特許第6811247号(P6811247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6811247洗浄組成物、洗浄方法、及び半導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811247
(24)【登録日】2020年12月16日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】洗浄組成物、洗浄方法、及び半導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20201228BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20201228BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20201228BHJP
   C11D 1/12 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   H01L21/304 647A
   C11D3/37
   C11D1/62
   C11D1/12
【請求項の数】12
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-542525(P2018-542525)
(86)(22)【出願日】2017年9月22日
(86)【国際出願番号】JP2017034380
(87)【国際公開番号】WO2018062053
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2019年3月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-195097(P2016-195097)
(32)【優先日】2016年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】平野 勲
(72)【発明者】
【氏名】脇屋 和正
(72)【発明者】
【氏名】寺田 正一
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳司
(72)【発明者】
【氏名】戸島 孝之
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−522264(JP,A)
【文献】 特開2012−186304(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/096480(WO,A1)
【文献】 特開2012−203411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C11D 1/12
C11D 1/62
C11D 3/37
H01L 21/027
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された被処理層を洗浄するための洗浄組成物であって、
前記被処理層は、熱硬化型架橋高分子を含む層、フォトレジスト膜、及びハードマスク膜よりなる群から選択される少なくとも1種の層であり、
前記被処理層を分解可能な成分(A)、膜形成性ポリマー(B)及び溶剤を含有し、
前記成分(A)は、酸性化合物(A2)であり、前記酸性化合物(A2)は有機酸であ
前記有機酸は、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸及びトリデカフルオロヘキサンスルホン酸よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、洗浄組成物。
【請求項2】
前記膜形成性ポリマー(B)が、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するポリマー、ビニル基含有化合物に由来する構成単位を有するポリマー、及び多糖類からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するポリマーが、(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリル酸以外のモノマーとの架橋型コポリマーを含み、
前記ビニル基含有化合物が、N−ビニルカルボン酸アミド又は酸基含有ビニル化合物であり、
前記ビニル基含有化合物に由来する構成単位を有するポリマーが、ビニル基含有化合物のホモポリマー、又は、ビニル基含有化合物とビニル基含有化合物以外のモノマーとのコポリマーを含み、
前記多糖類が、デンプン類、アガロース、キサンタンガム、グアーガム、グルコマンナン、カードラン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、デキストラン、ローカストビーンガム、アルギン酸類、及びヒアルロン酸類よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項3】
前記ハードマスク膜は、カーボンハードマスク膜である、請求項1又は2記載の洗浄組成物。
【請求項4】
前記ハードマスク膜は、エーテル結合を有するポリマーを含む、請求項1又は2記載の洗浄組成物。
【請求項5】
前記ハードマスク膜は、フッ素元素を含む、請求項1又は2記載の洗浄組成物。
【請求項6】
前記膜形成性ポリマー(B)は、前記成分(A)に対する耐性を有する膜形成性ポリマーである、請求項1〜の何れか1項記載の洗浄組成物。
【請求項7】
前記溶剤は、水、及び有機溶剤からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1〜の何れか1項記載の洗浄組成物。
【請求項8】
基板に積層された被処理層上に、請求項1〜の何れか1項記載の洗浄組成物を適用して塗膜を形成する塗布工程を含む、洗浄方法。
【請求項9】
更に、前記塗膜を加熱する加熱工程を有する、請求項記載の洗浄方法。
【請求項10】
更に、前記塗膜を前記膜形成性ポリマー(B)のガラス転移点以上かつ前記成分(A)の沸点以上の温度で加熱する加熱工程を有する、請求項記載の洗浄方法。
【請求項11】
更に、前記基板にリンス液を供給して、前記基板から前記塗膜及び前記被処理層を除去するリンス工程を有する、請求項10の何れか1項記載の洗浄方法。
【請求項12】
請求項11の何れか1項記載の洗浄方法を用いる、半導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄組成物と、当該洗浄組成物を用いる洗浄方法と、当該洗浄方法を用いる半導体の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の製造工程では、半導体ウェハ等の基板上に形成された、層間絶縁膜や金属膜等の被エッチング膜を、レジスト膜をマスク材として使用してエッチングすることで、所定のパターンを形成する工程が行われる。
【0003】
近年、層間絶縁膜として低誘電率膜(Low−k膜)を用いたCu多層配線技術が注目されており、このようなCu多層配線技術では、Low−k膜に埋め込み配線溝又は孔を形成し、その中にCuを埋め込むデュアルダマシン法が採用される。
Low−k膜としては有機系の材料も多く用いられている。このような有機系のLow−k膜をエッチングする場合には、Low−k膜と同じく有機膜であるレジストと、十分にエッチングレートに差をつけることが困難であるため、Ti膜、TiN膜等の無機系のハードマスク膜がエッチング用のマスクとして使用される。
【0004】
エッチング後に基板上に残存するレジスト膜や、ハードマスク膜は基板上からから除去される必要がある。かかる除去の方法としては、例えば、枚葉式の洗浄装置を使用して、有機アミン系除去液、フッ化アンモンを含むフッ化アンモン系除去液、無機系の除去液等を用いて行う方法が知られている(特許文献1を参照。)。
【0005】
また、ハードマスク膜以外の種々のフォトレジスト膜も、様々な回路製造プロセスにおいて広く使用されている。かかるフォトレジスト膜は、基板や種々の機能層上に形成される一方で、基板や機能層に対してダメージを与えることなくフォトレジスト膜を除去することが望まれることも多い。
例えば、半導体装置の製造において、イオン注入プロセス用のマスク材として使用されたイオン注入されたフォトレジスト膜は、半導体基板へのイオン注入後に半導体基板の表面から除去される。
【0006】
フォトレジスト膜の、一般的な除去方法としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、グリコールエーテル、アミン類、又はジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒を用いる方法が挙げられる。
フォトレジスト膜の他の除去方法としては、硫酸、及び過酸化水素のような化学エッチング剤を用いる湿式化学プロセスによる除去方法や、アッシングによる乾式の反応除去方法等が挙げられる。湿式化学プロセスでは、濃硫酸と過酸化水素との混合物や、濃硫酸とオゾンとの混合物がフォトレジスト膜の除去に用いられることがある。
【0007】
別の具体的なフォトレジスト膜の除去方法としては、米国特許第5,785,875号に記載される、ウエハーを、酸性水溶液中に完全に浸漬させて湿式酸エッチングを行い、次いで、加熱された溶媒蒸気を導入しつつ、酸性水溶液をエッチング槽から抜き出す方法が知られている。かかる方法で用いられる溶媒は、例えばアセトンやアルコール類(好ましくはイソプロパノール)であり、溶媒蒸気は約50℃超から約100℃未満の範囲の温度に加熱される。
【0008】
更に別の除去方法としては、脱イオン水に溶解したオゾンを用いる方法や、オゾンガスと水蒸気とが混合された加熱された蒸気を用いる方法が知られている。
また、硫酸や、硫酸の脱水種又は前駆体(例えば、三酸化硫黄(SO)、チオ硫酸(H)、ペルオキソ一硫酸(H)、ペルオキソ二硫酸(H)、フルオロ硫酸(HSOF)、及びクロロ硫酸(HSOCl))を用いる方法も知られているが、かかる方法では、加熱された除去液を用いても、必ずしもフォトレジスト膜を良好に除去できない。
【0009】
上記の通り種々の除去方法が提案されていることからも分かる通り、フォトレジスト膜の良好な洗浄、除去が必ずしも容易でないという状況下において、フォトレジスト膜を良好に除去できる方法として、所定の比率で水及び硫酸を含む液状硫酸組成物を、制御された所定の条件に従ってスプレーする方法が提案されている(特許文献2〜5を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−146594号公報
【特許文献2】特開2010−157749号公報
【特許文献3】特開2012−069994号公報
【特許文献4】特許第4728402号公報
【特許文献5】特許第4965673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載されるような有機アミン系除去液、フッ化アンモンを含むフッ化アンモン系除去液、無機系の除去液等を用いる方法では、レジスト膜やハードマスク膜の材質によっては、良好な除去を行えなかったり、基板や層間絶縁膜等の除去対象の膜以外の他の層にダメージを与えたり、膜減りのような形状変化を生じさせたりする場合がある。
また、特許文献2〜5に記載される方法は、液状硫酸組成物の供給に、特別な装置や複雑な制御が必要である問題がある。
【0012】
本発明は、以上の課題に鑑みなされたものであって、半導体製造装置に搭載されているコーターやベーク炉(キュア炉)、洗浄チャンバーといった特別ではない装置を使用して、基板や層間絶縁膜等の被処理層以外の他の層のダメージや形状変化を抑制しつつ、被処理層を良好に除去できる洗浄組成物と、当該洗浄組成物を用いる洗浄方法と、当該洗浄方法を用いる半導体の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、被処理層を分解可能な成分(A)、及び、膜形成性ポリマー(B)を含有する洗浄組成物を用いて、基板上に形成された被処理層を洗浄することにより、半導体製造装置に搭載されているコーターやベーク炉(キュア炉)、洗浄チャンバーといった特別ではない装置を使用して、基板や層間絶縁膜等の被処理層以外の他の層のダメージや形状変化を抑制しつつ、被処理層を良好に除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0014】
本発明の第1の態様は、基板上に形成された被処理層を洗浄するための、洗浄組成物であって、
被処理層を分解可能な成分(A)、及び、膜形成性ポリマー(B)を含有する、洗浄組成物である。
【0015】
本発明の第2の態様は、基板に積層された被処理層上に、第1の態様にかかる洗浄組成物を適用して塗膜を形成する塗布工程を含む、洗浄方法である。
【0016】
本発明の第3の態様は、第2の態様にかかる洗浄方法を用いる、半導体の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半導体製造装置に搭載されているコーターやベーク炉(キュア炉)、洗浄チャンバーといった特別ではない装置を使用して、洗浄により除去される被処理層以外の基板や層間絶縁膜等の他の層へのダメージや形状変化を抑制しつつ、所定の被処理層の洗浄による除去を行うことができる洗浄組成物と、当該洗浄組成物を用いて所定の被処理層を洗浄により除去する洗浄方法と、当該洗浄方法を用いる半導体の製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪洗浄組成物≫
洗浄組成物は、基板上に形成された被処理層を洗浄するために用いられる。洗浄組成物は、被処理層を分解可能な成分(A)、及び、膜形成性ポリマー(B)を含む。
かかる洗浄組成物を被処理層上に塗布すると、膜形成性ポリマー(B)の作用によって、被処理層上の一定の位置に留まる、自由に流動しにくい塗膜が形成される。
また、膜形成性ポリマー(B)を含むことにより洗浄組成物がある程度の粘度を有する。このため、洗浄組成物による被処理層の除去が進行し、被処理層に微小な空隙が形成されても、洗浄組成物からなる塗膜は、被処理層以外の他の層と接触しにくく、被処理層以外の他の層にダメージを与えたり、形状変化を起こしたりしにくいと考えられる。
他方で、洗浄組成物からなる塗膜は被処理層と接触しているため、被処理層を分解可能な成分を非処理層に十分に作用させることができ、被処理層を良好に洗浄除去できる。
【0019】
以下、洗浄組成物による処理対象である基板、及び被処理層と、洗浄組成物に含まれる必須又は任意の成分について説明する。
【0020】
<基板>
基板の種類は、特に限定されない。基板は、例えば、ガラス基板や金属基板等の無機材料からなる基板であってよく、PET等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等からなる樹脂製の基板であってもよい。
基板としては、典型的にはシリコン基板等の半導体基板である。
【0021】
また、基板上には、被処理層以外に、種々の他の層が形成されていてもよい。
他の層としては、絶縁層や、金属やITO等の金属酸化物等の導電性材料からなる導電性層や、半導体層、反射防止層等が挙げられる。
絶縁層としては、例えば、SiO膜や、低誘電率膜(Low−k膜)が挙げられる。
Low−k膜としては、比誘電率が二酸化シリコンの比誘電率より低い膜である、SiOC膜、SiCOH膜等が挙げられる。
【0022】
以上説明した基板上に、被処理層と、必要に応じて他の層とが、所望する層構成となるように積層される。
【0023】
<被処理層>
被処理層の材質は、成分(A)により分解し得る材料であれば特に限定されない。被処理層としては、熱硬化型架橋高分子等からなる層や、フォトレジスト膜(特にイオン注入プロセス用のマスク材として使用されたイオン注入されたフォトレジスト膜)が挙げられる。被処理層は、典型的にはハードマスク膜である。
リソグラフィープロセスによる微細加工等で、基板上の被エッチング層をエッチングしてパターンを形成する際に、エッチング選択比が被エッチング層と大きく異なる材質からなるパターン化された層を形成し、これをマスクとして被エッチング層のエッチングが行なわれる。
この被エッチング層とエッチング選択比が大きく異なる、マスクとして使用される層をハードマスクという。
ハードマスク膜の材質は特に限定されず、有機材料であっても、無機材料であってもよい。
【0024】
無機ハードマスク膜の材質としては、例えば、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、シリコン酸化物(SiO)シリコン窒化物(Si)、シリコン酸窒化物(SiON)、窒化ケイ素(SiN)、炭化ケイ素(SiC)、及び炭化窒化ケイ素(SiCN)等が挙げられる。
【0025】
また、有機基を有するケイ素含有材料もハードマスク膜の材質として用いられる。かかる有機基を有するケイ素含有材料の例としては、ポリカルボシラン、オルガノポリシラザン、オルガノポリシラン、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサンと金属酸化物(酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化タングステン)との共重合体等が挙げられる。
【0026】
有機ハードマスク膜(カーボンハードマスク膜)の材質としては、アモルファスカーボンや種々の樹脂材料が挙げられる。樹脂材料としては、ノボラック樹脂やポリヒドロキシスチレン樹脂等の芳香族基を含む樹脂が好ましく用いられる。
また、芳香族基を含む樹脂からなるカーボンハードマスク膜としては、例えば、特許第4433933号公報に記載されるような組成物を用いて形成されるハードマスク膜も知られている。
【0027】
具体的には、特許第4433933号公報に記載される組成物は、下記式(1)で表される繰り返し単位と下記式(2)で表される繰り返し単位とを有する共重合体と、感放射線性酸発生剤と、溶剤とを含有する感放射線性組成物である。
【0028】
【化1】
(式(1)において、Rは水素原子又は1価の有機基(ただし、エポキシ基を有するものを除く。)を示し、各Rは相互に独立に水素原子又は1価の有機基(ただし、エポキシ基を有するものを除く。)を示し、Rはエポキシ基を有する1価の有機基を示す。)
【0029】
【化2】
(式(2)において、各Rは相互に独立に水素原子又は1価の有機基(ただし、エポキシ基を有するものを除く。)を示す。)
【0030】
かかる感放射線性組成物用いて形成されるハードマスク膜は、式(2)で表される繰り返し単位に由来する芳香族基や、式(1)で表される繰り返し単位に由来するエステル結合を含む。
また、式(1)で表される繰り返し単位に含まれるRで表されるエポキシ基同士が反応すると、エーテル結合が生成し得る。
このように、ハードマスク膜が、エステル結合や、エーテル結合を有するポリマーを含む場合がある。
【0031】
更に、ハードマスク膜は、フッ素、塩素、硫黄元素を含むこともある。
例えば、ハードマスク膜の材料には種々の目的でフッ素を含有する官能基が導入されることもあるし、ハードマスク膜を備える積層体に対してフッ素含有ガスを用いるドライエッチングが施される場合、ハードマスク膜の材料がフッ素化されることもある。
【0032】
カーボンハードマスク膜について他の材料としては、例えば、特許第5440755号公報、特許第5229044号公報、特許第5920588号公報、国際公開WO2014/014034号、特許第4639919号公報、及び国際公開WO2012/161126号等に記載される材料が挙げられる。
以下、各特許文献に記載の材料について説明するが、一般式の番号や置換基等を示す略号については、各特許文献に記載の番号を用いて説明するため、重複する場合がある。
【0033】
特許第5440755号公報には、下記式(1−1)、(1−2)、(1−3)、又は(1−4)で表される単位構造:
【化3】
と、下記式(2)で表される構造単位と、下記式(3)で表される構造単位:
【化4】
(上記式中、R、R、R、R10、R11及びR12は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1ないし3のアルキル基を表わし、
、R及びRは、それぞれ、水素原子又は炭素原子数1ないし10の鎖状又は環状のアルキル基を表わし、
は炭素原子数1ないし10の鎖状又は環状のアルキル基又は炭素原子数6ないし20の芳香族基を表わし、また、
とRは互いに結合して環を形成していてもよく、
M及びQはそれぞれ直接結合又は連結基を表わし、
nは0又は1の整数を表わす。)
を含むポリマーであって、当該ポリマーを構成する全ての単位構造の総数を1.0とした場合、式(1−1)、式(1−2)、式(1−3)又は式(1−4)で表わされる単位構造の数(a)の割合、式(2)で表わされる単位構造の数(b)の割合及び式(3)で表わされる単位構造の数(c)の割合が、0.5≦a≦0.8、0.1≦b≦0.2、0.1≦c≦0.3となるポリマーが開示されている。
【0034】
特許第5440755号公報に記載のカーボンハードマスクとして使用される得るポリマーは、式(2)で表される単位に由来するエステル結合を有する。また、式(3)で表される単位は、エポキシ基(オキシラニル基)又はオキセタニル基を有するため、これらの基同士の反応によって、カーボンハードマスクに含まれるポリマーがエーテル結合を有する場合がある。
更に、式(1−1)〜(1−4)で表される構造単位中の芳香環は、フッ素含有ガスを用いるドライエッチング等によってフッ素化されることもある。
【0035】
特許第5229044号公報には、
(A)芳香族環を有する重合体と、
(B)下記式(1):
【化5】
(式(1)中、複数のRは、それぞれ独立に、水素原子、アダマンチル基、又はグリシジルエーテル基を示す。ただし、複数のRのうち、1つ又は2つがアダマンチル基であるとともに、1つ又は2つがグリシジルエーテル基である。nは0〜3の整数を示す。)
で表される化合物と、
(C)有機溶媒と、を含有する組成物を用いて形成されるポリマーをカーボンハードマスクとして使用し得ることが記載されている。
特許第5229044号公報には、(A)芳香族環を有する重合体として、ノボラック樹脂を好適に使用できることも記載されている。
【0036】
特許第5229044号公報に記載のカーボンハードマスクとして使用される得るポリマーは、例えば、(A)芳香族環を有する重合体がノボラック樹脂である場合に、フェノール性水酸基と、式(1)で表される化合物が有するグリシジル基との反応により生成するエーテル結合を有する。
更に、(A)芳香族環を有する重合体や、式(1)で表される化合物に由来する芳香環は、フッ素含有ガスを用いるドライエッチング等によってフッ素化されることもある。
【0037】
特許第5920588号公報には、下記式(2):
−(−O−Ar−O−Ar−T−Ar−)−・・・(2)
(ただし、式(2)中、Ar、Ar、及びArはそれぞれ炭素数6〜50のアリーレン基を含む有機基を表し、Tはカルボニル基を表す。)
で表される構造単位、又は下記式(1)
−(−O−Ar−)−・・・(1)
(式(1)中、Arは炭素数6〜50のアリーレン基又は複素環基を含む有機基を表す。)
で表される構造単位及び上記式(2)で表される構造単位の組み合わせを含むポリマーが記載されている。
【0038】
特許第5229044号公報に記載のカーボンハードマスクとして使用される得るポリマーは、芳香族ポリエーテルであって、必然的にエーテル結合を有する。
更に、特許第5229044号公報に記載のポリマーに含まれる芳香環は、フッ素含有ガスを用いるドライエッチング等によってフッ素化されることもある。
【0039】
国際公開WO2014/014034号には、芳香環を含む樹脂と、下記式(i):
Ar−(X−Q)・・・(i)
(式(i)中、
Xはカルボニル基又はスルホニル基である。
Qは、1価の複素芳香族基又は−ORである。Rは、炭素原子数1〜30の1価の有機基である。
Arは、芳香族炭化水素基又は複素芳香族基である。
nは1〜8の整数である。nが2以上である場合、複数のX及びQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
で表される部分構造を有する架橋剤とを含有する組成物を用いて形成されるポリマーが記載されている。
【0040】
国際公開WO2014/014034号には、芳香環を含む樹脂の具体例として、ノボラック樹脂や、ポリアリーレンエーテル等のポリアリーレン系樹脂等について記載され、架橋剤の具体例として下記構造の化合物が開示されている。ノボラック樹脂が下記構造の架橋剤により架橋されて生成するポリマーは、エステル結合を含む。ポリアリーレンエーテルが下記構造の架橋剤により架橋されて生成するポリマーは、エーテル結合と、エステル結合と、を含む。また、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル基を含む架橋剤を用いる場合、生成するポリマーにフッ素原子が含まれ得る。
更に、国際公開WO2014/014034号に記載のポリマーに含まれる芳香環は、フッ素含有ガスを用いるドライエッチング等によってフッ素化されることもある。
【化6】
【0041】
特許第4639919号公報には、下記式(4)〜(6):
【化7】
(式(4)〜(6)において、Rはメチル基を示し;nは0又は1の整数を示す。)
で表される構造単位を有する重合体を含む組成物を用いて形成される膜のハードマスク膜としての使用が記載されている(段落[0035]〜[0037]を参照。)。
【0042】
また、特許第4639919号公報には、組成物が、上記の重合体の他に、ポリエーテル類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリイミド類等の種々の樹脂を含んでいてもよいことが記載されている(段落[0063]〜[0065]を参照。)。つまり、特許第4639919号公報に記載される組成物を用いて形成されるハードマスク膜は、式(4)〜(6)で表される構造単位に由来するアミド結合、及びエステル結合のみならず、バインダー樹脂に由来するエーテル結合、アミド結合、エステル結合、及びイミド結合を含み得る。
更に、特許第4639919号公報に記載の組成物を用いて形成されるハードマスク膜に含まれる芳香環は、フッ素含有ガスを用いるドライエッチング等によってフッ素化されることもある。
【0043】
国際公開WO2012/161126号に記載のカーボンハードマスクとして使用される得るポリマーは、下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位:
【化8】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子数1〜3のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を表し、Rはヒドロキシ基又はカルボキシル基を表す。
式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Yは−C(=O)−NH−基又は−C(=O)−O−基で表される連結基を表し、Xはラクトン環を含む基、アダマンタン環を含む基又は置換されていてもよいベンゼン環基、置換されていてもよいナフタレン環基、若しくは置換されていてもよいアントラセン環基を表し、前記Yで表される連結基の炭素原子は前記ポリマーの主鎖と結合する。)
を含むポリマー(A)と、ブロックイソシアネート基、メチロール基又は炭素原子数1〜5のアルコキシメチル基を少なくとも2つ有する架橋性化合物(B)と、溶剤(C)とを含む組成物を用いて形成されるカーボンハードマスク膜が記載されている。
【0044】
国際公開WO2012/161126号に記載される組成物を用いて形成されるハードマスク膜に含まれるポリマーは、式(1)で表される構造単位、又は式(2)で表される構造単位に由来するアミド結合や、式(2)で表される構造単位に由来するエステル結合を有する。
【0045】
上記の特許文献のいくつかにも記載されている通り、所望する構造のポリマーと、架橋剤とを含む組成物を用いて形成される膜が、カーボンハードマスク膜として好ましく使用される。
カーボンハードマスク膜形成用の組成物に配合される一般的な架橋剤としては、特許第5920588号公報に記載されるメラミン系架橋剤、置換尿素系架橋剤、又はこれらのオリゴマーやポリマー等が挙げられる。
少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋剤が好ましく、例えば、メトキシメチル化グリコールウリル、ブトキシメチル化グリコールウリル、メトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン、メトキシメチル化ベンゾグワナミン、ブトキシメチル化ベンゾグワナミン、メトキシメチル化尿素、ブトキシメチル化尿素、メトキシメチル化チオ尿素、又はメトキシメチル化チオ尿素等の化合物や、特許5867732号の段落[0035]に記載される耐熱性の高い架橋剤である、分子内に芳香族環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)を有する架橋形成置換基を含有する化合物を、架橋剤として特に好ましく用いることができる。
【0046】
このような化合物は下記式(4)で表される部分構造を有する化合物や、下記式(5)で表される繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられる。
【化9】
【0047】
式(4)中、R10及びR11はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基を表し、n10は1〜4の整数を表し、n11は1〜(5−n10)の整数を表し、(n10+n11)は2〜5の整数を表す。
式(5)中、R12は水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、R13は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、n12は1〜4の整数を表し、n13は0〜(4−n12)を表し、(n12+n13)は1〜4の整数を表す。
オリゴマー及びポリマーは繰り返し単位構造の数が2〜100、又は2〜50の範囲で用いることができる。
【0048】
以上説明した材料からなるハードマスク膜やフォトレジスト膜を良好に除去できるように、後述する被処理層を分解可能な成分(A)が適宜選択される。
【0049】
<被処理層を分解可能な成分(A)>
被処理層を分解可能な成分(A)(以下、成分(A))とも記す。)の種類は、被処理層の材質に応じて適宜選択され、特に限定されない。
ここで、被処理層の分解は、被処理層を構成する材料の分子中の共有結合等の化学結合を開裂させることだけではなく、リンス等により被処理層を容易に洗浄、除去できる程度に、被処理層を成分(A)と反応させることが含まれる。かかる反応による被処理層の変性には、例えば、被処理層の洗浄組成物又はリンス液に対する可溶化が含まれる。
成分(A)は、典型的には、塩基性化合物(A1)、酸性化合物(A2)、酸化剤(A3)、及び還元剤(A4)等から適宜選択される。
なお、洗浄効果が損なわれない範囲で、塩基性化合物(A1)、酸性化合物(A2)、酸化剤(A3)、及び還元剤(A4)等から選択される2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
成分(A)としては、種々の材質を良好に分解しやすい点から、塩基性化合物(A1)及び酸性化合物(A2)からなる群より選択される少なくとも1つであるのが好ましい。
【0051】
(塩基性化合物(A1))
塩基性化合物(A1)は、例えば、エステル結合(−CO−O−)、カーボネート結合(−CO−O−CO−)、アミド結合(−CO−NH−)、ウレタン結合(−NH−CO−NH−)等の塩基の存在下に開裂し得る結合を有する材料を含む被処理層を洗浄する場合に、成分(A)として好ましく使用される。
塩基性化合物(A1)の種類は、被処理層を分解できる限りにおいて特に限定されず、有機塩基であっても、無機塩基であってもよい。
【0052】
無機塩基としては、例えば、金属水酸化物、金属炭酸水素塩、及び金属重炭酸塩が挙げられる。
無機塩基の好適な具体例としては、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、及び水酸化バリウム等の金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、及び炭酸バリウム等の金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ルビジウム、及び炭酸水素セシウム等の金属重炭酸塩等が挙げられる。
【0053】
無機塩基としては、アルカリ金属水酸化物、及びアルカリ金属炭酸塩が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムがより好ましく、水酸化ナトリウム、及び水酸カリウムが特に好ましい。
【0054】
有機塩基としては、エチルアミン、n−プロピルアミン、エタノールアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等のアミン類;ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、及び1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノナン等の環状塩基性化合物;水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAH)、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化メチルトリプロピルアンモニウム、水酸化メチルトリブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリエチルアンモニウム、及び水酸化トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0055】
塩基性化合物(A1)は、安価かつ入手が容易であることと、被処理層を良好に分解しやすいこととから、第4級アンモニウム塩、及び無機塩基からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
塩基性化合物(A1)は、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、テトラエチルアンモニウム水酸化物、水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAH)、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つであるのがより好ましい。
【0056】
(酸性化合物(A2))
酸性化合物(A2)は、例えば、エステル結合(−CO−O−)、カーボネート結合(−CO−O−CO−)、アミド結合(−CO−NH−)、ウレタン結合(−NH−CO−NH−)等の酸の存在下に開裂し得る結合を有する材料を含む被処理層を洗浄する場合に、成分(A)として好ましく使用される。
酸性化合物(A2)の種類は、被処理層を分解できる限りにおいて特に限定されず、有機酸であっても、無機酸であってもよい。
【0057】
有機酸の好適な例としては、脂肪族カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸)、フッ素化脂肪族カルボン酸(例えばトリフルオロ酢酸等)、アルカンスルホン酸(例えばメタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等)、アリールスルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等)、フッ素化アルキルスルホン酸(例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸及びトリデカフルオロヘキサンスルホン酸)等が挙げられる。
有機酸の炭素原子数は特に限定されないが、1〜30が好ましく、1〜10がより好ましい。
【0058】
無機酸の好適な例としては、塩酸(塩化水素)、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。
【0059】
また、酸性化合物(A2)の中でもルイス酸性を示すルイス酸は、エーテル結合を良好に開裂させ得る。また、臭化水素酸やヨウ化水素酸等のハロゲン化水素もエーテル結合を開裂させるために用いることができる。
臭化水素酸やヨウ化水素酸等のハロゲン化水素や、ルイス酸性を示す酸性化合物(A2)は、エーテル結合を有する材料を含む被処理層を洗浄する場合に好ましく使用される。
かかるルイス酸の好適な例としては、フッ素化アルキルスルホン酸が挙げられる。フッ素化アルキルスルホン酸としては、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、及びノナフルオロブタンスルホン酸からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
【0060】
これらのフッ素化アルキルスルホン酸を含む洗浄組成物は、ハードマスク膜、特にフッ素元素を含むハードマスク膜に対する親和性(濡れ性)が良好である。
このため、フッ素化アルキルスルホン酸を含む洗浄組成物を用いると、ハードマスク膜、特にフッ素元素を含むハードマスク膜を良好に、洗浄、除去しやすい。
【0061】
(酸化剤(A3))
酸化剤(A3)は、例えば、−CO−NH−NH−CO−結合のような酸化剤により容易に開裂する結合を有する材料からなる被処理層や、無機ハードマスク膜である被処理層を洗浄する場合に、成分(A)として好ましく使用される。
成分(A3)として使用し得る酸化剤としては、例えば、過酸化物、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、過マンガン酸塩、バナジン酸塩、次亜塩素酸塩、酸化鉄、オゾン等が挙げられる。
過酸化物の具体例としては、過酸化水素、過酢酸、過安息香酸、m−クロロ過安息香酸、過炭酸塩、過酸化尿素、及び過塩素酸;過塩素酸塩;、並びに過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩等が挙げられる。
【0062】
(還元剤(A4))
還元剤(A4)は、例えば、ジスルフィド結合のような還元剤により容易に開裂する結合を有する材料を含む被処理層を洗浄する場合に、成分(A)として好ましく使用される。
成分(A)として使用し得る還元剤としては、ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、及び抱水ヒドラジン等のヒドラジン化合物;水素化ホウ素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、次亜硝酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、及びジ亜リン酸ナトリウム等の金属塩;亜リン酸;次亜リン酸;アルデヒド類;アルコール類;アミン類;糖類等が挙げられる。
【0063】
洗浄剤組成物における成分(A)の含有量は、所望する洗浄条件において、所望する程度に被処理層を除去可能であれば特に限定されない。また、成分(A)の含有量は、成分(A)の種類に応じて、適宜、適切な量に調整される。
典型的には、洗浄剤組成物における成分(A)の含有量は、ポリマー溶液の質量(膜形成性ポリマー(B)の質量と溶剤の質量との合計)に対して、5〜150質量%が好ましく、30〜130質量%がより好ましく、90〜120質量%が特に好ましい。
【0064】
<膜形成性ポリマー(B)>
膜形成性ポリマー(B)(以下、成分(B)とも記す。)は、洗浄組成物に、洗浄組成物が被処理層上で過度に流動しないような膜形成能を付与できるポリマーであれば特に限定されない。
【0065】
膜形成性ポリマー(B)自身が、成分(A)により分解されてしまうと、洗浄組成物からなる塗布膜が流動しやすくなり、望まない場所まで洗浄組成物と接触して、基板や層間絶縁膜等の被処理層以外の他の層がダメージを受けてしまうおそれがある。
また、膜形成性ポリマー(B)は、洗浄組成物からなる塗膜中で成分(A)を保持する作用を有する。このため、膜形成性ポリマー(B)を含む洗浄組成物を用いる場合、塗膜から成分(A)を良好に拡散させることができる。しかし、膜形成性ポリマー(B)が分解してしまうと、塗膜中に成分(A)が保持されないことによって、被処理層の洗浄・除去に長時間を要したり、被処理層を良好に洗浄・除去しにくかったりする。
従って、膜形成性ポリマー(B)が、成分(A)に対する耐性を有するのが好ましい。
【0066】
膜形成性ポリマー(B)の種類は、均一な洗浄組成物を調製可能である限り特に限定されない。
膜形成性ポリマー(B)の好適な例としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するポリマー、ビニル基含有化合物に由来する構成単位を有するポリマー、及び多糖類からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられる。
【0067】
((メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するポリマー)
(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するポリマーは、(メタ)アクリル酸のホモポリマーであっても、(メタ)アクリル酸と他のモノマーとのコポリマーであってもよい。
(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するポリマーは、成分(A)に対する耐性に優れるが、酸性化合物(A2)に対する耐性に優れることや、塩基性化合物(A1)と塩を形成する場合があるため、酸性化合物(A2)とともに用いるのが好ましい。
【0068】
(メタ)アクリル酸と共重合させてもよいモノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸以外の不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、及びスチレン類等が挙げられる。
【0069】
(メタ)アクリル酸以外の不飽和カルボン酸の例としては、(メタ)アクリル酸アミド、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0070】
(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル(メタ)アクリレート;クロロエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート;脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルにおいて、脂環式骨格を構成する脂環式基は、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。
【0071】
(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−アリール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−アリール(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0072】
アリル化合物の例としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0073】
スチレン類の例としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2−ブロモ−4−トリフルオロメチルスチレン、4−フルオロ−3−トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0074】
(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するポリマーにおける、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の含有量は、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上が特に好ましく、100モル%が最も好ましい。つまり、ポリメタクリル酸、及びポリアクリル酸が最も好ましい。
【0075】
(ビニル基含有化合物に由来する構成単位を有するポリマー)
ビニル基含有化合物に由来する構成単位を有するポリマーは、ビニル基含有化合物のホモポリマーであっても、ビニル基含有化合物と他のモノマーとのコポリマーであってもよい。なお、(メタ)アクリル酸又はその誘導体は、ビニル基含有化合物に含めない。
【0076】
ビニル基含有化合物の例としては、N−ビニルカルボン酸アミド、ビニルエーテル類、、ビニルエステル類、及び酸基含有ビニル化合物等が挙げられる。
【0077】
N−ビニルカルボン酸アミドの例としては、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニル安息香酸アミド等が挙げられる。
【0078】
ビニルエーテル類の例としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル−2,4−ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0079】
ビニルエステル類の例としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフエニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0080】
酸基含有ビニル化合物の例としては、ビニルスルホン酸、及びビニルホスホン酸等が挙げられる。
【0081】
上記のビニル基含有化合物の中でも、入手の容易性や成分(A)に対する耐性等の点で、N−ビニルカルボン酸アミド、及び酸基含有ビニル化合物が好ましく、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、ビニルスルホン酸、及びビニルホスホン酸がより好ましく、N−ビニルアセトアミド、ビニルスルホン酸、及びビニルホスホン酸が特に好ましい。
【0082】
ビニル基含有化合物と共重合させてもよいモノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸以外の不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、及びスチレン類等が挙げられる。
これらの好適な例については、前述の通りである。
なお、(メタ)アクリル酸と、ビニル基含有化合物とを含む単量体のコポリマーを、成分(B)として用いることもできる。
【0083】
ビニル基含有化合物に由来する構成単位を有するポリマーにおける、ビニル基含有化合物に由来する構成単位の含有量は、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上が特に好ましく、100モル%が最も好ましい。
ビニル基含有化合物に由来する構成単位を有するポリマーとして特に好ましいポリマーとしては、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリビニルスルホン酸、及びポリビニルホスホン酸が挙げられる。
ポリ(N−ビニルアセトアミド)は、成分(A)に対する耐性に優れるが、塩基性化合物(A1)に対する耐性に特に優れることから、塩基性化合物(A1)とともに用いるのが好ましい。
ポリビニルスルホン酸、及びポリビニルホスホン酸は、成分(A)に対する耐性に優れるが、酸性化合物(A2)に対する耐性に優れることや、塩基性化合物(A1)と塩を形成する場合があるため、酸性化合物(A2)とともに用いるのが好ましい。
【0084】
(多糖類)
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、アガロース、キサンタンガム、グアーガム、グルコマンナン、カードラン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、デキストラン、ローカストビーンガム、アルギン酸類、及びヒアルロン酸類等が挙げられる。
【0085】
以上説明した成分(B)の分子量は、特に限定されない。成分(B)の分子量は、例えば、ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)として、5万〜200万が好ましく、10万〜125万がより好ましい。
【0086】
洗浄組成物中の成分(B)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。成分(B)の使用量は、ポリマー溶液の質量(成分(B)の質量と溶剤の質量との合計)に対して、1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましく、3〜15質量%が特に好ましい。
【0087】
<溶剤>
洗浄組成物は、被処理層表面への適度な塗布性を洗浄組成物に付与するために、溶剤を含むのが好ましい。
なお、塩基性化合物(A1)や酸性化合物(A2)が、洗浄組成物を使用する温度において液状である場合、溶剤を用いることなく洗浄組成物を調製可能である場合がある。
かかる溶剤としては、水、及び有機溶剤からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
【0088】
被処理層の成分(A)による分解に加水分解反応が関与することが多いことや、洗浄処理後の基板の洗浄が容易であること等から、溶剤は、水を含むのが好ましく、水であるのがより好ましい。溶剤が含水溶剤である場合、溶剤中の水の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0089】
溶剤として用いることができる有機溶剤の具体例としては、
ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;
ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類;
N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;
N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン等のラクタム類;
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコール類;
ジメチルグリコール、ジメチルジグリコール、ジメチルトリグリコール、メチルエチルジグリコール、ジエチルグリコール、ジエチルジグリコール、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のジアルキルグリコールエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチル−n−エーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールエステル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;
2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−i−プロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸−i−ブチル、ぎ酸−n−ペンチル、酢酸−i−ペンチル、プロピオン酸−n−ブチル、酪酸エチル、酪酸−n−プロピル、酪酸−i−プロピル、酪酸−n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸−n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;
β−プロピロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−ペンチロラクトン等のラクトン類;
n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、メチルオクタン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン、2,2,4,4,6,8,8−ヘプタメチルノナン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の直鎖状、分岐鎖状、又は環状の脂肪族炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類;
p−メンタン、ジフェニルメンタン、リモネン、テルピネン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン等のテルペン類;等が挙げられる。
【0090】
<その他の成分>
洗浄組成物は、上記の成分の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で種々の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、pH調整剤、及び金属防食剤等が挙げられる。
【0091】
<洗浄組成物の製造方法>
洗浄組成物は、以上説明した成分を、それぞれ所望する量均一に混合することにより調製することができる。調製時の溶解残や、不溶性の不純物を除去するために、洗浄組成物を、必要に応じてフィルターによりろ過してもよい。
【0092】
≪洗浄方法≫
以上説明した洗浄組成物は、被処理層の洗浄による除去に好適に使用される。
具体的には、洗浄方法は、前述の基板に積層された所定の被処理層上に、洗浄組成物を適用して塗膜を形成する塗布工程を含む、方法である。
【0093】
洗浄組成物を基板上の被処理層に塗布する方法の具体例としては、スピンコート法、スプレー法、ローラーコート法等が挙げられる。洗浄組成物を均一に塗布しやすいことから、塗布方法としてスピンコート法が好ましい。また、被処理層の表面に洗浄組成物の液を盛って、塗膜を形成してもよい。
【0094】
このように、被処理層上に洗浄組成物からなる塗膜を形成する事により、塗膜から成分(A)が拡散され、これにより被処理層が洗浄、除去される。
【0095】
洗浄方法は、塗膜を加熱する加熱工程を有するのが好ましい。つまり、被処理層上に形成された塗膜は、好ましくは加熱される。これにより、被処理層をすみやかかつ良好に洗浄、除去しやすい。
塗膜の典型的な加熱温度は、100〜250℃が好ましく、150〜200℃がより好ましい。加熱時間は特に限定されないが、通常、30〜600秒間が好ましく、120〜300秒間がより好ましい。
【0096】
また、洗浄方法は、塗膜を成分(B)のガラス転移点以上、かつ成分(A)の沸点以上の温度で加熱する加熱工程を有するのが好ましい。
塗膜をかかる条件で加熱することにより、被処理層を、特にすみやかかつ良好に洗浄、除去しやすい。
加熱時間は、通常、30〜600秒間が好ましく、120〜300秒間がより好ましい。
【0097】
洗浄方法は、リンス液を供給して、基板から塗膜及び被処理層を除去するリンス工程を有するのが好ましい。
塗膜の形成と、任意に塗膜の加熱とを行った後に上記のリンス工程を行うことにより、塗膜及び被処理層が除去された清浄な基板を得ることができる。
リンス液の種類は、所望する洗浄効果を得られル限り特に限定されない。リンス液としては、例えば、水や、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類を用いることができる。
リンス液には、必要に応じて酸や塩基を加えてもよい。酸や塩基としては、洗浄組成物の成分として説明した、塩基性化合物(A1)や、酸性化合物(A2)を用いることができる。
【0098】
上記の洗浄方法によれば、半導体製造装置に搭載されているコーターやベーク炉(キュア炉)、洗浄チャンバーといった特別ではない装置を使用して、基板や層間絶縁膜等の被処理層以外の他の層のダメージや形状変化を抑制しつつ、ハードマスク膜のような被処理層を良好に除去できる。このため、上記の洗浄方法は、半導体の製造方法、特に、デュアルダマシン法を含む半導体の製造方法に好適に適用可能である。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0100】
〔実施例1〕
シリコン基板上に形成された、エステル結合とエーテル結合とフッ素元素とを含むポリマーを含むカーボンハードマスク膜(膜厚80nm)上に、トリフルオロメタンスルホン酸50質量%と、ポリアクリル酸(質量平均分子量25万)6.25質量%とを含む水溶液である洗浄組成物を塗布した。
塗布後、塗膜を180℃で150秒間加熱した。加熱後、弱塩基性の水−水溶性エーテル混合液でリンスを行った後、更に水リンスを行った。
水リンス後の基板表面を顕微鏡観察したところ、カーボンハードマスク膜は良好に除去されており、基板の膜厚も殆ど減少しなかった。
【0101】
〔実施例2〕
シリコン基板上に形成された、エステル結合とエーテル結合とフッ素元素とを含むポリマーを含むカーボンハードマスク膜(膜厚80nm)上に、水酸化テトラメチルアンモニウム6.25質量%と、ポリ(N−ビニルアセトアミド)(質量平均分子量120万)1質量%とを含む水溶液である洗浄組成物を塗布した。
塗布後、塗膜を200℃で300秒間加熱した。加熱後、水リンスを行った。
水リンス後の基板表面を顕微鏡観察したところ、カーボンハードマスク膜は良好に除去されており、基板の膜厚も殆ど減少しなかった。
【0102】
〔実施例3〕
シリコン基板上に形成された、エステル結合とエーテル結合とフッ素元素とを含むポリマーを含むカーボンハードマスク膜(膜厚80nm)上に、水酸化テトラメチルアンモニウム6.25質量%と、水酸化カリウム200質量ppmと、ポリ(N−ビニルアセトアミド)(質量平均分子量120万)1質量%とを含む水溶液である洗浄組成物を塗布した。
塗布後、塗膜を120℃、又は140℃で300秒間加熱した。加熱後、水リンスを行った。
水リンス後の基板表面を顕微鏡観察したところ、120℃で加熱を行った場合も、140℃で加熱を行った場合も、カーボンハードマスク膜は良好に除去されており、基板の膜厚も殆ど減少しなかった。
【0103】
〔実施例4〕
シリコン基板上に形成された、エステル結合とエーテル結合とフッ素元素とを含むポリマーを含むカーボンハードマスク(膜厚80nm)上に、トリフルオロメタンスルホン酸50質量%と、ポリビニルスルホン酸(質量平均分子量10万)10質量%とを含む水溶液である洗浄組成物を塗布した。
塗布後、塗膜を180℃で150秒間加熱した。加熱後、弱塩基性の水−水溶性エーテル混合液でリンスを行った後、更に水リンスを行った。
水リンス後の基板表面を顕微鏡観察したところ、カーボンハードマスクは良好に除去されていた。
【0104】
〔実施例5〕
シリコン基板上に形成された、エステル結合とエーテル結合とフッ素元素とを含むポリマーを含むカーボンハードマスク(膜厚80nm)上に、トリフルオロメタンスルホン酸50質量%と、ポリビニルホスホン酸(質量平均分子量20万)10質量%とを含む水溶液である洗浄組成物を塗布した。
塗布後、塗膜を180℃で150秒間加熱した。加熱後、弱塩基性の水−水溶性エーテル混合液でリンスを行った後、更に水リンスを行った。
水リンス後の基板表面を顕微鏡観察したところ、カーボンハードマスクは良好に除去されていた。
【0105】
〔実施例6〕
シリコン基板上に形成された、エステル結合とエーテル結合とフッ素元素とを含むポリマーを含むカーボンハードマスク(膜厚80nm)上に、トリフルオロメタンスルホン酸50質量%と、架橋型ポリアクリル酸(質量平均分子量20万)5質量%とを含む水溶液である洗浄組成物を塗布した。
塗布後、塗膜を180℃で150秒間加熱した。加熱後、弱塩基性の水−水溶性エーテル混合液でリンスを行った後、更に水リンスを行った。
水リンス後の基板表面を顕微鏡観察したところ、カーボンハードマスクは良好に除去されていた。
【0106】
〔実施例7〕
シリコン基板上に形成された、エステル結合とエーテル結合とフッ素元素とを含むポリマーを含むカーボンハードマスク(膜厚80nm)上に、ペンタフルオロエタンスルホン酸52.5質量%と、ポリアクリル酸(質量平均分子量25万)6.25質量%とを含む水溶液である洗浄組成物を塗布した。
塗布後、塗膜を180℃で150秒間加熱した。加熱後、弱塩基性の水−水溶性エーテル混合液でリンスを行った後、更に水リンスを行った。
水リンス後の基板表面を顕微鏡観察したところ、カーボンハードマスクは良好に除去されていた。
【0107】
〔実施例8〕
シリコン基板上に形成された、エステル結合とエーテル結合とフッ素元素とを含むポリマーを含むカーボンハードマスク(膜厚80nm)上に、ノナフルオロブタンスルホン酸55質量%と、ポリアクリル酸(質量平均分子量25万)6.25質量%とを含む水溶液である洗浄組成物を塗布した。
塗布後、塗膜を180℃で150秒間加熱した。加熱後、弱塩基性の水−水溶性エーテル混合液でリンスを行った後、更に水リンスを行った。
水リンス後の基板表面を顕微鏡観察したところ、カーボンハードマスクは良好に除去されていた。
【0108】
〔実施例9〕
シリコン基板上に形成された、エステル結合とエーテル結合とフッ素元素とを含むポリマーを含むカーボンハードマスク(膜厚80nm)上に、硝酸17.5質量%と、ポリアクリル酸(質量平均分子量25万)12.5質量%とを含む水溶液である洗浄組成物を塗布した。
塗布後、塗膜を180℃で300秒間加熱した。加熱後、弱塩基性の水−水溶性エーテル混合液でリンスを行った後、更に水リンスを行った。
水リンス後の基板表面を顕微鏡観察したところ、カーボンハードマスクは良好に除去されていた。
【0109】
〔比較例1〕
シリコン基板上に形成された、エステル結合とエーテル結合とフッ素元素とを含むポリマーを含むカーボンハードマスク膜(膜厚80nm)上に、ノナフルオロブタンスルホン酸50質量%を含むDMF溶液である洗浄組成物を塗布した。
塗布後、塗膜を180℃で120秒間加熱した。加熱後、強塩基性水−DMSO混合溶液でリンスを行った後、更に水リンスを行った。
水リンス後の基板表面を顕微鏡観察したところ、カーボンハードマスクは良好に除去されていた。
【0110】
〔比較例2〕
シリコン基板上に形成された、エステル結合とエーテル結合とフッ素元素とを含むポリマーを含むカーボンハードマスク(膜厚80nm)上に、トリフルオロ酢酸50質量%を含むDMF溶液である洗浄組成物を塗布した。
塗布後、塗膜を180℃で120秒間加熱した。加熱後、強塩基性水−DMSO混合溶液でリンスを行った後、更に水リンスを行った。
水リンス後の基板表面を顕微鏡観察したところ、カーボンハードマスクは良好に除去されていた。