(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記パターン露光工程で照射する上記電離放射線又は非電離放射線における上記反射防止膜の消衰係数が0.3以上である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
<パターン形成方法>
本実施形態のパターン形成方法は、基板上に形成された反射防止膜上に化学増幅型レジスト材料を使用してレジスト材料膜を形成する膜形成工程と、上記レジスト材料膜に、電離放射線又は400nm以下の波長を有する非電離放射線(以下、「第一の放射線」ともいう。)を照射するパターン露光工程と、上記パターン露光工程後の上記レジスト材料膜に、上記パターン露光における非電離放射線より長く、かつ200nmを超える波長を有する非電離放射線(以下、「第二の放射線」ともいう。)を照射する一括露光工程と、上記一括露光工程後の上記レジスト材料膜を加熱するベーク工程と、上記ベーク工程後の上記レジスト材料膜を現像液に接触させる現像工程とを主に備える。
【0013】
すなわち、本実施形態のパターン形成方法は、
図1の工程図に示す工程を備える。
工程S1:加工対象の基板を準備する工程
工程S2:下層膜及びレジスト材料膜を形成する工程(膜形成工程)
工程S3:パターン露光により、露光部に酸を発生させる工程(パターン露光工程)
工程S4:一括露光により、パターン露光部のみに酸を増殖させる工程(一括露光工程)
工程S5:露光後ベークにより、パターン露光部に酸触媒による極性変化反応を生じさせる工程(ベーク工程)
工程S6:現像処理によってレジストパターンを形成する工程(現像工程)
工程S7:エッチングによってパターンを転写する工程
【0014】
また、本実施形態のパターン形成方法では、上記一括露光工程で照射する上記非電離放射線における上記反射防止膜の消衰係数が0.1以上である。
【0015】
(工程S1)
以下の工程において加工対象となる基板(被加工基板)は、シリコン基板、二酸化シリコン基板、ガラス基板、及びITO基板等の半導体ウエハから構成されたものであってもよく、上記半導体ウエハ上に絶縁膜層が形成されたものであってもよい。
【0016】
(工程S2:膜形成工程)
本工程では、上記基板上に形成された反射防止膜上にレジスト材料膜を形成する。反射防止膜を形成することにより、パターン露光工程S3において放射線が基板等で反射することによる定在波の発生を抑制することができる。このような反射防止膜としては、公知の反射防止膜を用いることができる。
【0017】
上記反射防止膜としては、有機膜が好ましい。上記有機膜を構成する化合物としては、例えば後述する(1)ベース成分において高分子化合物として例示した樹脂、アセナフチレン樹脂等が挙げられる。これらの中で、フェノール樹脂及びアセナフチレン樹脂が好ましい。ここで「アセナフチレン樹脂」とは、アセナフチレン骨格を含む化合物に由来する構造単位を有する樹脂をいう。
【0018】
また、上記膜形成工程前に、上記基板とレジスト材料膜との間にレジスト密着性改善のための下層膜、レジスト形状改善のための下層膜等の下層膜をさらに形成してもよい。レジスト密着性改善のための膜を形成することにより、基板とレジスト材料膜との間の密着性を向上させることができる。レジスト形状改善のための膜を形成することにより、現像後のレジスト形状をさらに向上させることができる。すなわち、レジストのすそ引き形状又はくびれ形状を低減できる。一方、一括露光工程における第二の放射線の定在波の発生によるレジスト形状の劣化を防ぐために、下層膜の厚さは一括露光工程における第二の放射線の反射も抑えられるように設計することが望ましい。
【0019】
また、上記下層膜は一括露光の放射線を吸収しないことが望ましい。下層膜が一括露光における第二の放射線を吸収する場合、下層膜からのエネルギー移動又は電子移動によりレジスト材料膜内で放射線増感反応が生じ、パターン未露光部で酸が発生するおそれがある。そのため、レジスト材料膜と下層膜との間に放射線増感反応を伝搬しないバッファ層を形成し、放射線を吸収した下層膜からの増感を防ぐことが好ましい。上記バッファ層としては、例えば上記第二の放射線を吸収しない透明膜が挙げられる。
【0020】
上記透明膜における上記第二の放射線の消衰係数の上限としては、0.1が好ましく、0.08がより好ましく、0.06がさらに好ましい。上記消衰係数が上記上限を超えると、透明膜がバッファ層として十分に機能し難くなるおそれがある。ここで「消衰係数」とは、高速分光エリプソメーター(例えばジェー・エー・ウーラム社の「M−2000」)を用いて、上記第二の放射線の波長を有する非電離放射線について測定される値である。
【0021】
さらに、上記膜形成工程前に、上記反射防止膜とレジスト材料膜との間にケイ素含有膜をさらに形成するとよい。このケイ素含有膜としては、多層レジストプロセスに用いられるSOG膜(Spin on glass)膜等が挙げられる。このSOG膜形成用組成物としては、公知のものを使用することができる。
【0022】
上記レジスト材料膜は下記レジスト材料を使用して形成される。レジスト材料膜の形成方法としては、例えば液状のレジスト材料をスピンコート等により塗布する方法、フィルム状(固体状)のレジスト材料を貼り付ける方法等が挙げられる。液状のレジスト材料を塗布する場合には、塗布後に加熱(プリベーク)してレジスト材料中の溶媒を揮発させてもよい。レジスト材料膜の形成条件は、レジスト材料の性状及び得られるレジスト材料膜の厚さ等に応じて適宜選択される。レジスト材料膜の平均厚さとしては、1nm以上5,000nm以下が好ましく、10nm以上1,000nm以下がより好ましく、30nm以上200nm以下がさらに好ましい。
【0023】
上記レジスト材料膜の上に保護膜をさらに形成してもよい。保護膜を形成することによりパターン露光工程S3で生成する感放射線性増感体、酸、及びこれらの反応中間体の失活を抑え、プロセス安定性を向上させることができる。上記保護膜は、一括露光工程における未露光部での酸発生反応を防ぐために、上記(a)若しくは(c)成分(感放射線性酸発生剤)、又は(d)若しくは(f)で示される基(感放射線性酸発生基)が直接吸収する非電離放射線の波長の少なくとも一部を吸収する吸収膜であってもよい。上記吸収膜を用いることで、EUV露光時に発生する紫外線領域の放射線であるアウトオブバンド光(OOB光)のレジスト材料膜への進入を抑制し、パターン未露光部における感放射線性酸発生剤又は感放射線性酸発生基の分解を防ぐこともできる。さらに、上記吸収膜が直接レジスト材料膜上に形成される場合は、パターン未露光部における放射線増感反応によるレジスト材料膜中の酸発生を抑えるために、一括露光工程における第二の放射線の波長で保護膜からの放射線増感反応を誘発しないものがよい。また、レジスト材料膜内の感放射線性増感体が保護膜からのエネルギー移動又は電子移動等により増感しないように、レジスト材料膜と保護膜の間にバッファ層を配置し、放射線を吸収した吸収膜からの増感を防いでもよい。パターン露光工程S3後、一括露光工程S4前に上記吸収膜をレジスト材料膜上に形成することにより、一括露光工程S4における第二の放射線の照射によって、パターン露光工程S3後の上記レジスト材料膜に残存する上記感放射線性酸発生剤又は感放射線性酸発生基から直接酸が発生するのをさらに抑制させることができる。
【0024】
[化学増幅型レジスト材料]
本実施形態に係る化学増幅型レジスト材料はポジ型レジスト材料又はネガ型レジスト材料のいずれであってもよく、後述するベース成分及び現像液等を選択することにより適宜選択される。露光により、パターン露光部が溶け出しパターン未露光部(遮光部)が残るレジスト材料のことをポジ型レジスト材料といい、反対に未露光部が溶け出し、露光部(遮光部)が残るレジスト材料のことをネガ型レジスト材料という。
【0025】
本実施形態に係る化学増幅型レジスト材料(以下、場合により単に「レジスト材料」という。)は、(1)ベース成分と、(2)露光により感放射線性増感体及び酸を発生する成分とを含む。
【0026】
(1)ベース成分
本実施形態において、上記(1)ベース成分は有機化合物であってもよく、無機化合物であってもよい。この有機化合物は高分子化合物であってもよく、低分子化合物であってもよい。また、上記高分子化合物は、酸の作用により現像液への溶解性が変化する重合体であってもよい。このような重合体はレジスト材料のベース成分として広く用いられている。さらに、(1)ベース成分は、パターン露光における第一の放射線を過度に吸収せず、十分垂直性が高い形状のレジストパターンの形成を実現できるものであることが望ましい。また、(1)ベース成分では、一括露光における第二の放射線の吸収が低く、一括露光時に未露光部で不要な増感反応の誘発が起こりにくいものであることが望ましい。また、(1)ベース成分は、後述する(d)酸−感放射線性増感体発生基、(e)感放射線性増感体前駆体基及び(f)感放射線性酸発生基を有する(1’)ベース成分であってもよい。
【0027】
上記高分子化合物の重量平均分子量としては、1,000以上200,000以下が好ましく、2,000以上50,000以下がより好ましく、2,000以上20,000以下がさらに好ましい。また、上記高分子化合物は一括露光後のベーク工程(
図1参照)中の酸触媒反応により、現像工程においてパターン露光部が現像液に可溶又は不溶となるものである。
【0028】
上記高分子化合物としては、例えば極性基(例えば酸性官能基)を有する高分子化合物、上記極性基が酸不安定基で保護された高分子化合物等が挙げられる。極性基を有する高分子化合物はアルカリ現像液に可溶であるが、ベーク工程で後述する架橋剤と酸の作用により反応することにより、アルカリ現像液に不溶となる。この場合、現像工程ではパターン未露光部のレジスト材料膜はアルカリ現像液により除去可能となる。従って、上記高分子化合物を用いて形成されたレジスト材料膜をアルカリ現像液にて現像する場合、上記レジスト材料はネガ型レジスト材料として働く。
【0029】
一方、上記極性基が酸不安定基で保護された高分子化合物は有機現像液に可溶であるが、アルカリ現像液には不溶又は難溶である。上記極性基が酸不安定基で保護された高分子化合物は、ベーク工程で酸の作用により上記酸不安定基が外れ(脱保護)、極性が付与され、アルカリ現像液に可溶かつ有機現像液に不溶となる。この場合、パターン未露光部のレジスト材料膜は有機現像液により除去可能となり、パターン露光部はアルカリ現像液により除去可能となる。従って、上記高分子化合物を用いて形成されたレジスト材料膜を有機現像液にて現像する場合、レジスト材料はネガ型レジスト材料として働く。一方、上記高分子化合物を用いて形成されたレジスト材料膜をアルカリ現像液にて現像する場合、レジスト材料はポジ型レジスト材料として働く。
【0030】
高分子化合物としては、例えばフェノール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂、スチレン系樹脂、エステル樹脂等が挙げられる。高分子化合物としては、フェノール樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びスチレン系樹脂が好ましく、(メタ)アクリル樹脂がより好ましい。
【0031】
(メタ)アクリル樹脂は、下記式(VII)及び(VIII)で表される構造単位の少なくとも一方を含む高分子化合物であることが好ましい。
【0032】
【化1】
式(VII)及び(VIII)中、R
11は水素原子;フッ素原子;メチル基;トリフルオロメチル基;ヒドロキシル基、エーテル結合、エステル結合若しくはラクトン環を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基;フェニレン基;又はナフチレン基を示す。R
12はメチレン基、フェニレン基、ナフチレン基、又は−C(=0)−0−R
12’−で表される2価の基を示す。R
12’はヒドロキシル基、エーテル結合、エステル結合及びラクトン環のいずれかを有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基;フェニレン基;又はナフチレン基を示す。R
13及びR
14はそれぞれ独立して、水素原子;ヒドロキシル基;シアノ基;カルボニル基;カルボキシル基;炭素数1〜35のアルキル基;並びにエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環及び脱水された2つのカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有する保護基(酸不安定基)を示す。
【0033】
フェノール樹脂としては、下記式(XXV)で表される構造単位を含む高分子化合物が好ましい。
【0034】
【化2】
式(XXV)中、R
15は水素原子;ヒドロキシル基;シアノ基;カルボニル基;カルボキシル基;炭素数1〜35のアルキル基;並びにエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環及び脱水された2つのカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有する保護基(酸不安定基)を示す。
【0035】
R
16は水素原子及び炭素数1〜35のアルキル基等を示す。R
16としてはメチル基が好ましく、メタ位に結合していることがより好ましい。
【0036】
スチレン系樹脂としては、ヒドロキシスチレン樹脂が好ましく、下記式(XXVI)で表される構造単位を含む高分子化合物がより好ましい。
【0038】
式(XXVI)中、R
17は水素原子;ヒドロキシル基;シアノ基;カルボニル基;カルボキシル基;炭素数1〜35のアルキル基;並びにエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環及び脱水された2つのカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有する保護基(酸不安定基)を示す。
【0039】
R
13、R
14、R
15、及びR
17における上記保護基としては、例えば下記に示される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。下記式において、*はR
13、R
14、R
15、及びR
17が酸素と結合する部分である。
【0043】
上記構造単位は一分子中に単独で含まれていてもよく、複数を組み合わせて含まれていてもよい。
【0044】
上記低分子化合物の分子量としては、300以上3,000以下が好ましく、500以上2,000以下がより好ましい。また、上記低分子化合物は、一括露光後のベーク工程(
図1参照)中の酸触媒反応により、現像工程においてパターン露光部が現像液に可溶又は不溶となるものである。
【0045】
低分子化合物としては、例えばトルクセン誘導体等の星形分子、カリックスアレーン誘導体、ノリア(Noria)、デンドリマー等が挙げられる。
【0046】
無機化合物としては、例えば酸化コバルト、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、錯体等の有機金属化合物が挙げられる。上記金属酸化物は粒子状であってもよく、ナノオーダーの粒子径を有するナノパーティクルであってもよい。また、上記金属酸化物の粒子はカルボン酸等で配位されていてもよい。(1)ベース成分として無機化合物を用いた場合の溶解性変化の一例を以下に示す。例えば(1)ベース成分としてカルボン酸が配位した金属酸化物のナノパーティクルを用いた場合、露光により発生した酸のアニオンがカルボン酸アニオンに代わって金属酸化物に配位する。これにより、金属酸化物の粒子同士の相互作用が増すことで(1)ベース成分がゲル化し、現像工程において未露光部のみを溶解させる場合における露光部の溶解を抑止できる。
【0047】
(2)露光により感放射線性増感体と酸を発生する成分
上記成分は、露光(放射線照射)により感放射線性増感体と酸を発生する成分である。上記成分は、(a)感放射線性酸−増感体発生剤、(b)感放射線性増感体発生剤、及び(c)感放射線性酸発生剤の3つの成分のうち、(a)成分、(a)〜(c)成分中の任意の2つの成分、又は(a)〜(c)成分の全てを含有する。すなわち、レジスト材料中で、上記(2)成分は上記(1)ベース成分とブレンドされている。
【0048】
(a)感放射線性酸−増感体発生剤
(a)感放射線性酸−増感体発生剤は、第一の放射線の照射によって、酸と、第二の放射線を吸収する感放射線性増感体とを発生し、かつ上記パターン露光工程で第一の放射線が照射されない未露光部では、第二の放射線の照射により上記酸及び感放射線性増感体が実質的に発生しない。(a)感放射線性酸−増感体発生剤は、上記性質を有するので、一括露光工程における第二の放射線の照射による上記酸及び感放射線性増感体の発生を抑制することができる。
【0049】
また、(a)感放射線性酸−増感体発生剤に第二の放射線を照射することで酸及び感放射線性増感体が発生した場合に、パターン露光における露光部と未露光部との間における酸及び感放射線性増感体の濃度の差をパターン形成可能な程度の大きさに維持できる程度に第二の放射線照射による酸及び感放射線性増感体の発生量を少なくできる第二の放射線の波長の下限としては、300nmが好ましく、320nmがより好ましく、350nmがさらに好ましい。(a)感放射線性酸−増感体発生剤が第二の放射線の照射により酸及び感放射線性増感体を発生する場合における第二の放射線の波長を上記下限以上とすることで、第一の放射線が照射されるパターン露光部では、発生した感放射線性増感体の増感作用により第二の放射線照射時に酸が発生し、反対に第一の放射線が照射されないパターン未露光部では第二の放射線照射時における酸の発生が抑制される。その結果、パターン露光部とパターン未露光部との間における感度及びコントラストを向上できる。
【0050】
(a)感放射線性酸−増感体発生剤としては、オニウム塩化合物、ジアゾメタン化合物、及びスルホンイミド化合物等が挙げられる。また、オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩化合物、テトラヒドロチオフェニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物等が挙げられる。(a)感放射線性酸−増感体発生剤としては、還元電位が高い点から、スルホニウム塩化合物及びヨードニウム塩化合物が好ましく、ヨードニウム塩化合物がより好ましい。
【0051】
スルホニウム塩化合物はスルホニウムカチオンと酸のアニオンからなるものである。スルホニウム塩化合物としては、下記式(I)〜(III)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0052】
【化7】
上記式(I)〜(III)中、R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。上記式(I)〜(III)中、ヒドロキシル基の水素原子は、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。ヒドロキシル基の水素原子が置換されているときスルホニウム塩化合物はケタール化合物基又はアセタール化合物基を含むことになる。式(I)〜(III)中、R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3、及びR
4のうち任意の2つ以上の基は、単結合若しくは二重結合により、又は−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
e−、−CR
e2−、−NH−若しくは−NR
e−を含む結合を介して、互いに結合して環構造を形成していてもよい。R
eは、フェニル基;フェノキシ基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、好ましくはフェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。式(I)〜(III)中、X
−は酸、好ましくは強酸、より好ましくは超強酸のアニオンを示す。
【0053】
上記式(I)〜(III)において、−C(−OH)R
1R
2、−C(−OH)R
1’R
2’、及び−C(−OH)R
1’’R
2’’等で表される基としては、例えば下記式で表される基が挙げられる。なお、式中の*は、上記式(I)〜(III)中の硫黄イオンとの結合部分を示す。−C(−OH)R
1R
2、−C(−OH)R
1’R
2’、及び−C(−OH)R
1’’R
2’’で表される基において、ヒドロキシル基とこのヒドロキシル基が結合する炭素原子は、パターン露光によりカルボニル基となる。このようにして、上記式(I)〜(III)で表される化合物では、−C(−OH)R
1R
2、−C(−OH)R
1’R
2’、及び−C(−OH)R
1’’R
2’’で表される基がパターン露光後に分離して感放射線性増感体を発生する。
【0064】
ヨードニウム塩化合物はヨードニウムカチオンと酸のアニオンからなるものである。ヨードニウム塩化合物としては、下記式(IV)〜(V)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0065】
【化18】
上記式(IV)〜(V)中、R
5、R
6、R
5’、R
6’、及びR
7は、それぞれ独立して、水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。上記式(IV)〜(V)中、ヒドロキシル基の水素原子は、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。ヒドロキシル基の水素原子が置換されているときヨードニウム塩化合物はケタール化合物基又はアセタール化合物基を含むことになる。式(IV)〜(V)中、R
5、R
6、R
5’、R
6’、及びR
7のうち任意の2つ以上の基は、単結合若しくは二重結合により、又は−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
f−、−CR
f2−、−NH−若しくは−NR
f−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
fは、フェニル基;フェノキシ基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
5、R
6、R
5’、R
6’、及びR
7は、それぞれ独立して、好ましくはフェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。式(IV)〜(V)中、Y
−は酸、好ましくは強酸、より好ましくは超強酸のアニオンを示す。
【0066】
上記式(IV)〜(V)において、−C(−OH)R
5R
6及び−C(−OH)R
5’R
6’で表される基としては、例えば上記式(I)〜(III)において例示した−C(−OH)R
1R
2、−C(−OH)R
1’R
2’、−C(−OH)R
1’’R
2’’等で表される基と同様の基が挙げられる。
【0067】
上記スルホニウム塩化合物及びヨードニウム塩化合物の酸のアニオンとしては、例えばスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン等が挙げられ、下記一般式(XX)、(XXI)及び(XXII)で表される酸のアニオンが好ましく、下記一般式(XX)で表される酸のアニオンがより好ましい。
【0069】
上記一般式(XX)、(XXI)及び(XXII)において、R
18〜R
21は、それぞれ独立して有機基を示す。上記有機基としては、例えばアルキル基、アリール基、これらの複数が連結された基等が挙げられる。有機基は、1位がフッ素原子若しくはフロロアルキル基で置換されたアルキル基、及びフッ素原子若しくはフロロアルキル基で置換されたフェニル基が好ましい。有機基がフッ素原子又はフロロアルキル基を有することにより、露光によって発生する酸の酸性度が上がり、感度が向上する傾向がある。ただし、有機基は末端に置換基としてフッ素原子を含有しないことが好ましい。
【0070】
酸のアニオンとしては、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、及びトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンからなる群より選択される少なくとも一種のアニオン基を有するものが好ましい。酸のアニオンとしては、例えば一般式「R
22−SO
3−」(R
22は、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又はアルケニル基を示す。)で表されるアニオンが挙げられる。上記R
22としての直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基の炭素数としては、1以上10以下が好ましい。例えばR
22がアルキル基の場合、酸のアニオンとしては、例えばメタンスルホネート、n−プロパンスルホネート、n−ブタンスルホネート、n−オクタンスルホネート、1−アダマンタンスルホネート、2−ノルボルナンスルホネート、d−カンファー−10−スルホネート等のアルキルスルホネートが挙げられる。上記R
22としてのハロゲン化アルキル基は、アルキル基中の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されたものであり、このアルキル基の炭素数としては、1以上10以下が好ましく、なかでも直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、及びイソペンチル基がさらに好ましい。そして、水素原子が置換されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基において、アルキル基(ハロゲン化前のアルキル基)の水素原子の全個数の50%以上100%以下がハロゲン原子で置換されていることが好ましく、水素原子の全てがハロゲン原子で置換されていることがより好ましい。ここで、このハロゲン化アルキル基としては、フッ素化アルキル基が好ましい。フッ素化アルキル基における炭素数としては、1以上10以下が好ましく、1以上8以下がより好ましく、1以上4以下が最も好ましい。また、このフッ素化アルキル基のフッ素化率としては、10%以上100%以下が好ましく、50%以上100%以下がより好ましく、特に水素原子を全てフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるため好ましい。このような好ましいフッ素化アルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、へプタフルオロ−n−プロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基等が挙げられる。
【0071】
R
22は置換基を有していてもよい。上記置換基は酸素原子を含む2価の連結基を含む。上記連結基としては、例えば酸素原子(エーテル結合:−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−C(=O)−NH−)、カルボニル基(−C(=O)−)、スルホニル基(−SO
2−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)等の非炭化水素系の酸素原子含有連結基が挙げられる。
【0072】
酸のアニオンとしては、例えば下記式で表されるアニオンが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0075】
(b)感放射線性増感体発生剤
(b)感放射線性増感体発生剤は、第一の放射線の照射によって、第二の放射線を吸収する感放射線性増感体を発生し、かつ上記パターン露光工程で第一の放射線が照射されない未露光部では、第二の放射線の照射により上記感放射線性増感体が実質的に発生しない成分であり、上記(a)感放射線性酸−増感体発生剤とは異なるものである。本実施形態に係るパターン形成方法では、パターン露光工程で、(b)感放射線性増感体発生剤の化学構造が直接的又は間接的な反応により変換し、一括露光工程で酸発生を補助する感放射線性増感体を生成する。吸収される非電離放射線の波長のピークがパターン露光工程前後でシフトすることにより、感放射線性増感体が発生した露光部と未露光部との間で、一括露光工程における第二の放射線の吸収のコントラストが得られやすくなる。さらに、上記吸収波長のピークシフトが大きい場合、一括露光工程における第二の放射線の吸収のコントラストがより大きくなる。
【0076】
また、(b)感放射線性増感体発生剤に第二の放射線を照射することで感放射線性増感体が発生した場合に、パターン露光における露光部と未露光部との間における感放射線性増感体の濃度の差をパターン形成可能な程度の大きさに維持できる程度に第二の放射線照射による感放射線性増感体の発生量を少なくできる第二の放射線の波長の下限としては、300nmが好ましく、320nmがより好ましく、350nmがさらに好ましい。(b)感放射線性増感体発生剤が第二の放射線の照射により感放射線性増感体を発生する場合における第二の放射線の波長を上記下限以上とすることで、第一の放射線が照射されるパターン露光部では、発生した感放射線性増感体の増感作用により第二の放射線照射時に酸が発生し、反対に第一の放射線が照射されないパターン未露光部では第二の放射線照射時における酸の発生が抑制される。その結果、パターン露光部とパターン未露光部との間における感度及びコントラストを向上できる。
【0077】
(b)感放射線性増感体発生剤としては、パターン露光工程における第一の放射線の照射によって、パターン露光工程における非電離放射線より長く、かつ200nmを超える非電離放射線、すなわち一括露光工程における第二の放射線を吸収するカルボニル基を有する化合物(カルボニル化合物)となるものが好ましい。カルボニル化合物としては、例えばアルデヒド、ケトン、カルボン酸、カルボン酸エステル等が挙げられる。上記反応により、パターン露光部の(b)感放射線性増感体発生剤でのみ放射線の吸収波長のピークのシフトが起こる。従って、パターン露光後に、パターン露光部だけが吸収できる波長の放射線で一括露光を行えば、パターン露光部だけを選択的に増感できる。(b)感放射線性増感体発生剤としては下記式(VI)で表されるアルコール化合物がより好ましく、第2級アルコール化合物であってもよい。なお、本明細書において、アルコール化合物とは、アルコール性水酸基を有している化合物のみを指すものではなく、アルコール性水酸基の水素原子が置換されたケタール化合物及びアセタール化合物並びにオルトエステル化合物等であってもよい。(b)感放射線性増感体発生剤がケタール化合物又はアセタール化合物である場合、パターン露光で発生した酸触媒によるカルボニル化合物への加水分解反応を加速するために、パターン露光後一括露光前に加熱してもよい。
【0078】
【化22】
式(VI)中、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ独立して、水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基;炭素数1〜5のアルキルチオ基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜5のアルコキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜5のアルキルチオ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。アルコール化合物は、式(VI)中のアルコール性水酸基(ヒドロキシル基)がチオール基となったチオール化合物であってもよい。上記式(VI)中、ヒドロキシル基又はチオール基の水素原子は、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。式中、R
8、R
9及びR
10のうち任意の2つ以上の基は、単結合若しくは二重結合により、又は−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
g−、−CR
g2−、−NH−若しくは−NR
g−を含む結合を介して環構造を形成してもよい。R
gは、フェニル基;フェノキシ基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
8、R
9及びR
10は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子;フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。
【0079】
なお、式(VI)中のヒドロキシル基の水素原子が置換されたケタール化合物又はアセタール化合物としては、下記式(XXXVI)で表される化合物が好ましい。すなわち、(b)感放射線性増感体発生剤は下記式(XXXVI)で表される化合物であってもよい。R
9又はR
10のいずれか一方が水素原子である場合、下記式(XXXVI)で表される化合物はアセタール化合物であるということができる。
【0080】
【化23】
式(XXXVI)中、R
9及びR
10は上記式(VI)中のR
9及びR
10とそれぞれ同義である。R
9及びR
10は、上記式(VI)中のR
9及びR
10と同様に環構造を形成していてもよい。式(XXXVI)中、R
23及びR
24は、それぞれ独立して、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
23及びR
24は、単結合、二重結合、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、NHC(=O)NH−、−CHR
g−、−CR
g2、−NH−又は−NR
g−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
gは上記式(VI)中のR
gと同義である。ケタール化合物又はアセタール化合物は、式(XXXVI)中のR
23及び/又はR
24と結合する酸素原子が硫黄に置き換えられたチオケタール化合物又はチオアセタール化合物であってもよい。
【0081】
ケタール化合物及びアセタール化合物は、カルボニル化合物をアルコールと反応させることで得ることができる。上記反応は、放射線増感作用に寄与するカルボニル基を保護する反応ということができ、上記式(XXXVI)におけるR
23及びR
24はカルボニル基の保護基ということができる。また、この場合、放射線等により(b)感放射線性増感体発生剤が感放射線性増感体となる反応を脱保護反応ということができる。保護基の反応性(脱保護反応の起こりやすさ)の例を下記に示す。保護基の反応性は右に行くほど高く、左に行くほど低い。例えばメトキシ基をカルボニル基の保護基として使用すると、脱保護反応の反応性は高く、常温でも酸触媒下で脱保護反応が進む傾向がある。このように常温で脱保護反応が進むことで、像のにじみを防ぐことができるというメリットがある。一方、パターン露光の時点で、パターン未露光部において脱保護反応が起こり感放射線性増感体が生成すると、レジストのコントラストが劣化するおそれがある。パターン未露光部における感放射線性増感体の生成を防ぐために、脱保護反応の活性化エネルギーを上げる(保護基の反応性を下げる)ように保護基を選択することもできる。保護基の反応性を下げる観点からは、式(XXXVI)中のR
23及びR
24が互いに結合して環構造を形成した環状の保護基がより好ましい。また、上記環構造としては6員環及び5員環が挙げられ、5員環が好ましい。反応性が低い保護基を用いる場合は、レジスト材料は後述する第一の捕捉剤を含むことが好ましく、かつパターン露光後一括露光前にレジスト材料膜をベークすることが望ましい。ベークを行うことにより、パターン未露光部の不要な酸が捕捉剤によって中和され、潜像のコントラストを向上させることができる。また、上記ベークにより保護基の反応性の低下を補うことができると共に、ベークによる物質の拡散によりレジスト材料膜中の酸の潜像のラフネスを低減できる。
【0083】
ケタールタイプの(b)感放射線性酸発生剤は、下記式(XXVII)〜(XXX)で表される化合物であってもよい。
【0085】
式(XXVII)〜(XXX)中、R
23及びR
24は、式(XXXVI)中のR
23及びR
24とそれぞれ同義である。式(XXVII)〜(XXX)中、芳香環の水素原子は炭素数1〜5のアルコキシ基又は炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよく、芳香環は別の芳香環と結合してナフタレン環又はアントラセン環を形成していてもよい。R
25は炭素数1〜5のアルキル基を示す。(b)感放射線性増感体発生剤として上記式(XXVII)〜(XXX)で表される化合物を用いた場合、(b)感放射線性増感体発生剤から感放射線性増感体となったときの放射線の吸収波長のシフトがより大きく、パターン露光部でのより選択的な増感反応を起こすことができる。
【0086】
なお、式(VI)中のヒドロキシル基の水素原子が置換されたオルトエステル化合物としては、下記式(XLVI)で表される化合物が好ましい。すなわち、(b)感放射線性増感体発生剤は下記式(XLVI)で表される化合物であってもよい。
【0087】
【化26】
式(XLVI)中、R
9は上記式(VI)中のR
9と同義である。式(XLVI)中、R
38〜R
40は、それぞれ独立して、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素(好ましくはアルキル基基);又は炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
38〜R
40は、単結合、二重結合、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
g−、−CR
g2、−NH−又は−NR
g−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
gは上記式(VI)中のR
gと同義である。
【0088】
オルトエステル化合物は、パターン露光において脱保護反応で分解し、例えばカルボニル基を含むカルボン酸エステル又はカルボン酸になる。オルトエステル化合物としては、カルボキシル基を有する感放射線性増感体のカルボキシル基の部分をOBO(例えば4−メチル2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン−1−イル)で置換(保護)した、下記式(XLVII)で表されるOBOエステル化合物が好ましい。OBOでカルボキシル基を保護した(b)感放射線性増感体発生剤は、パターン露光時に発生する酸触媒によってカルボン酸を生成し、放射線の吸収波長がシフトし、一括露光時に感放射線性増感体として働く。(b)感放射線性増感体発生剤からカルボン酸が生成することで、パターン露光部で、例えば非極性から極性へとレジストの極性が変わる。このため、オルトエステル化合物は現像工程における溶解促進剤としても機能し、レジストコントラストの向上にも寄与する。(b)感放射線性増感体発生剤がOBOエステル化合物を含むことにより、感放射線性増感体の生成と極性変化反応を同時に起こすことも可能である。
【0089】
【化27】
式(XLVII)中、R
41及びR
42は、それぞれ独立して、水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。R
41及びR
42は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子;フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。
【0090】
(b)感放射線性増感体発生剤としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。これらの化合物はアルコール性水酸基の水素原子が置換されていないアルコール化合物であり、パターン露光時の反応によりケトン化合物に変わる。
【0099】
次の化合物は、感放射線性増感体のカルボニル基を保護した、ケタール化合物又はアセタール化合物の例である。これらの化合物は、パターン露光で生成する酸による触媒作用によりパターン露光部においてケトンを含む感放射線性増感体になるものである。
【0106】
次の化合物は、3個のアルコキシ基で置換された炭素原子を有するオルトエステル化合物の例である。
【0108】
上記オルトエステル化合物は、パターン露光時に発生する酸触媒によって脱保護し、カルボニル基を有するエステル(以下の例ではカルボン酸メチル)を生成する。
【0110】
次の化学式は、カルボキシル基を有する感放射線性増感体のカルボキシル基部分をOBO(例えば4−メチル−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン−1−イル)で保護した誘導体であるOBOエステル化合物の例である。
【0112】
上記OBOエステル化合物は、パターン露光時に発生する酸触媒によって以下のようなカルボン酸を生成する。
【0114】
露光により上記(2)成分(すなわち、上記(a)感放射線性酸−増感体発生剤及び(b)感放射線性増感体発生剤)から発生する感放射線性増感体は、一括露光工程における第二の放射線を吸収して、感放射線性酸発生剤(PAG)を分解できるものでなければならない。例えば感放射線性増感体からPAGへの電子移動によるPAGの分解から酸を発生し増感する場合、感放射線性増感体が上記電子移動が起こる条件を満たすことが望ましい。つまり、一括露光の放射線の波長で、電子移動を起こすために、感放射線性増感体の酸化電位が十分低く、PAGの還元電位が十分高いことが望ましい。その結果、放射線増感の電子移動反応の自由エネルギーがマイナスになり、反応が起こりやすくなる。感放射線性増感体からPAGへの三重項増感反応を用いる場合は、一括露光工程における第二の放射線の波長で、感放射線性増感体が一重項励起状態に励起でき、かつ、感放射線性増感体の三重項励起状態のエネルギー準位が、PAGの三重項励起状態のエネルギー順位より高いことが望ましい。露光により上記(2)成分(すなわち、上記(a)感放射線性酸−増感体発生剤及び(b)感放射線性増感体発生剤)から発生する感放射線性増感体としては、例えばカルコン及びその誘導体、1,2−ジケトン及びその誘導体、ベンゾイン及びその誘導体、ベンゾフェノン及びその誘導体、フルオレン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、キサンテン及びその誘導体、チオキサンテン及びその誘導体、キサントン及びその誘導体、チオキサントン及びその誘導体、シアニン及びその誘導体、メロシアニン及びその誘導体、ナフタロシアニン及びその誘導体、サブフタロシアニン及びその誘導体、ピリリウム及びその誘導体、チオピリリウム及びその誘導体、テトラフィリン及びその誘導体、アヌレン及びその誘導体、スピロピラン及びその誘導体、スピロオキサジン及びその誘導体、チオスピロピラン及びその誘導体、オキソール及びその誘導体、アジン及びその誘導体、チアジン及びその誘導体、オキサジン及びその誘導体、インドリン及びその誘導体、アズレン及びその誘導体、アズレニウム及びその誘導体、スクアリリウム及びその誘導体、ポルフィリン及びその誘導体、ポルフィラジン及びその誘導体、トリアリールメタン及びその誘導体、フタロシアニン及びその誘導体、アクリドン及びその誘導体、クマリン及びその誘導体、ケトクマリン及びその誘導体、キノリノン及びその誘導体、ベンゾオキサゾール及びその誘導体、アクリジン及びその誘導体、チアジン及びその誘導体、ベンゾチアゾール及びその誘導体、フェノチアジン及びその誘導体、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ナフタレン及びその誘導体、アントラセン及びその誘導体、フェナントレン及びその誘導体、ピレン及びその誘導体、ナフタセン及びその誘導体、ペンタセン及びその誘導体、並びにコロネン及びその誘導体等が挙げられる。また、露光により上記(2)成分から発生する上記感放射線性増感体はカルボニル化合物を含有することが好ましい。カルボニル化合物は、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステル、アミド、エノン、カルボン酸塩化物、及びカルボン酸無水物等をカルボニル基として含むことが好ましい。上記カルボニル化合物としては、一括露光時の放射線の波長をパターン露光時の放射線の波長から十分に離してレジストのコントラストを上げる観点から、250nm以上の長波長側の放射線を吸収する化合物が好ましい。カルボニル化合物としては、例えばベンゾフェノン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、アクリドン誘導体等が挙げられる。また、上記カルボニル化合物は、ナフタレン誘導体又はアントラセン誘導体であってもよく、アクリドン誘導体であってもよい。感放射線性増感体において、芳香環の水素は電子供与基で置換されていることが好ましい。感放射線性増感体の芳香環の水素が電子供与基で置換されていることで、一括露光時の増感反応による電子移動効率が向上し、レジストの感度が向上する傾向がある。また、(b)感放射線性増感体発生剤の放射線の吸収波長と感放射線性増感体の放射線の吸収波長との差を大きくすることができ、一括露光時により選択的に感放射線性増感体を励起できるため、レジスト材料中の酸の潜像のコントラストが向上する傾向がある。電子供与基としては、例えば水酸基、メトキシ基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキル基等が挙げられる。
【0115】
ベンゾフェノン及びその誘導体としては、例えば下記の化合物が挙げられる。
【0120】
チオキサントン及びその誘導体としては、例えば下記の化合物が挙げられる。
【0122】
キサントン及びその誘導体としては、例えば下記の化合物が挙げられる。
【0124】
アクリドン及びその誘導体としては、例えば下記の化合物が挙げられる。
【0126】
クマリン及びその誘導体としては、例えば下記の化合物が挙げられる。
【0128】
上記感放射線性増感体は下記の化合物を含んでいてもよい。
【0130】
上記感放射線性増感体としては、例えばアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、1,2−ヒドロオキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、α−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−イソプロピルフェニル)プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−ドデシルフェニル)プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパノン、ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン、2−エトキシカルボニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はそのテトラメチルエステル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジシクロへキシルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジヒドロキシエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンジル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、フェナントラキノン、フルオレノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン−2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン−1−(O−アセチルオキシム)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−3−シクロペンチルプロパノン−1−(O−アセチルオキシム)、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−3−シクロペンチルプロパン−1,2−ジオン−2−(O−ベンゾイルオキシム)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0131】
以下に、感放射線性増感体とこの感放射線性増感体を発生する(b)感放射線性増感体発生剤の例を挙げ、(b)感放射線性増感体発生剤に対する感放射線性増感体の非電離放射線(波長:365nm)吸収割合をそれぞれ示す。吸収割合は、(b)感放射線性増感体発生剤の非電離放射線吸収量を分母に、感放射線性増感体の非電離放射線吸収量を分子として算出している。(b)感放射線性増感体発生剤と感放射線性増感体の非電離放射線吸収量を比較すると、(b)感放射線性増感体発生剤から感放射線性増感体に構造変換することで、非電離放射線の吸収量が10倍以上となっていることがわかる。
【表1】
【0132】
(c)感放射線性酸発生剤
(c)感放射線性酸発生剤は、第一の放射線の照射によって、酸を発生し、かつ上記パターン露光工程で第一の放射線が照射されない未露光部では、第二の放射線の照射により上記酸が実質的に発生しない成分であり、上記(a)感放射線性酸−増感体発生剤とは異なるものである。(c)感放射線性酸発生剤は上記性質を有するので、一括露光時に放射線増感反応によりレジスト材料膜のパターン露光部だけで酸を発生させることができる。
【0133】
また、(c)感放射線性酸発生剤に第二の放射線を照射することで酸が発生した場合に、パターン露光における露光部と未露光部との間における酸の濃度の差をパターン形成可能な程度の大きさに維持できる程度に第二の放射線照射による酸の発生量を少なくできる第二の放射線の波長の下限としては、300nmが好ましく、320nmがより好ましく、350nmがさらに好ましい。(c)感放射線性酸発生剤が第二の放射線の照射により酸を発生する場合における第二の放射線の波長を上記下限以上とすることで、第一の放射線が照射されるパターン露光部では、発生した感放射線性増感体の増感作用により第二の放射線照射時に酸が発生し、反対に第一の放射線が照射されないパターン未露光部では第二の放射線照射時における酸の発生が抑制される。その結果、パターン露光部とパターン未露光部との間における感度及びコントラストを向上できる。
【0134】
(c)感放射線性酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、ジアゾメタン化合物、スルホンイミド化合物等が挙げられる。また、オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩化合物、テトラヒドロチオフェニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物等が挙げられる。上記(c)感放射線性酸発生剤は電子移動に対する還元電位が十分高く、一括露光で励起した感放射線性増感体から電子を受け取って分解し、酸を発生することができる。また、感放射線性増感体の三重項励起状態のエネルギー順位が(c)感放射線性酸発生剤の三重項励起状態のエネルギー順位より高い場合、感放射線性増感体から(c)感放射線性酸発生剤への三重項増感反応が起こりやすくなる。(c)感放射線性酸発生剤としては、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、及びオキシム−O−スルホネート型感放射線性酸発生剤が好ましく、スルホニウム塩化合物及びヨードニウム塩化合物がより好ましい。
【0135】
スルホニウム塩化合物としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロへキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロへキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロへキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロへキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]へプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0136】
テトラヒドロチオフェニウム塩化合物としては、例えば1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]へプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]へプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]へプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0137】
ヨードニウム塩化合物としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]へプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]へプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0138】
スルホンイミド化合物としては、例えばN−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]へプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等が挙げられる。
【0139】
ジアゾメタン化合物としては、例えばビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニウム)ジアゾメタン、ビス(シクロペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロへキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−イソプロピルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−tert−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(ナフチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(アントラセニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0140】
(1’)ベース成分
(1’)ベース成分は、酸の作用により現像液に可溶又は不溶となる成分である。すなわち、一括露光工程後のベーク工程(
図1参照)中の酸触媒反応により、現像工程においてパターン露光部が現像液に可溶又は不溶となるものである。この(1’)ベース成分は有機化合物であってもよく、無機化合物であってもよい。また、有機化合物は高分子化合物であってもよく、低分子化合物であってもよい。さらに、上記高分子化合物は重合体であってもよい。(1’)ベース成分における有機化合物及び無機化合物としては、上記(1)ベース成分におけるものと同様の化合物が挙げられる。
【0141】
また、(1’)ベース成分は、(d)酸−感放射線性増感体発生基、(e)感放射線性増感体発生基、及び(f)感放射線性酸発生基の3つの基のうち、下記(d)で示される基、下記(d)〜(f)中の任意の2つの基、又は(d)〜(f)で示される基の全てを有する。すなわち、上記(1’)ベース成分は下記(d)〜(f)で示される基を有する有機化合物又は無機化合物である。(1’)ベース成分は下記(d)〜(f)で示される基を1分子(又は1粒子)中に有していてもよく、複数の分子(又は粒子)中にそれぞれ有していてもよい。
【0142】
すなわち、(1’)ベース成分は、上記(1)ベース成分と同様に酸の作用により現像液に可溶又は不溶である成分であって、かつ上記(2)成分と同様にパターン露光工程における第一の放射線の照射により酸と感放射線性増感体とを発生するものである。
【0143】
(1’)ベース成分が高分子化合物である場合の重量平均分子量としては、3,000以上200,000以下が好ましく、5,000以上30,000以下がより好ましい。また、(1’)ベース成分が低分子化合物である場合の分子量としては、500以上3,000以下が好ましく、1,000以上3,000以下がより好ましい。以下、高分子化合物を例に挙げて(1’)ベース成分について詳細に説明する。
【0144】
上記(1’)ベース成分における上記高分子化合物としては、例えば上記(1)ベース成分における高分子化合物の上記式(VII)におけるR
11〜R
13、上記式(VIII)におけるR
11若しくはR
14、上記式(XXV)におけるR
15若しくはR
16、上記式(XXVI)におけるR
17で示される基(保護基)又はその一部として上記(d)〜(f)で示される基を有するものが挙げられる。
【0145】
(d)酸−感放射線性増感体発生基
(d)酸−感放射線性増感体発生基は、第一の放射線の照射によって、酸と、第二の放射線を吸収する感放射線性増感体とを発生し、かつ上記パターン露光工程で第一の放射線が照射されない未露光部では、第二の放射線の照射により上記酸及び感放射線性増感体が実質的に発生しない基である。上記(d)酸−感放射線性増感体発生基は、上記性質を有するので、一括露光工程における第二の放射線の照射による上記酸及び上記感放射線性増感体の発生を抑制することができる。
【0146】
また、(d)酸−感放射線性増感体発生基に第二の放射線を照射することで酸及び感放射線性増感体が発生した場合に、パターン露光における露光部と未露光部との間における酸及び感放射線性増感体の濃度の差をパターン形成可能な程度の大きさに維持できる程度に第二の放射線照射による酸及び感放射線性増感体の発生量を少なくできる第二の放射線の波長の下限としては、300nmが好ましく、320nmがより好ましく、350nmがさらに好ましい。(d)酸−感放射線性増感体発生基が第二の放射線の照射により酸及び感放射線性増感体を発生する場合における第二の放射線の波長を上記下限以上とすることで、第一の放射線が照射されるパターン露光部では、発生した感放射線性増感体の増感作用により第二の放射線照射時に酸が発生し、反対に第一の放射線が照射されないパターン未露光部では第二の放射線照射時における酸の発生が抑制される。その結果、パターン露光部とパターン未露光部との間における感度及びコントラストを向上できる。
【0147】
(d)酸−感放射線性増感体発生基としては、オニウム塩化合物基、ジアゾメタン化合物基、スルホンイミド化合物基等が挙げられる。また、オニウム塩化合物基としては、例えばスルホニウム塩化合物基、ヨードニウム塩化合物基、テトラヒドロチオフェニウム塩化合物等が挙げられる。(d)酸−感放射線性増感体発生基は、還元電位が高い点から、スルホニウム塩化合物基及びヨードニウム塩化合物基が好ましく、ヨードニウム塩化合物基がより好ましい。また、(d)酸−感放射線性増感体発生基は、アニオンと(1’)ベース成分とが結合したアニオン結合型であることが好ましい。(d)酸−感放射線性増感体発生基がアニオン結合型であることにより、発生した酸が未露光部に拡散することを抑制することができる傾向がある。
【0148】
上記スルホニウム塩化合物基はスルホニウムカチオンと酸のアニオンからなるものである。スルホニウム塩化合物基は、下記式(XIV)〜(XVII)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の基であることが好ましい。下記式(XIV)〜(XVII)で表される基は、カチオンと(1’)ベース成分とが結合したカチオン結合型である。
【0149】
【化55】
上記式(XIV)〜(XVII)中、R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。上記式(XIV)〜(XVII)中、ヒドロキシル基の水素原子は、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。ヒドロキシル基の水素原子が置換されているときスルホニウム塩化合物基はケタール化合物基又はアセタール化合物基を含むことになる。式(XIV)〜(XVII)中、R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3、及びR
4のうち任意の2つ以上の基は、単結合、二重結合、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
e−、−CR
e2−、−NH−若しくは−NR
e−を含む結合を介して、互いに結合して環構造を形成していてもよい。R
eは、フェニル基;フェノキシ基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、好ましくはフェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。式(XIV)〜(XVII)中、X
−は酸のアニオンを示す。この酸としては強酸が好ましく、超強酸がより好ましい。式(XIV)〜(XVII)中、*は(1’)ベース成分との結合部分を示す。なお、R
2’、R
2’’及びR
4が(1’)ベース成分と結合する場合、R
2’、R
2’’及びR
4は、それぞれ独立に、フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基から水素原子1つを除いた2価の基を示し、好ましくは、炭素数1〜5のアルコキシ基、並びに炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、及びヒドロキシル基で置換されたフェニル基から水素原子1つを除いた2価の基を示す。
【0150】
スルホニウム塩化合物基としては、下記式(XXXI)〜(XXXIII)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の基が好ましい。下記式(XXXI)〜(XXXIII)で表される基は、アニオンと(1’)ベース成分とが結合したアニオン結合型である。酸のアニオンが露光後も(1’)ベース成分と結合していることにより、露光後の上記酸の拡散を抑制でき、像のにじみを低減することができる傾向がある。
【0151】
【化56】
式(XXXI)〜(XXXIII)中、R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。式中、ヒドロキシル基の水素原子は、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。式(XXXI)〜(XXXIII)中、R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3、及びR
4のうち任意の2つ以上の基は、単結合、二重結合、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
e−、−CR
e2−、−NH−若しくは−NR
e−を含む結合を介して、互いに結合して環構造を形成していてもよい。R
eは、フェニル基;フェノキシ基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
1、R
2、R
1’、R
2’、R
1’’、R
2’’、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、好ましくはフェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。式(XXXI)〜(XXXIII)中、X
−は酸のアニオン基を示す。この酸としては強酸が好ましく、超強酸がより好ましい。上記式中、*は(1’)ベース成分における結合部分を示す。
【0152】
上記式(XIV)〜(XVII)及び式(XXXI)〜(XXXIII)において、−C(−OH)R
1R
2、−C(−OH)R
1’R
2’、及び−C(−OH)R
1’’R
2’’で表される基としては、例えば上記式(I)〜(III)において例示した基と同様の基が挙げられる。
【0153】
上記ヨードニウム塩化合物基はヨードニウムカチオンと酸のアニオンからなるものである。ヨードニウム塩化合物基は、下記式(XVIII)〜(XIX)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の基であることが好ましい。下記式(XVIII)〜(XIX)で表される基は、カチオンと(1’)ベース成分とが結合したカチオン結合型である。
【0154】
【化57】
上記式(XVIII)〜(XIX)中、R
5、R
6及びR
5’は、それぞれ独立に水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。上記式(XVIII)〜(XIX)中、ヒドロキシル基の水素原子は、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。ヒドロキシル基の水素原子が置換されているときヨードニウム塩化合物基はケタール化合物基又はアセタール化合物基を含むことになる。式(XVIII)〜(XIX)中、R
5、R
6、R
5’、R
6’、及びR
7のうち任意の2つ以上の基は、単結合、二重結合、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
f−、−CR
f2−、−NH−若しくは−NR
f−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
fは、フェニル基;フェノキシ基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
5、R
6、及びR
5’は、それぞれ独立に、好ましくは、フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。式(XVIII)〜(XIX)中、Y
−は酸、好ましくは強酸、より好ましくは超強酸のアニオンを示す。式(XVIII)〜(XIX)中、*は(1’)ベース成分との結合部分を示す。R
6’及びR
7は、それぞれ独立に、フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基から水素原子1つを除いた2価の基を示し、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基、並びに炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、及びヒドロキシル基で置換されたフェニル基から水素原子1つを除いた2価の基を示す。
【0155】
ヨードニウム塩化合物基としては、下記式(XXXIV)〜(XXXV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の基が好ましい。下記式(XXXIV)〜(XXXV)で表される基は、アニオンと(1’)ベース成分とが結合したアニオン結合型である。酸のアニオンが露光後も(1’)ベース成分と結合していることにより、露光後の上記酸の拡散を抑制でき、像のにじみを低減することができる傾向がある。
【0156】
【化58】
式(XXXIV)〜(XXXV)中、R
5、R
6、R
5’、R
6’、及びR
7は、それぞれ独立に水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。式(XXXIV)〜(XXXV)中、ヒドロキシル基の水素原子は、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。ヒドロキシル基の水素原子が置換されているときヨードニウム塩化合物基はケタール化合物基又はアセタール化合物基を含むことになる。式(XXXIV)〜(XXXV)中、R
5、R
6、R
5’、R
6’、及びR
7のうち任意の2つ以上の基は、単結合、二重結合、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
f−、−CR
f2−、−NH−若しくは−NR
f−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
fは、フェニル基;フェノキシ基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
5、R
6、R
5’、R
6’、及びR
7は、それぞれ独立に、好ましくはフェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。式(XXXIV)〜(XXXV)中、Y
−は酸、好ましくは強酸、より好ましくは超強酸のアニオン基を示す。式(XXXIV)〜(XXXV)中、*は(1’)ベース成分との結合部分を示す。式中、*は(1’)ベース成分における結合部分を示す。
【0157】
上記式(XVIII)〜(XIX)及び式(XXXIV)〜(XXXV)において、−C(−OH)R
5R
6及び−C(−OH)R
5’R
6’で表される基としては、例えば上記式(I)〜(III)において例示した−C(−OH)R
1R
2、−C(−OH)R
1’R
2’、及び−C(−OH)R
1’’R
2’’等で表される基と同様の基が挙げられる。
【0158】
上記スルホニウム塩化合物基及びヨードニウム塩化合物基の超強酸のアニオンとしては、上記スルホニウム塩化合物及びヨードニウム塩化合物において例示したアニオンが挙げられる。上記スルホニウム塩化合物基及びヨードニウム塩化合物基の酸のアニオン基は、酸のアニオンとして機能し得る基である。上記酸のアニオン基としては、スルホン酸アニオン基、カルボン酸アニオン基、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン基等が挙げられ、好ましくは、下記一般式(XXXVII)、(XXXVIII)又は(XXXIX)で表される酸のアニオン基であり、より好ましくは下記一般式(XXXVII)で表される酸のアニオン基である。
【0160】
上記一般式(XXXVII)、(XXXVIII)、及び(XXXIX)において、R
34〜R
35は、それぞれ独立に2価の有機基を示し、R
36〜R
37は1価の有機基を示す。*は(1’)ベース成分との結合部分を示す。上記2価の有機基としては、例えばアルキレン基、アリーレン基、これらの基が複数連結された基等が挙げられる。上記1価の有機基としては、例えばアルキル基、アリール基、これらの基が複数連結された基等が挙げられる。上記1価の有機基としては、1位がフッ素原子若しくはフロロアルキル基で置換されたアルキル基、並びにフッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたフェニル基が好ましい。上記2価の有機基としては、(アニオン側の)1位がフッ素原子若しくはフロロアルキル基で置換されたアルキレン基、及びフッ素原子若しくはフロロアルキル基で置換されたフェニレン基が好ましい。有機基がフッ素原子又はフロロアルキル基を有することにより、露光によって発生する酸の酸性度が上がり、感度が向上する傾向がある。ただし、上記1価の有機基は末端に置換基としてフッ素原子を含有しないことが好ましい。また、上記2価の有機基は(1’)ベース成分と結合する原子がフッ素原子と結合していないことが好ましい。
【0161】
以下に、アニオン結合型のスルホニウム塩化合物基を有する(1’)ベース成分(高分子化合物)の化学構造の例を示す。パターン露光工程における第一の放射線の照射により、スルホニウム塩化合物基が分解し、アニオンが高分子化合物に結合して残ると共にカチオンが分解して酸を発生する。
【0163】
(e)感放射線性増感体前駆体基
(e)感放射線性増感体前駆体基は、第一の放射線の照射によって、第二の放射線を吸収する感放射線性増感体の機能を有する基となるものであり、かつ上記パターン露光工程で第一の放射線が照射されない未露光部では、第二の放射線の照射により上記感放射線性増感体が実質的に発生しない基である。また、(e)感放射線性増感体前駆体基は上記(d)で示される基とは異なるものである。本実施形態のパターン形成方法ではパターン露光工程において(e)感放射線性増感体前駆体基の構造が直接的或いは間接的な反応で変換し、一括露光工程で酸発生を補助する感放射線性増感体の機能を有する基となる。特に(e)感放射線性増感体前駆体基が高分子化合物に結合している場合、上記感放射線性増感体の機能を有する基は高分子化合物に固定されているため、パターン露光部からの拡散が抑制され、一括露光を行った後のパターン露光部と未露光部との間の酸の潜像のコントラストがより大きくなるという効果が得られる。
【0164】
また、(e)感放射線性増感体前駆体基に第二の放射線を照射することで感放射線性増感体の機能を有する基が発生した場合に、パターン露光における露光部と未露光部との間における感放射線性増感体の濃度の差をパターン形成可能な程度の大きさに維持できる程度に第二の放射線照射による感放射線性増感体の機能を有する基の発生量を少なくできる第二の放射線の波長の下限としては、300nmが好ましく、320nmがより好ましく、350nmがさらに好ましい。(e)感放射線性増感体前駆体基が第二の放射線の照射により感放射線性増感体の機能を有する基を発生する場合における第二の放射線の波長を上記下限以上とすることで、第一の放射線が照射されるパターン露光部では、発生した感放射線性増感体の機能を有する基の増感作用により第二の放射線照射時に酸が発生し、反対に第一の放射線が照射されないパターン未露光部では第二の放射線照射時における酸の発生が抑制される。その結果、パターン露光部とパターン未露光部との間における感度及びコントラストを向上できる。
【0165】
上記(e)感放射線性増感体前駆体基としては、パターン露光工程における第一の放射線の照射によって、パターン露光工程における非電離放射線より長く、かつ200nmを超える非電離放射線、すなわち一括露光工程における第二の放射線を吸収するカルボニル化合物基(カルボニル化合物から水素原子を除いた基)となるものであることが好ましい。また、上記カルボニル化合物基は露光後も上記(1’)ベース成分と結合していることが好ましい。上記カルボニル化合物基が露光後も(1’)ベース成分と結合していることにより、露光後の感放射線性増感体の拡散を抑制でき、像のにじみを低減することができる傾向がある。(e)感放射線性増感体前駆体基としては、下記式(XXIV)で表されるアルコール化合物基、及び下記式(XXIII)で表される基がより好ましい。
【0166】
【化61】
式(XXIV)中、R
8及びR
9は、それぞれ独立に水素原子;フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基;炭素数1〜5のアルキルチオ基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;アミド基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜5のアルコキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜5のアルキルチオ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基を示す。R
10’は、フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基から水素原子1つを除いた2価の基を示す。アルコール化合物基は、式(XXIV)中のアルコール性水酸基(ヒドロキシル基)がチオール基となったチオール化合物基であってもよい。上記式(XXIV)中、ヒドロキシル基又はチオール基の水素原子は、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。ヒドロキシル基の水素原子が置換されているときアルコール化合物基はケタール化合物基又はアセタール化合物基を含むことになり、チオール基の水素原子が置換されているときチオール化合物基はチオケタール化合物基又はチオアセタール化合物基を含むことになる。式中、R
8、R
9及びR
10’のうち任意の2つ以上の基は、単結合、二重結合、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
g−、−CR
g2−、−NH−若しくは−NR
g−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
gは、フェニル基;フェノキシ基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
8及びR
9は、好ましくは、それぞれ独立に水素原子;フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。また、R
10’は、好ましくはフェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基から水素原子1つを除いた2価の基を示す。式(XXIV)中、*は(1’)ベース成分との結合部分を示す。
【0167】
なお、式(XXIV)中のヒドロキシル基の水素原子が置換されたケタール化合物基又はアセタール化合物基は好ましくは下記式(XL)で表される化合物基であると言うことができる。すなわち、(e)感放射線性増感体前駆体基は下記式(XL)で表される化合物基であってもよい。R
8又はR
9のいずれか一方が水素原子である場合、下記式(XL)で表される化合物はアセタール化合物基であるということができる。
【0168】
【化62】
式(XL)中、R
9及びR
10’は上記式(XXIV)中のR
9及びR
10’とそれぞれ同義である。R
9及びR
10’は、上記と同様に、環構造を形成していてもよい。式(XL)中、R
23及びR
24は、それぞれ独立に、フェニル基;ハロゲン原子;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
23及びR
24は、単結合、二重結合、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
g−、−CR
g2−、−NH−若しくは−NR
g−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
gは上記式(XXIV)中のR
gと同義である。ケタール化合物基又はアセタール化合物基は、式(XL)中のR
23及び/又はR
24と結合する酸素原子が硫黄に置き換えられたチオケタール化合物基又はチオアセタール化合物基であってもよい。
【0169】
(1’)ベース成分に結合したケタール化合物基及びアセタール化合物基は、(1’)ベース成分に結合したカルボニル化合物基をアルコールと反応させることでそれぞれ得ることができる。上記反応は、放射線増感作用に寄与するカルボニル基を保護する反応ということができ、上記式(XL)におけるR
23及びR
24はカルボニル基の保護基ということができる。また、この場合、放射線等により(e)感放射線性増感体前駆体基が感放射線性増感体の機能を有する基となる反応を脱保護反応ということができる。保護基の反応性は(b)感放射線性増感体発生剤において上述したとおりである。
【0170】
上記(e)感放射線性増感体前駆体基は、下記式(XLI)〜(XLIV)で表される化合物基又はその誘導体基であってもよい。
【0172】
式(XLI)〜(XLIV)中、R
23及びR
24は、式(XL)中のR
23及びR
24とそれぞれ同義である。式(XLI)〜(XLIV)中、芳香環の水素原子は炭素数1〜5のアルコキシ基又は炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよく、芳香環は別の芳香環と結合してナフタレン環又はアントラセン環を形成していてもよい。R
25は炭素数1〜5のアルキル基を示す。式(XLI)〜(XLIV)中、*は(1’)ベース成分との結合部分を示す。なお、式(XLIV)では、R
25と(1’)ベース成分とが結合していてもよい。式(XLI)〜(XLIV)で表される化合物基又はその誘導体基が結合した(1’)ベース成分を用いた場合、(e)感放射線性増感体前駆体基から感放射線性増感体の機能を有する基となったときの放射線の吸収波長のシフトがより大きく、パターン露光部でのより選択的な増感反応を起こすことができる。
【0173】
式(XXIV)中のアルコール性水酸基の水素原子が置換されたオルトエステル化合物基としては、好ましくは下記式(XLVIII)で表される化合物基である。すなわち、(e)感放射線性増感体前駆体基は下記式(XLVIII)で表される化合物基であってもよい。
【0174】
【化64】
式(XLVIII)中、R
38〜R
40は,それぞれ独立に上記式(XLVI)中のR
38〜R
40と同義である。式(XLVIII)中、R
10’は、式(XXIV)中のR
10’と同義である。R
38〜R
40のうち任意の2つ以上の基は、単結合、二重結合、−CH
2−、−O−、−S−、−SO
2NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NHCO−、−NHC(=O)NH−、−CHR
g−、−CR
g2−、−NH−若しくは−NR
g−を含む結合を介して環構造を形成していてもよい。R
gは上記式(VI)中のR
gと同義である。
【0175】
オルトエステル化合物基は、パターン露光において脱保護反応で分解し、例えばカルボニル基を含むカルボン酸エステル基又はカルボン酸基になる。オルトエステル化合物基としては、下記式(XLIX)で表されるOBOエステル化合物基が好ましい。このOBOエステル化合物基としては、例えばカルボキシル基を有する感放射線性増感体のカルボキシル基の部分をOBO(例えば4−メチル2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン−1−イル)で置換(保護)したものが挙げられる。OBOでカルボキシル基を保護した(e)感放射線性増感体前駆体基は、パターン露光時に発生する酸触媒によってカルボン酸基を生成し、かつ放射線の吸収波長がシフトすることで、一括露光時に感放射線性増感体の機能を有する基として働く。(e)感放射線性増感体前駆体基からカルボン酸基が生成することで、パターン露光部において(例えば非極性から極性に)レジストの極性が変わる。このため、オルトエステル化合物基は現像工程における溶解促進剤としても機能し、レジストコントラストの向上にも寄与する。(e)感放射線性増感体前駆体基がOBOエステル化合物基を含むことにより、感放射線性増感体の機能を有する基の生成と極性変化反応を同時に起こすことも可能である。
【0176】
【化65】
式(XLIX)中、R
41は式(XLVII)中のR
41と同義である。R
42’は、フェニル基;ナフチル基;アントラセニル基;フェノキシ基;ナフトキシ基;アントラセノキシ基;アミノ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基)、炭素数1〜5のアルコキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたナフトキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換されたアントラセノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、アミノ基、アミド基、若しくはヒドロキシル基で置換された、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜5)の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和若しくは不飽和炭化水素基(好ましくはアルキル基);又は炭素数1〜12のアルキル基が結合したカルボニル基から水素原子1つを除いた2価の基を示す。R
41は、好ましくは水素原子;フェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は、炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基を示す。R
42’は、好ましくはフェニル基;フェノキシ基;炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシル基、若しくは炭素数1〜5のアルキル基で置換されたフェノキシ基;又は炭素数1〜5のアルコキシ基、若しくはヒドロキシル基で置換されたフェニル基から水素原子1つを除いた2価の基を示す。
【0177】
(e)感放射線性増感体前駆体基としては、例えば(b)感放射線性増感体発生剤として例示した化合物から水素原子1つを除いた基が挙げられる。
【0178】
以下に、(e)感放射線性増感体前駆体基を有する(1’)ベース成分(高分子化合物)の化学構造の例を示す。パターン露光工程において、パターン露光により発生した酸触媒により(e)感放射線性増感体前駆体基から保護基が外れカルボニル基が生成する。すなわち、感放射線性増感体の機能を有する基が結合した(1’)ベース成分が生成する。感放射線性増感体の機能を有する基が(1’)ベース成分に結合していることにより、一括露光工程における感放射線性増感体の拡散を抑えられ、レジスト材料膜中の酸の潜像のコントラストを向上することができる。
【0182】
(f)感放射線性酸発生基
(f)感放射線性酸発生基は、第一の放射線の照射によって、酸を発生し、かつ上記パターン露光工程で第一の放射線が照射されない未露光部では、第二の放射線の照射により上記酸が実質的に発生しない基であり、上記(d)で示される基とは異なるものである。
【0183】
また、(f)感放射線性酸発生基に第二の放射線を照射することで酸が発生した場合に、パターン露光における露光部と未露光部との間における酸の濃度の差をパターン形成可能な程度の大きさに維持できる程度に第二の放射線照射による酸の発生量を少なくできる第二の放射線の波長の下限としては、300nmが好ましく、320nmがより好ましく、350nmがさらに好ましい。(f)感放射線性酸発生基が第二の放射線の照射により酸を発生する場合における第二の放射線の波長を上記下限以上とすることで、第一の放射線が照射されるパターン露光部では、発生した感放射線性増感体の増感作用により第二の放射線照射時に酸が発生し、反対に第一の放射線が照射されないパターン未露光部では第二の放射線照射時における酸の発生が抑制される。その結果、パターン露光部とパターン未露光部との間における感度及びコントラストを向上できる。
【0184】
(f)感放射線性酸発生基は、上記(c)感放射線性酸発生剤において例示した化合物と同様の構造(カチオンとアニオンとから構成される塩)を有することが好ましく、カチオン又はアニオンの一部が(1’)ベース成分と結合していることが好ましく、アニオンの一部が(1’)ベース成分と結合している(アニオン結合型である)ことがより好ましい。また、上記(f)感放射線性酸発生基は、露光後も上記アニオンの一部が(1’)ベース成分と結合していることがより好ましい。酸のアニオンが露光後も(1’)ベース成分と結合していることにより、露光後の上記酸の拡散を抑制でき、像のにじみを低減することができる傾向がある。
【0185】
(f)感放射線性酸発生基としては、例えば(c)感放射線性酸発生剤として例示した化合物から水素原子1つを除いた基が挙げられる。
【0186】
以下に、(f)感放射線性酸発生基を有する(1’)成分(高分子化合物)の化学構造の例を示す。下記例では、パターン露光により(f)感放射線性酸発生基が分解し、分解後にアニオン基がベース部分に残る。
【0188】
上記(d)〜(f)で示される基の(1’)ベース成分における含有量としては、(1’)ベース成分の総質量に対して、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、0.2質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0189】
上記(1’)ベース成分が高分子化合物である場合、上記(d)で示される基の含有割合としては、高分子化合物1モルに対し0.001モル以上0.5モル以下が好ましく、0.002モル以上0.3モル以下がより好ましく、0.01モル以上0.3モル以下がさらに好ましい。上記(1’)ベース成分が上記(d)で示される基を0.5モル以下有することにより、優れた形状のレジストパターンが得られやすく、他方、0.001モル以上有することにより、十分な感度が得られやすい。
【0190】
上記(1’)ベース成分が高分子化合物である場合、上記(e)で示される基の含有割合としては、高分子化合物1モルに対し0.001モル以上0.95モル以下が好ましく、0.002モル以上0.3モル以下がより好ましく、0.01モル以上0.3モル以下がさらに好ましい。上記(1’)ベース成分が上記(e)で示される基を0.5モル以下有することにより、優れた形状のレジストパターンが得られやすく、他方、0.001モル以上有することにより、十分な感度が得られやすい。
【0191】
上記(1’)ベース成分が高分子化合物である場合、上記(f)で示される基の含有割合としては、高分子化合物1モルに対し0.001モル以上0.5モル以下が好ましく、0.002モル以上0.3モル以下がより好ましく、0.01モル以上0.3モル以下がさらに好ましい。上記(1’)ベース成分が上記(f)で示される基を0.5モル以下有することにより、優れた形状のレジストパターンが得られやすく、他方、0.001モル以上有することにより、十分な感度が得られやすい。
【0192】
上記(1’)ベース成分が低分子化合物である場合、上記(d)で示される基の含有割合としては、低分子化合物1モルに対し0.001モル以上0.5モル以下が好ましく、0.002以上0.3モル以下がより好ましく、0.01モル以上0.3モル以下がさらに好ましい。上記(1’)ベース成分が上記(d)で示される基を0.5モル以下有することにより、優れた形状のレジストパターンが得られやすく、他方、0.001モル以上有することにより、十分な感度が得られやすい。
【0193】
上記(1’)ベース成分が低分子化合物である場合、上記(e)で示される基の含有割合としては、低分子化合物1モルに対し0.001モル以上0.5モル以下が好ましく、0.002モル以上0.3モル以下がより好ましく、0.01モル以上0.3モル以下がさらに好ましい。上記(1’)ベース成分が上記(e)で示される基を0.5モル以下有することにより、優れた形状のレジストパターンが得られやすく、他方、0.001モル以上有することにより、十分な感度が得られやすい。
【0194】
上記(1’)ベース成分が低分子化合物である場合、上記(f)で示される基の含有割合としては、低分子化合物1モルに対し0.001モル以上0.5モル以下が好ましく、0.002モル以上0.3モル以下がより好ましく、0.01モル以上0.3モル以下がさらに好ましい。上記(1’)ベース成分が上記(f)で示される基を0.5モル以下有することにより、優れた形状のレジストパターンが得られやすく、他方、0.001モル以上有することにより、十分な感度が得られやすい。
【0195】
なお、上記高分子化合物又は低分子化合物が有する基の量は、合成に用いられる全体のモノマー1モルに対する(d)〜(f)で示される基を有するモノマーのモル数と同等である。
【0196】
(1’)ベース成分が高分子化合物である場合、これら高分子化合物を合成する方法としては、例えば繰り返し単位を得るための不飽和結合を有するモノマーを有機溶剤中、重合開始剤(例えばラジカル開始剤)を加え加熱重合を行う方法が挙げられ、これにより高分子化合物を得ることができる。重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルパレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示できる。重合時の加熱温度としては50℃以上80℃以下が好ましい。反応時間としては2時間以上100時間以下が好ましく、5時間以上20時間以下がより好ましい。(d)〜(f)で示される基は、モノマーに導入されたものをそのまま用いてもよいし、酸不安定基を酸触媒によって一旦脱離し、その後保護化又は部分保護化して結合を形成してもよい。
【0197】
(1’)ベース成分が低分子化合物である場合、低分子化合物の反応基に対して、(d)〜(f)で示される基をそのまま用いてもよいし、酸不安定基を酸触媒によって一旦脱離し、その後保護化又は部分保護化して結合を形成してもよい。
【0198】
(その他の成分)
上記レジスト材料は、上述の(1)ベース成分及び(2)成分の他に、(3)第一の捕捉剤、(4)第二の捕捉剤、(5)架橋剤、(6)添加剤、(7)溶剤等を適宜含んでもよい。
【0199】
(3)第一の捕捉剤
第一の捕捉剤は酸とカチオンを捕捉するものであり、クエンチャーとして機能するものである。レジスト材料が上記第一の捕捉剤を含むことにより、レジスト材料中で発生した酸を中和して、パターン露光部とパターン未露光部との間における酸の潜像の化学コントラストを上げることができる。上記(a)感放射線性酸−増感体発生剤がケタール化合物基若しくはアセタール化合物基を有する、又は上記(b)感放射線性増感体発生剤がケタール化合物若しくはアセタール化合物を含む場合、常温での酸触媒反応で感放射線性増感体が生成する。レジスト材料が上記第一の捕捉剤を含むことにより、この第一の捕捉剤が感放射線性増感体発生反応の触媒として働く酸を捕捉するため、アセタール化合物等から生じる感放射線性増感体の生成量のコントラストも向上できる。また、パターン露光工程において発生するカチオン中間体を経て放射線増感する反応機構により感放射線性増感体が発生する場合には、上記第一の捕捉剤が上記カチオン中間体を捕捉することで、一括露光時により選択的にパターン露光部だけで酸を増殖でき、その結果酸の潜像の化学コントラストをより改善するという効果も得られる。第一の捕捉剤は、放射線反応性を有する捕捉剤と放射線反応性を有しない捕捉剤とに分けることができる。
【0200】
第一の捕捉剤が放射線反応性を有しない捕捉剤である場合、第一の捕捉剤としては塩基性化合物が好ましい。上記塩基性化合物としては、例えばヒドロキシド化合物、カルボキシラート化合物、アミン化合物、イミン化合物、アミド化合物等が挙げられ、より具体的には、第1級〜第3級脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環アミン、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、カルバメート基を有する含窒素化合物、アミド化合物、イミド化合物等が挙げられる。上記塩基性化合物としては、カルバメート基を有する含窒素化合物が好ましい。上記塩基性化合物は、トレーガー(Troger’s)塩基;ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBM)等のヒンダードアミン;テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラブチルアンモニウムラクタート等のイオン性クエンチャーであってもよい。
【0201】
第1級脂肪族アミンとしては、例えばアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、tert−アミルアミン、シクロペンチルアミン、へキシルアミン、シクロへキシルアミン、へプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン等が挙げられる。第2級脂肪族アミンとしては、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジへキシルアミン、ジシクロへキシルアミン、ジへプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン、N,N−ジメチルメチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルテトラエチレンペンタミン等が挙げられる。第3級脂肪族アミンとしては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリへキシルアミン、トリシクロへキシルアミン、トリへプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルテトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
【0202】
芳香族アミン及び複素環アミンとしては、例えばアニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,6−ジニトロアニリン、3,5−ジニトロアニリン、N,N−ジメチルトルイジン等のアニリン誘導体;ジフェニル(p−トリル)アミン;メチルジフェニルアミン;トリフェニルアミン;フェニレンジアミン;ナフチルアミン;ジアミノナフタレン;ピロール、2H−ピロール、1−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、N−メチルピロール等のピロール誘導体;オキサゾール、イソオキサゾール等のオキサゾール誘導体;チアゾール、イソチアゾール等のチアゾール誘導体;イミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ピラゾール誘導体;フラザン誘導体;ピロリン、2−メチル−1−ピロリン等のピロリン誘導体;ピロリジン、N−メチルピロリジン、ピロリジノン、N−メチルピロリドン等のピロリジン誘導体;イミダゾリン誘導体;イミダゾリジン誘導体;ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4−(1−ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、4−ピロリジノピリジン、2−(1−エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン等のピリジン誘導体;ピリダジン誘導体;ピリミジン誘導体;ピラジン誘導体;ピラゾリン誘導体;ピラゾリジン誘導体;ピペリジン誘導体;ピペラジン誘導体;モルホリン誘導体;インドール誘導体;イソインドール誘導体;1H−インダゾール誘導体;インドリン誘導体;キノリン、3−キノリンカルボニトリル等のキノリン誘導体;イソキノリン誘導体;シンノリン誘導体;キナゾリン誘導体;キノキサリン誘導体;フタラジン誘導体;プリン誘導体;プテリジン誘導体;カルバゾール誘導体;フェナントリジン誘導体;アクリジン誘導体;フェナジン誘導体;1,10−フェナントロリン誘導体;アデニン誘導体;アデノシン誘導体;グアニン誘導体;グアノシン誘導体;ウラシル誘導体;ウリジン誘導体などが挙げられる。
【0203】
カルボキシ基を有する含窒素化合物としては、例えばアミノ安息香酸;インドールカルボン酸;ニコチン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシルロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、メトキシアラニン等のアミノ酸誘導体等が挙げられる。
【0204】
スルホニル基を有する含窒素化合物としては、例えば3−ピリジンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム等が挙げられる。
【0205】
ヒドロキシル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、及びアルコール性含窒素化合物としては、例えば2−ヒドロキシピリジン、アミノクレゾール、2,4−キノリンジオール、3−インドールメタノールヒドレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,2’−イミノジエタノール、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン、ピペリジンエタノール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、3−ピロリジノ−1,2−プロパンジオール、8−ヒドロキシジュロリジン、3−クイヌクリジノール、3−トロパノール、1−メチル−2−ピロリジンエタノール、1−アジリジンエタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)フタルイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)イソニコチンアミド等が挙げられる。
【0206】
カルバメート基を有する含窒素化合物としては、例えばN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−アラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−アラニンメチルエステル、(S)−(−)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−シクロへキシル−1−プロパノール、(R)−(+)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−メチル−1−ブタノール、(R)−(+)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−フェニルプロパノール、(S)−(−)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−フェニルプロパノール、(R)−(+)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−フェニル−1−プロパノール、(S)−(−)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−フェニル−1−プロパノール、(R)−(+)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−1−プロパノール、(S)−(−)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−1−プロパノール、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−アスパラチック酸4−ベンジルエステル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−O−ベンジル−L−スレオニン、(R)−(+)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−2−tert−ブチル−3−メチル−4−イミダゾリジノン、(S)−(−)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−2−tert−ブチル−3−メチル−4−イミダゾリジノン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−シクロへキシル−L−アラニンメチルエステル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−システインメチルエステル、N−(tert−ブトキシカルボニル)エタノールアミン、N−(tert−ブトキシカルボニルエチレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−グルコースアミン、Nα−(tert−ブトキシカルボニル)−L−グルタミン、1−(tert−ブトキシカルボニル)イミダゾール、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−イソロイシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−イソロイシンメチルエステル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−ロイシノール、Nα−(tert−ブトキシカルボニル)−L−リシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−メチオニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−(2−ナフチル)−L−アラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニンメチルエステル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−プロリナル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリン−N’−メトキシ−N’−メチルアミド、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシアミヂン、(S)−(−)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、1−(tert−ブトキシカルボニル)3−[4−(1−ピロリル)フェニル]−L−アラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−セリン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−セリンメチルエステル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−スレオニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(tert−ブトキシカルボニル)−S−トリチル−L−システイン、Nα−(tert−ブトキシカルボニル)−L−トリプトファン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−チロシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−チロシンメチルエステル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−バリン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−バリンメチルエステル、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−バリノール、tert−ブチルN−(3−ヒドロキシプロピル)カルバメート、tert−ブチルN−(6−アミノへキシル)カルバメート、tert−ブチルカルバメート、tert−ブチルカルバゼート、tert−ブチル−N−(ベンジロキシ)カルバメート、tert−ブチル−4−ベンジル−1−ピペラジンカルボキシレート、tert−ブチル(1S,4S)−(−)−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]へプタン−2−カルボキシレート、tert−ブチル−N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバメート、tert−ブチル(S)−(−)−4−ホルミル−2,2−ジメチル−3−オキサゾリジンカルボキシレート、tert−ブチル[R−(R*,S*)]−N−[2−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]カルバメート、tert−ブチル−4−オキソ−1−ピペリジンカルボキシレート、tert−ブチル−1−ピロールカルボキシレート、tert−ブチル−1−ピロリジンカルボキシレート、tert−ブチル(テトラヒドロ−2−オキソ−3−フラニル)カルバメート等が挙げられる。
【0207】
アミド化合物としては例えばホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、1−シクロへキシルピロリドン等が挙げられる。
【0208】
イミド化合物としては、例えばフタルイミド、サクシンイミド、マレイミド等が挙げられる。
【0209】
上記放射線反応性を有する捕捉剤は、放射線反応により分解して捕捉剤としての機能を失うもの(放射線分解型捕捉剤)であってもよく、放射線反応により生成して捕捉剤としての機能を得るもの(放射線生成型捕捉剤)であってもよい。
【0210】
レジスト材料が放射線反応により分解して捕捉剤としての機能を失う第一の捕捉剤を含む場合、第一の捕捉剤はパターン露光工程後にパターン露光部で分解し、パターン未露光部で分解しない。従って、パターン露光部では酸とカチオンを捕捉する作用が低下し、パターン未露光部では酸とカチオンを捕捉する作用が維持される。このため、酸の潜像の化学コントラストを向上させることができる。第一の捕捉剤が放射線反応により分解して捕捉剤としての機能を失うものである場合、第一の捕捉剤としては、放射線分解性カチオンのスルホン酸塩及びカルボン酸塩が好ましい。上記スルホン酸塩におけるスルホン酸としては、弱い酸が好ましく、炭素数1〜20の炭化水素基を有し、かつ上記炭化水素基がフッ素を含まないものがより好ましい。このようなスルホン酸としては、例えばアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、10−カンファースルホン酸等のスルホン酸が挙げられる。上記カルボン酸塩におけるカルボン酸としては弱酸が好ましく、炭素数1〜20のカルボン酸がより好ましい。このようなカルボン酸としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、コハク酸、シクロへキシルカルボン酸、安息香酸、サリチル酸等のカルボン酸が挙げられる。放射線分解性カチオンのカルボン酸塩における放射線分解性カチオンとしてはオニウムカチオンが好ましく、このオニウムカチオンとしては、例えばヨードニウムカチオン、スルホニウムカチオン等が挙げられる。
【0211】
レジスト材料が放射線反応により生成して捕捉剤としての機能を得る第一の捕捉剤を含む場合、第一の捕捉剤はパターン露光工程時にパターン露光部で捕捉剤としての機能が発生し、パターン未露光部で発生しない。従って、パターン露光部では酸とカチオンを捕捉する作用が発生し、パターン未露光部では酸とカチオンを捕捉する作用が発生しない。また、上記放射線生成型捕捉剤は一括露光時に捕捉剤としての機能を得るものであってもよい。この場合、一括露光時の露光量はパターン露光時の露光量よりも大きく、一括露光時では捕捉剤の発生量が比較的大きい。このため、上記(b)感放射線性増感体発生剤から中間体としてカチオンを経由して感放射線性増感体が発生する場合、及び酸触媒により感放射線性増感体が発生する場合、一括露光前にはカチオンと酸の捕捉剤としての働きを最小限にし、感放射線性増感体を効率よく発生することができる。一方、一括露光時に第一の捕捉剤の大部分が分解すると、その後のPEB時には、分解した第一の捕捉剤が未露光部の不要な酸を十分捕捉し、かつ酸の拡散を抑え、レジストの酸の潜像の化学コントラストを向上させることができる。
【0212】
第一の捕捉剤が放射線反応により生成して捕捉剤としての機能を得るものである場合、上記放射線分解性カチオンのカルボン酸塩としては一括露光により塩基を発生する化合物(感放射線性塩基発生剤)が好ましく、アミノ基を発生する含窒素有機化合物がより好ましい。また、上記カルボン酸塩はカルボン酸エステルであることが好ましい。通常のレジストと比較して、化学増幅型レジストでは、一括露光時の放射線増感による酸発生の余地を残すため、パターン露光時には、PAGに対する第一の捕捉剤の含有量を少なくすることが望ましい。すなわち、レジスト材料は高い濃度で第一の捕捉剤を含むことが難しい。一方で、第一の捕捉剤は、パターン未露光部での極性変化反応又は酸の拡散を抑えるため多くすることが望ましい。一括露光時に塩基を生成する放射線発生型捕捉剤はこれらの両方の要求を満たすと考えられる。一括露光時の塩基の生成は直接一括露光の放射線を吸収して起こってもよく、また、放射線増感によって起こってもよい。放射線増感により起こる場合は、一括露光時の放射線増感反応における酸又はカチオンの捕捉剤としても働くことになり、パターン露光量が少ないところで、放射線増感反応を抑えることができるため、レジストの酸の潜像のコントラストをさらに向上することができる。
【0213】
一括露光により塩基を発生する化合物(感放射線性塩基発生剤)としては、例えば特開平4−151156号、同4−162040号、同5−197148号、同5−5995号、同6−194834号、同8−146608号、同10−83079号、及び欧州特許622682号に記載の化合物が挙げられる。感放射線性塩基発生剤としては、カルバメート基(ウレタン結合)を含有する化合物、アシルオキシイミノ基を含有する化合物、イオン系化合物(アニオン−カチオン複合体)、カルバモイルオキシイミノ基を含有する化合物等が挙げられ、カルバメート基(ウレタン結合)を含有する化合物、アシルオキシイミノ基を含有する化合物、及びイオン系化合物(アニオン−カチオン複合体)が好ましい。また、感放射線性塩基発生剤としては、分子内に環構造を有する化合物が好ましい。この環構造としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、キサントン、チオキサントン、アントラキノン、及びフルオレン等が挙げられる。
【0214】
感放射線性塩基発生剤としては、放射線分解性の点から、下記一般式(XLV)で表される化合物がより好ましい。上記化合物に対して露光すると、少なくとも、式(XLV)中の窒素原子と、この窒素原子に隣接するカルボニル基の炭素原子との間の結合が切断されてアミン又はアンモニアと、二酸化炭素とが生成する。分解後、−N(R
26)(R
27)を有する生成物の沸点が高いことが好ましい。また、−N(R
26)(R
27)を有する生成物の分子量が大きいこと、又は嵩高い骨格を有することが、PEB時の拡散制御の点で好ましい。
【0215】
【化70】
式(XLV)中、R
26及びR
27は、それぞれ独立して、水素原子又はへテロ原子を含んでいてもよい1価の炭化水素基であり、R
26及びR
27が互いに結合しこれらが結合する窒素原子と共に環構造を形成してもよい。R
28は1価の感放射線性官能基である。
【0216】
感放射線性塩基発生剤としては、例えば2−ニトロベンジルカルバメート、2,5−ジニトロベンジルシクロへキシルカルバメート、N−シクロへキシル−4−メチルフェニルスルホンアミド、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル−N−イソプロピルカルバメート等が挙げられる。
【0217】
第一の捕捉剤は、熱反応により生成して捕捉剤としての機能を得るもの(熱生成型捕捉剤)であってもよい。レジスト材料が熱生成型捕捉剤を含む場合、一括露光後にベークを行い、上記ベーク中に捕捉剤を生成することが望ましい。そのため、一括露光後のベーク温度は、パターン露光前のレジスト材料塗布後の加熱温度、及びパターン露光後一括露光前のベーク温度よりも高いことが好ましい。レジスト材料が、熱反応、又は一括露光の波長における放射線反応により生成して捕捉剤としての機能を得る第一の捕捉剤を含む場合、パターン未露光部における第一の捕捉剤の酸捕捉力が向上し、酸の潜像の化学コントラストを向上させることができる。
【0218】
(4)第二の捕捉剤
第二の捕捉剤は遊離ラジカルを捕捉するものであり、遊離ラジカルスカベンジャーとして機能するものである。レジスト材料が上記第二の捕捉剤を含むことにより、レジスト材料中のラジカルによる反応を経由した感放射線性増感体の発生がパターン露光量の少ないところでより小さく抑えられ、感放射線性増感体の潜像のコントラストをさらに上げるという効果が得られる。その結果、一括露光を行った後のパターン露光部と未露光部との間の酸の潜像のコントラストがより大きくなるという効果が得られる。
【0219】
第二の捕捉剤としては、例えばフェノール系化合物、キノン系化合物、アミン系化合物等が挙げられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン等の、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMP0)、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニゾール、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニゾール、プロピルエステル3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、2−(1,1−ジメチルエチル)−1,4−ベンゼンジオール、ジフェニルピクリルヒドラジル、4−tert−ブチルカテコール、N−メチルアニリン、p−メトキシジフェニルアミン、ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、p−ヒドロキシジフェニルアミン、フェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート、テトラキス(メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル)−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマート)メタン、フェノチアジン、アルキルアミドイソウレア、チオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマート、1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、環式ネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスフィト)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)、オキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)メチル5−ドキシルステアレート、ヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、メタキノン、ベンゾキノン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、フェノチアジン、未加工種子油、小麦の胚種子油、トコフェノール、ゴム等の天然由来の酸化防止剤などが挙げられる。
【0220】
(5)架橋剤
架橋剤は、一括露光後のベーク工程中において、酸触媒反応によりベース成分間で架橋反応を引き起こし、ベース成分の分子量を増加させ、現像液に対して不溶化するためのものであり、上記(1)ベース成分とは異なるものである。レジスト材料が架橋剤を含むことにより、架橋と同時に極性部位が非極性化し、現像液に対して不溶化するため、ネガ型レジスト材料を提供することができる。
【0221】
架橋剤は2つ以上の官能基を有する化合物である。上記官能基は、(メタ)アクリロイル基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、エポキシ基及びビニルエーテル基からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0222】
2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールへキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0223】
2つ以上のアルコキシメチル基又はヒドロキシメチル基を有する化合物としては、例えばヒドロキシメチル基含有フェノール化合物、アルコキシメチル基含有フェノール化合物、アルコキシメチル化メラミン、アルコキシメチル化尿素化合物等が挙げられる。上記アルコキシ基の炭素数としては、いずれも1〜5が好ましい。2つ以上のアルコキシメチル基又はヒドロキシメチル基を有する化合物としては、メトキシメチル基含有フェノール化合物、エトキシメチル基含有フェノール化合物、メトキシメチル化メラミン及びメトキシメチル化尿素化合物が好ましく、メトキシメチル化メラミン及びメトキシメチル化尿素化合物がより好ましい。メトキシメチル化メラミンとしては、下記式(IX)〜(X)で表される化合物等が挙げられる。
【0225】
メチル化尿素樹脂としては、下記式(XI)〜(XIII)で表される化合物等が挙げられる。
【0227】
上記2つ以上のエポキシ基を有する化合物としては、例えばノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0228】
2つ以上のビニルエーテル基を有する化合物としては、例えばビス(4−(ビニルオキシメチル)シクロへキシルメチル)グルタレート、トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、アジピン酸ジビニルエステル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、1,2,4−トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート、1,3,5−トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート、ビス(4−(ビニルオキシ)ブチル)テレフタレート、ビス(4−(ビニルオキシ)ブチル)イソフタレート、エチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、へキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロへキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、シクロへキサンジメタノールジビニルエーテルが挙げられる。
【0229】
(6)添加剤
添加剤としては、例えば界面活性剤、酸化防止剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料等が挙げられる。界面活性剤、酸化防止剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤及び染料には公知の材料を選択することができる。界面活性剤としては、例えばイオン性や非イオン性のフッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤等を用いることができる。酸化防止剤としては、例えばフェノール系酸化防止剤、有機酸誘導体からなる酸化防止剤、硫黄含有酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、アミン−アルデヒド縮合物からなる酸化防止剤、アミン−ケトン縮合物からなる酸化防止剤等が挙げられる。
【0230】
(7)溶剤
溶剤は、レジスト材料の組成物を溶解し、スピンコーティング法等での塗布機によるレジスト材料膜の形成を容易とするためのものである。なお、上記(b)感放射線性増感体発生剤等に包含される化合物は溶剤からは除くものとする。溶剤としては、例えばシクロへキサノン、メチル−2−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類などが挙げられる。
【0231】
(配合比率)
レジスト材料は、上記成分を含む感放射線性樹脂組成物である。レジスト材料を調製するに際しては、レジスト材料の用途、使用条件等において各成分の配合比率を適宜設定すればよい。
【0232】
(1)成分100質量部に対する(a)感放射線性酸−増感体発生剤の配合量としては、0.005質量部以上50質量部以下が好ましく、0.1質量部以上30質量部以下がより好ましい。この量が0.005質量部以上であると十分な感度が得られやすく、他方、50質量部以下であるとレジストと相溶性が向上しレジスト材料膜を形成しやすい。(1)成分100質量部に対する(b)感放射線性酸発生基の配合量としては、0.005質量部以上50質量部以下が好ましく、0.1質量部以上30質量部以下がより好ましい。この量が0.005質量部以上であると十分な感度が得られやすく、他方、50質量部以下であると矩形のレジストパターンが得られやすい。(1)成分100質量部に対する(c)感放射線性増感体の配合量としては、0.01質量部以上50質量部以下が好ましく、0.1質量部以上30質量部以下がより好ましい。この量が0.01質量部以上であると十分な感度が得られやすく、他方、50質量部以下であると矩形のレジストパターンが得られやすい。
【0233】
(1)成分100質量部に対する(3)第一の捕捉剤の配合量としては、0.001質量部以上20質量部以下が好ましく、0.01質量部以上10質量部以下がより好ましい。この量が20質量部以下であると感度の過度な低下を抑制できる傾向がある。この量を0.001質量部以上とすることで、第一の捕捉剤を配合することによる上記効果が得られやすくなる傾向がある。全感放射線性酸発生剤(上記(a)感放射線性酸−増感体発生剤と(c)感放射線性酸発生剤との合計)と第一の捕捉剤のレジスト材料中の使用割合としては、全感放射線性酸発生剤/第一の捕捉剤(モル比)=1.5以上300以下が好ましい。即ち、感度及び解像度の点から、上記モル比としては1.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターン寸法変化抑制の点から、300以下が好ましい。全感放射線性酸発生剤/第一の捕捉剤(モル比)としては、5.0以上200以下がより好ましい。
【0234】
(1)成分100質量部に対する(4)第二の捕捉剤の配合量としては、10質量部以下が好ましく、0.0005質量部以上5質量部以下がより好ましい。この量が10質量部以下であることにより、感放射線性増感体の生成が抑制されにくくなる傾向があり、一括露光中の感放射線性増感体による感度の上昇が得られやすくなる傾向がある。この量を0.0005質量部以上とすることで、第二の捕捉剤を配合することによる上記効果が得られやすくなる傾向がある。
【0235】
(1)成分100質量部に対する(5)架橋剤の配合量としては、40質量部以下が好ましく、0.1質量部以上25質量部以下がより好ましい。この量が40質量部以下であることにより、レジスト材料の溶解性が高くなり像のコントラストが低下することを抑制できる傾向がある。この量を0.1質量部以上とすることで、架橋剤を配合することによる上記効果が得られやすくなる傾向がある。
【0236】
(1)成分100質量部に対する(6)添加剤の配合量としては、30質量部以下が好ましく、0.1質量部以上10質量部以下がより好ましい。この量が30質量部以下であることにより、レジスト材料の特性が低下しにくくなる。この量を0.1質量部以上とすることでレジスト材料の優れたプロセスウィンドウを得ることができる傾向がある。
【0237】
(1)成分100質量部に対する(7)溶剤の配合量としては、200質量部以上10,000質量部以下が好ましく、300質量部以上5,000質量部以下がより好ましい。この量が10,000質量部以下であることにより、レジスト材料の特性が低下しにくくなる。この量を200質量部以上とすることでレジスト材料膜を形成しやすくなる。
【0238】
本実施形態のレジスト材料は、上記(1)〜(7)の成分を公知の方法で混合することにより製造することができる。
【0239】
(工程S3:パターン露光工程)
パターン露光工程S3では、上記膜形成工程S2で形成されたレジスト材料膜上に、所定のパターンの遮光マスクを配置する。その後、上記レジスト材料膜に、投影レンズ、電子光学系ミラー、又は反射ミラーを有する露光装置(放射線照射モジュール)から、上記マスクを介して第一の放射線が照射(パターン露光)される。
【0240】
パターン露光に用いられる上記第一の放射線は、電離放射線又は400nm以下の波長を有する非電離放射線である。上記非電離放射線の波長の上限としては250nmが好ましく、200nmがより好ましい。一方、上記非電離放射線の波長の下限としては、150nmが好ましく、190nmがより好ましい。
【0241】
なお、電離放射線は原子又は分子を電離させるのに十分なエネルギーを有する放射線である。これに対し、非電離放射線は、原子又は分子を電離させるのに十分なエネルギーを有しない放射線である。電離放射線としては、具体的には、ガンマ線、エックス線、アルファ線、重粒子線、陽子線、ベータ線、イオンビーム、電子線、極紫外線等が挙げられる。パターン露光に用いる電離放射線としては電子線、極紫外線及びイオンビームが好ましく、電子線及び極紫外線がより好ましい。非電離放射線としては、例えば遠紫外線、近紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、低周波等が挙げられる。パターン露光に用いる非電離放射線としては遠紫外線(波長190〜300nm)が好ましい。
【0242】
パターン露光の光源としては、例えば1keVから200keVの電子線、13.5nmの波長を有する極紫外線(EUV)、193nmのエキシマレーザー光(ArFエキシマレーザー光)、248nmのエキシマレーザー光(KrFエキシマレーザー光)が用いられることが多い。パターン露光における露光量は本実施形態の化学増幅型レジストを用いて一括露光する場合よりも少ない露光量でよい。上記パターン露光によりレジスト材料膜中の上記(a)〜(c)成分又は(d)〜(f)で示される基が分解して、酸と第二の放射線を吸収する感放射線性増感体とを発生する。
【0243】
露光には「スキャナ」と呼ばれるステップアンドスキャン方式の露光装置が広く用いられる。この方法では、マスクと基板を同期しながらスキャン露光することで、1ショットごとのパターンが形成される。この露光により、レジスト内で露光された箇所に選択的な反応が起こる。
【0244】
パターン露光工程S3で照射する上記第一の放射線の波長が100nm以上である場合、この第一の放射線は上記反射防止膜により吸光される。この場合における上記反射防止膜の消衰係数の下限としては、0.3が好ましく、0.33がより好ましく、0.35がさらに好ましい。一方、上記消衰係数の上限としては、0.95が好ましく、0.9がより好ましく、0.85がさらに好ましい。上記消衰係数が上記下限より小さいと、第一の放射線が基板において反射し、パターンの基板に近い領域が過度に露光されるおそれがある。逆に、上記消衰係数が上記上限を超えると、反射防止膜の材料が高コストとなり、レジストパターン形成におけるコストが増加するおそれがある。
【0245】
また、下記一括露光工程S4を実施するに先立って、パターン露光後工程S3の上記レジスト材料膜の上に、上記(a)若しくは(c)成分中の感放射線性酸発生剤、又は(d)若しくは(f)で示される基である感放射線性酸発生基が直接吸収する非電離放射線の波長の少なくとも一部を吸収する吸収膜を形成してもよい。吸収膜を形成することにより、下記一括露光工程S4における第二の放射線の照射により、パターン露光工程S3後の上記レジスト材料膜に残存する上記感放射線性酸発生剤又は感放射線性酸発生基からの直接の酸発生をさらに抑制できる。
【0246】
水素原子が置換されていないアルコール性水酸基を有する(b)感放射線性増感体発生剤(又は(e)感放射線性増感体前駆体基)を用いる場合、上記パターン露光工程S3後下記一括露光工程S4を実施するまでの間、上記レジスト材料膜を減圧雰囲気又は窒素若しくはアルゴンを含む不活性雰囲気に置くことが好ましい。レジスト材料膜を上記雰囲気下に置くことにより、露光中のレジスト材料膜の酸素への曝露、及びこの酸素によるラジカル反応の停止を抑制することができ、また、微量の塩基性化合物による酸のクエンチングを抑制することができることから、よりプロセスを安定化できる傾向がある。パターン露光工程S3後、一括露光工程S4を実施するまでの時間(保管時間)の上限としては、30分が好ましく、10分がより好ましい。保管時間が30分以下であることにより、感度の低下を抑制できる傾向がある。一方、水素原子が置換されたアルコール性水酸基を有する(b)感放射線性増感体発生剤(すなわち、ケタール化合物、アセタール化合物又はオルトエステル化合物等)を用いる場合、上記パターン露光工程S3後、下記一括露光工程S4を実施するまでの間、上記レジスト材料膜が存在する雰囲気をアミン除去フィルターで清浄化した大気中とすることが好ましい。上記(b)感放射線性増感体発生剤を用いる場合、上述のような酸素の影響は受けにくいのでアミン除去フィルターで清浄化した大気中で処理してもよい。レジスト材料膜を上記雰囲気下に置くことにより、微量の塩基性化合物による酸のクエンチングを抑制することができることから、よりプロセスを安定化できる傾向がある。パターン露光工程S3後、一括露光工程S4を実施するまでの時間(保管時間)の上限としては、30分が好ましく、10分がより好ましい。保管時間が30分以下であることにより、感度の低下を抑制できる傾向がある。
【0247】
本実施形態のパターン形成方法は、上記パターン露光工程S3後、下記一括露光工程S4前に、パターン露光工程S3を実施する露光装置から一括露光工程S4を実施する露光装置に上記基板を搬送する工程をさらに備えていてもよい。また、一括露光をインライン接続された塗布現像装置の中、又は露光機とのインターフェースに相当するモジュールで行ってよい。なお、上記(2)成分又がケタール化合物、アセタール化合物又はオルトエステル化合物を含む場合、及び上記(1’)ベース成分がケタール化合物基、アセタール化合物基又はオルトエステル化合物基を含む場合、本実施形態のパターン形成方法は、上記パターン露光工程S3後、下記一括露光工程S4前にベーク工程S3a(ポストパターンエクスポージャーベーク(PPEB又はPEB)と言うこともある)を備えていてもよい(
図2参照)。上記ベーク工程における加熱の温度としては、30℃以上150℃以下が好ましく、50℃以上120℃以下がより好ましく、60℃以上100℃以下がさらに好ましい。加熱時間としては、5秒以上3分以下が好ましく、10秒以上60秒以下がより好ましい。また上記ベークは、湿度を制御した環境下で行うことが好ましい。感放射線性増感体を生成する脱保護反応として加水分解反応を用いた場合、湿度が反応速度に影響するからである。パターン形成方法が上記ベーク工程S3aを備えることにより、アセタール化合物、オルトエステル化合物、又はケタール化合物等からカルボニル化合物への加水分解反応による感放射線性増感体発生を加速することができる。
【0248】
(工程S4:一括露光工程)
一括露光工程S4では、上記パターン露光工程S3後のレジスト材料膜全面(パターン露光部とパターン未露光部とを併せた全面)に、上記パターン露光における非電離放射線より長く、かつ200nmを超える波長を有する非電離放射線を照射する。
【0249】
一括露光に用いられる上記第二の放射線は、上記第一の放射線が非電離放射線である場合には、上記第一の放射線における非電離放射線の波長よりも長い波長を有する。また、上記第二の放射線は、200nmを超える波長を有する非電離放射線であり、250nmを超える波長を有する非電離放射線であることが好ましい。
【0250】
具体的には、一括露光工程S4では、上記パターン露光工程S3後のレジスト材料膜全面に、投影レンズ(又は光源)を有する高感度化モジュール(露光装置又は放射線照射モジュールということもある)から、上記第二の放射線を照射(一括露光)する。この一括露光としてはウエハ全面を一度に露光してもよく、局所的な露光を組み合わせたものでもよく、又は重ね合わせて露光してもよい。一括露光用の光源には、一般的な光源を用いることができ、パンドパスフィルターやカットオフフィルターを通すことで、所望とする波長に制御した水銀ランプ及びキセノンランプ等からの紫外線の他、LED光源、レーザーダイオード、レーザー光源等による帯域の狭い紫外線であってもよい。上記一括露光では、レジスト材料膜中のパターン露光部で発生した感放射線性増感体のみが放射線を吸収する。このため、一括露光では、パターン露光部において選択的に放射線の吸収が起こる。よって、一括露光中、パターン露光部においてのみ酸を継続的に発生させることができ、感度を大きく向上させることが可能となる。一方、パターン未露光部には酸が発生しないことから、レジスト材料膜中の化学コントラストを維持しつつ感度を向上させることができる。
【0251】
一括露光に用いられる上記第二の放射線は、上記第一の放射線が非電離放射線である場合には、上記第一の放射線における非電離放射線の波長よりも長い波長を有する。また、上記第二の放射線は、200nmを超える波長を有する非電離放射線であり、250nmを超える波長を有する非電離放射線であることが好ましく、近紫外線(波長200〜450nm)がより好ましい。
【0252】
一括露光工程S4では、パターン未露光部での酸発生反応を抑えるために、(1)ベース成分、感放射線性酸発生剤、感放射線性増感体発生剤が吸収可能な放射線の波長よりも長い波長を有する放射線で露光する必要がある。これらを考慮すると、一括露光における非電離放射線の波長の下限としては、280nmがより好ましく、320nmがさらに好ましい。より長い波長の放射線を吸収可能な感放射線性増感体を発生する場合、上記非電離放射線の波長は350nm以上であってもよい。ただし、上記非電離放射線の波長が長すぎる場合は、放射線増感反応の効率が落ちるため、ベース成分、感放射線性酸発生剤、感放射線性増感体発生剤が吸収可能な放射線の波長を避けつつも、感放射線性増感体が吸収可能なできるだけ短い波長の非電離放射線を用いることが望ましい。このような観点から、上記非電離放射線の波長の下限としては、450nmが好ましく、400nmがより好ましい。
【0253】
一括露光工程S4で照射する上記第二の放射線における上記反射防止膜の消衰係数の下限としては、0.1であり、0.15が好ましく、0.2がより好ましく、0.25がさらに好ましい。一方、上記消衰係数の上限としては、0.95が好ましく、0.9がより好ましく、0.85がさらに好ましい。
【0254】
本発明のように、感放射線性増感体を発生する成分と酸を発生する成分とを含有するレジスト材料を用いて形成したレジスト材料膜にパターン露光と一括露光とを行う二段露光リソグラフィプロセスでは、パターン露光のみを行うリソグラフィプロセスと比べレジスト材料膜への放射線の照射量が増加し易い。そのため、基板において反射した放射線がレジスト材料膜に影響し、パターン露光部の基板に近い側の領域における露光量が基板から遠い領域の露光量と比べ過度に大きくなる傾向がある。その結果、パターンの断面形状の矩形性の悪化や、パターン倒れの増加という不都合が生じ易い。
【0255】
本発明では、反射防止膜をレジスト材料膜の下に形成し、かつ上記反射防止膜の第二の放射線に対する消衰係数を上記範囲とすることで、第二の放射線の基板における反射に伴うレジスト材料膜の過度の露光を低減できる。その結果、レジストパターンの断面形状の矩形性等のパターン形状を良好なものとでき、かつパターン倒れを抑制できる。
【0256】
一方、上記消衰係数が上記下限より小さいと、レジスト材料膜の基板に近い側の領域における露光量が基板から遠い領域の露光量と比べ過度に大きくなり、その結果、パターンの断面形状の矩形性の悪化や、パターン倒れが増加するおそれがある。逆に、上記消衰係数が上記上限を超えると、反射防止膜の材料が高コストとなり、レジストパターン形成におけるコストが増加するおそれがある。
【0257】
パターン露光工程S3及び/又は一括露光工程S4は液浸リソグラフィ(液浸露光)によって実施されてもよく、ドライリソグラフィ(ドライ露光)によって実施されてもよい。液浸リソグラフィとは、レジスト材料膜と投影レンズとの間に液体を介在させた状態で行う露光をいう。これに対し、ドライリソグラフィとは、レジスト材料膜と投影レンズとの間に気体を介在させた状態、減圧下、又は真空中で行う露光をいう。
【0258】
また、パターン露光工程S3及び/又は一括露光工程S4における上記液浸リソグラフィは、上記膜形成工程S2において形成したレジスト材料膜又は保護膜と投影レンズとの間に屈折率1.0以上の液体を介在させた状態で行ってもよい。上記保護膜は反射防止又は反応安定性向上のためのものであることが好ましい。また、上記保護膜は液体の浸透を防ぎ、膜表面における撥水性を高め、液浸露光における液体に起因する欠陥を防止可能なものであることが好ましい。
【0259】
一括露光工程S4における上記液浸リソグラフィでは、上記液体が上記(a)若しくは(c)成分(感放射線性酸発生剤)、又は(d)若しくは(f)で示される基(感放射線性酸発生基)が直接吸収する第二の放射線の波長の少なくとも一部を吸収するものであってもよい。上記液浸リソグラフィに上記液体を用いることにより、一括露光工程S4における第二の放射線の照射によって、パターン露光工程S4後の上記レジスト材料膜に残存する上記感放射線性酸発生剤又は感放射線性酸発生基からの直接の酸発生をさらに抑制できる。
【0260】
上記パターン露光工程S3及び/又は上記一括露光工程S4をドライリソグラフィにて実施する場合、大気中、減圧雰囲気下及び不活性雰囲気下のいずれにおいても実施できるが、減圧雰囲気下又は窒素若しくはアルゴンを含む不活性雰囲気下で実施することが好ましく、さらに、実施の際の雰囲気における塩基性化合物濃度の上限としては20ppbが好ましく、5ppbがより好ましく、1ppbがさらに好ましい。
【0261】
(工程S5:ベーク工程)
ベーク工程S5では、上記一括露光工程S4後のレジスト材料膜が加熱(以下、「ポストフラッドエクスポージャベーク(PFEB)」又は「ポストエスポージャーベーク(PEB)」ともいう。)される。なお、本実施形態のパターン形成方法が、上記パターン露光工程S3後上記一括露光工程S4前にベーク工程S3aを備える場合、上記ベーク工程S3aを1stPEB工程、上記ベーク工程S5を2ndPEB工程ということがある(
図2参照)。加熱条件としては、例えば大気中、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、50℃以上200℃以下、10秒以上300秒以下とすることができる。加熱条件を上記範囲とすることにより、酸の拡散を制御でき、また、半導体ウエハの処理速度を確保できる傾向がある。ベーク工程S5では、上記パターン露光工程S3及び一括露光工程S4で発生した酸により、(1)ベース成分及び(1’)ベース成分の脱保護反応等の極性変化反応及び架橋反応等が起こる。また、レジスト材料膜内における放射線の定在波の影響によりレジスト側壁が波打つことがあるが、ベーク工程S5では反応物の拡散により上記波打ちを低減できる。
【0262】
(工程S6:現像工程)
現像工程S6では、上記ベーク工程S5後のレジスト材料膜を現像液に接触させる。上記ベーク工程S5におけるレジスト材料膜内の反応により、パターン露光部で選択的に現像液への溶解性が変わることを利用して現像し、レジストパターンが形成される。現像液はポジ型現像液とネガ型現像液とに分けることができる。
【0263】
ポジ型現像液としてはアルカリ現像液が好ましい。アルカリ現像液は、露光後のレジスト材料膜の極性が高い部分を選択的に溶かす。アルカリ現像液としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類(エタノールアミン等)、水酸化テトラアルキルアンモニウム(TAAH)が挙げられる。アルカリ現像液としてはTAAHが好ましい。TAAHとしては、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化メチルトリエチルアンモニウム、水酸化トリメチルエチルアンモニウム、水酸化ジメチルジエチルアンモニウム、水酸化トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム(即ち、コリン)、水酸化トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化ジメチルジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化ジエチルジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化メチルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化エチルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化テトラ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム等が挙げられる。
【0264】
ポジ型現像液には水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の2.38質量%水溶液が広く用いられている。
【0265】
アルカリ現像では、露光後にレジスト材料膜中で生成するカルボン酸や水酸基がアルカリ現像液中でイオン化し溶け出す現象を利用してパターンが形成される。現像後は、基板上に残留している現像液を除去するために、リンスと呼ばれる水洗処理が行われる。
【0266】
ネガ型現像液としては有機現像液が好ましい。有機現像液は、露光後のレジスト材料膜の極性が低い部分を選択的に溶かす。有機現像液はホールやトレンチ(溝)などの抜きパターンで解像性能とプロセスウィンドウを向上するために用いられる。この場合、レジスト材料膜中の溶媒と有機現像液との親和性の違いでパターン露光部とパターン未露光部の溶解コントラストを得る。極性が高い部分は有機現像液への溶解性が低く、レジストパターンとして残る。有機現像液としては、例えば2−オクタノン、2−ノナノン、2−へプタノン、3−へプタノン、4−へプタノン、2−へキサノン、3−へキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチル等が挙げられる。
【0267】
現像工程S6(リンス処理を含む)後のレジストパターンを加熱(ポストベークということもある)することもある。ポストベークにより、リンス処理後に残るリンス液を気化し除去することができ、レジストパターンを硬化させることができる。
【0268】
(工程S7)
工程S7では、上記現像工程S6後のレジストパターンをマスクとして下地である基板がエッチング又はイオン注入されることによってパターンが形成される。エッチングはプラズマ励起等の雰囲気下でのドライエッチングであってもよく、薬液中に浸漬するウェットエッチングであってもよい。エッチングにより基板にパターンが形成された後、レジストパターンが除去される。
【0269】
<反応のメカニズム>
以下、本実施形態に係るリソグラフィプロセスにおいて起こる反応のメカニズムについて説明する。
【0270】
まず、従来の化学増幅型レジストの典型的なリソグラフィプロセスは以下である。レジスト材料膜中の感放射線性酸発生剤(PAG)が分解し、パターン露光後に酸を発生する。その後、加熱にともなう酸触媒反応により、ベース成分の溶解特性が変化する。それにより、レジスト材料膜の現像液への溶解性が変化し現像が可能になる。
【0271】
一方、本実施形態に係るリソグラフィプロセスは、酸の発生に放射線増感を活用するため、従来のプロセスと比べて酸の発生量を増やすことができ、大幅に感度を増幅することができる。
【0272】
本実施形態に係るリソグラフィプロセスにおける反応体系は大きく下記の3つに分けられる。さらなる特性向上のために、これらの体系を相互に組み合わせてもよい。
【0273】
本実施形態に係るリソグラフィプロセスにおける第一の反応体系は、レジスト材料が(2)成分として上記(a)感放射線性酸−増感体発生剤を含有する、又はレジスト材料が(d)酸−感放射線性増感体発生基を有する(1’)ベース成分を含有する場合の体系である。この体系では、露光時に酸と感放射線性増感体の両方が(a)感放射線性酸−増感体発生剤から発生する。発生した感放射線性増感体はカルボニル基等を含むため、放射線の吸収波長が(a)感放射線性酸−増感体発生剤の吸収波長より長い波長にシフトする。発生した感放射線性増感体だけが吸収可能であり、かつ放射線増感により(a)感放射線性酸−増感体発生剤を分解できる波長を有する非電離放射線で一括露光を行うことにより、パターン露光部で選択的に酸発生量を増幅できる。酸発生後のベース成分における酸触媒反応は、従来のリソグラフィプロセスにおける反応と同様である。
【0274】
本実施形態に係るリソグラフィプロセスにおける第二の反応体系は、レジスト材料が(2)成分として上記(b)感放射線性増感体発生剤及び(c)感放射線性酸発生剤を含有する場合、又はレジスト材料が(e)感放射線性増感体前駆体基及び(f)感放射線性酸発生基を有する(1’)ベース成分を含有し、かつ(b)成分又は(e)で示される基が水素原子が置換されていないアルコール性水酸基を有する場合の体系である。この体系では、まずパターン露光時に(c)成分又は(f)で示される基から酸が発生し、同時に(b)成分又は(e)で示される基から感放射線性増感体が発生する。(b)成分又は(e)で示される基が水素原子が置換されていないアルコール性水酸基を有する場合、アルコール性水酸基とこのアルコール性水酸基が結合する炭素原子とが放射線増感作用に寄与するカルボニル基となる。この反応では、ラジカル又はカチオン等の短寿命の中間体を経由して感放射線性増感体が発生し、反応は常温で数秒以内の十分な短時間で起こることがある。発生した感放射線性増感体はカルボニル基等を含むため、(b)及び(c)成分並びに(e)及び(f)で示される基よりも放射線の吸収波長が長い波長側にシフトする。発生した感放射線性増感体だけが吸収可能であり、かつ放射線増感により(c)成分又は(f)で示される基を分解できる波長を有する非電離放射線で一括露光を行うことにより、パターン露光部で選択的に酸発生量を増幅できる。酸発生後のベース成分の酸触媒反応は、従来のリソグラフィプロセスにおける反応と同様である。
【0275】
本実施形態に係るリソグラフィプロセスにおける第三の反応体系は、レジスト材料が(2)成分として上記(b)感放射線性増感体発生剤及び(c)感放射線性酸発生剤を含有する場合、又はレジスト材料が(e)感放射線性増感体前駆体基及び(f)感放射線性酸発生基を有する(1’)ベース成分を含有し、かつ(b)成分又は(e)で示される基が水素原子が置換されているアルコール性水酸基を有する場合の体系である。この体系では、まずパターン露光時の(c)成分又は(f)で示される基から酸が発生し、発生した酸が触媒となって(b)成分又は(e)で示される基から感放射線性増感体が発生する。水素原子が置換されているアルコール性水酸基を有する(b)成分としては、例えばアセタール化合物、ケタール化合物及びオルトエステル化合物等が挙げられる。アセタール化合物及びケタール化合物は、酸触媒反応によりそれぞれ感放射線性増感体であるアルデヒド及びケトンを発生する。また、オルトエステル化合物は、酸触媒反応により感放射線性増感体であるカルボン酸エステルを発生する。また、上記(b)成分は、OBOで保護したカルボン酸の脱保護反応により感放射線性増感体であるカルボン酸を発生してもよい。この反応体系では、パターン露光で発生した酸が触媒となって感放射線性増感体が発生するため、酸の触媒としての失活を抑えることができ、その結果感放射線性増感体の発生の反応を制御できる。発生した感放射線性増感体は、アルデヒド、ケトン、カルボン酸エステル、カルボン酸等のカルボニル基を有する化合物であるため、(b)及び(c)成分並びに(e)及び(f)で示される基よりも放射線の吸収波長が長波長側にシフトする。発生した感放射線性増感体だけが吸収可能であり、かつ放射線増感により(c)成分又は(f)で示される基を分解できる波長を有する非電離放射線で一括露光を行うことにより、パターン露光部で選択的に酸発生量を増幅できる。酸発生後のベース成分の酸触媒反応は、従来のリソグラフィプロセスにおける反応と同様である。
【0276】
次に、本実施形態に係るリソグラフィプロセスにおける反応を各工程ごとに説明する。反応は上記第二の反応体系を中心に、必要に応じて、第三及び第一の反応体系における反応を加えて説明する。
【0277】
(パターン露光工程S3における反応)
パターン露光工程S3では、レジスト材料膜に第一の放射線が照射(パターン露光)される。上記第一の放射線が電離放射線である場合に想定される反応例を第二の反応体系を中心に以下に示す。ただし、想定される反応は以下に記載する反応に限定されない。
【0278】
パターン露光工程S3では、上記(c)成分又は上記(f)で示される基に関して、以下のような反応(第1の酸発生機構)が起こる。以下では(c)成分を例に挙げて説明するが(f)で示される基においても同様に第1の酸発生機構が起こる。
【0279】
【化73】
上記式(i)中の・は遊離ラジカルを示す。上記反応では、ベース成分(Base)に極紫外線(EUV)/電子線(EB)等の電離放射線(Ionizing radiation)を照射することにより、ベース成分がイオン化し、電子を発生している。
【0280】
【化74】
上記式(ii)中のR
aR
bI
+X
−は、上記(c)成分(PAG)の例としてのヨードニウム塩化合物である。X
−は酸のアニオンであり、R
a及びR
bは、上記式(1)におけるR
3及びR
4等と同義である。上記反応では、上記式(i)で生じた電子を、上記(c)成分、又は上記(f)で示される基が捕捉し、上記式のように分解する。その結果、酸のアニオンX
−が発生する。
【0281】
【化75】
上記反応では、上記式(i)で生じたベース成分のプロトン付加物と、上記式(ii)等で生じた酸のアニオンX
−とが反応し、酸が発生する。以上が、パターン露光工程S3における第1の酸発生機構である。
【0283】
パターン露光工程S3における上記酸発生機構を1つの式にまとめると、上記式(iv)のように記載できる。
【0284】
一方、パターン露光工程S3では、(b)成分又は(e)で示される基に関して、例えば以下のような反応(第1の感放射線性増感体発生機構)が起こる。ただし、ここに記載する反応は一部でありすべての反応機構を網羅しているものではない。以下では(b)成分を例に挙げて説明するが(e)で示される基においても同様に第1の感放射線性増感体発生機構が起こる。また、以下では、第二の反応体系における(b)成分、すなわち(b)成分がアルコール化合物であり、ヒドロキシル基の水素原子が置換されていない場合における(b)成分の反応例を説明する。
【0285】
【化77】
上記式(v)において、R
cR
dCH(OH)は上記(b)成分(Precursor to photosensitizer)の例としての第2級アルコール化合物である。R
c及びR
dは、上記式(VI)におけるR
8〜R
10等と同義である。上記反応では、上記式(ii)等で生成した遊離ラジカルを有するR
b・と、上記第2級アルコール化合物とが反応して、上記第2級アルコール化合物から水素が引き抜かれ、ヒドロキシル基の根元に炭素ラジカルを有する第2級アルコール化合物が生成する。
【0286】
【化78】
上記反応では、第2級アルコール化合物中の炭素ラジカルが、上記(c)成分又は上記(f)で示される基が結合したベース成分に電子を受け渡し、これらを分解する。分解により生成した遊離ラジカルを有するR
b・がさらに上記式(v)の反応に供され、上記式(v)及び(vi)の反応が連鎖的に進行する。上記式(v)及び(vi)の連鎖的な反応機構は、ラジカル連鎖型酸発生機構とも言う。
【0287】
【化79】
上記式(vi)で生じた第2級アルコール化合物のカチオンと、上記式(vi)で生成した酸のアニオンX
−とが反応し、感放射線性増感体(Photosensitizer)であるケトン化合物及び酸が発生する。発生したケトン化合物は、上記一括露光工程S4において感放射線性増感体として作用する。以上がパターン露光工程S3における第1の感放射線性増感体発生機構である。
【0288】
【化80】
パターン露光工程S3における上記アルコール化合物の上記感放射線性増感体発生機構を1つの式にまとめると、上記式(viii)のように記載できる。
【0289】
次に、第一の放射線が400nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下の波長を有する非電離放射線をである場合における反応例を以下に示す。
【0290】
パターン露光工程S3では、上記(c)成分又は上記(f)で示される基に関して、さらに以下のような反応(第2の酸発生機構)が起こる。以下では(c)成分を例に挙げて説明するが(f)で示される基においても同様に第2の酸発生機構が起こる。
【0291】
【化81】
上記反応では、上記(c)成分(PAG)の例としてのヨードニウム塩化合物にArF/KrF等の電離放射線(Non ionizing radiation)を照射することにより、感放射線性酸発生剤が直接励起して分解し、酸が発生する。以上がパターン露光工程S3における第2の酸発生機構である。
【0292】
一方、パターン露光工程S3では、(b)成分又は(e)で示される基に関して、以下のような反応(感放射線性増感体発生機構)が起こる。以下では(b)成分を例に挙げて説明するが(e)で示される基においても同様に第2の感放射線性増感体発生機構が起こる。
【0293】
【化82】
上記反応では、ヨードニウム塩化合物から発生したR
b+カチオンにより上記(b)成分である第2級アルコール化合物のヒドロキシル基の根元の炭素原子から水素が引き抜かれ、第2級アルコール化合物のカルボカチオンが生じる。酸のアニオンX
−とカルボカチオンからの水素イオンが対をなすことで酸が発生し、同時に感放射線性増感体であるケトン化合物が生成する。以上が、パターン露光工程S3における第2の感放射線性増感体発生機構例である。アセタール化合物基又はケタール化合物基を有するアルコール化合物からも、放射線発生酸触媒による加水分解脱保護反応等により、同様に感放射線性増感体として働くケトン化合物(カルボニル化合物)が生成できる。
【0294】
また、第三の反応体系における(b)成分、すなわち(b)成分がアセタール化合物又はケタール化合物である場合の感放射線性増感体の発生機構は第1の感放射線性増感体発生機構と一部異なる。まず、第1及び第2の放射線酸発生機構により酸が発生する。発生した酸がアセタール化合物又はケタール化合物に作用し、感放射線性増感体であるケトン化合物が発生する。すなわち、第1及び第2の放射線酸発生機構により発生した酸が、アセタール化合物又はケタール化合物からケトン化合物が発生する反応の触媒となる。発生したケトン化合物は、上記一括露光工程S4において感放射線性増感体として作用する。以上がパターン露光工程S3における第3の感放射線性増感体発生機構である。
【0295】
第三の反応体系の、パターン露光工程S3における第3の感放射線性増感体発生機構をより具体的に説明する。まず、上記第二の体系と同様に、下記式(xxvii)のとおりに酸が発生する。
【0297】
パターン露光により発生した酸が触媒となって、(b)成分又は(e)で示される基の構造が変化し、以下のように感放射線性増感体が発生する。この構造変化の反応(脱保護反応)はパターン露光後一括露光前にベークを行うことで加速できる。また、この構造変化反応の活性化エネルギーを上げることで脱保護反応の反応速度を落とし、かつ捕捉剤によってパターン未露光部の酸を捕捉(中和)した後に上記ベークを行うことにより、レジスト材料膜中の酸の潜像のコントラストをさらに上げることができる。また、上記脱保護反応の活性化エネルギーを上げる(外れにくい保護基をつける)ことにより、常温での化学増幅型レジスト材料の保存安定性を向上できる。
【0298】
第三の反応体系では、例えばカルボニル基を保護基で置換(保護)したものを(b)成分又は(e)で示される基とする。パターン露光で発生した酸が触媒となって(b)成分又は(e)で示される基の脱保護反応を引き起こし、感放射線性増感体としてのカルボニル化合物が発生する。この反応で発生した感放射線性増感体は、(b)及び(c)成分並びに(e)及び(f)で示される基よりも放射線の吸収波長が長波長側にシフトする。発生した感放射線性増感体だけが吸収可能である波長を有する非電離放射線で一括露光をすることにより、パターン露光部で選択的に感放射線性増感体を励起できる。
【0299】
カルボニル化合物を保護することで形成できる感放射線性増感体発生剤としては、アセタール化合物、ケタール化合物、オルトエステル化合物等が挙げられる。
【0300】
ケタール化合物を感放射線性増感体発生剤として用いるときの脱保護反応(酸触媒加水分解反応)による感放射線性増感体発生は下記式(xviii)のように起こる。
【0302】
より具体的には、下記のような酸触媒加水分解反応により、ケタール化合物はケトン化合物に構造変換する。
【0304】
アセタール化合物を感放射線性増感体発生剤として用いるときの脱保護反応(酸触媒加水分解反応)による感放射線性増感体発生は下記式(xix)のように起こる。
【0306】
より具体的には、下記のような酸触媒加水分解反応により、アセタール化合物はアルデヒド化合物に構造変換する。
【0308】
オルトエステル化合物を感放射線性増感体発生剤として用いるときの脱保護反応(酸触媒加水分解反応)による感放射線性増感体発生は下記式(xx)のように起こる。オルトエステル化合物は、脱保護反応によってカルボン酸エステル化合物に分解される。
【0310】
より具体的には、下記のような酸触媒加水分解反応により、オルトエステル化合物はカルボン酸エステル化合物に構造変換する。
【0312】
オルトエステル化合物の中でも、カルボン酸をOBO(4−メチル−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン−1−イル)で保護したOBOエステル化合物は、脱保護反応により、下記式(xxi)のようにカルボン酸を発生する。そのため、OBOで保護して得られる感放射線性増感体発生剤は、カルボキシル基を有する感放射線性増感体を発生することができる。この感放射線性増感体を使用することで、感放射線性増感体を発生させるとともにレジスト材料膜の極性を上げられるため、レジスト材料膜の溶解コントラストを向上することができる。
【0314】
より具体的には、下記のような酸触媒加水分解反応により、OBOエステル化合物はカルボン酸に構造変換する。
【0316】
第一の反応体系で感放射線性増感体が生成する反応は以下である。第一の反応体系では、パターン露光により酸と感放射線性増感体を発生する(a)成分が、パターン露光時に酸と感放射線性増感体を同時に発生する。一例を以下に示す(第6の酸発生機構)。
【0318】
パターン露光工程S3では、上記成分(a)、上記(d)で示される基が結合したベース成分に関して、上記酸発生機構及び上記感放射線性増感体発生機構の両方が起こる。
【0319】
本実施形態において、上記(2)成分は(a)成分、(a)〜(c)成分中の任意の2つの成分、又は(a)〜(c)成分の全てを含有する。従って、本実施形態における上記パターン露光工程S3では上記酸発生機構及び上記感放射線性増感体発生機構の両方が起こる。
【0320】
(一括露光工程S4における反応)
一括露光工程S4では、レジスト材料膜に第二の放射線が照射(一括露光)される。感放射線性増感体発生剤は、パターン露光時にはパターン露光のエネルギーの吸収が十分小さい必要があるが、パターン露光のエネルギーで化学構造変換が起こり感放射線性増感体を発生する。上記化学構造変換により紫外線領域で光吸収のスペクトルがシフトし、感放射線性増感体は感放射線性増感体発生剤よりも長い波長側で光を吸収するようになる。この化学構造変換による光吸収シフトが大きくなるように感放射線性増感体発生剤の材料を選択することが望ましい。このような化学構造変換としては、例えばアルコール化合物又はケタール化合物がケトン化合物に変わる化学変化が挙げられる。以下に一括露光工程S4における反応を示す。以下では(b)成分及び(c)成分を例に挙げて説明するが、(a)成分及び(d)〜(f)で示される基においても同様の反応が起こる。つまり、第一〜第三の反応体系に共通して起こる放射線増感による酸の発生量の増幅について、まず、第二及び第三の反応体系の例を中心に示す。これらの反応は、一括露光による感放射線性増感体の励起と、励起状態の感放射線性増感体が引き起こす感放射線性酸発生剤の分解による酸の発生とからなる。励起状態の感放射線性増感体が感放射線性酸発生剤を分解する反応機構としては主に電子移動によるものと励起移動によるものとに大きく分けられる。これらの増感反応は連鎖的に起こるため、一括露光による酸の発生量を大幅に増幅でき、レジストの感度が大きく向上する。
【0321】
【化93】
式(xi)中、R
cR
dC=Oはパターン露光工程S3で発生したケトン化合物であり、R
aR
bI
+X
−はパターン露光工程S3後も一部残っている(c)成分(PAG)の例としてのヨードニウム塩化合物である。また、式(xi)中、*は励起状態を示し、*(S)は一重項励起状態であり、*(T)は三重項励起状態である。上記反応では、パターン露光工程S3で発生した感放射線性増感体であるケトン化合物が、非電離放射線の照射により励起される。励起されたケトン化合物はまず一重項励起状態となるが、系間交差を経て一部三重項励起状態を生じる。
【0322】
【化94】
上記式(xi)の反応は一重項励起状態と三重項励起状態を特定せずに、式(xi’)のようにも記載できる。
【0323】
一括露光工程S4では、励起状態となった感放射線性増感体によって、(c)成分(PAG)が間接的に分解し酸が発生する。一括露光工程S4における上記酸発生機構としては、主に第3の酸発生機構(電子移動増感型酸発生機構)、第4の酸発生機構(エネルギー移動増感型酸発生機構)、及び第5の酸発生機構(水素引抜型酸発生機構)が挙げられる。
【0324】
【化95】
式(xii)は上記第3の酸発生機構(電子移動増感型酸発生機構)を示す反応式である。上記反応では、励起状態のケトン化合物から、パターン露光工程S3後も残っている上記ヨードニウム塩化合物(PAG)に電子が移動して、ヨードニウム塩化合物が分解することにより感放射線性増感体及び酸が発生している。電子移動による第3の酸発生機構が実現するためには、感放射線性増感体の酸化電位が十分低いこと、PAGの還元電位が十分高いこと、一括露光のエネルギーが電子移動を引き起こせるレベルに高いこと、及びその結果、放射線増感の電子移動反応の自由エネルギーがマイナスになり自発的に反応が進むことが必要である。感放射線性増感体の酸化電位を下げるためには、ケトンの部分に共役が広がっている化合物を使い、電子供与性の高い基を導入ことが望ましいと考えられる。
【0325】
【化96】
上記式(xiii)は上記第3の酸発生機構で起こる電子移動の具体例である。
【0326】
電子移動により感放射線性増感体のカチオンラジカルが生成する。式(xiii)の生成物は、次のように反応し酸を生成する。感放射線性増感体のカチオンラジカルがフェニルラジカルと反応した場合における第3の酸発生機構(電子移動増感型酸発生機構)は次のとおりである。
【0328】
感放射線性増感体のカチオンラジカルがポリマー(P0LY−H)と反応した場合における第3の酸発生機構(電子移動増感型酸発生機構)は次のとおりである。
【0330】
【化99】
式(xiv)及び式(xv)は上記第4の酸発生機構(エネルギー移動増感型酸発生機構)を示す反応式である。式(xiv)では、ケトン化合物からヨードニウム塩化合物に励起状態が移動するとともに(三重項励起移動)感放射線性増感体が発生し、式(xv)では、励起状態のヨードニウム塩化合物が分解することにより酸が発生している。感放射線性増感体からPAGへの三重項増感反応を用いる場合は、一括露光の波長で感放射線性増感体を一重項励起状態に励起でき、かつ感放射線性増感体の三重項励起状態のエネルギー準位が、PAGの三重項励起状態のエネルギー準位より高いことが必要になる。
【0331】
【化100】
式(xvi)は(b)成分がヒドロキシル基を有する感放射線性増感体発生剤である場合に起こる第5の酸発生機構(水素引抜型酸発生機構)を示す反応式である。上記反応では、励起状態のケトン化合物が、パターン露光工程S3後も残っている第2級アルコール化合物の水素を引き抜くことで遊離ラジカルを発生し、発生したラジカルからヨードニウム塩化合物に電子が移動することで感放射線性増感体及び酸が発生する。
【0332】
第一の反応体系でも、一括露光時には、(c)成分である感放射線性酸発生剤(PAG)が主に吸収する波長を有する放射線ではなく、感放射線性増感体が主に吸収する波長を有する放射線で露光が行われる。そのことにより、感放射線性増感体が発生している部分でだけ酸と感放射線性増感体が追加で発生する(第7の酸発生機構)。下記式では感放射線性酸発生剤(PAG)としてヨードニウム塩を用いているが、スルホニウム塩等の他の感放射線性酸発生剤の場合も同様に酸が発生する。
【0334】
本実施形態のパターン形成方法は、上記パターン露光工程S3及び上記一括露光工程S4を備えることにより、露光後に発生する酸をパターン露光された部分にのみ大幅に増加させることができる。
【0335】
図4は一括露光時のレジスト材料膜のパターン露光部の吸光度と、未露光部の吸光度とを示すグラフである。レジスト材料膜のパターン露光されていない部分(パターン未露光部)では比較的短い波長を有する紫外線には吸収を示すものの、長い波長を有する紫外線には吸収を示さない。一方、レジスト材料膜のパターン露光された部分(パターン露光部)では上述のように、酸及び感放射線性増感体が発生する。発生した感放射線性増感体は200nmを超える波長を有する非電離放射線を吸収するものであり、比較的長い波長を有する紫外線に吸収を示すものである。一括露光ではパターン露光のようにマスクを用いずにレジスト材料膜の全面に対して放射線が照射されるが、パターン未露光部では一括露光工程S4における第二の放射線の吸収は少ない。従って、一括露光工程S4では、パターン露光部において主に上述の第3〜5及び第7の酸発生機構が起こる。このため、一括露光中にパターン露光部のみで酸を継続的に発生させることができ、リソグラフィ特性を維持しながら感度を向上させることができる。
【0336】
図5(a)は従来の化学増幅型レジスト材料中の酸濃度分布を示すグラフである。
図7のように極紫外線(EUV)等でパターン露光のみを行った場合、十分な酸を発生させることができず感度が低くなる。感度を向上させるために露光量を上げると、レジストパターンの潜像が劣化(リソグラフィ特性が低下)することから、感度とリソグラフィ特性との両立が困難である。
図5(b)は本実施形態に係る化学増幅型レジスト材料中の感放射線性増感体濃度分布及び酸濃度分布を示すグラフである。パターン露光では、レジストパターンの潜像に優れるものの十分な酸が発生していない。しかし、一括露光後には、パターン露光で発生した感放射線性増感体によりパターン露光部でのみ酸の量を増加させることができ、レジストパターンの優れた潜像を維持しながら少ない露光量で感度を向上させることができる。一括露光時の感放射線性増感体による酸発生機構は室温で起こるため、酸発生時の潜像のにじみが少なく、解像度を維持したまま大幅な高感度化が可能となる。
【0337】
図6(a)は従来の化学増幅型レジスト材料中の酸濃度分布を示すグラフであり、パターン露光及び一括露光をともに極紫外線(EUV)等で行った場合の酸濃度分布を示すものである。パターン露光では酸の発生量は少ないものの、レジストパターンの優れた潜像が維持されている。しかし、一括露光ではレジスト材料膜の全面で酸が発生する。感度を向上させるために露光量を上げると、レジストパターンの潜像が大きく劣化(リソグラフィ特性が低下)することから、感度とリソグラフィ特性との両立が困難である。
図6(b)は
図5(b)と同様に本実施形態に係る化学増幅型レジスト材料中の感放射線性増感体濃度分布及び酸濃度分布を示すグラフである。
図6(b)においても、
図5(b)と同様に、パターン露光部でのみ酸の量を増加させることができ、レジストパターンの優れた潜像を維持しながら少ない露光量で感度を向上させることができる。
【0338】
<半導体デバイス>
本実施形態に係る半導体デバイスは、上記方法によって形成されたパターンを用いて製造される。
図3(a)〜(c)は本実施形態の半導体デバイスの製造工程の一例を示した断面図である。
【0339】
図3(a)はレジストパターン形成工程を示す断面図であり、半導体ウエハ1と、上記半導体ウエハ1上に形成された被エッチング膜3と、上記パターン形成方法により上記被エッチング膜3上に形成されたレジストパターン2との断面図である(現像工程S6終了後に相当)。被エッチング膜としては、例えばアクティブレイヤー、下層絶縁膜、ゲート電極膜、上層絶縁膜等が挙げられる。被エッチング膜3とレジストパターン2との間には、図示しない反射防止膜が形成される。また、被エッチング膜3とレジストパターン2との間にはレジスト密着性改善のための下層膜、レジスト形状改善のための下層膜等が設けられていてもよい。また、多層マスク構造を採用してもよい。
図3(b)はエッチング工程を示す断面図であり、半導体ウエハ1と、レジストパターン2と、レジストパターン2をマスクとしてエッチングされた被エッチング膜3の断面図である。被エッチング膜3がレジストパターン2の開口部の形状に沿ってエッチングされている。
図3(c)は、半導体ウエハ1と、レジストパターン2が除去された後のエッチングされた被エッチング膜3のパターンとを備えるパターン基板10の断面図である。
【0340】
この被エッチング膜3のパターンを備える基板を用い、半導体デバイスを形成できる。この形成方法としては、例えばレジストパターン2が除去された被エッチング膜3のパターン間に配線を埋め込み、さらにデバイス素子を基板上に積層する方法等が挙げられる。
【0341】
<リソグラフィ用マスク>
本実施形態に係るリソグラフィ用マスクは、上記方法によって形成されたレジストパターンを用い、基板を加工して製造される。この製造方法としては、例えばガラス基板表面又はガラス基板表面に形成されたハードマスクを、レジストパターンを用いてエッチングする方法が挙げられる。ここで、リソグラフィ用マスクには、紫外線又は電子線を用いた透過型マスク、EUV光を用いた反射型マスク等が含まれる。リソグラフィ用マスクが透過型マスクの場合、遮光部又は位相シフト部をレジストパターンでマスクして、エッチングで加工することで製造できる。また、リソグラフィ用マスクが反射型のマスクの場合、レジストパターンをマスクにして、エッチングで吸光体を加工することで製造できる。。
【0342】
<ナノインプリント用テンプレート>
本実施形態に係るナノインプリント用テンプレートも、上記方法によって形成されたレジストパターンを用いて製造できる。この製造方法としては、例えばガラス基板表面又はガラス基板表面形成されたハードマスク表面にレジストパターンを形成し、エッチングで加工する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0343】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本実施例における物性値の測定方法を以下に示す。
【0344】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
重合体のMw及びMnは、GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本、以上東ソー社)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、試料濃度1.0質量%、試料注入量100μL、カラム温度40℃の分析条件で、検出器として示差屈折計を使用し、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0345】
[
13C−NMR分析]
重合体の構造単位の含有割合を求めるための
13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子社の「JNM−ECX400」)を使用し、測定溶媒としてCDCl
3を用い、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として行った。
【0346】
<(1)ベース成分の合成>
(1)ベース成分の合成に用いた単量体を下記に示す。
【0347】
【化102】
【0348】
[合成例1]
上記化合物(M−1)55g(50モル%)、上記化合物(M−2)45g(50モル%)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3gを、メチルエチルケトン300gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を78℃に保持して、6時間重合させた。重合後、反応溶液を2,000gのメタノール中に滴下して、重合体を凝固させた。次いで、この重合体を300gのメタノールで2回洗浄し、得られた白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥し、(1)ベース成分としての重合体(S−1)を得た。重合体(S−1)は、Mwが7,000、Mw/Mnが2.10であった。また、
13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)及び化合物(M−2)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ52モル%及び48モル%であった。
【0349】
[合成例2]
上記化合物(M−3)55g(42モル%)、上記化合物(M−1)45g(58モル%)、AIBN3g及びt−ドデシルメルカプタン1gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル150gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合させた。重合後、反応溶液を1,000gのn−ヘキサン中に滴下して、重合体を凝固精製した。次いで、この重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、さらに、メタノール150g、トリエチルアミン37g及び水7gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行って、(M−3)に由来する構造単位の脱アセチル化を行った。反応後、溶媒及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体をアセトン150gに溶解した後、2,000gの水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥し、(1)ベース成分としての重合体(S−2)を得た。重合体(S−2)は、Mwが6,000、Mw/Mnが1.90であった。また、
13C−NMR分析の結果、p−ヒドロキシスチレンに由来する構造単位及び化合物(M−1)に由来する構造単位の含有割合は、それぞれ50モル%及び50モル%であった。
【0350】
【表2】
【0351】
<(2)成分>
[(b)感放射線性増感体発生剤]
(b)感放射線性増感体発生剤としては、以下の化合物を使用した。
B−1:下記式(B−1)で表される化合物
B−2:下記式(B−2)で表される化合物
【0352】
【化103】
【0353】
[(b)成分の吸光度測定]
表3に、(b)成分及びこの(b)成分に由来する増感剤を併せて示す。また、これらの(b)成分及び(b)成分に由来する増感剤を、それぞれ0.0001質量%のシクロヘキサン溶液となるように調製した。この調製溶液について、シクロヘキサンを参照溶媒として分光光度計(日本分光社の「V−670」)を用いて吸光度を測定した。
【0354】
上記吸光度は、波長250nm以上600nm以下の各波長において、測定溶液の吸光度から参照溶媒の吸光度を差し引くことで求めた。波長300nm以上450nm以下の全波長領域における吸光度の測定値が0.01未満である場合は「透明」と評価し、上記全波長領域において吸光度が0.01以上となる波長が少しでもあった場合を「吸収あり」と評価した。評価結果を下記表4に示す。なお、吸光分析の測定に用いた溶媒であるシクロヘキサンの透過率は、波長250nm以上600nm以下の各波長領域の全てにおいて95%以上であることを確認した。
【0355】
【表3】
【0356】
【表4】
【0357】
[(c)感放射線性酸発生剤]
C−1:下記式(C−1)で表される化合物
【0358】
【化104】
【0359】
<化学増幅型レジスト材料の調製>
化学増幅型レジスト材料の調製に用いた(1)ベース成分及び(2)成分以外の各成分を以下に示す。
【0360】
(第一の捕捉剤)
E−1:下記式(E−1)で表される化合物
E−2:下記式(E−2)で表される化合物
【0361】
【化105】
【0362】
(溶剤)
G−1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
G−2:乳酸エチル
【0363】
[調製例1]
(1)ベース成分としての(S−1)100質量部、(b)感放射線性増感体発生剤としての(B−1)5質量部、(c)感放射線性酸発生剤としての(C−1)20質量部、第一の捕捉剤としての(E−1)2.5質量部、並びに溶剤としての(G−1)4,300質量部及び(G−2)1,900質量部を混合し、得られた混合液を孔径0.20μmのメンブランフィルターでろ過し、化学増幅型レジスト材料(R−1)を調製した。
【0364】
[調製例2〜4]
表5に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は調製例1と同様に操作して各化学増幅型レジスト材料を調製した。なお「−」はその成分を添加しなかったことを示す。
【0365】
【表5】
【0366】
<反射防止膜形成用組成物の調製>
[調製例5]
コンデンサー、温度計、攪拌装置を備えた反応装置に2,7−ジヒドロキシナフタレン100質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100質量部及びパラホルムアルデヒド50質量部を仕込み、蓚酸2質量部を添加した。その後、この混合物を脱水しながら120℃に昇温し5時間反応させることで、下記式(K−1)で表される構造単位を有する樹脂(T−1)を得た。この樹脂(T−1)の重量平均分子量(Mw)は2,000であった。
【0367】
【化106】
【0368】
次いで、上記樹脂(T−1)7質量部をプロピレングリコールモノメチルアセテート92質量部に溶解させ、孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過することで反射防止膜形成用組成物(U−1)を調製した。
【0369】
[調製例6]
温度計を備えたセパラブルフラスコに、アセナフチレン100質量部、トルエン78質量部、ジオキサン52質量部部及びAIBN3質量部を仕込み、窒素雰囲気下、70℃で5時間攪拌した。次いで、p−トルエンスルホン酸1水和物5.2質量部及びパラホルムアルデヒド40質量部を添加し、120℃に昇温して6時間攪拌した。得られた反応溶液を多量のイソプロパノール中に投入し、沈殿した樹脂をろ過により採取した。この沈殿物を40℃で減圧乾燥することで、下記式(K−2)で表される構造単位を有する樹脂(T−2)を得た。得られた樹脂(T−2)の重量平均分子量(Mw)は20,000であった。
【0370】
【化107】
【0371】
次いで、樹脂(T−2)7質量部、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート0.5質量部及び4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール0.5質量部をシクロヘキサノン92質量部に溶解させ、孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過することで反射防止膜形成用組成物(U−2)を調製した。
【0372】
<シリコン含有膜形成用組成物の調製>
[調製例7]
シュウ酸1.27gを水12.72gに加熱溶解させシュウ酸水溶液を調製した。その後、テトラメトキシシラン14.05g、メチルトリメトキシシラン5.03g、フェニルトリメトキシシラン10.99g、及びプロピレングリコールモノエチルエーテル58.04gを入れたフラスコに、冷却管と、上記調製したシュウ酸水溶液を入れた滴下ロートとを配設した。次いで、上記フラスコをオイルバスにて60℃に加熱し、上記シュウ酸水溶液を10分かけて滴下した後、60℃で4時間反応させた。反応終了後、反応溶液の入ったフラスコを放冷してからエバポレーターに配設し、反応により生成したメタノールを除去することでポリシロキサン(A−1)含有溶液75.0gを得た。このポリシロキサン(A−1)含有溶液の固形分濃度は、18.0質量%であった。また、このポリシロキサン(A−1)のMwは2,100であった。
【0373】
上記ポリシロキサン(A−1)含有溶液9.70質量部、及び架橋促進剤としてのN−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン0.05質量部を、溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート68.74質量部及びプロピレングリコールモノエチルエーテル21.51質量部に溶解させた。この溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過することでシリコン含有膜形成用組成物(P−1)を得た。
【0374】
[実施例1]
(反射防止膜及びシリコン含有膜の形成)
東京エレクトロン社の「クリーントラックACT−8」内で、シリコンウエハ上に上記反射防止膜形成用組成物(U−1)をスピンコートし、180℃で60秒焼成した後、350℃で120秒焼成することで平均厚み160nmの反射防止膜を形成した。次いで、この反射防止膜上に上記シリコン含有膜形成用組成物(P−1)をスピンコートし、215℃で60秒焼成することで平均厚み33nmのシリコン含有膜を形成した。
【0375】
(レジスト膜の形成)
その後、上記シリコン含有膜上に化学増幅型レジスト材料(R−1)をスピンコートし、110℃、60秒の条件でPBを行うことで平均厚み50nmのレジスト材料膜を形成した。
【0376】
(電子線の照射)
続いて、簡易型の電子線描画装置(日立製作所社の「HL800D」、出力50KeV、電流密度5.0アンペア/cm
2)を用いてレジスト材料膜に電子線を照射し、パターニングを行った。このパターニングとしては、マスクを用い、線幅150nmのライン部と、隣り合うライン部によって形成される間隔が150nmのスペース部とからなるライン・アンド・スペースパターン(1L1S)とした。電子線の照射後、続いて以下(a)又は(b)の操作を行った。
【0377】
(操作(a):一括露光なし)
電子線の照射後、上記クリーントラックACT−8内で、110℃、60秒の条件でPEBを行い、次いで上記クリーントラックACT−8内で、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用い、23℃で1分間、パドル法により現像した。現像後、純水での水洗及び乾燥によりポジ型レジストパターンを形成した。
【0378】
(操作(b):一括露光あり)
電子線の照射後、ブラックライト(東芝社、波長320nm)を用い、レジスト材料膜の全面を10分間一括露光した。次いで、上記クリーントラックACT−8内で、110℃、60秒の条件でPEBを行った。その後、上記操作(a)と同様にして現像、水洗及び乾燥を行いポジ型レジストパターンを形成した。
【0379】
[実施例2〜4及び比較例1〜4]
表7に記載した反射防止膜形成用組成物及び化学増幅型レジスト材料を用いた以外は、上記実施例1と同様に操作して各レジストパターンを形成した。また、これらの実施例及び比較例について、シリコン含有膜の有無を表7に併せて示す。
【0380】
<評価>
[反射防止膜及びシリコン含有膜の消衰係数測定]
上記基板に、表6に示す上記反射防止膜形成用組成物を用いて平均厚み160nmの反射防止膜を形成した。また、別の上記基板に、表6に示すシリコン含有膜形成用組成物を用いて平均厚み33nmのシリコン含有膜を形成した。これらの反射防止膜及びシリコン含有膜の193nm及び320nmにおける消衰係数を表6に示す。この消衰係数は、シリコンウエハ上に塗布した各材料の膜について高速分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム社の「M−2000」)を用いて測定した値である。
【0381】
[感度]
また、上記実施例及び比較例のポジ型レジストパターンについて、下記に示す手順により感度の評価を行った。線幅150nmのライン部と、隣り合うライン部によって形成される間隔が150nmのスペース部とからなるライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度の指標とした。最適露光量が25μC/cm
2未満の場合は「AA(極めて良好)」と、25μC/cm
2以上35μC/cm
2以下の場合は「A(良好)」と、35μC/cm
2超の場合は「B(不良)」と、パターン倒れが生じ150nmの1L1Sパターンが得られなかった場合は「C(パターン形成不可)」と判断した。最適露光量の測定値及び感度の評価結果を表7に示す。
【0382】
[ナノエッジラフネス]
さらに、上記実施例及び比較例のポジ型レジストパターンについて、下記に示す手順によりナノエッジラフネスについての評価を行った。上記ライン・アンド・スペースパターン(1L1S)のラインパターンを、高分解能FEB測長装置(日立製作所社の「S−9220」)を用いて観察した。ラインパターンの任意の20点において形状を観察し、それぞれの点について
図8及び
図9に示すように、基材(シリコンウエハ)11上に形成したパターンにおけるライン部12の横側面12aに沿って生じた凹凸が最も著しい箇所における線幅と、設計線幅150nmとの差「ΔCD」を測定した。20点のΔCDの平均値をナノエッジラフネスの指標とした。ΔCDの平均値(nm)が15.0nm以下の場合は「AA(極めて良好)」と、15.0nm超16.5nm以下の場合は「A(良好)」と、16.5nm超の場合は「B(不良)」と判断した。なお、
図8及び
図9で示す凹凸は、実際より誇張して記載している。ΔCDの平均値及びナノエッジラフネスの評価結果を表7に示す。ここで、比較例1及び比較例3ではパターン倒れが生じたためナノエッジラフネスは測定できなかった。
【0383】
【表6】
【0384】
【表7】
【0385】
表7に示すように、(b)成分及び(c)成分を含有するレジスト材料膜及び一括露光における光の波長に対応する320nmの消衰係数が0.1以上である反射防止膜を形成する実施例では、パターン露光及び一括露光の両方を行う操作(b)における感度が操作(a)における感度と比べて大きく向上しており、当該レジストパターンの形成方法によれば、従来のパターン露光のみを行うパターン形成方法と比べ少ない露光量で微小なレジストパターンを形成できることが示された。さらに、上記320nmの消衰係数が0.15以上であり、かつパターン露光に対応する193nmの消衰係数が0.33以上である反射防止膜(反射防止膜形成用組成物(U−1)により形成される反射防止膜)を形成する実施例1、3及び4では、操作(b)における感度がより向上していた。
【0386】
一方、反射防止膜を形成しない比較例1及び3では、操作(b)においてパターン倒れが発生し、微小なパターンを形成することができなかった。また、(2)成分として(c)成分のみを含有する化学増幅型レジスト材料を用いる比較例2及び4では、操作(a)における評価と操作(b)における評価とがほぼ同等であり、2回の露光を行う当該パターン形成方法において、このような化学増幅型レジスト材料を用いることによる利点は見いだせなかった。
【0387】
[実施例5並びに比較例5及び6]
(ArFレーザーの照射)
表8に記載した下層膜形成用組成物及び化学増幅型レジスト材料を用いた以外は、上記実施例1と同様に操作して平均厚み70nmのレジスト材料膜を形成した。また、これらの実施例及び比較例について、シリコン含有膜の有無を表8に併せて示す。
【0388】
レジスト膜形成後、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(ASML社の「TWINSCAN XT−1900i」)を用いて、NA=1.35、Dipole35X(σ=0.97/0.77の条件でレジスト材料膜にArFレーザーを照射し、パターニングを行った。このパターニングとしては、マスクを用い、線幅45nmのライン部と、隣り合うライン部によって形成される間隔が45nmのスペース部とからなるライン・アンド・スペースパターン(1L1S)とした。電子線の照射後、続いて以下(a)又は(b)の操作を行った。
【0389】
(操作(a):一括露光なし)
電子線の照射後、上記クリーントラックACT−8内で、110℃、60秒の条件でPEBを行い、次いで上記クリーントラックACT−8内で、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用い、23℃で1分間、パドル法により現像した。現像後、純水での水洗及び乾燥によりポジ型レジストパターンを形成した。
【0390】
(操作(b):一括露光あり)
電子線の照射後、ブラックライト(東芝社、波長320nm)を用い、レジスト材料膜の全面を10分間一括露光した。次いで、上記クリーントラックACT−8内で、110℃、60秒の条件でPEBを行った。その後、上記操作(a)と同様にして現像、水洗及び乾燥を行いポジ型レジストパターンを形成した。
【0391】
<評価>
上記実施例及び比較例のポジ型レジストパターンについて、下記に示す手順により感度及びナノエッジラフネスについての評価を行った。
【0392】
[感度]
線幅45nmのライン部と、隣り合うライン部によって形成される間隔が45nmのスペース部とからなるライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度の指標とした。最適露光量が25μC/cm
2未満の場合は「AA(極めて良好)」と、25μC/cm
2以上35μC/cm
2以下の場合は「A(良好)」と、35μC/cm
2超の場合は「B(不良)」と、パターン倒れが生じ45nmの1L1Sパターンが得られなかった場合は「C(パターン形成不可)」と判断した。最適露光量の測定値及び感度の評価結果を表8に示す。
【0393】
[ナノエッジラフネス]
上記ライン・アンド・スペースパターン(1L1S)のラインパターンを、高分解能FEB測長装置(日立製作所社の「S−9220」)を用いて観察した。ラインパターンの任意の20点において形状を観察し、それぞれの点について
図8及び
図9に示すように、基材(シリコンウエハ)11上に形成したパターンにおけるライン部12の横側面12aに沿って生じた凹凸が最も著しい箇所における線幅と、設計線幅45nmとの差「ΔCD」を測定した。20点のΔCDの平均値をナノエッジラフネスの指標とした。ΔCDの平均値(nm)が3.0nm以下の場合は「AA(極めて良好)」と、3.0nm超5.0nm以下の場合は「A(良好)」と、5.0nm超の場合は「B(不良)」と判断した。なお、
図8及び
図9で示す凹凸は、実際より誇張して記載している。ΔCDの平均値及びナノエッジラフネスの評価結果を表8に示す。ここで、比較例5ではパターン倒れが生じたためナノエッジラフネスは測定できなかった。
【0394】
【表8】
【0395】
表8に示すように、(b)成分及び(c)成分を含有するレジスト材料膜及び一括露光における光の波長に対応する320nmの消衰係数が0.1以上である反射防止膜を形成する実施例5では、パターン露光及び一括露光の両方を行う操作(b)における感度が操作(a)における感度と比べて大きく向上しており、当該レジストパターンの形成方法によれば、従来のパターン露光のみを行うパターン形成方法と比べ少ない露光量で微小なレジストパターンを形成できることが示された。
【0396】
一方、反射防止膜を形成しない比較例5では、操作(b)においてパターン倒れが発生し、微小なパターンを形成することができなかった。また、(2)成分として(c)成分のみを含有する化学増幅型レジスト材料を用いる比較例6では、操作(a)における評価と操作(b)における評価とがほぼ同等であり、2回の露光を行う当該パターン形成方法において、このような化学増幅型レジスト材料を用いることによる利点は見いだせなかった。