特許第6935302号(P6935302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6935302光ファイバの製造方法及び光ファイバ母材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6935302
(24)【登録日】2021年8月27日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】光ファイバの製造方法及び光ファイバ母材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/027 20060101AFI20210906BHJP
   C03B 37/012 20060101ALI20210906BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   C03B37/027 A
   C03B37/012 A
   G02B6/02 476
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-210928(P2017-210928)
(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-81681(P2019-81681A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2019年11月28日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 慎一
(72)【発明者】
【氏名】松本 成人
(72)【発明者】
【氏名】八木 健
(72)【発明者】
【氏名】青笹 真一
(72)【発明者】
【氏名】辻川 恭三
(72)【発明者】
【氏名】野添 紗希
(72)【発明者】
【氏名】中島 和秀
【審査官】 有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−019675(JP,A)
【文献】 特開2013−020074(JP,A)
【文献】 特開2012−203035(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/082656(WO,A1)
【文献】 特開平09−124332(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/114795(WO,A1)
【文献】 特表2014−506682(JP,A)
【文献】 特開2017−088445(JP,A)
【文献】 特開2015−062044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00−37/16
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスからなる複数のコア部と、
前記複数のコア部よりも屈折率が低いガラスからなり、前記複数のコア部の外周に形成されたクラッド部と、
前記クラッド部よりも屈折率が低いガラスからなり、前記クラッド部内において前記複数のコア部のうち少なくとも最隣接するコア部の間に配置された低屈折率部と、
を備える光ファイバの製造方法であって、
前記コア部になるコア形成部を備える複数のコアロッドと、前記低屈折率部となる低屈折率部材とを、前記クラッド部の一部になるガラスパイプ内に配置する配置工程と、
前記ガラスパイプと前記複数のコアロッドと前記低屈折率部材との隙間にガラス微粒子を充填する微粒子充填工程と、
前記ガラス微粒子を充填した隙間を減圧状態とし、前記ガラスパイプ、前記複数のコアロッド、前記低屈折率部材及び前記ガラス微粒子を加熱溶融し、前記ガラス微粒子を焼結して光ファイバを線引きする線引工程と、
を含み、
前記配置工程において、フッ素が添加された板状の低屈折率部材を十字状に組み合わせて配置することを特徴とする光ファイバの製造方法。
【請求項2】
前記複数のコアロッドを位置決め部材に形成された穴に嵌合することで、前記複数のコアロッドを位置決めする位置決め工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項3】
前記複数のコアロッド及び前記低屈折率部材を位置決め部材に形成された部位に嵌合することで、前記複数のコアロッド及び前記低屈折率部材を位置決めする位置決め工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項4】
前記微粒子充填工程において、平均粒子径が50μm〜500μmのガラス微粒子を充填することを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の光ファイバの製造方法。
【請求項5】
前記配置工程において、前記複数のコアロッドと前記低屈折率部材とを対称性の高い位置に配置することを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の光ファイバの製造方法。
【請求項6】
ガラスからなる複数のコア部と、
前記複数のコア部よりも屈折率が低いガラスからなり、前記複数のコア部の外周に形成されたクラッド部と、
前記クラッド部よりも屈折率が低いガラスからなり、前記クラッド部内において前記複数のコア部のうち少なくとも最隣接するコア部の間に配置された低屈折率部と、
を備える光ファイバを製造するための光ファイバ母材の製造方法であって、
前記コア部になるコア形成部を備える複数のコアロッドと、前記低屈折率部となる低屈折率部材とを、前記クラッド部の一部になるガラスパイプ内に配置する配置工程と、
前記ガラスパイプと前記複数のコアロッドと前記低屈折率部材との隙間にガラス微粒子を充填する微粒子充填工程と、
前記ガラス微粒子を充填した隙間を減圧状態とし、前記ガラスパイプ、前記複数のコアロッド、前記低屈折率部材及び前記ガラス微粒子を加熱溶融し、前記ガラス微粒子を焼結して光ファイバ母材を形成する光ファイバ母材形成工程と、
を含み、
前記配置工程において、フッ素が添加された板状の低屈折率部材を十字状に組み合わせて配置することを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。
【請求項7】
前記複数のコアロッドを位置決め部材に形成された穴に嵌合することで、前記複数のコアロッドを位置決めする位置決め工程を含むことを特徴とする請求項に記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項8】
前記複数のコアロッド及び前記低屈折率部材を位置決め部材に形成された部位に嵌合することで、前記複数のコアロッド及び前記低屈折率部材を位置決めする位置決め工程を含むことを特徴とする請求項に記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項9】
前記微粒子充填工程において、平均粒子径が50μm〜500μmのガラス微粒子を充填することを特徴とする請求項のいずれか一つに記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項10】
前記配置工程において、前記複数のコアロッドと前記低屈折率部材とを対称性の高い位置に配置することを特徴とする請求項のいずれか一つに記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項11】
請求項10のいずれか一つに記載の方法によって製造した光ファイバ母材を線引きして光ファイバを製造することを特徴とする光ファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの製造方法及び光ファイバ母材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のコアを有するマルチコアファイバにおいて、コア間のクロストークを抑制する方法として、コア間に屈折率の低い領域を設ける構造が知られている(特許文献1、2参照)。特許文献2では、このような低屈折率部を設ける方法として、石英ガラス柱の長さ方向に沿って複数の孔を開け、複数の柱状の含コア石英ロッドと複数の柱状の低屈折率部材とを挿入して光ファイバ母材を作製する第1の方法が開示されている。また、石英パイプに、複数の柱状の含コア石英ロッドと、複数の柱状の低屈折率部材と、含コア石英ロッドと低屈折率部材との間の隙間に配置される複数の石英ロッドと、を詰め込んで光ファイバ母材を作製する第2の方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/082656号
【特許文献2】特開2012−203035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第1の方法を用いる場合、挿入する含コア石英ロッド及び低屈折率部材の数だけ石英ガラス柱を穿孔加工し、各孔の内面を表面処理する必要があるため、製造コストが高くなる。また、孔の長さは穿孔を行うドリルの長さで制約を受ける。また、孔を長くすると孔の位置精度が低下するので、コアや低屈折率部の位置精度も低下する。このため光ファイバ母材又は光ファイバの長尺化の制約や光学特性の低下や生産性の低下が問題となる。また、第2の方法を用いる場合、含コア石英ロッド及び低屈折率部材は石英ロッドによって位置決めされるため、石英ロッドの直径に設計からの誤差があると、その誤差は含コア石英ロッド及び低屈折率部材の位置精度を低下させる。特に、隙間を十分に充填するために石英ロッドの数が多くなると各石英ロッドの直径の誤差が累積し、含コア石英ロッド及び低屈折率部材の位置精度をさらに低下させる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストで製造でき、コアや低屈折率部の位置精度の低下を抑制することができ、かつ長尺化及び生産性の向上に適する光ファイバの製造方法及び光ファイバ母材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る光ファイバの製造方法は、ガラスからなる複数のコア部と、前記複数のコア部よりも屈折率が低いガラスからなり、前記複数のコア部の外周に形成されたクラッド部と、前記クラッド部よりも屈折率が低いガラスからなり、前記クラッド部内において前記複数のコア部のうち少なくとも最隣接するコア部の間に配置された低屈折率部と、を備える光ファイバの製造方法であって、前記コア部になるコア形成部を備える複数のコアロッドと、前記低屈折率部となる低屈折率部材とを、前記クラッド部の一部になるガラスパイプ内に配置する配置工程と、前記ガラスパイプと前記複数のコアロッドと前記低屈折率部材との隙間にガラス微粒子を充填する微粒子充填工程と、前記ガラス微粒子を充填した隙間を減圧状態とし、前記ガラスパイプ、前記複数のコアロッド、前記低屈折率部材及び前記ガラス微粒子を加熱溶融し、前記ガラス微粒子を焼結して光ファイバを線引きする線引工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る光ファイバの製造方法は、前記配置工程において、フッ素が添加された板状の低屈折率部材を配置することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る光ファイバの製造方法は、前記配置工程において、フッ素が添加された棒状の低屈折率部材を配置することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る光ファイバの製造方法は、前記複数のコアロッドを位置決め部材に形成された穴に嵌合することで、前記複数のコアロッドを位置決めする位置決め工程を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る光ファイバの製造方法は、前記複数のコアロッド及び前記低屈折率部材を位置決め部材に形成された部位に嵌合することで、前記複数のコアロッド及び前記低屈折率部材を位置決めする位置決め工程を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る光ファイバの製造方法は、前記微粒子充填工程において、平均粒子径が50μm〜500μmのガラス微粒子を充填することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る光ファイバの製造方法は、前記配置工程において、前記複数のコアロッドと前記低屈折率部材とを対称性の高い位置に配置することを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る光ファイバ母材の製造方法は、ガラスからなる複数のコア部と、前記複数のコア部よりも屈折率が低いガラスからなり、前記複数のコア部の外周に形成されたクラッド部と、前記クラッド部よりも屈折率が低いガラスからなり、前記クラッド部内において前記複数のコア部のうち少なくとも最隣接するコア部の間に配置された低屈折率部と、を備える光ファイバを製造するための光ファイバ母材の製造方法であって、前記コア部になるコア形成部を備える複数のコアロッドと、前記低屈折率部となる低屈折率部材とを、前記クラッド部の一部になるガラスパイプ内に配置する配置工程と、前記ガラスパイプと前記複数のコアロッドと前記低屈折率部材との隙間にガラス微粒子を充填する微粒子充填工程と、前記ガラス微粒子を充填した隙間を減圧状態とし、前記ガラスパイプ、前記複数のコアロッド、前記低屈折率部材及び前記ガラス微粒子を加熱溶融し、前記ガラス微粒子を焼結して光ファイバ母材を形成する光ファイバ母材形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る光ファイバ母材の製造方法は、前記配置工程において、フッ素が添加された板状の低屈折率部材を配置することを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る光ファイバ母材の製造方法は、前記配置工程において、フッ素が添加された棒状の低屈折率部材を配置することを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る光ファイバ母材の製造方法は、前記複数のコアロッドを位置決め部材に形成された穴に嵌合することで、前記複数のコアロッドを位置決めする位置決め工程を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る光ファイバ母材の製造方法は、前記複数のコアロッド及び前記低屈折率部材を位置決め部材に形成された部位に嵌合することで、前記複数のコアロッド及び前記低屈折率部材を位置決めする位置決め工程を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る光ファイバ母材の製造方法は、前記微粒子充填工程において、平均粒子径が50μm〜500μmのガラス微粒子を充填することを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係る光ファイバ母材の製造方法は、前記配置工程において、前記複数のコアロッドと前記低屈折率部材とを対称性の高い位置に配置することを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様に係る光ファイバの製造方法は、本発明の一態様に係る光ファイバ母材の製造方法によって製造した光ファイバ母材を線引きして光ファイバを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、低コストで製造でき、コアや低屈折率部の位置精度の低下を抑制することができ、かつ長尺化及び生産性の向上に適するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態1に係る製造方法で製造する光ファイバの模式的な断面及び屈折率プロファイルを示す図である。
図2図2は、実施形態1に係る製造方法を説明する模式図である。
図3図3は、実施形態1に係る製造方法を説明する模式図である。
図4図4は、実施形態1に係る製造方法を説明する模式図である。
図5図5は、実施形態1に係る製造方法を説明する模式図である。
図6図6は、実験例2の光ファイバの模式的な断面及び屈折率プロファイルを示す図である。
図7図7は、実施形態2に係る製造方法を説明する模式図である。
図8図8は、実施形態3に係る製造方法を説明する模式図である。
図9図9は、実施形態3に係る製造方法を説明する模式図である。
図10図10は、実施形態3に係る製造方法で製造した光ファイバの模式的な断面及び屈折率プロファイルを示す図である。
図11図11は、実施形態4に係る製造方法を説明する模式図である。
図12図12は、実施形態4に係る製造方法で製造した光ファイバの模式的な断面及び屈折率プロファイルを示す図である。
図13図13は、実施形態5に係る製造方法を説明する模式図である。
図14図14は、実施形態5に係る製造方法で製造した光ファイバの模式的な断面及び屈折率プロファイルを示す図である。
図15図15は、実施形態6に係る製造方法を説明する模式図である。
図16図16は、実施形態6に係る製造方法で製造した光ファイバの模式的な断面及び屈折率プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。
【0024】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る製造方法で製造する光ファイバの模式的な断面及び屈折率プロファイルを示す図である。図1(a)に示すように、光ファイバ1は、石英系ガラスからなり、複数(本実施形態1では4つ)のコア部1aと、コア部1aの外周に形成されたクラッド部1bと、十字形状の低屈折率部1cと、マーカ部1dとを備えているマルチコアファイバである。なお、クラッド部1bの外周には、不図示の被覆が施されている。被覆は、光ファイバに通常用いられるものを使用している。
【0025】
コア部1aは、屈折率を高くするドーパントであるゲルマニア(GeO)が添加された石英ガラスからなる。コア部1aの直径は本実施形態1では8.8μmであるが、特に限定はされない。クラッド部1bは、屈折率調整用のドーパントを添加していない純石英ガラスからなり、コア部1aよりも屈折率が低い。低屈折率部1cは、屈折率を低下させるドーパントであるフッ素(F)が添加された石英ガラスからなり、クラッド部1bよりも屈折率が低い。すなわち、図1(b)に、図1(a)のA−A断面における屈折率プロファイルを示すように、クラッド部1bに対する比屈折率差Δnが、コア部1aでは正値のΔ1であり、低屈折率部1cでは負値のΔ2である。本実施形態1ではΔ1は0.38%であり、Δ2は−0.6%である。但し、Δ1、Δ2の値はこれらの値に限定されない。
【0026】
また、マーカ部1dは、4つのコア部1aを識別するためにクラッド部1b内に配置されており、クラッド部1bとは異なる屈折率の石英系ガラスからなる。
【0027】
また、光ファイバ1の断面において、4つのコア部1aは、それぞれ正方形の頂点に配置されている。正方形の一辺の長さ、すなわち最隣接するコア部1aの間の間隔は40μmである。低屈折率部1cは、クラッド部1b内において少なくとも最隣接するコア部1aの間に配置されている。具体的には、十字形状の低屈折率部1cの4本の線状の部分が、最隣接するコア部1aの間に配置されている。低屈折率部1cの4本の線状の部分の幅はいずれも20μmである。また、コア部1aと低屈折率部1cとは、光ファイバ1の中心軸に対して4回回転対称となるような対称性が高い位置に配置されている。
【0028】
この光ファイバ1では、低屈折率部1cの4本の線状の部分によって、最隣接するコア部1aの間のクロストークが低減される。
【0029】
つぎに、図2図5を参照して実施形態1に係る製造方法を説明する。実施形態1に係る製造方法は、配置工程、微粒子充填工程、位置決め工程、及び線引工程を含む。
【0030】
配置工程では、4本のコアロッドと、低屈折率部材とを、ガラスパイプ内に配置する。以下、具体的に説明する。まず、図2(a)に示すように、一方の短辺側に切り欠き部2aaが形成された長方形状の板材2aと、一方の短辺側に切り欠き部2baが形成された長方形状の板材2bとを準備する。つづいて、板材2aと板材2bとを、切り欠き部2aaと切り欠き部2baとが嵌合するように組み合わせ、図2(b)に示すような断面が十字形状の低屈折率部材2を作製する。この低屈折率部材2は光ファイバ1の低屈折率部1cとなる部材である。従って、板材2a、2bは低屈折率部1cの屈折率となるようにフッ素が添加された石英ガラスからなる。
【0031】
つづいて、図3に示すように、ガラスパイプ3内に、4本のコアロッド4と、低屈折率部材2と、マーカ部材5とを挿入して配置する。
【0032】
ガラスパイプ3は、光ファイバ1のクラッド部1bの一部になるものであり、屈折率調整用のドーパントを添加していない高純度の合成石英パイプである。ガラスパイプ3の内径及び外径は、本実施形態1ではそれぞれ130mm、150mmである。また、ガラスパイプ3の一方の端部(図面下方)は封止されている。また、コアロッド4は、コア形成部4a及びコア形成部4aの外周に形成されたクラッド形成部4bを備える。コア形成部4aは光ファイバ1のコア部1aになり、クラッド形成部4bはクラッド部1bの一部になる。コア形成部4aはコア部1aの屈折率となるようにゲルマニアが添加された石英ガラスからなり、クラッド形成部4bは純石英ガラスからなる。また、クラッド形成部4bの外径(すなわちコアロッド4の直径)は、本実施形態1ではコア形成部4aの直径の2倍である。コアロッド4の直径は本実施形態1では16mmである。本実施形態1では、コアロッド4はVAD法により製造されたものであるが、OVD法やMCVD法等により製造されたものでもよい。マーカ部材5は光ファイバ1のマーカ部1dになるガラスロッドであり、マーカ部1dの屈折率となるように屈折率が調整された石英ガラスからなる。
【0033】
なお、コアロッド4、低屈折率部材2及びマーカ部材5を挿入する前に、ガラスパイプ3内の底に位置決め部材6を配置しておく。位置決め部材6は、ガラスパイプ3の内径と略同じ外径を有する円板状の部材であり、高純度の合成石英ガラスからなる。挿入されたコアロッド4、低屈折率部材2及びマーカ部材5は、位置決め部材6の上に載置される。これにより、ガラスパイプ3内におけるコアロッド4、低屈折率部材2及びマーカ部材5の下端の位置が決定される。
【0034】
つづいて、微粒子充填工程を行う。微粒子充填工程では、図3に示すように、ガラスパイプ3とコアロッド4と低屈折率部材2とマーカ部材5との隙間にガラス微粒子8を投入し、充填する。ガラス微粒子8は本実施形態1では平均粒子径200μmであり、屈折率調整用のドーパントを添加していない高純度の合成石英ガラスからなる。なお、ガラス微粒子8が充填された部分の嵩密度は本実施形態1では1.3g/cmとする。
【0035】
つづいて、ガラスパイプ3内に位置決め部材7を挿入し、コアロッド4及びマーカ部材5を位置決めする位置決め工程を行う。位置決め部材7は、ガラスパイプ3の内径と略同じ外径を有する円板状の部材であり、高純度の合成石英ガラスからなる。位置決め部材7には、図3に示すように、嵌合穴7a、7bと、通気孔7cとが形成されている。嵌合穴7aは、コアロッド4の上端部が嵌合する部分であり、本実施形態1では位置決め部材7を貫通しているが、貫通していなくてもよい。嵌合穴7bは、マーカ部材5の上端部が嵌合する部分であり、本実施形態1では位置決め部材7を貫通しているが、貫通していなくてもよい。複数の通気孔7cは外部とガラスパイプ3内との通気性を確保するものである。また、通気孔7cをガラス微粒子が十分に通過する内径にする事によって、位置決め部材7を設置した後に上部から微粒子を充填することも可能である。
【0036】
ガラスパイプ3内に位置決め部材7を挿入し、嵌合穴7a、7bにそれぞれコアロッド4の上端部、マーカ部材5の上端部を嵌合することで、コアロッド4及びマーカ部材5の位置が位置決めされる。また、低屈折率部材2については、コアロッド4が位置決めされることによって、低屈折率部材2が4つのコアロッド4に挟まれることで位置決めされる。
【0037】
図4は、微粒子充填工程及び位置決め工程を行った後に形成される中間体9を示す図である。中間体9は、ガラスパイプ3、コアロッド4、マーカ部材5、位置決め部材6、7、ガラス微粒子8とで構成される。なお、コアロッド4、マーカ部材5の上端部は嵌合穴7a、7bに嵌合されるため、図3に示すように位置決め部材7を取り付けない状態では、嵌合される長さだけ、低屈折率部材2よりも上方に突出する。
【0038】
つづいて線引工程を行う。線引工程では、図5に示すように、中間体9の上端側に蓋100を被せ、内部を気密状態とする。蓋100には気密状態とした中間体9内部に通じるガス導入管101とガス排気管102とが接続されている。ガス排気管102には真空ポンプ103とガス排気管104とが順次接続されている。ガス導入管101からはアルゴン(Ar)ガスが中間体9内部に供給される。また、蓋100には、気密状態とした中間体9内部の圧力を測定するための圧力計105が設けられている。圧力計105は、測定した圧力値の測定結果のデータを制御部Cに送信する。制御部Cは圧力値の測定結果のデータに基づいて真空ポンプ103とアルゴンガスの投入とを制御して、線引工程前の気密されたパイプ内雰囲気を露点の低いガス(例えばアルゴンガス)で置換した後に減圧状態にできるように構成されている。乾燥ガスで中間体9の内部を置換する事でガラスロッド表面や微粒子表面に吸着した水分の影響を減ずる事が可能である。乾燥ガスの露点は−40℃以下が好ましく、−60℃以下がさらに好ましい。
【0039】
中間体9内部を低露点のアルゴンガスで置換した後に、中間体9内部の圧力を減圧状態に保持しながら、光ファイバ線引炉106のヒータ106aで中間体9の下端を例えば2200℃に加熱し、中間体9を構成する低屈折率部材2、ガラスパイプ3、コアロッド4、マーカ部材5、位置決め部材6、7、及びガラス微粒子8を加熱溶融して光ファイバF1を線引きする。このとき、ガラス微粒子8が緻密化焼結して透明なガラスとなる。この透明ガラスは、ガラスパイプ3、コアロッド4のクラッド形成部4b、及び位置決め部材6、7と一体化して光ファイバ1のクラッド部1bとなる。その後、線引きされた光ファイバF1の外周には被覆形成装置107にて被覆が施されて光ファイバF2(図1の光ファイバ1)となる。光ファイバF2は、キャプスタンローラ108によって引き取られ、ガイドロール109を介して巻取機構110によって巻き取られる。
【0040】
なお、中間体9内部の気体を吸引したことによって位置決め部材7が浮き上がらないように、位置決め部材7の上に重りを載置してもよい。この重りは、位置決め部材7の通気孔7cを塞がない構造であり、純石英ガラスからなるものであることが好ましい。
【0041】
実施形態1の製造方法によれば、石英ガラス柱に穿孔加工する場合と比較して、孔の位置精度の問題や孔内面の表面処理の必要やドリルの長さの制約等がない。また、隙間の充填にガラス微粒子を使用するので、直径の誤差の累積の問題がある石英ロッドを用いる場合と比較して、コアロッド4及び低屈折率部材2の位置精度の低下が少ない。そのため、光ファイバ1を低コストで製造でき、コア部1aや低屈折率部1cの位置精度の低下を抑制することができ、かつ光ファイバの長尺化及び生産性の向上に適する。
【0042】
なお、微粒子充填工程及び位置決め工程を行った後の中間体9に対して超音波振動等によって加振を行えば、ガラス微粒子8の充填状態の均一性が向上し、コア部1aや低屈折率部1cの位置精度の低下がさらに抑制されるので好ましい。
【0043】
(実験例1、2)
ここで、実験1として実施形態1に従って光ファイバを製造した。また、実験例2として、図6(a)に示すような光ファイバ20を製造した。光ファイバ20は、4つのコア部1aとクラッド部1bとを備え、低屈折率部が無い以外は図1に示す光ファイバ1と同一の構成を有する。従って、光ファイバ20は、図6(b)に、図6(a)のA´−A´断面における屈折率プロファイルを示すように、比屈折率差が負の部分がコア部1aの間に存在しないものである。実験例2の光ファイバの製造は、低屈折率部材を使用しない以外は、実験例1の光ファイバと同一の工程で行った。
【0044】
実験例1の光ファイバのコア部に波長1550nmの光を伝搬させて、最隣接するコア間のクロストークを測定したところ、−55dB/100kmであった。一方、実験例2の光ファイバのコア部に波長1550nmの光を伝搬させて、最隣接するコア間のクロストークを測定したところ、−15dB/100kmであった。すなわち、実験例1のように低屈折率部を備えることで、クロストークが低下することが確認された。また、実験例1の光ファイバを10,000m毎に切断し、30箇所の切断面において、各コア部の位置及び最隣接コア間の間隔を測定したところ、いずれも設計値±10%の範囲であり、十分な位置精度であった。
【0045】
(実験例3〜7)
つぎに、実験例3、4、5、6、7として、実施形態1に従って光ファイバを製造した。ただし、使用するガラス微粒子の平均粒子径をそれぞれ30μm、50μm、150μm、500μm、700μmとした。そして、実験例3〜7の光ファイバを10,000m毎に切断し、30箇所の切断面において、各コア部の位置及び最隣接コア間の間隔を測定した。
【0046】
実験例4(50μm)、実験例5(150μm)、実験例6(500μm)の光ファイバについては、各箇所において各コア部の位置及び最隣接コア間の間隔がいずれも設計値±10%の範囲であり、十分な位置精度であった。
【0047】
一方、実験例3(30μm)の光ファイバについては、10箇所においては設計値±10%の範囲であり、十分な位置精度であったが、20箇所においては設計値±10%の範囲を外れる値であった。このような位置精度のばらつきは、ガラス微粒子の平均粒子径が小さいために充填した状態での嵩密度にむらができたためと考えられる。
【0048】
また、実験例7(700μm)の光ファイバについては、15箇所においては設計値±10%の範囲であり、十分な位置精度であったが、15箇所においては設計値±10%の範囲を外れる値であり、また切断面の所々に空孔が存在していた。この空孔は、ガラス微粒子の平均粒子径が大きいために充填状態でもガラス微粒子間に形成される隙間が大きく、光ファイバ線引きのための加熱溶融でも消滅せず、空孔として残留したものであると考えられる。
【0049】
(実施形態2)
次に、実施形態2について説明する。実施形態2は、光ファイバ母材の製造方法に係るものである。図7は、実施形態2に係る製造方法を説明する模式図である。本製造方法では、実施形態1の配置工程、微粒子充填工程、位置決め工程によって作製した中間体9に、光ファイバ母材形成工程行って光ファイバ母材を製造する。
【0050】
具体的には、図7に示すように、中間体9の上端側に蓋111を被せ、内部を気密状態とする。蓋111には気密状態とした中間体9内部に通じるガス排気管112が接続されている。ガス排気管112には真空ポンプ113とガス排気管114とが順次接続されている。また、蓋111には、気密状態とした中間体9内部の圧力を測定するための圧力計115が設けられている。圧力計115は、測定した圧力値の測定結果のデータを制御部Cに送信する。制御部Cは圧力値の測定結果のデータに基づいて真空ポンプ113を制御し、中間体9内部の圧力を所定の圧力値に制御できるように構成されている。
【0051】
そして、光ファイバ母材形成工程を行う。まず、中間体9内部の圧力を大気圧より低い圧力に減圧制御しながら、延伸炉116のヒータ116aで中間体9の下端を例えば2200℃に加熱し、中間体9を構成する低屈折率部材2、ガラスパイプ3、コアロッド4、マーカ部材5、位置決め部材6、7、及びガラス微粒子8を加熱溶融する。さらに、延伸炉116と中間体9とを長手方向に沿って矢印の方向に相対移動させることによって中間体9を延伸して光ファイバ母材10を製造する。このとき、ガラス微粒子8が緻密化焼結して透明なガラスとなる。なお、延伸炉116の下方には外径測定器117が設けられている。制御部Cは、外径測定器117が測定した光ファイバ母材10の外径の値に基づいて、光ファイバ母材10の外径が一定になるように延伸炉116と中間体9との相対移動速度を制御する。
【0052】
なお、本実施形態2においても、位置決め部材7が浮き上がらないように、位置決め部材7の上に重りを載置してもよい。
【0053】
実施形態2の製造方法によれば、実施形態1と同様に、光ファイバ母材10を低コストで製造でき、光ファイバ母材10のコア部や低屈折率部の位置精度の低下を抑制することができ、かつ光ファイバ母材10の長尺化及び生産性の向上に適する。また、光ファイバ母材10を公知の方法で線引きして光ファイバを製造すれば、コア部や低屈折率部の位置精度の低下が抑制された光ファイバを製造することができ、かつ光ファイバの長尺化及び生産性の向上に適する。
【0054】
(実施形態3)
次に、実施形態3について説明する。実施形態3は、光ファイバの製造方法に係るものである。図8、9は、実施形態3に係る製造方法を説明する模式図である。本製造方法は、第1配置工程、第1位置決め工程、第2配置工程、第2位置決め工程、微粒子充填工程、及び線引工程を含む。
【0055】
第1配置工程では、ガラスパイプ3内に、4本のコアロッド4と、不図示のマーカ部材とを挿入して配置する。なお、コアロッド4及びマーカ部材を挿入する前に、ガラスパイプ3内の底に位置決め部材11を配置しておく。位置決め部材11は、図3に示す位置決め部材6と同じ材料からなり、同様の形状を有するが、表面に十次形状の部位である位置決め溝11aが形成されている点が異なる。挿入されたコアロッド4及びマーカ部材5は、位置決め部材11の上に載置される。
【0056】
つづいて、ガラスパイプ3内に位置決め部材12を挿入し、コアロッド4及びマーカ部材を位置決めする第1位置決め工程を行う。位置決め部材12は、ガラスパイプ3の内径と略同じ外径を有する円板状の部材であり、合成石英ガラスからなる。位置決め部材12には、図8に示すように、コアロッド4用の嵌合穴12aと、十字形状の位置決め孔12bと、ガラス微粒子投入孔12cとが形成されている。嵌合穴12aは、コアロッド4の上端部が嵌合する部位である。位置決め孔12b及びガラス微粒子投入孔12cは貫通穴である。十字形状の位置決め孔12bは、その4本の線状の部分が、最隣接する嵌合穴12aの間に配置されるように形成されている部位である。また、位置決め部材12には、図3に示す位置決め部材7と同様に、マーカ部材用嵌合穴と通気孔とが形成されている。
【0057】
ガラスパイプ3内に位置決め部材12を挿入し、嵌合穴12aにコアロッド4の上端部を嵌合し、マーカ部材用嵌合穴にマーカ部材の上端部を嵌合することで、コアロッド4及びマーカ部材の位置が位置決めされる。
【0058】
つづいて、第2配置工程、第2位置決め工程として、図9に示すように、位置決め部材12の位置決め孔12bからガラスパイプ3内に複数の棒状の低屈折率部材13を挿入して配置し、位置決め孔12b及び位置決め部材11の位置決め溝11aによって複数の低屈折率部材13を位置決めする。低屈折率部材13は純石英ガラスに対する比屈折率差Δ2が−0.6%となるようにフッ素が添加された石英ガラスからなる。複数の低屈折率部材13はできるだけ隙間が無い状態に位置決め孔12bに挿入されることが好ましい。複数の低屈折率部材13は直径が全て同じでもよいし、異なるものがあってもよい。また低屈折率部材13は円柱状に限らず角柱状でもよい。
【0059】
つづいて、微粒子充填工程を行う。微粒子充填工程では、位置決め部材12のガラス微粒子投入孔12cから、ガラスパイプ3とコアロッド4と低屈折率部材13とマーカ部材との隙間に、実施形態1のガラス微粒子8と同様のガラス微粒子を投入し、実施形態1と同様の嵩密度となるように充填する。これによって中間体が作製される。
【0060】
つづいて、実施形態1と同様にして中間体に線引工程を行うことによって、光ファイバが製造される。
【0061】
図10は、実施形態3に係る製造方法で製造した光ファイバの模式的な断面及び屈折率プロファイルを示す図である。図10(a)に示すように、光ファイバ1Aは、4つのコア部1Aaと、コア部1Aaの外周に形成されたクラッド部1Abと、十字形状の低屈折率部1Acと、不図示のマーカ部とを備えているマルチコアファイバである。図10(b)に、図10(a)のB−B断面における屈折率プロファイルを示すように、クラッド部1Abに対する比屈折率差Δnが、コア部1Aaでは正値のΔ1であり、低屈折率部1Acでは負値のΔ2である。本実施形態3ではΔ1は0.38%であり、Δ2は−0.6%である。但し、Δ1、Δ2の値はこれらの値に限定されない。
【0062】
低屈折率部1Acは、クラッド部1Ab内において少なくとも最隣接するコア部1Aaの間に配置されている。また、コア部1Aaと低屈折率部1Acとは、光ファイバ1Aの中心軸に対して4回回転対称となるような対称性が高い位置に配置されている。
【0063】
この光ファイバ1Aでは、低屈折率部1Acの4本の線状の部分によって、最隣接するコア部1Aaの間のクロストークが低減される。また、棒状の低屈折率部材13、特にフッ素を添加したものは、一般に板状の低屈折率部材よりも低コストであり、かつ入手が容易である。従って、本実施形態3によれば、低コストの低屈折率部材13を用いて低コストで光ファイバ1Aを製造できる。
【0064】
なお、実施形態3に係る製造方法において中間体までを作製し、これを実施形態2のように加熱延伸して、光ファイバ母材を製造してもよい。
【0065】
また、実施形態3に係る製造方法の変形例として、コアロッド4、低屈折率部材13、及びマーカ部材をガラスパイプ3内に配置する配置工程を行い、その後微粒子充填工程を行い、最後に位置決め部材11、12によるコアロッド4、低屈折率部材13、及びマーカ部材の位置決め工程を行ってもよい。
【0066】
(実施形態4)
次に、実施形態4について説明する。実施形態4は、光ファイバの製造方法に係るものである。図11は、実施形態4に係る製造方法を説明する模式図である。本製造方法は、配置工程、微粒子充填工程、位置決め工程、及び線引工程を含む。
【0067】
配置工程では、ガラスパイプ3内に、12本のコアロッド4と、11枚の板状の低屈折率部材14a〜14kを挿入して配置する。12本のコアロッド4は、正方格子状に配置される。コアロッド4の直径は本実施形態4では12mmである。低屈折率部材14a〜14kは、12本のコアロッド4のうち最隣接するコアロッドの間に配置するように組み合わせて配置される。低屈折率部材14a〜14kは純石英ガラスに対する比屈折率差Δ2が−0.6%となるようにフッ素が添加された石英ガラスからなる。なお、コアロッド4及び低屈折率部材14a〜14kを挿入する前に、ガラスパイプ3内の底に図3に示す位置決め部材6と同様の位置決め部材を配置しておく。
【0068】
つづいて、微粒子充填工程を行う。微粒子充填工程では、ガラスパイプ3とコアロッド4と低屈折率部材14a〜14kとの隙間にガラス微粒子8を投入し、実施形態1の場合と同様の嵩密度になるように充填する。
【0069】
つづいて、ガラスパイプ3内に位置決め部材を挿入し、コアロッド4及び低屈折率部材14a〜14kを位置決めする位置決め工程を行う。位置決め部材は、ガラスパイプ3の内径と略同じ外径を有する円板状の部材であり、高純度の合成石英ガラスからなる。位置決め部材には、12本のコアロッド4用の嵌合穴と、低屈折率部材14a〜14kの配置の形状と一致する位置決め溝と、通気孔とが形成されている。
【0070】
ガラスパイプ3内に位置決め部材を挿入し、嵌合穴にコアロッド4の上端部を嵌合し、位置決め溝に低屈折率部材14a〜14kの上端部を嵌合することで、コアロッド4及び低屈折率部材14a〜14kの位置が位置決めされる。これによって中間体が作製される。
【0071】
つづいて、実施形態1と同様にして中間体に線引工程を行うことによって、光ファイバが製造される。
【0072】
図12は、実施形態4に係る製造方法で製造した光ファイバの模式的な断面及び屈折率プロファイルを示す図である。図14(a)に示すように、光ファイバ1Bは、12個のコア部1Baと、コア部1Baの外周に形成されたクラッド部1Bbと、低屈折率部1Bcとを備えているマルチコアファイバである。図12(b)に、図12(a)のC−C断面における屈折率プロファイルを示すように、クラッド部1Bbに対する比屈折率差Δnが、コア部1Baでは正値のΔ1であり、低屈折率部1Bcでは負値のΔ2である。本実施形態4ではΔ1は0.38%であり、Δ2は−0.6%である。但し、Δ1、Δ2の値はこれらの値に限定されない。
【0073】
低屈折率部1Bcは、クラッド部1Bb内において最隣接するコア部1Baの間に配置されている。また、コア部1Baと低屈折率部1Bcとは、光ファイバ1Bの中心軸に対して4回回転対称となるような対称性が高い位置に配置されている。
【0074】
この光ファイバ1Bでは、低屈折率部1Bcによって、最隣接するコア部1Baの間のクロストークが低減される。
【0075】
また、実施形態4では、11枚の板状の低屈折率部材14a〜14kを用いているが、図11に示す形状を形成できるのであれば、板状の低屈折率部材の使用数は特に限定されない。また、例えば、実施形態1の板材2a、2bのように複数の低屈折率部材を嵌合して組み合わせ、図11に示す形状を作製してもよい。
【0076】
(実施形態5)
次に、実施形態5について説明する。実施形態5は、光ファイバの製造方法に係るものである。図13は、実施形態5に係る製造方法を説明する模式図である。本製造方法は、配置工程、微粒子充填工程、位置決め工程、及び線引工程を含む。
【0077】
配置工程では、ガラスパイプ3内に、7本のコアロッド4と、12枚の板状の低屈折率部材15a〜15lを挿入して配置する。7本のコアロッド4は、正六角形の中心及び各頂点に配置される。コアロッド4の直径は本実施形態5では10mmである。低屈折率部材15a〜15lは、7本のコアロッド4のうち最隣接するコアロッドの間に配置するように組み合わせて配置される。低屈折率部材15a〜15lは純石英ガラスに対する比屈折率差Δ2が−0.6%となるようにフッ素が添加された石英ガラスからなる。なお、同様に、コアロッド4及び低屈折率部材15a〜15lを挿入する前に、ガラスパイプ3内の底に図3に示す位置決め部材6と同様の位置決め部材を配置しておく。
【0078】
つづいて、微粒子充填工程を行う。微粒子充填工程では、ガラスパイプ3とコアロッド4と低屈折率部材15a〜15lとの隙間にガラス微粒子8を投入し、実施形態1の場合と同様の嵩密度になるように充填する。
【0079】
つづいて、ガラスパイプ3内に位置決め部材を挿入し、コアロッド4及び低屈折率部材15a〜15lを位置決めする位置決め工程を行う。位置決め部材は、ガラスパイプ3の内径と略同じ外径を有する円板状の部材であり、高純度の合成石英ガラスからなる。位置決め部材には、7本のコアロッド4用の嵌合穴と、低屈折率部材15a〜15lの配置の形状と一致する位置決め溝と、通気孔とが形成されている。
【0080】
ガラスパイプ3内に位置決め部材を挿入し、嵌合穴にコアロッド4の上端部を嵌合し、位置決め溝に低屈折率部材15a〜15lの上端部を嵌合することで、コアロッド4及び低屈折率部材15a〜15lの位置が位置決めされる。これによって中間体が作製される。
【0081】
つづいて、実施形態1と同様にして中間体に線引工程を行うことによって、光ファイバが製造される。
【0082】
図14は、実施形態5に係る製造方法で製造した光ファイバの模式的な断面及び屈折率プロファイルを示す図である。図15(a)に示すように、光ファイバ1Cは、7個のコア部1Caと、コア部1Caの外周に形成されたクラッド部1Cbと、低屈折率部1Ccとを備えているマルチコアファイバである。図14(b)に、図14(a)のD−D断面における屈折率プロファイルを示すように、クラッド部1Cbに対する比屈折率差Δnが、コア部1Caでは正値のΔ1であり、低屈折率部1Ccでは負値のΔ2である。本実施形態5ではΔ1は0.38%であり、Δ2は−0.6%である。但し、Δ1、Δ2の値はこれらの値に限定されない。
【0083】
低屈折率部1Ccは、クラッド部1Cb内において最隣接するコア部1Caの間に配置されている。また、コア部1Caと低屈折率部1Ccとは、光ファイバ1Cの中心軸に対して6回回転対称となるような対称性が高い位置に配置されている。
【0084】
この光ファイバ1Cでは、低屈折率部1Ccによって、最隣接するコア部1Caの間のクロストークが低減される。
【0085】
(実施形態6)
次に、実施形態6について説明する。実施形態6は、光ファイバの製造方法に係るものである。図15は、実施形態6に係る製造方法を説明する模式図である。本製造方法は、配置工程、微粒子充填工程、位置決め工程、及び線引工程を含む。
【0086】
配置工程では、ガラスパイプ3内に、コア形成部の直径の1.5倍まで、合成石英クラッド形成部が形成された4本のコアロッド4と、3枚の板状の低屈折率部材17a〜17cと、2本の棒状の低屈折率部材18を挿入して配置する。低屈折率部材17a〜17cは、低屈折率部材17b、17a、17cの順番で平行に並ぶように配置される。また、2本のコアロッド4が低屈折率部材17aと17bとで挟まれ、その他の2本のコアロッド4が低屈折率部材17aと17cとで挟まれるように配置される。また、4本のコアロッド4は、長方形の各頂点に配置される。2本の棒状の低屈折率部材18は、それぞれ、2本のコアロッド4の中間付近に配置される。低屈折率部材17a〜17c、18は、純石英ガラスに対する比屈折率差Δ2が−0.6%となるようにフッ素が添加された石英ガラスからなる。低屈折率部材18の直径はコアロッド4の直径と略等しい。なお、コアロッド4及び低屈折率部材17a〜17c、18を挿入する前に、ガラスパイプ3内の底に図3に示す位置決め部材6と同様の位置決め部材を配置しておく。
【0087】
つづいて、微粒子充填工程を行う。微粒子充填工程では、ガラスパイプ3とコアロッド4と低屈折率部材17a〜17c、18との隙間にガラス微粒子8を投入し、実施形態1の場合と同様の嵩密度になるように充填する。
【0088】
つづいて、ガラスパイプ3内に位置決め部材を挿入し、コアロッド4及び低屈折率部材17a〜17c、18を位置決めする位置決め工程を行う。位置決め部材は、ガラスパイプ3の内径と略同じ外径を有する円板状の部材であり、高純度の合成石英ガラスからなる。位置決め部材には、4本のコアロッド4用の嵌合穴と、低屈折率部材17a〜17c、18の配置の形状と一致する位置決め溝と、通気孔とが形成されている。
【0089】
ガラスパイプ3内に位置決め部材を挿入し、嵌合穴にコアロッド4の上端部を嵌合し、位置決め溝に低屈折率部材17a〜17c、18の上端部を嵌合することで、コアロッド4及び低屈折率部材17a〜17c、18の位置が位置決めされる。これによって中間体が作製される。
【0090】
つづいて、実施形態1と同様にして中間体に線引工程を行うことによって、光ファイバが製造される。
【0091】
図16は、実施形態6に係る製造方法で製造した光ファイバの模式的な断面及び屈折率プロファイルを示す図である。図16(a)に示すように、光ファイバ1Dは、4個のコア部1Daa、1Dab、1Dac、1Dadと、コア部1Daa〜1Dadの外周に形成されたクラッド部1Dbと、低屈折率部1Dcとを備えているマルチコアファイバである。図14(b)、図14(c)は、それぞれ、図14(a)のE−E断面、F−F断面における屈折率プロファイルを示す。クラッド部1Dbに対する比屈折率差Δnが、コア部1Daa、1Dab、1Dacでは正値のΔ1であり、低屈折率部1Dcでは負値のΔ2である。また、コア部1Dadについても比屈折率差はΔ1である。本実施形態6ではΔ1は0.38%であり、Δ2は−0.6%である。但し、Δ1、Δ2の値はこれらの値に限定されない。
【0092】
低屈折率部1Dcは、クラッド部1Db内において最隣接するコア部1Daa、1Dabの間、1Dac、1Dadの間にそれぞれ配置されている。また、コア部1Daa〜1Dadと低屈折率部1Dcとは、光ファイバ1Dの中心軸に対して2回回転対称となるような対称性が高い位置に配置されている。
【0093】
この光ファイバ1Dでは、低屈折率部1Dcによって、コア部1Daa〜1Dadのうち最隣接するコア部の間のクロストークが低減される。また、図16(b)、図16(c)に示すように、コア部1Daa〜1Dadはその断面において直交する方向で屈折率プロファイルが異なるため、その直交する方向に屈折率の異方性が生じる。そのため、光ファイバ1Dは偏波保持型のマルチコアファイバとなる。
【0094】
なお、実施形態3〜6に係る製造方法において中間体までを作製し、中間体を実施形態2のように加熱延伸して、光ファイバ母材を製造してもよい。
【0095】
上記実施形態において、低屈折率部材として、フッ素ドープしたガラスロッドを板状に切り出したものを用いたが、フッ素ドープしたガラスロッドを加熱及び加圧して板状に加工したものを用いても作製可能である。
【0096】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
1、1A、1B、1C、1D 光ファイバ
1a、1Aa、1Ba、1Ca、1Daa、1Dab、1Dac、1Dad コア部
1b、1Ab、1Bb、1Cb、1Db クラッド部
1c、1Ac、1Bc、1Cc、1Dc 低屈折率部
1d マーカ部
2、13、14a、14b、14c、14d、14e、14f、14g、14h、14i、14j、14k、15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15h、15i、15j、15k、15l、17a、17b、17c、18 低屈折率部材
2a、2b 板材
2aa、2ba 切り欠き部
3 ガラスパイプ
4 コアロッド
4a コア形成部
4b クラッド形成部
5 マーカ部材
6、7、11、12 位置決め部材
7a、7b、12a 嵌合穴
7c 通気孔
8 ガラス微粒子
9 中間体
10 光ファイバ母材
11a 位置決め溝
12b 位置決め孔
12c ガラス微粒子投入孔
100、111 蓋
101 ガス導入管
102、104、112、114 ガス排気管
103、113 真空ポンプ
105、115 圧力計
106 光ファイバ線引炉
106a、116a ヒータ
107 被覆形成装置
108 キャプスタンローラ
109 ガイドロール
110 巻取機構
116 延伸炉
117 外径測定器
C 制御部
F1 光ファイバ
F2 光ファイバ
図1
図2
図3
図4
図5
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