(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789524
(24)【登録日】2020年11月6日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】エネルギーハーベスティング回路
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20201116BHJP
H03J 7/02 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
H02J50/12
H03J7/02
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-141779(P2017-141779)
(22)【出願日】2017年7月21日
(65)【公開番号】特開2019-22411(P2019-22411A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2019年7月2日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [公開の事実] 1.発行日:2017年3月7日 2.刊行物:電子情報通信学会 2017年 総合大会講演論文集 47頁(C−10−5) 3.公開者:小野寺 尚人、染谷 晃基、松永 賢一、森村 浩季、高宮 真、櫻井 貴康
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】松永 賢一
(72)【発明者】
【氏名】森村 浩季
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 尚人
(72)【発明者】
【氏名】高宮 真
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 貴康
【審査官】
右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−078247(JP,A)
【文献】
特開2013−175985(JP,A)
【文献】
特開2009−165325(JP,A)
【文献】
特表2013−545427(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0094425(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2018/0069486(US,A1)
【文献】
特表2005−532774(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0076920(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H03J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、
前記アンテナと所望の周波数において共振する共振回路と、
出力側に第1のキャパシタが接続され、前記共振回路の出力を整流および昇圧し負荷に供給する第1の昇圧整流回路と、
前記共振回路の出力電圧が大きくなるように、前記共振回路の共振周波数を制御する制御回路と、
を備えたエネルギーハーベスティング回路において、
出力側に第2のキャパシタが接続され、前記共振回路の出力を整流および昇圧し前記制御回路に供給する第2の昇圧整流回路を備え、
前記第2のキャパシタは、前記第1のキャパシタよりも小さい容量値を有し、前記制御回路は、前記共振回路の出力電圧振幅に基づいて前記共振回路の共振周波数を制御すること
を特徴とするエネルギーハーベスティング回路。
【請求項2】
前記共振回路は、スイッチとキャパシタの直列接続が、複数個並列に接続された可変容量キャパシタを有するLC共振回路であり、
前記制御回路は、
前記LC共振回路の出力を整流する整流回路と、
第1のクロック信号に従って駆動され、前記整流回路の出力を交互に2つのキャパシタに充電し、2つのキャパシタの充電電圧を比較する第1の電圧比較回路と、
前記第1のクロック信号に従って駆動され、前記第1の電圧比較回路の出力に基づいてアップまたはダウンするカウンタ値を出力するカウンタ回路とを備え、
前記カウンタ値に従って、前記可変容量キャパシタのスイッチのそれぞれをONまたはOFFすること
を特徴とする請求項1記載のエネルギーハーベスティング回路。
【請求項3】
前記制御回路は、前記整流回路の出力が前記カウンタ値に従って徐々に増加した後に低下したことを検出した場合に、前記整流回路の出力が再度増加するように前記カウンタ値を変化させ、前記第1のクロック信号の供給を停止すること
を特徴とする請求項2記載のエネルギーハーベスティング回路。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記第1のクロック信号よりも低速のクロック信号である第2のクロック信号に従って駆動され、前記整流回路の出力電圧を交互に2つのキャパシタに充電し、2つのキャパシタの充電電圧を比較する第2の電圧比較回路と、
をさらに備え、
前記整流回路の出力の変動が所定の閾値を超えた場合に、第2の電圧比較回路は、前記カウンタ値をリセットするための信号を出力すること
を特徴とする請求項2または3記載のエネルギーハーベスティング回路。
【請求項5】
前記カウンタ回路の出力信号を逓倍する電圧逓倍回路を備え、
前記電圧逓倍回路の出力に従って、前記可変容量キャパシタのスイッチを制御すること
を特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のエネルギーハーベスティング回路。
【請求項6】
前記LC共振回路は、前記可変容量キャパシタと並列に接続され、レーザトリミングされるレーザ校正用キャパシタをさらに備えること
を特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のエネルギーハーベスティング回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境に存在する高周波(RF)の電磁波からエネルギーを生成するエネルギーハーベスティング回路に関し、特に、アンテナから収穫される電力を最大化する機能を持つエネルギーハーベスティング回路に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の生活をより豊かにするデバイスの一つとして、センサノードや埋め込み型デバイスの検討が進んできている。ここで、無線センサノードや埋め込み可能医療デバイス等のアプリケーションでは、外部から常時電力を供給することが出来ないため、デバイスを構成する回路に電力を供給するための給電方法が重要な課題となっている。一般的に、このようなアプリケーションでは、デバイスに外付けバッテリーを設置して、電力の消耗後にそれを充電あるいは交換する方法が行われているが、外付けバッテリーは、その取り換え等に関わる負担が大きいためバッテリー交換等が不要な給電方法が検討されている。
【0003】
バッテリー交換が不要な給電方法として、エネルギーハーベスティングデバイスが検討されている。エネルギーを収穫するエネルギーハーベスティングデバイスの種類としては、光、振動、熱、超音波を利用するもの等、様々なものが提案されているが、人間の生活で用いられる通信デバイスや放送電波等における電磁波からエネルギーハーベスティングを行うRFハーベスティングも有効な方式と考えられている。
【0004】
しかし、電磁波からエネルギーハーベスティングを行う場合、
図11に示すように、アンテナに到来した電波を昇圧回路によって昇圧し、整流回路で直流に変換した後に容量に蓄電し、これを電圧検出回路によって駆動して負荷に供給する構成となっている。電磁波からエネルギーを生成する方式の場合には、環境から得られる電磁波のエネルギーは小さいため、これを効率的に取得しかつ電子回路が利用できる形で保存することは非常に重要な課題となっている。
【0005】
例えば、非特許文献1の回路では、インダクタンス成分を持たせたアンテナ、可変容量、整流回路と外付けの制御回路を備え、整流回路の電圧上昇の傾きに基づいて、制御回路を用いてアンテナと可変容量による共振周波数を最適に制御することにより、飛来する電磁波から最も効率の良い形で電力を収穫するエネルギーハーベスティングを行っている。非特許文献1の方法は、−32dBmの入力で動作可能であり、収穫効率が高い有力な方式として期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M. Stoopman, et al., “Co-Design of a CMOS Rectifier and Small Loop Antenna for Highly Sensitive RF Energy Harvesters,” IEEE JSSC, 2014.
【非特許文献2】T. Someya, H. Fuketa, K. Matsunaga, H. Morimura, T. Sakurai and M. Takamiya, "248pW, 0.11mV/℃ glitch-free programmable voltage detector with multiple voltage duplicator for energy harvesting," ESSCIRC Conference 2015 - 41st European Solid-State Circuits Conference (ESSCIRC), Graz, 2015, pp. 249-252.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1のエネルギーハーベスティング回路では、制御回路を駆動するために、充電の初めの期間において共振周波数にミスマッチが生じている状態で充電を待つ必要があり、制御回路が駆動開始するまでに時間を要し、電力の収穫効率が悪化するという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、制御回路が動作開始するまでの時間を削減し、エネルギーハーベスティングの収穫効率を高めることが可能なエネルギーハーベスティング回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本願発明のエネルギーハーベスティング回路は、アンテナと、前記アンテナと所望の周波数において共振する共振回路と、出力側に第1のキャパシタが接続され、前記共振回路の出力を整流および昇圧し負荷に供給する第1の昇圧整流回路と、前記共振回路の出力電圧が大きくなるように、前記共振回路の共振周波数を制御する制御回路と、を備えたエネルギーハーベスティング回路において、出力側に第2のキャパシタが接続され、前記共振回路の出力を整流および昇圧し前記制御回路に供給する第2の昇圧整流回路を備え、前記第2のキャパシタは、前記第1のキャパシタよりも小さい容量値を有し、前記制御回路は、前記共振回路の出力電圧振幅に基づいて前記共振回路の共振周波数を制御する。
【0010】
また、前記共振回路は、スイッチとキャパシタの直列接続が、複数個並列に接続された可変容量キャパシタを有するLC共振回路であり、前記制御回路は、前記LC共振回路の出力を整流する整流回路と、第1のクロック信号に従って駆動され、前記整流回路の出力を交互に2つのキャパシタに充電し、2つのキャパシタの充電電圧を比較する第1の電圧比較回路と、前記第1のクロック信号に従って駆動され、前記第1の電圧比較回路の出力に基づいてアップまたはダウンするカウンタ値を出力するカウンタ回路とを備え、前記カウンタ値に従って、前記可変容量キャパシタのスイッチのそれぞれをONまたはOFFするようにしてもよい。
【0011】
また、前記
制御回路は、前記整流回路の出力が
前記カウンタ値に従って徐々に増加した後に低下したことを検出した場合に、
前記整流回路の出力が再度増加するように前記カウンタ値を変化させ、前記第1のクロック信号の供給を停止してもよい。
【0012】
また、前記制御回路は、前記第1のクロック信号よりも低速のクロック信号である第2のクロック信号に従って駆動され、前記整流回路の出力電圧を交互に2つのキャパシタに充電し、2つのキャパシタの充電電圧を比較する第2の電圧比較回路と、をさらに備え、前記整流回路の出力の変動が所定の閾値を超えた場合に、第2の電圧比較回路は、前記カウンタ値をリセットするための信号を出力してもよい。
【0013】
また、前記カウンタ回路の出力信号を逓倍する電圧逓倍回路を備え、前記電圧逓倍回路の出力に従って、前記可変容量キャパシタのスイッチを制御してもよい。
【0014】
また、前記LC共振回路は、前記可変容量キャパシタと並列に接続され、レーザトリミングされるレーザ校正用キャパシタをさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によれば、制御回路が動作開始するまでの時間を削減し、エネルギーハーベスティングの収穫効率を高めることが可能なエネルギーハーベスティング回路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるエネルギーハーベスティング回路の構成例である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施の形態におけるエネルギーハーベスティング回路の構成例である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施の形態における可変容量キャパシタの構成例である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施の形態における可変容量キャパシタの制御を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3の実施の形態におけるエネルギーハーベスティング回路の構成例である。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施の形態における比較回路の構成例である。
【
図7】
図7は、本発明の第4の実施の形態における電圧逓倍回路を用いた可変容量キャパシタの制御を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4の実施の形態における電圧逓倍回路の構成例である。
【
図9】
図9は、本発明の他の実施の形態におけるレーザ校正用キャパシタを備えたエネルギーハーベスティング回路の構成例である。
【
図10】
図10は、本発明の他の実施の形態におけるレーザ校正用キャパシタの構成例である。
【
図11】
図11は、従来のエネルギーハーベスティング回路の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願発明の実施の形態について図面を用いて説明する。但し、本願発明は、多くの異なる形態で実施することが可能であり、以下に説明する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0018】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるエネルギーハーベスティング回路1の構成例である。エネルギーハーベスティング回路1は、アンテナ10と、アンテナ10と所望の周波数にて共振するLC共振回路11と、LC共振回路11の出力を昇圧し直流電圧に変換する主電源用の第1の昇圧整流回路12と、制御回路用の第2の昇圧整流回路20を有し、それぞれの昇圧整流回路の出力にはキャパシタ(13、21)と電圧検出回路(14、22)が接続され、電圧検出回路の出力に従ってON/OFF制御されるスイッチによって負荷15と制御回路23への電力供給を制御するように構成されている。制御回路23は、LC共振回路11の出力電圧振幅に基づいてデジタル制御信号を用いてLC共振回路11の出力が最大になるように共振周波数を制御する。
【0019】
本実施の形態におけるエネルギーハーベスティング回路1では、制御回路用の第2の昇圧整流回路20に接続される第2のキャパシタ21の容量は、主電源用の第1の昇圧整流回路12に接続される第1のキャパシタ13の容量よりも小さくなるように設定されている。制御回路23を駆動する第2のキャパシタ21が充電される際の時定数を、主電源用の第1のキャパシタ13の時定数に比べて小さくすることにより、負荷15に電力供給がされる前に制御回路23の駆動を開始するように設定することが可能である。
【0020】
本実施の形態によれば、制御回路が駆動を始めるまでの時間を短くすることができるので、充電の開始時におけるエネルギーハーベスティングの収穫効率を高めることが可能となる。
【0021】
<第2の実施の形態>
図2は、本発明の第2の実施の形態におけるエネルギーハーベスティング回路の構成例である。第2の実施の形態は、LC共振回路11が、がスイッチとキャパシタの直列接続が、複数個並列に接続された可変容量キャパシタ16を有するLC共振器であり、制御回路23が、LC共振回路11の出力を整流する整流回路33と、所定のクロック信号に従って整流回路33からの出力(Vrec)を交互に2つのキャパシタに充電し、それらの充電電圧を比較する電圧比較回路30と、電圧比較回路30の出力に基づいてアップまたはダウンするカウンタ値を出力するカウンタ回路32、電圧比較回路30とカウンタ回路32にクロック信号を供給する発振回路31によって構成されており、カウンタ回路32が出力するカウンタ値によってLC共振回路11の可変容量キャパシタ16の容量を制御するものである。
【0022】
図3は、本発明の第2の実施の形態における可変容量キャパシタ16の構成例である。可変容量キャパシタ16では、スイッチとキャパシタの直列接続が、複数個並列に接続されており、このスイッチをカウンタ回路32が出力するカウンタ値(Q0−Qn)により、ON/OFF切替することにより容量を制御するものである。
【0023】
図4を用いて、第2の実施の形態における可変容量キャパシタの制御の一例を説明する。
図4では、Vrecの値が徐々に増加するように可変容量キャパシタ16の容量を増加させるカウンタ値を出力した後((a)→(b)→(c))、Vrecの値の低下を検出したときに、Vrecの値が再度増加するように可変容量キャパシタ16の容量を減少させるカウンタ値を出力した後、発振回路31からのクロックの供給を停止することによりカウンタ回路32からのカウンタ値を固定し、Vrecの値を(e)の値に集束させている。キャパシタと直列接続したスイッチをON/OFF切替することにより、LC共振回路11の出力が最大値となるようにLC共振回路11の容量を制御することが可能である。
【0024】
本実施の形態では、エネルギーハーベスティング回路の制御回路を整流回路、電圧比較回路、カウンタ回路、発振回路という簡易な回路構成によって構成したので、制御回路の低消費電力化が可能となり、効率的なエネルギーハーベスティング回路を提供する事が可能になる。これにより、制御回路を含めた回路のワンチップ化も可能となる。
【0025】
また、制御回路をLC共振回路のパラメータが最適値になった時点で動作停止させるので、制御回路の動作に必要な電力さらに低減することが可能となる。尚、電圧検出回路についても消費電力の低いものが開発されており、例えば、非特許文献2記載された電圧検出回路を用いて低消費電力化を図ることもできる。
【0026】
<第3の実施の形態>
図5は、本発明の第3の実施の形態におけるエネルギーハーベスティング回路の構成例である。第3の実施の形態では、第2の実施の形態における第1の電圧比較回路30に加えて、第1の電圧比較回路30よりも低速のクロック信号で駆動される第2の電圧比較回路40を具備し、この第2の電圧比較回路40により、LC共振回路11の出力が大きく変動した場合にカウンタ回路32のカウンタ値をリセットするものである。
【0027】
第2の実施の形態では、エネルギーハーベスティング回路1の動作環境が一定の状況下では、LC共振回路11の出力を安定的に収束させることが可能である。しかし、動作環境が変化する場合、例えば、移動体に適用した場合等、他の物体への取付または離脱が頻繁に起こるような場合や、エネルギーハーベスティングの元となる電力が頻繁に変動する場合等では、急激にアンテナ、ひいては整流回路33の出力が変化するため、LC共振回路11の出力を安定的に収束させることが困難となる。ここで、ある程度の収束値において制御を停止したとしても、一度LC共振回路11のパラメータが固定されてしまうとこのような電圧の急変に対処することができないこととなる。そこで、第3の実施の形態では、整流回路33の出力が所定の閾値以上に急変した場合に、カウンタ回路32の出力をリセットして、再度最適点に収束させるための制御を行うものである。
【0028】
図5では、
図2のエネルギーハーベスティング回路1に、第2の電圧比較回路40と第2の電圧比較回路40に第2のクロック信号を供給する第2の発信回路41をさらに備えている。第2の電圧比較回路には、第1の比較回路と同様に整流回路33の出力が入力され、その出力はカウンタ回路に接続されており、整流回路33の出力が所定の閾値以上に急変した場合に、カウンタ値をリセットする信号を出力するように構成されている。ここで、第2のクロック信号は、LC共振回路11の出力を最大化する制御の周期と比較して、リセット制御の周期が長くなるように、第1のクロック信号よりも低速に設定されている。第2のクロック信号の速度については、エネルギーハーベスティング回路1の動作環境に応じて適宜設定すればよい。
【0029】
図6を用いて、第3の実施の形態における第2の電圧比較回路の具体的な構成について説明する。
図6の電圧比較回路は、+端子/−端子の電圧の比較結果を出力するラッチ回路、+端子/−端子のそれぞれにゲートが接続されたコアトランジスタとからなるコア回路を備え、このコア回路に対して+端子/−端子のそれぞれにゲートが接続された余剰の駆動力を供給する余剰駆動トランジスタと、余剰駆動トランジスタのON/OFFを制御する制御トランジスタが付加されており、この制御用トランジスタは必ず片方がONとなるように構成されている。また、
図6の構成例では、ラッチ回路および制御トランジスタのゲートには分周回路により減速されたクロック信号が供給されており、減速されたクロック信号に基づき駆動されるように構成されている。
【0030】
今の整流回路33の出力電圧が+端子に印加されている場合、今の整流回路33の出力電圧は、−端子の容量に記憶されている前の出力電圧と比較される。ここで、+端子側の余剰駆動トランジスタを動作させるように+端子側の制御トランジスタをONとして、−端子側の制御トランジスタはOFFとすると、+端子側には余剰の駆動力が追加された今の出力電圧が印加される。例えば、コアトランジスタが1の駆動力を持ち、余剰駆動トランジスタがxの駆動力を持つとすると、+端子側は1+xの駆動力となり、−端子側の駆動力は1のままであるように設定することができ、今の出力電圧を余剰駆動トランジスタの駆動力により強調することが可能となる。
【0031】
このような回路構成では、このxの値だけ強調された駆動力の値が、電圧比較回路における閾値を定めることとなる。ラッチ回路においては、+端子側の今の出力電圧が−端子側の前の出力電圧よりも低下した場合でも、ラッチ回路に入力される電圧は強調されているため、ラッチ回路の出力は反転しないが、強調された今の電圧が前の電圧よりも低下した場合、すなわち、+端子側の今の電圧が強調された駆動力の値を超えて大幅に低下した場合にのみ、ラッチ回路の出力を反転させることができる。このラッチ回路の出力信号に基づいて、カウンタ値をリセットすれば、整流回路の出力が所定の閾値以上に急変した場合でも、カウンタ回路の出力をリセットして再度最適点に収束させるための制御を行うことができる。このリセット制御を行う際の閾値を定める余剰トランジスタの駆動力xの値は、エネルギーハーベスティング回路1の動作環境に応じて適宜設定すればよい。
【0032】
本実施の形態によれば、エネルギーハーベスティング回路の動作環境が急変し、収穫される電力が大幅に落ち込んでしまった場合でも、再度最適点に収束させるための制御を行うことができるので、より環境に対してロバストな動作を行うエネルギーハーベスティング回路を提供することが可能となる。
【0033】
<第4の実施の形態>
図7を用いて、第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態では、
図7に示すように、第1〜第3の実施の形態におけるカウンタ回路のカウンタ値が電圧逓倍回路50に入力され、電圧逓倍回路の出力によってLC共振回路11のスイッチを駆動するものである。
【0034】
この構成によれば、MOSトランジスタ等の能動素子によって構成される一般的なスイッチにおいて、十分な電圧をMOSトランジスタのゲートに印加する事が可能になるため、スイッチのオン抵抗を下げることが可能となる。このスイッチのオン抵抗は主にLC共振回路における損失として見えてくるため、オン抵抗を低下させることにより、エネルギーハーベスティング回路全体の電力効率の向上を図ることができる。電圧逓倍回路50の具体例を
図8に示す。
図8に示すような回路構成は、段数を増やすことによって逓倍数を増加させることができるので、エネルギーハーベスティング回路における電圧逓倍回路として有用である。
【0035】
<その他の実施の形態>
図9に示すように、LC共振回路11の可変容量キャパシタ16に、レーザ校正用キャパシタ60を並列に接続してもよい。LC共振回路のキャパシタには環境に応じた粗調範囲が存在するとより扱いが容易になるため、LC共振回路11の可変容量キャパシタ16に、
図10に示すようなレーザ校正用キャパシタを並列に接続して、レーザトリミングによる粗調を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…エネルギーハーベスティング回路、10…アンテナ、11…LC共振回路、12…昇圧整流回路(主電源用)、13…キャパシタ(主電源用)、14…電圧検出回路(主電源用)、15…負荷、16…可変容量キャパシタ、20…昇圧整流回路(主電源用)、21…キャパシタ(制御回路用)、22…電圧検出回路(制御回路用)、23…制御回路、30…電圧比較回路、31…発振回路、32…カウンタ回路、33…整流回路。