(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「流体」とは、気体および液体の総称である。
「当量比」とは、量論混合気における可燃性成分と空気との混合比(可燃性成分/空気)に対する、燃焼速度の実測または推算の対象となる混合気における可燃性成分と空気との混合比(可燃性成分/空気)の比である。
「量論混合気」とは、可燃性成分が完全燃焼するだけの酸素を過不足なく含む、可燃性成分と空気との混合気である。
「可燃性成分」とは、空気との混合気が燃焼範囲を有する成分である。
「燃焼範囲」とは、混合気が燃焼可能となる、可燃性成分と空気との混合比の範囲である。
「冷媒」とは、冷凍サイクルにおいて気化および液化し得る化合物である。
「ハロゲン化アルカン」とは、アルカンの水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換された化合物である。
「ハロゲン化アルケン」とは、アルケンの水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換された化合物である。
「部分フッ素化アルカン」とは、アルカンの水素原子の一部がフッ素原子に置換された化合物である。
「部分フッ素化アルケン」とは、アルケンの水素原子の一部がフッ素原子に置換された化合物である。
「エーテル性酸素原子」とは、炭素原子−炭素原子間においてエーテル結合(−O−)を形成する酸素原子である。
【0011】
<流体組成物>
本発明の流体組成物は、下記組成物(I)、または下記組成物(II)であって、後述する燃焼抑制効果が10%以上となるものである。
【0012】
(組成物(I))
組成物(I)は、下記成分(A)の1種以上と下記成分(B)の1種以上とを含む。
成分(A):アルカン(炭素原子数を2以上有する場合は、エーテル性の酸素原子を有してもよい。)、ハロゲン化アルカン(炭素原子数を2以上有する場合は、エーテル性の酸素原子を有してもよい。)およびアルケン(炭素原子数を3以上有する場合は、エーテル性の酸素原子を有してもよい。)からなる群から選ばれる成分。
成分(B):ハロゲン化アルケン(炭素原子数を3以上有する場合は、エーテル性の酸素原子を有してもよい。)からなる成分。
【0013】
成分(A)としては、冷媒、溶媒、発泡剤、洗浄剤として好ましい沸点を有するという点から、炭素原子の数が1〜6であるアルカン、炭素原子の数が1〜6であるハロゲン化アルカンおよび炭素原子数が2〜6であるアルケンからなる群から選ばれる成分が好ましい。なかでも、炭素原子の数が1〜3であるアルカン、炭素原子の数が1〜3であるハロゲン化アルカンおよび炭素数が2または3であるアルケンからなる群から選ばれる成分がより好ましく、特に、炭素原子の数が1または2であるアルカン、炭素原子の数が1または2であるハロゲン化アルカンおよび炭素数が2であるアルケンからなる群から選ばれる成分がさらに好ましい。
また、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が少ない点から、成分(A)としては、地球温暖化係数(GWP)が1000以下であるものが好ましく、アルカンおよび部分フッ素化アルカンからなる群から選ばれる成分が好ましい。このような成分(A)は可燃性である場合が多いため、成分(B)と組み合わせた際に地球温暖化係数を抑え、かつ、燃焼性を抑えることができ、本発明の効果が充分に発揮される。
【0014】
アルカンとしては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル等が挙げられる。アルカンは、1種、または2種以上を併用してもよい。
アルカンとしては、成分(B)と組み合わせた際に本発明の効果が充分に発揮される点から、メタンまたはエタンが好ましく、メタンがより好ましい。
【0015】
ハロゲン化アルカンのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、オゾン層への影響が少ない点から、フッ素原子が好ましい。
ハロゲン化アルカンとしては、ジフルオロメタン(HFC−32)、フルオロメタン(HFC−41)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1,2−トリフルオロエタン(HFC−143)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,2−ジフルオロエタン(HFC−152)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、トリフルオロメチルメチルエーテル(HFE−143a)、ペンタフルオロエチルメチルエーテル、ヘプタフルオロプロピルメチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエトキシメタン、ジクロロメタン、クロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロエタン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142b)等が挙げられる。ハロゲン化アルカンは、1種、または2種以上を併用してもよい。
【0016】
ハロゲン化アルカンとしては、成分(B)と組み合わせた際に本発明の効果が充分に発揮される点から、HFC−32、HFC−41、HFC−143a、HFC−143、HFC−152a、HFC−152、HFC−161、HFC−365mfc、HFE−143a、ペンタフルオロエチルメチルエーテル、ヘプタフルオロプロピルメチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエトキシメタン、ジクロロメタン、クロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロエタン、HCFC−141bおよびHCFC−142bからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。なかでも、、HFC−32、HFC−41、HFC−143a、HFC−143、HFC−152a、HFC−161およびHFE−143aからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0017】
アルケンとしては、公知の化合物が挙げられ、エチレン、プロピレン等があげられる。アルケンは、1種、または2種以上を併用してもよい。
【0018】
成分(B)としては、冷媒、溶媒、発泡剤、および洗浄剤として好ましい沸点を有するという点から、炭素原子の数が2〜5であるハロゲン化アルケンからなる成分が好ましい。なかでも、炭素原子の数が2または3であるハロゲン化アルケンからなる成分がより好ましい。
また、成分(B)としては、流体組成物の燃焼性が抑えられやすい点から、水素原子の数がハロゲン原子の数以下のものが好ましい。
【0019】
成分(B)としては、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が少ない点から、部分フッ素化アルケンからなる成分が好ましい。
【0020】
ハロゲン化アルケンのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、オゾン層への影響が少ない点から、フッ素原子が好ましい。
ハロゲン化アルケンとしては、テトラフルオロエチレン(PFO−1114)、1,1,2−トリフルオロエチレン(HFO−1123)、シス−1,2−ジフルオロエチレン(HFO−1132(Z))、トランス−1,2−ジフルオロエチレン(HFO−1132(E))、1,1−ジフルオロエチレン(HFO−1132a)、フッ化ビニル(HFO−1141)、テトラクロロエチレン、1,1,2―トリクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、トランス−1,2−ジクロロエチレン、1,1−ジクロロエチレン、塩化ビニル、クロロトリフルオロエチレン(CFO−1113)、1,1−ジクロロ−2,2−ジフルオロエチレン(CFO−1112a)、シス−1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエチレン(CFO−1112(Z))、トランス−1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエチレン(CFO−1112(E))、シス−1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン(HCFO−1122(Z))、トランス−1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン(HCFO−1122(E))、1−クロロ−2,2−ジフルオロエチレン、1−クロロ−1−フルオロエチレン(HCFO−1131a)、シス−1−クロロ−2−フルオロエチレン、トランス−1−クロロ−2−フルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(PFO−1216)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(Z))、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(E))、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)等が挙げられる。ハロゲン化アルケンは、1種、または2種以上を併用してもよい。
【0021】
ハロゲン化アルケンとしては、成分(A)と組み合わせた際に本発明の効果が充分に発揮される点から、PFO−1114、HFO−1123、HFO−1132(Z)、HFO−1132(E)、HFO−1132a、HFO−1141、シス−1,2−ジクロロエチレン、トランス−1,2−ジクロロエチレン、1,1−ジクロロエチレン、塩化ビニル、CFO−1113、HCFO−1131a、シス−1−クロロ−2−フルオロエチレン、トランス−1−クロロ−2−フルオロエチレン、PFO−1216、HFO−1225ye、HFO−1234yf、HFO−1234ze(Z)、HFO−1234ze(E)およびHFO−1243zfからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。なかでも、PFO−1114、HFO−1123、HFO−1132(Z)、HFO−1132(E)、HFO−1132a、CFO−1113、PFO−1216、HFO−1225ye、HFO−1234yf、HFO−1234ze(Z)、HFO−1234ze(E)およびHFO−1243zfからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0022】
成分(A)および成分(B)は、これらを組み合わせた組成物(I)の燃焼抑制効果が10%以上となるように選択する。成分(A)および成分(B)の好ましい組み合わせとしては、下記の組み合わせが挙げられる。
(I−1)HFC−32とHFO−1123との組み合わせ。
(I−2)HFC−152aとHFO−1123との組み合わせ。
(I−3)HFC−32とPFO−1114との組み合わせ。
(I−4)HFC−41とPFO−1114との組み合わせ。
(I−5)メタンとPFO−1114との組み合わせ。
(I−6)HFC−143aとPFO−1114との組み合わせ。
(I−7)HFC−152aとPFO−1114との組み合わせ。
(I−8)HFE−143aとPFO−1114との組み合わせ。
(I−9)HFC−365mfcとPFO−1114との組み合わせ。
(I−10)HFC−152aとCFO−1113との組み合わせ。
(I−11)HCFC−141bとPFO−1114との組み合わせ。
(I−12)HCFC−142bとHFO−1123との組み合わせ。
(I−13)HFC−152aとPFO−1216との組み合わせ。
(I−14)HFC−32、HFC−152aとHFO−1123との組み合わせ。
【0023】
成分(A)と成分(B)との混合比は、組成物(I)の燃焼抑制効果が10%以上となるような比とする。
たとえば、組み合わせ(I−1)の場合、HFC−32とHFO−1123との合計(100体積%)のうち、HFO−1123の割合は、燃焼抑制効果が現れる0.5〜99.5体積%の範囲のうち、焼抑制効果が10%以上となる5〜85体積%が好ましく、燃焼抑制効果が20%以上となる15〜70体積%がより好ましい。
組み合わせ(I−2)の場合、HFC−152aとHFO−1123との合計(100体積%)のうち、HFO−1123の割合は、燃焼抑制効果が現れる55〜99.5体積%の範囲のうち、焼抑制効果が10%以上となる63〜90体積%が好ましく、燃焼抑制効果が20%以上となる70〜85体積%がより好ましい。
組み合わせ(I−3)の場合、HFC−32とPFO−1114との合計(100体積%)のうち、PFO−1114の割合は、燃焼抑制効果が現れる0.5〜99.5体積%の範囲のうち、焼抑制効果が10%以上となる3〜90体積%が好ましく、燃焼抑制効果が20%以上となる7〜85体積%がより好ましい。
組み合わせ(I−4)の場合、HFC−41とPFO−1114との合計(100体積%)のうち、PFO−1114の割合は、燃焼抑制効果が現れる35〜99.5体積%の範囲のうち、焼抑制効果が10%以上となる36〜90体積%が好ましい。
組み合わせ(I−5)の場合、メタンとPFO−1114との合計(100体積%)のうち、PFO−1114の割合は、燃焼抑制効果が現れる52〜99.5体積%の範囲のうち、焼抑制効果が10%以上となる53〜78体積%が好ましい。
組み合わせ(I−6)の場合、HFC−143aとPFO−1114との合計(100体積%)のうち、PFO−1114の割合は、燃焼抑制効果が現れる0.5〜99.5体積%の範囲のうち、焼抑制効果が10%以上となる1〜90体積%が好ましい。
組み合わせ(I−7)の場合、HFC−152aとPFO−1114との合計(100体積%)のうち、PFO−1114の割合は、燃焼抑制効果が現れる36〜99.5体積%の範囲のうち、焼抑制効果が10%以上となる39〜85体積%が好ましい。
組み合わせ(I−8)の場合、HFE−143aとPFO−1114との合計(100体積%)のうち、PFO−1114の割合は、燃焼抑制効果が現れる26〜99.5体積%の範囲のうち、焼抑制効果が10%以上となる42〜90体積%が好ましい。
組み合わせ(I−9)の場合、HFC−365mfcとPFO−1114との合計(100体積%)のうち、PFO−1114の割合は、燃焼抑制効果が現れる0.5〜99.5体積%の範囲のうち、焼抑制効果が10%以上となる5〜90体積%が好ましい。
組み合わせ(I−10)の場合、HFC−152aとCFO−1113との合計(100体積%)のうち、CFO−1113の割合は、燃焼抑制効果が現れる40〜99.5体積%の範囲のうち、焼抑制効果が10%以上となる50〜85体積%が好ましい。
【0024】
(組成物(II))
組成物(II)は、成分(B)の2種以上を含む(ただし、組成物(I)を除く。)。
成分(B)としては、組成物(I)における成分(B)として記載したのと同様のものが挙げられ、その好ましい形態も同様である。
【0025】
成分(B)の2種以上は、これらを組み合わせた組成物(II)の燃焼抑制効果が10%以上となるように選択する。2種の成分(B)の好ましい組み合わせとしては、下記の組み合わせが挙げられる。
(II−1)HFO−1243zfとHFO−1123との組み合わせ。
(II−2)HFO−1141とPFO−1114との組み合わせ。
(II−3)HFO−1132aとPFO−1114との組み合わせ。
(II−4)HFO−1234yfとCFO−1113との組み合わせ。
【0026】
成分(B)の2種以上の混合比は、組成物(II)の燃焼抑制効果が10%以上となるような比とする。
たとえば、組み合わせ(II−1)の場合、HFO−1243zfとHFO−1123との合計(100体積%)のうち、HFO−1123の割合は、燃焼抑制効果が現れる25〜99.5体積%の範囲のうち、焼抑制効果が10%以上となる30〜80体積%が好ましく、燃焼抑制効果が20%以上となる40〜70体積%がより好ましい。
【0027】
(他の成分)
流体組成物は、成分(A)および成分(B)以外の他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲において含んでいてもよい。
【0028】
(ハロゲン原子/水素原子)
本発明の流体組成物においては、組成物に含まれる成分(A)および成分(B)における化合物の有する合計の水素原子の原子数に対するハロゲン原子の原子数の比(ハロゲン原子/水素原子)は、1.0以上が好ましく、1.03以上がより好ましく、1.06以上がさらに好ましい。
【0029】
(燃焼抑制効果)
流体組成物の燃焼抑制効果は、下式(1)で定義される。
【0031】
ただし、ε(%)は燃焼抑制効果であり、S
u,max,blendは各当量比における燃焼速度の実測値のうちの最大値(以下、実測最大燃焼速度とも記す。)であり、S
u,max,blend,calcは下式(2)で求められる各当量比における燃焼速度の推算値のうちの最大値(以下、推算最大燃焼速度とも記す。)である。
【0033】
ただし、S
u,blend,calc(φ)は、各当量比φにおける燃焼速度の推算値であり、nは流体組成物に含まれる可燃性成分の種類数であり、S
u,i(φ)はi番目の可燃性成分の燃焼速度の実測値であり、α
iは下式(3)で求められるi番目の可燃性成分のエネルギー分率である。
【0035】
ただし、ΔH
c,iはi番目の可燃性成分の燃焼熱であり、x
iはi番目の可燃性成分のモル分率である。
【0036】
式(2)は、混合比をエネルギー分率で置き換えたル・シャトリエ式である(参考文献1参照)。式(2)は、各可燃性成分が化学的相互作用を示さない流体組成物について精度よく燃焼速度を表現できる。同様の式は、日本国の法令においても既に適用されている(参考文献2参照)。
参考文献1:L.Sileghem et al.,Energy Fuels,26,4721(2012).
参考文献2:ガス事業法、施行規則におけるガスの最高燃焼速度の算出に用いられている。日本国の昭和45年通商産業省告示第634号「ガスの熱量及び燃焼性の測定方法を定める件」。
【0037】
式(3)における燃焼熱は、燃焼反応式における生成系の生成物の生成エンタルピーの総和と、反応系の化合物の生成エンタルピーとの差で表わされる。生成エンタルピーについては、化学便覧、国際標準(参考文献3参照)、各種ハンドブック等に記載されている。全く新規の化合物については、Bensonのグループ加成性則(参考文献4参照)や、計算化学的手法で求めることができる。ハロゲンを含む化合物の燃焼反応式の考え方は国際標準に規定されている(参考文献3、5参照)。
参考文献3:ANSI/ASHRAE Standard 34(2013),Designation and Safety Classification of Refrigerants.
参考文献4:S.Benson,Thermo chemical kinetics,2nd Ed.,Wiley Interscience,New York(1976).
参考文献5:ISO 817(2014),Refrigerant:Designation and Safety Classification.
【0038】
流体組成物の燃焼抑制効果は、10%以上であり、20%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。
燃焼速度は、着火に必要なエネルギー(最小着火エネルギー)の−1/3次に比例する。すなわち、燃焼速度が30%減少するということは、最小着火エネルギーが3倍大きくなり、それだけ着火する可能性が減少し、静電気やコンセント等の着火源の対策がより簡素化できるという意味である。
燃焼抑制効果の基準(推算最大燃焼速度よりも10%以上の低減)を定めた妥当性について、以下に示す。
・燃焼速度の絶対値は、測定方法によって多少のバラツキがあり、現在の国際標準では、基準ガスについて10%以内の誤差を許容している(参考文献1、5参照)。そのため、本発明においては、燃焼速度の測定方法を規定せず、統一的手法で測定された値の相対値を燃焼抑制効果として提案するものである。
・これまで報告されている流体組成物の燃焼速度の実測値について、式(2)の推算値と比較して10%を超えて低減するという例はない。
・燃焼熱の推算をBensonのグループ加成性則(参考文献4参照)によった場合、3%程度の誤差が生じる可能性がある。
・以上を考慮し、10%以上の最大燃焼速度の低減を以って、本発明における燃焼抑制効果とみなした。
【0039】
成分(A)の実測最大燃焼速度は、1cm/秒以上が好ましく、5cm/秒以上がより好ましく、10cm/秒以上がさらに好ましい。成分(B)の実測最大燃焼速度は、1cm/秒以上が好ましく、5cm/秒以上がより好ましい。
各成分の実測最大燃焼速度が前記範囲の下限値以上ということは、各成分の燃焼性が高いことを示す。本発明においては、燃焼性が高い成分(A)と燃焼性が高い成分(B)とを組み合わせているにもかかわらず、燃焼性が抑えられた流体組成物が得られるという予測できない効果が発揮される。
【0040】
(用途)
本発明の流体組成物は、冷媒組成物、溶媒組成物、発泡剤組成物、洗浄剤組成物等として用いられる。以下、冷媒組成物を例にとり、詳細に説明する。
【0041】
<冷媒組成物>
本発明の冷媒組成物は、本発明の流体組成物からなる。本発明の冷媒組成物は、冷媒として、下記成分(A)の1種以上と下記成分(B)の1種以上とを含む、または成分(B)の2種以上を含む。
【0042】
(他の成分)
冷媒組成物は、成分(A)および成分(B)以外の他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲において含んでいてもよい。
他の成分としては、成分(A)および成分(B)以外の他の冷媒、安定剤、漏れ検出物質等が挙げられる。他の成分の具体例としては、アルコール、アンモニア、二酸化炭素等が挙げられる。
【0043】
成分(A)および成分(B)の合計の割合は、冷媒の合計(100質量%)のうち、60〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましく、80〜100質量%がさらに好ましく、90〜100質量%が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
他の冷媒の割合は、冷媒の合計(100質量%)のうち、0〜40質量%が好ましく、0〜30質量%がより好ましく、0〜20質量%がさらに好ましく、0〜10質量%が特に好ましく、0質量%が最も好ましい。
【0044】
安定剤は、熱および酸化に対する冷媒の安定性を向上させる成分である。
安定剤としては、耐酸化性向上剤、耐熱性向上剤、金属不活性剤等が挙げられる。
安定剤の添加量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、冷媒の合計(100質量部)に対して、5質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましい。
【0045】
漏れ検出物質としては、紫外線蛍光染料、臭気ガス、臭いマスキング剤等が挙げられる。漏れ検出物質を用いる場合には、冷媒への漏れ検出物質の溶解性を向上させる可溶化剤を用いてもよい。
漏れ検出物質の添加量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、冷媒の合計(100質量部)に対して、2質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましい。
【0046】
<空気調和機>
本発明の空気調和機は、冷凍サイクル内に本発明の冷媒組成物を封入した空気調和機である。
【0047】
(冷凍サイクル)
冷凍サイクルとしては、通常、蒸気圧縮式冷凍サイクルが採用される。
蒸気圧縮式冷凍サイクルは、圧縮機と凝縮器、凝縮器と減圧機構、減圧機構と蒸発器、ならびに蒸発器と圧縮機とを、それぞれ配管で接続して構成される。
【0048】
(他の成分)
冷凍サイクル内には、冷媒組成物以外の他の成分が封入されていてもよい。他の成分としては、圧縮機用の冷凍機油、乾燥剤等が挙げられる。
【0049】
冷凍機油としては、含酸素系合成油(エステル系合成油、エーテル系合成油等)、フッ素系合成油、炭化水素系合成油、鉱物油等が挙げられる。
エステル系合成油としては、二塩基酸エステル油、ポリオールエステル油、コンプレックスエステル油、ポリオール炭酸エステル油等が挙げられる。
エーテル系合成油としては、ポリビニルエーテル油、ポリオキシアルキレン系合成油等が挙げられる。
フッ素系合成油としては、合成油の水素原子をフッ素原子に置換したもの、ペルフルオロポリエーテル油、フッ素化シリコーン油等が挙げられる。
炭化水素系合成油としては、ポリα−オレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等が挙げられる。鉱物油としては、パラフィン系鉱物油、ナフテン系鉱物油等が挙げられる。
【0050】
冷凍機油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
冷凍機油としては、冷媒組成物との相溶性の点から、ポリオールエステル油またはポリグリコール油が好ましく、安定化剤によって顕著な酸化防止効果が得られる点から、ポリアルキレングリコール油が特に好ましい。
冷凍機油の封入量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、用途、圧縮機の形式等によっても異なるが、冷媒組成物(100質量部)に対して、10〜100質量部が好ましく、20〜50質量部がより好ましい。
【0051】
乾燥剤としては、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト等が挙げられる。乾燥剤としては、乾燥剤と冷媒との化学反応性、乾燥剤の吸湿能力の点から、ゼオライト系乾燥剤が好ましい。
ゼオライト系乾燥剤の大きさは、小さすぎると冷凍サイクルの弁や配管細部への詰まりの原因となり、大きすぎると乾燥能力が低下するため、0.5〜5mmが好ましい。形状としては、粒状または円筒状が好ましい。ゼオライト系乾燥剤の封入量は、特に限定されない。
【0052】
(実施形態例)
図1は、空気調和機の一例を示す概略図である。空気調和機1は、冷媒を圧縮する圧縮機11と、冷房運転時の冷媒回路と暖房運転時の冷媒回路とを切り替える四方弁12と、冷媒の熱と室外空気の熱とを交換する室外熱交換器13と、冷媒を減圧する膨張弁14と、冷媒の熱と室内空気の熱とを交換する室内熱交換器15と、室外熱交換器13に室外空気を送風する室外送風機(図示略)と、室内熱交換器15に室内空気を送風する室内送風機(図示略)と、空気調和機1全体の動作を制御する制御部(図示略)とを備える。
【0053】
空気調和機1における冷凍サイクル10は、冷房運転の場合、四方弁12を実線側に切り替えて、圧縮機11と室外熱交換器13(凝縮器)とを四方弁12を介して第1配管21および第2配管22で接続し、室外熱交換器13(凝縮器)と膨張弁14(減圧機構)とを第3配管23で接続し、膨張弁14(減圧機構)と室内熱交換器15(蒸発器)とを第4配管24で接続し、室内熱交換器15(蒸発器)と圧縮機11とを四方弁12を介して第5配管25および第6配管26で接続して構成される。
【0054】
空気調和機1における冷凍サイクル10は、暖房運転の場合、四方弁12を破線側に切り替えて、圧縮機11と室内熱交換器15(凝縮器)とを四方弁12を介して第1配管21および第5配管25で接続し、室内熱交換器15(凝縮器)と膨張弁14(減圧機構)とを第4配管24で接続し、膨張弁14(減圧機構)と室外熱交換器13(蒸発器)とを第3配管23で接続し、室外熱交換器13(蒸発器)と圧縮機11とを四方弁12を介して第2配管22および第6配管26で接続して構成される。
【0055】
空気調和機1においては、圧縮機11、四方弁12、室外熱交換器13、膨張弁14、第1配管21、第2配管22、第3配管23、第6配管26および室外送風機(図示略)が室外ユニット2に収容されている。
空気調和機1においては、室内熱交換器15、室内送風機(図示略)および制御部(図示略)が室内ユニット3に収容されている。
第4配管24および第5配管25は、室外ユニット2と室内ユニット3とを連絡する連絡配管を構成している。
【0056】
空気調和機1の冷房運転の際には、四方弁12を実線側に切り替える。圧縮機11によって圧縮された冷媒は、高温高圧のガス冷媒となって室外熱交換器13に送られる。ガス冷媒は、室外熱交換器13(凝縮器)において室外空気と熱交換して放熱し、凝縮して高圧の液冷媒となり、膨張弁14に送られる。液冷媒は、膨張弁14(減圧機構)において減圧されて低温低圧の気液二相冷媒となり、室内熱交換器15に送られる。気液二相冷媒は、室内熱交換器15(蒸発器)において室内空気と熱交換して吸熱し、蒸発してガス冷媒となり、圧縮機11に戻される。室内熱交換器15において冷媒と熱交換した室内空気は、冷却される。
【0057】
空気調和機1の暖房運転の際には、四方弁12を破線側に切り替える。圧縮機11によって圧縮された冷媒は、高温高圧のガス冷媒となって室内熱交換器15に送られる。ガス冷媒は、室内熱交換器15(凝縮器)において室内空気と熱交換して放熱し、凝縮して高圧の液冷媒となり、膨張弁14に送られる。室内熱交換器15において冷媒と熱交換した室内空気は、加熱される。液冷媒は、膨張弁14(減圧機構)において減圧されて低温低圧の気液二相冷媒となり、室外熱交換器13に送られる。気液二相冷媒は、室外熱交換器13(蒸発器)において室外空気と熱交換して吸熱し、蒸発してガス冷媒となり、圧縮機11に戻される。
【0058】
(他の実施形態)
なお、本発明の空気調和機は、図示例の空気調和機に限定されない。
たとえば、図示例の空気調和機は、冷房運転と暖房運転とを切り替え可能なヒートポンプ式の空気調和機であるが、本発明の空気調和機は、冷房専用の空気調和機であってもよく、暖房専用の空気調和機であってもよい。
熱交換器は、冷媒−空気熱交換器に限定されず、冷媒−液体熱交換器であってもよい。
減圧機構は、膨張弁に限定されず、キャピラリーチューブ等であってもよい。
本発明の空気調和機は、家庭用空気調和機、業務用空気調和機、自動車用空気調和機のいずれであってもよい。また、室内ユニットの接続形態については、一体形、分離形、マルチ形のいずれであってもよい。また、室内ユニットの据付設置形態ついては、床置き形、壁掛け形、天吊形、天井カセット形、ビルトイン形、埋め込み形のいずれであってもよい。
【0059】
本発明の空気調和機は、燃焼性が抑えられた冷媒組成物を用いているため、室内ユニットから冷媒が漏洩した場合であっても、燃焼性の高い冷媒を用いた従来の空気調和機に比べ安全である。
よって、本発明の空気調和機は、冷媒が溜まりやすい床面近傍や密閉された狭い空間に室内ユニットを設置する用途に好適である。具体的には、本発明の空気調和機は、冷凍サイクルの一部を収容した室内ユニットが室内の床に設置される床置き形の空気調和機、自動車用空気調和機に好適である。また、本発明の空気調和機は、冷媒充填量の多い業務用空気調和機(ビル用マルチエアコン等)に好適である。
また、本発明の空気調和機は、燃焼性が抑えられた冷媒組成物を用いているため、空気調和機から冷媒を回収する回収装置についても、特に燃焼抑制機能等を設ける必要がないことから、従来公知の回収装置を用いることができる。
【0060】
(作用機序)
以上説明した本発明の空気調和機にあっては、冷凍サイクル内に封入した冷媒組成物が、燃焼性が抑えられた本発明の冷媒組成物であるため、冷媒組成物の燃焼抑制のための制限が緩和され、冷媒組成物の燃焼抑制のための対策が省略ないし簡略されたものとなる。
具体的には、本発明の空気調和機は、燃焼性の高い冷媒を用いた従来の空気調和機に比べ、冷凍サイクルに封入される冷媒の充填量を多くできる。
また、本発明の空気調和機は、燃焼性の高い冷媒を用いた従来の空気調和機では必要とされた各種対策(ガス漏れセンサを設ける、室内ユニットに換気装置を設ける、ユニットの電気機器や電気配線からのスパークを抑える等)を省略ないし簡略できる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0062】
(燃焼速度)
燃焼速度は、密閉容器を用い、密閉容器内の被測定ガスと空気との混合気の火炎をシュリーレン可視化法(シュリーレン法:ASHRAE Research PJ RP−1583,Appendix E)によって可視化し、高速ビデオカメラで直接観察、撮影することによって測定した。
【0063】
燃焼速度測定用装置を
図2に示す。燃焼速度測定用装置30は、シュリーレン光源であるキセノンランプ31、第1平面鏡32、第1凹面鏡33、円筒容器34、第2平面鏡35、第2凹面鏡36、第3平面鏡37、リングフィルタ38、および高速ビデオカメラ39を備える。
キセノンランプ31からの光は、第1平面鏡32によって第1凹面鏡33に向けて反射される。第1凹面鏡33によって反射され、平行光となった光は、平行光と同軸に配置された円筒容器34を通過し、第2平面鏡35によって第2凹面鏡36に向けて反射される。第2凹面鏡36によって反射され、収束光となった光は、第3平面鏡37によって反射され、シュリーレン像の焦点に配置したリングフィルタ38を通過して高速ビデオカメラ39によって撮影される。
【0064】
キセノンランプ31としては、ランプ本体の前方に凸レンズ40およびフィルタ41が配置されたものを用いた。
円筒容器34としては、両端の開口に透明なアクリル窓42が設けられ、中央に一対の電極43(電極間距離5×10
−3m)が挿入された、内容積3.8Lの温度調節機能および撹拌羽根付き円筒容器(内部直径155mm×長さ200mm)を用いた。
高速ビデオカメラ39としては、高速CCDビデオカメラ(毎秒1,000画像撮影)を用いた。
被測定ガスとしては、99.8%以上の純度のものを用いた。
【0065】
分圧法を用いて被測定ガスと乾燥空気とを所定の当量比になるように円筒容器34内に導入し、約10分間撹拌することによって所定の当量比の被測定ガスと空気との混合気を調製した。
円筒容器34内の温度は、円筒容器34の温度調整機能によって25.0±2.0℃の範囲に調整した。
直流高圧電源を用いて、放電時間1ms、放電エネルギー約0.5Jの条件にて一対の電極43間で放電させ、火炎を発生させた。高速ビデオカメラ39で撮影された円筒容器34内の火炎の様子を示す画像の一例を
図3に示す。
【0066】
燃焼ガスによる浮力の影響が強く表れた火炎の燃焼速度を求める際、円筒容器内部の圧力上昇が無視できる燃焼の初期段階では、燃焼速度は下式(4)で近似できる。
【0067】
【数7】
【0068】
ただし、S
uは燃焼速度であり、r
fは火炎半径であり、ρ
uは未燃焼領域の気体密度であり、ρ
bは既燃焼領域の気体密度である。
放電および電極43の影響を強く受ける燃焼初期のデータを除く、圧力上昇が1%以内の時刻のデータを用いることによって、定圧燃焼とみなして式(4)をそのまま適用し、実測したdr
f/d
t、および定圧条件の断熱平衡計算で求めたρ
bの値を用いてS
uを評価した。
【0069】
(例1)
HFC−32(モル分率:0.6391)とHFO−1123(モル分率:0.3609)との混合ガスの燃焼速度を測定した。
混合ガスは、あらかじめ1.333Pa以下まで真空引きした内容積2Lの容器に、HFC−32およびHFO−1123を充填し、各成分の質量を電子天秤で量り混合比を調整した。混合ガスは合計5回調製し、混合比の実測誤差は±0.2質量%以内であった。混合ガスのρ
uは理想気体を仮定して求め、ρ
bは断熱平衡計算によって求めた。混合ガスの燃焼速度を、種々の当量比で測定し、実測最大燃焼速度を求めた。
また、あらかじめ測定したHFC−32の燃焼速度の実測値およびHFO−1123の燃焼速度の実測値を用い、式(2)から各当量比における燃焼速度の推算値を求め、最大燃焼速度を求めた。
実測最大燃焼速度、推算最大燃焼速度および式(1)から求めた燃焼抑制効果を表1に示す。
【0070】
(例2〜16)
成分(A)、成分(B)、それらのモル分率を表1に示すように変更した以外は例1と同様にして実測最大燃焼速度、推算最大燃焼速度および燃焼抑制効果を求めた。結果を表1に示す。
【0071】
(例17)
成分(A)、成分(B)、それらのモル分率を表1に示すように変更し、かつ燃焼速度の測定に用いた空気を、酸素濃度比29.8%の空気に変更した以外は例1と同様にして実測最大燃焼速度、推算最大燃焼速度および燃焼抑制効果を求めた。結果を表1、表2に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
本発明の流体組成物うち、特に組成物(I)の燃焼抑制効果は、成分(A)と成分(B)の燃焼反応の機構が全く異なっていることに起因するものである。その反応は以下の二種類の反応によって進行する。
まず成分(B)であるハロゲン化アルケンの自己分解による発熱反応によって燃焼が進行する。この燃焼反応を抑制するためには、自己分解発熱反応を起こさない熱容量の大きな多原子分子による発熱の希釈が非常に効果的である。そこで、多原子分子である成分(A)を混合することによって、成分(A)が希釈剤として働き、成分(B)による自己分解燃焼反応が抑制される。
次に、成分(A)の燃焼が進行する。この燃焼反応は通常のラジカル連鎖反応であり、その速度は、活性化学種である水素原子、酸素原子、OHラジカルによる連鎖分岐反応によって決定される。この燃焼速度は、火炎の反応領域に存在する水素原子の濃度に比例することが知られている。水素−ハロゲンの結合エネルギーは極めて強いため、火炎の反応領域にハロゲンを導入してやれば、燃焼反応によって非常に安定なハロゲン化水素を生成し、活性種である水素が反応系から除外されるため、ラジカル連鎖反応を抑制することができる。そこで、成分(B)として水素原子数に対してハロゲン原子数を過剰に有し反応性の高いハロゲン化アルケンを混合することによって、燃焼反応系に多量のハロゲン原子を供給することができ、火炎の中の水素原子濃度を大幅に低下させることができ、成分(A)によるラジカル連鎖反応を抑制することができる。
ここで、成分(B)の自己分解発熱反応の抑制については、成分(A)のラジカル連鎖反応の燃焼性に影響されないため、成分(A)はどのような燃焼性を有する化合物であってもよい。そのため、地球温暖化への影響が少ない点から、成分(A)としては、GWPが低いものを選定することが好ましい。一方、成分(A)のラジカル連鎖反応の抑制については、理論的には流体組成物全体におけるハロゲン原子/水素原子が1.0以上となれば、流体組成物の燃焼性が抑えられるため、成分(B)はハロゲン原子を過剰に有し、混合物としてこの条件を満たすことができるものが好ましい。