(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の有機膜を、前記シリコンを含有するガスに曝露させる工程と、前記第1の有機膜を水蒸気に曝露させる工程とを繰り返すことで、前記第1の有機膜に5〜10atm%のシリコンを浸潤させる、
請求項8に記載のパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0013】
〔パターン形成方法〕
本発明の実施形態に係るパターン形成方法は、ライン・アンド・スペース構造に対して所定の薄膜を堆積し、その薄膜のうちラインの両側面に堆積された薄膜(側壁部)を利用する、いわゆる自己整合マルチパターニングに適用可能である。
【0014】
最初に、本発明の実施形態に係るパターン形成方法の説明に先立って、自己整合マルチパターニングに適用される従来のパターン形成方法について、
図14及び
図15を参照して説明する。
【0015】
図14は、従来のパターン形成方法の一例を示す工程断面図である。従来のパターン形成方法の一例では、まず、
図14(a)に示されるように、スピン塗布により、エッチング対象膜91の上に第1の有機膜92を形成する。続いて、
図14(b)に示されるように、スピン塗布又は化学気相堆積(Chemical Vapor Deposition;CVD)により、第1の有機膜92の上に酸化シリコン膜93を形成する。続いて、
図14(c)に示されるように、スピン塗布により、酸化シリコン膜93の上に第2の有機膜94を形成する。続いて、
図14(d)に示されるように、第2の有機膜94の上に反射防止膜95及びライン・アンド・スペース構造を有するレジストパターン96pを形成する。続いて、
図14(e)に示されるように、レジストパターン96pをエッチングマスクとして反射防止膜95及び第2の有機膜94をエッチングすることで、反射防止膜95及び第2の有機膜94にレジストパターン96pを転写する。これにより、反射防止膜パターン95p及び第2の有機膜パターン94pが形成される。続いて、希フッ酸(dilute hydrofluoric acid;dHF)を用いて反射防止膜パターン95pを除去することで、反射防止膜パターン95pと共にレジストパターン96pを除去する。このとき、希フッ酸が第1の有機膜92と第2の有機膜パターン94pとの間に形成された酸化シリコン膜93の一部を溶かしてしまい、酸化シリコン膜93の線幅が細くなるネッキングが生じる。このようにネッキングが生じると、第2の有機膜パターン94pが第1の有機膜92から剥がれやすくなる等の問題が生じる場合がある。
【0016】
図15は、従来のパターン形成方法の別の例を示す工程断面図である。従来のパターン形成方法の別の例では、まず、
図15(a)に示されるように、スピン塗布により、エッチング対象膜91の上に第1の有機膜92を形成する。続いて、スピン塗布により、第1の有機膜92の上に第2の有機膜94を形成する。このとき、第2の有機膜94をスピン塗布するときに用いられる有機溶剤により第1の有機膜92が溶解する。そのため、
図15(b)に示されるように、エッチング対象膜91の上には、第1の有機膜92と第2の有機膜94とが混合した混合膜99が形成される。続いて、
図15(c)に示されるように、混合膜99の上に反射防止膜95及びライン・アンド・スペース構造を有するレジストパターン96pを形成する。続いて、レジストパターン96pをエッチングマスクとして反射防止膜95及び混合膜99をエッチングすることで、反射防止膜95及び混合膜99にレジストパターン96pを転写する。これにより、反射防止膜パターン95p及び混合膜パターン99pが形成される。このとき、第1の有機膜92と第2の有機膜94とが混合した混合膜パターン99pでは、
図15(d)に示されるように、エッチングを所望の位置で停止させることが困難である。
【0017】
また、第1の有機膜92又は第2の有機膜94のいずれかに代えて無機膜を用いる方法も考えられる。しかしながら、無機膜に対して酸化シリコン膜を堆積し、酸化シリコン膜のうち無機膜の両側面に堆積された酸化シリコン膜を側壁部として利用する自己整合マルチパターニングでは、無機膜と側壁部との間で高いエッチング選択性を得ることが困難である。そのため、側壁部の表面のLERが大きくなる虞がある。
【0018】
そこで、本発明者らは、従来技術に対する問題点を鋭意検討した結果、LERを抑制した自己整合マルチパターニングが実現可能な以下のパターン形成方法を見出した。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るパターン形成方法の一例を示すフローチャートである。
図1に示されるように、パターン形成方法は、エッチング対象膜の上に有機膜の積層体を形成する工程S1と、第2の有機膜パターンを形成する工程S2と、第1の有機膜パターンを形成する工程S3と、エッチング対象膜パターンを形成する工程S4と、を有する。
【0020】
エッチング対象膜の上に有機膜の積層体を形成する工程S1では、半導体ウエハ(以下「ウエハ」という。)の表面に形成されたエッチング対象膜の上に、第1の有機膜及び第2の有機膜をこの順に形成する。第2の有機膜パターンを形成する工程S2では、第2の有機膜をパターニングして第2の有機膜パターンを形成する。第1の有機膜パターンを形成する工程S3では、第2の有機膜パターンを芯材とする自己整合パターニング法により、第1の有機膜をパターニングして第2の有機膜パターンのピッチを2分の1に微細化した第1の有機膜パターンを形成する。エッチング対象膜パターンを形成する工程S4では、第1の有機膜パターンを芯材とする自己整合パターニング法により、エッチング対象膜をパターニングして第1の有機膜パターンのピッチを2分の1に微細化したエッチング対象膜パターンを形成する。以下では、各工程について詳細に説明する。
【0021】
(エッチング対象膜の上に有機膜の積層体を形成する工程S1)
エッチング対象膜の上に有機膜の積層体を形成する工程S1について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2は、有機膜の積層体を形成する工程の一例を示す概略断面図である。
図3は、第1の有機膜にシリコン含有ガスを浸潤させる工程の一例を示すフローチャートである。
【0022】
最初に、ウエハ(図示せず)上に形成されたエッチング対象膜11の上に、架橋可能な成分を含む重合体を含有する組成物を塗布する。これにより、
図2(a)に示されるように、エッチング対象膜11の上に、第1の有機膜12が形成される。
【0023】
本実施形態では、エッチング対象膜11は、シリコン膜である。組成物は、水酸基を有する単量体を含んで重合させた重合体(A成分)と、架橋剤(B成分)と、酸又は酸発生剤(C成分)と、溶剤(D成分)と、を含有する。
【0024】
水酸基を有する単量体としては、フェノール性水酸基を有する単量体、アルコール性水酸基を有する単量体を用いることができる。水酸基を有する単量体を含んで重合させた重合体としては、例えば下記化学式(1)又は(2)で示されるユニットを有する化合物を用いることができる。化学式(1)及び(2)中、R
1及びR
2は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキル基である。
【0026】
また、水酸基を有する単量体を含んで重合させた重合体は、水酸基を有する単量体と水酸基を有しない任意の単量体を重合させた共重合体であってよい。水酸基を有しない単量体としては、例えばスチレン及びその誘導体が挙げられる。水酸基を有する単量体と水酸基を有しない単量体の共重合体としては、例えばPHS(polyhydroxy styrene)とPS(polystyrene)との共重合体(例えば、質量平均分子量Mw=3000、PHSとPSの重量比PHS/PS=68/32)が挙げられる。
【0027】
架橋剤としては、酸の存在下で水酸基を有する重合体を架橋し得る化合物を用いることができ、例えばメチロール基含有化合物、アルコキシアルキル基含有化合物、カルボキシメチル基含有化合物、エポキシ化合物が挙げられる。
【0028】
酸としては、例えば有機スルホン酸、有機カルボン酸を用いることができる。酸発生剤としては、熱酸発生剤や光酸発生剤を用いることができる。熱酸発生剤としては、例えば有機スルホン酸のアミン塩、有機カルボン酸のアミン塩、スルホニウム塩が挙げられる。光酸発生剤としては、例えばスルホニウム塩、ヨードニウム塩が挙げられる。
【0029】
溶剤としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、例えばγ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン(2−ヘプタノン)、メチルイソペンチルケトン、などのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)などを挙げることができる。これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。なかでも、PGMEAとPGMEが好ましい。
【0030】
次に、第1の有機膜12に無機物を浸潤させる(浸潤工程)。無機物としては、例えばシリコン、金属が挙げられる。本実施形態では、
図3に示されるように、浸潤工程は、第1の有機膜12をシリコン含有ガスに曝露させる工程S11と、窒素(N
2)パージする工程S12と、第1の有機膜12を水蒸気に曝露させる工程S13と、N
2パージする工程S14と、を有する。また、工程S11から工程S14が所定回数行われたかを判定する工程S15を有する。これらの工程により、第1の有機膜12にシリコンを浸潤させることができる。その結果、第1の有機膜12に酸素プラズマに対するエッチング耐性(以下「酸素プラズマ耐性」という。)を付与することができる。なお、第1の有機膜12にシリコンを浸潤させる際、第1の有機膜12の厚さ方向の全体に渡ってシリコンを浸潤させてもよく、第1の有機膜12の表面のみにシリコンを浸潤させてもよい。また、第1の有機膜12の厚さ方向の全体に渡ってシリコンを浸潤させる場合、エッチング対象膜11の側から第2の有機膜14が形成される側に向かって濃度が高くなるような濃度分布を形成することが好ましい。
【0031】
浸潤工程では、ウエハの温度、圧力、曝露時間、工程S11から工程S14までを繰り返す回数(繰返回数)を変更することで、第1の有機膜12に浸潤させるシリコンの量を調整することができる。具体的には、例えばウエハの温度を高くすることで第1の有機膜12に浸潤させるシリコンの量を増加させることができ、ウエハの温度を低くすることで第1の有機膜12に浸潤させるシリコンの量を減少させることができる。また、例えば繰返回数を増やすことで第1の有機膜12に浸潤させるシリコンの量を増加させることができ、繰返回数を減らすことで第1の有機膜12に浸潤させるシリコンの量を減少させることができる。
【0032】
シリコン含有ガスとしては、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)、N−(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDMA)、トリメチルシリルイミダゾール(TMSI)、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA)、N−メチル−N−トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド(MSTFA)、N−(トリメチルシリル)ジエチルアミン(TMSDEA)、N−メチル−Nトリメチルシリルアセトアミド(MTMSA)、トリメチルクロロシラン(TMCS)を用いることができる。
【0033】
また、浸潤工程は、真空雰囲気下で行ってもよく、大気圧雰囲気下で行ってもよい。また、本実施形態では、第1の有機膜12をシリコン含有ガスに曝露させる工程S11と第1の有機膜12を水蒸気に曝露させる工程S13とを繰り返し行う場合を例に挙げて説明した。しかしながら、第1の有機膜12を水蒸気に曝露させる工程S13については省略することも可能である。但し、浸潤を促進させるという観点から、第1の有機膜12を水蒸気に曝露させる工程S13を行うことが好ましい。
【0034】
また、第1の有機膜12に、シリコンに代えて金属を浸潤させる場合には、第1の有機膜12をシリコン含有ガスに曝露させる工程S11に代えて、第1の有機膜12を金属含有ガスに曝露させればよい。浸潤させる金属としては、例えばアルミニウム、チタン、ジルコニウムが挙げられる。アルミニウムを浸潤させるためのアルミニウム含有ガスとしては、例えばトリメチルアルミニウム(TMA)を用いることができる。同様に、チタンの場合はチタン含有ガスを用い、ジルコニウムの場合にはジルコニウム含有ガスを用いて、同様に浸潤させる。
【0035】
また、浸潤反応を収束させて第1の有機膜12を安定化させるという観点から、浸潤工程の後に第1の有機膜をアニール処理するアニール工程を行うことが好ましい。アニール処理としては、例えばプラズマ処理、熱処理、真空紫外線(Vacuum Ultra Violet;VUV)照射、オゾン処理、電子線(Electron Beam;EB)照射が挙げられる。
【0036】
第1の有機膜12に無機物を浸潤させた後、第1の有機膜12に含まれる重合体を架橋させる(架橋工程)。具体的には、組成物が酸又は熱酸発生剤を含有する場合には、第1の有機膜12を所定の温度(例えば、100〜150℃)に加熱することにより、重合体に架橋剤を作用させて重合体を架橋させる。また、組成物が光酸発生剤を含有する場合には、第1の有機膜12に所定の光を照射して酸を発生させ、第1の有機膜12を所定の温度に加熱することにより、重合体に架橋剤を作用させて重合体を架橋させる。これにより、第1の有機膜12に有機溶剤に対するエッチング耐性(以下「有機溶剤耐性」という。)を付与することができる。
【0037】
このように第1の有機膜12にシリコンを浸潤させ、架橋を行うことで、
図2(b)に示されるように、酸素プラズマ耐性及び有機溶剤耐性が付与された第1の有機膜12aが形成される。
【0038】
なお、本実施形態では、浸潤工程の後に架橋工程を行う場合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、架橋工程の後に浸潤工程を行ってもよい。また、浸潤工程及び架橋工程を同時に行ってもよい。但し、第1の有機膜12に浸潤させる無機物の量を制御しやすいという観点から、架橋工程の前に浸潤工程を行うことが好ましい。
【0039】
次に、第1の有機膜12aの上に、有機化合物を塗布する。これにより、
図2(c)に示されるように、第1の有機膜12aの上に第2の有機膜14が形成される。このとき、第1の有機膜12aが有機溶剤耐性を有するので、第1の有機膜12と第2の有機膜14とが混合することが防止される。なお、有機化合物は、第1の有機膜12aを形成する際に用いた組成物であってもよく、別の組成物であってもよい。
【0040】
(第2の有機膜パターンを形成する工程S2)
第2の有機膜パターンを形成する工程S2について、
図4を参照して説明する。
図4は、第2の有機膜パターンを形成する工程の一例を示す概略断面図である。
【0041】
最初に、第2の有機膜14の上に、反射防止膜15及びレジスト膜16をこの順に形成する。続いて、フォトリソグラフィ技術により、レジスト膜16をパターニングしてレジストパターン16pを形成する。これにより、
図4(a)に示されるように、第2の有機膜14の上に、レジストパターン16pが形成される。反射防止膜15としては、例えばスピン塗布により成膜される酸化シリコン膜、CVDにより堆積される酸化シリコン膜やアモルファスシリコン膜を用いることができる。また、真空蒸着、CVD、スパッタ等により堆積されるチタン(Ti)、酸化チタン(TiO
2)、窒化チタン(TiN)を用いてもよい。フォトリソグラフィ技術における露光は、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F
2エキシマレーザ、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線等の放射線を用いて行うことができる。また、レジスト膜16の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行うドライ露光であってもよく、レジスト膜16と露光装置との間を空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒で満たした状態で露光を行う液浸露光であってもよい。本実施形態では、レジストパターン16pはライン・アンド・スペース構造を有する。なお、フォトリソグラフィ技術によりレジストパターン16pを形成した後、レジストパターン16pの線幅を細くするスリミング処理を行ってもよい。
【0042】
次に、レジストパターン16pをエッチングマスクとして、反射防止膜15をエッチングする。これにより、反射防止膜15にレジストパターン16pが転写され、反射防止膜パターン15pが形成される。続いて、レジストパターン16pをエッチングマスクとして、酸素プラズマにより、第2の有機膜14をエッチングする。これにより、第2の有機膜14にレジストパターン16pが転写され、第2の有機膜パターン14pが形成される。このとき、第1の有機膜12aが酸素プラズマ耐性を有するので、
図4(b)に示されるように、酸素プラズマによって第1の有機膜12aがエッチングされることが防止される。即ち、第1の有機膜12aは、第2の有機膜14をエッチングする際のエッチングストップ層として機能する。
【0043】
次に、希フッ酸を用いたウエットエッチングにより、反射防止膜パターン15pを除去することで、反射防止膜パターン15pと共にレジストパターン16pを除去する。このとき、第1の有機膜12aが有機化合物により形成されているので、希フッ酸に対してエッチング耐性(以下「希フッ酸耐性」という。)を有する。そのため、
図4(c)に示されるように、第1の有機膜12aをエッチングすることなく、反射防止膜パターン15p及びレジストパターン16pを選択的に除去することができる。本実施形態では、第2の有機膜パターン14pは、レジストパターン16pが転写されたものであり、レジストパターン16pとピッチが同一のライン・アンド・スペース構造を有する。
【0044】
(第1の有機膜パターンを形成する工程S3)
第1の有機膜パターンを形成する工程S3について説明する。
図5は、第1の有機膜パターンを形成する工程の一例を示す概略断面図である。
【0045】
最初に、原子層堆積(Atomic Layer Deposition;ALD)又は分子層堆積(Molecular Layer Deposition;MLD)により、第2の有機膜パターン14pを覆うように酸化シリコン膜17を形成する。これにより、
図5(a)に示されるように、第2の有機膜パターン14pの上面に堆積する酸化シリコン膜17の厚さと、第2の有機膜パターン14pの側面に堆積する酸化シリコン膜17の厚さとがほぼ等しいコンフォーマルな酸化シリコン膜17が形成される。
【0046】
次に、異方性エッチングにより、第2の有機膜パターン14pの上面が露出するまで、酸化シリコン膜17をエッチバックする。これにより、第2の有機膜パターン14pの両側面に酸化シリコン膜17が残存し、
図5(b)に示されるように、第1の側壁部17pが形成される。
【0047】
次に、酸素プラズマにより、第2の有機膜パターン14pを除去する。これにより、第1の側壁部17pが残存する。このとき、酸素プラズマに対する第2の有機膜パターン14pと第1の側壁部17pとのエッチング速度比(エッチング選択性)が大きいので、
図5(c)に示されるように、第1の側壁部17pがエッチングされることが防止される。そのため、第1の側壁部17pの側面のLERを低減できる。本実施形態では、第1の側壁部17pは、第2の有機膜パターン14pのピッチを2分の1に微細化したライン・アンド・スペース構造を有する。
【0048】
次に、第1の側壁部17pをエッチングマスクとして、水素(H
2)/窒素(N
2)プラズマにより、第1の有機膜12aをエッチングする。これにより、
図5(d)に示されるように、第1の有機膜12aに第1の側壁部17pのパターンが転写され、第1の有機膜パターン12pが形成される。このとき、H
2/N
2プラズマに対する第1の有機膜12aと第1の側壁部17pとのエッチング選択性が大きいので、第1の側壁部17pがほとんどエッチングされない。そのため、第1の側壁部17pのパターンを高い精度で第1の有機膜12aに転写することができる。
【0049】
次に、希フッ酸を用いたウエットエッチングにより、第1の側壁部17pを除去する。このとき、第1の有機膜パターン12pが有機化合物により形成されているので、希フッ酸耐性を有する。そのため、希フッ酸を用いたウエットエッチングにより、第1の側壁部17pを除去する際、
図5(e)に示されるように、第1の有機膜パターン12pをエッチングすることなく、第1の側壁部17pを選択的に除去することができる。本実施形態では、第1の有機膜パターン12pは、第1の側壁部17pのパターンが転写されたものであり、第2の有機膜パターン14pのピッチを2分の1に微細化したライン・アンド・スペース構造を有する。
【0050】
(エッチング対象膜パターンを形成する工程S4)
エッチング対象膜パターンを形成する工程S4について説明する。
図6は、エッチング対象膜パターンを形成する工程の一例を示す概略断面図である。
【0051】
最初に、ALD又はMLDにより、第1の有機膜パターン12pを覆うように酸化シリコン膜18を形成する。これにより、
図6(a)に示されるように、第1の有機膜パターン12pの上面に堆積する酸化シリコン膜18の厚さと、第1の有機膜パターン12pの側面に堆積する酸化シリコン膜18の厚さと、がほぼ等しいコンフォーマルな酸化シリコン膜18が形成される。
【0052】
次に、異方性エッチングにより、第1の有機膜パターン12pの上面が露出するまで、酸化シリコン膜18をエッチバックする。これにより、第1の有機膜パターン12pの両側面に酸化シリコン膜18が残存し、
図6(b)に示されるように、第2の側壁部18pが形成される。
【0053】
次に、H
2/N
2プラズマにより、第1の有機膜パターン12pを除去する。これにより、第2の側壁部18pが残存する。このとき、H
2/N
2プラズマに対する第1の有機膜パターン12pと第2の側壁部18pとのエッチング選択性が大きいので、
図6(c)に示されるように、第2の側壁部18pがエッチングされることが防止される。そのため、第2の側壁部18pの側面のLERを低減できる。本実施形態では、第2の側壁部18pは、第1の有機膜パターン12pのピッチを2分の1に微細化したライン・アンド・スペース構造を有する。即ち、第2の側壁部18pは、第2の有機膜パターン14pのピッチを4分の1に微細化したライン・アンド・スペース構造を有する。
【0054】
次に、第2の側壁部18pをエッチングマスクとして、エッチング対象膜11をエッチングする。これにより、
図6(d)に示されるように、エッチング対象膜11に第2の側壁部18pのパターンが転写され、エッチング対象膜パターン11pが形成される。
【0055】
次に、希フッ酸を用いたウエットエッチングにより、
図6(e)に示されるように、第2の側壁部18pを除去する。本実施形態では、エッチング対象膜パターン11pは、第2の側壁部18pのパターンが転写されたものであり、第2の有機膜パターン14pのピッチを2分の1に微細化したライン・アンド・スペース構造を有する。即ち、エッチング対象膜パターン11pは、第2の有機膜パターン14pのピッチを4分の1に微細化したライン・アンド・スペース構造を有する。
【0056】
以上に説明したように、本発明の実施形態に係るパターン形成方法では、フォトリソグラフィ技術の露光限界寸法よりも小さい線幅を実現できる。また、エッチング対象膜11の上に形成した有機膜の積層体を用いた自己整合パターニング法を用いているので、LERを抑制した自己整合マルチパターニングを実現できる。
【0057】
〔実施例〕
次に、本発明の実施形態に係るパターン形成方法の効果を確認した実施例について説明する。
【0058】
<実施例1>
実施例1では、以下に示す条件で、エッチング対象膜の上に第1の有機膜を形成し、シリコンを浸潤させ、架橋を行った試料に対して、酸素プラズマ耐性及び希フッ酸耐性を評価した。
【0059】
(第1の有機膜を形成する条件)
以下の表1に示す組成物をスピン塗布することにより第1の有機膜を形成した。
【0061】
(浸潤の条件)
第1の有機膜をシリコン含有ガスに曝露させる工程S11と、N
2パージする工程S12と、第1の有機膜を水蒸気に曝露させる工程S13と、N
2パージする工程S14とを所定回数行うことで、第1の有機膜に0〜30atm%のシリコンを浸潤させた。なお、シリコン含有ガスとしては、N−(トリメチルシリル)ジメチルアミンと酢酸ブチルの混合溶液を気化させて用いた。
【0062】
(架橋の条件)
第1の有機膜を所定の温度に加熱することにより第1の有機膜に含まれるPHSとPSとの共重合体を架橋させた。
【0063】
図7は、第1の有機膜の酸素プラズマ耐性及び希フッ酸耐性を示す図である。
図7において、横軸は第1の有機膜に浸潤させたシリコンの含有量(atm%)を示し、縦軸は第1の有機膜の厚さ(nm)を示す。また、
図7において、菱形印は酸素プラズマで処理した後の第1の有機膜の厚さを示し、四角印は希フッ酸で処理した後の第1の有機膜の厚さを示す。
【0064】
図7に示されるように、第1の有機膜に浸潤させたシリコンの含有量が6atm%以上の場合、第1の有機膜は酸素プラズマによってエッチングされないことが分かる。また、第1の有機膜に浸潤させたシリコンの含有量が5atm%の場合、第1の有機膜は酸素プラズマによってほとんどエッチングされないことが分かる。一方、第1の有機膜に浸潤させたシリコンの含有量が1atm%以下の場合、第1の有機膜は酸素プラズマによって完全にエッチングされることが分かる。これらのことから、第1の有機膜に酸素プラズマ耐性を付与するという観点から、第1の有機膜に浸潤させるシリコンの含有量は2atm%以上であることが好ましく、5atm%以上であることがより好ましく、6atm%以上であることが特に好ましい。
【0065】
また、
図7に示されるように、第1の有機膜に浸潤させたシリコンの含有量が10atm%以下の場合、第1の有機膜は希フッ酸によってエッチングされないことが分かる。一方、第1の有機膜に浸潤させたシリコンの含有量が15atm%以上の場合、第1の有機膜は希フッ酸によってほとんどがエッチングされることが分かる。このことから、第1の有機膜に希フッ酸耐性を維持させるという観点から、第1の有機膜に浸潤させるシリコンの含有量は15atm%より小さいことが好ましく、10atm%以下であることがより好ましい。
【0066】
<実施例2>
実施例2では、エッチング対象膜の上に、PHSを含有する組成物をスピン塗布することにより形成した第1の有機膜に8atm%のシリコンを浸潤させた試料及びシリコンを浸潤させていない試料に対して、酸素プラズマ耐性の違いを評価した。なお、浸潤の方法については、実施例1と同様の方法を使用した。
【0067】
図8は、第1の有機膜に対するシリコンの浸潤の有無による酸素プラズマ耐性の説明図である。
図8において、横軸はエッチング時間(sec)を示し、縦軸はエッチングされた膜厚(nm)を示す。また、
図8において、丸印は第1の有機膜に8atm%のシリコンを浸潤させた試料での結果を示し、四角印は第1の有機膜にシリコンを浸潤させていない試料での結果を示す。
【0068】
図8に示されるように、シリコンを浸潤させていない試料では、エッチング時間に比例して第1の有機膜がエッチングされているのに対し、シリコンを浸潤させた試料では、エッチング時間が経過しても第1の有機膜がほとんどエッチングされていないことが分かる。即ち、第1の有機膜にシリコンを浸潤させることで、酸素プラズマ耐性が付与されることが分かる。
【0069】
<実施例3>
実施例3では、エッチング対象膜の上に、PHSを含有する組成物をスピン塗布することにより形成した第1の有機膜に8atm%のシリコンを浸潤させた試料及びシリコンを浸潤させていない試料に対して、希フッ酸耐性の違いを評価した。なお、浸潤の方法については、実施例1と同様の方法を使用した。
【0070】
図9は、第1の有機膜に対するシリコンの浸潤の有無による希フッ酸耐性の説明図である。
図9において、横軸はエッチング時間(sec)を示し、縦軸は膜厚(nm)を示す。また、
図9において、丸印は第1の有機膜に8atm%のシリコンを浸潤させた試料での結果を示し、四角印は第1の有機膜にシリコンを浸潤させていない試料での結果を示す。
【0071】
図9に示されるように、8atm%のシリコンを浸潤させた試料では、シリコンを浸潤させていない試料と同様に、希フッ酸によってエッチングされていないことが分かる。即ち、第1の有機膜に8atm%のシリコンを浸潤させた場合であっても、第1の有機膜にシリコンを浸潤させていない場合と同程度の希フッ酸耐性を維持していることが分かる。
【0072】
<実施例4>
実施例4では、エッチング対象膜の上に、実施例1で用いた組成物をスピン塗布することにより第1の有機膜を形成し、実施例1と同様の条件で8atm%のシリコンを浸潤させ、架橋を行った試料を作製した。そして、この試料に対して、スピン塗布により第2の有機膜を形成することにより、有機溶剤耐性を評価した。
【0073】
図10は、第1の有機膜の上に第2の有機膜を形成したときの概略断面図である。
図10(a)は、エッチング対象膜の上に第1の有機膜を形成した後、第1の有機膜にシリコンを浸潤させ、架橋を行ったときの断面を示す。
図10(b)は、エッチング対象膜の上に第1の有機膜を形成した後、第1の有機膜にシリコンを浸潤させ、架橋を行った後に、第2の有機膜を形成したときの断面を示す。
【0074】
図10(a)及び
図10(b)に示されるように、シリコンの浸潤、及び架橋が行われた後の第1の有機膜の上に第2の有機膜を形成した場合、第2の有機膜が第1の有機膜に混合することがなかった。また、第1の有機膜と第2の有機膜の合計の厚さD2は、第1の有機膜の厚さD1の約2倍であった。このように、第1の有機膜にシリコンを浸潤させ、架橋を行うことで、有機溶剤耐性が付与されることが確認できた。
【0075】
<実施例5>
実施例5では、エッチング対象膜の上に、実施例1で用いた組成物をスピン塗布することにより第1の有機膜を形成し、実施例1と同様の条件で8atm%のシリコンを浸潤させ、架橋を行った試料に対して、酸素プラズマ耐性を評価した。
【0076】
図11は、第1の有機膜の酸素プラズマ耐性を確認した結果を示す概略断面図である。
図11(a)は、レジストパターンをエッチングマスクとして、酸素プラズマにより、第2の有機膜をエッチングする前の断面を示す。
図11(b)は、レジストパターンをエッチングマスクとして、酸素プラズマにより、第2の有機膜をエッチングし、レジストパターンを除去した後の断面を示す。
【0077】
図11(b)に示されるように、レジストパターンをエッチングマスクとして、酸素プラズマにより、第2の有機膜をエッチングした後であっても、第1の有機膜が残存していた。このことから、第1の有機膜にシリコンを浸潤させ、架橋を行うことで、酸素プラズマ耐性が付与されることが確認できた。即ち、第1の有機膜が酸素プラズマに対してエッチングストップ層として機能することが確認できた。
【0078】
<実施例6>
実施例6では、エッチング対象膜の上に、実施例1で用いた組成物をスピン塗布することにより第1の有機膜を形成し、実施例1と同様の条件で8atm%のシリコンを浸潤させ、架橋を行った試料に対して、希フッ酸耐性を評価した。
【0079】
図12は、第1の有機膜が希フッ酸耐性を有することを確認した結果を示す概略断面図である。
図12の左図及び右図は、それぞれ第2の有機膜の上に形成されたスピン塗布により成膜された酸化シリコン膜(以下「SOG膜」という。)を希フッ酸で除去する前後の断面を示す。
【0080】
図12の左図及び右図に示されるように、第1の有機膜の上に形成されたSOG膜を、希フッ酸を用いたウエットエッチングにより除去する前後において、第1の有機膜の形状に変化は見られない。このことから、第1の有機膜にシリコンを浸潤させ、架橋を行うことで、希フッ酸耐性が付与されることが分かる。
【0081】
<実施例7>
実施例7では、前述の本発明の実施形態に係るパターン形成方法により形成したライン・アンド・スペース構造を有するパターンの特性について評価した。また、実施例7では、実施例1で用いた組成物をスピン塗布することにより第1の有機膜を形成し、実施例1と同様の条件で8atm%のシリコンを浸潤させ、架橋を行った。
【0082】
図13は、本発明の実施形態に係るパターン形成方法を用いて形成したライン・アンド・スペース構造を有するパターンの説明図である。
図13(a)〜(f)の下図は、それぞれ
図13(a)〜(f)の上図の工程断面図に対応する上面SEM像を示している。
【0083】
図13(a)に示されるように、ライン・アンド・スペース構造を有するレジストパターンを形成した結果、ラインの線幅(Critical Dimension;CD)は67.3nmであり、LERは5.2nmであった。
【0084】
図13(b)に示されるように、レジストパターンを第2の有機膜に転写して形成した第2の有機膜パターンのCDは63.2nmであり、LERは2.8nmであった。
【0085】
図13(c)に示されるように、第2の有機膜パターンを覆うように形成した酸化シリコン膜のパターンのCDは117.7nmであり、LERは2.7nmであった。
【0086】
図13(d)に示されるように、酸化シリコン膜により形成される第1の側壁部のパターンを第1の有機膜に転写して形成した第1の有機膜パターンのCDは31.8nmであり、LERは2.6nmであった。
【0087】
図13(e)に示されるように、第1の有機膜パターンを覆うように形成した酸化シリコン膜のパターンのCDは55.0nmであり、LERは2.7nmであった。
【0088】
図13(f)に示されるように、酸化シリコン膜により形成される第2の側壁部のパターンをエッチング対象膜に転写して形成したエッチング対象膜パターンのCDは24.9nmであり、LERは2.6nmであった。
【0089】
以上のことから、本発明の実施形態に係るパターン形成方法により形成したライン・アンド・スペース構造を有するパターンは、もとのライン・アンド・スペース構造を有するパターンである第2の有機膜パターンと同等のLERを有することが分かる。即ち、本発明の実施形態に係るパターン形成方法によれば、LERを抑制した自己整合マルチパターニングが実現できる。
【0090】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。