特許第6592784号(P6592784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6592784固体レーザシステムおよびエキシマレーザシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592784
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】固体レーザシステムおよびエキシマレーザシステム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/37 20060101AFI20191010BHJP
   G02F 1/35 20060101ALI20191010BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20191010BHJP
   H01S 3/30 20060101ALI20191010BHJP
   H01S 3/23 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   G02F1/37
   G02F1/35 502
   H01S3/067
   H01S3/30
   H01S3/23
【請求項の数】15
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-545050(P2017-545050)
(86)(22)【出願日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】JP2015079151
(87)【国際公開番号】WO2017064789
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2018年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紳二
【審査官】 廣崎 拓登
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−513995(JP,A)
【文献】 特表2014−530380(JP,A)
【文献】 特表2008−511182(JP,A)
【文献】 特表2009−535666(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/140901(WO,A1)
【文献】 特開2011−128330(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/077823(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/35−1/39
H01S 3/00−3/30
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長の第1のパルスレーザ光と、第2の波長の第2のパルスレーザ光とを出射する固体レーザ装置と、
前記第1のパルスレーザ光が入射し、前記第1の波長の第3のパルスレーザ光を出射する第1の固体増幅器と、
前記第3のパルスレーザ光が入射し、第3の波長の高調波光を出射する波長変換部と、
前記第2のパルスレーザ光が入射し、前記第2の波長の第4のパルスレーザ光を出射する第2の固体増幅器と、
前記第4のパルスレーザ光が入射し、第4の波長のストークス光を出射するラマンレーザ装置と、
前記高調波光と前記ストークス光が入射し、前記第3の波長および前記第4の波長から波長変換された第5の波長の第5のパルスレーザ光を出射する波長変換システムと
を備える固体レーザシステム。
【請求項2】
前記第1の波長は、1032nm以上1045nm以下であり、
前記第2の波長は、1070nm以上1093nm以下であり、
前記高調波光は、前記第1のパルスレーザ光の第4高調波光であり、
前記ラマンレーザ装置は、ダイヤモンドラマンレーザ装置であり、
前記ストークス光は、第2ストークス光であり、
前記第5の波長は、193nm以上194nm以下である
請求項1に記載の固体レーザシステム。
【請求項3】
前記固体レーザ装置は、
イッテルビウムがドープされたシリカファイバを含み、前記第1のパルスレーザ光を出射する第1のファイバ増幅器システムと、
イッテルビウムがドープされたシリカファイバを含み、前記第2のパルスレーザ光を出射する第2のファイバ増幅器システムと
を含む
請求項1に記載の固体レーザシステム。
【請求項4】
前記固体レーザ装置は、
イッテルビウムがドープされたシリカファイバを含み、前記第1のパルスレーザ光および前記第2のパルスレーザ光を出射する単一のファイバ増幅器システムと、
前記ファイバ増幅器システムの下流に配置され、前記第1のパルスレーザ光と前記第2のパルスレーザ光とを分岐する光学素子と
を含む
請求項1に記載の固体レーザシステム。
【請求項5】
前記固体レーザ装置は、
前記第1の波長の第1のシード光を出射する第1の発振器と、
前記第1のシード光が入射し前記第1の波長の第6のパルスレーザ光を出射する第1のレーザ光生成部と、
前記第2の波長の第2のシード光を出射する第2の発振器と、
前記第2のシード光が入射し前記第2の波長の第7のパルスレーザ光を出射する第2のレーザ光生成部と
を含み、
前記ファイバ増幅器システムには、前記第6のパルスレーザ光および前記第7のパルスレーザ光が入射する
請求項4に記載の固体レーザシステム。
【請求項6】
前記固体レーザ装置は、
前記第1の波長の第1のシード光を出射する第1の発振器と、
前記第2の波長の第2のシード光を出射する第2の発振器と、
前記第1のシード光および前記第2のシード光が入射し、前記第1の波長の第6のパルスレーザ光および前記第2の波長の第7のパルスレーザ光を出射する単一のレーザ光生成部と
を含み、
前記ファイバ増幅器システムには、前記第6のパルスレーザ光および前記第7のパルスレーザ光が入射する
請求項4に記載の固体レーザシステム。
【請求項7】
前記第1の固体増幅器および前記第2の固体増幅器は、イッテルビウムがドープされた、結晶またはセラミックスを含む
請求項1に記載の固体レーザシステム。
【請求項8】
前記第1の固体増幅器は、Yb:Lu2O3、Yb:LuScO3、Yb:ScYLO、Yb:YScO3、Yb:Y2O3、Yb:Lu2SiO5、Yb:Sc2O3、Yb:CaF2、Yb:YLF、Yb:KGW、Yb:KYW、Yb:YAGのうちの少なくとも1つの材料を含む
請求項7に記載の固体レーザシステム。
【請求項9】
前記第2の固体増幅器は、Yb:Lu2O3、Yb:LuScO3、Yb:ScYLO、Yb:YScO3、Yb:Y2O3、Yb:Lu2SiO5のうちの少なくとも1つの材料を含む
請求項7に記載の固体レーザシステム。
【請求項10】
前記第1の固体増幅器は、Yb:Lu2O3、Yb:LuScO3、Yb:ScYLO、Yb:YScO3、Yb:Y2O3、Yb:Lu2SiO5のうちの少なくとも1つの材料を含み、
前記第1の固体増幅器の材料および前記第2の固体増幅器の材料は同じである
請求項9に記載の固体レーザシステム。
【請求項11】
前記ラマンレーザ装置は、
前記ストークス光を共振可能に構成された光共振器と
前記光共振器の光路上に配置され、前記ストークス光を生成するダイヤモンド結晶と
を含む
請求項1に記載の固体レーザシステム。
【請求項12】
前記ダイヤモンド結晶の、前記光共振器の光路と交差する方向の厚さは、0.41mm以上2mm以下であり、
前記ダイヤモンド結晶の、前記光共振器の光路方向の長さは、8mm以下である
請求項11に記載の固体レーザシステム。
【請求項13】
第1の波長の第1のパルスレーザ光と、第2の波長の第2のパルスレーザ光とを出射する固体レーザ装置と、
前記第1のパルスレーザ光および前記第2のパルスレーザ光が入射し、前記第1の波長の第3のパルスレーザ光および前記第2の波長の第4のパルスレーザ光を出射する単一の固体増幅器と、
前記固体増幅器の下流に配置され、前記第3のパルスレーザ光と前記第4のパルスレーザ光とを分岐する光学素子と、
前記光学素子により分岐された前記第3のパルスレーザ光が入射し、第3の波長の高調波光を出射する波長変換部と、
前記光学素子により分岐された前記第4のパルスレーザ光が入射し、第4の波長のストークス光を出射するラマンレーザ装置と、
前記高調波光と前記ストークス光が入射し、前記第3の波長および前記第4の波長から波長変換された第5の波長の第5のパルスレーザ光を出射する波長変換システムと
を備える固体レーザシステム。
【請求項14】
第1の波長の第1のパルスレーザ光と、第2の波長の第2のパルスレーザ光とを出射する固体レーザ装置と、
前記第1のパルスレーザ光が入射し、前記第1の波長の第3のパルスレーザ光を出射する第1の固体増幅器と、
前記第3のパルスレーザ光が入射し、第3の波長の高調波光を出射する波長変換部と、
前記第2のパルスレーザ光が入射し、前記第2の波長の第4のパルスレーザ光を出射する第2の固体増幅器と、
前記第4のパルスレーザ光が入射し、第4の波長のストークス光を出射するラマンレーザ装置と、
前記高調波光と前記ストークス光が入射し、前記第3の波長および前記第4の波長から波長変換された第5の波長の第5のパルスレーザ光を出射する波長変換システムと、
前記第5のパルスレーザ光が入射し、前記第5の波長のパルスレーザ光を出射するエキシマレーザ増幅器と
を備えるエキシマレーザシステム。
【請求項15】
第1の波長の第1のパルスレーザ光と、第2の波長の第2のパルスレーザ光とを出射する固体レーザ装置と、
前記第1のパルスレーザ光および前記第2のパルスレーザ光が入射し、前記第1の波長の第3のパルスレーザ光および前記第2の波長の第4のパルスレーザ光を出射する単一の固体増幅器と、
前記固体増幅器の下流に配置され、前記第3のパルスレーザ光と前記第4のパルスレーザ光とを分岐する光学素子と、
前記光学素子により分岐された前記第3のパルスレーザ光が入射し、第3の波長の高調波光を出射する波長変換部と、
前記光学素子により分岐された前記第4のパルスレーザ光が入射し、第4の波長のストークス光を出射するラマンレーザ装置と、
前記高調波光と前記ストークス光が入射し、前記第3の波長および前記第4の波長から波長変換された第5の波長の第5のパルスレーザ光を出射する波長変換システムと、
前記第5のパルスレーザ光が入射し、前記第5の波長のパルスレーザ光を出射するエキシマレーザ増幅器と
を備えるエキシマレーザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パルスレーザ光を生成する固体レーザシステムおよびエキシマレーザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、半導体露光装置においては解像力の向上が要請されている(半導体露光装置を以下、単に「露光装置」という)。このため、露光用光源から出力される光の短波長化が進められている。露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられている。現在、露光用のガスレーザ装置としては、波長248nmの紫外線を出力するKrFエキシマレーザ装置ならびに、波長193nmの紫外線を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられている。
【0003】
現在の露光技術としては、露光装置側の投影レンズとウエハ間の間隙を液体で満たして、当該間隙の屈折率を変えることによって、露光用光源の見かけの波長を短波長化する液浸露光が実用化されている。ArFエキシマレーザ装置を露光用光源として用いて液浸露光が行われた場合は、ウエハには水中における波長134nmの紫外光が照射される。この技術をArF液浸露光という。ArF液浸露光はArF液浸リソグラフィーとも呼ばれる。
【0004】
KrF、ArFエキシマレーザ装置の自然発振におけるスペクトル線幅は約350〜400pmと広いため、露光装置側の投影レンズによってウエハ上に縮小投影されるレーザ光(紫外線光)の色収差が発生して解像力が低下する。そこで色収差が無視できる程度となるまでガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を狭帯域化する必要がある。スペクトル線幅はスペクトル幅とも呼ばれる。このためガスレーザ装置のレーザ共振器内には狭帯域化素子を有する狭帯域化モジュール(Line Narrow Module)が設けられ、この狭帯域化モジュールによりスペクトル幅の狭帯域化が実現されている。なお、狭帯域化素子はエタロンやグレーティング等であってもよい。このようにスペクトル幅が狭帯域化されたレーザ装置を狭帯域化レーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7593437号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0225288号明細書
【特許文献3】特開2007−086108号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Alexander Sabella, James A. Piper, and Richard P. Mildren ,“Efficient conversion of a 1.064 μm Nd:YAG laser to the eye-safe region using a diamond Raman laser”; OPTICS EXPRESS, Vol. 19, No. 23 7 November 2011 p23554-23560.
【非特許文献2】Hongwen Xuan, Zhigang Zhao, Hironori Igarashi, Shinji Ito, Kouji Kakizaki, and Yohei Kobayashi1,”300-mW narrow-linewidth deep-ultraviolet light generation at 193nm by frequency mixing between Yb-hybrid and Er-fiber lasers”; OPTICS EXPRESS, Vol. 23, No. 8, 20 Apr 2015, p10564-10572.
【概要】
【0007】
本開示における第1の固体レーザシステムは、第1の波長の第1のパルスレーザ光と、第2の波長の第2のパルスレーザ光とを出射する固体レーザ装置と、第1のパルスレーザ光が入射し、第1の波長の第3のパルスレーザ光を出射する第1の固体増幅器と、第3のパルスレーザ光が入射し、第3の波長の高調波光を出射する波長変換部と、第2のパルスレーザ光が入射し、第2の波長の第4のパルスレーザ光を出射する第2の固体増幅器と、第4のパルスレーザ光が入射し、第4の波長のストークス光を出射するラマンレーザ装置と、高調波光とストークス光が入射し、第3の波長および第4の波長から波長変換された第5の波長の第5のパルスレーザ光を出射する波長変換システムとを備えてもよい。
【0008】
本開示における第2の固体レーザシステムは、第1の波長の第1のパルスレーザ光と、第2の波長の第2のパルスレーザ光とを出射する固体レーザ装置と、第1のパルスレーザ光および第2のパルスレーザ光が入射し、第1の波長の第3のパルスレーザ光および第2の波長の第4のパルスレーザ光を出射する単一の固体増幅器と、固体増幅器の下流に配置され、第3のパルスレーザ光と第4のパルスレーザ光とを分岐する光学素子と、光学素子により分岐された第3のパルスレーザ光が入射し、第3の波長の高調波光を出射する波長変換部と、光学素子により分岐された第4のパルスレーザ光が入射し、第4の波長のストークス光を出射するラマンレーザ装置と、高調波光とストークス光が入射し、第3の波長および第4の波長から波長変換された第5の波長の第5のパルスレーザ光を出射する波長変換システムとを備えてもよい。
【0009】
本開示における第1のエキシマレーザシステムは、第1の波長の第1のパルスレーザ光と、第2の波長の第2のパルスレーザ光とを出射する固体レーザ装置と、第1のパルスレーザ光が入射し、第1の波長の第3のパルスレーザ光を出射する第1の固体増幅器と、第3のパルスレーザ光が入射し、第3の波長の高調波光を出射する波長変換部と、第2のパルスレーザ光が入射し、第2の波長の第4のパルスレーザ光を出射する第2の固体増幅器と、第4のパルスレーザ光が入射し、第4の波長のストークス光を出射するラマンレーザ装置と、高調波光とストークス光が入射し、第3の波長および第4の波長から波長変換された第5の波長の第5のパルスレーザ光を出射する波長変換システムと、第5のパルスレーザ光が入射し、第5の波長のパルスレーザ光を出射するエキシマレーザ増幅器とを備えてもよい。
【0010】
本開示における第2のエキシマレーザシステムは、第1の波長の第1のパルスレーザ光と、第2の波長の第2のパルスレーザ光とを出射する固体レーザ装置と、第1のパルスレーザ光および第2のパルスレーザ光が入射し、第1の波長の第3のパルスレーザ光および第2の波長の第4のパルスレーザ光を出射する単一の固体増幅器と、固体増幅器の下流に配置され、第3のパルスレーザ光と第4のパルスレーザ光とを分岐する光学素子と、光学素子により分岐された第3のパルスレーザ光が入射し、第3の波長の高調波光を出射する波長変換部と、光学素子により分岐された第4のパルスレーザ光が入射し、第4の波長のストークス光を出射するラマンレーザ装置と、高調波光とストークス光が入射し、第3の波長および第4の波長から波長変換された第5の波長の第5のパルスレーザ光を出射する波長変換システムと、第5のパルスレーザ光が入射し、第5の波長のパルスレーザ光を出射するエキシマレーザ増幅器とを備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、比較例に係る固体レーザシステムを含む露光装置用レーザ装置の一構成例を概略的に表す構成図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る固体レーザシステムの一構成例を概略的に表す構成図である。
図3図3は、図2に示したYbファイバ増幅器の一構成例を概略的に表す構成図である。
図4図4は、図2に示したダイヤモンドラマンレーザ増幅器の一構成例を概略的に表す構成図である。
図5図5は、第1の実施形態の第1の変形例に係る各シード光および各パルスレーザ光の波長の一例を表す表である。
図6図6は、第1の実施形態の第2の変形例に係るYb:固体増幅器の一構成例を表す構成図である。
図7図7は、第1の実施形態の第2の変形例に係る他のYb:固体増幅器の一構成例を表す構成図である。
図8図8は、第1の実施形態の第2の変形例に係る他のYb:固体増幅器の一構成例を表す構成図である。
図9A図9Aは、第1の実施形態の第2の変形例に係る他のYb:固体増幅器の一構成例を表す構成図である。
図9B図9Bは、図9Aに示したYb:固体増幅器の一構成例を表す他の構成図である。
図10図10は、第1の実施形態の第3の変形例に係るYb:固体増幅器の材料の一例を表す表である。
図11図11は、第1の実施形態の第5の変形例に係る増幅器の一構成例を概略的に表す構成図である。
図12図12は、第1の実施形態の第5の変形例に係る他の増幅器の一構成例を概略的に表す構成図である。
図13図13は、第2の実施形態に係る固体レーザシステムの一構成例を概略的に表す構成図である。
図14図14は、第2の実施形態の第1の変形例に係る固体レーザシステムの一構成例を表す構成図である。
図15図15は、第2の実施形態の第1の変形例に係る他の固体レーザシステムの一構成例を表す構成図である。
図16図16は、第3の実施形態に係る固体レーザシステムの一構成例を概略的に表す構成図である。
図17図17は、制御部のハードウエア環境の一例を表す構成図である。
【実施形態】
【0012】
<内容>
[1.概要]
[2.比較例](固体レーザシステムを含む露光装置用レーザ装置)
2.1 構成(図1
2.2 動作
2.3 課題
[3.第1の実施形態](固体レーザシステム)
3.1 構成(図2〜4)
3.2 動作
3.3 作用
3.4 変形例
3.4.1 第1の変形例(図5
3.4.2 第2の変形例(図6〜8,9A,9B)
3.4.3 第3の変形例(図10
3.4.4 第4の変形例
3.4.5 第5の変形例(図11,12)
[4.第2の実施形態](固体レーザシステム)
4.1 構成(図13
4.2 動作
4.3 作用
4.4 変形例
4.4.1 第1の変形例(図14,15)
4.4.2 第2の変形例
[5.第3の実施形態](固体レーザシステム)
5.1 構成(図16
5.2 動作
5.3 作用
[6.制御部のハードウエア環境](図17
[7.その他]
【0013】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例であって、本開示の内容を限定しない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0014】
[1.概要]
本開示は、例えば、パルスレーザ光を生成する固体レーザシステムおよびエキシマレーザシステムに関する。
【0015】
[2.比較例]
まず、本開示の実施形態に対する比較例に係る固体レーザシステムを含む露光装置用レーザ装置について説明する。
【0016】
露光装置用レーザ装置として、MO(マスタオシレータ)とPO(パワーオシレータ)とを含む構成があり得る。そのような露光装置用レーザ装置では、MOとPOとに、ArFレーザガスをレーザ媒質とするArFレーザ装置が使用され得る。しかしながら、省エネルギの観点から、MOを波長193.4nmのパルスレーザ光を出射する固体レーザシステムとする露光装置用レーザ装置の開発が進みつつある。このMOは、固体レーザ装置と、波長変換システムとを含んでもよい。以下では、そのような露光装置用レーザ装置の構成例を説明する。
【0017】
(2.1 構成)
図1は、本開示の実施形態に対する比較例の露光装置用レーザ装置の一構成例を概略的に表す。
【0018】
露光装置用レーザ装置1は、固体レーザシステム900と、増幅器2と、レーザ制御部3と、同期制御部6と、高反射ミラー98,99とを備えてもよい。
【0019】
固体レーザシステム900は、固体レーザ装置300と、Yb:固体増幅器11と、LBO(LiB)結晶12と、CLBO(CsLiB10)結晶13と、同期回路部14と、高反射ミラー15と、ダイクロイックミラー16と、波長変換システム17とを含んでもよい。
【0020】
固体レーザ装置300は、シード光S1に基づいて生成された第1の波長のパルスレーザ光L1を出射するとともに、シード光S2に基づいて生成された第2の波長のパルスレーザ光L2を出射するように構成されてもよい。第1の波長は、約1030nmであってもよく、第2の波長は、約1554nmであってもよい。固体レーザ装置300は、半導体レーザ200と、半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)21と、Ybファイバ増幅器システム220とを含んでもよい。半導体レーザ200、半導体光増幅器21、およびYbファイバ増幅器システム220は、光路上において上流から下流へこの順序で配置されてもよい。さらに、固体レーザ装置300は、半導体レーザ400と、半導体光増幅器(SOA)41と、Erファイバ増幅器システム420とを含んでもよい。半導体レーザ400、半導体光増幅器41、およびErファイバ増幅器システム420は、光路上において上流から下流へこの順序で配置されてもよい。
【0021】
半導体レーザ200は、CW発振もしくはパルス発振により波長約1030nmのシード光S1を出射する分布帰還型(DFB:Distributed Feedback)の半導体レーザであってもよい。半導体レーザ200は、シングル縦モードであって、波長約1030nm付近で波長を変化させることができる半導体レーザであってもよい。
【0022】
半導体光増幅器21は、半導体にパルス電流を流すことにより、シード光S1を所定のパルス幅のパルスレーザ光に変換し増幅する半導体素子であってもよい。半導体光増幅器21は、同期回路部14からの指示に基づいて半導体にパルス電流を流す電流制御器を含んでもよい。半導体光増幅器21は、半導体レーザ200がパルス発振する場合には、半導体レーザ200と同期して動作するように構成されてもよい。
【0023】
Ybファイバ増幅器システム220は、Ybがドープされた多段の光ファイバ増幅器と、CW発振により励起光を出射し、その励起光を各光ファイバ増幅器に供給するCW励起半導体レーザとを含んでもよい。このYbファイバ増幅器システム220における光ファイバの長さは、光ファイバ中の非線形現象である誘導ブリルアン散乱(SBS:Stimulated Brillouin Scattering)を抑制できる程度の長さに制限されてもよい。
【0024】
半導体レーザ400は、CW発振もしくはパルス発振により波長約1554nmのシード光S2を出射する分布帰還型の半導体レーザであってもよい。半導体レーザ400は、シングル縦モードであって、波長約1554nm付近で波長を変化させることができる半導体レーザであってもよい。
【0025】
半導体光増幅器41は、半導体にパルス電流を流すことにより、シード光S2を所定のパルス幅のパルスレーザ光に変換し増幅する半導体素子であってもよい。半導体光増幅器41は、同期回路部14からの指示に基づいて半導体にパルス電流を流す、図示しない電流制御器を含んでもよい。半導体光増幅器41は、半導体レーザ400がパルス発振する場合には、半導体レーザ400と同期して動作するように構成されてもよい。
【0026】
Erファイバ増幅器システム420は、ErおよびYbが共にドープされた多段の光ファイバ増幅器と、CW発振により励起光を出射し、その励起光を各光ファイバ増幅器に供給するCW励起半導体レーザとを含んでもよい。
【0027】
同期回路部14は、同期制御部6からのトリガ信号Tr1に基づいて、半導体光増幅器21および半導体光増幅器41に所定のトリガ信号をそれぞれ出力するように構成されてもよい。
【0028】
Yb:固体増幅器11は、Ybがドープされた結晶またはセラミックスを含んでもよい。LBO結晶12は、非線形結晶であってもよく、Yb:固体増幅器11から出射された第1の波長のパルスレーザ光の第2高調波光であるパルスレーザ光を出射してもよい。CLBO結晶13は、非線形結晶であってもよく、第4高調波光である第3の波長のパルスレーザ光LHを出射してもよい。第3の波長は、約257.5nmであってもよい。Yb:固体増幅器11、LBO結晶12、およびCLBO結晶13は、Ybファイバ増幅器システム220の下流の光路上において、この順序で配置されてもよい。
【0029】
高反射ミラー15は、固体レーザ装置300から出射された第2の波長のパルスレーザ光L2を高反射し、その高反射されたパルスレーザ光をダイクロイックミラー16に入射させるように配置されてもよい。
【0030】
ダイクロイックミラー16は、第3の波長のパルスレーザ光LHを高透過する基板上に、第3の波長のパルスレーザ光LHを高透過し、第2の波長のパルスレーザ光L2を高反射する膜がコートされた光学素子であってもよい。ダイクロイックミラー16は、パルスレーザ光LHおよびパルスレーザ光L2を、互いの光路軸を略一致させた状態で波長変換システム17に入射させるように配置されてもよい。
【0031】
波長変換システム17は、第3の波長のパルスレーザ光LHおよび第2の波長のパルスレーザ光L2が入射され、第2の波長および第3の波長の両方と異なる波長のパルスレーザ光LLを出射するように構成されてもよい。波長変換システム17は、CLBO結晶18,19と、ダイクロイックミラー95,96と、高反射ミラー97とを含んでもよい。CLBO結晶18、ダイクロイックミラー95、CLBO結晶19、およびダイクロイックミラー96は、光路上において上流から下流へこの順序で配置されてもよい。
【0032】
CLBO結晶18には、波長約257.5nmのパルスレーザ光LHおよび波長約1554nmのパルスレーザ光L2が入射されてもよい。CLBO結晶18は、波長約257.5nmと波長約1554nmの和周波に対応する波長約220.9nmのパルスレーザ光を出射してもよい。
【0033】
ダイクロイックミラー95は、波長約1554nmおよび波長約220.9nmのパルスレーザ光を高透過し、波長約257.5nmのパルスレーザ光を高反射する膜がコートされた光学素子であってもよい。
【0034】
CLBO結晶19には、ダイクロイックミラー95を透過した、波長約1554nmおよび波長約220.9nmのパルスレーザ光が入射されてもよい。CLBO結晶19は、波長約1554nmと波長約220.9nmの和周波に対応する波長約193.4nmのパルスレーザ光を出射してもよい。
【0035】
ダイクロイックミラー96は、波長約1554nmおよび波長約220.9nmのパルスレーザ光を高透過し、波長約193.4nmのパルスレーザ光を高反射する膜がコートされた光学素子であってもよい。
【0036】
高反射ミラー97は、ダイクロイックミラー96により反射された波長約193.4nmのパルスレーザ光を高反射し、その高反射されたパルスレーザ光をパルスレーザ光LLとして固体レーザシステム900から出射するように配置されてもよい。
【0037】
高反射ミラー98,99は、固体レーザシステム900から出射された波長約193.4nmのパルスレーザ光LLが、増幅器2に入射するように配置されてもよい。
【0038】
増幅器2は、固体レーザシステム900から出射された波長約193.4nmのパルスレーザ光LLを増幅し、増幅されたパルスレーザ光を露光装置4に向けて出射するように構成されてもよい。増幅器2は、エキシマレーザ増幅器であってもよい。このエキシマレーザ増幅器は、ArFレーザガスをレーザ媒質とするArFレーザ増幅器であってもよい。
【0039】
レーザ制御部3は、半導体レーザ200、半導体レーザ400、Ybファイバ増幅器システム220内のCW励起半導体レーザ、およびErファイバ増幅器システム420内のCW励起半導体レーザに、図示しない信号ラインを介して接続されてもよい。
【0040】
同期制御部6には、レーザ制御部3を介して、固体レーザシステム900におけるパルスレーザ光の生成タイミングを指示する発振トリガ信号Tr0が外部装置としての露光装置4から供給されてもよい。露光装置4は、露光装置制御部5を含んでもよい。発振トリガ信号Tr0は、露光装置4の露光装置制御部5が供給するようにしてもよい。同期制御部6は、発振トリガ信号Tr0に基づいてトリガ信号Tr1を生成し、トリガ信号Tr1を同期回路部14に供給するように構成されてもよい。また、同期制御部6は、発振トリガ信号Tr0に基づいてトリガ信号Tr2を生成し、トリガ信号Tr2を増幅器2に供給するように構成されてもよい。
【0041】
(2.2 動作)
レーザ制御部3は、発振トリガ信号Tr0に基づいて、半導体レーザ200,400をCW発振もしくはパルス発振させてもよい。また、レーザ制御部3は、発振トリガ信号Tr0に基づいて、Ybファイバ増幅器システム220内のCW励起半導体レーザ、およびErファイバ増幅器システム420内のCW励起半導体レーザをCW発振させてもよい。
【0042】
同期制御部6は、レーザ制御部3を介して露光装置制御部5から発振トリガ信号Tr0を受信したとき、発振トリガ信号Tr0とトリガ信号Tr1との間の遅延時間、および発振トリガ信号Tr0とトリガ信号Tr2との間の遅延時間を制御してもよい。これらの遅延時間は、固体レーザシステム900から出射されたパルスレーザ光LLが増幅器2に入射するのと同期して増幅器2が動作するように制御されてもよい。
【0043】
固体レーザ装置300では、半導体レーザ200から波長約1030nmのCW発振光もしくはパルス発振光がシード光S1として出射され得る。このシード光S1は、同期回路部14からの所定のトリガ信号に基づいて、半導体光増幅器21によって所定のパルス幅のパルスレーザ光に変換され増幅され得る。半導体光増幅器21から出射されたパルスレーザ光は、Ybファイバ増幅器システム220に入射され、このYbファイバ増幅器システム220により、誘導ブリルアン散乱を抑制しつつ増幅され得る。これにより、固体レーザ装置300から波長約1030nmのパルスレーザ光L1が出射され得る。
【0044】
固体レーザ装置300から出射されたパルスレーザ光L1は、Yb:固体増幅器11に入射され、このYb:固体増幅器11により増幅され得る。Yb:固体増幅器11から出射されたパルスレーザ光は、LBO結晶12に入射され得る。そして、このパルスレーザ光から、LBO結晶12およびCLBO結晶13によって、第4高調波光である波長約257.5nmのパルスレーザ光LHが生成され出射され得る。
【0045】
また、固体レーザ装置300では、半導体レーザ400から波長約1554nmのCW発振光もしくはパルス発振光がシード光S2として出射され得る。このシード光S2は、同期回路部14からの所定のトリガ信号に基づいて、半導体光増幅器41によって所定のパルス幅のパルスレーザ光に変換され増幅され得る。半導体光増幅器41から出射されたパルスレーザ光は、Erファイバ増幅器システム420に入射され、このErファイバ増幅器システム420により増幅され得る。これにより、固体レーザ装置300から波長約1554nmのパルスレーザ光L2が出射され得る。
【0046】
CLBO結晶13から出射された波長約257.5nmのパルスレーザ光LHは、ダイクロイックミラー16を介して、波長変換システム17に入射され得る。また、固体レーザ装置300から出射された波長約1554nmのパルスレーザ光L2は、高反射ミラー15およびダイクロイックミラー16を介して、波長変換システム17に入射され得る。
【0047】
ここで、同期回路部14は、トリガ信号Tr1に基づいて、所定のタイミングで、所定のパルス幅のトリガ信号を半導体光増幅器21,41にそれぞれ供給してもよい。これらのタイミングは、パルスレーザ光LHおよびパルスレーザ光L2が、波長変換システム17のCLBO結晶18に略同時に入射するように調節され得る。半導体光増幅器21および半導体光増幅器41に供給されるトリガ信号のパルス幅は、固体レーザシステム900が出射するパルスレーザ光LLのパルス幅が所望のパルス幅になるようにそれぞれ調節され得る。
【0048】
波長変換システム17では、ダイクロイックミラー16によってCLBO結晶18にパルスレーザ光LHおよびパルスレーザ光L2が略同時に入射され、CLBO結晶18上でパルスレーザ光LHのビームおよびパルスレーザ光L2のビームが重なり得る。CLBO結晶18では、波長約257.5nmと波長約1554nmの和周波に対応する波長約220.9nmのパルスレーザ光が生成され得る。CLBO結晶18からは、波長約257.5nm、波長約1554nm、および波長約220.9nmの3つのパルスレーザ光が出射され得る。
【0049】
CLBO結晶18から出射された3つのパルスレーザ光のうち、波長約1554nmおよび波長約220.9nmの2つのパルスレーザ光は、ダイクロイックミラー95を高透過し、波長約257.5nmのパルスレーザ光は、ダイクロイックミラー95により高反射され得る。ダイクロイックミラー95を透過した2つのパルスレーザ光は、CLBO結晶19に入射され得る。
【0050】
CLBO結晶19では、波長約220.9nmと波長約1554nmの和周波に対応する波長約193.4nmのパルスレーザ光LLが生成され得る。CLBO結晶19からは、波長約1554nm、波長約220.9nm、および波長約193.4nmの3つのパルスレーザ光が出射され得る。
【0051】
CLBO結晶19から出射された3つのパルスレーザ光のうち、波長約1554nmおよび波長約220.9nmのパルスレーザ光は、ダイクロイックミラー96を高透過し、波長約193.4nmのパルスレーザ光は、ダイクロイックミラー96により高反射され得る。波長約193.4nmのパルスレーザ光は、高反射ミラー97により高反射され、パルスレーザ光LLとして波長変換システム17から出射され得る。
【0052】
波長変換システム17から出射されたパルスレーザ光LLは、高反射ミラー98,99を介して、増幅器2に入射され得る。増幅器2に入射されたパルスレーザ光LLは、増幅器2により増幅され、露光装置4に向けて出射され得る。
【0053】
(2.3 課題)
このように、固体レーザシステム900を用いてMOを構成した場合には、固体レーザシステム900のパルスレーザ光LLについての要求仕様は以下のようになり得る。
繰り返し周波数 ≦ 6kHz
パルスエネルギ ≧ 165μJ/pulse(1W@6kHz)
スペクトル線幅Δν ≦ 4GHz(0.50pm@193.4nm)(半値全幅)
パルス幅 1ns〜30ns(半値全幅)
【0054】
このような目標を達成するには、固体レーザ装置300のパルスレーザ光L2についての目標仕様は、以下のようになり得る。
繰り返し周波数 ≦ 6kHz
パルスエネルギ ≧ 820μJ/pulse(4.9W@6kHz)
スペクトル線幅Δν ≦ 4GHz(32.2pm@1554nm)(半値全幅)
パルス幅 1ns〜30ns(半値全幅)
【0055】
このような目標を達成しようとすると、Erファイバ増幅器システム420における最終段の光ファイバ増幅器において、誘導ブリルアン散乱が生じ得る。その結果、この最終段の光ファイバ増幅器において、パルスレーザ光の増幅が抑制されるとともに、このパルスレーザ光が散乱されて戻り光となり得る。この場合には、半導体レーザ400は損傷し得た。
【0056】
また、パルスエネルギを高くするために、このErファイバ増幅器システム420の後段に、波長約1554nmのパルスレーザ光を増幅する固体増幅器を設ける場合が有り得る。このような固体増幅器としては、例えば、ErおよびYbが共にドープされたガラスで構成された固体増幅器を入手し得る。しかしながら、このような固体増幅器は、熱伝導率が低いため、パルスエネルギが高いレーザ光を繰り返し出射するのが難しくなり得る。その結果、パルスレーザ光L2のパルスエネルギが制限され得た。
【0057】
よって、波長約193.4nmで、上述したようなスペクトル線幅およびパルス幅を有する、数ワットのパルスエネルギのパルスレーザ光LLを出射する固体レーザシステム900は、実現しにくくなり得た。
【0058】
[3.第1の実施形態]
次に、本開示の第1の実施形態に係る固体レーザシステムについて説明する。なお、以下では図1に示した比較例に係る固体レーザシステム900の構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0059】
(3.1 構成)
図2は、固体レーザシステム10の一構成例を概略的に表す。固体レーザシステム10は、固体レーザ装置30と、Yb:固体増幅器31と、ダイヤモンドラマンレーザ装置32と、高反射ミラー35と、ダイクロイックミラー36と、波長変換システム37とを含んでもよい。
【0060】
固体レーザ装置30は、半導体レーザ20と、半導体レーザ40と、Ybファイバ増幅器システム22,42とを含んでもよい。
【0061】
半導体レーザ20は、CW発振もしくはパルス発振により波長約1040nmのシード光S1を出射する分布帰還型の半導体レーザであってもよい。半導体レーザ20は、シングル縦モードであって、波長約1040nm付近で波長を変化させることができる半導体レーザであってもよい。Ybファイバ増幅器システム22は、後述するYbファイバ増幅器システム42と同様の構成を有してもよい。半導体レーザ20、半導体光増幅器21、およびYbファイバ増幅器システム22は、光路上において上流から下流へこの順序で配置されてもよい。固体レーザ装置30から出力されたパルスレーザ光L1の光路上に、Yb:固体増幅器11、LBO結晶12、およびCLBO結晶13がこの順番で配置されてもよい。CLBO結晶13から出射される第4高調波光であるパルスレーザ光LHの第3の波長は、約260nmであってもよい。
【0062】
半導体レーザ40は、CW発振もしくはパルス発振により波長約1077nmのシード光S2を出射する分布帰還型の半導体レーザであってもよい。半導体レーザ40は、シングル縦モードであって、波長約1077nm付近で波長を変化させることができる半導体レーザであってもよい。半導体レーザ40、半導体光増幅器41、およびYbファイバ増幅器システム42は、光路上において上流から下流へこの順序で配置されてもよい。
【0063】
図3は、Ybファイバ増幅器システム42の一構成例を概略的に表す。この図3は、Ybファイバ増幅器システム42に加えて、半導体レーザ40および半導体光増幅器41をも示している。Ybファイバ増幅器システム42は、Ybファイバ増幅器53,58,61と、アイソレータ54,60と、バンドパスフィルタ(BPF)55,59とを含んでもよい。Ybファイバ増幅器53、アイソレータ54、バンドパスフィルタ55、Ybファイバ増幅器58、バンドパスフィルタ59、アイソレータ60、およびYbファイバ増幅器61は、光路上において上流から下流へこの順序で配置されてもよい。また、Ybファイバ増幅器システム42は、ポンプ用半導体レーザ51,56,63と、WDM(Wavelength Division Multiplexer)光カプラ52と、ポンプコンバイナ(PC)57,62とを含んでもよい。Ybファイバ増幅器53およびYbファイバ増幅器58は、ファイバのまま互いに結合されてもよいし、空気を介して結合されてもよい。同様に、Ybファイバ増幅器58およびYbファイバ増幅器61は、ファイバのまま互いに結合されてもよいし、空気を介して結合されてもよい。
【0064】
Ybファイバ増幅器53は、シリカファイバにYbがドープされたシングルモードファイバ(SMF)を含んでもよい。このシングルモードファイバのファイバ径は、約6μmであってもよい。Ybファイバ増幅器53は、上流側において、ポンプ用半導体レーザ51に接続された光ファイバと、WDM光カプラ52により結合されてもよい。WDM光カプラ52は、半導体光増幅器41から出射された波長約1077nmのパルスレーザ光と、ポンプ用半導体レーザ51から出射された波長約976nmのポンプ光とを結合するように構成されてもよい。
【0065】
アイソレータ54,60は、例えば戻り光の通過を抑制するためのファラデーアイソレータであってもよい。半導体光増幅器41とWDM光カプラ52との間に、さらに他のアイソレータがあってもよい。
【0066】
バンドパスフィルタ55,59は、ガラス基板上に、波長約1077nmのパルスレーザ光を高透過し、その他の光の通過を抑制するフィルタがコートされた光学素子であってもよい。その他の光は、自然放射光(ASE;Amplified Spontaneous Emission)およびポンプ光であってもよい。
【0067】
Ybファイバ増幅器58は、シリカファイバにYbがドープされたダブルクラッドファイバ(DCF)を含んでもよい。このダブルクラッドファイバのファイバ径は、約10μmであってもよい。Ybファイバ増幅器58は、上流側において、ポンプ用半導体レーザ56に接続された光ファイバと、ポンプコンバイナ57により結合されてもよい。ポンプコンバイナ57は、前段のYbファイバ増幅器53から出射された波長約1077nmのパルスレーザ光と、ポンプ用半導体レーザ56から出射された波長約976nmのポンプ光とを結合するように構成されてもよい。
【0068】
Ybファイバ増幅器61は、シリカファイバにYbがドープされたダブルクラッドファイバ(DCF)を含んでもよい。このダブルクラッドファイバは、ファイバ径が約25μmのラージモードエリア(LMA)ファイバであってもよいし、ファイバ径が40μmのフォトニッククリスタルファイバ(PCF)であってもよい。このダブルクラッドファイバは、シングル横モードに近づくように巻かれてもよい。Ybファイバ増幅器61は、下流側において、ポンプ用半導体レーザ63に接続された光ファイバと、ポンプコンバイナ62により結合されてもよい。これに代えて、Ybファイバ増幅器61は、上流側において、ポンプ用半導体レーザ63に接続された光ファイバと、ポンプコンバイナ62により結合されてもよい。ポンプコンバイナ62は、ポンプ用半導体レーザ63から出射された波長約976nmのポンプ光をYbファイバ増幅器61に供給するように構成されてもよい。Ybファイバ増幅器61のうち、ポンプ光が通過する部分の長さである実効増幅ファイバ長Leffは、誘導ブリルアン散乱を抑制できる程度の長さであってもよい。
【0069】
Yb:固体増幅器31(図2)は、Ybがドープされた結晶またはセラミックスを含んでもよい。ダイヤモンドラマンレーザ装置32は、第2ストークス光である第4の波長のパルスレーザ光LSを出射してもよい。第4の波長は、約1510.7nmであってもよい。Yb:固体増幅器31およびダイヤモンドラマンレーザ装置32は、図2に示したように、Ybファイバ増幅器システム42の下流の光路上において、この順序で配置されてもよい。
【0070】
図4は、ダイヤモンドラマンレーザ装置32の一構成例を概略的に表す。ダイヤモンドラマンレーザ装置32は、集光レンズ64と、入力結合ミラー65と、出力結合ミラー67と、ダイヤモンド結晶66とを含んでもよい。入力結合ミラー65および出力結合ミラー67は、ダイヤモンド結晶66を挟んで対向配置されてもよい。入力結合ミラー65および出力結合ミラー67は、光共振器を構成してもよい。
【0071】
集光レンズ64は、Yb:固体増幅器31から出射された第2の波長のパルスレーザ光が、入力結合ミラー65を介してダイヤモンド結晶66の内部に集光するように配置されてもよい。
【0072】
入力結合ミラー65は、ダイヤモンド結晶66側の面65aが凹面ミラーを構成する光学素子であってもよい。入力結合ミラー65は、波長約1077nmの光を高透過する基板の、ダイヤモンド結晶66側の面65aに、波長約1077nmの光を高透過する膜がコートされた光学素子であってもよい。さらに、この膜は、第1ストークス光に対応する波長約1257.5nmの光、および第2ストークス光に対応する波長約1510.7nmの光を高反射してもよい。入力結合ミラー65の集光レンズ64側の面65bには、波長約1077nmの光を高透過する膜がコートされてもよい。
【0073】
出力結合ミラー67は、ダイヤモンド結晶66側の面67aが凹面ミラーを構成する光学素子であってもよい。出力結合ミラー67は、波長約1077nmおよび波長約1510.7nmの光を高透過する基板の、ダイヤモンド結晶66側の面67aに、波長約1077nmの光と、第1ストークス光に対応する波長約1257.5nmの光を高反射する膜がコートされた光学素子であってもよい。さらに、この膜は、第2ストークス光に対応する波長約1510.7nmの光を約16%の反射率で部分反射し、第3ストークス光に対応する波長約1891.6nmの光を、約6%の反射率で低反射してもよい。出力結合ミラー67の、高反射ミラー35側の面67bには、波長約1077nmおよび波長約1510.7nmの光を高透過する膜がコートされてもよい。
【0074】
ダイヤモンド結晶66は、波長約1077nmの光が入射され、ストークス光を出射してもよい。第1ストークス光、第2ストークス光、および第3ストークス光の波長は、それぞれ、約1257.5nm、約1510.7nm、および約1891.6nmであってもよい。ダイヤモンド結晶66は、入力結合ミラー65および出力結合ミラー67が構成する光共振器内の光路上に配置されてもよい。ダイヤモンド結晶66の結晶軸<110>は、この光共振器における光路と略平行であってもよい。ダイヤモンド結晶66の、光路と交差する方向の厚さTは、約2mmであってもよい。ダイヤモンド結晶66の光路と交差する面での断面形状は、正方形であってもよい。厚さTは、この正方形の1辺の長さであってもよい。ダイヤモンド結晶66の光路方向の長さLは、約8mmであってもよい。
【0075】
高反射ミラー35は、図2に示したように、ダイヤモンドラマンレーザ装置32から出射された第4の波長のパルスレーザ光LSを高反射し、ダイクロイックミラー36に入射させるように配置されてもよい。
【0076】
ダイクロイックミラー36は、第3の波長のパルスレーザ光LHを高透過する基板上に、第3の波長のパルスレーザ光LHを高透過し、第4の波長のパルスレーザ光LSを高反射する膜がコートされた光学素子であってもよい。ダイクロイックミラー36は、パルスレーザ光LHおよびパルスレーザ光LSを、互いの光路軸を略一致させた状態で波長変換システム37に入射させるように配置されてもよい。
【0077】
波長変換システム37は、ダイクロイックミラー38,39を含んでもよい。ダイクロイックミラー38は、波長約1510.7nmおよび波長約221.8nmのパルスレーザ光を高透過し、波長約260nmのパルスレーザ光を高反射する膜がコートされた光学素子であってもよい。ダイクロイックミラー39は、波長約1510.7nmおよび波長約221.8nmのパルスレーザ光を高透過し、波長約193.4nmのパルスレーザ光を高反射する膜がコートされた光学素子であってもよい。
【0078】
ここで、Yb:固体増幅器11は、本開示の第1の固体レーザシステムおよび第1のエキシマレーザシステムにおける「第1の固体増幅器」の一具体例に対応してもよい。LBO結晶12およびCLBO結晶13は、本開示における「波長変換部」の一具体例に対応してもよい。Yb:固体増幅器31は、本開示における「第2の固体増幅器」の一具体例に対応してもよい。ダイヤモンドラマンレーザ装置32は、本開示における「ラマンレーザ装置」の一具体例に対応してもよい。
【0079】
半導体レーザ20は、本開示における「第1の発振器」の一具体例に対応してもよい。半導体光増幅器21は、本開示における「第1のレーザ光生成部」の一具体例に対応してもよい。Ybファイバ増幅器システム22は、本開示における「第1のファイバ増幅器システム」の一具体例に対応してもよい。半導体レーザ40は、本開示における「第2の発振器」の一具体例に対応してもよい。半導体光増幅器41は、本開示における「第2のレーザ光生成部」の一具体例に対応してもよい。Ybファイバ増幅器システム42は、本開示における「第2のファイバ増幅器システム」の一具体例に対応してもよい。
【0080】
(3.2 動作)
固体レーザ装置30では、半導体レーザ20から波長約1040nmのCW発振光もしくはパルス発振光がシード光S1として出射され得る。このシード光S1は、半導体光増幅器21によって所定のパルス幅のパルスレーザ光に変換され増幅され得る。半導体光増幅器21から出射されたパルスレーザ光は、Ybファイバ増幅器システム22により、誘導ブリルアン散乱を抑制しつつ増幅され得る。これにより、固体レーザ装置30から波長約1040nmのパルスレーザ光L1が出射され得る。固体レーザ装置30から出射されたパルスレーザ光L1は、Yb:固体増幅器11により増幅され得る。そして、Yb:固体増幅器11により増幅されたパルスレーザ光から、LBO結晶12およびCLBO結晶13によって、第4高調波光である波長約260nmのパルスレーザ光LHが生成され出射され得る。
【0081】
また、固体レーザ装置30では、半導体レーザ40から波長約1077nmのCW発振光もしくはパルス発振光がシード光S2として出射され得る。このシード光S2は、半導体光増幅器41によって所定のパルス幅のパルスレーザ光に変換され増幅され得る。そして、半導体光増幅器41から出射されたパルスレーザ光は、Ybファイバ増幅器システム42に入射され得る。
【0082】
Ybファイバ増幅器システム42において、入射されたパルスレーザ光は、WDM光カプラ52を介してYbファイバ増幅器53に入射され、このYbファイバ増幅器53により増幅され得る。Ybファイバ増幅器53により増幅されたパルスレーザ光は、アイソレータ54、バンドパスフィルタ55、およびポンプコンバイナ57を介してYbファイバ増幅器58に入射され得る。アイソレータ54は、Ybファイバ増幅器58,61からの自然放出光や戻り光を抑制し得る。バンドパスフィルタ55は、Ybファイバ増幅器53,58からの自然放出光の通過を抑制し、自励発振を抑制し得る。Ybファイバ増幅器58に入射されたパルスレーザ光は、このYbファイバ増幅器58により増幅され得る。Ybファイバ増幅器58により増幅されたパルスレーザ光は、バンドパスフィルタ59およびアイソレータ60を介してYbファイバ増幅器61に入射され得る。バンドパスフィルタ59は、Ybファイバ増幅器58,61からの自然放出光の通過を抑制し、自励発振を抑制し得る。アイソレータ60は、Ybファイバ増幅器61からの自然放出光や戻り光を抑制し得る。Ybファイバ増幅器61に入射したパルスレーザ光は、このYbファイバ増幅器61により、誘導ブリルアン散乱が抑制されつつ増幅され得る。これにより、固体レーザ装置30から波長約1077nmのパルスレーザ光L2が出射され得る。
【0083】
固体レーザ装置30から出射されたパルスレーザ光L2は、Yb:固体増幅器31により増幅され得る。そして、Yb:固体増幅器31により増幅されたパルスレーザ光は、ダイヤモンドラマンレーザ装置32に入射され得る。
【0084】
ダイヤモンドラマンレーザ装置32において、入射されたパルスレーザ光は、集光レンズ64により集光され、入力結合ミラー65を高透過し、ダイヤモンド結晶66に入射され得る。ダイヤモンド結晶66では、ストークス光が発生し得る。
【0085】
ダイヤモンド結晶66において発生するストークス光のうちの第2ストークス光のフォトンエネルギEs2は、以下の式により表され得る。
Es2=E2−2・ΔE ・・・(1)
この式(1)において、E2はダイヤモンド結晶66に入射する光のフォトンエネルギであってもよく、ΔEはダイヤモンドラマンシフトのエネルギであってもよい。このダイヤモンドラマンシフトのエネルギΔEは、0.16527[eV]であってもよい。フォトンエネルギE2は、以下の式により表され得る。
E2=hν=hc/λ=1240/λ[eV] ・・・(2)
この式(2)において、hはプランク定数であってもよく、νはダイヤモンド結晶66に入射する光の振動数であってもよく、λはダイヤモンド結晶66に入射する光の波長であってもよく、cは光の速度であってもよい。
【0086】
ダイヤモンド結晶66に波長約1077nmのパルスレーザ光が入射された場合、そのパルスレーザ光のフォトンエネルギE2は、式(2)を用いて、1.1513[eV](=1240/1077)になり得る。よって、第2ストークス光のフォトンエネルギEs2は、式(1)を用いて、0.8208[eV](=1.1513−2×0.16527)になり得る。この第2ストークス光の波長λs2は、1510.7[nm](=1240/0.8208)になり得る。
【0087】
この第2ストークス光は、入力結合ミラー65および出力結合ミラー67により構成される光共振器により、増幅発振され得る。その結果、ダイヤモンドラマンレーザ装置32から波長約1510.7nmのパルスレーザ光LSが出射され得る。
【0088】
CLBO結晶13から出射された波長約260nmのパルスレーザ光LHは、ダイクロイックミラー36を介して、波長変換システム37に入射され得る。また、ダイヤモンドラマンレーザ装置32から出射された波長約1510.7nmのパルスレーザ光LSは、高反射ミラー35およびダイクロイックミラー36を介して、波長変換システム37に入射され得る。
【0089】
波長変換システム37では、CLBO結晶18では、波長約260nmと波長約1510.7nmの和周波に対応する波長約221.8nmのパルスレーザ光が生成され得る。CLBO結晶18からは、波長約260nm、波長約1510.7nm、および波長約221.8nmの3つのパルスレーザ光が出射され得る。
【0090】
CLBO結晶18から出射された3つのパルスレーザ光のうち、波長約1510.7nmおよび波長約221.8nmの2つのパルスレーザ光は、ダイクロイックミラー38を高透過し、波長約260nmのパルスレーザ光は、ダイクロイックミラー38により高反射され得る。ダイクロイックミラー38を透過した2つのパルスレーザ光は、CLBO結晶19に入射され得る。
【0091】
CLBO結晶19では、波長約221.8nmと波長約1510.7nmの和周波に対応する波長約193.4nmのパルスレーザ光LLが生成され得る。CLBO結晶19からは、波長約1510.7nm、波長約221.8nm、および波長約193.4nmの3つのパルスレーザ光が出射され得る。
【0092】
CLBO結晶19から出射された3つのパルスレーザ光のうち、波長約1510.7nmおよび波長約221.89nmのパルスレーザ光は、ダイクロイックミラー39を高透過し、波長約193.4nmのパルスレーザ光はダイクロイックミラー39により高反射され得る。波長約193.4nmのパルスレーザ光は、高反射ミラー97により高反射され、パルスレーザ光LLとして波長変換システム37から出射され得る。
【0093】
(3.3 作用)
本実施形態の固体レーザシステムによれば、Ybファイバ増幅器システム22により、半導体光増幅器21から出射された波長約1040nmのパルスレーザ光を、誘導ブリルアン散乱を抑制しつつ増幅し得る。
【0094】
また、Ybファイバ増幅器システム42およびYb:固体増幅器31により、半導体光増幅器41から出射された波長約1077nmのパルスレーザ光を、誘導ブリルアン散乱を抑制しつつ増幅し得る。そして、増幅されたパルスレーザ光をダイヤモンドラマンレーザ装置32に入射することにより、高いパルスエネルギを有する波長約1510.7nmのパルスレーザ光LSを生成し得る。
【0095】
さらに、波長約260nmのパルスレーザ光LHおよび波長約1510.7nmのパルスレーザ光LSを波長変換システム37に入射することにより、高いパルスエネルギを有する波長約193.4nmのパルスレーザ光LLを生成し出射し得る。
【0096】
(3.4 変形例)
(3.4.1 第1の変形例)
固体レーザシステム10では、半導体レーザ20が波長約1040nmのシード光S1を出射するとともに、半導体レーザ40が波長約1077nmのシード光S2を出射し得たが、これに限定されない。増幅器2が増幅可能なパルスレーザ光LLの波長は193nm以上194nm以下であってもよいので、シード光S1,S2の波長は、このようなパルスレーザ光LLの波長を実現できるような波長にし得る。具体的には、図5に示すように、シード光S1の波長は、1032nm以上1045nm以下であってもよい。また、シード光S2の波長は、1070nm以上1093nm以下であってもよい。
【0097】
例えば、シード光S1の波長が1040nmである場合には、シード光S2の波長は、例1〜例3に示したように、1070nm以上1088nm以下であってもよい。シード光S1の波長が1037nmである場合には、シード光S2の波長は、例4,6,7に示したように、1077nm以上1093nmであってもよい。また、例えば、シード光S2の波長が1077nmである場合には、シード光S1の波長は、例1,例4,例5に示したように、1037nm以上1045nm以下であってもよい。シード光S2の波長が1088nmである場合には、シード光S1の波長は、例2,8に示したように1032nm以上1040nm以下であってもよい。
【0098】
(3.4.2 第2の変形例)
Yb:固体増幅器11,31は、様々な構成をとり得る。以下、Yb:固体増幅器31について、いくつかの例を挙げて説明する。なお、Yb:固体増幅器11についても同様である。
【0099】
図6は、本変形例に係るYb:固体増幅器31Aの一構成例を概略的に表す。図6において、パルスレーザ光の光路と交差する線は、パルスレーザ光の偏光方向を示してもよい。Yb:固体増幅器31Aは、固体増幅部材23を含んでもよい。固体増幅部材23は、Ybがドープされたロッド形状の結晶またはセラミックスであってもよい。固体増幅器31Aへ入射されるパルスレーザ光L2は直線偏光のレーザ光であってもよい。Yb:固体増幅器31Aは、さらに、図示しないポンプ用半導体レーザを含んでもよい。Yb:固体増幅器31Aでは、Ybファイバ増幅器システム42から出射された波長約1077nmのパルスレーザ光L2は、固体増幅部材23を1回通過することにより増幅され得る。
【0100】
図7は、本変形例に係るYb:固体増幅器31Bの一構成例を概略的に表す。図7において、パルスレーザ光の光路と交差する線および光路上の点は、パルスレーザ光の偏光方向を示してもよい。Yb:固体増幅器31Bは、偏光ビームスプリッタ24と、固体増幅部材25と、λ/4位相板26と、高反射ミラー27とを含んでもよい。偏光ビームスプリッタ24は、入射されるパルスレーザ光の直線偏光がP偏光になるように配置されてもよい。固体増幅部材25は、偏光ビームスプリッタ24を透過したパルスレーザ光の光路上に配置されてもよい。λ/4位相板26は、固体増幅部材25を通過したパルスレーザ光の光路上に配置されてもよい。高反射ミラー27は、λ/4位相板26を通過したパルスレーザ光を高反射させ、入射光と同じ光路に戻すように配置されてもよい。高反射ミラー27は、固体増幅部材25による熱レンズ効果を補正し得るように、凹面ミラーであってもよい。なお、これに限定されず、高反射ミラー27に代えて、凸レンズと、フラットミラーとを用いてもよい。
【0101】
Yb:固体増幅器31Bでは、Ybファイバ増幅器システム42から出射された波長約1077nmのパルスレーザ光L2は、偏光ビームスプリッタ24にP偏光として入射され、高透過し得る。偏光ビームスプリッタ24を高透過したパルスレーザ光は、固体増幅部材25を通過して増幅され得る。固体増幅部材25により増幅されたパルスレーザ光は、λ/4位相板26を通過し、高反射ミラー27により高反射され、λ/4位相板26を通過し、再び固体増幅部材25を通過して増幅され得る。その際、固体増幅部材25を2回目に通過したパルスレーザ光の偏光面は、固体増幅部材25を最初に通過したパルスレーザ光の偏光面と略直交し得る。固体増幅部材25により増幅されたパルスレーザ光は、偏光ビームスプリッタ24にS偏光として入射され、高反射され得る。このようにして、Yb:固体増幅器31Bでは、パルスレーザ光L2は、固体増幅部材25を2回通過することにより増幅され得る。
【0102】
また、このようなYb:固体増幅器31Bを2段以上配置することにより、パルスレーザ光が固体増幅部材を4回以上通過するようにしてもよい。
【0103】
図8は、本変形例に係るYb:固体増幅器31Cの一構成例を概略的に表す。Yb:固体増幅器31Cは、偏光ビームスプリッタ43と、ファラデーローテータ44と、λ/2位相板45と、偏光ビームスプリッタ46と、固体増幅部材47と、λ/4位相板48と、高反射ミラー49,50とを含んでもよい。偏光ビームスプリッタ43は、入射されるパルスレーザ光の直線偏光がP偏光になるように配置されてもよい。ファラデーローテータ44は、偏光ビームスプリッタ43を透過したパルスレーザ光の光路上に配置されてもよい。このファラデーローテータ44は、パルスレーザ光の偏光面を約45度回転させてもよい。λ/2位相板45は、ファラデーローテータ44の下流に配置され、ファラデーローテータ44による偏光面の回転方向と反対の方向に、パルスレーザ光の偏光面を約45度回転するように配置されてもよい。偏光ビームスプリッタ46は、λ/2位相板45の下流に配置され、入射するパルスレーザ光の直線偏光がP偏光になるように配置されてもよい。高反射ミラー50は、フラットミラーであってもよく、偏光ビームスプリッタ46により高反射されたパルスレーザ光を高反射させ、入射光と同じ光路に戻すように配置されてもよい。固体増幅部材47は、偏光ビームスプリッタ46を透過したパルスレーザ光の光路上に配置されてもよい。λ/4位相板48は、固体増幅部材47を通過したパルスレーザ光の光路上に配置されてもよい。高反射ミラー49は、凹面ミラーであってもよく、λ/4位相板48を通過したパルスレーザ光を高反射させ、入射光と同じ光路に戻すように配置されてもよい。
【0104】
Yb:固体増幅器31Cでは、Ybファイバ増幅器システム42から出射された波長約1077nmのパルスレーザ光L2は、偏光ビームスプリッタ43にP偏光として入射され、高透過し得る。偏光ビームスプリッタ43を高透過したパルスレーザ光は、ファラデーローテータ44に、ファラデーローテータ44内の磁場の方向と同じ方向に進行する光として入射され、偏光面が約45度回転し得る。ファラデーローテータ44から出射されたパルスレーザ光は、λ/2位相板45に入射され、偏光面が、ファラデーローテータ44による偏光面の回転方向と反対の方向に約45度回転し得る。その結果、ファラデーローテータ44およびλ/2位相板45によるパルスレーザ光の偏光面の回転角は約0度になり得る。言い換えれば、λ/2位相板45を通過したパルスレーザ光の偏光面は、ファラデーローテータ44に入射されるパルスレーザ光の偏光面と略等しくなり得る。
【0105】
λ/2位相板45を通過したパルスレーザ光は、偏光ビームスプリッタ46にP偏光として入射され、高透過し得る。偏光ビームスプリッタ46を高透過したパルスレーザ光は、固体増幅部材47を通過して増幅され得る。固体増幅部材47により増幅されたパルスレーザ光は、λ/4位相板48を通過し、高反射ミラー49により高反射され、λ/4位相板48を通過し、再び固体増幅部材47を通過して増幅され得る。その際、固体増幅部材47を2回目に通過したパルスレーザ光の偏光面は、固体増幅部材47を最初に通過したパルスレーザ光の偏光面と略直交し得る。固体増幅部材47により2回増幅されたパルスレーザ光は、偏光ビームスプリッタ46にS偏光として入射され、高反射され得る。偏光ビームスプリッタ46により高反射されたパルスレーザ光は、高反射ミラー50により高反射され、偏光ビームスプリッタ46にS偏光として入射され、高反射される。偏光ビームスプリッタ46により高反射されたパルスレーザ光は、再び固体増幅部材47を通過して増幅され得る。固体増幅部材47により増幅されたパルスレーザ光は、λ/4位相板48を通過し、高反射ミラー49により高反射され、λ/4位相板48を通過し、再び固体増幅部材47を通過して増幅され得る。その際、固体増幅部材47を4回目に通過したパルスレーザ光の偏光面は、固体増幅部材47を最初に通過したパルスレーザ光の偏光面と略等しくなり得る。
【0106】
固体増幅部材47により4回増幅されたパルスレーザ光は、偏光ビームスプリッタ46にP偏光として入射され、高透過し得る。偏光ビームスプリッタ46を高透過したパルスレーザ光は、λ/2位相板45に入射され、偏光面が約45度回転し得る。λ/2位相板45を通過したパルスレーザ光は、ファラデーローテータ44に、ファラデーローテータ44内の磁場の方向と反対の方向に進行する光として入射され、偏光面が、λ/2位相板45による偏光面の回転方向と同じ方向に約45度回転し得る。その結果、λ/2位相板45およびファラデーローテータ44によるパルスレーザ光の偏光面の回転角は約90度になり得る。言い換えれば、ファラデーローテータ44から出射されたパルスレーザ光の偏光面は、λ/2位相板45に入射されるパルスレーザ光の偏光面と略直交し得る。そして、ファラデーローテータ44から出射されたパルスレーザ光は、偏光ビームスプリッタ43にS偏光として入射され、高反射され得る。このようにして、Yb:固体増幅器31Cでは、パルスレーザ光L2は、固体増幅部材47を4回通過することにより増幅され得る。
【0107】
以上の例では、偏光を制御することにより、固体増幅部材を複数回通過させ得たが、これに限定されない。また、以上の例では、ロッド形状の固体増幅部材を用いたが、これに限定されず、これに代えて、以下に示すように、例えば、スラブ形状の固体増幅部材を用いてもよい。
【0108】
図9A,9Bは、本変形例に係るYb:固体増幅器31Dの一構成例を概略的に表す。図9Aは、Yb:固体増幅器31Dの平面図であってもよく、図9Bは、Yb:固体増幅器31Dの側面図であってもよい。Yb:固体増幅器31Dは、固体増幅部材91と、高反射ミラー92,93とを含んでもよい。固体増幅部材91は、Ybがドープされたスラブ形状の結晶またはセラミックスであってもよい。高反射ミラー92,93は、固体増幅部材91を挟んで対向するように配置されてもよい。Yb:固体増幅器31Dでは、Ybファイバ増幅器システム42から出射された波長約1077nmのパルスレーザ光L2は、高反射ミラー92,93により高反射され、固体増幅部材91を5回通過することにより増幅され得る。なお、パルスレーザ光が固体増幅部材91を通過する回数は、5回に限定されず、4回以下でもよいし、6回以上でもよい。Yb:固体増幅器31Dでは、このように、パルスレーザ光が固体増幅部材91を複数回通過するようにしたので、増幅効率を高くし得る。
【0109】
(3.4.3 第3の変形例)
Yb:固体増幅器11,31の固体増幅部材は、Ybを含む様々な材料により構成されてもよい。具体的には、固体増幅部材の材料は、例えば、図10に示した材料であってもよい。図10において、いくつかの材料については略称を併記している。材料群Aに属する各材料は、波長約1040nmおよび波長約1077nmのパルスレーザ光を増幅可能な材料であってもよい。材料群Bに属する各材料は、波長約1040nmのパルスレーザ光を増幅可能な材料であってもよい。この材料群Bに属する各材料は、波長約1077nmのパルスレーザ光を増幅しにくい材料であってもよい。
【0110】
波長約1040nmのパルスレーザ光を増幅するYb:固体増幅器11の固体増幅部材は、材料群Aに属する1つ以上の材料を含んで構成されてもよいし、材料群Bに属する1つ以上の材料を含んで構成されてもよい。波長約1077nmのパルスレーザ光を増幅するYb:固体増幅器31の固体増幅部材は、材料群Aに属する1つ以上の材料を含んで構成されてもよい。Yb:固体増幅器11の固体増幅部材の材料は、Yb:固体増幅器31の固体増幅部材の材料と同じであってもよい。
【0111】
(3.4.4 第4の変形例)
ダイヤモンド結晶66の厚さTを約2mmにし、長さLを約8mmにし得たが、これに限定されない。ダイヤモンド結晶66に入射される波長約1077nmのパルスレーザ光のビーム径を大きくすることにより、ダイヤモンド結晶66から出射される第2ストークス光のエネルギを高くし得る。よって、ダイヤモンド結晶66が厚いほど、第2ストークス光のエネルギを高くし得る。また、ダイヤモンド結晶66が長いほど、大きなラマンゲインが得られるため、第2ストークス光のエネルギを高くし得る。
【0112】
ダイヤモンドラマンレーザ装置32の媒質として使用可能な、低複屈折かつ低散乱である単結晶のダイヤモンド結晶は、例えばElement Six社から、厚さTが約2mmであり、長さLが約8mmの結晶を入手し得る。
【0113】
例えば、ポンプレーザ光である波長約1077nmのパルスレーザ光のピークパワー密度が約217MW/cmである時、ダイヤモンドラマンレーザ装置による、ポンプレーザ光から第2ストークス光へのパワー変換効率は、50%以上になり得る。ここで、ピークパワー密度は、単位面積当たりおよび単位時間当たりのパワーであり、以下の式により表し得る。
=P/(f・S・τ) …(3)
この式(3)において、Pは光パワーであってもよい。fは繰り返し周波数であってもよい。Sはビームの断面積であってもよい。τはパルス幅であってもよい。よって、パワーPが4Wでありピークパワー密度Pが約217MW/cmであるポンプレーザ光を用いて、パワーPが2Wであり繰り返し周波数fが6kHzである第2ストークス光を得る場合には、ダイヤモンド結晶の結晶中心におけるポンプレーザ光のビームの直径は約200μmになり得る。ガウスビームの伝搬方程式から、結晶中心から距離zだけ離れた位置でのビームの半径wは、以下の式により表し得る。
w=w{1+(z/z1/2 …(4)
=πw/λ …(5)
式(4),(5)において、wは、ビームが集光され一番絞られた部分におけるスポットサイズであってもよい。このスポットサイズは、ガウスビームの半径であってもよい。よって、長さLが約8mmのダイヤモンド結晶を用いた場合には、ダイヤモンド結晶の結晶中心から4mmだけ離れた、ダイヤモンド結晶の入射面におけるビームの直径は、約204μmになり得る。回折効果が生じないようにするためには、ダイヤモンド結晶の厚さTは、ビームの直径の2倍程度にし得る。よって、ダイヤモンド結晶の厚さTは、約0.41mm以上にし得る。以上により、ダイヤモンド結晶66の長さLが約8mmである場合には、厚さTは0.41mm以上2mm以下にし得る。
【0114】
(3.4.5 第5の変形例)
増幅器2は、様々な構成をとり得る。以下に、いくつか例を挙げて、本変形例について説明する。
【0115】
図11は、本変形例に係る増幅器2Fの一構成例を概略的に表す。増幅器2Fは、増幅器制御部70と、充電器71と、トリガ補正器72と、スイッチ73を含むパルスパワーモジュール(PPM)74と、チャンバ75と、凹面ミラー76と、凸面ミラー77とを含んでもよい。チャンバ75には、ウインドウ79a,79bが設けられてもよい。チャンバ75の中には、例えば、Arガス、Fガス、およびNeガスを含むレーザガスが入っていてもよい。チャンバ75の中には1対の放電電極78が配置されてもよい。1対の放電電極78は、パルスパワーモジュール74の出力端子に接続されてもよい。凹面ミラー76および凸面ミラー77は、凹面ミラー76の焦点位置76aと、凸面ミラー77の焦点位置77aとが略一致するように構成されてもよい。
【0116】
増幅器2Fは、パルスレーザ光LLの入射に同期して、1対の放電電極78により放電させ、反転分布を作り得る。ここで、トリガ補正器72は、固体レーザシステム10からの波長約193.4nmのパルスレーザ光LLが増幅器2Fで効率よく増幅されるように、パルスパワーモジュール74のスイッチ73のタイミングを調整してもよい。増幅器2Fでは、パルスレーザ光LLは、凸面ミラー77および凹面ミラー76で反射することにより、1対の放電電極78間の放電空間を3回通過し得る。これにより、パルスレーザ光LLのビームが拡大され増幅され得る。以上のようにして、固体レーザシステム10から出射された波長約193.4nmのパルスレーザ光LLが増幅器2Fにより増幅され、露光装置4に向けて出射され得る。
【0117】
図12は、本変形例に係る増幅器2Gの一構成例を概略的に表す。増幅器2Gは、チャンバ87と、出力結合ミラー83と、高反射ミラー84〜86とを含んでもよい。また、増幅器2Gは、図示していないが、図11に示した増幅器2Fと同様に、増幅器制御部70と、充電器71と、トリガ補正器72と、スイッチ73を含むパルスパワーモジュール74とを含んでもよい。さらに、増幅器2Gは、パルスレーザ光LLを固体レーザシステムから増幅器2Gに導く高反射ミラーを含んでもよいし、増幅器2Gから出射したパルスレーザ光を露光装置4に導く高反射ミラーを含んでもよい。
【0118】
チャンバ87には、ウインドウ89a,89bが設けられてもよい。チャンバ87の中には1対の放電電極88が配置されてもよい。1対の放電電極88は、この図12において、奥行方向に対向して配置されてもよい。出力結合ミラー83および高反射ミラー84〜86は、光共振器を構成してもよい。この増幅器2Gでは、パルスレーザ光が、出力結合ミラー83、高反射ミラー84、1対の放電電極88間の放電空間、高反射ミラー85、高反射ミラー86、1対の放電電極88間の放電空間の順に繰り返し進行し、増幅され得る。
【0119】
[4.第2の実施形態]
次に、本開示の第2の実施形態に係る固体レーザシステムについて説明する。固体レーザシステム110は、半導体光増幅器21から出射された波長約1040nmのパルスレーザ光と、半導体光増幅器41から出射された波長約1077nmのパルスレーザ光とを、単一のYbファイバ増幅器システムにより増幅するように構成されてもよい。なお、以下では、上記第1の実施形態に係る固体レーザシステム10の構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0120】
(4.1 構成)
図13は、固体レーザシステム110の一構成例を概略的に表す。固体レーザシステム110は、固体レーザ装置120を含んでもよい。固体レーザ装置120は、ダイクロイックミラー121,123と、Ybファイバ増幅器システム122と、高反射ミラー124とを含んでもよい。
【0121】
ダイクロイックミラー121は、波長約1040nmのパルスレーザ光を高透過する基板上に、波長約1040nmのパルスレーザ光を高透過し、波長約1077nmのパルスレーザ光を高反射する膜がコートされた光学素子であってもよい。ダイクロイックミラー121は、半導体光増幅器21,41から出射された2つのパルスレーザ光を、互いの光路軸を略一致させた状態でYbファイバ増幅器システム122に入射させるように配置されてもよい。
【0122】
Ybファイバ増幅器システム122は、図3に示したYbファイバ増幅器システム42と同様の構成を有してもよい。このYbファイバ増幅器システム122は、波長約1040nmと波長約1077nmの両方の波長域において利得があってもよい。
【0123】
ダイクロイックミラー123は、Ybファイバ増幅器システム122とYb:固体増幅器11との間の光路上に配置されてもよい。ダイクロイックミラー123は、波長約1040nmのパルスレーザ光を高透過する基板上に、波長約1040nmのパルスレーザ光を高透過し、波長約1077nmのパルスレーザ光を高反射する膜がコートされた光学素子であってもよい。
【0124】
高反射ミラー124は、ダイクロイックミラー123により高反射された波長約1077nmのパルスレーザ光を高反射し、高反射されたパルスレーザ光をYb:固体増幅器31に入射させるように配置されてもよい。
【0125】
ここで、Ybファイバ増幅器システム122は、本開示の第1の固体レーザシステムおよび第1のエキシマレーザシステムにおける「ファイバ増幅器システム」の一具体例に対応してもよい。ダイクロイックミラー123および高反射ミラー124は、本開示における「光学素子」の一具体例に対応してもよい。
【0126】
(4.2 動作)
半導体光増幅器21から出射された波長約1040nmのパルスレーザ光は、ダイクロイックミラー121を高透過し、Ybファイバ増幅器システム122に入射され得る。半導体光増幅器41から出射された波長約1077nmのパルスレーザ光は、ダイクロイックミラー121により高反射され、Ybファイバ増幅器システム122に入射され得る。これらの波長約1040nmおよび波長約1077nmの2つのパルスレーザ光は、Ybファイバ増幅器システム122により増幅され得る。Ybファイバ増幅器システム122から出射された2つのパルスレーザ光のうち、波長約1040nmのパルスレーザ光は、ダイクロイックミラー123を介してYb:固体増幅器11に入射され得る。また、Ybファイバ増幅器システム122から出射された2つのパルスレーザ光のうち、波長約1077nmのパルスレーザ光は、ダイクロイックミラー123および高反射ミラー124を介してYb:固体増幅器31に入射され得る。
【0127】
(4.3 作用)
本実施形態の固体レーザシステムによれば、単一のYbファイバ増幅器システム122により、波長約1040nmおよび波長約1077nmのパルスレーザ光をそれぞれ増幅したので、固体レーザシステムの構成をコンパクトにし得る。
【0128】
(4.4 変形例)
(4.4.1 第1の変形例)
固体レーザシステム110では、ダイクロイックミラー121を用いて波長約1040nmおよび波長約1077nmの2つのパルスレーザ光を結合し得たが、これに限定されない。これに代えて、例えば、プリズム、グレーティング、エタロン等の波長分散素子を用いて2つのパルスレーザ光を結合してもよい。また、例えば、図14,15に示した固体レーザシステム110A,110Bのように、WDM光カプラを用いて2つの光を結合してもよい。
【0129】
図14は、固体レーザシステム110Aの一構成例を概略的に表す。この図14は、半導体レーザ20,40からYbファイバ増幅器システム122への光路を示していてもよい。固体レーザシステム110Aは、WDM光カプラ121Aと、アイソレータ125とを含んでもよい。WDM光カプラ121Aは、半導体光増幅器21に接続された光ファイバと、半導体光増幅器41に接続された光ファイバとを結合してもよい。アイソレータ125は、例えば戻り光の通過を抑制するためのファラデーアイソレータであってもよい。なお、この例ではアイソレータ125を設けたが、これを省いてもよい。これにより、半導体光増幅器21から出射された波長約1040nmのパルスレーザ光と、半導体光増幅器41から出射された波長約1077nmのパルスレーザ光とが、WDM光カプラ121Aにより結合され得る。そして、これらの2つのパルスレーザ光は、アイソレータ125を介してYbファイバ増幅器システム122に入射され得る。
【0130】
図15は、固体レーザシステム110Bの一構成例を概略的に表す。固体レーザシステム110Bは、WDM光カプラ121Bと、半導体光増幅器126と、同期回路部141と、アイソレータ125とを含んでもよい。WDM光カプラ121Bは、半導体レーザ20に接続された光ファイバと、半導体レーザ40に接続された光ファイバとを結合してもよい。半導体光増幅器126は、シード光S1,S2を所定のパルス幅のパルスレーザ光に変換し増幅する半導体素子であってもよい。同期回路部141は、トリガ信号Tr1に基づいて、半導体光増幅器126に所定のトリガ信号を出力するように構成されてもよい。これにより、半導体レーザ20から出射された波長約1040nmのシード光S1と、半導体レーザ40から出射された波長約1077nmのシード光S2とが、WDM光カプラ121Bにより結合され得る。そして、これらの2つのシード光S1,S2は、半導体光増幅器126により所定のパルス幅のパルスレーザ光に変換されて増幅され、アイソレータ125を介してYbファイバ増幅器システム122に入射され得る。その際、図13において、ダイクロイックミラー123、Yb:固体増幅器11、LBO結晶12、CLBO結晶13、およびダイクロイックミラー36を経由する光路での光路長L1は、ダイクロイックミラー123、高反射ミラー124、Yb:固体増幅器31、ダイヤモンドラマンレーザ装置32、高反射ミラー35、およびダイクロイックミラー36を経由する光路での光路長L2と略等しくしてもよい。これにより、2つのパルスレーザ光LH,LSが、略同時に波長変換システム37に入射され得る。
【0131】
(4.4.2 第2の変形例)
固体レーザシステム110では、ダイクロイックミラー123を用いて波長約1040nmおよび波長約1077nmの2つのパルスレーザ光を分岐し得たが、これに限定されない。これに代えて、例えば、プリズム、グレーティング、エタロン等の波長分散素子を用いて2つのパルスレーザ光を分岐してもよい。
【0132】
[5.第3の実施形態]
次に、本開示の第3の実施形態に係る固体レーザシステムについて説明する。この固体レーザシステム130は、半導体光増幅器21から出射された波長約1040nmのパルスレーザ光と、半導体光増幅器41から出射された波長約1077nmのパルスレーザ光とを、単一のYbファイバ増幅器システムおよび単一のYb:固体増幅器により増幅するように構成されてもよい。なお、以下では、上記第2の実施形態に係る固体レーザシステム110の構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0133】
(5.1 構成)
図16は、固体レーザシステム130の一構成例を概略的に表す。固体レーザシステム130は、固体レーザ装置140と、Yb:固体増幅器131と、ダイクロイックミラー132と、高反射ミラー133とを含んでもよい。
【0134】
固体レーザ装置140は、第2の実施形態に係る固体レーザ装置120から、ダイクロイックミラー123および高反射ミラー124を省いたレーザ装置であってもよい。
【0135】
Yb:固体増幅器131は、Ybファイバ増幅器システム122の下流に配置されてもよい。Yb:固体増幅器131の固体増幅部材は、図10に示した材料群Aに属する1つ以上の材料を含んで構成されてもよい。
【0136】
ダイクロイックミラー132は、Yb:固体増幅器131とLBO結晶12との間の光路上に配置されてもよい。ダイクロイックミラー132は、波長約1040nmのパルスレーザ光を高透過する基板上に、波長約1040nmのパルスレーザ光を高透過し、波長約1077nmのパルスレーザ光を高反射する膜がコートされた光学素子であってもよい。
【0137】
高反射ミラー133は、ダイクロイックミラー132により高反射された波長約1077nmのパルスレーザ光を高反射し、高反射されたパルスレーザ光をダイヤモンドラマンレーザ装置32に入射させるように配置されてもよい。
【0138】
ここで、Yb:固体増幅器131は、本開示の第2の固体レーザシステムおよび第2のエキシマレーザシステムにおける「固体増幅器」の一具体例に対応してもよい。ダイクロイックミラー132および高反射ミラー133は、本開示における「光学素子」の一具体例に対応してもよい。
【0139】
(5.2 動作)
波長約1040nmおよび波長約1077nmの2つのパルスレーザ光は、Ybファイバ増幅器システム122により増幅され、さらにYb:固体増幅器131により増幅され得る。Yb:固体増幅器131から出射された2つのパルスレーザ光のうち、波長約1040nmのパルスレーザ光は、ダイクロイックミラー132を介してLBO結晶12に入射され得る。また、Yb:固体増幅器131から出射された2つのパルスレーザ光のうち、波長約1077nmのパルスレーザ光は、ダイクロイックミラー132および高反射ミラー133を介してダイヤモンドラマンレーザ装置32に入射され得る。
【0140】
(5.3 作用)
本実施形態の固体レーザシステムによれば、単一のYb:固体増幅器131により、波長約1040nmおよび波長約1077nmのパルスレーザ光をそれぞれ増幅したので、固体レーザシステムの構成をコンパクトにし得る。
【0141】
[6.制御部のハードウエア環境]
当業者は、汎用コンピュータ又はプログラマブルコントローラにプログラムモジュール又はソフトウエアアプリケーションを組み合わせて、ここに述べられる主題が実行されることを理解するだろう。一般的に、プログラムモジュールは、本開示に記載されるプロセスを実行できるルーチン、プログラム、コンポーネント、データストラクチャーなどを含む。
【0142】
図17は、開示される主題の様々な側面が実行され得る例示的なハードウエア環境を示すブロック図である。図15の例示的なハードウエア環境100は、処理ユニット1000と、ストレージユニット1005と、ユーザインターフェイス1010と、パラレルI/Oコントローラ1020と、シリアルI/Oコントローラ1030と、A/D、D/Aコンバータ1040とを含んでもよいが、ハードウエア環境100の構成は、これに限定されない。
【0143】
処理ユニット1000は、中央処理ユニット(CPU)1001と、メモリ1002と、タイマ1003と、画像処理ユニット(GPU)1004とを含んでもよい。メモリ1002は、ランダムアクセスメモリ(RAM)とリードオンリーメモリ(ROM)とを含んでもよい。CPU1001は、市販のプロセッサのいずれでもよい。デュアルマイクロプロセッサや他のマルチプロセッサアーキテクチャが、CPU1001として使用されてもよい。
【0144】
図17におけるこれらの構成物は、本開示において記載されるプロセスを実行するために、相互に接続されていてもよい。
【0145】
動作において、処理ユニット1000は、ストレージユニット1005に保存されたプログラムを読み込んで、実行してもよい。また、処理ユニット1000は、ストレージユニット1005からプログラムと一緒にデータを読み込んでもよい。また、処理ユニット1000は、ストレージユニット1005にデータを書き込んでもよい。CPU1001は、ストレージユニット1005から読み込んだプログラムを実行してもよい。メモリ1002は、CPU1001によって実行されるプログラム及びCPU1001の動作に使用されるデータを、一時的に保管する作業領域であってもよい。タイマ1003は、時間間隔を計測して、プログラムの実行に従ってCPU1001に計測結果を出力してもよい。GPU1004は、ストレージユニット1005から読み込まれるプログラムに従って、画像データを処理し、処理結果をCPU1001に出力してもよい。
【0146】
パラレルI/Oコントローラ1020は、レーザ制御部3、同期制御部6、同期回路部14、増幅器制御部70、および充電器71等の、処理ユニット1000と通信可能なパラレルI/Oデバイスに接続されてもよく、処理ユニット1000とそれらパラレルI/Oデバイスとの間の通信を制御してもよい。シリアルI/Oコントローラ1030は、レーザ制御部3、露光装置制御部5、同期制御部6、および同期回路部14等の、処理ユニット1000と通信可能な複数のシリアルI/Oデバイスに接続されてもよく、処理ユニット1000とそれら複数のシリアルI/Oデバイスとの間の通信を制御してもよい。A/D、D/Aコンバータ1040は、アナログポートを介して、各種センサや、半導体光増幅器21,41,126等のアナログデバイスに接続されてもよく、処理ユニット1000とそれらアナログデバイスとの間の通信を制御したり、通信内容のA/D、D/A変換を行ってもよい。
【0147】
ユーザインターフェイス1010は、操作者が処理ユニット1000にプログラムの停止や、割込みルーチンの実行を指示できるように、処理ユニット1000によって実行されるプログラムの進捗を操作者に表示してもよい。
【0148】
例示的なハードウエア環境100は、本開示におけるレーザ制御部3等の構成に適用されてもよい。当業者は、それらのコントローラが分散コンピューティング環境、すなわち、通信ネットワークを介して繋がっている処理ユニットによってタスクが実行される環境において実現されてもよいことを理解するだろう。本開示において、レーザ制御部3等を統括制御する図示しない露光装置レーザ用制御部等は、イーサネット(登録商標)やインターネットといった通信ネットワークを介して互いに接続されてもよい。分散コンピューティング環境において、プログラムモジュールは、ローカル及びリモート両方のメモリストレージデバイスに保存されてもよい。
【0149】
[7.その他]
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0150】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17