は一価の有機基を示す。*は(1’)ベース成分との結合部分を示す。上記二価の有機基としては、アルキレン基、アリーレン基、及びこれらの複数が連結された基等が挙げられる。上記一価の有機基としては、具体的には、アルキル基、アリール基、及びこれらの複数が連結された基等が挙げられる。上記一価の有機基は、1位がフッ素原子若しくはフロロアルキル基で置換されたアルキル基、又は、フッ素原子若しくはフロロアルキル基で置換されたフェニル基であることが好ましい。上記二価の有機基は、(アニオン側の)1位がフッ素原子若しくはフロロアルキル基で置換されたアルキレン基、又は、フッ素原子若しくはフロロアルキル基で置換されたフェニレン基であることが好ましい。有機基がフッ素原子又はフロロアルキル基を有することにより、露光によって発生する酸の酸性度が上がり、感度が向上する傾向がある。ただし、上記一価の有機基は末端に置換基としてフッ素原子を含有しないことが好ましい。また、上記二価の有機基は(1’)ベース成分と結合する原子がフッ素原子と結合していないことが好ましい。
【0160】
以下に、アニオンバウンド型のスルホニウム塩化合物基を有する(1’)成分(高分子化合物)の化学構造の例を示す。パターン露光により、スルホニウム塩化合物基が分解し、アニオンが高分子化合物に結合して残り、カチオンが分解して酸を発生する。
【化63】
【0161】
(e)前駆体基
前駆体基は、電離放射線又は400nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下の波長を有する非電離放射線の照射によって、200nmを超える、好ましくは250nmを超える波長を有する非電離放射線を吸収する光増感剤の機能を有する基となるものであり、上記(d)で示される基とは異なるものである。本実施形態のパターン形成方法では、パターン露光工程で、前駆体基の構造が直接的或いは間接的な反応で変換し、一括露光工程で酸発生を補助する光増感剤の機能を有する基となる。特に前駆体基が高分子化合物にバウンドされる場合、上記光増感剤の機能を有する基は高分子化合物に固定されているため、パターン露光部からの拡散が抑制され、一括露光を行った後のパターン露光部と未露光部との間の酸の潜像のコントラストがより大きくなるという効果が得られる。
【0162】
上記前駆体基は電離放射線又は400nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下の波長を有する非電離放射線の照射によって、200nmを超える、好ましくは250nmを超える波長を有する非電離放射線を吸収するカルボニル化合物基(カルボニル化合物から水素原子を除いた基)となるものであることが好ましい。また、上記カルボニル化合物基は露光後も上記(1’)ベース成分と結合していることが好ましい。上記カルボニル化合物基が露光後も(1’)ベース成分と結合していることにより、露光後の光増感剤の拡散を抑制でき、像のにじみを低減することができる傾向がある。上記前駆体基は下記式(XXIV)で表されるアルコール化合物基であることがより好ましい。
【化64】
式(XXIV)中、R
8及びR
9は、それぞれ独立に、水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基;炭素数1〜5のアルキルチオ基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜5のアルコキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜5のアルキルチオ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。R
10’は、フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基から水素原子1つを除いた2価の基を示す。アルコール化合物基は、式(XXIV)中のアルコール性水酸基(ヒドロキシル基)がチオール基となったチオール化合物基であってもよい。上記式(XXIV)中、ヒロドキシル基又はチオール基の水素原子は、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。ヒドロキシル基の水素原子が置換されているときアルコール化合物基はケタール化合物基又はアセタール化合物基を含むことになり、チオール基の水素原子が置換されているときチオール化合物基はチオケタール化合物基又はチオアセタール化合物基を含むことになる。式中、R
8、R
9及びR
10’のうち任意の2つ以上の基は、単結合若しくは二重結合により、又は、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
g−、−CR
g2−、−NH−若しくは−NR
g−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
gは、フェニル基;フェノキシ基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
8及びR
9は、好ましくは、それぞれ独立に、水素原子;フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。また、R
10’は、好ましくは、フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基から水素原子1つを除いた2価の基を示す。式(XXIV)中、*は(1’)ベース成分との結合部分を示す。
【0163】
なお、式(XXIV)中のヒドロキシル基の水素原子が置換されたケタール化合物基又はアセタール化合物基は好ましくは下記式(XL)で表される化合物基であると言うことができる。すなわち、前駆体基は下記式(XL)で表される化合物基であってもよい。R
8又はR
9のいずれか一方が水素原子である場合、下記式(XL)で表される化合物はアセタール化合物基であるということができる。
【化65】
式(XL)中、R
9及びR
10’は上記式(XXIV)中のR
9及びR
10’とそれぞれ同義である。R
9及びR
10’は、上記と同様に、環構造を形成していてもよい。式(XL)中、R
23及びR
24は、それぞれ独立に、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
23及びR
24は、単結合若しくは二重結合により、又は、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
g−、−CR
g2−、−NH−若しくは−NR
g−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
gは上記式(XXIV)中のR
gと同義である。ケタール化合物基又はアセタール化合物基は、式(XL)中のR
23及び/又はR
24と結合する酸素原子が硫黄に置き換えられたチオケタール化合物基又はチオアセタール化合物基であってもよい。
【0164】
(1’)ベース成分に結合したケタール化合物基及びアセタール化合物基は、(1’)ベース成分に結合したカルボニル化合物基をアルコールと反応させることでそれぞれ得ることができる。上記反応は、光増感作用に寄与するカルボニル基を保護する反応ということができ、上記式(XL)におけるR
23及びR
24はカルボニル基の保護基ということができる。また、この場合、放射線等により前駆体基が光増感剤の機能を有する基となる反応を脱保護反応ということができる。保護基の反応性は光増感剤前駆体において上述したとおりである。
【0165】
上記前駆体基は、下記式(XLI)〜(XLIV)で表される化合物基又はその誘導体基であってもよい。
【化66】
【0166】
式(XLI)〜(XLIV)中、R
23及びR
24は、式(XL)中のR
23及びR
24とそれぞれ同義である。式(XLI)〜(XLIV)中、芳香環の水素原子は炭素数1〜5のアルコキシ基又は炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよく、芳香環は別の芳香環と結合してナフタレン環又はアントラセン環を形成していてもよい。R
25は炭素数1〜5のアルキル基を示す。式(XLI)〜(XLIV)中、*は(1’)ベース成分との結合部分を示す。なお、式(XLIV)では、R
25と(1’)ベース成分とが結合していてもよい。式(XLI)〜(XLIV)で表される化合物基又はその誘導体基が結合した(1’)ベース成分を用いた場合、前駆体基から光増感剤の機能を有する基となったときの放射線の吸収波長のシフトがより大きく、パターン露光部でのより選択的な増感反応を起こすことができる。
【0167】
式(XXIV)中のアルコール性水酸基の水素原子が置換されたオルトエステル化合物基は好ましくは下記式(XLVIII)で表される化合物基であると言うことができる。すなわち、前駆体基は下記式(XLVIII)で表される化合物基であってもよい。
【化1】
式(XLVIII)中、R
38〜R
40は,それぞれ独立に、上記式
(XLVI)中のR
38〜R
40と同義である。式(XLVIII)中、R
10’は、式(XXIV)中のR
10’と同義である。R
38〜R
40のうち任意の2つ以上の基は、単結合若しくは二重結合により、又は、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
g−、−CR
g2−、−NH−若しくは−NR
g−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
gは上記式(VI)中のR
gと同義である。
【0168】
オルトエステル化合物基は、パターン露光において脱保護反応で分解し、例えば、カルボニル基を含むカルボン酸エステル基又はカルボン酸基になる。オルトエステル化合物基は、例えば、カルボキシル基を有する光増感剤のカルボキシル基の部分をOBO(例えば、4−メチル2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン−1−イル)で置換(保護)した、下記式(XLIX)で表されるOBOエステル化合物基であることが好ましい。OBOでカルボキシル基を保護した前駆体基は、パターン露光時に発生する酸触媒によってカルボン酸基を生成し、放射線の吸収波長がシフトし、一括露光時に光増感剤の機能を有する基として働く。前駆体基からカルボン酸基が生成することで、パターン露光部で、(例えば、非極性から極性に)レジストの極性が変わる。このため、オルトエステル化合物基は現像工程における溶解促進剤としても機能し、レジストコントラストの向上にも寄与する。前駆体基がOBOエステル化合物基を含むことにより、光増感剤の機能を有する基の生成と極性変化反応を同時に起こすことも可能である。
【0169】
【化68】
式(XLIX)中、R
41は式(XLVII)中のR
41と同義である。R
42’は、フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基から水素原子1つを除いた2価の基を示す。R
41は、好ましくは、水素原子;フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
42’は、好ましくは、フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基から水素原子1つを除いた2価の基を示す。
【0170】
前駆体基としては、具体的には、光増感剤前駆体として例示した化合物から水素原子1つを除いた基が挙げられる。
【0171】
以下に、(e)前駆体基を有する(1’)成分(高分子化合物)の化学構造の例を示す。パターン露光時には、パターン露光で発生した酸触媒により、前駆体基から保護基が外れ、カルボニル基が生成する。すなわち、光増感剤の機能を有する基が結合した(1’)ベース成分が生成する。光増感剤の機能を有する基が(1’)ベース成分に結合しているにより、一括露光中の光増感剤の拡散を抑えられ、レジスト材料膜中の酸の潜像のコントラストを向上することができる。
【0175】
(f)光酸発生基
光酸発生基は、電離放射線又は400nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下の波長を有する非電離放射線の照射によって、酸を発生する基であり、上記(d)で示される基とは異なるものである。
【0176】
光酸発生基は、上記(c)成分において例示した化合物と同様の構造(カチオンとアニオンとから構成される塩)を有することが好ましく、カチオン又はアニオンの一部で(1’)ベース成分と結合していることが好ましく、アニオンの一部で(1’)ベース成分と結合している(アニオンバウンド型である)ことがより好ましい。更に、上記(f)で示される基は、上記アニオンの一部が露光後も(1’)ベース成分と結合していることがより好ましい。酸のアニオンが露光後も(1’)ベース成分と結合していることにより、露光後の当該酸の拡散を抑制でき、像のにじみを低減することができる傾向がある。
【0177】
光酸発生基としては、具体的には、光酸発生剤として例示した化合物から水素原子1つを除いた基が挙げられる。
【0178】
以下に、(f)光酸発生基を有する(1’)成分(高分子化合物)の化学構造の例を示す。下記例では、パターン露光により、光酸発生基が分解し、分解後にアニオン基がベース部分に残る。
【化72】
【0179】
上記(d)〜(f)で示される基は、ベース成分の総質量に対して、0.1〜30質量%バウンドされていることが好ましく、0.2〜10質量%バウンドされていることがより好ましい。
【0180】
上記(1’)ベース成分は、高分子化合物である場合、高分子化合物1モルに対し、上記(d)で示される基を0.001〜0.5モル有していることが好ましく、0.002〜0.3モル有していることがより好ましく、0.01〜0.3モル有していることが更に好ましい。上記(1’)ベース成分が上記(d)で示される基を0.5モル以下有することにより、優れた形状のレジストパターンが得られやすく、他方、0.001モル以上有することにより、十分な感度が得られやすい。上記(1’)ベース成分は、高分子化合物1モルに対し、上記(e)で示される基を0.001〜0.95有していることが好ましく、0.002〜0.3モル有していることがより好ましく、0.01〜0.3モル有していることが更に好ましい。上記(1’)ベース成分が上記(e)で示される基を0.5モル以下有することにより、優れた形状のレジストパターンが得られやすく、他方、0.001モル以上有することにより、十分な感度が得られやすい。上記(1’)ベース成分は、高分子化合物1モルに対し、上記(f)で示される基を0.001〜0.5モル有していることが好ましく、0.002〜0.3モル有していることがより好ましく、0.01〜0.3モル有していることが更に好ましい。上記(1’)ベース成分が上記(f)で示される基を0.5モル以下有することにより、優れた形状のレジストパターンが得られやすく、他方、0.001モル以上有することにより、十分な感度が得られやすい。
【0181】
上記(1’)ベース成分は、低分子化合物である場合、低分子化合物1モルに対し、上記(d)で示される基を0.001〜0.5モル有していることが好ましく、0.002〜0.3モル有していることがより好ましく、0.01〜0.3モル有していることが更に好ましい。上記(1’)ベース成分が上記(d)で示される基を0.5モル以下有することにより、優れた形状のレジストパターンが得られやすく、他方、0.001モル以上有することにより、十分な感度が得られやすい。上記(1’)ベース成分は、低分子化合物1モルに対し、上記(e)で示される基を0.001〜0.5モル有していることが好ましく、0.002〜0.3モル有していることがより好ましく、0.01〜0.3モル有していることが更に好ましい。上記(1’)ベース成分が上記(e)で示される基を0.5モル以下有することにより、優れた形状のレジストパターンが得られやすく、他方、0.001モル以上有することにより、十分な感度が得られやすい。上記(1’)ベース成分は、低分子化合物1モルに対し、上記(f)で示される基を0.001〜0.5モル有していることが好ましく、0.002〜0.3モル有していることがより好ましく、0.01〜0.3モル有していることが更に好ましい。上記(1’)ベース成分が上記(f)で示される基を0.5モル以下有することにより、優れた形状のレジストパターンが得られやすく、他方、0.001モル以上有することにより、十分な感度が得られやすい。なお、上記高分子化合物又は低分子化合物が有する基の量は、合成に用いられる全体のモノマー1モルに対する(d)〜(f)で示される基を有するモノマーのモル数と同等である。
【0182】
(その他の成分)
レジスト材料は、上述の(1’)ベース成分の他に、第1の実施形態に記載した(2)成分、(3)第一の捕捉剤、(4)第二の捕捉剤、(5)架橋剤、(6)添加剤、及び(7)溶剤などを適宜含んでもよい。
【0183】
その他の成分の配合量は上記第一の実施形態と同様であり、第一の実施形態と同様の効果を奏する。ただし、(2)成分の配合量は(1’)ベース成分100質量部に対し、好ましくは0.005〜35質量部であり、より好ましくは0.1〜15質量部である。この量が15質量部以下であるとレジスト材料中の他の材料との相溶性に優れ、レジスト材料膜を形成しやすく、優れた形状のレジストパターンが得られ、他方、0.1質量部以上であると十分な感度が得られやすい。(3)第一の捕捉剤の配合量は(1’)ベース成分100質量部に対し、好ましくは、0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部である。この量を0.01質量部以上とすることで、第一の捕捉剤を配合することによる上記効果が得られやすくなる傾向がある。光酸発生剤(上記(a)成分と(c)成分との合計)と第一の捕捉剤のレジスト材料中の使用割合は、光酸発生剤/第一の捕捉剤(モル比)=1.5〜300であることが好ましい。即ち、感度及び解像度の点から、上記モル比は1.5以上であることが好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターン寸法変化抑制の点から、300以下であることが好ましい。光酸発生剤/第一の捕捉剤(モル比)は、より好ましくは5.0〜200である。
【0184】
レジスト材料は、上述した第1及び第2の実施形態を組み合わせて構成されていてもよい。すなわち、露光により光増感剤及び酸が上記第1及び第2の実施形態のいずれかの態様で発生する作用が得られればよい。例えば、本実施形態に係るレジスト材料は、上記(e)で示される基を有する(1’)ベース成分と、上記(c)成分を含有する上記(2)成分とを含んでいてもよく、上記(f)で示される基を有する(1’)ベース成分と、上記(b)成分を含有する上記(2)成分とを含んでいてもよい。
【0185】
第1の実施形態、第2の実施形態、及び第1及び第2の実施形態を組み合わせた実施形態に係るレジスト材料を以下に具体的に示す。
A.(1)ベース成分と(2)成分とをブレンドした組成物。
B.(d)で示される基がバウンドされた、(d)〜(f)で示される基中の任意の2つの基がバウンドされた、又は、下記(d)〜(f)で示される基すべてがバウンドされた(1’)第1のベース成分を含む組成物。
C.(e)で示される基がバウンドされた(1’)第1のベース成分と、(f)で示される基がバウンドされた(1’)第2のベース成分とをブレンドした組成物。
D.(e)で示される基がバウンドされた(1’)ベース成分と、(2)成分としての(c)成分とをブレンドした組成物。
E.(f)で示される基がバウンドされた(1’)ベース成分と、(2)成分としての(b)成分とをブレンドした組成物。
【0186】
なお、上記Cで示した組成物において、第1のベース成分と第2のベース成分とは、同種のベース成分から構成されていてもよく、異種のベース成分から構成されていてもよい。また、レジスト材料は、上記A〜Eで示した組成物に、更に別の(1’)ベース成分及び(2)成分等をブレンドしたものであってもよい。
【0187】
本実施形態のレジスト材料は、上記(1)〜(7)の成分を公知の方法で混合することにより製造することができる。また、(1’)ベース成分は、具体的には、下記のように製造することができる。
【0188】
(1’)ベース成分が高分子化合物である場合、これら高分子化合物を合成するには、1つの方法としては繰り返し単位を得るための不飽和結合を有するモノマーを有機溶剤中、重合開始剤(例えば、ラジカル開始剤)を加え加熱重合を行う方法があり、これにより高分子化合物を得ることができる。重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、及びジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、及びラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。(d)〜(f)で示される基は、モノマーに導入されたものをそのまま用いてもよいし、酸不安定基を酸触媒によって一旦脱離し、その後、保護化或いは部分保護化して結合を形成してもよい。
【0189】
(1’)ベース成分が低分子化合物である場合、低分子化合物の反応基に対して、(d)〜(f)で示される基は、そのまま用いてもよいし、酸不安定基を酸触媒によって一旦脱離し、その後、保護化或いは部分保護化して結合を形成してもよい。
【0190】
<パターン形成方法>
上記レジスト材料は二段露光リソグラフィプロセスに好適に使用される。すなわち、本実施形態に係るリソグラフィプロセス(パターン形成方法)は、上記レジスト材料を使用して形成されたレジスト材料膜を基板上に形成する膜形成工程と、上記レジスト材料膜にマスクを介して電離放射線又は400nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下の波長を有する非電離放射線を照射するパターン露光工程と、上記パターン露光工程後のレジスト材料膜に、上記パターン露光工程における非電離放射線の波長よりも長く、200nmを超える、好ましくは250nmを超える波長を有する非電離放射線を照射する一括露光工程と、上記一括露光工程後のレジスト材料膜を加熱するベーク工程と、上記ベーク工程後のレジスト材料膜を現像液に接触させる工程と、を備える。
【0191】
図4は、本実施形態に係るリソグラフィプロセスを示す工程図である。
図4に示すとおり、当該プロセスは以下の工程を備える。なお、
図7は、従来の化学増幅型レジスト材料を使用したパターン形成方法の一例を示す工程図である。
工程S1:加工対象の基板を準備する工程。
工程S2:下層膜及びレジスト材料膜を形成する工程(膜形成工程)。
工程S3:パターン露光により、露光部に酸を発生させる工程(パターン露光工程)。
工程S4:一括露光により、パターン露光部のみに酸を増殖させる工程(一括露光工程)。
工程S5:露光後ベークにより、パターン露光部に酸触媒による極性変化反応を生じさせる工程(ベーク工程)。
工程S6:現像処理によってレジストパターンを形成する工程(現像工程)。
工程S7:エッチングによってパターンを転写する工程。
【0192】
(工程S1)(工程S2:膜形成工程)
以下の工程において加工対象となる基板(被加工基板)は、シリコン基板、二酸化シリコン基板、ガラス基板、及びITO基板等の半導体ウエハから構成されたものであってもよく、上記半導体ウエハ上に絶縁膜層が形成されたものであってもよい。
【0193】
上記基板上にはレジスト材料膜が形成される。また、上記レジスト材料膜は本実施形態のレジスト材料を使用して形成される。レジスト材料膜の形成方法としては、具体的には、液状のレジスト材料をスピンコート等により塗布する方法、及び、フィルム状(固体状)のレジスト材料を貼り付ける方法等が挙げられる。液状のレジスト材料を塗布する場合には、塗布後に加熱(プリベーク)して、レジスト材料中の溶媒を揮発させてもよい。レジスト材料膜の形成条件は、レジスト材料の性状及び得られるレジスト材料膜の厚さ等に応じて、適宜選択される。レジスト材料膜の厚さは1〜5000nmであることが好ましく、10〜1000nmであることがより好ましく、30〜200nmであることが更に好ましい。
【0194】
基板上にレジスト材料膜を形成するに先立って、上記基板上に下層膜(反射防止膜、並びに、レジスト密着性及びレジスト形状改善のための膜等)を形成してもよい。反射防止膜を形成することにより、パターン露光工程において放射線が基板等を反射することによる定在波の発生を抑制することができる。レジスト密着性を改善するための膜を形成することにより、基板とレジスト材料膜との間の密着性を向上させることができる。レジスト形状改善のための膜を形成することにより、現像後のレジスト形状(すなわち、レジストのすそ引き形状又はくびれ形状)を更に向上させることができる。一方、一括露光の放射線の定在波の発生によるレジスト形状劣化を防ぐために、下層膜の厚さは一括露光の放射線の反射も抑えられるように設計することが望ましい。下層膜は、一括露光の放射線を吸収しない膜であることが望ましい。仮に、下層膜が一括露光の放射線を吸収する場合、レジスト材料膜内の光増感剤が下層膜からのエネルギー移動又は電子移動で光増感によりパターン露光時の未露光部で酸が発生しないように、レジスト材料膜と保護膜との間に光増感反応を伝搬しないバッファ層を配置し、放射線を吸収した下層膜からの増感を防いでもよい。
【0195】
上記レジスト材料膜の上に保護膜を更に形成してもよい。保護膜を形成することによりパターン露光工程S3で生成する光増感剤、酸、及びこれらの反応中間体の失活を抑え、プロセス安定性を向上させることができる。上記保護膜は、一括露光時に未露光部で酸発生反応を防ぐために、上記(a)若しくは(c)成分としての光酸発生剤(酸−光増感剤発生剤)、又は、上記(d)若しくは(f)で示される基としての光酸発生基(酸−光増感剤発生基)が直接吸収する非電離放射線の波長の少なくとも一部を吸収する吸収膜であってもよい。上記吸収膜を用いることで、EUV露光時に発生する紫外線領域の放射線であるアウトオブバンド光(OOB光)がレジスト材料膜に進入することを抑制し、パターン未露光部で光酸発生剤又は光酸発生基の分解を防ぐこともできる。さらに、上記吸収膜が直接レジスト材料膜上に形成される場合は、パターン未露光部での、光増感反応によるレジスト材料膜中の酸発生を抑えるために、一括露光の波長で保護膜からの光増感反応を誘発しないものがよい。また、レジスト材料膜内の光増感剤が保護膜からのエネルギー移動又は電子移動等で増感しないように、レジスト材料膜と保護膜の間にバッファ層を配置し、放射線を吸収した吸収膜からの増感を防いでもよい。パターン露光工程S3後に、一括露光工程S4を実施するに先立って、上記吸収膜をレジスト材料膜上に形成することにより、パターン露光工程S4後の上記レジスト材料膜に残存する上記光酸発生剤又は上記光酸発生基から、一括露光工程S4における非電離放射線の照射によって直接酸が発生するのを更に抑制させることができる。
【0196】
(工程S3:パターン露光工程)
パターン露光工程S3では、上記膜形成工程S2で形成されたレジスト材料膜上に、所定のパターンの遮光マスクを配置される。その後、上記レジスト材料膜に、投影レンズ、電子光学系ミラー、又は反射ミラーを有する露光装置(放射線照射モジュール)から、上記マスクを介して、電離放射線、又は、400nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下の波長を有する非電離放射線が照射(パターン露光)される。パターン露光の光源としては、例えば、1keVから200keVの電子線、13.5nmの波長を有する極紫外線(EUV)、193nmのエキシマレーザー光(ArFエキシマレーザー光)、248nmのエキシマレーザー光(KrFエキシマレーザー光)が用いられることが多い。パターン露光における露光量は本実施形態の光増感化学増幅型レジストを用いて一括露光する場合よりも少ない露光量でよい。上記パターン露光により、レジスト材料膜中の上記(a)〜(c)成分又は(d)〜(f)で示される基が分解して、酸、及び、200nmを超える波長を有する非電離放射線を吸収する光増感剤を発生する。
【0197】
露光には「スキャナ」と呼ばれるステップアンドスキャン方式の露光装置が広く用いられる。この方法では、マスクと基板を同期しながらスキャン露光することで、1ショットごとのパターンが形成される。この露光により、レジスト内で露光された箇所に選択的な反応が起こる。
【0198】
また、下記一括露光工程S4を実施するに先立って、パターン露光後工程S3の上記レジスト材料膜の上に、上記(a)若しくは(c)成分中の光酸発生剤、又は、上記(d)若しくは(f)で示される光酸発生基が直接吸収する非電離放射線の波長の少なくとも一部を吸収する吸収膜を形成させてもよい。吸収膜を形成することにより、パターン露光工程S4後の上記レジスト材料膜に残存する上記光酸発生剤又は上記光酸発生基から、下記一括露光工程S4における非電離放射線の照射によって直接酸が発生するのを更に抑制させることができる。
【0199】
水素原子が置換されていないアルコール性水酸基を有する光増感剤前駆体(又は前駆体基)を用いる場合、上記パターン露光工程S3後、下記一括露光工程S4を実施するまでの間、上記レジスト材料膜が存在する雰囲気を、減圧雰囲気又は窒素若しくはアルゴンを含む不活性雰囲気とすることが好ましい。レジスト材料膜を上記雰囲気下に置くことにより、露光中のレジスト材料膜の酸素への曝露、酸素によるラジカル反応の停止を抑制することができ、また、微量の塩基性化合物による酸のクエンチングを抑制することができることから、よりプロセスを安定化できる傾向がある。パターン露光工程S3後、一括露光工程S4を実施するまでの時間(保管時間)は、30分以下であることが好ましく、10分以下であることがより好ましい。保管時間が30分以下であることにより、感度の低下を抑制できる傾向がある。一方、水素原子が置換されたアルコール性水酸基を有する光増感剤前駆体(すなわち、ケタール化合物、アセタール化合物、又はオルトエステル化合物等)を用いる場合、上記パターン露光工程S3後、下記一括露光工程S4を実施するまでの間、上記レジスト材料膜が存在する雰囲気を、アミン除去フィルターで清浄化した大気中とすることが好ましい。上記光増感剤前駆体を用いる場合、上述のような酸素の影響は受けにくいのでアミン除去フィルターで清浄化した大気中で処理してもよい。レジスト材料膜を上記雰囲気下に置くことにより、微量の塩基性化合物による酸のクエンチングを抑制することができることから、よりプロセスを安定化できる傾向がある。パターン露光工程S3後、一括露光工程S4を実施するまでの時間(保管時間)は、30分以下であることが好ましく、10分以下であることがより好ましい。保管時間が30分以下であることにより、感度の低下を抑制できる傾向がある。
【0200】
本実施形態のパターン形成方法は、上記パターン露光工程S3後、下記一括露光工程S4前に、パターン露光工程S3を実施する露光装置から一括露光工程S4を実施する露光装置に上記基板を搬送する工程を更に備えていてもよい。また、一括露光をインライン接続された塗布現像装置の中、又は、露光機とのインターフェースに相当するモジュールで行ってよい。なお、上記(2)成分又は(1’)ベース成分がケタール化合物若しくはアセタール化合物、オルトエステル化合物、又は、ケタール化合物基若しくはアセタール化合物基、オルトエステル化合物基を含む場合、本実施形態のパターン形成方法は、上記パターン露光工程S3後、下記一括露光工程S4前にベーク工程S3a(ポストパターンエクスポージャーベーク(PPEB又はPEB)と言うこともある)を備えていてもよい(
図5参照)。上記ベーク工程における加熱の温度は好ましくは30〜150℃であり、より好ましくは50〜120℃、更に好ましくは60〜100℃である。加熱時間は好ましくは5秒〜3分、より好ましくは10〜60秒である。また上記ベークは、湿度を制御した環境下で行うことが好ましい。光増感剤を生成する脱保護反応に加水分解反応を用いた場合、湿度が反応速度に影響するからである。パターン形成方法が上記ベーク工程を備えることにより、アセタール化合物、オルトエステル化合物、又は、ケタール化合物等からカルボニル化合物への加水分解反応による光増感剤発生を加速することができる。
【0201】
(工程S4:一括露光工程)
一括露光工程S4では、上記パターン露光工程S3後のレジスト材料膜全面(パターン露光された部分とパターン露光されていない部分とを併せた全面)に、投影レンズ(又は光源)を有する高感度化モジュール(露光装置又は放射線照射モジュールということもある)から、上記パターン露光における非電離放射線より長く、200nmを超える、好ましくは250nmを超える波長を有する非電離放射線が照射(一括露光)される。一括露光における露光量はウエハ全面を一度に露光してもよく、局所的な露光を組み合わせたものでもよく、又は重ね合わせて露光してもよい。一括露光用の光源には、一般的な光源を用いることができ、バンドパスフィルターやカットオフフィルターを通すことで、所望とする波長に制御した水銀ランプ及びキセノンランプ等からの紫外線の他、LED光源、レーザーダイオード、及びレーザー光源等による帯域の狭い紫外線であってもよい。上記一括露光では、レジスト材料膜中のパターン露光された部分で発生した光増感剤のみが放射線を吸収する。このため、一括露光では、パターン露光された部分において選択的に放射線の吸収が起こる。よって、一括露光中、パターン露光された部分においてのみ、酸を継続的に発生させることができ、感度を大きく向上させることが可能となる。一方、パターン露光されていない部分には酸が発生しないことから、レジスト材料膜中の化学コントラストを維持しつつ感度を向上させることができる。一括露光工程では、パターン未露光部での酸発生反応を抑えるために、ベース成分、光酸発生剤、光増感剤前駆体が吸収可能な放射線の波長よりも長い波長を有する放射線で露光する必要がある。これらを考慮すると、一括露光における非電離放射線の波長は、280nm以上であることがより好ましく、320nm以上であることがさらに好ましい。より長い波長の放射線を吸収可能な光増感剤を発生する場合には、上記非電離放射線の波長は350nm以上であってもよい。ただし、上記非電離放射線の波長が長すぎる場合は、光増感反応の効率が落ちるため、ベース成分、光酸発生剤、光増感剤前駆体が吸収可能な放射線の波長を避けつつも、光増感剤が吸収可能なできるだけ短い波長の非電離放射線を用いることが望ましい。このような観点から、上記非電離放射線の波長は、具体的には、450nmであることが好ましく、400nm以下であることがより好ましい。
【0202】
パターン露光工程S3及び/又は一括露光工程S4は液浸リソグラフィ(液浸露光)によって実施されてもよく、ドライリソグラフィ(ドライ露光)によって実施されてもよい。液浸リソグラフィとは、レジスト材料膜と投影レンズとの間に液体を介在させた状態で行う露光をいう。これに対し、ドライリソグラフィとは、レジスト材料膜と投影レンズとの間に気体を介在させた状態、減圧下、又は真空中で行う露光をいう。
【0203】
また、パターン露光工程S3及び/又は一括露光工程S4における上記液浸リソグラフィは、上記膜形成工程S2において形成したレジスト材料膜又は保護膜と投影レンズとの間に屈折率1.0以上の液体を介在させた状態で行ってもよい。上記保護膜は反射防止又は反応安定性向上のためのものであることが好ましい。また、上記保護膜は液体の浸透を防ぎ、膜上の撥水性を高め、液浸露光における液体による欠陥を防止可能なものであることが好ましい。
【0204】
一括露光工程S4における上記液浸リソグラフィでは、上記液体が上記(a)若しくは(c)成分としての光酸発生剤(酸−光増感剤発生剤)、又は、上記(d)若しくは(f)で示される基としての光酸発生基(酸−光増感剤発生基)が直接吸収する非電離放射線の波長の少なくとも一部を吸収するものであってもよい。液浸リソグラフィに上記液体を用いることにより、パターン露光工程S4後の上記レジスト材料膜に残存する上記光酸発生剤又は上記光酸発生基から、一括露光工程S4における非電離放射線の照射によって直接酸が発生するのを更に抑制させることができる。
【0205】
上記パターン露光工程S3及び/又は上記一括露光工程S4をドライリソグラフィにて実施する場合には、大気中、減圧雰囲気下及び不活性雰囲気下等のいずれにおいても実施できるが、減圧雰囲気下又は窒素若しくはアルゴンを含む不活性雰囲気下で実施することが好ましく、更に、塩基性化合物が20ppb以下の雰囲気下で実施することが好ましく、5ppb以下の雰囲気中で実施することがより好ましく、1ppb以下の雰囲気中で実施することが特に好ましい。
【0206】
(工程S5:ベーク工程)
ベーク工程S5では、上記一括露光工程S4後のレジスト材料膜が加熱(以下、ポストフラッドエクスポージャベーク(PFEB)、又は単に、ポストエスポージャーベーク(PEB)ということもある)される。なお、本実施形態のパターン形成方法が、上記パターン露光後、上記一括露光前にベーク工程S3aを備える場合、上記ベーク工程S3aを1stPEB工程、上記ベーク工程S5を2ndPEB工程ということがある(
図5参照)。加熱は、例えば、大気中、窒素及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、50〜200℃、10〜300秒間行うことができる。加熱条件を上記範囲とすることにより、酸の拡散を制御でき、また、半導体ウエハの処理速度を確保できる傾向がある。ベーク工程S5では、上記パターン露光工程S3及び一括露光工程S4で発生した酸により、(1)ベース成分、又は(1’)ベース成分の脱保護反応等の極性変化反応及び架橋反応等が起こる。また、レジスト材料膜内で放射線の定在波の影響によって、レジスト側壁が波打つことがあるが、ベーク工程S5では反応物の拡散により上記波打ちを低減できる。
【0207】
(工程S6:現像工程)
現像工程S6では、上記ベーク工程S5後のレジスト材料膜を現像液に接触させる。上記ベーク工程S5におけるレジスト材料膜内の反応により、パターン露光部で選択的に現像液への溶解性が変わることを利用して現像し、レジストパターンが形成される。現像液はポジ型現像液とネガ型現像液とに分けることができる。
【0208】
ポジ型現像液はアルカリ現像液であることが好ましい。アルカリ現像液は、露光後のレジスト材料膜の極性が高い部分を選択的に溶かす。アルカリ現像液としては、具体的には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類(エタノールアミン等)、及び水酸化テトラアルキルアンモニウム(TAAH)が挙げられる。アルカリ現像液はTAAHであることが好ましい。TAAHとしては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化メチルトリエチルアンモニウム、水酸化トリメチルエチルアンモニウム、水酸化ジメチルジエチルアンモニウム、水酸化トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム(即ち、コリン)、水酸化トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化ジメチルジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化ジエチルジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化メチルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化エチルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、及び水酸化テトラ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム等が挙げられる。
【0209】
ポジ型現像液には水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の2.38質量%水溶液が広く用いられている。
【0210】
アルカリ現像では、露光後にレジスト材料膜中で生成するカルボン酸や水酸基がアルカリ現像液中でイオン化し溶け出す現象を利用してパターンが形成される。現像後は、基板上に残留している現像液を除去するために、リンスと呼ばれる水洗処理が行われる。
【0211】
ネガ型現像液は有機現像液であることが好ましい。有機現像液は、露光後のレジスト材料膜の極性が低い部分を選択的に溶かす。有機現像液はホールやトレンチ(溝)などの抜きパターンで解像性能とプロセスウィンドウを向上するために用いられる。この場合は、レジスト材料膜中の溶媒と有機現像液との親和性の違いでパターン露光部とパターン未露光部の溶解コントラストを得る。極性が高い部分は有機現像液への溶解性が低く、レジストパターンとして残る。有機現像液としては、具体的には、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、及び酢酸2−フェニルエチル等が挙げられる。
【0212】
現像工程S6(リンス処理を含む)後のレジストパターンを加熱(ポストベークということもある)することもある。ポストベークにより、リンス処理後に残るリンス液を気化し除去することができ、レジストパターンを硬化させることができる。
【0213】
(工程S7)
工程S7では、上記現像工程S6後のレジストパターンをマスクとして下地である基板がエッチング又はイオン注入されることによってパターンが形成される。エッチングは、プラズマ励起等の雰囲気下でのドライエッチングであってもよく、薬液中に浸漬するウェットエッチングであってもよい。基板にパターンが形成された後、レジストパターンが除去される。
【0214】
<反応のメカニズム>
以下、本実施形態に係るリソグラフィプロセスにおいて起こる反応のメカニズムについて説明する。
【0215】
まず、従来の化学増幅型レジストの典型的なリソグラフィプロセスは以下である。レジスト材料膜中の光酸発生剤(PAG)が分解し、パターン露光後に酸を発生する。その後、加熱にともなう酸触媒反応により、レジストベース成分の溶解特性が変化する。それにより、レジスト材料膜の現像液への溶解性が変化し現像が可能になる。
【数1】
【0216】
一方、本実施形態に係るリソグラフィプロセスは、酸の発生に光増感を活用し、従来と比べて酸の発生量を増やすことができ、大幅に感度を増幅することができる。
【0217】
本実施形態に係るリソグラフィプロセスにおける反応体系は大きく下記の3つに分けられる。さらなる特性向上のために、これらの体系を相互に組み合わせてもよい。
【0218】
本実施形態に係るリソグラフィプロセスにおける第一の反応体系は、レジスト材料が(2)成分として上記(a)酸−光増感剤発生剤を含有する、又は、レジスト材料が(d)酸−光増感剤発生基を有する(1’)ベース成分を含有する場合の体系である。この体系では、露光時に酸と光増感剤の両方が、(a)成分から発生する。発生した光増感剤はカルボニル基等を含むため、(a)成分よりも放射線の吸収波長が長波長にシフトする。発生した光増感剤だけが吸収可能であり、かつ、光増感により(a)成分を分解できる波長を有する非電離放射線で、一括露光を行うことにより、パターン露光部で、選択的に酸発生量を増幅できる。酸が発生した後の、ベース成分の酸触媒反応は、従来のリソグラフィプロセスにおける反応と同様である。
【数2】
【0219】
本実施形態に係るリソグラフィプロセスにおける第二の反応体系は、レジスト材料が(2)成分として上記(b)光増感剤前駆体及び(c)光酸発生剤を含有する、又は、レジスト材料が(e)前駆体基及び(f)光酸発生基を有する(1’)ベース成分を含有し、かつ、(b)成分(又は、(e)で示される基)が水素原子が置換されていないアルコール性水酸基を有する場合の体系である。この体系では、まず、パターン露光時に(c)成分(又は、(f)で示される基)から酸が発生し、同時に(b)成分(又は、(e)で示される基)から光増感剤が発生する。(b)成分(又は、(e)で示される基)が水素原子が置換されていないアルコール性水酸基を有する場合、アルコール性水酸基と当該アルコール性水酸基が結合する炭素原子が光増感作用に寄与するカルボニル基となる。この反応では、ラジカル又はカチオン等の短寿命の中間体を経由して光増感剤が発生し、反応は常温で数秒以内の十分な短時間で起こることがある。発生した光増感剤はカルボニル基等を含むため、(b)及び(c)成分並びに(e)及び(f)で示される基よりも放射線の吸収波長が長波長側にシフトする。発生した光増感剤だけが吸収可能であり、かつ、光増感により(c)成分又は(f)で示される基を分解できる波長を有する非電離放射線で一括露光を行うことにより、パターン露光部で、選択的に酸発生量を増幅できる。酸が発生した後の、ベース成分の酸触媒反応は、従来のリソグラフィプロセスにおける反応と同様である。
【数3】
【0220】
本実施形態に係るリソグラフィプロセスにおける第三の反応体系はレジスト材料が(2)成分として上記(b)光増感剤前駆体及び(c)光酸発生剤を含有する、又は、レジスト材料が(e)前駆体基及び(f)光酸発生基を有する(1’)ベース成分を含有し、かつ、(b)成分(又は、(e)で示される基)が水素原子が置換されているアルコール性水酸基を有する場合の体系である。この体系では、まず、パターン露光時の(c)成分又は(f)で示される基から酸が発生し、発生した酸が触媒となって(b)成分(又は、(e)で示される基)から光増感剤が発生する。水素原子が置換されているアルコール性水酸基を有する(b)成分としては、例えば、アセタール化合物、ケタール化合物及びオルトエステル化合物等が挙げられる。アセタール化合物及びケタール化合物は、酸触媒反応でそれぞれ光増感剤であるアルデヒド及びケトンを発生する。また、オルトエステル化合物は、酸触媒反応で光増感剤であるカルボン酸エステルを発生する。OBOで保護したカルボン酸の脱保護反応で、光増感剤であるカルボン酸を発生してもよい。この反応体系では、パターン露光で発生した酸が触媒となって光増感剤が発生するため、酸の触媒としての失活を抑えることで光増感剤の発生の反応を制御することが可能である。発生した光増感剤は、アルデヒド、ケトン、カルボン酸エステル及びカルボン酸等のカルボニル基を有する化合物となるため、(b)及び(c)成分並びに(e)及び(f)で示される基よりも放射線の吸収波長が長波長側にシフトする。発生した光増感剤だけが吸収可能であり、かつ、光増感により(c)成分又は(f)で示される基を分解できる波長を有する非電離放射線で一括露光を行うことにより、パターン露光部で、選択的に酸発生量を増幅できる。酸が発生した後の、ベース成分の酸触媒反応は、従来のリソグラフィプロセスにおける反応と同様である。
【数4】
【0221】
次に、本実施形態に係るリソグラフィプロセスにおける反応を各工程ごとに説明する。反応は上記第二の反応体系を中心に、必要に応じて、第三及び第一の反応体系における反応を加えて説明する。
【0222】
(パターン露光工程S3における反応)
パターン露光工程S3では、レジスト材料膜に、電離放射線、又は、400nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下の波長を有する非電離放射線が照射(パターン露光)される。レジスト材料膜中に電離放射線を照射した場合に想定される反応例を第二の反応体系を中心に以下に示す。ただし、想定される反応は以下に記載する反応に限定されない。
【0223】
パターン露光工程S3では、上記(c)成分又は上記(f)で示される基に関して、以下のような反応(第1の酸発生機構)が起こる。以下では(c)成分を例に挙げて説明するが(f)で示される基においても同様に第1の酸発生機構が起こる。
【0224】
【化73】
上記式(i)中の・は遊離ラジカルを示す。上記反応では、ベース成分(Base)に極紫外線(EUV)/電子線(EB)等の電離放射線(Ionizing radiation)を照射することにより、ベース成分がイオン化し、電子を発生している。
【0225】
【化74】
上記式(ii)中のR
aR
bI
+X
−は、上記(c)成分(PAG)の例としてのヨードニウム塩化合物である。X
−は酸のアニオンであり、R
a及びR
bは、上記式(I)におけるR
3及びR
4等と同義である。上記反応では、上記式(i)で生じた電子を、上記(c)成分、又は、上記(f)で示される基が捕捉し、上記式のように分解する。その結果、酸のアニオンX
−が発生する。
【0226】
【化75】
上記反応では、上記式(i)で生じたベース成分のプロトン付加物と、上記式(ii)等で生じた酸のアニオンX
−とが反応し、酸が発生する。以上が、パターン露光工程S3における第1の酸発生機構である。
【0227】
【化76】
パターン露光工程S3における上記酸発生機構を1つの式にまとめると、上記式(iv)のように記載できる。
【0228】
一方、パターン露光工程S3では、(b)成分又は(e)で示される基に関して、例えば、以下のような反応(第1の光増感剤発生機構)が起こる。ただし、ここに記載する反応は一部でありすべての反応機構を網羅しているものではない。以下では(b)成分を例に挙げて説明するが(e)で示される基においても同様に第1の光増感剤発生機構が起こる。また、以下では、第二の反応体系における(b)成分、すなわち(b)成分がアルコール化合物であり、ヒドロキシル基の水素原子が置換されていない場合の、(b)成分の反応例を説明する。
【0229】
【化77】
上記式(v)において、R
cR
dCH(OH)は上記(b)成分(Precursor to photosensitizer)の例としての第2級アルコール化合物である。R
c及びR
dは、上記式(VI)におけるR
8〜R
10等と同義である。上記反応では、上記式(ii)等で生成した遊離ラジカルを有するR
b・と、上記第2級アルコール化合物とが反応して、上記第2級アルコール化合物から水素が引き抜かれ、ヒドロキシル基の根元に炭素ラジカルを有する第2級アルコール化合物が生成する。
【0230】
【化78】
上記反応では、第2級アルコール化合物中の炭素ラジカルが、上記(c)成分、上記(f)で示される基がバウンドされたベース成分に電子を受け渡し、これらを分解する。分解により生成した遊離ラジカルを有するR
b・が更に上記式(v)の反応に供され、上記式(v)及び(vi)の反応が連鎖的に進行する。上記式(v)及び(vi)の連鎖的な反応機構は、ラジカル連鎖型酸発生機構とも言う。
【0231】
【化79】
上記式(vi)で生じた第2級アルコール化合物のカチオンと、上記式(vi)等で生成した酸のアニオンX
−とが反応し、光増感剤(Photosensitizer)であるケトン化合物及び酸が発生する。発生したケトン化合物は、上記一括露光工程S4において、光増感剤として作用する。以上が、パターン露光工程S3における第1の光増感剤発生機構である。
【0232】
【化80】
パターン露光工程S3における上記アルコール化合物の上記光増感剤発生機構を1つの式にまとめると、上記式(viii)のように記載できる。
【0233】
次に、レジスト材料膜に400nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下の波長を有する非電離放射線を照射した場合の反応例を以下に示す。
【0234】
パターン露光工程S3では、上記(c)成分又は上記(f)で示される基に関して、更に以下のような反応(第2の酸発生機構)が起こる。以下では(c)成分を例に挙げて説明するが(f)で示される基においても同様に第2の酸発生機構が起こる。
【0235】
【化81】
上記反応では、上記(c)成分(PAG)の例としてのヨードニウム塩化合物にArF/KrF等の電離放射線(Non ionizing radiation)を照射することにより、光酸発生剤が直接励起して分解し、酸が発生する。以上が、パターン露光工程S3における第2の酸発生機構である。
【0236】
一方、パターン露光工程S3では、(b)成分又は(e)で示される基に関して、以下のような反応(光増感剤発生機構)が起こる。以下では(b)成分を例に挙げて説明するが(e)で示される基においても同様に第2の光増感剤発生機構が起こる。
【0237】
【化82】
上記反応では、ヨードニウム塩化合物から発生したR
b+カチオンにより上記(b)成分である第2級アルコール化合物のヒドロキシル基の根元の炭素原子から水素が引き抜かれ、第2級アルコール化合物のカルボカチオンが生じる。酸のアニオンX
−とカルボカチオンからの水素イオンが対をなし酸が発生すると同時に、光増感剤であるケトン化合物が生成する。以上が、パターン露光工程S3における第2の光増感剤発生機構例である。アセタール化合物基又はケタール化合物基を有するアルコール化合物からも、光発生酸触媒による加水分解脱保護反応等により、同様に光増感剤として働くケトン化合物(カルボニル化合物)が生成できる。
【0238】
また、第三の反応体系における(b)成分、すなわち(b)成分がアセタール化合物又はケタール化合物である場合の光増感剤の発生機構は第1の光増感剤発生機構と一部異なる。まず、第1及び第2の光酸発生機構により酸が発生する。発生した酸がアセタール化合物又はケタール化合物に作用し、光増感剤であるケトン化合物が発生する。すなわち、第1及び第2の光酸発生機構により発生した酸が、アセタール化合物又はケタール化合物からケトン化合物が発生する反応の触媒となる。発生したケトン化合物は、上記一括露光工程S4において、光増感剤として作用する。以上が、パターン露光工程S3における第3の光増感剤発生機構である。
【0239】
第三の反応体系の、パターン露光工程S3における第3の光増感剤発生機構をより具体的に説明する。まず、上記第二の体系と同様に、下記式(xxvii)のとおり、酸が発生する。
【化83】
【0240】
パターン露光により発生した酸が触媒となって、(b)成分又は(e)で示される基の構造が変化し、以下のように光増感剤が発生する。この構造変化の反応(脱保護反応)はパターン露光後一括露光前にベークを行うことで加速できる。また、この構造変化反応の活性化エネルギーを上げて反応速度を落とし、捕捉剤によってパターン未露光部の酸を捕捉(中和)してから、上記ベークを行うことにより、レジスト材料膜中の酸の潜像のコントラストを更に上げることができる。また、上記脱保護反応の活性化エネルギーを上げる(外れにくい保護基をつける)ことは、常温での光化学増幅型レジスト材料の保存安定性を向上することにもつながる。
【0241】
第三の反応体系では、例えば、カルボニル基を保護基で置換(保護)したものを(b)成分又は(e)で示される基とする。パターン露光で発生した酸が触媒となって脱保護反応を引き起こし、光増感剤としてのカルボニル化合物が発生する。この反応で発生した光増感剤は、(b)及び(c)成分並びに(e)及び(f)で示される基よりも放射線の吸収波長が長波長側にシフトする。発生した光増感剤だけが吸収可能である波長を有する非電離放射線で一括露光をすることにより、パターン露光部で、選択的に光増感剤を励起できる。
【0242】
カルボニル化合物を保護することで形成できる光増感剤前駆体としては、アセタール化合物、ケタール化合物、及びオルトエステル化合物等が挙げられる。
【0243】
ケタール化合物を光増感剤前駆体として用いるときの脱保護反応(酸触媒加水分解反応)による光増感剤発生は下記式(xviii)のように起こる。
【化84】
【0244】
より具体的には、下記のような酸触媒加水分解反応により、ケタール化合物はケトン化合物に構造変換する。
【化85】
【0245】
アセタール化合物を光増感剤前駆体として用いるときの脱保護反応(酸触媒加水分解反応)による光増感剤発生は下記式(xix)のように起こる。
【化86】
【0246】
より具体的には、下記のような酸触媒加水分解反応により、アセタール化合物はアルデヒド化合物に構造変換する。
【化87】
【0247】
オルトエステル化合物を光増感剤前駆体として用いるときの脱保護反応(酸触媒加水分解反応)による光増感剤発生は下記式(xx)のように起こる。オルトエステル化合物は、脱保護反応によってカルボン酸エステル化合物に分解される。
【化88】
【0248】
より具体的には、下記のような酸触媒加水分解反応により、オルトエステル化合物はカルボン酸エステル化合物に構造変換する。
【化89】
【0249】
オルトエステル化化合物の中でも、カルボン酸をOBO(4−メチル−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン−1−イル)で保護したOBOエステル化合物は、脱保護反応により、下記式(xxi)のようにカルボン酸を発生する。そのため、OBOで保護して得られる光増感剤前駆体は、カルボキシル基を有する光増感剤を発生することができる。この光増感剤を使用すると光増感剤の発生とともにレジスト材料膜の極性も上がるため、レジスト材料膜の溶解コントラストを向上することができる。
【化90】
【0250】
より具体的には、下記のような酸触媒加水分解反応により、OBOエステル化合物はカルボン酸に構造変換する。
【化91】
【0251】
第一の反応体系で光増感剤が生成する反応は以下である。第一の反応体系では、パターン露光により酸と光増感剤を発生する(a)成分が、パターン露光時に酸と光増感剤を同時に発生する。一例を以下に示す(第6の酸発生機構)。
【化92】
【0252】
パターン露光工程S3では、上記成分(a)、上記(d)で示される基がバウンドされたベース成分に関して、上記酸発生機構及び上記光増感剤発生機構の両方が起こる。
【0253】
第1の実施形態において、上記(2)成分は、(a)成分のみを含有する、又は任意の2つの成分を含有する、或いは、(a)〜(c)成分のすべてを含有する。したがって、第1の実施形態におけるパターン露光工程S3では上記酸発生機構及び上記光増感剤発生機構の両方が起こる。また、第2の実施形態において、上記(1’)成分は、(d)で示される基のみを有する、(d)〜(f)で示される基中の任意の2つの基を有する、又は、(d)〜(f)で示される基すべてを有する。したがって、同様に、第2の実施形態におけるパターン露光工程S3では上記酸発生機構及び上記光増感剤発生機構の両方が起こる。
【0254】
(一括露光工程S4における反応)
一括露光工程S4では、レジスト材料膜に、上記パターン露光における非電離放射線より長く、200nmを超える、好ましくは250nmを超える波長を有する非電離放射線が照射(一括露光)される。光増感剤前駆体は、パターン露光時には、パターン露光のエネルギーの吸収が十分小さい必要があるが、パターン露光のエネルギーで化学構造変換が起こり、光増感剤を発生する。上記化学構造変換により紫外線領域で、光吸収のスペクトルが変化し長波長側に吸収を持つようになる。アルコール化合物(又はケタール化合物)がケトン化合物に変わる化学変化が一例である。したがって、例えば、アルコールからケトンに構造変換を起こした際に、大きく光吸収シフトを起こす材料を選択することが望ましい。以下に一括露光工程S4における反応を示す。以下では(b)成分及び(c)成分を例に挙げて説明するが、(a)成分及び(d)〜(f)で示される基においても同様の反応が起こる。つまり、第一〜第三の反応体系に共通して起こる光増感による酸の発生量の増幅について、まず、第二及び第三の反応体系の例を中心に示す。これらの反応は、一括露光による光増感剤の励起と、励起状態の光増感剤が引き起こす光酸発生剤の分解による酸の発生とからなる。励起状態の光増感剤が光酸発生剤を分解する反応機構は大きく、主に電子移動によるものと、励起移動によるものとに分けられる。これらの増感反応は連鎖的に起こるため、一括露光により、酸の発生量を大幅に増幅でき、レジストの感度が大きく向上する。
【0255】
【化93】
式(xi)中、R
cR
dC=Oはパターン露光工程S3で発生したケトン化合物であり、R
aR
bI
+X
−はパターン露光工程S3後も一部残っている(c)成分(PAG)の例としてのヨードニウム塩化合物である。また、式(xi)中、*は励起状態を示し、*(S)は一重項励起状態であり、*(T)は三重項励起状態である。上記反応では、パターン露光工程S3で発生した光増感剤であるケトン化合物が、非電離放射線の照射により、励起される。励起されたケトン化合物はまず一重項励起状態となるが、系間交差を経て一部三重項励起状態を生じる。
【0256】
【化94】
上記式(xi)の反応は一重項励起状態と三重項励起状態を特定せずに、式(xi’)のようにも記載できる。
【0257】
一括露光工程S4では、励起状態となった光増感剤によって、(c)成分(PAG)が間接的に分解し、酸が発生する。一括露光工程S4における上記酸発生機構には主に第3の酸発生機構(電子移動増感型酸発生機構)、第4の酸発生機構(エネルギー移動増感型酸発生機構)、及び、第5の酸発生機構(水素引抜型酸発生機構)が挙げられる。
【0258】
【化95】
式(xii)は上記第3の酸発生機構(電子移動増感型酸発生機構)を示す反応式である。上記反応では、励起状態のケトン化合物から、パターン露光工程S3後も残っている上記ヨードニウム塩化合物(PAG)に電子が移動して、ヨードニウム塩化合物が分解することにより、光増感剤及び酸が発生している。電子移動による第3の酸発生機構が実現するためには、光増感剤の酸化電位が十分低いこと、PAGの還元電位が十分高いこと、一括露光のエネルギーが電子移動を引き起こせるレベルに高いこと、その結果、光増感の電子移動反応の自由エネルギーが、マイナスになり、自発的に反応が進むことが必要である。光増感剤の酸化電位を下げるためには、ケトンの部分に共役が広がっている化合物を使い、電子供与性の高い基を導入ことが望ましいと考えられる。
【0259】
【化96】
上記式(xiii)は上記第3の酸発生機構で起こる電子移動の具体例である。
【0260】
電子移動により、光増感剤のカチオンラジカルが生成する。式(xiii)の生成物は、次のように反応を起こし、酸を生成する。光増感剤のカチオンラジカルがフェニルラジカルと反応した場合の第3の酸発生機構(電子移動増感型酸発生機構)は次のとおりである。
【化97】
【0261】
光増感剤のカチオンラジカルがポリマー(POLY−H)と反応した場合の第3の酸発生機構(電子移動増感型酸発生機構)は次のとおりである。
【化98】
【0262】
【化99】
式(xiv)及び式(xv)は上記第4の酸発生機構(エネルギー移動増感型酸発生機構)を示す反応式である。式(xiv)では、ケトン化合物からヨードニウム塩化合物に励起状態が移動するとともに(三重項励起移動)光増感剤が発生し、式(xv)では、励起状態のヨードニウム塩化合物が分解することにより酸が発生している。光増感剤からPAGへの三重項増感反応を用いる場合は、一括露光の波長で、光増感剤が一重項励起状態に励起でき、かつ、光増感剤の三重項励起状態のエネルギー準位が、PAGの三重項励起状態のエネルギー準位より高いことが必要になる。
【0263】
【化100】
式(xvi)は(b)成分がヒドロキシル基を有する光増感剤前駆体である場合に起こる、第5の酸発生機構(水素引抜型酸発生機構)を示す反応式である。上記反応では、励起状態のケトン化合物が、パターン露光工程S3後も残っている第2級アルコール化合物の水素を引き抜くことで遊離ラジカルを発生し、発生したラジカルからヨードニウム塩化合物に電子が移動することで光増感剤及び酸が発生する。
【0264】
第一の反応体系でも、一括露光時には、(c)成分である光酸発生剤(PAG)ではなく、光増感剤が主に吸収する波長を有する放射線で露光が行われる。そのことにより、光増感剤が発生している部分でだけ酸と光増感剤が追加で発生する(第7の酸発生機構)。下記式では光酸発生剤(PAG)としてヨードニウム塩を用いているが、スルホニウム塩等の他の光酸発生剤の場合も同様に酸が発生する。
【化101】
【0265】
本実施形態のパターン形成方法は、上記パターン露光工程S3及び上記一括露光工程S4を備えることにより、露光後に発生する酸をパターン露光された部分にのみ大幅に増加させることができる。
【0266】
図1は一括露光時のレジスト材料膜のパターン露光部の吸光度と、未露光部の吸光度とを示すグラフである。レジスト材料膜のパターン露光されていない部分(パターン未露光部)では比較的短い波長を有する紫外線には吸収を示すものの、長い波長を有する紫外線には吸収を示さない。一方、レジスト材料膜のパターン露光された部分(パターン露光部)では上述のように、酸及び光増感剤が発生する。発生した光増感剤は200nmを超える波長を有する非電離放射線を吸収するものであり、比較的長い波長を有する紫外線に吸収を示すものである。一括露光ではパターン露光のようにマスクを用いずにレジスト材料膜の全面に対して放射線が照射されるが、パターン未露光部は一括露光工程S4で用いられる第2の放射線の吸収は少ない。したがって、一括露光工程S4では、パターン露光部において、主に、上述の第3〜5及び第7の酸発生機構が起こる。このため、一括露光中、パターン露光部のみで酸を継続的に発生させることができ、リソグラフィ特性を維持しながら感度を向上させることができる。
【0267】
図2(a)は従来の化学増幅型レジスト材料中の酸濃度分布を示すグラフである。
図7のように極紫外線(EUV)等でパターン露光のみを行った場合、十分な酸を発生させることができず、感度が低くなる。感度を向上させるために露光量を上げると、レジストパターンの潜像が劣化(リソグラフィ特性が低下)することから、感度とリソグラフィ特性との両立が困難である。
図2(b)は本実施形態に係る光増感化学増幅型レジスト材料中の光増感剤濃度分布及び酸濃度分布を示すグラフである。パターン露光では、レジストパターンの潜像に優れるものの、十分な酸が発生していない。しかし、一括露光後には、パターン露光で発生した光増感剤によって、パターン露光部でのみ酸の量を増加させることができ、レジストパターンの優れた潜像を維持しながら少ない露光量で感度を向上させることができる。一括露光時の光増感剤による酸発生機構は室温で起こるため、酸発生時の潜像のにじみが少なく、解像度を維持したまま大幅な高感度化が可能となる。
【0268】
図3(a)は従来の化学増幅型レジスト材料中の酸濃度分布を示すグラフであり、パターン露光及び一括露光をともに極紫外線(EUV)等で行った場合の酸濃度分布を示すものである。パターン露光では酸の発生量は少ないものの、レジストパターンの優れた潜像が維持されている。しかし、一括露光ではレジスト材料膜の全面で酸が発生する。感度を向上させるために露光量を上げると、レジストパターンの潜像が大きく劣化(リソグラフィ特性が低下)することから、感度とリソグラフィ特性との両立が困難である。
図3(b)は
図2(b)と同様に本実施形態に係る光増感化学増幅型レジスト材料中の光増感剤濃度分布及び酸濃度分布を示すグラフである。
図3(b)においても、
図2(b)と同様に、パターン露光部でのみ酸の量を増加させることができ、レジストパターンの優れた潜像を維持しながら少ない露光量で感度を向上させることができる。
【0269】
<半導体デバイス>
本実施形態に係る半導体デバイスは、上記方法によって形成されたパターンを用いて製造される。
図6は、本実施形態の半導体デバイスの製造工程の一例を示した断面図である。
【0270】
図6(a)はレジストパターン形成工程を示す断面図であり、半導体ウエハ1と、上記半導体ウエハ1上に形成された被エッチング膜3と、上記パターン形成方法により上記被エッチング膜3上に形成されたレジストパターン2との断面図である(現像工程S6終了後に相当)。被エッチング膜としては、アクティブレイヤー、下層絶縁膜、ゲート電極膜及び上層絶縁膜等が挙げられる。被エッチング膜3とレジストパターン2との間には、反射防止膜又はレジスト密着性若しくはレジスト形状改善のための膜が設けられていてもよい。多層マスク構造にしていてもよい。
図6(b)はエッチング工程を示す断面図であり、半導体ウエハ1と、レジストパターン2と、レジストパターン2をマスクとしてエッチングされた被エッチング膜3の断面図である。被エッチング膜3がレジストパターン2の開口部の形状に沿ってエッチングされている。
図6(c)は、半導体ウエハ1と、レジストパターン2が除去された後のエッチングされた被エッチング膜3のパターンとを備えるパターン基板10の断面図である。レジストパターン2が除去された被エッチング膜3のパターンは、例えば、配線が埋め込まれ平坦化される等して、デバイス素子を基板上に積層し、半導体デバイスが製造される。
【0271】
<リソグラフィ用マスク>
本実施形態に係るリソグラフィ用マスクは、上記と同様方法によって形成されたレジストパターンを用い、基板を加工して製造される。ガラス基板上の基板表面又はハードマスクを、レジストパターンを用いてエッチングし、加工して製造することが多い。ここでいうマスクは、紫外線又は電子線を用いた透過型マスクや、EUV光を用いた反射型マスク等を含む。透過型マスクでは、遮光部又は位相シフト部をレジストパターンでマスクして、エッチングで加工する。反射型のマスクでは、吸光体をレジストパターンをマスクにして、エッチングで加工する。
【0272】
<ナノインプリント用テンプレート>
本実施形態に係るナノインプリント用テンプレートも、上記と同様な方法によって形成されたレジストパターンを用いて製造される。ガラス基板など基板上のガラス面又はハードマスク面でレジストパターンを形成し、エッチングで加工しナノインプリント用のテンプレートを形成する。
【実施例】
【0273】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0274】
(実施例1)
保護基が結合したメチルメタクリレートとして、下記GBLMAを32.19質量部(0.44モル部)、下記MAMAを23.86質量部(0.24モル部)、及び下記HAMAを21.29質量部(0.21モル部)、並びに、光酸発生基が結合したメチルメタクリレートとして、下記PBpS−F2MASを22.66質量部(0.11モル部)混合し、ラジカル重合させることにより、(1’)成分として、(f)光酸発生基を有するメチルメタクリレート系高分子化合物(高分子化合物P)を合成した。得られたメチルメタクリレート系高分子化合物の重量平均分子量Mwは24800であり、分子量分布Mw/Mnは3.08であった。なお、上記Mw及びMw/Mnはゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて下記の条件にて測定したものである。
装置:HPLC(株式会社島津製作所製)
カラム:ShodexKF−805L(x) with KF−G
検出器:RID−10A,SPD−M10AVP
カラム温度:40℃
流束:1.0mL/分
溶離液:テトラヒドロフラン溶液
【化102】
【0275】
得られた高分子化合物Pの5質量%シクロヘキサノン溶液7.91mg(7mL)に、(b)光増感剤前駆体としてジメトキシベンズヒドロール誘導体を29.0mg(高分子化合物P1モルに対して0.1モル)、(3)第一の捕捉剤(クエンチャー)としてトリオクチルアミン(TOA、シグマアルドリッチ社製)1.77mg(高分子化合物P1モルに対して0.005モル)を加え、レジスト材料を調製した。なお、ジメトキシベンズヒドロール誘導体とは、光増感剤として働くp−ジメトキシベンゾヒドロールにおけるカルボニル基の炭素原子にメトキシ基2つが結合したアセタール化合物である。ジメトキシベンズヒドロール誘導体は、パターン露光後の下記脱保護反応で光増感剤であるケトン(p−ジメトキシベンゾフェノン)を生成する。
【化103】
【0276】
予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)で表面処理を行ったシリコン基板上に、スピンコーター(ミカサ株式会社製)を用いて、調製したレジスト材料を、回転数4000rpmで、60秒間スピンコートした。スピンコート後、塗布膜を110℃で60秒間加熱し、シリコン基板上にレジスト材料膜を形成した(膜形成工程)。レジスト材料膜の厚さを原子間力顕微鏡(AFM、商品名:NanoNavi II SPA−300HV、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて計測した結果、厚さは51nmであった。
【0277】
レジスト材料膜が形成された基板に対し、パターンニング装置(ベクタースキャン方式、商品名:ELS−7700T、株式会社エリオニクス製)を用い、真空中(2.9×10
−5Pa以下)で、照射電流10pA、加速電圧75kVの電子線を照射した(パターン露光工程)。続いて、真空を保持した状態で、露光装置(UVランプ、光源出力:0.8mW/h、商品名:SLUV−6、アズワン株式会社製)の石英窓を通して、365nmの波長を有する紫外線を、パターン露光直後のレジスト材料膜の全面に30分間照射した(一括露光工程)。
【0278】
一括露光後のレジスト材料膜を、窒素気流中で110℃60秒間加熱した(ベーク工程)。ベーク工程後のレジスト材料膜を、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)に25℃で60秒間接触させて現像処理を行い、レジストパターンを得た(現像工程)。
【0279】
(実施例2)
一括露光工程において、紫外線を10分間照射したこと以外は実施例1と同様にして、レジストパターンを得た。
【0280】
(比較例1)
一括露光を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、レジストパターンを得た。
【0281】
<感度の評価>
実施例1、実施例2及び比較例1のパターン露光工程における露光量を0〜200μC/cm
2の範囲で変化させ、それぞれの露光量で2μm×100μmの長方形の形状に露光したレジスト材料膜に対して現像処理を行った後のパターン露光部の残膜率を測定した。残膜率を縦軸に、露光量を横軸にとったグラフ(感度曲線)を
図8に示す。なお、残膜率は現像処理前後の基板上に残存したレジスト材料膜の厚さを原子間力顕微鏡(AFM、商品名:NanoNavi II SPA−300HV、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、室温及び大気中で測定し、下記式に基づいて求めた。
残膜率=[(現像処理前のレジスト材料膜の厚さ)−(現像処理後のレジスト材料膜の厚さ)]/(現像処理前のレジスト材料膜の厚さ)
【0282】
残膜率が0(ゼロ)となるのに必要な露光量を
図8のグラフの近似曲線から外挿して感度(E
0)として算出した結果、実施例1、実施例2及び比較例1の感度はそれぞれ15.8μC/cm
2、20.2μC/cm
2及び24.3μC/cm
2であった。実施例1及び2では比較例1と比べて一括露光を行うことで高い感度が得られていることが確認された。なお、「感度E
0」は、上述のとおり、残膜率が0(ゼロ)となるのに必要な露光量を意味するから、感度E
0の値が小さいことは一般的に用いられる「感度」が高いことを意味し、逆に感度E
0の値が大きいことは一般的に用いられる「感度」が低いことを意味する。
【0283】
<リソグラフィ特性の評価>
実施例1、実施例2及び比較例1で得られたレジストパターンにおいて、直径50nm、ピッチ150nmのコンタクトホール用に現像された部分を高分解走査電子顕微鏡(SEM、商品名:NVision 40D、Carl Zeiss社製)を用いて観察したところ、実施例1、実施例2及び比較例1のいずれにおいても、直径48〜51nmのコンタクトホール用レジストパターンが規則正しく形成されていた。なお、直径50nmのコンタクトホール用レジストパターンを形成するためのレジスト材料膜の残膜率が0(ゼロ)となるときの露光量(感度E
size)は、実施例1、実施例2及び比較例1において、それぞれ、48.0μC/cm
2、60.0μC/cm
2及び76.0μC/cm
2であった。
【0284】
また、実施例1、実施例2及び比較例1で得られたレジストパターンにおいて、ピッチ150nmで、50nmライン/100nmスペースのラインとして形成された部分を高分解走査電子顕微鏡(SEM、商品名:NVision 40D、Carl Zeiss社製)を用いて観察したところ、実施例1、実施例2及び比較例1のいずれにおいても、ライン用レジストパターンが規則正しく形成されていた。実施例1、実施例2及び比較例1のラインエッジラフネス(LER)は、それぞれ、8.9nm、9.2nm及び8.2nmであった。なお、幅50nmのライン用のレジストパターンを形成するためのレジスト材料膜の残膜率が0(ゼロ)となるときの露光量(感度E
size(E
50nm))は、実施例1、実施例2及び比較例1において、それぞれ、44.0μC/cm
2、56.0μC/cm
2及び72.0μC/cm
2であった。よって、コンタクトホール及びラインアンドスペースのいずれのパターンにおいても、実施例1及び2では比較例1と比べて解像度を維持した状態で感度が向上していることが確認された。
【0285】
(比較例2)
(1)ベース成分である下記式で表される構成単位を有するメチルメタクリレート系高分子化合物Q(重量平均分子量:16000)600mgをシクロヘキサノン45mLに溶解させ、上記溶液に(c)光酸発生剤としてヨードニウム塩化合物(商品名:DPI−PFBS、みどり化学株式会社製)を29.0mg(高分子化合物1モルに対して0.05モル)、(b)光増感剤前駆体としてジメトキシベンズヒドロール誘導体を28.83mg(高分子化合物1モルに対して0.1モル)、(3)第一の捕捉剤(クエンチャー)としてトリオクチルアミン(TOA、シグマアルドリッチ社製)を1.77mg(高分子化合物1モルに対して0.005モル)加え、レジスト材料を調製した。
【化104】
【0286】
予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)で表面処理を行ったシリコン基板上に、スピンコーター(ミカサ株式会社製)を用いて、調製したレジスト材料を、回転数1200rpmで、120秒間スピンコートした。スピンコート後、塗布膜を110℃で60秒間加熱し、シリコン基板上にレジスト材料膜を形成した(膜形成工程)。レジスト材料膜の厚さを原子間力顕微鏡(AFM、商品名:NanoNavi II SPA−300HV、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて計測した結果、厚さは43nmであった。
【0287】
レジスト材料膜が形成された基板に対し、パターンニング装置(ビームブランカー装着、ラスタースキャン方式、商品名:JSM−6500F、日本電子株式会社製)を用い、真空中で、照射電流30pA、加速電圧30kVの電子線を照射した(パターン露光工程)。パターン露光後のレジスト材料膜が形成された基板を塩基性物質であるアミン量を制御していない大気中に一時取り出し、その後、乾燥窒素雰囲気下で0〜30分保管した。
【0288】
保管後のレジスト材料膜を大気中に取り出し、窒素気流中で110℃60秒間加熱した(ベーク工程)。ベーク工程後のレジスト材料膜を、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)に25℃で60秒間接触させて現像処理を行い、レジストパターンを得た(現像工程)。
【0289】
<感度の評価>
パターン露光後の保管時間を0、10、20及び30分としたときの残膜率を測定し、実施例1と同様に感度(E
0)を算出した。感度の対数を縦軸に、保管時間を横軸にとったグラフを
図9に示す。パターン露光直後に(保管時間0分で)現像したときの感度は、40.3μC/cm
2であったものが、10分窒素雰囲気下で保管したときの感度は、68.4μC/cm
2、30分窒素雰囲気下で保管したときの感度は、188.5μC/cm
2となり、パターン露光後の保管時間が長くなるにしたがって、感度が低下していることが確認された。
【0290】
<リソグラフィ特性の評価>
実施例1と同様にして、比較例2で得られたレジストパターンを観察したところ、いずれの保管時間においても、直径50nm、ピッチ150nmのコンタクトホール用レジストパターン及び50nmライン/100nmスペースのライン用レジストパターンが規則正しく形成されていた。なお、保管時間を長くすると、コンタクトホールの大きさが不均一となり、レジストパターンが規則正しく形成されなくなり、また、ライン用レジストパターンのラインエッジラフネスが大きくなり、ラインの途絶えが一部確認された。
【0291】
(実施例3)
(1)ベース成分である上記メチルメタクリレート系高分子化合物Q600mgをシクロヘキサノン45mLに溶解させ、上記溶液に(c)光酸発生剤としてヨードニウム塩化合物(商品名:DPI−PFBS、みどり化学株式会社製)を29.0mg(高分子化合物1モルに対して0.05モル)、(b)光増感剤前駆体としてジメトキシベンズヒドロール誘導体を28.83mg(高分子化合物1モルに対して0.1モル)、(3)第一の捕捉剤(クエンチャー)としてトリオクチルアミン(TOA、シグマアルドリッチ社製)を1.77mg(高分子化合物1モルに対して0.005モル)加え、レジスト材料を調製した。
【0292】
予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)で表面処理を行ったシリコン基板上に、スピンコーター(ミカサ株式会社製)を用いて、調製したレジスト材料を、回転数1200rpmで、120秒間スピンコートした。スピンコート後、塗布膜を110℃で60秒間加熱し、シリコン基板上にレジスト材料膜を形成した(膜形成工程)。レジスト材料膜の厚さを原子間力顕微鏡(AFM、商品名:NanoNavi II SPA−300HV、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて計測した結果、厚さは43nmであった。
【0293】
レジスト材料膜が形成された基板に対し、パターンニング装置(ビームブランカー装着、ラスタースキャン方式、商品名:JSM−6500F、日本電子株式会社製)を用い、真空中で、照射電流30pA、加速電圧30kVの電子線を照射した(パターン露光工程)。続いて、塩基性物質であるアミン量を制御していない大気中で、露光装置(UVランプ、光源出力:0.78mW/h、商品名:SLUV−6、アズワン株式会社製)を用いて、365nmの波長を有する紫外線を、パターン露光直後のレジスト材料膜の全面に10分間照射した(一括露光工程)。
【0294】
一括露光後のレジスト材料膜を、窒素気流中で110℃60秒間加熱した(ベーク工程)。ベーク工程後のレジスト材料膜を、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)に25℃で60秒間接触させて現像処理を行い、レジストパターンを得た(現像工程)。
【0295】
(実施例4)
一括露光工程を下記のとおり実施した以外は実施例3と同様にして、レジストパターンを得た。
【0296】
パターン露光工程後の基板を、塩基性物質であるアミン量を制御していない大気中に一分間取り出し、乾燥窒素環境下で、露光装置(LED光源、光源出力:0.72mW/h、商品名:3Dライムライト、ナイトライドナイトライド・セミコンダクター株式会社製)を用いて、365nmの波長を有する紫外線を、パターン露光後のレジスト材料膜の全面に15分間照射した(一括露光工程)。
【0297】
(実施例5)
一括露光工程を下記のとおり実施した以外は実施例3と同様にして、レジストパターンを得た。
【0298】
パターン露光工程後の基板を、塩基性物質であるアミン量を制御していない大気中一時取り出し、10分間乾燥窒素雰囲気下で保管した。その後、乾燥窒素環境下で、露光装置(LED光源、光源出力:0.72mW/h、商品名:3Dライムライト、ナイトライドナイトライド・セミコンダクター株式会社製)を用いて、365nmの波長を有する紫外線を、保管後のレジスト材料膜の全面に15分間照射した(一括露光工程)。
【0299】
<感度の評価>
実施例1と同様にして感度(E
0)を算出したところ、一括露光を行い、保管を行わなかった実施例3〜4ではそれぞれ29.5μC/cm
2及び37.6μC/cm
2の感度が得られたのに対し、一括露光及び保管を行わなかった比較例2では上述のとおり43.3μC/cm
2の感度が得られた。一括露光によって高感度化が諮られていることがわかる。また、一括露光及び保管を行った実施例5では48.1μC/cm
2の感度が得られたのに対し、一括露光を行わず、保管を行った比較例2では上述のとおり68.4μC/cm
2の感度が得られた。一括露光によって高感度化が諮られていることがわかる。
【0300】
<リソグラフィ特性の評価>
実施例3及び比較例2で得られたレジストパターンにおいて、直径100nm、ピッチ200nmのコンタクトホール用に現像された部分を高分解走査電子顕微鏡(SEM、商品名:SU9000、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察した。
図10は比較例2(保管時間10分)で得られたレジストパターンのSEM画像である。
図10からは、比較例2(保管時間10分)ではコンタクトホール用レジストパターンが形成されていない部分があり、直径が100nmに満たないものも多数存在していることがわかる。一方、
図11は実施例3で得られたレジストパターンのSEM画像である。
図11からは、ピッチ200nmを維持し、直径98nm〜102nmのコンタクトホール用レジストパターンが全体として規則正しく形成されていることがわかる。
【0301】
なお、直径75nmのコンタクトホール用レジストパターンを形成するためのレジスト材料膜の残膜率が0(ゼロ)となるときの露光量(感度E
size)は、実施例3及び比較例2において、それぞれ、60.0μC/cm
2で112.5μC/cm
2であった。一括露光により、解像度を維持した状態で感度が向上していることが確認された。
【0302】
また、実施例3〜4及び比較例2で得られたレジストパターンにおいて、ピッチ150nmで、75nmライン/75nmスペースのラインとして形成された部分を高分解走査電子顕微鏡(SEM、商品名:NVision 40D、Carl Zeiss社製)を用いて観察したところ、実施例3〜4及び比較例2のいずれにおいても、ピッチ150nmを維持し、幅74〜76nmのライン用レジストパターンが規則正しく形成されていた。実施例3〜4及び比較例2のラインエッジラフネス(LER)は、それぞれ、11.0nm、10.8nm及び11.3nmであった。なお、幅50nmのライン用のレジストパターンを形成するためのレジスト材料膜の残膜率が0(ゼロ)となるときの露光量(感度E
size)は、実施例3〜4及び比較例2(保管時間10分)において、それぞれ、67.5μC/cm
2、87.5μC/cm
2及び97.5μC/cm
2であった。よって、コンタクトホール及びラインアンドスペースのいずれのパターンにおいても、実施例3及び4では比較例2と比べて解像度を維持した状態で感度が向上していることが確認された。
【0303】
実施例3の一括露光における光源出力は0.78mW/hであり、露光時間は10分である。また、実施例4の一括露光における光源出力は0.72mW/hであり、露光時間は15分である。実施例3において、一括露光の露光時間が比較的短いにもかかわらず、実施例4と比べて高い感度が得られた理由は、一括露光における非電離放射線の波長にあると考えられる。実施例のUVランプは、ブラックライトであり、広範囲の波長領域に対して分布を有する紫外線である。上記UVランプは、365nmの波長を中心に、320nmぐらいから400nmぐらいの広い範囲で紫外線を放出している。この結果、短い波長成分による光増感剤への吸収によって酸発生が365nmの単一波長のLEDに比べ、高感度化が達成されている。
【0304】
実施例5では、幅50nmのライン用のレジストパターンを形成するためのレジスト材料膜の残膜率が0(ゼロ)となるときの露光量(感度E
size)は、150μC/cm
2であり、LERは14nmであった。保管を行わなかった実施例4と比べて解像度及び感度が低下した。
【0305】
(比較例3)
(1)ベース成分である上記メチルメタクリレート系高分子化合物Q600mgをシクロヘキサノン48mLに溶解させ、上記溶液に(c)光酸発生剤としてヨードニウム塩化合物(商品名:DPI−PFBS、みどり化学株式会社製)を29.0mg(高分子化合物1モルに対して0.05モル)、(b)光増感剤前駆体としてジメトキシベンズヒドロール誘導体を28.83mg(高分子化合物1モルに対して0.1モル)、(3)第一の捕捉剤(クエンチャー)としてトリオクチルアミン(TOA、シグマアルドリッチ社製)を3.54mg(高分子化合物1モルに対して0.01モル)加え、レジスト材料を調製した。
【0306】
予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)で表面処理を行ったシリコン基板上に、スピンコーター(ミカサ株式会社製)を用いて、調製したレジスト材料を、回転数1200rpmで、60秒間スピンコートした。スピンコート後、塗布膜を110℃で60秒間加熱し、シリコン基板上にレジスト材料膜を形成した(膜形成工程)。レジスト材料膜の厚さを原子間力顕微鏡(AFM、商品名:NanoNavi II SPA−300HV、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて計測した結果、厚さは41nmであった。
【0307】
レジスト材料膜が形成された基板に対し、パターンニング装置(ビームブランカー装着、ラスタースキャン方式、商品名:JSM−6500F、日本電子株式会社製)を用い、真空中で、照射電流30pA、加速電圧30kVの電子線を照射した(パターン露光工程)。パターン露光後のレジスト材料膜が形成された基板を塩基性物質であるアミン量を制御していない大気中に一時取り出し、その後、乾燥窒素雰囲気下で0〜30分保管した。
【0308】
保管後のレジスト材料膜を大気中に取り出し、窒素気流中で110℃60秒間加熱した(ベーク工程)。ベーク工程後のレジスト材料膜を、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)に25℃で60秒間接触させて現像処理を行い、レジストパターンを得た(現像工程)。
【0309】
<感度の評価>
パターン露光後の保管時間を0、10、20及び30分としたときの残膜率を測定し、実施例1と同様に感度を算出した。表1に保管時間に伴う感度の変化を示す。パターン露光後の保管時間が長くなるにしたがって、感度が低下していることが確認された。
【0310】
<リソグラフィ特性の評価>
実施例1と同様にして、比較例3で得られたレジストパターンを観察したところ、いずれの保管時間においても、直径50nm、ピッチ150nmのコンタクトホール用レジストパターン及び50nmライン/100nmスペースのライン用レジストパターンは得られたが、比較例2同様、保管時間が長くなるにつれ、コンタクトホールの大きさが不均一になったほか、規則正しく得られなくなった。また、ライン形状についてもラインエッジラフネスが悪くなったほか、ラインが一部途絶えてしまうことが確認できた。
【0311】
【表2】
【0312】
(実施例6)
比較例3で基板上に形成したレジスト材料膜に対し、パターンニング装置(ビームブランカー装着、ラスタースキャン方式、商品名:JSM−6500F、日本電子株式会社製)を用い、真空中で、照射電流30pA、加速電圧30kVの電子線を照射した(パターン露光工程)。続いて、塩基性物質であるアミン量を制御していない大気中で、露光装置(UVランプ、0.78mW/h、商品名:SLUV−6、アズワン株式会社製)を用いて、365nmの波長を有する紫外線を、パターン露光直後のレジスト材料膜の全面に10分間照射した(一括露光工程)。
【0313】
一括露光後のレジスト材料膜を、窒素気流中で110℃60秒間加熱した(ベーク工程)。ベーク工程後のレジスト材料膜を、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)に25℃で60秒間接触させて現像処理を行い、レジストパターンを得た(現像工程)。
【0314】
<感度の評価>
実施例1と同様にして感度(E
0)を算出したところ、実施例6では50μC/cm
2の感度が得られたのに対し、比較例3における10分間保管(以下、比較例3−(a)と言う)では68μC/cm
2の感度が得られた。一括露光によって高感度化が諮られていることがわかる。
【0315】
<リソグラフィ特性の評価>
実施例6及び比較例3−(a)で得られたレジストパターンにおいて、直径50nm、ピッチ150nmのコンタクトホール用に現像された部分を高分解走査電子顕微鏡(SEM、商品名:NVision 40D、Carl Zeiss社製)を用いて観察したところ、実施例6及び比較例3では、ピッチ150nmを維持し、直径48〜55nmのコンタクトホール用レジストパターンが規則正しく形成されていた。なお、直径50nmのコンタクトホール用レジストパターンを形成するためのレジスト材料膜の残膜率が0(ゼロ)となるときの露光量(感度E
size(E
50nm))は、実施例6及び比較例3において、それぞれ、129.0μC/cm
2及び150.0μC/cm
2であった。一括露光により、解像度を維持した状態で感度が向上していることが確認された。
【0316】
また、実施例6及び比較例3−(a)で得られたレジストパターンにおいて、ピッチ100nmで、50nmライン/50nmスペースのラインとして形成された部分を高分解走査電子顕微鏡(SEM、商品名:NVision 40D、Carl Zeiss社製)を用いて観察したところ、実施例6及び比較例3では、ピッチ100nmを維持し、49〜52nmのライン用レジストパターンが規則正しく形成されていた。実施例6及び比較例3のラインエッジラフネス(LER)は、それぞれ、9.8nm及び12.8nmであった。なお、幅50nmのライン用のレジストパターンを形成するためのレジスト材料膜の残膜率が0(ゼロ)となるときの露光量(感度E
size(E
50nm))は、実施例6及び比較例3−(a)において、それぞれ、120.0μC/cm
2及び145.0μC/cm
2であった。よって、コンタクトホール及びラインアンドスペースのいずれのパターンにおいても、実施例6では比較例3−(a)と比べて解像度を維持した状態で感度が向上していることが確認された。
【0317】
(実施例7)
(1)ベース成分である上記メチルメタクリレート系高分子化合物Q600mgをシクロヘキサノン45mLに溶解させ、上記溶液に(c)光酸発生剤としてヨードニウム塩化合物(商品名:DPI−PFBS、みどり化学株式会社製)を58.0mg(高分子化合物1モルに対して0.1モル)、(b)光増感剤前駆体としてジメトキシベンズヒドロール誘導体を57.7mg(高分子化合物1モルに対して0.1モル)、(3)第一の捕捉剤(クエンチャー)としてトリオクチルアミン(TOA、シグマアルドリッチ社製)を3.54mg(高分子化合物1モルに対して0.01モル)加え、レジスト材料を調製した。
【0318】
予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)で表面処理を行ったシリコン基板上に、スピンコーター(ミカサ株式会社製)を用いて、調製したレジスト材料を、回転数1200rpmで、60秒間スピンコートした。スピンコート後、塗布膜を110℃で60秒間加熱し、シリコン基板上にレジスト材料膜を形成した(膜形成工程)。レジスト材料膜の厚さを原子間力顕微鏡(AFM、商品名:NanoNavi II SPA−300HV、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて計測した結果、厚さは44nmであった。
【0319】
レジスト材料膜が形成された基板に対し、パターンニング装置(ビームブランカー装着、ラスタースキャン方式、商品名:JSM−6500F、日本電子株式会社製)を用い、真空中で、照射電流30pA、加速電圧30kVの電子線を照射した(パターン露光工程)。続いて、塩基性物質であるアミン量を制御していない大気中で、露光装置(UVランプ、0.78mW/h、商品名:SLUV−6、アズワン株式会社製)を用いて、365nmの波長を有する紫外線を、パターン露光直後のレジスト材料膜の全面に10分間照射した(一括露光工程)。
【0320】
一括露光後のレジスト材料膜を大気中に取り出し、窒素気流中で110℃60秒間加熱した(ベーク工程)。ベーク工程後のレジスト材料膜を、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)に25℃で60秒間接触させて現像処理を行い、レジストパターンを得た(現像工程)。
【0321】
(実施例8)
一括露光において、紫外線を5分間照射したこと以外は実施例7と同様にしてレジストパターンを得た。
【0322】
(比較例4)
一括露光を行わないこと以外は実施例7と同様にしてレジストパターンを得た。
【0323】
(比較例5)
パターン露光工程後、ベーク工程前に、大気中に一時取り出し、その後乾燥窒素雰囲気下で3分間保持したこと以外は、比較例4と同様にしてレジストパターンを得た。
【0324】
<感度の評価>
実施例1と同様にして感度(E
0)を算出したところ、実施例7及び8ではそれぞれ3μC/cm
2及び4μC/cm
2の感度が得られたのに対し、比較例4では24μC/cm
2の感度が得られた。一括露光によって6倍以上の高感度化が諮られていることがわかる。
【0325】
<リソグラフィ特性の評価>
実施例7及び比較例4で得られたレジストパターンにおいて、直径100nm、ピッチ200nmのコンタクトホール用に現像された部分を高分解走査電子顕微鏡(SEM、商品名:NVision 40D、Carl Zeiss社製)を用いて観察したところ、実施例7及び比較例4では、ピッチ200nmを維持し、直径99〜102nmのコンタクトホール用レジストパターンが規則正しく形成されていた。なお、直径100nmのコンタクトホール用レジストパターンを形成するためのレジスト材料膜の残膜率が0(ゼロ)となるときの露光量(感度E
size)は、実施例7及び比較例4において、それぞれ、6.0μC/cm
2及び45.0μC/cm
2であった。一括露光により、解像度を維持した状態で感度が7倍に向上していることが確認された。
【0326】
また、実施例7、実施例8及び比較例4で得られたレジストパターンにおいて、ピッチ200nmで、100nmライン/100nmスペースのラインとして形成された部分を原子間力顕微鏡(AFM、商品名:NanoNavi II SPA−300HV、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて観察したところ、実施例7、実施例8及び比較例4では、ピッチ100nmを維持し、101〜102nmのライン用レジストパターンが規則正しく形成されていた。実施例7、実施例8及び比較例4のラインエッジラフネス(LER)は、それぞれ、9.8nm、10.1nm及び10.3nmであった。なお、幅100nmのライン用のレジストパターンを形成するためのレジスト材料膜の残膜率が0(ゼロ)となるときの露光量(感度E
size)は、実施例7、実施例8及び比較例4において、それぞれ、6.0μC/cm
2、9.0μC/cm
2及び42.0μC/cm
2であった。よって、コンタクトホール及びラインアンドスペースのいずれのパターンにおいても、実施例7、実施例8では比較例4と比べて解像度を維持した状態で感度が向上していることが確認された。なお、比較例5において、幅100nmのライン用のレジストパターンを形成するためのレジスト材料膜の残膜率が0(ゼロ)となるときの露光量(感度E
size)は、52.5μC/cm
2であり、LERは13.3nmであった。比較例4と比べて、比較例5では、保管工程を有することにより、感度及び解像度が低下していた。
【0327】
(実施例9)
(1)ベース成分であるポリヒドリキシスチレン(PHS)系高分子化合物50質量部をシクロヘキサノンに溶解させ、上記溶液に(c)光酸発生剤としてスルホニウム塩化合物5質量部、(b)光増感剤前駆体としてジメトキシビス(4−メトキシフェニル)メタンを5質量部、(3)第一の捕捉剤(クエンチャー)1重量部を加え、レジスト材料を調製した。ジメトキシビス(4−メトキシフェニル)メタンは、パターン露光後の下記脱保護反応で光増感剤であるケトン(p−ジメトキシベンゾフェノン)を生成する。
【化105】
【0328】
予めMicroelectronic Engineering誌122号,70−76(2014年)記載のSO
2ポリマー(TPU−2014)で表面処理を行ったシリコン基板上に、厚さ61nmの下層膜を形成した。上記下層膜上に、スピンコーター(ミカサ株式会社製)を用いて、調製したレジスト材料を、回転数1200rpmで、60秒間スピンコートした。スピンコート後、塗布膜を130℃で60秒間窒素気流中で加熱し、シリコン基板上にレジスト材料膜を形成した(膜形成工程)。レジスト材料膜の厚さを原子間力顕微鏡(AFM、商品名:NanoNavi II SPA−300HV、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて計測した結果、厚さは50.3nmであった。
【0329】
レジスト材料膜が形成された基板に対し、パターンニング装置(ベクタースキャン方式、商品名:ELS−100T、株式会社エリオニクス製)を用い、真空中で、照射電流50pA、加速電圧125kVの電子線を照射した(パターン露光工程)。続いて、大気中で、露光装置(LED光源、光源出力:41mW/h、商品名:LHPUV365/2501、岩崎電気株式会社製)を用いて、365nmの波長を有する紫外線を、パターン露光直後のレジスト材料膜の全面に窒素気流中で照射した(一括露光工程)。なお、一括露光では、露光量を2.4、4.8、7.2J/cm
2と変化させおり、各条件に対するそれぞれのレジスト材料膜を得た。
【0330】
一括露光後の各レジスト材料膜を、窒素気流中で110℃60秒間加熱した(ベーク工程)。ベーク工程後の各レジスト材料膜を、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)に24℃で60秒間接触させて現像処理を行い、超純水でリンスしてレジストパターンを得た(現像工程)。
【0331】
(実施例10)
(b)光増感剤前駆体としてのジメトキシビス(4−メトキシフェニル)メタンの添加量を5質量部から10質量部に変更し、一括露光の露光量を1.2、2.4、4.8J/cm
2として各レジスト材料膜を得たこと以外は実施例9と同様にして、レジストパターンを得た。
【0332】
(実施例11)
(b)光増感剤前駆体としてのジメトキシビス(4−メトキシフェニル)メタンの添加量を5質量部から15質量部に変更し、一括露光の露光量を1.2、2.4、4.8J/cm
2として各レジスト材料膜を得たこと以外は実施例9と同様にして、レジストパターンを得た。
【0333】
(実施例12)
(b)光増感剤前駆体としてのジメトキシビス(4−メトキシフェニル)メタンの添加量を5質量部から20質量部に変更し、一括露光の露光量を1.2、2.4、3.6J/cm
2として各レジスト材料膜を得たこと以外は実施例9と同様にして、レジストパターンを得た。
【0334】
(比較例6〜9)
一括露光を行わないこと以外は、それぞれ実施例9〜12と同様にして、比較例6〜9のレジストパターンを得た。
【0335】
(比較例10)
(b)光増感剤前駆体を添加せずにレジスト材料を調製し、一括露光を行わないこと以外は、実施例9と同様にして、比較例10のレジストパターンを得た。
【0336】
<感度の評価>
実施例1と同様にして実施例9〜12及び比較例6〜10の感度(E
0)を算出した。
図12は各実施例及び比較例でのパターン露光での感度(E
0)の線量を縦軸とし、各実施例及び比較例での一括露光の露光量を横軸としてプロットし、両者の関係を示したグラフである。
図12から、一括露光を行っていない比較例6〜10では感度E
0の値(残膜率が0(ゼロ)となるのに必要なパターン露光の露光量)が大きいことがわかる。これに対し、一括露光を行った実施例9〜12では、一括露光の露光量が増えるにしたがって感度E
0の値が小さくなっていることがわかる。
【0337】
<リソグラフィ特性の評価>
実施例9及び比較例6で得られたレジストパターンにおいて、直径30nm、ピッチ60nmのコンタクトホール用に現像された部分を高分解走査電子顕微鏡(SEM、商品名:NVision 40D、Carl Zeiss社製)を用いて観察した。
図13(a)は比較例6で得られたレジストパターンのSEM画像であり、
図13(b)は実施例9で一括露光の露光量を7.2J/cm
2として得られたレジストパターンのSEM画像である。いずれのレジストパターンにおいても、ピッチ60nmを維持し、30nmに十分近い直径を有するコンタクトホール用レジストパターンが規則正しく形成されていた。なお、直径30nmのコンタクトホール用レジストパターンを形成するためのレジスト材料膜の残膜率が0(ゼロ)となるときの露光量(感度E
size)は、実施例9及び比較例6において、それぞれ、70μC/cm
2及び120μC/cm
2であった。一括露光により、解像度を維持した状態で残膜率が0(ゼロ)となるのに必要なパターン露光の露光量(感度E
sizeの値)を二分の一程度にまで削減できることが確認された。