特許第6653886号(P6653886)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人北海道大学の特許一覧

特許6653886モード合分波器及びモード多重伝送システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653886
(24)【登録日】2020年1月31日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】モード合分波器及びモード多重伝送システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/125 20060101AFI20200217BHJP
   H04B 10/2581 20130101ALI20200217BHJP
【FI】
   G02B6/125 301
   H04B10/2581
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-171530(P2016-171530)
(22)【出願日】2016年9月2日
(65)【公開番号】特開2018-36582(P2018-36582A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2018年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰志
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆
(72)【発明者】
【氏名】辻川 恭三
(72)【発明者】
【氏名】中島 和秀
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 剛
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 晋聖
【審査官】 井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−257354(JP,A)
【文献】 特開2003−029064(JP,A)
【文献】 特開2013−068909(JP,A)
【文献】 特開2014−149469(JP,A)
【文献】 特開平05−313028(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0052200(US,A1)
【文献】 OHTA, Shun et al.,A Proposal of Mach-Zehnder Mode Multi/Demultiplexer for WDM/MDM Optical Transmission System,Conference on Laser and Electro-Optics Pacific Rim (CLEO-PR),IEEE,2017年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12 − 6/14
G02F 1/00 − 1/125
G02F 1/27 − 7/00
H04B 10/00 − 10/90
H04J 14/00 − 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長多重信号光を合分波するモード合分波器であって、
nを2以上の整数として、第1の導波路から第(n−1)の導波路と、
互いに異なる第1モードから第nモードが伝搬する第nの導波路と、
kを1以上(n−1)以下の整数として、それぞれ、第kの導波路と前記第nの導波路が近接して配置され、前記第kの導波路伝搬する波長多重信号光を前記第nの導波路の第(k+1)モードに結合させる第kの第1結合部及び第kの第2結合部と、
前記第kの第1結合部と前記第kの第2結合部の間に配置され、前記第kの導波路と前記第nの導波路の光路長に遅延差を生じさせる第kの遅延部と、
を備え
前記第kの遅延部の生じさせる前記遅延差は、当該モード合分波器の透過特性のピーク波長間隔を前記第kの導波路を伝搬する波長多重信号光の波長間隔に一致させる位相遅延差であるモード合分波器。
【請求項2】
前記第kの第1結合部及び前記第kの第2結合部において、それぞれ、前記第nの導波路に結合する前記第kの導波路の伝搬モードの光パワーの0.4〜0.6倍が前記第kの導波路から前記第nの導波路に結合する、
請求項1に記載のモード合分波器。
【請求項3】
前記波長多重信号の中心波長をλ、波長間隔をΔλ、位相遅延差をΔτとした場合に、前記波長間隔と前記位相遅延差がΔλ=2πλ/Δτの関係を満たす、
請求項1又は2に記載のモード合分波器。
【請求項4】
前記第kの第1結合部及び前記第kの第2結合部の少なくともいずれかにおいて、前記第kの導波路又は前記第nの導波路の導波路幅が、導波路の長手方向に対して変化している、
請求項1からのいずれかに記載のモード合分波器。
【請求項5】
前記第kの第1結合部及び前記第kの第2結合部の少なくともいずれかにおいて、前記第kの導波路の複数個所から前記第kの導波路伝搬する波長多重信号光が前記第nの導波路に結合している、
請求項1からのいずれかに記載のモード合分波器。
【請求項6】
nを2以上の整数として、第1の送信機から第nの送信機と、
請求項1からのいずれかに記載のモード合分波器からなり、kを1以上(n−1)以下の整数として、第kの送信機からの波長多重信号光が前記第kの導波路に入力され、第nの送信機からの波長多重信号光が前記第nの導波路の一端に入力され、前記送信機ごとにモードの異なるモード多重信号光を当該第nの導波路の他端から出力するモード合波器と、
前記モード合波器からのモード多重信号光を伝搬するマルチモードファイバと、
請求項1からのいずれかに記載のモード合分波器からなり、前記モード多重信号光が前記第nの導波路の一端に入力され、モードに応じて前記第kの導波路及び当該第nの導波路の他端のいずれかから波長多重信号光を出力するモード分波器と、
前記モード合波器の前記第kの導波路及び前記第nの導波路から出力された波長多重信号光をそれぞれ受信する第1の受信機から第nの受信機と、
を備えるモード多重伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モード合分波器及びこれを備えるモード多重伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信システムでは、光ファイバ中で発生する非線形効果やファイバヒューズが問題となり、伝送の大容量化が制限されている。これらの制限を緩和するためには、光ファイバに導波する光の密度を低減する必要があり、非特許文献1に示すように大コアファイバが検討されている。
【0003】
しかし、曲げ損失低減、単一モード動作領域の拡大、実効断面積の拡大は互いにトレードオフの関係にあり、所定の条件下における実効断面積の拡大量には限界があるという課題があった。そこで、伝送ファイバにマルチモードファイバを用い、伝搬する複数のモードを用いて並列伝送を行うモード多重伝送システムが、飛躍的な大容量化を実現する技術として検討されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
モード多重伝送システムにおいては、送信機から発せられる複数の信号を別々のモードとして光ファイバ中を伝搬させるため、モード合分波器が提案されている。(例えば非特許文献3、4参照)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T. Matsui, et al., “Applicability of Photonic Crystal Fiber With Uniform Air−Hole Structure to High−Speed and Wide−Band Transmission Over Conventional Telecommunication Bands,” J. Lightwave Technol. 27, 5410−5416, 2009.
【非特許文献2】N. Hanzawa et al., “Demonstration of mode−division multiplexing transmission over 10 km two−mode fiber with mode coupler,” OFC2011, paper OWA4 (2011)
【非特許文献3】N.Hanzawa et al.,“Asymmetric parallel waveguide with mode conversion for mode and wavelength division multiplexing transmission”、OFC2012、OTu1l.4.
【非特許文献4】N. Hanzawa et al, “Mode multi/demultiplexing with parallel waveguide for mode division multiplexed transmission,” Opt. Express vol.22, pp. 29321−29330 (2014)
【非特許文献5】T. Uematsu et al., “Low−loss and broadband PLC−type mode (de)multiplexer for mode−division multiplexing transmission,” OFC/NFOEC2013, paper OTh1B.5 (2013)
【非特許文献6】P. J. Winzer et al., “Penalties from In−Band Crosstalk for Advanced Optical Modulation Formats,” ECOC2011, paper Tu.5.B.7 (2011).
【非特許文献7】N. Hanzawa et al., “Four−mode PLC−based mode multi/demultiplexer with LP11mode rotator on one chip for MDM transmission,” ECOC2014, We.1.1.1
【非特許文献8】N. Hanzawa et al., “Demonstration of PLC−based six−mode multiplexer for mode division multiplexing transmission,” ECOC2015, P.2.5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献3、4に記載の通り、平行導波路におけるモード間の結合を利用したモード多重方式では、結合特性が波長に依存しており、モード合分波器において低損失に所望のモードに結合可能な動作波長は限られることが課題であった。
【0007】
現在の光通信システムが波長多重方式を用いていることを鑑みると、広い波長帯において低損失にモードを合分波できる性能が必要となり、特に一般的に用いられている通信波長帯であるC帯及びL帯において低損失にモードを合分波可能な特性を得ることが望まれる。
【0008】
そこで、本開示は、C帯〜L帯の広い波長域において、波長多重方式の光通信システムで用いられる各波長で所望のモードを低損失に合分波することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、マッハツェンダー干渉計をマルチモード導波路で構成し、各結合部にて所望のモードを略1:1の分岐比で結合させるとともに、透過特性の波長変動の周期を光通信で用いられる波長多重信号の波長間隔に一致させる。
【0010】
具体的には、本開示のモード合分波器は、
波長多重信号光を合分波するモード合分波器であって、
nを2以上の整数として、第1の導波路から第(n−1)の導波路と、
互いに異なる第1モードから第nモードが伝搬する第nの導波路と、
kを1以上(n−1)以下の整数として、それぞれ、第kの導波路と前記第nの導波路が近接して配置され、前記第kの導波路伝搬する波長多重信号光を前記第nの導波路の第(k+1)モードに結合させる第kの第1結合部及び第kの第2結合部と、
前記第kの第1結合部と前記第kの第2結合部の間に配置され、前記第kの導波路と前記第nの導波路の光路長に遅延差を生じさせる第kの遅延部と、
を備え
前記第kの遅延部の生じさせる前記遅延差は、当該モード合分波器の透過特性のピーク波長間隔を前記第kの導波路を伝搬する波長多重信号光の波長間隔に一致させる位相遅延差である
【0011】
また、本開示のモード合分波器では、前記第kの第1結合部及び前記第kの第2結合部において、それぞれ、前記第の導波路に結合する前記第の導波路の伝搬モードの光パワーの0.4〜0.6倍が前記第の導波路から前記第の導波路に結合してもよい。
【0013】
また、本開示のモード合分波器では、前記波長多重信号の中心波長をλ、波長間隔をΔλ、位相遅延差をΔτとした場合に、前記波長間隔と前記位相遅延差がΔλ=2πλ/Δτの関係を満たしてもよい。
【0014】
また、本開示のモード合分波器では、前記第kの第1結合部及び前記第kの第2結合部の少なくともいずれかにおいて、前記第の導波路又は前記第の導波路の導波路幅が、導波路の長手方向に対して変化してもよい。
【0015】
また、本開示のモード合分波器では、前記第kの第1結合部及び前記第kの第2結合部の少なくともいずれかにおいて、前記第kの導波路の複数個所から前記第kの導波路伝搬する波長多重信号光が前記第nの導波路に結合してもよい。
【0017】
具体的には、本開示のモード多重伝送システムは、
nを2以上の整数として、第1の送信機から第nの送信機と、
請求項1からのいずれかに記載のモード合分波器からなり、kを1以上(n−1)以下の整数として、第kの送信機からの波長多重信号光が前記第kの導波路に入力され、第nの送信機からの波長多重信号光が前記第nの導波路の一端に入力され、前記送信機ごとにモードの異なるモード多重信号光を当該第nの導波路の他端から出力するモード合波器と、
前記モード合波器からのモード多重信号光を伝搬するマルチモードファイバと、
請求項1からのいずれかに記載のモード合分波器からなり、前記モード多重信号光が前記第nの導波路の一端に入力され、モードに応じて前記第kの導波路及び当該第nの導波路の他端のいずれかから波長多重信号光を出力するモード分波器と、
前記モード合波器の前記第kの導波路及び前記第nの導波路から出力された波長多重信号光をそれぞれ受信する第1の受信機から第nの受信機と、
を備える。
【0018】
なお、上記各開示は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、C帯〜L帯の広い波長域において、波長多重方式の光通信システムで用いられる各波長で所望のモードを低損失に合分波することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】2モード合分波器の構成例である。
図2】実施形態1に係るモード合分波器の構成例である。
図3】実施形態1に係るモード合分波器の透過特性である。
図4】実施形態1に係るモード合分波器のクロストークの計算結果である。
図5】実施形態1に係るモード合分波器の挿入損失の計算結果である。
図6】実施形態1に係るモード合分波器の分岐比とクロストーク、挿入損失の計算結果である。
図7】実施形態1に係るモード合分波器の一例である。
図8】実施形態2に係るモード合分波器の一例である。
図9】実施形態2に係るモード合分波器の結合部の第1の構造例である。
図10】実施形態2に係るモード合分波器の結合部の第2の構造例である。
図11】実施形態2に係る結合部の構造パラメータの一例である。
図12】実施形態2に係る結合部の透過特性の計算結果である。
図13】実施形態2に係る結合部の構造例の別例である。
図14】実施形態2に係る結合部の構造例の別例である。
図15】実施形態2に係る結合部の構造例の別例である。
図16】実施形態2に係る結合部の構造例の別例である。
図17】実施形態2に係る結合部の構造パラメータの一例である。
図18】実施形態2に係る結合部の構造別の構造パラメータの一例である。
図19】実施形態2に係る結合部の透過特性の計算結果である。
図20】実施形態2に係るモード合分波器の透過特性の計算結果である。
図21】実施形態2に係るモード合分波器の構造パラメータの一例である。
図22】関連技術に係るモード合分波器の構造パラメータの一例である。
図23】実施形態2に係るモード合分波器の透過特性の計算結果である。
図24】実施形態2に係るモード合分波器の別形態である。
図25】実施形態3に係る光伝送システムの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0022】
(実施形態1)
本開示の第1の実施形態について説明する。図1は、関連技術の2モード合分波器の構成を示している。ここでは、Si系材料を用いた、矩形の埋め込み型導波路を用いた平面光波回路型のモード合分波器を想定している。
【0023】
導波路42は、2モードが伝搬する導波路であって、導波路41は、1モードが伝搬する導波路である。なお、ここでは、2モードは基本モードであるLP01モード及び第1高次モードLP11モードを示す。2つの導波路は、一部近接している領域(結合部)があり、その部分において、導波路42を伝搬するLP11モードの実効屈折率(neff)と導波路41を伝搬するLP01モードを伝搬する実効屈折率が一致するよう導波路幅及び比屈折率差が調整されている。これにより、導波路41を伝搬するLP01モードの伝搬光が導波路42のLP11モードに結合する。
【0024】
実効屈折率が一致することで、導波路41及び42が近接している領域でモード変換が発生し、導波路41を伝搬してきた光は導波路42に周期的にパワーが移行する。ここで、結合部の長さLを導波路42にパワーが完全に移行するよう調整すると、ポートP1より入射した信号光は、導波路42のLP11モードとしてポートP4へ出力される。一般に、異なるLPモード間で実効屈折率を一致させるためには、導波路の構造が同一でない非対称平行導波路構造が必要となる。
【0025】
一方で、ポートP2から入射された光は、基本モードとして導波路42を伝搬し、導波路42のLP01モードと導波路41のLP01モードの実効屈折率が一致していないことから、結合部にてモード変換が発生せず、LP01モードとしてポートP4へ出力される。結果、ポートP1及びP2に信号を入射することで、ポートP4において2モードが多重された信号を得ることができ、モード合波器としての機能を実現することができる。詳しい設計手法については、非特許文献3に開示されている。
【0026】
また、モード多重された光を、ポートP4から入射することで、ポートP1及びポートP2に信号をそれぞれ分離することができる。これにより、図1に開示されている同構造は、モード分波器として利用することができる。
【0027】
なお、本構造においては、モード合波器の入射側導波路に入力する光は、全ての導波路に対して基本モードでよく、また、分波器においては、分波された後の導波路では、出力端において基本モードとして伝搬するため、シングルモードファイバをベースとした送受信器と整合性・接続性が良く、良好な損失特性を得ることができる。
【0028】
結合部における結合効率は、波長に対して依存性があり、非特許文献3に記載の通り、例えば使用波長を1.45〜1.65μmとした場合、両端の波長領域では透過損失特性が劣化していることがわかる。そこで、結合部を2つ設置し、結合部間の結合が生じない遅延部において、適切な遅延差を導波路間で設けることで動作波長を拡大する手法が検討されている(例えば、非特許文献5参照。)。しかしながら、この手法を用いても波長依存性は存在し、波長によっては損失や、モード消光比(所望のモードへの結合量をそれ以外のモードへの結合量で割ったもの)の劣化を避けることはできない。
【0029】
図2に、本実施形態に係るモード合分波器の構成例を示す。本実施形態に係るモード合分波器は、第1の導波路及び第2の導波路として機能する導波路11、12と、第1の結合部及び第2の結合部として機能する結合部21、22と、遅延部23を備える。本実施形態に係るモード合分波器は、関連技術の構成と比較して複数の結合部21、22が存在し、結合部間に、並行する導波路11及び12間で伝搬遅延差を生じる遅延部23を有している。
【0030】
非特許文献5における構成との差は結合部21及び22におけるモード分岐比である。非特許文献5では、各結合部において伝搬するモードのパワーが一方の導波路に移行するよう結合部の導波路長(以降、結合長と呼ぶ)や導波路間隔が設定されている。一方で、本開示における結合部21及び22では、伝搬するモードの半分のパワーである3dBが他方の導波路に移るよう結合長や導波路間隔が設定されている。
【0031】
図3に本開示のモード合分波器の透過特性を示す。図2のような構成を採用することで、図3に示す透過特性の様に、単一モード導波路で用いられているマッハツェンダー干渉計と同様に透過特性が遅延部23の遅延差から求められる所定の間隔で変化する。なお、関連技術のマッハツェンダー干渉計は、全ての導波路が単一モード導波路で構成されたものであり、周期的な透過特性を有する波長フィルタとして用いられている。本開示は、複数のモードが伝搬する導波路で構成する点が、関連技術のマッハツェンダー干渉計と異なる。
【0032】
ここで、透過特性の隣接するピーク波長をλ1,λ2とすると、Δλ(λ2−λ1)は遅延部23の導波路長さΔLを調整することで任意に変化させることができる。一般的には、最初の結合部21において2つに分岐された光波が2つ目の結合部22において干渉する際、遅延部23において生ずる位相遅延差Δτは以下の関係がある。
(数1)
Δλ=2πλ/Δτ (1)
ここで、位相遅延差Δτは下記の式により求められる。
(数2)
Δτ=(ωt−β2121)―(ωt−β2222) (2)
但し、ωは角周波数、tは時間、β21およびL21はそれぞれ一方の結合部21の導波路12における伝搬定数および伝搬距離、β22およびL22はそれぞれ他方の結合部22の導波路12における伝搬定数および伝搬距離である。
【0033】
伝搬定数は各導波路の導波路幅、高さ・比屈折率差により異なる場合があり、伝搬距離差については非結合部の導波路差により求めることができるが、より詳細には結合部21及び22で生じる位相遅延差についても考慮してΔλの設計を行うことが好ましい。つまり、遅延部23を調整することで利用する波長多重信号の波長間隔と透過特性のピーク波長間隔を一致させることができ、広波長域にわたって損失やモード消光比の劣化なくモードを多重することができる。
【0034】
結合部21及び22における分岐比については、1:1(ここでは、これを分岐比0.5と定義する)の時に特性が最もよくなるが、厳密に1:1に光パワーを分岐する必要はない。図4及び図5に計算結果を示す。計算で用いた構造パラメータは、w=0.4μm、w=0.837μm、結合部21及び22における導波路間隔g21及びg22を0.2μm、導波路高さhを0.21μm、結合長L21、L22を9.09μm、導波路間距離差を29.58μmとし、結合部21及び22における結合長L21及びL22を調整することで分岐比を変化させた。図5に示すように、分岐比が0.4〜0.6となっても挿入損失は0.25dB以下に抑えられている。なお、図中では透過率T[dB]として表しているため、符号は反転している。
【0035】
また、図4によると分岐比が0.4〜0.6の範囲であれば、モード間クロストークを−15dB程度とすることができる。一般的に光通信で用いられている信号フォーマットであるQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)では、クロストークによるペナルティを1dB以下に抑えるためにクロストークを−15dB以下としなければならない(詳しくは、非特許文献6を参照。)。よって、分岐比は0.4〜0.6が望ましい。
【0036】
図6に、分岐比とクロストーク(XT)及び挿入損失との関係を示した。図中のGはクロストークの値を、Gは挿入損失の値をそれぞれ表している。クロストークを−20dB以下とすると、クロストークによる信号劣化量が無視できるほど小さく、より高品質な信号の送受信を行うことができる。クロストークが−20dB以下とするためには分岐比を0.42〜0.58とする必要があり、クロストークによる信号劣化を十分に抑えるために分岐比を0.42〜0.58の範囲とすることが望ましい。
【0037】
なお、非特許文献7、8に記載の通り、nモード合分波器を実現する為には、n−1個の導波路11を有し、導波路11が近接する領域を(2n−2)個とすることで、合分波するモード数を拡張することができる。例えば、LP01、LP11、LP21の3モードを合分波するモード合分波器は、図7に示す通り、2個の導波路11−1、11−2を設置し、導波路11−1、11−2ごとに結合部21及び22、遅延部23を設置する。それぞれのモードLP11及びLP21を合波する導波路11−1及び11−2を設置すればよい。
【0038】
(実施形態2)
図8に、本実施形態に係るモード合分波器の構成例を示す。本実施形態に係るモード合波器では、結合部21、22や遅延部23の配置については実施形態1と同様であるが、結合部21、22における導波路の幅が伝搬方向に対して線形に変化する構成となっている。実施形態1で述べたとおり、結合部21及び22において、導波路11を伝搬するモードの半分が他方の導波路12に結合することが求められるが、結合部21及び22における結合特性は波長依存性を有している。
【0039】
例えば、図9に結合部21の第1の構造例を、図10に結合部21の第2の構造例を、それぞれ示す。図9及び図10の導波路11、12のパラメータは図11に記載の通りである。第1の構造は結合部21における導波路幅w及びwは一定であり、第2の構造は伝搬方向に対して導波路11の幅wが線形に増加している例となっている。
【0040】
第1の構造においては、特定の波長において各導波路のモードの実効屈折率を一致させ、導波路間隔や結合長を調整することにより分岐比を0.5とすることができるが、波長が異なると各導波路における実効屈折率の波長依存性が異なることから、同じ分岐比を得るために必要な導波路間隔や結合長が異なる。このため、第1の構造は、広波長域にわたって一定の分岐比を得ることが難しい。例えば、C〜L帯を使用波長とした場合には、分岐比が0.4〜0.6とならない波長が存在し、その波長においてモードクロストークが−15dB以上、モード合分波器の挿入損失が0.25dB以上となってしまう場合がある。
【0041】
一方で、第2の構造のように、導波路構造(ここでは導波路幅w及び導波路間距離g)を伝搬方向に対して変化させ、任意の波長において実効屈折率が一致する構造を有する構造を結合部内に設けることで、広い波長帯において一定の分岐比を得ることができ、例えばC〜L帯において分岐比を0.4〜0.6とすることができている。
【0042】
図11に記載の導波路パラメータを用いて上部導波路11のポートP1からLP01モードを入射した場合に、下部導波路12の出力側のポートP4からLP01モードへの結合量を計算したものを図12として示す。図中において、Gは第1の構造を示し、Gは第2の構造を示す。なお、図11中のhは導波路の高さである。
【0043】
第1の構造において図11に示すパラメータを適用した場合、図12に示すように、波長1.5〜1.6μmに対して結合量が0.3〜0.7程度に変化しており、分岐比を1:1に保つことができない場合がある。一方で、第2の構造では、広波長域にわたって分岐比を1:1に保つことができている。分岐比が1:1でない場合はモード合分波器として損失特性が劣化するが、結合部21及び22の導波路幅wを変化させることで広波長域で低損失な特性を得ることができる。
【0044】
図13図16に、結合部21の第3〜第5の構造例を示す。第3〜第5の構造例は、結合部21における導波路幅wの変化の例を挙げる。図10で示した伝搬方向に対して図13の線形に導波路幅wが増加する構成に加えて、第3の構造例はV字型(谷型)に導波路幅wが増加した後に減少する構成、第4の構造例はW型の様に導波路幅wが変化する構成、第5の構造例はジグザグに導波路幅wが変化する構成を示す。
【0045】
図17及び図18に、それぞれの構造例における結合部の構造パラメータの一例を示す。また、図17及び図18のパラメータで結合部21及び22の特性を計算したものを図19に示す。図中において、G〜Gはそれぞれは第1〜第5の構造を示す。入出力ポートは図12と同じである。なお、第3の構造例であるV型においてΔWの値が負になっているが、これは図14に記載の山型ではなく、谷型の形状を有していることを意味している。いずれの構造も低波長依存性を有していることがわかり、第2〜第5の構造はC〜L帯内で分岐比を0.4〜0.6の範囲に抑えられ、第1の構造についても広い波長範囲で分岐比を0.4〜0.6の範囲に抑えられていることがわかる。よって、結合部21及び22の導波路幅wについては、伝搬方向に導波路幅wが変化し、また、導波路幅wの変化としては、線形でなくてもよく、曲線であってもよい。
【0046】
図20に、例えば波長多重信号の波長間隔20nm間隔であることを想定して設計した場合のモード合分波器の透過特性を示す。G3M及びG4Mは第2の構造、G3A及びG4A図1に示す構造、G3T及びG4T図1における結合部をテーパ状にした構造を示す。G3M及びG4Mに示す第2の構造の構造パラメータは図21及び22に記載の通りである。G3T、G4T、G3T及びG4Tに示す構造パラメータは図22に記載の通りである。なお、導波路部の屈折率ncoreおよびクラッド部の屈折率ncladについては図10と同じである。ポートP1からポートP3への特性を実線で、ポートP1からポートP4への特性を破線で示している。つまり、実線は分波器を想定するとクロストーク量として考えることができ、低い方が望ましい。
【0047】
3A及びG4Aでは、実線G3Aで示す通り設計される結合波長においてはクロストーク量が低くなり、モードを低損失かつ高消光比で合分波できるが、結合波長から離れた波長では特性が劣化していることがわかる。一方で、本開示のモード合分波器の一例を示すG3M及びG4Mでは、波長に応じてクロストーク量が大きく変動しているが、20nmの間隔で特性が良好であり、波長多重信号が良好な特性が得られる波長間隔と一致する場合は広波長域で低損失かつ高モード消光比でモードを合分波できることがわかる。
【0048】
なお、図1における結合部をTaperとした場合の例(G3T、G4T)も記載しているが、G3Aと比較して波長依存性が低くなっているが、C帯〜L帯をカバーする程度の広波長域で高モード消光比が得られる特性を実現することができない。例えば、クロストーク値としては先ほど述べたように−15dB以下(または−20dB以下)であることが望ましく、G3T及びG4Tでは使用波長がC帯に限られてしまうことがわかるが、本開示を適用したG3M及びG4Mでは周期的に透過特性がピークを示すため、非常に広い(例えばS帯〜L帯)までをカバーすることができることが分かる。
【0049】
図23に、図20の縦軸を0〜−2dBとした場合の透過特性を示す。モード合分波器の挿入損失は図中の破線に相当しているが、クロストーク量と同様に、G3A及びG4Aは設計した結合波長以外の波長で損失特性が劣化していることがわかる。一方で、本開示の一例を示すG3M及びG4Mは、設計した波長間隔で低損失特性が得られ、波長多重信号を低損失でモード合分波できることを示している。なお、ここまで導波路11の幅wを変化させた場合を説明してきたが、導波路11の幅wの代わりに導波路12の幅wを伝搬方向に対して変化させても良い。
【0050】
なお、非特許文献5に記載の通り、結合部を2つ以上設置することで、結合特性の波長依存性を低減する技術は本開示にも応用することができる。図24に、本実施形態に係るモード合分波器の別形態を示す。本形態に係る結合部31及び32は、それぞれ、近接している領域を複数個所備える。第1の結合部として機能する結合部31では、導波路11の複数個所から導波路11の伝搬光が導波路12に結合している。また、第2の結合部として機能する結合部32でも、導波路11の複数個所から導波路11の伝搬光が導波路12に結合している。このように、本実施形態における結合部21、22を複数の結合部で構成することで、先に述べたテーパ構造を用いることなく、広帯域で0.4〜0.6の分岐比を有するモード分岐部を実現することができる。
【0051】
(実施形態3)
図25に本開示に係る光伝送システムの構成例を示す。本システムでは、n個の波長多重信号光を発する送信機81−1〜81−nと、n個の波長多重信号を波長分離し受信する受信機84−1〜84〜nと、波長多重信号を合波・分波する実施形態1または実施形態2に記載のモード合分波器(モード合波器82、モード分波器83)と、モード合分波器を接続する伝搬モード数がnであるマルチモードファイバ91を有しており、波長多重信号の波長間隔がΔλである。モード合波器82は、各送信機81−1〜81−nからの信号光が送信機81−1〜81−nごとに異なる導波路11に入力され、送信機81−1〜81−nごとにモードの異なるモード多重信号光を導波路12から出力する。マルチモードファイバ91は、モード合波器82からのモード多重信号光を伝搬する。モード分波器83は、モード多重信号光が導波路12に入力され、モードごとに異なる導波路11から信号光を出力する。
【0052】
実施形態1または実施形態2に記載の通り、モード合分波器の遅延部23における遅延差ΔLを調整し、送受信される波長多重信号の波長間隔とΔλを一致させることで、波長多重信号を低損失でモード合分波することができる。
【0053】
なお、本明細書においてはSi系材料を用いた平面光波回路に関する実施形態を記載したが、その材料は当然ほかのものであってもかまわない。たとえば、ガラス系やInGaAsPなどの半導体、またポリマーなどの有機物を用いた平面光波回路であっても、本明細書記載の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、使用する波長帯に関しても、本明細書記載の実施形態では1.5〜1.6μm程度としているが、より波長の長い中赤外領域(2μm以上)や可視光帯であっても構わない。
【0055】
(付記1)
n(nは2以上の整数)以上のモードを伝搬可能な導波路1と、
導波路1と平行した導波路2〜m(mは2以上、n以下の正の整数)と、
平行に配置された前記導波路1と前記導波路2〜mのそれぞれが近接する結合部を2つ以上有し、
導波路間で結合しない領域である遅延導波路部を前記結合部の間に有し、
導波路1と導波路2〜mの遅延部において生ずる光波の位相遅延差Δτが前記遅延部の伝搬距離差ΔLにより調整され、
導波路1と導波路2〜m(mは2以上、n以下の正の整数)が近接する部分において、
所望の光の波長範囲に対して、導波路2〜mを伝搬するモードの実効屈折率が、導波路1のm−1個のモードの実効屈折率と排他的に一致するよう導波路幅・高さ・比屈折率差が調整され、
結合部の長さ及び結合部における導波路間隔が、モード変換により導波路2〜mを導波する光パワーの0.4〜0.6倍が導波路1を伝搬するよう定められることを特徴とするモード合分波器。
【0056】
(付記2)
付記1に記載のモード合分波器において、前記結合部における導波路1又は導波路2〜mの導波路幅が伝搬方向に対して変化することを特徴とするモード合分波器。
【0057】
(付記3)
付記1または2に記載のモード合分波器であって、モード合分波器の周波数における透過特性の変動の周期Δλが、通信で用いられる波長多重信号の波長間隔と一致するよう導波路1と導波路2〜mの遅延部における伝搬遅延差ΔLが調整されていることを特徴とするモード合分波器。
【0058】
(付記4)
付記1〜3のいずれかに記載のモード合分波器であって、導波路1と導波路2〜mの遅延部において生ずる光波の位相遅延差Δτ(rad.)が、通信で用いられる波長多重信号の中心波長λ(m)および、波長間隔Δλ(m)に対して下記の関係を満たすことを特徴とするモード合分波器。
(数)Δλ=2πλ/Δτ (λ:利用波長帯における中心波長)
【0059】
(付記5)
n個の波長多重信号光を発する送信機と、
n個の波長多重信号を波長分離し受信する受信機と、
波長多重信号を合波・分波する付記1〜4のいずれかに記載のモード合分波器と、
モード合分波器を接続する伝搬モード数がnであるマルチモードファイバを備え、
前記波長多重信号の波長間隔がΔλであることを特徴とする波長多重・モード多重伝送システム。
【0060】
(付記6)
n(nは2以上の整数)以上のモードを伝搬可能な導波路1と、
導波路1と平行した導波路2〜m(mは2以上、n以下の正の整数)と、
平行に配置された前記導波路1と前記導波路2〜mのそれぞれが近接する結合部を有し、
導波路1と導波路2〜m(mは2以上、n以下の正の整数)が近接する部分において、
前記結合部における導波路1又は導波路2〜mの導波路幅が伝搬方向に対して変化し、通信波長帯(例えば1530〜1625nm)における任意の波長において導波路1と導波路2〜mの所望のモードの実効屈折率が一致する導波路幅を、結合部区間内に有し、結合部の長さ及び結合部における導波路間隔が、導波路2〜mを導波する光パワーの0.4〜0.6倍が導波路1を伝搬するよう定められることを特徴とするモード合分波器。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示は、波長多重信号に対して、広波長域で低損失にモード合分波が可能であるモード合分波器を実現することであり、光ファイバ中の波長及びモードの利用による大容量・長距離通信を実現することができる。
【符号の説明】
【0062】
11、12:導波路
21、22:結合部
23:遅延部
31、32:モード分岐部
41:関連技術の導波路2
42:関連技術の導波路1
81:送信機
82:モード合波器
83:モード分波器
84:受信機
91:マルチモードファイバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25