(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カルボン酸の金属塩(1)を含有し、該カルボン酸の金属塩(1)における脂肪族カルボン酸が、脂肪族モノカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸である請求項1又は2に記載のゴムと金属との接着促進剤。
前記カルボン酸の金属塩(1)におけるカルボン酸が、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ヘキサデカン酸またはオクタデカン酸である請求項4記載のゴムと金属との接着促進剤。
前記化合物(2)を含有し、該化合物(2)における(RCOO)が、炭素原子数2〜20の飽和の脂肪族モノカルボン酸の残基である請求項1に記載のゴムと金属との接着促進剤。
前記化合物(2)における(RCOO)が、2−エチルヘキサン酸の残基、ネオデカン酸の残基、ヘキサデカン酸の残基またはオクタデカン酸の残基である請求項8記載のゴムと金属との接着促進剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、毒性が懸念されているコバルトを含有せずとも、コバルトを含有する接着促進剤よりも、ゴムと金属との間に高い接着力を奏することができる接着促進剤と、これを用いたゴム組成物及びタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸の金属塩であって、該金属がビスマス、銅、アンチモン、銀またはニオブであるものは、毒性が懸念されているコバルトを含有せずとも、コバルトを含有する接着促進剤よりも、ゴムと金属との間に高い接着力を奏することができる接着促進剤となること、酸素原子を介してホウ素または燐と結合されているビスマス、銅、アンチモン、銀またはニオブのいずれかを含み、且つ、脂肪族カルボン酸の残基を併せ持つ特定の構造を有するものも、前記特許文献1のように芳香族カルボン酸残基を積極的に有するものよりもゴムと金属との間に高い接着力を奏することができる接着促進剤となること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の態様を含む。
[1] 炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸の金属塩であって、該金属がビスマス、銅、アンチモン、銀またはニオブであるカルボン酸の金属塩(1)、または、下記一般式(A)
【0009】
【化1】
〔式中、Zは下記式(z−1)〜式(z−4)
【0010】
【化2】
から選ばれる構造である。Mはビスマス、銅、アンチモン、銀またはニオブである。(RCOO)は炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸の残基である。xは、(Mの価数−1)の整数である。〕
で表される化合物(2)を含有することを特徴とするゴムと金属との接着促進剤。
[2] 前記カルボン酸の金属塩(1)を含有し、該カルボン酸の金属塩(1)中の金属がビスマスまたは銅である前記[1]記載のゴムと金属との接着促進剤。
[3] 前記カルボン酸の金属塩(1)を含有し、該カルボン酸の金属塩(1)における脂肪族カルボン酸が、脂肪族モノカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸である前記[1]または[2]に記載のゴムと金属との接着促進剤。
[4] 前記カルボン酸の金属塩(1)における脂肪族カルボン酸が、炭素原子数2〜20の飽和の脂肪族モノカルボン酸である前記[3]記載のゴムと金属との接着促進剤。
[5] 前記カルボン酸の金属塩(1)におけるカルボン酸が、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ヘキサデカン酸またはオクタデカン酸である前記[4]記載のゴムと金属との接着促進剤。
[6] 前記化合物(2)を含有し、該化合物(2)中のMがビスマスまたは銅である前記[1]記載のゴムと金属との接着促進剤。
[7] 前記化合物(2)を含有し、該化合物(2)中のZが前記式(z−1)で表される構造である前記[1]または[6]に記載のゴムと金属との接着促進剤。
[8] 前記化合物(2)を含有し、該化合物(2)における(RCOO)が、炭素原子数2〜20の飽和の脂肪族モノカルボン酸の残基である前記[1]、[6]または[7]に記載のゴムと金属との接着促進剤。
[9] 前記化合物(2)における(RCOO)が、2−エチルヘキサン酸の残基、ネオデカン酸の残基、ヘキサデカン酸の残基またはオクタデカン酸の残基である前記[8]記載のゴムと金属との接着促進剤。
[10] ゴムとスチールコードとを接着させる用途に用いる前記[1]〜[9]のいずれか1項に記載のゴムと金属との接着促進剤。
【0011】
[11] 前記[1]〜[10]のいずれか1項に記載のゴムと金属との接着促進剤と、ゴム成分とを含有することを特徴とするゴム組成物。
[12] 前記ゴムと金属との接着促進剤を、前記ゴム成分100質量部に対して0.01〜10質量部含有する前記[11]記載のゴム組成物。
【0012】
[13] 前記[11]または[12]に記載のゴム組成物とスチールコードとからなるスチールコード/ゴム複合体を有することを特徴とするタイヤ。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゴムと金属との接着促進剤は、非コバルト系でありながら、コバルトを含有する接着促進剤よりも、ゴムと金属との間に高い接着力、特に湿熱条件下においても高い接着力を奏することができる。本発明の接着促進剤を用いることで、スチールコードとゴムとの接着が強固な自動車用タイヤ、ベルトコンベヤ等を好適に製造できるゴム組成物を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のゴムと金属との接着促進剤は、前記の通り金属塩(1)または化合物(2)を含有することを特徴とする。以下、金属塩(1)について詳述する。
【0015】
本発明におけるカルボン酸の金属塩(1)は炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸の金属塩である。ここで、金属種は、ビスマス、銅、アンチモン、銀またはニオブである。金属種の中でも湿熱条件下においてもスチールコードとゴムとの接着が良好な接着促進剤となることからビスマス、銅、アンチモンまたは銀が好まく、ビスマスまたは銅がより好ましい。
【0016】
本発明において、炭素原子数が2より小さい脂肪族カルボン酸を用いたのでは、ゴムとの相溶性に優れる接着促進剤となりにくく、その結果として、ゴムと金属との高い接着力を奏する接着促進剤が得にくくなることから好ましくない。また、炭素原子数が25よりも大きいカルボン酸を用いたのでは、金属塩(1)の合成を行いにくく、その結果として、ゴムと金属との高い接着力を奏する接着促進剤が得にくくなることから好ましくない。
【0017】
前記炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸を好ましく例示できる。ここで、本発明において、脂肪族カルボン酸の炭素原子数とは、カルボキシル基の炭素原子数を含めた数を言う。
【0018】
前記炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和の脂肪族モノカルボン酸や不飽和の脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。前記飽和の脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、イソノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ナフテン酸等が挙げられる。
【0019】
前記不飽和の脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、9−ヘキサデセン酸、cis−9−オクタデセン酸、11−オクタデセン酸、cis,cis−9,12−オクタデカジエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、9,11,13−オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、8,11−エイコサジエン酸、5,8,11−エイコサトリエン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸、桐油酸、アマニ油酸、大豆油酸、樹脂酸、トール油脂肪酸、ロジン酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、デヒドロアビエチン酸等が挙げられる。
【0020】
前記炭素原子数2〜25の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、飽和の脂肪族ジカルボン酸や不飽和の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。飽和の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等が挙げられる。
不飽和の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0021】
前記カルボン酸の中でも、ゴムの硫黄架橋に影響を及ぼしにくく、その結果、自動車用タイヤ、ベルトコンベヤ等に使用するゴム物性に悪影響が少ないゴム硬化物が得られることから飽和の脂肪族モノカルボン酸が好ましい。飽和の脂肪酸の中でも、炭素原子数2〜20の飽和の脂肪族モノカルボン酸が好ましく、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ヘキサデカン酸またはオクタデカン酸がより好ましい。
【0022】
本発明におけるカルボン酸の金属塩(1)は、例えば、下記に示す方法により得ることができる。
製法1:炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸(a)と、金属(ビスマス、銅、アンチモン、銀、ニオブ)の酸化物(b−1)、金属(ビスマス、銅、アンチモン、銀、ニオブ)の水酸化物(b−2)及び金属(ビスマス、銅、アンチモン、銀、ニオブ)の炭酸塩(b−3)から選ばれる一種以上とを、直接反応させて製造する方法(直接法)。
【0023】
製法2:炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸(a)と水酸化ナトリウムとを水の存在下で反応させて脂肪族カルボン酸のナトリウム塩を得た後、該脂肪族カルボン酸のナトリウム塩と金属(ビスマス、銅、アンチモン、銀、ニオブの金属塩)の硫酸塩(c−1)、金属(ビスマス、銅、アンチモン、銀、ニオブ)の塩化物(c−2)および金属(ビスマス、銅、アンチモン、銀、ニオブ)の硝酸塩(c−3)から選ばれる一種以上とを反応させ製造する方法(複分解法)。
【0024】
前記製法1で用いる金属(ビスマス、銅、アンチモン、銀、ニオブ)の酸化物(b−1)としては、例えば、酸化ビスマス(III)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化アンチモン(III)、酸化アンチモン(V)、酸化銀(I)、酸化銀(II)、酸化銀(III)、酸化ニオブ(IV)、酸化ニオブ(V)等が挙げられる。前記金属(ビスマス、銅、アンチモン、銀、ニオブ)の水酸化物(b−2)としては、例えば、水酸化銅(II)等が挙げられる。前記金属(ビスマス、銅、アンチモン、銀、ニオブ)の炭酸塩(b−3)としては、例えば、炭酸ビスマス(III)、炭酸酸化ビスマス(III)、炭酸銅(II)等が挙げられる。
【0025】
前記製法2で用いる金属(ビスマス、銅、アンチモン、銀、ニオブ)の硫酸塩(c−1)としては、例えば、硫酸銅(II)等が挙げられる。前記金属(ビスマス、銅、アンチモン、銀、ニオブ)の塩化物(c−2)としては、例えば、塩化酸化ビスマス(III)、塩化銅(I)、塩化銅(II)、塩化アンチモン(III)、塩化アンチモン(V)、塩化銀(I)、塩化ニオブ(V)等が挙げられる。前記金属(ビスマス、銅、アンチモン、銀、ニオブ)の硝酸塩(c−3)としては、例えば、硝酸ビスマス(III)、次硝酸ビスマス(III)、硝酸銀(I)等が挙げられる。
【0026】
前記製法1において、炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸(a)と、化合物(b−1)〜(b−3)とを反応させる際の反応温度は、通常50〜150℃である。また、反応時間は通常1〜20時間である。
【0027】
前記製法2において、炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸(a)と水酸化ナトリウムとを有機溶剤の存在下で反応させる際の反応温度は、通常20〜100℃である。また、反応時間は通常1〜5時間である。
【0028】
前記製法2において、脂肪族カルボン酸のナトリウム塩と、化合物(c−1)〜(c−3)とを反応させる際の反応温度は、通常20〜100℃である。また、反応時間は通常1〜5時間である。
【0029】
製法2において、脂肪族カルボン酸のナトリウム塩と、化合物(c−1)〜(c−3)とを反応させた後、反応系にある水層を分離する。その後、油層内に存在する溶剤を減圧蒸留により除去することで、本発明のゴムと金属との接着促進剤(脂肪酸金属塩)を得ることができる。
【0030】
次に、本発明における一般式(A)で表される化合物(2)について詳述する。化合物(2)の(RCOO)は、炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸の残基である。炭素原子数が2より小さい脂肪族カルボン酸の残基では、ゴムとの相溶性に優れる接着促進剤となりにくく、その結果として、ゴムと金属との高い接着力を奏する接着促進剤が得にくくなることから好ましくない。また、炭素原子数が25よりも大きいカルボン酸の残基では、化合物(2)の合成を行いにくいことに加えて、またゴム中で分散あるいはスチールコード表面への吸着がしにくく、その結果として、ゴムと金属との高い接着力を奏する接着促進剤が得にくくなることから好ましくない。ここで、本発明において、(RCOO)の炭素原子数とは、カルボキシル基の炭素原子数を含めた数を言う。
【0031】
前記炭素原子数2〜25の脂肪族モノカルボン酸の残基としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸の残基を好ましく例示できる。これらの残基は、例えば、前記した脂肪族モノカルボン酸由来の残基を好ましく例示できる。
【0032】
前記脂肪族カルボン酸の残基の中でも、ゴムと架橋せず、スチールコード近傍への分散あるいはスチールコード表面への吸着がより進行させ、接着促進剤としての性能をより発現できることから、飽和の脂肪族モノカルボン酸の残基が好ましい。飽和の脂肪族モノカルボン酸の残基の中でも、炭素原子数2〜20の飽和の脂肪族モノカルボン酸の残基が好ましく、2−エチルヘキサン酸の残基、ネオデカン酸の残基、ヘキサデカン酸の残基またはオクタデカン酸の残基がより好ましい。
【0033】
一般式(A)で表される化合物中のMは金属種であり、具体的には、ビスマス、銅、アンチモン、銀またはニオブである。金属種の中でも湿熱条件下においてもスチールコードとゴムとの接着が良好な接着促進剤となることからビスマス、銅、アンチモンまたは銀が好まく、ビスマスまたは銅がより好ましい。
【0034】
また、一般式(A)で表される化合物(2)中のxは、(Mの価数−1)の整数である。
【0035】
一般式(A)で表される化合物(2)中のZは、下記式(z−1)〜式(z−4)から選ばれる構造である。
【0037】
上記構造の中でも、ゴムと金属との高い接着力を奏する接着促進剤が得やすいことから前記式(z−1)で表される構造が好ましい。
【0038】
一般式(A)で表される化合物(2)は、例えば、炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸(a)と、炭素原子数1〜5の低級アルコールのホウ酸エステル(d−1)や炭素原子数1〜5の低級アルコールのメタホウ酸エステル(d−2)や炭素原子数1〜5の低級アルコールのリン酸エステル(d−3)や炭素原子数1〜5の低級アルコールの亜リン酸エステル(d−4)と、該エステル(d−1)〜(d−4)中に存在している炭素原子数1〜5の低級アルコール残基との揮発性エステルを生成可能な酸(e)と、金属源である金属化合物M(f)とを混合、加熱し、得られる揮発性エステルを除去する方法により製造することができる。
【0039】
モノカルボン酸(a)としては、例えば、前記炭素原子数2〜25の脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
【0040】
前記低級アルコールのホウ酸エステル(d−1)としては、例えば、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル等が挙げられる。前記低級アルコールのメタホウ酸エステル(d−2)としては、例えば、メタホウ酸トリメチル、メタホウ酸トリエチル、メタホウ酸トリプロピル、メタホウ酸トリブチル等が挙げられる。前記低級アルコールのリン酸エステル(d−3)としては、例えば、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸プロピル、リン酸ブチル等が挙げられる。前記低級アルコールの亜リン酸エステル(d−4)としては、例えば、亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸プロピル、亜リン酸ブチル等が挙げられる。
【0041】
前記金属源である金属化合物M(f)としては、例えば、前記酸化物(b−1)、水酸化物(b−2)、炭酸塩(b−3)等を使用することができる。
【0042】
前記酸(e)としては、例えば、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸等が挙げられる。
【0043】
前記金属源である金属化合物M(f)の使用割合としては、例えば、炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸(a)100質量部あたり20〜100質量部である。また、前記(d)の使用割合としては、例えば、炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸(a)100質量部あたり10〜50質量部である。そして、前記酸(e)の使用割合としては、例えば、炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸(a)100質量部あたり10〜50質量部である。
【0044】
前記製造方法の中でも、炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸(a)と、エステル(d)中に存在している炭素原子数1〜5の低級アルコール残基との揮発性エステルを生成可能な酸(e)と、金属源である金属化合物M(f)とを混合し・加熱して反応物を得る第一工程の後、該反応物を含む反応系から水を除去した後、この水を除去した反応系に前記エステル(d−1)〜(d−4)を加え、該反応物と該エステル(d−1)〜(d−4)とを反応させる第二工程を含む製造方法が、第一工程で生成する水によるエステル(d−1)〜(d−4)の加水分解を防止でき、その結果として、効率よく本発明における化合物(2)を製造することができることから好ましい。
【0045】
前記製造方法において、炭素原子数2〜25の脂肪族カルボン酸(a)と、前記エステル(d−1)〜(d−4)と、前記酸(e)と、前記金属化合物M(f)とを反応させる温度は、例えば、100〜250℃であり、好ましくは、150〜220℃である。また、反応させる時間は、例えば、1〜20時間であり、好ましくは、1〜5時間である。
【0046】
本発明のゴム組成物は、本発明の接着促進剤とゴム成分とを含有することを特徴とする。前記ゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴムを用いることができる。ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ジエン系合成ゴム等が挙げられる。ジエン系合成ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。ゴム成分の中でも、この中でも、伸長結晶化しやすく破壊特性に優れるNRが好ましい。
【0047】
本発明に係るゴム組成物には、補強剤としてカーボンブラック、シリカなどのフィラーを配合することができる。
【0048】
前記カーボンブラックとしては、特に制限されることはなく、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF級のカーボンブラックが使用でき、それらの2種以上をブレンド使用してもよい。カーボンブラックの配合量は、特に限定されないが、ジエン系ゴム100質量部に対し20〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは40〜80質量部である。
【0049】
前記シリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、表面処理シリカなどが挙げられる。シリカを配合する場合、その配合量は、特に限定しないが、ジエン系ゴム100質量部に対し0質量部以上、40質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、20質量部以下である。
【0050】
本発明に係るゴム組成物には、加硫剤としての硫黄が通常配合される。硫黄の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜8質量部である。硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、オイル処理硫黄などが挙げられ、特に限定されない。
【0051】
本発明のゴム組成物には、加硫促進剤を配合させることができる。該加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系加硫促進剤を挙げることができる。 ここで、前記スルフェンアミド加硫促進剤としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CZ、JIS略号:CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(NS、JIS略号:BBS)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(OBS)、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DPBS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DZ、JIS略号:DCBS)等を挙げることができる。
【0052】
前記加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1〜12質量部が好ましく、2〜10質量部がより好ましく、3〜9質量部がより好ましい。
【0053】
本発明に係るゴム組成物には、上記各成分の他、種々の配合剤を任意に配合することができる。そのような配合剤としては、例えば、ステアリン酸、ワックス、オイル、老化防止剤、加工助剤等が挙げられる。
【0054】
本発明のゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダなどの混合機を用いて混練し作製することができる。
【0055】
本発明のゴム組成物は、特に、各種スチールコードを被覆するためのゴム組成物として好適に用いることができる。特には、空気入りタイヤのベルト層、カーカス層、チェーハー層などの補強材として使用されるスチールコードの被覆(トッピング)用ゴム組成物として好ましく用いられ、常法に従いスチールカレンダーなどのトッピング装置によりスチールコードトッピング反を製造し、これをタイヤ補強部材として用いて、常法に従い成形加硫することによりスチールコード/ゴム複合体を有するタイヤを製造することができる。
【0056】
本発明のゴム組成物中の、本発明に係る前記ゴムと金属との接着促進剤の含有量としては、ゴム成分100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、1〜6質量部がより好ましい。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の実施例を挙げ、比較例と比較しながら本発明を詳述する。例中、「部」、「%」は特に断りのない限り質量基準である。
ただし、実施例5,9,12及び14は、本発明に該当しない参考例である。
【0058】
合成例1〔接着促進剤(1−1):金属塩(1−1)の合成〕
2−エチルヘキサン酸400g及び酸化アンチモン(III)134gをフラスコに仕込み、120℃で2時間加熱撹拌した。その後、120℃で1時間、減圧乾燥し、本発明で用いる金属塩(1−1)を得た。尚、金属塩(1−1)は、該金属塩(1−1)を含む本発明の接着促進剤(1−1)ともいえる。
【0059】
合成例2(接着促進剤(1−2):金属塩(1−2)の合成)
2−エチルヘキサン酸400gの代わりにネオデカン酸483gを用いた以外は合成例1と同様にして本発明で用いる金属塩(1−2)を得た。尚、金属塩(1−2)は、該金属塩(1−2)を含む本発明の接着促進剤(1−2)ともいえる。
【0060】
合成例3(接着促進剤(1−3):金属塩(1−3)の合成)
ネオデカン酸483g及び酸化ニオブ
(IV)43gをフラスコに仕込み、120℃で2時間加熱撹拌した。その後、120℃で1時間、減圧乾燥し、本発明で用いる金属塩(1−3)を得た。尚、金属塩(1−3)は、該金属塩(1−3)を含む本発明の接着促進剤(1−3)ともいえる。
【0061】
合成例4〔接着促進剤(2−1):化合物(2−1)の合成〕
酢酸63g及びネオデカン酸342gの混合酸に、酸化ビスマス(III)233gを添加した後、120℃で2時間加熱撹拌した。その後、120℃で1時間減圧乾燥した後、生成したビスマス金属塩にホウ酸トリブチル80gを反応させ、副生する酢酸ブチルを留去して、本発明で用いる化合物(2−1)を得た。尚、化合物(2−1)は、該化合物(2−1)を含む本発明の接着促進剤(2−1)ともいえる。
【0062】
合成例5(接着促進剤(2−2):化合物(2−2)の合成)
酸化ビスマス(III)233gの代わりに酸化銅(II)80gを用いた以外は合成例4と同様にし
て化合物(2−2)を得た。尚、化合物(2−2)は、該化合物(2−2)を含
む接着促進剤(2−2)ともいえる。
【0063】
合成例6(接着促進剤(2−3):化合物(2−3)の合成)
酸化ビスマス(III)233gの代わりに酸化アンチモン(III)146gを用いた以外は合成例4と同様にして本発明で用いる化合物(2−3)を得た。尚、化合物(2−3)は、該化合物(2−3)を含む本発明の接着促進剤(2−3)ともいえる。
【0064】
合成例7(接着促進剤(2−4):化合物(2−4)の合成)
酸化ビスマス(III)233gの代わりに酸化銀(II)124gを用いた以外は合成例4と同様にし
て化合物(2−4)を得た。尚、化合物(2−4)は、該化合物(2−4)を含
む接着促進剤(2−4)ともいえる。
【0065】
合成例8(接着促進剤(2−5):化合物(2−5)の合成)
酸化ビスマス(III)233gの代わりに酸化ニオブ(IV)125gを用いた以外は
合成例4と同様にして本発明で用いる化合物(2−5)を得た。尚、化合物(2−5)は、該化合物(2−5)を含む本発明の接着促進剤(2−5)ともいえる。
【0066】
比較合成例1〔接着促進剤(2´−1):比較対照用化合物(2´−1)の合成〕
ネオデカン酸210g、プロピオン酸147gおよびキシレン300gを反応フラスコに充填し、そして機械的に撹拌しながら50℃に加熱した。水酸化コバルト(II)171gを加え、そして機械的に撹拌しながら温度を90℃に上昇させて可動性の青色液体を生成した。さらに熱を適用して反応水をディーン・アンド・スターク・トラップを用いてキシレン担持により除去した。温度が140℃に達した後に、キシレン150g中に溶解されている安息香酸73gを徐々に反応混合物に加えながら、生成した水を連続的に除去した。
【0067】
水除去の完了後に、キシレンを155℃の最高温度までのショートパス蒸留により除去し、除去を完了させるために真空を用いた。ホウ酸トリブチル138gを加えた。反応混合物を190℃に加熱し、そして3時間にわたり還流させた。プロピオン酸n−ブチル220gを次に220℃の最高温度において蒸留除去し、エステル除去を完了させるために真空を用い、比較対照用化合物(2´−1)を得た。
【0068】
比較対照用化合物(2´−1)は、下記式
B(OCoOCOB’)(OCoOCOA’)
2
[式中、OCOA’はネオデカン酸エステルであり、OCOB’は安息香酸エステルである]の硬い青色固体であった。尚、比較対照用化合物(2´−1)は、該比較対照用化合物(2´−1)を含む比較対照用の接着促進剤(2´−1)ともいえる。
【0069】
実施例1(本発明のゴム組成物の調製)
天然ゴム(グレード:RSS1)100部、接着促進剤(1−1)4部、カーボンブラック(東海カーボン株式会社製シーストG−S)50部、オイル(シェルケミカルズジャパン株式会社製Dutrex R)5部、亜鉛華8部、老化防止剤(大内新興化学工業株式会社製ノクラック810NA)1部、不溶性硫黄5部、ステアリン酸2部及び加硫促進剤(大内新興化学工業株式会社製ノクセラーCZ)0.5部を40℃で混練し、本発明のゴム組成物(1)を得た。得られたゴム組成物(1)を用いてスチールコードがはさまれたゴム組成物の硬化物(試験片)を作成し、スチールコードとゴムの接着性の評価を行った。試験片の作成方法及び、接着性の評価方法を下記に示す。また、評価結果を第1表に示す。
【0070】
<試験片の作成方法>
ゴム組成物(1)を試験用2本ロールにより熱練し、幅100mm、厚さ6mm、長さ100mmのゴムシートを作製した。このゴムシートから幅10mm、厚さ6mm、長さ60mmのゴム片を2枚切り出した。真鍮(Cu65%、Zn35%)をメッキした1×4×0.25mmのスチールコードを前記2枚のゴム片で挟み、160℃で10分間加硫し、スチールコードが接着されたゴム組成物の試験片を作製した。
【0071】
<接着性の評価方法>
前記試験片を用いてASTM D2229に準ずる方法で引き抜き試験を行い、ゴムとスチールコードとの接着力を測定した。接着力の測定は、下記の3種類の測定を行った。
初期接着力:上記加硫条件で加硫し試験片を作成し24時間後に測定した。
湿熱老化試験後の接着力:上記加硫条件で加硫した試験片を90℃の温水に72時間浸水劣化させた後、接着力を測定した。
加熱老化試験後の接着力:上記加硫条件で加硫した試験片を110℃で72時間放置し接着力を測定した。
尚、上記3つの接着力の測定値は、後述する比較対照用金属塩(1´−2)の接着力を100としたときの相対的な接着力である。
【0072】
実施例2〜15
第1表に示す金属塩(1−1)〜(1−10)または化合物(2−1)〜(2−5)
〔接着促進剤〕を用いた以外は実施例1と同様にしてゴム組成物(1)〜(15)を得た。実施例1と同様にして接着性の評価試験を行い、その結果を第1表に示す。尚、実施例2〜15において、各々の金属塩(1−1)〜(1−10)または化合物(2−1)〜(2−5)の使用量は、ゴム組成物中の金属モル濃度が同一となるように添加した。
ただし、実施例5,9,12及び14は、本発明に該当しない参考例である。
【0073】
【表1】
【0074】
比較例1〜12(比較対照用のゴム組成物の調製)
第2表に示す金属塩(1´−2)〜(1´−11)または化合物(2´−1)〔比較対照用接着促進剤〕、化合物(2´−2)を用いた以外は実施例1と同様にして比較対照用ゴム組成物(1´)〜(12´)を得た。実施例1と同様にして接着性の評価試験を行い、その結果を第2表に示す。尚、比較例1〜12において、各々の金属塩(1´−2)〜(1´−11)または化合物(2´−1)〜(2´−2)の使用量は、ゴム組成物中の金属モル濃度が同一となるように添加した。
【0075】
【表2】