(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
R’が2つの2価の芳香族炭化水素基と、−S−、−O−、−NH−、−NR’’−、−(C=O)−NH−、−O−(C=O)−O−、−(C=O)−O−及び−(C=O)−からなる群から選択される1つとの組み合わせである2価の基である請求項1又は2に記載の自立フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の自立フィルムは、下記式(1)で表される構造単位を有し、数平均分子量が16000を超えるトリアジン環含有ポリマーを含み、波長600nmの透過率が75%以上である。
【0013】
これにより、自立可能で透明な自立フィルムを得ることができる。また、機械的強度が高い自立フィルムを得ることができる。
さらに、熱や光に対する不安定性や電極腐食等の問題が内在する重原子や、長期保存安定性や屈折率の分散安定性バランスに問題のある無機酸化物微粒子分散樹脂を使用せず、従来公知の自立フィルムに対して高い屈折率を有する自立フィルムを得ることができる。
【0014】
【化4】
(R’は、2価の脂肪族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、又は1以上の2価の脂肪族炭化水素基及び1以上の2価の芳香族炭化水素基からなる群から選択される1以上と、単結合、−S−、−S(=O)
2−、−O−、−NH−、−NR’’−、−(C=O)−NH−、−O−(C=O)−O−、−(C=O)−O−及び−(C=O)−からなる群から選択される1以上との組み合わせである2価の基を表す。R’はさらに置換基によって置換されていてもよい。
Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基と、単結合、−S−、−S(=O)
2−、−O−、−NH−、−NR’’−、−(C=O)−NH−、−O−(C=O)−O−、−(C=O)−O−及び−(C=O)−からなる群から選択される1以上との組み合わせである基を有する脂肪族炭化水素基、脂肪族炭化水素基と、単結合、−S−、−S(=O)
2−、−O−、−NH−、−NR’’−、−(C=O)−NH−、−O−(C=O)−O−、−(C=O)−O−及び−(C=O)−からなる群から選択される1以上との組み合わせである基を有する芳香族炭化水素基、又はアセチル基を表す。Rはさらに置換基によって置換されていてもよい。
R’’は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は1以上の脂肪族炭化水素基及び1以上の芳香族炭化水素基の組み合わせである基を表す。R’’が複数ある場合、複数のR’’は、同一でも、異なっていてもよい。)
【0015】
自立フィルムは、例えば、基板にフィルムを成膜後、基板からフィルムの剥離時に、フィルムにひびが入らないもの、又は、入ったひびの方向の、フィルム長さに対して、10%以下の長さのひびを有するものをいう。
【0016】
自立フィルムの、波長600nmの透過率は、75%以上であり、78%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。上限値は、特に限定されず、100%でもよい。
自立フィルムの波長600nmの透過率は、例えば透過率測定器、紫外可視分光光度計、紫外可視近赤外分光光度計、分光エリプソメーター等により測定できる。
【0017】
トリアジン環含有ポリマーの数平均分子量は、16000超であり、17000以上が好ましく、17000〜50000がより好ましい。
【0018】
トリアジン環含有ポリマーの重量平均分子量は、40000〜100000が好ましい。
トリアジン環含有ポリマーの分散度は、1.0〜5.0が好ましい。
【0019】
トリアジン環含有ポリマーの数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw及び分散度は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0020】
式(1)において、R’の2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は1〜20が好ましい。2価の芳香族炭化水素基の環形成炭素数は6〜20が好ましく、6〜10がより好ましい。
【0021】
R’の1以上(好ましくは2以上、より好ましくは2〜3、さらに好ましくは2つ)の2価の脂肪族炭化水素基及び1以上(好ましくは2以上、より好ましくは2〜3、さらに好ましくは2つ)の2価の芳香族炭化水素基からなる群から選択される1以上(好ましくは2以上、より好ましくは2〜3、さらに好ましくは2つ)と、単結合、−S−、−S(=O)
2−、−O−、−NH−、−NR’’−、−(C=O)−NH−、−O−(C=O)−O−、−(C=O)−O−及び−(C=O)−からなる群から選択される1以上との組み合わせである2価の基は、2つの2価の芳香族炭化水素基と、−S−、−O−、−NH−、−NR’’−、−(C=O)−NH−、−O−(C=O)−O−、−(C=O)−O−及び−(C=O)−からなる群から選択される1つとの組み合わせが好ましい。
R’の2価の芳香族炭化水素基が複数ある場合、複数の2価の芳香族炭化水素基は、同一でも、異なっていてもよい。
R’の2価の脂肪族炭化水素基が複数ある場合、複数の2価の脂肪族炭化水素基は、同一でも、異なっていてもよい。
【0022】
R’は、好ましくは、2価の芳香族炭化水素基、又は1以上の2価の芳香族炭化水素基と、−S−、−O−、−NH−、−NR’’−、−(C=O)−NH−、−O−(C=O)−O−、−(C=O)−O−及び−(C=O)−からなる群から選択される1以上との組み合わせである2価の基である。
R’はさらに置換基によって置換されていてもよく、これら置換基は後述する。
【0023】
Rの脂肪族炭化水素基の炭素数は1〜20が好ましい。芳香族炭化水素基の環形成炭素数は6〜20が好ましく、6〜10がより好ましい。
Rは、好ましくは環形成炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は置換基を有する環形成炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であり、より好ましくは置換基を有する環形成炭素数6〜10の芳香族炭化水素基である。
Rはさらに置換基によって置換されていてもよく、これら置換基は後述する。
【0024】
R’’の脂肪族炭化水素基の炭素数は1〜20が好ましい。芳香族炭化水素基の環形成炭素数は6〜20が好ましく、6〜10がより好ましい。
【0025】
上記の置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20の単環又は多環状のシクロアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、芳香族炭化水素基(環形成炭素数は6〜20が好ましく、6〜10がより好ましい)、複素環基(環形成原子数は3〜20が好ましく、3〜10がより好ましい)、ヘテロ原子含有置換基等が挙げられる。
【0026】
上述の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20の単環又は多環状のシクロアルキル基が挙げられ、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、上記炭素数3以上のアルキル基の例が脂肪族環構造となったものが挙げられ、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等である。
2価の脂肪族炭化水素基としては、上記のものから水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0027】
上述の芳香族炭化水素基(アリール基)としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、ナフタセニル基、クリセニル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、ベンゾ[g]クリセニル基、トリフェニレニル基、1−フルオレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、9−フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、ターフェニル基、フルオランテニル基等が挙げられる。
2価の芳香族炭化水素基としては、上記のものから水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0028】
アラルキル基としては、上記アルキル基の水素原子が上記アリール基で置換されたものが挙げられる。
【0029】
複素環基としては、ピロール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、イソキノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、インドール環、キノリン環、アクリジン環、ピロリジン環、ジオキサン環、ピペリジン環、モルフォリン環、ピペラジン環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラン環、ジベンゾフラン環、ベンゾ[c]ジベンゾフラン環、カルバゾール環及びこれらの誘導体から形成される基等が挙げられる。
【0030】
ヘテロ原子含有置換基としては、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ニトロ基、チオール基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、アルコキシカルボニル基又はアルコキシカルボニルオキシ基、カルバモイル基、−NR
2−C(=O)R
3(式中、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又は脂肪族炭化水素基である。)等が挙げられ、シアノ基、ニトロ基、アルキルメルカプト基、アリールメルカプト基、カルバモイル基、−NR
2−C(=O)R
3が好ましい。
【0031】
アルキルアミノ基としては、アミノ基の1又は2つの水素原子を上記アルキル基で置換したものが挙げられ、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等が挙げられる。
【0032】
アリールアミノ基としては、アミノ基の1又は2つの水素原子を上記アリール基で置換したものが挙げられ、例えば、アニリノ基、トルイジノ基、メシジノ基、又は窒素原子含有基、酸素原子含有基、硫黄原子含有基等のヘテロ原子含有基を有するアニリノ基等が挙げられる。
【0033】
アルキルメルカプト基としては、メルカプト基の水素原子を上記アルキル基で置換したものが挙げられ、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基等が挙げられる。
【0034】
アリールメルカプト基としては、メルカプト基の水素原子を上記アリール基で置換したものが挙げられ、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0035】
アルコキシカルボニル基としては、上記アルキル基、酸素原子及びカルボニル基をこの順に結合してなる基が挙げられ、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0036】
アルコキシカルボニルオキシ基としては、上記アルキル基、カルボニル基及び酸素原子をこの順に結合してなる基が挙げられ、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0037】
R
2及びR
3の脂肪族炭化水素基としては、Rの脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0038】
式(1)で表される構造単位が、下記式(2)又は(3)で表される構造単位であることが好ましい。これにより、自立フィルムの屈折率、透明性、機械的強度及び耐熱性をより高くできる。
【化5】
(Rは、前記式(1)で定義した通りである。)
【0039】
また、式(1)で表される構造単位が、下記式(4)又は(5)で表される構造単位であることが好ましい。これにより、自立フィルムの屈折率、透明性、機械的強度及び耐熱性をより高くできる。
【化6】
(Rは、前記式(1)で定義した通りである(好ましくはフェニル基又は置換基を有するフェニル基)。)
【0040】
また、式(1)で表される構造単位が、下記式(6)又は(7)で表される構造単位であることが好ましい。これにより、自立フィルムの透明性、機械的強度及び耐熱性を高くでき、特に屈折率を高くできる。
【化7】
【0041】
また、式(1)で表される構造単位として、以下の構造単位が挙げられる。
【化8】
【0042】
本発明の自立フィルムは、上述の式(1)で表される構造単位を有し、数平均分子量が16000を超えるトリアジン環含有ポリマーを含む組成物を用いて作製することができる。
トリアジン環含有ポリマーの含有量は、作製する自立フィルムの形態、厚さ、用いる有機溶剤への溶解性、有機溶剤溶液の粘度等により適宜調整されるが、組成物全体に対して、例えば0.1〜50質量%の範囲で選択される。
【0043】
上記の組成物は、通常、有機溶剤を含む。
有機溶剤としては、上記のトリアジン環含有ポリマーが溶解する範囲において、いかなるものも使用できるが、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系溶剤、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶剤、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、1−メトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグライム系溶剤、イソホロン等が挙げられる。
トリアジン環含有ポリマーの溶解性の観点から、アミド系溶剤が好ましい。
また、毒性の観点からは、グライム系溶剤、イソホロンが好ましい。
有機溶剤の含有量は、用いるトリアジン環含有ポリマーの種類、溶剤の種類、組成物の用途、又は使用条件等により一概に定義できないが、通常、組成物全体に対して50〜99.9質量%である。
【0044】
上記の組成物は、トリアジン環含有ポリマー以外のポリマーを含んでもよい。トリアジン環含有ポリマー以外のポリマーとしては、有機ポリマー、無機ポリマー及び有機無機ハイブリッドポリマー等が挙げられる。
有機ポリマーとしては、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂等が挙げられる。
無機ポリマーとしては、例えば、ポリシロキサン、ポリチタノキサン、ポリジルコノキサン等が挙げられる。
有機無機ハイブリッドポリマーとしては、例えば、ポリアルキルシロキサン等が挙げられる。
トリアジン環含有ポリマー以外のポリマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
トリアジン環含有ポリマー以外のポリマーを含む場合、トリアジン環含有ポリマー以外のポリマーの含有量は、組成物全体に対して、0.1〜99.9質量%が好ましい。
【0045】
また、上記組成物は、紫外線硬化剤を含んでもよい。
紫外線硬化剤としては、従来公知の過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物、イソブチリルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド化合物、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート化合物等が挙げられる。
紫外線硬化剤を含む場合、紫外線硬化剤の含有量は、組成物全体に対して0.001〜10質量%が好ましい。
【0046】
上記組成物は、熱硬化剤を含んでもよい。
熱硬化剤としては、公知のエポキシ樹脂用の脂肪族アミン系硬化剤、ポリイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。
熱硬化剤を含む場合、熱硬化剤の含有量は、組成物全体に対して0.01〜30質量%が好ましい。
【0047】
また、他の添加剤として、さらに硬化触媒、安定化剤、膜厚調整材、レベリング材、透明性向上材、強度向上材等を加えてもよい。これらの種類、添加量等は、組成物に含まれるトリアジン環含有ポリマー等に応じて適宜調整すればよい。
【0048】
上記組成物は、本質的に、トリアジン環含有ポリマー、有機溶剤、及び任意にトリアジン環含有ポリマー以外のポリマー、紫外線硬化剤、熱硬化剤からなっており、本発明の効果を損なわない範囲で他に不可避不純物を含んでもよい。
上記組成物の、例えば、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上又は100質量%が、
トリアジン環含有ポリマー、有機溶剤、又は
トリアジン環含有ポリマー、有機溶剤、及び任意にトリアジン環含有ポリマー以外のポリマー、紫外線硬化剤、熱硬化剤からなっていてもよい。
【0049】
本発明の自立フィルムの製造方法の一態様は、上述のトリアジン環含有ポリマーを含む組成物を、基板上に塗布し、真空下で、室温から170℃以上に昇温し、基板からフィルムを剥離する。これにより、上述の自立フィルムを得ることができる。
【0050】
トリアジン環含有ポリマーを含む組成物は、上述の式(1)で表される構造単位を有し、数平均分子量が16000を超えるトリアジン環含有ポリマーを含む組成物である。
【0051】
基板は、特に限定されず、公知の基板を用いることができる。ガラス基板、合成石英基板、シリコン基板、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリエチレンナフタレート基板、シクロオレフィンコポリマー基板等の樹脂フィルム基板等が挙げられる。
また、塗布方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。スピンコート、バーコート、フローコート、キャスト、ディップコート、スプレーコート等が挙げられる。
【0052】
室温から170℃以上に昇温を、真空下で行う。
また、雰囲気は真空に代えて、不活性雰囲気でもよい。不活性雰囲気としては、Ar雰囲気、乾燥窒素雰囲気等が挙げられる。
【0053】
室温は、特に限定されない。環境に応じて、0〜40℃(好ましくは5〜30℃)にしてもよい。
【0054】
昇温温度は、170℃以上であり、190〜300℃が好ましく、190〜250℃がより好ましい。
昇温速度は、20℃/分以下が好ましく、10℃/分以下がより好ましく、1℃/分以下がさらに好ましい。
【0055】
昇温後、昇温温度で保持してもよい。保持時間は、1〜24時間が好ましく、1〜10時間がより好ましい。
【0056】
昇温は、例えば真空乾燥機を用いて行うことができる。
【0057】
フィルムの剥離は、特に限定されず、公知の方法により行うことができる。例えば、丸先ピンセットを用いて行うことができる。
【0058】
本発明の自立フィルムの製造方法の他の態様は、上述のトリアジン環含有ポリマーを、トリアジン環含有ポリマーのガラス転移温度以上に加熱したプレス機でプレス加工し、プレス機からフィルムを剥離する。これにより、上述の自立フィルムを得ることができる。
【0059】
トリアジン環含有ポリマーは、上述の式(1)で表される構造単位を有し、数平均分子量が16000を超えるトリアジン環含有ポリマーである。
【0060】
トリアジン環含有ポリマーのガラス転移温度は、例えば示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。通常、100〜400℃である。
プレス機の加熱は、トリアジン環含有ポリマーのガラス転移温度以上であり、トリアジン環含有ポリマーのガラス転移温度から5℃以上高い温度が好ましく、トリアジン環含有ポリマーのガラス転移温度から10℃以上高い温度がより好ましい。
【0061】
プレス機は、特に限定されない。真空プレス機等が挙げられる。
プレスの圧力は、0〜10,000MPaが好ましい。
【0062】
また、雰囲気は真空に代えて、不活性雰囲気でもよい。不活性雰囲気としては、Ar雰囲気、乾燥窒素雰囲気等が挙げられる。
プレス機の加熱前に真空にすることが好ましい。
【0063】
フィルムの剥離は、特に限定されず、公知の方法により行うことができる。例えば、丸先ピンセットを用いて行うことができる。
【0064】
本発明の自立フィルム及び本発明の方法で得られる自立フィルムは、電子デバイス、発光デバイス及び光学デバイス等に用いることができる。これらデバイスとしては、例えば、LEDデバイス、有機ELデバイス等からなる照明器具、ディスプレイの他、光学情報処理装置等が挙げられる。
【実施例】
【0065】
製造例1
窒素導入管と撹拌棒を備えた三口フラスコ(1000ミリリットル)に、4,4’−オキシジアニリン(5.01グラム、25ミリモル)とN−メチル−2−ピロリドン(NMP、50ミリリットル)を加え、撹拌して溶解させた。この溶液に、2−アニリノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジクロリド(6.03グラム、25ミリモル)を室温で加えて溶解させた後に、反応温度を100℃にして20時間撹拌した。得られた重合液をメタノール(3リットル)に注ぎポリマーを沈殿させ、希アンモニア水で中和した。ポリマーを吸引ろ過により回収した後、メタノールで洗浄し、室温で減圧乾燥した。ポリマーをNMPに溶解させ、ひだ折りろ紙を通してメタノール中に注ぎ再沈殿させた。沈殿したポリマーを回収し、室温で減圧乾燥して、下記構造単位を有するポリマー1を得た。
【0066】
【化9】
【0067】
得られたポリマー1について、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw及び分散度Mw/Mnを、NMPを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。GPC分析条件を以下に示す。結果を表1に示す。
装置:高速GPCシステムHLC−8220(東ソー株式会社製)
検出器:示差屈折率計及び紫外可視吸収検出器(254nm)
カラム:TSK−gel α−M×2本(東ソー株式会社製)
ガードカラム:TSK−gel ALPHA(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶剤:NMP
注入量:100μL
流速 :1mL/min
標準物質:TSK−gel標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)
打ち込み濃度:0.1wt%
【0068】
また、得られたポリマー1について、極限粘度を、オストワルド粘度計(柴田科学株式会社製)を用いて、30℃NMP中(濃度:0.5g/dL)で測定した。結果を表1に示す。
【0069】
得られたポリマー1について、示差走査熱量計(DSC)により、ガラス転移温度を、以下の条件で測定した。
【0070】
上記DSCの測定条件は以下の通りである。測定は、窒素雰囲気下(流量30ml/分)にて行った。結果を表1に示す。
装置名 :DSC7000X(株式会社日立ハイテクサイエンス製)
試料量 :5mg
<ファーストヒーティング>
昇温速度:20℃/分
測定温度範囲:40〜300℃
<ファーストク−リング>
降温速度:10℃/分
測定温度範囲:300〜40℃
<セカンドヒーティング>
昇温速度:20℃/分
測定温度範囲:40〜300℃
【0071】
製造例2
4,4’−オキシジアニリン(5.01グラム、25ミリモル)に代えて、3,4’−オキシジアニリン(5.01グラム、25ミリモル)を用いた以外、製造例1と同様に製造し、下記構造単位を有するポリマー2を得た。ポリマー2の数平均分子量等を、製造例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0072】
【化10】
【0073】
製造例3
4,4’−オキシジアニリン(5.01グラム、25ミリモル)に代えて、4,4’−ジアミノベンズアニリド(5.68グラム、25ミリモル)を用い、撹拌時間を18時間とした以外、製造例1と同様に製造し、下記構造単位を有するポリマー3を得た。ポリマー2の数平均分子量等を、製造例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0074】
【化11】
【0075】
製造例4
4,4’−オキシジアニリン(5.01グラム、25ミリモル)に代えて、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(5.41グラム、25ミリモル)を用いた以外、製造例1と同様に製造し、下記構造単位を有するポリマー4を得た。ポリマー4の数平均分子量等を、製造例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0076】
【化12】
【0077】
製造例5
2−アニリノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジクロリド(6.03グラム、25ミリモル)に代えて、2−(4−シアノアニリノ)−1,3,5−トリアジン−4,6−ジクロリド(6.65グラム、25ミリモル)を用いた以外、製造例1と同様に製造し、下記構造単位を有するポリマー5を得た。ポリマー5の数平均分子量等を、製造例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0078】
【化13】
【0079】
製造例6
2−アニリノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジクロリド(6.03グラム、25ミリモル)に代えて、2−(4−シアノアニリノ)−1,3,5−トリアジン−4,6−ジクロリド(6.65グラム、25ミリモル)を用い、また、4,4’−オキシジアニリン(5.01グラム、25ミリモル)に代えて、4,4’−ジアミノベンズアニリド(5.68グラム、25ミリモル)を用い、撹拌時間を17時間とした以外、製造例1と同様に製造し、下記構造単位を有するポリマー6を得た。ポリマー6の数平均分子量等を、製造例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0080】
【化14】
【0081】
製造例7
2−アニリノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジクロリド(6.03グラム、25ミリモル)に代えて、2−(4−ニトロアニリノ)−1,3,5−トリアジン−4,6−ジクロリド(7.15グラム、25ミリモル)を用い、また、4,4’−オキシジアニリン(5.01グラム、25ミリモル)に代えて、4,4’−ジアミノベンズアニリド(5.68グラム、25ミリモル)を用い、撹拌時間を18時間とした以外、製造例1と同様に製造し、下記構造単位を有するポリマー7を得た。ポリマー7の数平均分子量等を、製造例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0082】
【化15】
【0083】
製造例8
撹拌時間を1時間にした以外、製造例1と同様に製造し、ポリマー8を得た。ポリマー8の数平均分子量等を、製造例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
実施例1
(自立フィルムの製造)
製造例1で得られたポリマー1をNMP溶解し、15質量%の濃度のポリマー溶液を調整した。
得られたポリマー溶液を、10cm×10cmのガラス基板に、キャストした。キャスト後のガラス基板を、真空乾燥機DRV320DC(アドバンテック東洋株式会社製)に投入した。
投入後、真空乾燥機の炉内を真空とし、室温から200℃まで昇温し、3時間真空乾燥した。200℃までの到達時間は8時間であった。その後、ガラス基板から一旦フィルムを、先丸ピンセットを用いて剥離した。剥離後、フィルムを濾紙上に固定して、室温から220℃まで昇温し、6時間真空乾燥した。室温から220℃までの到達時間は4時間であった。乾燥後、冷却し、自立フィルムを得た。
【0086】
上記自立フィルムについて、剥離時に、フィルムにひびが入らなかったか、1cm以下のひびであったものを、自立性が○、1cmを超えるひびが入ったか、割れてしまったものを自立性が×とした。結果を表2に示す。
【0087】
(膜厚測定)
上記自立フィルムの膜厚を、マイクロメーター アップライトスタンド MODEL US−25(株式会社テクロック製)により測定した。結果を表2に示す。
【0088】
(600nmの透過率の測定)
上記自立フィルムの波長600nmの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計UV−1800(株式会社島津製作所製)により測定した。結果を表2に示す。
【0089】
(屈折率の測定)
上記自立フィルムを、プリズムカプラModel 2010/M(Metricon社製)を用いて、473nm、594nm、657nmの3波長の屈折率を求め、コーシーモデルにてフィッティングすることにより486nm(F線)、588nm(D線)、656nm(C線)の屈折率を求めた。D線の面内屈折率を表2に示す。
【0090】
(破断強度の測定)
上記自立フィルムについて、ASTM D882に準拠した条件で、破断強度を、小型卓上試験機AGS-X(株式会社島津製作所製)により測定した。結果を表2に示す。
【0091】
(熱膨張係数の測定)
上記自立フィルムの熱膨張係数を、熱機械分析(TMA)装置TMA/SS7100(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、表2に示す測定温度範囲で、測定した。結果を表2に示す。
【0092】
(粘弾性の測定)
上記自立フィルムについて、粘弾性装置DMS7100(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用い、表2に示す測定温度で、貯蔵弾性率、損失弾性率を測定し、損失正接tanδを求めた。結果表2に示す。
【0093】
実施例2〜7及び比較例1
表2に示すポリマーを用いた以外、実施例1と同様に自立フィルムを製造し、評価した。結果を表2に示す。表中、「−」は測定しなかったことを示す。
【0094】
比較例2
温度を220℃にして、真空乾燥機に投入し、昇温しなかった以外、実施例1と同様に自立フィルムを製造し、評価した。結果を表2に示す。表中、「−」は測定しなかったことを示す。
【0095】
【表2】
【0096】
実施例8
製造例1で得られたポリマーを手動油圧真空加熱プレス11FD(株式会社井元製作所製)にフィルム型とともにセットして、真空にした後、225℃に真空プレス機を加熱し、プレスした。プレス後、冷却し、フィルム型を出して、成型されたフィルムを、先丸ピンセットを用いて剥がすことにより自立フィルムを得た。
良好な自立フィルムが得られた。