特許第6792264号(P6792264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6792264ガリウムを含有する結晶性アルミノシリケートおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792264
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】ガリウムを含有する結晶性アルミノシリケートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20201116BHJP
   B01J 29/87 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   C01B39/48
   B01J29/87 A
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-229291(P2016-229291)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2018-83745(P2018-83745A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】佐野 庸治
(72)【発明者】
【氏名】定金 正洋
(72)【発明者】
【氏名】津野地 直
(72)【発明者】
【氏名】高光 泰之
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−116747(JP,A)
【文献】 特表2014−515723(JP,A)
【文献】 特表2014−509935(JP,A)
【文献】 特表2008−521744(JP,A)
【文献】 特表2013−511462(JP,A)
【文献】 特表2011−521871(JP,A)
【文献】 特開2010−168269(JP,A)
【文献】 高田 知佳 et al.,第117回触媒討論会講演予稿集,日本,2016年,p.172
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20−39/54
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガリウムを含み、なおかつ、酸化ガリウムに対するシリカのモル比が75以上であることを特徴とするCHA構造を有する結晶性アルミノシリケート。
【請求項2】
前記ガリウムが少なくとも骨格構造に含まれていることを特徴とする請求項1に記載のCHA構造を有する結晶性アルミノシリケート。
【請求項3】
アルミナに対するシリカのモル比が10以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のCHA構造を有する結晶性アルミノシリケート。
【請求項4】
銅及び鉄の少なくともいずれかを含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のCHA構造を有する結晶性アルミノシリケート。
【請求項5】
アルミニウム源、ケイ素源、ガリウム源、構造指向剤、アルカリ源及び水を含み下記組成を有する組成物を100℃以上の水熱合成で結晶化する結晶化工程、を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のCHA構造を有する結晶性アルミノシリケートの製造方法。
SiO/Ga比=75以上、2000以下
SiO/Al比=10以上、600以下
アルカリ/SiO比=0.01以上、1以下
SDA/SiO比=0.1以上、0.5以下
OH/SiO比=0.1以上、1以下
O/SiO比=3以上、20以下
【請求項6】
前記アルミニウム源、前記ケイ素源及び前記ガリウム源が、アルミニウム、ケイ素及びガリウムを含む複合酸化物であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記アルミニウム源、前記ケイ素源及び前記ガリウム源が、アルミニウム、ケイ素及びガリウムを含むゼオライトであることを特徴とする請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のCHA構造を有する結晶性アルミノシリケートを含むことを特徴とする窒素酸化物還元触媒。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のCHA構造を有する結晶性アルミノシリケートを含むことを特徴とするアンモニア転化触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒に適した結晶性アルミノシリケートに関する。
【背景技術】
【0002】
CHA構造を有するゼオライト(以下、「CHA型ゼオライト」ともいう。)は、オレフィン製造用触媒や選択的接触還元触媒などの各種の触媒用途として利用されている。
【0003】
例えば、CHA構造を有する結晶性チタノシリケート及び結晶性チタノアルミノシリケート(非特許文献1)が、過酸化水素を用いた部分酸化反応に適していることや、CHA構造を有する結晶性ガロシリケート(非特許文献2)が、MTO(Methanol to Olefin)触媒として適していることが開示されている。
【0004】
また、CHA構造を有する結晶性アルミノシリケート(特許文献1及び2)や、CHA構造を有する結晶性シリコアルミノフォスフェート(特許文献3)に銅を含有させたものが、還元剤としてアンモニア(NH)を使用する窒素酸化物の選択的接触還元触媒、いわゆるアンモニアSCR触媒として適していることが開示されている。
【0005】
また、CHA構造を有する結晶性アルミノシリケートに、鉄、ガリウム又はスズを置換した、CHA構造を有する結晶性アルミノシリケートが報告されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−116747号公報
【特許文献2】特表2014−515723号公報
【特許文献3】特表2014−509935号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「化学触媒化学(ChemCatChem)」 ウィリー(Wiley),(ドイツ),2011年,Vol.3,Issue.12,p.1869
【非特許文献2】「ミクロポーラス及びメソポーラス材料(Microporous and Mesoporous Materials)」 エルゼビア(Elsevier),(オランダ),2008年,Vol.116,p.253−257
【非特許文献3】「第117回触媒討論会予稿集」,2016年,2P06
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
CHA型ゼオライトはアンモニアSCR触媒として高い窒素酸化物還元特性を示す一方で、SCR反応で転化しきれなかったアンモニアがSCR触媒の下流や系外に放出される。転化しきれなかったアンモニアは、これを除去するため更なる触媒が必要であった。
【0009】
これらの課題に鑑み、本発明は、窒素酸化物還元特性を有するとともに、アンモニア転化特性を有する触媒、及びこの様な触媒を与える基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、CHA型ゼオライト、特にCHA構造を有する結晶性アルミノシリケート(以下、「CHA型結晶性アルミノシリケート」ともいう。)について検討した。その結果、ガリウムを含み、酸化ガリウムに対するシリカのモル比が所定の範囲にある結晶性アルミノシリケートが、窒素酸化物還元特性を有するとともに、アンモニア転化特性を有すること見出した。また、本発明者等は、当該アルミノシリケートを基材とした触媒が、窒素酸化物還元特性を有するとともに、優れたアンモニア転化特性を示すことを見出した。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] ガリウムを含み、なおかつ、酸化ガリウムに対するシリカのモル比が75以上であることを特徴とするCHA構造を有する結晶性アルミノシリケート。
[2] 前記ガリウムが少なくとも骨格構造に含まれていることを特徴とする上記[1]に記載のCHA構造を有する結晶性アルミノシリケート。
[3] アルミナに対するシリカのモル比が10以上であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のCHA構造を有する結晶性アルミノシリケート。
[4] 銅及び鉄の少なくともいずれかを含有することを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のCHA構造を有する結晶性アルミノシリケート。
[5] アルミニウム源、ケイ素源、ガリウム源、構造指向剤、アルカリ源及び水を含む組成物を結晶化する結晶化工程、を有することを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のCHA構造を有する結晶性アルミノシリケートの製造方法。
[6] 前記アルミニウム源、前記ケイ素源及び前記ガリウム源が、アルミニウム、ケイ素及びガリウムを含む複合酸化物であることを特徴とする上記[5]に記載の製造方法。
[7] 前記アルミニウム源、前記ケイ素源及び前記ガリウム源が、アルミニウム、ケイ素及びガリウムを含むゼオライトであることを特徴とする上記[5]又は[6]に記載の製造方法。
[8] 上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のCHA構造を有する結晶性アルミノシリケートを含むことを特徴とする触媒。
[9] 上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のCHA構造を有する結晶性アルミノシリケートを使用することを特徴とする窒素酸化物の還元方法。
[10] 上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のCHA構造を有する結晶性アルミノシリケートを使用することを特徴とするアンモニアの転化方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、窒素酸化物還元特性を有するとともに、アンモニア転化特性を有する触媒及びこの様な触媒を与える基材を提供することができる。これにより、内燃機関の排ガス浄化システムで設置されるアンモニア除去触媒を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例3のガリウム置換CHA型結晶性アルミノシリケートの走査型電子顕微鏡写真
図2】実施例3のガリウム置換CHA型結晶性アルミノシリケートの71Ga MAS NMRスペクトル
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の結晶性アルミノシリケートについて詳細に説明する。
【0015】
本発明の結晶性アルミノシリケートは、ガリウムを含み、かつ、CHA構造を有する。
【0016】
本発明においてゼオライトとは、4配位の骨格金属(以下、「T原子」ともいう。)と酸素(O)のネットワークからなる三次元の骨格構造(以下、単に「骨格構造」ともいう。)を有する結晶性物質である。ゼオライトには、この骨格構造に起因する複数の細孔が形成されている。T原子として、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、ジルコニア、スズ、ランタン及びセリウムからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。本発明において結晶性アルミノシリケートとは、T原子として少なくともケイ素(Si)とアルミニウム(Al)を含むゼオライトである。アルミノシリケートには、ケイ素(Si),アルミニウム(Al),酸素(O)に起因するイオン交換サイトが形成されている。
【0017】
CHA構造は、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)のStructure Commissionが定めているIUPAC構造コードでCHA構造として規定されている構造である。CHA構造は、Collection of simulated XRD powder patterns for zeolites,Fifth revised edition(2007)に記載の粉末X線回折(以下、「XRD」とする。)パターン、及び、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza−struture.org/databases/のZeolite Framework Typesに記載のXRDパターンのいずれかと比較することで、これを同定することができる。
【0018】
本発明の結晶性アルミノシリケートに含まれるガリウムは、イオン交換サイト、細孔及び骨格構造からなる群の少なくともいずれかに含まれていればよく、少なくとも骨格構造に含まれていることが好ましい。ガリウムがイオン交換サイトに含まれる場合、ガリウムの状態としてガリウムイオンであることが挙げられ、ガリウムが細孔に含まれる場合、ガリウムの状態としてガリウムイオン、酸化ガリウム及び水酸化ガリウムからなる群の少なくとも1種であることが例示できる。一方、ガリウムが骨格構造に含まれる場合、ガリウムはT原子として含まれていることが挙げられる。ガリウムがT原子として含まれている場合、ガリウムが骨格構造のケイ素またはアルミニウムを置換していてもよく、この場合、本発明の結晶性アルミノシリケートは、いわゆるガリウム置換結晶性アルミノシリケートとなる。
【0019】
本発明の結晶性アルミノシリケートがガリウムを含有することはICPなど、通常の組成分析により確認することができる。さらに、UV−vis測定において240±5nmにピークトップを有する吸収ピークの存在、または71Ga MAS NMR測定において180±5ppmにピークトップを有するピークの存在をもって、ガリウムがT原子として含まれることが確認できる。
【0020】
本発明の結晶性アルミノシリケートは、酸化ガリウムに対するシリカのモル比(以下、「SiO/Ga比」ともいう。)が75以上である。SiO/Ga比は、更には90以上、また更には100以上、また更には200以上、また更には250以上であることが好ましい。SiO/Ga比が75未満であるとガリウム量が増えすぎ、製造コストが高くなる。さらには、ガリウムが多くなりすぎると結晶性アルミノシリケートの酸強度が変化し、十分なアンモニア転化特性が得られなくなる。SiO/Ga比は2000以下、更には600以下、更には500以下、また更には300以下であることが好ましく、SiO/Ga比が2000以下であることで、本発明の結晶性アルミノシリケートが十分なアンモニア転化特性を有しやすくなる。また、より好ましいSiO/Ga比は、200以上500以下であり、特に好ましいSiO/Ga比は、250以上300以下である。SiO/Ga比が200以上500以下であることで、十分なアンモニア転化特性を有しやすくなるとともに、当該範囲外にある場合と比較して窒素酸化物還元特性が向上しやすくなる。
【0021】
本発明の結晶性アルミノシリケートは、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO/Al比」ともいう。)が10以上、更には20以上であることが好ましい。SiO/Al比が10以上であれば、高温下で使用される触媒として実用的な耐熱性を有しやすくなる。一方、SiO/Al比は、200以下、更には50以下、また更には37以下であることが好ましく、SiO/Al比が200以下であれば、MTO(Methanol to Olefin)触媒や窒素酸化物還元触媒、SCR触媒として適した酸強度となりやすい。
【0022】
本発明の結晶性アルミノシリケートは、複数の結晶により構成することができる。結晶の平均径(以下、「平均結晶径」ともいう。)は、5μm以下、更には1μm以下であることが挙げられる。平均結晶径は、0.1μm以上、更には0.3μm以上であれば、実用上十分な耐熱性を有しやすくなる。なお、結晶とは、結晶の界面を走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」ともいう。)を用いて観察することができる最小単位の結晶である。
【0023】
本発明において結晶の径(以下、「結晶径」ともいう。)は、SEM観察により確認することができる結晶のフェレー径である。平均結晶径は、本発明の結晶性アルミノシリケートを構成し得る複数の結晶のうち、SEMで無作為に抽出した30個以上の結晶のフェレー径(結晶径)を相加平均した値である。また、フェレー径は、SEMにより確認することができる結晶の画像において、結晶を通過(接することを含む)する直線及び当該直線に平行な複数の直線(以下、「直線群」とする。)を引き、当該直線群の中で当該一次粒子を通過する最も距離の離れた2本の平行線の間の距離である。一次粒子を測定する際の上記直線群に対する角度は、全ての一次粒子において同じ角度とする。
【0024】
本発明の結晶性アルミノシリケートは、銅(Cu)及び鉄(Fe)の少なくともいずれか、更には銅を含有することが好ましい。銅及び鉄は、結晶性アルミノシリケートのイオン交換サイト及び細孔の少なくともいずれかに含有されていることが挙げられる。
【0025】
本発明の結晶性アルミノシリケートが含有する銅及び鉄の含有量として、結晶性アルミノシリケートに対する銅又は鉄の重量割合は、0.1重量%以上、更には1.0重量%以上であることが挙げられる。銅及び鉄を含有する場合には、銅及び鉄の合計量は、0.1重量%以上、更には1.0重量%以上であることが挙げられる。銅や鉄の含有量(銅及び鉄の合計量)が0.1重量%以上であることでアンモニア転化率のみならず、十分な窒素酸化物除去性能を有しやすくなる。銅や鉄が多くなると製造コストが高くなる。工業的な製造を可能とするため、銅や鉄の含有量は10重量%以下、更には5重量%以下、更には1.4重量%以下であることが好ましい。また、より好ましい銅の含有量は、1.0重量%以上1.4重量%以下である。銅の含有量が1.0重量%以上1.4重量%以下であることで、十分なアンモニア転化特性を有しやすくなるとともに、当該範囲外にある場合と比較して窒素酸化物還元特性が向上しやすくなる。
【0026】
本発明の結晶性アルミノシリケートは触媒、より具体的には窒素酸化物還元触媒及びアンモニア転化触媒の少なくともいずれかとして使用することができる。また、本発明の結晶性アルミノシリケートは、触媒の基材(触媒を与える基材)として使用することができ、例えば、窒素酸化物還元触媒及びアンモニア転化触媒の少なくともいずれかの基材として使用することができる。さらには、本発明の結晶性アルミノシリケートは、排ガス浄化システムの触媒として使用することができる。本発明の結晶性アルミノシリケートを触媒として使用する場合、触媒の形状は任意であり、粉末及び成形体の少なくともいずれかであればよい。触媒が粉末である場合、コージェライト、ジルコニア、アルミナ、金属等を担体とし、これに塗布又はコートすればよい。触媒が成形体である場合、その形状は任意であり、円板状、円柱状、球状、略球状、立方体、直方体、多面体、略多面体及び花弁状からなる群の少なくとも1種を挙げることができる。触媒が成形体である場合、当該触媒は結晶性アルミノシリケートに加え、成形助剤やバインダー等の結晶性アルミノシリケート以外の他の物質を含んでいてもよい。バインダー等の他の物質として、シリカ粘土、アルミナ粘土、カオリン、アタパルガイト、モンモリロナイト、ベントナイト、アロフェン及びセピオライトからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。
【0027】
次に、本発明の結晶性アルミノシリケートの製造方法について説明する。
【0028】
本発明のCHA型結晶性アルミノシリケートの製造方法は、任意であるが、好ましい製造方法として、アルミニウム源、ケイ素源、ガリウム源、構造指向剤、アルカリ源及び水を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化する結晶化工程、を有する製造方法、を挙げることができる。
【0029】
アルミニウム源、ケイ素源及びガリウム源は、それぞれ、アルミニウム(Al)を含む化合物、ケイ素(Si)を含む化合物、ガリウム(Ga)を含む化合物であれば任意のものを使用することができるが、アルミニウム源、ケイ素源及びガリウム源が、アルミニウム、ケイ素及びガリウムを含む複合酸化物(以下、単に「複合酸化物」ともいう。)を含むことが好ましく、複合酸化物のみにより構成されていることがより好ましい。
【0030】
複合酸化物はアルミニウム、ケイ素及びガリウムを含む酸化物であればよく、非晶質物質及び結晶性物質のいずれであってもよく、結晶性物質であることが好ましい。好ましい複合酸化物として、アルミニウム、ケイ素及びガリウムを含むゼオライトが挙げられ、当該ゼオライトの構造はFAU構造、更にはX型ゼオライト及びY型ゼオライトの少なくともいずれか、また更にはY型ゼオライトであることが好ましい。複合酸化物がY型ゼオライト構造を有することで、得られるCHA型結晶性アルミノシリケートにガリウムがT原子として含まれやすくなる。特に好ましい複合酸化物としてガリウム置換Y型結晶性アルミノシリケートを挙げることができる。
【0031】
複合酸化物の組成は、目的とする結晶性アルミノシリケートと同等の組成であることが好ましく、例えば、SiO/Ga比として75以上2000以下、更には300以上1300以下であることが挙げられ、また、SiO/Al比として10以上600以下、更には20以上100以下であることが挙げられる。複合酸化物において、より好ましいSiO/Ga比は、400以上1200以下であり、さらに好ましいSiO/Ga比は、600以上650以下である。
【0032】
原料組成物の構造指向剤(以下、「SDA」ともいう。)は、CHA型ゼオライトが得られるSDAとして公知のものを使用することができ、N−メチル−3−キヌクリジノールカチオン、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムカチオン、トリメチルベンジルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン及びN,N,N−トリメチルエキソアミノノルボルネンカチオンからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。原料組成物はSDAを塩の形態で含んでいてもよく、SDAがN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムカチオン(以下、「TMAda」ともいう。)である場合、TMAdaの塩化物、臭化物、ヨウ化物及び水酸化物からなる群の少なくとも1種を挙げることができ、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム水酸化物(以下、「TMAdaOH」ともいう。)であることが好ましい。
【0033】
アルカリ源は、アルカリ金属を含む物質であり、例えば、アルカリ金属を含む水酸化物を挙げることができる。より具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群の少なくとも1種を含む水酸化物を挙げることができ、更にはナトリウムを含む水酸化物であることが好ましい。また、アルカリ源、ケイ素源、ガリウム源及びSDA等の原料組成物に含まれるアルカリ源以外の他の原料がアルカリ金属を含む場合、当該アルカリ金属もアルカリ源とすることができる。
【0034】
水は純水であってもよいが、各原料を水溶液とした場合の溶媒の水であってもよい。
【0035】
原料組成物のSiO/Ga比は75以上2000以下、更には300以上1300以下であることが好ましい。原料組成物において、より好ましいSiO/Ga比は、400以上1200以下であり、さらに好ましいSiO/Ga比は、600以上650以下である。
【0036】
原料組成物のSiO/Al比は10以上600以下、更には20以上100以下であることが好ましい。
【0037】
原料組成物の、シリカに対するアルカリ金属カチオンのモル比(以下、「アルカリ/SiO比」とする。)は0.01以上1以下、更には0.1以上0.3以下であることが好ましい。
【0038】
原料組成物の、シリカに対するSDAのモル比(以下、「SDA/SiO比」とする。)は0.1以上0.5以下であることが好ましい。
【0039】
原料組成物の、シリカに対するOHのモル比(以下、「OH/SiO比」とする。)は1.0以下であることが好ましい。OH/SiO比が1.0以下であることで、当該範囲外にある場合と比較してより高い収率で結晶性アルミノシリケートを得ることができる。原料組成物のOH/SiO比は、0.1以上であることが好ましい。
【0040】
原料組成物の、シリカに対する水(HO)のモル比(以下、「HO/SiO比」とする。)は20以下であることが好ましい。HO/SiO比が20以下であることで、当該範囲外にある場合と比較して結晶性アルミノシリケートの収率が向上する。適度な流動性を有する原料組成物とするためには、HO/SiO比は、3以上であることが好ましい。
【0041】
結晶化工程において、原料組成物に種晶を混合してもよい。これにより結晶化が促進される。種晶としてCHA構造を有するゼオライト、更にはCHA構造を有する結晶性アルミノシリケートを挙げることができ、なおかつ、種晶はガリウムを含んでいてもよい。
【0042】
結晶化工程における種晶に関し、以下の式から求められる種晶含有量は、0重量%以上30重量%以下、0重量%以上10重量%以下、更には0重量%以上5重量%以下であることが好ましい。種晶を含有する場合、種晶含有量は、0.1重量%以上であることが好ましく、例えば、0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。
種晶含有量(重量%)=(WAl(Seed)+WSi(seed)+WGa(seed)
×100/(WAl+WSi+WGa
【0043】
上記式において、WAlは原料組成物中のAlをAlに換算した重量、WSiは原料組成物中のSiをSiOに換算した重量、WGaは原料組成物中のGaをGaに換算した重量、WAl(seed)は種晶中のAlをAlに換算した重量、WSi(seed)は種晶中のSiをSiOに換算した重量、及び、WGa(seed)は種晶中のGaをGaに換算した重量である。
【0044】
好ましい原料組成物の組成として以下のものを挙げることができる。
SiO/Ga比 =75以上、2000以下
SiO/Al比 =10以上、600以下
アルカリ/SiO比 =0.01以上、1以下
SDA/SiO比 =0.1以上、0.5以下
OH/SiO比 =0.1以上、1以下
O/SiO比 =3以上、20以下
【0045】
結晶化工程では、原料組成物を結晶化する。結晶化方法は、水熱合成が挙げられる。その場合、原料組成物を密閉容器に充填し、これを加熱すればよい。
【0046】
原料組成物の加熱温度(以下、「結晶化温度」ともいう。)は100℃以上であれば原料組成物を結晶化することができる。加熱温度が高いほど、結晶化が促進される。そのため、結晶化温度は130℃以上であることが好ましい。原料組成物が結晶化すれば、必要以上に結晶化温度を高くする必要はない。そのため、結晶化温度は200℃以下であればよい。また、結晶化は原料組成物を攪拌した状態、及び静置した状態のいずれかの状態で行うことができる。
【0047】
結晶化工程の後、洗浄工程、乾燥工程及びイオン交換工程の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0048】
洗浄工程は、結晶化工程後の結晶性アルミノシリケートと液相とを固液分離し、得られた結晶性アルミノシリケートを洗浄する。具体的には、洗浄工程は、公知の方法で固液分離をし、固相として得られる結晶性アルミノシリケートを純水で洗浄すればよい。
【0049】
乾燥工程は、結晶化工程後又は洗浄工程後の結晶性アルミノシリケートから水分を除去する。乾燥工程の条件は任意であるが、結晶化工程後又は洗浄工程後の結晶性アルミノシリケートを、大気中、50℃以上、150℃以下で2時間以上、静置することが例示できる。
【0050】
結晶化工程後の結晶性アルミノシリケートは、そのイオン交換サイト上にアルカリ金属イオン等の金属イオンを有する場合がある。イオン交換工程では、これをアンモニウムイオン(NH)や、プロトン(H)等の非金属カチオンにイオン交換する。アンモニウムイオンへのイオン交換は、結晶性アルミノシリケートを塩化アンモニウム水溶液に混合、攪拌することが挙げられる。また、プロトンへのイオン交換は、結晶性アルミノシリケートをアンモニアでイオン交換した後、これを焼成することが挙げられる。
【0051】
本発明の結晶性アルミノシリケートに銅(Cu)及び鉄(Fe)の少なくともいずれかを含有させる場合、銅及び鉄の少なくともいずれかを含む化合物(以下、「銅化合物等」ともいう。)と結晶性アルミノシリケートとを接触させる金属含有工程、を有する製造方法により得ることができる。
【0052】
金属含有工程は、結晶性アルミノシリケートのイオン交換サイト及び細孔の少なくともいずれかに銅及び鉄の少なくともいずれかが含有される方法であればよい。具体的な方法として、イオン交換法、蒸発乾固法及び含浸担持法からなる群の少なくとも1種を挙げることができ、含浸担持法、更には遷移金属化合物を含む水溶液と結晶性アルミノシリケートとを混合する方法であることが好ましい。
【0053】
銅化合物等は、銅及び鉄の少なくともいずれかを含む無機酸塩、更には銅及び鉄の少なくともいずれかを含む硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩及び塩化物からなる群の少なくとも1種を挙げることができる。
【0054】
金属含有工程の後、洗浄工程、乾燥工程、及び活性化工程の少なくともいずれか1以上の工程を含んでいてもよい。
【0055】
洗浄工程は、不純物等が除去されれば、任意の洗浄方法を用いることができる。例えば、金属含有工程後の結晶性アルミノシリケートを十分量の純水で洗浄することが挙げられる。
【0056】
乾燥工程は水分を除去すればよく、大気中で、100℃以上、200℃以下で静置することが例示できる。
【0057】
活性化工程は有機物を除去する。金属含有工程後の結晶性アルミノシリケートを、大気中、200℃を超え、600℃以下で静置することが例示できる。
【0058】
銅及び鉄の少なくともいずれか、更には銅を含有する結晶性アルミノシリケートは、例えば、アルコールやケトンからの低級オレフィン製造用触媒、クラッキング触媒、脱ろう触媒、異性化触媒、及び排気ガスからの窒素酸化物還元触媒として使用することができる。特に、窒素酸化物還元触媒として使用することが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0060】
(結晶構造の同定)
一般的なX線回折装置(装置名:D8 Advance、Bruker社製)を使用し、以下の条件で試料のXRD測定をした。測定されたXRDパターンを使用し、上述した結晶構造の同定方法により、試料の結晶構造を同定した。
線源 :CuKα線(λ=1.5405Å)
測定範囲:2θ=5°〜50°
【0061】
(組成分析)
水酸化カリウム水溶液に試料を溶解して試料溶液を調製した。一般的なICP装置(装置名:SPS7000、Seiko社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)で測定することにより、試料の組成を分析した。
【0062】
(UV−vis測定)
一般的なUV−vis測定装置(装置名:V−570、日本分光株式会社製)を使用して、拡散反射スペクトルをバンド幅10mm、スキャン速度400nm/分の条件で測定した。
【0063】
(走査型電子顕微鏡観察)
一般的な電解放出形走査型電子顕微鏡(装置名:S−4800、日立製作所製)を用いて試料の結晶の観察、及び平均結晶径の測定を行った。
【0064】
71Ga MAS NMR測定)
一般的なNMR測定装置(装置名:600PS Solid、Varian製)を使用して、下記の条件で測定した。
共鳴周波数 :600MHz
スピン速度 :15kHz
待ち時間 :0.1s
パルス幅 :2.5μs
積算回数 :400,000回
【0065】
合成例1(ガリウム含有Y型結晶性アルミノシリケート)
950gの水に0.465gのGa(NO)・xHOを溶解させ、そこに濃度30重量%の硫酸を6g添加、混合して処理溶液を調製した。当該処理溶液にFAU型ゼオライト(Y型、カチオンタイプ:プロトン型、SiO/Al比=5.6)を懸濁させ、室温で24時間攪拌した。得られた固相をpHが7になるまで純水洗浄した後、60℃の温水で洗浄した。120℃で乾燥することでGaを含有する複合酸化物を得た。得られた複合酸化物は、Y型ゼオライト構造を有する、ガリウム含有Y型結晶性アルミノシリケートであり、SiO/Ga比は388及びSiO/Al比は48であった。
【0066】
合成例2
Ga(NO)・xHOを0.230gとしたこと以外は合成例1と同様の方法で複合酸化物を得た。得られた複合酸化物は、Y型ゼオライト構造を有するガリウム含有Y型結晶性アルミノシリケートであり、SiO/Ga比は608及びSiO/Al比は52であった。
【0067】
合成例3
Ga(NO)・xHOを0.116gとしたこと以外は合成例1と同様の方法で複合酸化物を得た。得られた複合酸化物は、Y型ゼオライト構造を有するガリウム含有Y型結晶性アルミノシリケートであり、SiO/Ga比は1236及びSiO/Al比は66であった。
【0068】
合成例4
Ga(NO)・xHOを1.86gとしたこと以外は合成例1と同様の方法で複合酸化物を得た。得られた複合酸化物は、Y型ゼオライト構造を有するガリウム含有Y型結晶性アルミノシリケートであり、SiO/Ga比は164及びSiO/Al比は72であった。
【0069】
実施例1
合成例4で得られたガリウム含有Y型結晶性アルミノシリケート、純水及び水酸化ナトリウムを、TMAdaOH水溶液に添加し、以下の組成を有する原料組成物を得た。
SiO/Ga比 =164
SiO/Al比 =72
アルカリ(Na)/SiO比 =0.1
SDA(TMAda)/SiO比 =0.3
OH/SiO比 =0.4
O/SiO比 =15
【0070】
得られた原料組成物に種晶として3重量%のCHA型ゼオライト(SiO/Al比=32、SiO/Ga比=0)を添加して混合した後、密閉容器内に充填し、これを攪拌した状態で170℃、2日間結晶化させた。得られた結晶化物は、固液分離、純水洗浄及び70℃で乾燥した。当該結晶化物は、CHA構造の単一相からなり、SiO/Ga比が98、及びSiO/Al比が44であった。
【0071】
実施例2
合成例4で得られたガリウム含有Y型結晶性アルミノシリケート、純水及び水酸化ナトリウムを、TMAdaOH水溶液に添加し、以下の組成を有する原料組成物を得た。
SiO/Ga比 =164
SiO/Al比 =72
アルカリ(Na)/SiO比 =0.1
SDA(TMAda)/SiO比 =0.3
OH/SiO比 =0.4
O/SiO比 =15
【0072】
得られた原料組成物に種晶として実施例1で得られたCHA型ゼオライト(SiO/Al比=44、SiO/Ga比=98)を3重量%添加して混合した後、密閉容器内に充填し、これを攪拌した状態で170℃、2日間結晶化させた。得られた結晶化物は、固液分離、純水洗浄及び70℃で乾燥した。当該結晶化物は、CHA構造の単一相からなり、SiO/Ga比が98、及びSiO/Al比が34であった。
【0073】
実施例3
合成例1で得られたガリウム含有Y型結晶性アルミノシリケート、純水及び水酸化ナトリウムを、TMAdaOH水溶液に添加し、以下の組成を有する原料組成物を得た。
SiO/Ga比 =388
SiO/Al比 =48
アルカリ(Na)/SiO比 =0.2
SDA(TMAda)/SiO比 =0.3
OH/SiO比 =0.5
O/SiO比 =15
【0074】
得られた原料組成物に種晶として実施例2で得られたガリウム含有CHA型ゼオライトを3重量%添加して混合した後、密閉容器内に充填し、これを攪拌した状態で170℃、2日間結晶化させた。得られた結晶化物は、固液分離、純水洗浄及び70℃で乾燥した。当該結晶化物は、CHA構造の単一相からなり、SiO/Ga比が178、及びSiO/Al比が42であり、平均結晶径は500nmであった。
【0075】
また、UV−vis測定において、240nm付近にピークトップを有する吸収ピークが確認された。また、71Ga MAS NMR測定により、180ppm付近にピークトップを有するピークが確認された。これより、本実施例の結晶化物は、ガリウムをT原子として含むCHA構造の結晶性アルミノシリケートであることが確認できた。
【0076】
本実施例の結晶性アルミノシリケートのSEM写真を図1に、71Ga MAS NMRスペクトルを図2に示す。
【0077】
実施例4
合成例2で得られたガリウム含有Y型結晶性アルミノシリケートを使用したこと、及び、原料組成物の組成を以下のとおりとしたこと以外は、実施例3と同様な方法により結晶化し、得られた結晶化物を洗浄、乾燥した。
SiO/Ga比 =608
SiO/Al比 =52
アルカリ(Na)/SiO比 =0.2
SDA(TMAda)/SiO比 =0.3
OH/SiO比 =0.5
O/SiO比 =15
【0078】
当該結晶化物は、CHA構造の単一相からなり、SiO/Ga比が278、及びSiO/Al比が36であり、平均結晶径は400nmであった。
【0079】
また、UV−vis測定において、240nm付近にピークトップを有する吸収ピークが確認された。また、71Ga MAS NMR測定により、180ppm付近にピークトップを有するピークが確認された。これより、本実施例の結晶化物は、ガリウムをT原子として含むCHA構造の結晶性アルミノシリケートであることが確認できた。
【0080】
実施例5
合成例3で得られたガリウム含有Y型結晶性アルミノシリケートを使用したこと、及び、原料組成物の組成を以下のとおりとしたこと以外は、実施例3と同様な方法により結晶化し、得られた結晶化物を洗浄、乾燥した。
SiO/Ga比 =1236
SiO/Al比 =66
アルカリ(Na)/SiO比 =0.2
SDA(TMAda)/SiO比 =0.3
OH/SiO比 =0.5
O/SiO比 =15
【0081】
当該結晶化物は、CHA構造の単一相からなり、SiO/Ga比が524、及びSiO/Al比が40であり、平均結晶径は400nmであった。
【0082】
また、UV−vis測定において、240nm付近にピークトップを有する吸収ピークが確認された。また、71Ga MAS NMR測定により、180ppm付近にピークトップを有するピークが確認された。これより、本実施例の結晶化物は、ガリウムをT原子として含むCHA構造の結晶性アルミノシリケートであることが確認できた。
【0083】
実施例6
実施例3で得られた結晶性アルミノシリケートを、大気中、500℃で10時間焼成した後、硝酸アンモニウム水溶液を用いてイオン交換して、カチオンタイプをNH型とした。NH型の結晶性アルミノシリケート1.1gに硝酸銅水溶液を添加し、これを乳鉢で混合した。硝酸銅水溶液は硝酸銅3水和物61mgを純水0.5gに溶解したものを使用した。
【0084】
混合後の試料を110℃で一晩乾燥した後、空気中、550℃で1時間焼成し、これを本実施例の銅含有CHA型結晶性アルミノシリケートとした。得られた銅含有CHA型結晶性アルミノシリケートをフッ酸と硝酸の混合水溶液に溶解した後に、ICP−AES分析(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)し、銅の含有量を算出した。評価結果を表1に示す。
【0085】
実施例7
実施例4で得られた結晶性アルミノシリケートを使用したこと以外は、実施例6と同様の方法で銅含有CHA型結晶性アルミノシリケートを得た。また、実施例6と同様の方法により、得られた銅含有CHA型結晶性アルミノシリケートの銅の含有量を算出した。評価結果を表1に示す。
【0086】
実施例8
実施例5で得られた結晶性アルミノシリケートを使用したこと以外は、実施例6と同様の方法で銅含有CHA型結晶性アルミノシリケートを得た。また、実施例6と同様の方法により、得られた銅含有CHA型結晶性アルミノシリケートの銅の含有量を算出した。評価結果を表1に示す。
【0087】
比較例1
ガリウムを含ないCHA型結晶性アルミノシリケート(SiO/Al比=32)を使用したこと以外は、実施例6と同様の方法で銅含有CHA型結晶性アルミノシリケートを得た。また、実施例6と同様の方法により、得られた銅含有CHA型結晶性アルミノシリケートの銅の含有量を算出した。評価結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
測定例1(アンモニア転化特性)
実施例6乃至8及び比較例1の銅含有CHA型結晶性アルミノシリケートについて、以下の条件のアンモニアSCR方法により、アンモニア転化特性を評価した。すなわち、実施例6乃至8及び比較例1の銅含有CHA型結晶性アルミノシリケートを、それぞれ、プレス成形した後、凝集径12〜20メッシュの凝集粒子体とした。得られた凝集粒子体を1.5mL量りとり、これを反応管に充填した。その後、150℃で、窒素酸化物を含む以下の組成からなる処理ガスを当該反応管に流通させた。処理ガスの流量は1.5L/分、及び空間速度(SV)は60,000h−1として測定を行った。
<処理ガス組成>
NO :200ppm
NH :200ppm
:10容量%
O :3容量%
:残部
【0090】
反応管に流通させた処理ガス中のアンモニア濃度(200ppm)に対する、触媒(凝集粒子体)流通後の処理ガス中のアンモニア濃度(ppm)の割合を求め、以下の式に従って、アンモニア転化率を求めた。結果を表2に示す。
アンモニア転化率(%)={1−(触媒流通後の処理ガス中のアンモニア濃度
/反応管に流通させた処理ガス中のアンモニア濃度)}×100
【0091】
【表2】
【0092】
表2より、いずれの実施例においてもアンモニア転化率が100%であり、本発明の銅含有CHA型結晶性アルミノシリケートのみで、処理ガス中のアンモニアを転化できることが確認できた。また、実施例6〜8のアンモニア転化率は、比較例1のアンモニア転化率よりも高く、本発明の銅含有CHA型結晶性アルミノシリケートのアンモニア転化特性が向上していることを確認できた。
【0093】
測定例2(窒素酸化物還元特性)
測定例1と同様なアンモニアSCR方法により、窒素酸化物還元特性を評価した。反応管に流通させた処理ガス中の窒素酸化物濃度(200ppm)に対する、触媒流通後の処理ガス中の窒素酸化物濃度(ppm)の割合を求め、以下の式に従って、窒素酸化物還元率を求めた。ここで窒素酸化物とは、一酸化窒素と二酸化窒素を指す。結果を表3に示す。
窒素酸化物還元率(%)={1−(触媒流通後の処理ガス中の窒素酸化物濃度
/反応管に流通させた処理ガス中の窒素酸化物濃度)}×100
【0094】
【表3】
【0095】
表3より、実施例6及び8は、150℃における窒素酸化物還元率が比較例1と同等であり、実施例7は、実施例6,8及び比較例1よりも150℃における窒素酸化物還元率が高かった。この結果から、本発明の銅含有CHA型結晶性アルミノシリケートは低温域において実用的な窒素酸化物還元特性を有することが確認できた。また、実施例7の銅含有CHA型結晶性アルミノシリケートは、実施例6,8及び比較例1よりも窒素酸化物還元特性が向上していることを確認できた。
【0096】
これらの結果より、本発明の結晶性アルミノシリケートを用いて調製した触媒は、当該触媒のみで、窒素酸化物の還元及びアンモニアの処理の両方ができることが確認できた。また、本発明の銅含有CHA型結晶性アルミノシリケートのアンモニア転化特性が向上していることも確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の結晶性アルミノシリケートは、オレフィン製造触媒、窒素酸化物還元触媒、アンモニア転化触媒などの各種の触媒及び触媒の基材として使用することができ、更には、窒素酸化物の還元方法や、アンモニア転化方法に使用することができる。
図1
図2