(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記式(A−1)で表される化合物または上記式(A−2)で表される化合物における少なくとも1つの水素が、上記式(FG−1)で表される基で置換されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の発光層形成用組成物。
第3成分が上記式(A−1)で表される化合物および/または上記式(A−2)で表される化合物に対する良溶媒(GS)と貧溶媒(PS)とを含み、良溶媒(GS)の沸点(BPGS)が貧溶媒(PS)の沸点(BPPS)よりも低い、請求項1〜12のいずれか一項に記載の発光層形成用組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、低分子材料でありながら、溶媒への溶解性が優れ、かつ高い三重項エネルギーを有する多環芳香族化合物を提供することを課題とする。また、前記の多環芳香族化合物に機能性官能基を付与することで、化合物の溶解性、成膜性および湿式塗布性および面内配向性が改善された多環芳香族化合物を提供することを課題とする。加えて、上記の多環芳香族化合物または機能性官能基を付与した多環芳香族化合物をホストとして用いた湿式成膜用の発光層形成用インク組成物を提供することを課題とする。さらに、該インク組成物を湿式成膜法を用いることによって有機EL素子の発光層として用いることで、効率、寿命および駆動電圧のうちの少なくとも1つが優れた有機EL素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ホウ素原子と酸素原子などで複数の芳香族環を連結した新規な多環芳香族化合物が、それらが低分子材料でありながら、溶媒への溶解性が優れ、かつ高い三重項エネルギーを有することを見出した。加えて、前記の多環芳香族化合物に機能性官能基を付与することで、化合物の溶解性、成膜性、湿式塗布性および面内配向性を更に改善できることを見出した。さらに、ホストとして上記の多環芳香族化合物または機能性官能基を付与した多環芳香族化合物と、ドーパントとして三重項エネルギー(E
T)が1.8〜3.0eVである燐光材料または熱活性型遅延蛍光材料と、加えて、適切な有機溶媒とを組み合わせることによって、湿式成膜法で良好な成膜性および保管安定性を有する発光層形成用組成物(インク組成物)が得られることを見出した。また、該インク組成物を用いた有機EL素子は、効率、寿命および駆動電圧のうちの少なくとも1つが優れることを見出した。
【0011】
[1]
有機電界発光素子の発光層を塗布形成するための発光層形成用組成物であって、
第1成分として、下記一般式(A−1)で表される化合物および下記一般式(A−2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、
第2成分として、三重項エネルギー(E
T)が1.8〜3.0eVである化合物を少なくとも1種と、
第3成分として、有機溶媒を少なくとも1種と、
を含む発光層形成用組成物。
【化15】
(一般式(A−1)において、
R
1〜R
11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよく、
R
1〜R
11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよく、
上記式(A−1)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、下記一般式(FG−1)で表される基、下記一般式(FG−2)で表される基、炭素数1〜24のアルキル、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、
さらに、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−または−Si(CH
3)
2−で置換されていてもよく、前記アルキルにおける上記式(A−1)で表される化合物に直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記アルキルにおける任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。)
【化16】
(一般式(A−2)において、
R
1〜R
16は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよく、
R
1〜R
16のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環、c環またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよく、
上記式(A−2)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、下記一般式(FG−1)で表される基、下記一般式(FG−2)で表される基、炭素数1〜24のアルキル、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、
さらに、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−または−Si(CH
3)
2−で置換されていてもよく、前記アルキルにおける上記式(A−2)で表される化合物に直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記アルキルにおける任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。)
【化17】
(一般式(FG−1)において、
Rは、それぞれ独立して、フッ素、トリメチルシリル、トリフルオロメチル、炭素数1〜24のアルキルまたは炭素数3〜24のシクロアルキルであり、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−で置換されていてもよく、前記アルキルにおけるフェニルまたはフェニレンに直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記シクロアルキルにおける少なくとも1つの水素は炭素数1〜24のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールで置換されていてもよく、
隣接する2つのRがアルキルまたはシクロアルキルであるとき、これらは結合して環を形成していてもよく、
mはそれぞれ独立して0〜4の整数であり、
nは0〜5の整数であり、
pは1〜5の整数である。)
【化18】
(一般式(FG−2)において、
Rは、それぞれ独立して、フッ素、トリメチルシリル、トリフルオロメチル、炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜24のシクロアルキルまたは炭素数6〜12のアリールであり、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−で置換されていてもよく、前記アルキルにおけるフェニルまたはフェニレンに直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記シクロアルキルにおける少なくとも1つの水素は炭素数1〜24のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールで置換されていてもよく、前記アリールにおける少なくとも1つの水素は炭素数1〜24のアルキルで置換されていてもよく、
隣接する2つのRがアルキルまたはシクロアルキルであるとき、これらは結合して環を形成していてもよく、
mは0〜4の整数であり、
nはそれぞれ独立して0〜5の整数である。)
【0012】
[2]
第1成分が上記式(A−1)で表される化合物を含有する、上記[1]に記載の発光層形成用組成物。
【0013】
[3]
上記式(A−1)において、
R
1〜R
11は、それぞれ独立して、水素、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)であり、これらにおける少なくとも1つの水素はさらに炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)で置換されていてもよく、
R
1〜R
11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共に炭素数9〜16のアリール環または炭素数6〜15のヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)で置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらに炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)で置換されていてもよく、
上記式(A−1)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、上記式(FG−1)で表される基、上記式(FG−2)で表される基、炭素数1〜24のアルキル、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい、
上記[1]または[2]に記載の発光層形成用組成物。
【0014】
[4]
上記式(A−1)において、
R
1〜R
11は、それぞれ独立して、水素、および下記式(RG−1)〜式(RG−10)で表される基からなる群から選ばれるものであり、
下記式(RG−1)〜式(RG−10)で表される基は*において上記式(A−1)と結合し、
【化19】
上記式(A−1)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、上記式(FG−1)で表される基、上記式(FG−2)で表される基または炭素数7〜24のアルキルで置換されている、
上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の発光層形成用組成物。
【0015】
[5]
上記式(A−1)で表される化合物が、下記式(1−1−z)、式(1−49−z)、式(1−91−z)、式(1−100−z)、式(1−152−z)、式(1−176−z)、式(1−1048−z)、式(1−1049−z)、式(1−1050−z)、式(1−1069−z)、式(1−1101−z)、式(1−1102−z)または式(1−1103−z)で表される化合物である、
上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の発光層形成用組成物。
【化20】
(上記式中のzは、水素、上記式(FG−1)で表される基、上記式(FG−2)で表される基または炭素数7〜24のアルキルであり、すべてのzが水素になることはない。)
【0016】
[6]
第1成分が上記式(A−2)で表される化合物を含有する、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の発光層形成用組成物。
【0017】
[7]
上記式(A−2)において、
R
1〜R
16は、それぞれ独立して、水素、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)であり、これらにおける少なくとも1つの水素はさらに炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)で置換されていてもよく、
R
1〜R
16のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共に炭素数9〜16のアリール環または炭素数6〜15のヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)で置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらに炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)で置換されていてもよく、
上記式(A−2)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、上記式(FG−1)で表される基、上記式(FG−2)で表される基、炭素数1〜24のアルキル、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい、
上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の発光層形成用組成物。
【0018】
[8]
上記式(A−2)において、
R
1〜R
16は、それぞれ独立して、水素、および上記式(RG−1)〜式(RG−10)で表される基からなる群から選ばれるものであり、
上記式(RG−1)〜式(RG−10)で表される基は*において上記式(A−2)と結合し、
上記式(A−2)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、上記式(FG−1)で表される基、上記式(FG−2)で表される基または炭素数7〜24のアルキルで置換されている、
上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の発光層形成用組成物。
【0019】
[9]
上記式(FG−1)において、mおよびnは0であり、pは1〜3の整数であり、
上記式(FG−2)において、mおよびnは0である、
上記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の発光層形成用組成物。
【0020】
[10]
上記式(A−1)で表される化合物または上記式(A−2)で表される化合物における少なくとも1つの水素が、上記式(FG−1)で表される基で置換されている、上記[1]〜[9]のいずれか一項に記載の発光層形成用組成物。
【0021】
[11]
第2成分が、下記一般式(B−1)で表される化合物および下記一般式(B−2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]〜[10]のいずれか一項に記載の発光層形成用組成物。
【化21】
(一般式(B−1)において、
Mは、Ir、Pt、Au、Eu、Ru、Re、AgおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種であり、nは1〜3の整数であり、「X−Y」はそれぞれ独立して二座のモノアニオン性配位子である。)
【化22】
(一般式(B−2)において、
EDは電子供与性基であり、Lnは結合基であり、EAは電子受容性基であり、式(B−2)で表される化合物の一重項エネルギー(S
1)と三重項エネルギー(T
1)のエネルギー差(ΔS
1T
1)は0.2eV以下である。)
【0022】
[12]
第3成分における少なくとも1種の有機溶媒の沸点が130℃〜300℃である、上記[1]〜[11]のいずれか一項に記載の発光層形成用組成物。
【0023】
[13]
第3成分が上記式(A−1)で表される化合物および/または上記式(A−2)で表される化合物に対する良溶媒(GS)と貧溶媒(PS)とを含み、良溶媒(GS)の沸点(BP
GS)が貧溶媒(PS)の沸点(BP
PS)よりも低い、上記[1]〜[12]のいずれか一項に記載の発光層形成用組成物。
【0024】
[14]
第1成分が発光層形成用組成物の全重量に対して0.0999重量%〜8.0重量%であり、
第2成分が発光層形成用組成物の全重量に対して0.0001重量%〜2.0重量%であり、
第3成分が発光層形成用組成物の全重量に対して90.0重量%〜99.9重量%である、
上記[1]〜[13]のいずれか一項に記載の発光層形成用組成物。
【0025】
[15]
上記[1]〜[14]のいずれか一項に記載の発光層形成用組成物を用いて形成される発光層を有する有機電界発光素子。
【0026】
[16]
上記[15]に記載の有機電界発光素子を備えた表示装置。
【0027】
[17]
下記一般式(A−1)で表される化合物。
【化23】
(一般式(A−1)において、
R
1〜R
11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよく、
R
1〜R
11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよく、
上記式(A−1)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、下記一般式(FG−1)で表される基、下記一般式(FG−2)で表される基または炭素数7〜24のアルキルで置換されており、上記式(A−1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はさらにハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、
さらに、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−または−Si(CH
3)
2−で置換されていてもよく、前記アルキルにおける上記式(A−1)で表される化合物に直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記アルキルにおける任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。)
【化24】
(一般式(FG−1)において、
Rは、それぞれ独立して、フッ素、トリメチルシリル、トリフルオロメチル、炭素数1〜24のアルキルまたは炭素数3〜24のシクロアルキルであり、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−で置換されていてもよく、前記アルキルにおけるフェニルまたはフェニレンに直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記シクロアルキルにおける少なくとも1つの水素は炭素数1〜24のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールで置換されていてもよく、
隣接する2つのRがアルキルまたはシクロアルキルであるとき、これらは結合して環を形成していてもよく、
mはそれぞれ独立して0〜4の整数であり、
nは0〜5の整数であり、
pは1〜5の整数である。)
【化25】
(一般式(FG−2)において、
Rは、それぞれ独立して、フッ素、トリメチルシリル、トリフルオロメチル、炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜24のシクロアルキルまたは炭素数6〜12のアリールであり、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−で置換されていてもよく、前記アルキルにおけるフェニルまたはフェニレンに直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記シクロアルキルにおける少なくとも1つの水素は炭素数1〜24のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールで置換されていてもよく、前記アリールにおける少なくとも1つの水素は炭素数1〜24のアルキルで置換されていてもよく、
隣接する2つのRがアルキルまたはシクロアルキルであるとき、これらは結合して環を形成していてもよく、
mは0〜4の整数であり、
nはそれぞれ独立して0〜5の整数である。)
【0028】
[18]
下記一般式(A−2)で表される化合物。
【化26】
(一般式(A−2)において、
R
1〜R
16は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよく、
R
1〜R
16のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環、c環またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよく、
上記式(A−2)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、下記式(FG−1)で表される基、下記一般式(FG−2)で表される基または炭素数7〜24のアルキルで置換されており、上記式(A−2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はさらにハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、
さらに、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−または−Si(CH
3)
2−で置換されていてもよく、前記アルキルにおける上記式(A−2)で表される化合物に直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記アルキルにおける任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。)
【化27】
(一般式(FG−1)において、
Rは、それぞれ独立して、フッ素、トリメチルシリル、トリフルオロメチル、炭素数1〜24のアルキルまたは炭素数3〜24のシクロアルキルであり、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−で置換されていてもよく、前記アルキルにおけるフェニルまたはフェニレンに直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記シクロアルキルにおける少なくとも1つの水素は炭素数1〜24のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールで置換されていてもよく、
隣接する2つのRがアルキルまたはシクロアルキルであるとき、これらは結合して環を形成していてもよく、
mはそれぞれ独立して0〜4の整数であり、
nは0〜5の整数であり、
pは1〜5の整数である。)
【化28】
(一般式(FG−2)において、
Rは、それぞれ独立して、フッ素、トリメチルシリル、トリフルオロメチル、炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜24のシクロアルキルまたは炭素数6〜12のアリールであり、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−で置換されていてもよく、前記アルキルにおけるフェニルまたはフェニレンに直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記シクロアルキルにおける少なくとも1つの水素は炭素数1〜24のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールで置換されていてもよく、前記アリールにおける少なくとも1つの水素は炭素数1〜24のアルキルで置換されていてもよく、
隣接する2つのRがアルキルまたはシクロアルキルであるとき、これらは結合して環を形成していてもよく、
mは0〜4の整数であり、
nはそれぞれ独立して0〜5の整数である。)
【発明の効果】
【0029】
本発明の好ましい態様によれば、例えば、有機EL素子用材料として用いることができる多環芳香族化合物を提供することができ、また、この多環芳香族化合物の優れた溶解性、成膜性、湿式塗布性および面内配向性を活かして、湿式成膜法で良好な成膜性および保管安定性を有する発光層形成用インク組成物を提供することができる。さらに、この多環芳香族化合物を含む組成物を用いることで優れた有機EL素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
1.発光層形成用組成物
本発明の発光層形成用組成物は、有機EL素子の発光層を塗布形成するための組成物である。該組成物は、第1成分として、一般式(A−1)で表される化合物および一般式(A−2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種と、第2成分として、三重項エネルギー(E
T)が1.8〜3.0eVである化合物を少なくとも1種と、第3成分として、有機溶媒を少なくとも1種と、を含有する。第1成分は、該組成物から得られる発光層のホスト成分として機能し、第2成分は発光層のドーパント成分として機能する。
【0032】
1−1.第1成分
式(A−1)または式(A−2)で表される化合物である多環芳香族化合物は、大きなHOMO−LUMOギャップ(薄膜におけるバンドギャップEg)と高い三重項励起エネルギー(E
T)を有する。これは、ヘテロ元素を含む6員環は芳香属性が低いため、共役系の拡張に伴うHOMO−LUMOギャップの減少が抑制されること、ヘテロ元素の電子的な摂動により三重項励起状態(T1)のSOMO1およびSOMO2が局在化することが原因となっている。更に、これらの多環芳香族化合物は、置換基の導入により、HOMOとLUMOのエネルギーを任意に動かすことができるため、イオン化ポテンシャルや電子親和力を周辺材料に応じて最適化することが可能である。式(A−1)または式(A−2)で表される化合物は、高い三重項エネルギーを有しているために、燐光材料および熱活性型遅延蛍光材料のホストとして好ましい。
【0033】
1−1−1.一般式(A−1)で表される化合物
【化29】
【0034】
式(A−1)において、R
1〜R
11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよく、
R
1〜R
11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよい。
また、上記式(A−1)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、一般式(FG−1)で表される基、一般式(FG−2)で表される基、または炭素数1〜24のアルキルで置換されていてもよく、さらに、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−または−Si(CH
3)
2−で置換されていてもよく、前記アルキルにおける上記式(A−1)で表される化合物に直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記アルキルにおける任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。
また、上記式(A−1)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
【0035】
式(A−1)では、a環、b環およびc環の置換基R
1〜R
11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよい。ただし、ここで「隣接する基」とは同一環上で隣り合う基を表し、「隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成」した化合物は、例えば、後述する具体的な化合物として列挙した式(1−2)〜(1−17)で表されるような化合物に対応する。すなわち、例えばa環(またはb環またはc環)に対してベンゼン環、インドール環、ピロール環、ベンゾフラン環またはベンゾチオフェン環が縮合して形成される化合物であり、形成されてできた縮合環はそれぞれナフタレン環、カルバゾール環、インドール環、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環である。
【0036】
1−1−2.一般式(A−2)で表される化合物
【化30】
式(A−2)において、R
1〜R
16は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよく、
R
1〜R
16のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環、c環またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよい。
また、上記式(A−2)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、一般式(FG−1)で表される基、一般式(FG−2)で表される基、または炭素数1〜24のアルキルで置換されていてもよく、さらに、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−または−Si(CH
3)
2−で置換されていてもよく、前記アルキルにおける上記式(A−2)で表される化合物に直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記アルキルにおける任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。
また、上記式(A−2)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
【0037】
式(A−2)では、a環、b環、c環およびd環の置換基R
1〜R
16のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環、c環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよい。ただし、ここで「隣接する基」とは同一環上で隣り合う基を表し、「隣接する基同士が結合してa環、b環、c環またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成」した化合物は、例えば、後述する式(A−1)の具体的な化合物として列挙した式(1−2)〜(1−17)で表されるような化合物を参考にして説明することができる。すなわち、例えばa環(またはb環またはc環またはd環)に対してベンゼン環、インドール環、ピロール環、ベンゾフラン環またはベンゾチオフェン環が縮合して形成される化合物であり、形成されてできた縮合環はそれぞれナフタレン環、カルバゾール環、インドール環、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環である。
【0038】
1−1−3.「一般式(A−1)におけるR1〜R11」および「一般式(A−2)におけるR1〜R16」
「式(A−1)におけるR
1〜R
11」および「式(A−2)におけるR
1〜R
16」は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシであって、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(2つの炭素数6〜30のアリールを有するアミノ)、ジヘテロアリールアミノ(2つの炭素数2〜30のヘテロアリールを有するアミノ)、アリールヘテロアリールアミノ(炭素数6〜30のアリールと炭素数2〜30のヘテロアリールとを有するアミノ)または炭素数6〜30のアリールオキシが好ましい。
【0039】
「アリール」、「ジアリールアミノ」のアリール、「アリールヘテロアリールアミノ」のアリール、および、「アリールオキシ」のアリールとしては、例えば、単環系であるベンゼン環、二環系であるビフェニル環、縮合二環系であるナフタレン環、三環系であるテルフェニル環(m−テルフェニル、o−テルフェニル、p−テルフェニル)、縮合三環系である、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、縮合四環系であるトリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、縮合五環系であるペリレン環、ペンタセン環などがあげられる。さらに、後述するように、これらのアリールに以下で定義するヘテロアリールが置換したものも、本願明細書ではアリールとして定義する。
【0040】
「へテルアリール」、「ジヘテロアリールアミノ」のヘテロアリール、および、「アリールヘテロアリールアミノ」のヘテロアリールとしては、例えば、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H−インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H−ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラザン環、オキサジアゾール環、チアントレン環およびN−アリール置換された前記ヘテロアリールなどの一価の基があげられる。さらに、後述するように、これらのヘテロアリールに以上で定義したアリールが置換したものも、本願明細書ではヘテロアリールとして定義する。
【0041】
また、式(A−1)におけるR
1〜R
11や式(A−2)におけるR
1〜R
16として説明した、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシは、これらにおける少なくとも1つの水素がさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよい。このように置換するアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノとしては、R
1〜R
11やR
1〜R
16の欄で説明したものと同じものがあげられる。
【0042】
R
1〜R
11やR
1〜R
16の具体的なものとしては、例えば、下記式(RG−1)〜式(RG−10)で表される基があげられる。なお、下記式(RG−1)〜式(RG−10)で表される基は*において上記式(A−1)や式(A−2)と結合する。
【化31】
【0043】
上述した具体的な基を参考にして、本願明細書で定義する「アリール」および「ヘテロアリール」について説明すると、式(RG−1)、式(RG−4)および式(RG−7)はアリールであり、式(RG−2)、式(RG−3)および式(RG−6)はヘテロアリールであり、式(RG−9)はヘテロアリールが置換したヘテロアリールであり、式(RG−10)はヘテロアリールが置換したアリールである。なお、式(RG−5)はジアリールアミノ(ジフェニルアミノ基)が置換したアリール(フェニル基)であり、式(RG−8)はジアリールアミノ(ジフェニルアミノ基)である。
【化32】
【0044】
1−1−4.一般式(A−1)において、a環、b環またはc環の隣接する基同士が結合して形成する環、および、一般式(A−2)において、a環、b環、c環またはd環の隣接する基同士が結合して形成する環
式(A−1)における「R
1〜R
11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共に形成されたアリール環」、および、式(A−2)における「R
1〜R
16のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環、c環またはd環と共に形成されたアリール環」としては、例えば、炭素数6〜30のアリール環があげられ、炭素数6〜16のアリール環が好ましく、炭素数6〜12のアリール環がより好ましく、炭素数6〜10のアリール環が特に好ましい。ただし、形成されたアリール環の炭素数はa環、b環、c環またはd環の炭素数6を含める。
【0045】
形成されたアリール環の具体例としては、例えば、縮合二環系であるナフタレン環、縮合三環系である、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、縮合四環系であるトリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、縮合五環系であるペリレン環、ペンタセン環などがあげられる。
【0046】
式(A−1)における「R
1〜R
11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共に形成されたヘテロアリール環」、および、式(A−2)における「R
1〜R
16のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環、c環またはd環と共に形成されたアリール環」としては、例えば、炭素数6〜30のヘテロアリール環があげられ、炭素数6〜25のヘテロアリール環が好ましく、炭素数6〜20のヘテロアリール環がより好ましく、炭素数6〜15のヘテロアリール環がさらに好ましく、炭素数6〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、「ヘテロアリール環」としては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。ただし、形成されたヘテロアリール環の炭素数はa環、b環、c環またはd環の炭素数6を含める。
【0047】
形成されたヘテロアリール環の具体例としては、例えば、インドール環、イソインドール環、1H−インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H−ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、チアントレン環などがあげられる。
【0048】
形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよい。この説明については、式(A−1)のR
1〜R
11や式(A−2)のR
1〜R
16における説明を引用することができる。
【0049】
1−1−5.化合物への置換
式(A−1)または式(A−2)で表される化合物における少なくとも1つの水素(化合物中のアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つの水素)は、式(FG−1)で表される基、式(FG−2)で表される基、または炭素数1〜24のアルキルで置換されていてもよく、さらに、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−または−Si(CH
3)
2−で置換されていてもよく、前記アルキルにおける上記化合物に直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記アルキルにおける任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。
【0050】
式(FG−1)で表される基、式(FG−2)で表される基、または炭素数1〜24のアルキルは、分子の適当な位置に、適当な長さおよび構造で置換されることで、化合物の溶媒への溶解性、成膜性、湿式塗布性、熱的安定性、および配向性を更に改善することが可能である。
【0051】
溶解性制御の分子設計指針の一つとして、分子への柔軟性付与がある。これは、固体分子間の凝集力を低減させ、溶解時に速やかな溶媒の浸潤を促すことによって、溶解性を改善または制御することができると考えている。一般的には、アルキル鎖が分子中へ導入されるが、有機EL素子として用いる場合は、アルキル鎖が分子同士の集積を阻害しキャリアパスを破壊することがあるため、有機EL素子の駆動電圧の上昇や移動度の低下などを招く場合もある。
【0052】
このような状況において、m位でフェニレンが連結した構造の式(FG−1)または式(FG−2)で表される基を導入することにより、有機EL素子の特性を悪化させずに高い溶解性を付与できることを見出した。式(FG−1)または式(FG−2)で表される基中のフェニル−フェニル間の複数の回転が組み合わさった時に、式(FG−1)または式(FG−2)で表される基は大きな回転体積を描くことができ非常に柔軟性に富むため、式(FG−1)または式(FG−2)で表される基を付与した誘導体は高い溶解性を有することができると考えられる。溶解性の観点から言えば、特に、式(FG−1)で表される基が長い方が高い柔軟性を有し分子に溶解性を付与できるために好ましい。また、分子全体で式(FG−1)または式(FG−2)で表される基の柔軟性を邪魔しない構造を取る方が、式(FG−1)または式(FG−2)で表される基の柔軟性は最大限に生かされ十分な溶解性が付与されるために、好ましい。
【0053】
加えて、ビフェニル構造は結晶中ではフェニル環同士の成す角が0°で平面構造を取ることが知られており、式(FG−1)または式(FG−2)で表される基についても同様に固体中で平面構造をとりうる。式(FG−1)または式(FG−2)で表される基は溶液中では柔軟性を有するが、成膜後には式(FG−1)または式(FG−2)で表される基の柔軟性は抑えられ、膜中では分子どうしが十分に密に充填されると考えられる。これは、キャリア輸送のパスを膜中に生じさせるためにキャリア移動度の向上および駆動電圧の低下につながる。キャリア輸送のパスの観点から言えば、特に、式(FG−1)で表される基が短い方が、パスを担う式(FG−1)で表される基以外の構造の密度を増加させることができるために好ましい。
【0054】
本明細書において「湿式塗布性」とは、湿式塗布性で成膜した膜の平滑性および均一性の尺度を示す。湿式成膜時に、溶解性が低いと膜にならず結晶が析出し、一方で、溶解性が高いとピンホールや弾きなどの膜欠陥が発生する場合もある。また、厳密に言えば、他成分の溶解性と差がありすぎると成分の分離が発生したり、さらには、溶媒との相性や組成、成膜・乾燥・焼成の工程が膜質に影響し、良質な膜を得るためには各要素の緻密な調整が必要となる場合もある。したがって、分子のHOMOおよびLUMOを変えることなく溶解性を制御することが、湿式塗布性の制御につながると考えられる。
【0055】
式(FG−1)または式(FG−2)で表される基は、HOMOやLUMOを担う式(FG−1)または式(FG−2)で表される基以外の構造に大きな影響を与えずに、溶解性の制御が可能である。また、この式(FG−1)または式(FG−2)で表される基によれば、溶解性に幅を与えることができ、発光層形成用組成物の柔軟な調整が可能となる。
【0056】
有機EL素子の駆動時の安定性は熱的安定性(ガラス転移点)によって見積もられ、ガラス転移点を高くするためには、一つには、分子の凝集力を大きくするとよいと考えられる。つまり、溶解性を改善すればするほど、分子は柔軟になり、ガラス転移点が低くなり、熱的安定性も低くなる場合がある。
【0057】
また、式(FG−1)で表される基の付与により、分子に柔軟性を付与することができる一方で、膜中で密な充填が期待できる結果、分子運動を制約できるため、内的および外的な熱に対しての安定性の改善につながる。熱的安定性の観点から言えば、式(FG−1)で表される基が長い方が、分子を大きくすることができ、Tgを上昇させることができる。また、式(FG−2)で表される基は式(FG−1)で表される基と比べ平面性が高くなるためにTgの上昇効果が大きい。
【0058】
有機EL素子に用いられる化合物の特性向上を目指して、剛直な構造を分子中に持たせることで面内配向性を付与する検討がなされている。一般的に面内配向性を有する化合物は、p−ターフェニルなど剛直で直線性の高い構造を有するために、溶解性は乏しい。
【0059】
しかし、本発明者らは、従来の技術常識に反して、式(FG−1)で表される基を長く、分子が棒状になるように置換することで、剛直な分子でなくとも高い面内配向性を与えられることを発見した。この場合、剛直で直線性の高い構造ではないため、溶解性が低下することもない。面内配向性の観点から言えば、式(FG−1)で表される基が長く、および、分子を棒状にすることが好ましい。また、式(FG−1)で表される基が十分に長い場合は分子が屈曲を持っていても高い面内配向性を発現させることが可能である。
【0060】
また、アルキル鎖を導入された分子であっても、アルキル鎖が分子同士の集積を阻害しないよう鎖長や構造を制御することで、有機EL素子の特性の悪化を防ぐことができる。
【0061】
式(A−1)または式(A−2)で表される化合物は、分子中の少なくとも1つの水素が、式(FG−1)で表される基、式(FG−2)で表される基、または炭素数7〜24のアルキルで置換されていることが、塗布製膜性および面内配向性の改善の観点からより好ましい。
【0062】
1−1−5−1.一般式(FG−1)で表される基
【化33】
式(FG−1)において、Rは、それぞれ独立して、フッ素、トリメチルシリル、トリフルオロメチル、炭素数1〜24のアルキルまたは炭素数3〜24のシクロアルキルであり、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−で置換されていてもよく、前記アルキルにおけるフェニルまたはフェニレンに直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記シクロアルキルにおける少なくとも1つの水素は炭素数1〜24のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールで置換されていてもよく、隣接する2つのRがアルキルまたはシクロアルキルであるとき、これらは結合して環を形成していてもよく、mはそれぞれ独立して0〜4の整数であり、nは0〜5の整数であり、pは1〜5の整数である。なお、「隣接する2つのR」とは同一環上で隣り合う基を表す。
【0063】
フェニレンの連結数pは、化合物の溶解性、成膜性、湿式塗布性、熱的安定性、面内配向性の観点から、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1または2がさらに好ましい。
【0064】
置換基Rの置換数mおよびnについては、mについては、0〜4が好ましく、0〜2がより好ましく、0〜1がさらに好ましく、0が特に好ましく、nについては、0〜5が好ましく、0〜3がより好ましく、0〜1がさらに好ましく、0が特に好ましい。
【0065】
「式(FG−1)で表される基への置換基R」ついては、機能性官能基の柔軟性と成膜時の充填性の観点から、フェニル−フェニル結合に対して(隣接するフェニル基同士の結合位置を基準として)o位以外に置換基Rを有することが好ましく、フェニル−フェニル結合に対してより離れた位置に置換基Rを有することがより好ましい。
【0066】
「式(FG−1)で表される基への置換基R」の具体例としては、フッ素、トリメチルシリル、トリフルオロメチル、炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜24のシクロアルキル、任意の−CH
2−が−O−で置換された炭素数1〜24のアルキル、フェニルまたはフェニレンに直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−が炭素数6〜24のアリーレンで置換された炭素数1〜24のアルキル、少なくとも1つの水素が炭素数1〜24のアルキルで置換された炭素数3〜24のシクロアルキル、または少なくとも1つの水素が炭素数6〜12のアリールで置換された炭素数3〜24のシクロアルキルがあげられる。
【0067】
「炭素数1〜24のアルキル」としては、直鎖および分枝鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分枝鎖アルキルがあげられる。炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分枝鎖アルキル)が好ましく、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分枝鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分枝鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分枝鎖アルキル)が特に好ましい。
【0068】
「炭素数1〜24のアルキル」としては、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、およびn−エイコシルなどがあげられるが、それだけに限定されない。
【0069】
「任意の−CH
2−が−O−で置換された炭素数1〜24のアルキル」としては、具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ、2−エトキシエトキシ、2−プロポキシエトキシ、2−ブトキシエトキシ、2−エトキシ−(2−エトキシエトキシ)、および2−エトキシ−(2−エトキシ−(2−エトキシエトキシ))などがあげられるが、それだけに限定されない。
【0070】
「フェニルまたはフェニレンに直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−が炭素数6〜24のアリーレンで置換された炭素数1〜24のアルキル」としては、具体的には、メチルベンジル、エチルベンジル、およびプロピルベンジルなどがあげられるが、それだけに限定されない。
【0071】
「炭素数3〜24のシクロアルキル」としては、炭素数3〜12のシクロアルキルが好ましく、炭素数3〜10のシクロアルキルがより好ましく、炭素数3〜8のシクロアルキルがさらに好ましく、炭素数3〜6のシクロアルキルが特に好ましい。
【0072】
炭素数3〜24のシクロアルキルとしては、具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルなどがあげられるが、それだけに限定されない。
【0073】
「少なくとも1つの水素が炭素数1〜24のアルキルで置換された炭素数3〜24のシクロアルキル」または「少なくとも1つの水素が炭素数6〜12のアリールで置換された炭素数3〜24のシクロアルキル」としては、具体的には、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、フェニルシクロヘキシル、およびナフチルシクロヘキシルなどがあげられるが、それだけに限定されない。
【0074】
1−1−5−2.一般式(FG−2)で表される基
【化34】
式(FG−2)において、Rは、それぞれ独立して、フッ素、トリメチルシリル、トリフルオロメチル、炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜24のシクロアルキルまたは炭素数6〜12のアリールであり、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−で置換されていてもよく、前記アルキルにおけるフェニルまたはフェニレンに直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記シクロアルキルにおける少なくとも1つの水素は炭素数1〜24のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールで置換されていてもよく、前記アリールにおける少なくとも1つの水素は炭素数1〜24のアルキルで置換されていてもよく、隣接する2つのRがアルキルまたはシクロアルキルであるとき、これらは結合して環を形成していてもよく、mは0〜4の整数であり、nはそれぞれ独立して0〜5の整数である。なお、「隣接する2つのR」とは同一環上で隣り合う基を表す。
【0075】
置換基Rの置換数mおよびnについては、mについては、0〜4が好ましく、0〜2がより好ましく、0〜1がさらに好ましく、0が特に好ましく、nについては、0〜5が好ましく、0〜3がより好ましく、0〜1がさらに好ましく、0が特に好ましい。
【0076】
なお、式(FG−2)における置換基Rについては、式(FG−1)における置換基Rの説明を引用することができる。また、「炭素数6〜12のアリール」については、式(A−1)で表される化合物の欄における説明を引用することができる。
【0077】
1−1−5−3.分子中の水素と置換されてよい炭素数1〜24のアルキル
一般的には、アルキル鎖が導入された分子を有機EL素子として用いる場合は、アルキル鎖が分子同士の集積を阻害しキャリアパスを破壊することがある。一方で、アルキル鎖を導入された分子であっても、アルキル鎖が分子同士の集積を阻害しないよう鎖長や構造を制御することで、有機EL素子の特性の悪化を防ぐことができる。
【0078】
また、化合物中の末端のフェニル基やp−フェ二レン基のオルト位における少なくとも1つの水素をメチル基などで置換することにより、隣り合う芳香環同士が直交しやすくなって共役が弱まる結果、三重項励起エネルギー(E
T)を高めることが可能となる。
【0079】
式(A−1)または式(A−2)で表される化合物における少なくとも1つの水素(化合物中のアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つの水素)は、炭素数1〜24のアルキルで置換されていてもよく、さらに、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−または−Si(CH
3)
2−で置換されていてもよく、前記アルキルにおける上記化合物に直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記アルキルにおける任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。ただし、ここでの「前記アルキル」とは、アリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つの水素と「置換されていてもよい」全てのアルキルを指す。
【0080】
「炭素数1〜24のアルキル」としては、直鎖および分枝鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分枝鎖アルキルがあげられる。炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分枝鎖アルキル)が好ましく、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分枝鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分枝鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分枝鎖アルキル)が特に好ましい。
また、他の例では、炭素数7〜24の直鎖または分枝鎖アルキルがあげられる。この場合、炭素数7〜18の直鎖または分枝鎖アルキルが好ましく、炭素数7〜12の直鎖または分枝鎖アルキルがより好ましい。
【0081】
炭素数1〜24のアルキルとしては、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどがあげられる。
【0082】
また、前記アルキルにおける任意の−CH
2−は−O−または−Si(CH
3)
2−で置換されていてもよく、例えば、アルコキシ、アルキルエーテルおよびアルキルシリルがあげられる。具体的には、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、メトキシメチル、2−メトキシエトキシ、2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ、および、トリメチルシリルなどがあげられる。
【0083】
また、前記アルキルにおける上記化合物に直結している−CH
2−を除く任意の−CH
2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、例えば、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、および、4−メチルベンジルなどがあげられる。
【0084】
1−1−5−4.化合物への置換位置
式(A−1)または式(A−2)で表される化合物に、式(FG−1)で表される基、式(FG−2)で表される基または炭素数1〜24のアルキル(または炭素数7〜24のアルキル)が置換する場合、下記式(A−1−Z1)、式(A−1−Z2)、式(A−2−Z1)または式(A−2−Z2)中のzのうちの少なくとも1つが置換されていることが好ましい。
【化35】
【0085】
より具体的には、下記式(1−1−z)、式(1−49−z)、式(1−91−z)、式(1−100−z)、式(1−152−z)、式(1−176−z)、式(1−1048−z)、式(1−1049−z)、式(1−1050−z)、式(1−1069−z)、式(1−1101−z)、式(1−1102−z)または式(1−1103−z)中のzのうちの少なくとも1つが置換されていることが好ましい。
【化36】
【0086】
1−1−6.化合物への重水素やハロゲンの置換
また、式(A−1)または式(A−2)で表される化合物中の水素は、その全てまたは一部が重水素であってもよい。さらに、式(A−1)または(A−2)で表される化合物中の水素は、その全てまたは一部がハロゲンであってもよい。例えば、式(A−1)においては、a環、b環、c環、および、これらの環への置換基における水素が重水素またはハロゲンで置換されうるが、これらの中でも特にアリール部位やヘテロアリール部位における全てまたは一部の水素が重水素またはハロゲンで置換された態様があげられる。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、好ましくはフッ素、塩素または臭素、より好ましくは塩素である。
【0087】
1−1−7.化合物の具体例
以下に、式(A−1)または式(A−2)で表される化合物のさらに具体的な構造を示すが、下記式(1−1)〜式(1−1271)および下記(2−1)〜式(2−216)はいずれも、式(FG−1)で表される基、式(FG−2)で表される基、または炭素数1〜24のアルキルが置換していない構造である。
【0088】
また、これらの式(A−1)または式(A−2)で表される化合物の具体的な構造は、式(FG−1)で表される基、式(FG−2)で表される基、または炭素数1〜24のアルキルで置換されていてもよく、これらの置換基については、別途、具体的な構造を、下記式(FG−1−1)〜式(FG−1−5)、下記式(FG−1−1001)〜式(FG−1−1103)、下記式(FG−1−2001)〜式(FG−1−2089)、下記式(FG−2−1)、下記式(FG−2−1001)〜式(FG−2−1006)、下記式(FG−2−1041)〜式(FG−2−1103)、および、下記式(R−1)〜式(R−37)に示す。
【0089】
なお、下記式(FG−1−1)〜式(FG−1−5)、下記式(FG−1−1001)〜式(FG−1−1103)、下記式(FG−1−2001)〜式(FG−1−2089)、下記式(FG−2−1)、下記式(FG−2−1001)〜式(FG−2−1006)、下記式(FG−2−1041)〜式(FG−2−1103)、または、下記式(R−1)〜式(R−37)で表される基は、各式中の*において式(A−1)または式(A−2)で表される化合物中の少なくとも1つの水素と置換される。
【0090】
式(A−1)または式(A−2)で表される化合物と、式(FG−1)で表される基、式(FG−2)で表される基、または炭素数1〜24のアルキルとは、任意の位置で結合している。
【0091】
すなわち、下記式(1−1)〜式(1−1271)または下記(2−1)〜式(2−216)は、式(FG−1)で表される基、式(FG−2)で表される基、または炭素数1〜24のアルキルが置換していない化合物と、任意の位置で置換した化合物との両方を開示していると理解すべきである。
【0138】
上記式(1−1)〜(1−1271)または式(2−1)〜式(2−216)で表される化合物の中でも、式(1−1)、式(1−2)、式(1−4)、式(1−10)、式(1−49)、式(1−81)、式(1−91)、式(1−100)、式(1−141)、式(1−151)、式(1−176)、式(1−50)、式(1−152)、式(1−1048)、式(1−1049)、式(1−1050)、式(1−1069)、式(1−1084)、式(1−1090)、式(1−1092)、式(1−1101)、式(1−1102)、式(1−1103)、式(1−1145)、式(1−1271)、式(1−79)、式(1−142)、式(1−158)、式(1−159)、式(1−1006)、式(1−1104)、式(2−1)、式(2−51)、式(2−52)、式(2−53)、式(2−54)、式(2−55)、式(2−56)、式(2−57)、式(2−58)、式(2−59)、式(2−60)、式(2−66)、式(2−67)、式(2−68)、式(2−69)、式(2−70)、式(2−71)、式(2−72)、式(2−73)、式(2−74)、式(2−181)、式(2−191)、式(2−192)、式(2−193)、式(2−194)、式(2−195)、式(2−196)、式(2−197)、または式(2−198)で表される化合物がさらに好ましく、式(1−1)、式(1−2)、式(1−4)、式(1−10)、式(1−49)、式(1−81)、式(1−91)、式(1−100)、式(1−141)、式(1−151)、式(1−176)、式(2−1)、式(2−51)、式(2−52)、式(2−54)、式(2−55)、式(2−66)、または式(2−69)で表される化合物が特に好ましい。さらに、高い溶解性、良好な成膜性および高い面内配向性の観点から、これらの化合物における少なくとも1つの水素が、*において、式(FG−1)で表される基、式(FG−2)で表される基、または炭素数1〜24のアルキルで置換されている化合物が好ましい。
【0139】
1−2.第2成分
本発明の発光層形成用組成物は、第2成分として、三重項エネルギー(E
T)が1.8〜3.0eVである化合物を少なくとも1種を含む。三重項エネルギー(E
T)は、好ましくは1.8〜2.7eVであり、より好ましくは1.8〜2.5eVである。本発明の発光層形成用組成物の第1成分が高い三重項エネルギーを有するために、三重項エネルギーからの発光を示す燐光材料および小さなΔE
ST(一重項エネルギーと三重項エネルギーの差)を有する熱活性型遅延蛍光材料を用いることができる。
【0140】
1−2−1.燐光材料
燐光材料は金属原子による分子内スピン−軌道相互作用(重原子効果)を利用し、三重項からの発光を得る。このような第2成分としては、例えば下記一般式(B−1)で表される化合物があげられる。
【化83】
式(B−1)において、Mは、Ir、Pt、Au、Eu、Ru、Re、AgおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種であり、nは1〜3の整数であり、「X−Y」はそれぞれ独立して二座のモノアニオン性配位子である。
【0141】
式(B−1)で表される化合物としては、例えば下記一般式(B−10)または一般式(B−15)で表される化合物があげられる。
【化84】
【0142】
式(B−10)および式(B−15)において、X’はMと結合する炭素(C)を含む芳香族環であり、Y’はMと配位結合する窒素(N)を含む複素環である。X’およびY’は結合されており、X’およびY’で新たな環を形成してもよい。また、式(B−15)において、Zは2つの酸素を有する二座配位子である。式(B−10)および式(B−15)において、高効率および長寿命の観点からMはIrが好ましい。
【0143】
式(B−10)で表される化合物としては、例えば、Ir(ppy)
3、Ir(ppy)
2(acac)、Ir(mppy)
3、Ir(PPy)
2(m−bppy)、BtpIr(acac)、Ir(btp)
2(acac)、Ir(2−phq)
3、Hex−Ir(phq)
3、Ir(fbi)
2(acac)、fac−Tris(2−(3−p−xylyl)phenyl)pyridine iridium(III)、Eu(dbm)
3(Phen)、Ir(piq)
3、Ir(piq)
2(acac)、Ir(Fliq)
2(acac)、Ir(Flq)
2(acac)、Ru(dtb−bpy)
3・2(PF
6)、Ir(2−phq)
3、Ir(BT)
2(acac)、Ir(DMP)
3、Ir(Mphq)
3IR(phq)
2tpy、fac−Ir(ppy)
2Pc、Ir(dp)PQ
2、Ir(Dpm)(Piq)
2、Hex−Ir(piq)
2(acac)、Hex−Ir(piq)
3、Ir(dmpq)
3、Ir(dmpq)
2(acac)、FPQIrpicなどがあげられる。
【0144】
式(B−10)で表される化合物としては、他には、例えば下記式(B−10−1)〜式(B−10−31)で表される化合物があげられる。
【化85】
【0145】
式(B−15)で表される化合物としては、他には、例えば下記式(B−15−1)〜式(B−15−6)で表される化合物があげられる。
【化86】
【0146】
また、特開2006-089398号公報、特開2006-080419号公報、特開2005-298483号公報、特開2005-097263号公報、および特開2004-111379号公報などに記載されたイリジウム錯体を用いてもよい。
【0147】
また、式(B−1)中のアリール環およびヘテロアリール環における少なくとも1つの水素が、式(FG−1)で表される基、式(FG−2)で表される基または炭素数1〜24のアルキルで置換されてもよい。燐光材料において高効率の観点から緑発光に対しては、Ir(ppy)
3、Hex−Ir(ppy)
3が、赤発光に対してはIr(piq)
3、Hex−Ir(piq)
3、Hex−Ir(piq)
2(acac)が好ましい。また、高い溶解性および成膜性の観点から、式(FG−1)で表される基、式(FG−2)で表される基、または炭素数1〜24のアルキルで置換されたIr(ppy)
3、Ir(piq)
3、が特に好ましい。
【0148】
1−2−2.TADF材料
励起一重項状態と励起三重項状態のエネルギー差を小さくすることで、通常は遷移確率が低い励起三重項状態から励起一重項状態への逆エネルギー移動を高効率で生じさせることで、一重項からの発光(熱活性化遅延蛍光、TADF)が発現する。通常の蛍光発光では電流励起により生じた75%の三重項励起子は熱失活経路を通るため蛍光として取りたすことはできない。一方、TADFでは全ての励起子を蛍光発光に利用することができ、高効率な有機EL素子が実現できる。
【0149】
本発明の発光層形成用組成物は第2成分として、一般式(B−2)で表される化合物を含むことができる。
【化87】
式(B−2)において、EDは電子供与性基であり、Lnは結合基であり、EAは電子受容性基であり、式(B−2)で表される化合物の一重項エネルギー(S
1)と三重項エネルギー(T
1)のエネルギー差(ΔS
1T
1)は0.2eV以下である(Hiroki Uoyama, Kenichi Goushi, Katsuyuki Shizu, Hiroko Nomura, Chihaya Adachi, Nature, 492, 234-238 (2012))。エネルギー差(ΔS
1T
1)は、好ましくは0.15eV以下であり、より好ましくは0.10eV以下であり、さらに好ましくは0.08eV以下である。
【0150】
EDとしては、例えば、sp
3窒素を含有する官能基があげられ、より具体的には、カルバゾール、アリールアミンおよびジアリールアミンがあげられる。また、EAとしては、例えば、sp
2窒素含有芳香族環、CN置換芳香族環、ケトンを有する環およびシアノ基、より具体的には、ピリジン、ピリミジンおよびトリアジンがあげられる。Lnとしては、例えば、単結合およびアリーレンがあげられ、より具体的には、フェニレン、ビフェニレン、があげられる。また、いずれの構造においても水素がアルキルおよびアリールで置換されてもよい。
【0151】
式(B−2)で表される化合物としては、例えば、以下の4CzIPN、4CzTPN−Ph、PIC−TRZなどがあげられる。
【化88】
【0152】
1−3.有機溶媒
本発明の発光層形成用組成物は、第3成分として、少なくとも1種の有機溶媒を含む。成膜時に有機溶媒の蒸発速度を制御することで、成膜性および塗膜の欠陥の有無、表面粗さ、平滑性を制御および改善することができる。また、インクジェット法を用いた成膜時は、インクジェットヘッドのピンホールでのメニスカス安定性を制御し、吐出性を制御・改善することができる。加えて、膜の乾燥速度および誘導体分子の配向を制御することで、該発光層形成用組成物より得られる発光層を有する有機EL素子の電気特性、発光特性、効率、および寿命を改善することができる。
【0153】
1−3−1.有機溶媒の物性
第3成分において、少なくとも1種の有機溶媒の沸点は、130℃〜300℃であり、140℃〜270℃がより好ましく、150℃〜250℃がさらに好ましい。沸点が130℃より高い場合、インクジェットの吐出性の観点から好ましい。また、沸点が300℃より低い場合、塗膜の欠陥、表面粗さ、残留溶媒および平滑性の観点から好ましい。第3成分は、良好なインクジェットの吐出性、製膜性、平滑性および低い残留溶媒の観点から、2種以上の有機溶媒を含む構成がより好ましい。一方で、場合によっては、運搬性などを考慮し、発光層形成用組成物中から溶媒を除去することで固形状態とした組成物であってもよい。
【0154】
さらに、第3成分が式(A−1)で表される化合物および/または式(A−2)で表される化合物に対する良溶媒(GS)と貧溶媒(PS)とを含み、良溶媒(GS)の沸点(BP
GS)が貧溶媒(PS)の沸点(BP
PS)よりも低い組み合わせが特に好ましい。
高沸点の貧溶媒を加えることで成膜時に低沸点の良溶媒が先に揮発し、組成物中の含有物の濃度と貧溶媒の濃度が増加し速やかな成膜が促される。これにより、欠陥が少なく、表面粗さが小さい、平滑性の高い塗膜が得られる。
【0155】
良溶媒(GS)に対する式(A−1)で表される化合物および/または式(A−2)で表される化合物の溶解度(S
GS)と、貧溶媒(PS)に対する式(A−1)で表される化合物および/または式(A−2)で表される化合物の溶解度(S
PS)の差(S
GS−S
PS)は、1%以上あることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上あることがさらに好ましい。沸点の差(BP
PS−BP
GS)は、10℃以上あることが好ましく、30℃以上あることがより好ましく、50℃以上あることがさらに好ましい。
【0156】
有機溶媒は、成膜後に、真空、減圧、加熱などの乾燥工程により塗膜より取り除かれる。加熱を行う場合、塗布製膜性改善の観点からは、第1成分のガラス転移温度(Tg)+30℃以下で行うことが好ましい。また、残留溶媒の削減の観点からは、第1成分のガラス転移点(Tg)−30℃以上で加熱することが好ましい。加熱温度が有機溶媒の沸点より低くても膜が薄いために、有機溶媒は十分に取り除かれる。また、異なる温度で複数回乾燥を行ってもよく、複数の乾燥方法を併用してもよい。
【0157】
1−3−2.有機溶媒の具体例
発光層形成用組成物に用いられる有機溶媒としては、アルキルベンゼン系溶媒、フェニルエーテル系溶媒、アルキルエーテル系溶媒、環状ケトン系溶媒、脂肪族ケトン系溶媒、単環性ケトン系溶媒、ジエステル骨格を有する溶媒および含フッ素系溶媒などがあげられ、具体例として、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサン−2−オール、ヘプタン−2−オール、オクタン−2−オール、デカン−2−オール、ドデカン−2−オール、シクロヘキサノール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、δ−テルピネオール、テルピネオール(混合物)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、p−キシレン、m−キシレン、o−キシレン、2,6−ルチジン、2−フルオロ−m−キシレン、3−フルオロ−o−キシレン、2−クロロベンゾ三フッ化物、クメン、トルエン、2−クロロ−6−フルオロトルエン、2−フルオロアニソール、アニソール、2,3−ジメチルピラジン、ブロモベンゼン、4−フルオロアニソール、3−フルオロアニソール、3−トリフルオロメチルアニソール、メシチレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、2−メチルアニソール、フェネトール、ベンゾジオキソール、4−メチルアニソール、s−ブチルベンゼン、3−メチルアニソール、4−フルオロ−3−メチルアニソール、シメン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、2−フルオロベンゾニトリル、4−フルオロベラトロール、2,6−ジメチルアニソール、n−ブチルベンゼン、3−フルオロベンゾニトリル、デカリン(デカヒドロナフタレン)、ネオペンチルベンゼン、2,5−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ベンゾニトリル、3,5−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル、1−フルオロ−3,5−ジメトキシベンゼン、安息香酸メチル、イソペンチルベンゼン、3,4−ジメチルアニソール、o−トルニトリル、n−アミルベンゼン、ベラトロール、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、安息香酸エチル、n−ヘキシルベンゼン、安息香酸プロピル、シクロヘキシルベンゼン、1−メチルナフタレン、安息香酸ブチル、2−メチルビフェニル、3−フェノキシトルエン、2,2’−ビトリル、ドデシルベンゼン、ジペンチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、トリメトキシベンゼン、トリメトキシトルエン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、1-メチル-4-(プロポキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ブチルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ペンチルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ヘキシルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ヘプチルオキシメチル)ベンゼンベンジルブチルエーテル、ベンジルペンチルエーテル、ベンジルヘキシルエーテル、ベンジルヘプチルエーテル、ベンジルオクチルエーテルなどがあげられるが、それだけに限定されない。また、溶媒は単一で用いてもよく、混合してもよい。
【0158】
1−4.任意成分
発光層形成用組成物は、その性質を損なわない範囲で、任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、バインダーおよび界面活性剤等があげられる。
【0159】
1−4−1.バインダー
発光層形成用組成物は、バインダーを含有していてもよい。バインダーは、成膜時には膜を形成するとともに、得られた膜を基板と接合する。また、該発光層形成用組成物中で他の成分を溶解および分散および結着させる役割を果たす。
【0160】
発光層形成用組成物に用いられるバインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体(AES)樹脂、アイオノマー、塩素化ポリエーテル、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、テフロン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、および、上記樹脂およびポリマーの共重合体、があげられるが、それだけに限定されない。
【0161】
発光層形成用組成物に用いられるバインダーは、1種のみであってもよく複数種を混合して用いてもよい。
【0162】
1−4−2.界面活性剤
発光層形成用組成物は、例えば、発光層形成用組成物の膜面均一性、膜表面の親溶媒性および撥液性の制御のために界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、親水性基の構造からイオン性および非イオン性に分類され、さらに、疎水性基の構造からアルキル系およびシリコン系およびフッ素系に分類される。また、分子の構造から、分子量が比較的小さく単純な構造を有する単分子系および分子量が大きく側鎖や枝分かれを有する高分子系に分類される。また、組成から、単一系、二種以上の界面活性剤および基材を混合した混合系に分類される。該発光層形成用組成物に用いることのできる界面活性剤としては、全ての種類の界面活性剤を用いることができる。
【0163】
界面活性剤としては、例えば、ポリフローNo.45、ポリフローKL−245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(商品名、共栄社化学工業(株)製)、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK342、BYK344、BYK346(商品名、ビックケミー・ジャパン(株)製)、KP−341、KP−358、KP−368、KF−96−50CS、KF−50−100CS(商品名、信越化学工業(株)製)、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(商品名、セイミケミカル(株)製)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218(商品名、(株)ネオス製)、EFTOP EF−351、EFTOP EF−352、EFTOP EF−601、EFTOP EF−801、EFTOP EF−802(商品名、三菱マテリアル(株)製)、メガファックF−470、メガファックF−471、メガファックF−475、メガファックR−08、メガファックF−477、メガファックF−479、メガファックF−553、メガファックF−554(商品名、DIC(株)製)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩およびアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩をあげることができる。
【0164】
また、界面活性剤は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0165】
1−5.発光層形成用組成物の組成および物性
本発明の発光層形成用組成物は、発光層形成用組成物における各成分の含有量は、発光層形成用組成物中の各成分の良好な溶解性、保存安定性および成膜性、ならびに、該発光層形成用組成物から得られる塗膜の良質な膜質、また、インクジェット法を用いた場合の良好な吐出性、該組成物を用いて作製された発光層を有する有機EL素子の、良好な電気特性、発光特性、効率、寿命の観点から、第1成分が発光層形成用組成物の全重量に対して0.0999重量%〜8.0重量%であり、第2成分が発光層形成用組成物の全重量に対して0.0001重量%〜2.0重量%であり、第3成分が発光層形成用組成物の全重量に対して90.0重量%〜99.9重量%であることが好ましい。
【0166】
より好ましくは、第1成分が発光層形成用組成物の全重量に対して0.17重量%〜4.0重量%であり、第2成分が発光層形成用組成物の全重量に対して0.03重量%〜1.0重量%であり、第3成分が発光層形成用組成物の全重量に対して95.0重量%〜99.8重量%である。さらに好ましくは、第1成分が発光層形成用組成物の全重量に対して0.25重量%〜2.5重量%であり、第2成分が発光層形成用組成物の全重量に対して0.05重量%〜0.5重量%であり、第3成分が発光層形成用組成物の全重量に対して97.0重量%〜99.7重量%である。他に好ましい態様としては、第1成分が発光層形成用組成物の全重量に対して0.095重量%〜4.0重量%であり、第2成分が発光層形成用組成物の全重量に対して0.005重量%〜1.0重量%であり、第3成分が発光層形成用組成物の全重量に対して95.0重量%〜99.9重量%である。
【0167】
発光層形成用組成物は、上述した成分を、公知の方法で攪拌、混合、加熱、冷却、溶解、分散等を適宜選択して行うことによって製造できる。また、調製後に、ろ過、脱ガス(デガスとも言う)、イオン交換処理および不活性ガス置換・封入処理等を適宜選択して行ってもよい。
【0168】
発光層形成用組成物の粘度としては、高粘度である方が、良好な成膜性とインクジェット法を用いた場合の良好な吐出性が得られる。一方、低粘度である方が薄い膜を作りやすい。このことから、該発光層形成用組成物の粘度は、25℃における粘度が0.3mPa・s〜3mPa・sであることが好ましく、1mPa・s〜3mPa・sであることがより好ましい。本発明において、粘度は円錐平板型回転粘度計(コーンプレートタイプ)を用いて測定した値である。
【0169】
発光層形成用組成物の表面張力としては、低い方が良好な成膜性および欠陥のない塗膜が得られる。一方、高い方が良好なインクジェット吐出性を得られる。このことから、該発光層形成用組成物の粘度は、25℃における表面張力が20mN/m〜40mN/mであることが好ましく、20mN/m〜30mN/mであることがより好ましい。本発明において、表面張力は懸滴法を用いて測定した値である。
【0170】
3.一般式(A−1)または(A−2)で表される化合物の製造方法
式(A−1)で表される化合物は、まずa〜c環を結合基(−O−)で結合させることで中間体を製造し(第1反応)、その後に、a〜c環を結合基(Bを含む基)で結合させることで最終生成物を製造することができる(第2反応)。また、式(A−2)で表される化合物は、まずa〜d環を結合基(>NHまたは単結合)で結合させることで中間体を製造し(第1反応)、その後に、a〜d環を結合基(Bを含む基)で結合させることで最終生成物を製造することができる(第2反応)。第1反応では、例えばエーテル化反応であれば、求核置換反応、ウルマン反応といった一般的反応が利用でき、アミノ化反応で有ればブッフバルト−ハートウィッグ反応といった一般的反応が利用できる。また、第2反応では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応(連続的な芳香族求電子置換反応、以下同様)が利用できる。
【0171】
3−1.製造方法:一般式(A−1)で表される化合物の第2反応の例
第2反応は、下記スキーム(1)に示すように、a環、b環およびc環を結合するB(ホウ素)を導入する反応であり、例として式(A−1)で表される化合物の場合を以下に示す。まず、2つのOの間の水素原子をn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムまたはt−ブチルリチウム等でオルトメタル化する。次いで、三塩化ホウ素や三臭化ホウ素等を加え、リチウム−ホウ素の金属交換を行った後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン等のブレンステッド塩基を加えることで、タンデムボラフリーデルクラフツ反応させ、目的物を得ることができる。第2反応においては反応を促進させるために三塩化アルミニウム等のルイス酸を加えてもよい。
【0173】
上記スキームにおいては、オルトメタル化により所望の位置へリチウムを導入したが、下記スキーム(2)のようにリチウムを導入したい位置に臭素原子等を導入し、ハロゲン−メタル交換によっても所望の位置へリチウムを導入することができる。
【0175】
さらに、式(FG−1)で表される基、式(FG−2)で表される基、または炭素数1〜24のアルキルで置換された化合物を得るためには、これらの基をあらかじめ中間体に導入しておいてもよいし、第2反応の後にこれらの基を導入してもよい。重水素やハロゲンの導入についても同様である。
【0176】
上述の合成法を適宜選択し、使用する原料も適宜選択することで、所望の位置に置換基を有し、式(A−1)で表される化合物を合成することができる。
【0177】
3−2.製造方法:一般式(A−2)で表される化合物の場合
式(A−2)で表される化合物の製造方法についても、上述した式(A−1)で表される化合物の製造方法における第1反応および第2反応を適用できる。つまり、第2反応はNHとc環およびd環を結合するB(ホウ素)を導入する反応であり、NHの水素原子をn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムまたはt−ブチルリチウム等でオルトメタル化した後、三塩化ホウ素や三臭化ホウ素等を加えてリチウム−ホウ素の金属交換を行い、さらにN,N−ジイソプロピルエチルアミン等のブレンステッド塩基を加えることで、タンデムボラフリーデルクラフツ反応させ、目的物を得ることができる。ここでも第2反応においては反応を促進させるために三塩化アルミニウム等のルイス酸を加えてもよい。
【0178】
4.有機電界発光素子
本発明に係る発光層形成用組成物(インク組成物)は、例えば、有機EL素子の発光層として用いることができる。以下に、本実施形態に係る有機EL素子について図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る有機EL素子を示す概略断面図である。
【0179】
4−1.有機電界発光素子の構造
図1に示された有機EL素子100は、基板101と、基板101上に設けられた陽極102と、陽極102の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた陰極108とを有する。
【0180】
なお、有機EL素子100は、作製順序を逆にして、例えば、基板101と、基板101上に設けられた陰極108と、陰極108の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた陽極102とを有する構成としてもよい。
【0181】
上記各層すべてがなくてはならないわけではなく、最小構成単位を陽極102と発光層105と陰極108とからなる構成として、正孔注入層103、正孔輸送層104、電子輸送層106、電子注入層107は任意に設けられる層である。また、上記各層は、それぞれ単一層からなってもよいし、複数層からなってもよい。
【0182】
有機EL素子を構成する層の態様としては、上述する「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」の構成態様の他に、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極」の構成態様であってもよい。
【0183】
4−2.有機電界発光素子における基板
基板101は、有機EL素子100の支持体となるものであり、通常、石英、ガラス、金属、プラスチックなどが用いられる。基板101は、目的に応じて板状、フィルム状、またはシート状に形成され、例えば、ガラス板、金属板、金属箔、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどが用いられる。なかでも、ガラス板、および、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂製の板が好ましい。ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどが用いられ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、例えば、0.2mm以上あればよい。厚さの上限値としては、例えば、2mm以下、好ましくは1mm以下である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiO
2などのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することができる。また、基板101には、ガスバリア性を高めるために、少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜などのガスバリア膜を設けてもよく、特にガスバリア性が低い合成樹脂製の板、フィルムまたはシートを基板101として用いる場合にはガスバリア膜を設けるのが好ましい。
【0184】
4−3.有機電界発光素子における陽極
陽極102は、発光層105へ正孔を注入する役割を果たすものである。なお、陽極102と発光層105との間に正孔注入層103および/または正孔輸送層104が設けられている場合には、これらを介して発光層105へ正孔を注入することになる。
【0185】
陽極102を形成する材料としては、無機化合物および有機化合物があげられる。無機化合物としては、例えば、金属(アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロムなど)、金属酸化物(インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)など)、ハロゲン化金属(ヨウ化銅など)、硫化銅、カーボンブラック、ITOガラスやネサガラスなどがあげられる。有機化合物としては、例えば、ポリ(3−メチルチオフェン)などのポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどがあげられる。その他、有機EL素子の陽極として用いられている物質の中から適宜選択して用いることができる。
【0186】
透明電極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、発光素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、例えば100〜5Ω/□、好ましくは50〜5Ω/□の低抵抗品を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常50〜300nmの間で用いられることが多い。
【0187】
4−4.有機電界発光素子における正孔注入層、正孔輸送層
正孔注入層103は、陽極102から移動してくる正孔を、効率よく発光層105内または正孔輸送層104内に注入する役割を果たすものである。正孔輸送層104は、陽極102から注入された正孔または陽極102から正孔注入層103を介して注入された正孔を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たすものである。正孔注入層103および正孔輸送層104は、それぞれ、正孔注入・輸送材料の1種または2種以上を積層、混合するか、正孔注入・輸送材料と高分子結着剤の混合物により形成される。また、正孔注入・輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して層を形成してもよい。
【0188】
正孔注入・輸送性物質としては電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率よく注入・輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率よく輸送することが望ましい。そのためにはイオン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。
【0189】
正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料としては、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物、p型半導体、有機EL素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。それらの具体例は、カルバゾール誘導体(N−フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなど)、ビス(N−アリールカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体(芳香族第3級アミノを主鎖または側鎖に持つポリマー、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミン、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミン、N
4,N
4’−ジフェニル−N
4,N
4’−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、N
4,N
4,N
4’,N
4’−テトラ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、スターバーストアミン誘導体など)、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニンなど)、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、キノキサリン誘導体(例えば、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリルなど)、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリシランなどである。ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましいが、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されるものではない。
【0190】
また、有機半導体の導電性は、そのドーピングにより、強い影響を受けることも知られている。このような有機半導体マトリックス物質は、電子供与性の良好な化合物、または、電子受容性の良好な化合物から構成されている。電子供与物質のドーピングのために、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)または2,3,5,6−テトラフルオロテトラシアノ−1,4−ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)などの強い電子受容体が知られている(例えば、文献「M.Pfeiffer,A.Beyer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(22),3202-3204(1998)」および文献「J.Blochwitz,M.Pheiffer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(6),729-731(1998)」を参照)。これらは、電子供与型ベース物質(正孔輸送物質)における電子移動プロセスによって、いわゆる正孔を生成する。正孔の数および移動度によって、ベース物質の伝導性が、かなり大きく変化する。正孔輸送特性を有するマトリックス物質としては、例えばベンジジン誘導体(TPDなど)またはスターバーストアミン誘導体(TDATAなど)、または、特定の金属フタロシアニン(特に、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)など)が知られている(特開2005-167175号公報)。
【0191】
また、湿式成膜法を用いて正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料としては、上記に記載の蒸着に用いられる正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料に加えて、正孔注入性および正孔輸送性の高分子、正孔注入性および正孔輸送性の高分子前駆体、および、重合開始剤などを用いることができる。例えば、PEDOT:PSS、ポリアニリン化合物(特開2005-108828号公報、国際公開第2010/058776号公報、国際公開第2013/042623号公報等に記載)、フルオレンポリマー(特開2011-251984号公報、特開2011-501449号公報、特開2012-533661号公報等に記載)、「Xiaohui Yang, David C. Muller, Dieter Neher, Klaus Meerholz,Organic Electronics,12,2253-2257 (2011)」、「Philipp Zacharias, Malte C. Gather, Markus Rojahn, Oskar Nuyken, Klaus Meerholz, Angew. Chem. Int. Ed.,46,4388-4392 (2007)」、「Chei-Yen, Yu-Cheng Lin, Wen-Yi Hung, Ken-Tsung Wong, Raymond C. Kwong, Sean C. Xia, Yu-Hung Chen, Chih-I Wu, J.Mater.Chem., 19,3618-3626(2009)」、「Fei Huang, Yen-Ju Cheng, Yong Zhang, Michelle S. Liu, Alex K.-Y. Jen, J.Mater.Chem., 18,4495-4509(2008)」「Carlos A. Zuniga, Jassem Abdallah, Wojciech Haske, Yadong Zhang, Igor Coropceanu, Stephen Barlow, Bernard Kippelen, Seth R. Marder, Adv.Mater., 25,1739-1744(2013)」、「Wen-Yi Hung, Chi-Yen Lin, Tsang-Lung Cheng, Shih-Wei Yang, Atul Chaskar, Gang-Lun Fan, Ken-Tsung Wong, Teng-Chih Chao, Mei-Rurng Tseng, Organic Electronics,13,2508-2515 (2012)」等に記載の化合物があげられる。
【0192】
4−5.有機電界発光素子における発光層
発光層105は、電界を与えられた電極間において、陽極102から注入された正孔と、陰極108から注入された電子とを再結合させることにより発光するものである。発光層105を形成する材料としては、正孔と電子との再結合によって励起されて発光する化合物(発光性化合物)であればよく、安定な薄膜形状を形成することができ、かつ、固体状態で強い発光(蛍光)効率を示す化合物であるのが好ましい。
【0193】
発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよく、それぞれ発光層用材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成される。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ1種であっても、複数種の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。式(A−1)または(A−2)で表される化合物はホスト材料として使用することができる。また、式(B−1)または(B−2)で表される化合物はドーパント材料として使用することができる。
【0194】
ホスト材料の使用量はホスト材料の種類によって異なり、そのホスト材料の特性に合わせて決めればよい。ホスト材料の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の50〜99.999重量%であり、より好ましくは80〜99.95重量%であり、さらに好ましくは90〜99.9重量%である。
【0195】
ドーパント材料の使用量はドーパント材料の種類によって異なり、そのドーパント材料の特性に合わせて決めればよい。ドーパントの使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の0.001〜50重量%であり、より好ましくは0.05〜20重量%であり、さらに好ましくは0.1〜10重量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。
【0196】
式(A−1)または(A−2)で表される化合物と併用することができるホスト材料としては、以前から発光体として知られていたアントラセンやピレンなどの縮合環誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体などがあげられる。
【0197】
また、一般式(B−1)または(B−2)と併用することができるドーパント材料としては、特に限定されるものではなく、既知の化合物を用いることができ、所望の発光色に応じて様々な材料の中から選択することができる。具体的には、例えば、フェナンスレン、アントラセン、ピレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレン、ナフトピレン、ジベンゾピレン、ルブレンおよびクリセンなどの縮合環誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン誘導体、チオフェン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体(特開平1-245087号公報)、ビススチリルアリーレン誘導体(特開平2-247278号公報)、ジアザインダセン誘導体、フラン誘導体、ベンゾフラン誘導体、フェニルイソベンゾフラン、ジメシチルイソベンゾフラン、ジ(2−メチルフェニル)イソベンゾフラン、ジ(2−トリフルオロメチルフェニル)イソベンゾフラン、フェニルイソベンゾフランなどのイソベンゾフラン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、7−ジアルキルアミノクマリン誘導体、7−ピペリジノクマリン誘導体、7−ヒドロキシクマリン誘導体、7−メトキシクマリン誘導体、7−アセトキシクマリン誘導体、3−ベンゾチアゾリルクマリン誘導体、3−ベンゾイミダゾリルクマリン誘導体、3−ベンゾオキサゾリルクマリン誘導体などのクマリン誘導体、ジシアノメチレンピラン誘導体、ジシアノメチレンチオピラン誘導体、ポリメチン誘導体、シアニン誘導体、オキソベンゾアンスラセン誘導体、キサンテン誘導体、ローダミン誘導体、フルオレセイン誘導体、ピリリウム誘導体、カルボスチリル誘導体、アクリジン誘導体、オキサジン誘導体、フェニレンオキサイド誘導体、キナクリドン誘導体、キナゾリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、フロピリジン誘導体、1,2,5−チアジアゾロピレン誘導体、ピロメテン誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、スクアリリウム誘導体、ビオラントロン誘導体、フェナジン誘導体、アクリドン誘導体、デアザフラビン誘導体、フルオレン誘導体およびベンゾフルオレン誘導体などがあげられる。
【0198】
発色光ごとに例示すると、青〜青緑色ドーパント材料としては、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、トリフェニレン、ペリレン、フルオレン、インデン、クリセンなどの芳香族炭化水素化合物やその誘導体、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9−シラフルオレン、9,9’−スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン、チオキサンテンなどの芳香族複素環化合物やその誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、アルダジン誘導体、クマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体およびN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンに代表される芳香族アミン誘導体などがあげられる。
【0199】
また、緑〜黄色ドーパント材料としては、クマリン誘導体、フタルイミド誘導体、ナフタルイミド誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、アクリドン誘導体、キナクリドン誘導体およびルブレンなどのナフタセン誘導体などがあげられ、さらに上記青〜青緑色ドーパント材料として例示した化合物に、アリール、ヘテロアリール、アリールビニル、アミノ、シアノなど長波長化を可能とする置換基を導入した化合物も好適な例としてあげられる。
【0200】
さらに、橙〜赤色ドーパント材料としては、ビス(ジイソプロピルフェニル)ペリレンテトラカルボン酸イミドなどのナフタルイミド誘導体、ペリノン誘導体、アセチルアセトンやベンゾイルアセトンとフェナントロリンなどを配位子とするEu錯体などの希土類錯体、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピランやその類縁体、マグネシウムフタロシアニン、アルミニウムクロロフタロシアニンなどの金属フタロシアニン誘導体、ローダミン化合物、デアザフラビン誘導体、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、フェノキサジン誘導体、オキサジン誘導体、キナゾリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、スクアリリウム誘導体、ビオラントロン誘導体、フェナジン誘導体、フェノキサゾン誘導体およびチアジアゾロピレン誘導体などあげられ、さらに上記青〜青緑色および緑〜黄色ドーパント材料として例示した化合物に、アリール、ヘテロアリール、アリールビニル、アミノ、シアノなど長波長化を可能とする置換基を導入した化合物も好適な例としてあげられる。
【0201】
その他、ドーパントとしては、化学工業2004年6月号13頁、および、それにあげられた参考文献などに記載された化合物などの中から適宜選択して用いることができる。
【0202】
スチルベン構造を有するアミンは、例えば、下記式で表される。
【化91】
当該式中、Ar
1は炭素数6〜30のアリールに由来するm価の基であり、Ar
2およびAr
3は、それぞれ独立して炭素数6〜30のアリールであるが、Ar
1〜Ar
3の少なくとも1つはスチルベン構造を有し、Ar
1〜Ar
3は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、トリ置換シリル(アリールおよび/またはアルキルでトリ置換されたシリル)またはシアノで置換されていてもよく、そして、mは1〜4の整数である。
【0203】
スチルベン構造を有するアミンは、下記式で表されるジアミノスチルベンがより好ましい。
【化92】
当該式中、Ar
2およびAr
3は、それぞれ独立して炭素数6〜30のアリールであり、Ar
2およびAr
3は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、トリ置換シリル(アリールおよび/またはアルキルでトリ置換されたシリル)またはシアノで置換されていてもよい。
【0204】
炭素数6〜30のアリールの具体例は、フェニル、ナフチル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、アントリル、フルオランテニル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ペリレニル、スチルベニル、ジスチリルフェニル、ジスチリルビフェニリル、ジスチリルフルオレニルなどが挙げられる。
【0205】
スチルベン構造を有するアミンの具体例は、N,N,N’,N’−テトラ(4−ビフェニリル)−4,4’−ジアミノスチルベン、N,N,N’,N’−テトラ(1−ナフチル)−4,4’−ジアミノスチルベン、N,N,N’,N’−テトラ(2−ナフチル)−4,4’−ジアミノスチルベン、N,N’−ジ(2−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノスチルベン、N,N’−ジ(9−フェナントリル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノスチルベン、4,4’−ビス[4”−ビス(ジフェニルアミノ)スチリル]−ビフェニル、1,4−ビス[4’−ビス(ジフェニルアミノ)スチリル]−ベンゼン、2,7−ビス[4’−ビス(ジフェニルアミノ)スチリル]−9,9−ジメチルフルオレン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−ビフェニル、4,4’−ビス(9−フェニル−3−カルバゾビニレン)−ビフェニルなどがあげられる。
また、特開2003-347056号公報、および特開2001-307884号公報などに記載されたスチルベン構造を有するアミンを用いてもよい。
【0206】
ペリレン誘導体としては、例えば、3,10−ビス(2,6−ジメチルフェニル)ペリレン、3,10−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)ペリレン、3,10−ジフェニルペリレン、3,4−ジフェニルペリレン、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン、3,4,9,10−テトラフェニルペリレン、3−(1’−ピレニル)−8,11−ジ(t−ブチル)ペリレン、3−(9’−アントリル)−8,11−ジ(t−ブチル)ペリレン、3,3’−ビス(8,11−ジ(t−ブチル)ペリレニル)などがあげられる。
また、特開平11-97178号公報、特開2000-133457号公報、特開2000-26324号公報、特開2001-267079号公報、特開2001-267078号公報、特開2001-267076号公報、特開2000-34234号公報、特開2001-267075号公報、および特開2001-217077号公報などに記載されたペリレン誘導体を用いてもよい。
【0207】
ボラン誘導体としては、例えば、1,8−ジフェニル−10−(ジメシチルボリル)アントラセン、9−フェニル−10−(ジメシチルボリル)アントラセン、4−(9’−アントリル)ジメシチルボリルナフタレン、4−(10’−フェニル−9’−アントリル)ジメシチルボリルナフタレン、9−(ジメシチルボリル)アントラセン、9−(4’−ビフェニリル)−10−(ジメシチルボリル)アントラセン、9−(4’−(N−カルバゾリル)フェニル)−10−(ジメシチルボリル)アントラセンなどがあげられる。
また、国際公開第2000/40586号パンフレットなどに記載されたボラン誘導体を用いてもよい。
【0208】
芳香族アミン誘導体は、例えば、下記式で表される。
【化93】
当該式中、Ar
4は炭素数6〜30のアリールに由来するn価の基であり、Ar
5およびAr
6はそれぞれ独立して炭素数6〜30のアリールであり、Ar
4〜Ar
6は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、トリ置換シリル(アリールおよび/またはアルキルでトリ置換されたシリル)またはシアノで置換されていてもよく、そして、nは1〜4の整数である。
【0209】
特に、Ar
4がアントラセン、クリセン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはピレンに由来する2価の基であり、Ar
5およびAr
6がそれぞれ独立して炭素数6〜30のアリールであり、Ar
4〜Ar
6は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、トリ置換シリル(アリールおよび/またはアルキルでトリ置換されたシリル)またはシアノで置換されていてもよく、そして、nは2である、芳香族アミン誘導体がより好ましい。
【0210】
炭素数6〜30のアリールの具体例は、フェニル、ナフチル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、アントリル、フルオランテニル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ペリレニル、ペンタセニルなどが挙げられる。
【0211】
芳香族アミン誘導体としては、クリセン系としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルクリセン−6,12−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(p−トリル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(m−トリル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−イソプロピルフェニル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(ナフタレン−2−イル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(p−トリル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−t−ブチルフェニル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ジ(p−トリル)クリセン−6,12−ジアミンなどがあげられる。
【0212】
また、ピレン系としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルピレン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(p−トリル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(m−トリル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−イソプロピルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(3,4−ジメチルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(p−トリル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−t−ブチルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ジ(p−トリル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(3,4−ジメチルフェニル)−3,8−ジフェニルピレン−1,6−ジアミン、N,N,N,N−テトラフェニルピレン−1,8−ジアミン、N,N’−ビス(ビフェニル−4−イル)−N,N’−ジフェニルピレン−1,8−ジアミン、N
1,N
6−ジフェニル−N
1,N
6−ビス−(4−トリメチルシラニル−フェニル)−1H,8H−ピレン−1,6−ジアミンなどがあげられる。
【0213】
また、アントラセン系としては、例えば、N,N,N,N−テトラフェニルアントラセン−9,10−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(m−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−イソプロピルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−t−ブチルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ジ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、2,6−ジ−t−ブチル−N,N,N’,N’−テトラ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、2,6−ジ−t−ブチル−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、2,6−ジ−t−ブチル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ジ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、2,6−ジシクロヘキシル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ジ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、2,6−ジシクロヘキシル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ビス(4−t−ブチルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、9,10−ビス(4−ジフェニルアミノ−フェニル)アントラセン、9,10−ビス(4−ジ(1−ナフチルアミノ)フェニル)アントラセン、9,10−ビス(4−ジ(2−ナフチルアミノ)フェニル)アントラセン、10−ジ−p−トリルアミノ−9−(4−ジ−p−トリルアミノ−1−ナフチル)アントラセン、10−ジフェニルアミノ−9−(4−ジフェニルアミノ−1−ナフチル)アントラセン、10−ジフェニルアミノ−9−(6−ジフェニルアミノ−2−ナフチル)アントラセンなどがあげられる。
【0214】
また、他には、[4−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)ナフタレン−1−イル]−ジフェニルアミン、[6−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)ナフタレン−2−イル]−ジフェニルアミン、4,4’−ビス[4−ジフェニルアミノナフタレン−1−イル]ビフェニル、4,4’−ビス[6−ジフェニルアミノナフタレン−2−イル]ビフェニル、4,4”−ビス[4−ジフェニルアミノナフタレン−1−イル]−p−テルフェニル、4,4”−ビス[6−ジフェニルアミノナフタレン−2−イル]−p−テルフェニルなどがあげられる。
また、特開2006-156888号公報などに記載された芳香族アミン誘導体を用いてもよい。
【0215】
クマリン誘導体としては、クマリン−6、クマリン−334などがあげられる。
また、特開2004-43646号公報、特開2001-76876号公報、および特開平6-298758号公報などに記載されたクマリン誘導体を用いてもよい。
【0216】
ピラン誘導体としては、下記のDCM、DCJTBなどがあげられる。
【化94】
また、特開2005-126399号公報、特開2005-097283号公報、特開2002-234892号公報、特開2001-220577号公報、特開2001-081090号公報、および特開2001-052869号公報などに記載されたピラン誘導体を用いてもよい。
【0217】
4−6.有機電界発光素子における電子注入層、電子輸送層
電子注入層107は、陰極108から移動してくる電子を、効率よく発光層105内または電子輸送層106内に注入する役割を果たすものである。電子輸送層106は、陰極108から注入された電子または陰極108から電子注入層107を介して注入された電子を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たすものである。電子輸送層106および電子注入層107は、それぞれ、電子輸送・注入材料の1種または2種以上を積層、混合するか、電子輸送・注入材料と高分子結着剤の混合物により形成される。
【0218】
電子注入・輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送することをつかさどる層であり、電子注入効率が高く、注入された電子を効率よく輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本実施形態における電子注入・輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる層の機能も含まれてもよい。
【0219】
電子輸送層106または電子注入層107を形成する材料(電子輸送材料)としては、光導電材料において電子伝達化合物として従来から慣用されている化合物、有機EL素子の電子注入層および電子輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。
【0220】
電子輸送層または電子注入層に用いられる材料としては、炭素、水素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンの中から選ばれる1種以上の原子で構成される芳香族環または複素芳香族環からなる化合物、ピロール誘導体およびその縮合環誘導体および電子受容性窒素を有する金属錯体の中から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。具体的には、ナフタレン、アントラセンなどの縮合環系芳香族環誘導体、4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香族環誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、カルバゾール誘導体およびインドール誘導体などがあげられる。電子受容性窒素を有する金属錯体としては、例えば、ヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。これらの材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
【0221】
また、他の電子伝達化合物の具体例として、ピリジン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体(1,3−ビス[(4−t−ブチルフェニル)1,3,4−オキサジアゾリル]フェニレンなど)、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体(N−ナフチル−2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾールなど)、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノリノール系金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体(2,2’−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレンなど)、イミダゾピリジン誘導体、ボラン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(トリス(N−フェニルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゼンなど)、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、テルピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、テルピリジン誘導体(1,3−ビス(4’−(2,2’:6’2”−テルピリジニル))ベンゼンなど)、ナフチリジン誘導体(ビス(1−ナフチル)−4−(1,8−ナフチリジン−2−イル)フェニルホスフィンオキサイドなど)、アルダジン誘導体、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、リンオキサイド誘導体、ビススチリル誘導体などがあげられる。
【0222】
また、電子受容性窒素を有する金属錯体を用いることもでき、例えば、キノリノール系金属錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。
【0223】
上述した材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
【0224】
上述した材料の中でも、キノリノール系金属錯体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体またはボラン誘導体が好ましい。
【0225】
キノリノール系金属錯体は、下記一般式(E−1)で表される化合物である。
【化95】
式中、R
1〜R
6は、それぞれ独立して、水素、フッ素、アルキル、アラルキル、アルケニル、シアノ、アルコキシまたはアリールであり、MはLi、Al、Ga、BeまたはZnであり、nは1〜3の整数である。
【0226】
キノリノール系金属錯体の具体例としては、8−キノリノールリチウム、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(3,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,5−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,6−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,3−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,4−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−t−ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,5,6−テトラメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(2−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−t−ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリン)ベリリウムなどがあげられる。
【0227】
ビピリジン誘導体は、下記一般式(E−2)で表される化合物である。
【化96】
式中、Gは単なる結合手またはn価の連結基を表し、nは2〜8の整数である。また、ピリジン−ピリジンまたはピリジン−Gの結合に用いられない炭素は、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシアノで置換されていてもよい。
【0228】
一般式(E−2)のGとしては、例えば、以下の構造式のものがあげられる。なお、下記構造式中のRは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、イソプロピル、シクロヘキシル、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリルまたはテルフェニリルである。
【化97】
【0229】
ピリジン誘導体の具体例としては、2,5−ビス(2,2’−ピリジン−6−イル)−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール、2,5−ビス(2,2’−ピリジン−6−イル)−1,1−ジメチル−3,4−ジメシチルシロール、2,5−ビス(2,2’−ピリジン−5−イル)−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール、2,5−ビス(2,2’−ピリジン−5−イル)−1,1−ジメチル−3,4−ジメシチルシロール、9,10−ジ(2,2’−ピリジン−6−イル)アントラセン、9,10−ジ(2,2’−ピリジン−5−イル)アントラセン、9,10−ジ(2,3’−ピリジン−6−イル)アントラセン、9,10−ジ(2,3’−ピリジン−5−イル)アントラセン、9,10−ジ(2,3’−ピリジン−6−イル)−2−フェニルアントラセン、9,10−ジ(2,3’−ピリジン−5−イル)−2−フェニルアントラセン、9,10−ジ(2,2’−ピリジン−6−イル)−2−フェニルアントラセン、9,10−ジ(2,2’−ピリジン−5−イル)−2−フェニルアントラセン、9,10−ジ(2,4’−ピリジン−6−イル)−2−フェニルアントラセン、9,10−ジ(2,4’−ピリジン−5−イル)−2−フェニルアントラセン、9,10−ジ(3,4’−ピリジン−6−イル)−2−フェニルアントラセン、9,10−ジ(3,4’−ピリジン−5−イル)−2−フェニルアントラセン、3,4−ジフェニル−2,5−ジ(2,2’−ピリジン−6−イル)チオフェン、3,4−ジフェニル−2,5−ジ(2,3’−ピリジン−5−イル)チオフェン、6’6”−ジ(2−ピリジル)2,2’:4’,4”:2”,2”’−クアテルピリジンなどがあげられる。
【0230】
フェナントロリン誘導体は、下記一般式(E−3−1)または(E−3−2)で表される化合物である。
【化98】
式中、R
1〜R
8は、それぞれ独立して、水素、アルキル(メチル、エチル、イソプロピル、ヒドロキシエチル、メトキシメチル、トリフルオロメチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジルなど)、アルキルオキシ(メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシなど)、アリールオキシ(フェノキシ、1−ナフチルオキシ、4−トリルオキシなど)、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、アリール(フェニル、ナフチル、p−トリル、p−クロロフェニルなど)、アルキルチオ(メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオなど)、アリールチオ(フェニルチオなど)、シアノ、ニトロ、複素環(ピロール、ピロリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ベンゾオキサゾリルなど)などが挙げられ、好ましくはアルキルまたはハロゲンであり、より好ましくは、メチル、エチル、イソプロピルまたはフッ素であり、隣接する基は互いに結合して縮合環を形成してもよく、Gは単なる結合手またはn価の連結基を表し、nは2〜8の整数である。また、一般式(E−3−2)のGとしては、例えば、ビピリジン誘導体の欄で説明したものと同じものがあげられる。また、上記式(E−3−2)においてはR
1〜R
8のいずれかがGと結合する。
【0231】
フェナントロリン誘導体の具体例としては、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、9,10−ジ(1,10−フェナントロリン−2−イル)アントラセン、2,6−ジ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ピリジン、1,3,5−トリ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ベンゼン、9,9’−ジフルオロ−ビ(1,10−フェナントロリン−5−イル)、バソクプロインや1,3−ビス(2−フェニル−1,10−フェナントロリン−9−イル)ベンゼンなどがあげられる。
【0232】
特に、フェナントロリン誘導体を電子輸送層、電子注入層に用いた場合について説明する。長時間にわたって安定な発光を得るには、熱的安定性や薄膜形成性に優れた材料が望まれ、フェナントロリン誘導体の中でも、置換基自身が三次元的立体構造を有するか、フェナントロリン骨格とのまたは隣接置換基との立体反発により三次元的立体構造を有するもの、または複数のフェナントロリン骨格を連結したものが好ましい。さらに、複数のフェナントロリン骨格を連結する場合、連結ユニット中に共役結合、置換または無置換の芳香族炭化水素、置換または無置換の芳香複素環を含んでいる化合物がより好ましい。
【0233】
ボラン誘導体は、下記一般式(E−4)で表される化合物であり、詳細には特開2007-27587号公報に開示されている。
【化99】
式中、R
11およびR
12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R
13〜R
16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、Xは、置換されていてもよいアリーレンであり、Yは、置換されていてもよい炭素数16以下のアリール、置換されているボリル、または置換されていてもよいカルバゾリルであり、そして、nはそれぞれ独立して0〜3の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルなどが挙げられる。
【0234】
上記一般式(E−4)で表される化合物の中でも、下記一般式(E−4−1)で表される化合物、さらに下記一般式(E−4−1−1)〜(E−4−1−4)で表される化合物が好ましい。具体例としては、9−[4−(4−ジメシチルボリルナフタレン−1−イル)フェニル]カルバゾール、9−[4−(4−ジメシチルボリルナフタレン−1−イル)ナフタレン−1−イル]カルバゾールなどがあげられる。
【化100】
式中、R
11およびR
12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R
13〜R
16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、R
21およびR
22は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、X
1は、置換されていてもよい炭素数20以下のアリーレンであり、nはそれぞれ独立して0〜3の整数であり、そして、mはそれぞれ独立して0〜4の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルなどが挙げられる。
【0235】
【化101】
各式中、R
31〜R
34は、それぞれ独立して、メチル、イソプロピルまたはフェニルのいずれかであり、そして、R
35およびR
36は、それぞれ独立して、水素、メチル、イソプロピルまたはフェニルのいずれかである。
【0236】
上記一般式(E−4)で表される化合物の中でも、下記一般式(E−4−2)で表される化合物、さらに下記一般式(E−4−2−1)で表される化合物が好ましい。
【化102】
式中、R
11およびR
12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R
13〜R
16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、X
1は、置換されていてもよい炭素数20以下のアリーレンであり、そして、nはそれぞれ独立して0〜3の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルなどが挙げられる。
【0237】
【化103】
式中、R
31〜R
34は、それぞれ独立して、メチル、イソプロピルまたはフェニルのいずれかであり、そして、R
35およびR
36は、それぞれ独立して、水素、メチル、イソプロピルまたはフェニルのいずれかである。
【0238】
上記一般式(E−4)で表される化合物の中でも、下記一般式(E−4−3)で表される化合物、さらに下記一般式(E−4−3−1)または(E−4−3−2)で表される化合物が好ましい。
【化104】
式中、R
11およびR
12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R
13〜R
16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、X
1は、置換されていてもよい炭素数10以下のアリーレンであり、Y
1は、置換されていてもよい炭素数14以下のアリールであり、そして、nはそれぞれ独立して0〜3の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルなどが挙げられる。
【0239】
【化105】
各式中、R
31〜R
34は、それぞれ独立して、メチル、イソプロピルまたはフェニルのいずれかであり、そして、R
35およびR
36は、それぞれ独立して、水素、メチル、イソプロピルまたはフェニルのいずれかである。
【0240】
ベンゾイミダゾール誘導体は、下記一般式(E−5)で表される化合物である。
【化106】
式中、Ar
1〜Ar
3はそれぞれ独立に水素または置換されてもよい炭素数6〜30のアリールである。「置換されていてもよい」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシアノなどが挙げられる。特に、Ar
1が、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシアノで置換されてもよいアントリルであるベンゾイミダゾール誘導体が好ましい。
【0241】
炭素数6〜30のアリールの具体例は、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アセナフチレン−1−イル、アセナフチレン−3−イル、アセナフチレン−4−イル、アセナフチレン−5−イル、フルオレン−1−イル、フルオレン−2−イル、フルオレン−3−イル、フルオレン−4−イル、フルオレン−9−イル、フェナレン−1−イル、フェナレン−2−イル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル、9−フェナントリル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、フルオランテン−1−イル、フルオランテン−2−イル、フルオランテン−3−イル、フルオランテン−7−イル、フルオランテン−8−イル、トリフェニレン−1−イル、トリフェニレン−2−イル、ピレン−1−イル、ピレン−2−イル、ピレン−4−イル、クリセン−1−イル、クリセン−2−イル、クリセン−3−イル、クリセン−4−イル、クリセン−5−イル、クリセン−6−イル、ナフタセン−1−イル、ナフタセン−2−イル、ナフタセン−5−イル、ペリレン−1−イル、ペリレン−2−イル、ペリレン−3−イル、ペンタセン−1−イル、ペンタセン−2−イル、ペンタセン−5−イル、ペンタセン−6−イルである。
【0242】
ベンゾイミダゾール誘導体の具体例は、1−フェニル−2−(4−(10−フェニルアントラセン−9−イル)フェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(4−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(3−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、5−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)−1,2−ジフェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1−(4−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−2−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(4−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1−(4−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)フェニル)−2−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、5−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)−1,2−ジフェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾールである。
【0243】
電子輸送層または電子注入層には、さらに、電子輸送層または電子注入層を形成する材料を還元できる物質を含んでいてもよい。この還元性物質は、一定の還元性を有するものであれば、様々なものが用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを好適に使用することができる。
【0244】
好ましい還元性物質としては、Na(仕事関数2.36eV)、K(同2.28eV)、Rb(同2.16eV)またはCs(同1.95eV)などのアルカリ金属や、Ca(同2.9eV)、Sr(同2.0〜2.5eV)またはBa(同2.52eV)などのアルカリ土類金属があげられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性物質は、K、RbまたはCsのアルカリ金属であり、さらに好ましくはRbまたはCsであり、最も好ましいのはCsである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性物質として、これら二種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、またはCsとNaとKとの組み合わせが好ましい。Csを含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
【0245】
4−7.有機電界発光素子における陰極
陰極108は、電子注入層107および電子輸送層106を介して、発光層105に電子を注入する役割を果たすものである。
【0246】
陰極108を形成する材料としては、電子を有機層に効率よく注入できる物質であれば特に限定されないが、陽極102を形成する材料と同様のものを用いることができる。なかでも、スズ、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金、鉄、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびマグネシウムなどの金属またはそれらの合金(マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、フッ化リチウム/アルミニウムなどのアルミニウム−リチウム合金など)などが好ましい。電子注入効率をあげて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は一般に大気中で不安定であることが多い。この点を改善するために、例えば、有機層に微量のリチウム、セシウムやマグネシウムをドーピングして、安定性の高い電極を使用する方法が知られている。その他のドーパントとしては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、酸化リチウムおよび酸化セシウムのような無機塩も使用することができる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0247】
さらに、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを積層することが、好ましい例としてあげられる。これらの電極の作製法も、抵抗加熱、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。
【0248】
4−8.各層で用いてもよい結着剤
以上の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層に用いられる材料は単独で各層を形成することができるが、高分子結着剤としてポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂などの溶媒可溶性樹脂や、フェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂などに分散させて用いることも可能である。
【0249】
4−9.有機電界発光素子の作製方法
有機EL素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、印刷法、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法、レーザー加熱描画法(LITI)などの方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm〜5000nmの範囲である。
【0250】
4−9−1.湿式成膜法
本発明の発光層形成用組成物(インク組成物)は、湿式成膜法を用いることによって成膜される。
【0251】
湿式成膜法は、一般的には、基板に発光層形成用組成物を塗布する塗布工程および塗布された発光層形成用組成物から溶媒を取り除く乾燥工程を経ることで塗膜を形成する。塗布工程の違いにより、スピンコーターを用いるものをスピンコート法、スリットコーターを用いるスリットコート法、版を用いるグラビア、オフセット、リバースオフセット、フレキソ印刷法、インクジェットプリンタを用いるものをインクジェット法、霧状に吹付けるものをスプレー法と呼ぶ。乾燥工程には、風乾、加熱、減圧乾燥などの方法がある。乾燥工程は1回のみ行なってもよく、異なる方法や条件を用いて複数回行なってもよい。また、例えば、減圧下での焼成のように、異なる方法を併用してもよい。
【0252】
湿式成膜法とは溶液を用いた成膜法であり、例えば、一部の印刷法(インクジェット法)、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などである。湿式成膜法は真空蒸着法と異なり高価な真空蒸着装置を用いる必要が無く、大気圧下で成膜することができる。加えて、湿式成膜法は大面積化や連続生産が可能であり、製造コストの低減につながる。
【0253】
一方で、真空蒸着法と比較した場合には、湿式成膜法は積層化が難しい。湿式成膜法を用いて積層膜を作製する場合、上層の組成物による下層の溶解を防ぐ必要があり、溶解性を制御した組成物、下層の架橋および直交溶媒(Orthogonal solvent、互いに溶解し合わない溶媒)などが駆使される。しかしながら、それらの技術を用いても、全ての膜の塗布に湿式成膜法を用いるのは難しい場合がある。
【0254】
そこで、一般的には、幾つかの層だけを湿式成膜法を用い、残りを真空蒸着法で有機EL素子を作製するという方法が採用される。
【0255】
例えば、湿式成膜法を一部適用し有機EL素子を作製する手順を以下に示す。
(手順1)陽極の真空蒸着法による成膜
(手順2)正孔注入層の湿式成膜法による成膜
(手順3)正孔輸送層の湿式成膜法による成膜
(手順4)ホスト材料とドーパント材料を含む発光層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順5)電子輸送層の真空蒸着法による成膜
(手順6)電子注入層の真空蒸着法による成膜
(手順7)陰極の真空蒸着法による成膜
この手順を経ることで、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子が得られる。
【0256】
4−9−2.その他成膜法
発光層形成用組成物の成膜化には、レーザー加熱描画法(LITI)を用いることができる。LITIとは基材に付着させた化合物をレーザーで加熱蒸着する方法で、基材へ塗布される材料に発光層形成用組成物を用いることができる。
【0257】
4−9−3.任意の工程
成膜の各工程の前後に、適切な処理工程、洗浄工程および乾燥工程を適宜入れてもよい。処理工程としては、例えば、露光処理、プラズマ表面処理、超音波処理、オゾン処理、適切な溶媒を用いた洗浄処理および加熱処理等があげられる。さらには、バンクを作製する一連の工程もあげられる。
【0258】
4−9−3−1.バンク(隔壁材料)
バンクの作製にはフォトリソグラフィ技術を用いることができる。フォトリソグラフィの利用可能なバンク材としては、ポジ型レジスト材料およびネガ型レジスト材料を用いることができる。また、インクジェット法、グラビアオフセット印刷、リバースオフセット印刷、スクリーン印刷などのパターン可能な印刷法も用いることができる。その際には永久レジスト材料を用いることもできる。
【0259】
バンクに用いられる材料としては、多糖類およびその誘導体、ヒドロキシルを有するエチレン性モノマーの単独重合体および共重合体、生体高分子化合物、ポリアクリロイル化合物、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレン、ポリフェニルエーテル、ポリウレタン、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合ポリマー(ABS)、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリアセテート、ポリノルボルネン、合成ゴム、ポリフルオロビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ化ポリマー、フルオロオレフィン−ヒドロカーボンオレフィンの共重合ポリマー、フルオロカーボンポリマー、があげられるが、それだけに限定されない。
【0260】
4−10.有機電界発光素子の作製例
次に、真空蒸着法およびインクジェットを用いた湿式成膜法による有機EL素子を作製する方法の例を示す。
【0261】
4−10−1.真空蒸着法による有機電界発光素子の作製例
真空蒸着法による有機EL素子を作製する方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法などにより形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上にホスト材料とドーパント材料を共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に電子輸送層、電子注入層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法などにより形成させて陰極とすることにより、目的の有機EL素子が得られる。なお、上述の有機EL素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
【0262】
4−10−2.インクジェットによる有機電界発光素子の作製例
図2を参考にして、バンクを有する基板にインクジェット法を用いて有機EL素子を作製する方法を説明する。まず、バンク(200)は基板(110)上の電極(120)の上に設けられている。この場合、インクジェットヘッド(300)より、バンク(200)間にインクの液滴(310)を滴下し、乾燥させることで塗膜(130)を作製することができる。これを繰り返し、次の塗膜(140)、さらに発光層(150)まで作製し、真空蒸着法を用い電子輸送層、電子注入層および電極を成膜すれば、バンク材で発光部位が区切られた有機EL素子を作製することができる。
【0263】
4−11.有機電界発光素子の電気特性および発光特性の確認
このようにして得られた有機EL素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として印加すればよく、電圧2〜40V程度を印加すると、透明または半透明の電極側(陽極または陰極、および両方)より発光が観測できる。また、この有機EL素子は、パルス電流や交流電流を印加した場合にも発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0264】
4−12.有機電界発光素子の応用例
また、本発明は、有機EL素子を備えた表示装置または有機EL素子を備えた照明装置などにも応用することができる。
有機EL素子を備えた表示装置または照明装置は、本実施形態にかかる有機EL素子と公知の駆動装置とを接続するなど公知の方法によって製造することができ、直流駆動、パルス駆動、交流駆動など公知の駆動方法を適宜用いて駆動することができる。
【0265】
表示装置としては、例えば、カラーフラットパネルディスプレイなどのパネルディスプレイ、フレキシブルカラー有機ELディスプレイなどのフレキシブルディスプレイなどがあげられる(例えば、特開平13035066号公報、特開2003-321546号公報、特開2004-281806号公報など参照)。また、ディスプレイの表示方式としては、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式などがあげられる。なお、マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
【0266】
マトリクスとは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置されたものをいい、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
【0267】
セグメント方式(タイプ)では、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などがあげられる。
【0268】
照明装置としては、例えば、室内照明などの照明装置、液晶表示装置のバックライトなどがあげられる(例えば、特開2003-257621号公報、特開2003-277741号公報、特開2004-119211号公報など参照)。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来方式のものが蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、本実施形態に係る発光素子を用いたバックライトは薄型で軽量が特徴になる。
【実施例】
【0269】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0270】
合成例1:式(1−91)の化合物
【化107】
【0271】
1,5−ジブロモ−2,4−ジフルオロベンゼン(30.0g)、フェノール(31.2g)、炭酸カリウム(45.7g)およびNMP(150ml)の入ったフラスコを160℃で加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却して、NMPを減圧留去した後、水およびトルエンを加え分液した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルショートパスカラム(展開液:ヘプタン/トルエン=1(容量比))で精製することで、((4,6−ジブロモ−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ジベンゼン(44.0g)を得た。
【化108】
【0272】
窒素雰囲気下、((4,6−ジブロモ−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ジベンゼン(40.0g)、フェニルボロン酸(34.8g)、炭酸ナトリウム(60.6g)、トルエン(500ml)、イソプロパノール(100ml)および水(100ml)の懸濁溶液に、Pd(PPh
3)
4(5.5g)を加え、還流温度で8時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、水およびトルエンを加え分液し、有機層の溶媒を減圧留去した。得られた固体を加熱したクロロベンゼンに溶解させ、シリカゲルショートパスカラム(展開液:トルエン)に通した。溶媒を適当量留去した後、ヘプタンを加えることで再沈殿させ、4’,6’−ジフェノキシ−1,1’:3’,1”−テルフェニル(41.0g)を得た。
【化109】
【0273】
4’,6’−ジフェノキシ−1,1’:3’,1”−テルフェニル(30.0g)およびオルトキシレン(300ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、0℃で、2.6Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液(29.0ml)を加えた。滴下終了後、70℃まで昇温して4時間撹拌し、更に100℃まで昇温してヘキサンを留去した。−50℃まで冷却して三臭化ホウ素(8.4ml)を加え、室温で昇温して1時間撹拌した。その後、再び0℃まで冷却してN,N−ジイソプロピルエチルアミン(25.0ml)を加え、発熱が収まるまで室温で撹拌した後、120℃で4時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却して、有機物をトルエンで抽出した。得られたトルエン溶液に水を加え、分液し、溶媒を減圧留去した。得られた固体をクロロベンゼンに溶解させた後、適当量を減圧留去し、ヘプタンを加えることで再沈殿させた。更にヘプタンを酢酸エチルに代えて同様に再沈殿させることで、式(1−91)で表される化合物(収量:4.2g)を得た。
【化110】
【0274】
合成例2:式(1−1−1)の化合物
【化111】
【0275】
1−ブロモ−3−ヨードベンゼン(42.44g、150mmol、1.0eq.)、ビフェニル−3−イルボロン酸(29.70g、1.0eq.)、炭酸ナトリウム(31.80g、2.0eq.)、および、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(3.47g、0.02eq.)を1L三口丸底フラスコに量り取り、十分に減圧脱気および窒素置換を行った後、窒素雰囲気下でトルエン(360mL)、エタノール(90mL)および水(90mL)を加え、74℃で還流・撹拌した。3時間の後に、加熱をやめ、反応液を室温に戻した。トルエンで3回抽出を行った後、有機溶媒層をまとめ、無水硫酸ナトリウムを加え、しばらく放置した。硫酸ナトリウムを濾去し、溶液を減圧濃縮した。得られたオイルを溶離液にトルエンを用いてシリカゲルショートカラムクロマトグラフィーに通じ、目的物を含むフラクションを回収・減圧濃縮した。得られたオイルを溶離液にヘプタンを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通じ、目的物を含むフラクションを回収・減圧濃縮した。透明オイルとして目的物「P3Br」が得られた(収量:26.60g、収率:57.3%)。
【化112】
【0276】
P3Br(26.60g、86.03mmol、1.0eq.)、ビスピナコレートジボロン(103.23g、1.2eq.)、酢酸カリウム(25.33g、3eq.)およびビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン錯体(2.11g、0.03eq.)を1L三口丸底フラスコに量り取り、十分に減圧脱気および窒素置換を行った後、窒素雰囲気下でシクロペンチルメチルエーテル(300mL)を加え、100℃で還流・撹拌した。3時間の後に加熱をやめ、反応液を室温に戻した。トルエンで3回抽出を行った後、有機溶媒層をまとめ、無水硫酸ナトリウムを加え、しばらく放置した。硫酸ナトリウムを濾去し、溶液を減圧濃縮した。得られたオイルを溶離液にトルエンを用いて活性炭カラムクロマトグラフィーに通じ、目的物を含むフラクションを回収・減圧濃縮した。得られた黄色オイルを熱メタノールに溶解させ、室温放置後に氷冷した。析出した針状結晶の目的物「P3Bpin」を回収した(収量:28.48g、収率:92.9%)。
【化113】
【0277】
1−ブロモ−3−ヨードベンゼン(3.57g、12.6mmol、1.0eq.)、P3Bpin(4.55g、1.0eq.)、炭酸ナトリウム(4.01g、3.0eq.)、および、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.44g、0.03eq.)を300mL三口丸底フラスコに量り取り、十分に減圧脱気および窒素置換を行った後、窒素雰囲気下でトルエン(40mL)、エタノール(10mL)および水(10mL)を加え、74℃で還流・撹拌した。3時間の後に加熱をやめ、反応液を室温に戻した。トルエンで3回抽出を行った後、有機溶媒層をまとめ、無水硫酸ナトリウムを加え、しばらく放置した。硫酸ナトリウムを濾去し、溶液を減圧濃縮した。得られたオイルを溶離液にトルエンを用いてシリカゲルショートカラムクロマトグラフィーに通じ、目的物を含むフラクションを回収・減圧濃縮した。得られたオイルを溶離液にヘプタン−トルエン(9:1(容量比))を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通じ、目的物を含むフラクションを回収・減圧濃縮した。透明オイルとして目的物「P4Br」が得られた(収量:3.97g、収率:80.8%)。
【化114】
【0278】
P4Br(3.97g、10.20mmol、1.0eq.)、ビスピナコレートジボロン(3.11g、1.2eq.)、酢酸カリウム(3.00g、3eq.)およびビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン錯体(0.25g、0.03eq.)を200mL三口丸底フラスコに量り取り、十分に減圧脱気および窒素置換を行った後、窒素雰囲気下でシクロペンチルメチルエーテル(40mL)を加え、100℃で還流・撹拌した。3時間の後に加熱をやめ、反応液を室温に戻した。トルエンで3回抽出を行った後、有機溶媒層をまとめ、無水硫酸ナトリウムを加え、しばらく放置した。硫酸ナトリウムを濾去し、溶液を減圧濃縮した。得られたオイルを溶離液にトルエンを用いて活性炭カラムクロマトグラフィーに通じ、目的物を含むフラクションを回収・減圧濃縮した。透明オイルとして目的物「P4Bpin」が得られた(収量:4.30g、収率:95.1%)。
【化115】
【0279】
窒素雰囲気下、1−ブロモ−2,4−ジフルオロベンゼン(23.0g)、フェノール(33.6g)、炭酸カリウム(49.4g)およびNMP(150ml)の溶液を、170℃に加熱・撹拌する。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、トルエンおよび飽和塩化ナトリウム水溶液を加え分液し、溶媒を減圧留去する。次いで、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、「13Px4B」が得られる。
【化116】
【0280】
窒素雰囲気下、13Px4B(4.0g)、P4Bpin(5.1g)、炭酸ナトリウム(3.7g)、トルエン(36ml)、イソプロパノール(9ml)および水(9ml)の懸濁溶液に、Pd(PPh
3)
4(0.41g)を加え、還流温度で撹拌する。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水およびトルエンを加え分液し、有機層の溶媒を減圧留去する。得られた固体シリカゲルショートパスカラムに通じ、溶媒を適当量留去した後、再沈殿させることで、目的物「13Px4P4」が得られる。
【化117】
【0281】
13Px4P4(5.0g、8.8mmol)およびオルトキシレン(50ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、0℃で、2.6Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液(5.1ml、1.5eq.)を加える。滴下終了後、70℃まで昇温して撹拌し、反応終了後、更に100℃まで昇温してヘキサンを留去する。次いで、−50℃まで冷却して三臭化ホウ素(1.4ml、1.7eq.)を加え、室温で昇温して1時間撹拌する。その後、再び0℃まで冷却してN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.0ml、3.0eq.)を加え、発熱が収まるまで室温で撹拌した後、120℃で加熱撹拌する。反応終了後、反応液を室温まで冷却して、有機物をトルエンで抽出する。得られたトルエン溶液に水を加え、分液し、溶媒を減圧留去する。得られた固体を溶解させた後、再沈殿させる。溶媒を変え、同様に再沈殿させることで、式(1−1−1)で表される化合物が得られる。
【化118】
【0282】
合成例3:式(1−1−2)の化合物
【化119】
【0283】
3−ブロモフェノール(8.0g、46.2mmol、1.0eq.)、P4Bpin(20.0g、1.0eq.)、炭酸ナトリウム(14.7g、3.0eq.)、および、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.6g、0.03eq.)を500mL三口丸底フラスコに量り取り、十分に減圧脱気および窒素置換を行った後、窒素雰囲気下でトルエン(120mL)、エタノール(30mL)および水(30mL)を加え、還流・撹拌する。反応終了後、加熱をやめ、反応液を室温に戻す。トルエンで3回抽出を行った後、有機溶媒層をまとめ、無水硫酸ナトリウムを加え、しばらく放置する。硫酸ナトリウムを濾去し、溶液を減圧濃縮する。目的物を含む混合物をシリカゲルショートカラムクロマトグラフィーに通じ、目的物を含むフラクションを回収・減圧濃縮する。次いで、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに通じ、目的物を含むフラクションを回収・減圧濃縮することで目的物「P5mOH」が得られる。
【化120】
【0284】
窒素雰囲気下、1−ブロモ−3−フルオロベンゼン(50.0g、0.29mol)、フェノール(30.0g、1.1eq.)および炭酸カリウム(79.0g、2.0eq.)のNMP(300ml)溶液に、窒素雰囲気下でヨウ化銅(I)(1.6g、0.03eq.)および鉄(III)アセチルアセトナート(6.1g、0.06eq.)を加え、150℃まで昇温して4時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、酢酸エチルおよびアンモニア水を加えることで析出した塩を、セライトを敷いた桐山ロートを用いた吸引ろ過にて除去した。ろ液を分液し、有機層の溶媒を減圧留去した後、シリカゲルショートパスカラム(展開液:トルエン/ヘプタン=2/8(容量比))で精製して、1−フルオロ−3−フェノキシベンゼン「1F3Px」(収量:41.0g、収率:36.0%)を得た。
【化121】
【0285】
1F3Px(2.6g、15mmol)、P5mOH(12.0g、2eq.)、炭酸セシウム(10.0g、2eq.)およびNMP(30ml)の入ったフラスコを、窒素雰囲気下で加熱撹拌する。反応停止後、反応液を室温まで冷却し、NMPを減圧留去した後、水および酢酸エチルを加えて分液する。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、目的物「1Px3P5」が得られる。
【化122】
【0286】
1Px3P5(1.8g、3.2mmol、1eq.)およびキシレン(10ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、0℃で、1.0Mのsec−ブチルリチウムシクロヘキサン溶液(5.0ml、1.5eq.)を加える。滴下終了後、70℃まで昇温して撹拌した後、反応終了後、キシレンより低沸点の成分を減圧留去する。−50℃まで冷却して三臭化ホウ素(0.5ml)を加え、室温で昇温して0.5時間撹拌する。その後、再び0℃まで冷却してN,N−ジイソプロピルエチルアミン(2ml)を加え、発熱が収まるまで室温で撹拌した後、120℃まで昇温して加熱撹拌する。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、氷浴で冷やした酢酸ナトリウム水溶液次いで酢酸エチルを加え、生じた固体を吸引ろ過にて採取する。得られた固体を還流した酢酸エチルで洗浄し、次いで、シリカゲルショートパスカラムで精製する。更に再結晶させることで、式(1−1−2)で表される化合物が得られる。
【化123】
【0287】
合成例4:式(1−1−3)の化合物
【化124】
【0288】
4−ブロモフェノール(8.0g、46.2mmol、1.0eq.)、P4Bpin(20.0g、1.0eq.)、炭酸ナトリウム(14.7g、3.0eq.)、および、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.6g、0.03eq.)を300mL三口丸底フラスコに量り取り、十分に減圧脱気および窒素置換を行った後、窒素雰囲気下でトルエン(120mL)、エタノール(30mL)および水(30mL)を加え、還流・撹拌する。反応終了後、加熱をやめ、反応液を室温に戻す。トルエンで抽出を行った後、有機溶媒層をまとめ、無水硫酸ナトリウムを加え、しばらく放置する。硫酸ナトリウムを濾去し、溶液を減圧濃縮する。得られた目的物を含む混合物をシリカゲルショートカラムクロマトグラフィーに通じ、目的物を含むフラクションを回収・減圧濃縮する。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに通じ、目的物を含むフラクションを回収・減圧濃縮することで、目的物「P5pOH」が得られる。
【化125】
【0289】
1F3Px(3.2g、18mmol)、P5pOH(14.5g、2eq.)、炭酸セシウム(12.0g)およびNMP(30ml)の入ったフラスコを、窒素雰囲気下200℃で加熱撹拌する。反応停止後、反応液を室温まで冷却し、NMPを減圧留去した後、水および酢酸エチルを加えて分液する。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、「1Px3P5(p)」が得られる。
【化126】
【0290】
1Px3P5(p)(1.8g)およびキシレン(10ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、0℃で、1.0Mのsec−ブチルリチウムシクロヘキサン溶液(5.0ml)を加える。滴下終了後、70℃まで昇温して撹拌した後、反応終了後、キシレンより低沸点の成分を減圧留去する。−50℃まで冷却して三臭化ホウ素(0.5ml)を加え、室温で昇温して0.5時間撹拌する。その後、再び0℃まで冷却してN,N−ジイソプロピルエチルアミン(2ml)を加え、発熱が収まるまで室温で撹拌した後、120℃まで昇温して加熱撹拌する。反応液を室温まで冷却し、氷浴で冷やした酢酸ナトリウム水溶液次いで酢酸エチルを加え、生じる固体を吸引ろ過にて採取する。得られた固体を還流した酢酸エチルで洗浄し、次いで、シリカゲルショートパスカラムで精製する。更に再結晶させることで、式(1−1−3)で表される化合物が得られる。
【化127】
【0291】
合成例5:式(1−1−4)の化合物
【化128】
【0292】
1F3Px(10g、53mmol)、3−ブロモフェノール(9.2g、1eq.)、炭酸カリウム(15g、2eq.)およびNMP(50ml)の入ったフラスコを、窒素雰囲気下200℃で2時間加熱撹拌した。反応停止後、反応液を室温まで冷却し、NMPを減圧留去した後、水およびトルエンを加えて分液した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:へプタン/トルエン=7/3(容量比))で精製した。更に酢酸エチルに溶解させた後、へプタンを加えることで再沈殿させ、「1Px3PBr」(収量:13.1g、収率:72%)を得た。
【化129】
【0293】
1Px3PBr(10g、30mmol)、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリド(0.16g)、およびシクロペンチルメチルエーテル(40mL)をフラスコに入れて、窒素雰囲気下、氷水で冷却し、内温が25℃を超えないように1mol/Lドデシルマグネシウムブロミド ジエチルエーテル溶液(40mL、1.4eq.)をゆっくりと滴下する。次いで室温まで昇温後、室温で撹拌する。反応終了後、再び氷水で冷却後、水をゆっくり滴下して反応を停止させ、次いで1N塩酸で中和後、ヘプタンを加えて、析出物を濾過する。得られた目的物を分液後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことで、目的物「1Px3PC12」が得られる。
【化130】
【0294】
1Px3PC12(10g、0.23mmol)およびキシレン(50ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、0℃で、1.0Mのsec−ブチルリチウムシクロヘキサン溶液(35ml、1.5eq.)を加える。滴下終了後、70℃まで昇温して撹拌した後、反応終了後、キシレンより低沸点の成分を減圧留去する。−50℃まで冷却して三臭化ホウ素(4.0ml、1.7eq.)を加え、室温で昇温して0.5時間撹拌する。その後、再び0℃まで冷却してN,N−ジイソプロピルエチルアミン(12ml、3eq.)を加え、発熱が収まるまで室温で撹拌した後、120℃まで昇温して加熱撹拌する。反応液を室温まで冷却し、氷浴で冷やした酢酸ナトリウム水溶液次いで酢酸エチルを加え、分液する。目的物を含む混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、式(1−1−4)で表される化合物が得られる。
【化131】
【0295】
合成例6:式(1−1−5)の化合物
【化132】
【0296】
1Px3PBr(10g、30mmol)、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリド(0.16g、0.01eq.)、およびシクロペンチルメチルエーテル(60ml)をフラスコに入れて、窒素雰囲気下、氷水で冷却し、内温が25℃を超えないように1mol/L2−エチルヘキシルマグネシウムブロミド ジエチルエーテル溶液(40mL、1.4eq.)をゆっくりと滴下する。次いで室温まで昇温後、室温で撹拌する。反応終了後、再び氷水で冷却後、水をゆっくり滴下して反応を停止させ、次いで1N塩酸で中和後、ヘプタンを加えて、析出物を分液する。目的物を含む混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、目的物「1Px3P2EH」が得られる。
【化133】
【0297】
1Px3P2EH(9.8g、)およびキシレン(50ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、0℃で、1.0Mのsec−ブチルリチウムシクロヘキサン溶液(40ml)を加える。滴下終了後、70℃まで昇温して撹拌した後、反応終了後、キシレンより低沸点の成分を減圧留去する。−50℃まで冷却して三臭化ホウ素(4.2ml)を加え、室温で昇温して0.5時間撹拌する。その後、再び0℃まで冷却してN,N−ジイソプロピルエチルアミン(14ml)を加え、発熱が収まるまで室温で撹拌した後、120℃まで昇温して加熱撹拌する。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、氷浴で冷やした酢酸ナトリウム水溶液次いで酢酸エチルを加え、分液する。有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、式(1−1−5)で表される化合物が得られる。
【化134】
【0298】
合成例7:式(2−51)の化合物
【化135】
【0299】
まず、2,4−ジブロモアニリン(25.0g)、フェニルボロン酸(30.0g)、Pd(PPh
3)
4(5.8g)、リン酸三カリウム(106.0g)、キシレン(300ml)、t−ブチルアルコール(50ml)および水(50ml)の入ったフラスコを120℃で30分撹拌した。反応液を室温まで冷却し、水および酢酸エチルを加え分液した。有機層をシリカゲルショートカラムに通し、高極性の副生物を除去した後、溶媒を減圧留去した。更にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン/ヘプタン=8/2(容量比))で精製した後、ヘプタンで再沈殿させ、[1,1’:3’,1”−テルフェニル]−4’−アミン(収量:13.1g)を得た。
【化136】
【0300】
次に、[1,1’:3’,1”−テルフェニル]−4’−アミン(13.0g)、2−ブロモビフェニル(12.4g)、ナトリウム−t−ブトキシド(7.6g)、Pd(dba)
2(0.08g)、4−(ジ−t−ブチルホスフィノ)−N,N−ジメチルアニリン(0.07g)およびトルエン(100ml)の入ったフラスコを窒素雰囲気下、80℃で30分攪拌した。反応液を室温まで冷却し、水および酢酸エチルを加え分液した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン/ヘプタン=2/8(容量比))で精製し、N−([1,1’−ビフェニル]−2−イル)−[1,1’:3’,1”−テルフェニル]−4’−アミン(収量:20.0g)を得た。
【化137】
【0301】
上記のようにして得たN−([1,1’−ビフェニル]−2−イル)−[1,1’:3’,1”−テルフェニル]−4’−アミン(18.6g)およびトルエン(250ml)の入ったフラスコを−70℃まで冷却し、n−ブチルリチウムの1.6Mヘキサン溶液(29.3ml)を滴下した。滴下終了後、一旦0℃まで昇温することで得られた懸濁液を三塩化ホウ素の1.0Mヘプタン溶液(46.9ml)をトルエンで希釈した溶液に−60℃で滴下した。次いで、反応液を室温まで昇温した後、一旦溶媒を減圧留去した。ここにオルトジクロロベンゼン(300ml)、2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン(13.9g)、三塩化アルミニウム(25.0g)を加え、170℃で20時間撹拌した。反応液を60℃まで冷却し、炭酸ナトリウム(10.0g)および酢酸ナトリウム(31.0g)を加えた氷水(懸濁溶液)に加えた。有機層を分液後、セライトを敷いた桐山ロートで吸引ろ過し、溶媒を減圧留去した。次いで、活性アルミナカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン/トリエチルアミン=100/1(容量比))で精製後、酢酸エチル/ヘプタン混合溶媒にて再沈殿させ、式(2−51)で表される化合物(収量:14.0g)を得た。
【化138】
【0302】
合成例8:式(2−51−1)の化合物
【化139】
【0303】
まず、窒素雰囲気下、2−フェニル−4b−アザ−12b−ボラジベンゾ[g,p]クリセン(6.0g)のTHF(40ml)溶液に、N−ブロモスクシンイミド(NBS)(2.8g)を加え、室温で終夜撹拌した。反応終了後、亜硝酸ナトリウム水溶液およびトルエンを加え分液し、溶媒を減圧留去した。得られた固体をクロロベンゼンに溶解させ、活性アルミナショートカラム(展開液:トルエン/トリエチルアミン=100/1(容量比))に通した。溶媒を減圧留去し得られた固体をヘプタンで洗浄することで2−ブロモ−7−フェニル−4b−アザ−12b−ボラジベンゾ[g,p]クリセン(収量:6.1g)を得た。
【化140】
【0304】
2−ブロモ−7−フェニル−4b−アザ−12b−ボラジベンゾ[g,p]クリセン(5.0g、0.10mol)、P4Bpin(4.5g、1eq.)、Pd(TPP)
4(0.36g、0.03eq.)および炭酸ナトリウム(3.3g、3eq.)をトルエン(36ml)、イソプロパノール(9mL)および水(9mL)に溶解させ、次いで80℃で加熱撹拌する。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水および酢酸エチルを加え分液する。次いで、溶媒を減圧留去した後、活性アルミナショートカラムに通じる。溶媒を減圧留去した後、再沈殿を行い精製することで、式(2−51−1)で表される化合物が得られる。
【化141】
【0305】
<発光層形成用組成物の調製>
実施例1〜9に係る発光層形成用組成物の調製方法を示した。組成物の調製に用いる化合物を以下に示す。
【化142】
【0306】
<ドーパントの三重項エネルギーの測定>
実施例で用いるドーパントの三重項エネルギーを測定した。Ir(ppy)
3、Ir(piq)
3、およびHex−Ir(piq)
3についてはジクロロメタンまたはテトラヒドロフラン溶液の室温におけるりん光スペクトル(日立製蛍光分光光度計F−7000)を測定し、ピークトップの値より算出した。4CzIPNについては、ポリメタクリレート中に5重量%の濃度で分散させた薄膜を作製し、液体窒素冷却下におけるスペクトルを測定し、ピークトップの値より算出した。各ドーパントのりん光スペクトルのピークトップおよび算出した三重項エネルギーを表1に示す。
【0307】
【表1】
【0308】
<実施例1>
下記成分を均一な溶液になるまで撹拌することで発光層形成用組成物を調製できる。
Ir(piq)
3 0.05 重量%
化合物(1−1−1) 0.95 重量%
アニソール 99.00 重量%
【0309】
<実施例2>
下記成分を均一な溶液になるまで撹拌することで発光層形成用組成物を調製できる。
Hex−Ir(piq)
3 0.05 重量%
化合物(1−1−1) 0.95 重量%
トルエン 70.00 重量%
デカリン 29.00 重量%
【0310】
<実施例3>
下記成分を均一な溶液になるまで撹拌することで発光層形成用組成物を調製できる。
4CzIPN 0.05 重量%
化合物(1−1−1) 0.95 重量%
トルエン 70.00 重量%
デカリン 29.00 重量%
【0311】
<実施例4>
下記成分を均一な溶液になるまで撹拌することで発光層形成用組成物を調製できる。
Ir(piq)
3 0.05 重量%
化合物(1−1−2) 0.95 重量%
トルエン 99.00 重量%
【0312】
<実施例5>
下記成分を均一な溶液になるまで撹拌することで発光層形成用組成物を調製できる。
Ir(piq)
3 0.05 重量%
化合物(1−1−3) 0.95 重量%
トルエン 99.00 重量%
【0313】
<実施例6>
下記成分を均一な溶液になるまで撹拌することで発光層形成用組成物を調製できる。
Ir(piq)
3 0.05 重量%
化合物(1−1−4) 0.95 重量%
トルエン 99.00 重量%
【0314】
<実施例7>
下記成分を均一な溶液になるまで撹拌することで発光層形成用組成物を調製できる。
Ir(piq)
3 0.05 重量%
化合物(1−1−5) 0.95 重量%
トルエン 99.00 重量%
【0315】
<実施例8>
下記成分を均一な溶液になるまで撹拌することで発光層形成用組成物を調製できる。
Ir(ppy)
3 0.05 重量%
化合物(2−51−1) 0.95 重量%
トルエン 70.00 重量%
デカリン 29.00 重量%
【0316】
<実施例9>
下記成分を均一な溶液になるまで撹拌することで発光層形成用組成物を調製できる。
Ir(ppy)
3 0.05 重量%
化合物(1−1−1) 0.65 重量%
化合物(2−51−1) 0.30 重量%
トルエン 70.00 重量%
デカリン 29.00 重量%
【0317】
<塗布製膜性の評価>
発光層形成用組成物を4×4cmのガラス基板にスピンコート法により塗布製膜し、膜欠陥の程度を評価する。製膜後に基板上に膜が形成されないものおよび塗膜にピンホールのあるものを「不良」、ピンホールの無いものを「良」とする。
【0318】
<面内配向性の評価>
蒸着膜または塗布膜におけるホスト化合物の面内配向性は、エリプソメーターによって屈折率および消衰係数の異方性を評価することによって算出できる(Daisuke Yokoyama, Akio Sakaguchi, Michio Suzuki, Chihaya Adachi, Applied Physics Letters, 96, 073302 (2010)、Daisuke Yokoyama, Journal of Materials Chemistry, 21, 19187-19202 (2011))。さらに、蒸着膜または塗布膜における発光性化合物の面内配向性は、発光性化合物のP偏光の発光強度の角度依存性を測定し、その測定結果とシミュレーション結果を比較することによって算出できる(Jorg Frischeisen, Daisuke Yokoyama, Chihaya Adachi, Wolfgang Brutting, Applied Physics Letters, 96, 073302 (2010))。
【0319】
<塗布膜の発光量子収率の評価>
1×1cmの石英基板にスピンコート法により塗布製膜し、蛍光量子収率測定装置(浜松ホトニクス)を用いて、塗布膜の発光量子収率(PL)を計測する。
【0320】
本発明の発光層形成用組成物は塗布製膜性および蛍光量子収率が優れている。さらに、式(FG−1)で表される基、式(FG−2)で表される基または炭素数1〜24のアルキルで置換された化合物を用いて調製した発光層形成用組成物は、これらで置換されていない化合物と比較して、高い蛍光量子収率が得られる。
【0321】
また、三重項エネルギーが1.8〜3.0eVの範囲内であるドーパントを用いた塗布膜は、三重項エネルギーが1.8〜3.0eVの範囲外であるドーパントを用いた塗布膜に比べて高い発光量子収率が得られる。
【0322】
<有機電界発光素子の作製と評価>
実施例10に架橋性正孔輸送材料を用いた有機EL素子の作製方法を、実施例11に直交溶媒系を用いた有機EL素子の作製方法を示した。作製する有機EL素子における、各層の材料構成を表2に示す。
【表2】
【0323】
表2における、「PEDOT:PSS」「OTPD」「TcTa」「TPBi」の構造を以下に示す。
【化143】
【0324】
<PEDOT:PSS溶液>
市販のPEDOT:PSS溶液(Clevios(TM) P VP AI4083、PEDOT:PSSの水分散液、Heraeus Holdings社製)を用いる。
【0325】
<OTPD溶液の調製>
OTPD(LT−N159、Luminescence Technology Corp社製)およびIK−2(光カチオン重合開始剤、サンアプロ社製)をトルエンに溶解させ、OTPD濃度0.7wt%、IK−2濃度0.007wt%のOTPD溶液を調製する。
【0326】
<TcTa溶液の調製>
TcTa(LT−E207、TcTa、Luminescence Technology Corp社製)をオルトジクロロベンゼンに溶解させ、0.7wt%TcTa溶液を調製する。
【0327】
<実施例10>
ITOが150nmの厚さに蒸着されたガラス基板上に、PEDOT:PSS溶液をスピンコートし、200℃のホットプレート上で1時間焼成し、膜厚40nmのPEDOT:PSS膜を成膜する(正孔注入層)。次いで、OTPD溶液をスピンコートし、80℃のホットプレート上で10分間乾燥する。露光機で露光強度100mJ/cm
2で露光し、100℃のホットプレート上で1時間焼成することで、膜厚30nmの溶液に不溶なOTPD膜を成膜する(正孔輸送層)。次いで、実施例2で調製した発光層形成用組成物をスピンコートし、120℃のホットプレート上で1時間焼成することで、膜厚20nmの発光層を成膜する。
【0328】
作製した多層膜を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、TPBiを入れたモリブデン製蒸着用ボート、LiFを入れたモリブデン製蒸着用ボート、アルミニウムを入れたタングステン製蒸着用ボートを装着する。真空槽を5×10
−4Paまで減圧した後、TPBiが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚30nmになるように蒸着して電子輸送層を形成する。電子輸送層を形成する際の蒸着速度は1nm/秒とする。その後、LiFが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着する。次いで、アルミニウムの入ったボートを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成する。このようにして有機EL素子を得る。
【0329】
<実施例11>
ITOが150nmの厚さに蒸着されたガラス基板上に、PEDOT:PSS溶液をスピンコートし、200℃のホットプレート上で1時間焼成し、膜厚40nmのPEDOT:PSS膜を成膜する(正孔注入層)。次いで、TcTa溶液をスピンコートし、120℃のホットプレート上で1時間焼成することで、膜厚30nmのTcTa膜を成膜する(正孔輸送層)。次いで、実施例2で調製した発光層形成用組成物をスピンコートし、120℃のホットプレート上で1時間焼成することで、膜厚20nmの発光層を成膜する。次に、電子輸送層および陰極を実施例10と同様の方法で蒸着し、有機EL素子を得る。