(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との前記共重合体において、共重合組成比がモル比で95:5〜5:95である、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池電極用合剤。
前記エチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物は、アクリル酸アルカリ金属中和物またはメタアクリル酸アルカリ金属中和物である、請求項1から3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池電極用合剤。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池電極用合剤、この合剤を含む非水電解質二次電池用電極及び非水電解質二次電池について説明する。
【0014】
<非水電解質二次電池電極用合剤>
本実施形態の非水電解質二次電池電極用合剤は、電極用活物質、導電助剤、結着剤及び消泡剤を含有し、当該結着剤はビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体を含む。
【0015】
(結着剤)
本実施形態において結着剤として用いられるビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体は、例えば、ビニルエステルとエチレン性不飽和カルボン酸エステルを主体とする単量体を重合触媒の存在下で重合し、ビニルエステル/エチレン性不飽和カルボン酸エステル共重合体とし、該共重合体を、アルカリ金属を含むアルカリの存在下、水性有機溶媒と水の混合溶媒中でケン化することにより得られる。
【0016】
前記ビニルエステルとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられるが、ケン化反応が進行しやすい観点から酢酸ビニルが好ましい。これらのビニルエステルは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
前記エチレン性不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、iso−プロピルエステル、n−ブチルエステル、t−ブチルエステルなどが挙げられるが、ケン化反応が進行しやすい観点からアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルが好ましい。これらのエチレン性不飽和カルボン酸エステルは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
また、必要に応じて、ビニルエステル及びエチレン性不飽和カルボン酸エステルと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体や架橋剤を共重合することも可能である。
【0019】
本実施形態におけるケン化反応の一例として、酢酸ビニル/アクリル酸メチル共重合体が水酸化カリウム(KOH)により100%ケン化されたときのケン化反応を以下に示す。
【0021】
なお、上に示すように本実施形態に用いられるビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体は、ビニルエステルとエチレン性不飽和カルボン酸エステルをランダム共重合させて、モノマー由来のエステル部分をケン化させた物質であり、モノマー同士の結合はC−C共有結合である(以下、ビニルエステル/エチレン性不飽和カルボン酸エステル共重合体ケン化物と記載する場合がある。また、前記説明から明らかなように、ここでの「/」はランダム共重合していることを示す)。
【0022】
なお、特許文献11には、アルカリ陽イオンで置換されたポリアクリル酸とポリビニルアルコールとの架橋化合物が開示されているが、この架橋化合物は、ポリアクリル酸とポリビニルアルコールとがエステル結合によって架橋した構造を有している。従って、特許文献11に開示されているアルカリ陽イオンで置換されたポリアクリル酸とポリビニルアルコールとの袈橋化合物は、本実施形態に係るビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体とは全く異なる物質である。
【0023】
前記のビニルエステル/エチレン性不飽和カルボン酸エステル共重合体においては、ビニルエステルとエチレン性不飽和カルボン酸エステルのモル比は、95:5〜5:95が好ましく、95:5〜50:50がより好ましく、90:10〜55:45がさらに好ましく、85:15〜60:40がよりさらに好ましい。95:5〜5:95の範囲を逸脱するとケン化後得られる重合体は、結着剤としての保持力が不足するおそれがあるため好ましくない場合がある。
【0024】
したがって、得られるビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との前記共重合体において、共重合組成比はモル比で95:5〜5:95が好ましく、95:5〜50:50がより好ましく、90:10〜55:45がさらに好ましく、85:15〜60:40がよりさらに好ましい。
【0025】
エチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物としては、アクリル酸アルカリ金属中和物またはメタアクリル酸アルカリ金属中和物が好ましい。
【0026】
ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体の前駆体であるビニルエステル/エチレン性不飽和カルボン酸エステル共重合体は、粉末状で共重合体が得られる観点から、重合触媒を含み、分散剤を溶解させた水溶液中にビニルエステルおよびエチレン性不飽和カルボン酸エステルを主体とする単量体を懸濁させた状態で重合させて重合体粒子とする懸濁重合法により得られたものが好ましい。
【0027】
前記重合触媒としては、例えばベンゾイルパーオキシド、ラウリルパーオキシドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物が挙げられるが、とりわけラウリルパーオキシドが好ましい。
【0028】
重合触媒の添加量は、単量体の総質量に対して、0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜3質量%がより好ましく、0.1〜3質量%がさらに好ましい。0.01質量%未満では、重合反応が完結しない場合があり、5質量%を超えると得られるビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体の結着効果が十分でない場合がある。
【0029】
重合を行わせる際の前記分散剤は、使用する単量体の種類、量などにより適当な物質を選択すればよいが、具体的にはポリビニルアルコール(部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール)、ポリ(メタ)アクリル酸およびその塩、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性高分子、リン酸カルシウム、珪酸マグネシムなどの水不溶性無機化合物などが挙げられる。これらの分散剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0030】
分散剤の使用量は、使用する単量体の種類などにもよるが、単量体の総質量に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。
【0031】
さらに、前記分散剤の界面活性効果などを調整するため、アルカリ金属、アルカリ土類金属などの水溶性塩を添加することもできる。例えば塩化ナトリム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、無水硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、リン酸水素ニナトリウム、リン酸水素二力リウム、リン酸三ナトリウム及びリン酸三力リウムなどが挙げられ、これらの水溶性塩は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
水溶性塩の使用量は、使用する分散剤の種類、量などにもよるが、分散剤水溶液の質量に対して通常0.01〜10質量%である。
【0033】
単量体を重合させる温度は、重合触媒の10時間半減期温度に対して−20〜+20℃が好ましく、−10〜+10℃がより好ましい。10時間半減期温度に対して−20℃未満では、重合反応が完結しない場合があり、+20℃を超えると、得られるビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体の結着効果が十分でない場合がある。例えば、ラウリルパーオキシドの10時間半減期温度は約62℃である。
【0034】
単量体を重合させる時間は、使用する重合触媒の種類、量、重合温度などにもよるが、通常数時間〜数十時間である。
【0035】
重合反応終了後、共重合体は遠心分離、濾過などの方法により分離され、含水ケーキ状で得られる。得られた含水ケーキ状の共重合体はそのまま、もしくは必要に応じて乾燥し、ケン化反応に使用することができる。
【0036】
本明細書における重合体の数平均分子量は、溶媒としてDMFを、標準試料としてポリスチレンを用い、GFCカラム(例えばShodex社製OHpak)を備えた分子量測定装置で求めた値である。このような分子量測定装置としては、例えばウォーターズ社製2695、RI検出器2414が挙げられる。
【0037】
ケン化前の共重合体の数平均分子量は、10,000〜1,000,000が好ましく、50,000〜800,000がより好ましい。ケン化前の数平均分子量を10,000〜1,000,000の範囲内にすることで、結着剤としての結着力が向上する。従って、負極合剤が水系スラリーであっても、スラリーの厚塗りが容易になる。
【0038】
前記ケン化反応に使用するアルカリ金属を含むアルカリとしては、従来公知のものを使用することができるが、アルカリ金属水酸化物が好ましく、反応性が高いという観点より、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが特に好ましい。
【0039】
前記アルカリの量は、単量体のモル数に対して60〜140モル%が好ましく、80〜120モル%がより好ましい。60モル%より少ないアルカリ量ではケン化が不十分となる場合があり、140モル%を超えて使用してもそれ以上の効果が得られず経済的でない。
【0040】
前記ケン化反応には水性有機溶媒と水との混合溶媒を用いることが好ましい。当該水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどの低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、およびこれらの混合物などが挙げられるが、なかでも低級アルコール類が好ましく、優れた結着効果と機械的せん断に対して優れた耐性を有するビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体が得られることから、特にメタノール、エタノールが好ましい。
【0041】
前記水性有機溶媒と水の混合溶媒における水性有機溶媒:水の質量比は、3:7〜8:2が好ましく、3:7〜7:3がより好ましく、4:6〜6:4がさらに好ましい。3:7〜8:2の範囲を逸脱する場合、ケン化前の共重合体の溶媒親和性またはケン化後の共重合体の溶媒親和性が不足し、充分にケン化反応を進行させることができないおそれがある。水性有機溶媒が3:7の比率より少ない場合、結着剤としての結着力が低下するだけでなく、ケン化反応の際に著しく増粘するため工業的にビニルエステル/エチレン性不飽和カルボン酸エステル共重合体ケン化物を得ることが難しく、水性有機溶媒が8:2の比率より多い場合、得られるビニルエステル/エチレン性不飽和カルボン酸エステル共重合体ケン化物の水溶性が低下するので電極に使用すると、乾燥後の結着力が損なわれる場合がある。なお、含水ケーキ状の共重合体をそのままケン化反応に使用する場合、前記水性有機溶媒:水の質量比は、含水ケーキ状の共重合体中の水を含むものとする。
【0042】
ビニルエステル/エチレン性不飽和カルボン酸エステル共重合体をケン化させる温度は、単量体のモル比にもよるが、20〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。20℃より低い温度でケン化させた場合、ケン化反応が完結しないおそれがあり、60℃を超える温度の場合、反応系内が増粘し撹拌不能となる場合がある。
【0043】
ケン化反応の時間は、使用するアルカリの種類、量などにより異なるが、通常数時間程度で反応は終了する。
【0044】
ケン化反応が終了した時点で通常、ペーストないしスラリー状の共重合体ケン化物の分散体となる。遠心分離、濾過など従来公知の方法により固液分離し、メタノールなどの低級アルコールなどでよく洗浄して得られた含液共重合体ケン化物を乾燥することにより、球状単一粒子または球状粒子が凝集した凝集粒子として共重合体ケン化物、すなわちビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体を得ることができる。
【0045】
含液共重合体ケン化物を乾燥する条件は、特に限定されないが通常、常圧もしくは減圧下、30〜120℃の温度で乾燥することが好ましい。
【0046】
乾燥時間は、乾燥時の圧力、温度にもよるが通常数時間〜数十時間である。
【0047】
ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体の質量平均粒子径は、1〜200μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。1μm未満では結着効果が十分でなく、200μmを超えると水系増粘液が不均一になり結着効果が低下する場合がある。
【0048】
含液共重合体ケン化物を乾燥し、得られた共重合体ケン化物の質量平均粒子径が100μmを超える場合は、メカニカルミリング処理などの従来公知の粉砕方法にて粉砕することにより質量平均粒子径を10〜100μmに調整することができる。
【0049】
なお、本明細書において、重合体の質量平均粒子径値は、レーザ回折・散乱法により求められる体積平均粒子径値と同じである。つまり、当該方法で得られる体積平均粒子径値を質量平均粒子径値として用いる。
【0050】
メカニカルミリング処理とは、衝撃・引張り・摩擦・圧縮・せん断等の外力を得られた共重合体ケン化物に与える方法で、そのための装置としては、転動ミル、振動ミル、遊星ミル、揺動ミル、水平ミル、アトライターミル、ジェットミル、摺潰機、ホモジナイザー、フルイダイザー、ペイントシェイカー、ミキサー等などが挙げられる。例えば、遊星ミルは、共重合体ケン化物とボールとを共に容器に入れ、自転と公転をさせることによって生じる力学的エネルギーにより、共重合体ケン化物末を粉砕又は混合させるものである。この方法によれば、ナノオーダーまで粉砕されることが知られている。
【0051】
ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体であれば、結着力と結着持続性に優れる非水電解質二次電池負極用結着剤として機能し得る。理由としては、ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体は、集電体と負極活物質および活物質同士を強固に結着し、充放電の繰り返しに起因する負極活物質の体積変化によって集電体から負極合剤が剥離したり、負極活物質が脱落したりすることがないような結着持続性を有することで、負極活物質の容量を低下させることがないためであると考えられる。
【0052】
本実施形態の非水電解質二次電池電極用合剤には、結着剤として、さらに他の水系結着剤を加えてもよい。この場合他の水系結着剤の添加量は、ビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体と他の水系結着剤との合計質量に対して80質量%未満であることが好ましい。より好ましくは、70質量%未満である。すなわち、換言すれば、結着剤中におけるビニルアルコールとエチレン性不飽和カルボン酸アルカリ金属中和物との共重合体の含有割合は、20質量%以上100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、30質量%以上100質量%以下である。
【0053】
他の水系結着剤の材料としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸塩などのアクリル樹脂、アルギン酸ナトリウム、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド、ポリアミドイミド、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン酢酸共重合体(EVA)等の材料を一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0054】
上記の他の水系結着剤のうち、ポリアクリル酸ナトリウムに代表されるアクリル樹脂、アルギン酸ナトリウム、ポリイミドが好適に用いられ、アクリル樹脂が特に好適に用いられる。
【0055】
(消泡剤)
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤及び界面活性剤系消泡剤を好ましく用いることができる。これらの消泡剤は、それぞれ単独で、または2種以上を混合して使用できる。つまり、シリコーン系及び界面活性剤系消泡剤からなる群より選択される少なくとも1種を好ましく用いることができる。また、消泡剤の形状も特に限定されず、オイル型、コンパウンド型、エマルジョン型、粉末型など任意のものが使用できる。
【0056】
前記シリコーン系
消泡剤としては、側鎖修飾ポリジメチルシロキサン、両端修飾ポリジメチルシロキサン、一端修飾ポリジメチルシロキサン、および側鎖/両端修飾ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0057】
前記界面活性剤系消泡剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン第2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、水素化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミン酸化物、アセチレングリコール、エトキシル化アセチレングリコール、アセチレンアルコールなどの非イオン性界面活性剤:脂肪族アミン塩、脂肪族第四級アンモニウム塩、ベンズアルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などのカチオン性界面活性剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルフェートの塩、脂肪族酸石けん、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタメート、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホスクシネート、アルキルスルホアセテート、α−オレフィンスルホネート、N−アシル−メチルタウリン、スルホン化油、高級アルコールスルフェート塩、第二級高級アルコールスルフェート塩、アルキルエーテルスルフェート、第二級高級アルコールエトキシスルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルフェート、モノグリスルフェート、脂肪族酸アルキルオールアミドスルフェート塩、アルキルエーテルホスフェート塩およびアルキルホスフェート塩などのアニオン性界面活性剤:カルボキシベタインタイプ、スルホベタインタイプ、アミノカルボン酸塩およびイミダゾリウムベタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0058】
前記消泡剤は合成したものでもよく、市販の製品を使用してもよい。前記市販の製品は、ビックケミー・ジャパン株式会社(例えばBYK093、BYK012等)、信越化学工業株式会社(例えばKS506等)、東レ・ダウコーニング株式会社、サンノプコ株式会社、旭化成工業株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学株式会社などから入手したものでもよい。
【0059】
(正極活物質)
正極活物質としては、本技術分野で使用される正極活物質が使用できる。例えば、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4 )、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO
4)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO
4)、ピロリン酸鉄(Li
2FeP
2O
7)、コバルト酸リチウム複合酸化物(LiCoO
2)、スピネル型マンガン酸リチウム複合酸化物(LiMn
2O
4)、マンガン酸リチウム複合酸化物(LiMnO
2)、ニッケル酸リチウム複合酸化物(LiNiO
2)、ニオブ酸リチウム複合酸化物(LiNbO
2)、鉄酸リチウム複合酸化物(LiFeO
2)、マグネシウム酸リチウム複合酸化物(LiMgO
2)、カルシウム酸リチウム複合酸化物(LiCaO
2)、銅酸リチウム複合酸化物(LiCuO
2)、亜鉛酸リチウム複合酸化物(LiZnO
2)、モリブデン酸リチウム複合酸化物(LiMoO
2)、タンタル酸リチウム複合酸化物(LiTaO
2)、タングステン酸リチウム複合酸化物(LiWO
2)、リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム複合酸化物(LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2)、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物(LiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2)、Li過剰系ニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物(Li
xNi
ACo
nMn
cO
2固溶体)、酸化マンガンニッケル(LiNi
0.5Mn
1.5O4)、酸化マンガン(MnO
2)、バナジウム系酸化物、硫黄系酸化物、シリケート系酸化物、等が好適に使用される。これら正極活物質は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
(負極活物質)
負極活物質としては、リチウムイオン二次電池で通常用いられる材料を用いることができる。例えば、Li、Na、C(例えば黒鉛等)、Mg、Al、Si、P、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、W、Pb、Bi、これらの元素を用いた合金、酸化物、カルコゲン化物、ハロゲン化物等を挙げることができる。これら負極活物質は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
これらのなかでも、放電プラトーの領域が0〜1V(対リチウム電位)の範囲内に観測できる観点から、Li、C、Mg、Al、Si、Ti、Zn、Ge、Ag、Cu、In、Sn及びPbよりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の元素(単体又は合金)、あるいはこれらの元素を用いた合金又は酸化物が好ましい。さらにエネルギー密度の観点から、元素としては、Al、Si、Zn、Ge、Ag、Sn等が好ましく、合金としては、Si−Al、Al−Zn、Si−Mg、Al−Ge、Si−Ge、Si−Ag、Zn−Sn、Ge−Ag、Ge−Sn、Ge−Sb、Ag−Sn、Ag−Ge、Sn−Sb等の各組み合わせ等が好ましく、酸化物としては、SiO、SnO、SnO
2、CuO、Li
4Ti
5O
12等が好ましい。
【0062】
このうち、Si系材料(Siを含む材料)を用いることで、エネルギー密度だけでなく、高率放電特性を向上させることができるので、より好ましい。
【0063】
なお、これらのリチウムを可逆的に吸蔵・放出することが可能な材料は、2種以上使用しても何ら問題ない。
【0064】
(導電助剤)
導電助剤は、導電性を有していれば、特に限定されることはない。例えば、金属、炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどの粉末が例示でき、このうち、電子導電性とリチウムとの安定性の観点から、球状、繊維状、針状、塊状などの炭素粉末が好ましい。球状の炭素粉末としては、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、黒鉛、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ソフトカーボン、ハードカーボン、グラフェン、アモルファスカーボンなどが挙げられる。繊維状の炭素粉末としては、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(例えば、登録商標であるVGCFという名称の気相成長炭素繊維)、等が挙げられる。これらは一種単独で用いてもよいし、または二種以上を併用してもよい。
【0065】
炭素粉末の中でも、カーボンナノファイバー又はカーボンナノチューブを使用することが好ましく、カーボンナノファイバーである気相成長炭素繊維がより好ましい。カーボンナノファイバー又はカーボンナノチューブは、繊維状であることから、構造上、一個の炭素粉末に対して二個以上の活物質との接触が可能であり、電極内でより効率的な導電ネットワークを形成することができるため、電極の出力特性が向上し得る。
【0066】
(合剤の調製)
少なくとも活物質、導電助剤、結着剤、及び消泡剤を混合することにより、電極用合剤が得られる。これらの混合に際しては、さらに媒質を加えることが好ましい。媒質としては、例えば水又は公知の溶剤(有機溶剤)を用いることができる。例えば、活物質に、導電助剤、結着剤、消泡剤、水(媒質)を加えて混合し、ペースト状のスラリーである電極用合剤を得ることができる。この場合、結着剤は、あらかじめ水に溶かして用いてもよいし、活物質と結着剤の粉末をあらかじめ混合し、その後に水を加え混合してもよい。
【0067】
活物質の使用量についは、特に限定的ではないが、例えば、活物質、導電助剤および結着剤の合計質量に対して、50〜99.4質量%程度が好ましく、70〜99質量%程度がより好ましく、85〜98質量%程度がさらに好ましい。
【0068】
導電助剤の使用量については、特に限定的ではないが、例えば、活物質、導電助剤および結着剤の合計質量に対して、0.1〜20質量%程度が好ましく、0.5〜10質量%程度がより好ましく、2〜5質量%程度がさらに好ましい。導電助剤の使用量が0.1質量%未満であると、電極の導電性を十分に向上させることができないので好ましくない。導電助剤の使用量が20質量%を超えると、活物質の割合が相対的に減少するため電池の充放電時に高容量が得られにくいこと、活物質と比較して小さいため表面積が大きくなり使用する結着剤の量が増えること、また水を加えて混合する場合にはカーボンが水を弾くため均一分散することが難しいため活物質の凝集を招くこと、などの点で好ましくない。
【0069】
導電助剤として繊維状の炭素であるカーボンナノファイバー又はカーボンナノチューブを使用する場合、その使用量については、特に限定的ではないが、例えば、導電助剤全体の5〜100質量%が好ましく、30〜100質量%がより好ましい。カーボンナノファイバー又はカーボンナノチューブの使用量が5質量%未満では電極活物質と集電体の間に十分な導電経路が確保されず、特に高速充放電において十分な導電経路を形成することができない点から好ましくない。
【0070】
また、結着剤の使用量についても、特に限定的ではないが、例えば、活物質、導電助剤及び結着剤の合計質量に対して、0.5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、2質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上12質量%以下であることが更に好ましい。これは、結着剤が多すぎると活物質の割合が相対的に減少するため、電池の充放電時に高容量が得られにくく、逆に少なすぎると結着力が充分でないため、サイクル寿命特性が低下してしまう。
【0071】
消泡剤の使用量については、使用する消泡剤の種類などにもよるが、電極用活物質、導電助剤、結着剤及び消泡剤の合計質量に対し0.001質量%以上1質量%以下である。消泡剤の使用量が0.001質量%未満であれば、消泡効果が少なく泡が消えないため好ましくなく、消泡剤の使用量が1質量%を超えると、消泡効果はあるが、電極の結着強度の低下などから、電池動作に影響がでると考えられるため好ましくない。
【0072】
媒質を加えて混合する場合、使用する媒質の量については、特に限定的ではないが、例えば、活物質、導電助剤および結着剤の合計質量に対して、40〜900質量%程度が好ましい。特に媒質が水の場合、水の量が40質量%未満であると、作製したスラリーの粘度が高くなるため、活物質、導電助剤、結着剤がそれぞれ均一分散できなくなるため好ましくない。また、水の量が900質量%を超えると、水の割合が多すぎてカーボン系の導電助剤を用いる場合カーボンが水を弾くため、均一分散することが難しく、活物質の凝集を招く可能性が高くなるため好ましくない。
【0073】
なお、活物質が、炭素被覆が行われているような粉末である場合、或いは、カーボン系の導電助剤を用いる場合は、水系スラリーの合剤を作製する際、カーボンが水を弾くため、均一分散することが難しく、活物質の凝集を招く可能性が高くなる傾向ある。その場合は、スラリーに界面活性剤を添加することで、解決することができる。
【0074】
その際の界面活性剤はサポニンやリン脂質、ペプチド、オクチルグルコシド、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリ
オキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリ
オキシエチレンソルビタンモノオレエート、アルキルアリルポリオキシエチレンエーテル、ポリソルベート、デオキシコレート、トリトンなどが有効で、合剤全量に対して0.01〜0.1質量%程度を添加すればよい。
【0075】
その他、増粘剤、防腐剤などを任意の量、添加してもよい。
【0076】
<電極>
電極は、本技術分野で使用される手法を用いて作製することができる。例えば、上記の非水電解質二次電池電極用合剤を、集電体上に備えさせることにより、作製することができる。より具体的には、例えば当該電極用合剤を集電体上に塗布(及び必要に応じて乾燥)させることにより作製することができる。さらに、プレス機(例えばロールプレス機)により、合剤の塗膜を集電体に密着接合させてもよい。この場合、当該電極は、集電体上に当該合剤層(当該合剤を含む層)を備える、ということもできる。また、当該合剤層が塗膜である場合には、当該合剤塗膜を備える、ということもできる。
【0077】
なお、特に限定はされないが、当該合剤層における活物質量は、5〜20mg/cm
2程度が好ましい。また、当該合剤層の密度は、1〜3g/cm
3程度が好ましい。
【0078】
正極の集電体は、電子伝導性を有し、保持した正極材料に通電し得る材料であれば特に
限定されない。例えば、C、Ti、Cr、Mo、Ru、Rh、Ta、W、Os、Ir、Pt、Au、Al等の導電性物質、これら導電性物質の二種類以上を含有する合金( 例えば、ステンレス鋼)を使用し得る。電気伝導性が高く、電解液中の安定性と耐酸化性がよい観点から、集電体としてはC、Al、ステンレス鋼等が好ましく、さらに材料コストの観点からAlが好ましい。
【0079】
集電体の形状には、特に制約はないが、箔状基材、三次元基材などを用いることができ
る。なかでも、三次元基材(発泡メタル、メッシュ、織布、不織布、エキスパンド等)を用いると、集電体との密着性に欠けるようなバインダーであっても高い容量密度の電極が得られる。加えて、電池の高率充放電特性も良好になる。
【0080】
負極の集電体は、電子伝導性を有し、保持した負極材料に通電し得る材料であれば特に限定されない。例えば、C、Cu、Ni、Fe、V、Nb、Ti、Cr、Mo、Ru、Rh、Ta、W、Os、Ir、Pt、Au、AI等の導電性物質、これら導電性物質の二種類以上を含有する合金(例えば、ステンレス鋼)等を使用し得る。あるいは、FeにCuをめっきしたもの等であってもよい。電気伝導性が高く、電解液中の安定性と耐酸化性がよい観点から、集電体としては。Cu、Ni、ステンレス鋼等が好ましく、さらに材料コストの観点からCu、Niが好ましい。
【0081】
集電体の形状には、特に制約はないが、箔状基材、三次元基材などを用いることができる。なかでも、三次元基材(発泡メタル、メッシュ、織布、不織布、エキスバンド基材等)を用いると、集電体との密着性に欠けるような結着剤であっても高い容量密度の電極が得られる。加えて、電池の高率充放電特性も良好になる。
【0082】
<電池>
本実施形態の非水電解質二次電池用電極(正極及び/又は負極)を用い、非水電解質二次電池を製造することができる。この非水電解質二次電池用電極(正極及び/又は負極)を備えた非水電解質二次電池も、本発明に包含される(すなわち、本発明の一実施形態である)。
【0083】
本実施形態の非水電解質二次電池のなかでもリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを含有する必要があることから、電解質塩としてはリチウム塩が好ましい。このリチウム塩としては特に制限されないが、具体例としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウムなどを挙げることができる。これらのリチウム塩は、1種単独又は2種以上混合して用いることができる。上記のリチウム塩は、電気的陰性度が高くイオン化しやすいことから、充放電サイクル特性に優れ、二次電池の充放電容量を向上させることができる。
【0084】
上記電解質の溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等を用いることができ、これらの溶媒を一種単独又は2種以上混合して用いることができる。特に、プロピレンカーボネート単体、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物、又はγ−ブチロラクトン単体が好適である。なお、上記エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物の混合比は、一方の成分が10体積%以上90体積%以下となる範囲で任意に調整することができる。
【0085】
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池の電解質は、固体電解質やイオン性液体であっても構わない。
【0086】
上述の構造のリチウムイオン二次電池によれば、寿命特性に優れるリチウムイオン二次電池として機能することができる。
【0087】
リチウムイオン二次電池の構造としては、特に限定されないが、積層式電池、捲回式電池などの既存の電池形態・構造に適用できる。
【0088】
<電気機器>
本実施形態の非水電解質二次電池(特に、本実施形態の負極を具備した非水電解質二次電池)は、寿命特性に優れており、様々な電気機器(電気を使用する乗り物を含む)の電源として利用することができる。
【0089】
電気機器としては、例えば、ポータブルテレビ、ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、パソコンキーボード、パソコン用ディスプレイ、デスクトップ型パソコン、CRTモニター、パソコンラック、プリンター、一体型パソコン、ウェアラブルコンピュータ、ワープロ、マウス、ハードディスク、パソコン周辺機器、アイロン、冷房機器、冷蔵庫、温風ヒーター、ホットカーペット、衣類乾燥機、布団乾燥機、加湿器、除湿器、ウインドウファン、送風機、換気扇、洗浄機能付便座、カーナビ、懐中電灯、照明器具、携帯カラオケ機、マイク、空気清浄機、血圧計、コーヒーミル、コーヒーメーカー、こたつ、携帯電話、ゲーム機、音楽レコーダー、音楽プレーヤー、ディスクチェンジャー、ラジオ、シェーバー、ジューサー、シュレッダー、浄水器、食器乾燥機、カーコンポ、ステレオ、スピーカー、ヘッドホン、トランシーバー、ズボンプレッサー、掃除機、体脂肪計、体重計、ヘルスメーター、ムービープレーヤー、電気釜、電気かみそり、電気スタンド、電気ポット、電子ゲーム機、携帯ゲーム機、電子辞書、電子手帳、電磁調理器、電卓、電動カート、電動車椅子、電動工具、電動歯ブラシ、あんか、散髪器具、電話機、時計、インターホン、電撃殺虫器、ホットプレート、トースター、ドライヤー、電動ドリル、給湯器、パネルヒーター、粉砕機、はんだごて、ビデオカメラ、ファクシミリ、フードプロセッサー、マッサージ機、豆電球、ミキサー、ミシン、もちつき機、リモコン、冷水器、冷風器、泡だて器、電子楽器、オートバイ、おもちゃ類、芝刈り機、うき、自転車、自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、鉄道、船、飛行機、非常用蓄電池などが挙げられる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により本実施形態を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0091】
<結着剤の作製>
(製造例1)ビニルエステル/エチレン性不飽和カルボン酸エステル共重合体の合成
撹拌機、温度計、N
2ガス導入管、還流冷却機および滴下ロートを備えた容量2Lの反応槽に、水768g、無水硫酸ナトリウム12gを仕込み、N2ガスを吹き込んで系内を脱酸素した。続いて部分ケン化ポリビニルアルコール(ケン化度88%)1g、ラウリルパーオキシド1gを仕込み内温60℃まで昇温した後、アクリル酸メチル104g(1.209mol)および酢酸ビニル155g(1.802mol)の単量体を滴下ロートにより4時間かけて適下した後、内温65℃で2時間保持し反応を完結させた(用いたアクリル酸メチルと酢酸ビニルのモル比は約6:4)。その後、固形分を濾別することにより酢酸ビニル/アクリル酸メチル共重合体288g(10.4%含水)を得た。得られた重合体をDMFに溶解させた後メンブレンフィルター(ADVANTEC社製:孔径0.45μm)にてろ過を実施、GFCカラム(Shodex社製OHpak)を備えた分子量測定装置(ウォーターズ社製2695、RI検出器2414)により求めた数平均分子量は18.8万であった。
【0092】
(製造例2)ビニルエステル/エチレン性不飽和カルボン酸エステル共重合体ケン化物の合成
上記同様の反応槽に、メタノール450g、水420g、水酸化ナトリウム132g(3.3mol)および製造例1で得られた含水共重合体288g(10.4%含水)を仕込み、撹拌下で30℃、3時間ケン化反応を行った。ケン化反応終了後、得られた共重合体ケン化物をメタノールで洗浄、濾過し、70℃で6時間乾燥させ、酢酸ビニル/アクリル酸メチル共重合体ケン化物(ビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体)193gを得た。酢酸ビニル/アクリル酸メチル共重合体ケン化物(ビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体)の質量平均粒子径は180μmであった。なお、当該平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SALD−7100)により測定し、得られた体積平均粒子径を質量平均粒子径に読み替えた値である。
【0093】
(製造例3)ビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体の粉砕
上記ビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体193gを、ジェットミル(日本ニューマチックエ業株式会社製LJ)により粉砕し、微粉末状のビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体173gを得た。得られた共重合体の粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SALD−7100)により測定し、得られた体積平均粒子径を質量平均粒子径に読み替えた。質量平均粒子径は39μmであった。得られた共重合体の1質量%水溶液の粘度は1,630mPa・s、ビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムの共重合組成比はモル比で約6:4であった。
【0094】
<消泡効果試験>
(試験例1)
製造例3で得られたビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体1.0質量部、水20質量部、シリコーン系消泡剤(BYK093:ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.03質量部を混合して結着剤溶液を調製した。
【0095】
(試験例2)
試験例1においてシリコーン系消泡剤(BYK093:ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.03質量部に代えて、シリコーン系消泡剤(KS506:信越化学工業株式会社製)0.225質量部を用いた以外は、試験例1と同様な操作にて結着剤溶液を作製した。
【0096】
(試験例3)
試験例1においてシリコーン系消泡剤(BYK093:ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.03質量部に代えて、界面活性剤系消泡剤(BYK012:ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.001質量部を用いた以外は、試験例1と同様な操作にて結着剤溶液を作製した。
【0097】
(試験例4)
試験例1において消泡剤を添加しない以外は、試験例1と同様な操作にて結着剤溶液を作製した。
【0098】
(1)結着剤溶液のあわ立ち試験
50mlのメスシリンダーに、試験例1〜4で作製した結着剤溶液を20ml入れ、窒素ガス(100ml/min)を吹き込み管より10min吹き込み、5min後の泡の体積を測定した。
【0099】
評価結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
当該結着剤溶液泡立ち試験より、消泡剤を入れた結着剤溶液にて、消泡効果が確認できた。またシリコーン系、及び界面活性剤系の消泡剤に消泡効果が有ることがわかった。
【0102】
<電極作製>
(実施例1)
正極用合剤の調製
正極活物質としてLiFePO
4(住友大阪セメント株式会社製)94質量部、結着剤として製造例3で得られたビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体4.0質量部、導電助剤としてカーボンナノチューブ(VGCF:昭和電工株式会社製)1.0質量部及びケッチェンブラック(ECP−300JD:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)1.0質量部、水120質量部、及びシリコーン系消泡剤(BYK093:ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.12質量部を混合してスラリー状の正極用合剤を調製した。
【0103】
試験用正極の作製
厚さ20μmのアルミニウム箔上に前記合剤を塗布・乾燥後、ロールプレス機(大野ロール株式会社製)により、アルミニウム箔と塗膜とを密着接合させ、次に、加熱処理(減圧下、140℃ 、12時間)して、試験用正極を作製した。作製した電極における正極活物質の塗布量は、17.5mg/cm
2、塗膜の密度は、1.8g/cm
3であった。なお、活物質の塗布量は単位塗布面積あたりの塗布重量における活物質含有割合から算出し、塗膜の密度は{塗布重量/(塗布面積×塗膜厚み)}により算出した。以下も同様である。
【0104】
(実施例2)
実施例1においてシリコーン系消泡剤(BYK093:ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.12質量部に代えてシリコーン系消泡剤(KS506:信越化学工業株式会社製)0.90質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして試験用正極を作製、評価した。
【0105】
(実施例3)
実施例1においてシリコーン系消泡剤(BYK093:ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.12質量部に代えて界面活性剤系消泡剤(BYK012:ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.0050質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして試験用正極を作製、評価した。
【0106】
(比較例1)
実施例1においてシリコーン系消泡剤(BYK093:ビックケミー・ジャパン株式会社製)の使用量を2.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして試験用正極を作製、評価した。
【0107】
(比較例2)
実施例1において消泡剤を添加しないで正極用合剤を調製後、遠心脱泡を行なった以外は、実施例1と同様にして試験用正極を作製、評価した。
【0108】
(実施例4)
負極用合剤の調製
負極活物質として人造黒鉛(MAG−D:日立化成工業株式会社製)97.5質量部、結着剤として製造例3で得られたビニルアルコールとアクリル酸ナトリウムとの共重合体2質量部、導電助剤としてアセチレンブラック(AB:デンカ株式会社製)0.50質量部、水82質量部、シリコーン系消泡剤(BYK093:ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.12質量部を混合してスラリー状の負極用合剤を調製した。
【0109】
試験用負極の作製
厚さ10μmの銅箔上に前記合剤を塗布・乾燥後、ロールプレス機(大野ロール株式会社製)により、銅箔と塗膜とを密着接合させ、次に、加熱処理(減圧下、140℃、12時間)して、試験用負極を作製した。なお、作製した電極における負極活物質の塗布量は、8.0mg/cm
2、密度は、1.5g/cm
3であった。
【0110】
(比較例3)
実施例4においてシリコーン系消泡剤(BYK093:ビックケミー・ジャパン株式会社製)の使用量を2.0質量部に変更した以外は、実施例4と同様にして試験用負極を作製、評価した。
【0111】
(比較例4)
実施例4において消泡剤を添加しないで負極用合剤を調製後、遠心脱泡を行なった以外は、実施例4と同様にして試験用負極を作製、評価した。
【0112】
以上の実施例1から実施例4、比較例1から比較例4に係る正極及び負極を表2にまとめて示す。
【0113】
【表2】
【0114】
<電池の作製>
(実施例5)
実施例1で得られた試験正極と、実施例4で得られた試験負極とを用い、セパレータとしてガラスフィルター(GA−100:アドバンテック社製)、電解液としてエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比1:1で混合した溶媒にLiPF6を1mol/Lの濃度で溶解し、電解液用添加剤ビニレンカーボネート(VC)を1質量%添加した溶液を具備したコインセル(CR2032)を作製した。
【0115】
(実施例6)
実施例5において、試験正極を比較例2で得られた正極に変更した以外は、実施例5と同様にしてコインセルを作製した。
【0116】
(実施例7)
実施例5において、試験負極を比較例4で得られた負極に変更した以外は、実施例5と同様にしてコインセルを作製した。
【0117】
(実施例8)
実施例7において試験正極を実施例2で得られた正極に変更した以外は、実施例7と同様にしてコインセルを作製した。
【0118】
(実施例9)
実施例7において試験正極を実施例3で得られた正極に変更した以外は、実施例7と同様にしてコインセルを作製した。
【0119】
(比較例5)
実施例5において試験正極を比較例1で得られた正極に変更し、試験負極を比較例3で得られた負極に変更した以外は、実施例5と同様にしてコインセルを作製した。
【0120】
(比較例6)
実施例5において試験正極を比較例2で得られた正極に変更し、試験負極を比較例4で得られた負極に変更した以外は、実施例5と同様にしてコインセルを作製した。
【0121】
作製した電極の組み合わせを以下の表3にまとめて示す。
【0122】
【表3】
【0123】
(2)サイクル試験
実施例5から実施例9、及び比較例5、比較例6で作製したコインセルについて、30℃の環境下で0.1Cで10サイクルのエージング処理を行った。
【0124】
その後、それぞれ30℃ 環境下でサイクル試験を行った。サイクル試験は、充電と放電の間に1分の休止時間を入れ、0.5C−0.5Cで充電−放電、との条件で行った。なお、カットオフ電位は、4.0−2.5Vに設定した。1サイクル後の放電容量を100%として、以下の式を用いて、100、500、1000サイクル時の容量維持率を算出した。
【0125】
容量維持率(%)=(各サイクル時の放電容量×100)/1サイクル時の放電容量
【0126】
評価結果を以下の表4にまとめて示す。
【0127】
【表4】
【0128】
サイクル試験の結果から、消泡剤を適量添加した実施例5から実施例9の電池は、消泡剤を添加していない比較例6の電池と比較し容量維持率は同等以上であり、消泡剤を適量添加した場合、電池動作への影響はないと考えられる。また、限定的な解釈を望むものではないが、消泡剤の添加により若干サイクル劣化を抑えることができたのは、合剤スラリー中の泡がなくなったことにより、電極の均一性が高まり、良好な導電パスが形成され、長期サイクルでの劣化が抑えられたものと推測される。消泡剤添加量が多い比較例5に関しては、劣化が激しく、100サイクル以前に動作しなくなった。この理由としては、限定的な解釈を望むものではないが、消泡剤の添加量が多いために、活物質と集電箔の結着性が低下し、サイクル中に活物質等が集電体より剥がれ、ついには動作しなくなったものと推測される。
【0129】
また、正極及び負極の両方に本発明に包含される電極を具備した電池(実施例5の電池)は、遠心脱泡により脱泡して作製した電極を具備した電池(比較例6の電池)に比べ、用量維持率が著しく向上した。つまり、消泡剤を加えて脱泡して作製した電極は、消泡剤を加えずに脱泡して作製した電極よりも、電池の容量維持率の観点から電池作製に好適であることがわかった。