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特許6906207チクングニアウイルス検出用免疫クロマト分析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6906207
(24)【登録日】2021年7月1日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】チクングニアウイルス検出用免疫クロマト分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/569 20060101AFI20210708BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20210708BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20210708BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20210708BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20210708BHJP
   C07K 16/10 20060101ALN20210708BHJP
【FI】
   G01N33/569 L
   G01N33/53 D
   G01N33/543 521
   C12M1/34 FZNA
   C12M1/34 B
   C12Q1/04
   !C07K16/10
【請求項の数】14
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2018-22527(P2018-22527)
(22)【出願日】2018年2月9日
(65)【公開番号】特開2019-138777(P2019-138777A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2020年12月18日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、感染症研究国際展開戦略プログラム、「大阪大学タイ感染症共同研究拠点の戦略的新展開」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩田 達雄
(72)【発明者】
【氏名】中山 英美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】岩本 久彦
【審査官】 海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/168417(WO,A2)
【文献】 特開2017−207335(JP,A)
【文献】 特表2015−508648(JP,A)
【文献】 HUITS R. et al.,Diagnostic accuracy of rapid E1-antigen test for chikungunya virus infection in a reference setting,Clinical Microbiology and Infection,2017年 6月 9日,Vol.24,No.1,PP.78-81
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む、チクングニアウイルスを検出するための免疫クロマト分析装置であって、
前記標識物質保持部は、下記(A)の抗体またはその抗原結合断片を含有し、
前記検出部は、下記(B)の抗体またはその抗原結合断片、及び下記(C)の抗体またはその抗原結合断片を含有する、
免疫クロマト分析装置。
(A)下記(1)の重鎖可変領域と下記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(1)重鎖相補性決定領域(CDRH)1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1−A)下記(H1−A1)のアミノ酸配列
(H1−A1)配列番号1のアミノ酸配
H2−A)下記(H2−A1)のアミノ酸配列
(H2−A1)配列番号2のアミノ酸配列
(H3−A)下記(H3−A1)のアミノ酸配列
(H3−A1)配列番号3のアミノ酸配
2)軽鎖相補性決定領域(CDRL)1、CDRL2、およびCDRL3を含み、
CDRL1が、下記(L1−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRL2が、下記(L2−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRL3が、下記(L3−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである軽鎖可変領域
(L1−A)下記(L1−A1)のアミノ酸配列
(L1−A1)配列番号4のアミノ酸配
L2−A)下記(L2−A1)のアミノ酸配列
(L2−A1)配列番号5のアミノ酸配
L3−A)下記(L3−A1)のアミノ酸配列
(L3−A1)配列番号6のアミノ酸配
B)下記(3)の重鎖可変領域と上記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(3)重鎖相補性決定領域(CDRH)1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1−B)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2−B)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3−B)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1−B)下記(H1−B1)のアミノ酸配列
(H1−B1)配列番号7のアミノ酸配
H2−B)下記(H2−B1)のアミノ酸配列
(H2−B1)配列番号8のアミノ酸配
H3−B)下記(H3−B1)のアミノ酸配列
(H3−B1)配列番号9のアミノ酸配
C)下記(4)の重鎖可変領域と上記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(4)CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1−C)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2−C)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3−C)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1−C)下記(H1−C1)のアミノ酸配列
(H1−C1)配列番号10のアミノ酸配
H2−C)下記(H2−C1)のアミノ酸配列
(H2−C1)配列番号11のアミノ酸配
H3−C)下記(H3−C1)のアミノ酸配列
(H3−C1)配列番号12のアミノ酸配
【請求項2】
試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む、チクングニアウイルスを検出するための免疫クロマト分析装置であって、
前記標識物質保持部は、下記(A)の抗体またはその抗原結合断片を含有し、
前記検出部は、下記(B)の抗体またはその抗原結合断片、及び下記(C)の抗体またはその抗原結合断片を含有する、
免疫クロマト分析装置。
(A)下記(1)の重鎖可変領域と下記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(1)下記(H−A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H−A)下記(H−A1)のアミノ酸配列
(H−A1)配列番号13のアミノ酸配
2)下記(L−A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む軽鎖可変領域
(L−A)下記(L−A1)のアミノ酸配列
(L−A1)配列番号14のアミノ酸配
B)下記(3)の重鎖可変領域と上記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(3)下記(H−B)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H−B)下記(H−B1)のアミノ酸配列
(H−B1)配列番号15のアミノ酸配
C)下記(4)の重鎖可変領域と上記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(4)下記(H−C)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H−C)下記(H−C1)のアミノ酸配列
(H−C1)配列番号16のアミノ酸配
【請求項3】
試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む、チクングニアウイルスを検出するための免疫クロマト分析装置であって、
前記標識物質保持部は、下記(A)の抗体またはその抗原結合断片を含有し、
前記検出部は、下記(B)の抗体またはその抗原結合断片、及び下記(C)の抗体またはその抗原結合断片を含有する、
免疫クロマト分析装置。
(A)下記(1)の重鎖と下記(2)の軽鎖とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(1)下記(HA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HA)下記(HA1)のアミノ酸配列
(HA1)配列番号17のアミノ酸配
2)下記(LA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む軽鎖
(LA)下記(LA1)のアミノ酸配列
(LA1)配列番号18のアミノ酸配
B)下記(3)の重鎖と上記(2)の軽鎖とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(3)下記(HB)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HB)下記(HB1)のアミノ酸配列
(HB1)配列番号19のアミノ酸配
C)下記(4)の重鎖と上記(2)の軽鎖とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(4)下記(HC)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HC)下記(HC1)のアミノ酸配列
(HC1)配列番号20のアミノ酸配
【請求項4】
チクングニアウイルスのうち、チクングニアウイルスのエンベロープ糖タンパク質を検出するための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の免疫クロマト分析装置。
【請求項5】
前記チクングニアウイルスのエンベロープ糖タンパク質が、チクングニアウイルスのE1タンパク質である、請求項4に記載の免疫クロマト分析装置。
【請求項6】
前記(A)の抗体またはその抗原結合断片、前記(B)の抗体またはその抗原結合断片、および、前記(C)の抗体またはその抗原結合断片が、ECSA型、Asian型、及びWA型の少なくともいずれか1の遺伝子型を有するチクングニアウイルスに特異的に結合する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の免疫クロマト分析装置。
【請求項7】
前記標識物質保持部は、さらに、下記(D)の抗体またはその抗原結合断片を含有し、
前記検出部は、さらに、下記(E)の抗体またはその抗原結合断片を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の免疫クロマト分析装置。
(D)下記(1)の重鎖可変領域と下記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(1)重鎖相補性決定領域(CDRH)1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1−D)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2−D)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3−D)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1−D)下記(H1−D1)のアミノ酸配列
(H1−D1)配列番号21のアミノ酸配
H2−D)下記(H2−D1)のアミノ酸配列
(H2−D1)配列番号22のアミノ酸配
H3−D)下記(H3−D1)のアミノ酸配列
(H3−D1)配列番号23のアミノ酸配
2)軽鎖相補性決定領域(CDRL)1、CDRL2、およびCDRL3を含み、
CDRL1が、下記(L1−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRL2が、下記(L2−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRL3が、下記(L3−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである軽鎖可変領域
(L1−A)下記(L1−A1)のアミノ酸配列
(L1−A1)配列番号4のアミノ酸配
L2−A)下記(L2−A1)のアミノ酸配列
(L2−A1)配列番号5のアミノ酸配
L3−A)下記(L3−A1)のアミノ酸配列
(L3−A1)配列番号6のアミノ酸配
E)下記(3)の重鎖可変領域と上記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(3)重鎖相補性決定領域(CDRH)1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1−E)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2−E)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3−E)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1−E)下記(H1−E1)のアミノ酸配列
(H1−E1)配列番号24のアミノ酸配
H2−E)下記(H2−E1)のアミノ酸配列
(H2−E1)配列番号25のアミノ酸配
H3−E)下記(H3−E1)のアミノ酸配列
(H3−E1)配列番号26のアミノ酸配
【請求項8】
前記標識物質保持部は、さらに、下記(D)の抗体またはその抗原結合断片を含有し、
前記検出部は、さらに、下記(E)の抗体またはその抗原結合断片を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の免疫クロマト分析装置。
(D)下記(1)の重鎖可変領域と下記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(1)下記(H−D)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H−D)下記(H−D1)のアミノ酸配列
(H−D1)配列番号27のアミノ酸配
2)下記(L−A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む軽鎖可変領域
(L−A)下記(L−A1)のアミノ酸配列
(L−A1)配列番号14のアミノ酸配
E)下記(3)の重鎖可変領域と上記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(3)下記(H−E)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H−E)下記(H−E1)のアミノ酸配列
(H−E1)配列番号28のアミノ酸配
【請求項9】
前記標識物質保持部は、さらに、下記(D)の抗体またはその抗原結合断片を含有し、
前記検出部は、さらに、下記(E)の抗体またはその抗原結合断片を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の免疫クロマト分析装置。
(D)下記(1)の重鎖と下記(2)の軽鎖とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(1)下記(HD)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HD)下記(HD1)のアミノ酸配列
(HD1)配列番号29のアミノ酸配
2)下記(LA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む軽鎖
(LA)下記(LA1)のアミノ酸配列
(LA1)配列番号18のアミノ酸配
E)下記(3)の重鎖と上記(2)の軽鎖とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(3)下記(HE)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HE)下記(HE1)のアミノ酸配列
(HE1)配列番号30のアミノ酸配
【請求項10】
前記(D)の抗体またはその抗原結合断片、および、前記(E)の抗体またはその抗原結合断片が、ECSA型、Asian型、及びWA型の少なくともいずれか1の遺伝子型を有するチクングニアウイルスに特異的に結合する、請求項7〜9のいずれか1項に記載の免疫クロマト分析装置。
【請求項11】
前記標識物質保持部における前記抗体(A)の抗体またはその抗原結合断片と、前記抗体(D)の抗体またはその抗原結合断片と、の含有比率(質量)が1:2〜2:1である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の免疫クロマト分析装置。
【請求項12】
前記試料添加部に添加する試料が、チクングニアウイルス感染者の全血、血清、血漿、精液、および髄液のいずれか1である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の免疫クロマト分析装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の免疫クロマト分析装置と、検体を希釈して展開するための検体希釈液とを含む、免疫クロマト分析キット。
【請求項14】
以下の工程(1)〜(4)を含む、請求項13に記載の免疫クロマト分析キットを用いて検体に含まれるチクングニアウイルスを検出する免疫クロマト分析方法。
(1)検体希釈液により検体を希釈した検体含有液を試料添加部に添加する工程
(2)標識物質保持部に保持されている、前記(A)の抗体またはその抗原結合断片により前記チクングニアウイルスを認識させる工程
(3)前記検体および前記(A)の抗体またはその抗原結合断片を移動相としてクロマトグラフ媒体部に展開させる工程
(4)展開された移動相中のチクングニアウイルスを、検出部に含まれる前記(B)の抗体またはその抗原結合断片および前記(C)の抗体またはその抗原結合断片により検出する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チクングニアウイルスの検出のための免疫クロマト分析装置、免疫クロマト分析キットおよび免疫クロマト分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チクングニアウイルス(Chikungunya virus:CHIKV)は蚊やダニ等の節足動物内で増殖し、それらの吸血活動によって脊椎動物に伝播される。チクングニアウイルスに感染すると、チクングニア熱といわれる高熱や関節の激しい痛みを引き起こす。ときに重篤な症状を引き起こすこともあり、早期治療を行うための迅速診断法の確立が望まれている。
【0003】
チクングニアウイルスは、トガウイルス科アルファウイルス属に分類され、球状のRNAウイルスである。その遺伝子型は大きく分類して、ECSA型、WA型、及びAsian型の3つの遺伝子型があることが知られている。いずれの遺伝子型においてもゲノムRNAの3’端側の1/3の領域は、CP、E3、E2、6K、E1の5つの構造タンパク質をコードし、5’端側の2/3の領域はnsP1、nsP2、nsP3、nsP4の4つの非構造タンパク質をコードする。
【0004】
非特許文献1及び2には、チクングニアウイルスのE1タンパク質を認識するマウスモノクローナル抗体を用いた免疫クロマトグラフィーにより、ECSA型およびAsian型のチクングニアウイルスを検出する方法が開示されている。非特許文献3には、チクングニアウイルスのE1タンパク質と反応するマウスモノクローナル抗体であるCK47が開示されている。
また、特許文献1には、チクングニアウイルスのE2タンパク質に対する抗体である、抗チクングニアウイルスE2抗体を使用して、免疫複合体を形成させ、その免疫複合体の有無により、チクングニアウイルスの存在または非存在を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−538291号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Clinical Microbiology,February 2015 Volume 53 Number 2
【非特許文献2】Clinical Microbiology and Infection 24 (2018) 78e81
【非特許文献3】Virology,464−465(2014) 111−117
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献2に記載の免疫クロマトグラフィーに用いられる抗体は、ECSA型のチクングニアウイルスおいては感度が良好であるものの、Asian型のチクングニアウイルスおいては感度が低い結果となっている。
また、非特許文献1に記載の免疫クロマトグラフィーに用いられた抗体は、非特許文献3に開示されているとおり、ウイルスタンパク質の点変異により著しく活性が下がってしまう問題があった。
【0008】
また、特許文献1には、チクングニアウイルスのE2タンパク質に対する抗体が開示されているが、当該抗体がチクングニアウイルスの種々の遺伝子型に対して反応性を有するかについては特に着目されておらず、各遺伝子型への反応性や感度は不明である。また、チクングニアウイルスのE2タンパク質はホスト(ヒト)が中和抗体を作ることが知られており、チクングニアウイルスのE2タンパク質を免疫学的測定系のターゲットとした場合、ホスト由来の抗体による競合阻害を受けてしまうおそれがあった。
【0009】
本発明は前述の技術的な課題に鑑みてなされたものであり、遺伝子型の異なるチクングニアウイルス間であっても、迅速かつ高感度に検出することを目的とする。また本発明は、構造タンパク質の一部に変異を起こしたチクングニアウイルスであっても、迅速かつ高感度に検出することを目的とする。さらに、チクングニアウイルス以外の他のウイルス(例えば、シンドビスウイルス:Sindbis virus,SINV)との交叉反応を抑え、チクングニアウイルスを特異的に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、免疫クロマト分析装置において、その標識物質保持部および検出部にチクングニアウイルスに対する特定の抗体を組み合わせて使用することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
したがって、本発明は以下の通りである。
1.試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む、チクングニアウイルスを検出するための免疫クロマト分析装置であって、
前記標識物質保持部は、下記(A)の抗体またはその抗原結合断片を含有し、
前記検出部は、下記(B)の抗体またはその抗原結合断片、及び下記(C)の抗体またはその抗原結合断片を含有する、
免疫クロマト分析装置。
(A)下記(1)の重鎖可変領域と下記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(1)重鎖相補性決定領域(CDRH)1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1−A)下記(H1−A1)、(H1−A2)または(H1−A3)のアミノ酸配列
(H1−A1)配列番号1のアミノ酸配列
(H1−A2)配列番号1のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H1−A3)配列番号1のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H2−A)下記(H2−A1)、(H2−A2)または(H2−A3)のアミノ酸配列
(H2−A1)配列番号2のアミノ酸配列
(H2−A2)配列番号2のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H2−A3)配列番号2のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H3−A)下記(H3−A1)、(H3−A2)または(H3−A3)のアミノ酸配列
(H3−A1)配列番号3のアミノ酸配列
(H3−A2)配列番号3のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H3−A3)配列番号3のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(2)軽鎖相補性決定領域(CDRL)1、CDRL2、およびCDRL3を含み、
CDRL1が、下記(L1−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRL2が、下記(L2−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRL3が、下記(L3−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである軽鎖可変領域
(L1−A)下記(L1−A1)、(L1−A2)または(L1−A3)のアミノ酸配列
(L1−A1)配列番号4のアミノ酸配列
(L1−A2)配列番号4のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L1−A3)配列番号4のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(L2−A)下記(L2−A1)、(L2−A2)または(L2−A3)のアミノ酸配列
(L2−A1)配列番号5のアミノ酸配列
(L2−A2)配列番号5のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L2−A3)配列番号5のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(L3−A)下記(L3−A1)、(L3−A2)または(L3−A3)のアミノ酸配列
(L3−A1)配列番号6のアミノ酸配列
(L3−A2)配列番号6のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L3−A3)配列番号6のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(B)下記(3)の重鎖可変領域と上記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(3)重鎖相補性決定領域(CDRH)1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1−B)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2−B)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3−B)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1−B)下記(H1−B1)、(H1−B2)または(H1−B3)のアミノ酸配列
(H1−B1)配列番号7のアミノ酸配列
(H1−B2)配列番号7のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H1−B3)配列番号7のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H2−B)下記(H2−B1)、(H2−B2)または(H2−B3)のアミノ酸配列
(H2−B1)配列番号8のアミノ酸配列
(H2−B2)配列番号8のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H2−B3)配列番号8のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H3−B)下記(H3−B1)、(H3−B2)または(H3−B3)のアミノ酸配列
(H3−B1)配列番号9のアミノ酸配列
(H3−B2)配列番号9のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H3−B3)配列番号9のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(C)下記(4)の重鎖可変領域と上記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(4)CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1−C)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2−C)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3−C)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1−C)下記(H1−C1)、(H1−C2)または(H1−C3)のアミノ酸
配列
(H1−C1)配列番号10のアミノ酸配列
(H1−C2)配列番号10のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H1−C3)配列番号10のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H2−C)下記(H2−C1)、(H2−C2)または(H2−C3)のアミノ酸配列
(H2−C1)配列番号11のアミノ酸配列
(H2−C2)配列番号11のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H2−C3)配列番号11のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H3−C)下記(H3−C1)、(H3−C2)または(H3−C3)のアミノ酸配列
(H3−C1)配列番号12のアミノ酸配列
(H3−C2)配列番号12のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H3−C3)配列番号12のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
2.試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む、チクングニアウイルスを検出するための免疫クロマト分析装置であって、
前記標識物質保持部は、下記(A)の抗体またはその抗原結合断片を含有し、
前記検出部は、下記(B)の抗体またはその抗原結合断片、及び下記(C)の抗体またはその抗原結合断片を含有する、
免疫クロマト分析装置。
(A)下記(1)の重鎖可変領域と下記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(1)下記(H−A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H−A)下記(H−A1)、(H−A2)または(H−A3)のアミノ酸配列
(H−A1)配列番号13のアミノ酸配列
(H−A2)配列番号13のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H−A3)配列番号13のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(2)下記(L−A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む軽鎖可変領域
(L−A)下記(L−A1)、(L−A2)または(L−A3)のアミノ酸配列
(L−A1)配列番号14のアミノ酸配列
(L−A2)配列番号14のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L−A3)配列番号14のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(B)下記(3)の重鎖可変領域と上記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(3)下記(H−B)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H−B)下記(H−B1)、(H−B2)または(H−B3)のアミノ酸配列
(H−B1)配列番号15のアミノ酸配列
(H−B2)配列番号15のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H−B3)配列番号15のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠
失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(C)下記(4)の重鎖可変領域と上記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(4)下記(H−C)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H−C)下記(H−C1)、(H−C2)または(H−C3)のアミノ酸配列
(H−C1)配列番号16のアミノ酸配列
(H−C2)配列番号16のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H−C3)配列番号16のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
3.試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部及び吸収部を含む、チクングニアウイルスを検出するための免疫クロマト分析装置であって、
前記標識物質保持部は、下記(A)の抗体またはその抗原結合断片を含有し、
前記検出部は、下記(B)の抗体またはその抗原結合断片、及び下記(C)の抗体またはその抗原結合断片を含有する、
免疫クロマト分析装置。
(A)下記(1)の重鎖と下記(2)の軽鎖とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(1)下記(HA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HA)下記(HA1)、(HA2)または(HA3)のアミノ酸配列
(HA1)配列番号17のアミノ酸配列
(HA2)配列番号17のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HA3)配列番号17のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(2)下記(LA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む軽鎖
(LA)下記(LA1)、(LA2)または(LA3)のアミノ酸配列
(LA1)配列番号18のアミノ酸配列
(LA2)配列番号18のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(LA3)配列番号18のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(B)下記(3)の重鎖と上記(2)の軽鎖とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(3)下記(HB)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HB)下記(HB1)、(HB2)または(HB3)のアミノ酸配列
(HB1)配列番号19のアミノ酸配列
(HB2)配列番号19のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HB3)配列番号19のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(C)下記(4)の重鎖と上記(2)の軽鎖とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(4)下記(HC)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HC)下記(HC1)、(HC2)または(HC3)のアミノ酸配列
(HC1)配列番号20のアミノ酸配列
(HC2)配列番号20のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HC3)配列番号20のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
4.チクングニアウイルスのうち、チクングニアウイルスのエンベロープ糖タンパク質を検出するための、前記1〜3のいずれか1に記載の免疫クロマト分析装置。
5.前記チクングニアウイルスのエンベロープ糖タンパク質が、チクングニアウイルスのE1タンパク質である、前記4に記載の免疫クロマト分析装置。
6.前記(A)の抗体またはその抗原結合断片、前記(B)の抗体またはその抗原結合断片、および、前記(C)の抗体またはその抗原結合断片が、ECSA型、Asian型、及びWA型の少なくともいずれか1の遺伝子型を有するチクングニアウイルスに特異的に結合する、前記1〜5のいずれか1に記載の免疫クロマト分析装置。
7.前記標識物質保持部は、さらに、下記(D)の抗体またはその抗原結合断片を含有し、
前記検出部は、さらに、下記(E)の抗体またはその抗原結合断片を含有する、前記1〜6のいずれか1に記載の免疫クロマト分析装置。
(D)下記(1)の重鎖可変領域と下記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(1)重鎖相補性決定領域(CDRH)1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1−D)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2−D)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3−D)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1−D)下記(H1−D1)、(H1−D2)または(H1−D3)のアミノ酸配列
(H1−D1)配列番号21のアミノ酸配列
(H1−D2)配列番号21のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H1−D3)配列番号21のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H2−D)下記(H2−D1)、(H2−D2)または(H2−D3)のアミノ酸配列
(H2−D1)配列番号22のアミノ酸配列
(H2−D2)配列番号22のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H2−D3)配列番号22のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H3−D)下記(H3−D1)、(H3−D2)または(H3−D3)のアミノ酸配列
(H3−D1)配列番号23のアミノ酸配列
(H3−D2)配列番号23のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H3−D3)配列番号23のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(2)軽鎖相補性決定領域(CDRL)1、CDRL2、およびCDRL3を含み、
CDRL1が、下記(L1−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRL2が、下記(L2−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRL3が、下記(L3−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである軽鎖可変領域
(L1−A)下記(L1−A1)、(L1−A2)または(L1−A3)のアミノ酸配列
(L1−A1)配列番号4のアミノ酸配列
(L1−A2)配列番号4のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L1−A3)配列番号4のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(L2−A)下記(L2−A1)、(L2−A2)または(L2−A3)のアミノ酸配列
(L2−A1)配列番号5のアミノ酸配列
(L2−A2)配列番号5のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L2−A3)配列番号5のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(L3−A)下記(L3−A1)、(L3−A2)または(L3−A3)のアミノ酸配列
(L3−A1)配列番号6のアミノ酸配列
(L3−A2)配列番号6のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L3−A3)配列番号6のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(E)下記(3)の重鎖可変領域と上記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(3)重鎖相補性決定領域(CDRH)1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1−E)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2−E)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3−E)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1−E)下記(H1−E1)、(H1−E2)または(H1−E3)のアミノ酸配列
(H1−E1)配列番号24のアミノ酸配列
(H1−E2)配列番号24のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H1−E3)配列番号24のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H2−E)下記(H2−E1)、(H2−E2)または(H2−E3)のアミノ酸配列
(H2−E1)配列番号25のアミノ酸配列
(H2−E2)配列番号25のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H2−E3)配列番号25のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H3−E)下記(H3−E1)、(H3−E2)または(H3−3)のアミノ酸配列
(H3−E1)配列番号26のアミノ酸配列
(H3−E2)配列番号26のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H3−E3)配列番号26のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
8.前記標識物質保持部は、さらに、下記(D)の抗体またはその抗原結合断片を含有し、
前記検出部は、さらに、下記(E)の抗体またはその抗原結合断片を含有する、前記1〜6のいずれか1に記載の免疫クロマト分析装置。
(D)下記(1)の重鎖可変領域と下記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(1)下記(H−D)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H−D)下記(H−D1)、(H−D2)または(H−D3)のアミノ酸配列
(H−D1)配列番号27のアミノ酸配列
(H−D2)配列番号27のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H−D3)配列番号27のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(2)下記(L−A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む軽鎖可変領域
(L−A)下記(L−A1)、(L−A2)または(L−A3)のアミノ酸配列
(L−A1)配列番号14のアミノ酸配列
(L−A2)配列番号14のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L−A3)配列番号14のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(E)下記(3)の重鎖可変領域と上記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(3)下記(H−E)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H−E)下記(H−E1)、(H−E2)または(H−E3)のアミノ酸配列
(H−E1)配列番号28のアミノ酸配列
(H−E2)配列番号28のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H−E3)配列番号28のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
9.前記標識物質保持部は、さらに、下記(D)の抗体またはその抗原結合断片を含有し、
前記検出部は、さらに、下記(E)の抗体またはその抗原結合断片を含有する、前記1〜6のいずれか1に記載の免疫クロマト分析装置。
(D)下記(1)の重鎖と下記(2)の軽鎖とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(1)下記(HD)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HD)下記(HD1)、(HD2)または(HD3)のアミノ酸配列
(HD1)配列番号29のアミノ酸配列
(HD2)配列番号29のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HD3)配列番号29のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(2)下記(LA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む軽鎖
(LA)下記(LA1)、(LA2)または(LA3)のアミノ酸配列
(LA1)配列番号18のアミノ酸配列
(LA2)配列番号18のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(LA3)配列番号18のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(E)下記(3)の重鎖と上記(2)の軽鎖とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体
(3)下記(HE)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HE)下記(HE1)、(HE2)または(HE3)のアミノ酸配列
(HE1)配列番号30のアミノ酸配列
(HE2)配列番号30のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HE3)配列番号30のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
10.前記(D)の抗体またはその抗原結合断片、および、前記(E)の抗体またはその抗原結合断片が、ECSA型、Asian型、及びWA型の少なくともいずれか1の遺伝子型を有するチクングニアウイルスに特異的に結合する、前記7〜9のいずれか1に記載の免疫クロマト分析装置。
11.前記標識物質保持部における前記抗体(A)の抗体またはその抗原結合断片と、前記抗体(D)の抗体またはその抗原結合断片と、の含有比率(質量)が1:2〜2:1である、前記7〜10のいずれか1に記載の免疫クロマト分析装置。
12.前記試料添加部に添加する試料が、チクングニアウイルス感染者の全血、血清、血漿、精液、および髄液のいずれか1である、前記1〜11のいずれか1に記載の免疫クロマト分析装置。
13.前記1〜12のいずれか1に記載の免疫クロマト分析装置と、検体を希釈して展開するための検体希釈液とを含む、免疫クロマト分析キット。
14.以下の工程(1)〜(4)を含む、前記13に記載の免疫クロマト分析キットを用いて検体に含まれるチクングニアウイルスを検出する免疫クロマト分析方法。
(1)検体希釈液により検体を希釈した検体含有液を試料添加部に添加する工程
(2)標識物質保持部に保持されている、前記(A)の抗体またはその抗原結合断片により前記チクングニアウイルスを認識させる工程
(3)前記検体および前記(A)の抗体またはその抗原結合断片を移動相としてクロマトグラフ媒体部に展開させる工程
(4)展開された移動相中のチクングニアウイルスを、検出部に含まれる前記(B)の抗体またはその抗原結合断片および前記(C)の抗体またはその抗原結合断片により検出する工程
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る免疫クロマト分析装置を用いることによって、遺伝子型の異なる種々のチクングニアウイルス、および構造タンパク質の一部に変異を起こしたチクングニアウイルスであっても、迅速かつ高感度に検出することができる。また、チクングニアウイルス以外の他のウイルス(例えば、シンドビスウイルス)との交叉反応性が低く、チクングニアウイルスを特異的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態の免疫クロマト分析装置の構造を説明するための断面図である。
図2図2は、本発明の実施例及び比較例の免疫クロマト分析装置を用いてチクングニアウイルス(ECSA型、Asian型)の測定した結果を示すグラフである。
図3図3は、本発明の実施例及び比較例の免疫クロマト分析装置を用いてチクングニアウイルス(WA型)の測定した結果を示すグラフである。
図4図4は、本発明の実施例及び比較例の免疫クロマト分析装置を用いて、野生型(WT)および変異型(MT)のチクングニアウイルス(ECSA型)の測定した結果を示すグラフである。
図5図5は、本発明の実施例及び比較例の免疫クロマト分析装置を用いて、野生型(WT)および変異型(MT)のチクングニアウイルス(Asian型)の測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る免疫クロマト分析装置は、前述のとおり、標識物質保持部が前記(A)の抗体またはその抗原結合断片を含有し、検出部が前記(B)の抗体またはその抗原結合断片、及び前記(C)の抗体またはその抗原結合断片を含有することを特徴とする。本発明に係る免疫クロマト分析装置は、標識物質保持部および検出部に、前記特定の組み合わせの抗体またはその抗原結合断片を有することで、遺伝子型の異なる種々のチクングニアウイルスや、構造タンパク質の一部に変異を起こしたチクングニアウイルスであっても、迅速かつ高感度に検出することができ、さらに、チクングニアウイルス以外の他のウイルス(例えば、シンドビスウイルス)との交叉反応性が低く、チクングニアウイルスを特異的に検出することができるというものである。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0015】
(検体)
本発明に係る免疫クロマト分析装置に適用できる検体(以下、検体試料または単に試料ということもある)の由来は、特に制限されず、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト動物等があげられ、前記非ヒト動物は、前述のように、例えば、マウス、ラット、イヌ、サル、ウサギ、ヒツジ、ウマ等の哺乳類や媒介動物としてネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等の節足動物があげられる。
【0016】
前記検体の種類は、特に制限はされず、例えば、生体から分離した、体液、尿、体液由来細胞、器官、組織または細胞等の生体試料があげられる。前記体液は、例えば、血液、滑液等の体腔液、リンパ液、組織液等があげられ、具体例として、例えば、全血、血清、血漿、精液、髄液等があげられる。前記生体試料は、全血、血清、血漿、精液、髄液が好ましく、より好ましくは、血清または血漿である。前記試料は、例えば、採取した試料を、そのまま本発明に使用してもよいし、液体等による希釈等の他の処理を実施した上で使用してもよい。前記液体は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液、培地等があげられる。また、前記試料は、例えば、予め酸処理してもよい。これにより、例えば、前記試料中のチクングニアウイルスと抗体等とが抗原抗体複合体を形成している際に、前記抗体等とチクングニアウイルスとを解離できるため、より感度よくチクングニアウイルスを検出できる。前記酸処理に用いる酸は、特に制限されず、例えば、塩酸等があげられる。
【0017】
(抗体またはその抗原結合断片)
本発明に係る免疫クロマト分析装置は、前述のとおり、標識物質保持部が前記(A)の抗体またはその抗原結合断片を含有し、検出部が前記(B)の抗体またはその抗原結合断片、及び前記(C)の抗体またはその抗原結合断片を含有する。
【0018】
前記抗体等またはその抗原結合断片(以下、抗体等ともいう)は、前述のように、ECSA型CHIKV、WA型CHIKV、およびAsian型CHIKVの少なくともいずれか1の遺伝子型を有するチクングニアウイルスに特異的に結合する。前記ECSA型CHIKV、前記WA型CHIKV、および前記Asian型CHIKVは、例えば、下記参考文献1を参照して分類できる。前記抗体等は、より具体的には、例えば、ECSA型CHIKVのエンベロープ糖タンパク質(以下、「Envタンパク質」ともいう)、WA型CHIKVのEnvタンパク質、およびAsian型CHIKVのEnvタンパク質に結合する。前記Envタンパク質は、例えば、CHIKVのエンベロープタンパク質を意味する。前記Envタンパク質は、例えば、6K−E1タンパク質、E2タンパク質、およびE3タンパク質から構成されるため、E3−E2−6K−E1タンパク質ともいう。CHIKVのEnvタンパク質のアミノ酸配列は、例えば、既存のデータベースに登録されている情報を参照できる。具体例として、ECSA型CHIKV由来Envタンパク質は、例えば、NCBIアクセッション番号BAP74220.1で登録されているアミノ酸配列において、268番目から1247番目の下記のアミノ酸配列(配列番号31)があげられる。WA型CHIKV由来Envタンパク質は、例えば、NCBIアクセッション番号AAU43881.1で登録されているアミノ酸配列において、268番目から1247番目の下記のアミノ酸配列(配列番号32)があげられる。Asian型CHIKV由来Envタンパク質は、例えば、NCBIアクセッション番号ADG95938.1で登録されているアミノ酸配列において、268番目から1247番目の下記のアミノ酸配列(配列番号33)があげられる。
参考文献1:Aekkachai Tuekprakhon et.al.,“Variation at position 350 in the Chikungunya virus 6K−E1 protein determines the sensitivity of detection in a rapid E1−antigen test”,Scientific Report,vol.8,Article Number:1094,2018
【0019】
CSA型CHIKV由来Envタンパク質(配列番号31)
MCLLANTTFPCSQPPCTPCCYEKEPEETLRMLEDNVMRPGYYQLLQASLTCSPHRQRRSTKDNFNVYKATRPYLAHCPDCGEGHSCHSPVALERIRNEATDGTLKIQVSLQIGIKTDDSHDWTKLRYMDNHMPADAERAGLFVRTSAPCTITGTMGHFILARCPKGETLTVGFTDSRKISHSCTHPFHHDPPVIGREKFHSRPQHGKELPCSTYVQSTAATTEEIEVHMPPDTPDRTLMSQQSGNVKITVNGQTVRYKCNCGGSNEGLTTTDKVINNCKVDQCHAAVTNHKKWQYNSPLVPRNAELGDRQGKIHIPFPLANVTCRVPKARNPTVTYGKNQVIMLLYPDHPTLLSYRNMGEEPNYQEEWVMHKKEVVLTVPTEGLEVTWGNNEPYKYWPQLSTNGTAHGHPHEIILYYYELYPTMTVVVVSVATFILLSMVGMAAGMCMCARRRCITPYELTPGATVPFLLSLICCIRTAKAATYQEAAIYLWNEQQPLFWLQALIPLAALIVLCNCLRLLPCCCKTLAFLAVMSVGAHTVSAYEHVTVIPNTVGVPYKTLVNRPGYSPMVLEMELLSVTLEPTLSLDYITCEYKTVIPSPYVKCCGTAECKDKNLPDYSCKVFTGVYPFMWGGAYCFCDAENTQLSEAHVEKSESCKTEFASAYRAHTASASAKLRVLYQGNNITVTAYANGDHAVTVKDAKFIVGPMSSAWTPFDNKIVVYKGDVYNMDYPPFGAGRPGQFGDIQSRTPESKDVYANTQLVLQRPAVGTVHVPYSQAPSGFKYWLKERGASLQHTAPFGCQIATNPVRAVNCAVGNMPISIDIPAAFTRVVDAPSLTDMSCEVPACTHSSDFGGVAIIKYAASKKGKCAVHSMTNAVTIREAEIEVEGNSQLQISFSTALASAEFRVQVCSTQVHCAAECHPPKDHIVNYPASHTTLGVQDISATAMSWVQKITGGVGLVVAVAALILIVVLCVSFSRH
【0020】
WA型CHIKV由来Envタンパク質(配列番号32)
LCLLANTTFPCSQPPCTPCCYEKEPESTLRMLEDNVMRPGYYQLLKASLTCSPHRQRRSTKDNFNVYKATRPYLAHCPDCGEGHSCHSPIALERIRNEATDGTLKIQVSLQIGIKTDDSHDWTKLRYMDSHTPADAERAGLLVRTSAPCTITGTMGHFILARCPKGETLTVGFTDSRKISHTCTHPFHHEPPVIGRERFHSRPQHGKELPCSTYVQSTAATAEEIEVHMPPDTPDRTLMTQQSGNVKITVNGQTVRYKCNCGGSNEGLTTTDKVINNCKIDQCHAAVTNHKNWQYNSPLVPRNAELGDRKGKIHIPFPLANVTCRVPKARNPTVTYGKNQVTMLLYPDHPTLLSYRNMGQEPNYHEEWVTHKKEVTLTVPTEGLEVTWGNNEPYKYWPQMSTNGTAHGHPHEIILYYYELYPTMTVVIVSVASFVLLSMVGTAVGMCVCARRRCITPYELTPGATVPFLLSLLCCVRTTKAATYYEAAAYLWNEQQPLFWLQALIPLAALIVLCNCLKLLPCCCKTLAFLAVMSIGAHTVSAYEHVTVIPNTVGVPYKTLVNRPGYSPMVLEMELQSVTLEPTLSLDYITCEYKTVIPSPYVKCCGTAECKDKSLPDYSCKVFTGVYPFMWGGAYCFCDAENTQLSEAHVEKSESCKTEFASAYRAHTASASAKLRVLYQGNNITVAAYANGDHAVTVKDAKFVVGPMSSAWTPFDNKIVVYKGDVYNMDYPPFGAGRPGQFGDIQSRTPESKDVYANTQLVLQRPAAGTVHVPYSQAPSGFKYWLKERGASLQHTAPFGCQIATNPVRAVNCAVGNIPISIDIPAAFTRVVDAPSVTDMSCEVPACTHSSDFGGVAIIKYTASKKGKCAVHSMTNAVTIREADVEVEGNSQLQISFSTALASAEFRVQVCSTQVHCAAACHPPKDHIVNYPASHTTLGVQDISTTAMSWVQKITGGVGLIVAVAALILIVVLCVSFSRH
【0021】
Asian型CHIKV由来Envタンパク質(配列番号33)
MCLLANTTFPCSQPPCTPCCYEKEPEKTLRMLEDNVMSPGYYQLLQASLTCSPRRQRRSIKDNFNVYKATRPYLAHCPDCGEGHSCHSPVALERIRNEATDGTLKIQVSLQIGIKTDDSHDWTKLRYMDNHMPADAERAGLFVRTSAPCTITGTMGHFILARCPKGETLTVGFTDGRKISHSCTHPFHHDPPVIGREKFHSRPQHGRELPCSTYAQSTAATAEEIEVHMPPDTPDRTLMSQQSGNVKITVNSQTVRYKCNCGDSNEGLTTTDKVINNCKVDQCHAAVTNHKKWQYNSPLVPRNAELGDRKGKVHIPFPLANVTCRVPKARNPTVTYGKNQVIMLLYPDHPTLLSYRNMGEEPNYQEEWVTHKKEIRLTVPTEGLEVTWGNNEPYKYWPQLSTNGTAHGHPHEIILYYYELYPTMTVVVVSVASFVLLSMVGVAVGMCMCARRRCITPYELTPGATVPFLLSLICCIRTAKAATYQEAAVYLWNEQQPLFWLQALIPLAALIVLCNCLRLLPCCCKTLTFLAVLSVGAHTVSAYEHVTVIPNTVGVPYKTLVNRPGYSPMVLEMELLSVTLEPTLSLDYITCEYKTVIPSPYVKCCGTAECKDKSLPDYSCKVFTGVYPFMWGGAYCFCDTENTQLSEAHVEKSESCKTEFASAYRAHTASASAKLRVLYQGNNVTVSAYANGDHAVTVKDAKFIVGPMSSAWTPFDNKIVVYKGDVYNMDYPPFGAGRPGQFGDIQSRTPESEDVYANTQLVLQRPSAGTVHVPYSQAPSGFKYWLKERGASLQHTAPFGCQIATNPVRAMNCAVGNMPISIDIPAAFTRVVDAPSLTDMSCEVSACTHSSDFGGVAIIKYAASKKGKCAVHSMTNAVTIREAEIEVEGNSQLQISFSTALASAEFRVQVCSTQVHCAAECHPPKDHIVNYPASHTTLGVQDISATAMSWVQKITGGVGLVVAVAALILIVVLCVSFSRH
【0022】
前記抗体等は、CHIKV、より具体的には、前記Envタンパク質の全長アミノ酸配列からなるタンパク質に結合する抗体の他に、例えば、前記Envタンパク質のペプチド断片に結合する抗体の意味も含む。また、前記Envタンパク質は、例えば、前記配列番号31のアミノ酸配列における826番目(E1タンパク質の284番目、6K−E1タンパク質の350番目)のアミノ酸と対応するアミノ酸(配列番号31では、下線で示すグルタミン酸(E))が、アスパラギン酸(D)に置換された変異Envタンパク質(E350D)を含む。また、前記Envタンパク質は、例えば、前記配列番号32または33のアミノ酸配列における826番目(E1タンパク質の284番目、6K−E1タンパク質の350番目)のアミノ酸と対応するアミノ酸(配列番号32または33では、下線で示すアスパラギン酸(D))が、グルタミン酸(E)に置換された変異Envタンパク質(D350E)を含む。以下、前記Envタンパク質は、特に示さない限り、例えば、全長アミノ酸配列からなる、Envタンパク質、変異Envタンパク質(E350D)、または変異Envタンパク質(D350E)の他に、これらのペプチド断片の意味も含む。
【0023】
前記抗体等は、例えば、分子構造がイムノグロブリンである、いわゆる「抗体」でもよいし、その抗原結合断片でもよい。前記抗体等は、前述の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を有していればよい。抗体の場合、例えば、そのイムノグロブリンクラスおよびアイソタイプは、特に制限されない。前記イムノグロブリンクラスは、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE等があげられる。前記IgGは、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4等があげられる。
【0024】
前記抗体は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト(例えば、完全ヒト)抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、多特異的抗体等であってもよい。
【0025】
本発明における「抗原結合断片」は、前記抗体の一部分、例えば、部分断片であり、且つ、前記チクングニアウイルスを認識(結合)するものを意味する。前記抗原結合断片は、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、二重特異性抗体およびこれらの重合体等があげられる。
【0026】
前記抗体等は、前述の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の他に、例えば、定常領域を有してもよく、前記定常領域は、例えば、ヒト定常領域、またはマウス定常領域である。抗体(イムノグロブリン)の場合、重鎖の定常領域は、例えば、CH1、CH2、およびCH3という領域を含み、軽鎖の定常領域は、例えば、CLという領域を含む。本発明における抗体等が前記定常領域を有する場合、例えば、前記重鎖可変領域は、CH1、CH2、およびCH3の少なくとも1つと結合し、前記軽鎖可変領域は、前記CLと結合しており、前記重鎖可変領域は、例えば、CH1と直接結合している。
【0027】
一般に、抗体分子の重鎖および軽鎖は、それぞれ、3箇所の相補性決定領域(CDR:Complementarity determining region)を有している。CDRは、超可変領域(hypervariable domain)ともいう。CDRは、前記重鎖および軽鎖の可変領域でも、特に一次構造の変異性が高い領域であり、一次構造上において、通常、3箇所に分離している。本発明においては、重鎖における3ヶ所のCDRを、重鎖のアミノ酸配列におけるアミノ末端側から、重鎖CDR1(CDRH1)、重鎖CDR2(CDRH2)、および重鎖CDR3(CDRH3)と表し、軽鎖における3ヶ所のCDRを、軽鎖のアミノ酸配列におけるアミノ末端側から、軽鎖CDR1(CDRL1)、軽鎖CDR2(CDRL2)、および軽鎖CDR3(CDRL3)と表す。これらの部位は、立体構造の上で相互に近接し、結合する抗原に対する特異性を決定している。
【0028】
以下、前記(A)の抗体について説明する。
本発明の一の実施態様において、前記(A)の抗体は、下記(1)の重鎖可変領域と下記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体である。
【0029】
(1)重鎖相補性決定領域(CDRH)1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1−A)下記(H1−A1)、(H1−A2)または(H1−A3)のアミノ酸配列
(H1−A1)配列番号1のアミノ酸配列
(H1−A2)配列番号1のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H1−A3)配列番号1のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H2−A)下記(H2−A1)、(H2−A2)または(H2−A3)のアミノ酸配列
(H2−A1)配列番号2のアミノ酸配列
(H2−A2)配列番号2のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H2−A3)配列番号2のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H3−A)下記(H3−A1)、(H3−A2)または(H3−A3)のアミノ酸配列
(H3−A1)配列番号3のアミノ酸配列
(H3−A2)配列番号3のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H3−A3)配列番号3のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(2)軽鎖相補性決定領域(CDRL)1、CDRL2、およびCDRL3を含み、
CDRL1が、下記(L1−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRL2が、下記(L2−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRL3が、下記(L3−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである軽鎖可変領域
(L1−A)下記(L1−A1)、(L1−A2)または(L1−A3)のアミノ酸配列
(L1−A1)配列番号4のアミノ酸配列
(L1−A2)配列番号4のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L1−A3)配列番号4のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(L2−A)下記(L2−A1)、(L2−A2)または(L2−A3)のアミノ酸配列
(L2−A1)配列番号5のアミノ酸配列
(L2−A2)配列番号5のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L2−A3)配列番号5のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(L3−A)下記(L3−A1)、(L3−A2)または(L3−A3)のアミノ酸配列
(L3−A1)配列番号6のアミノ酸配列
(L3−A2)配列番号6のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L3−A3)配列番号6のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0030】
前記各CDRにおいて、「同一性」は、例えば、比較する配列同士を適切にアライメントしたときの同一性の程度であり、前記配列間のアミノ酸の正確な一致の出現率(%)を意味する。前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。前記同一性は、例えば、BLAST、FASTA等の解析ソフトウェアを用いて、デフォルトのパラメータにより算出できる(以下、同様)。
【0031】
前記各CDRにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個、1個である。
【0032】
前記アミノ酸の置換は、例えば、保存的置換であってもよい(以下、同様)。前記保存的置換は、タンパク質の機能を実質的に改変しないように、1個または数個のアミノ酸を、他のアミノ酸および/またはアミノ酸誘導体に置換することを意味する。「置換するアミノ酸」と「置換されるアミノ酸」とは、例えば、性質および/または機能が類似していることが好ましい。具体的には、例えば、疎水性および親水性の指標(ハイドロパシー)、極性、電荷等の化学的性質、または、二次構造等の物理的性質等が類似していることが好ましい。前記性質および/または機能が類似するアミノ酸またはアミノ酸誘導体は、例えば、当該技術分野において公知である。具体例として、非極性アミノ酸(疎水性アミノ酸)は、例えば、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニン等があげられ、極性アミノ酸(中性アミノ酸)は、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システイン等があげられ、陽電荷を有するアミノ酸(塩基性アミノ)酸は、アルギニン、ヒスチジン、リジン等があげられ、負電荷を有するアミノ酸(酸性アミノ酸)は、アスパラギン酸、グルタミン酸等があげられる。
【0033】
本発明の一の実施態様において、前記(A)の抗体は、下記(1)の重鎖可変領域と下記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体である。
(1)下記(H−A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H−A)下記(H−A1)、(H−A2)または(H−A3)のアミノ酸配列
(H−A1)配列番号13のアミノ酸配列
(H−A2)配列番号13のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H−A3)配列番号13のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(2)下記(L−A)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む軽鎖可変領域
(L−A)下記(L−A1)、(L−A2)または(L−A3)のアミノ酸配列
(L−A1)配列番号14のアミノ酸配列
(L−A2)配列番号14のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L−A3)配列番号14のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0034】
前記重鎖可変領域のポリペプチドおよび前記軽鎖可変領域のポリペプチドにおいて、前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0035】
前記重鎖可変領域のポリペプチドおよび前記軽鎖可変領域のポリペプチドにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個、1個である。
【0036】
本発明の一の実施態様において、前記(A)の抗体は、下記(1)の重鎖と下記(2)の軽鎖とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体である。
(1)下記(HA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HA)下記(HA1)、(HA2)または(HA3)のアミノ酸配列
(HA1)配列番号17のアミノ酸配列
(HA2)配列番号17のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HA3)配列番号17のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(2)下記(LA)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む軽鎖
(LA)下記(LA1)、(LA2)または(LA3)のアミノ酸配列
(LA1)配列番号18のアミノ酸配列
(LA2)配列番号18のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(LA3)配列番号18のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0037】
前記重鎖のポリペプチドおよび前記軽鎖のポリペプチドにおいて、前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0038】
前記重鎖のポリペプチドおよび前記軽鎖のポリペプチドにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1〜80個、1〜60個、1〜40個、1〜30個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個、1個である。
【0039】
つぎに、前記(B)の抗体について説明する。
本発明の一の実施態様において、前記(B)の抗体は、下記(3)の重鎖可変領域と上記(2)の各CDRを有する軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体である。
【0040】
(3)重鎖相補性決定領域(CDRH)1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1−B)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2−B)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3−B)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1−B)下記(H1−B1)、(H1−B2)または(H1−B3)のアミノ酸配列
(H1−B1)配列番号7のアミノ酸配列
(H1−B2)配列番号7のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H1−B3)配列番号7のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H2−B)下記(H2−B1)、(H2−B2)または(H2−B3)のアミノ酸配列
(H2−B1)配列番号8のアミノ酸配列
(H2−B2)配列番号8のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H2−B3)配列番号8のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H3−B)下記(H3−B1)、(H3−B2)または(H3−B3)のアミノ酸配列
(H3−B1)配列番号9のアミノ酸配列
(H3−B2)配列番号9のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H3−B3)配列番号9のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0041】
前記各CDRにおいて、「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0042】
前記各CDRにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個、1個である。
【0043】
本発明の一の実施態様において、前記(B)の抗体は、下記(3)の重鎖可変領域と上記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体である。
(3)下記(H−B)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H−B)下記(H−B1)、(H−B2)または(H−B3)のアミノ酸配列
(H−B1)配列番号15のアミノ酸配列
(H−B2)配列番号15のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H−B3)配列番号15のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0044】
前記重鎖可変領域のポリペプチドおよび前記軽鎖可変領域のポリペプチドにおいて、前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0045】
前記重鎖可変領域のポリペプチドおよび前記軽鎖可変領域のポリペプチドにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個、1個である。
【0046】
本発明の一の実施態様において、前記(B)の抗体は、下記(3)の重鎖と上記(2)の軽鎖とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体である。
(3)下記(HB)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HB)下記(HB1)、(HB2)または(HB3)のアミノ酸配列
(HB1)配列番号19のアミノ酸配列
(HB2)配列番号19のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HB3)配列番号19のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0047】
前記重鎖のポリペプチドおよび前記軽鎖のポリペプチドにおいて、前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0048】
前記重鎖のポリペプチドおよび前記軽鎖のポリペプチドにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1〜80個、1〜60個、1〜40個、1〜30個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個、1個である。
【0049】
つぎに、前記(C)の抗体について説明する。
本発明の一の実施態様において、前記(C)の抗体は、下記(4)の重鎖可変領域と上記(2)の各CDRを有する軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体である。
【0050】
(4)CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1−C)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2−C)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3−C)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1−C)下記(H1−C1)、(H1−C2)または(H1−C3)のアミノ酸配列
(H1−C1)配列番号10のアミノ酸配列
(H1−C2)配列番号10のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H1−C3)配列番号10のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H2−C)下記(H2−C1)、(H2−C2)または(H2−C3)のアミノ酸配列
(H2−C1)配列番号11のアミノ酸配列
(H2−C2)配列番号11のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H2−C3)配列番号11のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H3−C)下記(H3−C1)、(H3−C2)または(H3−C3)のアミノ酸配列
(H3−C1)配列番号12のアミノ酸配列
(H3−C2)配列番号12のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H3−C3)配列番号12のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0051】
前記各CDRにおいて、「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0052】
前記各CDRにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個、1個である。
【0053】
本発明の一の実施態様において、前記(C)の抗体は、下記(4)の重鎖可変領域と上記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体である。
(4)下記(H−C)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H−C)下記(H−C1)、(H−C2)または(H−C3)のアミノ酸配列
(H−C1)配列番号16のアミノ酸配列
(H−C2)配列番号16のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H−C3)配列番号16のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0054】
前記重鎖可変領域のポリペプチドおよび前記軽鎖可変領域のポリペプチドにおいて、前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0055】
前記重鎖可変領域のポリペプチドおよび前記軽鎖可変領域のポリペプチドにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個、1個である。
【0056】
本発明の一の実施態様において、前記(C)の抗体は、下記(4)の重鎖と上記(2)の軽鎖とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体である。
(4)下記(HC)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HC)下記(HC1)、(HC2)または(HC3)のアミノ酸配列
(HC1)配列番号20のアミノ酸配列
(HC2)配列番号20のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HC3)配列番号20のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0057】
前記重鎖のポリペプチドおよび前記軽鎖のポリペプチドにおいて、前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0058】
前記重鎖のポリペプチドおよび前記軽鎖のポリペプチドにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1〜80個、1〜60個、1〜40個、1〜30個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個、1個である。
【0059】
前記(A)の抗体またはその抗原結合断片、前記(B)の抗体またはその抗原結合断片、および、前記(C)の抗体またはその抗原結合断片は、ECSA型、Asian型、及びWA型の少なくともいずれか1の遺伝子型を有するチクングニアウイルスに特異的に結合する。
【0060】
つぎに、前記(D)の抗体について説明する。
本発明の一の実施態様において、前記(D)の抗体は、下記(1)の重鎖可変領域と下記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体である。
【0061】
(1)重鎖相補性決定領域(CDRH)1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1−D)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2−D)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3−D)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1−D)下記(H1−D1)、(H1−D2)または(H1−D3)のアミノ酸配列
(H1−D1)配列番号21のアミノ酸配列
(H1−D2)配列番号21のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H1−D3)配列番号21のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H2−D)下記(H2−D1)、(H2−D2)または(H2−D3)のアミノ酸配列
(H2−D1)配列番号22のアミノ酸配列
(H2−D2)配列番号22のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H2−D3)配列番号22のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H3−D)下記(H3−D1)、(H3−D2)または(H3−D3)のアミノ酸配列
(H3−D1)配列番号23のアミノ酸配列
(H3−D2)配列番号23のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H3−D3)配列番号23のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(2)軽鎖相補性決定領域(CDRL)1、CDRL2、およびCDRL3を含み、
CDRL1が、下記(L1−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRL2が、下記(L2−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRL3が、下記(L3−A)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである軽鎖可変領域
(L1−A)下記(L1−A1)、(L1−A2)または(L1−A3)のアミノ酸配列
(L1−A1)配列番号4のアミノ酸配列
(L1−A2)配列番号4のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L1−A3)配列番号4のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(L2−A)下記(L2−A1)、(L2−A2)または(L2−A3)のアミノ酸配列
(L2−A1)配列番号5のアミノ酸配列
(L2−A2)配列番号5のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L2−A3)配列番号5のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(L3−A)下記(L3−A1)、(L3−A2)または(L3−A3)のアミノ酸配列
(L3−A1)配列番号6のアミノ酸配列
(L3−A2)配列番号6のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L3−A3)配列番号6のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0062】
前記各CDRにおいて、「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0063】
前記各CDRにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個、1個である。
【0064】
本発明の一の実施態様において、前記(D)の抗体は、下記(1)の重鎖可変領域と下記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体である。
(1)下記(H−D)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H−D)下記(H−D1)、(H−D2)または(H−D3)のアミノ酸配列
(H−D1)配列番号27のアミノ酸配列
(H−D2)配列番号27のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H−D3)配列番号27のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(2)下記(L−D)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む軽鎖可変領域
(L−D)下記(L−D1)、(L−D2)または(L−D3)のアミノ酸配列
(L−D1)配列番号14のアミノ酸配列
(L−D2)配列番号14のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(L−D3)配列番号14のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0065】
前記重鎖可変領域のポリペプチドおよび前記軽鎖可変領域のポリペプチドにおいて、前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0066】
前記重鎖可変領域のポリペプチドおよび前記軽鎖可変領域のポリペプチドにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個、1個である。
【0067】
本発明の一の実施態様において、前記(D)の抗体は、下記(1)の重鎖と下記(2)の軽鎖とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体である。
(1)下記(HD)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HD)下記(HD1)、(HD2)または(HD3)のアミノ酸配列
(HD1)配列番号29のアミノ酸配列
(HD2)配列番号29のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HD3)配列番号29のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(2)下記(LD)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む軽鎖
(LD)下記(LD1)、(LD2)または(LD3)のアミノ酸配列
(LD1)配列番号18のアミノ酸配列
(LD2)配列番号18のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(LD3)配列番号18のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0068】
前記重鎖のポリペプチドおよび前記軽鎖のポリペプチドにおいて、前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0069】
前記重鎖のポリペプチドおよび前記軽鎖のポリペプチドにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1〜80個、1〜60個、1〜40個、1〜30個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個、1個である。
【0070】
以下、前記(E)の抗体について説明する。
本発明の一の実施態様において、前記(E)の抗体は、下記(3)の重鎖可変領域と上記(2)の各CDRを有する軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体である。
【0071】
(3)重鎖相補性決定領域(CDRH)1、CDRH2、およびCDRH3を含み、
CDRH1が、下記(H1−E)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH2が、下記(H2−E)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、
CDRH3が、下記(H3−E)のアミノ酸配列を含むポリペプチドである重鎖可変領域
(H1−E)下記(H1−E1)、(H1−E2)または(H1−E3)のアミノ酸配列
(H1−E1)配列番号24のアミノ酸配列
(H1−E2)配列番号24のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H1−E3)配列番号24のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H2−E)下記(H2−E1)、(H2−E2)または(H2−E3)のアミノ酸配列
(H2−E1)配列番号25のアミノ酸配列
(H2−E2)配列番号25のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H2−E3)配列番号25のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
(H3−E)下記(H3−E1)、(H3−E2)または(H3−E3)のアミノ酸配列
(H3−E1)配列番号26のアミノ酸配列
(H3−E2)配列番号26のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H3−E3)配列番号26のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0072】
前記各CDRにおいて、「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0073】
前記各CDRにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個、1個である。
【0074】
本発明の一の実施態様において、前記(E)の抗体は、下記(3)の重鎖可変領域と上記(2)の軽鎖可変領域とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体である。
(3)下記(H−E)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖可変領域
(H−E)下記(H−E1)、(H−E2)または(H−E3)のアミノ酸配列
(H−E1)配列番号28のアミノ酸配列
(H−E2)配列番号28のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(H−E3)配列番号28のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0075】
前記重鎖可変領域のポリペプチドおよび前記軽鎖可変領域のポリペプチドにおいて、前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0076】
前記重鎖可変領域のポリペプチドおよび前記軽鎖可変領域のポリペプチドにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個、1個である。
【0077】
本発明の一の実施態様において、前記(E)の抗体は、下記(3)の重鎖と上記(2)の軽鎖とを含む、チクングニアウイルスに対する抗体である。
(3)下記(HE)のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む重鎖
(HE)下記(HE1)、(HE2)または(HE3)のアミノ酸配列
(HE1)配列番号30のアミノ酸配列
(HE2)配列番号30のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
(HE3)配列番号30のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列
【0078】
前記重鎖のポリペプチドおよび前記軽鎖のポリペプチドにおいて、前記「同一性」は、それぞれ、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0079】
前記重鎖のポリペプチドおよび前記軽鎖のポリペプチドにおいて、置換等に関する「1個または数個」は、それぞれ、例えば、1〜80個、1〜60個、1〜40個、1〜30個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個、1個である。
【0080】
前記(D)の抗体またはその抗原結合断片、および、前記(E)の抗体またはその抗原結合断片は、ECSA型、Asian型、及びWA型の少なくともいずれか1の遺伝子型を有するチクングニアウイルスに特異的に結合する。
【0081】
本発明において、前記配列番号1〜30のアミノ酸配列は、例えば、マウス由来のアミノ酸配列である。
【0082】
前記抗体等の製造方法は、特に制限されず、例えば、前述のアミノ酸配列情報に基づいて、遺伝子工学的に製造することができる。具体的には、例えば、以下のようにして行うことができる。なお、本発明は、この例示には限定されない。
【0083】
まず、前記抗体等における、前記各領域、前記重鎖、および/または軽鎖のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むベクターを宿主に導入し、形質転換体を得る。そして、前記形質転換体を培養し、前記チクングニアウイルス、具体的には、Envタンパク質に結合する抗体を含む画分を回収し、得られた回収画分から、前記抗体を単離または精製する。
【0084】
前記ベクターとしては、例えば、前記重鎖可変領域をコードする核酸配列を含むベクター、前記軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含むベクター、前記重鎖をコードする核酸配列を含むベクター、前記軽鎖をコードする核酸配列を含むベクター等があげられる。前記宿主は、特に制限されず、前記ベクターを導入でき、前記ベクター内の前記核酸配列を発現できるものであればよい。前記宿主としては、例えば、HEK細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、SP2/0細胞等の哺乳類細胞等があげられる。前記ベクターを宿主に導入する方法は、特に制限されず、公知の方法が採用できる。
【0085】
前記形質転換体の培養方法は、特に制限されず、前記宿主の種類に応じて、適宜決定できる。前記抗体を含む画分は、例えば、培養した前記形質転換体を破砕し、液体画分として回収できる。前記抗体の単離または精製は、特に制限されず、公知の方法が採用できる。
【0086】
本発明において、前記抗体は、例えば、モノクローナル抗体である。前記モノクローナル抗体は、例えば、動物への免疫により得られるモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体(完全ヒト抗体ともいう)等があげられる。
【0087】
前記キメラ抗体は、ヒト以外の動物由来抗体の可変領域と、ヒト抗体の定常領域とを連結した抗体である。前記キメラ抗体は、例えば、以下のようにして作製できる。まず、ヒト以外の動物由来のモノクローナル抗体について、チクングニアウイルス、具体的には、Envタンパク質と結合する可変領域(V領域)の遺伝子を調製し、前記可変領域の遺伝子と、ヒト抗体の定常領域(C領域)の遺伝子とを連結し、これを、さらに発現ベクターに連結する。そして、前記発現ベクターをトランスフェクトした細胞を培養し、培養液中に分泌される目的のキメラ抗体を回収する。これによりキメラ抗体を調製できる。前記可変領域の遺伝子の由来動物は、特に制限されず、例えば、ラット、マウス等があげられる。前記キメラ抗体の製造方法は、これには制限されず、例えば、特公平3−73280号公報に記載の方法等の、公知の方法を参照して製造できる。
【0088】
前記ヒト化抗体は、前記CDRのみをヒト以外の動物由来とし、他の領域をヒト由来とする抗体である。前記ヒト化抗体は、例えば、以下のようにして製造できる。まず、ヒト以外の動物由来のモノクローナル抗体について、前記CDRの遺伝子を調製し、ヒト抗体の遺伝子、例えば、定常領域に移植(CDRグラフティング)し、これを、さらに発現ベクターに連結する。そして、前記発現ベクターをトランスフェクトした細胞を培養することによって、培養液中に、目的のCDRを移植したヒト化抗体が分泌される。分泌されるヒト化抗体を回収することによって、調製できる。前記CDRの由来動物は、特に制限されず、例えば、ラット、マウス等があげられる。ヒト化抗体の製造方法は、これには限定されず、例えば、特表平4−506458号公報および特開昭62−296890号公報等に記載の方法等の、公知の方法を参照して製造できる。
【0089】
前記ヒト抗体は、全ての領域がヒト由来の抗体である。前記ヒト抗体は、例えば、ヒト以外の動物への、ヒト抗体遺伝子の導入によって作製できる。前記ヒト抗体遺伝子を導入する動物は、例えば、ヒト抗体産生用のトランスジェニック動物が使用できる。前記動物の種類は、特に制限されず、マウス等があげられる。前記ヒト抗体の製造方法は、例えば、Nature Genetics,Vol.7,p.13−21,1994;Nature Genetics,Vol.15,p.146−156,1997;特表平4−504365号公報;特表平7−509137号公報;国際公開第1994/25585号;Nature,Vol.368,p.856−859,1994;および特表平6−500233号公報等に記載の、公知の方法を参照して製造できる。また、前記ヒト抗体は、例えば、ファージディスプレイ法を用いて製造することもでき、例えば、Marks,J.D.et al.:J.Mol.Biol.,Vol.222,p.581−597,1991等に記載の、公知の方法を参照して製造できる。
【0090】
前記抗体等は、例えば、抗原を動物に免疫することによっても調製できる。前記抗原は、例えば、チクングニアウイルス、具体的には、Envタンパク質の全長アミノ酸配列からなるタンパク質またはそのペプチド断片があげられる。前記抗原は、複数回免疫することが好ましい。この場合、各回で免疫する抗原は、例えば、異なる遺伝子型のチクングニアウイルスもしくはEnvタンパク質、またはそのペプチド断片であることが好ましい。前記ペプチド断片は、例えば、抗原決定基(エピトープ)のみからなるペプチド断片でもよいし、前記抗原決定基を含むペプチド断片でもよい。
【0091】
前記動物への免疫により得られるモノクローナル抗体は、例えば、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons(1987))、Antibodies:A Laboratory Manual,Ed.Harlow and David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory(1988))等に記載の方法等の、公知の方法を参照して製造できる。具体的には、例えば、抗原で動物を免疫し、前記免疫動物から採取した抗体産生細胞と、自己抗体産生能を欠く骨髄腫細胞(ミエローマ細胞)とを融合させ、ハイブリドーマを作製する。続いて、前記ハイブリドーマから抗体産生細胞をスクリーニングして、クローニングによりハイブリドーマの単一クローンを作製する。そして、このハイブリドーマクローンを動物に投与し、得られた腹腔からモノクローナル抗体を精製する。または、前記ハイブリドーマを培養して、その培養液からモノクローナル抗体を精製する。このように、前記ハイブリドーマクローンを作製することで、特異性が均一なモノクローナル抗体を安定に供給できる。
【0092】
前記骨髄腫細胞は、例えば、マウス、ラット、ヒト等の由来であることが好ましい。前記骨髄腫細胞と前記抗体産生細胞とは、例えば、それぞれの由来が同一種でも異種でもよいが、同一種であることが好ましい。
【0093】
(本発明に係る免疫クロマト分析装置)
次に、図面を参照しながら本発明に係る免疫クロマト分析装置の一実施形態について説明する。なお本発明において、「固定」とは、抗体等が移動しないように膜等の担体に配置されていることを意味し、「保持」とは、抗体等が膜等の担体の中または表面を移動可能に配置されることを意味する。
【0094】
本発明に係る免疫クロマト分析装置の一実施形態としては、図1に示すように、試料添加部(1)、標識物質保持部(2)、クロマトグラフ媒体部(3)、検出部(4)、吸収部(5)およびバッキングシート(6)から構成されている。
【0095】
試料添加部(1)は、免疫クロマト分析装置において、検体試料を添加する部位である。試料添加部(1)は、検体試料が迅速に吸収されるが保持力は弱く、速やかに検体試料が移動していく性質の多孔質シートで構成することができる。多孔質シートとしては、例えば、セルロース濾紙、ガラスファイバー濾紙、ポリウレタン、ポリアセテート、酢酸セルロース、ナイロン、及び綿布等が挙げられる。
【0096】
試料添加部(1)には、抗原抗体反応の促進または非特異的反応を抑制するため、緩衝液、カゼインナトリウム等の塩、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤等の界面活性剤、ポリビニルピロリドン(PVP)等の高分子化合物、ポリアニオン、窒素原子含有ビニル系水溶性高分子、抗菌剤、キレート剤等を含有させることができる。これらは、1種または2種以上を含有させてもよい。
【0097】
界面活性剤としては、HLB値13〜17の界面活性剤が好ましく使用できる。例えば、Triton X−100(商品名、ポリエチレングリコールモノ−p−イソオクチルフェニルエーテル、HLB:13.7)、Tween20(商品名、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、HLB:16.7)、Tween80(商品名、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、HLB:15.0)、Brij35(ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル、HLB:13.7)等が挙げられ、1種または2種以上を加えてもよい。試料添加部にHLB値13〜17の界面活性剤を含有させることによって、標識物質保持部及び検出部における抗原・抗体の非特異反応を抑えることができ、また検出部における被検出物質の検出感度を高めることができる。
【0098】
試料添加部(1)の単位面積当たりの界面活性剤の含有量は、通常0.25μg/cm〜8μg/cmであり、好ましくは0.5μg/cm〜5μg/cmであり、より好ましくは1μg/cm〜4μg/cmである。前記範囲であることで、抗原抗体反応の促進または非特異的反応を抑制できる。
【0099】
また、窒素原子含有ビニル系水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)等が挙げられる。試料添加部に窒素原子含有ビニル系水溶性高分子を含有させることによって、抗原と反応した不溶性担体を任意に凝集させることでシグナルの増強が可能となり、検出部における被検出物質の検出感度を高めることができる。
【0100】
試料添加部(1)の単位面積当たりの窒素原子含有ビニル系水溶性高分子の含有量は、通常0.05μg/cm〜0.5μg/cmであり、好ましくは0.1μg/cm〜0.5μg/cmであり、より好ましくは0.2μg/cm〜0.4μg/cmである。前記範囲であることで、抗原抗体反応の促進または非特異的反応を抑制できる。
【0101】
標識物質保持部(2)は、後述する標識物質を含有しており、当該標識物質は抗体等と結合した標識抗体等として標識物質保持部(2)に保持されている。標識物質と結合する抗体等の種類は、1種類に限られるものではないが、少なくとも前記(A)の抗体またはその抗原結合断片が含まれる。標識物質保持部内を検体が移動する際に、標識物質保持部に保持された標識抗体等と検体中のチクングニアウイルスとが結合する。標識物質保持部(2)には、グラスファイバーまたはセルロースの膜が通常使用される。
【0102】
標識物質保持部中の前記(A)の抗体またはその抗原結合断片の含有量は、通常0.01μg〜1μgであり、好ましくは0.075μg〜0.75μgであり、より好ましくは0.1μg〜0.5μgである。また、標識物質保持部の単位面積当たりの前記(A)の抗体またはその抗原結合断片の含有量は、通常0.01μg/cm〜1.8μg/cmであり、好ましくは0.13μg/cm〜1.4μg/cmであり、より好ましくは0.15μg/cm〜1μg/cmである。
【0103】
また、標識物質と結合する抗体には、好ましくは、前記(D)の抗体またはその抗原結合断片が含まれる。この場合、標識物質保持部中の前記(D)の抗体またはその抗原結合断片の含有量は、通常0.05μg〜1μgであり、好ましくは0.075μg〜0.75μgであり、より好ましくは0.1μg〜0.5μgである。また、標識物質保持部の単位面積当たりの前記(D)の抗体またはその抗原結合断片の含有量は、通常0.01μg/cm〜1.8μg/cmであり、好ましくは0.13μg/cm〜1.4μg/cmであり、より好ましくは0.15μg/cm〜1μg/cmである。
【0104】
また、標識物質保持部中の前記(A)の抗体またはその抗原結合断片と、前記(D)の抗体またはその抗原結合断片の含有量は、質量比で1:2〜2:1であることが好ましく、1:1であることがさらに好ましい。
【0105】
標識物質としては、一般的に酵素等も使用されるが、被検出物質の存在を目視で判定するのに適していることから、標識物質としては、不溶性担体を用いることが好ましい。標識物質としての不溶性担体には、金、銀もしくは白金等の金属粒子、酸化鉄等の金属酸化物粒子、硫黄等の非金属粒子及び合成高分子よりなるラテックス粒子、またはその他の不溶性担体を用いることができる。上述のように不溶性担体は、被検出物質の存在を視覚的に判定するのに適した標識物質であり、目視による判定を容易にするためには有色であることが好ましい。金属粒子及び金属酸化物粒子は、それ自体が粒径に応じた特定の自然色を呈するものであり、その色彩を標識として利用することができる。
【0106】
標識物質としての不溶性担体は、特に金粒子が、検出が簡便であり、かつ凝集しづらく非特異的な発色が起こりにくい点で好ましい。金粒子の平均粒径は、例えば10nm〜250nm、好ましくは35nm〜120nmであり、より好ましくは40nm〜80nmである。平均粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM:日本電子(株)製、JEM−2010)により、撮影した投影写真を用いて無作為に100個の粒子の投影面積円相当径を計測し、その平均値から算出することができる。標識物質保持部における金粒子の含有量は、標識物質保持部の単位面積あたり、通常0.006μg/cm〜0.42μg/cmであり、好ましくは0.01μg/cm〜0.3μg/cmであり、より好ましくは0.01μg/cm〜0.2μg/cmである。金粒子の含有量が前記範囲であることにより、標識された粒子が分散したまま展開し、抗体等の認識部位が阻害されず高感度化できる。
【0107】
クロマトグラフ媒体部(3)は、クロマトグラフの展開部位である。クロマトグラフ媒体部(3)は、毛管現象を示す微細多孔性物質からなる不活性の膜である。検出試薬、固定化試薬または被検出物質などと反応性を有しないという観点や、本発明の効果が向上するという観点から、クロマトグラフ媒体部(3)には、例えば、ニトロセルロース製のメンブレンや、酢酸セルロース製のメンブレンが好ましく使用できる。特にニトロセルロース製のメンブレンが好ましい。なお、セルロース類メンブレン、ナイロンメンブレン、及び、ポリエチレンやポリプロピレン等の多孔質プラスチック布類も使用できる。
【0108】
ニトロセルロース製のメンブレンとしては、ニトロセルロースが主体で含まれていればよく、純品またはニトロセルロース混合品などニトロセルロースを主材とするメンブレンを使用することができる。
【0109】
ニトロセルロース製のメンブレンは、さらに、毛細管現象を促進させる物質を含有させることもできる。当該物質としては、膜面の表面張力を低下させ、親水性をもたらす物質が好ましい。例えば、糖類、アミノ酸の誘導体、脂肪酸エステル、各種合成界面活性剤またはアルコール等の両親媒性の作用を有する物質であって、被検出物質の移動に影響がなく、標識物質の発色に影響を及ぼさない物質が好ましい。
【0110】
ニトロセルロース製のメンブレンは、多孔性であって、毛細管現象を示す。この毛細管現象の指標は、吸水速度(吸水時間:capillary flow time)を測ることで確認できる。吸水速度は、検出感度と検査時間に影響する。
【0111】
前記のようなニトロセルロース製のメンブレンや酢酸セルロース製のメンブレンに代表されるクロマトグラフ媒体部(3)の形態及び大きさは特に制限されるものではなく、実際の操作の点及び反応結果の観察の点において適切であればよい。
【0112】
さらに操作をより簡便にするためには、クロマトグラフ媒体部(3)の裏面に、プラスチックなどよりなる支持体を設けることが好ましい。この支持体の性状は特に制限されるものではないが、目視判定によって測定結果の観察を行う場合には、支持体は、標識物質によりもたらされる色彩と類似しない色彩を有するものであることが好ましく、通常、無色又は白色であることが好ましい。
【0113】
また、クロマトグラフ媒体部(3)上には、非特異的な吸着により分析の精度が低下することを防止するため、必要に応じて、クロマトグラフ媒体部(3)に、公知の方法でブロッキング処理を行うことができる。一般にブロッキング処理は、ウシ血清アルブミン、スキムミルク、カゼイン及びゼラチン等のタンパク質が好適に用いられる。かかるブロッキング処理後に、必要に応じて、例えば、Tween20、TritonX−100、及びSDS等の界面活性剤を1つ又は2つ以上組み合わせて洗浄してもよい。
【0114】
検出部(4)は、前記クロマトグラフ媒体部(3)上の任意の位置に形成されており、少なくとも前記(B)の抗体またはその抗原結合断片及び前記(C)の抗体またはその抗原結合断片が含まれる。検出部(4)への抗体の固定化は、常法に従って行うことができる。
【0115】
検出部(4)では、クロマトグラフ媒体部上を移動相として通過した検体中のチクングニアウイルスが、検出部(4)に固定されている抗体と前記標識抗体等とによってサンドイッチ状に挟まれるように特異的に反応結合する。
【0116】
検出部(4)に含有される、前記(B)の抗体またはその抗原結合断片の含有量は、通常0.05μg〜1μgであり、好ましくは0.2μg〜0.7μgであり、より好ましくは0.2μg〜0.6μgである。また、検出部(4)の単位面積当たりの、前記(B)の抗体またはその抗原結合断片の含有量は、通常0.05μg/cm〜2μg/cmであり、好ましくは0.1μg/cm〜1μg/cmであり、より好ましくは0.2μg/cm〜0.7μg/cmである。
【0117】
検出部(4)に含有される、前記(C)の抗体またはその抗原結合断片の含有量は、通常0.1μg〜1μgであり、好ましくは0.2μg〜0.7μgであり、より好ましくは0.3μg〜0.6μgである。また、検出部(4)の単位面積当たりの、前記(C)の抗体またはその抗原結合断片の含有量は、通常0.15μg/cm〜2μg/cmであり、好ましくは0.2μg/cm〜1μg/cmであり、より好ましくは0.2μg/cm〜0.7μg/cmである。
【0118】
検出部(4)に含有される、前記(B)の抗体またはその抗原結合断片、及び前記(C)の抗体またはその抗原結合断片の合計の含有量は、通常0.2μg〜2μgであり、好ましくは0.4μg〜1.4μgであり、より好ましくは0.6μg〜1.2μgである。また、検出部(4)の単位面積当たりの、前記(B)の抗体またはその抗原結合断片、及び前記(C)の抗体またはその抗原結合断片の合計の含有量は、通常0.3μg/cm〜4μg/cmであり、好ましくは0.4μg/cm〜2μg/cmであり、より好ましくは0.4μg/cm〜1.4μg/cmである。
【0119】
検出部(4)に含有される、前記(B)の抗体またはその抗原結合断片と、前記(C)の抗体またはその抗原結合断片の含有量比は、質量比で1:2〜2:1であることが好ましく、2:1であることがさらに好ましい。
【0120】
また、検出部(4)には、好ましくは、前記(E)の抗体またはその抗原結合断片が含まれる。前記(E)の抗体またはその抗原結合断片を含有する場合、検出部中の前記(E)の抗体またはその抗原結合断片の含有量は、通常0.1μg〜1μgであり、好ましくは0.2μg〜0.7μgであり、より好ましくは0.3μg〜0.6μgである。また、検出部(4)の単位面積当たりの、前記(E)の抗体またはその抗原結合断片の含有量は、通常0.15μg/cm〜4μg/cmであり、好ましくは0.2μg/cm〜3μg/cmであり、より好ましくは0.2μg/cm〜2.5μg/cmである。
【0121】
また、検出部中の前記(B)の抗体またはその抗原結合断片及び前記(C)の抗体またはその抗原結合断片の合計と、前記(E)の抗体またはその抗原結合断片との含有量比は、質量比で1:2〜2:1であることが好ましい。
【0122】
吸収部(5)は、クロマトグラフ媒体部(3)の末端に、検出部(4)を通過した検体や展開液等の液体を吸収させるために設置される。本発明において、吸収部(5)は、例えばグラスファイバー、パルプ、セルロースファイバー等、またはそれら不織布にアクリル酸重合体等の高分子、エチレンオキサイド基等を持つ親水性薬剤を含有させたものが用いられ、特に好ましくはグラスファイバーである。
【0123】
バッキングシート(6)は、任意の基材である。片面に粘着剤を塗布したり、粘着テープを貼り付けたりすることにより、片面が粘着性を有し、当該粘着面上に試料添加部(1)、標識物質保持部(2)、クロマトグラフ媒体部(3)、検出部(4)、および吸収部(5)の一部または全部が密着して設けられている。バッキングシート(6)は、粘着剤によって試料液に対して不透過性、非透湿性となるようなものであれば、基材としては、特に限定されない。
【0124】
本発明に係る免疫クロマト分析装置は、製品化する前に、通常乾燥処理に施される。乾燥温度は例えば20℃〜50℃、乾燥時間は0.5時間〜1時間である。
【0125】
<免疫クロマト分析キット>
本発明に係る免疫クロマト分析キットは、前記の免疫クロマト分析装置と、前記検体を希釈して展開するための検体希釈液とを含む。
【0126】
本発明に係る免疫クロマト分析キットにおいて検体希釈液は、展開液としても使用することができるものであるが、通常溶媒として水を用い、これに緩衝液、カゼインナトリウム等の塩、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤等の界面活性剤、ポリビニルピロリドン(PVP)等の高分子化合物、ポリアニオン、窒素原子含有ビニル系水溶性高分子、抗菌剤、キレート剤等を含有させることができる。これらは、1種または2種以上を含有させてもよい。
【0127】
界面活性剤としては、HLB値13〜17の界面活性剤が好ましく使用できる。例えば、Triton X−100(商品名、ポリエチレングリコールモノ−p−イソオクチルフェニルエーテル、HLB:13.7)、Tween20(商品名、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、HLB:16.7)、Tween80(商品名、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、HLB:15.0)、Brij35(ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル、HLB:13.7)等が挙げられ、1種または2種以上を加えてもよい。試料添加部にHLB値13〜17の界面活性剤を含有させることによって、標識物質保持部及び検出部における抗原・抗体の非特異反応を抑えることができ、また検出部における被検出物質の検出感度を高めることができる。
【0128】
検体希釈液の非イオン性界面活性剤の含有量は、通常0.5%〜5%であり、好ましくは0.5%〜3%であり、より好ましくは0.5%〜2%である。
【0129】
また、窒素原子含有ビニル系水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)等が挙げられる。検体希釈液に窒素原子含有ビニル系水溶性高分子を含有させることによって、抗原と反応した不溶性担体を任意に凝集させることでシグナルの増強が可能となり、検出部における被検出物質の検出感度を高めることができる。
【0130】
検体希釈液の窒素原子含有ビニル系水溶性高分子の含有量は、通常0.1%〜0.8%であり、好ましくは0.2%〜0.6%であり、より好ましくは0.2%〜0.5%である。
【0131】
検体希釈液は、検体試料と予め混合して得られる検体含有液を、試料添加部に添加して展開させることもできるし、先に検体試料を試料添加部に添加した後、検体希釈液を試料添加部に添加して展開させてもよい。
【0132】
<免疫クロマト分析方法>
本発明に係る免疫クロマト分析方法は、以下の工程(1)〜(4)を含み、前記免疫クロマト分析キットを用いて検体に含まれるチクングニアウイルスを検出する方法である。
(1)検体希釈液により検体を希釈した検体含有液を試料添加部に添加する工程
(2)標識物質保持部に保持されている、前記(A)の抗体またはその抗原結合断片により前記チクングニアウイルスを認識させる工程
(3)前記検体および前記(A)の抗体またはその抗原結合断片を移動相としてクロマトグラフ媒体部に展開させる工程
(4)展開された移動相中のチクングニアウイルスを、検出部に含まれる前記(B)の抗体またはその抗原結合断片および前記(C)の抗体またはその抗原結合断片により検出する工程
各工程について以下に説明する。
【0133】
(1)検体希釈液により検体を希釈した検体含有液を試料添加部に添加する工程
工程(1)では、第1に、検体を、測定精度を低下させることなく、装置内をスムーズに移動する程度の濃度に、検体希釈液で調整または希釈して検体含有液とするのが好ましい。検体希釈液は上述したものを使用できる。第2に、検体含有液を試料として、試料添加部(1)上に、所定量(通常、0.1ml〜2ml)添加する。前記試料が試料添加部(1)に添加されると、試料添加部(1)中で移動を開始する。本発明において使用する検体は、上述したものを使用できる。
【0134】
(2)標識物質保持部に保持されている、前記(A)の抗体またはその抗原結合断片により前記チクングニアウイルスを認識させる工程
工程(2)は、工程(1)において試料添加部に添加された前記試料を、標識物質保持部(2)へと移動させ、標識物質保持部に保持されている、標識物質が結合した前記(A)の抗体またはその抗原結合断片により、検体中のチクングニアウイルスを認識させる工程である。標識物質は上述したものを使用できる。
【0135】
(3)前記検体および前記(A)の抗体またはその抗原結合断片を移動相としてクロマトグラフ媒体部に展開させる工程
工程(3)は、工程(2)において検体中のチクングニアウイルスが、標識物質保持部において標識物質が結合した前記(A)の抗体またはその抗原結合断片に認識された後、検体および前記(A)の抗体またはその抗原結合断片を、クロマトグラフ媒体部上を移動相として通過させる工程である。
【0136】
(4)展開された移動相中のチクングニアウイルスを、検出部に含まれる前記(B)の抗体またはその抗原結合断片および前記(C)の抗体またはその抗原結合断片により検出する工程
工程(4)は、クロマトグラフ媒体部上を移動相として通過した検体中のチクングニアウイルスが、抗原・抗体の特異的結合反応により、検出部に固定されている前記(B)の抗体またはその抗原結合断片および前記(C)の抗体またはその抗原結合断片と、前記工程(2)において標識物質が結合した前記(A)の抗体またはその抗原結合断片とによってサンドイッチ状に挟まれるように特異的に反応結合して、検出部が着色する工程である。
【0137】
被検出物質であるチクングニアウイルスが存在しない場合には、試料の水分に溶解した標識試薬は、クロマトグラフ媒体部上の検出部を通過しても特異的結合反応が起こらないので、検出部が着色しない。
【0138】
最後に、検体含有液の水分は、吸収部(5)へと移動する。
【実施例】
【0139】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0140】
(1)抗体の作製
(1−1)13H11、3D11、および15B2モノクローナル抗体
抗原として、ECSA型CHIKVが感染した培養細胞およびAsian型CHIKVの6K−E1タンパク質を発現するセンダイウイルスを用いた。具体的には、前記培養細胞とCFA(Complete Freund’s adjuvan)との混合物にて、4−6週齢のマウス(Balb/c)に対して初回免疫を実施した。初回免疫後2週間において、前記培養細胞とIFA(Incomplete Freund’s adjuvant)との混合物にて、前記マウスに2度目の免疫を実施した。2回目の免疫後2週間において、前記ウイルスとIFAとの混合物にて、前記マウスに3度目の免疫を実施した。3度目の免疫後3日目に、前記マウスからB細胞を調整し、前記B細胞から常法によりハイブリドーマを調製した。得られたハイブリドーマについて、その培養液を用いて、抗CHIKV抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングを行った。
【0141】
この結果、3種類のハイブリドーマ(13H11、3D11、および15B2株)を単離した。これらのハイブリドーマから生成される抗CHIKV抗体として、3種類のモノクローナル抗体(13H11、3D11、および15B2)を得た。13H11、3D11、および15B2のアイソタイプは、それぞれ、IgG1κ、IgG2aκ、およびIgG2bκであった。
13H11は前記(A)の抗体、3D11は前記(B)の抗体、15B2は前記(C)の抗体にそれぞれ対応する。
【0142】
抗CHIKV抗体である13H11、3D11、および15B2について、アミノ酸配列を決定した。これらの結果を以下に示す。なお、13H11、3D11、および15B2の軽鎖は、いずれも同じアミノ酸配列である。また、各アミノ酸配列において、下線で示すアミノ酸配列が、N端からC端に向かって、それぞれ、CDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列に対応する。また、各アミノ酸配列において、括弧で囲ったアミノ酸配列が、可変領域のアミノ酸配列に対応する。
【0143】
13H11重鎖(配列番号17)
[QVQLQQSGPELVKPGASVKISCKASGYAFSTSWMNWVKQRPGQGLEWIGRIYPGDGDTNYNGKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSVDSAVYFCARSNDGYYVGYWGQGTTLTVSS]AKTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSETVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTQPREEQFNSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFPAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITDFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMDTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK
【0144】
3D11重鎖(配列番号19)
[QVQLQQSGAELARPGASVKLSCKASGYTFTSYWMQWVKQRPGQGLEWIGAIYPGDGDTRYTQKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLASEDSAVYYCARSYDPFDYWGQGTTLTVSS]AKTTAPSVYPLAPVCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPEPVTLTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVTSSTWPSQSITCNVAHPASSTKVDKKIEPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK
【0145】
15B2重鎖(配列番号20)
[QVQLQQSGAELVKPGASVKLSCKASGYTFTSYYMYWVKQRPGQGLEWIGEINPSNGGTNFNEKFKNKATLTVDKSSNTAYMQLNSLTSEDSAVYYCTRGYYGNPFFAYWGQGTLVTVSA]AKTTPPSVYPLAPGCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPESVTVTWNSGSLSSSVHTFPALLQSGLYTMSSSVTVPSSTWPSQTVTCSVAHPASSTTVDKKLEPSGPISTINPCPPCKECHKCPAPNLEGGPSVFIFPPNIKDVLMISLTPKVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTIRVVSTLPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPSPIERTISKIKGLVRAPQVYILPPPAEQLSRKDVSLTCLVVGFNPGDISVEWTSNGHTEENYKDTAPVLDSDGSYFIYSKLNMKTSKWEKTDSFSCNVRHEGLKNYYLKKTISRSPGK
【0146】
13H11、3D11、および15B2軽鎖(配列番号18)
[NIVMTQSPKSMSMSVGERVTLTCKASENVVTYVSWYQQKPEQSPKLLIYGASNRYTGVPDRFTGSGSATDFTLTISSVQAEDLADYHCGQGYSYPYTFGGGTKLEI]KRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
【0147】
(1−2)CK−(d)およびCK−(e)モノクローナル抗体
B7細胞をCHIKVに感染させ、広範囲の細胞変性効果が観察されるまでインキュベートした。4℃で一晩4%ホルムアルデヒドを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で感染細胞を不活性化し、採取し、PBSで3回洗浄し、注射前に−80℃で保存した。5週齢の雌BALB/cマウス(National Laboratory Animal Center、Mahidol University、Bangkok、Thailand)に対し、完全フロインドアジュバント(Sigma Aldrich、Saint Louis、MO)中の不活性化CHIKV感染B7細胞(2.5×10感染細胞/マウス)を腹腔内免疫した。さらにアジュバントを含まないCHIKV感染細胞で3週間ごとに3回追加免疫した。最後の追加免疫の3日後、脾臓を取り出し、脾臓細胞を得て、ポリエチレングリコール♯1500(Roche diagnostics、Mannheim、Germany)を用いてマウス骨髄腫PAI細胞と融合させ、ハイブリドーマを調製した。ハイブリドーマを、15%FBS、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(GIBCO、Grand Island、NY)および3%BM−Condimed H1サプリメント(Roche診断薬)を補充したRPMI1640中で培養した。ハイブリドーマによって分泌された抗体を、CHIKV感染Vero細胞を用いた間接免疫蛍光アッセイ(IFA)でスクリーニングした。
【0148】
この結果、2種類のハイブリドーマ(CK−(d)およびCK−(e)株)を単離した。これらのハイブリドーマから生成される抗CHIKV抗体として、2種類のモノクローナル抗体(CK−(d)およびCK−(e))を得た。CK−(d)およびCK−(e)のアイソタイプは、それぞれ、IgG1、およびIgG2aであった。
CK−(d)は前記(D)の抗体、CK−(e)は前記(E)の抗体にそれぞれ対応する。
【0149】
抗CHIKV抗体であるCK−(d)、およびCK−(e)について、アミノ酸配列を決定した。これらの結果を以下に示す。なお、CK−(d)、およびCK−(e)の軽鎖は、いずれも、前記13H11、3D11、および15B2と同じアミノ酸配列である。また、各アミノ酸配列において、下線で示すアミノ酸配列が、N端からC端に向かって、それぞれ、CDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列に対応する。また、各アミノ酸配列において、括弧で囲ったアミノ酸配列が、可変領域のアミノ酸配列に対応する。
【0150】
CK−(d)重鎖(配列番号29)
[ESGGGLVKLGGSLKLSCAASGFTFSTYYMSWVRQTPEKRLELVAAINSNGGSTYYPDTVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTALYYCARHELVGGWFVYWGQGTLVTVSA]AKTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSETVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTQPREEQFNSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFPAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITDFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMDTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK
【0151】
CK−(e)重鎖(配列番号30)
[QVQLQQSGAELVRPGTSVKMSCKAAGYTFTNYWIGWIKQRPGHGLEWIGDVYPGGGSTYYNEKFKAKATLTADTSSSTAYMQLSRLTSEDSAIYYCSRVTSTTGWYFDVWGAGTTVTVSS]AKTTAPSVYPLAPVCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPEPVTLTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVTSSTWPSQSITCNVAHPASSTKVDKKIEPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK
【0152】
(2)免疫クロマト分析装置の作製
〈実施例1〉
検体希釈液、及び、試料添加部(1)と、標識物質保持部(2)と、検出部(4)を有するクロマトグラフ媒体(3)と、吸収部(5)とを含む免疫クロマト分析装置からなる免疫クロマト分析キットを作製した。
【0153】
1.試料添加部の作製
試料添加部としてグラスファイバーからなる不織布(ミリポア社製:300mm×30mm)を用いた。
【0154】
2.標識物質保持部の作製
リン酸緩衝液(pH7.4)で前記13H11モノクローナル抗体を、その濃度が0.05mg/mlとなるように希釈し、抗体溶液を得た。そして金コロイド懸濁液(田中貴金属工業社製:LC40nm)0.5mlに、前記抗体溶液を0.1ml加え、室温で10分間静置した。
次いで、1質量%の牛血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1ml加え、更に室温で10分間静置した。その後、十分撹拌した後、8000×gで15分間遠心分離を行い、上清を除去した後、1質量%のBSAを含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1ml加えた。以上の手順で標識物質溶液を作製した。
前記作製した標識物質溶液300μLに、300μLの10質量%トレハロース水溶液と1.8mLの蒸留水を加えたものを16mm×300mmのグラスファイバーパッド(ミリポア社製)に均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、標識物質保持部を作製した。
標識物質保持部における13H11モノクローナル抗体の含有量は0.1μg(0.18μg/cm)であった。
【0155】
3.クロマトグラフ媒体部および検出部の作製
メンブレンとしてニトロセルロースからなるシート(ミリポア社製、商品名:HF120、300mm×25mm)を用いた。
次に、5質量%のイソプロピルアルコールを含むリン酸緩衝液(pH7.4)で、前記3D11モノクローナル抗体が0.3mg/ml、前記15B2モノクローナル抗体が0.6mg/mlの濃度になるようにした抗体溶液150μLを、乾燥されたメンブレン上の検出部に1mmの幅でイムノクロマト用ディスペンサー「XYZ3050」(BIODOT社製)を用いて1μL/mmの量(1シートあたり25μL)でライン状に塗布した。
また、金ナノ粒子標識試薬の展開の有無や展開速度を確認するために検出部の下流に、金ナノ粒子標識物質と広く親和性を有するヤギ由来抗血清をリン酸緩衝液(pH7.4)で希釈した液をコントロール部位(コントロールライン)に塗布した。その後、50℃で30分間乾燥させ、室温で一晩乾燥させ、クロマトグラフ媒体部および検出部を作製した。
検出部における3D11モノクローナル抗体の含有量は0.14μg(0.25μg/cm)、15B2モノクローナル抗体の含有量は0.14μg(0.25μg/cm)であった。
【0156】
4.免疫クロマト分析装置の作製
次に、バッキングシートからなる基材(倉本産業社製)に、試料添加部、標識物質保持部、検出部を有するクロマトグラフ媒体部、展開した試料や標識物質を吸収するための吸収部としてグラスファイバー製の不織布を順次貼り合わせた。そして、裁断機で幅が3.5mmとなるように裁断し、免疫クロマト分析装置とした。なお、標識物質保持部の試料展開方向の長さは16mmとした。
【0157】
5.検体希釈液の調製
1質量%の非イオン性界面活性剤(ナカライテスク社製NP−40と日油社製ノニデットMN−811の1:1混合物)を含む50mMのHEPES緩衝液(pH7.5)を調製し、検体を希釈処理するための検体希釈液とした。
【0158】
〈実施例2〉
実施例1において、標識物質保持部に13H11モノクローナル抗体の他、CK−(d)モノクローナル抗体を使用したこと、検出部に3D11モノクローナル抗体及び15B2モノクローナル抗体の他、CK−(e)モノクローナル抗体を使用したこと、および標識物質保持部および検出部における各抗体の含有量を下記のとおりとした点を除いては、実施例1と同様にして、実施例2の免疫クロマト分析キットを作製した。
標識物質保持部における13H11モノクローナル抗体の含有量は0.05μg(0.09μg/cm)、CK−(d)モノクローナル抗体の含有量は0.05μg(0.09μg/cm)であり、検出部における3D11モノクローナル抗体の含有量は0.06μg(0.69μg/cm)、15B2モノクローナル抗体の含有量は0.1μg(1.1μg/cm)、CK−(e)モノクローナル抗体の含有量は0.2μg(2.29μg/cm)であった。
【0159】
〈実施例3〉
実施例2において、標識物質保持部における13H11モノクローナル抗体とCK−(d)モノクローナル抗体の含有量が、質量比で1:2とすべく、13H11モノクローナル抗体が0.03μg(0.05μg/cm)、CK−(d)モノクローナル抗体が0.06μg(0.1μg/cm)としたことを除いては、実施例2と同様にして、実施例3の免疫クロマト分析キットを作製した。
【0160】
〈比較例1〉
実施例1において、13H11モノクローナル抗体の代わりにCK−(d)モノクローナル抗体のみを使用し、3D11モノクローナル抗体と15B2モノクローナル抗体の代わりにCK−(e)モノクローナル抗体のみを使用し、標識物質保持部におけるCK−(d)モノクローナル抗体の含有量を0.1μg(0.18μg/cm)、検出部におけるCK−(e)モノクローナル抗体の含有量を0.29μg(3.3μg/cm)としたことを除いては、実施例1と同様にして、比較例1の免疫クロマト分析キットを作製した。
【0161】
前記実施例1〜3、及び比較例1において、標識物質保持部および検出部が含有する抗体の組み合わせを下記表1にまとめて示す。
【0162】
【表1】
【0163】
(試験例1)
本試験では、実施例1〜3、比較例1の免疫クロマト分析キットにおいて、遺伝子型が異なるチクングニアウイルス間で反応性の違いが生じるかを調べた。具体的には前記作製した実施例1〜3、比較例1の免疫クロマト分析キットを用い、下記検体を用いて、測定を行った。
検体のチクングニアウイルスとしては、ECSA型(自家培養)、Asian型(自家培養)およびWA型(自家培養)を用いた。
ECSA型およびAsian型については、当該各ウイルスを1×10pfu/mL、1×10pfu/mL、または1×10pfu/mLに検体希釈液で希釈して、検体含有液を調製し、これを検体試料とした。また、陰性対照検体として、ウイルスを含有しない検体希釈液を用いた。
また、WA型(自家培養)については、当該ウイルスを6ng/mL、30ng/mL、150ng/mLとなるように検体希釈液で希釈して、検体含有液を調製し、これを検体試料とした。
また、陰性対照検体として、ウイルスを含有しない検体希釈液を用いた。
【0164】
前記調製した各検体含有液または陰性検体90μLを免疫クロマト分析装置の試料添加部に添加し展開させ、15分後にイムノクロマトリーダーを用いて、検出部の発色強度を測定し、以下のとおり評価した。
−:0mAbs以上10mAbs未満(陰性と判定)
±:10mAbs以上15mAbs未満(陽性と判定)
+:15mAbs以上150mAbs未満(陽性と判定)
++:150mAbs以上300mAbs未満(陽性と判定)
+++:300mAbs以上(陽性と判定)
【0165】
結果を表2〜5に示す。また、ECSA型およびAsian型については、ウイルス濃度を1×10pfu/mLとした場合の遺伝子型ごとに結果をまとめたグラフを図2に示し、WA型については、6ng/mLとした場合の結果をまとめたグラフを図3に示す。
【0166】
【表2】
【0167】
【表3】
【0168】
【表4】
【0169】
【表5】
【0170】
試験例1の結果から、実施例1〜3の免疫クロマト分析キットにおいて、いずれもチクングニアウイルスのECSA型、Asian型及びWA型の検出が可能であることがわかった。また実施例2及び3は、実施例1の発色強度と比較した場合、実施例1よりもECSA型に対する発色強度が高く、より遺伝子型による差が解消していることがわかった。一方、比較例1の免疫クロマト分析キットにおいて、Asian型については、ウイルス濃度が1×10pfu/mLの場合陰性と判定された。
なお、陰性検体の結果からもわかるとおり、いずれの免疫クロマト分析キットにおいても非特異反応(擬陽性反応)は見られなかった。
【0171】
(試験例2)
本試験では、実施例1〜3、比較例1の免疫クロマト分析キットにおいて、チクングニアウイルスの変異の有無による反応性の違いについて調べた。具体的には前記作製した実施例1〜3、比較例1の免疫クロマト分析キットを用い、下記検体を用いて、測定を行った。
検体のチクングニアウイルスとしては、自家培養の、ECSA野生型(WT)および変異型(MT)、Asian野生型(WT)および変異型(MT)を用い、当該各ウイルスを6ng/mL、30ng/mL、150ng/mLとなるように検体希釈液で希釈して、検体含有液を調製し、これを検体試料とした。
前記CSA変異型は、ECSA野生型のE1タンパク質のアミノ酸配列の350番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換したものであり、Asian変異型は、Asian野生型のE1タンパク質のアミノ酸配列の350番目のアスパラギン酸がグルタミン酸に置換したものである。
【0172】
前記調製した各検体含有液90μLを免疫クロマト分析装置の試料添加部に添加し展開させ、15分後にイムノクロマトリーダーを用いて、検出部の発色強度を測定し、試験例1と同様に評価した。結果を表6〜9に示す。また、ウイルス濃度を6ng/mLとした場合の遺伝子型ごとに結果をまとめたグラフを図4及び図5に示す。
【0173】
【表6】
【0174】
【表7】
【0175】
【表8】
【0176】
【表9】
【0177】
表6、7の結果から分かるように、ECSA型に関し、ウイルス濃度が6ng/mLのとき、実施例1〜3の免疫クロマト分析キットでは、野生型と変異型のいずれにおいても陽性反応が得られた。一方、比較例1の免疫クロマト分析キットでは、変異型において陰性と判定された。
【0178】
また表8、9の結果から分かるように、Asian型に関し、ウイルス濃度が6ng/mLのとき、実施例1〜3の免疫クロマト分析キットでは、野生型と変異型のいずれにおいても陽性反応が得られた。一方、比較例1の免疫クロマト分析キットでは、野生型において、陰性と判定された。
【0179】
試験例2の結果から、実施例1〜3の免疫クロマト分析キットは、比較例1の免疫クロマト分析キットと比べ、野生型−変異型間の反応性の相違が小さいことがわかった。
【0180】
(試験例3)
本試験では、実施例2、3及び比較例1の免疫クロマト分析キットにおいて、チクングニアウイルス以外のウイルスとの交叉反応性を調べた。具体的には、前記作製した実施例2、3及び比較例1の免疫クロマト分析キットを用い、検体として、チクングニアウイルスと同じトガウイルス科アルファウイルス属であるシンドビスウイルス(SINV、自家培養)を用い、当該ウイルスを、1×10pfu/mL、1×10pfu/mL、または1×10pfu/mLに検体希釈液で希釈して、検体含有液を調製し、これを検体試料とした。
前記調製した各検体含有液90μLを実施例2、3及び比較例1の免疫クロマト分析装置の試料添加部に添加し展開させ、15分後にイムノクロマトリーダーを用いて、検出部の発色強度を測定した。結果を表10に示す(NDは測定不可を示す)。
【0181】
【表10】
【0182】
以上の結果からわかるように、実施例2、3の免疫クロマト分析キットにおいては、シンドビスウイルスとの交叉反応は見られなかった。一方、比較例1の免疫クロマト分析キットにおいて、1×10pfu/mLの場合、シンドビスウイルスとの交叉反応が見られた。
【符号の説明】
【0183】
1 試料添加部
2 標識物質保持部
3 クロマトグラフ媒体部
4 検出部
5 吸収部
6 バッキングシート
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]