特許第6736022号(P6736022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 雪印メグミルク株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人岩手大学の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6736022
(24)【登録日】2020年7月17日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】乳脂肪クリームおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 13/14 20060101AFI20200728BHJP
【FI】
   A23C13/14
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-546606(P2016-546606)
(86)(22)【出願日】2015年8月28日
(86)【国際出願番号】JP2015074369
(87)【国際公開番号】WO2016035693
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2018年7月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-178305(P2014-178305)
(32)【優先日】2014年9月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小杉 達也
(72)【発明者】
【氏名】武藤 高明
(72)【発明者】
【氏名】三浦 靖
【審査官】 池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/114266(WO,A1)
【文献】 特開2008−118916(JP,A)
【文献】 特開2016−036273(JP,A)
【文献】 特開2004−107535(JP,A)
【文献】 特開平09−056329(JP,A)
【文献】 特開昭63−267250(JP,A)
【文献】 特開平03−130040(JP,A)
【文献】 特開平8−332025(JP,A)
【文献】 KAN, Chuan-pu., et al.,Effect of emulsifier on stability of butter-based UHT whipping cream,China dairy industry,2013年,vol.41, no.3, p.8-11,p.9-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 1/00 − 23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳から分離した脂肪源に、HLB3以下のショ糖ステアリン酸エステル、HLB3以下のショ糖パルミチン酸エステル、およびHLB3以下のショ糖ベヘン酸エステルの少なくとも1つを添加して油相を調製する工程と、
水に、カゼインを加え、HLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルまたはHLB15以上のショ糖パルミチン酸エステルの少なくとも1つを添加し水相を調製する工程と、
前記油相と前記水相を混合する工程と
を有することを特徴とする乳脂肪クリームの製造方法。
【請求項2】
前記脂肪源に添加する、HLB3以下のショ糖ステアリン酸エステル、HLB3以下のショ糖パルミチン酸エステル、およびHLB3以下のショ糖ベヘン酸エステルの添加量の合計の割合が、乳脂肪クリームに対して0.05質量%であることを特徴とする請求項記載の乳脂肪クリームの製造方法。
【請求項3】
前記水に添加する、HLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルおよびHLB15以上のショ糖パルミチン酸エステルの添加量の合計の割合が、乳脂肪クリームに対して0.3質量%であることを特徴とする請求項記載の乳脂肪クリームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳脂肪クリームおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳脂肪クリームは、洋菓子や料理等多岐にわたって利用されており、乳脂肪を主成分とする素材として非常に価値の高い乳製品である。しかし、乳脂肪クリームを新鮮な状態で長期間にわたって保存することは困難である。
【0003】
保存期間を延ばす手段として、乳脂肪クリームを凍結保存することがある。しかしながら、従来の乳脂肪クリームにおいては、凍結処理時に生成される氷結晶により、分散している脂肪球の界面が破壊され、あるいは氷結晶成長により、脂肪球が凍結濃縮されることにより、脂肪球同士の凝集や合一を生じるため、解凍した際に、凍結前と同様な液状状態には戻らず、脂肪球径や粘度が大幅に変化するという品質の著しい低下を引き起こすという課題があった。
【0004】
これに対して、凍結処理時に生成される氷結晶の成長を抑制するため、液体窒素を冷媒とした冷凍機を用い、最大氷結晶生成温度帯を、0.625℃/分以上の速度で乳脂肪クリームを急速凍結する方法がある(例えば、特許文献1)。
また、水中油滴型乳化物の製造において各種副原材料を添加することで、凍結処理時に氷結晶が生成・成長しても破壊されないようにする方法や氷結晶の生成・成長を抑制する方法が、数多く検討されている。大別して、乳化剤等の界面活性剤の添加により乳化を安定化する方法、水相にタンパク質や糖質の多量添加等により乳化物を高粘度化する方法が挙げられる。
乳化を安定化する方法として、変性ワキシースターチとポリグリセリン脂肪酸エステルを水相に併用する方法(例えば、特許文献2)、ポリソルベート60を水相に添加する方法(例えば、特許文献3)、ソルビタン脂肪酸エステルを油相に添加する方法(例えば、特許文献4)、ショ糖ステアリン酸エステル、グリセリンオレイン酸モノエステル、更にショ糖ミリスチン酸エステルを水相に添加する方法(例えば、非特許文献1)が挙げられる。
水相へタンパク質や糖類の多量添加等による方法として、分子量20,000以下のゼラチンを添加する方法がある(例えば、特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4906979号公報
【特許文献2】特開平2−203764号公報
【特許文献3】特開2006−158204号公報
【特許文献4】特許第2931252号公報
【特許文献5】特開2002−291421号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】三浦靖, 日本食品科学工学会誌, Vol.59, No.9, p.484-489, (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方法は、急速凍結処理により、凍結処理時に生成される氷結晶の成長を抑制することで、凍結・解凍処理による脂肪球の破壊を抑制する方法であり、凍結速度を速めることで凍結・解凍処理による特性変化を抑制することは知られている。しかし、この方法においても、凍結処理時に生成される氷結晶の成長を抑制する効果は十分ではなく、凍結・解凍処理による脂肪球径および粘度が大きく変化してしまい、凍結・解凍前後で乳脂肪クリームの品質を維持することができなかった。
特許文献2〜4の方法は、マヨネーズのような高粘度系の水中油滴型乳化物を対象とした方法である。これらの方法を、乳脂肪クリームのような低粘度高脂肪系の乳化物に適用した場合、凍結処理時に脂肪球の凍結濃縮が起こり、脂肪球同士の接触により脂肪球同士の凝集・合一が生じるため、十分な効果を得られない。
非特許文献1の方法は、脂肪率10%程度の低脂肪系の乳化物においては一定の凍結耐性付与効果を示すが、それ以上の高脂肪系の乳化物では、凍結処理時の凍結濃縮により脂肪球同士の凝集・合一が生じるため、十分な効果を得られない。
特許文献5の方法は、ゼラチンを多量添加することによって高粘度化するため、乳脂肪クリームに適用した場合、風味や物性が乳脂肪クリーム本来のものとは大きく異なるものとなってしまう。
このように、凍結耐性を付与した低粘度高脂肪系乳脂肪クリームは提供されていないことから、本発明は凍結・解凍前後の特性変化が小さい、低粘度高脂肪系の乳脂肪クリームの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のとおりである。
(1)−10℃以下まで凍結処理した後、解凍処理した後の脂肪球のメディアン径の凍結前に対する変化率が20%以下であり、粘度の凍結前に対する変化率が50%以下である乳脂肪クリーム。
(2)凍結処理前の脂肪球のメディアン径が、解凍処理後の脂肪球のメディアン径より小さい(1)に記載の乳脂肪クリーム。
(3)解凍処理後の脂肪球のメディアン径が2.0μm〜4.0μmである(1)または(2)に記載の乳脂肪クリーム。
(4)凍結処理前の粘度が解凍処理後の粘度より小さい(1)から(3)のいずれか1項に記載の乳脂肪クリーム。
(5)凍結処理後の粘度が200mPa・s以下である(1)から(4)のいずれか1項に記載の乳脂肪クリーム。
(6)脂肪率が30%以上である(1)から(5)のいずれか1項に記載の乳脂肪クリーム。
(7)凍結処理において、乳脂肪クリームの中心温度が0℃から−10℃に至るまでの降温速度が0.10℃/分以下であり、解凍処理が5℃雰囲気温度下で処理される(1)から(6)のいずれか1項に記載の乳脂肪クリーム。
(8)乳から分離した脂肪源に、親水・親油バランス(HLB:Hydrophile-Lipophile Balance)3以下のショ糖ステアリン酸エステル、HLB3以下のショ糖パルミチン酸エステル、およびHLB3以下のショ糖ベヘン酸エステルの少なくとも1つを添加して油相を調製する工程と、水に、カゼインと、HLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルまたはHLB15以上のショ糖パルミチン酸エステルの少なくとも1つを添加し水相を調製する工程と、水相と油相を混合する工程とを有することを特徴とする乳脂肪クリームの製造方法。
(9)脂肪源に添加する、HLB3以下のショ糖ステアリン酸エステル、HLB3以下のショ糖パルミチン酸エステル、およびHLB3以下のショ糖ベヘン酸エステルの添加量の合計が、乳脂肪クリームに対して0.05質量%以上である(8)の乳脂肪クリームの製造方法。
(10)水相に添加する、HLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルおよびHLB15以上のショ糖パルミチン酸エステルの添加量の合計の割合が、乳脂肪クリームに対して0.3質量%以上である(8)の乳脂肪クリームの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一旦凍結したものを解凍した後であっても、凍結・解凍前後の特性変化が小さい低粘度高脂肪系の乳脂肪クリームが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(乳脂肪クリーム)
本発明は、−10℃以下まで凍結処理した後、解凍処理したときの、凍結処理前と解凍処理後の脂肪球のメディアン径の変化率が20%以下かつ粘度の変化率が50%以下である乳脂肪クリームに関する。
ここで、「乳脂肪クリーム」とは、脂肪源として、乳から分離した脂肪(乳脂肪)のみを用いて製造された水中油滴型乳化物を意味するものである。

「メディアン径」とは、体積基準での積算分布曲線の50%に相当する粒子径であり、レーザー回折式粒度分布測定装置(Microtrac MT3000、日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0011】
凍結処理前の脂肪球のメディアン径が、解凍処理後の脂肪球のメディアン径より小さいことが好ましい。解凍処理後の脂肪球のメディアン径は2.0μm〜4.0μmであることが好ましい。
【0012】
凍結処理前の粘度が、解凍処理後の粘度より小さいことが好ましい。凍結処理後の粘度が200mPa・s以下であることが好ましい。
【0013】
乳脂肪クリームの脂肪率は特に制限されないが、30%以上、40%以上、50%以上を例示することができる
【0014】
脂肪球のメディアン径変化率は、凍結前のメディアン径の値に対する、凍結前と凍結解凍後の差の値の割合を示す。この場合、凍結処理としては、凍結前の乳脂肪クリームを、その中心温度が0℃から−10℃に至るまでの降温速度が0.1℃/分以下の条件に置く方法が挙げられる。解凍処理としては、凍結後の乳脂肪クリームを5℃雰囲気温度下の条件に置く方法が挙げられる。
【0015】
(乳脂肪クリームの製造方法)
まず油相と水相をそれぞれ調製する。
油相は、乳脂肪、例えばバターを75℃まで加温し、融解したバターにHLBが約3以下の炭素数16〜22の飽和脂肪酸結合型ショ糖脂肪酸エステルを混合・攪拌して調製することができる。HLB3以下の飽和脂肪酸結合型ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ベヘン酸エステルを用いることができ、複数の飽和脂肪酸結合型ショ糖脂肪酸エステルを添加してもよい。
水相は、水に、カゼイン、例えば脱脂粉乳、MPC(乳タンパク質濃縮物)、MPI(ミルクプロテインアイソレート)、脱脂濃縮乳、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム等を加えればよく、さらにHLBが約15以上の炭素数16〜22の飽和脂肪酸結合型ショ糖脂肪酸エステルを混合し、65℃まで加温して調製することができる。飽和脂肪酸結合型ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステルを用いることができる、いずれか一方または両方を添加してもよい。飽和脂肪酸結合型ショ糖脂肪酸エステルに加えて、HLBが約14以上の炭素数12〜22の飽和脂肪酸結合型ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加してもよい。
次に、上記のように調製した油相と水相を混合して予備乳化後、ホモジナイザー等の均質機のほか、マイクロフルイダイザー、コロイドミル等を用いて均質化する。生成されるエマルションの油滴粒子径は2μm〜4μmの範囲が好ましい。必要に応じて均質処理後の乳脂肪クリームを加熱殺菌してもよく、プレート式熱交換器、バッチ式加熱機等を用いることができる。中でも、乳脂肪クリームの加温効率の点から、プレート式熱交換器を用いることが好ましい。得られたクリームは、5℃まで氷水への浸漬あるいはプレート式熱交換器等を用いて急速冷却した後、5℃冷蔵庫で24時間程度保存することが好ましい。
【0016】
乳脂肪クリームの製造方法の1態様としては、(イ)乳から分離した脂肪源に、HLB3以下のショ糖ステアリン酸エステル、HLB3以下のショ糖パルミチン酸エステル、およびHLB3以下のショ糖ベヘン酸エステルの少なくとも1つを添加して油相を調製する工程と;(ロ)水に、カゼインを加え、HLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルおよびHLB15以上のショ糖パルミチン酸エステルの少なくとも1つを添加し水相を調製する工程と;(ハ)油相と水相を混合する工程を有する。このように油相と水相において特定の乳化剤を組合せて用いることにより、異なる凍結速度による凍結処理においても、凍結・解凍処理による影響を小さくすることができる。
ここで、脂肪源に添加する、(i)HLB3以下のショ糖ステアリン酸エステル、(ii)HLB3以下のショ糖パルミチン酸エステル、および/または(iii)HLB3以下のショ糖ベヘン酸エステルの添加量の合計の割合が、乳脂肪クリームに対して0.05質量%であることが好ましい。なお、成分(i)〜(iii)の組み合わせとしては、それらを単独で用いることの他に、(i)と(ii)、(i)と(iii)、(ii)と(iii)、または(i)〜(iii)の全てが挙げられる。
水に添加する、(iV)HLB15以上のショ糖ステアリン酸エステルおよび(V)HLB15以上のショ糖パルミチン酸エステルの添加量の合計の割合が、乳脂肪クリームに対して0.3質量%であることが好ましい。なお、成分(iV)、(V)は、いずれか一方を単独で、または(iV)、(V)を組み合わせて用いることができる。また、(iV)、(V)のいずれか単独、または(iV)、(V)の組み合わせに、さらに(Vi)HLB14以上のポリグリセリンステアリン酸エステル、(Vii)HLB15以上のポリグリセリンミリスチン酸エステル、および/または(Viii)HLB16以上のポリグリセリンラウリン酸エステルを添加することができ、(Vi)、(Vii)、(Viii)の添加量の合計の割合が、乳脂肪クリームに対して0.1質量%であることが好ましい。なお、成分(Vi)〜(Viii)の組み合わせとしては、それらを単独で用いることの他に、(Vi)と(Vii)、(Vi)と(Viii)、(Vii)と(Viii)、または(Vi)〜(Viii)の全てが挙げられる。
【0017】
以下に本発明の実施例を挙げて説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
[実施例1]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約1のショ糖ステアリン酸エステルであるS−170(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)7.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。水相に油相を少量ずつ添加し、ホモミキサーを用いた高速剪断により予備乳化を行った後、2段式均質機を用いて均質圧5.0MPa(1段目4.0MPa、2段目1.0MPa)で均質処理した。その後、5℃まで冷却して、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。
得られた乳脂肪クリームを一旦凍結してから解凍した場合の品質の変化を調べるため、(イ)5℃冷蔵庫で24時間保存した本実施例の乳脂肪クリームを500ml容量のステンレス容器に500g充填した。(ロ)このステンレス容器を、一般的な家庭用の冷凍設備である、凍結処理時における0℃から−10℃に至る試料中心温度の降温速度が0.10℃/分以下となる、−30℃冷凍庫内に24時間静置してステンレス容器内の乳脂肪クリームを凍結処理した。その後、(ハ)ステンレス容器を5℃冷蔵庫に移して24時間かけてステンレス容器内の凍結した乳脂肪クリームを解凍した。
【0019】
[実施例2]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)7.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0020】
[実施例3]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約1のショ糖パルミチン酸エステルであるP−170(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)7.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0021】
[実施例4]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)0.5gおよびHLBが約1のショ糖ステアリン酸エステルであるS−170(三菱化学フーズ株式会社製)0.5gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)7.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0022】
[実施例5]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)0.5g、およびHLBが約1のショ糖パルミチン酸エステルであるP−170(三菱化学フーズ株式会社製)0.5gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)7.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0023】
[実施例6]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約16のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1670(三菱化学フーズ株式会社製)7.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0024】
[実施例7]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約16のショ糖パルミチン酸エステルであるP−1670(三菱化学フーズ株式会社製)7.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0025】
[実施例8]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)3.5g、およびHLBが約16のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1670(三菱化学フーズ株式会社製)3.5gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0026】
[実施例9]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)3.5g、およびHLBが約16のショ糖パルミチン酸エステルであるP−1670(三菱化学フーズ株式会社製)3.5gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0027】
[実施例10]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)0.5g、およびHLBが約1のショ糖ステアリン酸エステルであるS−170(三菱化学フーズ株式会社製)0.5gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)3.5g、およびHLBが約16のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1670(三菱化学フーズ株式会社製)3.5gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0028】
[実施例11]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約1のショ糖ステアリン酸エステルであるS−170(三菱化学フーズ株式会社製)2.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gおよびHLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)6.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0029】
[実施例12]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)2.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)6.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0030】
[実施例13]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)7.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、5℃冷蔵庫で保存された乳脂肪クリームを150ml容量のステンレス容器に50g充填し、凍結処理時における0℃から−10℃に至る試料中心温度の降温速度が30.0℃/分以上となる、液体窒素5分間浸漬による急速凍結処理をした。その後、5℃冷蔵庫で24時間かけて凍結した乳脂肪クリームを解凍した。
【0031】
[実施例14]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)7.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、5℃冷蔵庫で保存された乳脂肪クリームを500ml容量のステンレス容器に500g充填し、凍結処理時における0℃から−10℃に至る試料中心温度の降温速度が0.5℃/分以上となる、−30℃の70%エタノールに1時間浸漬することによる急速凍結処理をした。その後、5℃冷蔵庫で24時間かけて凍結した乳脂肪クリームを解凍した。
【0032】
[実施例15]
70℃に加温融解したバター714gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水1,180gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)7.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率30%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0033】
[実施例16]
70℃に加温融解したバター834gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水1,058gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)7.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率35%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0034】
[実施例17]
70℃に加温融解したバター1,076gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水818gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)7.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率45%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0035】
[実施例18]
70℃に加温融解したバター1,196gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水698gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)7.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率50%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0036】
[実施例19]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)7.0gとHLBが約16のポリグリセリンラウリン酸エステルであるL−10D(三菱化学フーズ株式会社製)2.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0037】
[実施例20]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)7.0gとHLBが約15のポリグリセリンミリスチン酸エステルであるM−10D(三菱化学フーズ株式会社製)2.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0038】
[実施例21]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)7.0gとHLBが約14のポリグリセリンステアリン酸エステルであるSWA−10D(三菱化学フーズ株式会社製)2.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0039】
[比較例1]
バター954gを75℃に加温融解し油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、5℃冷蔵庫で保存された乳脂肪クリームを150ml容量のステンレス容器に50g充填し、凍結処理時における0℃から−10℃に至る試料中心温度の降温速度が30.0℃/分以上となる、液体窒素5分間浸漬による急速凍結処理をした。その後、5℃冷蔵庫で24時間かけて凍結した乳脂肪クリームを解凍した。
【0040】
[比較例2]
凍結処理の違いによる影響を調べるため、比較例1で得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0041】
[比較例3]
油相には乳化剤を添加せず、バター952gを75℃に加温融解して油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)2.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0042】
[比較例4]
油相には乳化剤を添加せず、バター950gを75℃に加温融解し油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)4.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0043】
[比較例5]
油相には乳化剤を添加せず、バター948gを75℃に加温融解し油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)6.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0044】
[比較例6]
油相には乳化剤を添加せず、バター946gを75℃に加温融解し油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約15のショ糖ステアリン酸エステルであるS−1570(三菱化学フーズ株式会社製)8.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の凍結処理した後、解凍した。
【0045】
[比較例7]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約1のショ糖ステアリン酸エステルであるS−170(三菱化学フーズ株式会社製)8.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水相には乳化剤を添加せず、水946gに脱脂粉乳100gを加え、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0046】
[比較例8]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)8.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水相には乳化剤を添加せず、水946gに脱脂粉乳100gを加え、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0047】
[比較例9]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約5のソルビタン脂肪酸エステルであるサンソフト61S(太陽化学株式会社製)8.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水相には乳化剤を添加せず、水946gに脱脂粉乳100gを加え、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相に油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0048】
[比較例10]
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3.9のプロピレングリコール脂肪酸エステルであるサンソフト25D(太陽化学株式会社製)8.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水相には乳化剤を添加せず、水946gに脱脂粉乳100gを加え、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0049】
[比較例11]
油相には乳化剤を添加せず、バター946gを75℃に加温融解し油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約5.5のグリセリン脂肪酸コハク酸モノエステルであるポエムB−10(理研ビタミン株式会社製)8.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリームを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0050】
[比較例12]
油相には乳化剤を添加せず、バター946gを75℃に加温融解し油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約9.5のグリセリン脂肪酸ジアセチル酒石酸モノエステルであるポエムW−60(理研ビタミン株式会社製)8.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0051】
[比較例13]
本実施例とは異なる乳化剤を水相部に混合した場合の効果について調べるため、以下のクリームを調製した。
70℃に加温融解したバター946gに、HLBが約3のショ糖ベヘン酸エステルであるB−370(三菱化学フーズ株式会社製)1.0gを添加し、75℃まで加温することで油相を調製した。水946gに脱脂粉乳100gを加え、HLBが約5.5のグリセリン脂肪酸コハク酸モノエステルであるポエムB−10(理研ビタミン株式会社製)7.0gを添加し、65℃まで加温することで水相を調製した。これらの水相と油相を実施例1と同様に処理することで、脂肪率40%の乳脂肪クリーム2,000gを得た。そして、得られた乳脂肪クリームを実施例1と同様の条件で凍結処理した後、解凍した。
【0052】
[試験例]
実施例品1〜21、および比較例品1〜13の乳脂肪クリームについて、凍結処理前および解凍後に測定した脂肪球のメディアン径および粘度の値および外観評価について表1に示す。
乳脂肪クリームの脂肪球のメディアン径測定には、レーザー回折式粒度分布測定装置(Microtrac MT3000、日機装株式会社製)を用いた。脂肪球のメディアン径変化率は、凍結前のメディアン径の値に対する、凍結前と凍結解凍後の差の値の割合を示す。
乳脂肪クリームの粘度測定には、B型粘度計(TOKIMEC VISCOMETER、東京計器株式会社製)を用いて、ローターNo.2、ローター回転速度30rpm、測定時間30秒間、測定時クリーム品温5℃の条件での値を粘度(mPa・s)とした。粘度変化率は、凍結前の粘度に対する、凍結前と凍結・解凍後の差の値の割合を示す。
乳脂肪クリームの外観評価は、○、△、×の3段階での官能評価により実施した。評価は、凍結・解凍後のクリームにおける固化、増粘、凝集物発生について以下の基準で評価した。
○:固化および増粘がほとんどなく、凝集物もみられない
△:増粘がみられ、凝集物が散見される
×:固化あるいは増粘が顕著にみられ、凝集物は多数みられる
乳脂肪クリームの調理適性は、○、△、×の3段階での官能評価により実施した。評価は、凍結・解凍後のクリームにおける5分間加熱処理後のオイルオフ(クリームからの油脂の分離・浮上)、色調変化、流動性について以下の基準で評価した。
○:オイルオフや色調変化がほとんどなく、サラサラとした流動性がある
△:オイルオフや色調変化がみられ、流動性の低下がみられる
×:オイルオフや色調変化が顕著にみられ、流動性がない
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示したように、外観評価が○であった実施例品1〜21の乳脂肪クリームは、凍結前の脂肪球のメディアン径および粘度に対する解凍後の脂肪球のメディアン径変化率が20%以下かつ粘度変化率が50%以下であった。一方、外観評価が△あるいは×であった比較例品のメディアン径変化率は実施例品の数倍から数百倍も大きく、粘度変化率も数倍から数十倍大きくなった。これにより、実施例品の乳脂肪クリームは比較例品に比べて、凍結・解凍処理による影響が格段に少なくなった。
【0055】
比較例において、液体窒素を用いて凍結処理における降温速度を速くした比較例品1と、−20℃冷凍庫内での緩慢凍結条件で凍結処理した比較例品2とを比較すると、比較例品1の方が凍結・解凍前後の脂肪球のメディアン径変化および粘度変化率は小さくなったものの、実施例品1〜21の測定値と比べると1桁高い値であり、凍結・解凍処理による影響が大きく十分ではなかった。
【0056】
実施例品2において、凍結処理時の凍結速度を比較例品1と同等にした、実施例品13では、油相および水相のいずれにも乳化剤を添加しない比較例品1と比較して、凍結・解凍前後のメディアン径変化率および粘度変化率は顕著に小さく、凍結・解凍処理による影響が少なかった。また凍結速度が0.5℃/分で処理した実施例品14においても、凍結・解凍前後のメディアン径変化率および粘度変化率は小さく、凍結・解凍処理による影響が少なかった。これより、特定の乳化剤を組合せることにより、異なる凍結速度による凍結処理においても、凍結・解凍処理による影響が格段に少なくなった。
【0057】
実施例20および実施例21において、凍結・解凍処理による変化が抑制されており、さらに凍結・解凍処理後のクリームは調理適性に優れていた。
油相または水相の一方にのみ乳化剤を添加した場合、比較例品3〜12は、凍結解凍前後の脂肪球のメディアン径変化率および粘度変化率が高く、凍結・解凍処理による変化が顕著に大きいクリームであった。そのうち、実施例品1〜18と同様の乳化剤を水相へのみに添加した比較例品6では、添加量を増加した場合、凍結・解凍前後の脂肪球のメディアン径変化率および粘度変化率が低下した。しかし、その場合においても、実施例品1〜18と比較して、凍結・解凍前後の粘度変化率は数倍も大きかった。
【0058】
実施例品1〜18と異なる乳化剤を水相へ添加した比較例品13は、凍結・解凍前後の脂肪球のメディアン径変化率および粘度変化率が高く、実施例品と比べ、凍結・解凍処理による変化が大きいクリームであった。これにより、実施例品の乳脂肪クリームは、特定の乳化剤の組合せによってのみ、凍結・解凍処理による影響が格段に少なくなった。
乳脂肪クリーム中の脂肪率を30%、35%、45%、50%と変化させた実施例品15〜18の測定値をみると、メディアン径変化率および粘度変化率に大差は見られず、凍結・解凍処理による影響が少なかった。