(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(−H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(−CH
2−)を2価の基で置換する場合の両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0012】
(表面加工樹脂フィルムの製造方法)
本実施形態の製造方法は、凹凸表面からなる複数の規則的な微細構造を備えた表面加工樹脂フィルムを製造する方法である。
かかる製造方法は、樹脂フィルムに対して、原子状水素を照射する工程(以下この工程を「工程(α)」という)を有する。
【0013】
図1は、本実施形態の製造方法により製造される表面加工樹脂フィルムの一実施形態を示すSEM像、を示す図である。
図1に示す表面加工樹脂フィルム10は、複数の凹部と凸部とが規則的に並ぶ微細構造を備えた、凹凸表面を有する樹脂フィルムである。表面加工樹脂フィルム10において、個々の微細構造間のピッチは1μm以下とされている。
【0014】
図2は、微細構造1a、1b間のピッチ(1周期当たりの長さ)を示している。微細構造における凸部の高さhは、用途等に応じて適宜設定され、例えば0.1〜1μmとされる。
【0015】
「ピッチ」とは、複数の規則的な微細構造の1周期当たりの長さをいう。本発明においては、
図2で示す微細構造1a、1b間のピッチ(1周期当たりの長さ)を意味する。
この「ピッチ」は、表面加工樹脂フィルムについてAFMで求めた表面データをもとにし、PSD(パワースペクトル密度関数)を用いて算出される値である。
【0016】
<工程(α)>
工程(α)では、凹凸表面からなる複数の規則的な微細構造間のピッチが1μm以下となるように、樹脂フィルムに対して、原子状水素を照射する。
【0017】
≪樹脂フィルム≫
樹脂フィルムの厚さは、用途等を勘案して決定され、例えば10μm以下が好ましく、より好ましくは1〜6μmの範囲である。
樹脂フィルムの厚さが、前記の好ましい範囲の上限値以下であれば、変形しやすさがより高められる。一方、前記の好ましい範囲の下限値以上であれば、強度がより高められる。
【0018】
樹脂フィルムは、主成分としての樹脂成分と、必要に応じて各種添加剤と、を含有する。
前記樹脂成分としては、原子状水素の照射により、樹脂フィルム表面に微細構造が形成し得るものであればよく、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
これらの中でも、前記樹脂成分としては、微細構造が形成しやすいことから、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂が好ましい。
【0019】
・アクリル系樹脂について
アクリル系樹脂としては、α位に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸から誘導される構成単位、又は、α位に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位、の繰り返し構造を有する重合体が挙げられる。
【0020】
「アクリル酸から誘導される構成単位」とは、アクリル酸のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、アクリル酸(CH
2=CH−COOH)のカルボキシ基末端の水素原子が有機基で置換された化合物である。
前記α位に結合した水素原子を置換する置換基(R
α)は、水素原子以外の原子又は基である。α位に結合する水素原子以外の基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
上記α位に結合した置換基としてのアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、炭素数1〜5のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基)等が挙げられる。
また、α位の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、具体的には、上記「α位に結合した置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部又は全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
また、α位に結合した置換基としてのヒドロキシアルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部又は全部を、水酸基で置換した基が挙げられる。該ヒドロキシアルキル基における水酸基の数は、1〜5が好ましく、1が最も好ましい。
アクリル系樹脂におけるα位とは、特に断りがない限り、カルボニル基が結合している主鎖を構成する炭素原子のことをいう。
【0021】
α位に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、2−プロピルアクリル酸が挙げられる。
α位に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸酸ブチルが挙げられる。
【0022】
好ましいアクリル系樹脂としては、下記の一般式(u1)で表される構成単位(u1)を有する重合体(P1)、又は、一般式(u2)で表される構成単位(u2)を有する重合体(P2)が挙げられる。
構成単位(u1)は、α位に、水素原子以外の置換基(R
α1)が結合している。
構成単位(u2)は、α位に、水素原子が結合している。
【0023】
【化1】
[式(u1)中、R
α1は、炭素数1〜5のアルキル基である。R
u1は、有機基又は水素原子である。式(u2)中、R
u2は、有機基又は水素原子である。]
【0024】
・・重合体(P1)について
前記式(u1)中、R
α1は、炭素数1〜5のアルキル基である。
R
α1におけるアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、R
α1は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0025】
前記式(u1)中、R
u1は、有機基又は水素原子である。
R
u1における有機基は、置換基を有してもよい炭化水素基が挙げられる。この炭化水素基としては、鎖状の炭化水素基、環状の炭化水素基が挙げられる。
【0026】
R
u1における、鎖状の炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよいし、また、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよい。
かかる鎖状の炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、より好ましくは直鎖状のアルキル基である。
該直鎖状のアルキル基は、炭素数1〜5であることが好ましく、炭素数1〜4がより好ましく、炭素数1又は2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基又はn−ブチル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
該分岐鎖状のアルキル基は、炭素数3〜10であることが好ましく、炭素数3〜5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、2,2−ジメチルブチル基等が挙げられる。
【0027】
R
u1における、環状の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよいし、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7〜12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0028】
R
u1における、環状の炭化水素基が芳香族炭化水素基となる場合、該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、多環式基でも単環式基でもよい。この芳香環は、炭素数5〜30であることが好ましく、炭素数5〜20がより好ましく、炭素数6〜15がさらに好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい。
この芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
R
u1における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環又は芳香族複素環から水素原子1つを除いた基(アリール基又はヘテロアリール基);2つ以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子1つを除いた基;前記芳香族炭化水素環又は芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えばベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環又は芳香族複素環に結合するアルキレン基は、炭素数1〜4が好ましく、炭素数1又は2がより好ましく、炭素数1が特に好ましい。
【0029】
上記の中でも、R
u1における有機基は、鎖状の炭化水素基が好ましく、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、直鎖状のアルキル基がさらに好ましく、特に好ましくはメチル基である。
【0030】
R
u1における炭化水素基は、置換基を有してもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、オキソ基(=O)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH
2)、−SO
2−NH
2等が挙げられ、これらの中でも水酸基(−OH)が好ましい。
【0031】
以下に上記の一般式(u1)で表される構成単位(u1)の具体例を示す。
【0033】
重合体(P1)が有する構成単位(u1)は、1種でもよいし2種以上でもよい。
また、重合体(P1)は、必要に応じて、構成単位(u1)以外の構成単位を有してもよい。
重合体(P1)中の構成単位(u1)の割合は、重合体(P1)を構成する全構成単位の合計に対して50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、100モル%(ホモポリマー)であってもよい。
【0034】
・・重合体(P2)について
前記式(u2)中、R
u2は、有機基又は水素原子である。
R
u2における有機基は、前記R
u1における有機基と同様のものが挙げられ、鎖状の炭化水素基が好ましく、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、直鎖状のアルキル基がさらに好ましく、特に好ましくはメチル基である。
【0035】
以下に上記の一般式(u2)で表される構成単位(u2)の具体例を示す。
【0037】
重合体(P2)が有する構成単位(u2)は、1種でもよいし2種以上でもよい。
また、重合体(P2)は、必要に応じて、構成単位(u2)以外の構成単位を有してもよい。
重合体(P2)中の構成単位(u2)の割合は、重合体(P2)を構成する全構成単位の合計に対して50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、100モル%(ホモポリマー)であってもよい。
【0038】
上述したアクリル系樹脂の中でも、微細構造がより形成しやすいことから、アクリル酸エステルのα位に水素原子以外の置換基が結合したアクリル系樹脂が好ましく、上記構成単位(u1)を有する重合体(P1)を用いることが特に好ましい。
【0039】
・エポキシ系樹脂について
エポキシ系樹脂としては、分子内にエポキシ基を有し、架橋構造を形成し得る樹脂が挙げられる。
例えば、エポキシ系樹脂としては、多官能エポキシ樹脂が挙げられ、多官能フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、多官能オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能トリフェニル型ノボラック型エポキシ樹脂、多官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0040】
好ましいエポキシ系樹脂としては、下記の一般式(p3)で表される樹脂(P3)が挙げられる。
【0042】
前記式(p3)中、R
p1及びR
p2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。
R
p1及びR
p2におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。かかる直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。かかる環状のアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
中でも、R
p1、R
p2としては、水素原子、又は、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
前記式(p3)中、複数のR
p1は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。複数のR
p2は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
【0043】
前記式(p3)中、R
EPは、エポキシ基含有基である。
R
EPにおけるエポキシ基含有基としては、特に限定されるものではなく、エポキシ基のみからなる基;脂環式エポキシ基のみからなる基;エポキシ基又は脂環式エポキシ基と、2価の連結基とを有する基が挙げられる。
脂環式エポキシ基とは、3員環エーテルであるオキサシクロプロパン構造を有する脂環式基であって、具体的には、脂環式基とオキサシクロプロパン構造とを有する基である。
【0044】
脂環式エポキシ基の基本骨格となる脂環式基としては、単環でも多環でもよい。単環の脂環式基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。また、これら脂環式基中の水素原子は、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等で置換されていてもよい。
【0045】
エポキシ基又は脂環式エポキシ基と、2価の連結基とを有する基の場合、式中の酸素原子(−O−)に結合した2価の連結基を介してエポキシ基又は脂環式エポキシ基が結合することが好ましい。
ここで、2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
【0046】
置換基を有していてもよい2価の炭化水素基について:
かかる2価の炭化水素基における炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
2価の炭化水素基としての脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0047】
前記の直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、1〜3が特に好ましい。直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[−CH
2−]、エチレン基[−(CH
2)
2−]、トリメチレン基[−(CH
2)
3−]、テトラメチレン基[−(CH
2)
4−]、ペンタメチレン基[−(CH
2)
5−]等が挙げられる。
前記の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が2〜10であることが好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましく、2又は3が特に好ましい。分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、−CH(CH
3)−、−CH(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CH
3)(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)(CH
2CH
2CH
3)−、−C(CH
2CH
3)
2−等のアルキルメチレン基;−CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
3)CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2CH
2−、−CH(CH
2CH
3)CH
2−、−C(CH
2CH
3)
2−CH
2−等のアルキルエチレン基;−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2−等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0048】
前記の構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子2個を除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、前記と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素数3〜20であることが好ましく、炭素数3〜12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7〜12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0049】
2価の炭化水素基としての芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。この芳香環は、(4n+2)個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環は、その炭素数5〜30であることが好ましく、炭素数5〜20がより好ましく、炭素数6〜15がさらに好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい。芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環又は芳香族複素環から水素原子2つを除いた基(アリーレン基又はヘテロアリーレン基);2つ以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子2つを除いた基;前記芳香族炭化水素環又は芳香族複素環から水素原子1つを除いた基(アリール基又はヘテロアリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えばベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基)等が挙げられる。前記アリール基又はヘテロアリール基に結合するアルキレン基は、その炭素数1〜4であることが好ましく、炭素数1又は2であることがより好ましく、炭素数1であることが特に好ましい。
【0050】
かかる2価の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
2価の炭化水素基としての、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0051】
2価の炭化水素基としての、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基における脂環式炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることがより好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部又は全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
また、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基における脂環式炭化水素基は、その環構造を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されてもよい。該ヘテロ原子を含む置換基としては、−O−、−C(=O)−O−、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−が好ましい。
【0052】
2価の炭化水素基としての、芳香族炭化水素基は、当該芳香族炭化水素基が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。例えば、該芳香族炭化水素基中の芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、例えばアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることがより好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基としては、前記脂環式炭化水素基が有する水素原子を置換する置換基として例示したものが挙げられる。
【0053】
ヘテロ原子を含む2価の連結基について:
ヘテロ原子を含む2価の連結基におけるヘテロ原子とは、炭素原子及び水素原子以外の原子であり、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0054】
ヘテロ原子を含む2価の連結基において、該連結基の好ましいものとしては、−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−;−C(=O)−NH−、−NH−、−NH−C(=O)−O−、−NH−C(=NH)−(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい);−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−、一般式−Y
21−O−Y
22−、−Y
21−O−、−Y
21−C(=O)−O−、−C(=O)−O−Y
21、−[Y
21−C(=O)−O]
m”−Y
22−又は−Y
21−O−C(=O)−Y
22−で表される基[式中、Y
21及びY
22はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m”は0〜3の整数である。]等が挙げられる。
【0055】
前記のへテロ原子を含む2価の連結基が−C(=O)−NH−、−NH−、−NH−C(=O)−O−、−NH−C(=NH)−の場合、そのHはアルキル基、アシル等の置換基で置換されていてもよい。該置換基(アルキル基、アシル基等)は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜8であることがさらに好ましく、1〜5であることが特に好ましい。
式−Y
21−O−Y
22−、−Y
21−O−、−Y
21−C(=O)−O−、−C(=O)−O−Y
21−、−[Y
21−C(=O)−O]
m”−Y
22−又は−Y
21−O−C(=O)−Y
22−中、Y
21及びY
22は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、前記の2価の連結基についての説明で挙げた「置換基を有していてもよい2価の炭化水素基」と同様のものが挙げられる。
Y
21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
Y
22としては、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基又はアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
式−[Y
21−C(=O)−O]
m”−Y
22−で表される基において、m”は、0〜3の整数であり、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、式−[Y
21−C(=O)−O]
m”−Y
22−で表される基としては、式−Y
21−C(=O)−O−Y
22−で表される基が特に好ましい。中でも、式−(CH
2)
a’−C(=O)−O−(CH
2)
b’−で表される基が好ましい。該式中、a’は、1〜10の整数であり、1〜8の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましく、1又は2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1〜10の整数であり、1〜8の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましく、1又は2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
【0056】
上記の中でも、R
EPにおけるエポキシ基含有基としては、グリシジル基が好ましい。
前記式(p3)中、複数のR
EPは、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
係るエポキシ系樹脂としては、分子内のエポキシ環が開環し、架橋が進行したものが好ましく、分子内のエポキシ環が完全に開環し、架橋が完全に進行したものがより好ましい。
【0057】
樹脂フィルムが含有する樹脂成分としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂が好ましい。
これらの中でも、微細構造がより形成しやすいことから、アクリル酸エステルのα位に水素原子以外の置換基が結合したアクリル系樹脂を含有する樹脂フィルム、又は、架橋構造が形成されたエポキシ系樹脂を含有する樹脂フィルムが好ましい。
その中でも、微細構造が特に形成しやすいことから、アクリル酸エステルのα位に水素原子以外の置換基が結合したアクリル系樹脂を含有する樹脂フィルムがより好ましく、上記構成単位(u1)を有する重合体(P1)を含有する樹脂フィルムが特に好ましい。
【0058】
樹脂フィルムの中でも、アクリル酸エステルのα位に水素原子以外の置換基が結合したアクリル系樹脂を含有する樹脂フィルムが、原子状水素の照射によって微細構造が特に形成しやすいのは、以下のように推測される。
α位に水素原子以外の置換基が結合したアクリル系樹脂は、原子状水素の照射により、α位の炭素原子と、α位に結合した置換基と、の間で二重結合が形成されて、主鎖が分解しやすい。かかる主鎖の分解により、樹脂フィルムを構成する樹脂マトリックスが部分的に破壊され、樹脂フィルムの表面状態が変化する(樹脂フィルム表面の微小部分が流動性を有する)。この樹脂フィルムの表面状態の違いによって、原子状水素の照射による樹脂の除去速度が変化するため、微細構造が形成しやすくなっている、と考えられる。
【0059】
樹脂フィルムが含有する樹脂成分の分子量は、10000以上が好ましく、10000〜1000000がより好ましく、500000〜1000000がさらに好ましい。
樹脂成分の分子量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、微細構造がより形成しやすくなる。
ここでいう樹脂成分の分子量とは、質量平均分子量(Mw)を意味し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値を示す。
【0060】
樹脂フィルムが含有する樹脂成分は、1種でもよいし2種以上でもよい。
樹脂フィルムに占める樹脂成分の割合は、50質量%以上であり、好ましくは90質量%以上である。
【0061】
樹脂フィルムは、樹脂成分に加えて、各種の添加剤を必要に応じて含有してもよい。
この添加剤としては、例えばフタル酸エステル、イソフタル酸エステル等が挙げられる。
【0062】
かかる樹脂フィルムは、例えば、上記の樹脂成分と必要に応じて各種添加剤とが有機溶剤に溶解した樹脂組成物を用い、この樹脂組成物を、支持体上にスピンコート等によって塗布し、ベーク処理(好ましくは80〜150℃の温度条件にて40〜120秒間)を行うことにより、樹脂フィルムが製造される。
【0063】
[樹脂フィルムに対して原子状水素を照射する操作]
本実施形態の操作では、凹凸表面からなる複数の規則的な微細構造間のピッチが1μm以下となるように、上記の樹脂フィルムに対して、原子状水素を照射する。
原子状水素は、加熱された触媒体(例えば1500℃以上)に、水素含有ガスを接触させることにより生成する。
【0064】
図3は、原子状水素照射装置の一例を示す概略図である。
原子状水素照射装置100は、チャンバ102と底部112とから構成され、内部に空間が形成された筐体を有する。チャンバ102の上部にはガス供給口104が形成され、底部112には排気口106が形成されている。
筐体の内部の空間には、触媒体108が取り付けられている。触媒体108は、タングステンフィラメント(タングステンワイヤ)から形成されている。触媒体108には、触媒体108を加熱するための電源110が取り付けられている。
また、筐体の内部の空間には、底部112の上にヒータ114が配置されている。ヒータ114には、ヒータ114を昇温させて樹脂フィルム14を加熱するための電源115が取り付けられている。ヒータ114には、ヒータ114表面の温度を測定するための熱電対116も取り付けられている。熱電対116は、温度モニタ118に接続されている。熱電対116は、ヒータ114表面(樹脂フィルム14)の温度を測定する。
【0065】
樹脂フィルムに対して原子状水素を照射する操作は、例えば以下のようにして行われる(Hot−Wire法)。
原子状水素照射装置100において、ガス供給口104から水素を含む処理ガスを供給する。
図3では、処理ガスとして水素/窒素混合ガス(H
2/N
2ガス)が使用されている。
処理ガスの供給に伴い、供給された処理ガス中の水素分子が触媒体108に接触して分解し、原子状水素50が発生する。具体的には、触媒体108の表面の各タングステン原子が有するダングリングボンドに、解離された状態の水素原子が吸着する。その後、水素原子が熱脱離することにより、原子状水素50が発生する。そして、発生した原子状水素50は、ヒータ114の上に配置された樹脂フィルム14に向かって進む。
このようにして、樹脂フィルム14表面に原子状水素50が照射され、複数の凹部と凸部とが規則的に並ぶ微細構造を備えた表面加工樹脂フィルムが製造される。
【0066】
本実施形態の操作において、微細構造間のピッチが1μm以下となるように、樹脂フィルムに対して原子状水素を照射するには、例えば以下の(I)又は(II)のように制御すればよい。
【0067】
(I)原子状水素50の照射を開始する時点、及び、原子状水素50を所定時間照射した後、のヒータ114表面(樹脂フィルム14)の温度上昇を制御する。
かかる温度上昇を制御するには、触媒体108の温度及び基板との距離を変化させ、触媒体108の発熱による輻射熱を用いて樹脂フィルム14の温度制御を行うか、原子状水素50を所定時間照射した後について、ヒータ114表面(樹脂フィルム14)の温度を、実測値に基づき、例えば、樹脂フィルム14が含有する樹脂成分の「Tgプラス20℃」以上「Tgプラス50℃」以下とする。
【0068】
(II)原子状水素を照射することにより生じる樹脂フィルムのエッチングレートを制御する。
かかるエッチングレートを制御するには、樹脂フィルム14が含有する樹脂成分の種類を選択する。例えば、樹脂の側鎖末端の炭素数、Tgなどを選択する。
又は、触媒体108の温度及び基板との距離を変化させ、触媒体108の発熱による輻射熱を用いて樹脂フィルム14の温度制御を行う。又は、触媒体108の温度を変化させ原子状水素の発生量及びエネルギーを変化させることによってエッチングレートを制御する。又は原子状水素50の照射を開始する時点のヒータ114表面(樹脂フィルム14)の温度を、実測値に基づき、例えば、樹脂フィルム14が含有する樹脂成分の「Tgマイナス20℃」以上「Tgプラス20℃」以下とする。
【0069】
樹脂フィルム14の表面に樹脂の残膜22が付着している場合、原子状水素50は残膜22を分解して樹脂フィルム14の表面から除去する。
原子状水素50は、樹脂フィルム14の表面に照射された後、排気口106から原子状水素照射装置100の外に排出される。
【0070】
以下、原子状水素照射装置100を用い、樹脂フィルム14に対して原子状水素50を照射する際の条件について説明する。
【0071】
処理ガスとしては、水素ガスやアンモニアガス等の、水素を含む単一組成のガス;水素/窒素混合ガスもしくは水素/アルゴン混合ガス等の、水素と不活性ガスとの混合ガスを使用できる。
また、処理ガス中の水素濃度は、特に制限されず、例えば樹脂の除去効率の観点からは、水素濃度は処理ガスの全体積に対して高いほど好ましく、100体積%であることがより好ましい。安全性と原子状水素50の発生効率のバランスを考慮すると、処理ガス中の水素濃度は、1〜10体積%又は75〜100体積%が特に好ましい。
また、水素ガスの流量は、真空排気装置の排気速度と処理時の水素ガスの分圧を考慮して決定すればよく、1sccm以上300sccm以下の範囲から選択できる。この中でも、好ましくは1sccm以上200sccm以下の範囲、より好ましくは1sccm以上150sccm以下の範囲、さらに好ましくは1sccm以上50sccm以下の範囲から選択できる。
また、水素ガスの分圧は、樹脂の残膜22の除去速度、及び、残膜22が付着していない部分の樹脂フィルム14への影響を考慮して決定すればよく、0.5Pa以上10Pa以下の範囲から選択できる。また、系内(チャンバ102内)の圧力は、例えば樹脂の除去効率の観点から、0.5Pa以上50Pa以下の範囲から選択でき、この中でも好ましくは0.5Pa以上30Pa以下の範囲から選択できる。
【0072】
触媒体108の温度は、特に制限されず、例えば残膜22の除去効率と、残膜22が付着していない部分の樹脂フィルム14への影響や樹脂フィルム14の耐熱性とのバランスを考慮して決定すればよい。
触媒体108の温度は、1500℃以上2500℃以下であることが好ましい。触媒体108の温度が、1500℃未満では、原子状水素50の発生効率が低下して、残膜22の除去効率が低下する場合がある。一方、2500℃超では、樹脂フィルム14の耐久性が低下する場合がある。
【0073】
触媒体108と樹脂フィルム14との距離は、特に制限されず、例えば残膜22の除去効率と、残膜22が付着していない部分の樹脂フィルム14への影響や樹脂フィルム14の耐熱性とのバランスを考慮して決定すればよい。
触媒体108と樹脂フィルム14との距離は、5mm以上120mm以下であることが好ましい。かかる距離が120mm超では、残膜22の除去効率が低下する場合がある。一方、5mm未満では、樹脂フィルム14の耐久性が低下する場合がある。
【0074】
尚、
図3に示す原子状水素照射装置100においては、タングステンフィラメントから形成された触媒体108が用いられているが、これに限定されず、タンタルフィラメント、モリブデンフィラメント又はイリジウムフィラメントから形成された触媒体も好適に用いることができる。但し、原子状水素50の発生効率の点から、触媒体として、タングステンフィラメントから形成されたものを用いることが好ましい。
【0075】
上述の本実施形態では、触媒体108を用いて原子状水素50を発生させる原子状水素照射装置100を用いたが、原子状水素50を発生させる方法はこれに限定されない。例えば、プラズマを用いて原子状水素50を発生させてもよい。但し、本実施形態のように、触媒体108を用いて原子状水素50を発生させる方法(Hot−Wire法)が、樹脂フィルムの耐久性の低下を最小限に抑えることができ、また、処理時間を短縮することができるとともに、装置の小型化も可能となることから、より好ましい。
【0076】
以上説明した、本実施形態の製造方法によれば、ピッチが1μm以下となる、凹凸表面からなる複数の規則的な微細構造を備えた表面加工樹脂フィルムを製造できる。例えば、本実施形態の製造方法により、ピッチが数百nmの凹凸パターンが形成されたアクリル樹脂フィルムが製造される。
加えて、本実施形態の製造方法によれば、表面が改質した樹脂フィルムが得られる。本実施形態の製造方法により得られる表面加工樹脂フィルムを採用することによって、プラスチック基板の耐摩耗性、機械的強度、又は薄膜との密着性の向上が図れる。
【0077】
≪表面加工樹脂フィルム≫
本実施形態の製造方法により製造された表面加工樹脂フィルムの好ましいR
a、R
zjis、R
max、ピッチを以下に示す。R
a、R
zjis、R
max、ピッチの定義については、実施例にて後述する。
R
aとしては、100nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましく、30nm以下が特に好ましい。
R
zjisとしては、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下が特に好ましい。
R
maxとしては、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下が特に好ましい。
ピッチとしては、1μm以下であり、800nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましく、200nm以下が特に好ましい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例においては、原子状水素照射装置として、
図3に示す実施形態と同一の装置であるOAPM−400(東京応化工業株式会社製)を用いた。
処理ガスとして、水素/窒素混合ガス(水素濃度は10体積%)を用いた。水素ガスの流量を30sccm、水素ガスの分圧を3.2Pa、触媒体と樹脂フィルムとの距離を100mmとし、樹脂フィルムに対して、原子状水素を照射した。
【0079】
(実施例1)
ポリマーとして、側鎖末端アルキル基の炭素数を変化させたポリメタクリル酸アルキルを用いて、微細構造形成の検討を行った。用いたポリメタクリル酸アルキルは、以下のとおりである。
【0080】
ポリメタクリル酸メチル(PMMA、Mw=120,000)
ポリメタクリル酸エチル(PEMA、Mw=250,000)
ポリメタクリル酸プロピル(PPrMA、Mw=150,000)
ポリメタクリル酸ブチル(PBuMA、Mw=370,000)
ポリメタクリル酸イソブチル(PiBuMA、Mw=70,000)
【0081】
溶媒として乳酸エチルを用い、各種ポリマーを前記溶媒に溶解した溶解液を、Siウェーハにスピンコート後、100℃60秒間のベークを行い、樹脂フィルム(試料)を作製した。
各試料に、原子状水素を、W−wire通電20A、連続照射時間9分・12分、樹脂フィルムの初期温度50℃・70℃の条件にて照射した。
【0082】
初期温度50℃・70℃における、照射時間と、残存する樹脂フィルムの厚さ及び樹脂フィルム温度との関係を
図4及び
図5に示す。
また、初期温度50℃・70℃における、各ポリマーを用いた場合の連続照射時間9分での平均除去速度(エッチングレート)を表1に示す。表1中、substrateは樹脂フィルムを意味する。
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示されるように、側鎖末端アルキル基の炭素数が増加するにつれ、除去速度が低下していることが確認された。これは、側鎖末端アルキル基の炭素数の増加により、原子状水素による側鎖の切断箇所が増加したため、主鎖の切断効率が低下することによるものと考えられる。
また、樹脂フィルム初期温度の増加とともに、樹脂フィルムの除去速度が増加していることから、初期温度の増加により、原子状水素とポリマーとの反応性が増加するものと考えられる。
【0085】
更に、上記条件にて原子状水素照射後のPMMAフィルム(最終温度120℃・150℃)をSEM観察した。SEM観察条件は、金蒸着30秒、加速電圧4kv、電流値6Aである。この結果を
図6に示す。
【0086】
図6に示すように、PMMAフィルムにおいて、微細構造の形成が確認された。
【0087】
微細構造形成に、ポリマーのTg(ガラス転移温度)が関与しているものと考え、PMMA、PEMA、PPrMAのTgを実測したところ、PMMA:100℃、PEMA:65℃、PPrMA:45℃であった。かかる結果から、Tgが大きいポリマーほど、微細構造が形成されやすいことが確かめられた。
樹脂フィルムの表面状態(微小部分の流動性)の観点から考察を行うと、原子状水素の照射により、樹脂フィルム温度が高くなった際、その温度がTgを大きく超えなければ、主鎖の運動がそれほど激しくならずに、樹脂フィルムの表面状態が変化し(微小部分が流動性を有し)、微細構造が形成されるものと考えられる。
【0088】
(実施例2)
[PMMAフィルムを用いたTgの検討]
ポリメタクリル酸メチル(PMMA、Mw=120,000)を、乳酸エチルに溶解した溶解液17質量%を、Siウェーハに2000rpm、30秒間スピンコート後、100℃60秒間のベークを行い、膜厚5.54μmの試料(薄膜)を作製した。
この試料に、原子状水素を、W−wire通電20A、照射時間9分、樹脂フィルムの初期温度50℃・70℃・85℃・110℃・120℃・130℃の各条件にてそれぞれ照射した。
【0089】
各初期温度の樹脂フィルムにおける、照射時間と樹脂フィルム温度との関係を
図7に示す。
図7に示されるように、樹脂フィルムの初期温度の上昇とともに、照射中の樹脂フィルム温度が上昇していることが確認された。
また、初期温度、最終温度、原子状水素を連続照射時間9分後の樹脂フィルムの膜厚、及び除去速度を表2に示す。表2中、substrateは樹脂フィルムを意味する。
【0090】
【表2】
【0091】
表2に示すように、最も厳しい条件で170〜180℃を計測した。これは、PMMAのTg(約100℃)から70℃高い温度となる。
【0092】
更に、上記条件にて原子状水素照射後のPMMAフィルム(最終温度140℃・160℃)をSEM観察した。
SEM観察条件は、金蒸着30秒、加速電圧4kv、電流値6Aである。この結果を
図8に示す。
【0093】
図8に示されるように、樹脂フィルムの最終温度140℃から160℃において、微細構造の形成が確認された。PMMAの微細構造形成において、樹脂フィルムの最適温度が存在することが確かめられた。
以上のことから、原子状水素の生成量等を制御し、樹脂のTg付近の最終温度にて原子状水素を照射することにより、様々なポリマーにおいて微細構造を形成できるものと考えられる。
【0094】
[Ra、Rzjis、Rmax、Pitchの定義について]
Raは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さLだけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にx軸を、縦倍率の方向にy軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、
図9中の数式によって求められる値を
ナノメートル(
nm)で表したものをいう。
Rzjisは、平均線から正方向に最も離れている5点(もっとも高い山頂から5番目までの山頂の標高)、及び、負方向に最も離れている5点(もっとも低い山頂から5番目までの谷底の標高)の各々の絶対値の平均を足した値である。
Rmaxは、平均線から正方向に最も離れている点のY値と、平均線から負方向に最も離れている点のY値と、の差の絶対値である。
Pitchは、AFMで求めた表面データを、PSD(パワースペクトル密度関数)を用いて算出した1周期あたりの長さである。例えば
図2で示される。
【0095】
(実施例3)
[PMMAフィルムを用いた分子量の検討]
Mw=120,000・350,000・996,000の各ポリメタクリル酸メチルを用いて実施例1と同様に作製した試料に、原子状水素を、W−wire通電20A、照射時間3分・6分・9分、樹脂フィルムの初期温度50℃の各条件にて照射した。
上記条件にて原子状水素照射後のPMMAフィルムの表面データをAFMで求めた。この結果を表3に示す。表3中、n.d.
aはnot determinedを意味する。
【0096】
【表3】
【0097】
(実施例4)
ポリメタクリル酸エチル(PEMA、Mw=250,000)を、乳酸エチルに溶解した溶解液を、Siウェーハに、2000rpm、30秒間スピンコート後、100℃60秒のベークを行い、膜厚1.7μmの試料を作製した。
この試料に、原子状水素を、W−wire通電20A、照射時間3分・6分・9分、樹脂フィルムの初期温度50℃の各条件にて照射した。
【0098】
また、ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(PHEMA、Mw=300,000)を、DMF(ジメチルホルムアミド)に溶解した溶解液をSiウェーハに、2000rpm、30秒スピンコート後、100℃60秒のベークを行い、膜厚1.82μmの試料を作製した。
この試料に、原子状水素を、W−wire通電20A、照射時間3分・6分・9分、樹脂フィルムの初期温度70℃の条件にて照射した。
上記条件にて原子状水素照射後のPEMAフィルム及びPHEMAフィルムの表面データをAFMで求めた。この結果を表4に示す。表4中、n.d.
aはnot determinedを意味する。
【0099】
【表4】
【0100】
(実施例5)
感光性組成物(エポキシ樹脂:商品名JER157S70(三菱化学株式会社製)100部、光酸発生剤:商品名CPI−100P(サンアプロ株式会社製)3部、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルアセテート)1250部)をSiウェーハに、2000rpm、30秒スピンコート後、100℃60秒のベークを行い、膜厚1.7μmのエポキシ樹脂フィルム(試料)を作製した。この試料を50mJ/cm
2・1000mJ/cm
2で露光した。
この試料に、原子状水素を、W−wire通電22.2A・25A・30A、照射時間5分・10分・15分・30分、樹脂フィルムの初期温度50℃の条件にて照射した。
上記条件にて原子状水素照射後のエポキシ樹脂フィルムの表面データをAFMで求めた。50mJ/cm
2で露光した際の試料の表面データを表5に示す。また、1000mJ/cm
2で露光した際の試料の表面データを表6に示す。表5〜6中、n.d.
aはnot determinedを意味する。
【0101】
【表5】
【0102】
【表6】
【0103】
更に、上記条件にて原子状水素照射後のエポキシ樹脂フィルムをAFM観察した。50mJ/cm
2で露光した際の試料の照射時間5分・30分の像を
図10に示す。また、1000mJ/cm
2で露光した際の試料の照射時間5分の像を
図11に示す。
【0104】
以下に述べる実施例においては、原子状水素照射装置として、
図12に示す実施形態と同一の装置を用いた。
図12は、原子状水素照射装置の他の例を示す概略図である。
原子状水素照射装置200は、チャンバ202を備え、その内部に空間が形成された筐体を有する。チャンバ202の側面上方にはガス供給口204が形成され、これと同一側面下方には排気口206が形成されている。
チャンバ202内部の空間には、触媒体208が取り付けられている。触媒体208は、タングステンフィラメント(タングステンワイヤ)から形成されている。触媒体208には、触媒体208を加熱するための電源210がチャンバ202上方に取り付けられている。
チャンバ202底部の中央付近には、ステージ220が配置されている。ステージ220は、外部の温度調整器214に接続されている。
図12において、ステージ220上には、Siウェーハ212と、Siウェーハ212上に作製された樹脂フィルム14と、の積層体が載置されている。ステージ220においては、加熱及び冷却のいずれも可能であり、樹脂フィルム14の温度を一定に制御できる。
また、チャンバ202底部には、ステージ220表面の温度、すなわち樹脂フィルム14の温度を測定するための熱電対216も取り付けられている。熱電対216は、温度モニタ218に接続されている。
【0105】
原子状水素照射装置200により、樹脂フィルムに対して原子状水素を照射する操作は、例えば以下のようにして行われる(Hot−Wire法)。
原子状水素照射装置200において、チャンバ202側面上方のガス供給口204から水素を含む処理ガスを供給する。
処理ガスの供給に伴い、供給された処理ガス中の水素分子が触媒体208に接触して分解し、原子状水素50が発生する。そして、発生した原子状水素50は、ステージ220上に載置された樹脂フィルム14に向かって進む。その際、原子状水素照射装置200においては、樹脂フィルム14を一定の温度に保つことができる。
このようにして、樹脂フィルム14表面に原子状水素50が照射され、複数の凹部と凸部とが規則的に並ぶ微細構造を備えた表面加工樹脂フィルムが製造される。
【0106】
処理ガスとして、水素ガス(水素濃度100体積%)を用いた。水素ガスの流量を30sccm、水素ガス圧を30Pa、触媒体と樹脂フィルムとの距離を100mmとし、樹脂フィルムに対して、原子状水素を照射した。
【0107】
(実施例6)
[PMMAフィルムを用いたフィルム温度の検討]
ポリメタクリル酸メチル(PMMA、Mw=120,000)を、乳酸エチルに溶解した溶解液17質量%を、Siウェーハに2000rpm、30秒間スピンコート後、100℃60秒間のベークを行い、膜厚5.54μmの試料(薄膜)を作製した。
この試料に、原子状水素照射装置200を用いて、原子状水素を、W−wire通電20A、照射時間20分以上、樹脂フィルムの初期温度50℃にて照射し、樹脂フィルムの温度が80℃、100℃、120℃、140℃に保たれるように冷却しつつ、樹脂フィルムに対して原子状水素を照射した。
【0108】
照射時間と樹脂フィルム温度との関係を
図13に示す。
図13に示されるように、照射中の樹脂フィルム温度がほぼ一定に保たれていることが確認された。
【0109】
上記条件にて原子状水素照射後のPMMAフィルムの表面データをAFMで求めた。この結果を表7に示す。表7中、n.d.
aはnot determinedを意味する。
【0110】
【表7】
【0111】
表7の結果より、ピッチが1μm以下となるように、樹脂フィルムに対して、原子状水素を照射することで、粗さが低減されて、表面に高い規則性を有する微細構造を備えた表面加工樹脂フィルムを製造できることが確認された。
【0112】
(実施例7)
[PMMAフィルムを用いた水素ガス流量の検討]
ポリメタクリル酸メチル(PMMA、Mw=120,000)を、乳酸エチルに溶解した溶解液17質量%を、Siウェーハに2000rpm、30秒間スピンコート後、100℃60秒間のベークを行い、膜厚5.54μmの試料(薄膜)を作製した。
この試料に、原子状水素照射装置200を用いて、原子状水素を、W−wire通電20A、照射時間30分、樹脂フィルムの初期温度50℃にて照射し、樹脂フィルムの温度が120℃に保たれるように冷却しつつ、樹脂フィルムに対して原子状水素を照射した。この際、水素ガスを、圧力30Paの一定の下、流量を3sccm、30sccm、150sccm、300sccmとそれぞれ変えて流しながら、樹脂フィルムに対して原子状水素を照射した。
【0113】
【表8】
【0114】
本実施例によれば、ピッチが1μm以下となる、凹凸表面からなる複数の規則的な微細構造を備えた表面加工樹脂フィルムを製造できることが確認された。