【文献】
INOUE, Y et al,CELL CULTURE BIOCHEMICAL IC CHIP WITH CELL-LEVEL BIOCOMPATIBILITY,Technical Digest. IEEE Micro Electro Mechanical Systems,2012年,25(2),788-791
【文献】
SUN ,Y et al,Continuous flow polymerase chain reaction using a hybrid PMMA-PC microchip with improved heat tolerance,Sensors and actuators. B, Chemical,2008年,130(2),836-841
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪細胞培養用チップの製造方法≫
<第一実施形態>
一実施形態において、本発明は、透明性を有する第一の基板上に、感光性接着剤を塗布して感光性接着剤層を形成させ、3Dプリント用基板を得る工程Aと、前記3Dプリント用基板上に、感光性造形材料を製膜してなる感光性造形材層に、紫外線を選択的に照射し、前記感光性造形材層を選択的に硬化させる工程Bと、選択的に硬化した感光性造形材層上に、更に感光性造形材料を製膜して感光性造形材層を重層し、重層された感光性造形材層に紫外線を選択的に照射し、前記重層された感光性造形材層を選択的に硬化させる工程Cと、前記工程Cを複数回繰り返した後、未硬化部分を現像し細胞培養用流路を得る工程Dと、透明性を有する第二の基板上に、第一の接着剤を製膜して第一の接着剤層を形成させ、細胞培養用流路天板を得る工程Eと、前記細胞培養用流路と前記細胞培養用流路天板とを、前記第一の接着剤層を介して接合し、熱圧着させて中空構造を有するマイクロ流路構造体を得る工程Fと、を有し、前記第一の接着剤が、Tgが5℃以上のポリエステル系樹脂である細胞培養用チップの製造方法を提供する。
【0011】
本実施形態の細胞培養用チップの製造方法によれば、微細な流路構造を備えた細胞培養用チップを低コストで大量に生産することができる。
【0012】
以下、本実施形態の細胞培養用チップを、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の細胞培養用チップの製造方法の一実施形態を説明するための各工程での構成を模式的に示す断面図である。
【0013】
[工程A]
まず、透明性を有する第一の基板1上に、感光性接着剤を塗布する。感光性接着剤を任意の時間置いて、乾燥させることで、感光性接着剤層2を形成させ、3Dプリント用基板を得る(
図1の工程A参照。)。
【0014】
(第一の基板)
第一の基板は、培養した細胞を位相差顕微鏡等により観察を行う観点から、透明性を有することが好ましい。また、透明性を高めるために、フィラー(アンチブロッキング剤)を含まないことが好ましい。
第一の基板の材料としては、透明な低自家蛍光物質が好ましい。透明な低自家蛍光性物質の好適な例としては、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリジメチルシロキサン、ポリスチレン、及びポリアクリレート(アクリル樹脂)が挙げられる。
前記ポリアクリレート(アクリル樹脂)としてより具体的には、例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)等が挙げられる。
【0015】
第一の基板の厚さは、例えば50μm以上250μm以下であればよく、例えば100μm以上230μm以下であればよく、例えば150μm以上200μm以下であればよい。
【0016】
第一の基板は、少なくとも片面に滑剤成分を含む易滑層を備えていてもよい。
滑剤成分としては、特別な限定はなく、例えば、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、エチレン−アクリル系ワックス、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、硬化ヒマシ油、ステアリン酸ステアリル、シロキサン、高級アルコール系高分子、ステアリルアルコール、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉛、シリコーン(ジメチルシロキサン)系の低分子量物(オイル)又はシリコーン(ジメチルシロキサン)系の樹脂などが挙げられ、これらは単独で、又は2種以上を併用しても構わない。
また、易滑層内に配合されるバインダー樹脂成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系樹脂、又はこれらの共重合樹脂等、様々の樹脂が挙げられる。中でも、バインダー樹脂成分としては、上述の滑剤との組合せでより優れた滑性を発揮することから、スチレン−アクリル系共重合樹脂が好ましい。
易滑層の形成方法としては、特別な限定はなく、例えば、第一の基板製造時の延伸前原反にコートしてから延伸する所謂インラインコート方式により形成する方法、共押し出しによる積層法等が挙げられる。
【0017】
なお、本明細書において、「シリコーン系」とは、オルガノシロキサン類をいい、その性状は、油状、ゴム状、樹脂状のものがあり、各々シリコーン油、シリコーンゴム、シリコーン樹脂と呼ばれる。これらは、何れも撥水作用、潤滑作用、離型作用などを有しているので、フィルム最表層部に含有させることで表面の摩擦を低下させるのに有効である。
【0018】
易滑層の厚さは、例えば0.1μm以下、例えば、50nm以下であればよい。
【0019】
(感光性接着剤)
感光性接着剤は、現像液耐性を有することが好ましい。感光性接着剤が現像液耐性を有することで、続く工程Dにおける現像処理においても、感光性接着剤が溶出されず接着性を保つことができる。また、感光性接着剤は、前記第一の基板への接着性、続く工程B〜Dにおいて形成される細胞培養用流路への接着性、透明性、低自家発光性、及び低細胞毒性を有することが好ましい。
【0020】
・光重合性化合物
感光性接着剤の材料としては、従来から感光性接着剤に使用されている種々の光重合性化合物から選択することができる。光重合性化合物としては、感光性接着剤の保存安定性等の点から、エチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましい。エチレン性不飽和結合を有する化合物に含まれる光重合性の官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、及びアリル基等が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、単官能、2官能、又は3官能以上の多官能の、(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、ビニル化合物、及びアリル化合物を用いることができる。これらのエチレン性不飽和結合を有する化合物は単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
単官能のエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノールのEO付加物の(メタ)アクリレート、フェノールのPO付加物の(メタ)アクリレート、フェノールのEO/PO共付加物の(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、EO/PO共重合体のモノ(メタ)アクリレート、EO/PO共重合体のモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、及びアミン変性 ポリエーテルアクリレート等が挙げられる。
【0023】
なお、本明細書において、「EO変性」とは、(ポリ)オキシエチレン鎖を有する化合物であることを意味し、「PO変性」とは、(ポリ)オキシプロピレン鎖を有する化合物であることを意味し、「EO・PO変性」とは、(ポリ)オキシエチレン鎖及び(ポリ)オキシプロピレン鎖の双方を有する化合物であることを意味する。
【0024】
(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−アリール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−アリール(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0025】
アリル化合物としては、例えば、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール等が挙げられる。
【0026】
ビニルエーテル類としては、例えば、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロルフェニルエーテル、ビニル−2,4−ジクロルフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル等が挙げられる。
【0027】
ビニルエステル類としては、例えば、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフエニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロル安息香酸ビニル、テトラクロル安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0028】
スチレン類としては、例えば、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2−ブロモ−4−トリフルオロメチルスチレン、4−フルオロ−3−トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン等が挙げられる。
【0029】
2官能のエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンポリトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ウレタンモノマー、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、及びイソシアヌル酸EO変性ジアクリレート等が挙げられる。
【0030】
前記グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記ウレタンモノマーとしては、例えば、β位に水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等との付加反応物、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、及びEO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
多官能のエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、PO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上のアクリレート;ポリイソシアネート化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーと、を反応させて得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート等);多価アルコールとN−メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等が挙げられる。
【0032】
・光重合開始剤
感光性接着剤は、感光性接着剤の質量に対して0.5質量%以上5.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以上4.0質量%以下の光重合開始剤を含む。感光性接着剤がこのような量の光重合開始剤を含むことで、感光性接着剤を露光により硬化させて得られる感光性接着剤層の、残留モノマーと、光重合開始剤とに起因する細胞毒性を低減することができる。
【0033】
光重合開始剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で、光重合性化合物の種類に応じて従来使用される光重合開始剤から適宜選択される。エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物を用いる場合の好適な光重合性化合物の例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾル−3−イル],1−(o−アセチルオキシム)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−ベンゾイル−4’−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ−2−エチルヘキシル安息香酸、4−ジメチルアミノ−2−イソアミル安息香酸、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド、2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン、p−メトキシトリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン等が挙げられる。これらの中でも、感光性接着剤を用いて形成される細胞培養用チップの細胞毒性が低い点で、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤から選択される光重合開始剤が好ましい。これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
・その他の成分
感光性接着剤は、光重合性化合物及び光重合開始剤の他に、必要に応じて、溶剤(例えば、プロピレングリコール−1−メチルエーテルアセテート(PGMEA)等)、界面活性剤、密着性向上剤、熱重合禁止剤、消泡剤等の添加剤を含有させることができる。いずれの添加剤も、従来公知のものを用いることができる。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の化合物が挙げられ、密着性向上剤としては、従来公知のシランカップリング剤が挙げられ、熱重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル等が挙げられ、消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0035】
感光性接着剤層の厚さは、例えば5μm以上50μm以下であればよく、例えば8μm以上30μm以下であればよく、例えば10μm以上25μm以下であればよい。
【0036】
第一の基板上に感光性接着剤層を形成する方法は特に限定されず、例えば、所定量の感光性接着剤を第一の基板上に滴下する方法や、ロールコータ、リバースコータ、バーコータ等の接触転写型塗布装置を用いる方法や、スピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコータ等の非接触型塗布装置を用いる方法等が挙げられる。
【0037】
[工程B]
次いで、前記工程Aで作製された3Dプリント用基板10上に感光性造形材料3’を製膜させ、第一の感光性造形材層3aを形成させる。次いで、紫外線8を選択的に照射し、第一の感光性造形材層3aを選択的に硬化させる(
図1の[工程B]参照。)。
【0038】
(感光性造形材料)
感光性造形材料は、細胞培養に用いることから、低細胞毒性を有することが好ましい。また、感光性造形材料は、無溶媒系が好ましく、低自家蛍光性、及び低反り性(「低硬化収縮性」又は「低弾性」と称する場合もある。)を有することが好ましい。
【0039】
・光重合性化合物
感光性造形材料としては、従来から感光性造形材料に使用されている種々の光重合性化合物から選択することができる。光重合性化合物としては、上述の(感光性接着剤)の「・光重合性化合物」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0040】
・光重合開始剤
感光性造形材料は、感光性造形材料の質量に対して0.5質量%以上5.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以上4.0質量%以下の光重合開始剤を含む。感光性造形材料がこのような量の光重合開始剤を含むことで、感光性造形材料を露光により硬化させて得られる感光性造形材層の、残留モノマーと、光重合開始剤とに起因する細胞毒性を低減することができる。
光重合開始剤としては、上述の(感光性接着剤)の「・光重合開始剤」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0041】
感光性造形材層の厚さは、例えば0.1μm以上100μm以下であればよく、1μm以上80μm以下であればよく、1μm以上60μm以下であればよい。感光性造形材層の厚さが上記範囲であることにより、細胞培養用チップは高い解像性を有することができる。
【0042】
3Dプリント用基板上に感光性造形材層を形成する方法は、液槽光重合法(光造形法)、シート又は液を用いた積層法等を用いることができる。液槽光重合法の具体的な例としては、液状の感光性造形材料3’を満たした槽5a内に存在する作業テーブル4上に3Dプリント用基板10を乗せて、3Dプリント用基板10上に紫外線8を選択的に照射し、第一の感光性造形材層3aを形成させながら、選択的に硬化させる。
【0043】
紫外線を照射する方法としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯、HeCdレーザ、Arレーザ等の紫外線を発する光源を、必要に応じて変調機等を通しレンズ等を通過後、デジタルマイクロミラーデバイス等を用いて描画を制御しながら、感光性造形材層を所定の厚みとなるように硬化させればよい。感光性造形材層に照射する紫外線の露光量は、感光性造形材料の組成や、感光性造形材層の膜厚等を考慮して適宜定められる。典型的には、感光性造形材層に照射する紫外線の露光量は、10mJ/cm
2以上100000mJ/cm
2以下が好ましく、100mJ/cm
2以上50000mJ/cm
2以下がより好ましい。
図1においては、光源が上に存在し、作業テーブル4を引き下げながら積層させる方法が例示されているが、光源の位置が下に存在し、作業テーブル4を引き上げながら積層させる方法であってもよい。
【0044】
[工程C]
次いで、選択的に硬化した第一の感光性造形材層3a上に、更に感光性造形材料3’を製膜して第二の感光性造形材層3bを重層し、重層された第二の感光性造形材層3bに紫外線を選択的に照射し、前記重曹された第二の感光性造形材層3bを選択的に硬化させる(
図1の[工程C]参照。)。
【0045】
具体的には、選択的に硬化した第一の感光性造形材層3aが形成された3Dプリント用基板10を乗せた作業テーブル4を下降させ、紫外線8を選択的に照射し、重層された第二の感光性造形材層3bを形成させながら、選択的に硬化させればよい。
【0046】
[工程D]
次いで、前記工程Cを複数回繰り返して感光性造形材層を一層ずつ硬化させて積層し、現像液9を含む槽5bに浸すことで、未硬化部分を現像し、細胞培養用流路20aを得る(
図1の[工程D]参照。)。
なお、
図1の[工程D]においては、2層の感光性造形材層が形成されたものを示しているが、3層以上の感光性造形材層が形成されていてもよい。
【0047】
未硬化部分の現像方法としては、重層された感光性造形材層を備える3Dプリント用基板を現像液に浸し、未硬化部分を除去する。現像液としては、例えば、プロピレングリコール−1−メチルエーテルアセテート(PGMEA)、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン等の有機溶媒等が挙げられる。現像液に浸した後に、さらにリンス液(例えば、有機溶媒、水等)で洗浄してもよい。
【0048】
また、現像後の細胞培養用流路は、プラズマ処理してもよい。細胞培養用流路に対して、プラズマ処理することにより、細胞が接着しやすい細胞培養用流路を形成することができる。プラズマ処理に用いるプラズマは特に限定されないが、例えばO
2プラズマ、N
2プラズマ、CF
4プラズマ等が挙げられる。
【0049】
[工程E]
次いで、透明性を有する第二の基板11上に、第一の接着剤を塗布する。第一の接着剤を任意の時間置いて、乾燥させることで、第一の接着剤層12を形成させ、細胞培養用流路天板20bを得る(
図1の[工程E]参照。)。
【0050】
(第二の基板)
第二の基板は、培養した細胞を位相差顕微鏡等により観察を行う観点から、透明性を有することが好ましい。また、透明性を高めるために、フィラー(アンチブロッキング剤)を含まないことが好ましい。
第二の基板の材料として具体的には、上述の[工程A]の(第一の基板)において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0051】
第二の基板の厚さは、例えば50μm以上250μm以下であればよく、例えば100μm以上230μm以下であればよく、例えば150μm以上200μm以下であればよい。
【0052】
第二の基板は、少なくとも片面に滑剤成分を含む易滑層を備えていてもよい。
滑剤成分としては、上述の[工程A]の(第一の基板)において例示されたものと同様のものが挙げられる。
易滑層の形成方法としては、特別な限定はなく、例えば、第一の基板製造時の延伸前原反にコートしてから延伸する所謂インラインコート方式により形成する方法、共押し出しによる積層法等が挙げられる。
【0053】
易滑層の厚さは、例えば0.1μm以下、例えば、50nm以下であればよい。
【0054】
(第一の接着剤)
37℃程度の恒温環境下で細胞は維持培養されるため、第一の接着剤は、37℃環境下における低変形性を有することが好ましい。また、第一の接着剤は、前記第二の基板への接着性、前記工程B〜Dにおいて形成された細胞培養用流路への接着性、透明性、低自家発光性、低細胞毒性、及び殺菌洗浄剤耐性を有することが好ましい。
【0055】
第一の接着剤の材料としては、Tgが好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上の樹脂であればよく、例えば、Tgが上記範囲以上の、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、及びこれら樹脂の混合物又は変性した樹脂等が挙げられる。中でも、第一の接着剤の材料としては、低分子残留物が少ないため毒性が低い、Tgが5℃以上のポリエステル系樹脂であることが好ましい。第一の接着剤の材料が、Tgが5℃以上のポリエステル系樹脂であることにより、37℃環境下における低変形性を有し、37℃程度の恒温環境下で細胞を安定かつ安全に培養することができる。
【0056】
Tgが5℃以上のポリエステル系樹脂として具体的には、例えば、東洋紡績社製の「バイロン(登録商標)」シリーズが、豊富な種類のものを入手することができる点で好適である。
【0057】
ポリエステル系樹脂は、メラミン樹脂等で架橋してもよい。メラミン樹脂としては、例えば、住友化学社製の「スミマール(登録商標)」シリーズ、三井サイテック社製の「サイメル(登録商標)」シリーズ等が挙げられる。
なお、樹脂と架橋剤の比率は、加工性等と耐久性とのバランスの観点から、乾燥後の第一の接着剤層中に架橋剤(反応後)が5質量%以上30質量%以下となるように配合することが好ましい。
【0058】
なお、前記東洋紡績社製のバイロン(登録商標)シリーズのTgは以下のとおりである。
バイロン103(47℃)、バイロン200(67℃)、バイロン220(53℃)、バイロン226(65℃)、バイロン240(60℃)、バイロン245(60℃)、バイロン270(67℃)、バイロン280(68℃)、バイロン290(72℃)、バイロン296(71℃)、バイロン300(7℃)、バイロン600(47℃)、バイロン630(7℃)、バイロン650(10℃)、バイロンGK110(50℃)、バイロンGK130(15℃)、バイロンGK140(20℃)、バイロンGK150(20℃)バイロンGK190(11℃)、バイロンGK250(60℃)、バイロンGK330(16℃)、バイロンGK360(56℃)、バイロンGK590(15℃)、バイロンGK640(79℃)、バイロンGK680(10℃)、バイロンGK780(36℃)、バイロンGK810(46℃)、バイロンGK880(84℃)、バイロンGK890(17℃)、等が挙げられる。これらのTgは、ホームページに記載された温度である。また、これらの分子量(Mn)は3×10
3〜30×10
3の範囲である。
【0059】
[工程F]
次いで、前記工程Dにおいて得られた細胞培養用流路20aと、前記工程Eにおいて得られた細胞培養用流路天板20bとを位置を合わせて、前記第一の接着剤層12を介して接合し、熱圧着させて、中空構造を有するマイクロ流路構造体を備える細胞培養用チップ1Aを得る。
【0060】
熱圧着する方法としては、細胞培養用流路と細胞培養用流路天板とを接合した状態のものを、例えば、ラミネートロール等を通して熱圧着する方法等が挙げられる。圧着する温度は、第一の接着剤の種類に応じて適宜設定すればよい。
【0061】
<第二実施形態>
[工程A]〜[工程D]については、上述の<第一実施形態>に記載の[工程A]〜[工程D]と同様であるため、その説明を省略する。
前記工程Dの後に、以下に示す工程Hを備えていてもよい。
【0062】
[工程H]
前記工程Dにおいて得られた細胞培養用流路に紫外線を前面に照射し、未硬化成分を硬化させる(図示せず。)。これにより、感光性造形材層及び感光性接着剤層に含まれる未硬化の光重合性化合物を充分に硬化させることができる。
【0063】
紫外線の照射方法としては、上述の[工程B]に記載の方法と同様の方法が挙げられる。典型的には、細胞培養用流路に照射する紫外線の露光量は、10mJ/cm
2以上200000mJ/cm
2以下が好ましく、100mJ/cm
2以上100000mJ/cm
2以下がより好ましい。
【0064】
工程Hの後に続く、工程E及び工程Fについては、上述の<第一実施形態>に記載の[工程E]及び[工程F]と同様であるため、その説明を省略する。
【0065】
<第三実施形態>
[工程A]〜[工程H]については、上述の<第一実施形態>及び<第二一実施形態>に記載の[工程A]〜[工程H]と同様であるため、その説明を省略する。
前記工程Hの後に、以下に示す工程Iを備えていてもよい。
【0066】
[工程I]
前面に紫外線を照射し硬化させた細胞培養用流路を、有機溶剤を用いて洗浄し、未硬化成分を除去させる(図示せず。)。これにより、細胞培養用流路に残存する未硬化の光重合性化合物を充分に取り除くことができる。
【0067】
用いられる有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、塩化メチレン、PGMEA、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の非極性溶媒;テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、1−ブタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エタノール、メタノール、ギ酸、水等の極性溶媒等が挙げられ、これらに限定されない。これらは単独で、又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0068】
有機溶媒による洗浄方法としては、初めに非極性溶媒による洗浄を行い、徐々に極性溶媒に換えて洗浄することが好ましい。具体的には、例えば、細胞培養用流路を、PGMEA、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノールの順に洗浄を行い、乾燥させる方法等が挙げられる。
【0069】
工程Iの後に続く、工程E及び工程Fについては、上述の<第一実施形態>に記載の[工程E]及び[工程F]と同様であるため、その説明を省略する。
【0070】
また、本実施形態の細胞培養用チップは、強度を高く保つためにさらに下部に、第二の接着剤層を介して、支持体を備えていてもよい。
【0071】
(支持体)
支持体は、培養した細胞を位相差顕微鏡等により観察を行う観点から、透明性を有することが好ましい。
支持体の材料としては、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリジメチルシロキサン、ポリスチレン、及びポリアクリレート等が挙げられ、特別な限定はない。
【0072】
(第二の接着剤)
第二の接着剤は、培養した細胞を位相差顕微鏡等により観察を行う観点から、透明性を有することが好ましい。また、第二の接着剤は、支持体及び第一の基板への接着性を有することが好ましい。
第二の接着剤としては、上述の(第一の接着剤)に例示されたものと同様のものが挙げられる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例等を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0074】
[製造例1]細胞培養用チップ1の製造
1.3Dプリント用基板の作製
(1)第一の感光性接着剤の作製
以下の表1に示す原料を均一な溶液となるように十分に撹拌し、第一の感光性接着剤を得た。
【0075】
【表1】
【0076】
(2)3Dプリント用基板の作製
次いで、(1)で得られた第一の感光性接着剤を乾燥後の膜厚が15μmになる様に、フィルム厚み188μmのコスモシャインA4100(東洋紡社製、ポリエチレンテレフタレート基板101)(第一の基板)の易滑層102面(易接着処理面)に塗布し、3Dプリント用基板100を得た(
図2参照。)。
【0077】
2.細胞培養用流路の作製
(1)感光性造形材料の作製
以下の表2に示す原料を均一な溶液となるように十分に撹拌し、感光性造形材料を得た。
【0078】
【表2】
【0079】
(2)細胞培養用流路の作製
次いで、(1)で得られた感光性造形材料を3Dプリント用基板100に1層厚みが20〜50μmとなる様にコーティングした後、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)により370μmを中心とする紫外線選択的に投影し、感光性造形材料を硬化させた。
さらに同様の方法で感光性造形材料を多層化し硬化させ、アセトンで3分間現像を行い、その後エアブローし微細な流路を有する構造体を得た。その後、高圧水銀灯により構造全体に紫外線を照射し、PGMEA、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノールの順に洗浄を行い、乾燥し、細胞培養用流路200aを得た(
図2参照。)。
【0080】
3.細胞培養用流路天板の作製
(1)第一の接着剤の作製
以下の表3に示す原料を均一な溶液となるように十分に撹拌し、第一の接着剤を得た。
【0081】
【表3】
【0082】
(2)細胞培養用流路天板の作製
次いで、(1)で得られた第一の接着剤を乾燥後の膜厚が20μmになる様に、フィルム厚み188μmのコスモシャインA4100(東洋紡社製、ポリエチレンテレフタレート基板106)(第二の基板)の未処理面に塗布し、このフィルムに炭酸ガスレーザを用いてインレットとなる穴(
図2中のa1(3mm)及びc1(1.5mm))をあけ その後、エタノールに浸漬し乾燥し細胞培養用流路天板200bを得た(
図2参照。)。
【0083】
4.細胞培養用チップの作製(細胞培養用流路天板の細胞培養用流路への貼り付け)
次いで、細胞培養用流路天板200bに仮止め剤として厚み50μmの両面テープを貼りつけ、穴(
図2中のa1(3mm)及びc1(1.5mm))が細胞培養用流路200aの所定の位置に接着できるように顕微鏡を用いて位置合わせを行い、細胞培養用流路天板200bの第一の接着剤が塗布された面と細胞培養用流路200aとを仮止めした。その後80℃に加温されたラミネートロールに通し熱圧着を行い、中空構造を有する細胞培養用チップ1(X)を得た(
図2参照。)。
【0084】
[製造例2]細胞培養用チップ2の製造
上述の製造例1の「3.細胞培養用流路天板の作製」において、第一の接着剤の代わりに第二の接着剤を用いた以外は、製造例1と同様の方法を用いて、細胞培養用チップ2を製造した。第二の接着剤は、以下の表4に示す原料を均一な溶液となるように十分に撹拌し、第二の接着剤を得た。
【0085】
【表4】
【0086】
[製造例3]細胞培養用チップ3の製造
上述の製造例1の「3.細胞培養用流路天板の作製」において、第一の接着剤の代わりに第三の接着剤を用いた以外は、製造例1と同様の方法を用いて、細胞培養用チップ2を製造した。第三の接着剤は、以下の表5に示す原料を均一な溶液となるように十分に撹拌し、第三の接着剤を得た。
【0087】
【表5】
【0088】
[試験例1]細胞培養用チップ1を用いた細胞培養試験
1.細胞培養用チップ1と培養液貯留槽との接合
まず、細胞培養用チップを用いて細胞を培養するため、シリコーン樹脂(東レダウコーニング社製、SILPOT 184 W/C)製の培養液貯留槽を作製した。具体的には、PEEK製の切削加工によって製作した型にシリコーン樹脂のプレポリマーを注入し、減圧脱泡の後、70〜80℃で2時間加熱して培養液貯留槽を作製した。
次いで、製造例1で製造された細胞培養用チップ1の細胞培養用流路のインレット穴(a1およびc1)の位置に上記培養液貯留槽を接着剤(セメダイン株式会社製、セメダインスーパーX)により接合し、70〜80℃で2時間加熱した。次いで、20分程度、紫外線を照射し細胞培養用チップ1を滅菌した。培養液貯留槽を接合した細胞培養用チップ1を用いて、下記の方法に従って細胞培養試験を試みた。
【0089】
2.細胞培養用流路の減圧脱法
培養液貯留槽にリン酸緩衝液(シグマアルドリッチ社製、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水)を入れ、チップ全体を減圧チャンバーに入れ、ダイヤフラムポンプ(DIVAC社製、DIVAC 0.6L)を用いて室温にて1時間減圧し、細胞培養用流路をリン酸緩衝液で満たした。
【0090】
3.細胞培養用流路のコーティング
次いで、培養液貯留槽内のリン酸緩衝液を吸引除去し、0.2mg/mL ファイブロネクチン溶液(シグマアルドリッチ社製、Fibronectin)約200μLを培養液貯留槽に添加した。次いで、培養液貯留槽を20kPaの圧力で4分間加圧することで細胞培養用流路内にファイブロネクチン溶液を導入した。圧力の調整はエアーポンプ(アズワン社製、ミニエアーポンプ EAP−01)とレギュレーター(ジーエルサイエンス社製、高性能調圧器 PR−4000)とを用いて行い、圧力計(コパル電子株式会社製、ハンディマノメーター PG−100 102GP)を用いて圧力を測定した。室温で1時間静置することで細胞培養用流路をファイブロネクチンでコーティングした。その後、培養液貯留槽内に残ったファイブロネクチン溶液を吸引除去した。次いで、培養液貯留槽に5%の血清(Thermofisher社製、HyClone Fetal Bovine Serum)及び1%の抗生物質(ナカライ社製、Penicillin−Streptomycin Solution)を含む培養液(Gibco社製、Dulbecco’s Modified Eagle Medium)を約200μL入れ、培養液貯留槽を20kPaの圧力で4分間加圧することで細胞培養用流路内の溶液を培養液に置換した。
【0091】
4.細胞導入及び静置培養
理化学研究所より分譲されたNIH3T3細胞を培養液で培養し、0.25%トリプシン−EDTA溶液(Thermofisher社製)を用いて回収した。回収した細胞を5×10
5cells/mLの濃度となるように培養液で懸濁させた。次いで、細胞懸濁約200μLを培養液貯留槽に添加し、顕微鏡観察下で培養液貯留槽を20kPaの圧力で加圧して細胞懸濁液を細胞培養用流路に導入し、細胞が細胞培養用流路に導入されたことを確認した。培養液貯留槽に残った細胞懸濁液を吸引除去した後に、培養液貯留槽に培養液を添加し、5%二酸化炭素を含む空気の飽和水蒸気圧下において37℃で静置し、細胞の接着を促した。
【0092】
5.灌流培養
約6時間の静置培養を経て細胞が細胞培養用流路に接着していることを確認した後、培養液貯留槽に培養液を500μL添加した。培養液の入った培養液貯留槽に対して5kPaで4分間の加圧と大気圧解放176分間の間欠的な加圧とを繰り返すことで、灌流培養を行った。1日に1回、培養液貯留槽内の培養液を新鮮な培養液に交換した。この際に、培養液貯留槽に残存する培養液の重さを測定することで灌流培養中の培地流量を測定した。灌流培養は細胞導入後3日目まで継続した。また、培養中には適宜、細胞の様子を、倒立型蛍光顕微鏡(オリンパス社製、IX71)を用いて観察し、位相差顕微鏡画像を撮影した。
【0093】
6.Live/Dead染色
灌流培養を3日間行った後、細胞培養用流路内の細胞の生死を確認するため、Live/Dead染色試薬(Life Technologies社製、LIVE/DEAD(登録商標)Viability/Cytotoxicity Kit, for mammalian cells)を用いて、細胞培養用流路内の細胞を染色した。Live/Dead染色は以下のプロトコルに従って行った。リン酸緩衝液4mLにLive/Dead染色試薬に含まれるCalcein AM溶液4μL、Ethidium homodimer−1溶液16μLを添加し混合し、Live/Dead染色液を調製した。培養液貯留槽にリン酸緩衝液を約200μL入れ、培養液貯留槽を20kPaの圧力で4分間加圧することで細胞培養用流路内を洗浄した。その後、培養液貯留槽にLive/Dead染色液を約200μL添加し、培養液貯留槽を20kPaの圧力で4分間加圧することで細胞培養用流路内にLive/Dead染色液を導入し、遮光して室温下で30分程度染色した。その後、倒立型蛍光顕微鏡(オリンパス社製、IX71)を用いて蛍光顕微鏡画像IX71位相差顕微鏡画像を撮影した。蛍光画像はFITC(緑色蛍光:蛍光波長488nm、励起波長530nm)及びTexasRed(赤色蛍光:蛍光波長590nm、励起波長615nm)に適合する蛍光フィルター(Chroma社製、マルチバンドフィルター(ET−DAPI/FITC/TexasRed))を用いて撮像した。
【0094】
7.結果
上記の方法に従ってNIH3T3細胞を培養し、位相差顕微鏡により観察したところ、細胞導入1日後には細胞が接着して伸展している様子が観察され、3日間の灌流培養をとおして細胞が増殖する様子が観察された。同様の細胞培養用チップ1を2枚追加で作製して同様の試験を行ったが、細胞の接着、伸展、及び増殖性に差はなく再現性よく細胞を培養できることが確認された。
【0095】
また、37℃における3日間の灌流培養の際の培養液の流量は安定していた。培養液の流量に関する再現性を確認するため、4本の細胞培養用流路が形成された細胞培養用チップ1を2枚作製し、合計8本の細胞培養用流路で3日間、毎日培養液の流量を測定した。8本の細胞培養用流路の3日間の流量の測定値は274±26μL/day(平均値±標準偏差)となっており、細胞培養用流路毎の差も少なく、経時的にも安定であることが確認された。
また、灌流培養後のLive/Dead染色においては、細胞培養流路内のほぼ全て(95%以上)の細胞がCalceinで染色される生細胞であることが確認され、高い生存率を保って培養できることが確認された。また、少数(5%以下)の細胞がEthidium homodimer−1に染色される死細胞であることも確認された。このことにより、製造例1で製造された細胞培養用チップ1の細胞培養用流路内の細胞を染色した場合に、緑色蛍光及び赤色蛍光で観察可能であることが確認された。
【0096】
以上の試験により、製造例1で製造された細胞培養用チップ1を用いて、37℃で培養液を灌流して細胞培養が可能であり、灌流培養によって細胞が増殖し、増殖した細胞が高い生存率を保っていることが確認された。また、製造例1で製造された細胞培養用チップ1では、灌流培養の間、培養液流量が安定していることが確認され、細胞の明視野及び蛍光観察(緑色蛍光及び赤色蛍光)が可能であることが確認された。
【0097】
[試験例2]細胞培養用チップ2を用いた細胞培養試験
製造例2で製造された細胞培養用チップ2を用いた以外は、試験例1に示す方法と同様の方法を用いて、培養液貯留槽を接合し、培養液貯留槽を接合した細胞培養用チップ2を用いて、試験例1に示す方法と同様の方法を用いて、細胞培養試験を試みた。
試験例1と同様の試験を行った結果、製造例2で製造された細胞培養用チップ2では、灌流培養の間、培養液流量が安定していることが確認され、細胞の明視野及び蛍光観察(緑色蛍光及び赤色蛍光)が可能であることが確認された。
【0098】
[試験例3]細胞培養用チップ3を用いた細胞培養試験
製造例3で製造された細胞培養用チップ3を用いた以外は、試験例1に示す方法と同様の方法を用いて、培養液貯留槽を接合し、培養液貯留槽を接合した細胞培養用チップ3を用いて、試験例1に示す方法と同様の方法を用いて、細胞培養試験を試みた。
【0099】
試験例1と同様の試験を行った結果、細胞培養用チップ3では、37℃で6時間の静置培養を行っている間に、細胞培養用流路天板に塗布された第三の接着剤が変形し、流路が完全に閉塞してしまった。培養液を灌流するために培養液貯留槽に培地を導入して加圧したが、流路が閉塞しているため培養液を灌流することができなかった。その後、培養液灌流のための加圧を2日間継続し、観察を続けたが、流路閉塞が原因で培養液を灌流することができず、細胞培養用流路に導入された細胞の状態が悪化する様子が観察された。また、流路が閉塞しているため、Live/Dead染色を行うことはできなかった。
以上の試験により、製造例3で製造された細胞培養用チップ3では、37℃で培養液を灌流して細胞培養を行うことが不可能であることが確認された。