【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年6月20日付けにて、ウェブサイト:http://www.cell.com/immunity/abstract/S1074−7613(13)00240−9およびhttp://ac.els−cdn.com/S1074761313002409/1−s2.0−S1074761313002409−main.pdf?_tid=3f488700−51a6−11e3−aef7−00000aab0f26&acdnat=1384926203_8089dcfecdb1e1c26b9344bf64e7f917にて公開;平成25年6月21日付けにて、ウェブサイト:http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2013/pr20130621/pr20130621.htmlにて公開;平成25年6月21日付けにてウェブサイト:http://www.kikkoman.co.jp/corporate/news/20130619.htmlにて公開
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
食物アレルギーとは、「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」をいう(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
食物中のタンパク質が十分に消化されタンパク質が分解されてしまえば、吸収されても免疫反応は起こらない。消化酵素の働きによるタンパク質の分解、粘膜面の粘液による物理的なバリア、タンパク質と結合するIgA抗体の分泌など、経口的に摂取された食物を体内に吸収する過程で、腸管においては様々なバリアが存在する。腸管においてはこれらのバリアにより未消化な食物の体内への侵入を防いでいるものの、実際には未消化なタンパク質も日常的に吸収されている。
【0004】
しかし、そのような外来のタンパク質に対して免疫反応が起こらない仕組みである経口免疫寛容が働くことで、食物アレルギーが起こらないように制御されている(例えば、非特許文献2参照)。つまり、食物アレルギーとは特定の食物に対する免疫寛容がうまく働かなくなっている状態と考えられる。
【0005】
現在、特定の食物アレルゲン除去による食物アレルギー発症の防止が行われているものの、その原因アレルゲンに対する経口免疫寛容が生体に誘導されない限り、根本的な治療にはならない。加えて、重症患者は食器などに付着した微量なアレルゲンに対してアナフィラキシーショックを起こすこともあり、除去食には限界がある。現在は、病院で経口負荷試験により決定した範囲内で原因アレルゲンを摂取する、「正しい診断に基づいた必要最低限の原因食物の除去」が指導されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0006】
しかし、この方法についても除去食同様、食物アレルギーの根本的な治療とはならない。根本的な治療を目指す治療法として、原因アレルゲンを含む食品を少量ずつ摂取することで原因アレルゲンに対する耐性の獲得を誘導する経口免疫療法が臨床研究されている。治療経過中にアナフィラキシーショックを起こすことも多く、かつ、重篤な副反応も起こりうるため現段階では、本治療法は、一般診療として推奨されていない(例えば、非特許文献4参照)。
【0007】
そこで、経口免疫寛容を効率的に誘導することが可能となれば、食物アレルギーの根本的な治療を安全に行え、さらには、まだ、食物アレルギーを発症していない人々にとっても食物アレルギーの発症を未然に防ぐことができる。
【0008】
体内で共生する細菌は、適正な免疫応答を誘導し、アレルギーの発生を抑制することが期待される。特に、乳酸菌は、食経験が豊富である上、菌種により様々な免疫反応を惹起することが知られており、経口免疫寛容の誘導にも何らかの役割を果たしていることが期待される。その一方で、どのような性質を持つ乳酸菌が経口免疫寛容の正常な機能に関わっているかは定かではない。
【0009】
乳酸菌の摂取により、通年性アレルギー性鼻炎や花粉症、気管支喘息などのI型アレルギーの症状が緩和することは知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0010】
しかし、食物アレルギーの発症メカニズムは現在も不明な点が多く、また、I型アレルギーのみを対象とした治療は、対症療法に過ぎず根本的な解決にはならない。そこで、I型アレルギーの抑制のみならず、経口免疫寛容を増強し、それをしっかりと機能させることで食物アレルギーの根本的な解決を達成することが求められている。つまり、経口免疫寛容の増強因子を特定し、経口免疫寛容を増強する物質を選択することが可能となれば、上述のような課題が解決される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について更に詳しく説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0018】
(1)経口免疫寛容増強物質のスクリーニング方法
本発明のスクリーニング方法においては、経口免疫寛容増強作用を決定する指標の一つとして、候補物質がインターフェロンβ産生促進作用を有するか否かについて評価される。ここで、「経口免疫寛容」とは、本明細書で使用する場合、経口的に摂取された抗原に対し免疫応答が抑制される状態(すなわち免疫寛容状態)が誘導されることを意味する。免疫寛容状態は、当業者にとって公知の方法、例えば、免疫寛容において重要な役割を果たすT細胞の反応性等の測定により評価することができる。
【0019】
本明細書で使用する場合、「経口免疫寛容増強」とは、対照物質との比較で、被験物質により有意に、例えば5%以上、10%以上、20%以上、又は50%以上経口免疫寛容が増強されることを意味する。経口免疫寛容増強作用について評価される被験物質は特定の化学物質又はその混合物に限定されず、細菌の培養物、菌体または菌体成分であってもよい。食経験によって安全性を担保されている細菌を被験物質として選定することで、効率的なスクリーニングが可能になる。食品への応用性、安全性の観点から、被験物質としての細菌は乳酸菌であることが好ましく、特にペディオコッカス属(例えば、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス)、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属またはテトラジェノコッカス属の乳酸菌であることがより好ましい。
【0020】
細菌の菌体は細菌の発酵物から得ることができ、例えば、乳酸菌を使用する場合、ニンジン搾汁液やトマト搾汁液等、乳酸菌が生育できる素材を用いて発酵することで得ることができる。菌体成分とは、例えば、細菌が保有する核酸であり、具体的にはDNA、1本鎖RNAまたは2本鎖RNAである。細菌の核酸成分は通常の分画方法によって得ることができる。
【0021】
細菌を被験物質として使用する場合、追加のスクリーニング指標として、細菌に含まれる二重鎖RNAの多寡を予め評価してもよい。これは、多量の二重鎖RNAを保有している細菌はインターフェロン産生促進作用を有する場合があるためである(結果は示さず)。細菌に含まれる二重鎖RNAの多寡は、病原菌、例えばリステリア菌、サルモネラ菌、ウエルシュ菌、ピロリ菌、チフス菌等に含まれるものとの比較で決定することができる。
【0022】
選定された被験物質は、インターフェロンβ産生細胞と接触して当該細胞におけるインターフェロンβ産生促進活性が測定される。被験物質のインターフェロンβ産生促進活性は常用の方法により評価することができる。限定することを意図するものではないが、インターフェロン産生細胞と被験物質とを共培養し、その培養上清中インターフェロンβ濃度を測定することでインターフェロン産生促進活性を測定してもよい。共培養条件は当業者により適宜決定されるものであるが、例えば、培養時間を6〜8時間としてもよい。また、インターフェロンβ産生細胞が骨髄由来樹状細胞である場合、インターフェロンβの十分な産生量を確保するために、当該細胞と乳酸菌とを両者の比率が1:10〜1:100(骨髄由来樹状細胞:乳酸菌)となるように培養液中に添加してもよい。あるいは、培養液1ml当たり乳酸菌が少なくとも10μg〜100μg存在すればインターフェロンβの産生を確認することができる。
【0023】
被験物質を添加したインターフェロンβ産生細胞におけるインターフェロンβの産生が、対照物質との比較で有意に、例えば5%以上、10%以上、20%以上、又は50%以上増大する場合、被験物質を経口免疫寛容増強物質と評価することができる。インターフェロンβの産生は、当業者にとって公知の方法、例えばインターフェロンβ抗体による抗原抗体反応を利用する方法(酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)等)や、インターフェロンβの抗ウィルス作用を利用した方法(CPE(cytopathogenic effect)法等)を介して測定してもよい。
【0024】
本発明で使用するインターフェロンβ産生細胞の例として、二重鎖RNAを認識する受容体、例えばTLR3、TLR9等を発現している細胞、特に、樹状細胞が挙げられる。
【0025】
(2)経口免疫寛容増強組成物
本発明の経口免疫寛容増強組成物は、上記スクリーニング方法により得られた経口免疫寛容増強物質、例えば乳酸菌の培養物、菌体または菌体成分を有効成分とする。乳酸菌とは、例えば、ペディオコッカス属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、テトラジェノコッカス属の乳酸菌である。ペディオコッカス属の乳酸菌が好ましく、例えばディオコッカス・アシディラクティシ、特にペディオコッカス・アシディラクティシK15株がより好ましい。
【0026】
経口免疫寛容増強作用を示す限り、有効成分である乳酸菌の培養物、菌体または菌体成分は、どのような方法で調製されたものでもよい。乳酸菌の菌体は、ニンジン搾汁液やトマト搾汁液等、乳酸菌が生育できる素材を用いて発酵することで得ることができる。菌体成分とは、例えば、乳酸菌が保有する核酸であり、具体的にはDNA、1本鎖RNAまたは2本鎖RNAである。乳酸菌の核酸成分は通常の分画方法によって得ることができる。
【0027】
食物アレルギーの発症予防、もしくは経口免疫療法の治療補助を目的として本発明の経口免疫寛容増強組成物を摂取する場合、その摂取量は、摂取者の症状や体格に合わせて適宜設定すればよい。ペディオコッカス属に属する乳酸菌の菌体を有効成分とする場合、その菌体摂取量は、例えば1〜1000mg/体重60kg/日である。
【0028】
有効成分である乳酸菌の菌体または菌体成分は単独で使用してもよいし、他の成分と組み合わせて、例えば飲食品、医薬品に添加して使用することもできる。
【0029】
(3)経口免疫寛容増強組成物の製造法
本発明の経口免疫寛容増強組成物は、乳酸菌を培養し、培養物、菌体または菌体成分を採取することにより得られる。有効成分である経口免疫寛容増強活性を示す成分が得られる限り、乳酸菌の培養条件や、有効成分である培養物、菌体または菌体成分の採取方法は特に限定されない。
【0030】
以下に、ペディオコッカス・アシディラクティシK15株の菌体を有効成分とする経口免疫寛容増強組成物の製造法を例示する。
【0031】
まず、例えば10分間煮沸したニンジンを破砕し、遠心分離により得られた上清をニンジン搾汁液とする。ニンジン搾汁液にペディオコッカス・アシディラクティシを植菌し、25〜37℃で12〜72時間培養する。培養後に10分間煮沸することで、乳酸菌のニンジン発酵液が得られる。
【0032】
上記のようにして得られたニンジン発酵液は、本発明の経口免疫寛容増強組成物として使用可能である。
【実施例1】
【0033】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
〔経口免疫寛容に関わる液性因子〕
インターフェロンβが経口免疫寛容の誘導に関わることを示した。
【0035】
1.マウスに対する抗体の投与
5週齢の雌のBALB/cマウス(日本クレア社)に対し、1日おきに7回、Rat IgGコントロール抗体(シグマ社)もしくは抗インターフェロンβ中和抗体(ヤマサ社)を50μg/匹で静脈投与した。
【0036】
2.マウスに対する経口免疫寛容の誘導
4回目の静脈投与の際に、経口免疫寛容を誘導するために、オボアルブミン(OVA、シグマ社)を25mg経口投与した。
【0037】
3.OVA感作
7回目の静脈投与の9日後に、アレルギーを誘導するためにOVA300μg、Complete Freund’s Adjuvant 100μlを背面皮下に投与した。
【0038】
4.遅延型過敏反応の測定
背面皮下免疫から14日後にOVA50μgを足の裏の背面皮下に投与し、24時間後に腫れの大きさを測定することで、遅延型過敏反応を調べた。この結果を
図1に示す。なお、有意差検定はt検定により行なった。
【0039】
図1に示すように、コントロール抗体投与マウスでは、OVA経口投与(経口免疫寛容誘導)により、遅延型過敏反応が抑制されている一方で、抗インターフェロンβ中和抗体投与マウスでは遅延型過敏反応が抑制されなかった。
【0040】
5.血清中のOVA特異的抗体価の測定
遅延型過敏反応の測定後、イソフルラン麻酔下で採血を行った。1500rpmで30分間遠心を行い、血清を得た。血清中のOVA特異的IgG量、OVA特異的IgE量をエンザイムイムノアッセイにより測定した。詳しくは、抗マウスIgG抗体、抗マウスIgE抗体(eBioscience社製)を1M炭酸水素ナトリウム緩衝液 (pH8.2)に500倍希釈で添加し、96ウェルプレートに50μl/ウェルでコーティングした。その後、血清サンプルを2倍−50000倍希釈し、プレート上に50μlずつ分注し、1時間インキュベートした。洗浄後、ビオチン標識OVAを1%BSA添加0.05%Tween含有リン酸緩衝液で2μg/mlとなるように溶解し、プレート上に50μlずつ分注した。ビオチン標識OVAは、シグマ社製のOVAと、同仁化学研究所製のビオチン化キットを用いて作製した。1時間インキュベートした後に洗浄を行い、ストレプトアビジンで標識したペルオキシダーゼ酵素(Vector 社製)を加え、ビオチンと結合させた。発色は、TMB基質溶液(Moss/コスモバイオ社製)を1ウェル当たり50μl加え、室温で20分間反応させることで行った。反応を0.5N塩酸で停止し、マイクロプレートリーダー(TECAN社製)で、450nmにおける吸光度を測定し、生理食塩水摂取群に対する相対値でOVA特異的IgG、IgE量を定量化した。この結果を、
図2に示す。なお、有意差検定はt検定により行なった。
【0041】
図2に示すように、コントロール抗体投与マウスではOVA特異的IgG,IgE共に経口免疫寛容の誘導により抑制されていた。抗インターフェロンβ中和抗体投与群でも経口免疫寛容の誘導によりOVA特異的IgE、OVA特異的IgGが抑制されていたことから、インターフェロンβは抗体産生の抑制には関与していないことが確認された。
【0042】
6.脾臓細胞のOVA特異的サイトカイン産生の測定
採血後に脾臓を採取し、細胞の調製を行った。脾臓を採取後、メッシュにより脾臓をすり潰し、細胞の懸濁を行い、脾臓細胞を回収した。その後、96ウェル丸底プレート(BD FALCON社製)を用い、OVA(シグマ社製)を100μg/ml含む10%FBS(JRH社)添加RPMI1640培地において脾臓細胞を1×10
6個/ウェルとなるように懸濁し、3日間培養を行った。培養後、1500rpmで5分間遠心を行い、上清を回収し、エンザイムイムノアッセイによりIL−6、IL−17、IFN−γ、IL−4濃度を測定した。IL−6、IFN−γ、IL−4についてはBD pharminge社製のELISA Kitを用いて測定し、IL−17についてはeBioscience社製のELISA Kitを用いて測定した。結果を
図3に示す。なお、有意差検定はt検定により行なった。
【0043】
図3に示すように、コントロール抗体投与マウスにおいては全てのサイトカイン産生が経口免疫寛容の誘導により抑制された。一方で、抗インターフェロンβ中和抗体投与マウスでは、IL−4以外のサイトカインは抑制されなかった。以上より、インターフェロンβが生体において経口免疫寛容の誘導に関わっていることが示された。また、血清中のOVA特異的IgEや脾臓細胞のOVA特異的IL−4産生は抑制されないことから、インターフェロンβはこれらが関わるI型アレルギーには大きな影響は与えないことが示された。しかし、T細胞等を介した遅延型のIV型アレルギーには強く関わっていることが確認された。
【実施例2】
【0044】
〔マウス骨髄由来樹状細胞を用いた各種乳酸菌のインターフェロンβ産生促進試験〕
表1に示す乳酸菌を使用し、インターフェロンβ産生促進試験を実施した。
【表1】
【0045】
1.乳酸菌懸濁液の調製
MRS培地に各種乳酸菌を1×10
7個/mlとなるように接種した。30℃で24〜48時間静置培養した後、遠心濃縮機によって培地を除去して集菌した。テトラジェノコッカス属については、食塩を10%含むMRS培地で培養した後、集菌した。その後、生理食塩水にて菌体を洗浄後、95℃で10分間の煮沸殺菌を行い、凍結乾燥を行った。
【0046】
2.インターフェロンβ産生促進試験
(1)骨髄由来樹状細胞懸濁液の調製
骨髄由来樹状細胞は、BALB/cマウス(8−12週齢、雌、日本クレア社)をイソフルラン吸入麻酔下に頸椎脱臼して安楽死させた後、下肢から大腿骨、頸骨を取り出し、氷冷した1%ウシ胎児血清(FCS, 非動化したもの)添加RPMI1640培地(Sigma社製)の入った細胞培養用6cm ディッシュ(BD FALCON社製)に入れた。1%FCS添加RPMI1640を注入して骨髄を押し出した後、懸濁した。得られた細胞懸濁液をセルストレイナー(40μm, BD FALCON)で濾過した後、440×gで5分間遠心分離した。
【0047】
溶血バッファー(5mL,0.155M NH
4Cl,0.01M Tris, pH7.5)を加え5分間氷上に置いた後、1%FCS添加RPMI11640(5mL)を加えて遠心分離し、1%FCS添加RPMI1640でさらに2回洗浄した。phycoerythrin(PE)標識抗I−A抗体(Clone M5/114.14.2, BD Pharmingen社製, 0.2mg/mL)、PE標識抗CD4抗体(Clone GK1.5, BD Pharmingen社製,0.2mg/mL)およびPE標識抗CD8抗体(Clone 53−6.7,BD Pharmingen社製,0.2mg/mL)をMACS running bufferでそれぞれ1000倍希釈した抗体カクテル(100μL/10
7 cells)およびウサギIgG(50μg/mL, Zymed社製)を加え、氷上で30分間静置した。
【0048】
MACS running bufferで1回洗浄した後、抗PE magnetic beads(20μL/10
7 cells,Miltenyi社製)とMACS running buffer(80μL/10
7 cells)を加え、4〜8℃で15分間静置した。反応液の20倍量のMACS running bufferで1回洗浄した後、MACS running buffer(0.5mL/10
8 cells)に懸濁し、自動磁気分離システム(Auto MACS, Miltenyi社製)を用いてネガティブフラクションを分離した。分離した細胞を1%FCS添加RPMI1640培地で1回洗浄した後、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF)添加基本培地に懸濁した。基本培地は、100,000 U/Lペニシリン・100mg/Lストレプトマイシン(シグマ社)、2−メルカプトエタノール(50μM,和光純薬工業社製)、L−グルタミン酸(2mM,ナカライテスク社製)、HEPES(20mM,同仁化学研究所製)添加RPMI1640培地(Gibco社製)に非働化したFCS(Hyclone社製)を10%添加したものを用いた。
【0049】
GM−CSFはマウスGM−CSF遺伝子を導入したplasmacytoma X63−Ag8(J558L−GM−CSF)の培養上清を基本培地に10%添加した。細胞液をトリパンブルー(Gibco社製)で懸濁し、血球計算板を用いて細胞数を計測した後、細胞培養用6ウェルプレート(BD FALCON社製)に1.2×10
6/4mL/ウェルとなるように分注し、培養した。培養開始後3日目および6日目に培地を2mL吸引除去して新しいGM−CSF添加基本培地を2mL加え、培養開始後8日目に浮遊細胞を未成熟樹状細胞として回収した(CD11c陽性細胞>85%)。細胞を1%FCS添加RPMI1640培地で3回洗浄した後、基本培地に懸濁し、骨髄由来樹状細胞懸濁液とした。
【0050】
(2)インターフェロンβ産生促進活性の測定
上記のようにして得た細胞と乳酸菌を用い、共培養を行った。96ウェル平底プレート(BD FALCON社製)に骨髄由来樹状細胞を2×10
5/ウェル、乳酸菌(テトラジェノコッカス属以外)を100μg/ウェルとなるように添加した。テトラジェノコッカス属(対照としてK15も用いた)については、骨髄由来樹状細胞:乳酸菌=1:100となるように添加した。6時間培養後に上清を回収し、インターフェロンβ測定キット(PBL社製)を用い、上清中インターフェロンβ濃度を測定した。結果を
図4に示す。
【0051】
図4に示すように、乳酸菌の中でも属、種によりインターフェロンβ産生量が様々であった。一方で、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、テトラジェノコッカス属に属する乳酸菌は非常に高い活性を有することが確認された。
【実施例3】
【0052】
〔ペディオコッカス属に属する乳酸菌の経口免疫寛容増強試験〕
5週齢のBALB/cマウス(雌、日本クレア社)に対して乳酸菌ペディオコッカス・アシディラクティシK15の連続強制経口投与を行い、経口免疫寛容増強効果を調べた。オボアルブミン(OVA、シグマ社)感作を行い、アレルギーを誘導することで、乳酸菌摂取が遅延型過敏反応、血清中OVA特異的抗体価、脾臓細胞の抗原特異的サイトカイン産生に及ぼす影響を調べた。試験は下記の方法に従い行った。
【0053】
1.乳酸菌の投与
乳酸菌K15の懸濁液は、MRS(Difco社製)培養液で24時間培養後、生理食塩水にて2回洗浄し、10分間煮沸を行い、5×10
9個/mlとなるように調製した。未処理(アレルギー非誘導)対照群、アレルギー誘導対照群、経口免疫寛容誘導群には生理食塩水0.2ml/日を、K15摂取群には乳酸菌懸濁液0.2ml/日を試験開始0日目から14日目まで15日間摂取させた。
【0054】
2.経口免疫寛容の誘導
経口免疫寛容誘導群、およびK15摂取群には、試験開始7日目、9日目、11日目、14日目にOVA20mg/0.2ml生理食塩水を投与し、経口免疫寛容を誘導した。未処理対照群、アレルギー誘導対照群には生理食塩水を0.2ml投与した。
【0055】
3.アレルギー誘導
試験開始21日目にアレルギーを誘導するためにOVA(シグマ社)300μg、Complete Freund’s Adjuvant 100μlを背面皮下に投与した。
【0056】
4.遅延型過敏反応の測定
背面皮下免疫から14日後(試験開始35日目)にOVA50μgを足の裏の背面皮下に投与し、24時間後に腫れの大きさを測定することで、遅延型過敏反応を調べた。この結果を
図5に示す。なお、有意差検定はt検定により行なった。
【0057】
図5に示すように、経口免疫寛容の誘導により遅延型過敏反応は抑制されたが、K15を摂取することでその抑制作用が増強していることが確認された。
【0058】
5.血清中のOVA特異的抗体価の測定
遅延型過敏反応の測定後、イソフルラン麻酔下で採血を行った。1500rpmで30分間遠心を行い、血清を得た。血清中のOVA特異的IgG1量、OVA特異的IgG2a量、OVA特異的IgE量をエンザイムイムノアッセイにより測定した。詳しくは、OVA(シグマ社製、GradeV)を50μg/mlとなるよ
うに1M炭酸水素ナトリウム緩衝液 (pH8.2)に溶解し、96ウェルプレートを50μl/ウェルでコーティングした。その後、血清サンプルを2〜50000倍希釈し、プレート上に50μlずつ分注し、1時間インキュベートした。洗浄後、抗マウスIgG1抗体,抗マウスIgG2a抗体,抗マウスIgE抗体(BD Pharmingen社製)を1%BSA添加0.05%Tween含有リン酸緩衝液500倍希釈した溶液で1時間インキュベートした。洗浄後、ストレプトアビジンで標識したペルオキシダーゼ酵素(Vector 社製)を加え、ビオチンと結合させた。発色は、TMB基質溶液(Moss/コスモバイオ社製)を1ウェル当たり50μl加え、室温で20分間反応させることで行った。反応を0.5N塩酸で停止し、マイクロプレートリーダー(TECAN社製)で、450nmにおける吸光度を測定し、アレルギー誘導対照群に対する相対値で各OVA特異的抗体価を定量化した。この結果を、
図6に示す。なお、有意差検定はt検定により行なった。
【0059】
図6に示すように、OVA特異的IgE量は経口免疫寛容群とK15摂取群で差がなかったが、OVA特異的IgG1、OVA特異的IgG2aについては、K15摂取群で経口免疫寛容群に比べ強く抑制されていることが確認された。
【0060】
6.脾臓細胞のOVA特異的サイトカイン産生の測定
採血後に脾臓を採取し、細胞の調製を行った。細胞調製、およびサイトカインの測定は実施例1と同様に行った。結果を
図7に示す。なお、有意差検定はt検定により行なった。
【0061】
図7に示すように、各サイトカインの産生量が、K15摂取群で最も抑制されていることが確認された。これらの結果から、K15摂取により経口免疫寛容が増強され、遅延型過敏反応、血清中の抗原特異的抗体価、脾臓細胞の抗原特異的サイトカイン産生が抑制されていることが示された。
【実施例4】
【0062】
〔ペディオコッカス属に属する乳酸菌のノトバイオートマウス試験〕
無菌マウスを用い、K15ノトバイオートマウスを作製することで、実際に生体においてIFN−βが誘導されていることを確かめた。試験は以下のように行った。
【0063】
1.K15ノトバイオートマウスの作製
無菌マウス(4〜5週齢、三協ラボサービス社)に対し、乳酸菌K15の懸濁液の投与を行った。乳酸菌懸濁液は、MRS(Difco社製)培養液で24時間培養後、遠心・集菌を行い、上清の培地を廃棄後、滅菌済み生理食塩水に5×10
9個/mlとなるように懸濁した。乳酸菌懸濁液を無菌マウスに対し0.4ml投与した。そして、4〜5週間飼育した後、イソフルラン麻酔下で頚椎脱臼を行い、脾臓、パイエル板の採取を行った後、各組織の解析を行った。1群5匹で行った。
【0064】
2.乳酸菌の定着の確認
乳酸菌の定着を確認するために、乳酸菌投与1日後、3日後、28日後に糞便を採取し、乳酸菌数を測定した。乳酸菌数は糞便を生理食塩水に懸濁後、MRS寒天培地に塗布し、30℃48時間培養し、コロニー数をカウントすることで行った。結果を
図8に示す。
【0065】
図8に示すように、乳酸菌投与3日後には1×10
9個/g糞便に達し、その後試験期間中菌数が維持されていることが確認された。
【0066】
3.パイエル板の解析
パイエル板を採取後、10% FCS,10mM EDTA、20mM HEPES、10μg/ml ポリミキシンB(シグマ社)、100,000 U/Lペニシリン・100mg/Lストレプトマイシン(シグマ社)、1mM Sodium Pyruvate(Gibco社)含有のリン酸バッファー中で20分間インキュベートした。その後、リン酸バッファーで洗浄し、上皮細胞を除いた後、400ユニット/ml コラゲナーゼD(Roche社)、50μg/ml DNaseI、10% FCS含有の100,000 U/Lペニシリン・100mg/Lストレプトマイシン(シグマ社)、L−グルタミン酸(2mM)、HEPES(20mM)添加RPMI1640培地(Gibco社製)で処理することでパイエル板細胞を得た。その後、RNeasy Mini Kit(Qiagen社)によりRNAを抽出後、PrimeScript RT Reagent(Takara社製)により逆転写反応を行い、cDNAを得た。
【0067】
これを用い、Sybr Premix Ex Taq(Takara社製)により定量的リアルタイムPCRを行った。各mRNAに対する特異的なプライマーとして、インターフェロンβは、センス 5’−GCACTGGGTGGAATGAGACT−3’(配列番号1)、アンチセンス 5’−AGTGGAGAGCAGTTGAGGACA−3’(配列番号2)、インターロイキン6は、センス 5’−AGTTGCCTTCTTGGGACTGA−3’(配列番号3)、アンチセンス 5’−TCCACGATTTCCCAGAGAAC−3’(配列番号4)、インターロイキン12p40は、センス 5’−AAGAAGGAAAATGGAATTTGGTCC−3’(配列番号5)、アンチセンス 5’−ATGTCACTGCCCGAGAGTCAG−3’(配列番号6)、インターロイキン10は、センス 5’−GAGAAGCATGGCCCAGAAATC−3’(配列番号7)、アンチセンス 5’−CGCATCCTGAGGGTCTTCA−3’(配列番号8)、βアクチンは、センス 5’−GCTACAGCTTCACCACCACAG−3’(配列番号9)、アンチセンス 5’−GGTCTTTACGGATGTCAACGTC−3’(配列番号10)を用い、Mx3000P(Stratagene社製)により測定した。各発現量は、βアクチンの発現量にて標準化を行い、無菌マウスに対する相対発現量を求めた。結果を
図9に示す。
【0068】
図9に示すように、パイエル板細胞においてインターフェロンβのmRNA発現量のみがK15ノトバイオートマウスにおいて上昇していることが確認された。このことから、K15が生体に対しインターフェロンβを亢進していることが示された。
【0069】
4.脾臓の樹状細胞の解析
脾臓細胞を採取後、400ユニット/ml コラゲナーゼD(Roche社)、10% FCS含有の100,000 U/Lペニシリン・100mg/Lストレプトマイシン(シグマ社)、L−グルタミン酸(2mM)、HEPES(20mM)添加RPMI1640培地(Gibco社製)で処理することで脾臓細胞を得た。その後、PE標識抗マウスCD11c抗体、PE−Cy7標識抗マウスCD11b抗体と反応させ、標識を行った。そして、FACSAriaを用いてソーティングを行い、CD11b
-CD11c
+細胞およびCD11b
+CD11c
+細胞を得た。それぞれについてRNeasy Mini Kit(Qiagen社)によりRNAを抽出後、PrimeScript RT Reagent(Takara社製)により逆転写反応を行い、cDNAを得た。これを用い、Sybr Premix Ex Taq(Takara社製)により定量的リアルタイムPCRを行った。結果を
図10に示す。なお、有意差検定はt検定により行なった。
【0070】
図10に示すように、K15ノトバイオートマウスの脾臓のCD11b
+CD11c
+細胞においてインターフェロンβのmRNA発現量が上昇していることが確認された。一方で、その他のサイトカインの発現量に大きな変化は確認されなかった。以上より、K15が生体においてインターフェロンβの発現亢進を引き起こすことが示された。
【実施例5】
【0071】
〔ペディオコッカス属に属する乳酸菌のノトバイオートマウスを用いた経口免疫寛容誘導試験〕
実施例4と同様にノトバイオートマウスを作製した後に、経口免疫寛容が誘導されるかを確認した。対照としてインターフェロンβを誘導しないラクトバチルス・プランタラムK162を用いた。
【0072】
1.ノトバイオートマウスの作製
K15、K162共に実施例4と同様にノトバイオートマウスを作製した。各乳酸菌の定着に関しては実施例4と同様の方法で確認し、
図11のように両菌株とも定着していることを確認した。
【0073】
2.経口免疫寛容の誘導
乳酸菌投与から4週後にOVA50mg/250μl生理食塩水を経口投与し、経口免疫寛容を誘導した。経口免疫寛容非誘導群には生理食塩水を250μl投与した。投与するOVAはフナバシファーム社においてガンマ線滅菌を行った。
【0074】
3.OVA感作
経口免疫寛容の1週後にアレルギーを誘導するためにOVA(シグマ社)300μg、Complete Freund’s Adjuvant 100μlを背面皮下に投与した。
【0075】
4.OVA特異的抗体価の測定
OVA特異的抗体価は実施例1と同様の方法で測定した。K15ノトバイオートマウスの対照(経口免疫寛容非誘導)群に対する相対値として定量化した。結果を
図12に示す。なお、有意差検定はt検定により行なった。
【0076】
K15ノトバイオートマウスにおいては抗原特異的IgE,IgG量が経口免疫寛容の誘導により有意に抑制されているのに対し、K162ノトバイオートマウスにおいては経口免疫寛容の誘導が弱かった。
【0077】
5.脾臓細胞のOVA特異的サイトカイン産生の測定
脾臓細胞のOVA特異的サイトカイン産生を実施例1と同様の方法で測定した。結果を
図13に示す。なお、有意差検定はt検定により行なった。
【0078】
K15ノトバイオートマウスにおいては経口免疫寛容の誘導により各サイトカイン産生が有意に抑制されているのに対し、K162ノトバイオートマウスでは経口免疫寛容の誘導による抑制が弱いことが確認された。このことから、腸管を介したインターフェロンβの誘導が経口免疫寛容の増強に関わっていることが示された。
【実施例6】
【0079】
〔ペディオコッカス属に属する乳酸菌の食物アレルギー試験〕
経口免疫寛容の増強により食物アレルギーの発症が強く抑制されることを、食物アレルギーモデルで確認した。
【0080】
1.乳酸菌の投与
K15乳酸菌懸濁液を実施例3と同様に作製した。試験開始0日目から20日目まで乳酸菌懸濁液を0.2ml投与した。未処理(アレルギー非誘導)対照群、アレルギー誘導/非発症群、アレルギー誘導/発症群、アレルギー誘導/経口免疫寛容誘導/発症群、アレルギー誘導/K15投与+経口免疫寛容誘導/発症群で試験を実施し、K15投与群以外は生理食塩水を0.2ml投与した。
【0081】
2.経口免疫寛容の誘導
経口免疫寛容の誘導は試験開始14日目にアレルギー誘導/経口免疫寛容誘導/発症群、アレルギー誘導/K15投与+経口免疫寛容誘導/発症群に対し、OVA25mg/0.2ml生理食塩水を投与することで行った。その他の群には0.2mlの生理食塩水を投与した。
【0082】
3.アレルギー誘導
試験開始21日目と35日目にOVA(シグマ社製)10μg/0.1ml生理食塩水、水酸化アルミニウムゲル(和光純薬工業社製)0.1mlを混合し、腹腔内に0.2mlを投与した。
【0083】
4.発症
試験開始51日目、53日目、55日目、57日目、59日目、61日目、63日目に1回あたりOVA50mg/250μl生理食塩水を経口投与し、発症を行った。63日目に下痢の観察を行った後に、イソフルラン麻酔下で採血を行い、その後腸間膜リンパ節、小腸組織の採取を行った。
【0084】
5.下痢の観察
試験開始63日目のOVA経口投与の1時間後に下痢の観察を行った。結果を
図14に示す。経口免疫寛容の誘導により下痢の発症が抑制していたが、K15摂取群で最も下痢の発症が抑制されていることが確認された。
【0085】
6.小腸組織の炎症性サイトカインmRNA発現量
小腸組織よりTRIzolを用いてRNAを抽出後、実施例4と同様に逆転者反応、定量的リアルタイムPCRを行った。各mRNAに対する特異的なプライマーとして、マウスKC(Keratinocyte Chemoattractant)は、センス 5’−CTGCACCCAAACCGAAGTC−3’(配列番号11)、アンチセンス 5’−AGCTTCAGGGTCAAGGCAAG−3’(配列番号12)、TNF−αは、センス 5’−CTGGGACAGTGACCTGGACT−3’(配列番号13)、アンチセンス 5’−GCACCTCAGGGAAGAGTCTG−3’(配列番号14)、インターロイキン1βは、センス 5’−AAATGCCTCGTGCTGTCTGACC−3’(配列番号15)、アンチセンス 5’−CTGCTTGAGAGGTGCTGATGTACC−3’(配列番号16)を用いた。Mx3000P(Stratagene社製)により測定した。各発現量は、βアクチンの発現量にて標準化を行い、未処理群に対する相対値で定量化をした。結果を
図15に示す。なお、有意差検定はt検定により行なった。
【0086】
図15に示すように、各炎症性サイトカインの発現量は経口免疫寛容の誘導により抑制された。その中でもK15摂取群で最も強く抑制されていることが確認された。
【0087】
7.腸間膜リンパ節のOVA特異的サイトカイン産生
腸間膜リンパ節を群ごとに採取後、メッシュにより腸間膜リンパ節をすり潰し、細胞の懸濁を行い、腸間膜リンパ節細胞を回収した。その後、96ウェル丸底プレート(BD FALCON社製)を用い、OVA(シグマ社製)を100μg/ml含む10%FBS(JRH)添加RPMI1640培地において腸間膜リンパ節細胞を1×10
6個/ウェルとなるように懸濁し、3日間培養を行った。培養後、1500rpmで5分間遠心を行い、上清を回収し、エンザイムイムノアッセイにより各サイトカイン産生量を測定した。測定方法は実施例1と同様に行った。結果を
図16に示す。
【0088】
図16に示すように、K15摂取群でOVA特異的サイトカイン産生が最も抑制されていることが確認された。
【0089】
8.血清中のOVA特異的抗体価の測定
実施例1と同様に血清中のOVA特異的抗体価の測定を行った。OVA特異的IgMについては、抗マウスIgM抗体(BD pharmingen社)でコーティングを行うことで測定した。結果を
図17に示す。なお、有意差検定はt検定により行なった。
【0090】
図17に示すように、OVA特異的IgG,IgMがK15摂取群で強く抑制されていることが確認された。このことから、経口免疫寛容の増強によりアレルギー誘導が抑制されていることが示された。
【実施例7】
【0091】
〔ペディオコッカス属に属する乳酸菌を用いたニンジン発酵液の製造〕
経口免疫寛容増強組成物をペディオコッカス属の乳酸菌とニンジンを用いて製造した。
【0092】
1.ニンジン搾汁液の作製
市販のニンジンを輪切りにし、ニンジン200gに対し水を200ml添加し、10分間煮沸を行った。その後、ミキサーにて破砕を行い、ニンジン破砕液を作製した。その後、遠心分離を行うことで、固形物を除去した。その後、エバポレーターにより濃縮することでニンジン搾汁液を採取した。
【0093】
2.ニンジン搾汁液を培地としたペディオコッカス・アシディラクティシK15の培養
ニンジン搾汁液のブリックス値が5,10,15、20となるように調整し、その後pHが6.8−7.0となるように5Nの水酸化ナトリウムで調整した。そして、10分間加熱処理したものを培地とした。各培地に対しペディオコッカス・アシディラクティシK15を約1×10
6cfu/mlとなるように摂取し、30℃で培養した。そのときの菌数の変化を
図18に示す。菌数はMRS寒天培地に塗布することで測定した。
【0094】
図18に示すように、各ブリックス値の培地において、ペディオコッカス・アシディラクティシK15は良好に生育した。このニンジン発酵液を経口免疫寛容増強組成物として用いることができる。