【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。
【0023】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る製造方法で製造する光ファイバの模式的な断面図である。光ファイバ10は、石英系ガラスからなる光ファイバであって、コア部1と、コア部1の外周に形成されたクラッド部2とを備えている。なお、クラッド部2の外周には、不図示の被覆が施されている。被覆は、光ファイバに通常用いられるものを使用している。
【0024】
クラッド部2は、コア部1の外周にわたって隣接するように形成された第1クラッド領域である第1クラッド層2aと、第1クラッド層2aの外周にわたって隣接するように形成された第2クラッド領域である第2クラッド層2bと、第2クラッド層2bの外周にわたって隣接するように形成された第3クラッド層2cとを備えている。第2クラッド層2bは、コア部1からは離間した位置に形成され、微小で不規則な気泡を含む微小気泡領域である。第2クラッド層2bは、微小で不規則な気泡を含むことで屈折率が低い領域となる。
【0025】
コア部1は、屈折率を高めるドーパントであるGeO
2が添加された石英ガラスからなる。クラッド部2は、屈折率調整用のドーパントを添加していない純石英ガラスからなる。
【0026】
つぎに、
図2〜
図4を参照して実施形態1に係る製造方法を説明する。実施形態1に係る製造方法は、挿入工程、微粒子充填工程、線引工程を含む。
【0027】
挿入工程では、コアロッドを、ガラスロッドの穴に挿入する。
図2(a)に示すように、ガラスロッド3は、長手方向に延伸する穴3aを有するパイプ状のロッドである。本実施形態のガラスロッド3は、たとえば外径125mm内径30mmの、屈折率調整用のドーパントを添加していない合成石英パイプから作製される。ガラスロッド3の下端部3bは封止されており、穴3aの下端部3aaは円錐穴加工がなされている。また、ガラスロッド3の上端には石英ガラスからなるサポートパイプ4が接続されている。ガラスロッド3は光ファイバ10のクラッド部2の一部である第3クラッド層2cとなる。
【0028】
図2(a)に示すように、コアロッド5は、上端部5aとコアロッド本体5bとを備える。上端部5aはコアロッド本体5bの上端に接続されている。
図2(b)にA矢視図を示すように、上端部5aは円筒形状の石英ガラス部材の側面に3か所の切欠き5aaが形成された形状を有する。上端部5aの最大径はガラスロッド3の穴3aの内径よりやや小さく、本実施形態では29.9mmである。
【0029】
図2(c)に示すように、コアロッド本体5bは、光ファイバ10のコア部1になるコア形成部5ba及びコア形成部5baの外周にわたって隣接するように形成されたクラッド形成部5bbを備える。コア形成部5baは光ファイバ10のコア部1になり、クラッド形成部5bbは第1クラッド層2aになる。コア形成部5baはGeO
2が添加された石英ガラスからなり、クラッド形成部5bbは純石英ガラスからなる。コア形成部5baのクラッド形成部5bbに対する比屈折率差は、たとえば0.23〜3.5%である。また、クラッド形成部5bbの外径(すなわちコアロッド本体5bの直径)は、本実施形態ではコア形成部5baの直径の2.5倍である。コアロッド本体5bはたとえばVAD法やOVD法、MCVD法等により製造される。
【0030】
また、コアロッド本体5bの下端部5cは半球状に加工されており、かつ
図2(d)にB矢視図を示すように溝5caが形成されている。
【0031】
図2(a)に示すようにコアロッド5をガラスロッド3の穴3aに挿入すると、コアロッド本体5bの下端部5cがガラスロッド3の穴3aの下端部3aaの円錐穴に当接し、コアロッド5は穴3aの略中心に位置することとなる。
【0032】
つづいて微粒子充填工程を行う。微粒子充填工程では、
図3に示すように、サポートパイプ4とコアロッド5の上端部5aの切欠き5aaとを介してガラスロッド3の穴内面とコアロッド5のコアロッド本体5bとの隙間に複数のガラス微粒子6を充填する。これにより隙間がガラス微粒子6で充填される。ガラス微粒子6はコアロッド本体5bの下端部5cの溝5caを通って穴3aの下端部3aaの先端まで充填される。ガラス微粒子6は本実施形態では平均粒子径200μmであり、屈折率調整用のドーパントを添加していない合成石英ガラスからなる。
【0033】
つづいて線引工程を行う。線引工程では、
図4に示すように、まずサポートパイプ4に蓋100を被せ、サポートパイプ4内及びガラス微粒子6を充填した隙間を気密状態とする。蓋100には気密状態としたサポートパイプ4内及び隙間に通じるガス導入管101とガス排気管102とが接続されている。ガス排気管102には真空ポンプ103とガス排気管104とが順次接続されている。ガス導入管101からはアルゴン(Ar)ガスがサポートパイプ4内及び隙間内に供給される。また、蓋100には、気密状態とした隙間内の圧力を測定するための圧力計105が設けられている。圧力計105は、測定した圧力値の測定結果のデータを制御部Cに送信する。制御部Cは圧力値の測定結果のデータに基づいて真空ポンプ103を制御し、サポートパイプ4内及び隙間内の圧力を所定の圧力値に制御できるように構成されている。
【0034】
そして、まずサポートパイプ4内及び隙間内をアルゴンガスで置換し、サポートパイプ4内及び隙間内の圧力を所定のアルゴンガス圧(真空を0気圧とした時のサポートパイプ4内の絶対圧力)0.9〜0.98atmに制御しながら、光ファイバ線引炉106のヒータ106aでガラスロッド3の下端をたとえば2200℃に加熱し、ガラスロッド3、コアロッド5及びガラス微粒子6を加熱溶融して光ファイバFを線引きする。これにより、ガラス微粒子6が充填された領域においてガラス微粒子6間の隙間が閉空間となり、微小で不規則な気泡が形成される。その結果、ガラス微粒子6が微小気泡領域である第2クラッド層2bとなる。その後、線引きされた光ファイバFの外周には被覆が施され、
図1に示す光ファイバ10が製造される。ガラス粒子が溶融する付近でパイプが膨らまず、かつパイプ内の気密を保てる範囲でガス圧制御する事で気泡の量を制御する事が可能であるが、アルゴンガス圧0.2atmを下回ると気泡領域生成が困難であり、大気に対する圧力(大気圧を0とした時のパイプ内圧力)が+1.0atm以上になるとパイプの気密の確保が困難であった。
【0035】
実施形態1の製造方法によれば、線引工程においてガラス微粒子6を充填した隙間の圧力を所定の圧力値に制御しながら光ファイバ10を線引きするので、第2クラッド層2bの特性を容易に制御できる。なお、所定の圧力値については、事前実験等により、要求される第2クラッド層2bの特性(たとえば屈折率)に応じて設定した値を用いることができる。
【0036】
(実施形態1の変形例)
実施形態1では、サポートパイプ4内及び隙間内をアルゴンガスで置換し、サポートパイプ4内及び隙間内の圧力をアルゴンガス圧0.9〜0.98atmに制御しながら線引きを行う。これに対して、実施形態1の変形例では、サポートパイプ4内及び隙間内を酸素ガス90%、ヘリウムガス10%の混合ガスで置換し、サポートパイプ4内及び隙間内の圧力が1.0atmの圧力(高度、天候に依存するが周囲よりおおよそ+10mmH
2Oの状態)になるように制御しながら線引きを行う。すなわち、実施形態1ではパイプ内の圧力を大気に対して負圧として線引きを行ったが、変形例においてはパイプ内の圧力は若干陽圧であるが大気に対してほぼ等しい条件として線引きを行った。
【0037】
実施形態1の変形例の製造方法によっても、第2クラッド層2bの特性を容易に制御して光ファイバ10を線引きできる。また、本発明者らが実施形態1の変形例の製造方法を実施し、線引き後のガラスロッドを引き上げて観察したところ、ガラスロッドとの接続部付近のサポートパイプに殆ど変形が認められず、再利用可能なサポートパイプ長を増やすことが可能であることを確認した。
【0038】
(実施形態2)
つぎに、実施形態2に係る製造方法について説明する。実施形態2に係る製造方法は、実施形態1に係る製造方法と同様に、
図1に示す光ファイバ10を製造できる方法であって、挿入工程、線引工程を含む。
【0039】
挿入工程では、コア部になるコア形成部及び該コア形成部の外周にわたって隣接するように形成されたクラッド形成部を備えるコアロッドと、該コアロッドの外周にわたって形成されたガラス多孔質体と、を備えるガラス成形体を、ガラスロッドの長手方向に延伸する穴に挿入する。
【0040】
はじめに、ガラス成形体の製造方法について説明する。ここでは、コアロッドとして、
図2に示すコアロッド本体5bを用いる。そして、気相合成法による球形シリカ粒子(平均粒子径10μm)、結合剤(ポリビニルアルコール(PVA))、可塑剤(グリセリン)を準備し、これらを混合してシリカ粒子スラリーを作製する。つづいて、作製したシリカ粒子スラリーをスプレードライヤーで噴霧乾燥して直径100μmの造粒粒子を形成する。つづいて、ゴム製の成形型中心にコアロッド本体5bを充填し、その周辺に造粒粒子を充填して、静水圧加圧成形装置を使って加圧成形し、加圧成形体を作製する。つづいて、作製した加圧成形体の外表面を旋盤で切削して、その外径を均一化する。
【0041】
つづいて、
図5に示すように、コアロッド本体5bを含む加圧成形体を炉107にセットする。炉107は、炉体107aと、ヒータ107bと、ガス導入管107cと、ガス排出管107dと、支持具107eとを備えている。炉体107a内の支持具107eにガラス成形体8をセットし、ガス排出管107dから炉体107a内のガスを排出しながらガス導入管107cから処理ガスとしての酸素20%窒素80%の混合ガスを導入し、ヒータ107bで加圧成形体を500℃に昇温して酸素雰囲気下で5時間保持し、結合材及び可塑剤を分解する。その後、ガス排出管107dから炉体107a内のガスを排出しながらガス導入管107cから処理ガスとしての塩素10%窒素90%の混合ガスを導入し、ガラス成形体8を1000℃まで昇温し、塩素雰囲気化で加圧成形体に精製処理をするとともに加圧成形体の表面を硬化させる。これにより、コアロッド本体5bの外周にわたって形成されたガラス多孔質体8aを備えるガラス成形体8を製造する。なお、ガラス成形体8は加圧成形体よりも若干縮径する。
【0042】
つづいて、挿入工程を行う。すなわち、
図6に示すように、ガラス成形体8を、上部にサポートパイプ4が接続されたガラスロッド3の穴3aに挿入する。
【0043】
つづいて、線引工程は実施形態1の線引工程と同様に行う。すなわち、サポートパイプ4に蓋100を被せ、サポートパイプ4内及びガラス成形体8が挿入された穴3aを気密状態とする。
【0044】
そして、まずサポートパイプ4内及び穴3aをアルゴンガスで置換し、サポートパイプ4内及び穴3a内の圧力を所定の圧力値(たとえばアルゴンガス圧0.7〜0.9atm)に制御しながら、光ファイバ線引炉106のヒータ106aでガラスロッド3の下端をたとえば2200℃に加熱し、ガラスロッド3及びガラス成形体8を加熱溶融して光ファイバFを線引きする。これにより、ガラス多孔質体8aにおいて微小で不規則な気泡が形成される。その結果、ガラス多孔質体8aが微小気泡領域である第2クラッド層2bとなり、被覆が施されて
図1に示す光ファイバ10が製造される。
【0045】
実施形態2の製造方法によれば、線引工程においてガラス成形体8が挿入された穴3a内の圧力を所定の圧力値に制御しながら光ファイバ10を線引きするので、微小気泡領域である第2クラッド層2bの特性を容易に制御できる。
【0046】
(実施形態2の変形例)
実施形態2では、コアロッド本体5bの周囲にシリカの造粒粒子を加圧成形し、これを加熱・精製処理してガラス成形体8を製造する。そして、サポートパイプ4内及び穴3a内をアルゴンガスで置換し、サポートパイプ4内及び穴3a内の圧力をアルゴンガス圧0.7〜0.9atmに制御しながら線引きを行う。これに対して、実施形態2の変形例では、実施形態1で用いたコアロッド5の外周に、OVD装置で気相合成シリカ粒子を堆積させ多孔質体を形成し、炉107を用いて1200℃の塩素/窒素混合雰囲気で多孔質体の脱水、精製処理を行い、ガラス成形体8を製造する。また、サポートパイプ4内及び穴3a内をアルゴンガスで置換し、サポートパイプ4内及び穴3a内の圧力が1.0atmの圧力(高度、天候に依存するが周囲よりおおよそ+10mmH
2Oの状態)になるように制御しながら線引きを行う。すなわち、実施形態1ではパイプ内の圧力を大気に対して負圧として線引きを行ったが、変形例においてはパイプ内の圧力を大気に対して若干陽圧の条件で線引きを行った。
【0047】
実施形態2の変形例の製造方法によっても、第2クラッド層2bの特性を容易に制御して光ファイバ10を線引きできる。また、本発明者らが実施形態2の変形例の製造方法を実施し、線引き後のガラスロッドを引き上げて観察したところ、ガラスロッドとの接続部付近のサポートパイプに殆ど変形が認められず、再利用可能なサポートパイプ長を増やすことが可能であることを確認した。
【0048】
サポートパイプ4内及び穴3a内の雰囲気は、必要とする微小気泡領域での気泡が含まれる程度、多孔質体におけるガラス微粒子の粒子径等により適宜選択することが好ましい。また、パイプ内の所望の雰囲気ガス圧が大気圧よりも低い場合には、パイプ内雰囲気ガスを、ガラスへの拡散が速いガス(ヘリウム、水素、重水素等)と遅いガス(酸素、窒素、アルゴン等)とを組み合わせたものとすることで、サポートパイプ4内及び穴3a内の雰囲気を大気圧に近い状態で線引きすることも可能である。
【0049】
(実施形態3)
図7は、実施形態3に係る製造方法で製造する光ファイバの模式的な断面図である。光ファイバ10Aは、石英系ガラスからなり、複数(本実施形態では正方格子状に配列された4つ)のコア部1と、複数のコア部1の外周に形成されたクラッド部2Aとを備えている、いわゆるマルチコアファイバである。なお、クラッド部2Aの外周には、不図示の被覆が施されている。被覆は、光ファイバに通常用いられるものを使用している。
【0050】
クラッド部2Aは、各コア部1の外周にわたって隣接するように形成された第1クラッド領域である第1クラッド層2Aaと、各第1クラッド層2Aaの外周にわたって隣接するように形成された第2クラッド領域である第2クラッド層2Abと、各第2クラッド層2bの外周にわたって隣接するように形成された第3クラッド層2Acとを備えている。各第2クラッド層2Abは、各コア部1からは離間した位置に形成された微小気泡領域である。第2クラッド層2Abは、微小で不規則な気泡を含むことで屈折率が低い領域となる。
【0051】
コア部1は、GeO
2が添加された石英ガラスからなる。クラッド部2Aは、純石英ガラスからなる。
【0052】
つぎに、
図8、
図9を参照して実施形態3に係る製造方法を説明する。実施形態3に係る製造方法は、挿入工程、微粒子充填工程、線引工程を含む。
【0053】
挿入工程を行うにあたって、まずガラスロッドを準備する。
図8(a)、(b)に示すように、ガラスロッド3Aは、長手方向に延伸する穴3Aaを有するパイプ状のロッドであり、たとえば外径125mmで各穴3Aaの内径30mmの、屈折率調整用のドーパントを添加していない合成石英パイプから作製される。
図8(b)にC矢視図を示すように、穴3Aaは複数(本実施形態では正方格子状に配列された4つ)有る。ガラスロッド3Aの下端部3Abは封止されており、各穴3Aaの下端部3Aaaは円錐穴加工がなされている。また、ガラスロッド3Aの上端には石英ガラスからなるサポートパイプ4Aが接続されている。ガラスロッド3Aは光ファイバ10Aのクラッド部2Aの一部である第3クラッド層2Acとなる。
【0054】
そして、挿入工程において、
図9に示すように、実施形態1でも用いたコアロッド5を4本準備し、各コアロッド5をガラスロッド3Aの各穴3Aaに挿入する。つづいて、
図9に示すように、実施形態1と同様にしてガラスロッド3Aの各穴3Aa内面と各コアロッド5のコアロッド本体5bとの隙間に複数のガラス微粒子6を充填する微粒子充填工程を行う。これにより各隙間がガラス微粒子6で充填される。
【0055】
つづいて、実施形態1と同様にして線引工程を行うが、ガラス微粒子6を充填した各隙間を気密状態とし、各隙間内の圧力を所定の圧力値(アルゴンガス圧0.9〜0.98atm)に制御しながら線引きを行う。その結果、ガラス微粒子6が微小気泡領域である各第2クラッド層2Abとなり、被覆が施されて
図7に示す光ファイバ10Aが製造される。
【0056】
実施形態3の製造方法によれば、線引工程においてガラス微粒子6を充填した各隙間の圧力を所定の圧力値に制御しながら光ファイバ10Aを線引きするので、各第2クラッド層2Abの特性を容易に制御できる。また、微小気泡領域を有するマルチコアファイバである光ファイバ10Aを容易に製造できる。
【0057】
なお、
図7に示す光ファイバ10Aは、実施形態2に係る製造方法のように、ガラスロッド3Aの各穴3Aaにガラス成形体8を挿入し、各穴3Aa内の圧力を所定の圧力値に制御しながら線引きを行うことによっても製造することができる。
【0058】
(実施形態4)
図10は、実施形態4に係る製造方法で製造する光ファイバの模式的な断面図である。光ファイバ10Bは、石英系ガラスからなる光ファイバであって、コア部1Bと、コア部1Bの外周に形成されたクラッド部2Bとを備えている。なお、クラッド部2Bの外周には、不図示の被覆が施されている。被覆は、光ファイバに通常用いられるものを使用している。
【0059】
クラッド部2Bは、コア部1Bからは離間した位置に形成された微小気泡領域2Baを複数(本実施形態では6つ)有する。6の微小気泡領域2Baは、断面が略円状であり、コア部1Bを取り囲むように配置しており、微小で不規則な気泡を含むことで屈折率が低い領域となる。このように、微小気泡領域2Baは、コア部1Bを囲む環状以外の形状に形成されている。
【0060】
コア部1Bは、GeO
2が添加された石英ガラスからなる。クラッド部2Bは、純石英ガラスからなる。
【0061】
つぎに、実施形態4に係る製造方法を説明する。実施形態4に係る製造方法は、微粒子充填工程、線引工程を含む。
【0062】
微粒子充填工程では、コア部1Bになるコア形成部及び該コア形成部の外周にわたって隣接するように形成された、クラッド部2Bになるクラッド形成部を備え、クラッド形成部に長手方向に延伸する穴が形成された光ファイバ母材の穴に、複数のガラス微粒子を充填する。
【0063】
はじめに、光ファイバ母材の製造方法について説明する。
図11に示す光ファイバ母材3Bを製造する際には、まずたとえば、VAD法やOVD法等の公知の方法を組み合わせて、コア形成部3Baとクラッド形成部3Bbとを備える光ファイバ母材を製造する。つぎに、この光ファイバ母材のクラッド形成部3Bbに、コア形成部3Baを囲むようにドリルで穴3Bcを形成し、各穴3Bcの内表面をエッチング処理する。なお、コア形成部3Baのクラッド形成部3Bbに対する比屈折率差はたとえば0.23〜3.5%である。光ファイバ母材3Bの外径はたとえば125mmである。
【0064】
つづいて、光ファイバ母材3Bにサポートパイプを接続する。つづいて、各穴3Bcに平均粒子径100μmのガラス微粒子を充填する微粒子充填工程を行い、各穴3Bcをガラス微粒子で充填する。
【0065】
つづいて、実施形態1と同様にして線引工程を行うが、ガラス微粒子を充填した各穴3Bcを気密状態とし、各穴3Bc内の圧力を所定の圧力値(アルゴンガス圧1.0〜1.5atm)に制御しながら線引きを行う。その結果、ガラス微粒子が各微小気泡領域2Baとなり、被覆が施されて
図10に示す光ファイバ10Bが製造される。光ファイバ10Bはたとえば外径125μmとする。
【0066】
実施形態4の製造方法によれば、線引工程においてガラス微粒子を充填した各穴内の圧力を所定の圧力値に制御しながら光ファイバ10Bを線引きするので、各微小気泡領域2Baの特性を容易に制御できる。また、実施形態4の製造方法によれば、光ファイバ母材3Bにおいてドリルで穴を形成する位置を任意に決定できるので、任意の位置に微小気泡領域2Baが形成された光ファイバ10Bを容易に製造することができる。したがって、微小気泡領域2Baを環状以外の形状に形成できる。さらに、穴の形状を、円形でなく他の任意の形状とすることにより、微小気泡領域2Baを任意の形状とすることができる。穴の形状を任意の形状とする方法としては、たとえば光ファイバ母材を複数のガラス部材を組み合わせて形成することとし、組み合わせたガラス部材の間に任意の形状の穴が形成されるようにする方法がある。
【0067】
(実施形態5)
図12は、実施形態5に係る製造方法で製造する光ファイバの模式的な断面図である。光ファイバ10Cは、石英系ガラスからなる光ファイバであって、正方格子状に配列した4つのコア部1Cと、コア部1Cの外周に形成されたクラッド部2Cとを備えている。なお、クラッド部2Cの外周には、不図示の被覆が施されている。被覆は、光ファイバに通常用いられるものを使用している。
【0068】
クラッド部2Cは、各コア部1Cからは離間した位置に形成された、4つの微小気泡領域2Caを有する。微小気泡領域2Caは、それぞれ、2つのコア部1Cの中間に配置しており、微小で不規則な気泡を含むことで屈折率が低い領域となる。微小気泡領域2Caは、2つのコア部1Cの間の光のクロストークを抑制する機能を有する。
【0069】
コア部1Cは、GeO
2が添加された石英ガラスからなる。クラッド部2Cは、純石英ガラスからなる。
【0070】
つぎに、実施形態5に係る製造方法を説明する。実施形態5に係る製造方法は、微粒子充填工程、線引工程を含む。
【0071】
微粒子充填工程では、コア部1Cになるコア形成部及び該コア形成部の外周にわたって隣接するように形成された、クラッド部2Cになるクラッド形成部を備え、クラッド形成部に長手方向に延伸する穴が形成された光ファイバ母材の穴に、ガラス微粒子を充填する。
【0072】
はじめに、光ファイバ母材の製造方法について説明する。
図13に示す光ファイバ母材3Cを製造する際には、まずたとえば、VAD法やOVD法等の公知の方法を組み合わせて、コア形成部3Caとクラッド形成部3Cbとを備える光ファイバ母材を製造する。つぎに、この光ファイバ母材3Cのクラッド形成部3Cbに、穴3Ccを形成し、各穴3Ccの内表面をエッチング処理する。なお、コア形成部3Caのクラッド形成部3Cbに対する比屈折率差はたとえば0.23〜3.5%である。光ファイバ母材3Cの外径はたとえば125mmである。
【0073】
その後、光ファイバ母材3Cの上部にサポートパイプを接続する。その後、各穴3Ccに平均粒子径100μmのガラス微粒子を充填する微粒子充填工程を行い、各穴3Ccをガラス微粒子で充填する。
【0074】
つづいて、実施形態1と同様にして線引工程を行うが、ガラス微粒子を充填した各穴3Ccを気密状態とし、各穴内の圧力を所定の圧力値(アルゴンガス圧1.0〜1.5atm)に制御しながら線引きを行う。その結果、ガラス微粒子が各微小気泡領域2Caとなり、被覆が施されて
図12に示す光ファイバ10Cが製造される。光ファイバ10Cはたとえば外径125μmとする。
【0075】
実施形態5の製造方法によれば、線引工程においてガラス微粒子を充填した各穴内の圧力を所定の圧力値に制御しながら光ファイバ10Cを線引きするので、各微小気泡領域2Caの特性を容易に制御できる。また、実施形態5の製造方法によれば、ドリルで穴を形成する位置を任意に決定できるので、任意の位置に微小気泡領域2Caが形成されたマルチコアファイバを容易に製造することができる。したがって、各微小気泡領域2Caを環状以外の形状に形成できる。さらに、穴の形状を、円形でなく他の任意の形状とすることにより、微小気泡領域2Caを任意の形状とすることができる。
【0076】
なお、実施形態5の製造方法を適用することにより、コア部の識別用マーカとしての微小気泡領域を有するマルチコアファイバを製造できる。
【0077】
図14は、実施形態5に係る製造方法を適用して製造する光ファイバの模式的な断面図である。光ファイバ10Dは、石英系ガラスからなる光ファイバであって、正方格子状に配列した4つのコア部1Dと、コア部1Dの外周に形成されたクラッド部2Dとを備えている。
【0078】
クラッド部2Dは、各コア部1Dからは離間した位置に形成された微小気泡領域2Daを1つ有する。微小気泡領域2Daは、微小で不規則な気泡を含むことで屈折率が低い領域となる。したがって、微小気泡領域2Daは、光ファイバ10Dを切断した断面においてクラッド部2Dの他の領域とは異なる明るさで見えるので、4つのコア部1D識別用マーカとして利用することができる。
【0079】
(ガラス微粒子の平均粒子径に関する実験)
つぎに、上記実施形態1、3〜5に係る製造方法で用いるガラス微粒子の平均粒子径に関する実験結果について説明する。本実験では、実施形態1の製造方法において、ガラス微粒子として平均粒子径がそれぞれ30μm、50μm、70μm、100、150μm、300μmの合成石英ガラスからなるガラス微粒子を用いて、
図1に示す構成の光ファイバを製造した。
【0080】
つづいて、製造した光ファイバにおける第2クラッド層に対する第1クラッド層の偏心率を測定した。
図15は、偏心率を説明する模式図である。
図15において、点O1はコアロッド5から形成されるコア部1と第1クラッド層2aとの中心軸である。点O2はガラス微粒子6から形成される微小気泡領域である第2クラッド層2bの中心軸である。点O1と点O2との距離をdとすると、偏心率は、d/(第2クラッド層2bの周方向における平均の厚み)で表される。ここで、偏心率が大きいほど、第2クラッド層2bの厚みが不均一であることになる。
【0081】
図16は、ガラス微粒子の平均粒子径と偏心率との関係を示す図である。
図16に示すように、ガラス微粒子の平均粒子径が30μmの場合の偏心率は約15%であった。これに対して、ガラス微粒子の平均粒子径が50μm以上であれば偏心率が6%以下であり、第2クラッド層2bの厚みがより均一になることが確認された。したがって、ガラス微粒子の平均粒子径は50μm以上が好ましい。
【0082】
また、ガラス微粒子の平均粒子径は1mm程度以下であることが好ましい。その理由は、ガラス微粒子が充填される隙間の幅や穴の内径は数十mm程度であることから、この幅や内径に比してある程度の小ささである平均粒子径1mm程度以下のガラス微粒子を用いることにより、形成する気泡を微小で不規則なものにできるからである。
【0083】
(加振の効果に関する実験)
つぎに、上記実施形態1、3〜5に係る製造方法において加振を行った実験結果について説明する。本実験では、実施形態1の製造方法において、ガラスロッドの穴にガラス微粒子を充填した後に、ガラスロッドを超音波振動によって加振し、その後に線引工程を行い、
図1に示す構成の光ファイバを製造した。本実験においても、ガラス微粒子として平均粒子径がそれぞれ30μm、50μm、70μm、100μm、150μm、300μmの合成石英ガラスからなるガラス微粒子を用いた。
【0084】
図17は、ガラス微粒子の平均粒子径と偏心率との関係を示す図である。
図17に示すように、加振を行った場合、ガラス微粒子の平均粒子径が30μmの場合の偏心率は約10%であり、
図16に示す加振を行わない場合よりも小さくなった。同様に、ガラス微粒子の平均粒子径が50μm以上であれば偏心率が3%以下と、加振を行わない場合よりも小さくなり、第2クラッド層2bの厚みがより一層均一になることが確認された。なお、本実験では、ガラス微粒子を充填した後に加振を行ったが、ガラス微粒子を充填しながら加振を行っても、偏心率を小さくし、第2クラッド層2bの厚みを均一にする効果が期待される。
【0085】
(実施形態6)
つぎに、実施形態6に係る製造方法について説明する。実施形態6に係る製造方法は、実施形態1に係る製造方法において、測定工程及び調整工程を追加して行うものである。
【0086】
図18に示すように、実施形態6に係る製造方法では、まず、実施形態1と同様に、光ファイバ線引炉106のヒータ106aでガラスロッド3の下端を加熱し、光ファイバFを線引きする。
【0087】
光ファイバ線引炉106内ではガラスロッド3は高温になっており、光を発している。線引きした光ファイバFは微小気泡を含むので、ガラスロッド3が発した光が伝搬する際に微小気泡により散乱される。これにより光ファイバFも光L1を発する。
【0088】
本実施形態では、光ファイバ線引炉106の下方であって、光ファイバFに被覆を施すために使用されるダイス110の上方に、測定器111が設けられている。そして、測定器111は、光ファイバFが発する光L1を受光し、輝度を測定する測定工程を行う。測定器111は、測定結果のデータを制御部C(
図4参照)に送信する。
【0089】
制御部Cは、測定結果に基づいて、線引工程における線引き条件を調整する調整工程を行う。光ファイバFの輝度は、光ファイバFに含まれる微小気泡領域の特性を示すものであるから、輝度の測定結果に基づいて線引き条件を調整することにより、光ファイバFに含まれる微小気泡領域の特性が安定する。特に、長尺の光ファイバFを線引きする場合でも、長手方向における微小気泡領域の特性の変動が小さくなり、安定する。
【0090】
なお、調整する線引き条件としては、サポートパイプ4内及び隙間内の圧力値の調整が好適である。ただし、光ファイバ線引炉下部にヒータ、断熱材等も用いた余熱ゾーンを設け、この余熱ゾーンで光ファイバが完全に固化までの熱履歴を適宜制御する事により微小気泡領域を制御する方法等も挙げられるため、特に限定はされない。圧力値を調整する場合、制御部Cは、圧力計105が測定した圧力値の測定結果に基づいて真空ポンプ103を制御し、サポートパイプ4内及び隙間内の圧力を所定の圧力値に制御するとともに、測定器111の測定した輝度が一定値になるように、Arガス流量や真空ポンプ103を制御して所定の圧力値を調整する。
【0091】
(圧力値の調整に関する実験1、2)
つぎに、圧力値の調整に関する実験1、2の結果について説明する。実験1では、実施形態1の製造方法により、
図1に示す構成を有する、外径が125μmで長さが250kmの光ファイバを製造した。また、実験2では、実施形態6の製造方法において、圧力値を調整することにより、
図1に示す構成を有する、外径が125μmで長さが250kmの光ファイバを製造した。そして、製造した各光ファイバを長さ50km毎に切断し、微小気泡領域(第2クラッド層)の厚みの周方向における平均値を測定した。
【0092】
図19は、実験1、2における光ファイバの長さ(線引長)と微小気泡領域の厚み(平均値)との関係を示す図である。なお、線引長0kmが線引き開始時の光ファイバの位置であり、線引長250kmが線引き終了時の光ファイバの位置である。
図19に示すように、黒点で示す実験1の圧力調整無しの場合、線引長0kmから150kmまでは厚みが略一定の5μmであったが、線引き後半の200km、250kmでは厚みが減少し、4μm程度より低下した。このように実験1で厚みが減少した理由は、アルゴンガス分圧の圧力値を一定値(0.9atm)に制御していることにより、線引き後半の光ファイバ母材上端部では早い段階から徐々に温度上昇したため、ガラス微粒子領域の溶融が早い段階から進んだ結果、ガラス微粒子の隙間に生じる独立気泡サイズが小さくなり、薄い微小気泡領域(第2クラッド層)に変化したためと考えられる。
【0093】
一方、白丸で示す実験2の圧力調整有りの場合、線引長0kmから250kmまで厚みが略一定の5μmであった。なお、実験2では、線引き中にアルゴンガス分圧の圧力値が調整され、0.90〜1.05atmの範囲で変化した。
【0094】
(実施形態7)
つぎに、実施形態7に係る製造方法について説明する。実施形態7に係る製造方法は、実施形態1に係る製造方法において、測定工程及び調整工程を追加して行うものである。
【0095】
図20に示すように、実施形態7に係る製造方法では、まず、実施形態1と同様に、光ファイバ線引炉106のヒータ106aでガラスロッド3の下端を加熱し、光ファイバFを線引きする。
【0096】
本実施形態では、光ファイバ線引炉106の下方であって、光ファイバFに被覆を施すために使用されるダイス110の上方に、レーザ光照射器112及び測定器113、114が設けられている。レーザ光照射器112はたとえばHe−Neレーザ装置である。そして、レーザ光照射器112は、線引きした光ファイバFにレーザ光L2を照射する。測定器113は、レーザ光L2のうち、光ファイバFを透過した透過光L3のパワーを測定する測定工程を行う。測定器114は、レーザ光L2のうち、光ファイバFにより45度の方向に反射された反射光L4のパワーを測定する測定工程を行う。測定器113、114は、測定結果のデータを制御部C(
図4参照)に送信する。
【0097】
制御部Cは、測定結果に基づいて、線引工程における線引き条件を調整する調整工程を行う。透過光L3のパワー及び反射光L4のパワーは、光ファイバFに含まれる微小気泡領域の特性を示すものであるから、透過光L3のパワー及び反射光L4のパワーの測定結果に基づいて線引き条件を調整することにより、光ファイバFに含まれる微小気泡領域の特性が安定する。特に、長尺の光ファイバFを線引きする場合でも、長手方向における微小気泡領域の特性の変動が小さくなり、安定する。
【0098】
なお、調整する線引き条件としては、サポートパイプ4内及び隙間内の圧力値の調整が好適である。ただし、光ファイバ線引炉下部にヒータ、断熱材等も用いた余熱ゾーンを設け、この余熱ゾーンで光ファイバが完全に固化までの熱履歴を適宜制御する事により微小気泡領域を制御する方法等も挙げられため、特に限定はされない。圧力値を調整する場合、制御部Cは、圧力計105が測定した圧力値の測定結果に基づいて真空ポンプ103を制御し、サポートパイプ4内及び隙間内の圧力を所定の圧力値に制御するとともに、測定器113、114の測定した光のパワーが一定値になるように、真空ポンプ103を制御して所定の圧力値を調整する。
【0099】
(圧力値の調整に関する実験3)
つぎに、圧力値の調整に関する実験3の結果について説明する。実験3では、実施形態6の製造方法において、圧力値を調整することにより、
図1に示す構成を有する、外径が125μmで長さが250kmの光ファイバを製造した。そして、製造した各光ファイバを長さ50km毎に切断し、微小気泡領域(第2クラッド層)の厚みの周方向における平均値を測定した。
【0100】
図21は、実験3における光ファイバの長さ(線引長)と微小気泡領域の厚み(平均値)との関係を示す図である。なお、線引長0kmが線引き開始時の光ファイバの位置であり、線引長250kmが線引き終了時の光ファイバの位置である。実験3の場合、黒丸で示すように、線引長0kmから250kmまで厚みが略一定の5μmであった。なお、実験3では、線引き中にアルゴンガス分圧の圧力値が調整され、0.90〜1.05atmの範囲で変化した。
【0101】
なお、実施形態7では、透過光及び反射光を測定しているが、透過光及び反射光の少なくとも一つを測定し、得られた測定結果に基づいて線引き条件を調整するようにしてもよい。
【0102】
(実施形態8)
図22は、実施形態8に係る製造方法で製造する光ファイバの模式的な断面図である。光ファイバ10Eは、石英系ガラスからなる光ファイバであって、複数(本実施形態では4つ)のコア部1Eと、コア部1Eの外周に形成されたクラッド部2Eとを備えている。なお、クラッド部2Eの外周には、不図示の被覆が施されている。被覆は、光ファイバに通常用いられるものを使用している。
【0103】
クラッド部2Eは、各コア部1Eからは離間した位置に形成された微小気泡領域2Eaを複数(本実施形態では24箇所)有する。24箇所の微小気泡領域2Eaは、微小で不規則な気泡を含むことで屈折率が低い領域となる。このように、微小気泡領域2Eaは、コア部1Eを囲む環状以外の形状に形成されている。微小気泡領域2Eaは、2つのコア部1Eの間の光のクロストークを抑制する機能を有する。
【0104】
コア部1Eは、GeO
2が添加された石英ガラスからなる。クラッド部2Eは、純石英ガラスからなる。
【0105】
つぎに、実施形態8に係る製造方法を説明する。実施形態8に係る製造方法は、挿入工程、微粒子充填工程、線引工程を含む。
【0106】
挿入工程では、
図23に示すように、4本のコアロッド5Eを、ガラスロッド3Eの長手方向に延伸する穴3Eaに挿入するとともに、ガラスロッド3Eの穴3Ea内面と4本のコアロッド5Eとの隙間に複数のサポートガラスロッド9a、9b(本実施形態では3本のサポートガラスロッド9a、6本のサポートガラスロッド9b)を挿入する。
【0107】
各コアロッド5Eは、コア部1Eになるコア形成部5Ea及びコア形成部5Eaの外周にわたって隣接するように形成された、クラッド部2Eの一部になるクラッド形成部5Ebを備えるものである。ガラスロッド3Eは、長手方向に延伸する穴3Eaを有するパイプ状のロッドであり、クラッド部2Eの一部となる。また、ガラスロッド3Eにはサポートパイプが接続されている。サポートガラスロッド9a、9bは、互いに直径が異なるロッドであって、サポートガラスロッド9aはコアロッド5Eと同じ外径を有する。サポートガラスロッド9a、9bは、クラッド部2Eの一部となる。サポートガラスロッド9a、9bは、ガラスロッド3Eの穴3Ea内において各コアロッド5Eを所定の位置に配置させる機能を有する。したがって、4本のコアロッド5E、3本のサポートガラスロッド9a、6本のサポートガラスロッド9bは、穴3Ea内に稠密に配置される。
【0108】
微粒子充填工程では、ガラスロッド3Eの穴3Ea内面と各コアロッド5Eとサポートガラスロッド9a、9bとの隙間にガラス微粒子6を充填し、隙間をガラス微粒子6で充填する。
【0109】
つづいて、実施形態1と同様にして線引工程を行うが、ガラス微粒子を充填した各隙間を気密状態とし、各隙間内の圧力を所定の圧力値(本実施形態ではアルゴンガス圧0.85〜0.98atm)に制御しながら、ガラスロッド3E、コアロッド5E、サポートガラスロッド9a、9b及びガラス微粒子6を加熱溶融して線引きを行う。その結果、ガラス微粒子6が各微小気泡領域2Eaとなり、被覆が施されて
図22に示す光ファイバ10Eが製造される。光ファイバ10Eはたとえば外径125μmとする。
【0110】
実施形態8の製造方法によれば、線引工程においてガラス微粒子を充填した各隙間内の圧力を所定の圧力値に制御しながら光ファイバ10Eを線引きするので、各微小気泡領域2Eaの特性を容易に制御できる。また、実施形態8の製造方法は、公知のスタック&ドロー法を適用して容易に実施することができる。また、実施形態8の製造方法によれば、コアロッド5E及びサポートガラスロッド9a、9bの外径や配置を任意に決定できるので、任意の位置に微小気泡領域2Eaが形成された光ファイバ10Eを容易に製造することができる。したがって、微小気泡領域2Eaを環状以外の形状に形成できる。さらに、隙間の形状を任意の形状とすることにより、微小気泡領域2Eaを任意の形状とすることができる。隙間の形状を任意の形状とする方法としては、たとえばコアロッド5E及びサポートガラスロッド9a、9bの形状を機械加工やエッチングなどにより加工して、ガラスロッド3Eの穴3Ea内に挿入したときに所定の隙間形状が形成されるようにする方法がある。更に、ガラスロッド3Eの替りにガラスパイプを用いてパイプ内に微粒子を充填することも有効である。
【0111】
なお、上記実施形態1〜3において、コア部をGeO
2が添加された石英ガラスで構成し、第1クラッド層又はクラッド部を純石英ガラスで構成しているが、コア部を純石英ガラスで構成し、第1クラッド層又はクラッド部を、屈折率を低下させるドーパント(たとえばフッ素)が添加された石英ガラスで構成してもよい。この場合もコア部の第1クラッド層又はクラッド部に対する比屈折率差はたとえば0.23〜3.5%とできる。
【0112】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。たとえば、実施形態6、7の測定工程及び調整工程は、上記実施形態のいずれにも組み合わせて実施することができる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。