(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671689
(24)【登録日】2020年3月6日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】回線割当装置および回線割当方法
(51)【国際特許分類】
H04L 27/26 20060101AFI20200316BHJP
H04W 72/04 20090101ALI20200316BHJP
H04W 72/06 20090101ALI20200316BHJP
【FI】
H04L27/26 200
H04W72/04 132
H04W72/06
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-18881(P2017-18881)
(22)【出願日】2017年2月3日
(65)【公開番号】特開2018-125806(P2018-125806A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501241645
【氏名又は名称】学校法人 工学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】中平 勝也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 隆利
【審査官】
太田 龍一
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5483472(JP,B2)
【文献】
中平勝也、阿部順一、増野淳、杉山隆利,衛星通信システム容量増大のための適応スペクトラム制御回線割当法の提案,2012年電子情報通信学会総合大会,2012年 3月28日,B−3−1
【文献】
中平勝也、阿部順一、増野淳、小林聖,衛星リソースを高効率利用するスペクトラム圧縮アルゴリズムの提案,電子情報通信学会技術研究報告 SAT 2011−34,2011年 8月,pp.99-104
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
H04W 72/04
H04W 72/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分割伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当装置において、
前記端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応して一定帯域幅の変調スロット単位で表される初期変調スロット数を算出し、さらに該初期変調スロット数を複数の帯域圧縮率に応じて圧縮した圧縮変調スロット数を算出する圧縮変調スロット数算出手段と、
複数の前記帯域圧縮率のそれぞれについて、前記圧縮変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである圧縮分割パターンを複数種類ずつ算出する圧縮分割パターン生成手段と、
複数の前記帯域圧縮率のそれぞれについて複数種類ずつ得られた全ての前記圧縮分割パターンから、前記空き帯域に配置可能な圧縮分割パターンのうち、ピーク電力が前記端末局の最大送信電力を超えない圧縮分割パターンを1つ選択する圧縮分割パターン選択手段と、
前記圧縮分割パターン選択手段が選択した圧縮分割パターンと前記空き帯域の分布に基づいて、前記端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当手段と
を備えたことを特徴とする回線割当装置。
【請求項2】
複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分割伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当装置において、
前記端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応して一定帯域幅の変調スロット単位で表される初期変調スロット数を算出し、さらに該初期変調スロット数を複数の帯域圧縮率に応じて圧縮した圧縮変調スロット数を算出する圧縮変調スロット数算出手段と、
複数の前記帯域圧縮率のそれぞれについて、前記圧縮変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである圧縮分割パターンを複数種類ずつ算出する圧縮分割パターン生成手段と、
複数の前記帯域圧縮率のそれぞれについて複数種類ずつ得られた全ての前記圧縮分割パターンから、前記空き帯域に配置可能な圧縮分割パターンのうち、ピーク電力が最小となる圧縮分割パターンを1つ選択する圧縮分割パターン選択手段と、
前記圧縮分割パターン選択手段が選択した圧縮分割パターンと前記空き帯域の分布に基づいて、前記端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当手段と
を備えたことを特徴とする回線割当装置。
【請求項3】
複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分割伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当装置において、
前記端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応して一定帯域幅の変調スロット単位で表される初期変調スロット数を算出し、さらに該初期変調スロット数を複数の帯域圧縮率に応じて圧縮した圧縮変調スロット数を算出する圧縮変調スロット数算出手段と、
複数の前記帯域圧縮率のそれぞれについて、前記圧縮変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである圧縮分割パターンを複数種類ずつ算出する圧縮分割パターン生成手段と、
複数の前記帯域圧縮率のそれぞれについて複数種類ずつ得られた全ての前記圧縮分割パターンから、前記空き帯域に配置可能な圧縮分割パターンのうち、ピーク電力が前記端末局の最大送信電力を超えない圧縮分割パターンの中から分割数が最小となる圧縮分割パターンを1つ選択する、あるいは分割数が最小となる圧縮分割パターンの中からピーク電力が前記端末局の最大送信電力を超えない圧縮分割パターンを1つ選択する圧縮分割パターン選択手段と、
前記圧縮分割パターン選択手段が選択した圧縮分割パターンと前記空き帯域の分布に基づいて、前記端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当手段と
を備えたことを特徴とする回線割当装置。
【請求項4】
複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分割伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当方法において、
前記端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応して一定帯域幅の変調スロット単位で表される初期変調スロット数を算出し、さらに該初期変調スロット数を複数の帯域圧縮率に応じて圧縮した圧縮変調スロット数を算出する圧縮変調スロット数算出ステップと、
複数の前記帯域圧縮率のそれぞれについて、前記圧縮変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである圧縮分割パターンを複数種類ずつ算出する圧縮分割パターン生成ステップと、
複数の前記帯域圧縮率のそれぞれについて複数種類ずつ得られた全ての前記圧縮分割パターンから、前記空き帯域に配置可能な圧縮分割パターンのうち、ピーク電力が前記端末局の最大送信電力を超えない圧縮分割パターンを1つ選択する圧縮分割パターン選択ステップと、
前記圧縮分割パターン選択ステップが選択した圧縮分割パターンと前記空き帯域の分布に基づいて、前記端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当ステップと
を有することを特徴とする回線割当方法。
【請求項5】
複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分割伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当方法において、
前記端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応して一定帯域幅の変調スロット単位で表される初期変調スロット数を算出し、さらに該初期変調スロット数を複数の帯域圧縮率に応じて圧縮した圧縮変調スロット数を算出する圧縮変調スロット数算出ステップと、
複数の前記帯域圧縮率のそれぞれについて、前記圧縮変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである圧縮分割パターンを複数種類ずつ算出する圧縮分割パターン生成ステップと、
複数の前記帯域圧縮率のそれぞれについて複数種類ずつ得られた全ての前記圧縮分割パターンから、前記空き帯域に配置可能な圧縮分割パターンのうち、ピーク電力が最小となる圧縮分割パターンを1つ選択する圧縮分割パターン選択ステップと、
前記圧縮分割パターン選択ステップが選択した圧縮分割パターンと前記空き帯域の分布に基づいて、前記端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当ステップと
を有することを特徴とする回線割当方法。
【請求項6】
複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分割伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当方法において、
前記端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応して一定帯域幅の変調スロット単位で表される初期変調スロット数を算出し、さらに該初期変調スロット数を複数の帯域圧縮率に応じて圧縮した圧縮変調スロット数を算出する圧縮変調スロット数算出ステップと、
複数の前記帯域圧縮率のそれぞれについて、前記圧縮変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである圧縮分割パターンを複数種類ずつ算出する圧縮分割パターン生成ステップと、
複数の前記帯域圧縮率のそれぞれについて複数種類ずつ得られた全ての前記圧縮分割パターンから、前記空き帯域に配置可能な圧縮分割パターンのうち、ピーク電力が前記端末局の最大送信電力を超えない圧縮分割パターンの中から分割数が最小となる圧縮分割パターンを1つ選択する、あるいは分割数が最小となる圧縮分割パターンの中からピーク電力が前記端末局の最大送信電力を超えない圧縮分割パターンを1つ選択する圧縮分割パターン選択ステップと、
前記圧縮分割パターン選択ステップが選択した圧縮分割パターンと前記空き帯域の分布に基づいて、前記端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当ステップと
を有することを特徴とする回線割当方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信衛星や移動通信のセルラ基地局(以下「ノード局」という)を介して端末局が通信を行う無線通信システムにおいて、通信回線の帯域を圧縮し、さらに複数の帯域に分割して送信するための回線割当装置および回線割当方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、通信衛星をノード局とする無線通信システムであり、
図4は、セルラ基地局をノード局とする無線通信システムである。端末局は、ノード局から制御回線を介して、回線割当装置から割り当てられた回線が通知され、当該回線を用いて別の端末局とノード局を介して無線通信を行う。
【0003】
このような無線通信システムでは、各端末局に割り当てられる回線の総帯域は、ノード局が利用できるシステム帯域以下に制約される。システム帯域を有効利用するために用いられるデマンドアサイン方式では、通信を開始する端末局に動的に回線を割り当て、通信終了時に回線を開放するが、各端末局が非同期に回線割当と回線開放を繰り返すため、システム帯域上に複数の空き帯域が生してしまう。そこで、スペクトラムの連続した周波数帯域を複数の帯域(サブスペクトラム)に分割し、各サブスペクトラムを分散した空き帯域に配置して送信し、受信側で元の連続した帯域に復元する帯域分割伝送が用いられる(特許文献1)。また、スペクトラムの帯域の一部を削除して送信し、受信側で削除した帯域を復元する帯域圧縮伝送がある(非特許文献1)。この帯域圧縮伝送と帯域分割伝送を組み合わせることも可能であり、これを帯域圧縮分割伝送という。
【0004】
図5は、帯域圧縮分割伝送の原理を示す。
図5において、初期スペクトラムは、要求速度を達成するために必要な信号形状であり、初期変調スロット数Wmod0(変調信号の半値帯域幅に相当する周波数スロット数)と、一定帯域幅のロールオフスロット数Wroll(占有帯域幅に相当する周波数スロット数から変調スロット数を除いた数)からなる。送信側では、初期スペクトラムから帯域の一部を削除する帯域圧縮を行った後の圧縮変調スロット数Wmod に対して、N個(Nは2以上の整数)のサブスペクトラムに分割して送信する。受信側では、分割帯域を合成し、削除した帯域幅を帯域等化処理により復元することにより、初期スペクトラムと同じ形状のスペクトラムを得る。
【0005】
このような帯域圧縮分割伝送を用いる無線通信システムにおいて、
図3および
図4に示す回線割当装置で行われる従来の回線割当方法(First fit 法)について
図6を参照して説明する。
【0006】
図6において、要求速度に満たす回線帯域(初期変調スロット数)に対して、空き帯域の総量が少ない場合には回線帯域の一部を削除する帯域圧縮を行う。システム帯域の下限周波数に周波数固定ポイント(FP)を設定する。回線割当は、FPに最も近い空き帯域から順番に、帯域圧縮した回線をサブスペクトラムに分割して配置し、配置したサブスペクトラムの合計帯域が、圧縮帯域(圧縮変調スロット数)に達するまで、上記の分割と配置を繰り返す。ここでは3分割の例を示している。
【0007】
回線割当装置では、(1) 選択可能な通信方式、(2) 最大送信電力、(3) 要求速度、により構成される情報を端末局毎に把握する。(1),(2) は予め知り得る端末局固有の情報であるので、端末局ID情報と関連付けて回線割当装置の端末管理DB部にデータベース化する。一方、(3) は回線要求毎に異なる。したがって、端末局は回線要求信号に端末局ID情報と要求速度を付与し制御回線を用いて回線割当装置に送信する。
【0008】
図7は、回線割当装置の構成例を示す。
図7において、回線割当装置は、制御回線送受信部11、アクセス制御部12、端末管理DB部13、回線管理DB部14、回線割当処理部15により構成される。制御回線送受信部11が回線要求信号を受信すると、アクセス制御部12が端末局IDと要求速度を取り出し、回線割当処理部15に通知する。回線割当処理部15では、要求速度と、回線管理DB部14の空き帯域の情報と、端末管理DB部13の端末情報とから、(a) 圧縮率、(b) 分割数(サブスペクトラムの数)、(c) 各サブスペクトラムを構成する変調スロット数、(d) 各サブスペクトラムの中心周波数からなる回線要素を決定し、端末局IDを持つ端末局に回線要素を返信すると共に、回線管理DB部14の内容をアップデートする。回線管理DB部14には、通信中の端末局毎に、使用中の1以上のサブスペクトラムの中心周波数および占有帯域幅に相当する周波数スロット数の情報が、端末IDと関連付けて記憶されている。
【0009】
一方で、端末局は通信が終了すると回線開放信号に端末局IDを付与して制御回線を用いて回線割当装置に送信する。回線割当装置は、制御回線送受信部11が回線開放信号を受信すると、アクセス制御部12が端末局IDを取り出し、回線管理DB部14から割当済み回線の内容を削除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許5483472号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】増野, 杉山:“周波数利用効率を高めるスペクトル抑圧型無線伝送技術の研究開発”,NTT技術ジャーナル,Vol.23, No.11, pp.38-41(2011年11月).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
帯域圧縮分割伝送では、同一要求速度の回線でも、分割数が多いほど所要帯域が増加する。所要帯域が増加すれば、送信電力が増加することとなる。また、分割数や分割帯域幅の組合せに応じてピーク電力が変化し、さらに帯域圧縮前後の帯域幅の比率である帯域圧縮率や、削除帯域の周波数位置に応じてピーク電力が変化する。ピーク電力が電力増幅器の最大送信電力を超えた場合、電力増幅器から出力される信号には非線形歪が発生し、通信品質が劣化する。これに対して従来法では、空き帯域の情報だけを用いて、分割数、分割帯域幅を決定するため、所要帯域の増加による周波数利用効率の低下や、ピーク電力の増加に対応する大電力増幅器が必要となることが課題となる。
【0013】
これに対して、分割数および分割帯域幅の組み合わせを考慮し、端末局の要求速度を満たすとともに最大送信電力および消費電力量を抑え、システム全体で利用できる帯域を有効利用する回線割当方法が特許文献1で開示されている。しかし、特許文献1では、帯域圧縮率を考慮した制御は想定されていない。
【0014】
本発明は、帯域圧縮分割伝送によりシステム帯域を有効利用しつつ、所要帯域とピーク電力の増加を低減することができる回線割当装置および回線割当方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の発明は、複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分割伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当装置において、端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応して一定帯域幅の変調スロット単位で表される初期変調スロット数を算出し、さらに該初期変調スロット数を複数の帯域圧縮率に応じて圧縮した圧縮変調スロット数を算出する圧縮変調スロット数算出手段と、
複数の帯域圧縮率
のそれぞれについて、圧縮変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである圧縮分割パターンを
複数種類ずつ算出する圧縮分割パターン生成手段と、
複数の帯域圧縮率のそれぞれについて複数種類ずつ得られた全ての圧縮分割パターン
から、空き帯域に配置可能な圧縮分割パターンのうち、ピーク電力が端末局の最大送信電力を超えない圧縮分割パターンを
1つ選択する圧縮分割パターン選択手段と、圧縮分割パターン選択手段が選択した圧縮分割パターンと空き帯域の分布に基づいて、端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当手段とを備える。
【0016】
第2の発明は、複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分割伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当装置において、端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応して一定帯域幅の変調スロット単位で表される初期変調スロット数を算出し、さらに該初期変調スロット数を複数の帯域圧縮率に応じて圧縮した圧縮変調スロット数を算出する圧縮変調スロット数算出手段と、
複数の帯域圧縮率
のそれぞれについて、圧縮変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである圧縮分割パターンを
複数種類ずつ算出する圧縮分割パターン生成手段と、
複数の帯域圧縮率のそれぞれについて複数種類ずつ得られた全ての圧縮分割パターン
から、空き帯域に配置可能な圧縮分割パターンのうち、ピーク電力が最小となる圧縮分割パターンを
1つ選択する圧縮分割パターン選択手段と、圧縮分割パターン選択手段が選択した圧縮分割パターンと空き帯域の分布に基づいて、端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当手段とを備える。
【0017】
第3の発明は、複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分割伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当装置において、端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応して一定帯域幅の変調スロット単位で表される初期変調スロット数を算出し、さらに該初期変調スロット数を複数の帯域圧縮率に応じて圧縮した圧縮変調スロット数を算出する圧縮変調スロット数算出手段と、
複数の帯域圧縮率
のそれぞれについて、圧縮変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである圧縮分割パターンを
複数種類ずつ算出する圧縮分割パターン生成手段と、
複数の帯域圧縮率のそれぞれについて複数種類ずつ得られた全ての圧縮分割パターン
から、空き帯域に配置可能な圧縮分割パターンのうち、ピーク電力が端末局の最大送信電力を超えない圧縮分割パターンの中から分割数が最小となる圧縮分割パターンを
1つ選択する、あるいは分割数が最小となる圧縮分割パターンの中からピーク電力が端末局の最大送信電力を超えない圧縮分割パターンを
1つ選択する圧縮分割パターン選択手段と、圧縮分割パターン選択手段が選択した圧縮分割パターンと空き帯域の分布に基づいて、端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当手段とを備える。
【0018】
第4の発明は、複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分割伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当方法において、端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応して一定帯域幅の変調スロット単位で表される初期変調スロット数を算出し、さらに該初期変調スロット数を複数の帯域圧縮率に応じて圧縮した圧縮変調スロット数を算出する圧縮変調スロット数算出ステップと、
複数の帯域圧縮率
のそれぞれについて、圧縮変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである圧縮分割パターンを
複数種類ずつ算出する圧縮分割パターン生成ステップと、
複数の帯域圧縮率のそれぞれについて複数種類ずつ得られた全ての圧縮分割パターン
から、空き帯域に配置可能な圧縮分割パターンのうち、ピーク電力が端末局の最大送信電力を超えない圧縮分割パターンを
1つ選択する圧縮分割パターン選択ステップと、圧縮分割パターン選択ステップが選択した圧縮分割パターンと空き帯域の分布に基づいて、端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当ステップとを有する。
【0019】
第5の発明は、複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分割伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当方法において、端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応して一定帯域幅の変調スロット単位で表される初期変調スロット数を算出し、さらに該初期変調スロット数を複数の帯域圧縮率に応じて圧縮した圧縮変調スロット数を算出する圧縮変調スロット数算出ステップと、
複数の帯域圧縮率
のそれぞれについて、圧縮変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである圧縮分割パターンを
複数種類ずつ算出する圧縮分割パターン生成ステップと、
複数の帯域圧縮率のそれぞれについて複数種類ずつ得られた全ての圧縮分割パターン
から、空き帯域に配置可能な圧縮分割パターンのうち、ピーク電力が最小となる圧縮分割パターンを
1つ選択する圧縮分割パターン選択ステップと、圧縮分割パターン選択ステップが選択した圧縮分割パターンと空き帯域の分布に基づいて、端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当ステップとを有する。
【0020】
第6の発明は、複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分割伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当方法において、端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応して一定帯域幅の変調スロット単位で表される初期変調スロット数を算出し、さらに該初期変調スロット数を複数の帯域圧縮率に応じて圧縮した圧縮変調スロット数を算出する圧縮変調スロット数算出ステップと、
複数の帯域圧縮率
のそれぞれについて、圧縮変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである圧縮分割パターンを
複数種類ずつ算出する圧縮分割パターン生成ステップと、
複数の帯域圧縮率のそれぞれについて複数種類ずつ得られた全ての圧縮分割パターン
から、空き帯域に配置可能な圧縮分割パターンのうち、ピーク電力が端末局の最大送信電力を超えない圧縮分割パターンの中から分割数が最小となる圧縮分割パターンを
1つ選択する、あるいは分割数が最小となる圧縮分割パターンの中からピーク電力が端末局の最大送信電力を超えない圧縮分割パターンを
1つ選択する圧縮分割パターン選択ステップと、圧縮分割パターン選択ステップが選択した圧縮分割パターンと空き帯域の分布に基づいて、端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当ステップとを有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、端末局の要求速度を満たしつつ、端末局の最大送信電力や消費電力量の低減を考慮した回線割当を行うことができ、システム全体の帯域を有効利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明における回線割当処理手順例を示すフローチャートである。
【
図2】圧縮分割パターンの第1の選択方法を示す図である。
【
図4】セルラ通信システムの構成例を示す図である。
【
図5】帯域圧縮分割伝送の原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明では、回線割当の前提として、回線を一定帯域幅の周波数スロットに分け、当該周波数スロット単位で制御する。また、変調方式と誤り訂正符号化率を固定する。
【0024】
複数の帯域圧縮率で帯域圧縮した送信スペクトラムを分割した変調スロット数の組合せは複数あり、これを圧縮分割パターンと呼ぶ。表1には、要求速度を満たす初期変調スロット数Wmod0=8に対して空き帯域の総スロット数が6で帯域圧縮が必要な場合において、帯域圧縮率r=6/8以下のうち、帯域圧縮率r=6/8、圧縮変調スロット数Wmod =6の圧縮分割パターンと、帯域圧縮率r=5/8、圧縮変調スロット数Wmod =5の圧縮分割パターンと、帯域圧縮率r=4/8、圧縮変調スロット数Wmod =4の圧縮分割パターンを示す。
【0025】
なお、連続した空き帯域も想定して、圧縮変調スロット数Wmod =6,5,4で分割しない圧縮分割パターン(分割数1)を加えてもよい。
【0027】
表1において、D (Wmod ,r,i) は、圧縮変調スロット数Wmod 、帯域圧縮率rのi番目の圧縮分割パターンであり、Wj は、分割したj番目のサブスペクトラム(分割スロット)であり、表内の数字は、圧縮分割パターンD (Wmod ,r,i) における分割スロットWj の変調スロット数を示す。例えば、D(6,r,5)は、帯域圧縮率r=6/8で帯域圧縮した圧縮変調スロット数Wmod =6を、変調スロット数1,1,4で分割したものであり、分割数(所要スロット数)は3となる。
【0028】
帯域圧縮分割伝送では、帯域圧縮率、分割数および各分割スロットの変調スロット数に対応する圧縮分割パターンD (Wmod ,r,i) により振幅分布が変わるため、PAPR(ピーク電力対平均電力比)が変化する。すなわち、PAPRは、圧縮分割パターンD (Wmod ,r,i) をパラメータとする関数fで表される。
PAPR=f(D(Wmod ,r,i)) …(1)
【0029】
また、回線の平均電力をPavg とするとき、ピーク電力Ppeakは次式となり、圧縮分割パターンに応じて変化することになる。なお、Pavg は、所要C/N(所要ビット誤り率を確保するために必要な受信電力Cに対する雑音電力Nの比)と要求速度Rreq から決まる。
Ppeak=Pavg ×PAPR
=Pavg ×f(D(Wmod ,r,i)) …(2)
【0030】
表1では各圧縮分割パターンにおけるPAPRの値は省略しているが、PAPRおよびピーク電力の値は圧縮分割パターンD (Wmod ,r,x) に応じて異なる。
【0031】
さらに、圧縮分割パターンごとに、以下に示す削除する周波数帯域に応じてPAPRの値が異なる。
a:帯域の低周波数側を圧縮
b:帯域の中間周波数を圧縮
c:帯域の高周波数側を圧縮
d:a+b(2変調スロット以上圧縮する場合)
e:b+c(2変調スロット以上圧縮する場合)
f:a+c(2変調スロット以上圧縮する場合)
g:a+b+c(3変調スロット以上圧縮する場合)
【0032】
表1における圧縮分割パターンでは、a〜gの圧縮帯域の中で、PAPRが最小となるものが選択されているものとする。このとき、a〜gの圧縮帯域を含む各圧縮分割パターンのPAPRを実測し、各圧縮分割パターンでPAPRの値が最小となるものを選択してもよい。
【0033】
図1は、本発明における回線割当処理手順例を示す。
図1において、ステップ1では、要求速度を特定し、当該要求速度を満たす初期変調スロット数Wmod0と空き帯域の総スロット数を上限とする複数の帯域圧縮率rに応じた圧縮変調スロット数Wmod を算出する。ステップ2では、帯域圧縮率rごとの圧縮変調スロット数Wmod から、表1に示すような圧縮分割パターンを導出する。ステップ3では、圧縮分割パターンの中から1つを選択し、各サブスペクトラムを空き帯域に配置する。選択した圧縮分割パターンの各サブスペクトラムを空き帯域に配置できない場合は、次の圧縮分割パターンを選択する。
【0034】
ここで、ステップ2で得られた圧縮分割パターンからステップ3で1つの圧縮分割パターンの選択する方法は、以下に示す3通りがある。
【0035】
(第1の選択方法)
図2は、圧縮分割パターンの第1の選択方法を示す。ここでは、表1に示す例のうち帯域圧縮率r:6/8の一部と、5/8の圧縮分割パターンを再現している。
【0036】
第1の選択方法は、表1に示すような帯域圧縮率ごとに複数種類の圧縮分割パターンのうち、ピーク電力≦最大送信電力となる圧縮分割パターンの中から任意の1つを選択し(以下、選択パターンと呼ぶ)、選択パターンのサブスペクトラムをシステム帯域内の空き帯域に配置できるか否かを判定する。空き帯域に選択パターンのサブスペクトラムを全て配置できない場合は、次の選択パターンを選択し、配置できるまでこの操作を繰り返す(First fit 配置)。
【0037】
空き帯域の総スロット数が6で、空き帯域が3スロットと3スロットに分割している
図2に示す例において、帯域圧縮率r:6/8,5/8,…の圧縮分割パターンのうち、ピーク電力≦最大送信電力となる圧縮分割パターンの中の1つを選択する。このとき、選択パターンが空き帯域に配置できない場合には選択不可となり、空き帯域に配置可能となるまで選択パターンを入れ替え、配置可能となった時点で選択終了とする。例えば、帯域圧縮率:6/8の圧縮分割パターン(1,5)、(2,4)は配置不可であるが、圧縮分割パターン(3,3)を配置可能である。帯域圧縮率:5/8の圧縮分割パターンのうち、(1,4)以外は配置可能である。帯域圧縮率:5/8の圧縮分割パターンを選択する場合は、1スロットが空きとして残る。
【0038】
従来は、想定される全ての分割パターンのうち、最もPAPRの大きいパターンに対しても最大送信電力が不足しないよう、端末には大電力の電力増幅器が必要であった。一方、本発明では、ピーク電力≦最大送信電力となる圧縮分割パターンの1つを選択して回線割当を行うので、大電力の電力増幅器を用いなくても歪のない信号伝送が可能となり、ひいては電力増幅器の小型化を図ることができる。
【0039】
ここで、選択パターンのa番目のサブスペクトラムに対し、配置できる空き帯域の候補が複数ある場合は、a番目のサブスペクトラムをb番目の空き帯域に配置した後に、b番目の空き帯域内に残留する周波数軸上で連続した空きスロットの数が最小となる候補に配置してもよい(Best fit配置、特許文献1参照)。
【0040】
(第2の選択方法)
第2の選択方法は、表1に示すような帯域圧縮率ごとに複数種類の圧縮分割パターンのうち、ピーク電力が最小の圧縮分割パターンの1つを選択する。空き帯域に対して配置不可の場合は、ピーク電力がその次に小さいものを選択し、配置できるまでこの操作を繰り返す。
【0041】
空き帯域の総スロット数が6で、空き帯域が3スロットと3スロットに分割している
図2に示す例において、帯域圧縮率r:6/8,5/8,…の圧縮分割パターンのうち、ピーク電力が最小となる圧縮分割パターン、例えば帯域圧縮率r:6/8の圧縮分割パターン(1,5)を選択する。このとき、空き帯域に配置不可となるので、次にピーク電力が小さい圧縮分割パターンを順次選択し、配置可能となった時点で選択終了とする。
【0042】
これにより、配置可能な圧縮分割パターンの中で、常に最小のピーク電力である回線割当が行われるので、ピーク電力の平均値を小さくできる。動作点を変えることで最大送信電力を制御可能な電力増幅器と組み合わせれば、割り当てられた回線のピーク電力に応じて最大送信電力を制御することで、端末の平均的な消費電力を抑えることができる。
【0043】
(第3の選択方法)
第3の選択方法は、表1に示すような帯域圧縮率ごとに複数種類の圧縮分割パターンのうち、ピーク電力≦最大送信電力となる圧縮分割パターンの中から分割数(所要スロット数)が最小となるものを選択する。空き帯域に対して配置不可の場合は、分割数がその次に小さいものを選択し、配置できるまでこの操作を繰り返す。または、帯域圧縮率ごとに複数種類の圧縮分割パターンの中から分割数(所要スロット数)が最小のものを選択し、その中からピーク電力≦最大送信電力となる任意の1つの圧縮分割パターンを選択する。空き帯域に対して配置不可の場合は、次の圧縮分割パターンを選択し、さらに分割数が最小の圧縮分割パターンの中に配置可能なものがなければ、分割数を1つ増やして配置できるまでこの操作を繰り返す。
【0044】
空き帯域の総スロット数が6で、空き帯域が3スロットと3スロットに分割している
図2に示す例において、帯域圧縮率:6/8,5/8,…の圧縮分割パターンのうち、ピーク電力≦最大送信電力となり、かつ分割数が最小となる圧縮分割パターンとして、帯域圧縮率:6/8の圧縮分割パターン(1,5)、(2,4)、(3,3)と、帯域圧縮率:5/8の圧縮分割パターン(1,4)、(2,3)が候補となる。ここで、空き帯域に配置可能な圧縮分割パターン(3,3)、(2,3)のいずれかを選択すればよい。さらに、その中からピーク電力が最小となる圧縮分割パターンを選択してもよい。
【0045】
これにより、第1の選択方法の効果に加え、分割数(所要スロット数)が小さい、すなわち周波数利用効率が高い回線割当を実施することができる。
【0046】
以上説明した圧縮分割パターンを選択して割り当てる回線割当装置は、コンピュータとプログラムにより実現することができる。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶することも、ネットワークを介して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
11 制御回線送受信部
12 アクセス制御部
13 端末管理DB部
14 回線管理DB部
15 回線割当処理部