特許第6856895号(P6856895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856895
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】LEV型ゼオライト
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   C01B39/48
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-227290(P2016-227290)
(22)【出願日】2016年11月22日
(65)【公開番号】特開2018-83734(P2018-83734A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年6月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】佐野 庸治
(72)【発明者】
【氏名】定金 正洋
(72)【発明者】
【氏名】津野地 直
(72)【発明者】
【氏名】高光 泰之
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−521304(JP,A)
【文献】 特表2013−532112(JP,A)
【文献】 特開2016−050142(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0215044(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナに対するシリカのモル比が15以上50以下であり、平均一次粒子径が80nm以下であり、以下の式から求められる外表面積割合が10%以上30%以下であることを特徴とするLEV型ゼオライト。
外表面積割合(%)=前記LEV型ゼオライトの外表面積(m/g)÷前記LEV型ゼオライトのBET比表面積(m/g)×100
【請求項2】
一次粒子が凝集した複数の二次粒子を含み、
前記複数の二次粒子のうち、粒子径が最も小さい二次粒子の粒子径が2μm以上であり、
前記複数の二次粒子のうち、粒子径が最も大きい二次粒子の粒子径が100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のLEV型ゼオライト。
【請求項3】
平均一次粒子径が50nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のLEV型ゼオライト。
【請求項4】
平均一次粒子径が95nm以下であるLEV型ゼオライトの製造方法であって、
シリカ源、アルミナ源、アルカリ源、水及び有機構造指向剤を含む組成物を結晶化する結晶化工程を含み、
前記組成物は、前記シリカ源及び前記アルミナ源として、結晶性アルミノシリケートを含有し、なおかつ、前記有機構造指向剤として、ピペリジニウムカチオンを含有することを特徴とするLEV型ゼオライトの製造方法。
【請求項5】
前記結晶性アルミノシリケートがFAU型ゼオライトであることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ピペリジニウムカチオンが、N,N,3,5−テトラメチルピペリジニウムカチオン、N,N,2,6−テトラメチルピペリジニウムカチオン及びN,N−ジメチルピペリジニウムカチオンからなる群の少なくとも1種であることを特徴とする請求項4又は5に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEV型ゼオライト及びその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、触媒活性が向上したLEV型ゼオライトおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LEV型ゼオライトは、オレフィン製造用触媒や選択的接触還元触媒などの各種の触媒用途として利用されている結晶性アルミノシリケートである。LEV型ゼオライトは、天然にも存在するゼオライトであるが、より触媒用途に適したLEV型ゼオライトとして、各種の方法で合成された合成LEV型ゼオライトが報告されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、塩化コリンを含む原料を結晶化した、一次粒子の粒子径(以下、「一次粒子径」ともいう。)が100nm程度のLEV型ゼオライトが開示されている。特許文献2には、1−アダマンタンアミンを含む原料を結晶化した、一次粒子径が0.4μm以上のLEV型ゼオライト、ジエチルジメチルアンモニウムを含む原料を結晶化した、一次粒子径が0.3μmのLEV型ゼオライト、及びN−メチルキヌクリジウムを含む原料を結晶化した、一次粒子径が0.2μmのLEV型ゼオライトが開示されている。
【0004】
更に、水酸化コリンを含む原料を結晶化した、一次粒子径が0.5μm〜0.8μm程度のLEV型ゼオライト(非特許文献1)や、N,N−ジメチルピペリジニウムを含む原料を結晶化した丸石状(cobblestone form)の凝集粒子や不定形状の粒子からなるLEV型ゼオライトが開示されている(非特許文献2)。この他にも、リンで修飾されたLEV型ゼオライトとして、テトラメチルホスホニウム水酸化物を含む原料を結晶化した、一次粒子径が0.2μm程度のLEV型ゼオライトが開示されている(非特許文献3)。
【0005】
また更に、フッ素の存在下で結晶化されたLEV型ゼオライトとして、メチルアミン及びキヌクリジンを含む原料を結晶化した、板状の一次粒子からなる凝集粒子の粒子径(以下、「凝集径」ともいう。)が0.5μmを超える(20μm程度)LEV型ゼオライト(非特許文献4)や、水酸化コリン及び1−アダマンタンアミンのいずれかを含む原料を結晶化した、一次粒子径が0.5μmを超える一次粒子や、0.5μmを超える一次粒子が凝集している凝集径5μmの凝集粒子からなるLEV型ゼオライト(非特許文献5)が開示されている。
【0006】
このように、これまで0.1μm程度から20μm程度の一次粒子径を有するLEV型ゼオライトが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7264789号
【特許文献2】特開2015−155364号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「マイクロポーラス及びメソポーラス材料(Microporous and Mesoporous Materials)」 エルゼビア(Elsevier),(オランダ),2009年,Vol.122,p.149−154
【非特許文献2】「触媒作用の現在(Catalysis Today)」 エルゼビア(Elsevier),(オランダ),2009年,Vol.148,p.6−11
【非特許文献3】「マイクロポーラス及びメソポーラス材料(Microporous and Mesoporous Materials)」 エルゼビア(Elsevier),(オランダ),2016年,Vol.223,p.129−139
【非特許文献4】「ゼオライト(Zeolites)」 バターワース ハイネマン(Butterworth−Heinemann),(アメリカ),1995年,Vol.15,p.139−147
【非特許文献5】「マイクロポーラス及びメソポーラス材料(Microporous and Mesoporous Materials)」 エルゼビア(Elsevier),(オランダ),2011年,Vol.138,p.32−39
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ゼオライトは、一次粒子、すなわち結晶を小さくすることで、より高い触媒活性を示しやすくなる。しかしながら、従来のLEV型ゼオライトは、一次粒子径が小さくとも100nm程度であり、触媒としての機能に限界があった。
【0010】
これらの課題に鑑み、本発明は、触媒活性が向上したLEV型ゼオライトを提供することを目的とする。更に、このようなLEV型ゼオライトの製造方法を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 平均一次粒子径が95nm以下であることを特徴とするLEV型ゼオライト。
[2] 一次粒子が凝集した複数の二次粒子を含み、前記複数の二次粒子のうち、粒子径が最も小さい二次粒子の粒子径が2μm以上であり、前記複数の二次粒子のうち、粒子径が最も大きい二次粒子の粒子径が100μm以下であることを特徴とする上記[1]に記載のLEV型ゼオライト。
[3] アルミナに対するシリカのモル比が10以上50以下であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のLEV型ゼオライト。
[4] シリカ源、アルミナ源、アルカリ源、水及び有機構造指向剤を含む組成物を結晶化する結晶化工程を含み、前記組成物は、前記シリカ源及び前記アルミナ源として、結晶性アルミノシリケートを含有し、なおかつ、前記有機構造指向剤として、ピペリジニウムカチオンを含有することを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のLEV型ゼオライトの製造方法。
[5] 前記結晶性アルミノシリケートがFAU型ゼオライトであることを特徴とする上記[4]に記載の製造方法。
[6] 前記ピペリジニウムカチオンが、N,N,3,5−テトラメチルピペリジニウムカチオン、N,N,2,6−テトラメチルピペリジニウムカチオン及びN,N−ジメチルピペリジニウムカチオンからなる群の少なくとも1種であることを特徴とする上記[4]又は[5]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、触媒活性が向上したLEV型ゼオライトを提供することができる。さらに、本発明は、このようなLEV型ゼオライトの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1のLEV型ゼオライトのXRDパターン
図2】実施例1のLEV型ゼオライトの一次粒子の走査型電子顕微鏡写真
図3】実施例1のLEV型ゼオライトの二次粒子の走査型電子顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のLEV型ゼオライトについて詳細に説明する。
【0015】
本発明は、LEV型ゼオライトに係る。LEV型ゼオライトは、LEV構造を有する結晶性アルミノシリケートである。LEV構造は、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)で定義されるIUPAC構造コード(以下、単に「構造コード」ともいう。)で規定される結晶構造である。結晶性アルミノシリケートは、骨格金属(以下、「T原子」ともいう。)がアルミニウム(Al)とケイ素(Si)であり、これらのT原子と酸素(O)が結合した三次元のネットワークからなる骨格構造を有する。結晶性アルミノシリケートには、この骨格構造に起因する複数の細孔が形成されている。
【0016】
ゼオライトの結晶構造は、Collection of simulated XRD powder patterns for zeolites,Fifth revised edition(2007)に記載の粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターン、及び、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza−struture.org/databases/のZeolite Framework Typesに記載のXRDパターンのいずれかと比較することで、同定することができる。
【0017】
本発明のLEV型ゼオライトは、一次粒子で構成されている。一次粒子は、LEV型ゼオライトに含まれる結晶であり、一次粒子の界面を、走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」ともいう。)を用いて観察することができる最小単位の結晶である。
【0018】
本発明のLEV型ゼオライトは、一次粒子の平均粒子径(以下、「平均一次粒子径」ともいう。)が95nm以下である。平均一次粒子径は、更には80nm以下であることが好ましく、また更には50nm以下であることがより好ましい。ゼオライトは、一次粒子を小さくすることで、より高い触媒活性を示しやすくなるが、従来のLEV型ゼオライトは、上述したように、一次粒子の粒子径(以下、「一次粒子径」ともいう)が小さくとも100nm程度であった。一方、本発明のLEV型ゼオライトは、平均一次粒子径が95nm以下であり、主に、従来のLEV型ゼオライトの一次粒子よりも小さい一次粒子により構成されている。従って、本発明のLEV型ゼオライトは、従来のLEV型ゼオライトと比較して、反応性が改善され、触媒活性が向上する。本発明のLEV型ゼオライトにおいて、平均一次粒子径は、5nm以上であることが好ましく、更には10nm以上であることがより好ましい。
【0019】
本発明において、一次粒子径は、SEMを用いて測定することができる一次粒子のフェレー径である。平均一次粒子径は、LEV型ゼオライトを構成する一次粒子のうち、SEMを用いて無作為に抽出した30個以上の一次粒子のフェレー径(一次粒子径)を相加平均した値である。また、フェレー径は、SEMにより確認することができる一次粒子の画像において、一次粒子を通過(接することを含む)する直線及び当該直線に平行な複数の直線(以下、「直線群」とする。)を引き、当該直線群の中で当該一次粒子を通過する最も距離の離れた2本の間の距離である。一次粒子を測定する際の上記直線群のSEMに対する角度は、全ての一次粒子において同じ角度とする。
【0020】
本発明のLEV型ゼオライトは、一次粒子が凝集した複数の二次粒子を含むことができる。二次粒子における一次粒子の凝集は、物理的な凝集であってもよい。LEV型ゼオライトに含まれ得る二次粒子のうち、粒子径が最も小さい二次粒子の粒子径(以下、「最小粒子径」ともいう。)は、2μm以上であることが好ましく、粒子径が最も大きい二次粒子の粒子径(以下、「最大粒子径」ともいう。)は、100μm以下であることが好ましい。更には、最小粒子径が2μm以上であり、最大粒子径が50μm以下であることがより好ましい。本発明のLEV型ゼオライトは、一次粒子の粒子径が小さい(平均一次粒子径が95nm以下)ため、固液分離をはじめとする所定の操作が困難になることがあるが、最小粒子径が2μm以上であり最大粒子径が100μm以下である二次粒子を含むことで、一次粒子は、適度な大きさの二次粒子に含まれることとなる。これにより、本発明のLEV型ゼオライトが固液分離等の操作性に優れた粉末となる。
【0021】
二次粒子の粒子径は、二次粒子のフェレー径であり、一次粒子径と同様、SEMを用いて測定することができる。
【0022】
本発明のLEV型ゼオライトはアルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO/Al比」ともいう。)が10以上、更には15以上であることが好ましい。SiO/Al比が10以上であれば、高温下での使用に耐えうる実用的な耐熱性を有する。一方、SiO/Al比は50以下、更には30以下であることが好ましい。本発明のLEV型ゼオライトが触媒に適した酸量を有するためには、SiO/Al比は、10以上30以下、更には15以上30以下であることが好ましい。
【0023】
本発明のLEV型ゼオライトの組成は、例えば、ICP法や、その他の通常の組成分析方法により測定することができる。
【0024】
本発明のLEV型ゼオライトは、フッ素(F)やリン(P)を実質的に含んでいないこと(骨格構造のT原子がリン(P)に置換されていたり、フッ素(F)やリン(P)がLEV型のゼオライトのイオン交換サイトに含まれていたり、結晶表面に付着していたりしないこと)、すなわちフッ素含有量やリン含有量が0ppmであることが好ましい。一般的に、ゼオライトに含まれるフッ素やリンは、原料に由来する。原料にフッ素やリンを含む化合物を使用して得られたゼオライトは、その製造コストが高くなりやすい。ランタン−アリザリンコンプレキソン吸光光度法など、フッ素(F)やリン(P)の通常の組成分析法により得られる測定値の測定限界を考慮すると、本発明のLEV型ゼオライトのフッ素含有量やリン含有量は、100ppm以下、更には50ppm以下であってもよい。
【0025】
本発明のLEV型ゼオライトの単位質量当たりの外表面積(以下、単に「外表面積」ともいう。)は、50m/g以上、更には100m/g以上であることが好ましい。外表面積とは、LEV型ゼオライトの全表面から一次粒子内部の細孔(以下、「マイクロ孔」ともいう。)の表面を除いた部分についての、単位質量あたりの面積である。上述した平均一次粒子径を有し、なおかつ、50m/g以上の外表面積を有することで、本発明のLEV型ゼオライトは、効率よく反応に寄与することができるため、外表面積が50m/g未満であるLEV型ゼオライトと比較して、触媒活性がより高くなりやすい。外表面積が200m/g以下、更には150m/g以下であれば、十分に向上した触媒活性を有しやすい。好ましい外表面積としては、100m/g以上、150m/g以下を挙げることができる。
【0026】
本発明のLEV型ゼオライトのBET比表面積は、500m/g以上、更には600m/g以上であることが好ましい。BET比表面積は、単位質量当たりのLEV型ゼオライトの全表面積に相当し、単位質量当たりのマイクロ孔の表面積と単位質量当たりの外表面積とを足し合わせて得られる比表面積である。BET比表面積が高くなるほど、種々の触媒反応における触媒活性が高くなる傾向にある。BET比表面積が900m/g以下、更には800m/g以下であれば、十分な活性を有しやすい。好ましいBET比表面積としては、600m/g以上、800m/g以下を挙げることができる。
【0027】
本発明において、BET比表面積及び外表面積は、一般的な窒素ガス吸着法により測定することができる。具体的には、BET比表面積は、窒素ガスの吸着結果にBET法を適用することにより求めることができ、また、外表面積は、窒素ガスの吸着結果をtプロット法で解析することによって求めることができる。
【0028】
本発明のLEV型ゼオライトにおいて、以下の式から求められる外表面積割合は、10%以上30%以下、更には15%以上25%以下であることが好ましい。
外表面積割合(%)=外表面積(m/g)÷BET比表面積(m/g)×100
【0029】
次に、本発明のLEV型ゼオライトの製造方法について説明する。
【0030】
本発明のLEV型ゼオライトは、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源、水及び有機構造指向剤を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化する結晶化工程を含む製造方法により製造される。原料組成物は、該シリカ源及びアルミナ源として、結晶性アルミノシリケートを含有し、なおかつ、該有機構造指向剤として、ピペリジニウムカチオンを含有する。
【0031】
原料組成物は、有機構造指向剤(以下、「SDA」ともいう。)として、ピペリジニウムカチオンを含有する。ピペリジニウムカチオンは、ピペリジン環を有する四級アンモニウムであり、好ましいピペリジニウムカチオンとして、N,N−ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N−ジエチルピペリジニウムカチオン、N−エチル−N−メチルピペリジニウムカチオン、N,N,3,5−テトラメチルピペリジニウムカチオン、N,N,2,6−テトラメチルピペリジニウムカチオン、N,N−ジエチル−2,6−ジメチルピペリジニウムカチオン及びN−エチル−N,2,6−トリメチルピペリジニウムカチオンからなる群の少なくとも1種が挙げられる。これらのピペリジニウムカチオンのうち、より好ましいピペリジニウムカチオンとして、N,N,3,5−テトラメチルピペリジニウムカチオン、N,N,2,6−テトラメチルピペリジニウムカチオン及びN,N−ジメチルピペリジニウムカチオンからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。また、より好ましいピペリジニウムカチオンのうち、更に好ましいピペリジニウムカチオンとして、N,N−ジメチルピペリジニウムカチオン(以下、「DMP」ともいう。)を挙げることができる。
【0032】
SDAには、ピペリジニウムカチオンが含有されていればよく、ピペリジニウムカチオンは、塩の形態で含有されていてもよい。ピペリジニウムカチオンの塩は、SDAとして原料組成物に含有することができる。ピペリジニウムカチオンの塩としては、フッ化物、塩化物、臭化物及び水酸化物からなる群の少なくとも1種を挙げることができ、水酸化物であることが好ましい。ピペリジニウムカチオンがDMPである場合、ジメチルピペリジニウム塩化物(以下、「DMPCl」ともいう。)、ジメチルピペリジニウム臭化物(以下、「DMPBr」ともいう。)及びジメチルピペリジニウム水酸化物(以下、「DMPOH」ともいう。)からなる群の少なくとも1種であることが好ましく、DMPOHであることがより好ましい。
【0033】
原料組成物は、アルミナ源及びシリカ源として、結晶性アルミノシリケートを含有する。原料組成物に含有されるシリカ源及びアルミナ源は、結晶性アルミノシリケートのみにより構成されることが好ましい。結晶性アルミノシリケート(ゼオライト)は、規則性がある結晶構造を有している。
【0034】
ピペリジニウムカチオンの存在下で結晶性アルミシリケートを原料として結晶化すると、核発生が促進されると考えられる。そのため、シリカ源とアルミナ源が非晶質の化合物のみの場合と比べ、微小なLEV型ゼオライトが結晶化すると考えられる。単一相のLEV型ゼオライトが得られやすくなるため、結晶性アルミノシリケートは、FAU型ゼオライトであることが好ましく、X型ゼオライト及びY型ゼオライトの少なくともいずれかであることがより好ましく、Y型ゼオライトであることがさらに好ましい。言い換えれば、ピペリジニウムカチオンの存在下でFAU型ゼオライトを原料として結晶化すると、微小なLEV型ゼオライトが生成されやすくなる。
【0035】
結晶性アルミノシリケートのSiO/Al比としては、1.25以上、更には10以上、更には20以上が挙げられる。一方、SiO/Al比は100以下、更には30以下が挙げられる。好ましい結晶性アルミノシリケートのSiO/Al比としては、20以上30以下を挙げることができる。
【0036】
結晶性アルミノシリケートのカチオンタイプは任意であり、ナトリウム型(Na型)、プロトン型(H型)及びアンモニウム型(NH型)からなる群の少なくとも1種であることが好ましく、プロトン型のカチオンタイプであることがより好ましい。
【0037】
シリカ源及びアルミナ源は、上述したように、結晶性アルミノシリケートのみであってもよいが、アルミナ源及びシリカ源は、結晶性アルミノシリケート以外のシリカ源やアルミナ源を含んでいてもよい。
【0038】
シリカ源としては、ケイ素(Si)を含む化合物を挙げることができ、シリカゾル、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、沈降法シリカ、無定形ケイ酸及び非晶質アルミノシリケートからなる群の少なくとも1種、更には非晶質アルミノシリケートを挙げることができる。
【0039】
アルミナ源としては、アルミニウム(Al)を含む化合物を挙げることができ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、非晶質アルミノシリケート、金属アルミニウム、及びアルミニウムアルコキシドからなる群の少なくとも1種、更には非晶質アルミノシリケートを挙げることができる。
【0040】
アルカリ源は、アルカリ金属を含む物質であり、例えば、アルカリ金属を含む水酸化物を挙げることができる。より具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群の少なくとも1種を含む水酸化物を挙げることができ、更にはナトリウム及びカリウムの少なくともいずれかを含む水酸化物、また更にはナトリウムを含む水酸化物を挙げることができる。また、シリカ源及びアルミナ源等の原料組成物に含まれる他の原料がアルカリ金属を含む場合、当該アルカリ金属もアルカリ源とすることができる。
【0041】
原料組成物に含まれる水は、純水であってもよいが、水溶液等の原料組成物に含まれる他の原料に由来する水であってもよい。
【0042】
原料組成物のアルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)は、1.25、更には10以上、更には20以上を挙げることができる。一方、SiO/Al比は、100以下、更には50以下、更には40以下を挙げることができる。好ましいSiO/Al比としては、10以上50以下を挙げることができ、より好ましいSiO/Al比としては、20以上40以下を挙げることができる。
【0043】
原料組成物のシリカに対するピペリジニウムカチオンのモル比(以下、「SDA/SiO比」ともいう。)は0.05以上、更には0.1以上であることが好ましい。SDA/SiO比は1.0以下、更には0.5以下であることが好ましい。SDA/SiO比が0.05以上1.0以下にあることで、LEV型ゼオライトが結晶しやすくなる。
【0044】
原料組成物のシリカに対するアルカリ金属のモル比(以下、「アルカリ/SiO比」ともいう。)は0.5以下、更には0.3以下であることが好ましい。アルカリ/SiO比は0.05以上、0.1以上であることが好ましい。アルカリ/SiO比が0.05以上0.5以下にあることで、原料組成物が結晶化しやすくなる。
【0045】
原料組成物のシリカに対するOHのモル比(以下、「OH/SiO比」ともいう。)は1.0以下、更には0.8以下であることが好ましい。OH/SiO比が1.0以下であることで、OH/SiO比が1.0を超える場合と比較して、より高い収率でLEV型ゼオライトを得ることができる。原料組成物のOH/SiO比は、0.1以上、更には0.2以上を挙げることができる。
【0046】
シリカに対する水(HO)のモル比(以下、「HO/SiO比」ともいう。)は、10以下、更には8以下であることが好ましく、HO/SiO比が10以下であることで、HO/SiO比が10を超える場合と比較して、より短い結晶化時間でLEV型ゼオライトの単一相が結晶化しやすくなる。適度な流動性を有する原料組成物とするためには、HO/SiO比は3以上、更には5以上であることが好ましい。
【0047】
特に好ましい原料組成物の組成として以下のものを挙げることができる。
SiO/Al比 =10以上50以下
アルカリ/SiO比 =0.05以上0.5以下
SDA/SiO比 =0.05以上1.0以下
OH/SiO比 =0.1以上1.0以下
O/SiO比 =3以上10以下
【0048】
原料組成物にフッ素を含む化合物が含まれると、製造コストが高くなりやすい。そのため、原料組成物はフッ素を含んでいないことが好ましい。同様な理由より、原料組成物はリンを含んでいないことが好ましい。
【0049】
結晶化工程では、上記の各原料を含む原料組成物を水熱合成することにより、これを結晶化処理する。結晶化処理は、原料組成物を密閉容器に充填し、これを加熱すればよい。
【0050】
原料組成物の加熱温度(以下、「結晶化温度」ともいう。)は、80℃以上であれば、原料組成物を結晶化することができる。結晶化は、100℃以上であれば促進される。そのため、結晶化温度は、100℃以上、更には120℃以上であることが好ましい。従来のLEV型ゼオライトの製造方法においては、結晶化温度を低くすることで一次粒子をより小さくする試みがなされていた。しかしながら、実施形態の製造方法では、150℃以上、更には155℃以上、更には160℃以上であっても平均一次粒子径が100nm未満の微小なLEV型ゼオライトが得られる。結晶化温度が200℃以下、更には180℃以下であれば、LEV型ゼオライトが不純物なく得られやすい。加熱された原料組成物が結晶化温度に達した時からLEV型ゼオライトが生成するまでの時間(以下、「結晶化時間」ともいう。)を、5日以下、更には3日以下にするためには、結晶化温度は、150℃以上200℃以下であることが好ましい。このため、本発明のLEV型ゼオライトを効率よく生成するためには、結晶化処理は、結晶化温度150℃以上200℃以下、なおかつ、結晶化時間3日以下で行うことが好ましい。結晶化温度を160℃以上180℃以下とした場合には、結晶化時間を1日以下にすることもできる。また、結晶化は、原料組成物を攪拌した状態、又は静置した状態のいずれの状態で行うことができる。
【0051】
本発明の製造方法は、結晶化工程の後、洗浄工程、乾燥工程及びイオン交換工程の少なくともいずれか(以下、「後処理工程」ともいう。)を含んでいてもよい。
【0052】
洗浄工程では、結晶化後のLEV型ゼオライトと液相とを固液分離し、得られたLEV型ゼオライトを洗浄する。具体的には、洗浄工程では、公知の方法で固液分離をし、固相として得られるLEV型ゼオライトを純水で洗浄すればよい。
【0053】
乾燥工程では、結晶化工程後又は洗浄工程後のLEV型ゼオライトから水分を除去する。乾燥工程の条件は、任意であるが、結晶化工程後又は洗浄工程後のLEV型ゼオライトを、大気中、50℃以上、150℃以下で2時間以上、静置することが例示できる。
【0054】
結晶化後のLEV型ゼオライトは、そのイオン交換サイト上にアルカリ金属イオン等の金属イオンを有する場合がある。イオン交換工程では、これをアンモニウムイオン(NH)や、プロトン(H)等の非金属カチオンにイオン交換する。アンモニウムイオンへのイオン交換は、LEV型ゼオライトを塩化アンモニウム水溶液に混合、攪拌することにより行うことができる。また、プロトンへのイオン交換は、LEV型ゼオライトをアンモニアでイオン交換した後、これを焼成することにより行うことができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。しかしながら、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0056】
(結晶構造の同定)
一般的なX線回折装置(装置名:D8 Advance、Bruker社製)を使用し、以下の条件でXRD測定をした。測定されたXRDパターンを使用し、上述した結晶構造の同定方法により、試料(ゼオライト)の結晶構造を同定した。
線源 :CuKα線(λ=1.5405Å)
測定範囲 :2θ=5°〜50°
【0057】
(組成分析)
水酸化カリウム水溶液に試料を溶解して試料溶液を調製した。一般的なICP装置(装置名:SPS7000、Seiko社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)で測定することにより、試料の組成を分析した。
【0058】
(BET比表面積及び外表面積の測定)
以下の条件で測定した(装置名:BELSORP−mini、マイクロトラック・ベル株式会社製)窒素ガスの吸着結果に、BET法を適用することにより、試料のBET比表面積を求めた。また、同様の条件で測定した窒素のガス吸着結果を、tプロット法で解析することにより、試料の外表面積を求めた。なお、窒素ガス吸着は、通常の定容量法を用いた。
測定温度 :−196℃
前処理 :400℃、10時間、窒素流通
【0059】
実施例1
純水、水酸化ナトリウム、FAU型ゼオライト(Y型、カチオンタイプ:プロトン型、SiO/Al比=28)及びDMPOH水溶液を混合して以下の組成を有する原料組成物を得た。
SiO/Al比 =28
アルカリ(Na)/SiO比 =0.3
SDA/SiO比 =0.2
OH/SiO比 =0.5
O/SiO比 =5
【0060】
得られた原料組成物を密閉容器内に充填し、この容器を静置した状態で170℃、1日間の条件で水熱合成処理し、結晶化物を得た。結晶化物を固液分離及び純水洗浄した後、70℃で乾燥することにより、本実施例のゼオライトを得た。
【0061】
当該ゼオライトは、LEV構造の単一相からなるLEV型ゼオライトであり、なおかつ、SiO/Al比は18であった。また、平均一次粒子径は30nmであり、全ての二次粒子の粒子径は5μmから30μmの範囲内であった。更に、BET比表面積は664m/gであり、外表面積は134m/gであり、外表面積割合は20%であった。
【0062】
本実施例のLEV型ゼオライトのXRDパターンを図1に、本実施例のLEV型ゼオライトに含まれる代表的な一次粒子のSEM写真を図2に、本実施例のLEV型ゼオライトに含まれる代表的な二次粒子のSEM写真を図3に示した。
【0063】
このように、本実施例のLEV型ゼオライトは、平均一次粒子径が30nmであり、主に、従来のLEV型ゼオライトの一次粒子よりも小さい一次粒子により構成されていることが理解できた。このため、本実施例のLEV型ゼオライトは、触媒活性が向上していることが理解できた。また、本実施例のLEV型ゼオライトの製造方法によれば、触媒活性が向上したLEV型ゼオライトが製造できることが理解できた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のLEV型ゼオライトは、平均一次粒子径が95nm以下であり、主に、従来のLEV型ゼオライトの一次粒子よりも小さい一次粒子により構成されている。従って、触媒活性が向上しているため、触媒として有用である。例えば、アルコールやケトンからの低級オレフィン製造用触媒、クラッキング触媒、脱ろう触媒、異性化触媒、及び排気ガスからの窒素酸化物還元触媒並びにこれらの触媒の基材として使用することできる。
図1
図2
図3