(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による成膜装置1の概略断面図である。
図1の成膜装置1は、基板の一例であるSiC基板2上に、成膜処理の一例であるSiC膜のエピタキシャル成長を行うために用いることができる。
図1に示すように、成膜装置1は、成膜室の一例であるチャンバ3と、供給部4とを備える。また、成膜装置1は、回転部51と、ガス排出部6とを備える。
【0015】
チャンバ3は、SUSなどの金属によって中空に形成されている。チャンバ3は、例えば、略円筒形状を有している。常圧または減圧に保持されたチャンバ3内において、SiC基板2上へのエピタキシャル成長が行われる。
【0016】
供給部4は、チャンバ3の上部に配置されている。供給部4は、チャンバ3の外部からチャンバ3の内部に原料ガスを導入し、導入された原料ガスを供給部4のD11方向(以下、下方と記す)に位置するSiC基板2上に供給する。供給部4の具体的な構成は後述する。
【0017】
回転部51は、供給部4の下部の反応室33内に配置されている。回転部51は、サセプタ51aを載置して回転する。サセプタ51a上にSiC基板2が載置される。回転部51の内部に加熱機構52が配置される。回転部51は、下方に延びる管状の支持軸51bと接続され、支持軸51bは、不図示の回転機構に連結されている。回転機構により、回転部51を介してサセプタ51aが回転される。加熱機構52は、例えば抵抗加熱ヒータなどで構成されている。加熱機構52は、支持軸51bの内部を通る不図示の配線に接続されている。加熱機構52は、配線から給電されることで、SiC基板2をサセプタ51aを介してその裏面から加熱する。
【0018】
回転部51は、サセプタ51a上に載置されたSiC基板2を加熱機構52で加熱しながら回転させる。加熱されたSiC基板2上に供給された原料ガスは、SiC基板2の表面またはその近傍で熱分解反応および水素還元反応する。これにより、SiC基板2上にSiC膜がエピタキシャル成長する。また、SiC基板2が回転していることで、SiC膜の成長速度をSiC基板2の面内において均一化できる。これにより、SiC基板2の面内におけるSiC膜の膜厚の均一性(以下、面内均一性ともいう)を向上できる。
【0019】
ガス排出部6は、サセプタ51aより下方において例えばチャンバ3の側壁31に設けられている。ガス排出部6は、反応副生成物や、SiC基板2を通過した後の未反応ガスなどを排出する。また、ガス排出部6から不図示のポンプで真空吸引を行うことができ、チャンバ3内の雰囲気圧力を適宜調整できる。
【0020】
(供給部4)
次に、供給部4の具体的な構成例について説明する。
【0021】
図1に示すように、供給部4は、隔壁の一例であるチャンバ3の上壁32および第1〜第4ガス仕切板401〜404と、第1配管の一例である第1、第2内側パイプ411、412と、第2配管の一例である第1、第2外側パイプ421、422とを有する。高温の反応プロセスに耐え得るように、これらは、例えばSiCコートされたカーボンによって形成されている。
【0022】
(ガス仕切板401〜404)
第1〜第4ガス仕切板401〜404は、チャンバ3の上壁32から下方に順次所定の間隔で配置されている。そして、第1〜第4ガス仕切板401〜404とチャンバ3の上壁32とのそれぞれの間に独立したガスの流路が設けられる。
【0023】
具体的には、第1隔壁の一例であるチャンバ3の上壁32と、第2隔壁の一例である第1ガス仕切板401との間には、第1流路の一例である第1導入路431が設けられている。第1導入路431は、Siを含有するSi系原料ガスを導入する。第1導入路431の上流端のチャンバ3の側壁31には、第1導入路431に連通した第1導入口441が設けられている。第1導入口441には、不図示のSi系原料ガスのガス源が接続されている。また、不図示のフロー調整機構によって、ガス源から第1導入口441に供給されるSi系原料ガスの流量が調整される。Si系原料ガスとしては、例えばシラン系ガスとしてシラン(SiH
4)を用いることができるほか、SiH
2Cl
2、SiHCl
3、SiCl
4などの塩素を含むガスを用いることもできる。また、Si系原料ガスとして、シランにHClを添加したガスを用いてもよい。
【0024】
また、第1ガス仕切板401と、第3隔壁の一例である第2ガス仕切板402との間には、第2流路の一例である第2導入路432が設けられている。第2導入路432は、チャンバ3内に原料ガスの混合抑制用のパージガスを導入する。第2導入路432の上流端のチャンバ3の側壁31には、第2導入路432に連通した第2導入口442が設けられている。第2導入口442には、不図示のパージガスのガス源が接続されている。また、不図示のフロー調整機構によって、ガス源から第2導入口442に供給されるパージガスの流量が調整される。パージガスとしては、例えばH
2のほか、Ar、Heなどの不活性ガスすなわち希ガスを用いることもできる。
【0025】
また、第1隔壁の一例でもある第2ガス仕切板402と、第2隔壁の一例である第3ガス仕切板403との間には、第1流路の一例である第3導入路433が配置されている。第3導入路433は、チャンバ3内にC系原料ガスを導入する。第3導入路433の上流端のチャンバ3の側壁31には、第3導入路433に連通した第3導入口443が設けられている。第3導入口443には、不図示のC系原料ガスのガス源が接続されている。また、不図示のフロー調整機構によって、ガス源から第3導入口443に供給されるC系原料ガスの流量が調整される。C系原料ガスとしては、例えばプロパン(C
3H
8)などを用いることができる。
【0026】
また、第3ガス仕切板403と、第3隔壁の一例である第4ガス仕切板404との間には、第2流路の一例である第4導入路434が配置されている。第4導入路434は、チャンバ3内に原料ガスの混合抑制用のパージガスを導入する。第4導入路434の上流端のチャンバ3の側壁31には、第4導入路434に連通した第4導入口444が配置されている。第4導入口444には、不図示のパージガスのガス源が接続されている。また、不図示のフロー調整機構によって、ガス源から第4導入口444に供給されるパージガスの流量が調整される。
【0027】
なお、第2導入路432および第4導入路434は、パージガスの他に、SiC膜の導電型を制御するための不純物ドーピングガスを導入してもよい。SiC膜の導電型をn型にする場合には、不純物ドーピングガスとして例えばN
2を用いることができる。SiC膜の導電型をp型にする場合には、不純物ドーピングガスとして例えばTMA(トリメチルアルミニウム)を用いることができる。
【0028】
(パイプ411、412、421、422)
第1内側パイプ411は、D1方向(以下、鉛直方向と記す)に延びる略円筒形状を有している。第1内側パイプ411は、第1導入路431と第1導入路431の下方D11の第2導入路432とを仕切る第1ガス仕切板401に配置されている。第1内側パイプ411は、第1導入路431と連通し、第1ガス仕切板401から第4ガス仕切板404の下方に至る。具体的には、第1内側パイプ411の上端には、円環状のフランジ411aが設けられている。また、第1内側パイプ411に対応する第1〜第4ガス仕切板401〜404には、貫通孔401a〜404aが設けられている。第1内側パイプ411は、D12方向(以下、上方と記す)から貫通孔401aの内周縁部にフランジ411aを当接させた状態で、第1ガス仕切板401から貫通孔402a〜404aを通り、第2の導入路432、第2のガス仕切板402、第3の導入路403、第3のガス仕切板403、第4の導入路434を貫通して、第4ガス仕切板404の下方に至っている。
【0029】
第1外側パイプ421は、鉛直方向に延びる略円筒形状を有している。第1外側パイプ421は、第1内側パイプ411よりも短い。また、第1外側パイプ421の内径は、第1内側パイプ411の外径よりも大きい。第1外側パイプ421は、第1内側パイプ411を囲むように、第2導入路432と第3導入路433とを仕切る第2ガス仕切板402に配置されている。第1外側パイプ421は、第2導入路432と連通し、第2ガス仕切板402から第4ガス仕切板404の下方に至る。具体的には、第1外側パイプ421の上端には、円環状のフランジ421aが設けられている。第1外側パイプ421は、上方から貫通孔402aの内周縁部にフランジ421aを当接させた状態で、第2ガス仕切板402から貫通孔403a、404aを通り、第3の導入路433、第3の仕切板403、第4の導入路434を貫通して、第4ガス仕切板404の下方に至っている。第1外側パイプ421の下端は、第1内側パイプ411の下端と同じ高さに位置している。
【0030】
このような構成により、第1内側パイプ411から下方に供給されるSi系原料ガスを、第1外側パイプ421と第1内側パイプ411との間から下方に供給されるパージガスで周囲からシールドできる。これにより、Si系原料ガスの回り込みを抑制できる。
【0031】
第2内側パイプ412は、鉛直方向に延びる略円筒形状を有している。第2内側パイプ412は、第1外側パイプ421よりも短い。第2内側パイプ412は、第3導入路433と第3導入路433の下方の第4導入路434とを仕切る第3ガス仕切板403に配置されている。第2内側パイプ412は、第3導入路433と連通し、第3ガス仕切板403から第4ガス仕切板404の下方に至る。具体的には、第2内側パイプ412の上端には、円環状のフランジ412aが設けられている。また、第2内側パイプ412に対応する第3、第4ガス仕切板403、404には、貫通孔403b、404bが設けられている。第2内側パイプ412は、上方から貫通孔403bの内周縁部にフランジ412aを当接させた状態で、第3ガス仕切板403から貫通孔404bを通り、第4の導入路434を貫通して、第4ガス仕切板404の下方に至っている。第2内側パイプ412の下端は、第1内側パイプ411の下端と同じ高さに位置している。
【0032】
第2外側パイプ422は、鉛直方向に延びる略円筒形状を有している。第2外側パイプ422は、第2内側パイプ412よりも短い。また、第2外側パイプ422の内径は、第2内側パイプ412の外径よりも大きい。第2外側パイプ422は、第2内側パイプ412を囲むように、第4導入路434と第4導入路434の下方の反応室33とを仕切る第4ガス仕切板404に配置されている。第2外側パイプ422は、第4導入路434と連通し、第4ガス仕切板404の下方に至っている。具体的には、第2外側パイプ422の上端には、円環状のフランジ422aが設けられている。第2外側パイプ422は、上方から貫通孔404bの内周縁部にフランジ422aを当接させた状態で、下端が第1内側パイプ411の下端と同じ高さに位置するように設けられている。
【0033】
このような構成により、第2内側パイプ412から下方に供給されるC系原料ガスを、第2外側パイプ422と第2内側パイプ412との間から下方に供給されるパージガスで周囲からシールドできる。これにより、C系原料ガスの回り込みを抑制できる。
第1内側パイプ411および第1外側パイプ421と、第2内側パイプ412および第2外側パイプ422は、D2方向(以下、水平方向と記す)に適宜間隔を設けて配置されている。
【0034】
(ガイド部411b、412b)
図2Aは、第1の実施形態による第1内側パイプ411の断面図であり、
図2Bは、
図2Aの第1内側パイプ411の下面図である。
【0035】
供給部4を組み立てる際には、第2ガス仕切板402に第1外側パイプ421を設置した後、第1ガス仕切板401に第1内側パイプ411を設置する。このとき、第1外側パイプ421の内部に第1内側パイプ411を挿入する。第1外側パイプ421に対する第1内側パイプ411の挿入および位置決めをガイドするため、
図1、
図2Aおよび
図2Bに示す第1ガイド部411bが設けられている。
【0036】
第1ガイド部411bは、第1内側パイプ411の外周面411cに設けられており、外周面411cから第1外側パイプ421の内周面421bに向かって突出している。すなわち、
図2Aに示すように、第1ガイド部411bは、第1内側パイプ411のD21方向(以下、径方向外方と記す)に突出している。第1ガイド部411bが第1内側パイプ411に設けられていることで、第1ガイド部411bを第1外側パイプ421に設ける場合と比較して、第1ガイド部411bを容易に形成できる。
【0037】
また、第1ガイド部411bは、第1内側パイプ411の中心軸方向である鉛直方向に伸延したフィン形状を有する。これにより、第1ガイド部411bがSi系原料ガスの流動を妨げないようにすることができる。また、第1ガイド部411bは、
図2Bに示すように、径方向の断面が矩形状を有するものを用いることができる。第1ガイド部411bの径方向の断面は、三角形状であってもよく、また、径方向外方の端部が丸みを帯びた形状であってもよい。
【0038】
また、第1ガイド部411bは、第1内側パイプ411および第1外側パイプ421の下端より上方に設けられている。これにより、供給部4の下方の反応空間33から遠い位置に第1ガイド部411bを配置できるので、第1ガイド部411bに原料ガスによる堆積物が生じることを抑制できる。
【0039】
また、
図2Aに示すように、第1ガイド部411bの下端411b
1は、径方向外方にテーパを有している。これにより、第1内側パイプ411を容易に第1外側パイプ421に挿入することができる。
【0040】
図2Bの例において、第1ガイド部411bは、第1内側パイプ411の外周面の411cのD3方向(周方向)に等位相で4か所に配置されている。第1ガイド部411bは、複数設けられることが必要であり、3か所以上を略等位相で設けることが好ましく、また、Si系原料ガスの流動を妨げない限度において5か所以上に設けてもよい。第1ガイド部411bを3か所以上に設けることで、第1内側パイプ411は、全方位において第1外側パイプ421との間に間隙G(
図1参照)を確保できる。
【0041】
第1ガイド部411bの径方向の寸法は、熱による第1内側パイプ411および第1外側パイプ421の変形後においても第1ガイド部411bが第1外側パイプ421の内周面421bに接触しないような寸法であることが望ましい。
【0042】
第1ガイド部411bによれば、第1外側パイプ421に対する第1内側パイプ411の挿入および位置決めをガイドすることで、第1内側パイプ411の中心軸A1を第1外側パイプ421の中心軸と殆ど一致させることができる。すなわち、第1ガイド部411bによれば、第1内側パイプ411の位置精度を向上させることができる。これにより、第1内側パイプ411と第1外側パイプ421との間に間隙Gを確保できる。間隙Gを確保することで、組み立て時に第1内側パイプ411と第1外側パイプ421とが接触することを回避できる。
【0043】
図3は、第1の実施形態による第2内側パイプ412の断面図である。
【0044】
供給部4を組み立てる際には、第3ガス仕切板403の下方の第4ガス仕切板404に第2外側パイプ422を設置した後、第3ガス仕切板403に第2内側パイプ412を設置する。このとき、第2外側パイプ422の内部に第2内側パイプ412を挿入する。第2外側パイプ422に対する第2内側パイプ412の挿入および位置決めをガイドするため、
図1および
図3に示す第2ガイド部412bが設けられている。
【0045】
第2ガイド部412bは、第2内側パイプ412および第2外側パイプ422の一方から他方に向かって突出した凸部の一例である。
【0046】
第2ガイド部412bは、第2内側パイプ412の外周面412cに設けられており、外周面412cから第2外側パイプ422の内周面422bに向かって突出している。第2ガイド部412bが第2内側パイプ412に設けられていることで、第2ガイド部412bを第2外側パイプ422に設ける場合と比較して、第2ガイド部412bを容易に形成できる。
【0047】
また、第2ガイド部412bは、第2内側パイプ412の中心軸方向である鉛直方向に伸延したフィン形状を有する。これにより、第2ガイド部412bがC系原料ガスの流動を妨げないようにすることができる。第2ガイド部412bの径方向の断面形状は、第1ガイド部411bと同様でよい。
【0048】
また、第2ガイド部412bは、第2内側パイプ412および第2外側パイプ422の下端より上方に設けられている。これにより、供給部4の下方の反応空間33から遠い位置に第2ガイド部412bを配置できるので、第2ガイド部412bに原料ガスによる堆積物が生じることを抑制できる。
【0049】
また、
図3に示すように、第2ガイド部412bの下端412b
1は、径方向外方にテーパを有している。これにより、第2内側パイプ412を容易に第2外側パイプ422に挿入することができる。
【0050】
第2ガイド部412bは、第1ガイド部411bと同様に、第2内側パイプ412の外周面の412cの周方向に等間隔を開けて4つ配置されている。第2ガイド部412bの個数は、3つであってもよく、また、C系原料ガスの流動を妨げない限度において5つ以上であってもよい。第2ガイド部412bを3つ以上設けることで、第2内側パイプ412は、全方位において第2外側パイプ422との間に間隙Gを確保できる。
【0051】
第2ガイド部412bの径方向の寸法は、熱による第2内側パイプ412および第2外側パイプ422の変形後においても第2ガイド部412bが第2外側パイプ422の内周面422bに接触しないような寸法であることが望ましい。
【0052】
第2ガイド部412bによれば、第2外側パイプ422に対する第2内側パイプ412の挿入および位置決めをガイドすることで、第2内側パイプ412の中心軸A2を第2外側パイプ422の中心軸と殆ど一致させることができる。すなわち、第2ガイド部412bによれば、第2内側パイプ412の位置精度を向上させることができる。これにより、第2内側パイプ412と第2外側パイプ422との間に間隙Gを確保できる。間隙Gを確保することで、組み立て時に第2内側パイプ412と第2外側パイプ422とが接触することを回避できる。
【0053】
なお、第1のガイド部411b、第2のガイド部412bは、それぞれ外側パイプの内周面から内側パイプの外周面に向かって突出していてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、
図1において、パイプ411、412、421、422はそれぞれ複数本配置されている。
図1に示されるパイプ411、412、421、422の本数はあくまで一例であって限定されるものではない。実際は、
図1に示すものよりも多数のパイプ411、412、421、422を配置してよい。また、パイプ411、412、421、422は、径方向だけでなく、ガス仕切板401〜404の周方向にも間隔を空けて配置されていてよい。
【0055】
(成膜方法)
次に、以上のように構成された第1の実施形態の成膜装置1の動作例として、SiC膜の成膜方法について説明する。
【0056】
先ず、サセプタ51a上に、n型もしくはp型のSiC単結晶によって構成されたSiC基板2を載置し、ガス排出部6を通して反応室33内を真空吸引して所望の圧力にする。また、加熱機構52を発熱させることで、SiC基板2を例えば1600℃前後に加熱する。また、回転機構で回転部51を介してサセプタ51aおよびSiC基板2を回転することで、加熱機構52の周方向の発熱分布の影響を受けず、SiC基板2の面内における温度分布の均一化を図る。
【0057】
次いで、第1〜第4導入口441〜444を通してチャンバ3内にSi系原料ガス、パージガス、C系原料ガスを導入する。各ガスは、第1〜第4導入路431〜434を通じて反応室33内に導入された後、パイプ411、412、421、422を通じてSiC基板2上に供給される。
【0058】
このとき、第1内側パイプ411から供給されるSi系原料ガスは、第1外側パイプ421から供給されるパージガスでシールドされる。シールドされることで、Si系原料ガスの回り込みが抑制される。これにより、SiC基板2上に達する前のSi系原料ガスとC系原料ガスとの反応を抑制できる。また、第2内側パイプ412から供給されるC系原料ガスは、第2外側パイプ422から供給されるパージガスでシールドされる。シールドされることで、C系原料ガスの回り込みが抑制される。これにより、SiC基板2上に達する前のSi系原料ガスとC系原料ガスとの反応を更に抑制できる。
【0059】
SiC基板2上に供給された原料ガスにより、SiC基板2の表面にSiC膜をエピタキシャル成長させる。
【0060】
ここで、既述したように、ガス仕切板401〜404、内側パイプ411、412および外側パイプ421、422は、高温の反応プロセスに耐え得るように、例えばSiCコートされたカーボンによって形成されている。SiCとカーボンとの熱膨張率が異なることで、ガス仕切板401〜404、内側パイプ411、412および外側パイプ421、422は、これらを製作する時点で反りなどの変形が生じ得る。このため、ガス仕切板401〜404、内側パイプ411、412および外側パイプ421、422の加工精度を確保することは困難である。これにより、ガス仕切板401〜404に内側パイプ411、412および外側パイプ421、422を取り付ける際に、各パイプ411、412、421、422の位置精度を確保することも困難となる。さらに、反応時には、ガス仕切板401〜404、内側パイプ411、412および外側パイプ421、422が熱によって更に変形するため、各パイプ411、412、421、422の位置精度を確保することは一層困難となる。
【0061】
ガイド部411b、412bを設けない場合、パイプ411、412、421、422の位置精度の確保が困難であることで、内側パイプ411、412の中心軸A1、A2と外側パイプ421、422の中心軸とが大きくずれる可能性がある。これにより、内側パイプ411、412と外側パイプ421、422とが互いに接触することがある。そして、内側パイプ411、412と外側パイプ421、422との接触位置に原料ガスによる堆積物が生じた場合、堆積物で内側パイプ411、412と外側パイプ421、422とが互いに固着されるおそれがある。内側パイプ411、412と外側パイプ421、422とが固着されると、外側パイプ421、422の流路の断面積が不均一となるため、均一な流量でパージガスを供給することが困難となる。これにより、パージガスが混合抑制ガスとして適切に機能できず、内側パイプ411、412および外側パイプ421、422の出口においてSi系原料ガスやC系原料ガスの回り込みにより各パイプ411、412、421、422に堆積物が生じ易くなる。そして、各パイプ411、412、421、422の堆積物がパーティクルとしてSiC基板2上に落下することで、SiC膜の結晶欠陥を生じさせてしまう。
【0062】
これに対して、第1の実施形態では、内側パイプ411、412を外側パイプ421、422に挿入する際に、ガイド部411b、412bによって内側パイプ411、412の中心軸A1、A2の位置決めをガイドできる。位置決めをガイドできることで、内側パイプ411、412の中心軸A1、A2を、外側パイプ421、422との中心軸と殆ど一致させることができる。中心軸を一致させることができるので、内側パイプ411、412と外側パイプ421、422との間に確実に間隙Gを確保することができる。間隙Gを確保できることで、内側パイプ411、412と外側パイプ421、422との接触を回避できる。これにより、内側パイプ411、412と外側パイプ421、422との接触位置に堆積物が発生することを防止でき、堆積物に起因するSiC膜の結晶欠陥を回避できる。
【0063】
以上述べたように、第1の実施形態によれば、ガイド部411b、412bによって内側パイプ411、412と外側パイプ421、422との接触を防止できるので、ガスの回り込みによって内側パイプ411、412と外側パイプ421、422との接触位置に堆積物が発生することを防止できる。これにより、堆積物に起因する結晶欠陥の発生を防止できる。
【0064】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態として、内側パイプ411、412の下端部がテーパ形状を有する実施形態について説明する。なお、第2の実施形態において、既述の実施形態に対応する構成部については同一の符号を用いて重複した説明を省略する。
【0065】
図4は、第2の実施形態による二重管構造のパイプの断面図である。
図4に示すように、第2の実施形態の内側パイプ411、412は、テーパ形状の下端部411d、412dを有する。一方、外側パイプ421、422は、第1の実施形態と同様にテーパを有しない直線形状である。下端部411d、412dのテーパ形状は、原料ガスの下流すなわち下方D11に向かうにしたがって下端部411d、412dの内径すなわちガス流路の断面積が漸増する形状である。
【0066】
第2の実施形態では、第1内側パイプ411の下端部411dがテーパ形状を有することで、第1内側パイプ411から径方向外方にやや広がるようにSi系原料ガスを吐出できる。径方向外方成分のSi系原料ガスの流れは、径方向外方から第1内側パイプ411に回り込もうとするC系原料ガスの流れに抗するので、第1内側パイプ411へのC系原料ガスの回り込みを抑制できる。これにより、第1内側パイプ411の下端部411dにおけるSi系原料ガスとC系原料ガスとの混合を抑制して、第1内側パイプ411への堆積物の発生を抑制できる。
【0067】
同様に、第2の実施形態では、第2内側パイプ412の下端部412dがテーパ形状を有することで、第2内側パイプ412から径方向外方にやや広がるようにC系原料ガスを吐出できる。径方向外方成分のC系原料ガスの流れは、径方向外方から第2内側パイプ412に回り込もうとするSi系原料ガスの流れに抗するので、第2内側パイプ412へのSi系原料ガスの回り込みを抑制できる。これにより、第2内側パイプ412の下端部412dにおけるSi系原料ガスとC系原料ガスとの混合を抑制して、第2内側パイプ412への堆積物の発生を抑制できる。
【0068】
下端部411d、412dがテーパ形状を有していることで、下端における内側パイプ411、412と外側パイプ421、422との間隔は第1の実施形態よりも狭小になっている。すなわち、第1の実施形態よりも内側パイプ411、412と外側パイプ421、422とが接触し易くなっている。
【0069】
しかるに、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様にガイド部411b、412bが設けられているので、下端においても内側パイプ411、412と外側パイプ421、422との間に確実に隙間を確保することができる。
【0070】
したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、パイプ411、412、421、422への堆積物の発生を有効に抑制できる。
【0071】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態として、内側パイプ411、412および外側パイプ421、422の双方の下端部がテーパ形状を有する実施形態について説明する。なお、第3の実施形態において、既述の実施形態に対応する構成部については同一の符号を用いて重複した説明を省略する。
【0072】
図5は、第3の実施形態による二重管構造のパイプの断面図である。
図5に示すように、第3の実施形態では、第2の実施形態の構成に加えて、更に、外側パイプ421、422がテーパ形状の下端部421c、422cを有する。
【0073】
外側パイプ421、422の下端部421c、422cのテーパ角は、例えば、内側パイプ411、412の下端部411d、412dのテーパ角と同じである。外側パイプ421、422の下端部421c、422cのテーパ角を、内側パイプ411、412の下端部411d、412dのテーパ角と異ならせてもよい。
【0074】
第3の実施形態では、内側パイプ411、412の下端部411d、412dと外側パイプ421、422の下端部421c、422cとの双方がテーパ形状を有することで、原料ガスの吐出方向とパージガスの吐出方向とを揃えることができる。これにより、乱流の発生を抑制して、原料ガスをSiC基板2上に適切に供給できる。
【0075】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態として、三重管構造のパイプを有する実施形態について説明する。なお、第4の実施形態において、既述の実施形態に対応する構成部については同一の符号を用いて重複した説明を省略する。
【0076】
図6は、第4の実施形態による成膜装置1を示す概略断面図である。
図6に示すように、第4の実施形態の供給部4は、既述の実施形態で説明した第2内側パイプ412が第1外側パイプ421を囲む構成の三重管構造のパイプを有する。以下の説明では、第1外側パイプ421のことを中間パイプ421と呼び、第2内側パイプ412のことを外側パイプ412と呼ぶ。
【0077】
図6に示すように、第4の実施形態では、中間パイプ421の外周面421dに、外側パイプ412に向かって突出する第3ガイド部421eが設けられている。
【0078】
第4の実施形態では、第1ガイド部411bによって、第1内側パイプ411と中間パイプ421との接触を回避することができ、かつ、第3ガイド部421eによって、中間パイプ421と外側パイプ412との接触を回避できる。
【0079】
したがって、第4実施形態によれば、第1〜第3の実施形態と同様に、パイプ411、412、421への堆積物の発生を抑制できる。
【0080】
なお、
図6の破線部に示すように、第1〜第3の実施形態で説明した第2外側パイプ422が外側パイプ412を囲む構成の四重管構造のパイプを採用してもよい。この場合には、例えばパイプ412の外周面に、パイプ422の内周面に向かって突出する不図示のガイド部を設ければよい。
【0081】
上述の実施形態では、凸部の一例として、フィン形状のガイド部411bを採用した。凸部は、内側パイプ411、412と外側パイプ421、422との間に間隙Gを確保できる態様であればフィン形状のものに限定されない。例えば、凸部は、内側パイプ411、412から径方向外方に突出する柱状の部材であってもよい。
【0082】
また、ガイド部は、鉛直方向に間隔を空けて複数配置してもよい。
【0083】
また、熱効率を上げるため、チャンバ3の上部に、下方の熱源からの輻射を反射する円環状のリフレクタを設けてもよい。この場合、パイプ411、412、421、422はリフレクタを貫通するように配置される。また、供給部4と回転部51との間のチャンバ3の側壁31に補助ヒータを設けてもよい。
【0084】
上述の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。