【実施例】
【0066】
[例1.テトラジェノコッカス属乳酸菌のインターフェロンλ産生促進試験]
テトラジェノコッカス属に属する乳酸菌を使用し、インターフェロンλ産生促進試験を実施した。
【0067】
1.乳酸菌懸濁液の調製
乳酸菌としてテトラジェノコッカス・ハロフィラスKK221株(Tetragenococcus halophilus Th221、以下、KK221株とよぶ。)を使用した。本出願人は、KK221株を下記の条件で寄託した。
(1)寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター
(2)連絡先:〒305−8566 茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6
(現:千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 120号室)
電話番号0438−20−5580
(3)受託番号:FERM BP−10987
(4)識別のための表示:Tetragenococcus halophilus Th221
(5)原寄託日:2007年6月25日
(6)ブダペスト条約に基づく寄託への移管日:2008年7月16日
【0068】
まず、食塩10%(w/v)を含有したMRS培地に、KK221株を1×10
7個/mlとなるように接種して乳酸菌原液を調製した。この乳酸菌原液を、30℃にて48〜72時間静置培養した後、95℃にて10分間の煮沸殺菌処理を行うことにより、培養殺菌処理液を調製した。培養殺菌処理液を遠心分離して得た菌体を、生理食塩水にて洗浄した後、生理食塩水に1×10
9個/mlとなるように懸濁し、乳酸菌懸濁液を調製した。
【0069】
2.インターフェロンλ産生促進試験
調製した乳酸菌懸濁液のインターフェロンλの産生促進活性を、非ウイルス感染健常者の末梢血より採取及び調製した樹状細胞を用いて以下のとおりに評価した。
【0070】
(1)末梢血由来樹状細胞の採取及び調製
非ウイルス感染健常者の末梢血200mlから低密度勾配遠心法により単核球として、磁気細胞分離システム(
Miltenyi Biotec社)、セルソーター(BD社)を用いて樹状細胞(Dendritic cell;DC)を単離した。なお、樹状細胞は、BDCA4陽性であるplasmacytoid DC(pDC);BDCA1が陽性であり、かつ、CD19が陰性であるmyeloid cell type1(mDC1);及び、BDCA3が陽性であるmyeloid cell type2(BDCA3DC)の3種の表現型サブセットで単離した。
【0071】
単離した各DCの細胞数を測定し、5×10
4個/mlとなるように25mM D−グルコース、25mM HEPES及び1μM ピルビン酸ナトリウム含有IMDM培地(GIBCO社)を用いて細胞原液を調製した。24ウェル組織培養プレートに1ウェルあたり200μlの細胞原液を播種した。さらに、各ウェルに上記成分を含有するIMDM培地又は乳酸菌懸濁液を、それぞれ1ウェルあたり0μl、0.1μl、1μl、10μl及び100μlを加え(乳酸菌数/DC数=0、10、100、1,000及び10,000)、37℃にて5%炭酸ガス培養器内で培養し、共培養開始後24時間の培養上清を回収した。
【0072】
(2)インターフェロンλ産生促進活性の測定
回収した培養上清を用いて、インターフェロンλ3を化学発光酵素免疫測定法により、スギヤマらの文献[Sugiyama M et al.Hepatol Res.42(11):1089−1099、2012]に記載の方法に準じて測定した。
【0073】
DCとしてBDCA3DCを用いた場合のインターフェロンλ3の測定結果を
図1に示す。
図1に示すように、共培養開始後24時間目において、KK221株がBDCA3DCによるインターフェロンλ3産生を濃度依存的に促進したことが確認された。
【0074】
乳酸菌数/DC数を100に設定し、かつ、DCとしてBDCA3
DC、pDC及びmDC1を用いた場合のインターフェロンλ3の測定結果を
図2に示す。
図2に示すように、共培養の開始後24時間目において、KK221株がBDCA3DC(BDCA3陽性樹状細胞)及びpDC(BDCA4陽性樹状細胞)のインターフェロンλ3産生を促進したことが確認された。
【0075】
図1及び
図2の結果より、KK221株が、ヒト樹状細胞におけるインターフェロンλ3産生促進作用を有することが確認できた。
【0076】
[例2.テトラジェノコッカス属乳酸菌から単離したRNAのインターフェロンλ産生促進試験]
1.RNaseA処理
KK221株を10mM Tris−HCl(pH8.0)を用いて5×10
9個/mlとなるように懸濁し、10μg/mlとなるように牛膵臓由来RNaseA(Sigma社)をさらに添加して、RNaseA含有菌懸濁液を調製した。
【0077】
このRNaseA含有菌懸濁液を、37℃にて2時間インキュベートすることによる酵素処理に供して、酵素処理液を得た。本酵素処理において、NaCl非存在下では1本鎖RNA及び2本鎖RNAの両方が分解される。
【0078】
得られた酵素処理液を遠心分離することにより回収した菌体を、10mM Tris−HCl(pH8.0)で2回洗浄した後に、生理食塩水に1×10
9個/mlとなるように懸濁し、RNA分解乳酸菌懸濁液を調製した。
【0079】
2.インターフェロンλ産生促進活性の測定
RNA分解乳酸菌懸濁液又は例1で調製した未処理乳酸菌混濁液と、例1で調製したBDCA3DCとを一定の割合で混合し(BDCA3DC数:乳酸菌数=1:100)、これらの共培養を行った。共培養後の上清を培養開始24時間後に回収し、例1と同様にして化学発光酵素免疫測定法により、上清中のインターフェロンλ濃度を測定した。結果を
図3に示す。
【0080】
図3に示すように、RNA分解乳酸菌懸濁液及び未処理乳酸菌混濁液のいずれを用いてもBDCA3DCのインターフェロンλ産生を促進することが確認された。しかし、RNA分解乳酸菌懸濁液において、インターフェロンλ産生促進活性が低下することが確認された。この結果から、ストレス条件下で培養が可能である乳酸菌内のRNAが樹状細胞を活性化してインターフェロンλの産生を促進していることがわかった。BDCA3DCはトル様受容体(TLR)3の発現が非常に高いという特徴がある。この受容体は二本鎖RNAを認識することが知られており、菌体内の二本鎖RNAの含量、もしくは総核酸中の二本鎖RNAの割合が高いほどインターフェロンλの産生促進が強いことが考えられる。
【0081】
[例3.TLR3経路阻害剤を使用したインターフェロンλ産生促進試験]
乳酸菌の構成成分を認識すると想定されるBDCA3DCにおけるToll様受容体(TLR)に着目し、エンドソームへの取り込みを阻害し、細胞質内に存在するTLR3への会合を阻害するクロロキン、もしくは2本鎖RNAを認識するTLR3を介するシグナル伝達のアダプター分子であるTRIFの阻害剤(製品名「TRIF/TICAM1 Peptide」;NOVUS社)を用いて、インターフェロンλ産生促進活性を評価した。
【0082】
TLR3リガンドとして化合物Poly IC(製品名「Poly IC」;Invivogen社)を用いた。樹状細胞の調製、乳酸菌懸濁液の調製及びインターフェロンλ産生促進活性の測定は例1及び例2と同様の方法で行った。なお、乳酸菌懸濁液については、例1で調製した未処理乳酸菌懸濁液を用いた。共培養開始後24時間目の上清中のインターフェロンλ濃度を測定した。
【0083】
乳酸菌懸濁液及びPoly ICの添加別に、クロロキンの添加の有無によるインターフェロンλ産生促進活性を測定した結果を
図4に示す。
図4に示すように、乳酸菌懸濁液及びPolyICのいずれを添加した場合でも、クロロキン10μMを添加することによりインターフェロンλ産生促進活性が低下することが確認された。
【0084】
乳酸菌懸濁液を添加し、さらにTRIF阻害剤を0μg/ml、1μg/ml及び10μg/ml添加したことによるインターフェロンλ産生促進活性を測定した結果を
図5に示す。TRIF阻害剤添加により、TRIF阻害剤の濃度依存的にインターフェロンλ産生促進活性が低下したことが確認された。
【0085】
図4及び
図5の結果より、ストレス条件下で培養が可能である乳酸菌によるBDCA3陽性樹状細胞におけるインターフェロンλ産生促進活性は、TRIFが関与するシグナル、つまりTLR3からのシグナルに関係がある可能性が示唆された。
【0086】
[例4.種々の乳酸菌を使用したインターフェロン産生促進試験]
KK221株に加えて、インターフェロンλ産生を誘導することが知られるラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)に属するJCM20101株及びJCM5805株(特許文献1)を使用し、インターフェロンλ産生促進試験を実施した。
【0087】
JCM20101株及びJCM5805株は、食塩を含有しないMRS培地に1×10
7個/mlとなるように接種して乳酸菌原液を調製した。この乳酸菌原液を、30℃にて24時間静置培養した後、95℃にて10分間の煮沸殺菌処理を行うことにより、培養殺菌処理液を調製した。培養殺菌処理液を遠心分離して得た菌体を、生理食塩水にて洗浄した後、生理食塩水に1×10
9個/mlとなるように懸濁し、乳酸菌懸濁液を調製した。
【0088】
JCM20101株及びJCM5805株を用いて調製した乳酸菌懸濁液と、例1でKK221株を用いて調製した乳酸菌懸濁液とについて、例1と同様に樹状細胞を調製して、乳酸菌数/DC数=100になるような条件下で、各乳酸菌によるインターフェロンλ産生促進活性の測定を実施した。結果を
図6に示す。
【0089】
図6に示すように、驚くべきことに、特許文献1ではJCM20101株及びJCM5805株がインターフェロンλの産生を促進するという記載があったものの、これらの菌株を用いた乳酸菌懸濁液ではBDCA3DCに対してインターフェロンλ産生誘導作用が見られなかった。
【0090】
インターフェロンλの発現はインターフェロンαによって誘導されることが報告されていることから(例えば、J.Viral、2006、Vol.80、No.19、pp.4501−4509を参照)、特許文献1に記載されているJCM20101株及びJCM5805株のインターフェロンλの産生誘導は、JCM20101株及びJCM5805株によるインターフェロンα産生誘導の結果として生じたものと推察される。
【0091】
なお、同様にして、KK221株、JCM20101株及びJCM5805株を用いて調製した乳酸菌懸濁液とpDCとを、乳酸菌数/DC数=100になるように調製して共培養することにより、各乳酸菌によるインターフェロンα産生促進活性の測定を実施した。インターフェロンαは、回収した培養上清を用いて、インターフェロンαのCBA(cytometoric beads assay;BD社)を用いて、測定した。結果を
図7に示す。
【0092】
図7に示すように、特許文献1が示すとおりに、JCM20101株及びJCM5805株は、pDCに対してインターフェロンα産生促進活性があることが示された。また、
図2に示す結果より、pDCについてもインターフェロンλ産生促進活性がみられることから、特許文献1に記載されているJCM20101株及びJCM5805株によるインターフェロンλ産生促進作用は、pDCに対する作用であることが示唆される。
【0093】
[例5.KK221株によるサイトカイン産生促進試験]
例1に準じて、KK221株を用いて調製した乳酸菌懸濁液又はPoly ICとBDCA3DCとを、乳酸菌数/DC数=100になるように調製して共培養することにより、各種サイトカイン産生促進活性の測定を実施した。
【0094】
なお、TNFα、IL−10、IL−1β、IL−6及びIL−12p70は、それぞれCBA(cytometoric beads assay;BD社)を用いて測定した。結果を
図8Aおよび
図8Bに示す。
【0095】
図8Aおよび
図8Bに示すように、Poly ICはインターフェロンλ(IL28B)に加えて、TNFα、インターフェロンα及びIL−6などを非特異的に産生促進していることに対して、KK221株はインターフェロンλに対して特異的に産生促進していることが確認できた。
【0096】
Poly ICによって産生誘導されるTNFαは典型的な炎症性サイトカインであり、TNFαにより生体内では炎症反応が起こる。それに対して、KK221株は、炎症反応を起こすことなく、インターフェロンλを特異的に産生促進できることから、インターフェロンλによって期待される生理作用を誘起するものとして非常に有用であることが確認された。
【0097】
[例6.各種乳酸菌の生菌数あたりの二本鎖RNAの量及び割合の評価]
KK221株、JCM20101株及びJCM5805株の生菌数あたりの二本鎖RNA(以下dsRNAとも略す)量、総核酸量及び総核酸中の二本鎖RNAの割合(dsRNA量/総核酸量×100)を以下のとおりに測定した。
【0098】
食塩10%(w/v)を含有したMRS培地に、KK221株を1×10
7個/mlとなるように接種して乳酸菌原液を調製した。この乳酸菌原液を、30℃にて48時間静置培養して、KK221株培養液を得た。
【0099】
また、食塩を含有しないMRS培地に、JCM20101株及びJCM5805株をそれぞれ1×10
7個/mlとなるように接種して乳酸菌原液を調製した。この乳酸菌原液を、30℃にて24時間静置培養して、JCM20101株培養液及びJCM5805株培養液を得た。
【0100】
KK221株培養液の一部を採取し段階希釈して、食塩5%(w/v)を含有したMRS寒天培地を用いて培養することによりコロニー数をカウントした。また、JCM201
01株培養液及びJCM5805株培養液の一部を採取し段階希釈して、食塩を含有しないMRS寒天培地を用いて培養することによりコロニー数をカウントした。
【0101】
KK221株培養液、JCM20101株培養液及びJCM5805株培養液のその余の部分について、95℃にて15分間の煮沸殺菌処理を行うことにより、各培養殺菌処理液を調製した。カウントしたコロニー数に基づいて、各培養殺菌処理液の1×10
10cfu相当液量を採取した。
【0102】
採取した各液量を8500×gで15分間遠心分離し固形分を回収した。次いで固形分をSTE緩衝液で洗浄してSTE緩衝液に懸濁して懸濁液を得た。次いで懸濁液にSTE緩衝液に懸濁したリゾチーム(Sigma−Aldrich社)溶液(終濃度5mg/mL)を添加して37℃にて30分間加温してリゾチーム処理液を得た。次いでリゾチーム処理液に10%SDS(和光純薬工業)及びProteinase K(タカラバイオ社)を添加して37℃にて1時間加温してプロテナーゼ処理液を得た。
【0103】
次いでプロテナーゼ処理液をフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(和光純薬工業)で処理し、8500×gで15分間遠心分離し上清として粗核酸抽出液を得た。粗核酸抽出液に含まれる総核酸量を超微量分光光度計(製品名「ナノドロップ」、Thermo Fisher Scientific社)を用いて測定した。粗核酸抽出液から、ELISA法で二本鎖RNAを定量した。
【0104】
採取した各液量からRNAを抽出し、総核酸量を超微量分光光度計(製品名「ナノドロップ」、Thermo Fisher Scientific社)を用いて測定した。抽出したRNAから、さらに二本鎖RNAを抽出し、ELISA法で定量した。
【0105】
測定して得られた二本鎖RNA量、総核酸量及び総核酸中の二本鎖RNAの割合をそれぞれ
図9〜11に示す。検定は、KK221株とJCM20101株又はJCM5805株との間における2群間比較(対応のないt検定)により行った。有意水準は、危険率5%(図中の「*」)又は1%(「**」)とした。
【0106】
図9〜11に示すように、KK221株の二本鎖RNA量はJCM20101株及びJCM5805株の二本鎖RNA量に対して大きかった。特に、KK221株の総核酸中の二本鎖RNAの割合は、JCM20101株及びJCM5805株のその割合に対して、統計的有意に大きかった。この結果から、ストレス条件下で培養が可能である乳酸菌内の二本鎖RNAが樹状細胞を活性化してインターフェロンλの産生を促進しており、二本鎖RNA量が多いほど、又は総核酸中の二本鎖RNAの割合が高いほどインターフェロンλ産生促進作用が向上すると考えられる。
【0107】
また、
図9および
図11それぞれに示すように、生菌数あたりの二本鎖RNA量が12184〜13819ng/mLより多い量である、又は生菌数あたりの総核酸中の二本鎖RNAの割合が2.6454〜3.1530%より多い量である乳酸菌は、BDCA3DCに対してインターフェロンλ産生促進作用を有する乳酸菌であることがわかった。
【0108】
[例7.各種乳酸菌の乾燥菌体量あたりの二本鎖RNAの量及び割合の評価]
KK221株、JCM20101株及びJCM5805株の乾燥菌体量あたりのdsRNA量、総核酸量及び総核酸中の二本鎖RNAの割合を以下のとおりに測定した。
【0109】
食塩10%(w/v)を含有したMRS培地に、KK221株を1×10
7個/mlとなるように接種して乳酸菌原液を調製した。この乳酸菌原液を、30℃にて48時間静置培養して、KK221株培養液を得た。
【0110】
また、食塩を含有しないMRS培地に、JCM20101株及びJCM5805株をそれぞれ1×10
7個/mlとなるように接種して乳酸菌原液を調製した。この乳酸菌原液を、30℃にて24時間静置培養して、JCM20101株培養液及びJCM5805株培養液を得た。
【0111】
KK221株培養液、JCM20101株培養液及びJCM5805株培養液を、95℃にて15分間の煮沸殺菌処理に供することにより、各培養殺菌処理液を調製した。各培養殺菌処理液を遠心分離して得た菌体を、生理食塩水にて洗浄した後、再度遠心分離して得た3菌体を凍結乾燥させた。
【0112】
採取した凍結乾燥粉末5mgを用いて、例6と同様にして、RNA抽出、総核酸量測定、二本鎖RNA抽出及び二本鎖RNA量測定を実施した。各凍結乾燥粉末5mg中の二本鎖RNA量、総核酸量及び総核酸中の二本鎖RNAの割合をそれぞれ
図12〜14に示す。
【0113】
図12〜14に示すように、KK221株の総核酸中の二本鎖RNAの割合は、JCM20101株及びJCM5805株のその割合に対して、統計的有意に大きかった。この結果から、ストレス条件下で培養が可能である乳酸菌内の二本鎖RNAが樹状細胞を活性化してインターフェロンλの産生を促進しており、総核酸中の二本鎖RNAの割合が高いほどインターフェロンλ産生促進作用が向上すると考えられる。
【0114】
また、
図14に示すように、乾燥菌体量あたりの総核酸中の二本鎖RNAの割合が3.1673〜3.5898%より多い量である乳酸菌は、BDCA3DCに対してインターフェロンλ産生促進作用を有する乳酸菌であることがわかった。
【0115】
[例8.各種乳酸菌の生菌数あたりの二本鎖RNA量の評価]
培養殺菌処理液の5×10
9cfu相当液量を用いた以外は、例6と同様にして、各種乳酸菌の生菌数あたりの二本鎖RNA量を測定した。
【0116】
使用した乳酸菌は、テトラジェノコッカス・ハロフィラス(Tetragenococcus halophilus)KK221株、K1121株及びK1142株;ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)K1株、K41株及びK1185株;ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)K598株、K1182株及びK1183株;並びに、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)K436株、K550株及びK1118株を用いた。
【0117】
これらの乳酸菌のうち、K1185株及びK1118株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター(NITE−IPOD)に寄託されており、受託番号はそれぞれNBRC15893及びNBRC100933である。
【0118】
また、K1182株及びK1183株は、ATCC(American Type Culture Collection)より分譲を受けたものであり、ATCC番号はそれぞれ13419及び25975である。
【0119】
K1121株、K1142株、K1株、K41株、K598株、K436株、K550株はキッコーマン株式会社において発酵食品等から分離した乳酸菌である。
【0120】
その余の乳酸菌は、本願出願人により分離及び単離された菌株である。また、ポジティブ・コントロールとして、SoyLactic(登録商標;キッコーマン社)を使用した。ポジティブ・コントロールの二本鎖RNA測定値を100とした場合の、各乳酸菌の二本鎖RNA測定値の測定結果を
図15に示す。
【0121】
図15に示すように、テトラジェノコッカス・ハロフィラスの3株及びラクトバチルス・サケイの3株の二本鎖RNA量は多かったのに対し、ラクトバチルス・サリバリウスの3株及びラクトコッカス・ラクティスの2株は二本鎖RNA量が少なかった。
【0122】
上述したように、ストレス条件下で培養が可能である乳酸菌体内の二本鎖RNAがTLR3を介して樹状細胞を活性化してインターフェロンλの産生を促進しており、二本鎖RNA量が多いほどインターフェロンλ産生促進作用が向上すると考えられる。したがって、これらの結果より、テトラジェノコッカス・ハロフィラスの3株及びラクトバチルス・サケイの3株は、BDCA3DCに対するインターフェロンλ産生促進作用を有する可能性が示唆された。
【0123】
また、ラクトバチルス・サケイK1株及びK41株について、各温度で培養して得られた培養殺菌処理液の1×10
10cfu相当液量を用いて、生菌数あたりの二本鎖RNA量を測定した結果を
図16A及び
図16B並びに
図17A及び
図17Bにそれぞれ示す。
【0124】
図16A及び
図16B並びに
図17A及び
図17Bに示すように、ラクトバチルス・サケイの2株の二本鎖RNA量は、至適温度よりも高温(38℃若しくは36℃)下又は低温(20℃若しくは23℃)下で培養した場合に、二本鎖RNA量が多くなることを確認した。
【0125】
これらの結果より、ストレス条件下で培養した乳酸菌は、二本鎖RNA量が多くなることから、BDCA3DCに対するインターフェロンλ産生促進作用を有する可能性が示唆された。
【0126】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2016年4月4日付けで出願された日本特許出願(特願2016−075323号)に基づいており、その全体が引用により援用される。