(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光カチオン硬化性成分(A)は、脂肪族ジグリシジル化合物、単官能脂肪族エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物及びオキセタン化合物からなる群より選択される1種以上の第2光カチオン硬化性成分(A2)をさらに含む、請求項1に記載の光硬化性接着剤。
前記第2光カチオン硬化性成分(A2)の含有量が、前記光カチオン硬化性成分(A)及び前記ポリマー(B)の合計量100重量部中、58〜88重量部である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の光硬化性接着剤。
水分含有量が、前記光カチオン硬化性成分(A)及び前記ポリマー(B)の合計量100重量部に対して、4重量部以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光硬化性接着剤。
前記熱可塑性樹脂は、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート系樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂である、請求項10に記載の偏光板。
180度剥離試験によって測定される前記ポリビニルアルコール系偏光子と前記保護フィルムとの間の剥離強さが0.5N/25mm以上である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の偏光板。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<光硬化性接着剤>
本発明に係る光硬化性接着剤は、ポリビニルアルコール系偏光子に熱可塑性樹脂からなる保護フィルムを接着するための接着剤であり、光カチオン硬化性成分(A)と、ポリマー(B)と、光カチオン重合開始剤(C)とを含有する。
【0038】
(1)光カチオン硬化性成分(A)
光硬化性接着剤の主成分であり、重合硬化により接着力を与える光カチオン硬化性成分(A)は、芳香族エポキシ化合物である第1光カチオン硬化性成分(A1)を少なくとも含む。光カチオン硬化性成分(A)は、第1光カチオン硬化性成分(A1)に加え、これとは異なる硬化性成分である第2光カチオン硬化性成分(A2)をさらに含むことが好ましい。
【0039】
(1−1)第1光カチオン硬化性成分(A1)
第1光カチオン硬化性成分(A1)は、芳香族エポキシ化合物からなる。芳香族エポキシ化合物とは、芳香環を有するエポキシ化合物である。ただし、ここでいう芳香族エポキシ化合物には、後述するポリマー(B)におけるX及び/又はYが芳香環及びエポキシ基を有しており、分類上、芳香族エポキシ化合物に属するポリマー(B)は含まれない。第1光カチオン硬化性成分(A1)は、2種以上の芳香族エポキシ化合物からなっていてもよい。芳香族エポキシ化合物の具体例は、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール等の1価フェノール若しくはビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール誘導体、又はそれらのアルキレンオキサイド付加物のモノ又はポリグリシジルエーテル化物;エポキシノボラック樹脂;レゾルシノールやハイドロキノン、カテコール等の2個以上のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物のモノ又はポリグリシジルエーテル化物;ベンゼンジメタノールやベンゼンジエタノール、ベンゼンジブタノール等のアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のグリシジルエーテル化物;フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の2個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸芳香族化合物のグリシジルエステル;安息香酸のグリシジルエステルやトルイル酸、ナフトエ酸のグリシジルエステル等;スチレンオキサイドやアルキル化スチレンオキサイド、ビニルナフタレンのエポキシ化物等のスチレンオキサイド類又はジビニルベンゼンのジエポキシ化物等が挙げられる。
【0040】
中でも、硬化性及び接着性の観点から、第1光カチオン硬化性成分(A1)は多官能芳香族エポキシ化合物を含むことが好ましく、3官能以上の芳香族エポキシ化合物を含むことがより好ましい。
【0041】
また硬化性及び接着性の観点から、芳香族エポキシ化合物は、エポキシ当量が80〜500であることが好ましい。
【0042】
芳香族エポキシ化合物は市販品を用いることができ、例えば、“デナコールEX−145”、“デナコールEX−146”、“デナコールEX−147”、“デナコールEX−201”、“デナコールEX−711”、“デナコールEX−721”、“オンコートEX−1020”、“オンコートEX−1030”、“オンコートEX−1040”、“オンコートEX−1050”、“オンコートEX−1051”、“オンコートEX−1010”、“オンコートEX−1011”及び“オンコート1012”(以上、いずれもナガセケムテックス(株)製);“オグソールPG−100”、“オグソールEG−200”、“オグソールEG−210”及び“オグソールEG−250”(以上、いずれも大阪ガスケミカル(株)製);“HP4032”、“HP4032D”及び“HP4700”(以上、いずれもDIC(株)製);“ESN−475V”(新日鉄住金化学(株)製);“152”、“154”、“157S70”及び“YX8800”(以上、いずれも三菱化学(株)製);“アデカレジンEP−4100”、“アデカレジンEP−4100G”、“アデカレジンEP−4100E”、“アデカレジンEP−4100L”、“アデカレジンEP−4100TX”、“アデカレジンEP−4000”、“アデカレジンEP−4005”、“アデカレジンEP−4082HT”、“アデカレジンEP−4901”、“アデカレジンEP−4901E”、“アデカグリシロールED−501”、“アデカグリシロールED−509E”、“アデカグリシロールED−509S”及び“アデカグリシロールED−529”(以上、いずれも(株)ADEKA製)、“TECHMORE VG3101L”((株)プリンテック製)等が挙げられる。
【0043】
第1光カチオン硬化性成分(A1)の含有量は、光カチオン硬化性成分(A)及び後述するポリマー(B)の合計量100重量部中、10〜40重量部とされ、好ましくは12〜35重量部である。第1光カチオン硬化性成分(A1)を10重量部以上含有させることにより、ポリビニルアルコール系偏光子と保護フィルムとの間の優れた接着強度と、光硬化性接着剤の低粘度化及びこれに伴う良好な塗工性との両立を実現させることが可能となる。一方、第1光カチオン硬化性成分(A1)の量が40重量部を上回ると、上記両立が難しくなり、特に粘度が高くなる傾向にある。第1光カチオン硬化性成分(A1)の量が10重量部を下回る場合には、優れた接着強度を得ることができない。
【0044】
(1−2)第2光カチオン硬化性成分(A2)
光カチオン硬化性成分(A)は、第1光カチオン硬化性成分(A1)に加えて、これとは異なる第2光カチオン硬化性成分(A2)をさらに含むことが好ましい。第2光カチオン硬化性成分(A2)とは、脂肪族ジグリシジル化合物、単官能脂肪族エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物及びオキセタン化合物から選択される硬化性成分であり、これらのうちの2種以上の硬化性成分からなっていてもよい。なおここでいう単官能脂肪族エポキシ化合物には、後述するポリマー(B)におけるX又はYがエポキシ基を有しており、分類上、単官能脂肪族エポキシ化合物に属するポリマー(B)は含まれない。また、ここでいうオキセタン化合物には、後述するポリマー(B)におけるX又はYがオキセタニル基を有しており、分類上、オキセタン化合物に属するポリマー(B)は含まれない。
【0045】
第2光カチオン硬化性成分(A2)は、脂肪族ジグリシジル化合物を含むことが好ましく、中でも、光硬化性接着剤の低粘度化、すなわち25℃における粘度の2〜300mPa・sの範囲への調整が容易になることから、下記式(III):
【0047】
で示される化合物を含むことがより好ましい。上記式(III)においてZは、炭素数1〜9の直鎖若しくは分岐したアルキレン基、又は2価の脂環式炭化水素基を表し、該アルキレン基中のメチレン基は、酸素原子、−CO−O−、−O−CO−、−SO
2−、−SO−又は−CO−から選択される2価の基で置換されていてもよい。2価の脂環式炭化水素基の典型的な例としては、シクロペンチレン基やシクロヘキシレン基がある。
【0048】
上記式(III)においてZがアルキレン基である化合物は、アルキレングリコールのジグリシジルエーテルであり、その具体例は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,3−プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等を含む。中でも、光硬化性接着剤の低粘度化の観点からは、上記式(III)においてZがアルキレン基である化合物は、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのような、上記式(III)におけるZが炭素数3〜10の分岐したアルキレン基である化合物が好ましい。
【0049】
単官能脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族アルコールのグリシジルエーテル化物、アルキルカルボン酸のグリシジルエステル等が挙げられ、その具体例は、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、炭素数12及び13混合アルキルグリシジルエーテル、アルコールのグリシジルエーテル、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル等を含む。
【0050】
ビニルエーテル化合物としては、脂肪族又は脂環式のビニルエーテル化合物が挙げられ、その具体例は、n−アミルビニルエーテル、i−アミルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、オレイルビニルエーテル等の炭素数5〜20アルキル又はアルケニルアルコールのビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類;シクロヘキシルビニルエーテル、2−メチルシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル等の脂肪族環又は芳香族環を有するモノアルコールのビニルエーテル類;グリセロールモノビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサンモノビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンモノビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル等の多価アルコールのモノ又はポリビニルエーテル類;ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルモノビニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノ又はジビニルエーテル類;グリシジルビニルエーテル、エチレングリコールビニルエーテルメタクリレート等のその他のビニルエーテル類を含む。
【0051】
オキセタン化合物は、オキセタニル基を有する化合物であり、その具体例は、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタン等を含む。
【0052】
第2光カチオン硬化性成分(A2)の含有量は、第1光カチオン硬化性成分(A1)の含有量が上述の範囲となる限り特に制限されないが、光カチオン硬化性成分(A)及び後述するポリマー(B)の合計量100重量部中、58〜88重量部であることが好ましく、60〜85重量部であることがより好ましい。第2光カチオン硬化性成分(A2)の含有量が上記範囲内であると、25℃における粘度が2〜300mPa・sである光硬化性接着剤の調製が容易となる。一方、第2光カチオン硬化性成分(A2)の含有量が88重量部を上回ると、偏光子と保護フィルムとの間の接着強度が不十分となりやすい。
【0053】
(1−3)第3光カチオン硬化性成分(A3)
光カチオン硬化性成分(A)は、第1光カチオン硬化性成分(A1)及び第2光カチオン硬化性成分(A2)以外の他の硬化性成分である第3光カチオン硬化性成分(A3)をさらに含むことができる。第3光カチオン硬化性成分(A3)としては、(A1)及び(A2)のいずれにも属しないエポキシ化合物(例えば脂環式エポキシ化合物)、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物等が挙げられる。第3光カチオン硬化性成分(A3)の含有量は、第1光カチオン硬化性成分(A1)の含有量が上述の範囲となる限り特に制限されず、好ましくは、第2光カチオン硬化性成分(A2)を含む場合において第2光カチオン硬化性成分(A2)の含有量が上述の範囲となるような量である。
【0054】
(2)ポリマー(B)
ポリマー(B)は、下記式(I):
【0056】
で示される単量体(I)、並びに下記式(II):
【0058】
で示される単量体(II)からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位からなるポリマーである。具体的には、単量体(I)の1種を重合してなるホモポリマー、単量体(I)の2種以上を重合してなるコポリマー、単量体(II)の1種を重合してなるホモポリマー、単量体(II)の2種以上を重合してなるコポリマー、単量体(I)の1種以上と単量体(II)の1種以上と重合してなるコポリマー、及びこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。
【0059】
上記式(I)中のXは、水素原子、又は、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基及びカルボキシル基からなる群より選択される1種以上の官能基で部分的に置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキル基、炭素数1〜7のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアリールオキシ基若しくは炭素数6〜10の脂環式炭化水素基を表す。
【0060】
炭素数1〜7のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、i−ブチル基、n−アミル基、i−アミル基、tert−アミル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、i−ヘプチル基、tert−ヘプチル基等が挙げられる。中でも、接着剤層の耐久性の観点から、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0061】
炭素数1〜7のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、i−ブチルオキシ基、n−アミルオキシ基、i−アミルオキシ基、tert−アミルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−ヘキシルオキシ基、3−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、2−ヘプチルオキシ基、3−ヘプチルオキシ基、i−ヘプチルオキシ基、tert−ヘプチルオキシ基等が挙げられる。中でも、接着剤層の耐久性の観点から、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0062】
炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素数は、好ましくは6〜10である。
【0063】
炭素数6〜12のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、メチルフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。炭素数は、好ましくは6〜10である。
【0064】
炭素数6〜10の脂環式炭化水素基としては、シクロへキシル基、メチルシクロヘキシル基、ノルボルニル基、ビシクロペンチル基、ビシクロオクチル基、トリメチルビシクロヘプチル基、トリシクロオクチル基、トリシクロデカニル基、スピロオクチル基、スピロビシクロペンチル基、アダマンチル基、イソボルニル基等が挙げられる。
【0065】
上記式(I)中のXが、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基及びカルボキシル基からなる群より選択される1種以上の官能基で部分的に置換された炭素数1〜7のアルキル基、炭素数1〜7のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアリールオキシ基又は炭素数6〜10の脂環式炭化水素基であると、上記官能基が硬化反応に寄与するため、接着剤層の耐久性及び接着剤層からの低分子量成分のブリード抑制の点で有利である。中でも、上記官能基は、エポキシ基、オキセタニル基及び水酸基からなる群より選択される1種以上の官能基であることが好ましい。
【0066】
上記式(I)において、Xの一部がエポキシ基又はオキセタニル基で置換されている場合における単量体(I)としては、例えば、下記式(Ia)、(Ib)及び(Ic)で表される単量体を挙げることができる。
【0068】
(式中、R
4は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、mは1〜6の整数を表す。)
【0070】
(式中、R
5は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、nは1〜6の整数を表す。)
【0072】
(式中、R
6は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、sは1〜6の整数を表す。)。
【0073】
上記式(II)中のR
1は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表す。Yは、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基及びカルボキシル基からなる群より選択される1種以上の官能基で置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数6〜10の脂環式炭化水素基を表す。
【0074】
上記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基及び炭素数6〜10の脂環式炭化水素基の具体例は、式(I)中のXと同様である。
【0075】
式(I)中のXと同様、式(II)中のYが、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基及びカルボキシル基からなる群より選択される1種以上の官能基で部分的に置換された炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数6〜10の脂環式炭化水素基であると、上記官能基が硬化反応に寄与するため、接着剤層の耐久性及び接着剤層からの低分子量成分のブリード抑制の点で有利である。中でも、上記官能基は、エポキシ基、オキセタニル基及び水酸基からなる群より選択される1種以上の官能基であることが好ましい。
【0076】
上記式(II)において、Yの一部がエポキシ基又はオキセタニル基で置換されている場合における単量体(II)としては、例えば、下記式(IIa)、(IIb)及び(IIc)で表される単量体を挙げることができる。
【0078】
(式中、R
1は上記式(II)と同じであり、R
7は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、tは1〜6の整数を表す。)
【0080】
(式中、R
1は上記式(II)と同じであり、R
8は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、pは1〜6の整数を表す。)
【0082】
(式中、R
1は上記式(II)と同じであり、R
9は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、qは1〜6の整数を表す。)。
【0083】
ポリマー(B)は、ポリビニルアルコール系偏光子と保護フィルムとの間の接着強度と光硬化性接着剤の低粘度化との両立の観点から、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が5000〜500000であることが好ましく、6000〜100000であることがより好ましい。
【0084】
ポリマー(B)の含有量は、光カチオン硬化性成分(A)及びポリマー(B)の合計量100重量部中、2〜10重量部とされ、好ましくは2.5〜10重量部である。ポリマー(B)を2重量部以上含有させることにより、低粘度を確保しつつ、ポリビニルアルコール系偏光子と保護フィルム(とりわけ(メタ)アクリル系樹脂からなる保護フィルム)との間の接着強度を高める効果を発現できる。一方、ポリマー(B)の含有量が10重量部を上回ると、光硬化性接着剤の粘度が高くなる。2重量部未満では、特に(メタ)アクリル系樹脂からなる保護フィルムとの密着性が低くなる。本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルから選択される少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリレート」についても同様である。
【0085】
(3)光カチオン重合開始剤(C)
光硬化性接着剤は、光カチオン重合開始剤(C)を含有する。これにより、光カチオン硬化性成分(A)を活性エネルギー線の照射によるカチオン重合で硬化させて接着剤層を形成することができる。光カチオン重合開始剤(C)は、可視光線、紫外線、X線、電子線のような活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、光カチオン硬化性成分(A)の重合反応を開始させるものである。光カチオン重合開始剤(C)は光で触媒的に作用するため、光カチオン硬化性成分(A)に混合しても保存安定性や作業性に優れる。光カチオン重合開始剤(C)として使用し得る活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じる化合物として、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄−アレーン錯体等を挙げることができる。
【0086】
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレート
が挙げられる。
【0087】
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート
が挙げられる。
【0088】
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4,4’−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4−フェニルカルボニル−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
が挙げられる。
【0089】
鉄−アレーン錯体としては、例えば、
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロアンチモネート、
クメン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロホスフェート、
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイド
が挙げられる。
【0090】
光カチオン重合開始剤(C)は、1種のみを単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。上記の中でも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm付近の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する接着剤層を与えることができるため、好ましく用いられる。
【0091】
光カチオン重合開始剤(C)の含有量は、光カチオン硬化性成分(A)及びポリマー(B)の合計量100重量部に対して1〜10重量部とされ、好ましくは2〜6重量部である。光カチオン重合開始剤(C)を1重量部以上含有させることにより、光カチオン硬化性成分(A)を十分に硬化させることができ、得られる偏光板に高い機械強度と接着強度を与える。一方、その量が多くなると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、偏光板の耐久性能を低下させる可能性があるため、光カチオン重合開始剤(C)の量は、光カチオン硬化性成分(A)及びポリマー(B)の合計量100重量部に対して10重量部以下とする。
【0092】
(4)光増感剤
光硬化性接着剤は、光増感剤を含有してもよい。上記の光カチオン重合開始剤(C)は、300nm付近又はそれより短い波長域に極大吸収を示し、その付近の波長の光に感応してカチオン種又はルイス酸を発生し、光カチオン硬化性成分(A)のカチオン重合を開始させるが、それよりも長い波長の光にも感応するように、光増感剤は、380nmより長い波長域に極大吸収を示すものであることが好ましい。かかる光増感剤として、アントラセン系化合物が好適に用いられる。
【0093】
アントラセン系化合物の具体例としては、例えば、
9,10−ジメトキシアントラセン、
9,10−ジエトキシアントラセン、
9,10−ジプロポキシアントラセン、
9,10−ジイソプロポキシアントラセン、
9,10−ジブトキシアントラセン、
9,10−ジペンチルオキシアントラセン、
9,10−ジヘキシルオキシアントラセン、
9,10−ビス(2−メトキシエトキシ)アントラセン、
9,10−ビス(2−エトキシエトキシ)アントラセン、
9,10−ビス(2−ブトキシエトキシ)アントラセン、
9,10−ビス(3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、
2−メチル又は2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、
2−メチル又は2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、
2−メチル又は2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、
2−メチル又は2−エチル−9,10−ジイソプロポキシアントラセン、
2−メチル又は2−エチル−9,10−ジブトキシアントラセン、
2−メチル又は2−エチル−9,10−ジペンチルオキシアントラセン、
2−メチル又は2−エチル−9,10−ジヘキシルオキシアントラセン
が挙げられる。
【0094】
光硬化性接着剤に光増感剤を含有させることにより、それを含有しない場合に比べ、接着剤の硬化性を向上させることができる。光カチオン硬化性成分(A)及びポリマー(B)の合計量100重量部に対する光増感剤の含有量を0.1重量部以上とすることにより、このような効果を発現させることができる。一方、光増感剤の含有量が多くなると、低温保管時に析出する等の問題が生じることから、その量は、光カチオン硬化性成分(A)及びポリマー(B)の合計量100重量部に対して2重量部以下とすることが好ましい。また、偏光板のニュートラルグレーを維持する観点からは、偏光子と保護フィルムとの接着強度の向上効果が十分に得られる範囲で、光増感剤の含有量を少なくするほうが有利であり、例えば、光カチオン硬化性成分(A)及びポリマー(B)の合計量100重量部に対して、光増感剤の量を0.1〜0.5重量部、さらには0.1〜0.3重量部の範囲とすることが好ましい。
【0095】
(5)光増感助剤
光硬化性接着剤は、光増感助剤を含有してもよい。光増感剤は、好ましくはナフタレン系光増感助剤である。
【0096】
ナフタレン系光増感助剤の具体例としては、例えば、
4−メトキシ−1−ナフトール、
4−エトキシ−1−ナフトール、
4−プロポキシ−1−ナフトール、
4−ブトキシ−1−ナフトール、
4−ヘキシルオキシ−1−ナフトール、
1,4−ジメトキシナフタレン、
1−エトキシ−4−メトキシナフタレン、
1,4−ジエトキシナフタレン、
1,4−ジプロポキシナフタレン、
1,4−ジブトキシナフタレン
が挙げられる。
【0097】
光硬化性接着剤にナフタレン系光増感助剤を含有させることにより、それを含有しない場合に比べ、接着剤の硬化性を向上させることができる。光カチオン硬化性成分(A)及びポリマー(B)の合計量100重量部に対するナフタレン系光増感助剤の含有量を0.1重量部以上とすることにより、このような効果を発現させることができる。一方、ナフタレン系光増感助剤の含有量が多くなると、低温保管時に析出する等の問題を生じることから、その量は、光カチオン硬化性成分(A)及びポリマー(B)の合計量100重量部に対して5重量部以下とすることが好ましい。ナフタレン系光増感助剤の含有量は、好ましくは、光カチオン硬化性成分(A)及びポリマー(B)の合計量100重量部に対して3重量部以下である。
【0098】
(6)添加剤成分
光硬化性接着剤には、本発明の効果を損なわない限り、任意成分である他の成分として、添加剤成分を含有させることができる。添加剤成分としては、熱カチオン重合開始剤、ポリオール類、イオントラップ剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、色素、有機溶剤等を挙げることができる。
【0099】
添加剤成分を含有させる場合、その含有量は、光カチオン硬化性成分(A)及びポリマー(B)の合計量100重量部に対して1000重量部以下であることが好ましい。含有量が1000重量部以下である場合、必須成分である光カチオン硬化性成分(A)、ポリマー(B)及び光カチオン重合開始剤(C)の組み合わせによる、ポリビニルアルコール系偏光子と保護フィルムとの間の優れた接着強度と、光硬化性接着剤の低粘度化及びこれに伴う良好な塗工性との両立という効果を良好に発揮させることができる。
【0100】
(7)光硬化性接着剤の水分含有量
光硬化性接着剤は、水分を含有してもよい。水分の含有量は、光カチオン硬化性成分(A)及びポリマー(B)の合計量100重量部に対して、通常4重量部以下であり、好ましくは3重量部未満である。若干量の水分を含有することによりポリビニルアルコール系偏光子と保護フィルムとの間の接着強度が向上することがある。ただし、水分含有量があまりに多いと、光硬化性接着剤と水との分離が起こり、光硬化性接着剤を偏光子や保護フィルムの表面に均一に塗工することができなくなったり、光硬化性接着剤の硬化性が悪くなったりすることがある。光硬化性接着剤に意図的に水分を添加してもよく、この場合、特に限定されないが、蒸留水及び純水等の精製水を用いることができる。光硬化性接着剤の水分含有量は、カールフィッシャー容量法により測定される。
【0101】
(8)光硬化性接着剤の物性
本発明に係る光硬化性接着剤は、低粘度性を有することができ、具体的には25℃における粘度が2〜300mPa・sの範囲であることができる。ここでいう粘度は、溶剤を実質的に含まない状態での粘度である。粘度が2mPa・sより小さいと、貼合後の搬送中に偏光子と保護フィルムとが剥がれることがあり、粘度が300mPa・sを超えると偏光子と保護フィルムと接着剤を介して貼合する際、特に接着剤層が薄いときに、偏光子と保護フィルムとの間、すなわち接着剤層に気泡が混入しやすくなる。上記粘度は、より好ましくは5〜200mPa・sであり、さらに好ましくは10〜150mPa・sである。粘度が150mPa・s以下であると、接着剤層の厚みが例えば2.8μm以下と薄い場合であっても、接着剤層に気泡が生じるのをより効果的に抑制することができる。光硬化性接着剤の粘度は、E型粘度計を用いて測定される。
【0102】
<偏光板>
本発明に係る偏光板は、ポリビニルアルコール系偏光子と、その少なくとも一方の面に、上記光硬化性接着剤の硬化物を介して貼合される熱可塑性樹脂からなる保護フィルムとを含むものである。当該偏光板は、本発明に係る光硬化性接着剤を用いているので、偏光子と保護フィルムとの間の接着強度が高く耐久性に優れるとともに、硬化した接着剤層への気泡の混入が抑制されている。
【0103】
(1)ポリビニルアルコール系偏光子
ポリビニルアルコール系偏光子は、二色性色素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムで構成される。偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体等が例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは98〜100モル%の範囲である。ポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタール等も使用し得る。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1000〜10000、好ましくは1500〜5000の範囲である。
【0104】
偏光子は、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色して、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程を経て、製造される。
【0105】
一軸延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、二色性色素による染色と同時に行ってもよいし、二色性色素による染色の後に行ってもよい。一軸延伸を二色性色素による染色後に行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸の方法は特に制限されず、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤により膨潤した状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常4〜8倍程度である。
【0106】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬することにより、二色性色素を吸着させることができる。二色性色素としてはヨウ素又は二色性有機染料が用いられる。
【0107】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100重量部あたり0.01〜0.5重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり0.5〜10重量部程度である。この水溶液の温度は、通常20〜40℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常30〜300秒程度である。
【0108】
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は通常、水100重量部あたり1×10
-3〜1×10
-2重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を含有していてもよい。この水溶液の温度は、通常20〜80℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常30〜300秒程度である。
【0109】
染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は通常、水100重量部あたり2〜15重量部程度、好ましくは5〜12重量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり2〜20重量部程度、好ましくは5〜15重量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常100〜1200秒程度、好ましくは150〜600秒程度、さらに好ましくは200〜400秒程度である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上、好ましくは50〜85℃である。
【0110】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常2〜120秒程度である。その後に行われる乾燥処理は通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥温度は、通常40〜100℃である。また、乾燥処理の時間は、通常120〜600秒程度である。ポリビニルアルコール系偏光子の厚みは、5〜50μm程度であることができる。
【0111】
(2)保護フィルム
熱可塑性樹脂からなる保護フィルムは、延伸されていないフィルム、又は、一軸若しくは二軸延伸されたフィルムのいずれであってもよい。
【0112】
保護フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、好ましくは、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート系樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂である。
【0113】
ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、機械的性質、耐溶剤性、耐スクラッチ性、コスト等の面で、ポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましい。ポリエチレンテレフタレート系樹脂とは、繰返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂を意味し、他の共重合成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0114】
他の共重合成分としては、ジカルボン酸成分やジオール成分が挙げられる。ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、4,4’−ジカルボキシジフェニル、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、及び1,4−ジカルボキシシクロヘキサン等が挙げられる。ジオール成分としては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。これらのジカルボン酸成分やジオール成分は、必要に応じてそれぞれ2種類以上を組み合わせて用いることもできる。また、上記ジカルボン酸成分やジオール成分とともに、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸を併用することも可能である。他の共重合成分として、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を有するジカルボン酸成分及び/又はジオール成分が少量用いられてもよい。
【0115】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂をフィルム化した後、延伸処理を施したものを保護フィルムとして用いることにより、機械的性質、耐溶剤性、耐スクラッチ性、コスト等に優れるとともに、厚みが低減された偏光板を得ることができる。
【0116】
ポリカーボネート系樹脂は、炭酸とグリコール又はビスフェノールとから形成されるポリエステルである。中でも、分子鎖にジフェニルアルカンを有する芳香族ポリカーボネートは、耐熱性、耐候性及び耐酸性に優れているため、好ましく使用される。このようなポリカーボネートとして、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンのようなビスフェノール類から誘導されるポリカーボネートが例示される。
【0117】
(メタ)アクリル系樹脂は、特に限定されないが、一般にはメタクリル酸エステルを主たるモノマーとする重合体であり、これに少量の他のコモノマー成分が共重合されている共重合体であることが好ましい。この共重合体は通常、メタクリル酸メチル及びアクリル酸メチルを含む単官能単量体組成物を、ラジカル重合開始剤及び連鎖移動剤の共存下に重合して得ることができる。また、(メタ)アクリル系樹脂に第三の単官能単量体を共重合させることもできる。
【0118】
第三の単官能単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(1−ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、及び2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ブチル等のヒドロキシアルキルアクリル酸エステル類;メタクリル酸及びアクリル酸等の不飽和酸類;クロロスチレン及びブロモスチレン等のハロゲン化スチレン類;ビニルトルエン及びα−メチルスチレン等の置換スチレン類;アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;無水マレイン酸及び無水シトラコン酸等の不飽和酸無水物類;フェニルマレイミド及びシクロヘキシルマレイミド等の不飽和イミド類を挙げることができる。第三の単官能単量体は、1種のみを単独で用いてもよいし異なる複数種を併用してもよい。
【0119】
(メタ)アクリル系樹脂に多官能単量体を共重合させてもよい。多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びテトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;プロピレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、及びブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、又はこれらのハロゲン置換体の両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等の多価アルコールをアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの、並びにこれら末端水酸基にグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、フタル酸、これらのハロゲン置換体等の二塩基酸、及びこれらのアルキレンオキサイド付加物等にグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;アリール(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物が挙げられる。中でも、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、及びネオペンチルグリコールジメタクリレートが好ましく用いられる。
【0120】
(メタ)アクリル系樹脂は、さらに、共重合体が有する官能基間の反応を行い、変性されたものであってもよい。その反応としては、例えば、アクリル酸メチルのメチルエステル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱メタノール縮合反応、アクリル酸のカルボキシル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱水縮合反応等が挙げられる。
【0121】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度Tgは、80〜120℃の範囲であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂のTgを上記範囲に調整するには、通常、メタクリル酸エステル系単量体とアクリル酸エステル系単量体の重合比、それぞれのエステル基の炭素鎖長若しくはそれが有する官能基の種類、又は単量体全体に対する多官能単量体の重合比を適宜選択する方法等が採用される。
【0122】
(メタ)アクリル系樹脂は、必要に応じて公知の添加剤を含有していてもよい。公知の添加剤としては、例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤、界面活性剤等を挙げることができる。ただし、偏光子に積層される保護フィルムとして透明性が必要とされるため、これら添加剤の量は最小限にとどめておくことが好ましい。
【0123】
(メタ)アクリル系樹脂は、フィルムへの製膜性やフィルムの耐衝撃性等の観点から、衝撃性改良剤であるアクリル系ゴム粒子を含有していてもよい。ここでいうアクリル系ゴム粒子とは、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を必須成分とする粒子であり、実質的にこの弾性重合体のみからなる単層構造のものや、この弾性重合体を1つの層とする多層構造のものが挙げられる。かかる弾性重合体の例として、アルキルアクリレートを主成分とし、これに共重合可能な他のビニルモノマー及び架橋性モノマーを共重合させた架橋弾性共重合体が挙げられる。弾性重合体の主成分となるアルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート等、アルキル基の炭素数が1〜8程度のものが挙げられ、特に炭素数4以上のアルキル基を有するアクリレートが好ましく用いられる。このアルキルアクリレートに共重合可能な他のビニルモノマーとしては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を1個有する化合物を挙げることができ、より具体的には、メチルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル、スチレンのような芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物等が挙げられる。また、架橋性モノマーとしては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する架橋性の化合物を挙げることができ、より具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びブタンジオールジ(メタ)アクリレートのような多価アルコールの(メタ)アクリレート類、アリル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0124】
また、ゴム粒子を含まない(メタ)アクリル系樹脂からなるフィルムと、ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂からなるフィルムとの積層物を、保護フィルムとすることもできる。(メタ)アクリル系樹脂は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、各々商品名で、“スミペックス”(住友化学株式会社製)、“アクリペット”(三菱レイヨン株式会社製)、“デルペット”(旭化成株式会社製)、“パラペット”(株式会社クラレ製)、“アクリビュア”(株式会社日本触媒製)等が挙げられる。
【0125】
非晶性ポリオレフィン系樹脂は、シクロペンタジエンとオレフィン類とからディールス・アルダー反応によって得られるノルボルネン又はその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ジシクロペンタジエンとオレフィン類又はメタクリル酸エステル類とからディールス・アルダー反応によって得られるテトラシクロドデセン又はその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添よって得られる樹脂;ノルボルネン、テトラシクロドデセン及びそれらの誘導体類、並びに、その他の環状ポリオレフィンモノマーから選択される2種以上を用いて同様に開環メタセシス共重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ノルボルネン、テトラシクロドデセン又はそれらの誘導体に、ビニル基を有する芳香族化合物等を付加共重合させて得られる樹脂等が挙げられる。市販されている非晶性ポリオレフィン系樹脂の例を挙げると、JSR(株)の“アートン”、日本ゼオン(株)の“ZEONEX”及び“ZEONOR”、三井化学(株)の“APO”及び“アペル”等がある。
【0126】
セルロース系樹脂は、セルロースにおける水酸基の少なくとも一部が酢酸エステル化されている樹脂であり、一部が酢酸エステル化され、一部が他の酸でエステル化されている混合エステルであってもよい。セルロース系樹脂は、好ましくはセルロースエステル系樹脂であり、より好ましくはアセチルセルロース系樹脂である。アセチルセルロース系樹脂の具体例として、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等を挙げることができる。このようなアセチルセルロース系樹脂からなるフィルムの市販品としては、例えば、富士フイルム(株)製の“フジタックTD80”、“フジタックTD80UF”及び“フジタックTD80UZ”、コニカミノルタオプト(株)製の“KC8UX2M”及び“KC8UY”等が挙げられる。
【0127】
光学補償機能が付与されたセルロース系樹脂フィルムを用いることもできる。かかる光学補償フィルムとして例えば、セルロース系樹脂に位相差調整機能を有する化合物を含有させたフィルム、セルロース系樹脂の表面に位相差調整機能を有する化合物が塗布されたもの、セルロース系樹脂を一軸又は二軸に延伸して得られるフィルム等が挙げられる。市販されているセルロース系樹脂の光学補償フィルムの例を挙げると、富士フイルム(株)製の“ワイドビューフィルム WV BZ 438”及び“ワイドビューフィルム WV EA”、コニカミノルタオプト(株)社製の“KC4FR−1”及び“KC4HR−1”等がある。
【0128】
保護フィルムの厚みは、通常5〜200μm程度の範囲であり、好ましくは10〜120μm、さらに好ましくは10〜85μmである。保護フィルムの偏光子への接着面と反対側の表面には、ハードコート層、反射防止層、防眩層、光拡散層等の各種表面処理層(コーティング層)を有していてもよい。
【0129】
偏光子の少なくとも一方の面に接着される保護フィルムは、紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤を含有する保護フィルムを液晶セルの視認側に配置することで、液晶セルを紫外線による劣化から保護できる。紫外線吸収剤には、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等がある。
【0130】
(3)偏光板の製造
上述の光硬化性接着剤を用いて、偏光子の少なくとも一方の面に保護フィルムを接着することにより偏光板が得られる。具体的には、上述の光硬化性接着剤の塗布層を偏光子及び/又は保護フィルムの接着面に形成し、その塗布層を介して偏光子と保護フィルムを貼合した後、未硬化の光硬化性接着剤の塗布層を、活性エネルギー線の照射により硬化させ、保護フィルムを偏光子上に固着させる。光硬化性接着剤の塗布層の形成には、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の塗工方式が利用できる。また、偏光子と保護フィルムを両者の接着面が内側となるように連続的に供給しながら、その間に接着剤を流延させる方式を採用することもできる。
【0131】
光硬化性接着剤の塗工方式に応じて、溶剤を用いて光硬化性接着剤の粘度調整を行ってもよい。溶剤には、偏光子の光学性能を低下させることなく、光硬化性接着剤を良好に溶解するものが用いられるが、その種類に特別な限定はない。例えば、トルエンに代表される炭化水素類、酢酸エチルに代表されるエステル類等の有機溶剤が使用できる。ただし、溶剤を含有させた場合、活性エネルギー線の照射する前に、溶剤を除去する乾燥工程を設ける必要が生じるため、できるだけ溶剤を使用しないことが好ましい。
【0132】
硬化後の接着剤層の厚みは、偏光板の特性設計により、任意に設定できるが、接着剤材料費低減の観点からは小さい方が好ましい。一般的には、0.01〜20μm、好ましくは、0.1〜10μm、さらに好ましくは0.5〜5μmである。接着剤層の厚みを小さくすると接着剤層への気泡混入や、密着性及び耐久性の低下が生じやすくなるが、本発明の光硬化性接着剤によれば、これを効果的に抑制することができる。
【0133】
偏光子の片面にのみ保護フィルムを接着する場合は、例えば、偏光子の他面に、液晶セル等の他の光学部材に接着するための粘着剤層を直接設ける等の形態をとることもできる。一方、偏光子の両面に保護フィルムを接着する場合、これらの保護フィルムは同種の樹脂からなっていてもよいし、異種の樹脂からなっていてもよい。偏光子の一方の面に接着される保護フィルムは、上述した本発明に係る光硬化性接着剤を用いて接着されるが、偏光子の他方の面に接着される保護フィルムは、本発明に係る光硬化性接着剤を用いて接着されてもよいし、他の接着剤を用いて接着されてもよい。
【0134】
保護フィルムの偏光子への接着に先立って、保護フィルム及び/又は偏光子の接着面に、ケン化処理、コロナ処理、プラズマ処理、プライマ処理、アンカーコーティング処理、火炎処理等の易接着処理が施されてもよい。
【0135】
光硬化性接着剤の塗布層に活性エネルギー線を照射するために用いる光源は、紫外線、電子線、X線等を発生できるものであればよい。特に波長400nm以下に発光分布を有する、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が好適に用いられる。
【0136】
光硬化性接着剤への活性エネルギー線照射強度は特に制限されないが、光カチオン重合開始剤(C)の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜3000mW/cm
2であることが好ましい。0.1mW/cm
2未満であると、反応時間が長くなりすぎ、3000mW/cm
2を超えると、ランプから輻射される熱及び光硬化性接着剤の重合時の発熱により、光硬化性接着剤の黄変や偏光子の劣化を生じる可能性がある。
【0137】
光硬化性接着剤への光照射時間も特に制限されないが、照射強度と照射時間の積として表される積算光量が10〜5000mJ/cm
2となるように設定されることが好ましい。10mJ/cm
2未満であると、光カチオン重合開始剤(C)由来の活性種の発生が十分でなく、得られる接着剤層の硬化が不十分となる可能性があり、一方でその積算光量が5000mJ/cm
2を超えると、照射時間が非常に長くなり、生産性向上には不利なものとなる。
【0138】
偏光子の両面に保護フィルムを接着する場合、活性エネルギー線の照射はどちらの保護フィルム側から行ってもよいが、例えば、一方の保護フィルムが紫外線吸収剤を含有し、他方の保護フィルムが紫外線吸収剤を含有しない場合には、紫外線吸収剤を含有しない保護フィルム側から活性エネルギー線を照射するのが、照射される活性エネルギー線を有効に利用し、硬化速度を高めるうえで好ましい。
【0139】
光硬化性接着剤を硬化させて得られる偏光板は、180度剥離試験によって測定される偏光子と保護フィルムとの間の剥離強さが0.5N/25mm以上であることが好ましく、1N/25mm以上であることがより好ましい。剥離強さが0.5N/25mm未満であると、偏光板を裁断したときに偏光子と接着剤層との間で剥がれが生じることがある。
【0140】
偏光板製造の一実施形態を
図1を参照して説明する。
図1は、偏光板を製造する装置の好ましい一例を示す断面模式図である。ロール状に巻回された状態から連続的に繰り出される保護フィルム2,3には、接着剤塗工装置11,12によって、それぞれ片面に光硬化性接着剤が塗布される。そして、保護フィルム2,3と同様にして連続的に繰り出された偏光子1の両面にそれぞれ保護フィルム2,3が貼合ロール5a,5bによって接着剤の塗布層を介して重ね合わされ、積層体4が作製される。貼合ロール5a,5bの直径は、例えば50〜250mmである。
【0141】
次いで、積層体4に活性エネルギー線を照射し、接着剤の塗布層を硬化させることによって偏光板を製造することができる。
図1に示す例では、作製された積層体4は、ロール13の外周面に密着させながら搬送される。ロール13の外周面と相対する位置に第1活性エネルギー線照射装置14,15が設置されており、また、これより搬送方向下流側には、第2活性エネルギー線照射装置16、第3活性エネルギー線照射装置17、第4活性エネルギー線照射装置18が搬送方向に沿って順に設けられている。これにより、積層体4が有する接着剤の塗布層は、積層体4がロール13の外周面に密着しながら搬送される過程で、第1の活性エネルギー線照射装置14,15からの活性エネルギー線によって重合硬化され、さらに下流側の第2活性エネルギー線照射装置16、第3活性エネルギー線照射装置17及び第4活性エネルギー線照射装置18からの活性エネルギー線によって重合硬化される。搬送方向下流側に配置される第2以降の活性エネルギー線照射装置16,17,18は、接着剤を完全に重合硬化させるための装置であり、必要に応じて追加・省略することができる。最後に、硬化後の積層体4は、搬送用ニップロール19を通過して、偏光板として巻取ロール20に巻き取られる。
【0142】
ロール13は、外周面が鏡面仕上げされた凸曲面からなり、その表面に積層体4を密着させながら搬送し、その過程で活性エネルギー線照射装置14,15により接着剤の塗布層を重合硬化させる。接着剤を重合硬化させ、積層体4を構成する各フィルムを充分に密着させる上で、ロール13の直径は特に限定されない。ロール13は、積層体4のラインの動きに従動又は回転駆動させてもよく、あるいは固定させて表面を積層体4が滑るようにしてもよい。また、ロール13は、活性エネルギー線の照射による重合硬化時に、積層体4に生じる熱を放熱させるための冷却ロールとして作用させてもよい。その場合、冷却ロールとして作用させるロール13の表面温度は、4〜30℃に設定されることが好ましい。
【0143】
<積層光学部材及び液晶表示装置>
本発明の偏光板は、偏光板以外の光学機能を有する光学層を積層して積層光学部材とすることができる。典型的には、偏光板の保護フィルム上に接着剤や粘着剤を介して光学層を積層貼着することにより積層光学部材とされるが、その他、例えば、偏光子の一方の面に本発明に係る光硬化性接着剤を介して保護フィルムを接着し、偏光子の他方の面に接着剤や粘着剤を介して光学層を積層貼着することもできる。後者の場合、偏光子と光学層を貼着するための接着剤として、本発明に係る光硬化性接着剤を用いれば、その光学層は、同時に保護フィルムともなり得る。偏光板に2以上の光学層が積層されてもよい。
【0144】
偏光板に積層される光学層としては、液晶セルの背面側に配置される偏光板に対して、その偏光板における液晶セルとは反対側に積層される、反射層、半透過反射層、光拡散層、集光板、輝度向上フィルム等が挙げられる。また、液晶セルの前面側に配置される偏光板及び/又は液晶セルの背面側に配置される偏光板に対して、その偏光板における液晶セル側に積層される位相差板等が挙げられる。
【0145】
反射層、半透過反射層、光拡散層はそれぞれ、反射型偏光板、半透過反射型偏光板、拡散型偏光板である積層光学部材とするために設けられる。反射型偏光板は、視認側からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置に用いられ、バックライト等の光源を省略できるため、液晶表示装置を薄型化しやすい。また半透過型偏光板は、明所では反射型として、暗所ではバックライトからの光で表示するタイプの液晶表示装置に用いられる。反射型偏光板は、例えば、偏光子上の保護フィルムにアルミニウム等の金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成することにより作製できる。半透過型偏光板は、上記の反射層をハーフミラーとしたり、パール顔料等を含有させて光透過性を示す反射板を偏光板に接着したりすることで作製できる。一方、拡散型偏光板は、例えば、偏光板上の保護フィルムにマット処理を施す方法、微粒子含有の樹脂を塗布する方法、微粒子含有のフィルムを接着する方法等、種々の方法を用いて表面に微細凹凸構造を形成することによって作製できる。
【0146】
さらに、積層光学部材は、反射拡散両用の偏光板であることもできる。反射拡散両用の偏光板は、例えば、拡散型偏光板の微細凹凸構造面にその凹凸構造を反映した反射層を設けることにより作製できる。微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラツキを防止し、明暗のムラを抑制し得る等の利点を有する。また、微粒子を含有した樹脂層やフィルムは、入射光及びその反射光を拡散させるため、明暗ムラを抑制し得る等の利点も有する。表面微細凹凸構造を反映させた反射層は、例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングのような蒸着やメッキ等の方法により、金属を微細凹凸構造の表面に直接付設することで形成できる。表面微細凹凸構造を形成するために配合する微粒子は、例えば、平均粒径が0.1〜30μmであるシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモンのような無機系微粒子、架橋又は非架橋のポリマーのような有機系微粒子等であることができる。
【0147】
集光板は、光路制御等を目的に用いられるもので、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、あるいはドット付設シート等として形成することができる。
【0148】
輝度向上フィルムは、液晶表示装置における輝度の向上を目的に用いられるもので、その具体例は、屈折率の異方性が互いに異なる薄膜フィルムを複数枚積層して反射率に異方性が生じるように設計された反射型偏光分離シート、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持した円偏光分離シートを含む。
【0149】
位相差板は、液晶セルによる位相差の補償等を目的として使用される。その具体例は、各種プラスチックの延伸フィルム等からなる複屈折性フィルム、ディスコティック液晶やネマチック液晶が配向固定されたフィルム、フィルム基材上に上記の液晶層が形成されたものを含む。フィルム基材上に液晶層を形成する場合、フィルム基材として、トリアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂フィルムが好ましく用いられる。
【0150】
複屈折性フィルムを形成するプラスチックとしては、例えば、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリプロピレンのような鎖状ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリアミド等が挙げられる。延伸フィルムは、一軸や二軸等の適宜な方式で処理したものであることができる。位相差板は、広帯域化等、光学特性の制御を目的として、2枚以上を組み合わせて使用してもよい。
【0151】
液晶表示装置に適用したときに有効に光学補償を行えることから、積層光学部材としては、偏光板以外の光学層として位相差板を含むものが好ましく用いられる。位相差板の位相差値(面内及び厚み方向)は、適用される液晶セルに応じて調整される。
【0152】
積層光学部材は、偏光板と、上述した各種の光学層から使用目的に応じて選択される1層又は2層以上とを組み合わせ、2層又は3層以上の積層体とすることができる。その場合、積層光学部材を形成する各種光学層は、接着剤や粘着剤(感圧接着剤とも呼ばれる)を用いて偏光板と一体化されるが、そのために用いる接着剤や粘着剤は、接着剤層や粘着剤層が良好に形成されるものであれば特に限定はない。接着作業の簡便性や光学歪の発生防止等の観点から、粘着剤を使用することが好ましい。粘着剤には、(メタ)アクリル系重合体や、シリコーン系重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル等をベースポリマーとするものを用いることができる。中でも、(メタ)アクリル系粘着剤のように、光学的な透明性に優れ、適度な濡れ性や凝集力を保持し、基材との接着性にも優れ、さらには耐候性や耐熱性等を有し、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれ等の問題を生じないものを選択して用いることが好ましい。(メタ)アクリル系粘着剤においては、メチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の官能基含有(メタ)アクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、さらに好ましくは0℃以下となるように配合した、重量平均分子量が10万以上の(メタ)アクリル系共重合体が、ベースポリマーとして有用である。
【0153】
偏光板への粘着剤層の形成は、例えば、トルエンや酢酸エチル等の有機溶媒に粘着剤組成物を溶解又は分散させて10〜40重量%の溶液を調製し、これを偏光板上に直接塗工する方式や、予め剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、それを偏光板上に移着する方式等により行うことができる。粘着剤層の厚みは、その接着力等に応じて決定されるが、1〜50μm程度の範囲が適当である。
【0154】
粘着剤層には必要に応じて、ガラス繊維やガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤、顔料や着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が配合されていてもよい。紫外線吸収剤には、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等がある。
【0155】
本発明に係る液晶表示装置は、液晶セルと、その少なくとも一方の面上に配置される本発明の積層光学部材とを含むものであり、積層光学部材の代わりに本発明の偏光板を含むものであってもよい。偏光板や積層光学部材は、粘着剤層を介して液晶セルの片側又は両側に積層することができる。本発明に係る偏光板及び積層光学部材はそれぞれ、液晶セルに貼合するための粘着剤層がそれらの外面に積層された粘着剤層付の偏光板及び積層光学部材であってもよい。用いる液晶セルは任意であり、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、スーパーツイステッドネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のもの等、種々の液晶セルを使用して液晶表示装置を形成することができる。
【実施例】
【0156】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。以下、使用量ないし含有量を表す部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。また、以下の例で用いた光カチオン硬化性成分(A)、ポリマー(B)及び光カチオン重合開始剤(C)は次のとおりである。
【0157】
〔光カチオン硬化性成分(A)〕
第1光カチオン硬化性成分(A1):
a1−I: (株)ADEKA製のビスフェノールA型エポキシ樹脂“アデカレジンEP−4100L”、
a1−II: (株)ADEKA製のビスフェノールA型多官能エポキシ樹脂“アデカレジンEP−5100R”、
a1−III: (株)プリンテック製の芳香族3官能エポキシ樹脂“TECHMORE VG3101”、
a1−IV: 日本化薬(株)製のフェノールノボラック型エポキシ樹脂“EPPN−201”、
a1−V: 三菱化学(株)製の特殊ノボラック型エポキシ樹脂“157S20”、
a1−VI: フェニルグリシジルエーテル。
【0158】
第2光カチオン硬化性成分(A2):
a2−I: ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル〔上記式(III)において、Z=−CH
2C(CH
3)
2CH
2−の化合物〕、
a2−II: 1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル〔上記式(III)において、Z=−CH
2CH
2CH
2CH
2−の化合物〕、
a2−III: 3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、
a2−IV: 2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、
a2−V: 4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、
a2−VI: トリエチレングリコールジビニルエーテル。
【0159】
第3光カチオン硬化性成分(A3):
a3−I: (株)ダイセル製の脂環式エポキシ樹脂“セロキサイド2021P”、
a3−II: リモネンジオキシド。
【0160】
〔ポリマー(B)〕
b−I: グリシジルメタクリレート(GMA)25部及びメチルメタクリレート(MMA)75部からなる単量体組成物をラジカル重合させて得られた重量平均分子量8000のポリマー(GMA−MMA共重合体)、
b−II: グリシジルメタクリレートをラジカル重合させて得られた重量平均分子量8000のポリマー(GMA単重合体)、
b−III: グリシジルメタクリレート25部及びメチルメタクリレート75部からなる単量体組成物をラジカル重合させて得られた重量平均分子量60000のポリマー(GMA−MMA共重合体)、
b−IV: グリシジルメタクリレート50部及びメチルメタクリレート50部からなる単量体組成物をラジカル重合させて得られた重量平均分子量200000のポリマー(GMA−MMA共重合体)。
【0161】
〔光カチオン重合開始剤(C)〕
ジフェニル(フェニルチオ)フェニルスルフォニウムヘキサフロロフォスフェート。
【0162】
〔光増感剤、光増感助剤〕
d−I: 1,4−ジエトキシナフタレン、
d−II: 9,10−ジブトキシアントラセン。
【0163】
<実施例1〜27、比較例1〜9>
(1)光硬化性接着剤の調製
表1に示される各成分を混合した後、脱泡して、実施例1〜27及び比較例1〜9の光硬化性接着剤(液状)を調製した。表1における各成分の配合量の単位は「部」である。なお、光カチオン重合開始剤(C)は、実際には50%プロピレンカーボネート溶液として配合したが、表1にはその固形分量に基づく配合量を示している。
【0164】
【表1】
【0165】
(2)光硬化性接着剤の25℃における粘度測定
上で調製したそれぞれの光硬化性接着剤(接着剤液)について、東機産業(株)製のE型粘度計“TVE−25L”を用いて、温度25℃における粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0166】
(3)光硬化性接着剤の25℃における水分測定
上で調製したそれぞれの光硬化性接着剤(接着剤液)について、平沼産業(株)製の水分計“AQV−2100ST”を用いて、温度25℃における水分を測定した。結果を表2に示す。
【0167】
(4)偏光板の作製
紫外線吸収剤を含む厚み80μmの(メタ)アクリル系樹脂(PMMA)〔商品名“テクノロイS001”、住友化学(株)製〕からなる保護フィルム、及びノルボルネン系樹脂からなる厚み50μmの位相差フィルム〔商品名“ZEONOR”、日本ゼオン(株)製〕の片面にコロナ処理を施し、これらのコロナ処理面に、上記(1)で調製したそれぞれの接着剤液を接着剤塗工装置を用いてそれぞれ塗工した。この際、接着剤塗工装置におけるフィルムのライン速度を25m/分とし、グラビアロールをフィルムの搬送方向と逆方向に回転させた。接着剤層の厚みは、硬化後の厚みで2.8μmとした。
【0168】
次に、厚み25μmのポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光子の一方の面に、上記(メタ)アクリル系樹脂からなる保護フィルムを、他方の面に上記ノルボルネン系樹脂からなる位相差フィルムを、それらの接着剤層を介して貼合した。貼合には、直径250mmの一対のニップロール〔貼合ロール(クロムメッキのメタルロール/ゴムロール)〕を用い、押し付け圧は1.5MPaとした。
【0169】
得られた積層体を、長手方向に600N/mの張力を掛けながらライン速度25m/分で搬送し、総積算光量(波長280〜320nmの波長領域における光照射強度の積算量)が約200mJ/cm
2(測定器:FusionUV社製UV Power PuckIIによる測定値)となるように紫外線(UVB)を照射することにより接着剤層を硬化させて偏光板を得た。
【0170】
(5)接着剤層における気泡の確認
得られた偏光板を長さ300mm×幅200mmの大きさに裁断し、その表面から顕微鏡(測定器:キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−500)にて、倍率100倍で観察し、硬化後の接着剤層における50μm以上の気泡の有無を確認した。
【0171】
<評価基準>
A:気泡が確認されなかった、
B:気泡が確認された。
【0172】
(6)偏光板の180度剥離試験
上記(4)で作製した偏光板を長さ200mm×幅25mmの大きさに裁断した後、(メタ)アクリル系樹脂からなる保護フィルム側にアクリル系粘着剤層を設けて、当該保護フィルムと偏光子との間の剥離強さを測定するための試験片とした。これとは別に、位相差フィルム側にアクリル系粘着剤層を設けて、位相差フィルムと偏光子との間の剥離強さを測定するための試験片とした。
【0173】
それぞれの試験片をその粘着剤層を用いてガラス板に貼り、偏光子と粘着剤層側の保護フィルム((メタ)アクリル系樹脂からなる保護フィルム又はノルボルネン系位相差フィルム)との間にカッターの刃を入れ、長さ方向に端から30mm剥がして、その剥がした部分を試験機のつかみ部でつかんだ。この状態の試験片について、温度23℃及び相対湿度55%の雰囲気中にて、JIS K 6854−2:1999「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第2部:180度はく離」に準じて、つかみ移動速度300mm/分で180度剥離試験を行い、つかみ部の30mmを除く170mmの長さにわたる平均剥離力を求めた。なお、測定時は、偏光板を作製してから24時間後である。結果を表2に示す。なお、表2において、「PMMA/PVA剥離強さ」は、上記した(メタ)アクリル系樹脂からなる保護フィルムと偏光子との間の剥離強さを表し、「COP/PVA剥離強さ」は、ノルボルネン系位相差フィルムと偏光子との間の剥離強さを表す。また表2において「基材破壊」とは、剥離強さが大きく、剥離試験中に偏光子及び保護フィルム(又は位相差フィルム)の少なくともいずれか一方が裂けたことを意味する。
【0174】
(7)硬化接着剤層のTg及び引張弾性率の測定
上記(1)で調製したそれぞれの光硬化性接着剤を、未処理PET(東洋紡株製“ソフトシャイン”)フィルムにバーコーター#20で塗布した後、ベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製の“Dバルブ”)を用いて積算光量が3000mJ/cm
2(UVB)となるように紫外線を照射した。24時間後にフィルムから硬化した接着剤層を取り出し、(株)日立ハイテクサイエンス製の粘弾性測定装置“DMA7100”を用いて、ガラス転移温度Tg及び引張弾性率(80℃)を測定した。結果を表2に示す。なお、比較例9の接着剤は、上記条件では硬化しなかった。
【0175】
【表2】